(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012945
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ゴム部材成型装置
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20250117BHJP
B29C 48/05 20190101ALI20250117BHJP
B29C 48/90 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
B29D30/08
B29C48/05
B29C48/90
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116156
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 朗
(72)【発明者】
【氏名】中元 均
【テーマコード(参考)】
4F207
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AG01
4F207AH20
4F207KA01
4F207KA17
4F207KK65
4F207KM16
4F207KW26
4F215AH20
4F215VA02
4F215VK02
4F215VK34
4F215VL11
4F215VL32
4F215VM07
4F215VP28
4F501TA02
4F501TD03
4F501TD37
4F501TE10
4F501TE25
4F501TF07
4F501TL27
4F501TV14
(57)【要約】
【課題】押し出し機の口金の開口端から成形ローラまでの範囲での長尺ゴム部材の流れがスムーズになるゴム部材成型装置を提供する。
【解決手段】ゴム部材成型装置は、長尺ゴム部材を前方へ押し出す押し出し機11と、押し出し機11の一部として設けられた口金23と、口金23の前端であり長尺ゴム部材の押し出し口となる開口端24と、開口端24から押し出された長尺ゴム部材を挟む上下の成形ローラ13、14と、上下の成形ローラ13、14の間に形成され長尺ゴム部材が挟まれる場所となる隙間18と、隙間18を通過して前進した長尺ゴム部材が貼り付けられる成型ドラム15とを有するゴム部材成型装置において、開口端24が前後方向から見て円形であり、開口端24の面積が隙間18の面積の2~5倍であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺ゴム部材を前方へ押し出す押し出し機と、前記押し出し機の一部として設けられた口金と、前記口金の前端であり前記長尺ゴム部材の押し出し口となる開口端と、前記開口端から押し出された前記長尺ゴム部材を挟む上下の成形ローラと、上下の前記成形ローラの間に形成され前記長尺ゴム部材が挟まれる場所となる隙間と、前記隙間を通過して前進した前記長尺ゴム部材が貼り付けられてタイヤ用円筒ゴム部材となる成型ドラムとを有するゴム部材成型装置において、
前記開口端が前後方向から見て円形であり、前記開口端の面積が前記隙間の面積の2倍以上5倍以下であることを特徴とする、ゴム部材成型装置。
【請求項2】
前記開口端が、上下の少なくとも一方の前記成形ローラの後端よりも前に配置された、請求項1に記載のゴム部材成型装置。
【請求項3】
前記開口端が、上下の前記成形ローラの間に配置された、請求項2に記載のゴム部材成型装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム部材成型装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1及び特許文献2に記載のように、押し出し機と、押し出し機より前方に配置された上下の成形ローラと、成形ローラより前方に配置された成型ドラムとを備えるゴム部材成型装置が知られている。このゴム部材成型装置では、押し出し機から押し出された長尺ゴム部材が、上下の成形ローラの間を通過した後、成型ドラムに貼り付けられていく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-117154号公報
【特許文献2】特開2022-117161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記の方法には、押し出し機と成形ローラの間で長尺ゴム部材が蛇行してしまう、押し出し機から押し出された長尺ゴム部材が厚過ぎて成形ローラの間を通過するのが困難になる、押し出し機から押し出された長尺ゴム部材が薄過ぎて成形ローラに到達する前に下に垂れてしまう、といったおそれがあった。そのため、ゴム部材成型装置に改善の余地があった。
【0005】
そこで本発明は、押し出し機の口金の開口端から成形ローラまでの範囲での長尺ゴム部材の流れがスムーズになるゴム部材成型装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0007】
[1]長尺ゴム部材を前方へ押し出す押し出し機と、前記押し出し機の一部として設けられた口金と、前記口金の前端であり前記長尺ゴム部材の押し出し口となる開口端と、前記開口端から押し出された前記長尺ゴム部材を挟む上下の成形ローラと、上下の前記成形ローラの間に形成され前記長尺ゴム部材が挟まれる場所となる隙間と、前記隙間を通過して前進した前記長尺ゴム部材が貼り付けられてタイヤ用円筒ゴム部材となる成型ドラムとを有するゴム部材成型装置において、前記開口端が前後方向から見て円形であり、前記開口端の面積が前記隙間の面積の2倍以上5倍以下であることを特徴とする、ゴム部材成型装置。
【0008】
[2]前記開口端が、上下の少なくとも一方の前記成形ローラの後端よりも前に配置された、[1]に記載のゴム部材成型装置。
【0009】
[3]前記開口端が、上下の前記成形ローラの間に配置された、[2]に記載のゴム部材成型装置。
【発明の効果】
【0010】
上記のゴム部材成型装置によれば、押し出し機の口金の開口端から成形ローラまでの範囲での長尺ゴム部材の流れがスムーズになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】ギアポンプから成型ドラムまでの部分を上から見た図。
【
図4】成形ローラが貼り付け位置にあるときの、ギアポンプから成型ドラムまでの部分を左右方向から見た図。
【
図5】押圧ローラが押圧位置にあるときの、ギアポンプから成型ドラムまでの部分を左右方向から見た図。
【
図7】成形ローラを通過した後かつ成型ドラムに貼り付く前のゴムストリップの先頭部分の平面図。
【
図8】ゴムストリップの先頭部分が成型ドラムに貼り付いた状態での、ゴムストリップの先頭部分の平面図。
【
図9】成型ドラムを径方向外側から見た図。ゴムストリップの先頭部分が成型ドラムに貼り付けられて間もない時の図。
【
図10】成型ドラムを径方向外側から見た図。ゴムストリップが1周以上貼り付けられた時の図。
【
図11】成型ドラムを径方向外側から見た図。ゴムストリップの大部分の貼り付けが終わった時の図。
【
図12】成型ドラムを径方向外側から見た図。ゴムストリップの後尾部分の貼り付けが終わった時の図。
【
図14】変更例の口金及び成形ローラを左右方向から見た図。
【
図15】変更例のゴムストリップの先頭部分の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すように、本実施形態のゴム部材成型装置10は、押し出しゴム2を押し出す押し出し機11と、押し出しゴム2の原料である原料ゴムシート1を押し出し機11へ供給する途上にあるレットオフ装置12と、押し出し機11から押し出された押し出しゴム2を上下から挟みゴムストリップ3とする上下の成形ローラ13、14と、成形ローラ13、14を通過したゴムストリップ3が貼り付けられる成型ドラム15と、成型ドラム15に貼り付いたゴムストリップ3を押圧する押圧ローラ16と、ゴム部材成型装置10の制御を行う不図示の制御部とを備えている。
【0013】
原料ゴムシート1、押し出しゴム2及びゴムストリップ3は、いずれも未加硫の長尺ゴム部材である。以下の説明において、長尺ゴム部材の断面とは、長尺ゴム部材の延長方向に直交する断面のことである。
【0014】
以下の説明において、成型ドラム15のある方を前、レットオフ装置12のある方を後ろとする。原料ゴムシート1、押し出しゴム2及びゴムストリップ3は、ゴム部材成型装置10において前方へ移動する。また、左右方向とは、ゴム部材成型装置10を前方から見たときの表現である。左右方向は、成型ドラム15及び成形ローラ13、14の軸方向と一致する。
【0015】
レットオフ装置12は、公知の構造のもので、原料ゴムシート1にかかる張力を調整する機能や、原料ゴムシート1が切れたときにそのことを検出する機能を備えている。レットオフ装置12より後方に、原料ゴムシート1が巻き取られたボビン17が配置されている。ボビン17から引き出された原料ゴムシート1が、レットオフ装置12を経由して押し出し機11へ送られる。
【0016】
押し出し機11は、押し出しゴム2を成型ドラム15へ向かって供給する供給装置であり、ゴムの押し出し機としての一般的な構造を備えている。押し出し機11は、円筒形で中空のバレル20と、バレル20の内部に設けられた回転するスクリュー21と、原料ゴムシート1をバレル20の内部に投入するための投入口25とを備えている。
【0017】
また、押し出し機11は、スクリュー21よりも前方に、押し出し機11の一部としてギアポンプ22及び口金23を備えている。ギアポンプ22はバレル20の前端に取り付けられている。ギアポンプ22は、噛み合わさった2つの歯車を備え、それらの歯車が回転することによりゴムを前方へ流動させる。ギアポンプ22の前端に口金23が設けられている。口金23には、口金23におけるゴムの流路の前端であり、ゴムの押し出し口でもある開口端24(
図2、
図6参照)が形成されている。この開口端24は押し出し機11全体の前端である。開口端24からのゴムの押し出し量は、ギアポンプ22の歯車の回転速度により決まる。ここで、押し出し量とは、単位時間あたりに開口端24から押し出されるゴムの体積のことである。
【0018】
スクリュー21が回転しギアポンプ22が駆動することにより、投入口25から投入された原料ゴムシート1が押し出しゴム2となって口金23の開口端24から水平に押し出される。
図2に示すように、口金23の開口端24は、前後方向から見て円形である。ここで、円形とは、真円だけでなく、ほぼ円形として近似できる形状、例えば長軸の長さが短軸の長さの110%以下の楕円や、12角形以上の正多角形等が含まれるものとする。
【0019】
また、口金23の開口端24は、上下の少なくとも一方の成形ローラ13、14の後端よりも前に配置されており、本実施形態においては上下の成形ローラ13、14の間に配置されている。詳細には
図6に示すように、口金23の開口端24は、上側の成形ローラ13の後端よりも距離L2だけ前方にあり、下の成形ローラ14の後端よりも距離L3だけ前方にある。
【0020】
上下の成形ローラ13、14はそれぞれほぼ円筒形のローラである。上下の成形ローラ13、14の半径は同じである。上下の成形ローラ13、14のそれぞれの回転軸13a、14a(
図2~
図4参照)は、成型ドラム15の回転軸15a(
図3、
図4参照)と平行である。上側の成形ローラ13の回転軸13aの回転中心は、成型ドラム15の回転軸15aの回転中心と同じ高さであることが好ましい。
【0021】
図4~
図6に示すように、上側の成形ローラ13は下側の成形ローラ14よりも前方に配置されている。上側の成形ローラ13の回転軸13aと、下側の成形ローラ14の回転軸14aとの前後方向の距離L1(
図6参照)は、例えば、成形ローラ13、14の半径の1/2以下である。ここで、回転軸と回転軸の距離とは、厳密には、回転軸の回転中心間の距離のことである。
【0022】
図2に示すように、上下の成形ローラ13、14は、左右方向両側において接触(線接触)している。一方、左右方向中央においては、上下の成形ローラ13、14の間に隙間18が形成されている。隙間18は、上側の成形ローラ13の外周面に1周にわたり形成された凹み13bと、円筒形である下側の成形ローラ14の外周面との間に形成されている。この隙間18は、押し出しゴム2が侵入し上下から押し潰されてゴムストリップ3に成形される場所である。そのため、隙間18の形状は、ゴムストリップ3の目標とする断面形状となっている。また、隙間18は、成型ドラム15の外周面と対向して成型ドラム15へゴムストリップ3を供給する供給部である。
【0023】
なお、上側の成形ローラ13において、隙間18より左右両側の部分は、半径が一定である。また、下側の成形ローラ14は、外周面が1つの曲面であり、左右方向の一方から他方まで半径が一定である。
【0024】
前後方向から見たときの隙間18の形状は、左右方向中央において上下方向に広く、左右方向両側において上下方向に狭く、左右方向の長さが上下方向の高さに対して長い形状であり、具体的には高さの低い台形である。隙間18は、左右方向の長さ(長い方の底辺18aの長さ)が上下方向の高さの20倍以上40倍以下であることが好ましい。
【0025】
前後方向から見て、口金23の開口端24の面積は、この隙間18の面積の2倍以上5倍以下である。なお、隙間18の面積とは、上下の成形ローラ13、14の回転軸13a、14aを結ぶ面上での隙間18の面積のことである。なお、上下の成形ローラ13、14の回転軸13a、14aを結ぶ面は、上下の成形ローラ13、14が線接触する位置を通る面である。また、
図2に示すように、口金23の開口端24の中心(円の中心)は、隙間18の底辺18aよりも高い位置にある。
【0026】
上下の成形ローラ13、14の外周面は金属製である。そして、下側の成形ローラ14の外周面が上側の成形ローラ13の外周面よりも高温になるように温度調節をする温調装置(不図示)が設けられている。温調装置は、上下の成形ローラ13、14のうち少なくとも下側の成形ローラ14の内部に設けられた発熱体、又は、上側の成形ローラ13よりも下側の成形ローラ14に近接させて配置された発熱体を備えている。また、温調装置は、発熱体での発熱を制御する装置も備えている。
【0027】
温調装置により、下側の成形ローラ14の外周面が、上側の成形ローラ13の外周面よりも、高温になる。この温度関係により、上側の成形ローラ13の外周面が、下側の成形ローラ14の外周面よりも、長尺ゴム部材への粘着性が高いものとなる。さらに、上側の成形ローラ13の外周面が下側の成形ローラ14の外周面よりも低温になるため、長尺ゴム部材における上側が下側よりも低温になって収縮し、長尺ゴム部材が上に反る。これら2つのことにより、上下の成形ローラ13、14の隙間18を通過したゴムストリップ3が上側の成形ローラ13の外周面に貼り付く。
【0028】
上下の成形ローラ13、14の近くに不図示の2つのモータが配置されており、上下の成形ローラ13、14はそれぞれ1つのモータに接続されている。それぞれのモータが駆動することにより、上下の成形ローラ13、14が回転可能となっている。上下の成形ローラ13、14の回転の速さは、独立して調整可能となっている。上側の成形ローラ13の回転方向と下側の成形ローラ14の回転方向は、反対方向で、かつ、間に挟んだ長尺ゴム部材を前方へ送り出す方向である。
【0029】
押し出し機11と成形ローラ13、14は、不図示の移動装置が稼働することにより、一体となって前後方向に移動することができる。押し出し機11と成形ローラ13、14が一体となって前後方向に移動しても、押し出し機11と成形ローラ13、14の位置関係は変わらない。
図4に示すように押し出し機11と成形ローラ13、14が移動範囲の最も前方の貼り付け位置にあるとき、上側の成形ローラ13が成型ドラム15との間にゴムストリップ3を挟むことができる。また、押し出し機11と成形ローラ13、14が移動範囲の後方にあるとき、
図5に示すように成形ローラ13、14と成型ドラム15の間に空間ができる。
【0030】
成型ドラム15の外周面は円筒形である。成型ドラム15の外周面でゴムストリップ3が螺旋巻きされることによりタイヤ用の円筒ゴム部材が成型される。円筒ゴム部材として、例えばインナーライナーやスキージーが挙げられる。成型ドラム15の回転軸15aは、前後方向に対して直交し、かつ水平方向に延びている。成型ドラム15は、成形ローラ13、14と対向する場所において、下から上へ上る方向に回転する。成型ドラム15は等速で回転する。
【0031】
成型ドラム15の外周面は、成型ドラム15の軸方向(以下「ドラム軸方向」)に長い金属製の複数のセグメントが、ドラム周方向に並ぶことにより形成されている。成型ドラム15の外周面における少なくとも所定部分は、上側の成形ローラ13の外周面よりも、ゴムストリップ3が貼り付きやすくなっている。この所定部分は、成型ドラム15に到達したゴムストリップ3の先頭部分3a(
図7、
図9参照)が貼り付く部分である。この所定部分は、ドラム軸方向の長さがゴムストリップ3の幅以上で、ドラム周方向の長さが先頭部分3aの長さ以上である。ゴムストリップ3が貼り付きやすくなるように、例えば、この所定部分は、上側の成形ローラ13の外周面よりも、表面粗さ(例えば算術平均粗さRa又は最大高さ粗さRz)が小さくなっており、それによりゴムの粘着性が高くなっている。この所定部分は、ゴムストリップ3の貼り付け開始部分であると言える。
【0032】
なお、成型ドラム15において、所定部分を含むより広い範囲がゴムストリップ3の貼り付きやすい部分となっていても良いし、外周面の全体がゴムストリップ3の貼り付きやすい部分となっていても良い。
【0033】
押圧ローラ16は、成型ドラム15上のゴムストリップ3を押圧するための押圧装置である。押圧ローラ16は、成型ドラム15に対して進退可能である。
図4に示すように、成形ローラ13、14が貼り付け位置にあるとき、押圧ローラ16は成型ドラム15から離れている。また、
図5に示すように成形ローラ13、14が後退して成形ローラ13、14と成型ドラム15の間隔が広くなっているとき、押圧ローラ16は、成形ローラ13、14と成型ドラム15の間に進出し、成型ドラム15に近接する押圧位置に到達する。押圧位置にあるときの押圧ローラ16は、成型ドラム15上のゴムストリップ3を押圧することができる。
【0034】
以上の構成のゴム部材成型装置10において、制御部による制御に基づき、次に説明するゴム部材成型方法が実施される。
【0035】
ゴム部材成型装置10による部材成型方法では、ボビン17から引き出された原料ゴムシート1が、レットオフ装置12を経由して押し出し機11の投入口25へ投入される。投入口25を通過してバレル20の内部に投入された原料ゴムシート1は、回転するスクリュー21により混練される。混練されたゴムは口金23の開口端24に到達する。押し出し機11からの押し出しゴム2の押し出し開始前、口金23の開口端24までゴムが充填された状態で押し出し機11が待機している。
【0036】
押し出し機11からの押し出しゴム2の押し出しが開始されると、バレル20の内部のゴムが長尺ゴム部材である押し出しゴム2となって口金23の開口端24から前方へ押し出される。押し出し量はギアポンプ22によって調整される。押し出された押し出しゴム2の断面形状は円形である。
【0037】
押し出しゴム2の先頭部分が上下の成形ローラ13、14の隙間18に到達する前に、成形ローラ13、14がそれぞれ等速で回転し始める。本実施形態においては、上下の成形ローラ13、14は、同じ速さで反対方向に回転する。
【0038】
口金23の開口端24から押し出された押し出しゴム2は、上下の成形ローラ13、14の隙間18に入る。押し出しゴム2は、上下の成形ローラ13、14の隙間18を通過することにより、上下の成形ローラ13、14の隙間18と同じ断面形状のゴムストリップ3に形を変える。
【0039】
ゴムストリップ3の先頭部分3aは、上下の成形ローラ13、14の隙間18を通過する間に上下の成形ローラ13、14に押し潰されることにより、
図7に示すように先細りの形になる。以下の説明において、この先細りの部分(徐々に他の部分よりも幅が狭くなっている部分)全体を「先頭部分3a」と言う。ゴムストリップ3の先頭部分3aは、ゴムストリップ3の幅方向中央が押し出し方向へ突出した二等辺三角形である。この押し出し方向への突出の頂点が、ゴムストリップ3の先頭部分3aの先端3bである。
【0040】
隙間18を通過したゴムストリップ3は、上側の成形ローラ13に貼り付き、上側の成形ローラ13の回転に伴い上昇していく。
【0041】
ゴムストリップ3の先頭部分3aが隙間18を通過してから上側の成形ローラ13が90°回転した時、ゴムストリップ3の先頭部分3aの先端3bが上側の成形ローラ13の最前端に来る。その前に、押し出し機11と成形ローラ13、14が一体となって前進を開始しており、ゴムストリップ3の先端3bが成形ローラ13の最前端に来ると同時に又はその前後に、成形ローラ13、14が貼り付け位置に到達する。上側の成形ローラ13が貼り付け位置に到達したことにより、
図4に示すように、ゴムストリップ3の先頭部分3aが、上側の成形ローラ13と、成型ドラム15の貼り付け開始部分とに挟まれる。
【0042】
上記のように、ゴムストリップ3は、成形ローラ13よりも成型ドラム15の貼り付け開始部分に貼り付きやすい。そのため、ゴムストリップ3の先頭部分3aは、成形ローラ13と、成型ドラム15の貼り付け開始部分とに挟まれた後、成形ローラ13から離れ成型ドラム15の方に貼り付く。
【0043】
ここで、ゴムストリップ3の先頭部分3aが成型ドラム15に貼り付けられている間、成型ドラム15がドラム軸方向に等速で移動する。移動の方向は、
図9に矢印で示す方向であり、ゴムストリップ3の巻き付けの進行方向と反対方向である。この移動により、
図8及び
図9に示すように、ゴムストリップ3の先端3b(二等辺三角形の頂点)が、ゴムストリップ3の左右方向の中心位置よりもドラム軸方向外側に寄り、ゴムストリップ3の先頭部分3aが螺旋の進行方向の辺を斜辺とする直角三角形に変形した形で、成型ドラム15に貼り付く。なお、左右方向は、ゴムストリップ3の幅方向と一致するものとする。
【0044】
ゴムストリップ3の先端3bが成型ドラム15に貼り付けられた後、先端3bの後続部分(先頭部分3a等)の貼り付けが行われている間に、押し出し機11と成形ローラ13、14が一体となって後退し、上下の成形ローラ13、14が成型ドラム15から離れる。押し出し機11と成形ローラ13、14が後退を開始すると同時に、又はその前後に、押圧ローラ16が成型ドラム15へ向かって進出し始める。そして、押圧ローラ16は、押圧位置に到達すると、
図5に示すように成型ドラム15に貼り付いているゴムストリップ3を押圧する。
【0045】
その後、成型ドラム15が回転することにより、ゴムストリップ3が成型ドラム15に巻き付けられていく。巻き付け中、成型ドラム15に貼り付いたゴムストリップ3を押圧ローラ16が押圧し続ける。
【0046】
図10、
図11に示すように、ゴムストリップ3の先頭部分3aとドラム軸方向に重なる位置へのゴムストリップ3の巻き付け時に、成型ドラム15がドラム軸方向に移動することにより、ゴムストリップ3が成型ドラム15に螺旋状に巻き付けられていく。ここで、成型ドラム15の移動方向は、
図10、
図11に矢印で示す方向であり、ゴムストリップ3の巻き付けの進行方向と反対方向である。成型ドラム15がドラム軸方向に移動した位置では、ゴムストリップ3は、ドラム周方向に対して傾斜して貼り付いた傾斜部3cを形成している。
【0047】
なお、ゴムストリップ3の先頭部分3aとドラム軸方向に重なる位置を除く領域へのゴムストリップ3の巻き付け時には、成型ドラム15はドラム軸方向に移動しない。そのため、その領域では、ゴムストリップ3はドラム周方向に巻き付けられる。その結果、ゴムストリップ3における傾斜部3c以外の部分は、ドラム周方向に対して平行に巻き付けられた状態となる。
【0048】
ゴムストリップ3の成型ドラム15への巻き付けが終了に近付いたタイミングで、押し出し機11のスクリュー21、ギアポンプ22及び成形ローラ13、14がこの順に停止する。ギアポンプ22は、スクリュー21の停止後に僅かな時間だけ逆回転し、その後停止する。
【0049】
スクリュー21及びギアポンプ22が停止して口金23の開口端24からの押し出しゴム2の押し出しが停止した後も、成形ローラ13、14が回転して押し出しゴム2を前方へ引っ張ることにより、口金23の開口端24で押し出しゴム2が引きちぎられるようにして切断される。その切断部分が成形ローラ13、14の隙間18を通過してゴムストリップ3の後尾部分3d(
図12参照)となった後、成形ローラ13、14が停止する。これにより、成型ドラム15に巻き付けるべき長さのゴムストリップ3が切り出される。
【0050】
ゴムストリップ3の後尾部分3dは、口金23の開口端24で引きちぎられるようにして切断されたことにより、また、成形ローラ13、14に押し潰されたことにより、先頭部分3aと同様に先細りの形になる。この先細りの部分(徐々に他の部分よりも幅が狭くなっている部分)全体を「後尾部分3d」と言う。ゴムストリップ3の後尾部分3dは、
図7の先頭部分3aと同様に、ゴムストリップ3の幅方向中央が突出した二等辺三角形である。
【0051】
このゴムストリップ3の後尾部分3dが成型ドラム15に貼り付けられている間、
図12に矢印で示すように、成型ドラム15がドラム軸方向に等速で移動する。移動の方向は、ゴムストリップ3の巻き付けの進行方向と反対方向である。この移動により、ゴムストリップ3の後尾部分3dが、
図12に示すように螺旋の進行方向と反対方向の辺を斜辺とする直角三角形に変形した形で、成型ドラム15に貼り付く。このとき、このゴムストリップ3の後尾部分3dの斜辺が、その1周前のゴムストリップ3の傾斜部3cの形と一致する。
【0052】
ゴムストリップ3の後尾部分3dの貼り付けが完了することにより、タイヤ用の円筒ゴム部材が完成する。ゴムストリップ3の先頭部分3aから後尾部分3dまで、ドラム軸方向に隣り合う部分同士の重なりの幅はほぼ一定である。ゴムストリップ3の先頭部分3aと後尾部分3dも、その隣のゴムストリップ3の傾斜部3cと、ほぼ一定の幅の重なりを有している。そのため、ゴムストリップ3の先頭部分3aと後尾部分3dが貼り付けられた部分も含め、円筒ゴム部材の厚みはほぼ一定となる。
【0053】
なお、上記のように、口金23の開口端24で押し出しゴム2が切断される。そのため、1本の押し出しゴム2を押し出し終わった後、次の押し出しゴム2の押し出しが開始されるまで、押し出し機11は、口金23の開口端24までゴムが充填された状態で待機している。
【0054】
以上の動作が繰り返されることにより、複数の円筒ゴム部材が成型される。
【0055】
以上のように、本実施形態のゴム部材成型装置10は、口金23を備える押し出し機11と、口金23の開口端24から押し出された押し出しゴム2を挟む上下の成形ローラ13、14と、押し出しゴム2が挟まれてゴムストリップ3となる場所である上下の成形ローラ13、14の隙間18と、隙間18を通過して前進したゴムストリップ3が貼り付けられる成型ドラム15とを備えている。このゴム部材成型装置10において、口金23の開口端24が前後方向から見て円形であり、口金23の開口端24の面積が上下の成形ローラ13、14の隙間18の面積の2倍以上5倍以下である。
【0056】
一般に、押し出し機から押し出されたゴム部材が上下方向に薄い場合は下に垂れやすく、左右方向に薄い場合は左右に曲がりやすい。しかし、本実施形態においては口金23の開口端24が円形であり、開口端24から押し出された押し出しゴム2の断面が円形となるため、押し出された押し出しゴム2が下に垂れたり左右に曲がったりしにくい。
【0057】
また、口金23の開口端24の面積が小さすぎると、開口端24から押し出される押し出しゴム2の前進の速さが、上下の成形ローラ13、14の隙間18で受け入れるためには速すぎることとなり、開口端24と隙間18の間で押し出しゴム2が蛇行してしまう。しかし本実施形態では、口金23の開口端24の面積が、成形ローラ13、14の隙間18の面積の2倍以上であり小さすぎないため、開口端24から押し出される押し出しゴム2の前進の速さが速すぎることはない。そのため、開口端24と隙間18の間で押し出しゴム2が蛇行しにくい。
【0058】
また、口金23の開口端24の面積が大きすぎると、開口端24から押し出される押し出しゴム2が太すぎることとなり、上下の成形ローラ13、14の隙間18で受け入れるのが困難になる。しかし本実施形態では、口金23の開口端24の面積が、成形ローラ13、14の隙間18の面積の5倍以下であり大きすぎないため、開口端24から押し出される押し出しゴム2が上下の成形ローラ13、14の隙間18に受け入れられる。
【0059】
これらのことから、本実施形態によれば、口金23の開口端24から成形ローラ13、14までの範囲での押し出しゴム2の流れがスムーズになる。
【0060】
また本実施形態では、口金23の開口端24が、上下の成形ローラ13、14の間に配置されており、隙間18に近い。そのため、押し出しゴム2が、口金23の開口端24から押し出された後すぐに上下の成形ローラ13、14の隙間18に入ることとなる。そのため、口金23の開口端24から成形ローラ13、14までの範囲での押し出しゴム2の流れがスムーズになる。
【0061】
以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。組み合わせは自在に行うことができる。
【0062】
<変更例1>
前後方向から見たときの上下の成形ローラの隙間の形状は、台形以外の形状でも良い。ただし、隙間の形状は、左右方向中央において上下方向に広く、左右方向両側において上下方向に狭い形状が好ましい。そのような形状として、例えば
図13に示す隙間118のような二等辺三角形が挙げられる。いずれの形状であっても、隙間は、左右方向の長さが上下方向の高さの20倍以上40倍以下であることが好ましい。
【0063】
<変更例2>
押し出し機11に設けられた口金23の開口端24の位置は、上記実施形態の位置より後ろでも良い。例えば
図14に示すように、口金23の開口端24の位置は、下側の成形ローラ14の後端よりも前で、上側の成形ローラ13の後端より後ろの位置でも良い。なお
図14では、口金23の開口端24は、上側の成形ローラ13の後端よりも距離L2’だけ後方にあり、下の成形ローラ14の後端よりも距離L3’だけ前方にある。
【0064】
このように、口金23の開口端24が一方の成形ローラ14の後端よりも前にあり、上下の成形ローラ13、14の隙間18に近いことにより、口金23の開口端24から押し出された押し出しゴム2が下に垂れる前に上下の成形ローラ13、14の隙間18に到達できる。また、口金23の開口端24が下側の成形ローラ14の後端よりも前にあることにより、口金23の開口端24から押し出された押し出しゴム2が、下に垂れたとしても、下側の成形ローラ14に受け止められて上下の成形ローラ13、14の隙間18に搬送される。
【0065】
<変更例3>
ゴムストリップの先頭部分と後尾部分の形状は、先細りの形であれば良く、三角形に限定されない。例えば、
図15に示すゴムストリップ103の先頭部分103aのような、丸みのある先細りの形でも良い。押し出しゴム2が成形ローラ13、14の隙間18を通過してゴムストリップ3が成形される場合は、成形ローラ13、14の回転速度を調整することにより、ゴムストリップ3の先細りの形や先細り部分の長さを調整することができる。
【0066】
ゴムストリップの先頭部分と後尾部分がどのような先細りの形であっても、先頭部分と後尾部分が成型ドラム15に貼り付けられている間、成型ドラム15がゴムストリップの巻き付けの進行方向と反対方向へ移動することにより、ゴムストリップの先端を、ゴムストリップの左右方向の中心位置よりもドラム軸方向外側に寄せることができる。
【符号の説明】
【0067】
1…原料ゴムシート、2…押し出しゴム、3…ゴムストリップ、3a…先頭部分、3b…先端、3c…傾斜部、3d…後尾部分、10…ゴム部材成型装置、11…押し出し機、12…レットオフ装置、13…成形ローラ、13a…回転軸、13b…凹み、14…成形ローラ、14a…回転軸、15…成型ドラム、15a…回転軸、16…押圧ローラ、17…ボビン、18…隙間、18a…底辺、20…バレル、21…スクリュー、22…ギアポンプ、23…口金、24…開口端、25…投入口、118…隙間、103…ゴムストリップ、103a…先頭部分