IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<図1>
  • -衣服のポケット 図1
  • -衣服のポケット 図2
  • -衣服のポケット 図3
  • -衣服のポケット 図4
  • -衣服のポケット 図5
  • -衣服のポケット 図6
  • -衣服のポケット 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012991
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】衣服のポケット
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/20 20060101AFI20250117BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A41D27/20 C
A41D13/00 112
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116227
(22)【出願日】2023-07-14
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】517170052
【氏名又は名称】デサントジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】關 純一
【テーマコード(参考)】
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B035AA18
3B035AA19
3B035AB09
3B035AB14
3B211AA05
3B211AB11
3B211AC21
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収容物を着用者の邪魔にならないように収容しつつ、収容物の出し入れの動作を阻害しない、衣服のポケットを提供する。
【解決手段】衣服1のポケット30は、着用者の腰回りの側部に設けられたポケット口31と、後端部がポケット口31に連通しており、着用者の前面に向かって延びる第1ポケット袋32と、前端部がポケット口31に連通しており、着用者の後面に向かって延びる第2ポケット袋33と、を備え、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、少なくともポケット口31で互いに連通する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腰回りの側部に設けられたポケット口と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の前面に向かって延びる第1ポケット袋と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の後面に向かって延びる第2ポケット袋と、を備える衣服のポケット。
【請求項2】
第1ポケット袋と第2ポケット袋は、一体的に設けられたポケット袋体で構成され、前記ポケット袋体の底縁部における前後方向の中間部には、前記第1ポケット袋と前記第2ポケット袋とを区画する区画部が設けられている請求項1に記載の衣服のポケット。
【請求項3】
前記区画部は、前記底縁部を上方に向かって凹ませる凹部である請求項2に記載の衣服のポケット。
【請求項4】
前記ポケット袋体は、着用者の体側に位置する内側生地と、前記内側生地の幅方向外側に重ね合わされる外側生地とを有し、
前記区画部は、前記内側生地と前記外側生地とを前記底縁部から前記ポケット口に向かって立ち上がるように縫合わせた縫合部分である請求項2に記載の衣服のポケット。
【請求項5】
前記ポケット袋体の深さに対する前記区画部の高さは、16%以上36%以下である請求項2に記載の衣服のポケット。
【請求項6】
前記第1ポケット袋は、前記衣服の左右両側にそれぞれ設けられており、
左右両側の前記第1ポケット袋は、連結部材によって連結されている請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の衣服のポケット。
【請求項7】
前記第1ポケット袋は、着用者の体側に位置する第1内側生地と、前記第1内側生地の幅方向外側に重ね合わされる第1外側生地とを縫合わせることで構成され、
前記連結部材と左右両側の前記第1ポケット袋の前記第1外側生地とは、一枚の生地で構成されている請求項6に記載の衣服のポケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服のポケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、着用者の腰回りの側部に設けられると共に、身幅方向に重複する2つの収容室を有する二重ポケットを備えた衣服が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案公報第3167534号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、テニス等のスポーツのように複数のテニスボール等の収容物をポケットに収容する場合、ポケットの容量が不足し、収容物を収容できない、および/または、収容できたとしても身幅方向に嵩張るため着用者の動作の邪魔になったり、収容物の出し入れを阻害したりする場合がある。
【0005】
特許文献1に開示されている衣服のポケットでは、2つの収容室が幅方向に重複するので、デザインの観点からポケットの幅方向外側へのふくらみを抑制しようとした場合、ポケットの容量不足が解消しにくい。また、2つの収容室それぞれに連通する2つのポケット口が設けられているため、ポケット口を1つ備える場合に比べて、所望の収容室にアクセスするための動作に時間がかかる場合がある。
【0006】
本発明は、収容物を着用者の邪魔にならないように収容しつつ、収容物の出し入れの動作を阻害しない、衣服のポケットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、着用者の腰回りの側部に設けられた単一のポケット口と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の前面に向かって延びる第1ポケット袋と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の後面に向かって延びる第2ポケット袋と、を備える衣服のポケット。
【0008】
本発明によれば、ポケット容量を拡大しつつ、ポケットが前後に分かれているので、収容物を第1ポケット袋および第2ポケット袋に分散して収容でき、収容物が第1ポケット袋または第2ポケット袋のうち一方側に偏って配置されることによって着用者に生じ得る違和感が抑制される。ポケット内の収容物を取り出す際にも、収容物同士の干渉やポケット口の詰まりが抑制されて、収容物の出し入れ動作が阻害されにくい。ポケット口が第1ポケット袋および第2ポケット袋に連通しているので、ポケット口がそれぞれに設けられている場合に比べて、各ポケット袋へアクセスしやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、収容物を着用者の邪魔にならないように収容しつつ、収容物の出し入れの動作を阻害しない、衣服のポケットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る衣服のポケットを備えたスコートの正面図。
図2】スコートの背面図。
図3】スコートの側面図。
図4】スコートを裏返したときの側面図。
図5図3のV-V線に沿った端面図。
図6】左ポケット口が広げられて平置きされた状態のスコートの部分拡大図。
図7】スコートを裏返したときの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る衣服のポケット(以下、「ポケット袋体」ともいう)を備えたテニス用スコート(以下、「スコート」ともいう)1の正面図が示されている。以下、スコート1についてスコート1を着用した着用者が直立した状態を基準にスコート1の上下、左右、及び前後を定める。また、生地の厚み方向の外表面から内部に向かう方向を内側、その逆を外側とし、身幅方向の外側に向かう方向を外側、身幅方向の中央側に向かう方向を内側とする。
【0013】
図1および図2に示すように、スコート1は、着用者の腰回りを包むスコート本体10と、着用者のウエスト周りに位置するウエスト部20と、スコート本体10の右側および左側にそれぞれ設けられた左側ポケット袋体30と、右側ポケット袋体40とを有する。
【0014】
スコート本体10は、着用者の腹側を覆う前身頃部11と、着用者の臀部側を覆う後ろ身頃部12とを有する。スコート本体10は、前身頃部11と後ろ身頃部12とが、幅方向両外側および幅方向内側で縫合されることで、左右一対の筒状に形成されている。
【0015】
スコート本体10の腰回りの側部には、左側ポケット袋体30および右側ポケット袋体40に左ポケット口31および右ポケット口41がそれぞれ設けられている。左ポケット口31は、左脇線10aに対応する位置に設けられている。右ポケット口41は、右脇線10bに対応する位置に設けられている。左側および右側ポケット袋体30,40については、詳細を後述する。
【0016】
前身頃部11は、着用者の左側に位置する左前生地11aと、着用者の右側に位置する右前生地11bとを有する。前身頃部11は、左前生地11aの幅方向内側に位置する左前内縁部11cと右前生地11bの幅方向内側に位置する右前内縁部11dとが着用者の前側の中心で縫合されている。
【0017】
後ろ身頃部12は、着用者の左側に位置する左後生地12aと、着用者の右側に位置する右後生地12bとを有する。後ろ身頃部12は、左後生地12aの幅方向内側に位置する左後内縁部12cと右後生地12bの幅方向内側に位置する右後内縁部12dとが着用者の後側の中心で縫合されている。
【0018】
図1に示すように、左前生地11aの幅方向外側に位置する左前外縁部11eと、左後生地12aの幅方向外側に位置する左後外縁部12eとが互いに縫合されて、スコート本体10の左脇線10aが形成されている。右前生地11bの幅方向外側に位置する右前外縁部11fと、右後生地12bの幅方向外側に位置する右後外縁部12fとが互いに縫合されて、スコート本体10の右脇線10bが形成されている。本実施形態では、前身頃部11が後ろ身頃部12の外側に重ね合わせた状態で縫合されるので、左前外縁部11eを左脇線10aとし、右前外縁部11fを右脇線10bとする。
【0019】
より詳しくは、図1および図3に示すように、前身頃部11と後ろ身頃部12は、左前生地11aを左後生地12aの外側に重ね合わせた状態で、上端部と下端部とに設けられた左上縫合部分10dと左下縫合部分10eとが縫合され、右前生地11bを右後生地12bの外側に重ね合わせた状態で、上端部と下端部とに設けられた右上縫合部10fと右下縫合部10gとが縫合されている。言い換えると、左前生地11aと左後生地12aとが縫合されていない部分(左上縫合部分10dと左下縫合部分10eとの間の部分)によって左ポケット口31が形成され、右前生地11bと右後生地12bとが縫合されていない部分(右上縫合部10fと右下縫合部10gとの間の部分)によって右ポケット口41が形成される。
【0020】
図1に示すように、左前内縁部11cの下端部と左後内縁部12cの下端部とが縫合されると共に、右前内縁部11dの下端部と右後内縁部12dの下端部とが縫合されることで、スコート本体10の内股線10cが形成されている。
【0021】
図1および図2を参照すると、ウエスト部20は、展開状態で長尺な筒状のウエスト生地21と、ウエスト生地21よりも短く、ウエスト生地21に内包される伸縮自在なウエストゴム22とを有する。ウエスト部20は、ウエスト生地21の両端部を縫合することで環状に形成されると共に、スコート本体10の上端部に縫合されている。
【0022】
図1および図2に示すように、左側ポケット袋体30は、左脇線10aを含むスコート本体10の左側部領域に設けられている。右側ポケット袋体40は、右脇線10bを含むスコート本体10の右側部領域に設けられている。左側ポケット袋体30および右側ポケット袋体40は、スコート本体10の内側(着用者の体側)に配置されている。本実施形態において、左側ポケット袋体30と右側ポケット袋体40とは同様の構成を有するため、左側ポケット袋体30についてのみ説明する。
【0023】
図3に示すように、左側ポケット袋体30は、左脇線10aを挟んで前側に位置する第1ポケット袋32と、後側に位置する第2ポケット袋33とを有する。
【0024】
左側ポケット袋体30は、前後方向に延びてウエスト部20に縫合される上縁部30aと、上縁部30aの前端から下方に向かうに連れて前方に延びる前縁部30bと、上縁部30aの後端から下方に向かうに連れて後方に延びる後縁部30cと、前縁部30bと後縁部30cの下端とを連結する底縁部30dとを有し、略台形状である。
【0025】
左側ポケット袋体30は、前縁部30bの下端部と底縁部30dの前端部に連続して前方かつ下方に円弧状に湾曲した前湾曲部30eと、後縁部30cの下端部と底縁部30dの後端部に連続して後方かつ下方に円弧状に湾曲した後湾曲部30fとを有する。言い換えると、前および後湾曲部30e,30fによって、前縁部30bと底縁部30d、および、後縁部30cと底縁部30dが滑らかに接続されている。
【0026】
左側ポケット袋体30は、底縁部30dの前後方向の中間部において、底縁部30dを上方に向かって凹ませた凹部30gが設けられている。より詳しくは、底縁部30dは、前湾曲部30eの後端から後方に向かうに連れて上方に傾斜する前底縁部30hと、後湾曲部30fの前端から前方に向かうに連れて上方に傾斜する後底縁部30iとを有する。
【0027】
前底縁部30hの後端と後底縁部30iの前端とは、左脇線10aに対応する位置で滑らかに連続する。凹部30gは、前底縁部30hと後底縁部30iとによって構成され、凹部30gの最深部30jは、前底縁部30hの後端と後底縁部30iの前端と一致する。
【0028】
第1ポケット袋32は、最深部30jよりも前側に位置する。第2ポケット袋33は、最深部30jよりも後側に位置する。左側ポケット袋体30は、凹部30gによって第1ポケット袋32と第2ポケット袋33とに前後方向に区切られている。言い換えると、凹部30gは、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33とを区切る区画部を構成する。
【0029】
第1ポケット袋32は、後端部32aが左ポケット口31に連通すると共に、左ポケット口31から前方に向かって延びている。第2ポケット袋33は、前端部33aが左ポケット口31に連通すると共に左ポケット口31から後方に向かって延びている。第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、左ポケット口31を共有しており、第1ポケット袋32内および第2ポケット袋33内には、左ポケット口31からアクセスすることができる。
【0030】
図4は、左側ポケット袋体30が見えるように、裏返して平置きしたスコート1を示す。図4を参照すると、左側ポケット袋体30は、着用者の体側に位置する内側生地34と、内側生地34の幅方向外側に重ね合わされる外側生地35とを備える。内側生地34は、前身頃部11を構成する生地と同じ、いわゆる共生地からなる。外側生地35は、メッシュ素材等の裏地用生地からなる。内側生地34は、着用者が左側ポケット袋体30に手を入れたときに手のひら側に位置する。外側生地35は、着用者が左側ポケット袋体30に手を入れたときに手の甲側に位置する。左側ポケット袋体30は、内側生地34と外側生地35の周縁部を縫合わせることで、袋状となっている。
【0031】
より詳しくは、内側生地34は、左側ポケット袋体30に対応した略台形状である。内側生地34は、第1ポケット袋32の第1内側生地部34aと、第2ポケット袋33の第2内側生地部34bとを有し、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、一枚の内側生地34で構成されている。内側生地34のうち、左ポケット口31よりも前側の部分が第1ポケット袋32の第1内側生地部34aを構成し、左ポケット口31よりも後側の部分が第2ポケット袋33の第2内側生地部34bを構成する。
【0032】
図3および図4に示すように、内側生地34は、上縁部30aを構成する内上縁部34cと、前縁部30bを構成する内前縁部34dと、後縁部30cを構成する内後縁部34eと、底縁部30dを構成する内底縁部34fと、前湾曲部30eを構成する内前湾曲部34gと、後湾曲部30fを構成する内後湾曲部34hと、凹部30gを構成する内生地凹部34iとを有する。
【0033】
外側生地35は、第1ポケット袋32を構成する第1外側生地36と、第2ポケット袋33を構成する第2外側生地37とを有する。第1外側生地36は第1内側生地部34aに対応し、第2外側生地は第2内側生地部34bに概ね対応した形状を有する。
【0034】
第1外側生地36は、上縁部30aの前部分を構成する第1外上縁部36aと、前縁部30bを構成する第1外前縁部36bと、前底縁部30hを構成する第1外底縁部36cと、前湾曲部30eを構成する第1外湾曲部36dと、第1外上縁部36aの後端36eと第1外底縁部36cの後端36fとを接続する第1外後縁部36gとを備える。第1外後縁部36gは、左前外縁部11eに沿って延びている。
【0035】
第2外側生地37は、上縁部30aの後部分を構成する第2外上縁部37aと、後縁部30cを構成する第2外後縁部37bと、後底縁部30iを構成する第2外底縁部37cと、後湾曲部30fを構成する第2外湾曲部37dと、第2外上縁部37aの前端37eと第2外底縁部37cの前端37fとを接続する第2外前縁部37gとを備える。第2外前縁部37gは、左後外縁部12eに沿って延びている。第1外底縁部36cと第2外底縁部37cとが、凹部30gを構成する。
【0036】
図5は、図3におけるV-V線に沿った左側ポケット袋体30の端面図である。図4および図5を参照しながら左側ポケット袋体30の取り付けについて説明する。左側ポケット袋体30は、前身頃部11および後ろ身頃部12に外側生地35と内側生地34をこの順番で縫い付けることで形成される。
【0037】
より詳しくは、図5に示すように、第1外側生地36は、左前生地11aの内側に重ね合わされた状態で、左前外縁部11eと第1外後縁部36gが縫合されている。これにより、第1外側生地36は、左ポケット口31から前方に向かって延びた状態で、左前生地11aに縫合される。本実施形態では、左前外縁部11eおよび第1外後縁部36gは生地端部となっているので、かがり縫いによって後縁部のほつれが防止されるようになっている。
【0038】
第2外側生地37は、左後生地12aの外側に重ね合わされた状態で、左後外縁部12eと第2外前縁部37gを縫合した後に内側に折り返されている。これにより、第2外側生地37は、左ポケット口31から後方に向かって延びた状態で、左後生地12aに縫合されている。本実施形態では、左後生地12aと第2外側生地37の生地端部は、内側に織り込まれているので、左後外縁部12eと第2外前縁部37gのほつれが防止されている。
【0039】
第1外側生地36と第2外側生地37は、それぞれ左前外縁部11eと左後外縁部12eとに縫合されているので、第1外後縁部36gが第2外前縁部37gよりも後方に位置する。第1外後縁部36gと第2外前縁部37gとの前後方向における重複代(第1外後縁部36gと第2外前縁部37gとの離間距離)L1は、3cm以下に設定されている。
【0040】
図4および図5に示すように、内側生地34は、第1外側生地36および第2外側生地37の内側に重ね合わされた状態で、周縁部が縫合されている。より詳しくは、内前縁部34dと第1外前縁部36b、内後縁部34eと第2外後縁部37b、内底縁部34fと第1および第2外底縁部36c,37c、内前湾曲部34gと第1外湾曲部36d、内後湾曲部34hと第2外湾曲部37dが縫合される。これにより、左側ポケット袋体30の前縁部30b、後縁部30c、底縁部30d、前湾曲部30e、および、後湾曲部30fが形成される。左側ポケット袋体30の上縁部30aと前身頃部11、および、後ろ身頃部12の上縁部とが、ウエスト部20に縫合される。
【0041】
図4に示すように、前身頃部11と後ろ身頃部12に左側ポケット袋体30が縫合され、重ねられた状態で、前身頃部11および後ろ身頃部12の左上縫合部分10dおよび左下縫合部分10eが縫合されて、左上縫合部分10dの下端と、左下縫合部分10eの上端との間に左ポケット口31が形成される。言い換えると、左上縫合部分10dは、左側ポケット袋体30を上縁部30aから左ポケット口31に向かって下方に縫合わせた部分で、左下縫合部分10eは、左側ポケット袋体30を底縁部30dから左ポケット口31に向かって立ち上がるように縫合わせた部分である。
【0042】
本実施形態では、左上縫合部分10dおよび左下縫合部分10eは、前身頃部11と、後ろ身頃部12と、左側ポケット袋体30とを縫合わせているので、左側ポケット袋体30は、左下縫合部分10eによって前後方向に区切られている。言い換えると、左下縫合部分10eは、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33とを区画する区画部としてもよい。
【0043】
図4および図5に示すように、第1ポケット袋32は、第1内側生地部34aと第1外側生地36との間に設けられた第1収容空間S1を有し、第2ポケット袋33は、第2内側生地部34bと第2外側生地37との間に設けられた第2収容空間S2を有する。第1収容空間S1および第2収容空間S2の深さD1に対する左下縫合部分10eの高さD2は、16%以上36%以下に設定されている。第1収容空間S1および第2収容空間S2の深さD1は、左側ポケット袋体30の上縁部30aから底縁部30dの下端までの上下方向距離とする。左下縫合部分10eの高さD2は、底縁部30dの下端から左下縫合部分10eの上端までの上下方向距離とする。本実施例で、深さD1は25cm、高さD2は9cmに設定されている。
【0044】
図4に示すように、区画部30g,10eは、例えば、左側ポケット袋体30に収容されているテニスボールBが、第1収容空間S1と第2収容空間S2との間における移動を抑制するものであることが好ましい。より詳しくは、テニスボールBの直径D4は、概ね7cmなので、区画部10e,30gの高さD2,D3は、例えば、4cm以上9cm以下が好ましい。言い換えると、収容物の高さD4に対する区画部10e,30gの高さの割合は、57%以上130%以下に設定されていればよい。割合が57%未満の場合、収容物Bの第1収容空間S1と第2収容空間S2との間の移動が抑制しにくく、割合が130%を超過すると、収容空間S1,S2の深さD1が深くなり過ぎたり、左ポケット口31が狭くなる場合がある。
【0045】
図4に示すように、本実施形態において、第1収容空間S1の前後方向の幅W1は、例えば、15cmに設定され、第2収容空間S2の前後方向の幅W2は、例えば、14cmに設定されている。第1収容空間S1の幅W1は、凹部30gの最底部から前湾曲部30eまでの前後方向距離とし、第2収容空間S2の幅W2は、凹部30gの最底部から後湾曲部30fまでの前後方向距離とする。テニスボールBの直径D4は、略7cmなので、テニスボールBは、第1収容空間S1および第2収容空間S2の底部に2つずつ収容することができる。さらに、第1収容空間S1および第2収容空間S2に、テニスボールBを3つずつ、合計6個入れた場合でも、第1ポケット袋32からテニスボールBが落ちることはなく、第1ポケット袋32には、テニスボールBを最大8個収容することができるようになっている。
【0046】
図6は、左ポケット口31が広げられて平置きされた状態のスコート1の部分拡大図を示す。図5および図6に示すように、左ポケット口31は、左ポケット口31が前後方向に広げられた時に前側に位置し、左前外縁部11eおよび第1外後縁部36gによって構成される第1ポケット口31aと、左ポケット口31が前後方向に広げられた時に後側に位置し、左後外縁部12eおよび第2外前縁部37gによって構成される第2ポケット口31bとを有する。第1ポケット口31aは、後方に向かって開口されている。第2ポケット口31bは、前方に向かって開口されている。
【0047】
図5に示すように、第1ポケット口31aと第2ポケット口31bとは、前後方向位置が重複している。第1ポケット口31aは、第2ポケット口31bよりも後方かつ外側に位置する。
【0048】
第1ポケット袋32に手を挿入する場合、例えば、着用者の手は、指先を前方に向け、かつ、手の甲を外側に向けた状態で、第1ポケット口31aから前方に向かって挿入される。第1ポケット口31aに挿入された手は、第1外後縁部36gと左後生地12aとの間を通って第1収容空間S1に到達する。
【0049】
第2ポケット袋33に手を挿入する場合、例えば、着用者の手は、第1ポケット口31aと第2ポケット口31bとの間を広げながら、第1ポケット口31aと第2ポケット口31bとの間から後方に向かって挿入されて、第2収容空間S2に到達する。
【0050】
第1ポケット口31aと第2ポケット口31bとの前後方向の離間距離は、第1外後縁部36gと第2外前縁部37gとの前後方向における重複代L1に一致する。第2ポケット袋33に手を挿入する場合には、第1ポケット口31aと第2ポケット口31bとの間を広げる必要があるので、重複代L1は3cm以下に設定されることが好ましい。3cmを超過すると、第2ポケット袋33に手を挿入しにくくなる場合がある。
【0051】
図5に示すように、本実施形態では、第1外側生地36および第2外側生地37のポケット口31近傍には、共生地からなる第1重ね生地36hおよび第2重ね生地37hが縫合されており、左ポケット口31が開口したときに裏地用生地が外側から見え難くなっている。
【0052】
図7は、左側ポケット袋体30および右側ポケット袋体40が見えるように、裏返して平置きしたスコート1の正面を示す。図7に示すように、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33とは、スコート1の左右両側にそれぞれ設けられており、左右両側の第1ポケット袋32は、連結部材50によって連結されている。
【0053】
本実施形態において、連結部材50は、左右両側の第1ポケット袋32の第1外側生地36を連続させて設けることで形成されている。連結部材50は、幅方向に延びてウエスト部20に縫合される上縁部51と、上縁部51の左端から下方に向かって延びる左縁部52と、上縁部51の右端から下方に向かって延びる右縁部53と、左縁部52と右縁部53の下端を接続する下縁部54とを有する。
【0054】
左縁部52と左側ポケット袋体30の第1外前縁部36bと、右縁部53と右側ポケット袋体40の第1外前縁部36bとは、連続する一枚の生地で構成されている。下縁部54は、左縁部52の下端と右縁部53の下端に連続して上方に円弧状に湾曲している。下縁部54は、幅方向の外側から内側に向かって、上縁部51との離間距離が短くなっている。本実施形態では、下縁部54の幅方向の中間部の長さL2は、3.5cm以上20cm以下に設定されている。長さL2が3.5cm未満の場合、ポケットが動きやすくなり、また、ポケットが外側に飛び出しやすく、長さL2が20cmを超過すると、着用者の前方への足の可動域が制限される場合がある。本実施形態では、長さL2は、5.5cmに設定されている。連結部材50の下縁部54は、着用者が開脚する場合、幅方向に広がるが、下縁部54は環縫いによってほつれ防止されているため、下縁部54の広がりが抑制されにくくなっている。
【0055】
本実施形態に係る衣服のポケット30,40は、次の効果を奏する。
【0056】
(1)スコート1の左側ポケット袋体30は、着用者の腰回りの側部に設けられた左ポケット口31と、左ポケット口31に開口すると共に着用者の前面に向かって延びる第1ポケット袋32と、左ポケット口31に開口すると共に着用者の後面に向かって延びる第2ポケット袋33と、を備える。
【0057】
この構成によれば、左側ポケット袋体30の容量を拡大しつつ、左側ポケット袋体30が前後に分かれているので、収容物を第1ポケット袋および第2ポケット袋に分散して収容でき、収容物が第1ポケット袋32または第2ポケット袋33のうち一方側に偏って配置されることによって、着用者に生じ得る違和感が抑制される。左側ポケット袋体30内の収容物を取り出す際にも、収容物同士の干渉や左ポケット口31の詰まりが抑制されて、収容物の出し入れ動作が阻害されにくい。左ポケット口31が第1ポケット袋32および第2ポケット袋33に連通しているので、左ポケット口31がそれぞれに設けられている場合に比べて、各ポケット袋32,33へアクセスしやすい。
【0058】
(2)第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、一体的に設けられた左側ポケット袋体30で構成され、左側ポケット袋体30の底縁部30dにおける前後方向の中間部には、第1ポケット袋32と前記第2ポケット袋33とを区画する区画部10e,30gが設けられている。
【0059】
この構成によれば、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33のうち、一方に収容された収容物の他方への移動を抑制できる。左側ポケット袋体30内の収容物をより分散させやすく、一方にのみ収容物が偏ることを抑制しやすい。これにより、左側ポケット袋体30の外側への膨らみが抑制されるので、美観を損ないにくい。
【0060】
(3)区画部は、左側ポケット袋体30の底縁部30dを上方に向かって凹ませる凹部30gであるので、左側ポケット袋体30の底縁部30dの形状を変更するのみの簡素な構造で区画部を構成することができる。
【0061】
(4)左側ポケット袋体30は、着用者の体側に位置する内側生地34と、内側生地34の幅方向外側に重ね合わされる外側生地35とを有し、区画部は、内側生地34と外側生地35とを底縁部30dから左ポケット口31に向かって立ち上がるように縫合わせた左下縫合部分10eである。
【0062】
本構成によれば、左側ポケット袋体30の底縁部30dを縫合わせるのみの簡素な構造で構成されているので、区画部を設けることによる左側ポケット袋体30の容量の減少を抑制しやすい。
【0063】
(5)左側ポケット袋体30の深さD1に対する区画部10e,30gの高さD2,D3は、16%以上36%以下であるので、より効果的に収容物を分散させやすく、一方側のポケット袋32,33のみに収容物が偏ることを抑制しやすい。高さD2,D3が16%未満の場合、一方側のポケット袋32,33に収容された収容物が他方側への移動が抑制されにくい。高さD2,D3が36%を超過すると、左ポケット口31の長さが十分に確保しにくくなる。
【0064】
(6)第1ポケット袋32は、スコート1の左右両側にそれぞれ設けられており、左右両側の第1ポケット袋32,32は、連結部材50によって連結されているので、例えば、第1ポケット袋32から収容物を取り出す際に、第1ポケット袋32が左ポケット口31から飛び出すことを抑制できる。
【0065】
(7)第1ポケット袋32は、着用者の体側に位置する第1内側生地部34aと、第1内側生地部34aの幅方向外側に重ね合わされる第1外側生地36とを縫合わせることで構成され、連結部材50と左右両側の第1ポケット袋32,32の第1外側生地36,36とは、一枚の生地で構成されているので、連結部材50を別途設ける必要がない。
【0066】
本実施形態では、左側ポケット袋体30および右側ポケット袋体40がそれぞれ、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33を備える構成について説明したが、左側ポケット袋体30または右側ポケット袋体40のいずれか一方が第1ポケット袋32のみを備える構成であってもよい。
【0067】
本実施形態では、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33の形状が概ね一致する構成について説明したが、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、異なる形状を有していてもよい。例えば、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33は、異なる大きさで形成されていてもよい。
【0068】
本実施形態では、左側ポケット袋体30が左下縫合部分10eで前身頃部11および後ろ身頃部12に縫合される例について説明したが、左側ポケット袋体30は外側生地35のみが、前身頃部11および後ろ身頃部12に左下縫合部分10eで縫合されていてもよい。言い換えると、内側生地34は前身頃部11および後ろ身頃部12に左下縫合部分10eで縫合されていなくてもよい。この場合、図4に示すように、凹部30gを区画部とすることで、第1ポケット袋32と第2ポケット袋33とを区画することができる。第1収容空間S1および第2収容空間S2の深さD1に対する凹部30gの高さD3は、16%以上36%以下に設定されることが好ましい。凹部30gの高さD3は、底縁部30dの下端から最深部30jまでの上下方向距離とする。
【0069】
本実施形態では、区画部が左下縫合部分10eないし凹部30gで構成される例について説明したが、区画部は、左下縫合部分10eの上端部分のみを閂止めすることで構成されていてもよい。言い換えると、左下縫合部分10eの上端部分以外は、縫合されていなくてもよい。
【0070】
本実施形態では、左側ポケット袋体30に凹部30gが設けられている構成について説明したが、区画部が閂止めないし左下縫合部分10eで構成される場合は、凹部30gを備えていなくてもよい。
【0071】
本実施形態では、連結部材50が第1外側生地36によって構成される例について説明したが、連結部材50は、別部品で構成されていてもよいし、第1内側生地部34aと一体生地で構成されていてもよい。
【0072】
本実施形態では、第1内側生地部34aと第2内側生地34bとが一枚の内側生地34で構成される例について説明したが、第1内側生地部34aと第2内側生地部34bとは別部材で構成されていてもよい。
【0073】
本実施形態では、連結部材50がスコート1の前面側に配置されることについて説明したが、後面側に設けられていてもよい。
【0074】
本実施形態では、第1外後縁部36gと第2外前縁部37gとの前後方向における重複代L1を有する構成について説明したが、重複代L1=0cmであってもよい。言い換えると、第1外後縁部36gと第2外前縁部37gの前後方向位置が一致していてもよい。
【0075】
本実施形態では、左側ポケット袋体30の外側生地35を、前身頃部11および後ろ身頃部12に縫合してから、内側生地34を縫合する例について説明したが、例えば、外側生地35と内側生地34とを先に縫合して、左側ポケット袋体30を準備してから、前身頃部11および後ろ身頃部12に縫合してもよい。
【0076】
本実施形態では、ポケットを備えた衣服がいわゆるキュロットタイプのスコート1であることについて説明したが、ポケットは、その他の下衣、例えば、スカートタイプのスコート、ショートパンツないしスラックス等に備えられていてもよい。
【0077】
なお、本発明の衣服のポケットは、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0078】
[付記]本開示は以下の態様を包含する。
【0079】
[態様1]
着用者の腰回りの側部に設けられたポケット口と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の前面に向かって延びる第1ポケット袋と、
前記ポケット口に開口すると共に着用者の後面に向かって延びる第2ポケット袋と、を備え、
前記第1ポケット袋と前記第2ポケット袋は、少なくとも前記ポケット口で互いに連通する衣服のポケット。
【0080】
[態様2]
第1ポケット袋と第2ポケット袋は、一体的に設けられたポケット袋体で構成され、前記ポケット袋体の底部における前後方向の中間部には、前記第1ポケット袋と前記第2ポケット袋とを区画する区画部が設けられている態様1に記載の衣服のポケット。
【0081】
[態様3]
前記区画部は、前記ポケット袋体の底部を上方に向かって凹ませる凹部である態様2に記載の衣服のポケット。
【0082】
[態様4]
前記ポケット袋体は、着用者の体側に位置する内側生地と、前記内側生地の幅方向外側に重ね合わされる外側生地とを有し、前記区画部は、前記内側生地と前記外側生地とを底部から前記開口部に向かって立ち上がるように縫合わせた縫合部分である態様2に記載の衣服のポケット。
【0083】
[態様5]
前記ポケット袋体の深さに対する前記区画部の高さは、16%以上36%以下である態様2から4のいずれか1態様に記載の衣服のポケット。
【0084】
[態様6]
前記第1ポケット袋は、前記衣服の左右両側にそれぞれ設けられており、
左右両側の前記第1ポケット袋は、連結部材によって連結されている態様1から5のいずれか1態様に記載の衣服のポケット。
【0085】
[態様7]
前記第1ポケット袋は、着用者の体側に位置する第1内側生地と、前記第1内側生地の幅方向外側に重ね合わされる第1外側生地とを縫合わせることで構成され、
前記連結部材と左右両側の前記第1ポケット袋の前記第1外側生地とは、位置枚の生地で構成されている態様6に記載の衣服のポケット。
【符号の説明】
【0086】
1 スコート(衣服)
10e 左下縫合部分(区画部)
30 左側ポケット袋体(ポケット)
30d 底縁部
30g 凹部(区画部)
31 左ポケット口(ポケット口)
32 第1ポケット袋
32a 後端部
33 第2ポケット袋
33a 前端部
34 内側生地
34a 第1内側生地部(第1内側生地)
35 外側生地
36 第1外側生地
50 連結部材
D1 深さ
D2 高さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7