(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012947
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ゴム部材成型方法
(51)【国際特許分類】
B29D 30/08 20060101AFI20250117BHJP
B29C 48/14 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
B29D30/08
B29C48/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116160
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 朗
(72)【発明者】
【氏名】中元 均
【テーマコード(参考)】
4F207
4F215
4F501
【Fターム(参考)】
4F207AA45
4F207AG01
4F207AP07
4F207AR08
4F207KA01
4F207KA17
4F207KM05
4F207KM15
4F207KW50
4F215AH20
4F215AR08
4F215VA02
4F215VK02
4F215VK34
4F215VL11
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4F215VR03
4F501TA02
4F501TD03
4F501TD37
4F501TE10
4F501TE25
4F501TT03
4F501TU06
4F501TU08
4F501TU13
4F501TV14
(57)【要約】
【課題】長尺ゴム部材の形状を安定化できるゴム部材成型方法を提供する。
【解決手段】実施形態のゴム部材成型方法は、所定の容量を有する押し出し機11から長尺ゴム部材を押し出して成型ドラム15に貼り付けてタイヤ用円筒ゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、押し出し機11は、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける後期の押し出し速さを、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける前期の押し出し速さよりも遅くすることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムの押し出し機から長尺ゴム部材を押し出して成型ドラムに貼り付け、タイヤ用円筒ゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、
1本の前記長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さが、押し出し前期の押し出し速さよりも遅いことを特徴とする、ゴム部材成型方法。
【請求項2】
1本の前記長尺ゴム部材が、前記押し出し機のゴム容量より多くのゴムからなる、請求項1に記載のゴム部材成型方法。
【請求項3】
前記ゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了する前に、前記長尺ゴム部材の押し出し速さが遅くなる、請求項2に記載のゴム部材成型方法。
【請求項4】
複数本の前記長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出され、それぞれの長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さが、押し出し前期の押し出し速さよりも遅い、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム部材成型方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム部材成型方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、タイヤ用の円筒ゴム部材(トレッド、インナーライナー、スキージー等)は、押し出し機から押し出した長尺ゴム部材をフォーマ(成型ドラム)に巻き付けることにより成型される。
【0003】
押し出し機は、内部にゴム材料が入るバレル、バレル内に設けられたスクリュー、バレルからの長尺ゴム部材の押し出し口を有する口金、等から構成されている。押し出し機では、原料ゴムがバレルへ投入され、投入された原料ゴムがバレルにおいて加熱されつつスクリューにより混練され、口金から長尺ゴム部材として押し出される。
【0004】
押し出し機から押し出された長尺ゴム部材がフォーマに巻き付けられることにより1つの円筒ゴム部材の成型が終わると、押し出し機の口金からの押し出しが一旦停止される。押し出しが停止している間に、バレルに溜まっているゴムが加熱される。次の円筒ゴム部材の成型が始まると、バレルで加熱されていたゴムが口金から押し出され、バレルのゴムが減った分、新しい低温のゴムがバレルへ投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、バレルに入るゴムの量には上限があり、バレルの容量が1つの円筒ゴム部材の成型に要するゴムの量よりも小さい場合がある。この場合、長尺ゴム部材の先頭部分の押し出しの際は、押し出し開始前からバレルで十分加熱されたゴムが押し出されるが、長尺ゴム部材の後尾部分の押し出しの際は、押し出し開始後にバレルへ投入された加熱不十分なゴムが押し出されることになる。
【0007】
また、バレルが大きくバレルの容量が1つの円筒ゴム部材の成型に要するゴムの量より大きい場合でも、押し出し機の口金から遠い場所にあるゴムが、口金に近い場所にあるゴムよりも低温になる傾向がある。この場合、1つの円筒ゴム部材の成型において、成型開始直後には高温のゴムが口金から押し出されるが、高温のゴムが全て押し出された後には比較的低温のゴムが押し出されることになる。
【0008】
発明者が調査した結果、加熱不十分で低温のゴムが押し出されるときには、口金付近でのゴムの圧力が脈動してしまい、そのことが、押し出される長尺ゴム部材の形状の不安定化の原因になっていることが明らかになった。
【0009】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、長尺ゴム部材の形状を安定化できるゴム部材成型方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0011】
[1]ゴムの押し出し機から長尺ゴム部材を押し出して成型ドラムに貼り付け、タイヤ用円筒ゴム部材を成型するゴム部材成型方法において、1本の前記長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さが、押し出し前期の押し出し速さよりも遅いことを特徴とする、ゴム部材成型方法。
【0012】
[2]1本の前記長尺ゴム部材が、前記押し出し機のゴム容量より多くのゴムからなる、[1]に記載のゴム部材成型方法。
【0013】
[3]前記ゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了する前に、前記長尺ゴム部材の押し出し速さが遅くなる、[2]に記載のゴム部材成型方法。
【0014】
[4]複数本の前記長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出され、それぞれの長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さが、押し出し前期の押し出し速さよりも遅い、[1]~[3]のいずれかに記載のゴム部材成型方法。
【発明の効果】
【0015】
上記の方法によれば、長尺ゴム部材の形状を安定化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】ギアポンプから成型ドラムまでの部分を上から見た図。
【
図4】成形ローラが貼り付け位置にあるときの、ギアポンプから成型ドラムまでの部分を左右方向から見た図。
【
図5】押圧ローラが押圧位置にあるときの、ギアポンプから成型ドラムまでの部分を左右方向から見た図。
【
図7】ギアポンプの出口におけるゴムの圧力の時系列変化を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本実施形態のゴム部材成型装置10の構成について説明する。
【0018】
図1に示すように、本実施形態のゴム部材成型装置10は、押し出しゴム2を押し出す押し出し機11と、押し出しゴム2の原料である原料ゴムシート1を押し出し機11へ供給する途上にあるレットオフ装置12と、押し出し機11から押し出された押し出しゴム2を上下から挟みゴムストリップ3とする上下の成形ローラ13、14と、成形ローラ13、14を通過したゴムストリップ3が貼り付けられる成型ドラム15と、成型ドラム15に貼り付いたゴムストリップ3を押圧する押圧ローラ16と、ゴム部材成型装置10の制御を行う制御部32(
図6参照)とを備えている。
【0019】
原料ゴムシート1、押し出しゴム2及びゴムストリップ3は、いずれも未加硫の長尺ゴム部材である。以下の説明において、長尺ゴム部材の断面とは、長尺ゴム部材の延長方向に直交する断面のことである。
【0020】
以下の説明において、成型ドラム15のある方を前、レットオフ装置12のある方を後ろとする。原料ゴムシート1、押し出しゴム2及びゴムストリップ3は、ゴム部材成型装置10において前方へ移動する。また、左右方向とは、ゴム部材成型装置10を前方から見たときの表現である。左右方向は、成型ドラム15及び成形ローラ13、14の軸方向と一致する。
【0021】
レットオフ装置12は、公知の構造のもので、原料ゴムシート1にかかる張力を調整する機能や、原料ゴムシート1が切れたときにそのことを検出する機能を備えている。レットオフ装置12より後方に、原料ゴムシート1が巻き取られたボビン17が配置されている。ボビン17から引き出された原料ゴムシート1が、レットオフ装置12を経由して押し出し機11へ送られる。
【0022】
押し出し機11は、押し出しゴム2を成型ドラム15へ向かって供給する供給装置であり、ゴムの押し出し機としての一般的な構造を備えている。押し出し機11は、円筒形で中空のバレル20と、バレル20の上部開口20aに接続されたホッパー25と、バレル20の内部に設けられたスクリュー21と、バレル20の外面に取り付けられた加熱装置26(
図6参照)と、バレル20の前端に接続されたギアポンプ22と、ギアポンプ22の前端に接続された口金23とを備えている。
【0023】
ホッパー25は、原料ゴムシート1をバレル20の内部に投入するための部分である。また、スクリュー21は、スクリュー用モータ27(
図6参照)に接続されており、スクリュー用モータ27が稼働することにより回転する。また、加熱装置26はヒータからなる。加熱装置26によりバレル20が加熱された状態でスクリュー21が回転することにより、バレル20内でゴムが混練される。
【0024】
図3に示すように、ギアポンプ22の内部には、噛み合わさった2つのギア28が設けられている。これらのギア28にはギア用モータ29(
図4~
図6参照)が接続されている。ギア用モータ29が稼働して2つのギア28が回転することにより、ゴムが前方へ押し出される。ギアポンプ22に接続された口金23には、開口端24(
図4、
図5参照)が形成されている。開口端24は、口金23の内部を通るゴムの流路の前端であり、押し出し機11からのゴムの押し出し口でもある。
図2に示すように、開口端24は前後方向から見て円形である。また、開口端24は押し出し機11全体の前端である。
【0025】
このような構造の押し出し機11において、ホッパー25から投入された原料ゴムシート1が、加熱されたバレル20内で混練され、ギアポンプ22を経由して口金23の開口端24から押し出しゴム2となって押し出される。
【0026】
開口端24から押し出される押し出しゴム2の押し出しの速さ(押し出し速さ)は、ギア28の単位時間あたりの回転数を調整することにより、決定することができる。押し出しゴム2の押し出し速さは、単位時間あたりに押し出される押し出しゴム2の長さのことであり、単位時間あたりに押し出される押し出しゴム2の体積に比例する。
【0027】
押し出し機11のゴム容量は、1本のゴムストリップ3に使用されるゴムの量(体積)よりも小さい。ここで、押し出し機11のゴム容量とは、バレル20の開口20aから口金23の開口端24までの空間に、押し出し機11の機能を阻害しない範囲で最大限充填できるゴムの体積のことである。
【0028】
上下の成形ローラ13、14はそれぞれほぼ円筒形のローラである。上下の成形ローラ13、14の半径は同じである。
図4、
図5に示すように、上側の成形ローラ13は下側の成形ローラ14よりも前方に配置されている。また、上下の成形ローラ13、14の間に口金23の開口端24が配置されている。
【0029】
上下の成形ローラ13、14のそれぞれの回転軸13a、14aは、成型ドラム15の回転軸15aと平行である。上下の成形ローラ13、14は、それぞれ成形ローラ用モータ19(
図6参照)に接続されており、成形ローラ用モータ19が稼働することにより回転可能となっている。上側の成形ローラ13の回転方向と下側の成形ローラ14の回転方向は、反対方向で、かつ、間に挟んだ長尺ゴム部材を前方へ送り出す方向である。
【0030】
図2に示すように、上下の成形ローラ13、14は、左右方向両側において接触している。一方、左右方向中央においては、上下の成形ローラ13、14の間に隙間18が形成されている。隙間18は、上側の成形ローラ13の外周面に1周にわたり形成された凹み13bと、円筒形である下側の成形ローラ14の外周面との間に形成されている。この隙間18は、押し出しゴム2が侵入し上下から押し潰されてゴムストリップ3に成形される場所である。そのため、隙間18の形状は、ゴムストリップ3の目標とする断面形状となっている。
【0031】
上下の成形ローラ13、14の外周面は金属製である。これら金属製の外周面の表面粗さ又は温度が調整されることにより、上側の成形ローラ13の外周面が、下側の成形ローラ14の外周面よりも、長尺ゴム部材への粘着性が高いものとなっている。そのため、上下の成形ローラ13、14の隙間18を通過したゴムストリップ3は上側の成形ローラ13の方に粘着する。
【0032】
押し出し機11と成形ローラ13、14は、移動装置30(
図6参照)が稼働することにより、一体となって前後方向に移動することができる。押し出し機11と成形ローラ13、14が移動範囲の最も前方の貼り付け位置にあるとき、
図4に示すように、上側の成形ローラ13が成型ドラム15との間にゴムストリップ3を挟むことができる。また、押し出し機11と成形ローラ13、14が移動範囲の後方にあるとき、
図5に示すように、成形ローラ13、14と成型ドラム15が大きく離れる。
【0033】
成型ドラム15の外周面は円筒形である。成型ドラム15の外周面でゴムストリップ3が螺旋巻きされることによりタイヤ用の円筒ゴム部材が成型される。円筒ゴム部材として、例えばインナーライナーやスキージーが挙げられる。成型ドラム15はドラム用モータ31(
図6参照)に接続されており、ドラム用モータ31が稼働することにより、上側の成形ローラ13と反対方向に回転する。成型ドラム15の外周面は、上側の成形ローラ13の外周面よりも、ゴムストリップ3が貼り付きやすくなっている。ゴムストリップ3が貼り付きやすくなるように、例えば、成型ドラム15の外周面は、上側の成形ローラ13の外周面よりも、表面粗さが小さくなっている。
【0034】
押圧ローラ16は、成型ドラム15上のゴムストリップ3を押圧するための押圧装置である。押圧ローラ16は、進退装置33に取り付けられており、進退装置33の動作に基づき成型ドラム15に対して進退可能となっている。
図4に示すように成形ローラ13、14が貼り付け位置にあるとき、押圧ローラ16は成型ドラム15から離れている。また、
図5に示すように成形ローラ13、14が後退して成形ローラ13、14と成型ドラム15の間隔が広くなっているとき、押圧ローラ16は、成形ローラ13、14と成型ドラム15の間に進出し、押圧位置に到達する。押圧位置にあるときの押圧ローラ16は、成型ドラム15上のゴムストリップ3を押圧することができる。
【0035】
制御部32には、
図6に示すように、成形ローラ用モータ19、スクリュー用モータ27、ギア用モータ29、ドラム用モータ31、レットオフ装置12、加熱装置26、移動装置30、進退装置33等の機器が接続されている。制御部32は、接続されているこれらの機器を制御し、以下で説明するゴム部材成型方法を実施する。
【0036】
次に、以上の構成のゴム部材成型装置10におけるゴム部材の成型の流れについて説明する。
【0037】
ゴム部材成型装置10による部材成型方法では、ボビン17から引き出された原料ゴムシート1が、レットオフ装置12を経由して押し出し機11のホッパー25へ投入される。ホッパー25を通過してバレル20の内部に投入された原料ゴムシート1は、回転するスクリュー21により混練される。混練されたゴムは口金23の開口端24に到達する。押し出し機11からの押し出しゴム2の押し出し開始前、口金23の開口端24までゴムが充填された状態で押し出し機11が待機している。待機中に、押し出し機11の内部のゴムが加熱される。
【0038】
押し出し機11からの押し出しゴム2の押し出しが開始されると、バレル20の内部のゴムが押し出しゴム2となって口金23の開口端24から前方へ押し出される。開口端24からの押し出しゴム2の押し出し速さは、ギアポンプ22によって調整される。押し出された押し出しゴム2の断面形状は円形である。
【0039】
口金23の開口端24から押し出された押し出しゴム2は、既に回転している上下の成形ローラ13、14の隙間18に入る。押し出しゴム2は、上下の成形ローラ13、14の隙間18を通過することにより、上下の成形ローラ13、14の隙間18と同じ断面形状のゴムストリップ3に形を変える。
【0040】
隙間18を通過したゴムストリップ3は、上側の成形ローラ13に貼り付き、上側の成形ローラ13の回転に伴い上昇していく。そして、
図4に示すように、ゴムストリップ3の先頭部分3aが、上側の成形ローラ13と、既に回転している成型ドラム15とに挟まれる。
【0041】
上記のように、ゴムストリップ3は、成形ローラ13の外周面よりも成型ドラム15の外周面に貼り付きやすい。そのため、ゴムストリップ3の先頭部分3aは、成形ローラ13と成型ドラム15とに挟まれた後、成形ローラ13から離れ成型ドラム15の方に貼り付く。
【0042】
ゴムストリップ3の先頭部分3aが成型ドラム15に貼り付けられた後、先頭部分3aの後続部分の貼り付けが行われている間に、押し出し機11と成形ローラ13、14が一体となって後退し、上下の成形ローラ13、14が成型ドラム15から離れる。押し出し機11と成形ローラ13、14が後退を開始すると同時に、又はその前後に、押圧ローラ16が成型ドラム15へ向かって進出し始める。そして、押圧ローラ16は、押圧位置に到達すると、
図5に示すように成型ドラム15に貼り付いているゴムストリップ3を押圧する。
【0043】
ゴムストリップ3の先頭部分3aが成型ドラム15に貼り付けられた後も、押し出し機11からの押し出しゴム2の押し出しと、成形ローラ13、14の回転とが継続されることにより、成型ドラム15へのゴムストリップ3の供給が継続される。それらの継続中、成型ドラム15がドラム周方向へ回転しつつドラム軸方向へ等速移動することにより、ゴムストリップ3が成型ドラム15に螺旋状に巻き付けられていく。巻き付け中、成型ドラム15に貼り付いたゴムストリップ3を押圧ローラ16が押圧し続ける。
【0044】
ゴムストリップ3の成型ドラム15への巻き付けが終了に近付いたタイミングで、押し出し機11のスクリュー21、ギアポンプ22及び成形ローラ13、14がこの順に停止する。ギアポンプ22は、スクリュー21の停止後に僅かな時間だけ逆回転し、その後停止する。
【0045】
スクリュー21及びギアポンプ22が停止して口金23の開口端24からの押し出しゴム2の押し出しが停止した後も、成形ローラ13、14が回転して押し出しゴム2を前方へ引っ張ることにより、口金23の開口端24で押し出しゴム2が引きちぎられるようにして切断される。その切断部分が成形ローラ13、14の隙間18を通過してゴムストリップ3の後尾部分となった後、成形ローラ13、14が停止する。これにより、成型ドラム15に巻き付けるべき長さの長尺ゴム部材(成形ローラ13、14の隙間18を通過する前は押し出しゴム2で、通過した後はゴムストリップ3)が切り出される。
【0046】
その後、ゴムストリップ3の後尾部分の貼り付けが完了することにより、タイヤ用の円筒ゴム部材が完成する。
【0047】
なお、上記のように、口金23の開口端24で押し出しゴム2が切断される。そのため、1本の長尺ゴム部材を押し出し終わった後、次の長尺ゴム部材の押し出しが開始されるまで、押し出し機11は、口金23の開口端24までゴムが充填された状態で待機している。その待機中に、押し出し機11の内部のゴムが加熱される。
【0048】
以上の動作が繰り返されることにより、複数本の長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出され、それぞれの長尺ゴム部材から円筒ゴム部材が成型される。
【0049】
次に、上で説明したゴム部材の成型の流れの中での、押し出し機11からの長尺ゴム部材(押し出す時点では押し出しゴム2)の押し出し速さについて説明する。
【0050】
まず、押し出し機11から長尺ゴム部材を押し出している間の、ギアポンプ22の出口におけるゴムの圧力(ゴム圧力)の測定結果を
図7に示す。
図7において、実線はギア28の回転数が45回転/分のときのゴム圧力の時系列変化であり、破線はギア28の回転数が20回転/分のときのゴム圧力の時系列変化である。ギア28の回転数が、破線のデータ測定時は実線のデータ測定時の30%程度であるため、押し出し速さも、破線のデータ測定時は実線のデータ測定時の30%程度となる。
【0051】
図7から、押し出し速さが速いときは、押し出し開始から所定時間経過後に、ゴム圧力の脈動が始まることがわかる。この脈動は、加熱不十分なゴムを強制的に高速で押し出すために生じるものである。一方、押し出し速さが遅いときは、押し出し開始から長時間経過してもゴム圧力がほとんど脈動せず、僅かな脈動は生じるもののその開始が遅いことがわかる。本実施形態はこの違いを利用したものである。
【0052】
本実施形態では、上記のゴム部材の成型の流れの中で、制御部32が押し出し機11から押し出される長尺ゴム部材の押し出し速さを制御する。具体的には、制御部32は、押し出し機11が1本の長尺ゴム部材を押し出している途中で、押し出し速さを遅くする。そのため、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける前期の押し出し速さが、一定の速さV1で、同じ1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける後期の押し出し速さが、別の一定の速さV2となり、速さV2が速さV1よりも遅くなる。ここで、速さV2は速さV1の半分以下が好ましい。
【0053】
制御部32が押し出し速さを速さV1から速さV2へ変更するタイミング(換言すれば、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける前期と後期の境界)は、押し出し機11のゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了する前が好ましい。押し出し速さが速さV1から速さV2へ時間をかけて徐々に変わる場合は、押し出し機11のゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了する前に、速さV2への変更が完了していることが好ましい。
【0054】
押し出し機11のゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了するタイミングは、押し出し機11のゴム容量、長尺ゴム部材の単位長さあたりの体積、及び長尺ゴム部材の押し出し速さから計算することができる。ここで、ゴム容量及び体積を重さに変更して計算しても良い。
【0055】
なお、制御部32が押し出し速さを速さV1から速さV2へ変更するタイミングは、押し出し機11のゴム容量にもよるが、例えば、ゴムストリップ3が成型ドラム15の軸方向半分程度まで巻き付けられた時である。
【0056】
このような押し出し速さの制御により、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける前期には、長尺ゴム部材が比較的高速で押し出される。しかし、このとき押し出されるゴムは押し出し開始以前から押し出し機11の内部に存在して十分加熱されたゴムであるため、ゴム圧力の脈動が生じることなく、長尺ゴム部材がスムーズに押し出される。
【0057】
一方、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおける後期には、長尺ゴム部材の押し出し開始後にバレル20に投入された加熱不十分なゴムが押し出される。しかし、このとき押し出されるゴムは比較的低速で押し出されるため、ゴム圧力の脈動が生じることなく、長尺ゴム部材がスムーズに押し出される。このようにして、1本の長尺ゴム部材が、先頭部分3aから後尾部分までスムーズに押し出される。
【0058】
上記のように、複数本の長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出されるが、n本目の長尺ゴム部材の押し出しが完了してからn+1本目の長尺ゴム部材の押し出しが開始されるまでの待機時間が存在する。その待機時間に、n+1本目の長尺ゴム部材に使用されるゴムが押し出し機11の内部で加熱され、押し出し機11の内部におけるゴムの加熱状況が、n本目の長尺ゴム部材の押し出し開始直前の状況に近くなる。そこで、n+1本目の長尺ゴム部材の押し出しにおいても、制御部32は、n本目の長尺ゴム部材の押し出しのときと同様に押し出し速さを制御する。このようにして、所定の時間間隔で押し出される全ての長尺ゴム部材の押し出しにおいて、制御部32が押し出し速さを速さV1から速さV2へ変更する。
【0059】
制御部32は、押し出し機11から押し出される長尺ゴム部材の押し出し速さを変更する場合は、それに合わせて、成形ローラ13、14及び成型ドラム15の回転の速さも変更する。例えば、制御部32は、長尺ゴム部材の押し出し速さを遅くする場合は、成形ローラ13、14及び成型ドラム15の回転の速さも遅くする。成形ローラ13、14及び成型ドラム15の回転の速さの変更率は、長尺ゴム部材の押し出し速さの変更率と同じが好ましい。
【0060】
次に、本実施形態の効果について説明する。
【0061】
以上のように本実施形態では、制御部32が、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さを、押し出し前期の押し出し速さよりも遅くする。ここで、押し出し後期に押し出されるゴムは加熱不十分であり、押し出し前期と同じ速さで長尺ゴム部材を押し出すと口金23付近においてゴム圧力の脈動が生じるおそれがある。しかし、上記の通り押し出し後期の押し出し速さを遅くすることにより、ゴム圧力の脈動を防ぐことができる。このようにゴム圧力の脈動を防ぐことができるため、長尺ゴム部材の形状を安定化することができる。
【0062】
また、本実施形態では、1本の長尺ゴム部材が、押し出し機11のゴム容量より多くのゴムからなるため、1本長尺ゴム部材の押し出しにおける後期には、長尺ゴム部材の押し出し開始後にバレル20に投入された加熱不十分なゴムが押し出されることとなる。しかし、制御部32が、押し出し後期の押し出し速さを、押し出し前期の押し出し速さよりも遅くするため、加熱不十分なゴムであってもゴム圧力の脈動が生じにくい。
【0063】
逆に、制御部32による押し出し速さの制御によりゴム圧力の脈動を防ぐことができるため、押し出し機11のゴム容量が小さくても良い。そのため、ゴム部材成型装置10を大型化させる必要がない。
【0064】
また、本実施形態では、押し出し機11のゴム容量と同量のゴムの押し出しが完了する前に、制御部32が長尺ゴム部材の押し出し速さを遅くする。そのため、長尺ゴム部材の押し出し開始後にバレル20に投入された加熱不十分なゴムを、確実に、遅い速さで口金23の開口端24から押し出すことができる。
【0065】
また、本実施形態では、複数本の長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出し機11から押し出されるが、制御部32は、それぞれ長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さを、押し出し前期の押し出し速さよりも遅くする。これにより、全ての長尺ゴム部材の形状を安定化することができる。
【0066】
ここで、「所定の時間間隔」が短い場合には、2本目以降の長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し開始時に押し出し機11内の口金23から遠い場所にあったゴムが、加熱不十分なまま押し出し後期に押し出されるおそれがある。しかし、制御部32が、押し出し後期の押し出し速さを遅くするため、押し出し後期に押し出されるゴムが加熱不十分だとしてもゴム圧力の脈動が生じにくい。
【0067】
次に、変更例について説明する。以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができるが、以下ではその一部について説明する。
【0068】
<変更例1>
ゴム部材成型装置の構成は、上記実施形態のものに限定されない。
【0069】
例えば、上記実施形態における押し出し機11と成型ドラム15の間に、成形ローラ13、14がなくても良い。その場合、押し出し機11から押し出された押し出しゴム2が成型ドラム15に巻き付けられることとなる。
【0070】
また、上記実施形態における成形ローラ13、14と成型ドラム15の間に、ゴムストリップ3の先頭部分3aを保持する保持装置が配置されても良い。その場合、成形ローラ13、14の隙間18を通過したゴムストリップ3の先頭部分3aをその保持装置が保持して成型ドラム15に貼り付ける。
【0071】
<変更例2>
押し出し機11のゴム容量が十分大きく、押し出し機11のゴム容量が、1本の長尺ゴム部材に使用されるゴムの量以上となる場合がある。具体的には、押し出し機11のゴム容量が、長尺ゴム部材の数にして1本以上2本未満分のゴムの量である場合や、複数本の長尺ゴム部材に使用されるゴムの量である場合がある。
【0072】
このような変更例の場合も、押し出し機11の内部では、口金23に近い場所のゴムほど高温で、口金23から遠い場所のゴムほど低温になっている。そこで、このような変更例の場合も、制御部32が、1本の長尺ゴム部材の押し出しにおいて、押し出し後期の押し出し速さを、押し出し前期の押し出し速さよりも遅くする。これにより、押し出し後期において押し出されるゴムが比較的低温だとしてもゴム圧力の脈動が生じにくく、長尺ゴム部材の形状が安定化する。
【0073】
なお、このような変更例の場合に、押し出し速さを変更するタイミングは、押し出し機11内の比較的低温のゴムが口金23の開口端24に到達する前であることが好ましい。また、押し出し後期の押し出し速さは、押し出し前期の押し出し速さの半分以下が好ましい。
【0074】
また、このような変更例の場合も、複数本の長尺ゴム部材が所定の時間間隔で押し出されるが、それぞれの長尺ゴム部材の押し出しにおいて、制御部32が、押し出し後期の押し出し速さを押し出し前期の押し出し速さよりも遅くすることが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
1…原料ゴムシート、2…押し出しゴム、3…ゴムストリップ、3a…先頭部分、10…ゴム部材成型装置、11…押し出し機、12…レットオフ装置、13…成形ローラ、13a…回転軸、13b…凹み、14…成形ローラ、14a…回転軸、15…成型ドラム、15a…回転軸、16…押圧ローラ、17…ボビン、18…隙間、19…成形ローラ用モータ、20…バレル、20a…開口、21…スクリュー、22…ギアポンプ、23…口金、24…開口端、25…ホッパー、26…加熱装置、27…スクリュー用モータ、28…ギア、29…ギア用モータ、30…移動装置、31…ドラム用モータ、32…制御部、33…進退装置