(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013009
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】携帯用切断機
(51)【国際特許分類】
B23D 45/14 20060101AFI20250117BHJP
B23D 45/16 20060101ALI20250117BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20250117BHJP
B27B 9/02 20060101ALI20250117BHJP
B27B 9/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B23D45/14 A
B23D45/16
B25F5/00 Z
B27B9/02
B27B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116260
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】弁理士法人勇智国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 修司
【テーマコード(参考)】
3C040
3C064
【Fターム(参考)】
3C040CC03
3C040LL01
3C064AA05
3C064AA06
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA12
3C064BA14
3C064BA35
3C064BB80
3C064BB84
3C064CA03
3C064CA06
3C064CA54
3C064CB17
3C064CB63
3C064CB72
3C064CB84
3C064CB85
3C064CB91
(57)【要約】
【課題】 新たな形式の、ベースに対する本体部の傾斜角度位置決め機構を有する携帯用切断機を提供する。
【解決手段】 携帯用切断機は、ベースと、本体部と、アンギュラプレートと、ベースに対する本体部の傾斜角度を固定可能に構成された固定機構と、傾斜角度を所定の傾斜角度に位置決めするための傾斜角度位置決め機構と、を備える。アンギュラプレートは、前後方向に貫通する少なくとも1つの孔を、所定の傾斜角度に対応する位置に備える。傾斜角度位置決め機構は、非規制位置と規制位置との間で前後方向に変位可能、かつ、前後方向に直交する方向に変位不能に少なくとも1つの孔に挿入された少なくとも1つのピンを備える。傾斜角度が所定の傾斜角度であり、かつ、少なくとも1つのピンのうちの1つのピンが規制位置にあるときに、1つのピンの側面が本体部に当接して、傾斜角度を大きくする方向への本体部の傾動が規制される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用切断機であって、
ベースと、
回転するように構成された刃具を有する本体部と、
前記刃具によって前記被切断材を切断するときに前記携帯用切断機を進行させる側を前側と定義し、前記前側と反対側を後側と定義したとき、前記本体部よりも前側または後側に配置されるアンギュラプレートであって、前後方向に延在する傾動軸線を中心として傾動可能に前記本体部を支持するアンギュラプレートと、
前記ベースに対する前記本体部の傾斜角度を最小傾斜角度と最大傾斜角度の間の任意の角度に固定可能に構成された固定機構と、
前記傾斜角度を所定の傾斜角度に位置決めするための傾斜角度位置決め機構と
を備え、
前記アンギュラプレートは、前記前後方向に貫通する少なくとも1つの孔を、前記所定の傾斜角度に対応する位置に備え、
前記傾斜角度位置決め機構は、非規制位置と、前記非規制位置よりも前記本体部に近づく方向に突出した規制位置と、の間で前記前後方向に変位可能、かつ、前記前後方向に直交する方向に変位不能に前記少なくとも1つの孔に挿入された少なくとも1つのピンを備え、
前記少なくとも1つのピンが前記非規制位置にあるときに、前記少なくとも1つのピンが前記本体部に当接せず、
前記傾斜角度が前記所定の傾斜角度であり、かつ、前記少なくとも1つのピンのうちの1つのピンが前記規制位置にあるときに、前記1つのピンの側面が前記本体部に当接して、前記傾斜角度を大きくする方向への前記本体部の傾動が規制される
携帯用切断機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用切断機であって、
前記傾斜角度位置決め機構は、
前記前後方向と直交する平面上の所定の方向に手動操作によって変位可能に前記アンギュラプレートに取り付けられる操作部材と、
前記アンギュラプレートと前記操作部材との間に配置され、前記少なくとも1つのピンを前記非規制位置に向けて付勢する付勢部材と
を備え、
前記操作部材は、前記アンギュラプレートに対向する非押圧部と、前記アンギュラプレートに対向し、前記非押圧部よりも前記アンギュラプレートに近づく方向に突出した押圧部であって、前記操作部材の変位方向に関して前記非押圧部とは異なる位置に位置する押圧部と、を備え、
前記操作部材が、前記押圧部と前記少なくとも1つのピンとが対向する位置にあるときに、前記押圧部が前記付勢部材の付勢力に抗って前記少なくとも1つのピンを前記規制位置へ押圧し、
前記操作部材が、前記非押圧部と前記少なくとも1つのピンとが対向する位置にあるときに、前記前記少なくとも1つのピンは、前記付勢部材の付勢力によって前記非規制位置に位置する
携帯用切断機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯用切断機であって、
前記操作部材は、傾斜面によって前記押圧部と前記非押圧部とを連結する傾斜部を備える
携帯用切断機。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の携帯用切断機であって、
前記操作部材は回転可能に構成された
携帯用切断機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含み、
前記少なくとも1つの孔は、前記第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、前記第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含み、
前記少なくとも1つのピンは、前記第1の孔に挿入された第1のピンと、前記第2の孔に挿入された第2のピンと、を含み、
前記第1のピンおよび前記第2のピンは、前記第1のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第2のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第1のピンおよび前記第2のピンの両方が前記非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成された
携帯用切断機。
【請求項6】
請求項2または請求項3に記載の携帯用切断機であって、
前記押圧部および前記非押圧部の少なくとも一方は、前記少なくとも1つのピンと係合する形状を有する凹部を有する
携帯用切断機。
【請求項7】
請求項2または請求項3に記載の携帯用切断機であって、
前記所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含み、
前記少なくとも1つの孔は、前記第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、前記第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含み、
前記少なくとも1つのピンは、前記第1の孔に挿入された第1のピンと、前記第2の孔に挿入された第2のピンと、を含み、
前記第1のピンおよび前記第2のピンは、前記第1のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第2のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第1のピンおよび前記第2のピンの両方が前記非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成され、
前記押圧部および前記非押圧部の各々は、前記少なくとも1つのピンと係合する形状を有する凹部を有し、
前記傾斜角度位置決め機構は、前記第1のピンおよび前記第2のピンの一方が前記規制位置にあり、前記押圧部の前記凹部と係合するときに、前記第1のピンおよび前記第2のピンの他方が前記非規制位置にあり、前記非押圧部の前記凹部に係合するように構成された
携帯用切断機。
【請求項8】
請求項2または請求項3に記載の携帯用切断機であって、
前記所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含み、
前記少なくとも1つの孔は、前記第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、前記第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含み、
前記少なくとも1つのピンは、前記第1の孔に挿入された第1のピンと、前記第2の孔に挿入された第2のピンと、を含み、
前記第1のピンおよび前記第2のピンは、前記第1のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第2のピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記第1のピンおよび前記第2のピンの両方が前記非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成され、
前記非押圧部は、前記少なくとも1つのピンと係合する形状を有する第1の凹部および第2の凹部を有し、
前記傾斜角度位置決め機構は、前記第1のピンおよび前記第2のピンの両方が前記非規制位置にあり、前記第1のピンが前記第1の凹部と係合するときに、前記第2のピンが前記第2の凹部に係合するように構成された
携帯用切断機。
【請求項9】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記アンギュラプレートは、前記本体部に向けて突出する突出部を備え、
前記傾斜角度が前記最大傾斜角度であり、前記少なくとも1つのピンの各々が前記非規制位置にあるときに、前記突出部の側面が前記本体部に当接して、前記傾斜角度を大きくする方向への前記本体部の傾動が規制される
携帯用切断機。
【請求項10】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の携帯用切断機であって、
前記所定の傾斜角度は、3つ以上の傾斜角度を含み、
前記少なくとも1つの孔は、前記3つ以上の傾斜角度にそれぞれ対応する位置に配置された3つ以上の孔を含み、
前記少なくとも1つのピンは、前記3つ以上の孔にそれぞれ挿入された3つ以上のピンを含み、
前記3つ以上のピンは、前記3つ以上のピンから任意に選択される1つのピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記3つ以上のピンの全てが前記非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成された
携帯用切断機。
【請求項11】
携帯用切断機であって、
ベースと、
回転するように構成された刃具を有する本体部と、
前記刃具によって前記被切断材を切断するときに前記携帯用切断機を進行させる側を前側と定義し、前記前側と反対側を後側と定義したとき、前記本体部よりも前側または後側に配置されるアンギュラプレートであって、前後方向に延在する傾動軸線を中心として傾動可能に前記本体部を支持するアンギュラプレートと、
前記ベースに対する前記本体部の傾斜角度を最小傾斜角度と最大傾斜角度の間の任意の角度に固定可能に構成された固定機構と、
前記傾斜角度を少なくとも2つの所定の傾斜角度に位置決めするための傾斜角度位置決め機構と
を備え、
前記アンギュラプレートは、前記前後方向に貫通する少なくとも2つの孔を、前記少なくとも2つの所定の傾斜角度に対応する位置にそれぞれ備え、
前記傾斜角度位置決め機構は、非規制位置と、前記非規制位置よりも前記本体部に近づく方向に突出した規制位置と、の間で前記前後方向に変位可能に前記少なくとも2つの孔にそれぞれ挿入された少なくとも2つのピンを備え、
前記少なくとも2つのピンは、前記少なくとも2つのピンから任意に選択される1つのピンのみが前記規制位置に位置する状態と、前記少なくとも2つのピンの全てが前記非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成され、
前記少なくとも2つのピンが前記非規制位置にあるときに、前記少なくとも2つのピンが前記本体部に係合せず、
前記傾斜角度が前記少なくとも2つの所定の傾斜角度のいずれかであり、かつ、前記少なくとも2つのピンのうちの1つのピンが前記規制位置にあるときに、前記1つのピンが前記本体部に係合して、前記本体部の傾動が規制される
携帯用切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯用マルノコ(以下、単にマルノコと呼ぶ)と称される切断機は、ベースと、本体部と、を備えている。本体部は、電動モータと、電動モータによって回転駆動される略円形の刃具と、を備えている。本体部はベースに対して一方側に配置されるが、刃具の一部は、ベースを超えて他方側に突出する。かかる切断機を使用する際、ユーザは、刃具が回転した状態で、ベースの下面を被切断材に当接させ、切断機を前方へ移動させる。これによって、ベースを超えて突出した刃具が被切断材を切断する。
【0003】
かかるマルノコの1つとして、アンギュラプレートと称される部材を用いて、前後方向(刃具によって被切断材を切断するときにマルノコを進行させる側と、その反対側と、によって定義される方向)に延在する傾動軸線を中心として本体部を傾動可能なタイプが周知である。このようなタイプのマルノコでは、ベースに対する本体部の傾斜角度を最小傾斜角度(例えば0度、つまり、ベースと刃具とが直交する角度)と最大傾斜角度(例えば50度)との間の任意の角度に固定可能である。
【0004】
このようなマルノコでは、ベースに対する本体部の傾斜角度を、高頻度で使用される傾斜角度(以下、高頻度傾斜角度と呼ぶ)に容易に位置決めするための機構(以下、傾斜角度位置決め機構と呼ぶ)が採用されている。
【0005】
例えば、下記の特許文献1は、そのような傾斜角度位置決め機構としてデテント機構を開示している。具体的には、本体部をアンギュラプレートによって支持させるためのブラケット(これは、刃具と共に傾動可能である)は、アンギュラプレートと対向する面の、複数の高頻度傾斜角度に対応する複数の位置の各々に半球面状の凹部を有している。アンギュラプレートには、アンギュラプレートを貫通する1つのピンが取り付けられている。ピンの一端(ブラケットと反対側の端部)には、カム式ノブが取り付けられている。カム式ノブは、その回転によって、ピンがブラケットに近づく位置(以下、規制位置と呼ぶ)と、ブラケットから遠ざかる位置(以下、非規制位置と呼ぶ)と、の間でピンを変位させるように構成される。ピンが規制位置にあるときに、本体部をベースに対して、複数の高頻度傾斜角度のいずれかに対応する位置まで傾動させると、ピンの他端(ノブと反対側の端部)がアンギュラプレートの凹部に嵌まり込む。このような構成によって、傾斜角度を所望の高頻度傾斜角度に容易に位置決めできる。
【0006】
下記の引用文献2は、別の形式の傾斜角度位置決め機構を開示している。具体的には、アンギュラプレートは、傾斜角度の位置決め用に円弧状の貫通孔を有している。この貫通孔には、ピンが挿入されている。ピンの一端(ブラケットと反対側の端部)には、ノブが取り付けられている。ピンの他端は、ブラケットの側面に当接可能な位置まで貫通孔から延出している。ピンは、ノブを緩めることによって、円弧状の貫通孔に沿って位置を変更可能であり、ノブを締めることによって、その位置に固定可能である。ピンを所望の高頻度傾斜角度に対応する位置に固定した状態で、本体部をベースに対して最小傾斜角度から高頻度傾斜角度まで傾動させると、ピンの側面がブラケットの側面に当接する。これによって、本体部は、傾斜角度が大きくなる方向への傾動が規制される。このような構成によって、傾斜角度を高頻度傾斜角度に容易に位置決めできる。
【0007】
このような傾斜角度位置決め機構は、マルノコに限らず、ベースに対する本体部の傾斜角度を変更可能に構成された種々の携帯用切断機で採用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第5398799号
【特許文献2】特開2020-192782号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した傾斜角度位置決め機構は、作業性の面で改善の余地を残している。例えば、特許文献1では、ピンが複数の凹部のいずれかに嵌まり込んだ状態であっても、ユーザが本体部に対して傾動方向に強い力を加えると、ピンが凹部から抜け出る(つまり、さらなる傾動操作が可能である)。このため、ユーザは、傾動位置を位置決めするためには、適度な力で本体部に力を加える必要がある。さらに、複数の凹部に共通して1つのピンが使用されるので、ピンが複数の凹部のうちのいずれの凹部に嵌まり込んでいるのか(つまり、本体部が複数の高頻度傾斜角度のうちのいずれにあるのか)が分かりにくい。
【0010】
また、特許文献2では、ピンが貫通する貫通孔は円弧状であるから、ノブを締めた状態であっても、ユーザが本体部に傾動方向に強い力を加えると、ピンに当接したブラケットがピンを強い力で押圧し、それによって、ピンが貫通孔の円弧形状に沿って僅かに変位する恐れがある。このような変位は、ピンの側面とブラケットの側面との当接位置が変わることを意味する。このため、傾斜角度を精度良く位置決めできない恐れがある。あるいは、ユーザは、傾動位置を位置決めするためには、過剰な力がピンに作用しないように、適度な力で本体部に力を加える必要がある。
【0011】
このようなことから、上述した問題の少なくとも一部を改善できる新たな形式の傾斜角度位置決め機構を有する携帯用切断機を提供することが期待される。
【0012】
本明細書は、携帯用切断機を開示する。この携帯用切断機は、ベースと、回転するように構成された刃具を有する本体部と、刃具によって被切断材を切断するときに携帯用切断機を進行させる側を前側と定義し、前側と反対側を後側と定義したとき、本体部よりも前側または後側に配置されるアンギュラプレートであって、前後方向に延在する傾動軸線を中心として傾動可能に本体部を支持するアンギュラプレートと、ベースに対する本体部の傾斜角度を最小傾斜角度と最大傾斜角度の間の任意の角度に固定可能に構成された固定機構と、傾斜角度を所定の傾斜角度に位置決めするための傾斜角度位置決め機構と、を備えていてもよい。アンギュラプレートは、前後方向に貫通する少なくとも1つの孔を、所定の傾斜角度に対応する位置に備えていてもよい。傾斜角度位置決め機構は、非規制位置と、非規制位置よりも本体部に近づく方向に突出した規制位置と、の間で前後方向に変位可能、かつ、前後方向に直交する方向に変位不能に少なくとも1つの孔に挿入された少なくとも1つのピンを備えていてもよい。少なくとも1つのピンが非規制位置にあるときに、少なくとも1つのピンが本体部に当接しなくてもよい。傾斜角度が所定の傾斜角度であり、かつ、少なくとも1つのピンのうちの1つのピンが規制位置にあるときに、1つのピンの側面が本体部に当接して、傾斜角度を大きくする方向への本体部の傾動が規制されてもよい。
【0013】
「前後方向に直交する方向に変位不能」とは、傾斜角度の位置決めの精度に悪影響を与える程度の変位を排除することが意図されている。したがって、少なくとも1つの孔に少なくとも1つのピンを挿入すること、および、少なくとも1つのピンが前後方向に変位することに必要な僅かなクリアランスの範囲で少なくとも1つのピンが前後方向に直交する方向に変位したとしても、そのような変位は、「前後方向に直交する方向に変位不能」の範囲内に含まれる。
【0014】
この携帯用切断機によれば、ユーザは、1つのピンが規制位置にある状態で本体部をベースに対して傾動させると、所定の傾斜角度のところで1つのピンが本体部に当接するので、傾斜角度を大きくする方向への本体部の傾動が規制される。したがって、傾斜角度を所定の傾斜角度に容易に位置決めできる。しかも、少なくとも1つのピンは前後方向に直交する方向に変位不能であり、かつ、所定の傾斜角度において、1つのピンは、その側面で本体部に当接する。このため、ユーザが本体部に対して傾動方向に強い力を加えても、当接状態が解除されたり、当接位置が変わったりすることがない。つまり、傾斜角度を所定の傾斜角度に精度良く位置決めできる。
【0015】
本明細書は、さらに、携帯用切断機を開示する。この携帯用切断機は、ベースと、回転するように構成された刃具を有する本体部と、刃具によって被切断材を切断するときに携帯用切断機を進行させる側を前側と定義し、前側と反対側を後側と定義したとき、本体部よりも前側または後側に配置されるアンギュラプレートであって、前後方向に延在する傾動軸線を中心として傾動可能に本体部を支持するアンギュラプレートと、ベースに対する本体部の傾斜角度を最小傾斜角度と最大傾斜角度の間の任意の角度に固定可能に構成された固定機構と、傾斜角度を少なくとも2つの所定の傾斜角度に位置決めするための傾斜角度位置決め機構と、を備えていてもよい。アンギュラプレートは、前後方向に貫通する少なくとも2つの孔を、少なくとも2つの所定の傾斜角度に対応する位置にそれぞれ備えていてもよい。傾斜角度位置決め機構は、非規制位置と、非規制位置よりも本体部に近づく方向に突出した規制位置と、の間で前後方向に変位可能に少なくとも2つの孔にそれぞれ挿入された少なくとも2つのピンを備えていてもよい。少なくとも2つのピンは、少なくとも2つのピンから任意に選択される1つのピンのみが規制位置に位置する状態と、少なくとも2つのピンの全てが非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成されてもよい。少なくとも2つのピンが非規制位置にあるときに、少なくとも2つのピンが本体部に係合しなくてもよい。傾斜角度が少なくとも2つの所定の傾斜角度のいずれかであり、かつ、少なくとも2つのピンのうちの1つのピンが規制位置にあるときに、1つのピンが本体部に係合して、本体部の傾動が規制されてもよい。
【0016】
この携帯用切断機によれば、少なくとも2つのピンは、少なくとも2つの所定の傾斜角度に対応する位置にそれぞれ配置される。しかも、少なくとも2つのピンは排他的に規制位置に位置する。換言すれば、2つ以上のピンが同時に規制位置に位置することがない。したがって、規制位置にある1つのピンは、本体部を最小傾斜角度から最大傾斜角度まで傾斜させる過程において、当該1つのピンに対応する所定の傾斜角度のみで本体部に係合する。換言すれば、規制位置にある1つのピンが、複数箇所で(複数の所定の傾斜角度の各々で)本体部に係合することがない。このため、ユーザは、傾斜角度が複数の所定の傾斜角度のうちのいずれに位置決めされているのかが分かりやすい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第1実施形態によるマルノコの斜視図である。
【
図5】アンギュラプレートおよび傾斜角度位置決め機構の分解斜視図である。
【
図7】傾斜角度を22.5度に位置決めするときのアンギュラプレート周辺の正面図である。
【
図8】傾斜角度を22.5度に位置決めするときの第1のピンおよび第2のピンの位置を示す断面図である。
【
図9】傾斜角度を22.5度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の断面図である。
【
図10】傾斜角度を45度に位置決めするときのアンギュラプレート周辺の正面図である。
【
図11】傾斜角度を45度に位置決めするときの第1のピンおよび第2のピンの位置を示す断面図である。
【
図12】傾斜角度を45度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の断面図である。
【
図13】傾斜角度を最大傾斜角度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の断面図である。
【
図14】傾斜角度を最大傾斜角度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の断面図である。
【
図15】傾斜角度を最大傾斜角度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の断面図である。
【
図16】第2実施形態によるアンギュラプレート周辺の正面図である。
【
図17】傾斜角度を15度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の斜視図である。
【
図18】傾斜角度を22.5に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の斜視図である。
【
図19】傾斜角度を30度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の斜視図である。
【
図20】傾斜角度を45度に位置決めするときのアンギュラプレートおよびブラケットの周辺の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の代表的かつ非限定的な具体例について、図面を参照して詳細に説明する。この詳細な説明は、本発明の好ましい例を実施するための詳細を当業者に示すことを単純に意図しており、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。また、以下に開示される追加的な特徴ならびに発明は、さらに改善された装置、その製造方法および使用方法を提供するために、他の特徴や発明とは別に、または共に用いることができる。
【0019】
また、以下の詳細な説明で開示される特徴や工程の組み合わせは、最も広い意味において本発明を実施する際に必須のものではなく、特に本発明の代表的な具体例を説明するためにのみ記載されるものである。さらに、上記および下記の代表的な具体例の様々な特徴、ならびに、独立および従属クレームに記載されるものの様々な特徴は、本発明の追加的かつ有用な実施形態を提供するにあたって、ここに記載される具体例のとおりに、あるいは列挙された順番のとおりに組合せなければならないものではない。
【0020】
本明細書および/または特許請求の範囲に記載された全ての特徴は、実施形態および/または特許請求の範囲に記載された特徴の構成とは別に、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、個別に、かつ互いに独立して開示されることを意図するものである。さらに、全ての数値範囲およびグループまたは集団に関する記載は、出願当初の開示ならびにクレームされた特定事項に対する限定として、それらの中間の構成を開示する意図を持ってなされている。
【0021】
1つまたはそれ以上の実施形態において、傾斜角度位置決め機構は、前後方向と直交する平面上の所定の方向に手動操作によって変位可能にアンギュラプレートに取り付けられる操作部材と、アンギュラプレートと操作部材との間に配置され、少なくとも1つのピンを非規制位置に向けて付勢する付勢部材と、を備えていてもよい。操作部材は、アンギュラプレートに対向する非押圧部と、アンギュラプレートに対向し、非押圧部よりもアンギュラプレートに近づく方向に突出した押圧部であって、操作部材の変位方向に関して非押圧部とは異なる位置に位置する押圧部と、を備えていてもよい。操作部材が、押圧部と少なくとも1つのピンとが対向する位置にあるときに、押圧部が付勢部材の付勢力に抗って少なくとも1つのピンを規制位置へ押圧してもよい。操作部材が、非押圧部と少なくとも1つのピンとが対向する位置にあるときに、少なくとも1つのピンは、付勢部材の付勢力によって非規制位置に位置してもよい。この構成によれば、操作部材を所定の方向に変位させるという簡単な操作のみで、傾斜角度の位置決めを容易に行うことができる。
【0022】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作部材は、傾斜面によって押圧部と非押圧部とを連結する傾斜部を備えていてもよい。この構成によれば、少なくとも1つのピンは、操作部材の変位に伴って規制位置と非規制位置との間を徐々に変位するので、付勢部材の付勢力が徐々に変化する。つまり、操作部材を変位させるときの操作抵抗が徐々に変化する。したがって、ユーザは、操作部材の変位操作をスムーズに行うことができる。
【0023】
1つまたはそれ以上の実施形態において、操作部材は回転可能に構成されてもよい。つまり、上記の所定の方向は、回転方向であってもよい。この構成によれば、操作部材の操作を行いやすいとともに、安定的な変位動作が得られる。
【0024】
1つまたはそれ以上の実施形態において、所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含んでいてもよい。少なくとも1つの孔は、第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含んでいてもよい。少なくとも1つのピンは、第1の孔に挿入された第1のピンと、第2の孔に挿入された第2のピンと、を含んでいてもよい。第1のピンおよび第2のピンは、第1のピンのみが規制位置に位置する状態と、第2のピンのみが規制位置に位置する状態と、第1のピンおよび第2のピンの両方が非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成されてもよい。この構成によれば、傾斜角度を、複数の所定の傾斜角度のうちの所望の傾斜角度に精度良く位置決めできる。
【0025】
1つまたはそれ以上の実施形態において、押圧部および非押圧部の少なくとも一方は、少なくとも1つのピンと係合する形状を有する凹部を有していてもよい。この構成によれば、ユーザは、少なくとも1つのピンが凹部と係合することで、操作部材の変位位置が、規制位置および/または非規制位置に対応する適切な位置にあることを容易に理解できる。つまり、操作部材の操作に関する節度感が得られ、操作部材の操作性が向上する。
【0026】
1つまたはそれ以上の実施形態において、所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含んでいてもよい。少なくとも1つの孔は、第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含んでいてもよい。少なくとも1つのピンは、第1の孔に挿入された第1のピンと、第2の孔に挿入された第2のピンと、を含んでいてもよい。第1のピンおよび第2のピンは、第1のピンのみが規制位置に位置する状態と、第2のピンのみが規制位置に位置する状態と、第1のピンおよび第2のピンの両方が非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成されてもよい。押圧部および非押圧部の各々は、少なくとも1つのピンと係合する形状を有する凹部を有していてもよい。傾斜角度位置決め機構は、第1のピンおよび第2のピンの一方が規制位置にあり、押圧部の凹部と係合するときに、第1のピンおよび第2のピンの他方が非規制位置にあり、非押圧部の凹部に係合するように構成されてもよい。この構成によれば、操作部材を操作して第1のピンを規制位置に配置するときに2箇所でピンと凹部とが係合するので、節度感を高めることができ、操作部材の操作性がいっそう向上する。しかも、ピンと凹部との係合を解除する操作を行うときの操作抵抗が、操作部材の変位方向の1箇所のみに偏らないので、より安定的に係合解除操作を行える。
【0027】
1つまたはそれ以上の実施形態において、所定の傾斜角度は、第1の傾斜角度と第2の傾斜角度とを含んでいてもよい。少なくとも1つの孔は、第1の傾斜角度に対応する位置に配置された第1の孔と、第2の傾斜角度に対応する位置に配置された第2の孔と、を含んでいてもよい。少なくとも1つのピンは、第1の孔に挿入された第1のピンと、第2の孔に挿入された第2のピンと、を含んでいてもよい。第1のピンおよび第2のピンは、第1のピンのみが規制位置に位置する状態と、第2のピンのみが規制位置に位置する状態と、第1のピンおよび第2のピンの両方が非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成されてもよい。非押圧部は、少なくとも1つのピンと係合する形状を有する第1の凹部および第2の凹部を有していてもよい。傾斜角度位置決め機構は、第1のピンおよび第2のピンの両方が非規制位置にあり、第1のピンが第1の凹部と係合するときに、第2のピンが第2の凹部に係合するように構成されてもよい。この構成によれば、操作部材を操作して第1のピンおよび第2のピンの両方を非規制位置に配置するときに2箇所でピンと凹部とが係合するので、節度感を高めることができ、操作部材の操作性がいっそう向上する。しかも、ピンと凹部との係合を解除する操作を行うときの操作抵抗が、操作部材の変位方向の1箇所のみに偏らないので、より安定的に係合解除操作を行える。
【0028】
1つまたはそれ以上の実施形態において、アンギュラプレートは、本体部に向けて突出する突出部を備えていてもよい。傾斜角度が最大傾斜角度であり、少なくとも1つのピンの各々が非規制位置にあるときに、突出部の側面が本体部に当接して、傾斜角度を大きくする方向への本体部の傾動が規制されてもよい。この構成によれば、操作部材の構造を複雑にすることなく、傾斜角度を最大傾斜角度に容易に位置決めできる。
【0029】
1つまたはそれ以上の実施形態において、所定の傾斜角度は、3つ以上の傾斜角度を含んでいてもよい。少なくとも1つの孔は、3つ以上の傾斜角度にそれぞれ対応する位置に配置された3つ以上の孔を含んでいてもよい。少なくとも1つのピンは、3つ以上の孔にそれぞれ挿入された3つ以上のピンを含んでいてもよい。3つ以上のピンは、3つ以上のピンから任意に選択される1つのピンのみが規制位置に位置する状態と、3つ以上のピンの全てが非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成されてもよい。この構成によれば、所定の傾斜角度の数を3つ以上の所望の数に増やすことができる。したがって、ユーザの利便性が向上する。
【0030】
以下、
図1~15を参照して、例示的な第1実施形態による携帯用マルノコ10(以下、単にマルノコと呼ぶ)についてより詳細に説明する。以下の説明では、ユーザがマルノコ10を手に持って被切断材を切断するときにマルノコ10を進行させる側(後述する刃具35によって切断が進められる側であり、切断方向とも呼ぶ)を前側とし、その反対方向を後側と定義する。また、このとき、鉛直方向上方に位置する側を上側と定義し、その反対側を下側と定義する。さらに、前後方向と上下方向とに直交する方向を左右方向と定義する。左右方向のうち、後側から前側を見たときの右側を右側と定義し、その反対側を左側と定義する。
【0031】
図1に示すように、マルノコ10は、ベース20と本体部30とを備えている。ベース20は、略矩形の外形を有している。ベース20の長手方向は、前後方向である。ベース20は、被切断材を切断するときに当該被切断材に当接させるための平坦な下面を備えている。
【0032】
図1に示すように、本体部30は、基本的には、ベース20に対して上側に配置される。
図1~3に示すように、本体部30は、モータハウジング11と、ギアハウジング12と、バッテリ装着部13と、ハンドル14と、電動モータ31と、刃具35と、固定カバー33と、可動カバー34と、を備えている。
【0033】
図1に示すように、刃具35の一部は、ベース20の貫通孔21を貫通して、ベース20よりも下側に突出している。刃具35は、チップソーとも称され、略円形形状を有している。刃具35は、電動モータ31によって提供される回転駆動力によって、左右方向に延在する回転軸線を中心として回転するように構成される。固定カバー33は、刃具35の上側部分を円弧状に覆っている。可動カバー34は、固定カバー33よりも下方で刃具35を覆っている。可動カバー34は、刃具35の外周縁部に沿って後退可能に構成されており、通常時は、付勢部材(図示省略)によって
図1に示す位置に向けて付勢されている。マルノコ10の使用時には、被切断材に押圧されて後方に向けて後退し、それによって、刃具35のうちのベース20よりも下方に位置する部分が露出される。
【0034】
ギアハウジング12は、固定カバー33に対して右側に配置されている。ギアハウジング12内には、電動モータ31の回転駆動力を刃具35に伝達するための機械的機構(スピンドル、減速ギアなど)が収容されている。
図3に示すように、ギアハウジング12の右側には、モータハウジング11が配置される。モータハウジング11内には、電動モータ31が収容されている。モータハウジング11およびギアハウジング12よりも後方には、バッテリ装着部13が配置されている。バッテリ装着部13には、電動モータ31に電力を供給するためのバッテリ15が取り外し可能に装着される。ギアハウジング12の上方には、アーチ状のハンドル14が配置されている。ハンドル14には、電動モータ31の起動および停止の操作を行うためのスイッチレバー32が設けられている。
【0035】
マルノコ10を使用する際、ユーザが、スイッチレバー32を押すと、電動モータ31の駆動力によって刃具35が回転する。ユーザは、この状態で、ベース20の下面(刃具35よりも前側の部分)を被切断材に当接させ、マルノコ10を前方に移動させる。その結果、ベース20の下面を超えて下方へ突出した刃具35によって、マルノコ10の移動方向(つまり、切断方向)に被切断材の切断が進行する。
【0036】
このようなマルノコ10において、刃具35を含む本体部30は、前後方向に延在する傾動軸線AX(
図9参照)を中心としてベース20に対して傾動可能に構成される。本実施形態では、傾動軸線AXは、ベース20よりも上方に位置しているが、ベース20よりも下方に位置していてもよい。この構成によれば、被切断材を斜めに切断できる。以下、被切断材を斜めに切断するための構成について説明する。
【0037】
図1~4に示すように、マルノコ10は、アンギュラプレート50を備えている。本実施形態では、アンギュラプレート50は、本体部30よりも前側に位置している。ただし、アンギュラプレート50は、本体部30よりも後側に位置していてもよい。アンギュラプレート50は、ベース20から上方に向けて延在するように、ベース20に固定されている。
図1,4,5に示すように、アンギュラプレート50は、略扇形状を有している。アンギュラプレート50には、その円弧状の上側周縁部に沿って、貫通孔51が形成されている。貫通孔51は、上側周縁部に沿った円弧形状を有しており、アンギュラプレート50を前後方向に貫通している。
【0038】
本体部30は、ブラケット40を備えている。ブラケット40は、本体部30をベース20に取り付けるための部材であり、
図1,8,9に示すように、アンギュラプレート50に隣接して、アンギュラプレート50の後側に配置される。
図9に示すように、ブラケット40は、その長手方向の一端(左側端部)に支持部42を備えている。支持部42は、上方に向けて突出する二股形状を有している。
図8に示すように、支持部42は、同軸状に配置された2つの貫通孔44を備えている。
【0039】
図1および
図4に示すように、貫通孔44には、固定カバー33の前側かつ下側の縁部36が挿入されている。縁部36は、貫通孔44と同軸の貫通孔(図示省略)を有している。2つの貫通孔44と縁部36の貫通孔には左側からボルト48が挿入されており、ボルト48の先端には、ナット49(
図3参照)が取り付けられている。ナット49を締めることによって、ブラケット40は固定カバー33に固定される。
【0040】
図9に示すように、アンギュラプレート50は、その左側かつ下側の縁部に軸部52を備えている。軸部52は、後側に向けて円柱状に突出している。ブラケット40は、支持部42の下方に貫通孔45を備えている。貫通孔45は、軸部52に適合する大きさおよび形状を有している。ブラケット40は、アンギュラプレート50の軸部52がブラケット40の貫通孔45を貫通するように、アンギュラプレート50に取り付けられる。これによって、アンギュラプレート50は、ブラケット40の一端(ひいては、本体部30)を支持する。また、この構成によって、ブラケット40(ひいては、本体部30)は、アンギュラプレート50(ひいては、アンギュラプレート50が固定されるベース20)に対して、傾動軸線AXと中心として傾動可能に構成される。これによって、刃具35を含む本体部30のベース20に対する傾斜角度(以下、単に傾斜角度とも呼ぶ)が変更可能となる。
【0041】
傾斜角度は、最小傾斜角度と最大傾斜角度の間で任意に変更可能である。最小傾斜角度は0度であり、このとき、
図1および
図4に示すように、ベース20に対して刃具35が直交する。最大傾斜角度は、本実施形態では50度であるが、任意の角度に設定され得る。
【0042】
図9に示すように、ブラケット40は、その長手方向の他端(右側端部)に固定部43を備えている。固定部43は、ブラケット40を前後方向に貫通する貫通孔46を備えている。この貫通孔46は、傾斜角度を固定するために使用される。
【0043】
具体的には、
図1に示すように、マルノコ10は、固定機構60を備えている。固定機構60は、ボルト61とナット62と固定レバー63とを備えている。ボルト61は、ブラケット40の貫通孔46とアンギュラプレート50の貫通孔51とを貫通するように、後側から挿入されている。ボルト61の先端には、ナット62が取り付けられており、ナット62の外周には固定レバー63が取り付けられている。ユーザは、固定レバー63を緩めると、ベース20に対して本体部30を最小傾斜角度と最大傾斜角度との間の任意の角度に傾動させることができる。アンギュラプレート50の貫通孔51は、円弧形状を有しているので、そのような傾動動作におけるボルト61の変位をガイドすることができる。なお、傾斜角度が最小傾斜角度となる本体部30の傾動位置は、ボルト61が、アンギュラプレート50の貫通孔51を形成する内面の下側縁部57(
図5参照)に当接することによって規定される。
【0044】
ユーザが、本体部30が所望の傾斜角度に傾いた状態で固定レバー63を操作してナット62を締め付けると、アンギュラプレート50とブラケット40(より具体的には、固定部43)とが、ボルト61のヘッドとナット62とによって前後方向に締め付けられる。これによって、ブラケット40とアンギュラプレート50との位置関係が固定され、傾斜角度が所望の傾斜角度に固定される。このとき、アンギュラプレート50は、固定機構60を介して、ブラケット40(ひいては、本体部30)を支持する。
【0045】
このようにして傾斜角度を固定する際にユーザを補助するために、マルノコ10は、傾斜角度位置決め機構70を備えている。傾斜角度位置決め機構70は、傾斜角度を高頻度傾斜角度(これは、上述の通り、高頻度で使用される傾斜角度である)に位置決めするために使用される。本実施形態では、高頻度傾斜角度は、22.5度と45度である。以下、傾斜角度位置決め機構70について詳しく説明する。
【0046】
図5に示すように、傾斜角度位置決め機構70は、操作部材71と、第1のピン74と、第2のピン75と、段付きネジ76と、第1の付勢部材85と、第2の付勢部材86と、を備えている。操作部材71は、前後方向と直交する平面上の所定の方向に手動操作によって変位可能にアンギュラプレート50に取り付けられる。本実施形態では、所定の方向は、前後方向に延在する回転軸線を中心とする回転方向である。具体的には、略円形の操作部材71の中央には、前後方向に延在する貫通孔84が形成されている。この貫通孔84と、アンギュラプレート50に形成された貫通孔56と、を通るように段付きネジ76を取り付けることによって、操作部材71は、段付きネジ76を中心として回転可能にアンギュラプレート50に取り付けられる。
【0047】
図5に示すように、アンギュラプレート50は、貫通孔56の両脇において、アンギュラプレート50を前後方向に貫通する第1の貫通孔54および第2の貫通孔55を備えている。詳しくは後述するが、第1の貫通孔54は、22.5度の傾斜角度に対応する位置(傾斜角度を22.5度に位置決めするための位置)にあり、第2の貫通孔55は、45度の傾斜角度に対応する位置(傾斜角度を45度に位置決めするための位置)にある。
図5および
図8に示すように、第1の貫通孔54および第2の貫通孔55には、第1のピン74および第2のピン75がそれぞれ挿入される。
【0048】
第1のピン74および第2のピン75は、第1の貫通孔54および第2の貫通孔55内でそれぞれ前後方向に変位可能である。一方、第1の貫通孔54および第2の貫通孔55は第1のピン74および第2のピン75にそれぞれ適合する形状および大きさを有しており、第1のピン74および第2のピン75は、第1の貫通孔54および第2の貫通孔55への挿入、および、前後方向の変位に必要な僅かなクリアランスを持って、第1の貫通孔54および第2の貫通孔55内にそれぞれ挿入されている。このため、第1のピン74および第2のピン75は、前後方向に直交する方向には、実質的に移動不能である。
【0049】
図5および
図8に示すように、第1の付勢部材85および第2の付勢部材86は、アンギュラプレート50と操作部材71との間に圧縮状態で配置される。より具体的には、第1の付勢部材85は、第1の貫通孔54内に形成されたバネ座と、第1のピン74のヘッド(これは、拡径された前側の端部である)と、の間に配置される。同様に、第2の付勢部材86は、第2の貫通孔55内に形成されたバネ座と、第2のピン75のヘッドと、の間に配置される。第1の付勢部材85および第2の付勢部材86は、第1のピン74および第2のピン75を、前側に向けて常に付勢している。
【0050】
図4に示すように、アンギュラプレート50の前面には、高頻度傾斜角度に関するマークが付されている。具体的には、操作部材71に対する上側部分および下側部分には、45度および22.5度の高頻度傾斜角度がそれぞれ表示されている。また、操作部材71に対する右側部分および左側部分の各々には、ロック解除を表すマークが表示されている。また、操作部材71の前面には、操作部材71の回転角度位置を表すために、三角のマーク87が付されている。ユーザは、操作部材71の三角のマーク87が所望の高頻度傾斜角度のマークを指し示すように、操作部材71を回転操作する。
図4では、操作部材71の三角のマーク87が45度の高頻度傾斜角度を指し示す位置にある場合を例示している。ユーザは、傾斜角度位置決め機構70を利用した位置決めを希望しない場合には、三角のマーク87がロック解除を表すマーク(左右のマークのいずれでもよい)を指し示すように、操作部材71を回転操作する。
【0051】
図6に示すように、操作部材71は、その後側に(すなわち、アンギュラプレート50に対向する側に)、押圧部77と、非押圧部78と、2つの傾斜部79と、を備えている。押圧部77、非押圧部78および傾斜部79は、操作部材71の変位方向(本実施形態では、回転方向)に関して、互いに異なる位置にある。押圧部77は、非押圧部78よりも後側に(つまり、アンギュラプレート50に近づく方向に)突出している。換言すれば、非押圧部78は、押圧部77よりも前側に奥まっている。本実施形態では、押圧部77は、前後方向に直交する方向に平行な平面の形態であり、非押圧部78は、前側に奥まった凹部の形態である。ただし、非押圧部78が、前後方向に直交する方向に平行な平面の形態であってもよく、押圧部77が、非押圧部78よりも後側に位置する平面の形態であってもよい。あるいは、押圧部77および非押圧部78は、押圧部77が非押圧部78よりも後側に突出したカムの形態であってもよい。
【0052】
2つの傾斜部79は、操作部材71の回転方向における押圧部77の両脇にそれぞれ位置している。傾斜部79の各々は、押圧部77と非押圧部78とを傾斜面によって連結している。より具体的には、傾斜面の形態の傾斜部79は、押圧部77と非押圧部78との前後方向の位置の違いを補償するように、押圧部77と非押圧部78とを均一の勾配で連結している。
【0053】
図6に示すように、押圧部77には、第1の凹部80が形成されている。また、非押圧部78には、第2の凹部81、第3の凹部82および第4の凹部83が形成されている。
これらの凹部は、第1のピン74および第2のピン75の先端(後側の端部)が係合できる(嵌まり込むことができる)大きさおよび形状を有している。本実施形態では、これらの凹部は、略円錐形状を有している。ただし、これらの凹部の形状は、第1のピン74および第2のピン75の先端が嵌まり込むことができる限りにおいて、任意の形状とすることができる。また、本実施形態では、第1の凹部80は、第2の凹部81、第3の凹部82および第4の凹部83よりも小さい(換言すれば、緩やかな傾斜を有している)。
【0054】
このような構成の傾斜角度位置決め機構70は、以下のようにして使用される。まず、傾斜角度を高頻度傾斜角度の1つである22.5度に位置決めする場合について説明する。この場合、ユーザは、まず、
図7に示すように、22.5度の高頻度傾斜角度を指し示す位置へ操作部材71を回転操作する。操作部材71が
図7に示す位置まで回転すると、第1のピン74が押圧部77の第1の凹部80に嵌まり込むとともに、第2のピン75が非押圧部78の第3の凹部82に嵌まり込むことによって、節度感(クリック感)が得られる。この状態では、第2のピン75は、押圧部77よりも奥まった非押圧部78に対向する位置にあるので、
図8に示すように、第2の付勢部材86の付勢力によって、ブラケット40と干渉し得ない(当接し得ない)位置に位置する。このときの第2のピン75の位置を非規制位置とも呼ぶ。
【0055】
一方、第1のピン74は、非押圧部78よりも後側(ブラケット40が位置する側)に突出した押圧部77に対向する位置にあるので、
図8に示すように、押圧部77は、第1の付勢部材85の付勢力に抗って、第1のピン74を後側へ押圧する。その結果、第1のピン74は、第2のピン75と比べて、非押圧部78と押圧部77との前後方向の位置の違いに対応する距離だけ後側へ(つまり、ブラケット40に近づく方向へ)突出した位置に位置する。このときの第1のピン74の位置を規制位置とも呼ぶ。第1のピン74が規制位置にあるとき、第1のピン74は、ブラケット40と干渉し得る(当接し得る)位置に位置する。
【0056】
この状態で、ユーザが、固定レバー63を緩めて、本体部30を最小傾斜角度に対応する位置から最大傾斜角度に対応する位置に向けて傾斜させると、
図8および
図9に示すように、ブラケット40の上側側面41が第1のピン74の側面に当接する。これによって、傾斜角度がさらに大きくする方向へのブラケット40(ひいては、本体部30)が規制される。この状態で、ユーザは、固定レバー63を締めて、傾斜角度を固定する。第1の貫通孔54および第1のピン74の位置は、ブラケット40の上側側面41が第1のピン74の側面に当接する状態で傾斜角度が22.5度になるように予め位置決めされている。このため、ユーザは、上記の手順によって本体部30の傾斜角度を22.5度に容易に位置決めできる。
【0057】
図9に示すように、ブラケット40の上側側面41には、凹部47が形成されている。そして、ブラケット40の上側側面41が第1のピン74の側面に当接するとき、第1のピン74は凹部47に嵌まり込む。この構成によれば、より安定的に、同じ位置で、上側側面41と第1のピン74の側面とを当接させることができる。
【0058】
次に、傾斜角度を高頻度傾斜角度の他の1つである45度に位置決めする場合について説明する。この場合、ユーザは、まず、
図10に示すように、45度の高頻度傾斜角度を指し示す位置へ操作部材71を回転操作する。操作部材71が
図10に示す位置まで回転すると、第1のピン74が非押圧部78の第3の凹部82に嵌まり込むとともに、第2のピン75が押圧部77の第1の凹部80に嵌まり込むことによって、節度感(クリック感)が得られる。この状態では、第1のピン74は、非押圧部78に対向する位置にあるので、
図11に示すように、第2の付勢部材86の付勢力によって、非規制位置に位置する。
【0059】
一方、第2のピン75は押圧部77に対向する位置にあるので、
図11に示すように、押圧部77は、第2の付勢部材86の付勢力に抗って、第2のピン75を後側へ押圧する。その結果、第2のピン75は、規制位置に位置する。
【0060】
この状態で、ユーザが、固定レバー63を緩めて、本体部30を最小傾斜角度に対応する位置から最大傾斜角度に対応する位置に向けて傾斜させると、
図11および
図12に示すように、ブラケット40の上側側面41が第2のピン75の側面に当接する。このとき、第2のピン75は、操作部材71の凹部47に嵌まり込む。これによって、傾斜角度がさらに大きくする方向へのブラケット40(ひいては、本体部30)が規制される。この状態で、ユーザは、固定レバー63を締めて、傾斜角度を固定する。第2の貫通孔55および第2のピン75の位置は、ブラケット40の上側側面41が第2のピン75の側面に当接する状態で傾斜角度が45度になるように予め位置決めされている。このため、ユーザは、上記の手順によって本体部30の傾斜角度を45度に容易に位置決めできる。
【0061】
次に、傾斜角度を最高傾斜角度(本実施形態では、50度)に位置決めする場合について説明する。この場合、ユーザは、まず、
図13に示すように、ロック解除のマークを指し示す位置へ操作部材71を回転操作する。
図13では、2つのロック解除のマークのうちの右側のマークを指し示す位置へ操作部材71が回転される例を示しているが、左側のマークを指し示す位置へ操作部材71が回転されてもよい。操作部材71が
図13に示す位置まで回転すると、第1のピン74が非押圧部78の第2の凹部81に嵌まり込むとともに、第2のピン75が非押圧部78の第4の凹部83に嵌まり込むことによって、節度感(クリック感)が得られる。この状態では、第1のピン74および第2のピン75は、非押圧部78に対向する位置にあるので、
図14に示すように、第1の付勢部材85および第2の付勢部材86の付勢力によって、それぞれ、非規制位置に位置する。
【0062】
この状態で、ユーザが、固定レバー63を緩めて、本体部30を最小傾斜角度に対応する位置から最大傾斜角度に対応する位置に向けて傾斜させると、
図14および
図15に示すように、ブラケット40の上側側面41が突出部53の側面に当接する。突出部53は、アンギュラプレート50の後面から後側へ(本体部30に向けて)突出する部分である。これによって、傾斜角度がさらに大きくする方向へのブラケット40(ひいては、本体部30)が規制される。この状態で、ユーザは、固定レバー63を締めて、傾斜角度を固定する。突出部53の位置は、ブラケット40の上側側面41が突出部53の側面に当接する状態で傾斜角度が最大傾斜角度になるように予め位置決めされている。このため、ユーザは、上記の手順によって本体部30の傾斜角度を最大傾斜角度に容易に位置決めできる。
この構成によれば、操作部材71に突出部53を設けるだけで、操作部材71の構造を複雑にすることなく、傾斜角度を最大傾斜角度に容易に位置決めできる。
【0063】
上述したマルノコ10によれば、第1のピン74および第2のピン75は、前後方向に直交する方向に変位不能であり、かつ、高頻度傾斜角度において、第1のピン74または第2のピン75は、その側面で本体部30(より具体的には、ブラケット40の上側側面41)に当接する。このため、ユーザが本体部30に対して傾動方向に強い力を加えても、当接状態が解除されたり、当接位置が変わったりすることがない。したがって、傾斜角度を高頻度傾斜角度に精度良く位置決めできる。
【0064】
さらに、第1のピン74および第2のピン75は、2つの高頻度傾斜角度に対応する位置にそれぞれ配置され、排他的に規制位置に位置する。換言すれば、第1のピン74および第2のピン75は、第1のピン74が規制位置に位置し、第2のピン75が非規制位置に位置する状態と、第1のピン74が非規制位置に位置し、第2のピン75が規制位置に位置する状態と、第1のピン74および第2のピン75の両方が非規制位置に位置する状態と、の間で切替可能に構成される。したがって、規制位置にある1つのピンが、ブラケット40の複数箇所で(複数の高頻度傾斜角度の各々で)本体部30に係合することがない。このため、ユーザは、傾斜角度が高頻度傾斜角度のうちのいずれに位置決めされているのかが分かりやすい。
【0065】
さらに、操作部材71が押圧部77と非押圧部78とを備えており、第1のピン74および第2のピン75は、押圧部77と非押圧部78との前後方向の位置の違いを利用して、操作部材71の回転位置に応じて、規制位置と非規制位置との間を変位するように構成される。このため、操作部材71を回転させるという簡単な操作のみで、傾斜角度の位置決めを容易に行うことができる。
【0066】
さらに、操作部材71は、押圧部77と非押圧部78との間に傾斜部79を備えている。このため、操作部材71が回転操作されるとき、第1のピン74および第2のピン75は、操作部材71の回転に伴って規制位置と非規制位置との間を徐々に変位する。このことは、第1の付勢部材85および第2の付勢部材86の付勢力が徐々に変化する、つまり、操作部材71を変位させるときの操作抵抗が徐々に変化することを意味している。したがって、ユーザは、操作部材71の変位操作をスムーズに行うことができる。
【0067】
さらに、第1のピン74および第2のピン75は、操作部材71が
図7,10,13のいずれの位置にあるときでも、凹部80~83のうちの2つにそれぞれ係合する。つまり、ピンと凹部との係止関係が2箇所で成立する。このため、操作部材71を回転操作するときに節度感を高めることができ、操作部材71の操作性がいっそう向上する。しかも、
図7,10,13のいずれの位置にある状態から操作部材71を回転操作するときに、ピンと凹部との係合解除に関連する操作抵抗が、操作部材71の回転方向の1箇所のみに偏らない。したがって、より安定的に係合解除操作を行える。
【0068】
以下、
図16~20を参照して、例示的な第2実施形態によるマルノコ10について詳細に説明する。以下、第2実施形態について、第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
図17~20では、第1実施形態と同じ構成要素については、第1実施形態と同じ符号を付している。また、固定機構60の図示は省略している。
【0069】
第2実施形態によるマルノコは、アンギュラプレート50に代えて、アンギュラプレート150を備えている。また、傾斜角度位置決め機構70は、第1のピン74および第2のピン75に代えて、第1のピン171、第2のピン172、第3のピン174および第4のピン175を備えている。本実施形態では、高頻度傾斜角度は、15度と22.5度と30度と45度である。このことに起因して、
図16に示すように、アンギュラプレート150の前面には、これら4つの高頻度傾斜角度のマークが付されている。
【0070】
図17に示すように、アンギュラプレート150は、15度、22.5度、30度および45度の高頻度傾斜角度にそれぞれ対応する4つの位置に第1の貫通孔154、第2の貫通孔155、第3の貫通孔157および第4の貫通孔158をそれぞれ備えている。第1の貫通孔154、第2の貫通孔155、第3の貫通孔157および第4の貫通孔158には、第1のピン171、第2のピン172、第3のピン174および第4のピン175が、それぞれ挿入されている。これらのピンは、第1実施形態と同様に、規制位置と非規制位置との間で前後方向に可能、かつ、前後方向に直交する方向に実質的に移動不能である。また、これらのピンは、第1実施形態と同様に、付勢部材(図示省略)によって、非規制位置に向けて付勢されている。
【0071】
図17に示すように、操作部材71が15度の高頻度傾斜角度に対応する位置にあるときには、15度に対応する第1のピン171のみが規制位置にあり、その他のピン172,174,175は、非規制位置にある。したがって、本体部30を最小傾斜角度から最大傾斜角度に向けて傾動操作させると、第1のピン171の側面がブラケット40の上側側面41に当接し、それ以上の傾動動作が規制される。
【0072】
図18に示すように、操作部材71が22.5度の高頻度傾斜角度に対応する位置にあるときには、22.5度に対応する第2のピン172のみが規制位置にあり、その他のピン171,174,175は、非規制位置にある。したがって、本体部30を最小傾斜角度から最大傾斜角度に向けて傾動操作させると、第2のピン172の側面がブラケット40の上側側面41に当接し、それ以上の傾動動作が規制される。
【0073】
図19に示すように、操作部材71が30度の高頻度傾斜角度に対応する位置にあるときには、30度に対応する第3のピン174のみが規制位置にあり、その他のピン171,172,175は、非規制位置にある。したがって、本体部30を最小傾斜角度から最大傾斜角度に向けて傾動操作させると、第3のピン174の側面がブラケット40の上側側面41に当接し、それ以上の傾動動作が規制される。
【0074】
図20に示すように、操作部材71が45度の高頻度傾斜角度に対応する位置にあるときには、45度に対応する第4のピン175のみが規制位置にあり、その他のピン171,172,174は、非規制位置にある。したがって、本体部30を最小傾斜角度から最大傾斜角度に向けて傾動操作させると、第4のピン175の側面がブラケット40の上側側面41に当接し、それ以上の傾動動作が規制される。
【0075】
上述した第2実施形態によれば、傾斜角度を4つの高頻度傾斜角度のいずれかに容易に位置決めできる。第2実施例から明らかなように、高頻度傾斜角度の数は、3つ以上の所望の数に増やすことができる。
【0076】
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明してきたが、上述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれる。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、特許請求の範囲および明細書に記載された各形態要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
【0077】
例えば、操作部材71は、第1のピン74および第2のピン75(または、ピン171,172,174,175)を、1つのピンのみが排他的に規制位置をとれるように規制位置と非規制位置との間で変位させることが可能な任意の形態に変更され得る。例えば、回転式の操作部材71に代えて、スライド式の操作部材が採用されてもよい。この場合、操作部材は、スライド方向の異なる位置に、押圧部、非押圧部および傾斜部(または、押圧部および非押圧部)を備えていてもよい。あるいは、複数の高頻度傾斜角度にそれぞれ対応する複数の操作部材が採用されてもよい。
【0078】
さらに、高頻度傾斜角度が1つのみ設定され、それに対応する1つのピンのみが使用されてもよい。
【0079】
さらに、第1のピン74および第2のピン75(または、ピン171,172,174,175)は、規制位置にあるときに、ブラケット40に代えて、本体部30の任意の部分と係合するように構成されてもよい。
【0080】
さらに、第1のピン74および第2のピン75(または、ピン171,172,174,175)を、1つのピンのみが排他的に規制位置をとれるように規制位置と非規制位置との間で変位させることができる限りにおいて、第1のピン74および第2のピン75(または、ピン171,172,174,175)の側面がブラケット40の上側側面41に当接する構成に代えて、第1のピン74および第2のピン75がブラケット40に任意の形態で係合する構成が採用されてもよい。
【0081】
さらに、上述した種々の形態は、マルノコに限らず、ベースに対する本体部の傾斜角度を変更可能に構成された種々の携帯用切断機、例えば、カッタなどに適用可能である。
【0082】
上記実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下に示す。但し、実施形態の各構成要素は単なる一例であって、本発明の各構成要素を限定するものではない。マルノコ10は「携帯用切断機」の一例である。ベース20は「ベース」の一例である。刃具35は「刃具」の一例である。アンギュラプレート50は「アンギュラプレート」の一例である。固定機構60は、「固定機構」の一例である。傾斜角度位置決め機構70は「傾斜角度位置決め機構」の一例である。第1の貫通孔54、第2の貫通孔55、第1の貫通孔154、第2の貫通孔155、第3の貫通孔157および第4の貫通孔158は「少なくとも1つの孔」の一例である。第1のピン74、第2のピン75、第1のピン171、第2のピン172、第3のピン174および第4のピン175は、「少なくとも1つのピン」の一例である。操作部材71は「操作部材」の一例である。第1の付勢部材85および第2の付勢部材86は、「付勢部材」の一例である。押圧部77は、「押圧部」の一例である。非押圧部78は、「非押圧部」の一例である。傾斜部79は、「傾斜部」の一例である。第1の凹部80、第2の凹部81、第3の凹部82および第4の凹部83は、「凹部」の一例である。突出部53は、「突出部」の一例である。
【符号の説明】
【0083】
10...携帯用マルノコ
11...モータハウジング
12...ギアハウジング
13...バッテリ装着部
14...ハンドル
15...バッテリ
20...ベース
21...貫通孔
30...本体部
31...電動モータ
32...スイッチレバー
33...固定カバー
34...可動カバー
35...刃具
36...縁部
40...ブラケット
41...上側側面
42...支持部
43...固定部
44,45,46...貫通孔
47...凹部
48...ボルト
49...ナット
50...アンギュラプレート
51...貫通孔
52...軸部
53...突出部
54...第1の貫通孔
55...第2の貫通孔
56...貫通孔
57...下側縁部
60...固定機構
61...ボルト
62...ナット
63...固定レバー
70...傾斜角度位置決め機構
71...操作部材
74...第1のピン
75...第2のピン
76...ネジ
77...押圧部
78...非押圧部
79...傾斜部
80...第1の凹部
81...第2の凹部
82...第3の凹部
83...第4の凹部
84...貫通孔
85...第1の付勢部材
86...第2の付勢部材
87...マーク
150...アンギュラプレート
154...第1の貫通孔
155...第2の貫通孔
157...第3の貫通孔
158...第4の貫通孔
171...第1のピン
172...第2のピン
174...第3のピン
175...第4のピン
AX...傾動軸線