IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012968
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】通信システム及び送信装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 1/08 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H04L1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116192
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】和田 一義
(72)【発明者】
【氏名】宮本 信彦
【テーマコード(参考)】
5K014
【Fターム(参考)】
5K014DA05
(57)【要約】
【課題】再送発生の可能性を軽減する。
【解決手段】同一のデータを複数回送信する送信装置と、前記同一のデータのうち、最初に受信したデータ以外のデータを破棄する受信装置と、を備える通信システム。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一のデータを複数回送信する送信装置と、
前記同一のデータのうち、最初に受信したデータ以外のデータを破棄する受信装置と、
を備える通信システム。
【請求項2】
前記データは、順番を示す情報を含み、
前記受信装置は、前記順番に基づいて前記データの順番を整理する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記データは、通信プロトコルがTCPであるか否かを示す情報を含み、
前記受信装置は、前記データが通信プロトコルがTCPであることを示す情報を含む場合には、前記データの順番を整理し、前記データが通信プロトコルがTCPでないことを示す情報を含む場合には、前記データの順番を整理しない、
請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記受信装置は、
後の順番を示すデータを先に受信した場合に、すでに受信しているデータの読み出しを受信していないデータの再送通知より優先させる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記送信装置は、前記再送通知の応答として、最後に送信したデータの順番を示す情報を送信する、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
変調方式及び符号化率(MCS(Modulation and Coding Scheme))に基づき、スペクトル効率を決定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項7】
前記受信装置は、
後の順番を示すデータを先に受信した場合に、すでに受信しているデータに基づいて受信していないデータを推定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項8】
前記受信装置は、後の順番を示すデータを先に受信した場合に、すでに受信しているデータに基づいて受信していないデータを推定するか否かを判定し、
受信していないデータを推定しないと判定した場合、受信していないデータの再送通知を前記送信装置に送信する、
請求項7に記載の通信システム。
【請求項9】
送信するデータを複製し、複数のデータを送信する、
送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム及び送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信システムには、誤り訂正の範囲を超えた場合に再送される機能が備えられている。再送が発生した場合には、受信側の末端においてはパケットの順序の入れ替えが発生したように見える。
【0003】
再送が発生することにより、データ転送スピードが遅くなることがある。例えば、データのウィンドウサイズが通信を始めてから徐々に大きくなるが、エラーが生じ再送が発生するとウィンドウサイズが初期値に近い値となってしまう。そのため、データ転送速度の向上のためには、パケットの順序が入れ替わり、再送が発生するのを防ぐ必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-523897号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】令和2年度L5G開発実証成果報告書_No8_工場内の無線化の実現(https://go5g.go.jp/carrier/l5g/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、再送発生の可能性を軽減する通信システム及び送信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、同一のデータを複数回送信する送信装置と、前記同一のデータのうち、最初に受信したデータ以外のデータを破棄する受信装置と、を備える通信システムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、再送発生の可能性を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2】第1の実施形態における通信システムのシーケンス図を示す図である。
図3】第2の実施形態における通信システムのシーケンス図を示す図である。
図4】第3の実施形態における送信装置の動作を示すフローチャートである。
図5】第3の実施形態における受信装置の動作を示すフローチャートである。
図6】第4の実施形態における通信システムのシーケンス図を示す図である。
図7】第5の実施形態における通信システムのシーケンス図を示す図である。
図8】第4及び第5の実施形態における送信装置と受信装置の実装例を示す図である。
図9】第4及び第5の実施形態における送信装置と受信装置の実装例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
図1は、本実施形態に係る通信システム1の構成を示す図である。通信システム1は、送信装置2と受信装置3とを備える。送信装置2は、受信装置3にデータを送信する。
【0011】
図2は、第1の実施形態における通信システム1のシーケンス図を示す図である。送信装置2は、同一のデータを複数回送信する。図2に示すシーケンス図においては、送信装置2は、3回データAを受信装置3に送信する。送信装置2は、データAと同時にデータAであることを示す識別符号を送信する。
【0012】
受信装置3は、送信装置2からデータを受信する。受信装置3は、同一のデータのうち、最初に受信したデータ以外のデータを破棄する。受信装置3は、識別符号に基づいてデータが同一であるか否かを判定する。これにより、先に送信するデータ(図2においてはデータA)が後に送信するデータ(図2においてはデータB)よりも先に受信される可能性を高くすることができ、再送が発生する可能性を軽減することができる。
【0013】
受信装置3は、受信したデータの識別符号を記憶し、記憶した識別符号と同じ符号を有するデータを破棄する。なお、識別符号は同じものが繰り返し使用されてもよい。このとき、受信装置3は、記憶した識別符号を所定時間経過後に破棄する。
【0014】
送信装置2による複数回送信する処理は、例えば送信装置2のミドルウェアにより実現される。送信装置2のミドルウェアは、例えばデータをカプセル化し、識別符号を付与しUDPセグメントを作成する。送信装置2による処理が実現されるのはミドルウェアに限られず、例えばファームウェアであってもよいし、ソフトウェアやアプリケーションであってもよい。
受信装置3によるデータの破棄は、受信装置3のミドルウェアにより実現される。受信装置3のミドルウェアは、例えば識別符号に基づきUDPセグメントを破棄し、残ったUDPセグメントを非カプセル化し、データを取り出す。
【0015】
図3は、第2の実施形態における通信システム1のシーケンス図を示す図である。第2の実施形態においては、送信装置2は、データAと同時にデータの順番を示すシーケンス番号を送信する。シーケンス番号は第1の実施形態における識別符号の下位概念であり、データが同一であることを示すとともにデータの順番を示す。
【0016】
第2の実施形態においては、受信装置3は、シーケンス番号に基づいてデータが同一であるか否かを判定し、同一のデータのうち、最初に受信したデータ以外のデータを破棄する。また、第2の実施形態における受信装置3は、シーケンス番号に基づいてデータの順番を整理する。
【0017】
以上のように、第2の実施形態において受信装置3は、データの順番を入れ替える。これによりデータの受信タイミングのずれによりデータの順序が逆転することを防ぎ、再送発生の可能性を軽減することができる。
【0018】
図3に示す例において、データの順番は最初からデータA、データB、データCである。図3に示す例において、データCの方がデータBよりも早く最初のデータが受信装置3に到着している。このとき受信装置3は、シーケンス番号に基づいてデータBとデータCの順序を入れ替え、データBをデータCよりも前のデータとする。受信装置3においては、例えばミドルウェアがデータの順番を整理し、上位の構成に転送する。
【0019】
第3の実施形態においては、通信システム1は、第1の実施形態にかかる識別符号と第2の実施形態にかかるシーケンス番号とを使い分ける。通信プロトコルがTCPの場合には、データの順序が入れ替わると再送要求などが生じるが、通信プロトコルがUDPやICMPの場合にはデータの順序が入れ替わっても問題ないことが多い。第3の実施形態において、通信システム1は、通信プロトコルがTCPである場合のみ、データの順番を考慮する処理を行ってもよい。
【0020】
より具体的には、送信装置2と受信装置3は以下の処理を行う。送信装置2は、送信するデータから通信プロトコルの情報を取得する。送信装置2は、例えばデータのIPヘッダ内のプロトコル情報を参照することで上位プロトコル種別を取得する。送信装置2は、送信するデータの通信プロトコルがTCPである場合には、送信するデータに通信プロトコルがTCPであることを示すフラグを付与する。この処理は、例えばミドルウェアによりデータをカプセル化し、UDPセグメントを作成する際に行われる。なお、送信装置2は、通信プロトコルがTCPでない場合、例えばUDPやICMPの場合には、データと同時に識別符号を送ればよい。
【0021】
受信装置3は、データに含まれる通信プロトコルがTCPであることを示すフラグに基づいて、通信プロトコルがTCPであるか否かを判定する。受信装置3は、通信プロトコルがTCPである場合には、シーケンス番号に基づいてデータの順番を整理する。受信装置3は、通信プロトコルがTCPでない場合には、データの順番を整理しなくてもよい。
【0022】
図4は、第3の実施形態における送信装置2の動作を示すフローチャートである。図4は、第3の実施形態における送信装置2が通信プロトコルにより処理を変える場合を示す。送信装置2は、送信するデータとしてパケットを受信する(ステップS21)。その後、送信装置2は、パケットに含まれるプロトコル情報がTCPであるか否かを判定する(ステップS22)。パケットに含まれるプロトコル情報がTCPである場合(ステップS22:YES)、送信装置2は、パケットにシーケンス番号及びTCPであることを示すフラグを付与する(ステップS23)。パケットに含まれるプロトコル情報がTCPでない場合(ステップS22:NO)、送信装置2は、パケットに識別番号を付与する(ステップS24)。その後、送信装置2は、付与されたデータを含めパケットをカプセル化し、受信装置3にパケットを送信する(ステップS25)。
【0023】
図5は、第3の実施形態における受信装置3の動作を示すフローチャートである。図5は、第2の実施形態における受信装置3が通信プロトコルにより処理を変える場合を示す。受信装置3は、送信装置2からパケットを受信する(ステップS31)。受信装置3は、受信したパケットにTCPであることを示すフラグがあるか否かを判定する(ステップS32)。受信したパケットにTCPであることを示すフラグがある場合(ステップS32:YES)、シーケンス番号に基づいてパケットの順番を整理するシーケンス処理を行う(ステップS33)。受信したパケットにTCPであることを示すフラグがある場合(ステップS32:YES)、シーケンス番号に基づいてパケットの順番を整理するシーケンス処理を行う(ステップS33)。受信したパケットにTCPであることを示すフラグがない場合(ステップS32:NO)、受信装置3は、ステップS33の動作を行わない。その後、受信装置3は、パケットを非カプセル化し、他の装置にパケットを送信する(ステップS34)。
【0024】
また、送信装置2は、通信プロトコルがTCPでない場合、例えばUDPやICMPの場合には、データを複数回送信せず、カプセル化処理をせず、透過させればよい。
第3の実施形態において、通信システム1は、データの通信プロトコルの種類に応じてデータの順序を入れ替える処理を行わない。これにより、データ処理に要する容量を軽減することができる。
【0025】
図6は、第4の実施形態における通信システム1のシーケンス図を示す図である。第4の実施形態において、受信装置3は、後の順番を示すデータを先に受信した場合に、すでに受信しているデータの読み出しを受信していないデータの再送通知より優先させる。
図6において、送信装置2はデータをデータの順番を示すID1~6と同時にIDが示す順番で受信装置3に送信する。受信装置3においてはステップS301-1で送信されるID1のデータの次に、ステップS304-1で送信されるID4のデータを受信する。受信装置3は、ステップS401においてID1のデータを読み出す。その後、ステップS402においてID4のデータを読み出す。ステップS402完了時に、受信装置は、ステップS303-1によりID3のデータを受信しているが、ID4のデータより前のID2のデータを受信できていない。このとき、受信装置3は、すでに受信しているID3のデータの読み出しを、受信していないID2のデータの再送通知より優先させる。そのため、受信装置3は、ステップS403においてID3のデータの読み出しを行う。これにより、受信装置3は、データの読み出しをしている間に抜けたデータが到着した場合に再送通知をしなくてもよい。
【0026】
また、第4の実施形態における送信装置2は、再送通知の応答として、最後に送信したデータの順番を示す情報を送信する。受信装置3は、ID3のデータの読み出しを行った後、ステップS404においてID2のデータの再送通知を行う。その後、送信装置2はステップS307において、再送通知の応答として、最後に送信したデータの順番を示す情報として最後に送信したデータのIDを送信する。これにより、最後のデータが受信装置3に到着していない場合に、そのデータの再送通知をすることができる。
【0027】
また、第4の実施形態における受信装置3は、変調方式及び符号化率(MCS(Modulation and Coding Scheme))に基づき、スペクトル効率を決定する。これにより受信装置3は受信するデータの帯域制限を行う。
【0028】
図7は、第5の実施形態における通信システム1のシーケンス図を示す図である。第5の実施形態において、受信装置3は、未受信のデータを推定してデータを生成する。
【0029】
図7において、送信装置2はステップS501~504において、データをデータの順番を示すID1~4と同時にIDが示す順番で受信装置3に送信する。送信装置2は、ステップS503においてデータ送信を失敗し、受信装置3は、ID3のデータを受信しない。
受信装置3は、ステップS601においてID1のデータを読み出し、ステップS602においてID2のデータを読み出し、ステップS603においてID4のデータを読み出す。受信装置3は、ステップS604において、ID3のデータが抜けていることを検知し、ID3のデータを推定する。
受信装置3は、例えばIDが前後のデータに基づいて、未受信のデータを推定する。IDが前後のデータに基づく未受信のデータの推定は、例えば過去に受信したデータを機械学習させ、データのパターンから抜けたデータを補完するモデルを作成することで行われる。
【0030】
第5の実施形態において、受信装置3は未受信のデータの推定を行うことで、未受信のデータを補完することができる。
【0031】
第5の実施形態における受信装置3は、受信したデータに基づいて、抜けたデータの推定をするか否かを判定してもよい。受信装置3は、抜けたデータの推定をしないと判定したときに、第4の実施形態と同様に送信装置2に再送通知を送信する。抜けたデータの推定をするか否かの判定は、受信できたデータと抜けたデータの推定をするか否かとの対応関係に基づいて行われる。受信できたデータと抜けたデータの推定をするか否かとの対応関係は、例えば受信できたデータの種類と当該データの種類が緊急性を要するものであるかや、受信できたデータから推定される抜けたデータの推定のしやすさ又は正確性により決められる。
【0032】
図8は、第4及び第5の実施形態における送信装置2と受信装置3の実装例を示す図である。送信装置2及び受信装置3において、CORBA(Common Object Request Broker Architecture)規格のGIOP(General Inter-ORB Protocol)の下位プロトコルとしてUDPが実装され、UDPでデータの送受信を行う。
【0033】
図9は、第4及び第5の実施形態における送信装置2と受信装置3の実装例を示す図である。送信装置2及び受信装置3はシリアライザを備え、送信装置2は構造体をシリアライザによりバイト列に変換し、OutPortから新規プロトコルを用いて受信装置3のInPortに送信し、受信装置3はシリアライザによりバイト列を構造体に変換する。
【0034】
また、第4及び第5の実施形態における通信システム1は、第1の実施形態から第3の実施形態における通信システム1が行う処理の一部を行ってもよく、例えば送信装置2は同一のデータを複数回送信してもよいし、送信装置2と受信装置3とが通信プロトコルがTCPであるか否かを判定し、処理を変更してもよい。
【0035】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照してこの発明の一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 通信システム、2 送信装置、3 受信装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9