(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025012999
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/00 20060101AFI20250117BHJP
B26B 15/00 20060101ALI20250117BHJP
A01G 3/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B25F5/00 C
B25F5/00 H
B25F5/00 A
B26B15/00
A01G3/02 501Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116243
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 寿明
【テーマコード(参考)】
3C064
3C065
【Fターム(参考)】
3C064AA07
3C064AB03
3C064AC02
3C064BA20
3C064BB81
3C064CA04
3C064CA80
3C064CB08
3C064CB17
3C064CB64
3C064CB72
3C064CB81
3C064CB83
3C064DA02
3C064DA42
3C064DA55
3C064DA59
3C064DA89
3C064DA91
3C064DA92
3C065BA01
3C065EA02
3C065EA07
3C065EA11
3C065EA26
3C065FA03
(57)【要約】
【課題】作業機を屋外で使用する場合であっても、撮像部で撮像された画像データに基づいて、作業部への対象物の接近を精度よく検出することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本明細書が開示する作業機は、作業部と、前記作業部を駆動する原動機と、前記作業部の近傍の範囲を撮像する撮像部と、制御部を備えていてもよい。前記作業機は、通常通りに動作する通常モードと、前記通常モードよりも安全に動作する安全モードで動作可能であってもよい。前記制御部は、前記撮像部で撮像された画像データに含まれる画素のうち、HSV形式で表現した時の色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、対象物が前記作業部に接近していると判断される場合に、前記作業機を前記安全モードで動作させるように構成されていてもよい。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業部と、
前記作業部を駆動する原動機と、
前記作業部の近傍の範囲を撮像する撮像部と、
制御部を備える作業機であって、
前記作業機は、通常通りに動作する通常モードと、前記通常モードよりも安全に動作する安全モードで動作可能であり、
前記制御部は、前記撮像部で撮像された画像データに含まれる画素のうち、HSV形式で表現した時の色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、対象物が前記作業部に接近していると判断される場合に、前記作業機を前記安全モードで動作させるように構成されている、作業機。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内であって、かつHSV形式で表現した時の彩度がしきい値以上である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部に接近しているか否かを判断するように構成されている、請求項1の作業機。
【請求項3】
前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のHSV形式で表現した時の明度が高いほど、前記しきい値を低い値に設定する、請求項2の作業機。
【請求項4】
前記所定範囲が、230°~360°の範囲である、請求項1から3の何れか一項の作業機。
【請求項5】
前記作業部と前記撮像部を支持しており、ユーザによって把持されるハウジングをさらに備えており、
前記作業部が、固定刃と、前記固定刃に対して左右方向に伸びる回動軸周りに回動可能であり、前記原動機によって駆動される可動刃を備えている、請求項1から4の何れか一項の作業機。
【請求項6】
前記撮像部が前記ハウジングの上面側に配置されている、請求項5の作業機。
【請求項7】
前記固定刃に対して前記可動刃が最大に開いた状態で、前記ハウジングの長手方向を水平方向とした時に、前記撮像部が、前記可動刃の上端よりも下方に配置されている、請求項6の作業機。
【請求項8】
前記ハウジングによって支持されており、前記作業部の近傍の領域を照明する照明部をさらに備える、請求項5から7の何れか一項の作業機。
【請求項9】
前記照明部が、前記ハウジングの右面側に配置された右側照明部と、前記ハウジングの左面側に配置された左側照明部を備える、請求項8の作業機。
【請求項10】
前記制御部は、前記画像データに含まれる画素のうち、前記固定刃に対応する位置に配置された第1の画素と、前記固定刃および前記可動刃に対応しない位置に配置された第2の画素をそれぞれ特定し、前記第1の画素と前記第2の画素の、HSV形式で表現した時の前記色相、彩度および/または明度に基づいて、前記撮像部が障害物によって遮蔽されているか否かを判断する、請求項5から9の何れか一項の作業機。
【請求項11】
前記撮像部の左右方向の画角が、60°~120°の範囲内である、請求項5から10の何れか一項の作業機。
【請求項12】
前記撮像部の上下方向の画角が、45°~90°の範囲内である、請求項5から11の何れか一項の作業機。
【請求項13】
前記撮像部のシャッタースピードが、0.1ms~2msの範囲内である、請求項5から12の何れか一項の作業機。
【請求項14】
前記安全モードは、前記通常モードよりも安全に動作する第1の安全モードと、前記第1の安全モードよりも安全に動作する第2の安全モードを含んでおり、
前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部へ第1の接近レベルで接近していると判断される場合に、前記作業機を前記第1の安全モードで動作させるように構成されており、
前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部へ前記第1の接近レベルよりも接近した第2の接近レベルで接近していると判断される場合に、前記作業機を前記第2の安全モードで動作させるように構成されている、請求項1から13の何れか一項の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、作業部と、前記作業部を駆動する原動機と、前記作業部の近傍の範囲を撮像する撮像部と、制御部を備える作業機が開示されている。前記作業機は、通常通りに動作する通常モードと、前記通常モードよりも安全に動作する安全モードで動作可能である。前記制御部は、前記撮像部で撮像された画像データに含まれる画素のうち、YUV形式で表現した時の色値が指定した値である画素の個数に基づいて、対象物が前記作業部に接近していると判断される場合に、前記作業機を前記安全モードで動作させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機を屋外で使用する場合、明るい環境で画像データを撮像することもあれば、暗い環境で画像データを撮像することもある。画像データをYUV形式やRGB形式で表現すると、同じ色の物体を撮像した場合であっても、撮像時の明るさによって、異なる色値となることがある。このため、作業機を屋外で使用する場合には、ユーザの身体等の対象物が作業部へ接近することを精度よく検知することが困難となるおそれがある。本明細書では、作業機を屋外で使用する場合であっても、撮像部で撮像された画像データに基づいて、作業部への対象物の接近を精度よく検出することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する作業機は、作業部と、前記作業部を駆動する原動機と、前記作業部の近傍の範囲を撮像する撮像部と、制御部を備えていてもよい。前記作業機は、通常通りに動作する通常モードと、前記通常モードよりも安全に動作する安全モードで動作可能であってもよい。前記制御部は、前記撮像部で撮像された画像データに含まれる画素のうち、HSV形式で表現した時の色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、対象物が前記作業部に接近していると判断される場合に、前記作業機を前記安全モードで動作させるように構成されていてもよい。
【0006】
撮像部で撮像された画像データを、色相(Hue)、彩度(Saturation)、明度(Value)のHSV形式で表現する場合、同じ色の物体については、撮像時の明るさが異なっていても、同じ色相となる。このため、上記の構成によれば、作業機を屋外で使用する場合であっても、撮像部で撮像された画像データに基づいて、対象物が作業部へ接近することを精度よく検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施例に係る作業機2の概略の構成を示すブロック図である。
【
図2】実施例に係る作業機2の作業ユニット8を前方右方上方から見た斜視図である。
【
図3】実施例に係る作業機2の作業ユニット8の可動刃34が固定刃32に対して開いた状態での縦断面図である。
【
図4】実施例に係る作業機2の作業ユニット8の内部構造を前方右方上方から見た斜視図である。
【
図5】実施例に係る作業機2の作業ユニット8の可動刃34が固定刃32に対して閉じた状態での縦断面図である。
【
図6】実施例に係る作業機2の作業ユニット8の前方左方上方から見た斜視図である。
【
図7】実施例に係る作業機2を用いて枝82を切断している様子を後方上方から見た斜視図である。
【
図8】実施例に係る作業機2の制御部14が行う接近判定処理のフローチャートである。
【
図9】実施例に係る作業機2において、カメラ74が遮蔽されていない場合に、カメラ74により撮像される画像データIDの例である。
【
図10】実施例に係る作業機2において、カメラ74が障害物84によって遮蔽されている場合に、カメラ74により撮像される画像データIDの例である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して以下に詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、開示された追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された作業機、およびその使用方法ならびに製造方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、又は共に用いることができる。
【0009】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、以下の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、特許請求の範囲に記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0010】
本明細書及び/又は特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施例及び/又は特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲及びグループ又は集団に関する記載は、出願当初の開示ならびに特許請求の範囲に記載された特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0011】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内であって、かつHSV形式で表現した時の彩度がしきい値以上である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部に接近しているか否かを判断するように構成されていてもよい。
【0012】
撮像部で撮像された画像データをHSV形式で表現した場合、白色や黒色、灰色といった彩度の低い色の色相が、彩度の高い他の色(例えば紫色)の色相と同じ値となることがある。このため、対象物に対応する画素であるか否かを、その画素の色相のみに基づいて判定しようとすると、彩度の低い色が写り込んだ画素を、対象物に対応する画素と誤って判定するおそれがある。上記の構成によれば、色相が所定範囲内であって、かつ彩度がしきい値以上である画素の個数に基づいて、対象物が作業部に接近しているか否かを判断するので、彩度の低い色の写り込みによる誤検知を抑制することができる。
【0013】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のHSV形式で表現した時の明度が高いほど、前記しきい値を低い値に設定してもよい。
【0014】
一般に、明るい環境で画像データを撮像した場合には、対象物に対応する画素の彩度が低くなる傾向があり、暗い環境で画像データを撮像した場合には、対象物に対応する画素の彩度が高くなる傾向がある。上記の構成によれば、画像データに含まれる画素の明度が高いほど、彩度のしきい値を低い値に設定するので、対象物の作業部への接近をより確実に検知することができる。
【0015】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記所定範囲が、230°~360°の範囲であってもよい。
【0016】
屋外で作業機を使用する際には、撮像部で撮像された画像データに、空の青色や、葉や草の緑色、木の枝や幹などの茶色が写り込むことがある。これらの色の色相は、0°~230°の範囲内であり、色相が230°~360°の範囲内の色(例えば紫色)が、画像データに写り込むことはあまりない。上記の構成によれば、対象物の色の色相を、230°~360°の範囲内とすることで、対象物が作業部へ接近することを精度よく検出することができる。
【0017】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記作業機は、前記作業部と前記撮像部を支持しており、ユーザによって把持されるハウジングをさらに備えていてもよい。前記作業部は、固定刃と、前記固定刃に対して左右方向に伸びる回動軸周りに回動可能であり、前記原動機によって駆動される可動刃を備えていてもよい。
【0018】
上記の作業機は、枝等を切断する剪定はさみとして機能する。上記の作業機を使用して枝を切断する際には、ユーザは、一方の手でハウジングを把持し、他方の手で枝を把持した状態で、作業を行うことがある。上記の構成によれば、他方の手に色相が所定範囲内に入る色(例えば紫色)の手袋を着用しておくことで、対象物である手袋が作業部に接近した時に、作業機を安全モードで動作させることができる。ユーザの安全を確保することができる。
【0019】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記撮像部は、前記ハウジングの上面側に配置されていてもよい。
【0020】
作業部が固定刃と可動刃を備えている構成では、撮像部がハウジングの右面側(または左面側)にあると、作業部の右側(または左側)の領域については撮像部の視野に入るものの、作業部の左側(または右側)の領域については作業部によって遮蔽されて撮像部の視野に入らないので、作業部の左右両側の領域を撮像することが困難となる。また、撮像部がハウジングの下面側にあると、作業部の左右両側の領域を撮像できるものの、撮像部がハウジングから下方に突出することになり、作業の邪魔になりやすい。上記の構成によれば、撮像部がハウジングの上面側に配置されているので、作業部の左右両側の領域を撮像することができる。また、撮像部がハウジングから下方に突出して作業の邪魔になることを抑制することができる。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記固定刃に対して前記可動刃が最大に開いた状態で、前記ハウジングの長手方向を水平方向とした時に、前記撮像部は、前記可動刃の上端よりも下方に配置されていてもよい。
【0022】
撮像部がハウジングの上面側に配置されることで、撮像部がハウジングから上方に突出する場合でも、可動刃が最大に開いた状態での可動刃の上端よりも下方に撮像部が配置されていれば、作業の邪魔になりにくい。上記の構成によれば、撮像部がハウジングから上方に突出する場合であっても、撮像部が作業の邪魔になってしまうことを抑制することができる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記ハウジングによって支持されており、前記作業部の近傍の領域を照明する照明部をさらに備えていてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、暗い環境であっても、照明部によって作業部の近傍の領域を照明した状態で画像データを撮像することができるので、明るい環境で画像データを撮像する場合と同等の条件で画像データを取得することができる。環境の明るさの相違に起因して、検出精度にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記照明部は、前記ハウジングの右面側に配置された右側照明部と、前記ハウジングの左面側に配置された左側照明部を備えていてもよい。
【0026】
作業部が固定刃と可動刃を備えている構成では、作業機が右側照明部(または左側照明部)だけを備えていると、作業部の右側(または左側)の領域は照明されるものの、作業部の左側(または右側)の領域は照明されないので、作業部の左右両側の領域を照明することが困難となる。上記の構成によれば、作業機が右側照明部と左側照明部の両方を備えているので、作業部の左右両側の領域を適切に照明することができる。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記制御部は、前記画像データに含まれる画素のうち、前記固定刃に対応する位置に配置された第1の画素と、前記固定刃および前記可動刃に対応しない位置に配置された第2の画素をそれぞれ特定してもよく、前記第1の画素と前記第2の画素の、HSV形式で表現した時の前記色相、彩度および/または明度に基づいて、前記撮像部が障害物によって遮蔽されているか否かを判断してもよい。
【0028】
撮像部が障害物によって遮蔽されていない場合には、固定刃に対応する位置に配置された第1の画素には常に同じ色(すなわち固定刃の色)が写り込み、固定刃や可動刃に対応しない位置に配置された第2の画素には背景の色が写り込む。この場合、第1の画素と第2の画素では、色相や彩度、明度は異なる値となる。これに対して、撮像部が障害物によって遮蔽されている場合には、固定刃に対応する位置に配置された第1の画素にも、固定刃や可動刃に対応しない位置に配置された第2の画素にも、同じ障害物の色が写り込む。この場合、第1の画素と第2の画素で、色相や彩度、明度は略同様の値となる。上記の構成によれば、固定刃に対応する位置に配置された第1の画素と、固定刃や可動刃に対応しない位置に配置された第2の画素の、色相、彩度および/または明度に基づいて、撮像部が障害物によって遮蔽されているか否かを適切に判別することができる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記撮像部の左右方向の画角は、60°~120°の範囲内であってもよい。
【0030】
左右方向の画角が広すぎると、左右方向に関して、対象物が作業部にそれほど接近していない場合でも、画像データに対象物が写り込むことになる。逆に、左右方向の画角が狭すぎると、左右方向に関して、対象物が作業部にかなり接近するまで、画像データに対象物が写り込まなくなってしまう。上記の構成によれば、左右方向に関して、対象物が作業部に接近しているか否かを適切に検知することができる。
【0031】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記撮像部の上下方向の画角は、45°~90°の範囲内であってもよい。
【0032】
上下方向の画角が広すぎると、上下方向に関して、対象物が作業部にそれほど接近していない場合でも、画像データに対象物が写り込むことになる。逆に、上下方向の画角が狭すぎると、上下方向に関して、対象物が作業部にかなり接近するまで、画像データに対象物が写り込まなくなってしまう。上記の構成によれば、上下方向に関して、対象物が作業部に接近しているか否かを適切に検知することができる。
【0033】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記撮像部のシャッタースピードは、0.1ms~2msの範囲内であってもよい。
【0034】
上記の構成によれば、作業機を屋外で使用する場合に、適切な明るさで画像データを撮像することができる。
【0035】
1つまたはそれ以上の実施形態において、前記安全モードは、前記通常モードよりも安全に動作する第1の安全モードと、前記第1の安全モードよりも安全に動作する第2の安全モードを含んでいてもよい。前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部へ第1の接近レベルで接近していると判断される場合に、前記作業機を前記第1の安全モードで動作させるように構成されていてもよい。前記制御部は、前記撮像部で撮像された前記画像データに含まれる画素のうち、前記色相が前記所定範囲内である画素の個数に基づいて、前記対象物が前記作業部へ前記第1の接近レベルよりも接近した第2の接近レベルで接近していると判断される場合に、前記作業機を前記第2の安全モードで動作させるように構成されていてもよい。
【0036】
上記の構成によれば、対象物の作業部への接近レベルに応じて、段階的により安全なモードで作業機を動作させることができる。
【0037】
(実施例)
図1に示すように、作業機2は、バッテリユニット4と、スイッチユニット6と、作業ユニット8を備えている。作業機2は、例えば草花、樹木等の茎、枝等の切断作業に使用する剪定はさみである。バッテリユニット4は、肩ベルトと腰ベルトを備えており、ユーザによって着用されるハーネス(図示せず)に取り付けられている。スイッチユニット6は、ハーネスの腰ベルトに取り付けられる。作業ユニット8は、ユーザが一方の手で把持して使用する。バッテリユニット4とスイッチユニット6は、ケーブル10を介して電気的に接続されている。スイッチユニット6と作業ユニット8は、接続コード12を介して電気的に接続されている。
【0038】
バッテリユニット4は、制御部14と、バッテリパック16を備えている。制御部14は、CPU,ROM,RAM等を備えており、作業機2の動作を制御する。バッテリパック16は、バッテリユニット4に着脱可能に取り付けられている。バッテリパック16は、リチウムイオン電池等の二次電池を備えている。作業機2は、バッテリパック16から供給される電力によって動作する。
【0039】
スイッチユニット6は、主電源スイッチ18と、表示ランプ20と、ブザー22を備えている。主電源スイッチ18は、ユーザからの作業機2の主電源のオン/オフを切り替える操作を受け入れる。表示ランプ20は、作業機2のユーザに、主電源のオン/オフの状態や、異常の有無などを表示する。ブザー22は、作業機2のユーザに、警告音を発する。
【0040】
図2に示すように、作業ユニット8は、ハウジング24を備えている。ハウジング24は、前後方向に長手方向を有する。ハウジング24には、ユーザが一方の手で把持するグリップ26が形成されている。ハウジング24の後端には、接続コード12が着脱されるコネクタ27が設けられている。ハウジング24のグリップ26よりも前方には、ユーザが操作可能なトリガ28と、トリガ28を操作するユーザの指を保護するガード30が設けられている。トリガ28とガード30は、ハウジング24の下面側に設けられている。ハウジング24の前端には、固定刃32と、固定刃32に対して相対的に回動する可動刃34が設けられている。可動刃34は固定刃32の右側に隣接して配置されている。
【0041】
図3に示すように、ハウジング24の内部には、電動モータ36と、動力伝達部38と、トリガ位置検出部40が収容されている。電動モータ36は、例えば直流ブラシレスモータであり、例えばコアレスモータである。電動モータ36は、グリップ26の内部に配置されている。電動モータ36の出力シャフト42は、前方に向けて伸びている。
【0042】
動力伝達部38は、減速機構44と、スクリューシャフト46と、ナット48と、ナットケーシング50と、リンクアーム52を備えている。減速機構44は、例えば遊星歯車機構であり、出力シャフト42の回転を減速してスクリューシャフト46に伝達する。スクリューシャフト46とナット48は、いわゆるボールねじ機構を構成している。ナット48は、ナットケーシング50に固定されている。スクリューシャフト46が正回転すると、ナット48とナットケーシング50はハウジング24に対して後方に向けて移動する。スクリューシャフト46が逆方向に回転すると、ナット48とナットケーシング50はハウジング24に対して前方に向けて移動する。
【0043】
固定刃32は、下側刃部54と、支持部56を備えている。支持部56は、ハウジング24に固定されている。可動刃34は、上側刃部58と、レバー部60を備えている。可動刃34は固定刃32に、左右方向に延びるボルト62を介して回動可能に連結されている。
【0044】
図4に示すように、リンクアーム52は前後方向に延びている。リンクアーム52の後端は、左右方向に延びるピン64を介してナット48に回動可能に連結されている。リンクアーム52の前端は、左右方向に延びるピン66を介してレバー部60に回動可能に連結されている。
図5に示すように、ナット48とナットケーシング50が後方に向けて移動すると、レバー部60の下端が後方に向けて移動することで、可動刃34がボルト62を回動軸として
図5の時計回りに回動する。これによって、可動刃34が固定刃32に対して閉じられて、上側刃部58と下側刃部54による切断作業が行われる。逆に、
図3に示すように、ナット48とナットケーシング50が前方に向けて移動すると、レバー部60の下端が前方に向けて移動することで、可動刃34がボルト62を回動軸として
図3の反時計回りに回動する。これによって、可動刃34が固定刃32に対して開かれる。
【0045】
図4に示すように、トリガ28はピン64を介してナット48に回動可能に連結されている。ナット48の前後方向の移動に伴って、トリガ28も前後方向に移動する。また、トリガ28は、ユーザによって引き込み操作が行われると、ピン64を回動軸としてナット48に対して回動する。
【0046】
図3に示すように、トリガ位置検出部40は、磁石68と、バネ70と、トリガ位置センサ72(
図4参照)を備えている。磁石68は、前側(または後側)にN極を有し、後側(または前側)にS極を有するように配置されている。磁石68は、ナットケーシング50に前後方向に移動可能に支持されている。バネ70は、ナットケーシング50に対して、磁石68を前方に向けて付勢している。磁石68の前端は、トリガ28の後面に当接している。
図4に示すトリガ位置センサ72は、例えばホール素子を備えている。トリガ位置センサ72は、ナットケーシング50に固定されている。トリガ位置センサ72は、ナットケーシング50に対する磁石68(
図3参照)の前後方向の位置を検出することで、トリガ28の引き込み位置を検出する。
【0047】
図1に示す制御部14は、トリガ位置センサ72からの検出信号に応じて、電動モータ36を正方向または逆方向に回転させる。トリガ28に対して引き込み操作が行われると、ナットケーシング50に対して磁石68が中立位置よりも後方に移動し、それに応じて制御部14は電動モータ36を正方向に回転させる。これによって、可動刃34が固定刃32に対して閉じられる方向に、可動刃34が回動する。逆に、トリガ28の引き込み操作が解除されると、ナットケーシング50に対して磁石68が中立位置よりも前方に移動し、それに応じて制御部14は電動モータ36を逆方向に回転させる。これによって、可動刃34が固定刃32に対して開かれる方向に、可動刃34が回動する。
【0048】
図6に示すように、ハウジング24には、カメラ74と、右側ライト76と、左側ライト78が設けられている。カメラ74は、ハウジング24の前部の上面側に設けられている。右側ライト76は、ハウジング24の前部の右面側に設けられている。左側ライト78は、ハウジング24の前部の左面側に設けられている。右側ライト76と、左側ライト78は、それぞれ、前方を向いて配置されており、固定刃32と可動刃34の近傍の領域を照明する。
【0049】
カメラ74は、前方を向いて配置されており、固定刃32と可動刃34の近傍の領域を撮像する。カメラ74が撮像した画像データは、制御部14(
図1参照)に送られる。
図3に示すように、カメラ74の光軸OXは、上下方向に関して、斜め下方を向くように、例えば水平方向に対して12°下方を向くように配置されている。カメラ74の上下方向の画角θ1は、例えば45°~90°の範囲内であり、例えば50°である。この場合、下側刃部54の全体をカメラ74の視野に入れることができる。
図7に示すように、カメラ74の光軸OXは、左右方向に関して、前方を向くように配置されている。カメラ74の左右方向の画角θ2は、例えば60°~120°の範囲内であり、例えば65°である。カメラ74の焦点距離は、例えば50mm~100mmである。カメラ74の解像度は、例えばQVGA(320×240画素)以上であり、例えばVGA(640×480画素)である。カメラ74のフレームレートは、例えば30FPS以上である。カメラ74のシャッタースピードは、例えば0.1ms~2msの範囲内であり、例えば1msである。
【0050】
図7に示すように、ユーザは、一方の手で作業ユニット8のグリップ26を把持し、他方の手に紫色の手袋80を着用した状態で、作業機2を使用する。例えば、ユーザは、手袋80を着用した他方の手で枝82を把持した状態で、一方の手に把持した作業ユニット8によって枝82を切断する。
【0051】
作業機2が剪定はさみである場合、通常の作業時に、カメラ74の画像データには、葉っぱの緑色や、空の青色等が写り込むが、紫色の物体が写り込むことはあまりない。このため、紫色の手袋80を用いることで、通常の作業時に写り込む色との判別をより容易に行うことができる。
【0052】
カメラ74に写り込む色の判別は、画像データに含まれるそれぞれの画素を、色相(Hue)と、彩度(Saturation)と、明度(Value)を用いたHSV形式によって表現した時の、色相に基づいて行うことができる。例えば、枯葉や木の枝等の茶色は色相が15°~60°の範囲内であり、葉の緑色は色相が80°~150°の範囲内であり、空の青色は色相が180°~225°の範囲内である。これに対して、手袋80の紫色は色相が270°~300°の範囲内である。このため、画像データに含まれる画素の色相に基づいて、その画素が手袋80に対応しているのか、あるいはそれ以外のものに対応しているのかを、判別することができる。
【0053】
(接近判定処理)
制御部14は、カメラ74の画像データに基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近していると判断される場合に、通常モードよりも安全に動作する安全モードで作業機2を動作させる。これによって、ユーザの安全を確保することができる。以下では、
図8を参照しながら、制御部14が行う接近判定処理について説明する。
【0054】
S2では、制御部14は、カメラ74から画像データを取得する。画像データは、HSV形式で表現されており、画像データに含まれるそれぞれの画素についての、色相と、彩度と、明度を示している。
【0055】
S4では、制御部14は、画像データに基づいて、カメラ74が遮蔽されているか否かを判断する。
図9に示すように、カメラ74が遮蔽されていない場合は、画像データIDには固定刃32と、可動刃34と、背景が写り込む。この際に、固定刃32はカメラ74に対して移動しないので、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1には、必ず固定刃32が写り込む。一方、固定刃32および可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2には、背景にある葉や枝等が写り込む。このため、画素P1と画素P2の色相や彩度、明度は異なるものとなる。これに対して、
図10に示すように、カメラ74が障害物84によって遮蔽されていると、画像データには固定刃32や可動刃34、背景にある葉や枝等が写り込まず、ほぼ全ての画素に同じ障害物84が写り込む。この場合、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1と、固定刃32および可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2で、色相や彩度、明度が同様のものとなる。そこで、
図8のS4では、制御部14は、画素P1と画素P2について、色相と、彩度と、明度をそれぞれ比較して、それぞれの差分が20%以内である場合に、カメラ74が障害物84によって遮蔽されていると判断する。
【0056】
S4で、カメラ74が遮蔽されていると判断される場合(YESの場合)、処理はS6へ進む。S6では、制御部14は、作業機2を異常停止させる。具体的には、制御部14は、電動モータ36の回転を禁止するとともに、表示ランプ20に異常の発生を表示し、ブザー22で警告音を発生させて、カメラ74が遮蔽されていることをユーザに報知する。S6の後、
図8の処理は終了する。
【0057】
S4で、カメラ74が遮蔽されていないと判断される場合(NOの場合)、処理はS8へ進む。S8では、制御部14は、画像データの全ての画素の明度の平均値を算出する。
【0058】
S10では、制御部14は、S8で算出された明度の平均値に基づいて、彩度のしきい値を設定する。例えば、制御部14は、明度の平均値が第1基準値(例えば80%)以上である場合、彩度のしきい値を第1しきい値(例えば30%)に設定し、明度の平均値が第1基準値よりも低い第2基準値(例えば50%)以上である場合、彩度のしきい値を第1しきい値よりも高い第2しきい値(例えば50%)に設定し、明度の平均値が第2基準値未満である場合、彩度のしきい値を第2しきい値よりも高い第3しきい値(例えば70%)に設定する。
【0059】
S12では、制御部14は、画像データに含まれる画素のうち、まだS14-S20の判定処理を実行していないものの中から、判定対象画素を選択する。
【0060】
S14では、制御部14は、判定対象画素の色相が所定範囲(例えば230°~360°の範囲、例えば235°~320°の範囲)内に入るか否かを判断する。判定対象画素の色相が所定範囲内に入る場合(YESの場合)、処理はS16へ進む。
【0061】
S16では、制御部14は、判定対象画素の彩度が、S10で設定した彩度のしきい値以上であるか否かを判断する。画像データをHSV形式とした場合、白色や灰色、黒色といった彩度の低い色の色相が、彩度の高い他の色(例えば紫色)の色相と同じ値となることがある。そこで、本実施例では、判定対象画素の彩度がしきい値を下回る場合には、白色や灰色、黒色の画素であり、手袋80に対応する紫色の画素ではないと判断し、判定対象画素の彩度がしきい値以上の場合に、手袋80に対応する紫色の画素であると判断する。
【0062】
なお、明るい環境で撮像された画像データにおいては、紫色の手袋80が写り込んだ画素の彩度は低くなる傾向があり、暗い環境で撮像された画像データにおいては、紫色の手袋80が写り込んだ画素の彩度が高くなる傾向がある。このため、本実施例では、S10の処理において、画像データに含まれる画素の明度の平均値が高いほど、彩度のしきい値を低く設定し、画像データに含まれる画素の明度の平均値が低いほど、彩度のしきい値を高く設定する。これによって、彩度の低い色の写り込みによる誤検知をより効果的に抑制することができる。
【0063】
S16で、判定対象画素の彩度が彩度しきい値以上の場合(YESの場合)、処理はS18へ進む。S18では、制御部14は、判定対象画素を手袋80に対応する画素と判定する。S18の後、処理はS22へ進む。
【0064】
S14で、判定対象画素の色相が所定範囲内に入らない場合(NOの場合)、および、S16で、判定対象画素の彩度がしきい値を下回る場合(NOの場合)、処理はS20へ進む。S20では、制御部14は、判定対象画素を手袋80に対応する画素ではないと判定する。S20の後、処理はS22へ進む。
【0065】
S22では、制御部14は、画像データに含まれる全ての画素について、S14-S20の判定処理が終了したか否かを判断する。全ての画素についての判定処理が終了していない場合(NOの場合)、処理はS12へ戻る。全ての画素についての判定処理が終了した場合(YESの場合)、処理はS24へ進む。
【0066】
S24では、制御部14は、画像データに含まれる画素のうち、手袋80に対応すると判定された画素の個数に基づいて、固定刃32および可動刃34に対する手袋80の接近レベルを特定する。例えば、制御部14は、画像データに含まれる全ての画素の個数をN0とし、手袋80に対応する画素の個数をN1とした時に、割合N1/N0が第1所定値(例えば3%)に満たない場合は、接近レベルをレベル0と特定し、割合N1/N0が第1所定値(例えば3%)以上であって第2所定値(例えば5%)に満たない場合に、接近レベルをレベル1と特定し、割合N1/N0が第2所定値(例えば5%)以上の場合に、接近レベルをレベル2と特定する。
【0067】
あるいは、制御部14は、画像データから固定刃32と可動刃34を含む部分を第1部分画像データとして切り出して、第1部分画像データに含まれる全ての画素の個数をM0とし、第1部分画像データの中で手袋80に対応する画素の個数をM1とした時に、割合M1/M0が所定値(例えば4%)以上である場合は、接近レベルをレベル1と特定してもよい。また、制御部14は、画像データから固定刃32と可動刃34を含むより小さい部分を第2部分画像データとして切り出して、第2部分画像データに含まれる全ての画素の個数をL0(L0<M0)とし、第2部分画像データの中で手袋80に対応する画素の個数をL1とした時に、割合L1/L0が所定値(例えば4%)以上である場合は、接近レベルをレベル2と特定してもよい。さらに、制御部14は、接近レベルがレベル1にもレベル2にも該当しない場合に、接近レベルをレベル0と特定してもよい。
【0068】
S26では、制御部14は、接近レベルがレベル2であるか否かを判断する。接近レベルがレベル2の場合(YESの場合)、処理はS28へ進む。S28では、制御部14は、電動モータ36の回転を禁止するとともに、表示ランプ20に異常の発生を表示し、ブザー22で警告音を発生させて、固定刃32および可動刃34に手袋80が過剰に接近していることをユーザに報知する。S28の後、
図8の処理は終了する。
【0069】
S26で、接近レベルがレベル2ではない場合(NOの場合)、処理はS30へ進む。S30では、制御部14は、接近レベルがレベル1であるか否かを判断する。接近レベルがレベル1の場合(YESの場合)、処理はS32へ進む。S32では、制御部14は、表示ランプ20に警告を表示し、ブザー22で警告音を発生させて、固定刃32および可動刃34に手袋80が接近していることをユーザに報知する。なお、S32においては、電動モータ36の回転は許可されており、ユーザは引き続き作業機2を用いた作業を行うことができる。S32の後、処理はS2へ戻る。
【0070】
S30で、接近レベルがレベル1ではない場合(NOの場合)、すなわち接近レベルがレベル0の場合、処理はS2へ戻る。
【0071】
S24-S32の処理により、接近レベルがレベル0の場合には、作業機2は通常通りに動作する。すなわち、接近レベルがレベル0の場合には、作業機2は通常モードで動作するということができる。また、接近レベルがレベル1の場合には、作業機2は通常モードよりも安全に動作する。すなわち、接近レベルがレベル1の場合には、作業機2は通常モードよりも安全な第1の安全モードで動作するということができる。さらに、接近レベルがレベル2の場合には、作業機2は第1の安全モードよりも安全に動作する。すなわち、接近レベルがレベル2の場合には、作業機2は第1の安全モードよりも安全な第2の安全モードで動作するということができる。
【0072】
(変形例)
上記の作業機2において、バッテリユニット4と、スイッチユニット6が、作業ユニット8に搭載されていてもよい。この場合、作業ユニット8のハウジング24の外面に、バッテリパック16を着脱するバッテリ取付部(図示せず)と、主電源スイッチ18と、表示ランプ20が設けられていてもよい。また、作業ユニット8のハウジング24の内部に、制御部14とブザー22が収容されていてもよい。
【0073】
上記の作業機2において、色相の所定範囲は、対象物の色の色相が含まれる範囲であれば、どのような範囲であってもよい。また、対象物の色は、紫色に限らず、他の色としてもよい。
【0074】
作業機2は、レシプロソー、鉄筋結束機等の他の種類の作業機であってもよい。例えば、作業機2がレシプロソーである場合、往復動する鋸刃等が作業部に相当する。作業機2が鉄筋結束機である場合、鉄筋の周りにワイヤを送り出すカールガイドや、鉄筋の周りに巻回されたワイヤを捩るフック等が作業部に相当する。
【0075】
(対応関係)
以上のように、1つまたはそれ以上の実施形態において、作業機2は、固定刃32および可動刃34(作業部の例)と、可動刃34を駆動する電動モータ36(原動機の例)と、固定刃32および可動刃34の近傍の範囲を撮像するカメラ74(撮像部の例)と、制御部14を備えている。作業機2は、通常通りに動作する通常モードと、通常モードよりも安全に動作する安全モードで動作可能である。制御部14は、カメラ74で撮像された画像データに含まれる画素のうち、HSV形式で表現した時の色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、手袋80(対象物の例)が固定刃32および可動刃34に接近していると判断される場合に、作業機2を安全モードで動作させるように構成されている。
【0076】
カメラ74で撮像された画像データをHSV形式で表現する場合、同じ色の物体については、撮像時の明るさが異なっていても、同じ色相となる。このため、上記の構成によれば、作業機2を屋外で使用する場合であっても、カメラ74で撮像された画像データに基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34へ接近することを精度よく検知することができる。
【0077】
1つまたはそれ以上の実施形態において、制御部14は、カメラ74で撮像された画像データに含まれる画素のうち、色相が所定範囲内であって、かつHSV形式で表現した時の彩度がしきい値以上である画素の個数に基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近しているか否かを判断するように構成されている。
【0078】
カメラ74で撮像された画像データをHSV形式で表現した場合、白色や黒色、灰色といった彩度の低い色の色相が、彩度の高い他の色(例えば紫色)の色相と同じ値となることがある。このため、手袋80に対応する画素であるか否かを、その画素の色相のみに基づいて判定しようとすると、彩度の低い色が写り込んだ画素を、手袋80に対応する画素と誤って判定するおそれがある。上記の構成によれば、色相が所定範囲内であって、かつ彩度がしきい値以上である画素の個数に基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近しているか否かを判断するので、彩度の低い色の写り込みによる誤検知を抑制することができる。
【0079】
1つまたはそれ以上の実施形態において、制御部14は、カメラ74で撮像された画像データに含まれる画素のHSV形式で表現した時の明度が高いほど、彩度のしきい値を低い値に設定する。
【0080】
一般に、明るい環境で画像データを撮像した場合には、紫色の手袋80に対応する画素の彩度が低くなる傾向があり、暗い環境で画像データを撮像した場合には、紫色の手袋80に対応する画素の彩度が高くなる傾向がある。上記の構成によれば、画像データに含まれる画素の明度が高いほど、彩度のしきい値を低い値に設定するので、手袋80の固定刃32および可動刃34への接近をより確実に検知することができる。
【0081】
1つまたはそれ以上の実施形態において、色相の所定範囲は、230°~360°の範囲であってもよい。
【0082】
屋外で作業機2を使用する際には、カメラ74で撮像された画像データに、空の青色や、葉や草の緑色、木の枝や幹などの茶色が写り込むことがある。これらの色の色相は、0°~230°の範囲内であり、色相が230°~360°の範囲内の色(例えば紫色)が、画像データに写り込むことはあまりない。上記の構成によれば、手袋80の色の色相を、230°~360°の範囲内とすることで、手袋80が固定刃32および可動刃34へ接近することを精度よく検出することができる。
【0083】
1つまたはそれ以上の実施形態において、作業機2は、固定刃32および可動刃34と、カメラ74を支持しており、ユーザによって把持されるハウジング24をさらに備えている。可動刃34は、固定刃32に対して左右方向に伸びる回動軸周りに回動可能であり、電動モータ36によって駆動される。
【0084】
上記の作業機2は、枝82等を切断する剪定はさみとして機能する。上記の作業機2を使用して枝82を切断する際には、ユーザは、一方の手でハウジング24を把持し、他方の手で枝82を把持した状態で、作業を行うことがある。上記の構成によれば、他方の手に色相が所定範囲内に入る色(例えば紫色)の手袋80を着用しておくことで、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近した時に、作業機2を安全モードで動作させることができる。ユーザの安全を確保することができる。
【0085】
1つまたはそれ以上の実施形態において、カメラ74は、ハウジング24の上面側に配置されている。
【0086】
作業機2が固定刃32および可動刃34を備える構成では、カメラ74がハウジング24の右面側(または左面側)にあると、固定刃32および可動刃34の右側(または左側)の領域についてはカメラ74の視野に入るものの、固定刃32および可動刃34の左側(または右側)の領域については固定刃32および可動刃34によって遮蔽されてカメラ74の視野に入らないので、固定刃32および可動刃34の左右両側の領域を撮像することが困難となる。また、カメラ74がハウジング24の下面側にあると、固定刃32および可動刃34の左右両側の領域を撮像できるものの、カメラ74がハウジング24から下方に突出することになり、作業の邪魔になりやすい。上記の構成によれば、カメラ74がハウジング24の上面側に配置されているので、固定刃32および可動刃34の左右両側の領域を撮像することができる。また、カメラ74がハウジング24から下方に突出して作業の邪魔になることを抑制することができる。
【0087】
1つまたはそれ以上の実施形態において、固定刃32に対して可動刃34が最大に開いた状態で、ハウジング24の長手方向を水平方向とした時に、カメラ74は、可動刃34の上端よりも下方に配置されている。
【0088】
カメラ74がハウジング24の上面側に配置されることで、カメラ74がハウジング24から上方に突出する場合でも、可動刃34が最大に開いた状態での可動刃34の上端よりも下方にカメラ74が配置されていれば、作業の邪魔になりにくい。上記の構成によれば、カメラ74がハウジング24から上方に突出する場合であっても、カメラ74が作業の邪魔になってしまうことを抑制することができる。
【0089】
1つまたはそれ以上の実施形態において、ハウジング24によって支持されており、固定刃32および可動刃34の近傍の領域を照明する右側ライト76および左側ライト78(照明部の例)をさらに備えている。
【0090】
上記の構成によれば、暗い環境であっても、右側ライト76および左側ライト78によって固定刃32および可動刃34の近傍の領域を照明した状態で画像データを撮像することができるので、明るい環境で画像データを撮像する場合と同等の条件で画像データを取得することができる。環境の明るさの相違に起因して、検出精度にばらつきが生じることを抑制することができる。
【0091】
1つまたはそれ以上の実施形態において、右側ライト76(右側照明部の例)は、ハウジング24の右面側に配置されており、左側ライト78(左側照明部の例)は、ハウジング24の左面側に配置されている。
【0092】
作業機2が固定刃32および可動刃34を備えている構成では、作業機2が右側ライト76(または左側ライト78)だけを備えていると、固定刃32および可動刃34の右側(または左側)の領域は照明されるものの、固定刃32および可動刃34の左側(または右側)の領域は固定刃32および可動刃34によって遮蔽されて照明されないので、固定刃32および可動刃34の左右両側の領域を照明することが困難となる。上記の構成によれば、作業機2が右側ライト76と左側ライト78の両方を備えているので、固定刃32および可動刃34の左右両側の領域を適切に照明することができる。
【0093】
1つまたはそれ以上の実施形態において、制御部14は、画像データに含まれる画素のうち、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1(第1の画素の例)と、固定刃32および可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2(第2の画素の例)をそれぞれ特定し、画素P1と画素P2の、HSV形式で表現した時の色相、彩度および/または明度に基づいて、カメラ74が障害物84によって遮蔽されているか否かを判断する。
【0094】
カメラ74が障害物84によって遮蔽されていない場合には、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1には常に同じ色(すなわち固定刃32の色)が写り込み、固定刃32や可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2には背景の色が写り込む。この場合、画素P1と画素P2では、色相や彩度、明度は異なる値となる。これに対して、カメラ74が障害物84によって遮蔽されている場合には、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1にも、固定刃32や可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2にも、同じ障害物84の色が写り込む。この場合、画素P1と画素P2で、色相や彩度、明度は略同様の値となる。上記の構成によれば、固定刃32に対応する位置に配置された画素P1と、固定刃32や可動刃34に対応しない位置に配置された画素P2の、色相、彩度および/または明度に基づいて、カメラ74が障害物84によって遮蔽されているか否かを適切に判別することができる。
【0095】
1つまたはそれ以上の実施形態において、カメラ74の左右方向の画角は、60°~120°の範囲内である。
【0096】
左右方向の画角が広すぎると、左右方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34にそれほど接近していない場合でも、画像データに手袋80が写り込むことになる。逆に、左右方向の画角が狭すぎると、左右方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34にかなり接近するまで、画像データに手袋80が写り込まなくなってしまう。上記の構成によれば、左右方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近しているか否かを適切に検知することができる。
【0097】
1つまたはそれ以上の実施形態において、カメラ74の上下方向の画角は、45°~90°の範囲内である。
【0098】
上下方向の画角が広すぎると、上下方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34にそれほど接近していない場合でも、画像データに手袋80が写り込むことになる。逆に、上下方向の画角が狭すぎると、上下方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34にかなり接近するまで、画像データに手袋80が写り込まなくなってしまう。上記の構成によれば、上下方向に関して、手袋80が固定刃32および可動刃34に接近しているか否かを適切に検知することができる。
【0099】
1つまたはそれ以上の実施形態において、カメラ74のシャッタースピードは、0.1ms~2msの範囲内である。
【0100】
上記の構成によれば、作業機2を屋外で使用する場合に、適切な明るさで画像データを撮像することができる。
【0101】
1つまたはそれ以上の実施形態において、安全モードは、通常モードよりも安全に動作する第1の安全モードと、第1の安全モードよりも安全に動作する第2の安全モードを含んでいる。制御部14は、カメラ74で撮像された画像データに含まれる画素のうち、色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34へレベル1の接近レベル(第1の接近レベルの例)で接近していると判断される場合に、作業機2を第1の安全モードで動作させるように構成されている。制御部14は、カメラ74で撮像された画像データに含まれる画素のうち、色相が所定範囲内である画素の個数に基づいて、手袋80が固定刃32および可動刃34へレベル1よりも接近したレベル2の接近レベル(第2の接近レベルの例)で接近していると判断される場合に、作業機2を第2の安全モードで動作させるように構成されている。
【0102】
上記の構成によれば、手袋80の固定刃32および可動刃34への接近レベルに応じて、段階的により安全なモードで作業機2を動作させることができる。
【符号の説明】
【0103】
2 :作業機
4 :バッテリユニット
6 :スイッチユニット
8 :作業ユニット
10 :ケーブル
12 :接続コード
14 :制御部
16 :バッテリパック
18 :主電源スイッチ
20 :表示ランプ
22 :ブザー
24 :ハウジング
26 :グリップ
27 :コネクタ
28 :トリガ
30 :ガード
32 :固定刃
34 :可動刃
36 :電動モータ
38 :動力伝達部
40 :トリガ位置検出部
42 :出力シャフト
44 :減速機構
46 :スクリューシャフト
48 :ナット
50 :ナットケーシング
52 :リンクアーム
54 :下側刃部
56 :支持部
58 :上側刃部
60 :レバー部
62 :ボルト
64 :ピン
66 :ピン
68 :磁石
70 :バネ
72 :トリガ位置センサ
74 :カメラ
76 :右側ライト
78 :左側ライト
80 :手袋
82 :枝
84 :障害物