(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012926
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム
(51)【国際特許分類】
F24F 5/00 20060101AFI20250117BHJP
F24T 10/30 20180101ALI20250117BHJP
【FI】
F24F5/00 101A
F24T10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116122
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000125347
【氏名又は名称】学校法人近畿大学
(74)【代理人】
【識別番号】100118924
【弁理士】
【氏名又は名称】廣幸 正樹
(72)【発明者】
【氏名】崔 軍
(72)【発明者】
【氏名】市川 尚紀
【テーマコード(参考)】
3L054
【Fターム(参考)】
3L054BF10
3L054BF11
(57)【要約】 (修正有)
【課題】地中熱利用冷房システムにおいて屋内の冷房を継続することができる冷房システムを提供する。
【解決手段】タンクの底から所定の位置に配置された水温計と、タンクの底から水を汲み上げる汲み上げ配管と汲み上げ配管中の汲み上げポンプと、汲み上げポンプから熱交換器の入水口まで連結された送水管と、熱交換器の出水口に接続された排水管と、排水管に接続されタンクの上部に水を戻す戻り配管と、雨水の温度を検知する雨水温度計と、雨水を汲み上げ、配管の吸水口より下方で放出する雨水供給配管と、雨水供給配管中の雨水供給バルブと、雨水温度計の値が、水温計の値より低ければ雨水供給バルブを開くように制御する制御器を有する地中熱利用冷房システムは、雨水でタンク中の水を交換する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋内に設置された熱交換器と、
地中に埋設され水が貯留されるタンクと、
前記タンクの底から所定の位置に配置された水温計と、
前記タンクの底から前記タンクに貯留された水を汲み上げる汲み上げ配管と
前記汲み上げ配管中に配置された汲み上げポンプと、
前記汲み上げポンプから前記熱交換器の入水口まで連結された送水管と、
前記熱交換器の出水口に接続された排水管と、
前記排水管に接続され前記タンクの上部に水を戻す戻り配管と、
雨水の温度を検知する雨水温度計と、
前記雨水を前記タンクの前記汲み上げ配管の吸水口より下方の前記タンク内で放出する雨水供給配管と、
前記雨水供給配管に設けられた雨水供給バルブと、
前記雨水温度計の値が、前記水温計の値より低ければ前記雨水供給バルブを開くように制御する制御器を有する埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム。
【請求項2】
前記タンクは複数個設けられ、
前記複数のタンクは、
前記汲み上げ配管と、
前記戻り配管と、
前記雨水供給配管と、
前記水温計をそれぞれ有し、
前記それぞれの汲み上げ配管と前記汲み上げポンプの接続を切り替える汲み上げ配管切り替え器と、
前記排水管と前記それぞれの戻り配管の接続を切り替える戻り配管切り替え器を有し、
前記制御器は、
前記水温計の値が所定の値以上になったら、前記汲み上げ配管切り替え器と前記戻り配管切り替え器を制御する請求項1に記載された埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム。
【請求項3】
汲み上げ配管切り替え器と戻り配管切り替え器は、同一の前記タンクの汲み上げ配管と戻り配管がポンプと排水管に接続されるように切り替わる請求項2に記載された埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム。
【請求項4】
前記制御器は、前記水温計が所定値以下の場合は、そのタンクを使用可能タンクとする請求項2に記載された埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム。
【請求項5】
前記制御器は、汲み上げポンプと連結されているタンクにおいて前記水温計の値が所定値以上になった場合は、前記使用可能な他のタンクにポンプを切り替える請求項4に記載された埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム。
【請求項6】
地中に埋設したタンクに貯留した水を室内で熱交換する冷房方法であって、
降った雨の水温が前記タンク中の貯留水の水温より低ければ、前記タンクに貯留した前記水を前記タンクの底から入れ替える工程を有する冷房方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設したタンク中の水を使って、夏季の冷房を行うことができる冷房システムであって、タンク中の水を雨水で冷却する冷房システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅・建築の高気密・高断熱が進むと共に、自然エネルギーの積極的な利用等が求められている。地中熱は自然エネルギーの一つとして従来から利用が図られてきた。特に、比較的高温になる地層を利用した暖房や加熱システムは実際に具現化されている。
【0003】
一方、地表下2~5m程度の比較的浅い深度の地中では、年間を通じた地温が、地域の年間平均温度と同じでほぼ一定であることから、夏場の暑い時期に冷房に利用することも考えられている。
【0004】
特許文献1では、屋内に設けた熱交換器で暖めた熱担体流体(例えば水)を地中に埋設したタンクに送り、タンクから地中に熱を放熱する熱交換法が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、地中に埋設したタンクに一般水道水を貯留し、その中に内部に空気が流通可能な螺旋状の熱交換器を配置し、屋内の暖かい空気をタンク中の水で冷やしそれを再度屋内に戻すことで冷房を実現するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭57-031743号公報
【特許文献2】特開2002-013829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
夏季の気温より比較的低い地中の温度を利用すれば、熱ポンプを駆動させる必要がない分電気消費量が節約できる。しかし、埋設したタンクの周囲に放出できる熱量は限界があり、一度温度が上昇したタンクの周囲の土壌が再び冷えるには時間がかかる。したがって、特許文献の方法では、タンク内の温度が上昇してしまった時に、自然冷却を待たなければならないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みて想到されたもので、埋設したタンク内の水が、熱交換の結果温度が上昇してしまい、その後タンク内の水が冷却するまでの間でも、屋内の熱を放出でき、屋内の冷房を継続することができる冷房システムを提供するものである。
【0009】
より具体的に本発明に係る埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システムは、
建屋内に設置された熱交換器と、
地中に埋設され水が貯留されるタンクと、
前記タンクの底から所定の位置に配置された水温計と、
前記タンクの底から前記タンクに貯留された水を汲み上げる汲み上げ配管と
前記汲み上げ配管中に配置された汲み上げポンプと、
前記汲み上げポンプから前記熱交換器の入水口まで連結された送水管と、
前記熱交換器の出水口に接続された排水管と、
前記排水管に接続され前記タンクの上部に水を戻す戻り配管と、
雨水の温度を検知する雨水温度計と、
前記雨水を前記タンクの前記汲み上げ配管の吸水口より下方の前記タンク内で放出する雨水供給配管と、
前記雨水供給配管に設けられた雨水供給バルブと、
前記雨水温度計の値が、前記水温計の値より低ければ前記雨水供給バルブを開くように制御する制御器を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システムによれば、埋設するタンクが1つの場合であっても、夕立などの雨が降ればタンク内の水を雨水で冷却する(入れ替える)ので、高い確率で温度の上がったタンク内の水をそれより(ほぼ空気の湿球温度に等しい)低温の雨水に入れ替えることができる。
【0011】
また、このようなタンクを複数埋設し、1のタンク内の水が所定温度以上になったら、次のタンク内の水を使うようにするので、屋内の熱交換を行える時間を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システムの構成を示す図である。
【
図2】第1タンクが選択された場合の水の配管ルートを太線で示した図である。
【
図3】第2タンクが選択された場合の水の配管ルートを太線で示した図である。
【
図4】第1タンクが選択されている際に雨が降ってきた時の配管ルートを太線で示した図である。
【
図6】「雨+使用タンク」のサブルーチンの処理の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明に係る埋設タンク中の水を雨水で冷却する地中熱利用冷房システム(以下単に「冷房システム」ともいう。)について図面および実施例を示し説明を行う。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態および一実施例を例示するものであり、本発明が以下の説明に限定されるものではない。以下の説明は本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変することができる。
【0014】
図1に本発明に係る冷房システムの構成を示す。本発明に係る冷房システム1は、建屋Hの内部に設けられた熱交換器10と、水が貯留されるタンク12(タンク12A、タンク12B)と、水温計14(水温計14Aα、水温計14Aβ、水温計14Bα、水温計14Bβ)と、汲み上げ配管16(汲み上げ配管16A、汲み上げ配管16B)と、汲み上げポンプ18と、送水管20と、排水管22と、戻り配管24(戻り配管24A、戻り配管24B)と、雨水温度計26と、雨水供給配管28と制御器50を含む。
【0015】
建屋Hの種類は特に限定されるものではなく、人が居住する家や、物を保管する倉庫、家畜やその他動物を飼育する飼育舎など様々な形態の建屋Hであってよい。建屋Hの内部を屋内と呼ぶ。
【0016】
熱交換器10は、屋内に少なくとも1台配置される。熱交換器10は、内部に熱担体流体としての水が通過し、屋内の熱と水の熱を交換する公知の機構が配置されている。熱交換器10には、タンク12からの水が注入される入水口10aと、熱交換後の水が排出される出水口10bが設けられている。つまり、屋内よりも温度の低い水が入水口10aから熱交換器10に入り、熱交換後温度の上がった水が出水口10bから排出される。
【0017】
熱交換器10は屋内に複数あってもよい。複数の熱交換器10は、後述するタンク12から送られてくる水をそれぞれ並列に受け取ってもよい。これは熱交換器10の並列接続と言える。また、一の熱交換器10にタンク12からの水を直接注入し、他の熱交換器10には、一の熱交換器10を通過した水を注入してもよい。これは所謂熱交換器10の直列接続である。
【0018】
タンク12は、建屋Hから一定の距離を離して、地中に埋設される。ここではタンク12Aとタンク12Bの2つのタンクがあるものとして説明を続けるが、タンクは1つであってもよいし、3つ以上あってもよい。以下タンク12Aを第1タンク12Aとし、タンク12Bは第2タンク12Bと呼ぶ。また、第1タンク12Aと第2タンク12Bをまとめて呼ぶ場合は単にタンク12と呼ぶ。
【0019】
タンク12は、最深部が地表下5m~8m程度に埋設される。タンク12は、穴の最深部から地表までの高さがあるものが好適に利用できるが、完全に地中に埋設されるタンク12を排除しない。例えば、円筒状のタンク(側壁と底面を有する。)は好適に利用できる。
【0020】
タンク12の底には水温計14が設けられる。第1タンク12A、第2タンク12Bそれぞれの水温計14を水温計14A、水温計14Bとする。水温計14は、1つのタンク12に複数個設けられるのが望ましい。ここでは、深い方からα、β、・・・と名付ける。例えば第1タンク12Aは深い方から水温計14Aα、水温計14Aβである。第2タンク12Bも同様に水温計14Bα、水温計14Bβが設けられる。水温計14を1つのタンク12に複数個設けるのは、熱交換が進んで、水温が上がった時に、雨水にどの程度まで置き換えられたかを知るためである。ここでは、水温計14はαとβの2つある場合について説明する。しかし3つ以上あってもよいし、1つであってもよい。
【0021】
第1タンク12A、第2タンク12Bそれぞれの水温計14Aおよび水温計14Bのαの位置とβの位置の水温計14をまとめて呼ぶ場合は、水温計14α、水温計14βなどと呼ぶ。
【0022】
最も深い位置に配置される水温計14αは、タンク12の底にほぼ近い位置に設ける。この付近の水から熱交換器10に向けて水を送るので、その水の温度を知る必要があるからである。水温計14αより高い位置(タンク12の浅い位置)に配置される水温計14βは、後述するように雨が降って、タンク12内の水が底から順次置き換わる際の位置を知るためのものである。
【0023】
熱交換された水はタンク12の上方に戻されるため、タンク12内の水は上方から下方に向かって徐々に温度が上がる。雨が降った際に、タンク12内の水よりも雨水の方が温度が低ければ、タンク12の底から雨水に置き換わり、水温計14βの水温が雨水と同じになれば、水温計14βの位置までは雨水に置き換わったことを示すこととなる。これは、タンク12中の水を雨水で冷却したと言える。
【0024】
タンク12には、汲み上げ配管16が設けられる。汲み上げ配管16は、その吸水口16iが最も深い位置に設けた水温計14αの位置から少し上の間に配置される。汲み上げ配管16は第1タンク12Aおよび第2タンク12Bそれぞれに設けられ、汲み上げ配管16Aおよび汲み上げ配管16Bと呼ぶ。また、これらの吸水口16iをそれぞれ、吸水口16Aiおよび吸水口16Biとする。
【0025】
つまり、吸水口16Aiおよび吸水口16Biはそれぞれ、第1タンク12Aおよび第2タンク12Bの最深部に配置された水温計14Aαおよび水温計14Bα程度の位置から少し上の位置までの間に配置される。
【0026】
汲み上げ配管16は、汲み上げポンプ18に接続される。汲み上げポンプ18からは送水管20で、屋内の熱交換器10に水が送られる。より詳しく言うと、送水管20は熱交換器10の入水口10aに接続される。
【0027】
また、熱交換器10の出水口10bには、排水管22が接続される。排水管22は、タンク12の戻り配管24に接続される。
【0028】
タンク12が第1タンク12Aと第2タンク12Bの2個存在する場合、汲み上げ配管16は、汲み上げ配管16Aと汲み上げ配管16Bの2系列が存在する。そこで、汲み上げポンプ18と、汲み上げ配管16Aと汲み上げ配管16Bを切り替える汲み上げ配管切り替え器40が設けられる。また、排水管22に対して、それぞれのタンク12の戻り配管24Aおよび戻り配管24Bへの切換を行うために、戻り配管切り替え器42が設けられる。
【0029】
戻り配管24の出水口24oは、タンク12の上部に配置される。タンク12に戻ってくる水は、屋内での熱交換によって、温度が上がっているので、深い部分にある冷たい水と熱交換を回避するためである。
【0030】
排水管22とタンク12毎にある戻り配管24は、戻り配管切り替え器42で接続が切り替えられる。なお、本発明に係る冷房システム1では、水を汲み上げたタンク12に熱交換後の水を戻す。したがって、汲み上げ配管切り替え器40と戻り配管切り替え器42は同一のタンク12の汲み上げ配管16および戻り配管24に接続するように連動して動作する。
【0031】
また、本発明に係る冷房システム1には、雨水を各タンク12に注入する雨水供給配管28が備えられる。雨水供給配管28は、雨水収集器Rcに接続される。雨水収集器Rcの形態は特に限定されない。例えば、漏斗であってもよいし、建屋Hの屋根の樋であってもよい。雨水供給配管28は雨水収集器Rcに接続され、雨水をタンク12に流す。
【0032】
なお、雨水の温度を測定する雨水温度計26が備えられる。雨水温度計26は、雨水の水温が測定できれば、雨水収集器Rcに設けられてもよいし、雨水供給配管28の途中に設けられていてもよい。
【0033】
また、雨水供給配管28には雨水供給バルブ30(Rバルブ30とも呼ぶ。)も備えられる。雨水供給バルブ30が開くと、雨水収集器Rcからの雨水がそれぞれのタンク12に供給される。
【0034】
雨水供給配管28の出水口28oは、汲み上げ配管16の吸水口16iよりも深い位置に設けられる。タンク12の底にある水から雨水に置き換えるためである。より具体的には、第1タンク12Aでは、雨水供給配管28の出水口28Aoは、汲み上げ配管16Aの吸水口16Aiより下方に配置され、第2タンク12Bでは、雨水供給配管28の出水口28Boは、汲み上げ配管16Bの吸水口16Biより下方に配置される。
【0035】
タンク12には、オーバーフロードレーン配管Dが設けられるのが好ましい。これは、タンク12に貯留されている水があふれた際に、それを排出するためのものである。オーバーフロードレーン配管Dは各タンク12(第1タンク12Aおよび第2タンク12B)の開口に近い部分を直列に連結してよいし、別々に設けてもよい。
【0036】
また、本発明に係る冷房システム1には制御器50が設けられる。制御器50は、MPU(Micro Processor Unit)と、メモリおよび入出力装置で構成されるのがよい。MPUは複数個で構成されていてもよい。複数のプログラムが同時に稼働させることができるためである。
【0037】
制御器50は、タンク12中の水温計14、雨水温度計26と接続され、タンク12中の水温計14とは通知信号STtによって、また、雨水温度計26とは通知信号STrによって各水温計14の値を受信する。なお、水温計14Aα、水温計14Aβ、水温計14Bα、水温計14Bβの温度の値は、それぞれ通知信号STt1α、通知信号STt1β、通知信号STt2α、通知信号STt2βで制御器50に通知されるとする。
【0038】
また、制御器50は、汲み上げポンプ18には指示信号Cpを、汲み上げ配管切り替え器40および戻り配管切り替え器42には指示信号Csで、また雨水供給バルブ30には指示信号Cvを送り、その動きを制御する。なお、制御器50は、使用可能なタンクのリストである使用可能タンクリスト52を保有する。
【0039】
<冷房システムの動作>
次に本発明に係る冷房システム1の動作について説明する。以下の説明では、タンク12の番号を変数とする際には「K」を使う。例えば、タンク12の一番深い水温計14αによる水温はTtKαと表される。これはK=1(Tt1α)なら第1タンク12Aの水温計14Aαによる水温であるし、K=2(Tt2α)ならば、第2タンク12Bの水温計14Bαによる水温であることを表す。
【0040】
図5には制御器50の処理フローを示す。冷房システム1をスタートさせると(ステップS100)、終了判断を行う(ステップS102)。終了判断は、利用者がシステムのスイッチを切断するといった、人為的な方法が好ましい。なお、タイマー(図示せず)で、自動的にスイッチを入り切りしてもよい。
【0041】
終了と判断されたら(ステップS102のY分岐)、冷房システム1は停止する(ステップS104)。なお、本発明はタンク中の水を循環させることで屋内の温度を下げるので、予め屋内温度とタンク12中の水の温度Ttを比較し、その差が一定値以下であれば、冷房システム1を稼働させない若しくは、稼働できない理由を表示するという動作をいれてもよい。
【0042】
次に「雨+使用タンク」処理を行う(ステップS106)。この処理は、
図6に別途サブルーチンとして示した。この処理を簡単に説明すると雨が降り、一定の条件を満たしていれば
図1の雨水供給バルブ30が開き、雨水をタンク12に貯留する。また、タンク12が複数個ある場合に、使用可能なタンクのマーキングを行う。ここで使用可能なタンクのマーキングとは、その時点で使用できるタンクを調べ、使用可能タンクリスト52に蓄積することである。
【0043】
ここで「使用可能タンク」とは、タンク12の底の水温であるTtα(Tt1αあるいはTt2α)が所定の温度Th1より低い状態になっているタンク12をいう。貯留している水がこのような温度であれば、屋内を好適に冷房できるからである。所定の温度Th1は冷房システム1が設置された場所で多少変わるが、年間の平均気温程度であるのが好ましい。例えば広島地方であれば22℃~25℃がTh1に当たる。
【0044】
したがって、ステップS106を通過すると、雨が降って、その雨が利用可能(その条件は
図6で詳説する。)であれば、タンク12に導入され、また、常に使用可能なタンクが何番のタンクかがわかっている。
【0045】
図5を再度参照して、次に使用可能なタンクの有無を確認する(ステップS108)。これは使用可能タンクリスト52を見ることで確認することができる。そして、使用できるタンクとポンプを繋ぐ(ステップS110)。
【0046】
図2は、タンクが2本ある場合で、第1タンク12Aが選択され、汲み上げポンプ18と接続された状態を示す。接続された配管は太線で表した。第1タンク12Aが選択されるとは、制御器50からの指示信号Csによって、汲み上げ配管切り替え器40と戻り配管切り替え器42が第1タンク12Aの汲み上げ配管16Aと汲み上げポンプ18を接続させ、排水管22と戻り配管24Aを接続させることである。
【0047】
再度
図5を参照する。タンク切換(ステップS110)が完了したら、汲み上げポンプ18をONにする(ステップS112)。これによって、
図2の太線で示したように、第1タンク12Aの底から汲み上げ配管16A、汲み上げ配管切り替え器40、汲み上げポンプ18、熱交換器10の入水口10a、熱交換器10の出水口10b、排水管22、戻り配管切り替え器42、戻り配管24Aというパスで第1タンク12A中の水が循環し、屋内を冷房する。
【0048】
再度
図5を参照する。ポンプをONにしたら(ステップS112)、次に再度雨+使用タンクの工程(ステップS114)を行う。そして、第1タンク12Aの底に備えられた水温計14Aによる水温(TtKα:K=1)が所定温度Th1より高いか否かを判断する(ステップS116)。第1タンク12Aから汲み上げる水は汲み上げ配管16Aの吸水口16Aiのあるタンク底の水である。したがって、この部分の水の水温TtKαが所定温度Th1以上であれば、屋内での冷房効果を得られないので、この判断を行う。
【0049】
水温計14Aαによる水温(TtKα)が所定温度Th1より高くなければ(ステップS116のN分岐)、第1タンク12Aの水はまだ使用できると判断し、ステップS112を繰り返す。ここで、ステップS114の雨+使用タンクの工程を繰り返すのは、ステップS112からステップS116の間は第1タンク12Aの水を使い切るまで続くので、その間に雨が降った場合の処理をここで行うためである。
【0050】
また、水温計14Aαによる水温(TtKα:K=1)が所定温度Th1より高くなったら(ステップS116のY分岐)、すでにステップS114の雨+使用タンクの工程で第1タンク12Aは、使用不可のタンクに割付られる。第1タンク12Aは、以後の処理において、雨+使用タンクの工程(ステップS106若しくはステップS114)が実行される毎に、水温が測定され、所定温度Th1より水温が低くなるまで使用不可のタンクとして扱われる。逆に言えば、第1タンク12Aの水温が所定温度Th1より低くなれば、第1タンク12Aは使用可タンクとして扱われる。このような割付の切換は、使用可能タンクリスト52の第1タンク12Aの欄に「使用不可」、若しくは「使用可」と記録することで行われる。
【0051】
水温計14Aαによる水温(TtKα)が所定温度Th1より高くなったら(ステップS116のY分岐)、汲み上げポンプ18をOFFにし(ステップS118)、終了判断(ステップS102)に戻る。
【0052】
そして、処理が継続する場合(ステップS102のN分岐)は、再度、雨+使用タンクの工程(ステップS106)を行い、使用タンクの有無を確認する(ステップS108)。ここでは、第1タンク12Aは使用不可になっているので、第2タンク12Bが選択される(ステップS108のY分岐)。
【0053】
そしてタンク切換が行われる(ステップS110)。
図3は第1タンク12Aから第2タンク12Bに切り替えられた状態を示している。第2タンク12Bが選択されるとは、制御器50からの指示信号Csによって、汲み上げ配管切り替え器40と戻り配管切り替え器42が第2タンク12Bの汲み上げ配管16Bと汲み上げポンプ18を接続させ、排水管22と戻り配管24Bを接続させることである。
【0054】
再度
図5を参照して、タンク12が切り替えられたら(ステップS110)、汲み上げポンプ18をONにする(ステップS112)。これによって、
図3の太線で示したように、第2タンク12Bの底から汲み上げ配管16B、汲み上げ配管切り替え器40、汲み上げポンプ18、熱交換器10の入水口10a、熱交換器10の出水口10b、排水管22、戻り配管切り替え器42、戻り配管24Bというパスで第2タンク12B中の水が循環し、建屋Hを冷房する。
【0055】
雨+使用タンクの工程(ステップS114)が実行された後、水温計14Bαによる水温(TtKα:K=2)が所定温度Th1より高いか否かが判断される(ステップS116)。水温計14Bαによる水温(TtKα:K=2)が所定温度Th1より高くない場合(ステップS116のN分岐)は、ステップS112から繰り返し、高い場合(ステップS116のY分岐)は、汲み上げポンプ18をOFFにし(ステップS118)終了(ステップS102)に戻る。
【0056】
<雨+使用タンクの工程>
雨+使用タンクの工程(ステップS106およびステップS114)の処理を
図6に示す。雨+使用タンクの工程(ステップS106およびステップS114)がスタートしたら、雨が降っているか否かを判断する(ステップS200)。この判断の方法は特に言及されない。雨水収集器Rcに水検出器などを付与したり、雨水温度計26に水検出能力を付与するといった方法が考えられる。
【0057】
雨が降っていなければ(ステップS200のN分岐)、雨水供給バルブ30(Rバルブ30)を閉める(ステップS206)に飛ぶ。雨が降っていれば(ステップS200のY分岐)、雨水の温度Trと現在使用されているタンクの底の水温TtKαの温度を比較する(ステップS202)。そして雨水の温度Trの方がタンクの底の水温TtKαより低ければ(ステップS202のY分岐)、雨水供給バルブ30(Rバルブ30)を開く(ステップS204)。そして、処理をステップS208まで飛ばす。
【0058】
つまり、このサブルーチンは、雨水温度Trがタンクの底の水温TtKαより高くなるか、雨が止まない限り、雨水供給バルブ30は開いたままである。
【0059】
次にステップS208に移る。ここでn=1は変数の初期化である。そしてn番目のタンクの底の水温Ttnαが所定値Th1より低いか否かを判断する(ステップS210)。もし、低ければ(ステップS210のY分岐)、n番目のタンクは使用可能であると使用可能タンクリスト52に記載する(ステップS214)。そうでない場合(ステップS210のN分岐)は、n番目のタンクは使用不可能であると使用可能タンクリスト52に記載する(ステップS212)。
【0060】
そして、全タンクをチェックし終わったか否かを判断し(ステップS216)、終わっていなければ(ステップ216のN分岐)、nをインクリメントし(ステップS218)、ステップS210に処理を戻す。全タンクのチェックが終了したら(ステップS216のY分岐)、サブルーチンを抜ける(ステップS220)。
【0061】
図5を再度参照する。「雨+使用タンクの工程」は、ステップS106と、ステップS114で実行されるが、ほぼ間断なく実行される。したがって、雨が降ってきたと判断できれば、ほぼ遅れることなく
図6の雨水供給工程が実行される。
【0062】
図4は第1タンク12Aが選択されている時に雨が降ってきた場合を示す。熱交換器10に第1タンク12Aから水を供給ししている際であれば、ステップS114で「雨+使用タンクの工程」が実行される。
図6を合わせて参照すると、雨が降ってきたと判断したら(ステップS200のY分岐)、次に雨水の温度Trと第1タンク12Aの底水温度TtKα(K=1)を比較する(ステップS202)。
【0063】
そして雨水の温度の方が第1タンク12Aの底水温度TtKαより低ければ、雨水供給バルブ30を開く(ステップS204)。この際は、第2タンク12Bの底にも雨水は供給される。この工程は、雨が降っており、雨水の温度Trの方が第1タンク12Aの底水温度TtKαより低いうちは継続される。雨水はタンク12の底に供給されるので、タンク12の縁からは水がオーバーフローするが、それらは、オーバーフロードレーン配管Dによって排出される。
【0064】
以上のように本発明に係る冷房システム1では、雨水の温度Trがタンク12の底水温度Ttαよりも低ければ、タンク12の底に雨水を供給するので、タンク12の上部にある熱交換によって温められた水を押出し、タンク12内の水を冷たい雨水に置き換えることができる。
【0065】
なお、例えば、
図6のステップS210でタンク12の底水温度Ttnα(n番目のタンク12の底水温度)を所定値Th1と比較しているが、底よりも上の水温であるTtnβと比較してもよい。このようにすることで、底から水温計14βまでの体積の水は、使用可能であることを推定できるからである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、タンクに貯留した雨水を使って屋内を冷房する冷房システムとして好適に利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 冷房システム
10 熱交換器
10a 入水口
10b 出水口
12 タンク
12A 第1タンク
12B 第2タンク
14 水温計
14A 水温計
14Aα 水温計
14Aβ 水温計
14B 水温計
14Bα 水温計
14Bβ 水温計
14α 水温計
14β 水温計
16 汲み上げ配管
16A 汲み上げ配管
16B 汲み上げ配管
16i 吸水口
18 汲み上げポンプ
20 送水管
22 排水管
24 戻り配管
24o 出水口
26 雨水温度計
28 雨水供給配管
28o 出水口
30 雨水供給バルブ
40 汲み上げ配管切り替え器
42 戻り配管切り替え器
50 制御器
52 使用可能タンクリスト
H 建屋
Rc 雨水収集器
D オーバーフロードレーン配管
STt 通知信号
STr 通知信号
Cp 指示信号
Cs 指示信号