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特開2025-12900電力供給システム、制御装置、及び制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012900
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電力供給システム、制御装置、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/34 20060101AFI20250117BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250117BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250117BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20250117BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20250117BHJP
   H01M 10/637 20140101ALI20250117BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20250117BHJP
   H01M 10/667 20140101ALI20250117BHJP
   B60L 58/25 20190101ALI20250117BHJP
   B60L 58/22 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
H02J7/34 C
H02J7/34 B
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/637
H01M10/633
H01M10/667
B60L58/25
B60L58/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116077
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 満孝
(72)【発明者】
【氏名】倉知 大祐
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
5H031
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503AA07
5G503BA03
5G503BA04
5G503BA05
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503CB13
5G503DA08
5G503EA05
5G503EA08
5G503FA06
5G503GA01
5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503HA03
5H030AA10
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H031AA09
5H031HH06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC16
5H125BC19
5H125BC30
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE64
(57)【要約】
【課題】複数の蓄電池を備える電力供給システムにおいて、蓄電池と負荷とで通電しつつ蓄電池の温度を柔軟に調整可能とする。
【解決手段】電力供給システム(10)では、蓄電池(31,61,91)と変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続されている。変換回路の1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、変換回路の2次側端子対(47,48,77,78,107,108)に蓄電池が直列接続されている。複数の蓄電池モジュールの変換回路をそれぞれ制御することにより、蓄電池と負荷との通電動作と、複数の蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作とを同時に実行する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続されている電力供給システム(10,210)であって、
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されており、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する通電実行部(16c)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する昇温実行部(16d)と、を備え、
前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する、電力供給システム。
【請求項2】
複数の前記蓄電池の状態を取得する状態取得部(32,62,92)を備え、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態に基づいて、前記通電動作における複数の前記蓄電池の電力比率を調整する、請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の充電率を取得し、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記充電率の差を縮めるように、前記通電動作における複数の前記蓄電池の前記電力比率を調整する、請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された前記健全性が高い前記蓄電池ほど、前記通電動作における前記電力比率を高くする、請求項2又は3に記載の電力供給システム。
【請求項5】
複数の前記蓄電池の状態、物理的配置、及び通電予定の少なくとも1つである状況を取得する状況取得部(16e)を備え、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状況に基づいて、前記昇温動作の実行対象とする前記蓄電池を決定する、請求項1~3のいずれか1項に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された前記健全性が他の前記蓄電池よりも高い前記蓄電池を前記実行対象に決定する、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の物理的配置を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記物理的配置に基づいて、他の前記蓄電池よりも外部から受熱しにくい前記蓄電池、又は他の前記蓄電池よりも外部へ放熱しやすい前記蓄電池を前記実行対象に決定する、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記昇温実行部は、複数の前記蓄電池の温度よりも外気温が低い場合に、前記実行対象に決定した前記蓄電池の温度を規定温度以上に保つように前記昇温動作を実行する、請求項7に記載の電力供給システム。
【請求項9】
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定に基づいて、前記昇温動作の前記実行対象とする前記蓄電池を決定する、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項10】
前記昇温実行部は、前記昇温動作の実行前後で増加する前記蓄電池の通電可能電力の増加量が他の蓄電池よりも多い前記蓄電池を前記実行対象に決定する、請求項9に記載の電力供給システム。
【請求項11】
前記昇温実行部は、前記実行対象に決定した前記蓄電池の充電率を、前記昇温動作を実行する前に前記負荷又は他の前記蓄電池からの充電動作により他の前記蓄電池の充電率よりも高くしておく、請求項5に記載の電力供給システム。
【請求項12】
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続され、前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている電力供給システム(10,210)、に適用される制御装置(16)であって、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する通電実行部(16c)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する昇温実行部(16d)と、を備え、
前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する、制御装置。
【請求項13】
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続され、前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている電力供給システム(10,210)、に適用される制御プログラムであって、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する処理と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する処理と、
をコンピュータ(16)に同時に実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、複数の蓄電装置に対応して複数の電力変換装置を設け、負荷装置の必要電力と複数の蓄電装置の各々の状態に基づいて規定される各蓄電装置の許容充放電電力とに基づいて、稼動させる蓄電装置の数を設定し、その設定数の蓄電装置を用いて負荷装置と電力の授受を行う電源システムがある(特許文献1参照)。特許文献1に記載の電源システムによれば、全ての蓄電装置を用いて負荷装置と電力を授受する場合に比べて、蓄電装置1つあたりの充放電電流が大きくなり、蓄電装置1つあたりの発熱量が大きくなるため、蓄電装置を速やかに昇温することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-11138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の電源システムでは、例えば設定数の蓄電装置(蓄電池)から負荷装置(負荷)に放電(通電)することで蓄電装置を昇温する際に、負荷装置に放電しつつ蓄電装置の温度を柔軟に調整することができない。また、負荷装置から設定数の蓄電装置に充電(通電)することで蓄電装置を昇温する際も、負荷装置から充電しつつ蓄電装置の温度を柔軟に調整することができない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、複数の蓄電池を備える電力供給システムにおいて、蓄電池と負荷とで通電しつつ蓄電池の温度を柔軟に調整可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続されている電力供給システム(10,210)であって、
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されており、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する通電実行部(16c)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する昇温実行部(16d)と、を備え、
前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する。
【0007】
上記構成によれば、電力供給システムでは、蓄電池と、前記蓄電池から1次側端子対に入力された電力を変換して2次側端子対から出力する変換回路とを備える複数の蓄電池モジュールと、負荷とが、電力供給バスに並列に接続されている。このため、複数の蓄電池から電力供給バスを介して負荷に放電したり、負荷から電力供給バスを介して蓄電池に充電したりすることができる。なお、電力供給バスは、電力供給システムにおいて、複数の回路や、装置、機器を結んで電力をやりとりするために共有される電力経路(共通電力経路)である。
【0008】
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている。こうした構成によれば、蓄電池の出力電圧Vbと変換回路の出力電圧Voとを足した電圧が、蓄電池モジュールの出力電圧Vmとなる。このため、変換回路の2次側端子対に蓄電池が並列接続された蓄電池モジュールと比較して、蓄電池モジュールに出力電圧Vmが要求される際に変換回路に要求される出力電圧Voを低下させることができる。したがって、変換回路の定格電圧を低くすることができ、ひいては変換回路の定格容量を小さくすることができため、変換回路の小型化を図ることができる。
【0009】
ここで、通電実行部は、複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する。このため、負荷との通電動作を実行した蓄電池を昇温することができる。また、昇温実行部は、複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する。このため、前記蓄電池と前記負荷との通電動作による蓄電池の昇温とは別に、昇温動作を実行した複数の蓄電池を昇温することができる。さらに、電力供給システムは、前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する。したがって、蓄電池と負荷とで通電しつつ蓄電池の温度を柔軟に調整することができる。
【0010】
第2の手段では、複数の前記蓄電池の状態を取得する状態取得部(32,62,92)を備え、前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態に基づいて、前記通電動作における複数の前記蓄電池の電力比率を調整する。こうした構成によれば、複数の前記蓄電池の前記状態に基づいて前記通電動作における複数の前記蓄電池の電力比率を調整するため、通電実行部による通電動作を通じて蓄電池の温度をさらに柔軟に調整することができる。
【0011】
第3の手段では、前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の充電率を取得し、前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記充電率の差を縮めるように、前記通電動作における複数の前記蓄電池の前記電力比率を調整する。こうした構成によれば、通電実行部による通電動作を通じて、蓄電池と負荷とで通電するだけでなく、複数の蓄電池の充電率の差を縮めることができる。
【0012】
第4の手段では、前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された前記健全性が高い前記蓄電池ほど、前記通電動作における前記電力比率を高くする。こうした構成によれば、通電実行部による通電動作を通じて、蓄電池と負荷とで通電するだけでなく、複数の蓄電池の健全性の差を縮めることができる。すなわち、健全性が高い蓄電池ほど通電動作における通電電力を高くすることにより、他の蓄電池の健全性との差を縮めることができる。なお、蓄電池の健全性(SOH:State Of Health)[%]は、SOH[%]=現在の満充電容量×100/製造時の満充電容量、の式により算出することができる。
【0013】
第5の手段では、複数の前記蓄電池の状態、物理的配置、及び通電予定の少なくとも1つである状況を取得する状況取得部(16e)を備え、前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状況に基づいて、前記昇温動作の実行対象とする前記蓄電池を決定する。こうした構成によれば、複数の前記蓄電池の前記状況に基づいて、前記昇温動作の実行対象とする前記蓄電池を適切に決定することができる。なお、通電予定の取得は、通電予定を通信等により受信する場合と、通電予定を予測する場合とを含む。
【0014】
第6の手段では、前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された前記健全性が他の前記蓄電池よりも高い前記蓄電池を前記実行対象に決定する。こうした構成によれば、昇温実行部による昇温動作を通じて、複数の蓄電池を昇温するだけでなく、複数の蓄電池の健全性の差を縮めることができる。すなわち、健全性が他の蓄電池よりも高い蓄電池において積極的に昇温動作を実行することにより、他の蓄電池の健全性との差を縮めることができる。
【0015】
第7の手段では、前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の物理的配置を取得し、前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記物理的配置に基づいて、他の前記蓄電池よりも外部から受熱しにくい前記蓄電池、又は他の前記蓄電池よりも外部へ放熱しやすい前記蓄電池を前記実行対象に決定する。
【0016】
上記構成によれば、前記昇温実行部は、他の前記蓄電池よりも外部から受熱しにくい前記蓄電池を前記実行対象に決定する。このため、他の蓄電池よりも暖まりにくい、あるいは他の電池よりも冷えやすい蓄電池を、予め昇温しておくことができる。又は、前記昇温実行部は、他の前記蓄電池よりも外部へ放熱しやすい前記蓄電池を前記実行対象に決定する。このため、他の蓄電池よりも冷えやすい蓄電池を、予め昇温しておくことができる。
【0017】
第8の手段では、前記昇温実行部は、複数の前記蓄電池の温度よりも外気温が低い場合に、前記実行対象に決定した前記蓄電池の温度を規定温度以上に保つように前記昇温動作を実行する。こうした構成によれば、例えば蓄電池と負荷との通電動作の終了後に、複数の前記蓄電池の温度よりも外気温が低い場合であっても、昇温動作により蓄電池の温度を規定温度以上に保つことができる。したがって、電力供給システムに対して充放電要求があった時に、充放電要求に応じた充放電を迅速に実行することができる。
【0018】
第9の手段では、前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定を取得し、前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定に基づいて、前記昇温動作の前記実行対象とする前記蓄電池を決定する。こうした構成によれば、複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定を考慮して、前記昇温動作の前記実行対象とする前記蓄電池を適切に決定することができる。例えば、負荷との通電動作の実行予定があり且つ昇温が必要な蓄電池を昇温動作の実行対象に決定することにより、負荷との通電動作を速やかに開始することができる。
【0019】
第10の手段では、前記昇温実行部は、前記昇温動作の実行前後で増加する前記蓄電池の通電可能電力の増加量が他の蓄電池よりも多い前記蓄電池を前記実行対象に決定する。こうした構成によれば、昇温動作により蓄電池の通電可能電力を効果的に増加させることができ、電力供給システムの通電能力を効果的に向上させることができる。
【0020】
第11の手段では、前記昇温実行部は、前記実行対象に決定した前記蓄電池の充電率を、前記昇温動作を実行する前に前記負荷又は他の前記蓄電池からの充電動作により他の前記蓄電池の充電率よりも高くしておく。こうした構成によれば、昇温動作により実行対象の蓄電池の充電率が低下した場合であっても、複数の蓄電池の充電率の差が大きくなることを抑制することができる。
第12の手段は、
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続され、前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている電力供給システム(10,210)、に適用される制御装置(16)であって、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する通電実行部(16c)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する昇温実行部(16d)と、を備え、
前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する。
上記構成によれば、電力供給システムに適用される制御装置により、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【0021】
第13の手段は、
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続され、前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されている電力供給システム(10,210)、に適用される制御プログラムであって、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する処理と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する処理と、
をコンピュータ(16)に同時に実行させる。
【0022】
上記構成によれば、電力供給システムに適用される制御プログラムをコンピュータに実行させることにより、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電力供給システムの回路図。
図2】変換回路の一例を示す回路図。
図3】通電動作及び昇温動作の手順を示すフローチャート。
図4】蓄電池の内部抵抗と交流電流周波数との関係示すグラフ。
図5】創熱量と電流振幅との関係を示すグラフ。
図6】通電動作及び昇温動作の実行例を示す模式図。
図7】各蓄電池モジュールの蓄電池の電流を示すタイムチャート。
図8】各蓄電池モジュールの駆動状態、蓄電池温度、及び蓄電池SOCの推移を示すタイムチャート。
図9】比較例の各蓄電池モジュールの駆動状態、蓄電池温度、及び蓄電池SOCの推移を示すタイムチャート。
図10】通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図11】通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図12】通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図13】通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図14】通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図15】昇温動作の実行例を示す模式図。
図16】昇温動作の他の実行例を示す模式図。
図17】電力供給システムの変更例の回路図。
図18】変換回路の変更例の回路図。
図19】変換回路の他の変更例の回路図。
図20】蓄電池モジュールの変更例の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、負荷と電力を入出力する電力供給システムに具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に示すように、電力供給システム10は、バス11,12(電力供給バス)、第1蓄電池モジュール30、第2蓄電池モジュール60、第3蓄電池モジュール90、電圧センサ13、電流センサ19、ECU(Electronic Control Unit)16等を備えている。なお、バスの正極側(正側)をバス11と称し、バスの負極側(負側)をバス12と称する。バス12は接地されている。
【0026】
バス11,12には、第1蓄電池モジュール30(蓄電池モジュール)、第2蓄電池モジュール60(蓄電池モジュール)、第3蓄電池モジュール90(蓄電池モジュール)、負荷21、及び電圧センサ13が並列に接続されている。蓄電池モジュール30,60,90は、バス11,12に電力を入出力する。負荷21は、複数の負荷を含み、バス11,12に電力を入出力する。電圧センサ13は、バス12とバス11との間の電圧であるバス電圧Vbusを検出する。電流センサ19は、バス12(負荷21)に流れる電流を検出する。
【0027】
負荷21は、例えばインバータとMG(Motor Generator)との組み合わせ(インバータ付きモータユニット)、電気ヒータ、DCDCコンバータ、外部充電器(充電装置)等である。MG(電動発電機)は、インバータから供給される電力により、例えば電動自動車を駆動する、又は電動自動車から付与される回転力により回生発電を行う。インバータは、バス11,12とMGとの間で電力を変換する。電気ヒータは、例えばバス11,12から供給される高電圧(電圧)により発熱し、車内やバッテリ等を暖める。DCDCコンバータは、例えばバス11,12から供給される直流電力を変換して直流電力を供給したり、太陽光パネル等から供給される直流電力を変換してバス11,12へ直流電力を供給したりする。外部充電器は、バス11,12に電力を入力することにより、蓄電池31,61,91を充電する。
【0028】
第1蓄電池モジュール30は、第1蓄電池31、第1電流センサ33、第1駆動回路35、第1変換回路40、リレー40a,40b、BMU32(Battery Management Unit)等を備えている。第1蓄電池31(蓄電池)は、例えばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池等を用いた高電圧の2次電池であり、種類は任意である。第1電流センサ33(電流センサ)は、第1蓄電池31に流れる電流を検出する。第1電流センサ33による検出値は、ECU16に入力され、例えば第1蓄電池31の充電率(SOC:State Of Charge)[%]の計算に用いられる。第1駆動回路35(駆動回路)は、第1変換回路40が備えるスイッチング素子(後述)をオンオフ駆動する。第1駆動回路35は、ECU16により制御される。リレー40a,40bは、蓄電池モジュール30をバス11,12に対してそれぞれ切断及び接続する。なお、第1蓄電池31(蓄電池)は、高電圧でない2次電池でもよい。第1電流センサ33による検出値が、BMU32に入力されてもよい。
【0029】
第1変換回路40(変換回路)は、1次側端子対である1次側の正極端子41及び負極端子42と、2次側端子対である2次側の正極端子47及び負極端子48とを備えている。第1蓄電池31の負極がバス12に接続されている。第1蓄電池31の正極に1次側の正極端子41が接続され、第1蓄電池31の負極に1次側の負極端子42が接続されている。また、第1蓄電池31の正極に2次側の負極端子48が接続されている。2次側の正極端子47がバス11に接続されている。すなわち、第1変換回路40の1次側端子対41,42に第1蓄電池31の正極及び負極がそれぞれ接続され、第1変換回路40の2次側端子対47,48に第1蓄電池31が直列接続されている。第1変換回路40は、第1蓄電池31から1次側端子対41,42に入力された電力を変換して2次側端子対47,48から出力する。第1変換回路40は、2次側端子対47,48に入力された電力を変換して1次側端子対41,42から出力することも可能である双方向の変換回路である。
【0030】
BMU32(状態取得部)は、温度センサ、記憶装置、演算装置等を含んでいる。温度センサは、第1蓄電池31の温度(状態)を検出する。記憶装置(記憶部)は、第1蓄電池31の特性を記憶している。第1蓄電池31の特性は、例えば第1蓄電池31の内部抵抗と交流電流周波数との関係(図4参照)、第1蓄電池31の創熱量と電流振幅と通電制約との関係(図5参照)、第1蓄電池31の開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)とSOCとの関係等を含む。BMU32は、開回路電圧OCVとSOCとの関係を規定したグラフやマップに、電圧センサ51により検出された開回路電圧OCVを適用することにより、第1蓄電池31のSOC(状態)を算出(取得)する。BMU32は、開回路電圧OCVに基づき算出したSOCを、第1電流センサ33により検出された電流の積算値に基づいて更新する。BMU32は、第1蓄電池31のSOH(State Of Health、健全性)を、以下のように推定(取得)する。BMU32は、例えば満充電容量[Ah]=充電量×100/(充電後SOC-充電前SOC)、の式により第1蓄電池31の満充電容量(状態)を算出(取得)する。充電量は、充電開始から終了までの電流の積算値であり、例えば電流センサ33により検出された電流を積算することにより算出することができる。BMU32は、例えばSOH[%]=現在の満充電容量×100/製造時の満充電容量、の式により第1蓄電池31のSOH[%](状態)を算出(取得)する。なお、第1蓄電池31のSOC及びSOHの算出(取得)を状況取得部16e(ECU16)が行ってもよいし、状況取得部16e(ECU16)はBMU32から第1蓄電池31のSOC及びSOHを受信(取得)してもよい。
【0031】
第2蓄電池モジュール60は、第1蓄電池モジュール30と同様の構成であり、第2蓄電池61(蓄電池)、第2電流センサ63(電流センサ)、第2駆動回路65(駆動回路)、第2変換回路70、リレー70a,70b、BMU62等を備えている。第2変換回路70(変換回路)は、第1変換回路40と同様の構成であり、1次側端子対である1次側の正極端子71及び負極端子72と、2次側端子対である2次側の正極端子77及び負極端子78とを備えている。これらの接続態様も第1蓄電池モジュール30と同様であるため、第1蓄電池モジュール30についての上記説明を援用する。BMU62(状況取得部)は、BMU32と同様の構成であるため、BMU32についての上記説明を援用する。なお、第1蓄電池モジュール30と第2蓄電池モジュール60とは、同様の機能を有する構成を備えているものの、各構成の定格や耐電圧は互いに異なっていてもよい。
【0032】
第3蓄電池モジュール90は、第1蓄電池モジュール30と同様の構成であり、第3蓄電池91(蓄電池)、第3電流センサ93(電流センサ)、第3駆動回路95(駆動回路)、第3変換回路100、リレー100a,100b、BMU92等を備えている。第3変換回路100(変換回路)は、第1変換回路40と同様の構成であり、1次側端子対である1次側の正極端子101及び負極端子102と、2次側端子対である2次側の正極端子107及び負極端子108とを備えている。これらの接続態様も第1蓄電池モジュール30と同様であるため、第1蓄電池モジュール30についての上記説明を援用する。BMU92(状況取得部)は、BMU32と同様の構成であるため、BMU32についての上記説明を援用する。なお、第1蓄電池モジュール30と第3蓄電池モジュール90とは、同様の機能を有する構成を備えているものの、各構成の定格や耐電圧は互いに異なっていてもよい。
【0033】
図2に、第1変換回路40の一例を示す。第1変換回路40は、周知のセンタータップ式の絶縁型DCDCコンバータである。第1変換回路40は、スイッチング素子43~46,54,55、平滑コンデンサ50,57、トランス53、リアクトル56、電圧センサ51,59、電流センサ52,58等を備えている。スイッチング素子43~46,54,55は、例えばMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子43~46は、フルブリッジ回路を構成している。スイッチング素子43とスイッチング素子44との接続点、及びスイッチング素子45とスイッチング素子46との接続点が、トランス53の1次側コイルの両端にそれぞれ接続されている。スイッチング素子54,55は、トランス53の2次側コイルの両端部とリアクトル56との間にそれぞれ接続されている。電圧センサ51は、1次側の負極端子42と正極端子41と間の電圧、すなわち第1蓄電池31の出力電圧Vbを検出する。電流センサ52は、1次側回路に入力される電流である入力電流Iiを検出する。電圧センサ59は、2次側の負極端子48と正極端子47と間の電圧、すなわち第1変換回路40の出力電圧Voを検出する。電流センサ58は、リアクトル56に流れる電流、すなわち第1変換回路40の出力電流Ioを検出する。電圧センサ51,59、及び電流センサ52,58による検出値は、ECU16に入力される。なお、電圧センサ51による検出値が、BMU32に入力されてもよい。
【0034】
ECU16(制御装置)は、例えばCPU、ROM、RAM、記憶装置、及び入出力インターフェース等を備えるマイクロコンピュータ(コンピュータ)として構成されている。ECU16は、リレー40a,40b,70a,70b,100a,100bの状態、及び負荷21の状態を制御する。さらに、ECU16は、電力供給システム10に適用される制御プログラムを実行することにより、バス電圧設定部16a、制御部16b、通電実行部16c、昇温実行部16d、状況取得部16e等の機能を実現する。BMU32,62,92とECU16とは、有線又は無線により通信可能である。
【0035】
バス電圧設定部16aは、バス11,12から負荷21へ供給することが要求される電圧であるバス電圧要求値Vbus*を設定する。バス電圧設定部16aは、負荷21の状態に基づいてバス電圧要求値Vbus*を設定する。
【0036】
制御部16bは、蓄電池モジュール30,60,90の出力電圧Vm1,Vm2,Vm3がそれぞれバス電圧要求値Vbus*になる(バス電圧要求値Vbus*に近づく)ように、変換回路40,70,100の出力電圧Vo1,Vo2,Vo3をそれぞれ制御する。例えば、制御部16bは、電圧センサ51,59、及び電流センサ52,58による検出値に基づいてスイッチング素子43~46,54,55を制御することにより、第1変換回路40の第1出力電圧Vo1が第1出力電圧要求値Vo1*になる(第1出力電圧要求値Vo1*に近づく)ように制御する。詳しくは、第1出力電圧要求値Vo1*を、バス電圧要求値Vbus*から第1蓄電池31の第1出力電圧Vb1を引いた電圧に設定する(Vo1*=Vbus*―Vb1)。同様にして、制御部16bは、第2変換回路70の第2出力電圧Vo2が第2出力電圧要求値Vo2*になる(第2出力電圧要求値Vo2*に近づく)ように制御する。詳しくは、第2出力電圧要求値Vo2*を、バス電圧要求値Vbus*から第2蓄電池61の第2出力電圧Vb2を引いた電圧に設定する(Vo2*=Vbus*―Vb2)。同様にして、制御部16bは、第3変換回路100の第3出力電圧Vo3が第3出力電圧要求値Vo3*になる(第3出力電圧要求値Vo3*に近づく)ように制御する。詳しくは、第3出力電圧要求値Vo3*を、バス電圧要求値Vbus*から第3蓄電池91の第3出力電圧Vb3を引いた電圧に設定する(Vo3*=Vbus*―Vb3)。
【0037】
通電実行部16cは、蓄電池モジュール30,60,90の変換回路40,70,100をそれぞれ制御することにより、蓄電池31,61,91と負荷21との通電動作を実行する。通電動作は、蓄電池31,61,91から負荷21(例えばインバータ付きモータユニット)への放電動作、及び負荷21(例えば外部充電器)から蓄電池31,61,91への充電動作を含む。通電実行部16cは、通電動作において蓄電池31,61,91と負荷21との間に直流の負荷電流を流す。
【0038】
昇温実行部16dは、蓄電池モジュール30,60,90の変換回路40,70,100をそれぞれ制御することにより、蓄電池31,61,91間で充放電をすることでそれらの蓄電池31,61,91を昇温する昇温動作を実行する。昇温実行部16dは、昇温動作において蓄電池31,61,91間に交流の創熱電流を流す。
【0039】
状況取得部16eは、蓄電池31,61,91の状況を取得する。蓄電池31,61,91の状況は、例えばBMU32,62,92により取得した蓄電池31,61,91の上記状態を含む。蓄電池31,61,91の状況は、例えば蓄電池31,61,91の物理的配置を含む。物理的配置は、蓄電池31,61,91の車両内での位置、蓄電池31,61,91と他の機器との位置関係等であり、例えばECU16の記憶装置に記憶されている。蓄電池31,61,91の状況は、例えば蓄電池31,61,91の通電予定を含む。通電予定は、例えば蓄電池31,61,91の次回の充電タイミングや次回の放電タイミングであり、上記ECUから受信(取得)したり、車両の状態から予測(取得)したりすることができる。
【0040】
図3は、通電動作及び昇温動作の手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、ECU16により所定の周期で繰り返し実行される。なお、通電動作は、蓄電池31,61,91の放電動作と充電動作とを含むが、ここでは主に放電動作を例にして説明する。
【0041】
まず、各蓄電池31,61,91の状況を取得する(S10)。各蓄電池31,61,91の状況は、各蓄電池31,61,91の温度、上記特性、SOC[%]、SOH[%]、上記物理的配置、上記通電予定等を含む。取得した各蓄電池31,61,91の温度に基づいて、蓄電池31,61,91の温度ばらつきが既定値以下であるか否か判定する(S11)。例えば、蓄電池31,61,91のうち最も温度が高い蓄電池の温度と最も温度が低い蓄電池の温度との差が、既定値以下であるか否か判定する。蓄電池31,61,91の通電制約としての電力上限値(通電可能電力)は、蓄電池の温度が低いほど小さくなる。そこで、既定値は、例えば蓄電池の通電可能電力の差が望ましくない大きさになることを判定することができる値に設定されている。この判定において、蓄電池31,61,91の温度ばらつきが既定値以下であると判定した場合(S11:YES)、創熱なしモードに移行する(S12)。創熱なしモードは、上記通電動作を実行し、上記昇温動作を実行しないモードである。
【0042】
続いて、取得した各蓄電池31,61,91のSOC[%]に基づいて、蓄電池31,61,91のSOCばらつきが既定値以下であるか否か判定する(S13)。例えば、蓄電池31,61,91のうち最もSOC[%]が高い蓄電池のSOC[%]と最もSOC[%]が低い蓄電池のSOC[%]との差が、既定値以下であるか否か判定する。蓄電池31,61,91の出力電圧Vbの電圧差が大きくなり過ぎると、蓄電池モジュール30,60、90の出力電圧Vmを一致させるように変換回路40,70,100で調整することが困難となる。そこで、既定値は、例えば蓄電池31,61,91の出力電圧Vbの電圧差が大きくなり過ぎることを判定することができる値に設定されている。この判定において、蓄電池31,61,91のSOCばらつきが既定値以下であると判定した場合(S13:YES)、S14の処理へ進む。
【0043】
S14の処理では、取得した各蓄電池31,61,91のSOH[%]に基づいて、蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下であるか否か判定する。例えば、蓄電池31,61,91のうち最もSOH[%]が高い蓄電池のSOH[%]と最もSOH[%]が低い蓄電池のSOH[%]との差が、既定値以下であるか否か判定する。蓄電池31,61,91のSOH[%]は、蓄電池31,61,91の劣化度合、ひいては蓄電池31,61,91の寿命に相関している。そこで、既定値は、例えば蓄電池31,61,91の劣化度合の差が望ましくない大きさになることを判定することができる値に設定されている。この判定において、蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下であると判定した場合(S14:YES)、S15の処理へ進む。
【0044】
S15の処理では、負荷21に要求される負荷電流(放電電流又は充電電流)を均等に分配した均等分配値を、各蓄電池モジュール30,60,90に各電流指令値として指令する。このとき、各電流指令値が図5の直流Win/Wout制約を超える場合は、各電流指令値を直流Win/Wout制約以内に補正する。例えば、蓄電池31,61,91の放電時の直流Win/Wout制約としての直流電力上限値は、蓄電池31,61,91の適正温度範囲の上限までは温度が高いほど大きくなる。また、蓄電池31,61,91のSOC[%]が高いほど、直流Winの上限値が小さくなり、直流Woutの上限値は大きくなる。そして、各蓄電池モジュール30,60,90と負荷21との各通電電流が各電流指令値になるように、各蓄電池モジュール30,60,90の各変換回路40,70,100を制御する。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0045】
一方、蓄電池31,61,91のSOCばらつきが既定値以下でないと判定した場合(S13:NO)、及び蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下でないと判定した場合(S14:NO)、S16の処理へ進む。
【0046】
S16の処理では、負荷21に要求される負荷電流(放電電流又は充電電流)を不均等に分配した不均等分配値を、各蓄電池モジュール30,60,90に各電流指令値として指令する。具体的には、蓄電池31,61,91のSOCばらつきが既定値以下でない場合(S13:NO)、SOC[%]の差を縮めるように不均等分配値を設定する。例えば、蓄電池31,61,91から負荷に放電する場合は、SOC[%]が高い蓄電池ほど不均等分配値を大きくする。負荷から蓄電池31,61,91に充電する場合は、SOC[%]が低い蓄電池ほど不均等分配値を大きくする。すなわち、取得した各蓄電池31,61,91のSOC[%]に基づいて、蓄電池31,61,91のSOC[%]の差を縮めるように、通電動作における蓄電池31,61,91の電力比率を調整する。また、蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下でない場合(S14:NO)、SOH[%]が高い蓄電池ほど不均等分配値を大きくする。すなわち、取得した各蓄電池31,61,91のSOH[%]に基づいて、SOH[%]が高い蓄電池ほど通電動作(放電動作及び充電動作)における蓄電池の電力比率を高くする。なお、各電流指令値が図5の直流Win/Wout制約を超える場合は、各電流指令値を直流Win/Wout制約以内に補正する。そして、各蓄電池モジュール30,60,90と負荷21との各通電電流が各電流指令値になるように、各蓄電池モジュール30,60,90の各変換回路40,70,100を制御する。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0047】
また、S11の判定において、蓄電池31,61,91の温度ばらつきが既定値以下でないと判定した場合(S11:NO)、創熱ありモードに移行する(S17)。創熱ありモードは、上記通電動作及び上記昇温動作を実行するモードである。創熱対象蓄電池を選定する(S18)。創熱対象蓄電池は、昇温動作の実行対象とする蓄電池である。例えば、蓄電池31,61,91のうち最も温度が高い蓄電池の温度を基準温度とし、基準温度との温度差が既定値よりも大きい蓄電池を創熱対象蓄電池に選定する。
【0048】
続いて、創熱対象蓄電池の数が2以上であるか否か判定する(S19)。この判定において、創熱対象蓄電池の数が2以上でないと判定した場合(S19:NO)、S16の処理へ進む。この場合のS16の処理では、創熱対象蓄電池に対応する蓄電池モジュールに分配する不均等分配値を、その他の蓄電池モジュールに分配する不均等分配値よりも大きく設定する。すなわち、S11,S18,S16の処理により、取得した各蓄電池31,61,91の温度に基づいて、通電動作における蓄電池31,61,91の電力比率を調整する。
【0049】
一方、創熱対象蓄電池の数が2以上であると判定した場合(S19:YES)、創熱対象蓄電池の交流創熱電流を決定する(S20)。具体的には、上記基準温度と創熱対象蓄電池の温度との温度差に基づいて、必要創熱量を算出する。そして、算出した必要創熱量に基づいて、創熱対象蓄電池の交流創熱電流を算出する。例えば、創熱対象蓄電池の数が2つの場合は、2つの創熱対象蓄電池間で交流電流をやりとりすることとし、2つの創熱対象蓄電池に対応する蓄電池モジュールが許容する最大電流値を選定する。許容する最大電流値は、創熱対象蓄電池に対応する変換回路が入出力可能な最大電流値、又は創熱対象蓄電池が入出力可能な最大電流値のいずれか小さい方の電流値である。次に、選定した電流値で必要創熱量を満足するために必要な蓄電池の必要内部抵抗値を求める。さらに、求めた必要電池内部抵抗値を満足することが可能な交流電流周波数を、図4の「内部抵抗-周波数」特性のグラフを参照して選択する。選択した交流電流周波数における図5の「創熱量-電流振幅」特性のグラフを参照して、必要創熱量から電流振幅を選定する。ただし、図5の「創熱量-電流振幅」特性において、蓄電池の特性である交流Win/Wout制約以内の創熱量とする必要がある。例えば、蓄電池31,61,91の交流Win/Wout制約は、蓄電池31,61,91の適正温度範囲の上限までは温度が高いほど大きくなる。また、蓄電池31,61,91のSOC[%]が高いほど、交流Winの上限値が小さくなり、交流Woutの上限値は大きくなる。交流Win/Wout制約を超える場合は、交流電流周波数を高くする(蓄電池の内部抵抗が小さい周波数を用いる)又は電流振幅を小さくして、交流Win/Wout制約以内に補正する。このように、交流電流周波数及び交流電流振幅を選定することにより、交流創熱電流を決定する。なお、創熱対象蓄電池の数が3つの場合は、3つの創熱対象蓄電池間で交流電流をやりとりすればよい。また、創熱対象蓄電池の数が4つの場合は、4つの創熱対象蓄電池間で交流電流をやりとりしてもよいし、2つの創熱対象蓄電池間で交流電流をやりとりする組を2つ形成してもよい。なお、創熱対象蓄電池でない蓄電池の交流創熱電流=0に決定する。
【0050】
S21,S22の処理は、S13,S14の処理と同一である。S22の判定において、蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下であると判定した場合(S22:YES)、S23の処理へ進む。
【0051】
S23の処理では、負荷21に要求される負荷電流(放電電流又は充電電流)を均等に分配した均等分配値に上記交流創熱電流を加えた電流を、各蓄電池モジュール30,60,90に各電流指令値として指令する。そして、各蓄電池モジュール30,60,90と負荷21との各通電電流が各電流指令値になるように、各蓄電池モジュール30,60,90の各変換回路40,70,100を制御する。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0052】
一方、蓄電池31,61,91のSOCばらつきが既定値以下でないと判定した場合(S21:NO)、及び蓄電池31,61,91のSOHばらつきが既定値以下でないと判定した場合(S22:NO)、S24の処理へ進む。
【0053】
S24の処理では、負荷21に要求される負荷電流(放電電流又は充電電流)を不均等に分配した不均等分配値に上記交流創熱電流を加えた電流を、各蓄電池モジュール30,60,90に各電流指令値として指令する。不均等分配値の設定方法は、S16の処理と同一である。そして、各蓄電池モジュール30,60,90と負荷21との各通電電流が各電流指令値になるように、各蓄電池モジュール30,60,90の各変換回路40,70,100を制御する。その後、この一連の処理を一旦終了する(END)。
【0054】
なお、S10の処理が状況取得部16eとしての処理に相当し、S15,S16,S23,S24の処理が通電実行部としての処理に相当し、S23及びS24の処理が昇温実行部としての処理に相当する。
【0055】
図6は、放電動作(通電動作)及び昇温動作の実行例を示す模式図である。同図では、放電動作による電流を黒塗り矢印で表し、昇温動作による電流を白抜き矢印で表している。なお、以降の図においても同様に表すものとする。第3蓄電池モジュール90は放電動作のみを実行し、蓄電池モジュール30,60は放電動作及び昇温動作を実行している。詳しくは、蓄電池モジュール90に電流指令値として均等分配値を指令し(交流創熱電流=0)、蓄電池モジュール30,60に電流指令値として均等分配値に交流創熱電流を加えた電流を指令している。この場合、各蓄電池モジュール30,60,90の各蓄電池31,61,91には、図7に示す電流が流れる。
【0056】
図8は、図6,7の場合において、各蓄電池モジュール30,60,90の駆動状態、蓄電池温度、及び蓄電池SOC[%]の推移を示すタイムチャートである。図8(b)に示すように、実線で示す第1蓄電池31の温度及び一点鎖線で示す第2蓄電池61の温度は、破線で示す第3蓄電池91の温度よりも急激に上昇している。そして、図8(c)に示すように、蓄電池31,61,91のSOC[%]は、均等に減少しており、SOCばらつきが小さい状態が維持されている。その結果、全ての蓄電池31,61,91の残容量を使い切りやすくなる。
【0057】
図9は、比較例の各蓄電池モジュール30,60,90の駆動状態、蓄電池温度、及び蓄電池SOC[%]の推移を示すタイムチャートである。比較例では、図9(a)に示すように、最初に第3蓄電池モジュール90は停止しており、蓄電池モジュール30,60が負荷21に放電している。これにより、図9(b)に示すように、実線で示す第1蓄電池31の温度及び一点鎖線で示す第2蓄電池61の温度が上昇し、破線で示す第3蓄電池91の温度は一定となる。このとき、図9(c)に示すように、蓄電池31,61のSOC[%]が減少し、第3蓄電池91のSOC[%]は変化しないため、SOCばらつきが拡大する。その後、図9(b)に示すように、蓄電池31,61の温度が第3蓄電池91の温度に等しくなると、図9(a)に示すように、第3蓄電池モジュール90が負荷21に放電を開始する。その結果、蓄電池31,61,91の温度は均等に上昇するものの、図9(c)に示すように、SOCばらつきが拡大したままとなる。
【0058】
図10は、通電動作及び昇温動作の他の実行例を示す模式図である。蓄電池モジュール30,60は昇温動作のみを実行し、第3蓄電池モジュール90は放電動作のみを実行している。例えば、第3蓄電池91のみが負荷21へ放電可能な温度であり、第3蓄電池91のみが放電を実行しており、蓄電池31,61の温度よりも第3蓄電池91の温度が規定値以上高くなった場合に、同図に示す動作が実行される。
【0059】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0060】
・変換回路40,70,100の1次側端子対41,42,71,72,101,102に蓄電池31,61,91の正極及び負極がそれぞれ接続され、変換回路40,70,100の2次側端子対47,48,77,78,107,108に蓄電池31,61,91が直列接続されている。こうした構成によれば、蓄電池31,61,91の出力電圧Vbと変換回路40,70,100の出力電圧Voとを足した電圧が、蓄電池モジュール30,60,90の出力電圧Vmとなる。このため、変換回路40,70,100の2次側端子対47,48,77,78,107,108に蓄電池31,61,91が並列接続された蓄電池モジュールと比較して、蓄電池モジュール30,60,90に出力電圧Vmが要求される際に変換回路40,70,100に要求される出力電圧Voを低下させることができる。したがって、変換回路40,70,100の定格電圧を低くすることができ、ひいては変換回路40,70,100の定格容量を小さくすることができため、変換回路40,70,100の小型化を図ることができる。
【0061】
・通電実行部16cは、複数の蓄電池モジュール30,60,90の変換回路40,70,100をそれぞれ制御することにより、蓄電池31,61,91と負荷21との通電動作を実行する。このため、負荷21との通電動作を実行した蓄電池を昇温することができる。また、昇温実行部16dは、複数の蓄電池モジュール30,60,90の変換回路40,70,100をそれぞれ制御することにより、複数の蓄電池31,61,91間で充放電をすることでそれらの蓄電池31,61,91を昇温する昇温動作を実行する。このため、蓄電池31,61,91と負荷21との通電動作による蓄電池31,61,91の昇温とは別に、昇温動作を実行した複数の蓄電池を昇温することができる。さらに、電力供給システム10は、通電実行部16cによる通電動作と昇温実行部16dによる昇温動作とを同時に実行する。したがって、蓄電池31,61,91と負荷21とで通電しつつ蓄電池31,61,91の温度を柔軟に調整することができる。特に、例えば蓄電池31,61,91から負荷21への放電中に、蓄電池31,61,91を均温化したり早急に昇温したりすることができる。
【0062】
・通電実行部16cは、BMU32,62,92により取得された複数の蓄電池31,61,91の状態に基づいて、通電動作における複数の蓄電池31,61,91の電力比率を調整する。こうした構成によれば、複数の蓄電池31,61,91の状態に基づいて通電動作における複数の蓄電池31,61,91の電力比率を調整するため、通電実行部16cによる通電動作を通じて蓄電池31,61,91の温度をさらに柔軟に調整することができる。
【0063】
・通電実行部16cは、BMU32,62,92により取得された複数の蓄電池31,61,91のSOC[%]の差を縮めるように、通電動作における複数の蓄電池31,61,91の電力比率を調整する。こうした構成によれば、通電実行部16cによる通電動作を通じて、蓄電池31,61,91と負荷21とで通電するだけでなく、複数の蓄電池31,61,91のSOC[%]の差を縮めることができる。
【0064】
・通電実行部16cは、BMU32,62,92により取得されたSOH[%]が高い蓄電池ほど、通電動作における電力比率を高くする。こうした構成によれば、通電実行部16cによる通電動作を通じて、蓄電池31,61,91と負荷21とで通電するだけでなく、複数の蓄電池31,61,91のSOH[%]の差を縮めることができる。すなわち、SOH[%]が高い蓄電池ほど通電動作における通電電力を高くすることにより、他の蓄電池のSOH[%]との差を縮めることができる。
【0065】
・昇温実行部16dは、状況取得部16eにより取得された複数の蓄電池31,61,91の状況に基づいて、創熱対象蓄電池を決定する。こうした構成によれば、複数の蓄電池31,61,91の状況に基づいて、創熱対象蓄電池を適切に決定することができる。
【0066】
・電力供給システム10に適用される制御プログラムをコンピュータに実行させることにより、上記の作用効果を奏することができる。
【0067】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0068】
・状況取得部16eは、複数の蓄電池31,61,91の状況として複数の蓄電池31,61,91の状態及び通電予定を取得し、昇温実行部16dは、状況取得部16eにより取得された複数の蓄電池31,61,91の状態及び通電予定に基づいて、創熱対象蓄電池を決定してもよい。こうした構成によれば、複数の蓄電池31,61,91の状態及び通電予定を考慮して、創熱対象蓄電池を適切に決定することができる。図11では、第1蓄電池モジュール30は昇温動作のみを実行し、第2蓄電池モジュール60は放電動作及び昇温動作を実行し、第3蓄電池モジュール90は放電動作のみを実行している。例えば、負荷21への放電動作の実行予定があり且つ昇温が必要な第1蓄電池31を創熱対象蓄電池に決定することにより、第1蓄電池31から負荷21への放電動作を速やかに開始することができる。図12では、蓄電池モジュール30,60は昇温動作のみを実行し、第3蓄電池モジュール90は放電動作及び昇温動作を実行している。例えば、負荷21への放電動作の実行予定があり且つ昇温が必要な蓄電池31,61を創熱対象蓄電池に決定することにより、蓄電池31,61から負荷21への放電動作を速やかに開始することができる。
【0069】
・昇温実行部16dは、昇温動作の実行前後で増加する蓄電池の通電制約Win/Woutとしての電力上限値(通電可能電力)の増加量が他の蓄電池での増加量よりも多い蓄電池を創熱対象蓄電池に決定してもよい。図13では、第1蓄電池モジュール30は停止し、蓄電池モジュール60,90は放電動作及び昇温動作を実行している。例えば、所定時間の昇温動作の実行前後で増加する蓄電池61,91の通電可能電力の増加量が第1蓄電池31での増加量よりも多い場合に、同図の示す動作が実行される。こうした構成によれば、昇温動作により蓄電池61,91の通電可能電力を効果的に増加させることができ、電力供給システム10の通電能力を効果的に向上させることができる。
【0070】
・状況取得部16eは、複数の蓄電池31,61,91の状況として複数の蓄電池31,61,91のSOH[%]を取得し、昇温実行部16dは、状況取得部16eにより取得されたSOH[%]が他の蓄電池よりも高い蓄電池を実行対象に決定してもよい。図14では、第1蓄電池モジュール30は昇温動作のみを実行し、第2蓄電池モジュール60は放電動作及び昇温動作を実行し、第3蓄電池モジュール90は停止している。例えば、第1蓄電池31のSOH[%]が第3蓄電池91のSOH[%]よりも高い場合に、同図の示す動作が実行される。こうした構成によれば、昇温実行部16dによる昇温動作を通じて、蓄電池31,61を昇温するだけでなく、複数の蓄電池31,61,91のSOH[%]の差を縮めることができる。すなわち、SOH[%]が他の蓄電池よりも高い蓄電池において積極的に昇温動作を実行することにより、他の蓄電池のSOH[%]との差を縮めることができる。
【0071】
・状況取得部16eは、複数の蓄電池31,61,91の状況として複数の蓄電池31,61,91の物理的配置を取得し、昇温実行部16dは、状況取得部16eにより取得された複数の蓄電池31,61,91の物理的配置に基づいて、他の蓄電池よりも外部から受熱しにくい蓄電池、又は他の蓄電池よりも外部へ放熱しやすい蓄電池を創熱対象蓄電池に決定してもよい。図15では、蓄電池モジュール30,60は昇温動作のみを実行し、第3蓄電池モジュール90は停止している。例えば、蓄電池31,61が第3蓄電池91よりも外部から受熱しにくい場合に、同図に示す動作が実行される。こうした構成によれば、第3蓄電池91よりも暖まりにくい、あるいは第3蓄電池91よりも冷えやすい蓄電池31,61を、予め昇温しておくことができる。又は、蓄電池31,61が第3蓄電池91よりも外部へ放熱しやすい場合に、同図に示す動作が実行される。こうした構成によれば、第3蓄電池91よりも冷えやすい蓄電池31,61を、予め昇温しておくことができる。
【0072】
・昇温実行部16dは、複数の蓄電池31,61,91の温度よりも外気温が低い場合に、創熱対象蓄電池の温度を規定温度以上に保つように昇温動作を実行してもよい。外気温は、車両が備える外気温センサにより検出することができる。規定温度は、例えば蓄電池31,61,91が標準的な通電能力を発揮することができる温度に設定されている。図16では、蓄電池モジュール30,60,90は昇温動作のみを実行している。例えば、蓄電池31,61,91の温度よりも外気温が低い場合に、同図に示す動作が実行される。こうした構成によれば、例えば蓄電池31,61,91と負荷21との通電動作の終了後に、複数の蓄電池31,61,91の温度よりも外気温が低い場合であっても、昇温動作により蓄電池31,61,91の温度を規定温度以上に保つことができる。したがって、電力供給システム10に対して通電要求があった時に、通電要求に応じた通電を迅速に実行することができる。
【0073】
・昇温実行部16dは、創熱対象蓄電池に決定した蓄電池のSOC[%]を、昇温動作を実行する前に負荷21又は他の蓄電池からの充電動作により他の蓄電池のSOC[%]よりも高くしておいてもよい。こうした構成によれば、昇温動作により創熱対象蓄電池のSOC[%]が低下した場合であっても、複数の蓄電池31,61,91のSOC[%]の差が大きくなることを抑制することができる。
【0074】
図17に示すように、電力供給システム210は、第3蓄電池モジュール90の第3変換回路100とリレー100aとの接続点N7と、第2蓄電池モジュール60の第2蓄電池61とリレー70bとの接続点N8とを接続する経路211を備えていてもよい。さらに、電力供給システム210は、第2蓄電池モジュール60の第2変換回路70とリレー70aとの接続点N9と、第1蓄電池モジュール30の第1蓄電池31とリレー40bとの接続点N10とを接続する経路213を備えていてもよい。経路211には、経路211を切断及び接続するリレー212(スイッチ)が設けられている。経路213には、経路213を切断及び接続するリレー214(スイッチ)が設けられている。リレー212,214は、ECU16により制御される。なお、経路211,213、及びリレー212,214により、切替回路が構成されている。すなわち、電力供給システム210は、3個以上の蓄電池モジュール(複数の蓄電池モジュール)を備え、切替回路は3個以上の蓄電池モジュールをバス11,12に対して直列接続と並列接続とに切り替えてもよい。そして、蓄電池モジュール30,60,90を切替回路により並列接続に切り替えた場合は、蓄電池モジュール30,60,90からバス11,12へ電力を供給することができる。このため、蓄電池モジュール30,60,90を冗長な電源として用いることができる。そして、ECU16は、蓄電池モジュール30,60,60を切替回路により並列接続に切り替えた状態において、電力供給システム10の上記制御及びその変更例と同様の制御を実行することができる。また、蓄電池モジュール30,60,90を切替回路により直列接続に切り替えた場合は、蓄電池モジュール30,60,90の出力電圧Vm1,Vm2,Vm3を足した電圧をバス11,12に供給することができる。このため、蓄電池モジュール30,60,90をより高圧な電源として用いることができる。
【0075】
・電力供給システム10,210が備える蓄電池モジュールの数は、2つでもよいし、4つ以上でもよい。
【0076】
・負荷21として、例えばインバータとMG(Motor Generator)との組み合わせ(インバータ付きモータユニット)が、バス11,12に2個以上並列に接続されていてもよい。その場合は、インバータ付きモータユニットの数が多いほど、バス11,12に接続されている蓄電池モジュールの数を多くしてもよい。
【0077】
図18に示すように、第1変換回路40(変換回路)において、図2のスイッチング素子54,55をトランス53と負極端子48との間に接続してもよい。こうした構成によっても、図2の第1変換回路40と同様の作用効果を奏することができる。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0078】
図19に示すように、第1変換回路40(変換回路)は、センタータップ式でないトランス153と、スイッチング素子143~146で構成される2次側のフルブリッジ回路とを備える周知の絶縁型DCDCコンバータであってもよい。スイッチング素子143~146は、例えばMOSFET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)である。スイッチング素子143~146は、ECU16により制御される。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0079】
・第1変換回路40(変換回路)として、共振型DCDCコンバータを採用することもできる。また、第1変換回路40(変換回路)として、バックコンバータ等の非絶縁型DCDCコンバータを採用することもできる。第2変換回路70及び第3変換回路100等(変換回路)においても同様である。
【0080】
図20に示すように、蓄電池モジュール30,60,90が構成されていてもよい。すなわち、第1蓄電池31の正極がバス11に接続されている。第1蓄電池31の正極に第1変換回路40の1次側の正極端子41が接続され、第1蓄電池31の負極に第1変換回路40の1次側の負極端子42が接続されている。また、第1蓄電池31の負極に第1変換回路40の2次側の正極端子47が接続されている。第1変換回路40の2次側の負極端子48がバス12に接続されている。この場合も、第1変換回路40の1次側端子対41,42に第1蓄電池31の正極及び負極がそれぞれ接続され、第1変換回路40の2次側端子対47,48に第1蓄電池31が直列接続されている。こうした構成によっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。なお、第2蓄電池モジュール60及び第3蓄電池モジュール90等(蓄電池モジュール)においても同様である。
【0081】
・ECU16のバス電圧設定部16a、制御部16b、通電実行部16c、昇温実行部16d、及び状況取得部16eの少なくとも1つの機能を、BMU32,62,92や、駆動回路35,65,95、電気自動車の動力を制御する動力制御ECU(Electronic Control Unit)、電気自動車を統括的に制御する車両制御ECU(上位ECU)により実現することもできる。また、電力供給システム10,210を例えば定置電源として用いる場合は、ECU16のバス電圧設定部16a、制御部16b、通電実行部16c、昇温実行部16d、及び状況取得部16eの機能を、定置電源を制御する定置電源制御ECU(制御装置)により実現することもできる。
【0082】
・本開示に記載のECU16及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能(命令)を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載のECU16及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載のECU16及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリーと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【0083】
なお、上記実施形態及び各変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実行することもできる。
【0084】
以下、上述した実施形態及び変更例から抽出される特徴的な構成を記載する。
[構成1]
蓄電池(31,61,91)と、前記蓄電池から1次側端子対(41,42,71,72,101,102)に入力された電力を変換して2次側端子対(47,48,77,78,107,108)から出力する変換回路(40,70,100)とを備える複数の蓄電池モジュール(30,60,90)と、負荷(21)とが、電力供給バス(11,12)に並列に接続されている電力供給システム(10,210)であって、
前記変換回路の前記1次側端子対に前記蓄電池の正極及び負極がそれぞれ接続され、前記変換回路の前記2次側端子対に前記蓄電池が直列接続されており、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、前記蓄電池と前記負荷との通電動作を実行する通電実行部(16c)と、
複数の前記蓄電池モジュールの前記変換回路をそれぞれ制御することにより、複数の前記蓄電池間で充放電をすることでそれらの蓄電池を昇温する昇温動作を実行する昇温実行部(16d)と、を備え、
前記通電実行部による前記通電動作と前記昇温実行部による前記昇温動作とを同時に実行する、電力供給システム。
[構成2]
複数の前記蓄電池の状態を取得する状態取得部(32,62,92)を備え、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態に基づいて、前記通電動作における複数の前記蓄電池の電力比率を調整する、構成1に記載の電力供給システム。
[構成3]
前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の充電率を取得し、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記充電率の差を縮めるように、前記通電動作における複数の前記蓄電池の前記電力比率を調整する、構成2に記載の電力供給システム。
[構成4]
前記状態取得部は、複数の前記蓄電池の前記状態として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、
前記通電実行部は、前記状態取得部により取得された前記健全性が高い前記蓄電池ほど、前記通電動作における前記電力比率を高くする、構成2又は3に記載の電力供給システム。
[構成5]
複数の前記蓄電池の状態、物理的配置、及び通電予定の少なくとも1つである状況を取得する状況取得部(16e)を備え、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状況に基づいて、前記昇温動作の実行対象とする前記蓄電池を決定する、構成1~4のいずれか1つに記載の電力供給システム。
[構成6]
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の健全性を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された前記健全性が他の前記蓄電池よりも高い前記蓄電池を前記実行対象に決定する、構成5に記載の電力供給システム。
[構成7]
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の物理的配置を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記物理的配置に基づいて、他の前記蓄電池よりも外部から受熱しにくい前記蓄電池、又は他の前記蓄電池よりも外部へ放熱しやすい前記蓄電池を前記実行対象に決定する、構成5に記載の電力供給システム。
[構成8]
前記昇温実行部は、複数の前記蓄電池の温度よりも外気温が低い場合に、前記実行対象に決定した前記蓄電池の温度を規定温度以上に保つように前記昇温動作を実行する、構成7に記載の電力供給システム。
[構成9]
前記状況取得部は、複数の前記蓄電池の前記状況として複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定を取得し、
前記昇温実行部は、前記状況取得部により取得された複数の前記蓄電池の前記状態及び前記通電予定に基づいて、前記昇温動作の前記実行対象とする前記蓄電池を決定する、構成5に記載の電力供給システム。
[構成10]
前記昇温実行部は、前記昇温動作の実行前後で増加する前記蓄電池の通電可能電力の増加量が他の蓄電池よりも多い前記蓄電池を前記実行対象に決定する、構成9に記載の電力供給システム。
[構成11]
前記昇温実行部は、前記実行対象に決定した前記蓄電池の充電率を、前記昇温動作を実行する前に前記負荷又は他の前記蓄電池からの充電動作により他の前記蓄電池の充電率よりも高くしておく、構成5~10のいずれか1つに記載の電力供給システム。
【符号の説明】
【0085】
10…電力供給システム、11…バス、12…バス、16b…制御部、16c…通電実行部、16d…昇温実行部、21…負荷、30…第1蓄電池モジュール、31…第1蓄電池、40…第1変換回路、41…正極端子(1次側端子対)、42…負極端子(1次側端子対)、47…正極端子(2次側端子対)、48…負極端子(2次側端子対)、60…第2蓄電池モジュール、61…第2蓄電池、70…第2変換回路、71…正極端子(1次側端子対)、72…負極端子(1次側端子対)、77…正極端子(2次側端子対)、78…負極端子(2次側端子対)、90…第3蓄電池モジュール、91…第3蓄電池、100…第3変換回路、101…正極端子(1次側端子対)、102…負極端子(1次側端子対)、107…正極端子(2次側端子対)、108…負極端子(2次側端子対)、210…電力供給システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20