IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社デンソーの特許一覧

特開2025-12925運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム
<>
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム 図1
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム 図2
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム 図3
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム 図4
  • 特開-運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012925
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G08G1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116121
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】篠原 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】井上 久展
(72)【発明者】
【氏名】古橋 明久
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 昂史
(72)【発明者】
【氏名】近藤 鈴華
(72)【発明者】
【氏名】青谷 芳宏
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL15
(57)【要約】
【課題】周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援する。
【解決手段】運転支援装置は、車両の速度が、車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と他車両の速度の標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定し、車両の速度が許容速度よりも高いと判定された場合、車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、車両の運転者に提案する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定する速度判定部と、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案する提案部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
所定の領域ごとに視界不良をもたらす気象条件の有無を表す気象情報に基づいて、前記所定地点を含む領域の視界不良の有無を判定する視界判定部をさらに備え、
前記速度判定部は、前記所定地点を含む領域に視界不良がないと判定された場合、前記他車両の速度の平均に前記他車両の速度の標準偏差と第1の分布係数との積を加えて前記許容速度を求め、前記所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、前記他車両の速度の平均に前記他車両の速度の標準偏差と前記第1の分布係数よりも小さい第2の分布係数との積を加えて前記許容速度を求める、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記提案部は、前記所定地点を含む領域に視界不良がないと判定された場合、前記設定速度を第1の速度に変更するよう前記運転者に提案し、前記所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、前記設定速度を前記第1の速度よりも低い第2の速度に変更するよう前記運転者に提案する、請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
運転支援装置が、
車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定し、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案する、
ことを含む運転支援方法。
【請求項5】
車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定することと、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案することと、
を前記車両に搭載されたコンピュータに実行させる運転支援用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転者による車両の運転を支援する運転支援装置、運転支援方法、および運転支援用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の周辺状況を表す周辺データに基づいて、車両の走行のための運転者の操作のうち少なくとも一つを自動的に制御する走行制御装置は、車両が置かれた状況に応じて、制御する操作の少なくとも一部について、運転者による制御への変更を要求することがある。
【0003】
特許文献1に記載のモード切替支援装置は、車両の周辺状況を表す周辺データを取得し、周辺データに基づいて、車両の運転モードを手動運転モードと自動運転モードとの間で切り替えるモード切替の推奨される位置であるモード切替推奨位置を計算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-146552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
視界が良好でない、道路上に障害物が存在するといった理由により他車両が低速で走行している領域を高速で走行する車両は、他車両よりも事故などの不測の事態が発生する可能性が大きい。そのため、このような状況では、高い注意レベルをもって車両を走行させることが好ましい。このような、周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じた運転支援が求められている。
【0006】
本開示は、周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援することができる運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0008】
(1)車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定する速度判定部と、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案する提案部と、
を備える運転支援装置。
【0009】
(2)所定の領域ごとに視界不良をもたらす気象条件の有無を表す気象情報に基づいて、前記所定地点を含む領域の視界不良の有無を判定する視界判定部をさらに備え、
前記速度判定部は、前記所定地点を含む領域に視界不良がないと判定された場合、前記他車両の速度の平均に前記他車両の速度の標準偏差と第1の分布係数との積を加えて前記許容速度を求め、前記所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、前記他車両の速度の平均に前記他車両の速度の標準偏差と前記第1の分布係数よりも小さい第2の分布係数との積を加えて前記許容速度を求める、上記(1)に記載の運転支援装置。
【0010】
(3)前記提案部は、前記所定地点を含む領域に視界不良がないと判定された場合、前記設定速度を第1の速度に変更するよう前記運転者に提案し、前記所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、前記設定速度を前記第1の速度よりも低い第2の速度に変更するよう前記運転者に提案する、上記(2)に記載の運転支援装置。
【0011】
(4)運転支援装置が、
車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定し、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案する、
ことを含む運転支援方法。
【0012】
(5)車両の速度が、前記車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定することと、
前記車両の速度が前記許容速度よりも高いと判定された場合、前記車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、前記車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、前記車両の運転者に提案することと、
を前記車両に搭載されたコンピュータに実行させる運転支援用コンピュータプログラム。
【0013】
本開示にかかる運転支援装置によれば、周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】データ集配信システムの概略構成図である。
図2】運転支援装置を搭載する車両の概略構成図である。
図3】運転支援装置のハードウェア構成図である。
図4】運転支援装置が有するプロセッサの機能ブロック図である。
図5】運転支援処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援することができる運転支援装置について詳細に説明する。運転支援装置は、車両の速度が、車両の前方の所定地点を所定期間に通行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて求められる許容速度よりも高いか否かを判定する。車両の速度が許容速度よりも高いと判定された場合、運転支援装置は、車両の走行する速度として設定された設定速度を低く変更するよう、または、車両を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材を保持するよう、車両の運転者に提案する。
【0016】
図1は、データ集配信システムの概略構成図である。データ集配信システム1は、複数の車両2と、データ集配信装置3とを有する。複数の車両2のそれぞれは、データ集配信装置3が接続される通信ネットワークNWにゲートウェイ(不図示)などを介して接続される無線基地局WBSにアクセスすることで、無線基地局WBSおよび通信ネットワークNWを介してデータ集配信装置3と通信可能に接続される。以下では、複数の車両2のうち一の車両を「車両2」ともいう。データ集配信システム1において、複数の無線基地局WBSが通信ネットワークNWに接続されていてもよい。
【0017】
複数の車両2のそれぞれは、周辺を走行する他車両の速度といった各車両の周辺の状況を表す周辺データを生成し、無線基地局WBSおよび通信ネットワークNWを介してデータ集配信装置3に送信する。データ集配信装置3は、複数の車両2のそれぞれから受信した周辺データに基づいて、道路上のそれぞれの位置における車両の代表値速度および標準偏差といった状況を表す道路状況データを生成する。そして、データ集配信装置3は、道路状況データを、通信ネットワークNWおよび無線基地局WBSを介して複数の車両2のそれぞれに送信する。周辺データは、周辺の気象を表す周辺気象情報を含んでいてもよい。道路状況データは、道路上の所定の領域ごとに視界不良をもたらす気象条件の有無を表す気象情報を含んでいてもよい。データ集配信装置3は、通信ネットワークNWに接続された所定の領域ごとの気象情報を有する気象情報サーバ(不図示)から気象情報を取得し、道路状況データに含めて複数の車両2のそれぞれに送信してもよい。
【0018】
図2は、車両2の概略構成図である。
【0019】
車両2は、周辺カメラ21と、ステアリングホイール22と、操舵コントローラ23と、スピーカ装置24と、車速センサ25と、データ通信モジュール(Data Communication Module, DCM)26と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機27と、ストレージ装置28と、運転支援装置29とを有する。周辺カメラ21、操舵コントローラ23、車速センサ25、データ通信モジュール26、GNSS受信機27、およびストレージ装置28と、運転支援装置29とは、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。
【0020】
周辺カメラ21は、車両2の周辺状況を表す周辺データを生成するための周辺センサの一例である。周辺カメラ21は、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系とを有する。周辺カメラ21は、例えば車室内の前方上部に、前方を向けて配置される。周辺カメラ21は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとにフロントガラスまたはリヤガラスを介して車両2の周辺の状況を撮影し、周辺の状況が表された周辺画像を出力する。車両2は、周辺センサとして、各画素が当該画素に表わされた物体までの距離に応じた値を持つ距離画像を生成するLiDAR(Light Detection And Ranging)センサを有していてもよい。LiDARセンサは、周辺データとして距離画像を出力する。
【0021】
ステアリングホイール22は、運転者が車両2を操舵する操舵操作を受け付ける操舵部材の一例である。ステアリングホイール22は、車両2を操舵するステアリング機構の動作を要求する運転者の操作に応じた信号を、操舵コントローラ23に出力する。ステアリング機構の動作を要求する操作は、例えば、ステアリングホイール22を右回りまたは左回りに回転させる操作である。
【0022】
操舵コントローラ23は、通信インタフェースと、メモリと、プロセッサとを有するECU(Electronic Control Unit)である。操舵コントローラ23は、車両2に設けられた制御装置の一例であり、運転者の操作に応じた信号およびステアリング保持信号をステアリングホイール22から受け付けて、運転支援装置29に送信する。
【0023】
スピーカ装置24は、出力機器の一例であり、例えばアンプおよびスピーカユニットを有する。スピーカ装置24は、車内ネットワークを介して運転支援装置29から受け取った信号に従って、メッセージを表す音声を出力する。車両2は、出力機器として、文字や図形を視認可能に表示するディスプレイを有するディスプレイ装置を有していてもよい。また、出力機器は、メッセージの内容に応じたパターンで点灯する光源、メッセージの内容に応じたパターンで振動する振動子等であってもよい。
【0024】
車速センサ25は、駆動軸の回転速度に応じて、車両2の現在の速度を示す車速信号を生成する。車速センサ25は、所定の周期ごとに、車内ネットワークを介して車速信号を運転支援装置29へ出力する。車速センサ25は、所定のマイクロプロセッサを介して車内ネットワークに接続されていてもよい。
【0025】
データ通信モジュール26は、通信インタフェースの一例であり、いわゆる4G(4th Generation)または5G(5th Generation)といった所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器である。データ通信モジュール26は、例えば、無線基地局WBSにアクセスすることで、無線基地局WBSおよび通信ネットワークNWを介してデータ集配信装置3と通信可能に接続される。データ通信モジュール26は、データ集配信装置3から受信した無線信号に含まれるデータを運転支援装置29に渡す。また、データ通信モジュール26は、運転支援装置29から受け取った周辺データを無線信号に含め、その無線信号をデータ集配信装置3へ送信する。なお、データ通信モジュール26は、運転支援装置29の一部として実装されてもよい。
【0026】
GNSS受信機27は、測位センサの一例であり、不図示のGNSSアンテナにより所定の周期ごとにGNSS衛星からのGNSS信号を受信し、受信したGNSS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。GNSS受信機27は、所定の周期ごとに、GNSS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位信号を、車内ネットワークを介して運転支援装置29へ出力する。
【0027】
ストレージ装置28は、記憶部の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ、またはハードディスク装置を有する。ストレージ装置28は、高精度地図を記憶する。高精度地図には、例えば、その高精度地図に表される所定の領域における車線を区画する車線区画線を表す情報が含まれる。高精度地図には、さらに、当該領域に設定された制限速度を表す情報が含まれてもよい。
【0028】
運転支援装置29は、通信インタフェース回路と、メモリと、プロセッサとを備えるECUである。運転支援装置29は、他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて許容速度を求め、車両2の速度が許容速度よりも高い場合、車両2の運転者に所定の提案を行う。
【0029】
図3は、運転支援装置29のハードウェア構成図である。運転支援装置29は、通信インタフェース回路291と、メモリ292と、プロセッサ293とを有する。
【0030】
通信インタフェース回路291は、通信インタフェースの一例であり、運転支援装置29を通信ネットワークNWに接続するためのインタフェース回路を有する。通信インタフェース回路291は、通信ネットワークNWを介して他の機器と通信可能に構成される。すなわち、通信インタフェース回路291は、通信ネットワークNWを介して他の機器から受信したデータ等をプロセッサ293に渡す。また、通信インタフェース回路291は、プロセッサ293から受け取ったデータ等を、通信ネットワークNWを介して他の機器に送信する。
【0031】
メモリ292は、記憶部の他の一例であり、揮発性の半導体メモリおよび不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ292は、プロセッサ293による処理に用いられる各種データ、例えば車両2の速度に基づいて運転者に所定の提案を行うか否かを判定するための許容速度の算出に用いられる分布係数等を記憶する。また、メモリ292は、各種アプリケーションプログラム、例えば車両2の運転者に所定の提案を行う運転支援用コンピュータプログラム等を記憶する。
【0032】
プロセッサ293は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を有する。プロセッサ293は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。
【0033】
図6は、運転支援装置29が有するプロセッサ293の機能ブロック図である。
【0034】
運転支援装置29のプロセッサ293は、機能ブロックとして、走行制御部U1と、速度判定部U2と、提案部U3とを有する。プロセッサ293が有するこれらの各部は、プロセッサ293上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。プロセッサ293の各部の機能を実現するコンピュータプログラムは、半導体メモリ、磁気記録媒体または光記録媒体といった、コンピュータ読取可能な可搬性の記録媒体に記録された形で提供されてもよい。あるいは、プロセッサ293が有するこれらの各部、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして運転支援装置29に実装されてもよい。
【0035】
走行制御部U1は、車両2を設定速度以下の速度で走行経路に沿って走行させる。
【0036】
走行制御部U1は、GNSS受信機27から受信した測位信号に表される自車位置の周辺における車線区画線の情報を、高精度地図を保存するストレージ装置28から読み出す。走行制御部U1は、周辺カメラ21から受信した周辺画像を識別器に入力することで周辺の車線区画線を検出する。また、走行制御部U1は、周辺カメラ21から受信した周辺画像を識別器に入力することで周辺における他車両などの周辺物体を検出する。走行制御部U1は、車線区画線および周辺物体から所定の間隔を保つように走行経路を作成する。
【0037】
識別器は、例えば、YOLO(You Only Look Once)、SSD(Single Shot MultiBox Detector)といった、入力側から出力側に向けて直列に接続された複数の畳み込み層を有する畳み込みニューラルネットワーク(CNN)とすることができる。車両などの物体および車線区画線などの地物が表された多数の画像を教師データとして用いて、誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予めCNNの学習を行うことにより、CNNは、画像から車線区画線および物体を検出する識別器として動作する。
【0038】
走行制御部U1は、ストレージ装置28から読み出した高精度地図に含まれる制限速度を表す情報に従って、車両が走行する速度として設定速度を定める。走行制御部U1は、速度設定受付部(不図示)への運転者の操作に応じて設定速度を定めてよい。走行制御部U1は、例えば速度設定受付部への運転者の操作を検出したときの車両2の速度を、設定速度として定めてよい。
【0039】
走行制御部U1は、車両2が設定速度以下の速度で走行経路に沿って走行するように車両2の走行機構(不図示)に制御信号を出力する。走行機構には、例えば車両2に動力を供給するエンジンまたはモータ、車両2の走行速度を減少させるブレーキ、および車両2を操舵するステアリング機構が含まれる。
【0040】
走行機構のうち走行制御部U1により制御されるものに対する運転者の操作は、必要とされない。例えば走行制御部U1がステアリング機構を制御している場合、ステアリング機構の制御のためのステアリングホイール22の操作が不要となるため、運転者はステアリングホイール22から手を離すことができる。
【0041】
走行制御部U1の実行する機能は、車内ネットワークに接続された運転支援装置29とは異なるECUに実装されていてもよい。
【0042】
速度判定部U2は、通信インタフェース回路291およびデータ通信モジュール26を介して、データ集配信装置3から走行経路の前方の所定地点を所定期間に走行した他車両の速度の代表値および標準偏差を含む道路状況データを取得する。速度判定部U2は、データ集配信装置3から、道路状況データとして走行経路の前方の所定地点を所定期間に走行した1以上の他車両のそれぞれの速度を取得し、その代表値および標準偏差を求めてもよい。代表値は、他車両の速度の分布における算術平均値、中央値といった統計的代表値であってよい。
【0043】
また、速度判定部U2は、通信インタフェース回路291を介して、車速センサ25から車速信号を取得する。
【0044】
走行経路の前方の所定地点は、例えば、車速センサ25から取得した車速信号に示される速度に基づいて推定される、所定時間(例えば1分)後の車両2の走行経路上の位置である。所定期間は、例えば、現在時刻の所定時間前から現在時刻までの期間である。
【0045】
速度判定部U2は、通信インタフェース回路291およびデータ通信モジュール26を介して取得した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて許容速度を求める。例えば、速度判定部U2は、他車両の速度の標準偏差にメモリ292に記憶された分布係数(例えば1.0)を乗じ、その値に他車両の速度の代表値を加えることで許容速度を求める。
【0046】
速度判定部U2は、車速センサ25から取得した車速信号に示される車両2の速度が、許容速度よりも高いか否かを判定する。
【0047】
提案部U3は、車両2の速度が許容速度よりも高いと判定された場合、走行制御部U1による車両2の走行制御に用いられる設定速度を低く変更するよう、車両2の運転者に提案する。提案部U3は、上述の設定速度の変更に代えて、または、上述の設定速度の変更に加えて、ステアリングホイール22を保持するよう運転者に提案してもよい。
【0048】
提案部U3は、「設定速度を低く変更してください」、「ステアリングホイールを保持してください」といった提案メッセージを含む提案音声をスピーカ装置24に再生させることにより、運転者への提案を行う。
【0049】
提案部U3は、「設定速度を低く変更してください」、「ステアリングホイールを保持してください」といった提案メッセージを含む提案画像をディスプレイ装置に表示させることにより、運転者への提案を行ってもよい。また、提案部U3は、光源をメッセージの内容に応じたパターンで点灯させ、または、振動子をメッセージの内容に応じたパターンで振動させることにより、運転者への提案を行ってもよい。
【0050】
提案部U3は、設定速度を低く変更するよう運転者に提案する際、具体的な変更量を運転者に示してもよい。例えば、提案部U3は、設定速度を許容速度に変更するよう運転者に提案する。この場合、提案部U3は、変更後の設定速度を、具体的な速度(例えば時速100km)で示してもよく、現在の設定速度との差分(例えば時速10km低下)で示してもよい。
【0051】
図5は、運転支援処理のフローチャートである。運転支援装置29のプロセッサ293は、車両2の走行がプロセッサ293の走行制御部U1により制御されている間、所定の時間間隔(例えば1/10秒間隔)で、図5に示す運転支援処理を実行する。
【0052】
まず、プロセッサ293の速度判定部U2は、通信インタフェース回路291を介して取得した、走行経路の前方の所定地点を所定期間に走行した他車両の速度の代表値と標準偏差とを用いて、許容速度を求める(ステップS1)。
【0053】
次に、速度判定部U2は、車速センサ25から取得した車速情報に示される車両2の速度が、許容速度よりも高いか否かを判定する(ステップS2)。車両2の速度が許容速度より高くないと判定された場合(ステップS2:N)、プロセッサ293は運転支援処理を終了する。
【0054】
車両2の速度が許容速度より高いと判定された場合(ステップS2:Y)、プロセッサ293の提案部U3は、設定速度を低く変更するよう、または、ステアリングホイール22を保持するよう、運転者に提案する(ステップS3)。
【0055】
プロセッサ293の走行制御部U1は、車両2を設定速度以下の速度で走行経路に沿って走行させ(ステップS4)、運転支援処理を終了する。
【0056】
このように運転支援処理を実行することにより、運転支援装置29は、周辺の状況に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援することができる。
【0057】
変形例によれば、運転支援装置のプロセッサは、機能ブロックとして、視界判定部をさらに備える。視界判定部は、通信インタフェース回路291およびデータ通信モジュール26を介して取得された道路状況データに含まれる気象情報に基づいて、所定地点を含む領域の視界不良の有無を判定する。
【0058】
視界判定部は、例えば、ある領域の気象情報が霧または雨を表す場合、その領域に視界不良があると判定する。
【0059】
本変形例において、速度判定部U2は、所定地点を含む領域の視界不良の有無に応じて、許容速度の算出に用いる分布係数を変更する。具体的には、速度判定部U2は、所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、視界不良がないと判定された場合の分布係数(例えば1.0)よりも小さい分布係数(例えば0.3)を用いて許容速度を算出する。視界不良がないと判定された場合の分布係数は第1の分布係数の例であり、視界不良があると判定された場合の分布係数は第2の分布係数の例である。
【0060】
また、本変形例において、提案部U3は、所定地点を含む領域の視界不良の有無に応じて、運転者に変更を提案する設定速度を変更してもよい。具体的には、提案部U3は、所定地点を含む領域に視界不良があると判定された場合、視界不良がないと判定された場合の設定速度(例えば許容速度)よりも低い設定速度(例えば他車両の速度の代表値)に変更するよう運転者に提案する。視界不良がないと判定された場合に提案される速度は第1の速度の例であり、視界不良があると判定された場合に提案される速度は第2の速度の例である。
【0061】
変形例にかかる運転支援装置は、視界の有無に応じて変動する注意レベルに応じて車両の運転を支援することができる。
【0062】
当業者は、本開示の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0063】
29 運転支援装置
U1 走行制御部
U2 速度判定部
U3 提案部
図1
図2
図3
図4
図5