(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001303
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/184 20120101AFI20241225BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B60W30/184
F01M5/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100812
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 克也
【テーマコード(参考)】
3D241
3G313
【Fターム(参考)】
3D241BA51
3D241CC02
3D241CD12
3D241DA02Z
3D241DA13Z
3D241DB02B
3D241DB02Z
3G313AB01
3G313BA05
3G313BB14
3G313BB33
3G313BC26
3G313BD52
3G313BD53
(57)【要約】
【課題】油温に応じてオイルポンプをより適切に稼働させることが可能な車両の制御装置を提供する。
【解決手段】走行中に冷却あるいは潤滑の必要な部位にオイルを供給するための電動式のオイルポンプの稼働状態を制御する車両の制御装置であって、オイルポンプを作動もしくは停止するコントローラを備え、コントローラは、車速を検出する車速検出部と、オイルの温度を検出する油温検出部と、オイルポンプの駆動を許可する許可車速をオイルの温度の上昇に応じて低下させる許可車速設定部と、車速が許可車速以下の場合にオイルポンプの駆動を禁止しかつ車速が許可車速を超えている場合にオイルポンプの駆動を許可するオイルポンプ駆動判定部とを備えている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中に冷却あるいは潤滑の必要な部位にオイルを供給するための電動式のオイルポンプの稼働状態を制御する車両の制御装置であって、
前記オイルポンプを作動もしくは停止するコントローラを備え、
前記コントローラは、
車速を検出する車速検出部と、
前記オイルの温度を検出する油温検出部と、
前記オイルポンプの駆動を許可する許可車速を前記オイルの温度の上昇に応じて低下させる許可車速設定部と、
前記車速が前記許可車速以下の場合に前記オイルポンプの駆動を禁止しかつ前記車速が前記許可車速を超えている場合に前記オイルポンプの駆動を許可するオイルポンプ駆動判定部と、を備えている
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オイルを冷却や潤滑の必要な部位に供給するためのオイルポンプを制御するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低車速であっても、電動オイルポンプから発生するノイズを目立たなくしつつ、電動オイルポンプによる油量を確保することを目的とした車両用駆動装置の制御装置が記載されている。特許文献1の装置では、アクセル開度の大きさに応じて電動オイルポンプの回転速度が設定される。具体的には、アクセル開度が大きい場合には、大きい駆動力を発生することに伴って騒音が大きくなり、これとは反対にアクセル開度が小さい場合には、駆動力源による駆動に伴う騒音が小さくなって、電動オイルポンプが発する騒音を下回ることがある。
【0003】
そこで、特許文献1の装置では、駆動力源が駆動力を発生することに伴う騒音が電動オイルポンプによる騒音を下回る駆動状態すなわちアクセル開度についての領域である所定範囲を設定しておき、アクセル開度がその所定範囲に入る場合には、電動オイルポンプの回転速度を低くして、電動オイルポンプによる騒音を低下させている。すなわち、特許文献1の装置は、アクセル開度が、所定の範囲外である場合には、電動オイルポンプ以外で発生するノイズが大きくなるので、電動オイルポンプの作動音を紛れさせる。また、特許文献1の装置は、アクセル開度が所定の範囲内である場合には、そのノイズが小さいので、電動オイルポンプの回転速度を小さくするように構成されている。特許文献1では、このような構成により、電動オイルポンプの作動音を他の機構から発生するノイズに紛れさせ、反対に、他の機構から発生するノイズが小さい場合には、電動オイルポンプの回転速度を小さくするので、電動オイルポンプのノイズを目立たなくすることができる、としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動オイルポンプは、オイルを加圧して吐出することによる負荷に応じて騒音(ノイズ)を発生する一方、オイルの粘度が高いと負荷が大きくなり、さらにオイルの粘度は油温が低いほど高くなるので、結局、電動オイルポンプが発するノイズは、油温が低いほど大きくなり易い。例えば、オイルの温度が低く、粘性抵抗が大きい場合には、オイルが油路を通過するときの通油抵抗が大きくなることなどに起因して、電動オイルポンプの作動音が大きくなる場合がある。そのため、特許文献1の装置のように、アクセル開度に応じて電動オイルポンプの回転速度を設定した場合に、オイルが不足したり、オイルを十分に供給するために電動オイルポンプの作動音が大きくなったりする可能性がある。反対に、オイルの温度が高く、通油抵抗が小さいことにより電動オイルポンプの作動音が小さいにもかかわらず、アクセル開度が所定の範囲内であることにより、電動オイルポンプの回転速度が小さく維持されてしまう可能性がある。したがって、特許文献1の装置では、作動音によって車両の乗員に不快感を与えることを抑制しつつ、電動オイルポンプによるオイルの供給量を確保する制御について改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、油温に応じて電動オイルポンプをより適切に稼働させることが可能な車両の制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、走行中に冷却あるいは潤滑の必要な部位にオイルを供給するための電動式のオイルポンプの稼働状態を制御する車両の制御装置であって、前記オイルポンプを作動もしくは停止するコントローラを備え、前記コントローラは、車速を検出する車速検出部と、前記オイルの温度を検出する油温検出部と、前記オイルポンプの駆動を許可する許可車速を前記オイルの温度の上昇に応じて低下させる許可車速設定部と、前記車速が前記許可車速以下の場合に前記オイルポンプの駆動を禁止しかつ前記車速が前記許可車速を超えている場合に前記オイルポンプの駆動を許可するオイルポンプ駆動判定部とを備えていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明における車両の制御装置は、車速が所定の許可車速を超えている場合に、電動式のオイルポンプの駆動を許可するように構成されている。その許可車速は、オイルの温度に応じて設定されており、具体的には、オイルの温度の上昇に応じて低下するように設定されている。そのため、オイルポンプの駆動を判定するための許可車速が、常に一定の車速に定められている場合と比較して、オイルポンプの運転領域を広くすることができる。また、オイルポンプの作動音は、オイルの粘性抵抗が小さく、油路にオイルを供給するときの通油抵抗が小さい場合に小さくなる。すなわち、オイルの温度が高くなるほどオイルポンプの作動音が小さくなるので、オイルポンプの作動音を車両の走行音などに紛れさせることができる。したがって、オイルポンプの作動音によって車両の乗員の快適性を損なうことなく、オイルポンプの運転領域を広げることができ、ひいては、冷却および潤滑の必要な部位へのオイルが不足することをも抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態における制御装置を搭載した車両の一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態における制御装置の機能構成の一部を説明するためのブロック図である。
【
図3】オイルポンプを車速と油温とに応じて作動するもしくは停止することを判定するためのマップである。
【
図4】本発明の実施形態における制御装置によって実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図に示す実施形態に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明を具体化した場合の一例に過ぎないのであって、本発明を限定するものではない。
【0011】
図1に、本発明の実施形態における制御対象である車両Veの駆動系統および制御系統の一例を示してある。
図1に示す車両Veは、走行のための駆動力を出力する駆動力源1の出力トルクを、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤ(図示せず)等を介して、駆動輪3へ伝達する構成となっている。また、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤなどに、潤滑および冷却のためのオイルを供給する、電動式のオイルポンプ(EOP)4が設けられている。さらに、車両Veは、検出部5、および、コントローラ(ECU)6を備えている。
【0012】
なお、本発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、エンジンのような内燃機関を搭載した車両や、エンジンとモータ(図示せず)とを駆動力源とするハイブリッド車両(図示せず)であってもよい。あるいは、発電機(図示せず)を駆動するための動力源としてエンジンを搭載したシリーズ方式のハイブリッド車両(図示せず)、もしくは、いわゆるレンジエクステンダーと称されるような電気自動車(図示せず)などであってもよく、従来知られている種々の車両であってよい。
【0013】
また、この発明の実施形態で制御対象にする車両Veは、
図1に示すように、駆動トルクを前輪(駆動輪)3に伝達し、前輪3で駆動力を発生させる前輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、駆動トルクを、例えばプロペラシャフト(図示せず)等を介して後輪7に伝達し、後輪7で駆動力を発生させる後輪駆動車であってもよい。あるいは、車両Veは、トランスファ機構(図示せず)を設けて、駆動トルクを前輪3および後輪7の両方に伝達し、それら前輪3および後輪7の両方で駆動力を発生させる四輪駆動車であってもよい。
【0014】
オイルポンプ4は、電動式のオイルポンプであって、図示しないアクチュエータ(モータ)から出力されたトルクによって駆動されて油圧を発生する。オイルポンプ4は、例えば、トランスアクスル2の下部等に配置された、図示しないオイルパンに滞留しているオイルを吸い上げて、油圧回路を介してトランスアクスル2やデファレンシャルギヤに供給する。なお、オイルポンプ4は、従来知られている電動オイルポンプであればよく、駆動力源の出力とは関係なくオイルの吐出量を調整して稼働することが可能なオイルポンプであればよい。
【0015】
検出部5は、車両Veを制御する際に必要な各種のデータや情報を取得するための機器あるいは装置であり、例えば、電源部、マイクロコンピュータ、センサ、および、入出力インターフェース等を含んでいる。特に、本発明の実施形態における検出部5は、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤに供給されるオイルの温度を検出するための油温センサ5aおよび車両Veの現在の速度を検出する車速センサ5bが設けられている。検出部5は、コントローラ6と電気的に接続されており、上記のような各種センサや機器・装置等の検出値または算出値に応じた電気信号等を検出データとしてコントローラ6に出力するように構成されている。
【0016】
コントローラ6は、例えば、マイクロコンピュータを主体にして構成される電子制御装置である。コントローラ6には、上記の検出部5で検出または算出された各種データ等が入力される。コントローラ6は、その入力された各種データおよび予め記憶させられているデータや計算式等を使用して演算を行う。そして、コントローラ6は、その演算結果を制御指令信号として出力し、上記のように車両Veを制御するように構成されている。なお、検出部5、ECU6および車両Veの走行のための各アクチュエータやセンサなどは、例えば、CANやワイヤーハーネス等によって互いに電気的に接続されており、取得した検出値または算出値に応じた電気信号を検出データとしてECU6に出力する。また、
図1では一つのコントローラ6が設けられた例を示しているが、コントローラ6は、制御する装置や機器毎に、あるいは、制御内容毎に、複数設けられていてもよい。
【0017】
上述したように構成された車両Veでは、オイルポンプ4を駆動するか否かを車速に基づいて判定する。そのオイルポンプ4を駆動することを許可するか否かを判定するための許可車速は、オイルの温度に基づいて設定されている。コントローラ6は、その許可車速である所定の車速を設定してオイルポンプ4の駆動を許可するための機能構成として、
図2に示すように、車速検出部8と、油温検出部9と、オイルポンプ駆動判定部10と、許可車速設定部11とを備えている。
【0018】
車速検出部8は、車速センサ5bによって検出された車両Veの現在の速度を取得する。油温検出部9は、油温センサ5aの検出値に基づいて現在のオイルの温度を取得する。油温検出部9は、オイルポンプ4によって供給されるオイルの温度を検出する。そのため、油温検出部9は、例えば、図示しないオイルパンに滞留しているオイルの温度や、それに準じたオイルの温度を検出あるいは算出するように構成されている。
【0019】
オイルポンプ駆動判定部10は、車速に応じてオイルポンプ4の駆動を許可する。オイルポンプ駆動判定部10は、
図3に示すように、予め定められたオイルポンプ4のON-OFF切替マップを有している。そのマップは、
図3に示すように、縦軸には車速をとり、横軸には油温をとっており、オイルポンプ4を駆動することを許可するか否かを判定するための車速である所定の車速が含まれている。オイルポンプ駆動判定部10は、
図3に示すマップにおいて、車速が破線で示す所定の車速を超えた場合に、オイルポンプ4を作動させる。反対に、
図3に示すマップにおいて、車速が破線で示す所定の車速以下である場合には、オイルポンプ駆動判定部10は、オイルポンプ4の作動を禁止するように構成されている。
【0020】
許可車速設定部11は、オイルポンプ4の駆動の許可を判定するための許可車速である所定の車速を設定する。つまり、許可車速設定部11は、
図3に示すマップにおける所定の車速を設定する。所定の車速は、車両Veの車速およびオイルの温度に基づいて設定されている。所定の車速は、
図3に示すように、オイルの温度が比較的低い場合には、比較的高い車速で一定に設定されている。そして、オイルの温度が所定の温度Tに達した後は、オイルの温度の上昇に応じて、所定の車速が低下するように設定されている。すなわち、所定の車速は、油温が高くなるにつれて、低い車速でオイルポンプ4が作動するように設定されている。
【0021】
また、所定の車速は、オイルポンプ4の作動音およびオイルポンプ4以外から発せられるノイズの大きさや、潤滑および冷却に必要なオイルの供給量などに応じて設定されている。オイルポンプ4以外から発生するノイズ、つまり暗騒音には、走行音、駆動力源としてのエンジンやモータの作動音、および、トランスアクスル2やデファレンシャルギヤを構成するギヤの噛み合いによる音などが含まれている。例えば、走行音は、車速が大きくなるにつれて大きくなるので、車速が大きい場合には、オイルポンプ4の作動音が大きくてもその走行音に紛れさせることができる。そのような、オイルポンプ4の作動音の大きさと、その作動音を紛れさせることが可能な、オイルポンプ4以外から生じる暗騒音との関係は、予め実験やシミュレーションなどによって求められる。
【0022】
また、オイルポンプ4の作動音は、オイルの温度に応じて変化する。例えば、オイルの温度が低く、オイルの粘性抵抗が大きいほど通油抵抗が大きくなるので、オイルを油圧回路などに圧送するために大きなトルクが必要になる。そのため、図示しないアクチュエータから出力するトルクが大きくなり、オイルポンプ4の作動音が大きくなる。反対に、オイルの粘性抵抗が小さいほど、油圧回路などへの通油抵抗が小さくなるため、オイルポンプ4の作動音も小さくなる。所定の車速は、そのようなオイルおよびオイルポンプ4の特性や、オイルポンプ4の作動音および暗騒音なども考慮して、予め実験やシミュレーションなどを行うことにより、
図3に示すマップのように設定されている。
【0023】
次に、本発明の実施形態における制御例を、
図4に示すフローチャートを用いて説明する。
図4に示すフローチャートは、オイルポンプ4の作動指示があった場合に、オイルポンプ4を直ちに作動させるか否かを判定するときの制御の一例である。
図4に示すように、ステップS1では、オイルポンプ4の作動指示があったことを判定している。例えば、車両VeのイグニッションがONになった場合には、車両Veのトランスアクスル2やデファレンシャルギヤなどの、冷却や潤滑の必要な部位にオイルを供給する必要が生じるので、オイルポンプ4に作動指示が出される。オイルポンプ4の作動指示がないことにより、ステップS1でNOと判定された場合には、以降の制御を実行することなく、このフローチャートを一旦終了する。
【0024】
反対に、オイルポンプ4の作動指示があったことにより、ステップS1でYESと判定された場合には、処理がステップS2に進む。ステップS2では、車両Veの現在の速度が、所定の車速以下であることが判定される。この所定の車速は、上述したように、オイルの温度に応じて設定されている。
【0025】
具体的には、所定の車速は、
図3に示すように、予め定められたオイルポンプ4のON-OFF切替マップに基づいて設定されている。所定の車速は、
図3に示すように、オイルの温度が比較的低いときには、所定の車速が比較的高い車速で一定に設定されている。そして、オイルの温度が所定の温度Tに達した後は、オイルの温度が高くなるにつれて、所定の車速が小さくなるように設定されている。
【0026】
また、所定の車速は、オイルポンプ4の作動音および暗騒音や、潤滑および冷却に必要なオイルの供給量などに応じて設定されている。オイルポンプ4の作動音は、上述したように、オイルの粘性抵抗による通油抵抗が大きくなることにより、大きくなる。また、走行音などの暗騒音は、車速が大きくなるにしたがって大きくなる。すなわち、車速が大きくなることにより、オイルポンプ4の作動音を紛れさせることが可能である。あるいは、車速が小さくても、オイルの温度が高い場合には、オイルポンプ4の作動音が小さくなるので、オイルポンプ4の作動音を紛れさせることが可能である。したがって、そのように、暗騒音がオイルポンプ4の作動音を紛れさせることが可能な大きさとなるオイルの温度と車速との関係を、予め実験やシミュレーションなどを行うことによって求め、その結果に基づいて所定の車速が設定されている。
【0027】
したがって、ステップS2では、現在の車速およびオイルの温度を取得し、それらに基づいて
図3のマップを参照する。そして、
図3のマップ上にプロットされた位置と、所定の車速を示す破線の位置とが比較される。その結果、
図3のマップ上でプロットされた位置が
図3に示す破線より上側の位置であった場合には、ステップS2でNOと判定され、処理がステップS4に進む。
【0028】
処理がステップS4に進んだ場合には、オイルポンプ4の作動が許可される。つまり、
図3のマップに基づき、オイルの温度および車速の関係から、オイルポンプ4の作動音に対して暗騒音が十分に大きい場合である。そのため、オイルポンプ4が作動したとしても、オイルポンプ4の作動音が、車両Veの走行音などの暗騒音より小さくなることなどにより、オイルポンプ4の作動音をその暗騒音に紛れさせることができる。そのため、作動指示に従って作動を開始するようにオイルポンプ4が制御される。
【0029】
反対に、
図3のマップ上でプロットされた位置が、所定の車速以下の位置、つまり
図3の破線上の位置もしくは破線より下側の位置であった場合には、ステップS2でYESと判定され、処理がステップS3に進む。ステップS3では、車速が所定の車速に達していないことにより、一時的にオイルポンプ4の作動を禁止する。そして、
図3に示すマップを参照し、車速が所定の車速を上回るまでオイルポンプ4の作動を遅らせる。例えば、ステップS3では、車速およびオイルの温度を、所定の周期ごとに検出し続け、車速が大きくなることおよびオイルの温度が上がることの少なくとも一方により、
図3のマップ上でプロットされた位置が
図3に示す破線より上側の位置に達したことにより、オイルポンプ4の作動が開始するように制御する。
【0030】
上述したように、本発明の実施形態における車両Veの制御装置では、車両Veの現在の速度に応じて電動式のオイルポンプ4を作動させるか否かが判定される。具体的には、現在の車速がオイルの温度によって定められる所定の車速以上である場合に、オイルポンプ4を作動させるように構成されている。所定の車速は、オイルの温度が所定の温度T以上となった後、オイルの温度が上昇するにつれて、低下するように設定されている。そのため、オイルポンプ4の作動を判定するための所定の車速が、オイルの温度に関係なく一定に設定されている場合と比較して、オイルポンプ4が作動しやすくなっている。つまり、オイルポンプ4の運転領域を広げることができる。
【0031】
また、オイルの温度が高い場合には、オイルの粘性抵抗が小さくなるので、オイルが油路を通過するときの通油抵抗が小さくなり、オイルポンプ4の作動時に発生する音が小さくなる。そのため、所定の車速が小さく設定されていても、オイルポンプ4の作動音が比較的小さいので、走行音などのオイルポンプ4以外から生じる暗騒音によってオイルポンプ4の作動音を紛れさせることができる。したがって、車速が比較的小さいときにオイルポンプ4が作動した場合であっても、オイルポンプ4の作動音が他のノイズに紛れるので、オイルポンプ4の作動音によって車両Veの乗員の快適性を損なうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 駆動力源
2 トランスアクスル
3 駆動輪(前輪)
4 オイルポンプ
5 検出部
5a 油温センサ
5b 車速センサ
6 コントローラ
7 後輪
8 車速検出部
9 油温検出部
10 オイルポンプ駆動判定部
11 許可車速設定部
Ve 車両