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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012949
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】施術支援装置および施術支援方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/00 20060101AFI20250117BHJP
   G09B 19/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61C19/00 Z
G09B19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116162
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】520228016
【氏名又は名称】株式会社Dental Prediction
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇野澤 元春
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052LL01
4C052PP00
(57)【要約】
【課題】生体に対する施術技術を高めることができる仕組みを提供する。
【解決手段】生体模型に対する施術内容の選択を受け付ける受付部と、選択された施術内容に対応するチェックデータを取得するデータ取得部と、前記施術内容に対応する拡張現実(AR)データに基づいて生成されるARモデルを撮像中の生体模型に対応づけて表示する表示部と、前記チェックデータに基づいて、前記生体模型に対する施術を評価し、評価結果を出力する、評価部と、を備える歯科施術支援装置。
【選択図】図21
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体模型に対する施術内容の選択を受け付ける受付部と、
選択された施術内容に対応するチェックデータを取得するデータ取得部と、
前記施術内容に対応する拡張現実(AR)データに基づいて生成されるARモデルを撮像中の前記生体模型に対応づけて表示する表示部と、
前記チェックデータに基づいて、前記生体模型に対する施術を評価し、評価結果を出力する、評価部と、
を備える施術支援装置。
【請求項2】
前記チェックデータは、施術しない領域を示すNGエリアデータを含み、
前記評価部は、
施術に係る施術部の位置情報を取得し、
前記施術部の位置情報に基づく前記施術部の位置と、前記NGエリアデータによって規定される領域とが重複している場合に、前記生体模型に対する前記施術が適正でないことを示す情報を出力する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項3】
前記チェックデータは、施術しない領域を示すNGエリアデータを含み、
前記評価部は、
施術に使用されるツールの位置情報を取得し、
前記ツールの位置情報に基づく前記ツールの位置と、前記NGエリアデータによって規定される領域とが重複している場合に、前記生体模型に対する前記施術が適正でないことを示す情報を出力する、請求項1または2に記載の施術支援装置。
【請求項4】
前記チェックデータは、施術しない領域を示す第1NGエリアデータと、前記第1NGエリアデータを所定の寸法で取り囲む第2NGエリアデータと、を含み、
前記評価部は、
前記生体模型に対する施術に使用されるツールの位置情報を取得し、
前記ツールの位置情報に基づく前記ツールの位置と、前記第2NGエリアデータによって規定される領域とが重複している場合に、前記施術を注意して実施すべきことを示す情報を出力する、請求項1または2に記載の施術支援装置。
【請求項5】
前記チェックデータは、前記生体模型に対する施術に使用されるツールの、前記生体模型の施術位置に関する適切な角度の範囲を示す施術角度データを含み、
前記評価部は、
前記ツールの前記生体模型の施術位置に関する角度情報を取得し、
前記施術位置に関する前記のツールの角度が、前記施術角度データによって規定される適切な角度の範囲から外れた場合に、前記施術が適正でないことを示す情報を出力する、請求項1または2に記載の施術支援装置。
【請求項6】
前記評価部は、
前記ツールの位置情報に基づいて前記ツールの軸情報を取得し、
前記ツールの軸情報に基づいて、前記ツールの前記施術位置に関する角度情報を取得する、請求項5に記載の施術支援装置。
【請求項7】
前記チェックデータは、施術しない領域を示すNGエリアデータを含み、
前記評価部は、
前記生体模型に対する施術に使用されるツールの位置情報を取得し、
前記ツールの位置情報に基づき前記ツールを取り囲む所定の範囲内を示すツール周縁情報を取得し、
前記ツール周縁情報に基づく前記所定の範囲内の位置と、前記NGエリアデータによって規定される領域とが重複している場合に、前記生体模型に対する前記施術が適正でないことを示す情報を出力する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項8】
前記チェックデータは、施術しない領域を示すNGエリアデータを含み、
前記評価部は、
生体模型に対する施術に使用されるツールに関する情報を取得し、
第1の施術に対して、第2の施術に使用されるツールおよび施術位置の少なくとも一方が異なる場合、前記チェックデータに基づいて、前記第2の施術に関する第2のNGエリアを、前記第1の施術に関する第1のNGエリアに対して変化させる、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項9】
前記第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術による施術エリアである第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含め、
第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、前記評価部は、前記第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含めない、
請求項8に記載の施術支援装置。
【請求項10】
前記第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術による施術エリアである第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含め、
第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含める、請求項8または9に記載の施術支援装置。
【請求項11】
前記第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術による施術エリアである第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含め、
第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含めない、請求項8に記載の施術支援装置。
【請求項12】
前記第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術による施術エリアである第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含める、
第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、前記評価部は、前記第2のNGエリアに、前記第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含める、請求項8に記載の施術支援装置。
【請求項13】
前記チェックデータは、施術内容ごとに用いるべきツールに関する情報を含むツールデータを含み、
前記評価部は、
前記ARモデルに含まれる顎骨部分の位置情報に基づく顎骨部分と、前記ツールの位置情報に基づく前記ツールの位置と、が重複した部分を施術エリアと推定し、当該重複した部分に基づいて前記施術エリアの位置情報を生成する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項14】
前記チェックデータは、施術内容ごとに用いるべきツールに関する情報を含むツールデータを含み、
前記評価部は、
前記生体模型に対する施術に使用されるツールに関する情報を取得し、
前記ツールに関する情報が、前記ツールデータに基づいて、選択された前記施術内容で用いるべきツールの情報に該当しない場合に、前記ツールを用いた前記施術が適正でないことを示す情報を出力する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項15】
前記NGエリアデータは、天然歯、義歯、神経、インプラント、顎骨に備わる穴部、およびこれらから所定の距離の領域、の少なくとも一つをNGエリアとして含む位置情報である、請求項3に記載の施術支援装置。
【請求項16】
前記チェックデータは、NGエリアデータを含み、
前記評価部は、
歯列模型に対する施術に使用されるガイドの位置情報を取得し、
前記ガイドの位置情報と前記生体模型の位置情報との間の関係が、前記チェックデータに基づく所定の基準を満たさない場合に、前記生体模型に対する前記ガイドの装着方法が適切でないことを示す情報を出力する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項17】
前記評価部は、
生体模型に対する施術に使用されるガイドの位置情報を取得し、
前記ガイドの位置情報に基づく前記ガイドの位置と、前記生体模型の位置情報に基づく前記生体模型の位置と、の間の空間の体積を算出し、
前記体積が、前記チェックデータに基づく所定の基準よりも大きい場合に、前記生体模型に対する前記ガイドの装着方法が適切でないと評価する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項18】
前記評価部は、
生体模型に対する施術に使用されるガイドの位置情報を取得し、
前記ガイドの位置情報に基づく前記ガイドの位置を、前記生体模型に予め定められた施術位置に隣り合う歯冠に所定の方向に投影した場合に、前記歯冠に対して前記ガイドの投影が重なる割合が所定の基準に満たない場合、前記生体模型に対する前記ガイドの装着方法が適切でないと評価する、請求項1に記載の施術支援装置。
【請求項19】
前記評価部は、施術に係る施術部の位置情報を取得し、前記生体模型に対する施術が終了した場合であって、前記施術部の位置情報に基づく前記施術部の位置と前記NGエリアデータによって規定される座標群とが重複していない場合に、前記生体模型に対する前記施術が適正であることを出力する、請求項2に記載の施術支援装置。
【請求項20】
生体模型に対する施術内容の選択を受け付け、
選択された施術内容に対応する拡張現実(AR)データおよびチェックデータを取得し、
前記ARデータに基づいて生成されるARモデルを撮像中の生体模型に対応づけて表示し、
前記チェックデータに基づいて、前記生体模型に対する施術を評価し、評価結果を出力する施術支援方法。
【請求項21】
コンピュータに、請求項20に記載の方法における各ステップを実行させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、施術支援装置および施術支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2023-002280号公報(特許文献1)がある。この公報には、「第1歯科医師が第1ユーザ端末111からネットワークを介してユーザ登録を行う機能(a)と、前記第1ユーザ端末から送信された、前記第1歯科医師が3Dモデル等を利用して歯科の症例の解説の動画等を、ネットワークを介して受信する機能(b)と、その機能(b)により受信した動画等を分類して第1視聴者の第2ユーザ端末112又は第1ユーザ端末にネットワークを介して表示させる機能(c)と、第2ユーザ端末に分類して表示された動画等を第1視聴者が選択した場合、その選択した動画等を、ネットワークを介して第2ユーザ端末に表示させる機能(d)と、第1視聴者が第2ユーザ端末からネットワークを介して3Dモデル等を購入するための手続きを行う機能(f)を実現するプログラムを有する歯科総合トレーニングサイト118」(要約参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-002280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、歯科総合トレーニングサイトに関するビジネスモデルが開示されている。しかしながら、生体に対する施術技術を高めるための仕組みについては開示されていない。
そこで、本技術は、生体に対する施術技術を高めることができる仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、生体模型に対する施術内容の選択を受け付ける受付部と、選択された施術内容に対応するチェックデータを取得するデータ取得部と、前記施術内容に対応する拡張現実(AR)データに基づいて生成されるARモデルを撮像中の生体模型に対応づけて表示する表示部と、前記チェックデータに基づいて、前記生体模型に対する施術を評価し、評価結果を出力する、評価部と、を備える施術支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本技術によれば、歯科医の施術技術を高めることができる仕組みを提供することができる。
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、歯科施術支援システム100の全体構成の例である。
図2図2は、管理サーバ101のハードウェア構成の例である。
図3図3は、ユーザ端末102のハードウェア構成の例である。
図4図4は、ユーザ情報400の例である。
図5図5は、ARモデルデータ500の例である。
図6図6は、トレーニングデータ600の例である。
図7図7は、インプラント埋設の場合のチェックデータ700の例である。
図8図8は、NGエリアデータ800の例である。
図9図9は、トレーニング準備フロー900の例である。
図10図10は、施術評価フロー1000の例である。
図11図11は、施術評価工程フロー1100の例である。
図12図12は、施術評価工程フロー1200の他の例である。
図13図13は、施術評価工程フロー1300の他の例である。
図14図14は、施術評価工程フロー1400の他の例である。
図15図15は、施術評価工程フロー1500の他の例である。
図16図16は、施術評価工程フロー1600の他の例である。
図17図17は、施術評価工程フロー1700の他の例である。
図18図18は、ARモデルの例である。
図19図19は、歯列模型の例である。
図20図20は、ARモデルとNGエリアの例のである。
図21図21は、ARモデルとNGエリアの他の例である。
図22図22は、ARモデルを歯列模型に重ね合わせる様子を例示した図である。
図23図23は、下顎骨のARモデルの例である。
図24図24は、施術評価中の画面2400の他の例である。
図25図25は、歯列模型にガイドを装着した状態の例である。
図26図26は、歯列模型の他の例である。
図27図27は、歯列模型のサポート台の例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本技術に係る施術支援装置、施術支援方法、およびプログラムについて、図面を参照しながら説明する。なお各図面において、同一の機能を有する構成については、符号の付与と重ねての説明を省略する場合がある。
【0009】
[歯科施術支援システム]
図1は、一実施形態に係る歯科施術支援システム100の構成図の例である。
本技術に係る歯科施術支援システム100は、歯科治療の練習(トレーニング)段階や施術段階において歯列模型(生体模型の一例)を使った施術をその場で評価できるように構成されている。本実施形態においては、歯科領域における施術として、患者の歯列模型を使ってインプラントの埋入手術を練習する場合を例にして、本技術について説明する。
【0010】
歯科施術支援システム100は、図1に示すように、1又は複数の管理サーバ101と、1又は複数のユーザ端末102と、を備えている。歯科施術支援システム100は、例えば、付加的に3Dプリンタ103を含むことができる。1又は複数のユーザ端末102はそれぞれ、ネットワークを介して1又は複数の管理サーバ101に接続可能に構成されている。なお、ネットワークは、有線、無線を問わず、それぞれの端末は、ネットワークを介して互いに情報を送受信することができるようになっている。また、ユーザ端末102は、管理サーバ101とは別体として設けられていてもよいし、管理サーバ101と一体的に設けられていてもよい。
【0011】
歯科施術支援システム100における管理サーバ101およびユーザ端末102(以下、管理サーバ101およびユーザ端末102を単に「端末」という場合もある。)はそれぞれ、例えば、例えば、スマートフォン、タブレット、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)などの携帯端末(モバイル端末)でもよいし、メガネ型(ゴーグル型を含む)や腕時計型、着衣型などのウェアラブル端末でもよい。また、それぞれの端末は、据置型または携帯型のコンピュータや、クラウドやネットワーク上に配置されるサーバでもよい。また、機能の観点からは、VR(仮想現実:Virtual Reality)端末、AR(拡張現実:Augmented Reality)端末、MR(複合現実:Mixed Reality)端末であってもよい。あるいは、それぞれの端末は、これらの複数の端末の組合せであってもよい。例えば、1台のスマートフォンと1台のウェアラブル端末との組合せが論理的に一つの端末として機能し得る。それぞれの端末はまた、これら以外の情報処理端末であってもよい。
【0012】
歯科施術支援システム100のそれぞれの端末や管理サーバ101は、それぞれオペレーティングシステムやアプリケーション、プログラムなどを実行するプロセッサと、RAM(Random Access Memory)等の主記憶装置と、ICカードやハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、ネットワークカードや無線通信モジュール、モバイル通信モジュール等の通信制御部と、タッチパネルやキーボード、マウス、音声入力装置、モーションコントローラ、カメラ部の撮像による動き検知による入力装置、などの入力装置と、GPSやジャイロセンサ,加速度センサなどのセンサ等の入力装置と、モニタやディスプレイ、プリンタ、音声出力装置、発振器等の出力装置と、を任意に備え得る。なお、出力装置は、外部のモニタやディスプレイ、プリンタ、機器などに、出力するための情報を送信する装置や端子であってもよい。
【0013】
主記憶装置には、各種プログラムやアプリケーションなど(ソフトウェア・モジュール)が記憶されており、プロセッサがこれらのプログラムやアプリケーションを実行することで全体システムの各機能要素が実現される。なお、各モジュールは、それぞれ独立したプログラムやアプリケーションにより実装されていてもよいし、1つの統合プログラムやアプリケーションの中の一部のサブプログラムや関数などの形で実装されていてもよい。また、これらの各モジュールは、回路を集積化したりマイクロコンピュータを採用したりすることにより、ハードウェアとして実装されていてもよい(ハードウェア・モジュール)。
【0014】
さらに、各モジュールは、単一プロセッサによって実現されてもよいし、複数のプロセッサによって実現されてもよい。また各モジュールは、単一の端末(管理サーバを含む)に備えられていてもよいし、ネットワークを介して相互に接続された2以上の端末(管理サーバを含む)に分けて備えられていてもよい。また、各モジュールは、ネットワークを介して相互に接続された2以上の端末(管理サーバを含む)のそれぞれ、またはいずれか1つ以上に備えられていてもよい。一部のモジュールが他のモジュールと異なる国において実現される場合も考慮される。
【0015】
本明細書では、各モジュールが、処理を行う主体(主語)として記載されているが、実際には、プロセッサが、各種プログラムやアプリケーションなど実行することで処理がなされる。
【0016】
補助記憶装置には、各種データベース(DB)が記憶されている。「データベース」とは、プロセッサまたは外部のコンピュータからの任意のデータ操作(例えば、抽出、追加、削除、上書きなど)に対応できるように整理して収集されたデータ集合である。補助記憶装置は、1又は複数のデータ集合を記憶する機能要素(記憶部)である。データベースの実装方法は限定されず、例えばデータベース管理システムでもよいし、表計算ソフトウェアでもよいし、XML、JSONなどのテキストファイルでもよい。これらの情報の一部又は全部は、リレーショナルデータベースや、非リレーショナルデータベースに記憶される構成であってよい。データベースは、プロセッサ等と接続可能な状態で、独立して設けられていてもよい。
【0017】
[管理サーバ]
図2は、管理サーバ101のハードウェア構成を例示している。管理サーバ101は、この歯科施術支援システム100を管理する要素である。管理サーバ101は、典型的には、この歯科施術支援システム100を管理・運営する管理者が使用する端末である。管理サーバ101は、例えば、クラウド上に配置された、コンピュータサーバ等によって構成される。
【0018】
管理サーバ101は、主記憶装置201と、補助記憶装置202と、を備える。管理サーバ101はまた、上述のとおりのプロセッサ203と、入力装置204と、出力装置205と、通信制御部206と、を備える。
【0019】
主記憶装置201には、ユーザ端末管理モジュール211、歯科用CT取得モジュール212、ARデータ生成モジュール213、歯列模型生成モジュール214、NGエリアデータ生成モジュール215、サーバ側評価モジュール216等のプログラムやアプリケーションが記憶されている。管理サーバ101の各機能要素は、主記憶装置201に記憶されたこれらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ203が実行することによって実現される。なおこれらのモジュールのうち、例えばサーバ側評価モジュール216等の一部のモジュールは、管理サーバ101における任意の構成要素であり、省略することもできる。
【0020】
補助記憶装置202には、歯科施術支援システム100の動作に必要な情報が記憶される。補助記憶装置202には、例えば、ユーザ情報400、歯科用CTデータ220、歯列模型データ230、ARモデルデータ500、トレーニングデータ600、チェックデータ700、NGエリアデータ800等が記憶されている。これらの情報の詳細については、後述する。
【0021】
管理サーバ101の各機能要素について簡単に説明する。
ユーザ端末管理モジュール211は、ユーザ端末102の動作を管理する。ユーザ端末管理モジュール211は、ユーザ端末102の管理モジュール311等と連携して、ユーザ端末102において歯科施術支援システム100の機能を実現するための基本的な動作を制御する。
【0022】
例えば、ユーザ端末管理モジュール211は、ユーザ端末102の管理モジュール311と連携して、ユーザ端末102のディスプレイ等の出力装置305に、管理サーバ101がウェブ上で提供する歯科施術支援サイトのホームページ、ログインページ、施術内容のメニューページ等を出力(表示)する。また、ユーザ端末管理モジュール211は、例えば、ユーザ端末102の各種モジュールと連携して、これらのページを介してユーザ端末102から入力された情報を取得したり、ユーザ端末102に情報を出力したりする。ユーザ端末管理モジュール211は、例えば、ユーザ端末102から取得した情報(各種情報、指示等)に基づいて動作したり、取得した情報をユーザ情報400等として補助記憶装置202に出力(記憶)したりすることができる。また、選択された施術内容に対応するARモデルデータ等の情報を、ユーザ端末102に出力することができる。
【0023】
歯科用CT取得モジュール212は、歯科用CTデータを取得する。歯科用CTデータは、生体の医用画像データの一例である。生体の医用画像データは、例えば、病気の診断および治療のために、生体内部の構造や機能を画像として可視化することができる情報を広く包含し、例えば、X線撮影、コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)、核医学診断、核磁気共鳴画像(MRI)法、超音波断層画像などにより取得されるデータのいずれか1つ、または2つ以上の組合せであってよい。これらの医用画像データは、例えば、生体内部の構造や機能を画像として可視化できるように再構成されたものであってよい。
【0024】
さらに、本実施形態では、歯科用CTデータとして顎口腔領域の医科・歯科用CT(Computed Tomography)データを利用する例を示しているが、顎口腔領域の生体組織の3次元形態情報を取得できるものであればこれに限定されない。歯科用画像として、例えば、単純/造影CTデータ、磁気共鳴撮像データ、デジタルX線撮像データ、コンピュータ・ラジオグラフィデータ、単一光子放射断層撮像データ、陽電子放出断層撮像データ、超音波撮像データ等の各種の医科歯科画像データのいずれか1つ、または2つ以上の組合せであってよい。これに限定されるものではないが、歯科用CTデータは、例えば、DICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)通信規格に従うものであり、データフォーマットはHL7(Health Level Seven)であるとよい。なお、本明細書で言う歯科用CTデータとは、歯・顎・顔面のCT撮像に最適化された、いわゆる歯科用コーンビームCTを含み得るが、これに限定されない。
【0025】
歯科用CT取得モジュール212は、歯科用CTデータを、歯科医院等に設置されているCT撮像モダリティから取得してもよいし、予め撮像されてクラウドデータベースや各種の記録媒体に記憶されている撮像データを取得してもよい。歯科用CT取得モジュール212は、取得した歯科用CTデータを、補助記憶装置202に歯科用CTデータ220として記憶する。
【0026】
ARデータ生成モジュール213は、歯科用CTデータから拡張現実(Augmented Reality:AR)表示用データを作成する。本技術においてARデータは、コンピュータに対して、現実世界の映像にバーチャルな(仮想の)視覚情報を重ねて表示させることができるものであれば特に限定されず、単純な拡張現実データであってもよいし、複合現実(Mixed Reality:MR)データであってもよい。また、ARデータは、音声情報を含んでいてもよい。ARデータ生成モジュール213は、典型的には、顎口腔領域のCTデータから、顎口腔領域の3次元(3D)モデルに対応するデータ(3DCTデータ)を作成し、この3DCTデータから、ARデータ(コンテンツ)を作成する。以下、顎口腔領域の3Dモデルをベースモデルといい、顎口腔領域の3Dモデルデータをベースデータという場合がある。
【0027】
ARデータ生成モジュール213が作成するARモデルデータは、現実の映像への重ね合わせのためのトリガーが、ロケーション(位置情報)型であってもよいし、ビジョン(画像認識)型であってもよいし、これらの組合せであってもよい。また、ビジョン型としては、マーカー型、空間認識型、物体認識型(立体認識型)等のいずれか1つであってもよいし、これらの2つ以上の組合せであってもよい。ARモデルデータは、例えばマーカーを必要することなく、オブジェクトそのものの形状をマーカーとしてリアルタイムに認識し、ARモデルを拡張表示する、オブジェクトトラッキング型のARモデルデータであることが好ましい。例えば、ARモデルデータは、ARモデルそれ自体の形態と同一または類似の形態を有する歯列模型を、方位および寸法が共通となるようにトラッキング(追跡)するように構成されているとよい。
【0028】
ARデータ生成モジュール213は、例えば、三次元コンピュータ支援設計(CAD)機能および画像処理機能によって歯科用CTデータを加工する。画像処理機能とは、典型的には、二値化~多値化処理、ノイズ除去処理、エッジ強調処理、画像認識処理、3Dモデリング、レンダリング処理、デジタル合成等を実現する機能部を含み、例えば、3DCG(3次元コンピュータグラフィックス)ソフトウェア等により実現することができる。画像処理機能は、画像解析機能を備えていてもよく、例えば、3Dモデリングソフトウェア(例えば、Fiji:生物学的画像解析のためのオープンソースプラットフォーム)、OrtogOnBlender(オープンソース3Dコンテンツ作成ソフトウェア)等により実現することができる。また、ARデータ生成モジュール213は、例えば、ARコンテンツ作成機能(例えば、ARCoreやARKit等)を利用して、3DCTデータからARデータを作成する。
【0029】
ARデータ生成モジュール213は、まず、歯科用CTデータから、上顎骨、上部歯列、下顎骨、下部歯列、上部歯肉、および下部歯肉の3DCTデータをベースデータとして作成する。具体的には、ARデータ生成モジュール213は、例えば、取得された歯科用CTデータから、3DCT像を作成し、上顎骨および上部歯列を含む部分と、下顎骨および下部歯列を含む部分と、を切り出した後、生体組織ごとのX線吸収量の差に基づき、硬組織である上顎骨、上部歯列、下顎骨、および下部歯列等、軟組織である上部歯肉、下部歯肉、および歯髄等、をそれぞれ抽出する(セグメンテーション)。またこのとき、ARデータ生成モジュール213は、3DCT像のうち、例えば、歯列模型に不要な、頚椎部分、頬部分、舌部分、およびその他アーチファクト部分を削除する。これにより、硬組織および軟組織の3DCTデータを生成する。
【0030】
ARデータ生成モジュール213は、さらに、3DCTデータ(ベースデータの一例)に基づいて、特徴部分データを作成する。特徴部分データとは、生体に対して施術を行うに際し、注意すべき位置や、施術しない位置、などの特徴的な部分に対応する3D像に関連するデータである。ARデータ生成モジュール213は、例えば、3DCTデータにおけるX線吸収量の差と位置情報とに基づく画像処理によって特徴部分を特定し、この特徴部分に関連する3Dデータを特徴部分データとして生成する。ARデータ生成モジュール213は、例えば、3DCTデータにおけるX線吸収量の差により特徴部分の候補となる部分を抽出し、予め各特徴部分について用意された代表的な位置情報と照らし合わせることで、各特徴部分を特定する。
【0031】
口腔内領域の施術における上記特徴的な部分としては、具体的には、例えば、神経および血管の走行位置に関連する、オトガイ孔、下顎管(下歯槽管)、切歯管、後歯槽管(上歯槽管)、大口蓋孔、歯髄部分、顎骨部分、神経または動静脈、嚢胞、腫瘍、およびその他病巣等が挙げられる。また、特徴部分は、皮質骨や、上顎洞壁、その他の組織を含んでいてもよい。特徴部分は、さらに、歯列(天然歯および義歯を含む所定の歯牙であり得る)やインプラント体等を含んでいてもよい。これらの特徴部分の位置や形状は、患者ごとに異なるため、特徴部分データは、歯科用CTデータと同様に患者固有の情報である。
【0032】
ARデータ生成モジュール213は、例えば、取得した歯科用CTデータ(医用画像データの一例)における検出量特性および三次元構造の少なくとも一方に基づく画像処理により、ベースデータおよび特徴部分データを生成する。検出量特性とは、画像を作成するために生体から放射され検出器等によって受信(検出)する信号の量やその分布等に関する情報をいう。なお、X線撮影、X線CT、核医学診断では、生体から放射される(整体を通過する場合を含む。)放射線を検出し、その検出信号を画像化している。核磁気共鳴画像法は生体から放射される水の核磁気共鳴信号を検出し、超音波断層画像は生体に送信された超音波の反射波を検出し、その検出信号をそれぞれ画像化している。核磁気共鳴画像を用いる場合は、水素検出量に基づいて同様に画像処理することができる。
【0033】
ARデータ生成モジュール213は、上記の通り生成した、上顎骨、上部歯列、下顎骨、下部歯列、上部歯肉、下部歯肉の各3Dモデルデータ(ベースデータ)と、特徴部分データとを、補助記憶装置202にそれぞれ保存する。このときARデータ生成モジュール213は、これらの3Dモデルデータを、例えば、AR表示可能なファイル形式(例えば、USDZ形式やGBL形式等)として保存する。これにより、ARモデルデータ500が作成される。ARデータ生成モジュール213は、ベースデータと特徴部分データとを、対応付けて保存する。なお、本実施形態において、ARモデルデータ500は、ARデータ生成モジュール213が作成するが、ARモデルデータ500として、人手によって作成されたものを用いてもよい。
【0034】
歯列模型生成モジュール214は、歯科用CTデータから歯列模型データを作成する。歯列模型生成モジュール214は、例えば、患者の顎口腔領域のCTデータに基づいて、歯列模型を三次元造形装置(3Dプリンタ103)で造形するための3Dプリンタ用データを作成する。歯列模型生成モジュール214は、例えば、ARデータ生成モジュール213が作成した上記のベースデータ、ARモデルデータ500および画像ファイル形式のデータのいずれかを利用して、歯列模型データを作成してもよい。これに限定されるものではないが、歯列模型生成モジュール214は、例えば、硬組織について、上顎骨および上部歯列部分のデータから上顎模型データを作成し、下顎骨および下部歯列部分のデータから下顎模型データを作成するとよい。歯列模型生成モジュール214は、例えば、上顎骨および上部歯列部分の3Dサーフェスを、歯列模型データとして出力してもよい。3Dプリンタ用データは、例えばSTL(Standard Triangulated Language)データである。歯列模型生成モジュール214は、例えば、コンピュータ支援設計(CAD)機能によって実現される。
【0035】
歯列模型生成モジュール214は、生成した歯列模型データを、補助記憶装置202の歯列模型データ230として記憶する。歯列模型データ230は、3Dプリンタ103で歯列模型を造形する際に、造形すべき歯列模型の形状等を表すデータである。また、歯列模型生成モジュール214は、例えば、生成した歯列模型データを、3Dプリンタ103に出力する。歯列模型生成モジュール214は、例えば、歯列模型データに基づいて、3Dプリンタ103に、歯列模型データを作製させるための指示を出力する。これにより、歯列模型データに対応する歯列模型が作製される。
【0036】
NGエリアデータ生成モジュール215は、NGエリアデータ800を作成する。NGエリアデータ生成モジュール215は、ARデータ生成モジュール213が作成した上記のARモデルデータに基づいて、NGエリアデータ800を作成する。NGエリアデータとは、施術を行うに際して注意すべき位置や、施術しない位置、等を表すデータであって、本技術に係る施術評価において、評価基準として用いるデータである。NGエリアデータは、本技術におけるチェックデータの一例である。
【0037】
NGエリアデータは、例えば一例として、上記の特徴部分データにおける、オトガイ孔、下顎管、後歯槽管、大口蓋孔等の生体部位と、当該生体部位を所定の寸法で取り囲む領域と、を表す位置情報等であり得る。生体部位を取り囲む領域の寸法(離間距離)は、例えば後述するチェックデータ700(図7)に示されるように、対象の生体部位や施術内容によって異なり得る。また、NGエリアデータは、例えば上記上部歯列および下部歯列における歯牙とこの歯牙を所定の寸法で取り囲む領域とを表す位置情報であったり、その他、上顎骨および下顎骨の頬側および舌側の側端部(骨壁)における所定の厚みの領域などであったりし得る。さらにNGエリアデータは、例えば、歯列または歯牙に対するガイドの相対的に不適切な位置関係を表す情報であり得る。NGエリアデータ生成モジュール215は、例えば、特徴部分データと、チェックデータ700に含まれる特徴部分を取り囲む領域の寸法情報とに基づいて、NGエリアデータを生成する。NGエリアデータ生成モジュール215は、作成したNGエリアデータ800を、例えば補助記憶装置202にNGエリアデータ800として記憶する。
【0038】
なお、NGエリアデータ生成モジュール215は、ユーザ端末102の評価モジュール315と連携して、ユーザ端末102において取得したユーザの施術を示す情報に基づいて、新たにNGエリアデータ(以下、第2のNGエリアデータという場合がある。)を生成するように構成されていてもよい。この場合、NGエリアデータ生成モジュール215による第2のNGエリアデータの生成処理は、ユーザ端末102の評価モジュール315における第2のNGエリアデータの生成処理と同様であってよく、ここでの説明は省略する。NGエリアデータ生成モジュール215は、生成した第2のNGエリアデータを、例えばユーザ端末102の補助記憶装置302にNGエリアデータ800として出力する。なお、本実施形態において、NGエリアデータ800は、NGエリアデータ生成モジュール215が作成するが、NGエリアデータ800として、人手によって作成されたものを用いてもよい。
【0039】
サーバ側評価モジュール216は、ユーザによる施術を評価する。サーバ側評価モジュール216は、例えばユーザ端末102の評価モジュール315と連携して、ユーザによる施術を評価する。サーバ側評価モジュール216における評価処理は、後述する評価モジュール315における評価処理と同様であってよく、ここでの説明は省略する。サーバ側評価モジュール216は、ユーザ端末102の評価モジュール315と連携して、評価結果をユーザ端末102のディスプレイ(出力装置305の一例。以下同様。)に出力(表示)する。
【0040】
[ユーザ端末]
図3は、ユーザ端末102のハードウェア構成の例である。ユーザ端末102は、歯科施術支援システム100を利用するユーザが操作する端末であり、本技術における歯科施術支援装置の一例である。ユーザ端末102は、例えば、スマートフォン、タブレット、ARグラス付きコンピュータ、ヘッドマウント型ディスプレイ付きコンピュータ、ヘッドマウント型AR端末等の端末で構成される。
【0041】
ユーザ端末102は、主記憶装置301と、補助記憶装置302と、を備える。ユーザ端末102はまた、上述のとおりのプロセッサ303と、入力装置304と、出力装置305と、カメラ306と、通信制御部307と、を備える。カメラ306は、スマートフォンやタブレットに内蔵されている撮像装置であってもよいし、ARグラスやヘッドマウント型ディスプレイ等のウェアラブルデバイスに内蔵されている撮像装置などであってもよい。出力装置305は、スマートフォンやタブレットに備えられた表示装置(ディスプレイ)であってもよいし、ARグラスやヘッドマウント型ディスプレイにおける表示装置(ディスプレイ)等であってもよい。
【0042】
主記憶装置301には、管理モジュール311、受付モジュール312、データ取得モジュール313、表示モジュール314、評価モジュール315等のプログラムやアプリケーションが記憶されており、これらのプログラムやアプリケーションをプロセッサ303が実行することで、ユーザ端末102の各機能要素が実現される。
【0043】
補助記憶装置302には、ユーザ端末102の動作に必要な情報が記憶される。補助記憶装置302には、例えば、ユーザ情報400、ARモデルデータ500、トレーニングデータ600、チェックデータ700、NGエリアデータ800等が記憶される。補助記憶装置302は、管理サーバ101の補助記憶装置202に記憶されるこれらの情報の一部または全部であってよい。
【0044】
ユーザ端末102の各機能要素について簡単に説明する。各機能要素の具体的な動作については、後述する。
管理モジュール311は、歯科施術支援システム100を利用する際のユーザ端末102の基本的な動作を制御する。管理モジュール311は、例えば、管理サーバ101のユーザ端末管理モジュール211等と連携して、ユーザ端末102のディスプレイに、歯科施術支援サイトのログインページや、歯列模型への施術のトレーニング内容を示すメニューページ等を出力(表示)する。
【0045】
受付モジュール312は、ユーザによるユーザ端末102の操作を受け付ける。受付モジュール312は、例えば、歯列模型に対する施術内容の選択を受け付ける。受付モジュール312は、例えば、メニューページに表示された施術トレーニング内容のうち、ユーザがトレーニングを希望する施術内容に対する選択操作を受け付ける。
【0046】
データ取得モジュール313は、選択された施術内容に対応する情報を取得する。データ取得モジュール313は、管理サーバ101の管理モジュール311と連携して、例えば、選択された施術内容に対応する、ARモデルデータ、NGエリアデータ、およびチェックデータを取得する。データ取得モジュール313は、取得したARモデルデータ、NGエリアデータ、およびチェックデータをそれぞれ、例えば補助記憶装置302に、ARモデルデータ500、チェックデータ700、およびNGエリアデータ800として記憶する。また、データ取得モジュール313は、取得したデータに基づいて、後述するトレーニングデータ600を入力する。
【0047】
表示モジュール314は、ARモデルデータに基づいて生成されるARモデルをディスプレイに表示する。表示モジュール314は、ARモデルデータに基づいて生成されるARモデルを撮像中の歯列模型に対応づけて表示する。表示モジュール314は、例えば、ARモデルを、ユーザによる選択に応じて、ARコンテンツとオブジェクトとで切り替え可能な形態で表示するように構成されていてもよい。
【0048】
評価モジュール315は、歯列模型に対する施術を評価し、評価結果を出力する。評価モジュール315は、例えばチェックデータ700に基づいて、ユーザによる歯列模型に対する施術を評価し、その評価結果を出力する。また、評価モジュール315は、施術評価において、カメラ306によって撮像された施術撮像データに基づいて、画像認識したり、第2のNGエリアデータを生成したりする。評価モジュール315は、生成した第2のNGエリアデータを、例えば補助記憶装置202にNGエリアデータ800として記憶する。
【0049】
[情報DB]
図4は、ユーザ情報400の例である。
ユーザ情報400は、この歯科施術支援システム100を利用するユーザに関する情報である。ユーザ情報400は、例えば、ユーザID、ユーザ表示ID、ユーザ名、住所、支払情報、パスワード情報、本人確認情報等の情報を含み、それぞれフィールド名410に対してサンプル値420で例示するような値が入力されている。フィールド名410およびサンプル値420の概要は、概要欄430に説明されている。ユーザ情報400の内容は、この例に限定されない。
【0050】
図5は、ARモデルデータ500の例である。
ARモデルデータ500は、施術対象の患者のARモデルに関する情報である。ARモデルデータ500は、例えば、ARモデルID、ユーザID、患者ID、下顎骨モデル、下歯列モデル、下歯肉モデル、下顎管モデル、等の情報を含み、それぞれフィールド名510に対してサンプル値520で例示するような値が入力されている。
【0051】
ARモデルIDは、ユーザが施術する患者のARモデルを識別するために付与される符号である。患者IDは、当該ARモデルの起源となる患者を識別するために付与される符号である。下顎骨モデル、下歯列モデル、下歯肉モデル、および下顎管モデルは、それぞれ、ARモデルを構成する下顎骨、下歯列、下歯肉、下顎管、等のARモデルであり、これらのARモデルに関する情報は、例えば、値520欄に示されたファイル名のファイルに記憶されている。なお、値520欄には、これらのARモデルファイルの格納先が記憶されていてもよい。ただし、ARモデルデータ500の内容は、この例に限定されない。
【0052】
図6は、トレーニングデータ600の例である。
トレーニングデータ600は、施術内容ごとに設けられるトレーニングに用いるデータに関する情報である。トレーニングデータ600は、例えば、トレーニングID、ARモデルID、チェックポイントID、NGエリアID、等の情報を含み、それぞれフィールド名610に対してサンプル値620で例示するような値が入力されている。
【0053】
トレーニングIDは、施術内容ごとに設けられるトレーニングを識別するために付与される符号である。施術内容としては、例えば、抜歯、切開、ドリル、インプラント埋入、等のステップを含むことができる。チェックポイントIDは、トレーニングごとに、またはそのトレーニングの施術ステップごとに設定されている、チェックすべき施術内容(チェックポイント)に関する情報を識別するために付与される符号である。NGエリアIDは、ARモデルごとのNGエリアを示す情報を識別するために付与される符号である。患者によって施術内容が異なり得る。また、患者ごとにNGエリアの広がり方も異なり得る。ARモデルに対する施術内容ごとに実施するトレーニングのIDと、そのトレーニングに用いるチェックポイントおよびNGエリアのIDは、このトレーニングデータ600によって紐づけられている。
【0054】
図7は、チェックデータ700の例である。
チェックデータ700は、チェックポイントIDごとのチェックすべき内容に関する情報である。チェックデータ700は、例えば、詳細チェックポイントID(詳細CPID)を含むフィールド名710に対して、サンプル値720で例示するような値がそれぞれ入力されている。また、サンプル値720の示す情報の内容は、概要730欄に記載されている。チェックデータ700は、例えば、施術を行うに際し満たすべき施術条件に関する情報を含む。チェックデータ700は、例えば、生体の特徴部分に基づいて、注意すべき領域や、施術しない領域等を表す情報を含む。なお、チェックデータ700の内容は、この例に限定されない。具体的には記載しないが、チェックデータ700は、例えば、施術内容ごとや施術ステップごとに、設定することができる。
【0055】
チェックデータ700は、例えば、使用すべきツールに関する情報を含むことができる。ツールに関する情報は、例えば、ツールを識別するためのツールIDや、ツールの3D形状に関する情報、施術ステップごとに使用すべきツールの種類等の情報を含むことができる。また、チェックデータ700は、例えば、ツールによる施術位置や施術深さ、ツールの角度(姿勢)等に関する情報を含むことができる。また、上述のように、以下に示すNGエリアデータ800は、チェックデータ700の一例である。
【0056】
図8は、NGエリアデータ800の例である。
NGエリアデータ800は、NGエリアに関する情報である。NGエリアデータ800は、例えば、ARモデルIDで識別されるARモデルごとに設けられる、1または複数のNGエリアの位置に関する情報である。NGエリアは、チェックデータ700において示される詳細チェックポイントIDに対応するように、それぞれの詳細チェックポイントIDについて設けられていてもよい。例えば、NGエリアは、それぞれの詳細チェックポイントIDによって識別されるチェックポイントにおいて満たすべき施術条件(チェック内容)を充足しない場合を含むように、設けられていてもよい。本実施形態において、NGエリアの位置に関する情報は、例えば3次元での座標群(以下、単に「座標群」という場合がある)として表わされている。しかしながら、本技術における位置情報はこれに限定されない。NGエリアデータ800は、例えば、フィールド名810に対して、サンプル値820で例示するような値がそれぞれ入力されている。また、サンプル値820の示す内容は、概要830欄に記載されている。
【0057】
[歯科施術支援方法]
本実施形態では、歯科施術支援システム100を利用して、歯列模型に対する施術(トレーニング)を評価する。
[トレーニング準備]
まず、トレーニングの準備について簡単に説明する。図9は、トレーニング準備フロー900の例である。
【0058】
工程S910において、管理サーバ101の歯科用CT取得モジュール212は、例えばユーザ端末102から、予め撮像された患者の歯科用CTデータを取得する。そして、工程S920において、ARデータ生成モジュール213は、取得した歯科用CTデータを基にして、歯列模型およびARモデルのための3Dモデルデータ(ベースデータ)を作成する。
【0059】
工程S930において、ARデータ生成モジュール213は、3Dモデルデータから、ARモデルデータを作成する。図18は、ARモデル1800の例である。図18では、図面の見やすさの観点から、ARモデル1800のうちの、下顎部分を正中面で分けた下顎左側部分のみを表示している。ARモデル1800は、例えば、下顎骨モデル1810と、歯牙モデル1820と、を含む。このARモデル1800に示すように、関連する患者は、第一大臼歯が欠損している。
【0060】
工程S940において、NGエリアデータ生成モジュール215は、歯列模型のための3Dモデルデータから、NGエリアデータを作成する。NGエリアデータ生成モジュール215は、例えば、下顎管に関する特徴部分データを加工し、下顎管とその周囲を3mmの厚みで取り囲む領域をNGエリアデータとして生成する。
【0061】
図20は、ARモデル2000とNGエリア2030の例である。ARモデル2000は、下顎骨モデル2010と歯牙モデル2020とを含む。NGエリア2030は、NGエリアデータ生成モジュール215が作成した上記のNGエリアデータに基づいて表示される、NGエリアの一つである。NGエリア2030は、下顎管に対応する部分と、その周囲3mmの部分と、を合わせた領域を有する。なお、ツール2040は、例えば、下顎骨モデル2010に対する理想的な施術例を表した施術見本である。
【0062】
NGエリアデータ生成モジュール215は、図20に示したNGエリア2030のみならず、他の複数のチェックポイントに関連して、NGエリアデータを作成し得る。例えば、NGエリアデータ生成モジュール215は、歯牙モデルデータを加工し、歯牙とその周囲を1.5mmの厚みで取り囲む領域についてNGエリアデータを作成する。歯牙は、天然歯、義歯、インプラントのいずれであってもよい。
【0063】
図21は、ARモデル2100とNGエリア2130の他の例である。ARモデル2100は、下顎骨モデル2110と歯牙モデル2120とを含む。NGエリア2130は、NGエリアデータ生成モジュール215が作成した上記のNGエリアデータに基づいて表示される、NGエリアの一つである。NGエリア2130は、歯牙に対応する部分と、その周囲1.5mmの部分と、を合わせた領域を有する。NGエリアデータ生成モジュール215は、図21に示したNGエリア2130のみならず、さらに他の複数のNGエリアについてもNGエリアデータを作成し得る。なお、ツール2140は、例えば、下顎骨モデル2110に対する理想的な施術例を表した施術見本である。
【0064】
工程S950において、歯列模型生成モジュール214は、歯列模型データを作成する。歯列模型生成モジュール214は、例えば、ベースデータ及び特徴部分データのいずれか1つ以上に基づき、歯列模型データを作成する。歯列模型生成モジュール214は、例えば、STLフォーマットの歯列模型データを作成する。ここで、例えば、ベースデータに基づいて作成された歯列模型データと、同じベースデータに基づいて作成された特徴部分データは、対応付けられている。付言すると、例えば、これらの歯列模型データ及び特徴部分データは、対応付けられて、例えば補助記憶装置202に保存される。なお、ARデータ生成モジュール213が、例えばベースデータをSTL形式で作成した場合は、工程950における歯列模型データの作成は省略することができる。
【0065】
工程S960において、歯列模型生成モジュール214は、作成した歯列模型データを、3Dプリンタ103に出力する。これにより、3Dプリンタが、歯列模型を造形する。3Dプリンタの構成、種類等は特に制限されず、例えば、液槽光重合方式、インクジェット方式、粉末積層方式等の各種の3Dプリンタから、1つまたは2つ以上を組み合わせて用いることができる。なお、歯列模型の造形に用いる材料は、樹脂に限定されず、一部または全部が、樹脂、セラミック、金属、およびこれらの複合材料であってもよい。これにより、トレーニングに用いる患者の歯列模型を得ることができる。
【0066】
なお、本実施形態の歯列模型は、下顎骨と下歯列の左側部分のみから構成されている。この歯列模型に対しては、例えば、より軟質な樹脂を用いて、モデル人工骨膜と人工歯肉を一体的に形成することができる。これにより、ユーザの顎部に相応の外形を有する歯列模型を実現することができ、より実際の施術に近い条件でのトレーニングを行うことができる。この歯列模型は、例えば、ユーザの元に送られる。この歯列模型は、下顎左側の第一大臼歯が欠損している。ユーザは、この歯列模型を用いて、例えば第一大臼歯の位置にインプラントを埋入する手術についてトレーニングを受けることができる。なお、歯列模型の造形に用いる材料は、樹脂に限定されず、一部または全部が、樹脂、セラミック、金属、およびこれらの複合材料であってもよい。
【0067】
これに限定されるものではないが、歯列模型生成モジュール214は、例えば、ARデータ生成モジュール213が作成した上記のARモデルデータ500および画像ファイル形式のデータのいずれかを利用して、歯列模型データを作成してもよい。歯列模型生成モジュール214は、例えば、硬組織について、上顎骨および上部歯列部分のデータから上顎模型データを作成し、下顎骨および下部歯列部分のデータから下顎模型データを作成するとよい。歯列模型生成モジュール214は、例えば、上記の特徴部分データのいずれか1つまたは2つ以上の組合せを含むように、上顎模型データおよび下顎模型データを作成してもよい。
【0068】
また、歯列模型生成モジュール214は、例えば、ARデータ生成モジュール213が作成した上記の特徴部分データのいずれかを利用して、歯列模型データを作成してもよい。具体的には、例えば、歯列模型生成モジュール214は、歯牙部分、歯髄部分、顎骨部分、神経または動静脈、嚢胞、腫瘍、およびその他病巣の少なくとも1以上の特徴部分を含む、上顎模型データおよび/または下顎模型データを作成してもよい。歯列模型生成モジュール214は、典型的には、これらの特徴部分データを、互いに重複することなく嵌り合うように形成する。これにより、上顎模型および/または下顎模型に、これらの特徴部分を構造的に反映させることができる。例えば、本システムにおいて表示されるARモデルと対応する構造を有する歯列模型を造形することができる。また、このような歯列模型データを用いることで、上顎模型および/または下顎模型において、これらの特徴部分を、他の部分とは異なる色、および/または、異なる材料で造形することができる。
【0069】
また、歯列模型生成モジュール214は、例えば、上顎骨部分および下顎骨部分において、上記特徴部分の少なくとも1つを含まず、当該特徴部分を空とした、上顎模型データおよび/または下顎模型データを作成してもよい。例えば、歯列模型生成モジュール214は、施術に海綿骨組織が影響を及ぼさない場合、海綿骨組織が無く、海綿骨組織部分が空となった歯列模型データを作成してもよい。このような歯列模型データを用いることで、海綿骨組織の無い上顎模型および/または下顎模型を造形することができ、歯列模型の軽量化、造形用材料の節約、および低コスト化を図ることができる。
【0070】
図19は、造形された歯列模型1900の例である。本実施形態の歯列模型1900は、下顎骨と下歯列の左側部分のみから構成されている。この歯列模型1900に対しては、例えば、より軟質な樹脂を用いて、モデル人工骨膜と人工歯肉を一体的に形成することができる。これにより、ARモデルと相応の外形を有する歯列模型を実現することができ、より実際の施術に近い条件でのトレーニングを行うことができる。この歯列模型は、例えば、ユーザの元に送られる。この歯列模型は、下顎左側の第一大臼歯が欠損している。ユーザは、この歯列模型を用いて、例えば第一大臼歯の位置にインプラントを埋入する手術のトレーニングを実施することができる。
【0071】
[トレーニング準備]
ユーザによる施術トレーニングの流れについて説明する。
図10は、施術評価フロー1000の例である。
【0072】
ユーザは、歯列模型の用意と、この歯列模型にインプラント埋入の施術をするための準備と、をする。例えば、予め作成した治療計画に基づき、インプラント体(練習用であってよい)、およびインプラント埋入手術に必要な施術器具等を用意する。準備ができると、例えば、ユーザは、ユーザ端末102を介してウェブ上の歯科施術支援サイトにアクセスし、トレーニングメニューから、所望のトレーニングを選択する。ここでは、例えば、ユーザIDによって紐づけられている、ユーザが入手した歯列模型と対応するARモデルを用いた、インプラント埋入手術のトレーニングを選択することができる。
【0073】
ユーザが歯列模型に対する所望の施術内容を選択すると、工程S1010において、ユーザ端末102の受付モジュール312は、当該施術内容の選択を受け付ける。受付モジュール312は、管理サーバ101の管理モジュール311と連携し、ユーザによって選択されたトレーニング(例えば、インプラント埋入手術における「ドリル工程(ドリリング,穴あけ)」ステップ)に関する情報を管理サーバ101に送信する。ユーザによって選択されたトレーニングに関する情報を受け取った管理サーバ101の管理モジュール311は、選択されたトレーニングに対応するARデータおよびチェックデータをユーザ端末102に送信する。
【0074】
そこで工程S1020において、データ取得モジュール313は、選択されたトレーニング(例えば、インプラント埋入手術における「ドリル工程(埋入窩形成)」ステップ)に対応するARモデルデータおよびチェックデータ(NGエリアデータ800を含む)を取得する。すると、工程S1030において、表示モジュール314が、ARモデルデータおよびNGエリアデータに基づいて、ARモデルおよびNGエリアをディスプレイ(例えば、ヘッドマウントディスプレイ)に表示する。表示モジュール314は、ARモデルおよびNGエリアを、例えば透過画像としてディスプレイに表示することができる。
【0075】
図22は、ARモデル2220を歯列模型2210に重ね合わせる様子を例示した図である。ここで、ユーザ端末102の撮像機能(例えば、ヘッドマウントディスプレイに備えられたカメラ306)が動作していない場合、表示モジュール314は、撮像機能を起動させるように構成されていてもよい。ARモデルデータは、例えば、オブジェクトトラッキング機能が実装されている。また、表示モジュール314は、撮像対象であるオブジェクトの立体形状を認識できるように構成されている。したがって、図22に示すように、ユーザがカメラ306によって歯列模型2210を撮像することで、ディスプレイに歯列模型2210が表示されるとともに、歯列模型2210の立体形状が認識される。
【0076】
これにより、表示モジュール314は、撮像中の歯列模型を起点にして、ARモデル2220および/またはNGエリア(図示せず)を対応づけて表示することができる(例えば図23(B)、図24(B)参照)。すなわち、表示モジュール314は、歯列模型2210における上下前後左右の方位および寸法と、ARモデル2220およびNGエリアにおける上下前後左右の方位(共通の原点)および寸法とが一致するように、歯列模型2210にARモデル2220を対応づけて表示する。その結果、ユーザは、歯列模型2210のどの位置に、NGエリアが配されるかをおおよそ把握することができる。
【0077】
なお、ARモデル2220、NGエリア、および歯列模型2210は、同一の3DCTデータに基づいて作成されている。したがって、より精確なトラッキングのために、ARモデル2220、NGエリアデータ、および歯列模型2210のそれぞれに、対応する3点以上の標識を設けておいてもよい。例えば、評価モジュール315は、ARモデル2220、NGエリア、および歯列模型2210について、咬合平面および/またはカンペル平面の少なくとも一方が一致する状態で重ね合わせるように構成されていてもよい。咬合平面は、例えば、下顎左右中切歯の近心隅角間の中点(切歯点)と下顎左右側第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂を含む平面として規定することができる。カンペル平面は、例えば、鼻翼下点と左右の耳珠上縁点とを含む平面として規定することができる。また、咬合平面および/またはカンペル平面を規定する各部位や、その他、切歯乳頭、上顎結節、硬口蓋等の特徴部位のいずれかの組合せに対して、標識を設けてもよい。これにより、ARモデル2220、NGエリア、および歯列模型2210を、位置や傾き、大きさ等のズレを低減して重ね合わせおよび追跡(トラッキング)を可能にすることができる。
【0078】
[施術およびその評価]
ユーザは、例えばARグラスを装着した状態で、歯列模型に対して施術を行うことができる。インプラント床の形成に際し、ユーザは、例えば、切削ツール(ドリル、切削バー)を用い、インプラント体を埋入するための埋入窩(下穴)を所定の位置(ここでは、下顎左側の第一大臼歯の位置)に形成する。埋入窩の形成に際しては、例えば、位置、深度、プラント埋入方向等を適切に管理する必要がある。評価モジュール315は、工程S1040において、チェックデータに基づいて、歯列模型に対するユーザの施術を評価し、その評価結果をディスプレイに出力(表示)する。
【0079】
<施術評価1>
工程S1040について詳しく説明する。図11は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当する、施術評価工程フロー1100の例である。
【0080】
評価モジュール315は、工程S1110において、例えば施術中のツールの位置情報を取得する。評価モジュール315は、例えばカメラ306によって歯列模型とともにツールを撮像し、画像処理機能によってその3D形態を認識し、解析する。評価モジュール315は、これにより、例えば、歯列模型に対するツールの相対的な位置情報を取得する。評価モジュール315は、例えば、埋入窩の形成中にユーザによって削進されているツールの位置情報を、リアルタイムで取得することができる。
【0081】
評価モジュール315は、工程S1120において、ツールの位置情報に基づくツールの位置と、NGエリアデータ800によって規定されるNGエリアとを比較する。そして、評価モジュール315は、工程S1130において、ツールの位置とNGエリアとが重複しているかを判断する。
例えば、図20に示すNGエリア2030に基づいて施術を評価する場合は、評価モジュール315は、ツール2040の位置(例えば座標群)が、NGエリア2030(例えば座標群)と重複しているかどうかを判断する。換言すると、詳細チェックポイントIDが「CP001-04」で規定されるチェック条件、「インプラントと下顎管との間の距離は約3mm以上」を満たしているかどうかを評価する。
【0082】
評価モジュール315は、ツールの位置とNGエリアとが重複していない場合は(工程S1130でNo)、工程S1140において、施術が適切であることを示す情報を出力する。一方で、評価モジュール315は、ツールの位置とNGエリアとが重複している場合は(工程S1130でYes)、工程S1150において、施術が適切でないことを示す情報を出力する。評価モジュール315は、例えば、リアルタイムで施術を評価し、その結果を出力する。
【0083】
なお、施術が適切であることと、ないことと、の出力手法は特に制限されない。評価モジュール315は、例えば、緑や青の光をディスプレイに点灯させることによって施術が適正であることを出力し、例えば、赤や黄色の光をディスプレイに点灯させることによって施術が適正でないことを出力してもよい。また、評価モジュール315は、例えば、適切であることを示す文字や記号をディスプレイに表示することによって施術が適正であることを出力し、例えば、不適切であることを示す文字や記号をディスプレイに表示することによって施術が適正でないことを出力してもよい。
【0084】
さらに、評価モジュール315は、例えば、施術が適切である場合は何の出力もしないことをもって施術が適切であることを表し、施術が不適切な場合に初めて施術が適正でないことを出力してもよい。また、評価モジュール315は、例えば、ユーザが知覚できるいずれか1以上の動作をユーザ端末102に実行させることによって、施術が適正であることまたは適切でないことを示す情報を出力してもよい。ユーザが知覚できる動作とは、例えば、光や文字、図等による情報の表示、音の発生、振動の発生などのいずれか1つまたは2つ以上の組合せである。
【0085】
評価モジュール315は、例えば、スピーカーから軽快でクリアな正解音を出力することによって施術が適正であることを出力してもよいし、例えば、低い破裂音等の不正解音(例えば、ブザー音)を出力することによって施術が適正でないことを出力してもよい。さらに、評価モジュール315は、例えば、一回の振動を発振器から出力させることによって施術が適正であることを出力し、例えば、複数回の連続振動を発振器から出力させることによって施術が適正でないことを出力してもよい。評価モジュール315は、以上のいずれかを組み合わせて出力してもよい。
【0086】
例えば、図7に示すように、トレーニングにおける1つの施術ステップには、複数のチェックポイントが含まれ得る。したがって、評価モジュール315は、工程S1160において、例えば、施術ステップごとに、全てのチェックポイントの評価が完了したかを確認し、全てのチェックポイントの評価が完了していない場合は(工程S1160でNo)、工程S1170に示すように次のチェックポイントについて評価する。そして、評価モジュール315は、例えば全てのチェックポイントについての評価が完了した場合(工程S1160でYes)に、施術評価工程フロー1100を終了する。
【0087】
<ARモデルの非表示モード>
なお、以上の説明において、表示モジュール314は、ユーザの施術中のディスプレイに、ARモデルおよびNGエリアを表示していた。この場合、ユーザは、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で、NGエリアを確認しながら施術することができる。しかしながら、表示モジュール314は、例えば、ユーザによるARモデルおよびNGエリアの非表示の選択を受け付けることができるように構成されていてもよい。表示モジュール314は、ARモデルおよびNGエリアの非表示の選択を受け付けた場合、ディスプレイに、ARモデルおよびNGエリアを表示しない。
【0088】
<ARモデルを利用したイメージトレーニング>
また、以上の説明において、表示モジュール314は、ユーザの施術中のディスプレイに、ARモデルおよびNGエリアを表示していた。この場合、ユーザは、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で、NGエリアを確認しながら施術することができる。しかしながら、表示モジュール314による、ディスプレイへのARモデルおよびNGエリアの表示は、ユーザの施術中に限定されない。例えば、表示モジュール314は、ユーザが施術していない場合に、ARモデルおよびNGエリアをディスプレイに表示することができる。
【0089】
この場合、ARモデルは、例えば、施術結果モデル含むことができる。施術結果モデルは、例えば、熟練した歯科医による監修のもとで作成された、治療のステップごと理想的な施術態様を表す施術結果モデル(例えば、理想的な切削を行った状態のツールモデル)であり得る。表示モジュール314は、ARモデルとして、この施術結果モデル(例えば、ツールモデル)を併せて表示することができる。これにより、ユーザは、例えば実際のトレーニング前または施術前に、患者の歯列モデルに対する理想的な施術についてのイメージトレーニングを行うことができる。これにより、実際のトレーニングまたは施術に対する負荷を軽減することができる。
【0090】
<施術評価2>
また、以上の説明において、ユーザは、ヘッドマウントディスプレイを装着した状態で施術していた。しかしながら、ユーザがヘッドマウントディスプレイを装着した状態での施術を好まない場合、評価モジュール315は、ユーザによる施術後の歯列模型に対して、施術を評価してもよい(施術後評価モード)。
【0091】
図23は、施術評価中の画面2300の例である。
表示モジュール314は、例えば、(A)施術後の歯列模型2310に対して、例えば、(B)当該ステップに対応するARモデル2320(およびNGエリア)を重ねて表示する。評価モジュール315は、施術に使用されるツールについて位置情報を取得し(工程S1110)、ツールの位置とNGエリアとを比較する(工程S1120)。
【0092】
そして評価モジュール315は、ツールの位置とNGエリアとが重複していない場合(工程S1130でNo)に、(C)施術が適正であることを出力する(工程S1140)。また、ツールの位置とNGエリアとが重複している場合(工程S1130でYes)に、施術が適正でないことを出力する(工程S1150)。このような構成によっても、施術を評価することができる。
【0093】
<施術評価3>
図12は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1200の他の例である。施術評価工程フロー1200は、一つのチェックポイントについて、複数のNGエリアを設定している場合のフローである。例えば、ARデータ生成モジュール213は、下顎管に関する特徴部分データを加工し、下顎管とその周囲を3mmの厚みで取り囲む領域について第1のNGエリアデータを作成し、加えて、下顎管とその周囲を3.5mmの厚みで取り囲む領域について第2のNGエリアデータを作成することができる。
【0094】
データ取得モジュール313は、工程S1020において、選択されたトレーニング(例えば、「ドリル工程(穴あけ)」ステップ)に対応するARモデルデータと、第1のNGエリアデータおよび第2のNGエリアデータを含むチェックデータを取得する。
【0095】
評価モジュール315は、例えばまず、工程S1205において、施術が完了していないことを確認し(S1205でNo)、工程S1210において、ツールの位置情報を取得する。評価モジュール315は、例えばカメラ306によってツールを撮像し、画像処理機能によってその3D形態を認識することで、例えば、歯列模型に対するツールの相対的な位置情報を取得することができる。例えば、評価モジュール315は、施術中にユーザによって移動されているツールの位置情報を、リアルタイムで取得する。
【0096】
評価モジュール315は、工程S1215において、ツールの位置情報に基づくツールの位置(例えば座標群)と、NGエリアデータ800によって規定される第2のNGエリア(例えば座標群)とを比較する。そして、評価モジュール315は、工程S1220において、ツールの位置と第2のNGエリアとが重複しているかを判断する。換言すると、例えば、図7の詳細チェックポイントIDが「CP001-04」で規定されるチェック条件に関連して、インプラントと下顎管との間の距離は約3.5mm以上であるかどうかを評価する。
【0097】
評価モジュール315は、ツールの位置と第2のNGエリアとが重複していない場合は(工程S1220でNo)、ふたたび工程S1205に戻り、引き続き施術を継続する。一方で、評価モジュール315は、ツールの位置と第2のNGエリアとが重複している場合は(工程S1220でYes)、工程S1225において、施術を注意して実施すべきことを示す情報を出力する。すなわち、第1のNGエリアが近くなったことをユーザに報知する。
【0098】
評価モジュール315は、続いて、工程S1230において、施術が完了していないことを確認し(S1230でNo)、工程S1235において、ツールの位置情報を取得する。そして評価モジュール315は、工程S1240において、ツールの位置情報に基づくツールの位置(例えば座標群)と、NGエリアデータ800によって規定される第1のNGエリア(例えば座標群)とを比較する。そして、評価モジュール315は、工程S1245において、ツールの位置と第1のNGエリアとが重複しているかを判断する。換言すると、例えば、図7の詳細チェックポイントIDが「CP001-04」で規定されるチェック条件に関連して、インプラントと下顎管との間の距離は約3mm以上であるかどうかを評価する。
【0099】
評価モジュール315は、ツールの位置と第1のNGエリアとが重複していない場合は(工程S1245でNo)、ふたたび工程S1230に戻り、引き続き施術を継続する。一方で、評価モジュール315は、ツールの位置と第1のNGエリアとが重複している場合は(工程S1245でYes)、工程S1250において、施術が適切でないことを示す情報を出力する。
【0100】
なお、評価モジュール315は、工程S1205において、施術が完了したことを確認した場合(S1205でYes)は、施術評価工程フロー1200を終了することができる。例えば、評価モジュール315は、施術に対して注意すべきことを示す情報を出力することなく、施術を完了し得る。また、評価モジュール315は、工程S1230において、施術が完了したことを確認した場合(S1230でYes)は、施術評価工程フロー1200を終了することができる。例えば、評価モジュール315は、施術に対して注意すべきことを示す情報を出力したのち、施術が適切でないことを示す情報は出力することなく、施術を完了し得る。
【0101】
以上の構成によると、例えば、穴あけステップ等において削孔が第1のNGエリアに到達する前に、第1のNGエリアに近いことを注意喚起することができる。これにより、歯科用CT像の読取に慣れていないユーザや、インプラント埋入手術の経験の少ないユーザ等が、不適切な施術を行うことなく(すなわち、失敗経験を積むことなく)、適切でない領域に近い位置まで施術していることを知覚することができ、施術経験を養うことができる。
【0102】
また、インプラント施術器具(例えば、サージカルツール)について、使用するツール(切削チップ)の先端チップ形状によっては、有効切削長よりも切削深さが深くなる部位が生じ得る。上記構成によると、例えば初めて使用するツール等について、ユーザの覚える施術感覚と実際の施術結果とを対応付けることができ、より適切な施術が可能とされる。
【0103】
本例では、NGエリアデータ生成モジュール215は、第1のNGエリアと第2のNGエリアとの2つのNGエリアを生成したが、NGエリアの数や、その領域の設定の仕方は、上記例に限定されない。例えば、NGエリアデータ生成モジュール215は、理想的な施術領域以外の場所を、第3のNGエリアとして生成してもよい。この場合、評価モジュール315は、ツールの位置が第3のNGエリアと重なった場合に、理想的な施術エリアを外れたことを示す情報を、出力することができる。これにより、歯科用CT像の読取に慣れていないユーザや、インプラント埋入手術の経験の少ないユーザ等が、理想的な施術恵理がどの程度の領域に広がるのかを知覚することができ、施術経験をさらに養うことができる。
【0104】
<施術評価4>
図13は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1300の他の例である。施術評価工程フロー1300は、一つのチェックポイントにおいて、ツールの角度が適切かどうかを評価する場合のフローである。インプラント埋入手術においては、例えば、インプラント体を安定して固定するために、インプラント体の少なくとも一部を顎骨の側面近傍(頬舌側)の相対的に硬質な部分に埋入しつつ、頬側および舌側の側面からは一定の距離を確保することが求められる。また、上顎洞やオトガイ部などへの穿孔を回避するために、インプラント体を下顎骨に対して意図的に傾斜させて埋入する場合もあり得る(傾斜埋入)。インプラントの適切な埋入位置および埋入角度にはある程度のゆとり(許容範囲)があるが、たとえインプラント全体が適切な埋入位置に配置されていても、インプラントの軸が最適角度に対してズレすぎていると、咬合機能、固定力、および審美的な観点等から好ましくない。データ取得モジュール313は、選択されたトレーニング(例えば、「ドリル工程(穴あけ)」ステップ)において、埋入窩形成時のツールの角度が適切かどうかを評価する。
【0105】
図24は、施術中画面2400の他の例である。
評価モジュール315は、例えば、工程S1310において、ツールの位置情報(例えば、座標群)を取得する。評価モジュール315は、例えば図24(A)に示すように、カメラ306によってツールを撮像することで、ツールの位置情報を取得することができる。
【0106】
評価モジュール315は、工程S1320において、例えばツールの位置情報から、ツールの軸情報を取得する。評価モジュール315は、例えばチェックデータ700に記憶されているツールの3D形態情報およびその軸情報との比較に基づいて、ユーザが施術に用いたツールの軸情報を取得することができる。あるいは、評価モジュール315は、例えば、長手方向に延びるツールの座標群を3次元的に解析することで、その軸方向を算出するように構成されていてもよい。
【0107】
評価モジュール315は、工程S1330において、ツールの軸情報に基づき、ツールの施術位置に関する角度を取得する。ツールの軸情報は、例えば、軸上の異なる2点の位置情報に基づいて規定されるベクトル情報等とすることができる。これにより、例えば、理想的なツールの施術姿勢(施術計画におけるツール姿勢)に対する、ユーザの施術ツールの相対的な位置関係を把握することができる。
【0108】
チェックデータは、例えば、歯列模型に対する施術に使用されるツールの施術角度データが含まれている。施術角度データは、歯列模型の施術位置に関するツールの適切な角度(姿勢)の範囲を示し、治療計画に基づいて設定され得る。評価モジュール315は、工程S1340において、例えば図24(B)に示すように、ツールの施術位置に関する角度と、適切な角度の範囲を比較する。評価モジュール315は、工程S1350において、ツールの施術位置に関する角度が、適切な角度の範囲から外れているかどうかを評価し、ツールの角度が適切な角度範囲内である場合(工程S1350でNo)に、施術が適正であることを出力する(工程S1360)。その一方で、ツールの角度が適切な角度範囲から外れている場合は(工程S1350でYes)、評価モジュール315は、図24(C)に示すように、施術が適正でないことを出力する(工程S1370)。このような構成によって、施術におけるツールの角度について評価することができる。なお、施術におけるツールの角度の評価は、他のチェックポイント(例えばツールの位置)と並行して評価することができる。
【0109】
<施術評価5>
図14は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1400の他の例である。上記の施術評価1~3では、神経および血管の走行位置等に関連する特徴部分データに基づいて、その周囲に予め所定の離間距離を設けることで、NGエリアを設定していた。そしてこのNGエリアに対し、ツールの位置が重複しているかどうかを評価していた。施術評価5では、神経および血管の走行位置等に関連する特徴部分データをNGエリアデータとし、神経および血管の走行位置等をNGエリアとして、施術を評価する。
【0110】
評価モジュール315は、例えば、工程S1410において、ツールの位置情報(例えば、座標群)を取得する。評価モジュール315は、工程S1420において、例えばツールの位置情報に基づいて、ツールを取り囲む所定の範囲内を示すツール周縁情報を取得する。評価モジュール315は、例えば施術位置の隣に位置する歯牙に対するツール周縁情報として、ツールの周囲を厚み1.5mmで取り囲む範囲を設定することができる。評価モジュール315はまた、例えば隣接するインプラントに対するツール周縁情報として、ツールの周囲を厚み3mmで取り囲む範囲を設定することができる。さらに評価モジュール315は、例えばオトガイ孔に対するツール周縁情報として、ツールの周囲を厚み5mmで取り囲む範囲を設定することができる。
【0111】
評価モジュール315は、例えば、工程S1430において、ツール周縁情報によって規定されるツール周縁部と、NGエリアと、を比較する。NGエリアは、例えば、施術位置の隣に位置する歯牙、隣接するインプラント、およびオトガイ孔等である。評価モジュール315は、工程S1440において、ツール周縁部とNGエリアとが重複しているかどうかを評価し、ツール周縁部とNGエリアとが重複していない場合(工程S1440でNo)に、施術が適正であることを出力する(工程S1450)。その一方で、ツール周縁部とNGエリアとが重複している場合は(工程S1440でYes)、評価モジュール315は、施術が適正でないことを出力する(工程S1460)。このような構成によって、施術(例えば、位置、深さ、角度等)について評価することができる。なお、この施術評価は、複数のチェックポイント(例えば、施術位置の隣に位置する歯牙、隣接するインプラント、およびオトガイ孔等)について同時に評価することができる。
【0112】
<施術評価6>
図15は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1500の他の例である。上記の施術評価1~5では、1つのツールを用いた1回の埋入窩の形成に対する評価を説明していた。インプラント埋入手術では、埋入窩の形成に際し、切削径の異なる複数のツールを細い順に使用して、少しずつ穴の形を拡大するようにしている。施術評価6では、異なる径の第1のツールと第2のツールを用い、同じ位置に切削する場合について評価する。
【0113】
ユーザは、第1のツールを用いて埋入窩を形成する。第1のツールを用いた穴の形成については、上記の施術評価方法によって評価することができる。評価モジュール315は、例えば、工程S1510において、第1のツールの位置情報(例えば、座標群)を取得する。そして評価モジュール315は、工程S1520において、第1のツールによる第1の施術エリアの位置情報を取得する。ここで、評価モジュール315は、ARモデルに含まれる顎骨部分の位置情報に基づく顎骨部分と、ツールの位置情報に基づくツールの位置と、が重複した部分を第1の施術エリアと推定する。そして評価モジュール315は、この顎骨部分とツール位置とが重複した部分に基づいて、第1の施術エリアの位置情報を生成する。
【0114】
評価モジュール315は、工程S1530において、生成した第1の施術エリアの位置情報に基づいて、第1の施術エリアから所定の距離以上離れた領域が第2のNGエリアとなるように、第2のNGエリアの位置情報を生成する。第2のNGエリアを規定するこの所定の距離は、第1のツールと第2のツールとの間の半径差に、ズレの許容値を加えた値に相当する。
【0115】
ユーザは、第2のツールを用い、第1の施術エリアに重ねて穴を形成する。評価モジュール315は、工程S1540において、第2のツールによる第2の施術エリアの位置情報を取得する。具体的には、評価モジュール315は、まず第2のツールの位置情報を取得するとともに、第1の施術エリアと同様にして、第2の施術エリアの位置情報を生成する。そして評価モジュール315は、工程S1550において、第2のNGエリアと第2の施術エリアとを比較し、工程S1560において、第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複しているかどうかを評価する。
【0116】
第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複していない場合(工程S1560でNo)に、評価モジュール315は、施術が適正であることを出力する(工程S1570)。その一方で、第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複している場合は(工程S1560でYes)、評価モジュール315は、施術が適正でないことを出力する(工程S1580)。このような構成によって、同じ位置に重ねて施術する場合について、施術が適切であるかどうかを評価することができる。なお、同じ位置に3回以上重ねて施術する場合も同様に評価することができる。
【0117】
<施術評価7>
図16は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1600の他の例である。施術評価6では、異なる径の第1のツールと第2のツールを用い、同じ位置に切削する場合について評価する。なお、インプラントを複数本埋設する場合は、例えば複数の埋入窩を隣り合う位置に形成する場合がある。この場合、隣り合うインプラントは、遠心または近心の歯頸部を基準として、3mm以上離間させる必要がある。そこで施術評価7では、隣り合う位置に埋入窩を形成する場合について評価する。
【0118】
ユーザは、ツールを用いて第1の穴を形成する。第1の穴の形成については、施術評価1~5等によって評価することができる。評価モジュール315は、例えば、工程S1610において、ツールの位置情報(例えば、座標群)を取得する。そして評価モジュール315は、工程S1620において、形成した第1の施術エリアの位置情報を取得する。施術エリアの位置情報の取得方法については、施術評価6と同様とすることができる。
【0119】
そして評価モジュール315は、工程S1630において、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含むように、第2のNGエリアの位置情報を生成する。第2のNGエリアを規定するこの所定の距離は、治療計画において、第1のインプラントとこれに隣り合う第2のインプラントでそれぞれ用いるインプラント体や歯冠部の寸法等を考慮して、互いの歯頸部の離間距離が3mm以上となるように、設定することができる。
【0120】
ユーザは、例えば引き続き同じツールを用い、第2のインプラントの埋入窩の形成位置に、第2の穴を形成する。評価モジュール315は、工程S1640において、第2の穴について、第2の施術エリアの位置情報を取得する。具体的には、評価モジュール315は、まず第2の穴を形成した際のツールの位置情報を取得し、ARモデルに含まれる顎骨部分の位置情報に基づく顎骨部分と、第2の穴を形成した際のツールの位置情報に基づくツールの位置と、が重複した部分を第2の施術エリアと推定する。そして評価モジュール315は、この顎骨部分とツール位置とが重複した部分に基づいて、第2の施術エリアの位置情報を生成する。
【0121】
そして評価モジュール315は、工程S1650において、第2のNGエリアと第2の施術エリアとを比較し、工程S1660において、第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複しているかどうかを評価する。評価モジュール315は、第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複していない場合(工程S1660でNo)に、施術が適正であることを出力し(工程S1670)、第2のNGエリアと第2の施術エリアとが重複している場合に(工程S1660でYes)、施術が適正でないことを出力する(工程S1680)。このような構成によって、隣り合う位置にインプラントを埋入する場合について、施術が適切であるかどうかを評価することができる。なお、3本のインプラントを互いに隣り合うように施術する場合も同様に評価することができる。
【0122】
<第2のNGエリアの制御>
なお、施術評価6および7に関して、評価モジュール315は、第1の施術に対して、第2の施術のツールおよび施術位置の少なくとも一方が異なる場合、チェックデータに基づいて、第2の施術に関する第2のNGエリアを、第1の施術に関する第1のNGエリアに対して変化させるように構成されていてもよい。このような処理は、例えば、フラグ処理によって好適に実現することができる。
【0123】
例えば、評価モジュール315は、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアについての情報を算出する処理を、フラグAに基づいて実行するように予め構成することができる。そして例えば、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、フラグAを立てるようにし、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、フラグAを立てないようにする。このような構成によると、例えば施術評価6に示したように、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合はフラグAが立たないため、評価モジュール315は、第2のNGエリアに上記所定の範囲のエリアを含めないように動作する。そして、例えば施術評価7に示したように、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合はフラグAが立つため、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、上記の所定の範囲のエリアを含めるように動作する。
【0124】
すなわち、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含め、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含めない。
【0125】
また、例えば、評価モジュール315は、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアについての情報を算出する処理を、所定のフラグBに基づいて実行するように予め構成することができる。そして例えば、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、フラグBを立てるようにし、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、フラグBを立てないようにする。このような構成によると、例えば施術評価6に示したように、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合はフラグBが立つため、評価モジュール315は、第2のNGエリアに上記所定の範囲のエリアを含めるように動作する。そして、例えば施術評価7に示したように、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合はフラグBが立たないため、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、上記の所定の範囲のエリアを含めないように動作する。
【0126】
すなわち、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含め、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含めない。
【0127】
なお、上記のフラグAおよびフラグBは、組み合わせて用いてもよい。例えば、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、フラグAを立てるようにし、第1の施術と第2の施術とでツールが異なる場合は、フラグBを立てるようにする。これにより、例えば施術評価7に示したように、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、フラグAが立つために、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアとそれを取り囲む所定の範囲のエリアを含めるように動作する。そして例えば施術評価6に示したように、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、フラグBが立つために、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含めるように動作する。
【0128】
すなわち、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが同じ場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含め、第1の施術と第2の施術に使用されるツールが異なる場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含める。
【0129】
また例えば、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、フラグBを立てるようにし、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、フラグAを立てるようにする。これにより、例えば施術評価6に示したように、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、フラグBが立つために、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、前記第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含めるように動作する。そして例えば施術評価7に示したように、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、フラグAが立つために、評価モジュール315は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアおよびこれを取り囲む所定の範囲のエリアを含めるように動作する。
【0130】
すなわち、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが同じ場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲よりも離れたエリアを含める、第1の施術と第2の施術とで施術エリアが異なる場合は、評価モジュール315(評価部の一例)は、第2のNGエリアに、第1の施術エリアおよび当該第1の施術エリアを取り囲む所定の範囲のエリアを含める。
【0131】
上記構成によると、第2のNGエリアを第1または第2の施術エリアに基づいて算出する場合に、評価モジュール315の動作を簡略化することができる。
【0132】
<施術評価8>
図17は、施術評価フロー1000の工程S1040に相当し得る、施術評価工程フロー1700の他の例である。インプラントの埋入に際しては、埋入窩を形成するために、切削径の異なる複数のツールを用いる。このツールは、例えば、使用するインプラントの寸法や、患者の下顎骨硬度等によっても異なり得る。例えば、1つの埋入窩を形成するために、6~10本程度のツール(切削チップ)の中から凡そ5~8本程度のツールを選択して使用する。ツールの使用に慣れていないユーザは、使用すべきツールを間違えるおそれがある。そこで、施術評価8では、埋入窩の形成に用いる切削ツールの種類とその使用順について評価する。チェックデータ700は、治療計画に基づいて、患者ごとに(すなわちARモデルIDごとに)、埋入窩の形成に用いる切削ツールとその使用順とに関する情報を含む。
【0133】
ユーザは、切削用ドリルに切削ツールを装着して、第1の穴を形成するための準備をする。ユーザは、例えば、使用する予定のツールをカメラ306によって撮像する。評価モジュール315は、例えば、工程S1710において、撮像データを基に、施術に使用されるツールに関する情報を取得する。ツールに関する情報とは、ツールに予め設けられたツールを識別するための特徴であり、例えば、ツールの2D形状または3D形状、カラー識別子、識別符号(文字、数字等)、刻印、2次元コード、RFID等であってよい。
【0134】
評価モジュール315は、例えば工程S1720において、取得したツールに関する情報と、施術内容ごとに用いるべきツールに関する情報と、を比較する。そして評価モジュール315は、工程S1730において、チェックデータ700に基づいて、取得したツールに関する情報が、用いるべきツールに関する情報に該当するかどうかを評価する。例えば、評価モジュール315は、取得したツールに関する情報(例えば、ツールID)が、チェックデータに記録された最初に用いるべきツールに関する情報と、一致するかどうかを確認する。
【0135】
評価モジュール315は、取得したツールに関する情報が用いるべきツールに関する情報に該当する場合(工程S173でYes)に、ツールが適正であることを出力し(工程S1740)、取得したツールに関する情報が用いるべきツールに関する情報に該当する場合に(工程S1730でNo)、ツールが適正でないことを出力する(工程S1750)。このような構成によって、ユーザが施術に使用しようとするツールが適切かどうかを評価することができる。なお、2本目以降のツールについても、例えば施術ステップごとに、順に評価することができる。
【0136】
<施術評価9>
そこで、施術評価9では、このクリップ型のガイドの装着について評価する。
【0137】
図25(A)は、歯列模型にガイドを装着した状態の例である。
ガイドは、歯根端切除術や歯根嚢胞摘出術等の手術に用いることができる施術用ガイドである。ガイドは、例えば、クリップ型を呈し、施術位置の歯牙欠損位置に対して近遠心方向の隣在歯2本ずつに亘る程度の大きさを有している。このようなクリップ型のガイドは、取り扱い性に優れる反面、装着安定性に劣るという課題がある。そこで、施術評価9では、このクリップ型のガイドの装着について評価する。
【0138】
このガイドは、歯牙に装着した状態で上顎頬側に配置される1つのガイド孔が、例えば、歯根端の腫瘍等の病巣に対応する位置となるように設計されている。このガイドは、病巣までのドリル位置(切削位置)等を適切に案内することができるように設計されている。チェックデータ700は、治療計画に基づいて、患者ごとに(すなわちARモデルIDごとに)、このクリップ型のガイドに対応するガイドモデルデータを含んでいる。
【0139】
ユーザは、歯列模型に対して施術に使用されるガイドを装着したのち、ガイドを装着した状態の歯列模型をカメラ306によって撮像する。すると、評価モジュール315は、歯列模型に対するガイドの位置情報を取得する。ガイドの位置情報は、例えば、歯列模型に対する三次元での座標群情報として取得することができる。評価モジュール315は、ガイドの位置情報と歯列模型の位置情報との間の関係が、チェックデータに基づく所定の基準を満たさない場合に、歯列模型に対する前記ガイドの装着方法が適切でないことを示す情報を出力する。
【0140】
<隙間体積>
例えば、具体的には、評価モジュール315は、歯列模型に対するガイドの位置情報を取得し、ガイドの位置情報に基づくガイドの位置(例えば、座標群)と、歯列模型の位置情報に基づく歯列模型の位置(例えば、座標群)と、の間の空間の体積を算出する。この体積は、空間座標に基づいて算出することができる。そして評価モジュール315は、この算出された体積が、例えばチェックデータに基づく所定の基準よりも大きい(例えば、断面略U字型のクリップ型ガイドのクリップ壁によって囲まれた部分の体積の10%以上)場合に、歯列模型に対するガイドの装着方法が適切でないと評価することができる。なお、図25において、クリップ型ガイドには、遠近方位に沿う2か所に切り欠きが設けられているが、上記体積の算出に際しては、この切り欠きがなく、断面略U字型のクリップ壁が滑らかに連続していると仮定することができる。
【0141】
<歯牙先端隙間>
また、評価モジュール315は、例えば、歯列模型に対するガイドの位置情報を取得し、ガイドの位置情報に基づくガイドの位置(例えば、座標群)と、歯列模型の位置情報に基づく歯列模型の位置(例えば、座標群)と、を比較する。そして、歯列模型における歯牙の先端部分と、ガイドのクリップ壁の内側表面との間に、所定の寸法以上(例えば、3mm以上)の隙間がある場合に、歯列模型に対するガイドの装着方法が適切でないと評価することができる。
【0142】
なお、評価モジュール315は、例えば歯牙とガイドの位置情報(座標群)に基づいて、例えばサーフェスレンダリング処理を採用することにより、歯牙とガイドのそれぞれの表面構造を抽出することができる。評価モジュール315は、歯牙先端部分(例えば、下方に向かう突頂部)と対向するガイドの表面との離間距離を算出し、この離間距離が所定の閾値(例えば3mm)より大きい場合に、歯列模型に対するガイドの装着方法が適切でないと評価することができる。
【0143】
<歯牙被覆率>
評価モジュール315は、例えば、歯列模型に対するガイドの位置情報を取得し、ガイドの位置情報に基づくガイドの位置(例えば、座標群)と、歯列模型の位置情報に基づく歯列模型の位置(例えば、座標群)と、を比較する。そして、歯列模型においてガイドによって少なくとも一部が覆われている歯牙について、ガイドによる表面被覆率が所定の割合に満たない(例えば80%以下)場合に、歯列模型に対するガイドの装着方法が適切でないと評価することができる。なお、評価モジュール315は、例えば歯牙とガイドの位置情報(座標群)に基づいて、例えばサーフェスレンダリング処理を採用することにより、歯牙とガイドのそれぞれの表面構造を抽出することができる。
【0144】
評価モジュール315は、例えば、ガイド頬側部分を頬側から歯牙表面上に投影したときの、頬側の歯牙表面積に対する歯牙上へのガイド投影面積の割合を算出する。このとき、所定の表面被覆率の割合は、例えば、ガイドに設けられた切り欠き部分については切り欠きがないものとして算出した値を採用し、歯牙上へのガイド投影面積についても切り欠きがないものとして算出してもよい。そして評価モジュール315は、ガイドによる歯牙の表面被覆率が所定の基準に満たない場合に、歯列模型に対するガイドの装着方法が適切でないと評価することができる。
【0145】
上記構成によると、ガイドの装着不良があった場合に、ユーザはガイドの付け直しをすることができ、より正確な位置にインプラントを埋入することができる。
【0146】
<上顎洞壁への陥入>
なお、切削位置の近傍に上顎洞がある場合、ARデータ生成モジュール213は、上顎洞の部分に基づいて、特徴部分データを作成することができる。また、NGエリアデータ生成モジュール215は、この上顎洞部分に関する特徴部分データに基づいて、上顎洞とこれを取り囲む所定の厚みの部分をNGエリアとするNGエリアデータを作成することができる。そして評価モジュール315は、この上顎洞部分に関連するNGエリアデータに基づいて、切削孔の形成について、施術を評価することができる。この場合の施術評価の手法は、例えば、上記の施術評価のいずれか1つ以上を適宜参照することができる。
【0147】
<その他の施術評価>
図26は、歯列模型の他の例である。図27は、歯列模型のサポート台の例である。
表示モジュール314による、歯列模型とARモデルとをより正確に重ね合わせるために、例えば歯列模型は、重ね合わせの基準として利用することが可能な所定の寸法のサポート台を備えることができる。このサポート台は、例えば、液槽光重合方式の3Dプリンタによる歯列模型の造形に際し、オーバーハンギング部分のサポートを支持するサポート台を兼ねていてもよい。表示モジュール314は、例えば、このサポート台の所定の3点以上の位置情報を基準とすることで、歯列模型とARモデルとを確実に対応付けて表示することができる。
【0148】
また、サポート台は、例えば、歯列模型をヒト型人形の口腔内に設置するための設置台となるように設計されていてもよい。このようなサポート台の寸法は、ヒト型人形の口腔内に歯列模型をより自然な姿勢で設置できるように、ヒト型人形の口腔内の形状に合わせて設計することができる。これにより、歯列模型をヒト型人形の口腔内に現実に近い姿勢で設置することができ、歯列模型を用いた施術を、より現実に近い条件でトレーニングすることができる。
【0149】
上記実施形態は、施術評価の一例として、切削ツール等のツールの位置情報を用いて施術評価を行うが、本技術の施術評価としては、ツールの位置情報を用いる場合に限られない。例えば、ツール等を使用して切削等の施術が行われた場合、歯の切削された部位等、口腔内の施術部位の位置情報を用いて、施術評価を行ってもよい。より具体的には、例えば、評価モジュール315(評価部の一例)は、ツール等を使用して施術された口腔内の施術部位の位置情報を取得する。評価モジュール315は、例えばカメラ306によって歯列模型とともに口腔内の施術部位を撮像し、画像処理機能によってその3D形態を認識し、解析する。評価モジュール315は、これにより、例えば、歯列模型に対する口腔内の施術部位の相対的な位置情報を取得する。また、評価モジュール315は、口腔内の施術部位の位置情報に基づく口腔内の施術部位の位置と、NGエリアデータによって規定されるNGエリアとを比較する。そして、評価モジュール315は、口腔内の施術部位の位置とNGエリアとが重複しているかを判断する。評価モジュール315は、口腔内の施術部位の位置とNGエリアとが重複している場合、例えば、施術が適切でないことを示す情報を出力する。評価モジュール315は、口腔内の施術部位の位置とNGエリアとが重複していない場合、例えば、施術が適切であることを示す情報を出力する。付言すると、ツールの位置情報、及び口腔内の施術部位の位置情報は、施術に係る施術部の位置情報の一例である。
【0150】
上記実施形態は、歯列模型を、施術対象の患者のものとしたが、歯列模型は、施術対象の患者のものに限られない。歯列模型は、例えば、施術対象の患者のものに限定されず、他の生体のものであってもよいし、典型的な症例(仮想のモデル症例等を含む。以下同様。)の3Dプリンタ用データから生成される歯列模型であってもよい。また、他のデータ、例えば、特徴部分データや歯科用CTデータ等のデータについても、患者固有のものに限られない。他のデータは、例えば、他の生体のものであってもよいし、典型的な症例の特徴部分データや、典型的な症例の歯科用CTデータ等、典型的な症例のデータであってもよい。
【0151】
上記実施形態では、歯科施術を例にして本技術を説明したが、生体に対する施術としては歯科施術に限定されず、例えば、人の全身に対する外科手術を特に制限なく対象とすることができる。この場合、歯科用CT撮像データに変えて、各種の医科用撮像データを用いることができる。
【0152】
上記実施形態に開示された各モジュールは、複数のサブモジュールが組み合わされていることで構成されていてもよい。また、一のモジュールが実行する動作または実現する機能の一部または全部を、他のモジュールが実行または実現してもよい。
【0153】
上記実施形態においてユーザ端末102の各モジュールが実行することで実現した1または複数の機能要素は、管理サーバ101のモジュールが実行することで実現してもよい。
【0154】
本技術は、歯科施術支援システム100に係る発明を提供するだけでなく、他の側面において、歯科施術支援方法に係る発明を提供することができる。
【0155】
本技術は、コンピュータに、この歯科施術支援方法における各手順を実行させるためのプログラムをも提供する。このプログラムは、1つのプログラムから構成されていてもよいし、2以上のサブプログラムから構成されていてもよい。またプログラムは、コンピュータに、上記手順のうちのいずれか1つまたは2つ以上を実行させるためのプログラムであってもよい。
【0156】
また、本歯科施術支援システム100を構成する1又は複数の管理サーバ101、および1又は複数のユーザ端末102のうち、いずれか1つまたは2つ以上の要素が、互いに異なる国に設置されていてもよい。また、管理サーバ101は、1又は複数のコンピュータによって実現されていてもよく、そのうちのいずれかが互いに異なる国に設置されていてもよい。
【0157】
なお、本技術は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本技術を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0158】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0159】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上記の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0160】
100…歯科施術支援システム、101…管理サーバ、211…ユーザ端末管理モジュール、212…歯科用CT取得モジュール、213…ARデータ生成モジュール、214…歯列模型生成モジュール、215…NGエリアデータ生成モジュール、216…サーバ側評価モジュール、311…管理モジュール、312…受付モジュール、313…データ取得モジュール、314…表示モジュール、315…評価モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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