(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012972
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】インホイールモータ
(51)【国際特許分類】
F16H 1/28 20060101AFI20250117BHJP
B60K 7/00 20060101ALI20250117BHJP
H02K 7/116 20060101ALI20250117BHJP
B60L 15/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
F16H1/28
B60K7/00
H02K7/116
B60L15/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116196
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】余合 清嗣
(72)【発明者】
【氏名】田淵 元樹
【テーマコード(参考)】
3D235
3J027
5H125
5H607
【Fターム(参考)】
3D235BB18
3D235CC42
3D235GA07
3D235GA12
3D235GA32
3D235GB04
3J027FA36
3J027FB02
3J027FB13
3J027GA01
3J027GB03
3J027GC13
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE01
3J027GE14
5H125AA01
5H125FF02
5H607AA00
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB17
5H607CC03
5H607EE33
5H607GG08
(57)【要約】
【課題】 インホイールモータを小型化する。
【解決手段】 インホイールモータであって、車両のボディに固定される固定部材と、回転部材と、モータと、遊星歯車減速機を有する。遊星キャリアとリングギヤの一方が前記回転部材の一部を構成している。遊星ギヤのそれぞれが、前記リングギヤと係合する小径ギヤ部と、軸方向において前記小径ギヤ部からシフトした位置に設けられているとともにサンギヤと係合する大径ギヤ部を有する。前記シャフトの径方向において、前記大径ギヤ部が前記リングギヤよりも外周側に突出している。径方向に沿って見たときに前記リングギヤと重なり、前記径方向において前記リングギヤよりも外周側に位置するとともに前記大径ギヤ部の外周端よりも内周側に位置する外周領域に、前記回転部材を前記固定部材に対して回転可能に支持する軸受けが配置されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インホイールモータであって、
車両のボディに固定される固定部材と、
タイヤとともに回転する回転部材と、
前記固定部材に対して回転するシャフトを有するモータと、
前記シャフトの回転を前記回転部材に伝達する遊星歯車減速機、
を有し、
前記遊星歯車減速機が、
前記シャフトに固定されたサンギヤと、
リングギヤと、
前記サンギヤと前記リングギヤの間に配置された複数の遊星ギヤと、
前記各遊星ギヤを回転可能に支持する遊星キャリア、
を有し、
前記遊星キャリアと前記リングギヤの一方が前記回転部材の一部を構成しており、
前記遊星ギヤのそれぞれが、前記リングギヤと係合する小径ギヤ部と、前記シャフトの軸方向において前記小径ギヤ部からシフトした位置に設けられているとともに前記サンギヤと係合する大径ギヤ部を有し、
前記シャフトの径方向において、前記大径ギヤ部が前記リングギヤよりも外周側に突出しており、
前記径方向に沿って見たときに前記リングギヤと重なり、前記径方向において前記リングギヤよりも外周側に位置し、前記径方向において前記大径ギヤ部の外周端よりも内周側に位置する外周領域に、前記回転部材を前記固定部材に対して回転可能に支持する軸受けが配置されている、
インホイールモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、インホイールモータに関する。
【0002】
特許文献1に開示のインホイールモータは、車両のボディに固定される固定部材と、タイヤとともに回転する回転部材を有する。また、このインホイールモータは、モータと遊星歯車減速機構を有する。遊星歯車減速機構は、モータのシャフトの回転を回転部材に伝達する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のインホイールモータは、回転部材を固定部材に対して回転可能に支持する軸受けを有している。軸受けは、遊星歯車機構の遊星ギヤの中心軸の延長線上に配置されている。したがって、このインホイールモータは、軸方向(すなわち、モータのシャフトの中心軸に平行な方向)の寸法が大きい。本明細書では、インホイールモータを小型化する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するインホイールモータは、車両のボディに固定される固定部材と、タイヤとともに回転する回転部材と、前記固定部材に対して回転するシャフトを有するモータと、前記シャフトの回転を前記回転部材に伝達する遊星歯車減速機、を有する。前記遊星歯車減速機が、前記シャフトに固定されたサンギヤと、リングギヤと、前記サンギヤと前記リングギヤの間に配置された複数の遊星ギヤと、前記各遊星ギヤを回転可能に支持する遊星キャリア、を有する。前記遊星キャリアと前記リングギヤの一方が前記回転部材の一部を構成している。前記遊星ギヤのそれぞれが、前記リングギヤと係合する小径ギヤ部と、前記シャフトの軸方向において前記小径ギヤ部からシフトした位置に設けられているとともに前記サンギヤと係合する大径ギヤ部を有する。前記シャフトの径方向において、前記大径ギヤ部が前記リングギヤよりも外周側に突出している。前記径方向に沿って見たときに前記リングギヤと重なり、前記径方向において前記リングギヤよりも外周側に位置し、前記径方向において前記大径ギヤ部の外周端よりも内周側に位置する外周領域に、前記回転部材を前記固定部材に対して回転可能に支持する軸受けが配置されている。
【0006】
このインホイールモータでは、リングギヤの外周側に位置する外周領域に軸受けが配置されている。したがって、インホイールモータの軸方向の寸法を小さくすることができる。また、外周領域は、遊星ギヤに大径ギヤ部と小径ギヤ部を設けた場合に生じる領域であり、この領域に軸受けを配置することでインホイールモータを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1に示す実施例1のインホイールモータ10は、電動車両に搭載されており、電動車両の車輪を駆動する。インホイールモータ10は、筐体12とホイール90を有している。筐体12は、電動車両のボディに固定される部材である。ホイール90は、円筒形状を有しており、その外周面にタイヤ92が取り付けられている。ホイール90は、タイヤ92と共に回転する。インホイールモータ10は、ホイール90を筐体12に対して回転させる。
【0009】
インホイールモータ10は、モータ20と遊星歯車減速機30を有している。モータ20は、ステータ22とロータ24を有している。ステータ22は、筐体12に固定されている。ロータ24は、ロータコア24aとロータシャフト24bを有している。ロータコア24aは、ステータ22の周囲に配置されている。ロータコア24aは、ロータシャフト24bに固定されている。ロータシャフト24bは、筐体12に設けられた軸受け26によって回転可能に支持されている。ステータ22に電力が供給されると、ロータ24がロータシャフト24bの中心軸回りに回転する。
【0010】
遊星歯車減速機30は、サンギヤ40、リングギヤ50、複数の遊星ギヤ60、及び、遊星キャリア70を有している。なお、実施例1では、遊星歯車減速機30が4個の遊星ギヤ60を有しているが、遊星ギヤ60の数が3個以下であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0011】
サンギヤ40は、円柱形状を有しており、その外周面にギヤ歯を有している。サンギヤ40は、ロータコア24aよりも車幅方向外側においてロータシャフト24bに固定されている。サンギヤ40は、ロータシャフト24bとともに回転する。
【0012】
リングギヤ50は、円筒形状を有しており、その内周面にギヤ歯を有している。リングギヤ50の中心孔内にロータシャフト24bが挿通されている。リングギヤ50は、ロータシャフト24bと同心状に配置されている。リングギヤ50は、筐体12に固定されている。リングギヤ50は、電動車両のボディに固定される固定部材の一部である。
【0013】
遊星キャリア70は、複数のシャフト70aと接続部70bを有している。各シャフト70aは、ロータシャフト24bと平行に配置されている。複数のシャフト70aは、ロータシャフト24bの周囲に均等間隔で配置されている。接続部70bは、複数のシャフト70aを互いに接続している。また、接続部70bの中心に貫通孔が設けられており、その貫通孔内にロータシャフト24bが挿通されている。接続部70bは、軸受け72によってロータシャフト24bに対して相対的に回転可能な状態で支持されている。すなわち、遊星キャリア70は、ロータシャフト24bを中心にして、ロータシャフト24bに対して相対的に回転することができる。遊星キャリア70は、ホイール90に固定されている。したがって、遊星キャリア70はホイール90とともに回転する。遊星キャリア70は、タイヤ92とともに回転する回転部材の一部である。
【0014】
各遊星ギヤ60は、筒形状を有している。各遊星ギヤ60は、ロータシャフト24bとリングギヤ50の間に配置されている。各遊星ギヤ60は、ロータシャフト24bの周囲に均等間隔で配置されている。各遊星ギヤ60の中心孔内に、遊星キャリア70の対応するシャフト70aが挿通されている。各遊星ギヤ60は、その中心孔内に挿通されたシャフト70aを中心に自転することができる。すなわち、遊星キャリア70は、各遊星ギヤ60を回転可能に支持している。上述したように、遊星キャリア70は、ロータシャフト24bを中心にして回転することができる。遊星キャリア70がロータシャフト24bを中心にして回転すると、各遊星ギヤ60はロータシャフト24bを中心として公転する。各遊星ギヤ60は、大径ギヤ部60aと小径ギヤ部60bを有している。大径ギヤ部60aと小径ギヤ部60bは、円柱形状を有している。大径ギヤ部60aの外周面の直径は、小径ギヤ部60bの外周面の直径よりも大きい。大径ギヤ部60aは小径ギヤ部60bに対して、ロータシャフト24bの中心軸に沿う軸方向にシフトした位置に配置されている。大径ギヤ部60aは、小径ギヤ部60bに対して車幅方向外側に配置されている。大径ギヤ部60aと小径ギヤ部60bは互いに固定されている。大径ギヤ部60aの外周面に設けられたギヤ歯は、サンギヤ40の外周面に設けられたギヤ歯と係合している。小径ギヤ部60bの外周面に設けられたギヤ歯は、リングギヤ50の内周面に設けられたギヤ歯と係合している。ロータシャフト24bの半径方向において、各大径ギヤ部60aの外周端60xはリングギヤ50よりも外周側に突出している。
【0015】
前記ロータシャフト24bの半径方向において、リングギヤ50とホイール90の間に空間82が設けられている。上述したように、大径ギヤ部60aの外周端60xはリングギヤ50よりも外周側に突出している。また、大径ギヤ部60aはロータシャフト24bの周囲を公転する。したがって、ホイール90の外周部は、大径ギヤ部60aと接触しないように、大径ギヤ部60aの外周端60xよりも外周側に配置されている。このため、リングギヤ50とホイール90の間に空間82が存在する。したがって、空間82は、外周領域84を含んでいる。外周領域84は、ロータシャフト24bの径方向に沿って見たときにリングギヤ50と重なる領域(すなわち、ロータシャフト24bの軸方向においてリングギヤ50と同じ範囲に存在する領域)であり、ロータシャフト24bの径方向においてリングギヤ50よりも外周側に位置するとともに大径ギヤ部60aの外周端60xよりも内周側に位置する領域である。外周領域84を含む空間82には、軸受け80が設けられている。軸受け80は、ホイール90(すなわち、回転部材)を筐体12(すなわち、固定部材)に対して回転可能に支持している。
【0016】
ロータシャフト24bが回転すると、サンギヤ40が回転する。大径ギヤ部60aがサンギヤ40と係合しているので、サンギヤ40が回転すると各遊星ギヤ60が自転する。また、小径ギヤ部60bがリングギヤ50と係合しているので、各遊星ギヤ60の自転に伴って各遊星ギヤ60がロータシャフト24bの周囲を公転する。各遊星ギヤ60がロータシャフト24bの周囲を公転するので、遊星キャリア70がロータシャフト24bと同軸に回転する。遊星キャリア70が回転することで、遊星キャリア70に固定されているホイール90及びタイヤ92が回転する。このように、遊星歯車減速機30は、ロータシャフト24bの回転をホイール90に伝達する。遊星歯車減速機30は、ロータシャフト24bよりも遅い回転速度でホイール90を回転させる。各遊星ギヤ60が大径ギヤ部60aと小径ギヤ部60bを有することで、減速比を大きくすることができる。
【0017】
実施例1のインホイールモータ10では、ホイール90を筐体12に対して回転可能に支持する軸受け80が外周領域84に配置されている。外周領域84は、大径ギヤ部60aと小径ギヤ部60bを有する遊星ギヤ60を使用する場合に生じる領域である。外周領域84に軸受け80を設けることで、ホイール90内の空間を有効に活用することができ、インホイールモータ10を小型化することができる。
【0018】
なお、上述した実施例1では、リングギヤ50が筐体12に固定されており、遊星キャリア70がホイール90に固定されていた。しかしながら、
図2に示すように、リングギヤ50がホイール90に固定されており、遊星キャリア70が筐体12に固定されていてもよい。すなわち、リングギヤ50が回転部材の一部を構成しており、遊星キャリア70が固定部材の一部を構成していてもよい。この構成でも、遊星歯車減速機30によってホイール90をロータシャフト24bよりも低速で回転させることができる。この場合でも、リングギヤ50とホイール90の間の外周領域84に軸受け80を設けることで、インホイールモータを小型化できる。
【0019】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0020】
10 :インホイールモータ
12 :筐体
24b :ロータシャフト
30 :遊星歯車減速機
40 :サンギヤ
50 :リングギヤ
60 :遊星ギヤ
60a :大径ギヤ部
60b :小径ギヤ部
70 :遊星キャリア
80 :軸受け
84 :外周領域
90 :ホイール
92 :タイヤ