IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トウネツの特許一覧

<>
  • 特開-溶湯保持炉 図1
  • 特開-溶湯保持炉 図2
  • 特開-溶湯保持炉 図3
  • 特開-溶湯保持炉 図4
  • 特開-溶湯保持炉 図5
  • 特開-溶湯保持炉 図6
  • 特開-溶湯保持炉 図7
  • 特開-溶湯保持炉 図8
  • 特開-溶湯保持炉 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013006
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】溶湯保持炉
(51)【国際特許分類】
   B22D 18/04 20060101AFI20250117BHJP
   B22D 45/00 20060101ALI20250117BHJP
   F27B 3/28 20060101ALI20250117BHJP
   F27B 3/12 20060101ALI20250117BHJP
   F27D 21/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B22D18/04 U
B22D45/00 B
F27B3/28
F27B3/12
F27D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116256
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】391003727
【氏名又は名称】株式会社トウネツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 城也太
【テーマコード(参考)】
4K045
4K056
【Fターム(参考)】
4K045AA06
4K045BA03
4K045DA07
4K045RA03
4K045RA12
4K045RB19
4K045RC10
4K056AA06
4K056BA02
4K056BB02
4K056BB06
4K056CA04
4K056FA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属溶湯を効率良く昇温し、保温できるとともに、溶湯加熱体への酸化物の付着及び金属溶湯内への水素ガスの気泡の放出を抑制する。
【解決手段】溶湯保持炉は、金属溶湯MMの保持室13と、側壁部13Dsから斜め下方に向かって延出して金属溶湯MMを加熱する細長状の溶湯加熱体2と、を有し、溶湯加熱体2の下方に位置する保持室13の底面は、溶湯加熱体2と同方向に傾斜する傾斜床面13Db1を有し、溶湯加熱体2と傾斜床面13Db1との間の易加熱空間Yにある金属溶湯MMが溶湯加熱体2の表面と接触して熱が金属溶湯MMに伝えられ、保持室13内部の溶湯加熱体2の上端部2G以上の高さに、金属溶湯MMの下限液面レベルが設定され、保持室13内部の金属溶湯MMの液面の高さが下限液面レベルを下回る前に金属溶湯MMを補充し、保持室13内部の金属溶湯MMの液面の高さを溶湯加熱体2の上端部2G以上の高さに保つ。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属溶湯を保持する保持室と、
前記保持室の側壁部から斜め下方に向かって延出して設けられ、前記保持室の内部の前記金属溶湯を加熱する細長状の溶湯加熱体と、を有し、
前記溶湯加熱体の下方に位置する前記保持室の底面は、前記溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら、前記溶湯加熱体と同方向に傾斜する傾斜床面を有し、
前記溶湯加熱体と前記傾斜床面との間に易加熱空間が形成されており、
前記易加熱空間にある前記金属溶湯が前記溶湯加熱体の表面と接触することによって前記溶湯加熱体の熱を前記金属溶湯に伝えられる構成とされ、
前記保持室の内部に設けられた前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに、前記保持室の内部の前記金属溶湯の下限液面レベルが設定されており、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルを下回る前に前記保持室の内部に前記金属溶湯が補充し、前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さを前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに保つ構成とした、
ことを特徴とする溶湯保持炉。
【請求項2】
前記溶湯加熱体の傾斜角度および前記傾斜床面の傾斜角度はともに20~45度の範囲内にある、請求項1記載の溶湯保持炉。
【請求項3】
前記保持室の上方開口部を閉塞する保持室蓋が設けられ、前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面が前記溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら前記溶湯加熱体と同方向に傾斜している請求項1記載の溶湯保持炉。
【請求項4】
金属溶湯を保持する保持室と、
前記保持室の上方開口部を閉塞する保持室蓋と、
前記保持室の側壁部から斜め下方に向かって延出して設けられ、前記保持室の内部の前記金属溶湯を加熱する細長状の溶湯加熱体と、を有し、
前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面が前溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら前記溶湯加熱体と同方向に傾斜しており、
前記保持室の内部に設けられた前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに、前記保持室の内部の前記金属溶湯の下限液面レベルが設定されており、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルを下回る前に前記保持室の内部に前記金属溶湯が補充し、前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さを前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに保つ構成とした、
ことを特徴とする溶湯保持炉。
【請求項5】
前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面の傾斜角度と前記溶湯加熱体の傾斜角度はともに20~45度の範囲内にある、請求項4記載の溶湯保持炉。
【請求項6】
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルまで下がったことおよび前記下限液面レベルに近づいたことの少なくとも一方を検出する液面レベルセンサを前記保持室の内部に設けている、請求項1または4記載の溶湯保持炉。
【請求項7】
前記金属溶湯が供給される受湯室を有し、
前記保持室は、前記受湯室と連通されており、前記受湯室から流れ込んだ前記金属溶湯を保持する室であり、
前記受湯室の内部の前記金属溶湯の液面高さと前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面高さは同レベルとされ、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルまで下がったことおよび前記下限液面レベルに近づいたことの少なくとも一方を検出する液面レベルセンサを前記受湯室の内部に設けている、
請求項1または4記載の溶湯保持炉。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム、アルミニウム合金などの非鉄金属を溶解した金属溶湯を保持する溶湯保持炉に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシン等の鋳造設備に供給される金属溶湯を保持する溶湯保持炉には様々な形状のものが存在する。
【0003】
例えば、下記特許文献1に開示された2室型低圧鋳造用溶湯保持炉は、溶湯保持室と加圧室とを連通させる溶湯流路口を開閉する昇降式遮断弁を備え、前記加圧室が互いに底部で連通する加圧部と出湯部とを有し、かつ、前記溶湯保持室内及び前記加圧室内にチューブヒータを配置し、前記溶湯保持室の溶湯が前記溶湯流路口の開状態下で前記加圧部の定液面レベルまで導入され、その後、前記溶湯流路口の閉状態下で前記加圧部の溶液面に加圧気体により圧力を作用させて前記出湯部の溶湯を金型のキャビティ内に充填する2室型低圧鋳造用溶湯保持炉において、前記加圧部及び前記出湯部の各内壁面が筒状のファインセラミックス製一体焼成物からなる内張部材で構成され、前記加圧部の内張部材の下端を前記キャビティ内への溶湯充填完了時における液面レベル以下の位置とする一方、前記出湯部の内張部材の上端を前記溶湯保持室の上限液面レベル以上の位置とするとともにその下端を前記加圧部内の加圧開放時における液面レベル以下の位置とし、前記加圧部の定液面レベルを前記溶湯保持室の下限液面レベルに設定したことを特徴とするものである。
【0004】
この2室型低圧鋳造用溶湯保持炉によれば、加圧部及び出湯部の各内壁面を筒状のファインセラミックス製一体焼成物からなる内張部材で構成し、前記加圧部及び出湯部の各内張部材の下端が各部における最低液面レベルより低い位置であるため、加圧部及び出湯部の各内壁面への溶湯の浸透による内壁面の亀裂や破損が長期間にわたって確実に防止できることになり、安定した長期間操業性の確保と良好な鋳物製品の製造が可能になる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4519806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記先行文献1において溶湯保持室の側壁部に2つのチューブヒータが設けられている旨が開示されているが、チューブヒータの設置の仕方については具体的に何も開示されていない。
【0007】
さらに、例えば、溶湯保持炉の金属溶湯を保持する保持室に関していえば、実際に金属溶湯が保持される保持室容器を形成する不定形耐火物や保持室容器の外側に位置する断熱層等は、各々作製される際、大気中の水分が含まれてしまい、乾燥させても完全には水分が抜けきれていない。そして、保持室容器を形成する不定形耐火物の抜け切れなかった水分は、金属溶湯と反応して水素原子の形で金属溶湯中に取り込まれ、水素ガスの気泡として金属溶湯中に放出される。また、保持室容器の外側に位置する断熱層等の抜け切れなかった水分は、保持室容器を形成する不定形耐火物を通して金属溶湯と反応して水素原子の形で金属溶湯中に取り込まれ、水素ガスの気泡として金属溶湯中に放出される。これらの水素ガスの気泡は、鋳造した製品内にピンホールを発生させる恐れがある。現状では、不活性ガス(窒素やアルゴンなど)を用いた脱ガス装置により、水素ガスの気泡を排除しているが十分ではなく、更なる水素ガスの気泡の放出を抑制することが求められている。
【0008】
本発明の課題は、溶湯保持炉内に保持する金属溶湯を効率良く昇温し、保温することができるとともに、金属溶湯を加熱する溶湯加熱体への酸化物の付着及び金属溶湯内への水素ガスの気泡の放出を抑制した溶湯保持炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段の態様は次のとおりである。
【0010】
(第1の態様)
金属溶湯を保持する保持室と、
前記保持室の側壁部から斜め下方に向かって延出して設けられ、前記保持室の内部の前記金属溶湯を加熱する細長状の溶湯加熱体と、を有し、
前記溶湯加熱体の下方に位置する前記保持室の底面は、前記溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら、前記溶湯加熱体と同方向に傾斜する傾斜床面を有し、
前記溶湯加熱体と前記傾斜床面との間に易加熱空間が形成されており、
前記易加熱空間にある前記金属溶湯が前記溶湯加熱体の表面と接触することによって前記溶湯加熱体の熱が前記金属溶湯に伝えられる構成とされ、
前記保持室の内部に設けられた前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに、前記保持室の内部の前記金属溶湯の下限液面レベルが設定されており、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さ(以下では「液面レベル」という)が前記下限液面レベルを下回る前に前記保持室の内部に前記金属溶湯が補充し、前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さを前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに保つ構成とした、
ことを特徴とする溶湯保持炉。
【0011】
(作用効果)
第1の態様の溶湯保持炉によれば、溶湯加熱体と保持室の傾斜床面との間に形成された易加熱空間において、溶湯加熱体の全体から金属溶湯への熱伝導効率を高めることができ、保持室内の金属溶湯を効率的に加熱することができる。
【0012】
また、従来の溶湯加熱体を縦置きした略立方体や略直方体等の保持室は、保持室内に溶湯加熱体を収容するために、保持室の高さをある程度高くせざるを得なかった。しかし、保持室の高さが高くなると、溶湯保持炉と既存設備(例えばダイカストマシンの給湯設備をいい、この給湯設備は最大約1200mm程度の高さを有する。以下同じ。)を併設した際に、溶湯保持炉の高さが前記既存設備よりも高くなることが少なくなかった。このように溶湯保持炉と既存設備に高さの差が生じた場合、溶湯保持炉から既存設備に金属溶湯を移動させる労力が大きく、運転効率が悪いという問題がある。また、従来の溶湯加熱体が縦置きだと、溶湯加熱体すべてが金属溶湯内に浸漬されていない場合があるため、必ずしも金属溶湯を効率的に加熱しているとはいえなかった。また、従来の溶湯加熱体が縦置きで、加熱する部分がすべて金属溶湯に浸漬した場合でも、金属溶湯を効率的に加熱しているとはいえなかった。例えば、略立方体や略直方体等の特定の大きさの溶解室内の金属溶湯に、溶湯加熱体を浸漬させ、特定の出力の溶湯加熱体が金属溶湯を加熱する場合を考える。この場合、溶湯加熱体と金属溶湯とがいかに広く接触するかで、金属溶湯を加熱する効率が変わってくる。すなわち、金属溶湯に接触する溶湯加熱体の表面積が大きいほど金属溶湯を加熱する効率がよい。したがって、従来の溶湯加熱体が縦置きで、加熱する部分がすべて金属溶湯に浸漬した場合でも、必ずしも金属溶湯を効率的に加熱しているとはいえなかった。
【0013】
このような問題が生じることを防ぐため、保持室の高さを低くするとともに幅を広くして従前の保持室と同程度の容量の保持室とし、かつ、その保持室に長さが短く径が太い溶湯加熱体(従前の溶湯加熱体と同程度の加熱能力にするために径を太くする必要がある)を縦置きする方法も考えられる。しかし、そのような溶湯加熱体は特注品となるため、従前の溶湯加熱体と比べて著しく高価であり(10倍程度の価格)、イニシャルコストが高いという問題がある。
【0014】
他方、従来の溶湯加熱体を横置きするタイプの保持室では、保持室の幅を広くしなければならないため、必然的に保持室の底面の面積が大きくなり、保持室の設置面積が大きくなってしまうという問題がある。また、溶湯加熱体が破損した場合、破損した箇所から金属溶湯が溶湯加熱体に侵入し、例えば、溶湯加熱体が浸漬バーナの場合はバーナユニットまで、溶湯加熱体が浸漬ヒータの場合はヒータボックスまで、金属溶湯が侵入してくる恐れがある。さらに、破損が生じた場合、溶湯加熱体の配置高さより低い高さまで金属溶湯を抜いた上で、溶湯加熱体の交換作業を行わないといけないという作業上の問題がある。
【0015】
以上のような問題を解消するため、第1の態様では、溶湯加熱体を保持室の側壁部から斜め下方に向かって延出して設ける構造とした。このような構造にすることで、溶湯加熱体を縦置きするタイプの従来の保持室よりも、保持室の高さを低くすることができる。その結果、前述の運転効率の低下という問題が生じることを防ぐことができる。また、溶湯加熱体の全体を金属溶湯内に浸漬することができるし、従来の溶湯加熱体の縦置きや横置きと比べ、斜め下方に向かって延出するので長さを長くできるため、金属溶湯に接触する溶湯加熱体の表面積が大きくなり、金属溶湯を加熱する効率がよい。さらに、酸化物の付着形成を防ぐことができる。また、溶湯加熱体を横置きするタイプの従来の保持室よりも、保持室の底面の面積を小さくすることができるため、保持室の設置面積を小さくすることができるし、溶湯加熱体が破損した場合でも、破損した箇所から金属溶湯が溶湯加熱体に侵入し、例えば、溶湯加熱体が浸漬バーナの場合はバーナユニットまで、溶湯加熱体が浸漬ヒータの場合はヒータボックスまで、金属溶湯が侵入してくる恐れがない。さらに、破損が生じた場合でも、従来のように、溶湯加熱体の配置高さより低い高さまで金属溶湯を抜かずに、溶湯加熱体を交換できる。また、保持室を小さくすることができるため、前述したように、保持室容器を形成する不定形耐火物や保持室容器の外側に位置する断熱層からの水分が金属溶湯と反応して水素原子の形で金属溶湯中に取り込まれ、水素ガスの気泡として金属溶湯中に放出される量も少なくなり、必然的に水素ガスの気泡の放出を抑制することができる。
【0016】
それとともに第1の態様では、溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら、溶湯加熱体と同方向に傾斜させた傾斜床面を設けている。このように、保持室に傾斜床面を設けることで、溶湯加熱体と傾斜床面の間の距離が一定に保たれ、この隙間に存在する金属溶湯の熱伝導効率を高くすることができる。
【0017】
また、例えば、保持室内において、溶湯加熱体の一部が金属溶湯の液面よりも上に露出していると、溶湯加熱体の露出した部分は金属溶湯の液面の上にある空気を温めることになり、溶湯加熱体による加熱効率が悪くなるという問題がある。
【0018】
本態様では、保持室の内部に設けられた前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに、前記保持室の内部の前記金属溶湯の下限液面レベルを設定しており、保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルを下回る前に前記保持室の内部に前記金属溶湯が補充し、前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さを前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに保つ構成としている。
【0019】
このような構成により、保持室内における溶湯加熱体のすべての部分が金属溶湯に浸かった状態となり、その状態が保たれるため、溶湯加熱体による加熱効率を高めることができる。
【0020】
(第2の態様)
前記溶湯加熱体の傾斜角度および前記傾斜床面の傾斜角度はともに20~45度の範囲内にある、前記第1の態様の溶湯保持炉。
【0021】
(作用効果)
溶湯加熱体と傾斜床面を略平行にすることで、溶湯加熱体の表面との傾斜床面との間の距離がどの箇所でもほぼ同じになるため、易加熱空間にある金属溶湯に対して溶湯加熱体から熱を均一に伝えることができる。その結果、金属溶湯を効率的に加熱することができ、金属溶湯の一部分に加熱不足が生じて金属溶湯の品質が低下する事態が生じることを防ぐことができる。
【0022】
また、溶湯加熱体の傾斜角度を20~45度の範囲にすることで、溶湯保持炉の高さを抑えることもできる。溶湯保持炉の高さを抑えることができると、溶湯保持炉の高さと他の既存設備の高さに差が生じにくくなる。その結果、溶湯保持炉から既存設備に金属溶湯を移動させる労力が小さくなり、運転効率をよくすることができる。
【0023】
(第3の態様)
前記保持室の上方開口部を閉塞する保持室蓋が設けられ、前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面が前記溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら前記溶湯加熱体と同方向に傾斜している前記第1の態様の溶湯保持炉。
【0024】
(作用効果)
第3の態様の溶湯保持炉によれば、溶湯加熱体と保持室蓋との間の隙間にある金属溶湯に対して、溶湯加熱体からの熱伝達効率を高めることができ、保持室内の金属溶湯を効率的に加熱することができる。
【0025】
(第4の態様)
金属溶湯を保持する保持室と、
前記保持室の上方開口部を閉塞する保持室蓋と、
前記保持室の側壁部から斜め下方に向かって延出して設けられ、前記保持室の内部の前記金属溶湯を加熱する細長状の溶湯加熱体と、を有し、
前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面が前溶湯加熱体と所定の間隔を空けながら前記溶湯加熱体と同方向に傾斜しており、
前記保持室の内部に設けられた前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに、前記保持室の内部の前記金属溶湯の下限液面レベルが設定されており、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルを下回る前に前記保持室の内部に前記金属溶湯が補充し、前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さを前記溶湯加熱体の上端部以上の高さに保つ構成とした、
ことを特徴とする溶湯保持炉。
【0026】
(作用効果)
第1の態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
(第5の態様)
前記保持室蓋のうちの前記溶湯加熱体の上方に位置する部分の下面の傾斜角度と前記溶湯加熱体の傾斜角度はともに20~45度の範囲内にある、前記第4の態様の溶湯保持炉。
【0028】
(作用効果)
第2の態様と同様の作用効果を奏することができる。
【0029】
(第6の態様)
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルまで下がったことおよび前記下限液面レベルに近づいたことの少なくとも一方を検出する液面レベルセンサを前記保持室の内部に設けている、前記第1の態様または第4の態様の溶湯保持炉。
【0030】
(作用効果)
保持室の内部に前記液面レベルセンサを設けることで、保持室の内部の金属溶湯の液面の高さが下限液面レベルまで下がったことおよび下限液面レベルに近づいたことの少なくとも一方を迅速かつ正確に検出することができる。
【0031】
(第7の態様)
前記金属溶湯が供給される受湯室を有し、
前記保持室は、前記受湯室と連通されており、前記受湯室から流れ込んだ前記金属溶湯を保持する室であり、
前記受湯室の内部の前記金属溶湯の液面高さと前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面高さは同レベルとされ、
前記保持室の内部の前記金属溶湯の液面の高さが前記下限液面レベルまで下がったことおよび前記下限液面レベルに近づいたことの少なくとも一方を検出する液面レベルセンサを前記受湯室の内部に設けている、
前記第1の態様または第4の態様の溶湯保持炉。
【0032】
(作用効果)
第6の態様のように保持室の内部に液面レベルセンサを設けてもよいが、一般的に保持室の上方開口部は厚みのある蓋で覆われているため、液面レベルセンサを設置する際にはこの蓋を貫通させなければならず、その設置が容易でない場合が多い。同様の理由により、液面レベルセンサが故障などした際にも、その液面レベルセンサの交換が容易でない場合が多い。
【0033】
第7の態様では、受湯室の内部の金属溶湯の液面高さと保持室の内部の金属溶湯の液面高さが同レベルであるため、受湯室の内部の金属溶湯の液面高さを測ることにより、保持室の内部の金属溶湯の液面高さを知ることができる。
【0034】
そこで本態様では、保持室の内部の金属溶湯の液面の高さが下限液面レベルに下がったことを検出する液面レベルセンサを受湯室の内部に設けている。このような構成にすることで、保持室の内部に液面レベルセンサを設ける場合よりも、液面レベルセンサの設置や交換などが容易となる。かつ、本態様のように液面レベルセンサを受湯室の内部に設ける形態であっても、保持室の内部の金属溶湯の液面の高さが下限液面レベルに下がったことを的確に検出することができる。
【0035】
なお、保持室の後段に出湯室を設け、保持室の内部の金属溶湯の液面高さと出湯室の内部の金属溶湯の液面高さを同レベルとし、保持室の内部の金属溶湯の液面の高さが下限液面レベルに下がったことを検出する液面レベルセンサを出湯室の内部に設けることもできる。
【0036】
ただし、どちらかと言えば、液面レベルセンサを本態様のように出湯室よりも受湯室に設けるほうが好ましい。仮に、出湯室内の金属溶湯が柄杓などによって外部のダイカストマシン等に一気に移動する場合があると、出湯室内の金属溶湯の液面の高さが一時的に一気に低下することになる。このように出湯室の液面高さが一時的に著しく低下した場合であっても、時間が経過するにつれて保持室内の金属溶湯が出湯室内に流れ込み、最終的に出湯室内の金属溶湯の液面高さと保持室内の金属溶湯の液面高さが同レベルになって落ち着くが、出湯室に設けた液面レベルセンサを設けると、出湯室の液面高さが一時的に著しく低下した際に、その出湯室に設けた液面レベルセンサが保持室内の金属溶湯の液面高さも著しく低下し、場合によっては下限液面レベルを下回ったと誤認識する可能性がある。
【0037】
受湯室内の金属溶湯は出湯室内の金属溶湯のように急激に液面高さが変動する可能性が少ない。よって、受湯室内の液面レベルセンサは前述のような誤検知の可能性が低いため、液面レベルセンサは本態様のように出湯室よりも受湯室に設けるほうが好ましい。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、溶湯保持炉内に保持する金属溶湯を効率良く昇温し、保温することができるとともに、金属溶湯を加熱する溶湯加熱体への酸化物の付着及び金属溶湯内への水素ガスの気泡の放出を抑制した溶湯保持炉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第一実施形態に係る溶湯保持炉を示した概略平面図である。
図2図1の溶湯保持炉のZ1-Z1線の断面図である。
図3図1の溶湯保持炉のZ2-Z2線の断面図である。
図4】第二実施形態に溶湯保持炉の図1のZ1-Z1線に相当する断面図である。
図5】第三実施形態に係る溶湯保持炉を示した概略平面図である。
図6図5の溶湯保持炉のZ3-Z3線の断面図である。
図7】第四実施形態に係る溶湯保持炉を示した概略平面図である。
図8図5の溶湯保持炉のZ4-Z4線の断面図である。
図9】比較例に係る金属溶解室を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0041】
以下、本発明に係る溶湯保持炉1の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明及び図面は、本発明の実施形態の一例を示したものにすぎず、本発明の内容をこの実施形態に限定して解釈すべきでない。
【0042】
(第一実施形態)
本発明に係る溶湯保持炉1の第一実施形態を図1図3に示す。この溶湯保持炉1は、アルミニウム合金等の金属溶湯MMを受け入れる受湯室11と、金属溶湯を保持する保持室13と、金属溶湯MMを出湯する出湯室16とを有する。保持室13には、溶湯加熱体2が備えられている。保持室13の上方USには保持室13の上方開口部を閉塞する保持室蓋13Cが設けられている。
【0043】
(保持室13)
保持室13は保持室容器13Dの内部の空間であり、この保持室13内に金属溶湯MMが保持される。保持室13内の金属溶湯MMの温度の低下を防止するため、溶湯加熱体2が設けられている。
【0044】
溶湯加熱体2は特に限定されるものではないが、金属溶湯MMの移動を妨げないものが好ましく、板状の加熱体よりも細長状の加熱体が好ましい。具体的には、チューブバーナーやチューブヒータなどのチューブ状のものを用いることが好ましい。溶湯加熱体2の数は、金属溶湯MMの温度を適切に保持できれば特に制限はない。図1に示した第一実施例においては、保持室13内に4つの溶湯加熱体2を設置している。
【0045】
溶湯加熱体2の基端部は保持室13の側壁部分に設けられている。図3の例では、溶湯加熱体2の基端部は、保持室容器13Dの側壁13Ds(図面左側の側壁)上部と、保持室容器13Dの外側に位置する断熱層13Eの側壁(図面左側の側壁)上部に、保持室容器13Dや断熱層13Eを貫通させて取り付けられている。そして、溶湯加熱体2は保持室13の側壁部分から保持室13の斜め下方へ向かって延出している。図3の例において、溶湯加熱体2は、保持室容器13Dの側壁13Ds(図面左側の側壁)上部から、反対側の床部13Db(図面右側の床部)へ向かって延出して設けられている。すなわち、溶湯加熱体2は、保持室容器13Dの側壁13Ds(図面左側の側壁)上部から、反対側の側壁13Ds(図面右側の側壁)の下部へ向かって延出して設けられているともいえる。
【0046】
この溶湯加熱体2の傾斜角度は任意に定めることができるが、溶湯加熱体2の軸線2xと仮想水平線2yの間の俯角の角度αを20~45度とすることが好ましく、30~40度とすることがより好ましい。
【0047】
前記角度αが20度よりも小さいと、保持室13の高さを抑えることができる。その結果、前述のように、既存設備等の稼働効率が低下してしまうという不都合の発生を防ぐことができるという利点がある。
【0048】
しかし、保持室13の高さを低くしすぎると、受湯室11や出湯室16の高さを変更する必要が生じてしまう。すなわち、受湯室11や出湯室16の高さを変えない場合、各室11、13、16の高さが大きく異なる状態になってしまうため、保持室13と連結している受湯室11や出湯室16の各流路(第一流路W1及び第二流路W2)の形状が歪になり、各室11、13、16間で金属溶湯MMが流れにくくなるという不都合が生じてしまう。
【0049】
また、溶湯加熱体2の角度αを小さくしすぎることについて、そもそもニーズがない。
【0050】
また、溶湯加熱体2の前記角度αが小さくなるにつれて、溶湯加熱体2の延出方向が水平に近くなるため、溶湯加熱体2を収容するために保持室13の幅を長くする必要が生じる。その結果、保持室13を設置するための広い場所が必要になるという不都合も生じる。
【0051】
さらに、保持室13の幅が長くなると、保持室13の底面の面積が大きくなる傾向がある。保持室13の底面の面積が大きいと、放熱が大きくなる、設置面積が広くなるという不都合もある。
【0052】
以上のことから、溶湯加熱体2の角度αは20度以上にすることが好ましい。
【0053】
他方、角度αが45度よりも大きいと溶湯加熱体2を収容する保持室13の高さを抑えることができず、前述のように既存設備等の運転効率が低下してしまうという不都合が生じる可能性がある。
【0054】
以上のような操業上の不都合があることから、前記角度αは45度以下にすることが好ましい。
【0055】
図3の例では、保持室容器13Dの左右の側壁13Dsはほぼ垂直であり、図面右側の床部13Dbはほぼ水平である。他方、保持室容器13Dの図面左側の床部13Dbは、前記溶湯加熱体2と同様に、図面左側から右側へ向かって下方に傾斜している。この保持室容器13Dの床部13Dbの傾斜床面13Db1の傾斜角度β(傾斜床面13Db1の延長線13Dxと仮想水平線13Dyの間の俯角の角度β)は、前記溶湯加熱体2の傾斜角度αとほぼ同じにすることが好ましい。例えば、溶湯加熱体2の傾斜角度αが35度である場合は、傾斜床面13Db1の傾斜角度βも33~37度程度にすることが好ましく、35度にすることが最も好ましい。前述の各傾斜角度α、βを揃えることにより、溶湯加熱体2と傾斜床面13Db1をほぼ平行にすることができるため、溶湯加熱体2の表面と床部13Db(傾斜床面13Db1)との間の距離X(溶湯加熱体2の軸線2xと直角方向における距離)が、どの箇所においてもほぼ同じにある。その結果、溶湯加熱体2と傾斜床面13Db1の間の空間Yにある金属溶湯MMに対して溶湯加熱体2から熱を均一に伝えることができるため、金属溶湯MMを均一に加熱することが可能となる。
【0056】
すなわち、熱発生源である溶湯加熱体2に近づくほど金属溶湯MMは加熱されやすくなる傾向があり、特に溶湯加熱体2の表面と傾斜床面13Db1の間の空間Yは、溶湯加熱体2から発された熱が傾斜床面13Db1に当たって反射して再度溶湯加熱体2に戻るため、加熱効率が向上する。そして、溶湯加熱体2の外表面と傾斜床面13Db1の間の距離Xを溶湯加熱体2の軸方向のどの位置においてもほぼ同じにすることで、空間Yにおける温度がどの箇所においてもほぼ同じになるため、空間Y内において温度むらが生じにくくなる。
【0057】
また、図3に示す保持室13は図9に示したような保持室13の床部13Dbが傾斜していない場合と比べて、溶湯加熱体2からその下方の床部13Dbまでの間の距離Xが短くなる。その結果、図9に示す形態よりも図3に示す実施形態のほうが、空間Yにある金属溶湯MMを加熱しやすい。さらに、図3に示す保持室13は、図9に示したような保持室13と比べて小さくすることができるため、前述したように、保持室容器13Dを形成する不定形耐火物や保持室容器の外側に位置する断熱層13Eからの水分が金属溶湯MMと反応して水素原子の形で金属溶湯MM中に取り込まれ、水素ガスの気泡として金属溶湯MM中に放出される量も少なくなり、必然的に水素ガスの気泡の放出を抑制することができる。
【0058】
図3のように保持室容器13Dに傾斜床面13Db1を設けた場合において、溶湯加熱体2の表面から前記傾斜床面13Db1までの距離Xは7~13cmにすることが好ましく、10~11cmにすることがより好ましい。前記距離Xが7cmよりも短いと、空間Yが小さくなりすぎるため、空間Yにある金属溶湯MMの量が少なくなり、結果として保持室13内において温度むらが大きくなるおそれがある。他方、前記距離Xが13cmよりも長いと空間Yが大きくなりすぎるため、空間Yにある金属溶湯MMの量が多くなることから、加熱効率の低下などの好ましくない現象が生じることになる。
【0059】
なお、図9に示す比較例において、正確には、溶湯加熱体2からその下方の床部13Dbまでの間の距離は千差万別である。このような場合における前記距離Xとは、溶湯加熱体2からその下方の床部13Dbまでの間の平均距離をいう。
【0060】
図3のように、保持室容器13Dの床部13Dbは、傾斜床面13Db1の下端部から側方へ延出する側方延出面13Db2を有している。この側方延出面13Db2は、傾斜床面13Db1の下端部からほぼ水平に横方向に延出している。
【0061】
保持室13内において、金属溶湯MM内に異物(以下、不要な物という意味合いで「不要物」という。)があると、この異物は時間の経過とともに徐々に重力によって保持室13の床部13Dbの上に蓄積される。
【0062】
図3のように、保持室13の床部13Dbに傾斜床面13Db1を設けることにより、傾斜床面13Db1に落下した不要物は傾斜床面13Db1の傾斜に沿って転げ落ち、側方延出面13Db2の上に滞留する。すなわち、不要物は保持室13の底面全体に散在するのではなく、ごく自然に側方延出面13Db2の上に集まるようになる。したがって、保持室蓋13Cの上部開口部13Ca1に設けた開口部蓋13Caを開けて、上部開口部13Ca1から保持室13内に柄杓などを挿入にして、不要物を掻き揚げて回収する際、側方延出面13Db2の上に集積された不要物を掬い取れば良いため、図9のように傾斜床面13Db1を設けない場合と比べて、不要物の回収効率を高めることができる。
【0063】
また、図1図3に示すように、側方延出面13Db2に一段と窪んだ部分(溝部13Db3)を設けるとよい。このような溝部13Db3を設けることで、不要物を回収する際、側方延出面13Db2の上の不要物をこの溝部13Db3内に落とし、その後に柄杓をこの溝部13Db3の内部に入れて、柄杓をこの溝部13Db3の延出方向に沿って移動させると、容易に不要物を回収することができる。
【0064】
保持室蓋13Cの上部開口部13Ca1は下方から上方に向けて開口面積が漸次広く設定されて傾斜した内周面を有することが好ましい。そして、開口部蓋13Caは上部開口部13Ca1に上方から嵌め込み可能に上部開口部13Ca1の内周面に対応して傾斜した外周面を有することが好ましい。開口部蓋13Caや上部開口部13Ca1が垂直の内周面及び外周面を有する場合に比べ、嵌め込んだ時の隙間を作り難くして酸化を防ぎながら、上部開口部13Ca1に上方から開口部蓋13Caを嵌め込むだけで容易に上部開口部13Ca1を閉塞することができる。また、メンテナンスで開口部蓋13Caを持ち上げて外した際、保持室13の底部に開口部蓋13Caが落下することを防止できる。なお、上部開口部13Ca1に開口部蓋13Caを嵌め込むことで、開口部蓋13Caは保持室蓋13Cの一部として機能するため、開口部蓋13Caも保持室蓋13Cの一部といえる。
【0065】
なお、溶湯加熱体2と傾斜床面13Db1との間の空間Yは、金属溶湯MMを加熱しやすい空間という意味合いで易加熱空間ともいう。この易加熱空間に存在する金属溶湯MMの量は多くないため、金属溶湯MMが溶湯加熱体2の表面と接触することによって溶湯加熱体2の熱が金属溶湯MMに伝えられ、金属溶湯MMが容易に加熱される。
【0066】
易加熱空間Yはその他の空間に比べて高温になっており、溶湯保持炉1に金属溶湯MMを供給する際、外部の空気と金属溶湯MMが触れて金属溶湯MMの温度が低下したり、受湯室11に貯留している間に受湯室11の金属溶湯MMの温度が低下したりした場合に、金属溶湯MMを昇温しやすい空間になっている。また、金属溶湯MM内に溶解し切れていなかった金属片や金属塊等があった場合でも、それらを溶解できる空間になっている。
【0067】
以上のようにして保持室13で所望の温度に保たれた金属溶湯MMは、第二流路W2から出湯室16へ流れ込み、出湯の準備が行われる。金属溶湯MMの出湯室16への流れ込みは、受湯室11、保持室13、出湯室16の各室内の金属溶湯MMの液面高さが同レベルになるまで生じ、同レベルになった段階で自然に止まる。
【0068】
その後、出湯室16内の金属溶湯MMの一部が鋳造機やダイカストマシン等の後段の装置に出湯される。
【0069】
なお、保持室13は金属溶湯MMの温度を保つため、保持室13から外側に向かって、保持室容器13D、断熱層13E、鉄皮13Fの順に並ぶ多層の構造とすることが好ましい。受湯室11や出湯室16も同様である。
【0070】
また、出湯室16内の金属溶湯MMの温度が低下することを防止するため、出湯室16の内部にもヒータ等の溶湯加熱体2を設けることが好ましい。
【0071】
なお、保持室13内に保持される金属溶湯MMの液面レベルMLの推奨下限値として下限液面レベルL1を設定することが好ましい。この下限液面レベルL1は溶湯加熱体2の上端部分(以下、「上端部2G」という)以上の高さに設定することが好ましい。なお、この下限液面レベルL1は溶湯加熱体2の上端部2Gと同じ高さにするよりも、溶湯加熱体2の上端部2Gよりも少し高い位置に設定することが好ましい。
【0072】
なぜならば、保持室13内の金属溶湯MMが下限液面レベルL1まで下がったことを液面レベルセンサ17が検知した後に受湯室11内に新たな金属溶湯MMを補充するように伝達した場合、仮に出湯室16から大量の金属溶湯MMが一度に出湯したときに、保持室13内の金属溶湯MMの量が一気に減少して一時的に下限液面レベルL1を下回るおそれがある。このとき、下限液面レベルL1を溶湯加熱体2の上端部2Gと同じ高さに設定していた場合、溶湯加熱体2の上端部2Gが一時的に(金属溶湯MMが新たに補充されるまで)保持室13内の金属溶湯MMの液面MLより上に露出することになるため、溶湯加熱体2の加熱効率の低下及び酸化物の付着を招くおそれがある。このような事態を防ぐために、下限液面レベルL1は溶湯加熱体2の上端部2Gよりも少し高い位置に設定することが好ましい。
【0073】
なお、仮に下限液面レベルL1を溶湯加熱体2の上端部2Gと同じレベルに設定した場合は、保持室13内の金属溶湯MMが下限液面レベルL1に近づきつつあることを液面レベルセンサ17が検知した段階で早めに受湯室11内に新たな金属溶湯MMを補充することが好ましい。なお、溶湯加熱体2の上端部2Gが一時的に保持室13内の金属溶湯MMの液面MLより上に露出することを防ぐことの確実性を上げるためには、下限液面レベルL1を溶湯加熱体2の上端部2Gよりも少し高い位置に設定するとともに、保持室13内の金属溶湯MMが下限液面レベルL1に近づきつつあることを液面レベルセンサ17が検知した段階で早めに受湯室11内に新たな金属溶湯MMを補充することが好ましい。
【0074】
以上で説明したように、保持室13の内部に液面レベルセンサ17を設け、その液面レベルセンサ17によって、保持室13の内部の金属溶湯MMの液面レベルMLが下限液面レベルL1に近づきつつあることや、保持室13の内部の金属溶湯MMの液面レベルMLが下限液面レベルL1に達したことを検知することが好ましい。そして、そのような検知が行われた際には、その情報を制御部20に伝達する。伝達を受けた制御部20は、金属溶湯MMを供給するよう金属溶湯供給部21に対し指令を出し、金属溶湯供給部21が指令を受けた量の新たな金属溶湯MMを受湯室11に供給するようにすることが好ましい。受湯室11と保持室13は連通されているため、受湯室11内に新たな金属溶湯MMが供給されることにより、受湯室11内の金属溶湯MMの一部が保持室13内に流れ込み、その結果として保持室13内の液面レベルMLを再び上げることができる。
【0075】
このようにして保持室13内部の金属溶湯MMの液面レベルMLを常に下限液面レベルL1以上に保つことにより、保持室13内にある溶湯加熱体2のすべてが金属溶湯MMに浸かった状態を常に保つことができるようになる。その結果、保持室13の内部において、溶湯加熱体2が金属溶湯MM以外のもの(空気ARなど)を加熱する事態を避けることができ、溶湯加熱体2による加熱効率を高めることができる。
【0076】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。図3の形態とは別の保持室13(第二実施形態)を図4に示した。この図4に示す保持室13は、図3の形態の保持室13と同様に、第一実施形態の溶湯保持炉1に用いることができる。
【0077】
図4の保持室13は図3の保持室13とほぼ同じであるため、同じ部分については説明を省略し、異なる部分のみを説明する。図4の保持室13は、保持室13を覆う保持室蓋13Cの下面13Cbが傾斜していることを特徴とする。具体的には、溶湯加熱体2の上方に位置する保持室蓋13Cの下面13Cbが、溶湯加熱体2と所定の間隔を空けながら、溶湯加熱体2と同方向に傾斜している。以下、この点について詳述する。
【0078】
図4の例では、保持室13を覆う保持室蓋13Cの下面13Cbの一部が、溶湯加熱体2と同様に、図面左側から右側へ向かって下方に傾斜している。以下において、溶湯加熱体2とほぼ同じ方向に傾斜している保持室蓋13Cの下面13Cbを同方向傾斜下面13Cb1といい、溶湯加熱体2と異なる方向に傾斜している保持室蓋13Cの下面13Cbを異方向傾斜または水平下面13Cb2という。この同方向傾斜下面13Cb1の傾斜角度θ(同方向傾斜下面13Cb1の延長線13Cxと仮想水平線13Cyの間の俯角の角度θ)は、前記溶湯加熱体2の傾斜角度αとほぼ同じにすることが好ましい。例えば、溶湯加熱体2の傾斜角度αが35度である場合は、同方向傾斜下面13Cb1の傾斜角度θも33~37度程度にすることが好ましく、35度にすることが最も好ましい。前述の各傾斜角度α、θを揃えることにより、溶湯加熱体2と保持室蓋13Cの同方向傾斜下面13Cb1をほぼ平行にすることができるため、溶湯加熱体2の表面と保持室蓋13Cの同方向傾斜下面13Cb1との間の距離P(溶湯加熱体2の軸線2xと直角方向における距離)が、どの箇所においてもほぼ同じになる。その結果、溶湯加熱体2と保持室蓋13Cの同方向傾斜下面13Cb1の間の空間Qを流動する金属溶湯MMに対して溶湯加熱体2から熱を均一に伝えることができるため、金属溶湯MMの温度むらを低減でき、また、効率的な加熱が可能となる。すなわち、溶湯加熱体2の表面と保持室蓋13Cの同方向傾斜下面13Cb1の間の空間Qは、前述した空間Yと同様の効果を発揮することができる。この空間Qを設けたことによって、金属溶湯MMの温度むらが低減され、効率的な加熱が可能となる作用については、易加熱空間Yと同様であるため、ここでは詳細な記載を省略する。
【0079】
また、図4のように保持室蓋13Cに同方向傾斜下面13Cb1を設けた場合において、溶湯加熱体2の表面から前記同方向傾斜下面13Cb1までの距離Pは7~13cmにすることが好ましく、10~11cmにすることがより好ましい。前記距離Pが7cmよりも短いと、空間Qが小さくなりすぎるため、単位時間当たりにおける空間Q内を流れる金属溶湯MMの量が少なくなり、結果として保持室13内の温度むらが大きくなり、加熱効率が低下するおそれがある。他方、前記距離Pが13cmよりも長いと、空間Qを流れる金属溶湯MMの速度が上がらないため、空間Q側の溶湯加熱体2の表面に接触する金属溶湯MMの量が少なくなることから、溶湯加熱体2からの熱が金属溶湯MMに伝わりにくくなり、金属溶湯MMの加熱効率が低下し、また温度むらを増大させるおそれがある。
【0080】
(第三実施形態)
次に第三実施形態について説明する。図5図6に第三実施形態に係る溶湯保持炉1を示した。この第三実施形態は、保持室13に液面レベルセンサ17を設けるのではなく、受湯室11に液面レベルセンサ17を設けている点が第一実施形態を大きく異なる。
【0081】
保持室13の上方開口部は厚みのある保持室蓋13Cによって覆われていることが多く、その保持室蓋13Cを貫通させて液面レベルセンサ17を設けることは容易でないことが多い。また、保持室蓋13Cは基本的に開け締めすることを前提としていないため、液面レベルセンサ17が故障などした際にも、その液面レベルセンサ17の交換が容易でない場合が多い。
【0082】
他方、受湯室11にはしばしば金属溶湯MMを供給することから、受湯室11の上部開口部には蓋を設けないか、設けたとしても開閉しやすいタイプの蓋を設けることが多い。そのため、受湯室11に液面レベルセンサ17を設けることは比較的容易である。そこで、第三実施形態では、受湯室11に液面レベルセンサ17を設けている。
【0083】
なお、受湯室11と保持室13は互いに連通しているため、受湯室11の内部の金属溶湯MMの液面高さと保持室13の内部の金属溶湯MMの液面高さは基本的に同レベルになっている。
【0084】
そして、図6に示すように、保持室13内に設けた前記下限液面レベルL1と同じ高さの下限液面レベルL1を受湯室11内にも設定し、受湯室11の液面レベルセンサ17を用いて、受湯室11の下限液面レベルL1を検知できるようにする。受湯室11内の金属溶湯MMの液面レベルMLがこの下限液面レベルL1まで下がったことを受湯室11の液面レベルセンサ17が検知した場合、保持室13内の金属溶湯MMの液面レベルMLも下限液面レベルL1に下がっていると推定し(一般的にこの推定は正確性が高い)、制御部20によって、受湯室11の内部に新たな金属溶湯MMを追加補充することが好ましい。このような構成にすることで、保持室13内の金属溶湯MMの液面レベルMLを常に下限液面レベルL1以上に保つことができる。
【0085】
なお、前記説明では受湯室11内の金属溶湯MMの液面レベルMLが下限液面レベルL1まで下がったことを液面レベルセンサ17が検知した後に受湯室11内に新たな金属溶湯MMを補充する構成としたが、仮に出湯室16から一度に大量の金属溶湯MMが出湯するようなことが生じると、受湯室11内の金属溶湯MMの液面レベルMLが一気に低下することも考えられる。そのため、受湯室11内の金属溶湯MMの液面レベルMLが下限液面レベルL1に近づきつつある段階で、早めに受湯室11内に新たな金属溶湯MMを追加補充することが好ましい。このようにすることで、保持室13内の金属溶湯MMの液面レベルMLを常に下限液面レベルL1以上に保ちやすくなる。
【0086】
また、液面レベルセンサ17は出湯室16よりも受湯室11に設けるほうがよい。その理由は前述したとおりであり、ここでは重複説明を省略する。また、第三実施形態において、その他の構成などは第一実施形態や第二実施形態と同様であるので、その他の構成についても説明を省略する。
【0087】
(第四実施形態)
次に第四実施形態について説明する。第四実施形態に係る溶湯保持炉1を図7図8に示した。
【0088】
この溶湯保持炉1では、まず金属溶湯MMが受湯室11内へ投入され、受湯室11内の金属溶湯MMは第一流路W1を通って保持室13へと流れる。保持室13では、溶湯加熱体2(例えばヒータ)によって金属溶湯MMが加熱され、金属溶湯MMの保温や昇温が行われる。そして、保持室13内で昇温や保温された金属溶湯MMは、第二流路W2を通って出湯室16へと流れる。
【0089】
保持室13から出湯室16への金属溶湯MMの流れは、第二流路W2を開閉するための昇降式遮断弁4(昇降式以外の遮断弁でもよい。以下同じ。)で制御されている。昇降式遮断弁4は保持室13の金属溶湯MMの出口部分や、出湯室16の金属溶湯MMの入口部分や、図8に示すような第二流路W2などの任意の部分に設けることができる。
【0090】
出湯室16内の金属溶湯MMの液面レベルMLが低い段階では、昇降式遮断弁4を開いた状態にしておき、出湯室16内に金属溶湯MMが十分に溜まった段階で、昇降式遮断弁4を閉じる。
【0091】
その後、出湯室16内の金属溶湯MMを後段に設けられた外部装置(例えばダイカストマシン。図示しない)等に送る際に、加圧気体流路36を介して出湯室16内の加圧部33に加圧気体を供給する。このように供給された加圧気体によって、加圧部33の液面レベルMLが低下するとともに、出湯室16内の出湯部34の液面レベルMLが上昇し、この出湯部34から前記外部装置に金属溶湯MMが提供される。このとき、昇降式遮断弁4が閉じられているため、加圧気体で加圧されたときに、出湯室16内の金属溶湯MMが保持室13に逆流することを防ぐことができる。以上のようにして外部装置に一定量の金属溶湯MMが供給された後は、加圧気体の提供を停止する。そうすると、加圧部33内の加圧気体が反対に加圧気体流路36を介して外部に排出される。このようにして加圧部33から加圧気体が排気されるにつれて、出湯部34の液面レベルMLが次第に低下するとともに、加圧部33の液面レベルMLが次第に上昇する。
【0092】
以上のように、加圧部33と出湯部34では液面レベルMLがしばしば変動する。この液面レベルMLの変動によって、出湯室16の出湯室容器16Dが傷む可能性がある。すなわち、出湯室容器16Dは多孔質かつ通気性を有することが多く、出湯室16内に加圧気体を供給したときに、特に前記液面レベルMLの変動範囲に大きな圧力がかかり、出湯室容器16Dの前記変動範囲で亀裂や破損が生じやすい。そこで、出湯室16の加圧部33と出湯部34の液面レベルMLが変動する可能性のある高さ範囲において、出湯室容器16Dの内面にファインセラミックスなどからなる保護板37を設置し、前述した亀裂や破損が生じることを防ぐようにすることが好ましい。
【0093】
なお、保護板37を設置した範囲内で液面レベルMLが変動するように運転することも重要である。そのため、加圧部33内に加圧部33内の金属溶湯MMの液面レベルMLを検出するレベルセンサ35を設け、昇降式遮断弁4を開いて出湯室16内に金属溶湯MMを供給する際や、出湯室16内の加圧部33に加圧気体を供給する際などに、前記レベルセンサ35によって加圧部33内の液面レベルMLを計測し、保護板37を設置した範囲内で液面レベルMLが動くように制御することが好ましい。
【0094】
また、溶湯加熱体2の基端部14F(より詳しくは溶湯加熱体基端部14Fのうちの下端(「溶湯加熱体基端部下端14Ft」という)は、少なくとも液面レベルMLより高い位置がよい。これにより、仮にこの状態で溶湯加熱体2が破損し、金属溶湯MMが溶湯加熱体2内に侵入しても、侵入した金属溶湯MMは溶湯加熱体基端部下端14Ftを超えることはないからである。
【0095】
さらに、図1図2図5図6図7及び図8に示すように、出湯室16内の金属溶湯MMの温度が低下することを防止するため、出湯室16の内部にもヒータ等の溶湯加熱体2を設けることが好ましい。この場合、溶湯加熱体2及び出湯室16底面の形態は、保持室13における溶湯加熱体2及び保持室容器13Dと同様の形態とすることも可能である。すなわち、出湯室16において溶湯加熱体2の加熱効率を重視する場合は、図3に示した形態と同様に、出湯室16内においても出湯室16の側壁から溶湯加熱体2を斜め下方に向かって延在するように配置し、かつ、その溶湯加熱体2の下方に位置する出湯室16の底面も溶湯加熱体2と略平行になるように溶湯加熱体2と同方向に斜めにした傾斜床面にすることが好ましい。この場合、出湯室16の傾斜床面と溶湯加熱体2との間に易加熱空間が形成され、易加熱空間にある金属溶湯MMが溶湯加熱体2の表面と接触することによって溶湯加熱体2の熱が金属溶湯MMに伝えられる。
【0096】
(比較例)
図9に比較例に係る保持室13を示した。この図9の比較例は、前記各実施形態と比較して、これらの実施形態の効果を説明するために示したものであり、従来の公知となっている保持室13を表したものではない。
【産業上の利用可能性】
【0097】
金属溶湯としてはアルミニウム又はアルミニウム合金のほか他の金属溶湯MMでもよい。
【0098】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることができる。例えば、本発明の溶湯保持炉1は、金属溶湯炉、溶解炉、保持炉、低圧鋳造炉等にも採用可能である。
【符号の説明】
【0099】
1…溶湯保持炉、2…溶湯加熱体、2G…(保持室内における)溶湯加熱体の上端部、2x…溶湯加熱体の軸線、2y…(溶湯加熱体の)仮想水平線、3…金属溶湯の供給口、4…昇降式遮断弁、5…金属溶湯の排出口、11…受湯室、11D…受湯室容器、13…保持室、13C…保持室蓋、13Ca…開口部蓋、13Ca1…(保持室蓋の)上部開口部、13Cb…保持室蓋の下面、13Cb1…同方向傾斜下面、13Cb2…異方向傾斜または水平下面、13Cx…同方向傾斜下面の延長線、13Cy…(同方向傾斜下面の)仮想水平線、13D…保持室容器、13Db…(保持室の)床部、13Db1…傾斜床面、13Db2…側方延出面、13Db3…溝部、13Dx…傾斜床面の延長線、13Ds…(保持室の)側壁、13Dy…(傾斜床面の)仮想水平線、13E…断熱層、13F…鉄皮、14F…溶湯加熱体基端部、14Ft…溶湯加熱体基端部下端、16…出湯室、16D…出湯室容器、17…下限液面レベル、20…制御部、21…金属溶湯供給部、33…加圧部、34…出湯部、35…レベルセンサ、36…加圧気体流路、37…保護板、AR…蓋部の下面と金属溶湯の湯面の間にある空気、ML…液面レベル、MM…金属溶湯、P…溶湯加熱体の上方表面と蓋部の同方向傾斜下面との間の距離、Q…易加熱空間(上方易加熱空間)、W1…第一流路、W2…第二流路、X…溶湯加熱体の下方表面と傾斜床面との間の距離、Y…易加熱空間(下方易加熱空間)、α…溶湯加熱体の傾斜角度、β…傾斜床面の傾斜角度、θ…同方向傾斜下面の傾斜角度、DD…奥行き方向、FS…前側、BS…後側、HD…高さ方向、DS…下側(下方)、US…上側(上方)、WD…幅方向、LS…左側、RS…右側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9