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特開2025-12917β-セクレターゼ阻害剤及び認知症の予防又は治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012917
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】β-セクレターゼ阻害剤及び認知症の予防又は治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20250117BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
   A61K 36/9066 20060101ALI20250117BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K31/12
A61P43/00 111
A61K36/9066
A61P25/28
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116111
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】306019030
【氏名又は名称】ハウスウェルネスフーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐治 良介
(72)【発明者】
【氏名】内尾 隆正
(72)【発明者】
【氏名】奥田 知夏
(72)【発明者】
【氏名】室山 幸太郎
【テーマコード(参考)】
4C088
4C206
【Fターム(参考)】
4C088AB81
4C088BA08
4C088BA09
4C088BA32
4C088CA03
4C088CA04
4C088CA05
4C088CA10
4C088ZA15
4C206AA01
4C206AA02
4C206CB13
4C206CB14
4C206KA01
4C206KA17
4C206KA18
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA15
4C206ZC20
(57)【要約】
【課題】β-セクレターゼの活性を抑制するための新たな手段及び方法を提供すること。
【解決手段】ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤。
【請求項2】
有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる、請求項1に記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項3】
ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物。
【請求項4】
有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ウコン抽出物を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物。
【請求項6】
有効成分としてウコン抽出物のみからなる、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ウコン抽出物が、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ウコン抽出物が、水で抽出して得られたウコン抽出物と超臨界二酸化炭素で抽出して得られたウコン抽出物との混合物を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記ウコン抽出物が、少なくとも、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する、請求項5に記載の組成物。
【請求項10】
前記認知症が、レビー小体型認知症又は血管性認知症である、請求項3又は5に記載の組成物。
【請求項11】
前記認知症が、アルツハイマー型認知症ではない、請求項3又は5に記載の組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-セクレターゼ阻害剤に関する。また本発明は、認知症の予防又は治療用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アミロイドβは、アミロイド前駆タンパク質(APP)をβ-セクレターゼ酵素で切断することで産生される。アミロイドβの脳内蓄積は脳機能の悪化を導くことが示されている。脳血管でアミロイド変性が蓄積し、血管に異常が生じることを脳アミロイド血管症と呼ぶ。脳アミロイド血管症は、高血圧症と並んで脳出血により生じる認知機能低下(血管性認知症)の一因とされている。
【0003】
認知症には、主にアルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、及び血管性認知症がある。脳機能の悪化の代表的な疾患はアルツハイマー型認知症で、発症と進行においても脳内でアミロイドβが蓄積することがある。但し、アルツハイマー病発症にアミロイドβの脳内蓄積が必ずしも必要なわけではない。このようにアミロイド血管症はアルツハイマー病理を合併する頻度が高率となるが、アルツハイマー病理を伴わずにアミロイド血管症のみで認知機能が低下する報告もある。レビー小体型認知症は、神経細胞で重要な役割を果たすα-シヌクレインが凝集して脳内に蓄積(レビー小体)することで発症する(Bassil, et al., Neuron. 105(2):260-275, 2020)。また脳内のアミロイドβの蓄積はレビー小体型認知症の一因である可能性が示唆されている(Shimada, et al., Mov Disord. 28(2):169-75, 2013)。さらに脳内にアミロイドβが蓄積することで、血管性認知症の一因となる脳アミロイド血管症を引き起こす可能性もある。
【0004】
一方、従来より、ウコン及びその抽出物は種々の生理活性を有することが知られている。例えば、ウコン抽出物又はその成分が、アルツハイマー又はアルツハイマー型認知症の改善に用いられることが報告されている(特許文献1及び2)。また、ウコンエキス(ヘキサン抽出、酢酸エチル抽出)中のα-ターメロン、β-ターメロン、ar-ターメロンが無細胞系でβ-セクレターゼ活性を抑制したことが報告されている(特許文献3)。ウコンに含まれる一成分であるクルクミンが、APOEの発現増大、アミロイドβのクリアランス促進、APP合成阻害、脳内炎症抑制作用を示し、アルツハイマー予防及び治療を提供することも報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6998212号公報
【特許文献2】特許第6814240号公報
【特許文献3】特許第6998212号公報
【特許文献4】特許第6814240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アミロイドβの産生に関わるβ-セクレターゼの活性を抑制することにより、アミロイドβの脳内蓄積が抑制され、脳機能を改善し、又は脳機能の低下を予防することができると考えられる。そのため、本発明は、β-セクレターゼの活性を抑制するための新たな手段及び方法を提供すること、さらにはアミロイドβの脳内蓄積を抑制することによって認知症の予防又は治療のための手段及び方法を提供することを目的とする。なお、従来、ウコン抽出物に含まれる成分であるターメロノールA、ターメロノールB、ビサクロンがβ-セクレターゼの活性を抑制しアミロイドβの脳内蓄積を低下する報告はない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、ウコン抽出物の作用について鋭意検討を行う過程で、ウコン抽出物とそれに含まれる成分であるターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンが、それぞれ、β-セクレターゼの活性を抑制することを見出し、ウコン抽出物又はターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種によりアミロイドβの脳内蓄積を抑制し、結果的にアミロイドβの脳内蓄積に起因する認知症を予防又は治療することができるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明は、例えば以下を包含する:
[1]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤。
[2]有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる、[1]に記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
[3]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物。
[4]有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる、[3]に記載の組成物。
[5]ウコン抽出物を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物。
[6]有効成分としてウコン抽出物のみからなる、[5]に記載の組成物。
[7]前記ウコン抽出物が、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物を含む、[5]に記載の組成物。
[8]前記ウコン抽出物が、水で抽出して得られたウコン抽出物と超臨界二酸化炭素で抽出して得られたウコン抽出物との混合物を含む、[5]に記載の組成物。
[9]前記ウコン抽出物が、少なくとも、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する、[5]に記載の組成物。
[10]前記認知症が、レビー小体型認知症又は血管性認知症である、[3]又は[5]に記載の組成物。
[11]前記認知症が、アルツハイマー型認知症ではない、[3]又は[5]に記載の組成物。
【0009】
[12]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の、β-セクレターゼ阻害剤の製造のための使用。
[13]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の、認知症の予防又は治療用組成物の製造のための使用。
[14]ウコン抽出物の、認知症の予防又は治療用組成物の製造のための使用。
【0010】
[15]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、β-セクレターゼ活性の抑制を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象においてβ-セクレターゼ活性を抑制すること
を含む、対象においてβ-セクレターゼ活性を抑制する方法。
[16]ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、認知症の予防又は治療を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において認知症を予防又は治療すること
を含む、対象において認知症を予防又は治療する方法。
[17]ウコン抽出物を、認知症の予防又は治療を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において認知症を予防又は治療すること
を含む、対象において認知症を予防又は治療する方法。
【0011】
[18]β-セクレターゼ活性の抑制に使用するための、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の化合物。
[19]認知症の予防又は治療に使用するための、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の化合物。
[20]認知症の予防又は治療に使用するための、ウコン抽出物。
【発明の効果】
【0012】
本発明の1以上の実施形態によれば、β-セクレターゼ阻害剤が提供される。
本発明の別の1以上の実施形態によれば、認知症の予防又は治療用組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ウコン抽出液がマウスミクログリア細胞BV-2のβ-セクレターゼ活性を抑制することを示すグラフである。
図2】ターメロノールA、ターメロノールB又はビサクロンがマウスミクログリア細胞BV-2のβ-セクレターゼ活性を抑制することを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、ウコン抽出物、又はウコン抽出物の成分であるターメロノールA、ターメロノールB及び/若しくはビサクロンの投与又は摂取によって、認知症の原因物質であるアミロイドβタンパク質を生成する酵素β-セクレターゼの活性を抑制しアミロイドβの脳内蓄積を抑制するという知見に基づいている。ヒト試験で脳アミロイド血管症だけでは認知機能の低下が引き起こされなかったが、脳実質内のAβ蓄積が重度の者と軽度の者との間に認知機能低下に差があったことが報告されていることから(Malek-Ahmadi, et al., J Alzheimers Dis. 67(1):411-422, 2019)、脳実質へのAβの蓄積を抑制することで認知症、特に血管性認知症を予防又は治療できる可能性がある。
【0015】
したがって、一態様において、本発明は、ウコン抽出物、又はターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤を提供する。また別の態様において、本発明は、ウコン抽出物、又はターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物を提供する。
【0016】
<ウコン抽出物を含む組成物>
本発明に係る組成物は、ウコン抽出物を含有する。本発明においてウコン抽出物とは、ショウガ科ウコン属の植物に由来する植物原料の抽出溶媒による抽出物(ウコンエキス)をいう。ウコン抽出物は、抽出溶媒による抽出により得られた溶媒抽出物に限らず、溶媒抽出物を更に、カラムクロマトグラフィ等で分画精製したものをも包含する。本発明で用いるウコン抽出物は、抽出操作(分画精製を行う場合は分画精製操作も含む)の完了した抽出液、抽出液から溶媒を部分的に除去した濃縮物、或いは、抽出液から溶媒を除去した乾燥物の形態であることができる。抽出物からの溶媒の除去は、加熱及び/又は減圧等により溶媒を揮発することにより行うことができる。これらの加熱、減圧の方法は特に限定されず、例えば従来公知の方法を使用することができる。
【0017】
前記植物原料としては、ショウガ科ウコン属の植物であるCurcuma longa(ウコン)、Curcuma aromatica、Curcuma zedoaria、Curcuma phaeocaulis、Curcuma kwangsiensis、Curcuma wenyujin、及び/又はCurcuma xanthorrhizaの根茎等が挙げられ、特に、Curcuma longaの根茎等が好適である。根茎は土中から採取したものを使用してよく、根茎の適当な部位を原型のまま、あるいは適当な寸法又は形状にカットしたもの、あるいは粉砕物の形態にしたものを使用することができる。これらの植物原料は適宜乾燥されたものであってよい。
【0018】
抽出溶媒としては、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒としては、水、親水性有機溶媒、水と親水性有機溶媒の混合溶媒のいずれであってもよい。親水性有機溶媒は複数種の親水性有機溶媒の混合溶媒であってもよい。「水」とは熱水も包含する。熱水としては例えば95℃以上の熱水が使用できる。親水性有機溶媒としては少なくとも1種のアルコール(複数種のアルコールの混合溶媒であってもよい)が挙げられ、アルコールとしては、特に限定されないが、エタノールが好ましい。抽出溶媒としてアルコールと水との混合溶媒を用いる場合の混合比は特に限定されないが、例えば重量比で10:90~90:10の範囲が好ましく、20:80~50:50の範囲がより好ましい。
また、抽出溶媒として、超臨界二酸化炭素を用いることもできる。
【0019】
植物原料からのウコン抽出物の抽出方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で慣用的に使用される抽出方法を採用することができる。
【0020】
本発明では、ウコン抽出物は、1種のウコン抽出物を含むものであってもよいし、抽出溶媒及び/又は抽出方法の異なる2種以上のウコン抽出物を含むものであってもよい。一実施形態では、ウコン抽出物は、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種を抽出溶媒として得られたウコン抽出物と、超臨界二酸化炭素を用いて得られたウコン抽出物との混合物を含み、例えば、水で抽出して得られたウコン抽出物と超臨界二酸化炭素で抽出して得られたウコン抽出物との混合物を含む。混合物におけるそれぞれの抽出物の比率は、特に限定されるものではなく、例えば、1:0.01~1:1の重量比などである。
【0021】
好ましい実施形態では、ウコン抽出物は、水、例えば熱水による抽出物、及び超臨界二酸化炭素による抽出物の少なくとも1つを含む。
【0022】
一実施形態において、本発明において使用するウコン抽出物は、少なくとも、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する。
【0023】
<ターメロノールA、ターメロノールB、及びビサクロンの少なくとも1種を含む剤又は組成物>
本発明に係る剤又は組成物は、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有する。
【0024】
ターメロノールA及びターメロノールBは、それぞれ、以下の平面構造を有する化合物である。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
本発明においてターメロノールA及びターメロノールBはそれぞれ上記の平面構造を有していればよく、いずれの光学異性体であってもよく、複数の光学異性体の混合物であってもよい。
【0028】
ウコン抽出物から分離される天然物において、ターメロノールA及びターメロノールBは、2-メチル-2-ヘプテン-4-オンの部分構造における6位炭素の立体配置がS体であることが公知である。しかし、本発明においてターメロノールA及びターメロノールBは上記の平面構造を有していればよく、前記立体配置がS体であってもよいし、R体であってもよいし、S体とR体との混合物であってもよい。
【0029】
本発明においてビサクロンとは、以下の平面構造を有する化合物である。ビサクロンは平面構造式中*印で示した位置に不斉炭素を有し、複数の光学異性体を含み得るが、本発明においてビサクロンはいずれの光学異性体であってもよく、2種以上の光学異性体の混合物であってもよい。
【0030】
【化3】
【0031】
本発明で用いるターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種(以下「活性化合物」という場合がある)は植物に由来するものであってもよいし、人為的に合成されたものであってもよい。例えば光学活性の(+)-ターメロノールAは、Biosci Biotechnol Biochem. 1993; 57(7):1137-40に記載の方法により合成することできる。
【0032】
本発明で用いる活性化合物はより好ましくは植物原料に由来するものであり、より好ましくは、ショウガ科ウコン属植物に由来するものである。ショウガ科ウコン属植物及びその部位の具体例は上記の通りである。ショウガ科ウコン属の植物の根茎等の部位から活性化合物を得ることができる。
【0033】
活性化合物は、それを含む植物原料から抽出することができる。抽出方法は既述の通りである。活性化合物は、植物抽出物、特に、水及び親水性有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1種の抽出溶媒によるウコン抽出物の形態であってよい。
【0034】
また、活性化合物を含む植物抽出物から、活性化合物を高純度化した画分を、本発明に使用してもよく、本発明の組成物に配合してもよい。例えば、活性化合物を含む植物抽出物を酢酸エチル/水の液液分配に供し、酢酸エチル画分に活性化合物を高純度化することができる。また、活性化合物を含む植物抽出物又はその画分を、クロマトグラフィによる精製処理に供して、高純度化した活性化合物を得ることもできる。クロマトグラフィとしては、逆相カラムクロマトグラフィ、順相薄層クロマトグラフィ等を使用することができる。
【0035】
活性化合物を含む植物抽出物又はその画分は、常法により、乾燥、粉末化、顆粒化、溶液化等の加工を施したものであってもよい。
【0036】
<本発明のβ-セクレターゼ阻害剤>
本発明は、一態様において、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤に関する。また別の態様において、本発明は、ウコン抽出物を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤に関する。本態様に係る本発明の剤を、ヒト等の対象に投与することで、前記対象においてβ-セクレターゼの活性又は作用を抑制又は阻害することができる。ここで、前記の各有効成分は、β-セクレターゼ活性の抑制又は阻害のための有効量で投与される。投与経路としては経口投与、経鼻投与、脳内投与又は髄腔内投与が好ましく、経口又は経鼻投与がより好ましく、経口投与が特に好ましい。本発明の剤は、脳内で、β-セクレターゼの活性を抑制することにより、アミロイド前駆タンパク質(APP)の産生を抑制し、結果としてアミロイドβの脳内蓄積を抑制することができる。
【0037】
β-セクレターゼ活性は、当技術分野で公知の方法により測定することができ、活性測定に使用可能なキットも市販されている。β-セクレターゼ活性の抑制は、本発明の阻害剤の非存在下での活性と比較して有意差があるように活性が抑制されていることを指し、例えば、本発明の阻害剤の非存在下での活性と比較して95%以下、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下に活性が抑制されていることを指す。
【0038】
<本発明の組成物>
本発明は、一態様において、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物に関する。また別の態様において、本発明は、ウコン抽出物を有効成分として含有する、認知症の予防又は治療用組成物に関する。これらの態様に係る本発明の組成物を、ヒト等の対象に投与することで、前記対象において認知症を予防又は治療することができる。ここで、前記の各有効成分は、認知症の予防又は治療のための有効量で投与される。投与経路としては経口投与、経鼻投与、脳内投与又は髄腔内投与が好ましく、経口又は経鼻投与がより好ましく、経口投与が特に好ましい。本発明の組成物は、脳内で、β-セクレターゼの活性を抑制することにより、アミロイド前駆タンパク質(APP)の産生を抑制し、結果としてアミロイドβの脳内蓄積を抑制することで、認知症を予防又は治療することができる。
【0039】
認知症とは、様々な原因によって記憶や思考などの認知機能が低下し、日常生活や社会生活に支障をきたす障害として知られ、本発明では、アミロイドβの脳内蓄積を抑制することによって予防又は治療することが可能な認知症を指す。そのような認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症などが含まれる。一実施形態において、対象となる認知症は、レビー小体型認知症又は血管性認知症である。また一実施形態において、対象となる認知症は、アルツハイマー型認知症ではない。
【0040】
認知症の予防又は治療とは、認知症を予防する若しくはその発症を遅延させること、認知症を治療する若しくはその進行を遅延させること、認知症の少なくとも1つの症状(例えば、記憶障害、失語、見当識障害、理解力・判断力の低下など)を改善することなどを含む。認知症の診断及びその程度の診断は、当技術分野で公知であり、神経心理学検査、脳画像検査(CT、MRI等)などによって行うことができる。
【0041】
本発明の剤又は組成物は、医薬品、飲食品、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等の各形態の組成物であってよく、医薬品又は飲食品であることがより好ましい。飲食品は、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補給のためのサプリメント等の形態のものも包含する。本発明の剤又は組成物は、経口投与、経鼻投与、脳内投与又は髄腔内投与により摂取又は投与される組成物の形態であり、好ましくは、経口又は経鼻により摂取又は投与される組成物の形態であり、より好ましくは、経口により摂取又は投与される組成物の形態である。
【0042】
有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含む実施形態に係る本発明の剤又は組成物でのターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の含有量は、本発明の剤又は組成物の1日の摂取又は投与量当たり、好ましくはヒト1人、特に成人1人に対する1日の摂取又は投与量当たり、ターメロノールAとして17μg以上、好ましくは28μg以上、より好ましくは43μg以上、更に好ましくは57μg以上、最も好ましくは77μg以上であり、及び/又はターメロノールBとして5μg以上、好ましくは8μg以上、より好ましくは12μg以上、更に好ましくは16μg以上、最も好ましくは22μg以上であり、及び/又はビサクロンとして80μg以上、好ましくは133μg以上、より好ましくは200μg以上、更に好ましくは267μg以上、最も好ましくは360μg以上であることが、β-セクレターゼ活性を阻害する作用、及び、認知症の予防又は治療作用を効果的に得る点で好ましい。ここで「1日の摂取又は投与量」とは、経口、経鼻、脳内又は髄腔内投与による、好ましくは経口又は経鼻による、より好ましくは経口による、摂取又は投与の場合に、典型的には、本発明の剤又は組成物の量として0.1g~500gである。本発明の剤又は組成物は、継続的に摂取又は投与してもよいし、必要時に摂取又は投与して用いてもよい。
【0043】
有効成分として前記ウコン抽出物を含む実施形態に係る本発明の組成物での前記ウコン抽出物の含有量は、本発明の組成物の1日の摂取又は投与量当たり、好ましくはヒト1人、特に成人1人に対する1日の摂取又は投与量当たり、前記ウコン抽出物を、ターメロノールA及びターメロノールBの合計量として100μg以上となるように含有すること、及び/又はターメロノールAとして17μg以上、好ましくは28μg以上、より好ましくは43μg以上、更に好ましくは57μg以上、最も好ましくは80μg以上となるように含有すること、及び/又はターメロノールBとして5μg以上、好ましくは8μg以上、より好ましくは12μg以上、更に好ましくは16μg以上、最も好ましくは20μg以上となるように含有すること、及び/又はビサクロンとして80μg以上、好ましくは133μg以上、より好ましくは200μg以上、更に好ましくは267μg以上、最も好ましくは360μg以上となるように含有することが、β-セクレターゼを阻害する作用、及び、認知症の予防又は治療作用を効果的に得る点で好ましい。ここで「1日の摂取又は投与量」とは、経口、経鼻、脳内又は髄腔内投与による、好ましくは経口又は経鼻による、より好ましくは経口による、摂取又は投与の場合に、典型的には、本発明の組成物の量として0.1g~500gである。本発明の組成物は、継続的に摂取又は投与してもよいし、必要時に摂取又は投与して用いてもよい。
【0044】
有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含む実施形態に係る本発明の剤又は組成物は、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の化合物自体であってもよいし、前記化合物と、少なくとも1種の他の成分とを含むものであってもよい。本発明の剤又は組成物が、前記化合物と、少なくとも1種の他の成分とを含む場合、前記化合物と、少なくとも1種の他の成分とを混合した剤又は組成物であってもよいし、前記化合物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した剤又は組成物であってもよいし、前記化合物と、少なくとも1種の他の成分との製剤化した剤又は組成物を、更に他の成分と混合した剤又は組成物であってもよい。一実施形態では、本発明の剤又は組成物は、有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる剤又は組成物である。「有効成分としてターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる」とは、目的の活性(β-セクレターゼを阻害する作用、又は認知症の予防若しくは治療作用)を示す有効成分がターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみであり、他に有効成分を含まないことを意味する。ただし、有効成分以外の構成要素、例えば担体、賦形剤などが本発明の剤又は組成物に含まれてもよい。
【0045】
有効成分として前記ウコン抽出物を含む実施形態に係る本発明の組成物は、前記ウコン抽出物自体であってもよいし、前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む組成物であってもよい。本発明の組成物が、前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを含む場合、前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを混合した組成物であってもよいし、前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した組成物であってもよいし、前記ウコン抽出物と、少なくとも1種の他の成分との製剤化した組成物を、更に他の成分と混合した組成物であってもよい。一実施形態では、本発明の組成物は、有効成分としてウコン抽出物のみからなる組成物である。「有効成分としてウコン抽出物のみからなる」とは、目的の活性(β-セクレターゼを阻害する作用、又は認知症の予防若しくは治療作用)を示す有効成分がウコン抽出物のみであり、他に有効成分を含まないことを意味する。ただし、有効成分以外の構成要素、例えば担体、賦形剤などが本発明の組成物に含まれてもよい。
【0046】
本発明の剤又は組成物の形状は、特に限定されず、例えば、液体状、流動状、ゲル状、半固形状、又は固形状などの何れの形状であってもよい。
【0047】
本発明の剤又は組成物が含み得る、少なくとも1種の他の成分としては、特に限定されないが、好ましくは、医薬品、飲食品、栄養補助食品、サプリメント、飼料、食品添加剤、飼料添加剤等の最終的な形態において許容される成分であって、経口摂取可能な成分が例示できる。
【0048】
このような他の成分としては例えば、甘味料、酸味料、ビタミン類、ミネラル類、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、水等が挙げられる。また、必要により、色素、香料、保存料、防腐剤、防かび剤、更なる生理活性物質等を添加してもよい。
【0049】
甘味料としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、麦芽糖、パラチノース、トレハロース、キシロース等の単糖や二糖、異性化糖(ブドウ糖果糖液糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖混合異性化糖等)、糖アルコール(エリスリトール、キシリトール、ラクチトール、パラチニット、ソルビトール、還元水飴等)、はちみつ、高甘味度甘味料(スクラロース、アセスルファムカリウム、ソーマチン、ステビア、アスパルテーム等)等が挙げられる。
【0050】
酸味料としては、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、酒石酸、乳酸、リン酸、又はこれらの塩等があり、これらのうちの1種又は2種以上を利用することができる。
【0051】
ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンE、ナイアシン、イノシトール等が挙げられる。
【0052】
ミネラル類としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄等が挙げられる。
【0053】
増粘剤としては、カラギーナン、ジェランガム、キサンタンガム、アラビアガム、タマリンドガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、寒天、ゼラチン、ペクチン、大豆多糖類、カルボキシメチルセルロース(CMC)等が挙げられる。
【0054】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、レシチン、植物性ステロール、サポニン等が挙げられる。
【0055】
酸化防止剤としては、ビタミンC、トコフェロール(ビタミンE)、酵素処理ルチン等が挙げられる。
前記他の成分は、それぞれ当業者が飲食品、医薬品等の組成物に通常採用する範囲内の量で適宜配合することができる。
【0056】
本発明の剤又は組成物と、少なくとも1種の他の成分とを適当な手段で製剤化した剤又は組成物の形態は、粉末、顆粒、カプセル剤、錠剤(糖衣錠等のコーティング錠又は多層錠、口中崩壊剤、チュアブル錠等を含む)等の固形組成物の形態であってもよいし、溶液剤等の液体組成物の形態であってもよい。
【0057】
また、本発明の剤又は組成物は、安全性が比較的高く長期間の継続的摂取が容易である。そのため、本発明の剤又は組成物は、飲食品、栄養補助剤、サプリメント及び飼料において好ましく使用することができる。本発明の剤又は組成物は、上述したような機能又は活性を有するうえ、従来より摂取されているウコン抽出物、及び/又はそれに含まれている成分であるターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含むものであり、安全性が比較的高い。さらに、種々の飲食品に添加して継続的に摂取することができ、目的の機能又は作用の発揮が期待される。
【0058】
本発明の剤又は組成物は、継続的に摂取される剤又は組成物であることが好ましく、具体的には、1日1回又は2回以上の頻度で、好ましくは4週間以上、より好ましくは8週間以上、最も好ましくは12週間以上にわたり継続して摂取される剤又は組成物である。
【0059】
<β-セクレターゼ活性を抑制する方法>
本発明の更なる一態様は、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、β-セクレターゼ活性の抑制を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象においてβ-セクレターゼ活性を抑制すること
を含む、β-セクレターゼ活性を抑制する方法に関する。
【0060】
本態様に係る方法で用いる前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種は、本発明の剤の上述した形態であることができる。
【0061】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0062】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口投与、経鼻投与、脳内投与又は髄腔内投与が好ましく、経口又は経鼻投与がより好ましく、経口投与が特に好ましい。
【0063】
本態様に係る方法において、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、対象に投与する投与量は、β-セクレターゼ活性の抑制のための有効量であれば良く特に限定されない。例えば、対象が成人である場合、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、成人1人に対し1日あたり、ターメロノールA及びターメロノールBの合計量として100μg以上となるように投与すること、及び/又はターメロノールAとして17μg以上、好ましくは28μg以上、より好ましくは43μg以上、更に好ましくは57μg以上、最も好ましくは80μg以上となるように投与すること、及び/又はターメロノールBとして5μg以上、好ましくは8μg以上、より好ましくは12μg以上、更に好ましくは16μg以上、最も好ましくは20μg以上となるように投与すること、及び/又はビサクロンとして80μg以上、好ましくは133μg以上、より好ましくは200μg以上、更に好ましくは267μg以上、最も好ましくは360μg以上となるように投与することが好ましい。
【0064】
本発明の剤の投与又は摂取量は、投与対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、投与目的(β-セクレターゼ活性の抑制等)などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。剤におけるウコン抽出物又はターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。ウコン抽出物及びそれに含まれる化合物は比較的安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、目的とする効果の種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。
【0065】
<認知症を予防又は治療する方法>
本発明の更なる一態様は、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、認知症の予防又は治療を必要とする対象に投与すること、及び
前記対象において認知症を予防又は治療すること
を含む、認知症を予防又は治療する方法に関する。
【0066】
本態様に係る方法で用いる前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種は、本発明の組成物の上述した形態であることができる。
【0067】
本態様に係る方法での対象としては、典型的にはヒトであるが、ヒト以外の哺乳動物であってもよい。
【0068】
本態様に係る方法において、投与経路としては経口投与、経鼻投与、脳内投与又は髄腔内投与が好ましく、経口又は経鼻投与がより好ましく、経口投与が特に好ましい。
【0069】
本態様に係る方法において、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、対象に投与する投与量は、認知症の予防又は治療のための有効量であれば良く特に限定されない。例えば、対象が成人である場合、前記ウコン抽出物、或いは、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を、成人1人に対し1日あたり、ターメロノールA及びターメロノールBの合計量として100μg以上となるように投与すること、及び/又はターメロノールAとして17μg以上、好ましくは28μg以上、より好ましくは43μg以上、更に好ましくは57μg以上、最も好ましくは80μg以上となるように投与すること、及び/又はターメロノールBとして5μg以上、好ましくは8μg以上、より好ましくは12μg以上、更に好ましくは16μg以上、最も好ましくは20μg以上となるように投与すること、及び/又はビサクロンとして80μg以上、好ましくは133μg以上、より好ましくは200μg以上、更に好ましくは267μg以上、最も好ましくは360μg以上となるように投与することが好ましい。
【0070】
本発明の組成物の投与又は摂取量は、投与対象の年齢及び体重、投与・摂取経路、投与・摂取回数、投与目的(認知症の予防若しくは治療等)などにより異なり、目的とする作用を達成できるように当業者の裁量によって広範囲に変更することができる。組成物におけるウコン抽出物又はターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種の割合は特に限定されず、製造の容易性や好ましい一日投与量等に合わせて適宜調節すればよい。ウコン抽出物及びそれに含まれる化合物は比較的安全性の高いものであるため、摂取量をさらに増やすこともできる。1日当たりの摂取量は、1回で摂取してもよいが、数回に分けて摂取してもよい。また、その投与又は摂取の頻度も、特に限定されず、投与・摂取経路、対象の年齢及び体重、目的とする効果の種々の条件に応じて適宜選択することが可能である。
【実施例0071】
[参考例]
(1)ウコン抽出物の作製方法
ウコン抽出物は、水抽出法と超臨界ガス抽出法で調製した。水抽出法では、ウコンの根茎部分を水(熱水も含む)にて抽出し得られた抽出液を減圧熱乾燥して水分を除去することにより調製した。超臨界ガス抽出法では、ウコンの根茎部分に超臨界状態の二酸化炭素を接触させ、抽出した成分を植物油と混合し調製した。以下の実施例ではそれぞれの抽出法で調製したウコン抽出物を8:1の重量比で混合して用いた。
【0072】
(2)ウコン抽出物中のターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの量
ウコン抽出物中のターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの量は、以下のようにHPLCを用いて測定した。ウコン抽出物1g当たりのターメロノールAの量は724μg、ターメロノールBの量は578μg、ビサクロンの量は2182μgであることを確認した。
【0073】
ターメロノールA分析
ウコン抽出物を秤量し、水と酢酸エチルを加え、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した。得られた液を測定試料として、HPLCに供した。HPLCは以下の条件で行なった。
カラム:L-column ODS 5μm(4.6 mm φ×250 mm)
移動相:48%アセトニトリル(20分)⇒100%アセトニトリル(5分)⇒48%アセトニトリル(10分)
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:238nm
【0074】
ターメロノールBの分析
ウコン抽出物を秤量し、水と酢酸エチルを加え、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した。得られた液を測定試料として、HPLCに供した。HPLCは以下の条件で行なった。
カラム:COSMOSIL 5PYE Packed Column(4.6 mm φ×150 mm)
移動相:57%メタノール(30分)⇒100%メタノール(5分)⇒57%メタノール(15分)
流量:1.0mL/分
カラム温度:40℃
検出波長:238nm
【0075】
ビサクロンの分析
ウコン抽出物を秤量し、水と酢酸エチルを加え、遠心分離して得られた上澄み液から酢酸エチルを減圧留去後、アセトニトリルに溶解した。得られた液を測定試料として、HPLCに供した。HPLCは以下の条件で行なった。
カラム:Wakopak Navi C18-5(4.6 mm φ×250 mm)
移動相:30%アセトニトリル(20分)⇒20%アセトニトリル(5分)⇒80%アセトニトリル(10分)
流量:0.7mL/分
カラム温度:50℃
検出波長:240nm
【0076】
(3)ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの入手
ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンは、長良サイエンス株式会社の市販品を購入し、ジメチルスルホキシドに溶解して試験に用いた。
【0077】
[実施例1]ミクログリア細胞のβ-セクレターゼ活性を抑制する作用の評価1
マウスミクログリア細胞BV-2をDMEM培地(10%FBS含有)に懸濁し、100mm細胞培養ディッシュに細胞数が4.0×106個となるように播種し、37℃、5%CO2存在下で培養した。48時間後に、参考例で調製したウコン抽出物の濃度が100μg/mL、200μg/mL、400μg/mLとなるようにそれぞれをディッシュに添加して24時間培養した。培養終了後にBeta-Scretase Activity Assay Kit(Fluorometric)(アブカム社:ab65357)付属のプロトコルに従って細胞のβ-セクレターゼ活性を測定した。
【0078】
結果を図1に示す。図1から、マウスミクログリア細胞BV-2のβ-セクレターゼ活性を200及び400μg/mLのウコン抽出液が抑制することが示された。
【0079】
[実施例2]ミクログリア細胞のβ-セクレターゼ活性を抑制する作用の評価2
実施例1と同様にマウスミクログリア細胞BV-2を培養した。48時間後に、ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの濃度が6.25μM、12.5μM、25μMとなるようにそれぞれをディッシュに添加して24時間培養した。培養終了後にBeta-Scretase Activity Assay Kit(Fluorometric)(アブカム社:ab65357)付属のプロトコルに従って細胞のβ-セクレターゼ活性を測定した。
【0080】
結果を図2に示す。図2から、マウスミクログリア細胞BV-2のβ-セクレターゼ活性を6.25~25μMのターメロノールA及びターメロノールB、12.5及び25μMのビサクロンが抑制することが示された。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-11-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を有効成分として含有する、β-セクレターゼ阻害剤であって、1日あたりターメロノールAを17μg以上、ターメロノールBを5μg以上、及び/又はビサクロンを80μg以上含有する、β-セクレターゼ阻害剤
【請求項2】
ーメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種のみからなる、請求項1に記載のβ-セクレターゼ阻害剤。
【請求項3】
ターメロノールA、ターメロノールB及びビサクロンの少なくとも1種を含有するウコン(Curcuma longa)根茎の抽出物を含み、前記ウコンの抽出物が、水で抽出して得られたウコン抽出物と超臨界二酸化炭素で抽出して得られたウコン抽出物との混合物を含む、請求項1に記載のβ-セレクタ―ゼ阻害剤。