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特開2025-12957発泡成形用金型の製造方法、及び発泡成形用金型
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012957
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】発泡成形用金型の製造方法、及び発泡成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 44/58 20060101AFI20250117BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20250117BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20250117BHJP
   B22F 5/00 20060101ALI20250117BHJP
   B22F 10/28 20210101ALI20250117BHJP
   B22F 10/38 20210101ALI20250117BHJP
   B29C 33/38 20060101ALI20250117BHJP
   B29C 33/04 20060101ALI20250117BHJP
   B29C 33/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B29C44/58
B29C44/00 G
B33Y10/00
B22F5/00 F
B22F10/28
B22F10/38
B29C33/38
B29C33/04
B29C33/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116173
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】523269937
【氏名又は名称】文 ▲光▼植
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】文 ▲光▼植
【テーマコード(参考)】
4F202
4F214
4K018
【Fターム(参考)】
4F202AB02
4F202AC01
4F202AG20
4F202AJ02
4F202AJ09
4F202CA24
4F202CB01
4F202CD01
4F202CD28
4F202CK88
4F202CN22
4F214AB02
4F214AC01
4F214AG20
4F214AJ02
4F214AJ09
4F214UA21
4F214UB01
4F214UQ08
4F214UQ12
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA33
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA17
4K018KA18
(57)【要約】
【課題】二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含む発泡成形用金型を精度良く効率的に製造することができる製造方法を提供する。
【解決手段】発泡成形用金型1は、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型Bを含む。発泡成形用金型1の製造方法は、造形プラットフォーム2上に金属粉末MPを所定の積層厚さで敷き詰める工程と、前記凹側一体金型又は凸側一体金型Bの3Dモデルデータから変換された前記積層厚さごとのスライスデータを用いて、レーザービームLによる金属粉末MPの溶融・凝固を行う工程とを繰り返す粉末床溶融結合法により、前記凹側一体金型又は凸側一体金型Bを造形プラットフォーム2上に造形する。
【選択図】図11

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凹型及び凸型の間の成形空間で発泡合成樹脂を成形する金型の製造方法であって、
前記金型は、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含み、
前記凹側一体金型は、前記凹型と、前記凹型の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間を設けるように対向する、前記凹型と略同形状の凹側背面部材とを一体にしてなる凹側構造体を含み、前記凹側背面空間を凹側用役空間としたものであり、
前記凸側一体金型は、前記凸型と、前記凸型の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間を設けるように対向する、前記凸型と略同形状の凸側背面部材とを一体にしてなる凸側構造体を含み、前記凸側背面空間を凸側用役空間としたものであり、
前記凹型及び前記凸型には、スリット状の蒸気孔が形成されており、
前記凹型と前記凹側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凹側補強部材があり、
前記凸型と前記凸側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凸側補強部材があり、
造形プラットフォーム上に金属粉末を所定の積層厚さで敷き詰める工程と、
前記凹側一体金型又は前記凸側一体金型の3Dモデルデータから変換された前記積層厚さごとのスライスデータを用いて、レーザービームによる前記金属粉末の溶融・凝固を行う工程と、
を繰り返す粉末床溶融結合法により、
前記形状の前記凹側一体金型又は前記凸側一体金型を前記造形プラットフォーム上に造形する、
発泡成形用金型の製造方法。
【請求項2】
前記凹側一体金型は、前記凹側構造体に加え、凹側取付構造体を有し、
前記凹側取付構造体は、
前記凹側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凹側蒸気供給用配管取付部、
前記凹側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凹側冷却水供給用配管取付部、及び、
前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凹側用役空間から排水するための配管を取り付ける凹側ドレン用配管取付部、並びに、
前記凹側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凹側成形装置本体取付部、
が形成されたものであり、
前記凸側一体金型は、前記凸側構造体に加え、凸側取付構造体を有し、
前記凸側取付構造体は、
前記凸側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凸側蒸気供給用配管取付部、
前記凸側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凸側冷却水供給用配管取付部、及び、
前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凸側用役空間から排水するための配管を取り付ける凸側ドレン用配管取付部、並びに、
前記凸側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凸側成形装置本体取付部、
が形成されたものである、
請求項1に記載の発泡成形用金型の製造方法。
【請求項3】
前記金属粉末は、ステンレス合金、チタン合金、又はニッケル合金の粉末であり、
前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みは1mm以上3mm以下である、
請求項1又は2に記載の発泡成形用金型の製造方法。
【請求項4】
凹型及び凸型の間の成形空間で発泡合成樹脂を成形する金型であって、
二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含み、
前記凹側一体金型は、前記凹型と、前記凹型の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間を設けるように対向する、前記凹型と略同形状の凹側背面部材とを一体にしてなる凹側構造体を含み、前記凹側背面空間を凹側用役空間としたものであり、
前記凸側一体金型は、前記凸型と、前記凸型の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間を設けるように対向する、前記凸型と略同形状の凸側背面部材とを一体にしてなる凸側構造体を含み、前記凸側背面空間を凸側用役空間としたものであり、
前記凹型及び前記凸型には、スリット状の蒸気孔が形成されており、
前記凹型と前記凹側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凹側補強部材があり、
前記凸型と前記凸側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凸側補強部材があり、
前記凹側一体金型は、前記凹側構造体に加え、凹側取付構造体を有し、
前記凹側取付構造体は、
前記凹側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凹側蒸気供給用配管取付部、
前記凹側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凹側冷却水供給用配管取付部、及び、
前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凹側用役空間から排水するための配管を取り付ける凹側ドレン用配管取付部、並びに、
前記凹側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凹側成形装置本体取付部、
が形成されたものであり、
前記凸側一体金型は、前記凸側構造体に加え、凸側取付構造体を有し、
前記凸側取付構造体は、
前記凸側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凸側蒸気供給用配管取付部、
前記凸側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凸側冷却水供給用配管取付部、及び、
前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凸側用役空間から排水するための配管を取り付ける凸側ドレン用配管取付部、並びに、
前記凸側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凸側成形装置本体取付部、
が形成されたものである、
発泡成形用金型。
【請求項5】
前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型は、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製であり、
前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みは1mm以上3mm以下である、
請求項4に記載の発泡成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡合成樹脂を成形するための金型の製造方法、及び前記金型に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱容器、包装材等に使用される発泡合成樹脂の成形に用いる金型として、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を用いるものがある(例えば、特許文献1参照)。前記凹側一体金型は、凹型と、前記凹型の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間を設けるように対向する、前記凹型と略同形状の凹側背面部材とを一体にし、前記凹側背面空間を凹側用役空間としたものである。前記凸側一体金型は、凸型と、前記凸型の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間を設けるように対向する、前記凸型と略同形状の凸側背面部材とを一体にし、前記凸側背面空間を凸側用役空間としたものである。
【0003】
二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を用いて発泡合成樹脂を成形することにより、前記凹側用役空間及び前記凸側用役空間の容積を小さくできるので、エネルギ効率が高くなる。
【0004】
発泡成形用金型の材質としては、加工性及び耐腐食性等の観点から、アルミニウム合金を使用するのが一般的である。例えば、特許文献1の凹側一体金型30A及び凸側一体金型30Bにおいて、凹型31及び凸型32は、5~15mmの厚さのアルミニウム合金であり(特許文献1の段落[0054])、凹側背面部材33及び凸側背面部材34は、8~15mmの厚さのアルミニウム合金である(特許文献1の段落[0055])。
【0005】
特許文献1の発泡成形用金型の製造方法では、二重構造の凹側一体金型30A及び凸側一体金型30Bを、消失模型鋳造及び機械加工により製造する。例えば、凹側一体金型30Aを製造する場合、鋳造用消失模型の製作組立て(図5)、鋳物砂の充填、硬化(図6)、溶湯の注入、造形(図7)、鋳造品の取り出し、鋳造品の機械加工(図8)を行う。
【0006】
鋳造用消失模型の製作組立て(図5)では、発泡スチロール製のブロックから、凹型31の形状に相当する消失模型51、及び凹側背面部材33の形状に相当する消失模型52を製作し、それらを組み立てて、組立て消失模型50を製作する。鋳物砂の充填、硬化(図6)では、容器55内に配置した組立て消失模型50の外部及び内部に鋳物砂aを充填し、充填した鋳物砂aを硬化させる。
【0007】
溶湯の注入、造形(図7)では、鋳物砂a(図6)の中の組立て消失模型50の部分に、アルミニウム合金の溶湯bを注入して消失模型50を熱によって分解、消失させ、同時に、消失した空間に溶湯bを流入させ、凹側一体金型30Aを造形する。鋳造品の機械加工(図8)では、鋳込み砂による凹凸粗な表面を持つ鋳造直後の鋳造品を、所定の表面精度に仕上げると同時に、所定の設定寸法に加工するため、適宜な研削装置53によって機械加工する。
【0008】
一方、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型の製造方法ではなく、通常形状の凹型及び凸型の製造方法として、アーク溶接方式による3Dプリンタを用いて造形する工程を含み、線状の軌跡(ビード)である凸条を多段に積層することで前記金型の表面積を増加させ、冷却に要する時間を短縮するものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
特許文献2の発泡成形用金型の製造方法では、アーク溶接方式による3Dプリンタ50(図3)を用い、造形用金属としてアルミニウムを使用して発泡成形用金型30を造形する。それにより、発泡成形用金型30の表面に線状のビードである凸条20を形成する。そして、前記3Dプリンタ50による発泡成形用金型30の造形後に、底面31及び周側面32に必要な蒸気孔の穿設作業を行う。成形面3aが平坦である一般的な発泡成形用金型にするためには、前記3Dプリンタ50による発泡成形用金型30の造形後に、成形面3aに対して機械的研削を施す必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010-221535号公報
【特許文献2】特開2018-176473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1の図5ないし図7の工程からなる消失模型鋳造を行うと、溶湯の熱で消失させる、発泡スチロール製の組立て消失模型の剛性及び強度が低く、それにより消失模型の変形や欠損が生じやすく、発泡スチロールの燃焼ガスが発生するとともに燃焼残さがある。
【0012】
そのため、鋳造品である二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型の精度が出にくく、特許文献1の図8の工程からなる機械加工が必要になる。したがって、手間と費用が嵩むとともに、所要の機械加工を行っても前記金型の厚みのばらつきが残存し、前記凹側用役空間の容積及び前記凸側用役空間の容積にもばらつきが生じる。
【0013】
特許文献2には、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型の製造方法は開示されていない。特許文献2の発泡成形用金型の製造方法により成形面が平坦である一般的な発泡成形用金型を製造するためには、特許文献2の図3のアーク溶接方式による3Dプリンタを用いて発泡成形用金型を造形した後に、必要な蒸気孔の穿設作業を行う必要があるとともに、発泡成形用金型の成形面に対して機械的研削を施す必要がある。
【0014】
本発明は、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含む発泡成形用金型を精度良く効率的に製造することができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る発泡成形用金型の製造方法は、凹型及び凸型の間の成形空間で発泡合成樹脂を成形する金型の製造方法であり、前記金型は、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含む。
【0016】
前記凹側一体金型は、前記凹型と、前記凹型の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間を設けるように対向する、前記凹型と略同形状の凹側背面部材とを一体にしてなる凹側構造体を含み、前記凹側背面空間を凹側用役空間としたものである。前記凸側一体金型は、前記凸型と、前記凸型の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間を設けるように対向する、前記凸型と略同形状の凸側背面部材とを一体にしてなる凸側構造体を含み、前記凸側背面空間を凸側用役空間としたものである。前記凹型及び前記凸型には、スリット状の蒸気孔が形成されており、前記凹型と前記凹側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凹側補強部材があり、前記凸型と前記凸側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凸側補強部材がある。
【0017】
前記製造方法は、造形プラットフォーム上に金属粉末を所定の積層厚さで敷き詰める工程と、前記凹側一体金型又は前記凸側一体金型の3Dモデルデータから変換された前記積層厚さごとのスライスデータを用いて、レーザービームによる前記金属粉末の溶融・凝固を行う工程とを繰り返す粉末床溶融結合法により、前記形状の前記凹側一体金型又は前記凸側一体金型を前記造形プラットフォーム上に造形する。
【0018】
ここで、前記凹側一体金型は、前記凹側構造体に加え、凹側取付構造体を有し、前記凹側取付構造体は、前記凹側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凹側蒸気供給用配管取付部、前記凹側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凹側冷却水供給用配管取付部、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凹側用役空間から排水するための配管を取り付ける凹側ドレン用配管取付部、並びに、前記凹側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凹側成形装置本体取付部が形成されたものであり、前記凸側一体金型は、前記凸側構造体に加え、凸側取付構造体を有し、前記凸側取付構造体は、前記凸側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凸側蒸気供給用配管取付部、前記凸側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凸側冷却水供給用配管取付部、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凸側用役空間から排水するための配管を取り付ける凸側ドレン用配管取付部、並びに、前記凸側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凸側成形装置本体取付部が形成されたものであるのが好ましい実施態様である。
【0019】
このような発泡成形用金型の製造方法によれば、熱源をレーザービームとした粉末床溶融結合法により、複雑な形状を有する二重構造の凹側一体金型及び二重構造の凸側一体金型を高精度に造形することができる。
【0020】
その上、複雑な形状を有する前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型に対して、粉末床溶融結合法による造形の際に前記凹側背面空間内及び前記凸側背面空間内に所要の補強をすることができるとともに、厚みや形状を最適化できるので、材料を節約できるとともに軽量化を図ることができる。
【0021】
また、前記金属粉末は、ステンレス合金、チタン合金、又はニッケル合金の粉末であり、前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みは1mm以上3mm以下であるのが好ましい実施態様である。
【0022】
このような発泡成形用金型の製造方法によれば、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型が、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製になり、前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みを1mm以上3mm以下にしているので、所要の強度を確保しながら、より一層の軽量化を図ることができる。
【0023】
その上、熱源をレーザービームとした粉末床溶融結合法により造形する金型の体積が小さくなるので、レーザービームの照射面積が小さくなるとともに、金属粉末の使用量が少なくなる。したがって、粉末床溶融結合法により金型を造形する時間を短縮できるとともに、粉末床溶融結合法の製造コストを低減できる。
【0024】
その上さらに、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型が、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製になることから、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型を熱伝導率及び比熱が大きいアルミニウム合金製にした場合と比較して熱伝導率及び比熱が小さくなり、前記金型の温度の昇降に熱エネルギが奪われにくくなるので、エネルギ損失を大幅に小さくすることができる。
【0025】
本発明に係る発泡成形用金型は、凹型及び凸型の間の成形空間で発泡合成樹脂を成形する金型であって、二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を含む。前記凹側一体金型は、前記凹型と、前記凹型の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間を設けるように対向する、前記凹型と略同形状の凹側背面部材とを一体にしてなる凹側構造体を含み、前記凹側背面空間を凹側用役空間としたものである。前記凸側一体金型は、前記凸型と、前記凸型の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間を設けるように対向する、前記凸型と略同形状の凸側背面部材とを一体にしてなる凸側構造体を含み、前記凸側背面空間を凸側用役空間としたものである。前記凹型及び前記凸型には、スリット状の蒸気孔が形成されており、前記凹型と前記凹側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凹側補強部材があり、前記凸型と前記凸側背面部材との間には、それらを繋ぐ複数の凸側補強部材がある。
【0026】
前記凹側一体金型は、前記凹側構造体に加え、凹側取付構造体を有し、前記凹側取付構造体は、前記凹側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凹側蒸気供給用配管取付部、前記凹側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凹側冷却水供給用配管取付部、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凹側用役空間から排水するための配管を取り付ける凹側ドレン用配管取付部、並びに、前記凹側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凹側成形装置本体取付部が形成されたものである。前記凸側一体金型は、前記凸側構造体に加え、凸側取付構造体を有し、前記凸側取付構造体は、前記凸側用役空間内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凸側蒸気供給用配管取付部、前記凸側用役空間内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凸側冷却水供給用配管取付部、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを前記凸側用役空間から排水するための配管を取り付ける凸側ドレン用配管取付部、並びに、前記凸側一体金型を成形装置本体に取り付けるための凸側成形装置本体取付部が形成されたものである。
【0027】
このような発泡成形用金型によれば、二重構造の凹側一体金型は、前記凹側構造体に加え、前記凹側取付構造体を有し、二重構造の凸側一体金型は、前記凸側構造体に加え、前記凸側取付構造体を有する。したがって、前記凹側一体金型と一体に設けられた前記凹側取付構造体、及び前記凸側一体金型と一体に設けられた前記凸側取付構造体に、蒸気供給用配管、冷却水供給用配管、及びドレン用配管を容易に取り付けることができるとともに、前記凹側取付構造体及び前記凸側取付構造体を成形装置本体に容易に取り付けることができる。
【0028】
ここで、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型は、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製であり、前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みは1mm以上3mm以下であるのが好ましい実施態様である。
【0029】
このような発泡成形用金型によれば、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型が、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製であり、前記凹型及び前記凹側背面部材、並びに前記凸型及び前記凸側背面部材の厚みを1mm以上3mm以下にしているので、所要の強度を確保しながら、軽量化を図ることができる。
【0030】
その上、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型が、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製であることから、前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型を熱伝導率及び比熱が大きいアルミニウム合金製にした場合と比較して熱伝導率及び比熱が小さくなり、前記金型の温度の昇降に熱エネルギが奪われにくくなるので、エネルギ損失を大幅に小さくすることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の発泡成形用金型の製造方法によれば、熱源をレーザービームとした粉末床溶融結合法により、複雑な形状を有する二重構造の凹側一体金型及び凸側一体金型を高精度に造形することができる。
【0032】
その上、複雑な形状を有する前記凹側一体金型及び前記凸側一体金型に対して、粉末床溶融結合法による造形の際に前記凹側背面空間内及び前記凸側背面空間内に所要の補強をすることができるとともに、厚みや形状を最適化できるので、材料を節約できるとともに軽量化を図ることができる。
【0033】
本発明の発泡成形用金型によれば、二重構造の凹側一体金型と一体に設けられた凹側取付構造体、及び二重構造の凸側一体金型と一体に設けられた凸側取付構造体に、蒸気供給用配管、冷却水供給用配管、及びドレン用配管を容易に取り付けることができるとともに、前記凹側取付構造体及び前記凸側取付構造体を成形装置本体に容易に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態に係る発泡成形用金型を示す縦断面図であり、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製とした前記金型を閉じた状態を示している。
図2図1の金型を開いた状態を示している。
図3】凹側一体金型を斜め上方から見た縦断面斜視図である。
図4】凹側一体金型を斜め下方から見た斜視図である。
図5】凹側一体金型の横断面平面図である。
図6】凸側一体金型を斜め上方から見た縦断面斜視図である。
図7】凸側一体金型を斜め下方から見た斜視図である。
図8】凸側一体金型の横断面平面図である。
図9】本発明の実施の形態に係る発泡成形用金型を示す縦断面図であり、アルミニウム合金製とした前記金型を閉じた状態を示している。
図10図9の金型を開いた状態を示している。
図11】発泡成形用金型の製造方法の例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0036】
[発泡成形用金型の材質]
図1ないし図8の発泡成形用金型1(凹側一体金型A、凸側一体金型B)は、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製であり、図9及び図10の発泡成形用金型1(凹側一体金型A、凸側一体金型B)は、アルミニウム合金製である。
【0037】
発泡成形用金型1用のステンレス合金としては、例えば、耐食性が高いステンレス鋼であるSUS316L、又は耐食性が高く強度も高いステンレス鋼であるSUS630等が好適に用いられる。発泡成形用金型1用のチタン合金としては、例えば、軽量で耐食性が高く強度も高いTi-6Al-4V等が好適に用いられる。発泡成形用金型1用のニッケル合金としては、例えば、ニッケルを主体とし、クロム、鉄、炭素等の合金成分を添加することにより耐熱性及び耐食性を高めたINCONEL(登録商標)600、又はINCONEL(登録商標)718等が好適に用いられる。発泡成形用金型1用のアルミニウム合金としては、例えば、軽量で加工性が高く力学的特性が良好なシリコン系のアルミ合金鋳物材であるAlSi10Mg等が好適に用いられる。
【0038】
[発泡成形用金型の厚み]
ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製の発泡成形用金型1において、図1に示す、凹型10の厚みT10及び凹側背面部材11の厚みT11、並びに凸型20の厚みT20及び凸側背面部材21の厚みT21は、例えば1mm以上3mm以下にする。
【0039】
アルミニウム合金製の発泡成形用金型1において、図9に示す、凹型10の厚みT10及び凸型20の厚みT20は、例えば5mm以上15mm以下にし、凹側背面部材11の厚みT11及び凸側背面部材21の厚みT21は、例えば8mm以上15mm以下にする。
【0040】
[発泡成形用金型の構造]
以下で説明する発泡成形用金型1(凹側一体金型A、凸側一体金型B)は、発泡合成樹脂を成形する際には成形機本体に取り付けられる。そして、発泡成形用金型1には、蒸気供給用配管、冷却水供給用配管、及びドレン用配管、並びに、発泡ビーズを成形空間内に充填するためのフィーダー、及び成形品を離型するための離型ピンが取り付けられる。本願の図面においては、成形機本体、前記配管、前記フィーダー、及び前記離型ピンを省略している。
【0041】
図1及び図2、並びに図9及び図10に示すように、本発明の実施の形態に係る発泡成形用金型1は、固定側である二重構造の凹側一体金型Aと、移動側である二重構造の凸側一体金型Bとを含み、金型を閉じた状態である図1及び図9における凹型10及び凸型20の間の成形空間30で発泡合成樹脂を成形する。
【0042】
図1及び図2の発泡成形用金型1と図9及び図10の発泡成形用金型1とは、材質及び厚みが異なるだけで構造は同じものである。したがって、以下において、金型の構造に関する説明、及び発泡合成樹脂の成形方法についての説明は、図1及び図2の発泡成形用金型1に対して行う。
【0043】
(凹側一体金型)
図1ないし図5に示すように、凹側一体金型Aは、凹型10と、凹型10の背面に所要の間隔を設けて凹側背面空間12を設けるように対向する、凹型10と略同形状の凹側背面部材11とを一体にしてなる凹側構造体Cを含み、凹側背面空間12を凹側用役空間13としたものである。凹型10には、スリット状の蒸気孔14が形成されており、凹型10と凹側背面部材11との間には、それらを繋ぐ複数の凹側補強部材15がある。
【0044】
凹側補強部材15は、例えば、八角形状の環状体、又は複数の八角形状の環状体を連結させたものであり、前記環状体にはその真ん中に穴があいているので、凹側用役空間13内における用役の移動を阻害しない。凹側補強部材15は、本実施の形態のような八角形状の環状体等に限定されるものではなく、補強部材としての所要の強度及び剛性を有するとともに、凹側用役空間13内における用役の移動を阻害しないことが可能な適宜形状を採用できる。
【0045】
凹側一体金型Aは、凹側構造体Cに加え、凹側取付構造体Eを有する。凹側取付構造体Eは、凹側用役空間13内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凹側蒸気供給用配管取付部16、凹側用役空間13内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凹側冷却水供給用配管取付部17、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを凹側用役空間13から排水するための配管を取り付ける凹側ドレン用配管取付部18、並びに、凹側一体金型Aを成形装置本体に取り付けるための凹側成形装置本体取付部19が形成されたものである。
【0046】
凹側蒸気供給用配管取付部16は、例えば通孔16A及び螺孔16Bである。凹側冷却水供給用配管取付部17は、例えば通孔17A及び螺孔17Bである。凹側ドレン用配管取付部18は、例えば通孔18A及び螺孔18Bである。凹側成形装置本体取付部19は、例えば螺孔である。
【0047】
凹型10には、原料充填口10A及び離型ピン用開口10Bが形成される。凹側背面部材11には、発泡ビーズを成形空間30内に充填するためのフィーダーを挿入する通孔11Aと前記フィーダーの取り付けに用いる螺孔11Bがある。
【0048】
(凸側一体金型)
図1及び図2、並びに図6ないし図8に示すように、凸側一体金型Bは、凸型20と、凸型20の背面に所要の間隔を設けて凸側背面空間22を設けるように対向する、凸型20と略同形状の凸側背面部材21とを一体にしてなる凸側構造体Dを含み、凸側背面空間22を凸側用役空間23としたものである。凸型20には、スリット状の蒸気孔24が形成されており、凸型20と凸側背面部材21との間には、それらを繋ぐ複数の凸側補強部材25がある。
【0049】
凸側補強部材25は、例えば、八角形状の環状体、又は複数の八角形状の環状体を連結させたものであり、前記環状体にはその真ん中に穴があいているので、凸側用役空間23内における用役の移動を阻害しない。凸側補強部材25は、本実施の形態のような八角形状の環状体等に限定されるものではなく、補強部材としての所要の強度及び剛性を有するとともに、凸側用役空間23内における用役の移動を阻害しないことが可能な適宜形状を採用できる。
【0050】
凸側一体金型Bは、凸側構造体Dに加え、凸側取付構造体Fを有する。凸側取付構造体Fは、凸側用役空間23内に蒸気を供給するための配管を取り付ける凸側蒸気供給用配管取付部26、凸側用役空間23内に冷却水を供給するための配管を取り付ける凸側冷却水供給用配管取付部27、及び、前記蒸気が冷却されて発生するドレン及び前記冷却水のドレンを凸側用役空間23から排水するための配管を取り付ける凸側ドレン用配管取付部28、並びに、凸側一体金型Bを成形装置本体に取り付けるための凸側成形装置本体取付部29が形成されたものである。
【0051】
凸側蒸気供給用配管取付部26は、例えば通孔26A及び螺孔26Bである。凸側冷却水供給用配管取付部27は、例えば通孔27A及び螺孔27Bである。凸側ドレン用配管取付部28は、例えば通孔28A及び螺孔28Bである。凸側成形装置本体取付部29は、例えば螺孔である。
【0052】
[凹側一体金型及び凸側一体金型の構造に基づく作用効果]
二重構造の凹側一体金型Aは、凹側構造体Cに加え、凹側取付構造体Eを有し、二重構造の凸側一体金型Bは、凸側構造体Dに加え、凸側取付構造体Fを有する。したがって、凹側一体金型Aと一体に設けられた凹側取付構造体E、及び凸側一体金型Bと一体に設けられた凸側取付構造体Fに、蒸気供給用配管、冷却水供給用配管、及びドレン用配管を容易に取り付けることができるとともに、凹側取付構造体E及び凸側取付構造体Fを成形装置本体に容易に取り付けることができる。
【0053】
[発泡合成樹脂の成形方法]
(充填工程)
図1のように発泡成形用金型1を閉じた状態で、熱可塑性樹脂の発泡ビーズを、フィーダーにより原料充填口10Aから成形空間30に供給する。凹型10のスリット状の蒸気孔14、及び凸型20のスリット状の蒸気孔24、並びに凹側ドレン及び凸側ドレンからエアー抜きを行いながら、前記発泡ビーズを成形空間30内に充填する。なお、「発泡ビーズ」とは、発泡性ビーズを予備発泡して得られる予備発泡ビーズをも包含する概念である。
【0054】
(蒸気一方加熱工程)
凹側用役空間13内に蒸気を導入し、例えば凹型10に形成されたスリット状の蒸気孔14を通して発泡ビーズ間に蒸気を通すことで、発泡ビーズ間の空気を追い出し、凸側用役空間23から凸側ドレンへ抜く。成形空間30内に充填された発泡ビーズに蒸気の熱を付与して加熱し、発泡・融着させる。
【0055】
(両面加熱工程)
凹側及び凸側のドレンを閉じ、凹側用役空間13及び凸側用役空間23内に蒸気を導入し、発泡合成樹脂の表面を若干溶かし、表面の美麗性を向上させる。
【0056】
(水冷・排水工程)
凹側及び凸側のドレンを開き、凹側用役空間13及び凸側用役空間23内に冷却水を導入して凹型10及び凸型20を冷却し、前記ドレンから排水する。
【0057】
なお、前記のとおり、発泡成形用金型の材質としては、加工性及び耐腐食性等の観点から、アルミニウム合金を使用するのが一般的であり、アルミニウム合金製の発泡成形用金型は、熱伝導率及び比熱が大きいとともに厚みが大きくなる。その上、本発明のような二重構造の凹側一体金型A及び凸側一体金型Bを含む発泡成形用金型1ではなく、通常形状の凹型及び凸型を含む一般的な発泡成形用金型では、用役空間が広いため、「水冷・排水工程」において、冷却水をスプレーノズルで散布する方法しか採用できなかった。したがって、前記一般的な発泡成形用金型を用いて行う発泡合成樹脂の成形では、「水冷・排水工程」の後に、用役空間内を真空状態にし、水の沸点を下げることで、成形空間内の水を蒸発させ、通常形状の金型、及び/又は、成形空間内の発泡合成樹脂の温度を早く下げるために「真空冷却工程」を行う必要があった。
【0058】
それに対して、本発明の発泡成形用金型1においては、凹側用役空間13及び凸側用役空間23が極めて狭く、特に、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製にすれば、熱伝導率及び比熱が小さくなり、厚みを小さくして軽量に製作可能である。したがって、本発明の発泡成形用金型1では、凹側用役空間13及び凸側用役空間23を冷却水で満たして熱交換することが容易になるため、「真空冷却工程」を省略することも可能である。「真空冷却工程」を省略した場合には成形サイクルを大幅に短くできることから、成形コストを大きく低下させることができ、その工業的な価値は極めて顕著である。
【0059】
(離型工程)
図2のように発泡成形用金型1を開き、離型ピン用開口10Bから離型ピンを挿入して押し出すことにより、所要形状の発泡合成樹脂の成形品を得る。
【0060】
[発泡成形用金型の製造方法]
発泡成形用金型1の凹型一体金型A及び凸側一体金型Bは、レーザービームLを熱源とした粉末床溶融結合法(JIS B 9441:2020の3.2.5)により、金属粉末MPを選択的に溶融・凝固させることで製造される。図11は前記粉末床溶融結合法により凸側一体金型Bを造形する例であり、凸側一体金型Bの一部分である中間造形物Mが造形された状態を示している。凹側一体金型Aも凸側一体金型Bと同様の方法で造形することができる。
【0061】
金属粉末MPは、ステンレス合金、チタン合金、ニッケル合金、又はアルミニウム合金の粉末である。
【0062】
レーザービームLは、例えば200W~1kW程度の、例えば波長が1070nmのシングルモードYb(イッテルビウム)ファイバーレーザによるものであり、金属粉末MPがアルミニウム合金である場合も含め、様々な材質の金属粉末MPの溶融を効率的に行うことができる。
【0063】
(3Dモデル及びスライスデータ作成工程)
凸側一体金型Bの3DCAD(3 Dimensional Computer Aided Design)によるモデルを作成し、凸側一体金型Bの3Dモデルデータを得る。凹側一体金型Aを造形する場合は、凹側一体金型Aの3DCADによるモデルを作成し、凹側一体金型Aの3Dモデルデータを得る。前記3Dモデルデータを、STL(STereo Lithography)ファイルに変換した後、所定の積層厚さごとのスライスデータに変換する。
【0064】
(金属粉末敷詰め工程)
ディスペンサ3に収容された金属粉末MPを、矢印Gの方向に移動する、例えばブレード方式であるリコータ5により掃引し、造形プラットフォーム2上へ移動させる。それにより、例えば20μm~50μmの前記積層厚さである一層の金属粉末MPを、造形プラットフォーム2上に敷き詰める。余った金属粉末MPは、コレクタ4により回収する。
【0065】
(金属粉末溶融・凝固工程)
励起され集光レンズ6を通ったレーザービームLをガルバノミラー7に反射させ、図示しないガルバノスキャナによりガルバノミラー7を駆動してレーザービームLの方向を制御し、凸側一体金型Bの前記スライスデータの断面形状に沿って走査する。それにより、前記断面形状の位置に照射されたレーザービームLにより、前記一層内の金属粉末MPを選択的に溶融・凝固させる。
【0066】
(造形プラットフォーム降下及びディスペンサ上昇工程)
昇降装置8により造形プラットフォーム2を矢印Hの方向へ前記一層分だけ降下させ、それにより中間造形物Mを前記一層分だけ降下させる。昇降装置9によりディスペンサ3を矢印Iの方向へ所定量上昇させる。
【0067】
(金属粉末敷詰め工程)
ディスペンサ3に収容された金属粉末MPを、矢印Gの方向に移動するリコータ5により掃引し、造形プラットフォーム2上へ移動させる。それにより、前記一層分だけ降下した中間造形物M上に生じた空間に金属粉末MPを敷き詰める。
【0068】
(金属粉末溶融・凝固工程)
前記のとおりガルバノミラー7で反射するレーザービームLを走査して、凸側一体金型Bの3Dモデルデータから変換された前記一層ごとのスライスデータの断面形状に沿って走査する。それにより、前記断面形状の位置に照射されたレーザービームLにより、前記一層内の金属粉末MPを選択的に溶融・凝固させ、一つ下の層にも結合させる。
【0069】
(工程の繰り返し)
「造形プラットフォーム降下及びディスペンサ上昇工程」、「金属粉末敷詰め工程」、及び「金属粉末溶融・凝固工程」を繰り返し、金属粉末MPを選択的に溶融・凝固させた層を造形プラットフォーム2上に積層しながら造形していくことで、凸側一体金型Bを得る。
【0070】
以上のとおり、本発明の実施の形態に係る発泡成形用金型の製造方法は、造形プラットフォーム2上に金属粉末MPを所定の積層厚さで敷き詰める工程と、凹側一体金型A又は凸側一体金型Bの3Dモデルデータから変換された前記積層厚さごとのスライスデータを用いて、レーザービームLによる金属粉末MPの溶融・凝固を行う工程とを繰り返す粉末床溶融結合法により、凹側一体金型A又は凸側一体金型Bを造形プラットフォーム2上に造形するものである。それにより、凹側一体金型Aの3Dモデルデータから、凹側一体金型Aを直接製造することができ、凸側一体金型Bの3Dモデルデータから、凸側一体金型Bを直接製造することができる。
【0071】
[作用効果]
本発明の実施の形態に係る発泡成形用金型の製造方法によれば、熱源をレーザービームLとした粉末床溶融結合法により、複雑な形状を有する二重構造の凹側一体金型A及び二重構造の凸側一体金型Bを高精度に造形することができる。

その上、複雑な形状を有する凹側一体金型A及び凸側一体金型Bに対して、粉末床溶融結合法による造形の際に凹側背面空間12内及び凸側背面空間22内に所要の補強をすることができるとともに、厚みや形状を最適化できるので、材料を節約できるとともに軽量化を図ることができる。
【0072】
金属粉末MPを、ステンレス合金、チタン合金、又はニッケル合金の粉末として、凹型10の厚みT10、凹側背面部材11の厚みT11、凸型20の厚みT20、及び凸側背面部材21の厚みT21を1mm以上3mm以下にすることにより、所要の強度を確保しながら、より一層の軽量化を図ることができる。
【0073】
例えば、図9及び図10のアルミニウム合金製の凹側一体金型Aで、凹型10の厚みT10=5mm、凹側背面部材11の厚みT11=15mmとしたものの重量を1とした場合、図1及び図2の凹側一体金型Aをステンレス合金製にし、T10=T11=2mmとしたものの重量は、約0.84になる。また、図9及び図10のアルミニウム合金製の凸側一体金型Bで、凸型20の厚みT20=5mm、凸側背面部材21の厚みT21=15mmとしたものの重量を1とした場合、図1及び図2の凸側一体金型Bをステンレス合金製にし、T20=T21=2mmとしたものの重量は、約0.75になる。
【0074】
その上、凹側一体金型A及び凸側一体金型Bを、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製とし、T10,T11,T20,T21を1mm以上3mm以下にすることにより、熱源をレーザービームLとした粉末床溶融結合法により造形する金型の体積が小さくなるので、レーザービームLの照射面積が小さくなるとともに、金属粉末MPの使用量が少なくなる。したがって、粉末床溶融結合法により金型を造形する時間を短縮できるとともに、粉末床溶融結合法の製造コストを低減できる。
【0075】
その上さらに、凹側一体金型A及び凸側一体金型Bを、ステンレス合金製、チタン合金製、又はニッケル合金製にすることにより、凹側一体金型A及び凸側一体金型Bを熱伝導率及び比熱が大きいアルミニウム合金製にした場合と比較して熱伝導率及び比熱が小さくなり、金型の温度の昇降に熱エネルギが奪われにくくなるので、エネルギ損失を大幅に小さくすることができる。
【0076】
以上の実施の形態の記載はすべて例示であり、これに制限されるものではない。本発明の範囲から逸脱することなく種々の改良及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 発泡成形用金型
2 造形プラットフォーム
3 ディスペンサ
4 コレクタ
5 リコータ
6 集光レンズ
7 ガルバノミラー
8,9 昇降装置
10 凹型
10A 原料充填口
10B 離型ピン用開口
11 凹側背面部材
11A 通孔
11B 螺孔
12 凹側背面空間
13 凹側用役空間
14 スリット状の蒸気孔
15 凹側補強部材
16 凹側蒸気供給用配管取付部
16A 通孔
16B 螺孔
17 凹側冷却水供給用配管取付部
17A 通孔
17B 螺孔
18 凹側ドレン用配管取付部
18A 通孔
18B 螺孔
19 凹側成形装置本体取付部
20 凸型
21 凸側背面部材
22 凸側背面空間
23 凸側用役空間
24 スリット状の蒸気孔
25 凸側補強部材
26 凸側蒸気供給用配管取付部
26A 通孔
26B 螺孔
27 凸側冷却水供給用配管取付部
27A 通孔
27B 螺孔
28 凸側ドレン用配管取付部
28A 通孔
28B 螺孔
29 凸側成形装置本体取付部
30 成形空間
A 凹側一体金型
B 凸側一体金型
C 凹側構造体
D 凸側構造体
E 凹側取付構造体
F 凸側取付構造体
L レーザービーム
M 中間造形物
MP 金属粉末
T10 凹型の厚み
T11 凹側背面部材の厚み
T20 凸型の厚み
T21 凸側背面部材の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11