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  • 特開-車両の制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013047
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/04 20060101AFI20250117BHJP
   B60W 10/10 20120101ALI20250117BHJP
   F16D 3/20 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B60W10/04
B60W10/00 104
B60W10/10
F16D3/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116333
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】濱中 翔吾
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241AA18
3D241AD48
3D241AE03
3D241AE14
3D241AE30
3D241BA56
3D241CB02
3D241CB06
3D241CC01
3D241CC11
3D241CC13
3D241CC17
3D241DA52Z
3D241DC05Z
3D241DC53Z
(57)【要約】
【課題】対向溝構造の等速継手における異音の発生を抑制できる、車両の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジン12と、エンジン12と一対の駆動輪24との間の動力伝達経路PTにドライブシャフト36及び対向溝構造の等速継手22と、を備える車両10の、電子制御装置90は、外気温THairが所定の外気温判定値THair_jdg以下、エンジン12の冷却水温THwatが所定の水温判定値THwat_jdg以下、前後加速度Axが所定の加速度判定値Ax_jdg以上、且つ操舵角φstが所定の操舵角判定値φst_jdgを超過している判定された場合、ドライブシャフト36の軸トルクTdsを要求軸トルクTdsdemよりも低くなるように制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路にドライブシャフト及び対向溝構造の等速継手と、を備える車両の、制御装置であって、
外気温が所定の外気温判定値以下、前記エンジンの冷却水温が所定の水温判定値以下、前記車両の前後加速度が所定の加速度判定値以上、且つ操舵角が所定の操舵角判定値を超過していると判定された場合、前記ドライブシャフトの軸トルクを目標軸トルクよりも低くなるように制御する
ことを特徴とする車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
対向溝構造の等速継手を備える車両の、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対向溝構造の等速継手を備える車両が知られている。例えば、特許文献1に記載のものがそれである。対向溝構造の等速継手では、等速継手の外側トラック溝及び内側トラック溝から成る溝部内に設けられたボールを挟む挟み角は、ジョイント角に応じて変化し、零値を含む零値近傍の所定の範囲内となる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-84992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、挟み角が零値を含む零値近傍の所定の範囲内となると、ボールが等速継手の溝部内にロックされたボールロック状態となるとともに、挟み角が所定の範囲外となると、ボールが等速継手の溝部内を移動可能なボール解放状態となる場合がある。これにより、所定の条件が成立する場合には、ボールがボールロック状態からボール解放状態へ変化することで、ボールが等速継手のケージに衝突して異音が発生する場合がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、対向溝構造の等速継手における異音の発生を抑制できる、車両の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨とするところは、エンジンと、前記エンジンと一対の駆動輪との間の動力伝達経路にドライブシャフト及び対向溝構造の等速継手と、を備える車両の、制御装置であって、(a)外気温が所定の外気温判定値以下、(b)前記エンジンの冷却水温が所定の水温判定値以下、(c)前記車両の前後加速度が所定の加速度判定値以上、且つ(d)操舵角が所定の操舵角判定値を超過していると判定された場合、前記ドライブシャフトの軸トルクを目標軸トルクよりも低くなるように制御することにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両の制御装置によれば、(a)外気温が所定の外気温判定値以下、(b)前記エンジンの冷却水温が所定の水温判定値以下、(c)前記車両の前後加速度が所定の加速度判定値以上、且つ(d)操舵角が所定の操舵角判定値を超過していると判定された場合、前記ドライブシャフトの軸トルクが目標軸トルクよりも低くなるように制御される。対向溝構造の等速継手で異音が発生する条件(a)~(d)が全て成立する場合には、ドライブシャフトの軸トルクが目標軸トルクよりも低くなるように制御されることで、異音の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る電子制御装置が搭載された車両の概略構成図であるとともに、電子制御装置における制御機能の要部を表す機能ブロック図である。
図2】車輪側等速継手の説明図であって、図2(a)は軸方向の断面図であり、図2(b)は図2(a)を右方向から見た側面図である。
図3】車輪側等速継手についての説明図であって、図3(a)は、車輪側等速継手における挟み角とジョイント角との関係を示す図であり、図3(b)は、ボールの押し出しによる異音発生のメカニズムを説明する図である。
図4】電子制御装置の制御作動を説明するフローチャートの例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比及び形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0010】
図1は、本発明の実施例に係る電子制御装置90が搭載された車両10の概略構成図であるとともに、電子制御装置における制御機能の要部を表す機能ブロック図である。図1において、前後方向Xは、車両10の前後方向であり、車幅方向Yは、車両10の幅方向(=左右方向)である。
【0011】
車両10は、走行用の動力源であるエンジン12と一対の駆動輪24との間の動力伝達経路PTにおいて、エンジン12側から順に、クランク軸30、トルクコンバータ14、AT入力軸32、自動変速機16、AT出力軸34、デフ18、一対のドライブシャフト36等を備え、これらは周知の構成である。車両10は、例えばFF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式の車両であり、一対の駆動輪24は、操舵輪でもある。また、車両10は、油圧制御回路38及び電子制御装置90を備える。
【0012】
ドライブシャフト36は、それぞれデフ18側に配置されたデフ側等速継手20(以下、単に「等速継手20」と記す。)と、駆動輪24側に配置された車輪側等速継手22(以下、単に「等速継手22」と記す。)と、を含む。ドライブシャフト36は、等速継手20及び等速継手22の2箇所において、その軸線方向が変化可能となっている。等速継手22は、対向溝型の等速継手である。等速継手22は、本発明における「等速継手」に相当する。
【0013】
図2は、等速継手22の説明図であって、図2(a)は軸方向の断面図であり、図2(b)は図2(a)を右方向から見た側面図である。
【0014】
等速継手22は、外側継手部材42及び内側継手部材44を備える。内側継手部材44にはシャフト46(駆動輪24側)がスプライン等を介して動力伝達可能に連結される。図2は、外側継手部材42の中心線CL1及び内側継手部材44の中心線CL2が一直線上に位置するジョイント角φ=0[deg]の基準状態を示した図である。ジョイント角φ[deg]は、中心線CL1及びCL2が一直線上に位置する基準状態を0[deg]とする両者(CL1及びCL2)の交差角度である。
【0015】
外側継手部材42の内周面には、中心線CL1まわりに等角度間隔で、第1外側トラック溝50a、第2外側トラック溝50bが交互にそれぞれ複数(本実施例では3個)設けられている。内側継手部材44の外周面には、中心線CL2まわりに等角度間隔で、第1内側トラック溝52a、第2内側トラック溝52bが交互にそれぞれ複数(本実施例では3個)設けられている。第1内側トラック溝52aと第1外側トラック溝50aとの間には、トルク伝達用のボール54aが介在させられ、第2内側トラック溝52bと第2外側トラック溝50bとの間にも、トルク伝達用のボール54bが介在させられている。外側継手部材42と内側継手部材44との間の円環状空間には、円環形状のケージ56がジョイント中心Oまわりに回動可能に配設されている。ケージ56に等角度間隔で設けられた6つのポケット58(開口)内に、それぞれボール54a,54bがそれぞれ保持されている。ケージ56の外周面は球面形状を成しており、外側継手部材42の内周面に摺動可能に嵌合されて保持されている。第1外側トラック溝50a及び第1内側トラック溝52aによって第1溝部60aが構成されており、第2外側トラック溝50b及び第2内側トラック溝52bによって第2溝部60bが構成されている。これら第1溝部60a及び第2溝部60bは、中心線CL1,CL2まわりに交互に設けられているとともに、図2(b)から明らかなように中心線CL1,CL2を挟んで対称位置に第1溝部60a及び第2溝部60bが配置されている。
【0016】
図2に示す基準状態において、第1溝部60aでは、第1外側トラック溝50a及び第1内側トラック溝52aがボール54aを挟む挟み角α[deg]が正値、すなわち外側継手部材42のカップ開口側(図2(a)の右方向)に向かって開いている。一方、第2溝部60bでは、第2外側トラック溝50b及び第2内側トラック溝52bがボール54bを挟む挟み角β[deg]が負値、すなわち外側継手部材42のカップ奥側(図2(a)の左方向)に向かって開いている。
【0017】
図3は、等速継手22についての説明図であって、図3(a)は、等速継手22における挟み角α,βとジョイント角φとの関係を示す図であり、図3(b)は、ボール54bの押し出しによる異音発生のメカニズムを説明する図である。
【0018】
図3(a)では、シャフト46の中心線CL2とボール54a,54bの中心とを含む平面における、挟み角α,βとジョイント角φとの関係を示したものである。すなわち、ボール54a及びボール54bを含む平面で内側継手部材44を上下に折り曲げた場合に、ジョイント角φに応じて変化する挟み角α,βを示した図である。例えば、ジョイント角φの正値側は、図2(a)に示す矢印Upへ内側継手部材44のシャフト46を折り曲げる方向で、ジョイント角φの負値側は、図2(a)に示す矢印Dnへ内側継手部材44のシャフト46を折り曲げる方向である。図3(a)に示すように、中心線CL1よりも上側に位置するボール54aの挟み角αは、ジョイント角φの全域で正値である。中心線CL1よりも下側に位置するボール54bの挟み角βは、ジョイント角φ<0の領域で負値である。挟み角βは、ジョイント角φが零値から増加するに従って負値から正値に変化する。
【0019】
ところで、図3(b)に示すように、挟み角βが零値を含む零値近傍の所定の範囲であるロック領域内の角度値β1(LK2≧β1≧LK1)である場合には、挟み角βに基づいたボール54bの押し出し力F1[N]が第2溝部60bに対するボール54bの摩擦力R[N]よりも小さいボールロック状態となる。押し出し力F1は、ボール56bをケージ56の方向へ向かわせる力であり、摩擦力Rは、押し出し力F1とは反対方向に作用してボール56bの移動を阻止させる力である。ボールロック状態では、ボール54bは、第2溝部60b内を移動せずロックされた状態である。例えば、外気温THair[℃]が低く且つエンジン12が始動直後である場合においては、等速継手22の温度が低く、第2溝部60bとボール54bとの間にある潤滑油(グリス)の粘度が高くなることによって摩擦力Rが増加するため、ボールロック状態が発生する。
【0020】
挟み角βがロック領域外の角度値β2(β2<LK1,LK2<β2)である場合には、挟み角βに基づいたボール54bの押し出し力F2[N]が第2溝部60bに対するボール54bの摩擦力Rよりも大きいボール解放状態となる。押し出し力F2は、ボール56bをケージ56の方向へ向かわせる力であり、摩擦力Rは、押し出し力F2とは反対方向に作用してボール56bの移動を阻止させる力である。ボール解放状態では、ボール54bは、第2溝部60b内を移動可能な状態である。挟み角βにおけるボールロック状態とボール解放状態との境界を表す角度値LK1,LK2は、実験的に或いは設計的に予め定められた値である。
【0021】
ところで、車両10に備えられたステアリングホイール48の操舵角φst[deg]が0[deg]の場合には、ジョイント角φは0[deg]である。操舵角φstが0[deg]でない場合には、操舵角φstの絶対値の大きさに応じてジョイント角φは大きくなる、操舵角φstとジョイント角φとの所定の関係が成り立つ。
【0022】
ここで、ボールロック状態とボール解放状態との境界であるジョイント角φに対応した操舵角φstを「操舵角判定値φst_jdg」とし、操舵角φstが操舵角判定値φst_jdgよりも大きい角度値φst_xである場合について考える。
【0023】
操舵輪のタイヤ、すなわち一対の駆動輪24が一回転すると、挟み角βはジョイント角φが正値になったり負値になったりする。すなわち、操舵輪のタイヤの回転により、ボール54bはボールロック状態になったりボール解放状態になったりする。ボール54bがボールロック状態からボール解放状態に変化する時、ボール54bは、ケージ56とボール54bとの隙間であるガタG[mm]をケージ56に向けて押し出されてケージ56に衝突する。この時、衝突音(異音)が発生する。車両10が急発進状態、すなわち等速継手22が伝達するトルクである軸トルクTds[Nm]が大きいほど、この異音は大きくなる。軸トルクTdsは、ドライブシャフト36が駆動輪24に伝達するトルクであって、等速継手22が伝達するトルクでもある。軸トルクTdsは、本発明における「軸トルク」に相当し、この「軸トルク」は、車両10の走行時の駆動量であるという点に関しては、駆動力、動力、及び力と同義である。
【0024】
図1に戻り、電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。なお、電子制御装置90は、本発明における「制御装置」に相当する。例えば、電子制御装置90は、エンジン12から出力されるトルクであるエンジントルクTe[Nm]を制御する。電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えば外気温センサ70、水温センサ72、前後加速度センサ74、操舵角センサ76、アクセル開度センサ78、車速センサ80など)による検出値に基づく各種信号等(例えば外気温THair、エンジン12の冷却水の水温である冷却水温THwat[℃]、車両10の前後方向Xの加速度である前後加速度Ax[m/sec]、操舵角φst[deg]、運転者のアクセル操作量であるアクセル開度θacc[%]、車速V[km/h]など)が、それぞれ入力される。電子制御装置90からは、車両10に設けられた各装置(例えばエンジン12、油圧制御回路38など)に各種指令信号(例えば、エンジン12を運転制御するためのエンジン制御信号Se、自動変速機16を変速制御するための変速制御信号Satやトルクコンバータ14の不図示のロックアップクラッチLUを断接制御するためのLU断接制御信号Sluなど)が出力される。
【0025】
電子制御装置90は、エンジン制御部92、変速制御部94、LU制御部96、及び条件判定部98を機能的に備える。
【0026】
エンジン制御部92は、例えば駆動要求量マップにアクセル開度θacc及び車速Vを適用することで、運転者による車両10に対する駆動トルクTr[Nm]の要求量である要求駆動トルクTrdem[Nm]を算出する。駆動要求量マップは、予め実験的に或いは設計的に求められて記憶された、要求駆動トルクTrdemを求めるための関係である。エンジン制御部92は、車両10に対する要求駆動トルクTrdemを実現するようにエンジントルクTeを制御する。変速制御部94は、例えば変速マップを用いて自動変速機16の変速判断を行い、必要に応じて変速制御を実行する。LU制御部96は、トルクコンバータ14のロックアップクラッチLUの断接状態を制御する。
【0027】
条件判定部98は、外気温THair、冷却水温THwat、前後加速度Ax、操舵角φstをそれぞれ取得するとともに、等速継手22で異音が発生する所定の条件が成立しているか否かを判定する。例えば、異音が発生する所定の条件とは、(a)外気温THairが所定の外気温判定値THair_jdg以下、(b)エンジン12の冷却水温THwatが所定の水温判定値THwat_jdg以下、(c)前後加速度Axが所定の加速度判定値Ax_jdg以上、且つ(d)操舵角φstが所定の操舵角判定値φst_jdgを超過と、条件(a)~(d)が全て成立している場合である。外気温判定値THair_jdg及び水温判定値THwat_jdgは、それぞれ第2溝部60bとボール54bとの間にある潤滑油(グリス)の粘度が高くなることによって摩擦力Rが増加してボールロック状態が発生する、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の外気温及び所定の水温である。加速度判定値Ax_jdgは、車両10が急発進状態になることにより等速継手22で発生する異音が許容範囲外となる、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の加速度値である。操舵角判定値φst_jdgは、ボールロック状態とボール解放状態との境界であるジョイント角φに対応した操舵角φstであって、実験的に或いは設計的に予め定められた所定の角度値である。
【0028】
異音が発生する所定の条件が成立していないと条件判定部98が判定した場合には、エンジン制御部92は、要求駆動トルクTrdemを実現するエンジントルクTeをエンジン12から出力させる。この場合、軸トルクTdsは、要求駆動トルクTrdemをドライブシャフト36上で実現した要求軸トルクTdsdem[Nm]となる。なお、要求軸トルクTdsdemは、本発明における「目標軸トルク」に相当する。異音が発生する所定の条件が成立していると条件判定部98が判定した場合には、エンジン制御部92は、要求駆動トルクTrdemを実現するよりも低いエンジントルクTeをエンジン12から出力させる。この場合、軸トルクTdsは、要求駆動トルクTrdemをドライブシャフト36上で実現した要求軸トルクTdsdemよりも低い値となる。
【0029】
図4は、電子制御装置90の制御作動を説明するフローチャートの例である。まず、条件判定部98の機能に対応するステップS10(以下、「ステップ」を省略する。)において、外気温THair、冷却水温THwat、前後加速度Ax、操舵角φstが取得され、条件判定部98の機能に対応するS20において、条件(a)~(d)が全て成立しているか否かが判定される。S20の判定がYESの場合には、エンジン制御部92の機能に対応するS30において、軸トルクTdsが要求軸トルクTdsdemよりも低くなるように制御される。S20の判定がNOの場合には、エンジン制御部92の機能に対応するS40において、軸トルクTdsが要求軸トルクTdsdemとなるように制御される。S30の実行後及びS40の実行後は、リターンとなる。
【0030】
本実施例の電子制御装置90によれば、(a)外気温THairが所定の外気温判定値THair_jdg以下、(b)エンジン12の冷却水温THwatが所定の水温判定値THwat_jdg以下、(c)前後加速度Axが所定の加速度判定値Ax_jdg以上、且つ(d)操舵角φstが所定の操舵角判定値φst_jdgを超過していると判定された場合、軸トルクTdsが要求軸トルクTdsdemよりも低くなるように制御される。対向溝構造の等速継手22で異音が発生する条件(a)~(d)が成立する場合には、軸トルクTdsが要求軸トルクTdsdemよりも低くなるように制御されることで、異音の発生が抑制される。
【0031】
なお、上述したのは本発明の実施例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0032】
前述の実施例では、車両10はFF方式であったが、これに限らない。例えば、本発明は、RR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式の車両にも適用される。
【符号の説明】
【0033】
10:車両、12:エンジン、22:車輪側等速継手(等速継手)、24:駆動輪、36:ドライブシャフト、90:電子制御装置(制御装置)、PT:動力伝達経路、THair:外気温、THair_jdg:外気温判定値、THwat:冷却水温、THwat_jdg:水温判定値、Ax:前後加速度、Ax_jdg:加速度判定値、φst:操舵角、φst_jdg:操舵角判定値、Tds:軸トルク、Tdsdem:要求軸トルク(目標軸トルク)
図1
図2
図3
図4