(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013048
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
H02K 5/22 20060101AFI20250117BHJP
B60L 9/18 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H02K5/22
B60L9/18 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116334
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】権 赫秀
【テーマコード(参考)】
5H125
5H605
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC12
5H125FF01
5H125FF03
5H605CC06
5H605EC05
5H605EC08
(57)【要約】
【課題】端子台の位置決め精度を向上することができる電動車両を提供する。
【解決手段】一端側にて電動機が接続されると共に他端側にて電力制御装置が接続されるバスバーが一体的に固定された本体を有する端子台が設置されるケースは、本体の形状に合わせた開口部を有する、本体が嵌め込まれる孔が形成されている。これにより、ケースに形成された、端子台の本体の形状に合わせた開口部を有する孔にその本体が嵌め込まれることで端子台が位置決めされる。バスバーと一体化された本体で位置決めすることにより、例えば別体のピンとピンを挿入する孔とで位置決めすることに比べて、バスバーと電動機や電力制御装置との相対的な位置ズレ量を低減することができる。よって、端子台の位置決め精度を向上することができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、前記電動機を制御する電力制御装置と、一端側にて前記電動機が接続されると共に他端側にて前記電力制御装置が接続されるバスバーと前記バスバーが一体的に固定された本体とを有する端子台と、前記端子台が設置されるケースと、を備えた電動車両であって、
前記ケースは、前記本体の形状に合わせた開口部を有する、前記本体が嵌め込まれる孔が形成されていることを特徴とする電動車両。
【請求項2】
前記バスバーは、前記本体から前記他端側に延びる長手状であって且つ前記他端側の先端部にて前記電力制御装置が接続される部位を有していることを特徴とする請求項1に記載の電動車両。
【請求項3】
前記電動機が動力伝達可能に連結された動力伝達装置を更に備えるものであり、
前記ケースは、前記電動機及び前記動力伝達装置を含む駆動装置と前記電力制御装置とを機電一体ユニットとして収容するものであり、
前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記電動機に対して鉛直方向の上方に隣接して配置されているものであり、
前記バスバーにおける前記長手状の部位は、前記電動車両における搭載状態において、前記本体から前記鉛直方向の上方に延びていることを特徴とする請求項2に記載の電動車両。
【請求項4】
前記電動機は、第1電動機と第2電動機とを含むものであり、
前記駆動装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記第1電動機の回転軸線、前記第2電動機の回転軸線、及び前記動力伝達装置の回転軸線の各々が前記電動車両の前後進方向とは垂直な水平方向に平行となるように配置されていると共に、前記鉛直方向の上方から下方に前記第2電動機の回転軸線、前記第1電動機の回転軸線の順に配置されているものであり、
前記電力制御装置は、前記電動車両における搭載状態において、前記鉛直方向下側部分が前記第2電動機のうちの前記鉛直方向上側部分と前記前後進方向に見て重なる位置に配置されていると共に、前記鉛直方向下側部分が前記第1電動機に対して前記鉛直方向の上方に配置されているものであり、
前記端子台は、前記電動車両における搭載状態において、前記第2電動機に対して前記前後進方向に設置されていると共に前記第1電動機に対して前記鉛直方向の上方に設置されていることを特徴とする請求項3に記載の電動車両。
【請求項5】
前記バスバーにおける前記他端側の先端部は、前記電動車両における搭載状態において、前記電力制御装置の前記鉛直方向上側部分から前記鉛直方向の下方に延びた電力制御装置側バスバーと接続されることを特徴とする請求項4に記載の電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機と電力制御装置とをバスバーによって接続する端子台を備えた電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動機と、前記電動機を制御する電力制御装置と、一端側にて前記電動機が接続されると共に他端側にて前記電力制御装置が接続されるバスバーと前記バスバーが一体的に固定された本体とを有する端子台と、前記端子台が設置されるケースと、を備えた電動車両が良く知られている。例えば、特許文献1に記載された駆動装置がそれである。この特許文献1には、端子台は固定台座に設けられており、その固定台座はケースの開口部を覆うように設置されてケース内に電動機を密閉していることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、端子台が設けられた固定台座は、面シールを介してケースに接続されており、固定台座の位置決めが難しい為、端子台の位置決め精度が悪化する可能性がある。端子台のバスバーは電動機や電力制御装置と接続される為、端子台は精度良く位置決めされることが望まれる。例えば、固定台座の両端部に位置決めピンを設け、ケースに形成した孔にそのピンを挿入することで位置決めを行うことが考えられる。しかしながら、二つのピンは固定台座とは別体である為、例えばそれぞれの公差を含んだガタが有り、端子台のガタが大きくされて、バスバーと電動機や電力制御装置との相対的な位置ズレ量が大きくされるおそれがある。端子台の位置決め精度に関して、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、端子台の位置決め精度を向上することができる電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明の要旨とするところは、(a)電動機と、前記電動機を制御する電力制御装置と、一端側にて前記電動機が接続されると共に他端側にて前記電力制御装置が接続されるバスバーと前記バスバーが一体的に固定された本体とを有する端子台と、前記端子台が設置されるケースと、を備えた電動車両であって、(b)前記ケースは、前記本体の形状に合わせた開口部を有する、前記本体が嵌め込まれる孔が形成されていることにある。
【発明の効果】
【0007】
前記第1の発明によれば、一端側にて電動機が接続されると共に他端側にて電力制御装置が接続されるバスバーが一体的に固定された本体を有する端子台が設置されるケースは、本体の形状に合わせた開口部を有する、本体が嵌め込まれる孔が形成されている。これにより、ケースに形成された、端子台の本体の形状に合わせた開口部を有する孔にその本体が嵌め込まれることで端子台が位置決めされる。バスバーと一体化された本体で位置決めすることにより、例えば別体のピンとピンを挿入する孔とで位置決めすることに比べて、バスバーと電動機や電力制御装置との相対的な位置ズレ量を低減することができる。よって、端子台の位置決め精度を向上することができる。又、別体のピンとピンを挿入する孔とが不要になるという、副次的な効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明が適用される電動車両の概略構成の一例を説明する図である。
【
図2】電動機の制御等に関わる電気的構成の一例を説明する図である。
【
図3】機電一体ユニットの概略構成の一例を説明する図である。
【
図4】端子台が設置された状態の一例を説明する図である。
【
図5】端子台の形状の一例、及び端子台の位置決めの一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【実施例0010】
図1は、本発明が適用される電動車両10の概略構成の一例を説明する図である。
図1において、電動車両10は、動力源として機能するエンジン12と、動力源として機能する電動機である第2電動機MG2と、を備えたハイブリッド車両である。又、電動車両10は、駆動輪14と動力伝達装置16と第1電動機MG1とを備えている。
【0011】
エンジン12は、公知の内燃機関である。駆動輪14は、電動車両10の前後進方向に対する左右の車輪である。動力伝達装置16は、エンジン12と駆動輪14との間の動力伝達経路、及び第2電動機MG2と駆動輪14との間の動力伝達経路に設けられている。
【0012】
第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、各々、電力から機械的な動力を発生させる発動機としての機能及び機械的な動力から電力を発生させる発電機としての機能を有する公知の回転電気機械であって、所謂モータジェネレータである。第1電動機MG1及び第2電動機MG2は、車体に取り付けられる非回転部材である回転不能のケース18内に設けられている。尚、本実施例では、第1電動機MG1と第2電動機MG2とを特に区別しない場合には、第1電動機MG1及び第2電動機MG2を電動機MGと称する。
【0013】
動力伝達装置16は、ケース18内に、ダンパー20、入力軸22、変速部24、複合ギヤ26、ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32、ディファレンシャルギヤ34、リダクションギヤ36等を備えている。又、動力伝達装置16は、ディファレンシャルギヤ34に連結された1対のドライブシャフト38等を備えている。
【0014】
ダンパー20は、エンジン12のクランク軸12aに連結されている。入力軸22は、変速部24の入力回転部材として機能するものである。入力軸22は、ダンパー20に連結されており、ダンパー20などを介してクランク軸12aに連結されている。変速部24は、入力軸22に連結されている。複合ギヤ26は、変速部24の出力側の回転体である。複合ギヤ26は、外周面の一部にドライブギヤ26aが形成されている。ドライブギヤ26aは、変速部24の出力回転部材である。ドリブンギヤ28は、ドライブギヤ26aと噛み合っている。ドリブン軸30は、ドリブンギヤ28とファイナルギヤ32とを各々相対回転不能に固設する。ファイナルギヤ32は、ドリブンギヤ28よりも小径であって、デフリングギヤ34aと噛み合っている。リダクションギヤ36は、ドリブンギヤ28よりも小径であって、ドリブンギヤ28と噛み合っている。リダクションギヤ36には、第2電動機MG2のロータ軸が連結されており、第2電動機MG2が動力伝達可能に連結されている。
【0015】
このように構成された動力伝達装置16は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)方式或いはRR(リヤエンジン・リヤドライブ)方式の車両に好適に用いられる。動力伝達装置16は、エンジン12から出力される動力を、変速部24を介してドリブンギヤ28へ伝達する。又、動力伝達装置16は、第2電動機MG2から出力される動力を、リダクションギヤ36を介してドリブンギヤ28へ伝達する。動力伝達装置16は、ドリブンギヤ28へ伝達した動力を、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32、ディファレンシャルギヤ34、ドライブシャフト38等を順次介して駆動輪14へ伝達する。ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、ファイナルギヤ32は、第2電動機MG2からの動力をディファレンシャルギヤ34へ伝達する伝達機構であり、ドライブギヤ26aからの動力をディファレンシャルギヤ34へ伝達する伝達機構である。ディファレンシャルギヤ34は、エンジン12や第2電動機MG2からの動力を駆動輪14に分配する。ドライブシャフト38は、ディファレンシャルギヤ34からの動力を駆動輪14に伝達する。第2電動機MG2は、駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
【0016】
変速部24は、第1電動機MG1と差動機構40とを備えている。差動機構40は、サンギヤS、キャリアCA、及びリングギヤRを備えた、公知のシングルピニオン型の遊星歯車装置である。サンギヤSは、第1電動機MG1のロータ軸に連結されている。つまり、動力伝達装置16の一部である差動機構40は、電動機としての第1電動機MG1が動力伝達可能に連結されている。キャリアCAは、入力軸22に連結されている。つまり、差動機構40は、入力軸22等を介してエンジン12が動力伝達可能に連結されている。リングギヤRは、複合ギヤ26の内周面の一部に形成されており、ドライブギヤ26aに一体的に連結されている。つまり、差動機構40は、駆動輪14に動力伝達可能に連結されている。
【0017】
差動機構40は、エンジン12が動力伝達可能に連結された、差動作用を生じる差動機構として機能する。差動機構40は、キャリアCAに入力されるエンジン12の動力を第1電動機MG1及びドライブギヤ26aに機械的に分割する動力分割機構である。変速部24は、第1電動機MG1の運転状態が制御されることにより差動機構40の差動状態が制御される公知の電気式変速機構である。
【0018】
動力伝達装置16は、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4を有している。これらの4つの軸線CL1、CL2、CL3、CL4は、相互に平行である。第1軸線CL1は、入力軸22や第1電動機MG1のロータ軸の軸心である。つまり、第1軸線CL1は、第1電動機MG1の回転軸線である。変速部24及び第1電動機MG1は、第1軸線CL1回りに配置されている。第2軸線CL2は、ドリブン軸30の軸心である。ドリブンギヤ28及びファイナルギヤ32は、第2軸線CL2回りに配置されている。つまり、第2軸線CL2は、ドリブンギヤ28、ドリブン軸30、及びファイナルギヤ32の回転軸線である。第3軸線CL3は、第2電動機MG2のロータ軸の軸心である。つまり、第3軸線CL3は、第2電動機MG2の回転軸線である。第2電動機MG2及びリダクションギヤ36は、第3軸線CL3回りに配置されている。第4軸線CL4は、ドライブシャフト38の軸心であって、ディファレンシャルギヤ34の軸心である。つまり、第4軸線CL4は、ドライブシャフト38やディファレンシャルギヤ34の回転軸線である。ディファレンシャルギヤ34は、第4軸線CL4回りに配置されている。第2軸線CL2及び第4軸線CL4は、動力伝達装置16の回転軸線である。
【0019】
ケース18は、ハウジング18aとケース本体18bとカバー18cとを備えている。ハウジング18aは、エンジン12側の開口された部分にエンジン12のエンジンブロック12bが連結されている。ハウジング18aとケース本体18bとは、ハウジング18aのエンジン12とは反対側の開口された部分とケース本体18bのエンジン12側の開口された部分とが合わせられるように、ボルト等の締め具によって一体的に連結されている。ケース本体18bとカバー18cとは、ケース本体18bのエンジン12とは反対側の開口された部分をカバー18cで塞ぐように、締め具によって一体的に連結されている。ケース本体18bは、変速部24やドリブンギヤ28やディファレンシャルギヤ34等を収容するギヤ室Rgと、電動機MGを収容するモータ室Rmと、を仕切る不図示の隔壁を含んで構成されるケースである。ケース本体18bは、ハウジング18aとでギヤ室Rgを形成する。ケース本体18bは、カバー18cとでモータ室Rmを形成する。このように、ケース18は、電動機MGと、ドライブシャフト38等を除く動力伝達装置16と、を収容する。
【0020】
図2は、電動機MGの制御等に関わる電気的構成の一例を説明する図である。
図2において、電動車両10は、高圧バッテリ50、補機バッテリ52、及び電力制御ユニット54などを更に備えている。
【0021】
高圧バッテリ50は、充放電可能な直流電源であって、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン電池などの二次電池である。高圧バッテリ50は、電力制御ユニット54に接続されている。高圧バッテリ50からは、蓄電された電力が電力制御ユニット54を介して例えば第2電動機MG2へ供給される。又、高圧バッテリ50には、第1電動機MG1の発電制御による電力や第2電動機MG2の回生制御による電力が電力制御ユニット54を介して供給される。高圧バッテリ50は、駆動用のバッテリである。
【0022】
電力制御ユニット54は、DCDCコンバータ56、電動機制御装置58、昇圧コンバータ60、及びインバータ62などを備えている。電力制御ユニット54は、高圧バッテリ50と電動機MGとの間で各々授受される電力を制御する電力制御装置である。つまり、電力制御ユニット54は、電動機MGを制御する電力制御装置である。
【0023】
DCDCコンバータ56は、高圧バッテリ50に接続されている。DCDCコンバータ56は、高圧バッテリ50の電圧を補機バッテリ52と同等の電圧に降圧して補機バッテリ52を充電する充電装置として機能する。補機バッテリ52は、電動車両10に備えられた補機、電動機制御装置58、後述する電子制御装置70等を作動させる為の電力を供給する。
【0024】
昇圧コンバータ60は、不図示のリアクトルやスイッチング素子などを備えている。昇圧コンバータ60は、高圧バッテリ50の電圧を昇圧してインバータ62に供給する機能と、インバータ62により直流に変換された電圧を降圧して高圧バッテリ50に供給する機能と、を有する昇降圧回路である。
【0025】
インバータ62は、MG1パワーモジュール64、MG2パワーモジュール66などを備えている。MG1パワーモジュール64及びMG2パワーモジュール66は、各々、スイッチング素子としてオン、オフ駆動させられることで、直流電流を交流電流に変換する複数のトランジスタなどを備えている。電動車両10は、一端側にて電動機MGが接続されると共に他端側にて電力制御ユニット54が接続されるバスバー68を更に備えている。バスバー68は、電動機MGとインバータ62とを電気的に接続する電力線であって、複数のバスバーを含んでいる。
【0026】
インバータ62は、昇圧コンバータ60からの直流電流を電動機MGを駆動する為の交流電流に変換する。インバータ62は、エンジン12の動力により第1電動機MG1で発電された交流電流、及び回生ブレーキにより第2電動機MG2で発電された交流電流を直流電流に変換する。インバータ62は、第1電動機MG1で発電された交流電流を走行状態に応じて、第2電動機MG2の駆動用電力として供給する。
【0027】
電動車両10は、電子制御装置70、通信線72などを更に備えている。電子制御装置70は、DCDCコンバータ56、電動機制御装置58などとの間で通信線72を介して信号を送受信する。電子制御装置70は、例えば不図示のセンサなどからの信号に基づいて電動車両10の各種の制御を行う。通信線72は、例えば公知のCAN(Controller Area Network)通信線である。電動機制御装置58は、電子制御装置70からの指令に基づいて、昇圧コンバータ60及びインバータ62の制御を行い、電動機MGを制御する。
【0028】
図3は、駆動ユニット90の概略構成の一例を説明する図である。
図3は、電動車両10の左側からの側面図である。
図3において、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とは、駆動ユニット90として同じケース18内に収容されている。駆動ユニット90は、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とが一体化されたユニット、すなわち機電一体ユニットである。トランスアクスル92は、動力伝達装置16(26a、28、32、34a、36等)及び電動機MGを含む駆動装置である。尚、図中の鉛直方向、前後進方向、は、電動車両10における搭載状態での方向を示している。又、車幅方向は、電動車両10の前後進方向とは垂直な水平方向であって、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の軸線方向とは平行な方向である。
【0029】
ケース18は、前述した、ハウジング18a、ケース本体18b、及びカバー18cに加え、保護プレート18dを更に備えている。ケース本体18bは、底壁と、前後進方向の前方側及び後方側において底壁の外周縁から鉛直方向の上方に各々延びる側壁と、を有しており、鉛直方向上部が開口している。保護プレート18dは、ケース本体18bにおける鉛直方向上部の開口を塞ぐ板状の部材である。ケース本体18bは、内部に不図示の隔壁を有しており、その隔壁によって内部が鉛直方向下部の空間である下部空間Aと鉛直方向上部の空間である上部空間Bとの2つの空間に区切られている。
【0030】
トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、ケース本体18bにおける下部空間Aやハウジング18aに収容されている。
【0031】
電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、ケース本体18bにおける上部空間Bに収容されている。上部空間Bは、電動機MGの配置によって生じた余剰空間B1と、第2電動機MG2の鉛直方向上部の最上空間B2と、を含んでいる。余剰空間B1は、最上空間B2よりも前後進方向の長さが短くされている。電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、電動機MGに対して鉛直方向の上方に隣接して配置されている。
【0032】
余剰空間B1には、電力制御ユニット54のうちで、比較的長さが短い部品であることや比較的交換が容易な部品であることを考慮して、例えばDCDCコンバータ56、昇圧コンバータ60が備える不図示のリアクトルなどが収容されている。
【0033】
図3を参照すれば、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々が電動車両10の前後進方向とは垂直な水平方向に平行となるように配置されている。又、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の位置が、鉛直方向の上方から下方に第2電動機MG2、ドリブン軸30、第1電動機MG1、ディファレンシャルギヤ34の順とされ、且つ、前後進方向の前方から後方に第1電動機MG1、ドリブン軸30、ディファレンシャルギヤ34、第2電動機MG2の順とされている。第1電動機MG1及び第2電動機MG2に着目すれば、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、鉛直方向の上方から下方に第3軸線CL3、第1軸線CL1の順に配置されている。これにより、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の軸間距離が適切に確保されつつ、トランスアクスル92の鉛直方向の体格が低減させられる。よって、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の配置によって余剰空間B1が生み出され、第2電動機MG2の鉛直方向上部に最上空間B2が生み出される。この上部空間B(B1+B2)に電力制御ユニット54が搭載される。
【0034】
電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、トランスアクスル92に対して鉛直方向の上方に配置されている。加えて、電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分がトランスアクスル92特には第2電動機MG2のうちの鉛直方向上側部分と水平方向特には前後進方向に見て重なる位置に配置されている。又、電力制御ユニット54は、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分が第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に配置されている。電力制御ユニット54のうちの鉛直方向下側部分は、例えば電力制御ユニット54のうちの余剰空間B1に収容された部品(例えばDCDCコンバータ56、リアクトル)である。
【0035】
トランスアクスル92の鉛直方向の体格が低減されたことによって生み出されたスペースに電力制御ユニット54が搭載され、駆動ユニット90の鉛直方向の上方にスペースが生み出される。
【0036】
ここで、電動車両10では、
図4、
図5に示すように、ケース18にはバスバー68が固定された端子台80が設置されている。端子台80の設置について、以下に詳細に説明する。尚、前述したように、バスバー68は複数のバスバーを含んでいるが、便宜上、一つのバスバーに符号68を付して、端子台80の設置について説明する。
【0037】
図4は、端子台80が設置された状態の一例を説明する図である。
図5は、端子台80の形状の一例、及び端子台80の位置決めの一例を説明する図である。
【0038】
図4、
図5において、端子台80は、バスバー68と端子台本体82とを備えている。端子台本体82は、バスバー68が一体的に固定された端子台80の本体である。端子台80は、電動車両10における搭載状態において、第2電動機MG2に対して電動車両10の前後進方向に設置されていると共に第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に設置されている。
【0039】
バスバー68は、端子台本体82に対して一端側つまり電動機MG側に突出したMG側端子部68mと、端子台本体82に対して他端側つまり電力制御ユニット54側に突出したPCU側端子部68pと、を有している。
【0040】
MG側端子部68mは、電動機MGから延びたMGバスバー84と接続される。MGバスバー84は、電動機MGとバスバー68とを電気的に接続する電力線であって、電動機側バスバーである。
【0041】
PCU側端子部68pは、電力制御ユニット54特にはインバータ62から延びたPCUバスバー86と接続される。PCU側端子部68pは、端子台本体82から電力制御ユニット54側に延びる長手状であって且つ電力制御ユニット54側の先端部68ptにて電力制御ユニット54が接続される部位である。PCU側端子部68pは、電動車両10における搭載状態において、端子台本体82から鉛直方向の上方に延びている。PCU側端子部68pの先端部68ptは、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54の鉛直方向上側部分例えばインバータ62から鉛直方向の下方に延びたPCUバスバー86と接続される。PCUバスバー86は、インバータ62とバスバー68とを電気的に接続する電力線であって、電力制御装置側バスバーである。
【0042】
端子台80を設置する際の位置決め方法としては、例えば端子台本体82の両端部に位置決めピンを設け、ケース18に形成した孔にそのピンを挿入することが考えられる。しかしながら、二つのピンは端子台本体82とは別体である為、それぞれの位置ズレが有り、端子台80のガタが大きくされて、位置決め精度が良くない。端子台80の位置決め精度が悪いと、例えばPCU側端子部68pの先端部68ptとPCUバスバー86との相対的な位置ズレ量が大きくされるおそれがある。先端部68ptとPCUバスバー86とのボルト締結での結線時に、相対的な位置ズレ量が大きいと、PCU側端子部68p及び/又はPCUバスバー86の変位量が大きくなり、その際に発生する応力が大きくされる。応力が大きくされると、バスバー68及び/又はPCUバスバー86の耐久性が低下するおそれがある。これに対して、変位量が大きくても応力を下げる方法として、PCU側端子部68pの長手方向の長さを伸ばすことが考えられる。
【0043】
一方で、駆動ユニット90では、トランスアクスル92に対して鉛直方向の上方に電力制御ユニット54が配置されている。駆動ユニット90の鉛直方向の体格を低減することを考慮すると、トランスアクスル92と電力制御ユニット54との間の物理的な距離を短くする必要がある。しかしながら、端子台80の位置決め精度が悪いことに対する対策として、PCU側端子部68pの長手方向の長さを伸ばすと、デッドスペースが生じてしまう。そうすると、トランスアクスル92と電力制御ユニット54との間の物理的な距離を短くし難い。端子台80の位置決め精度を向上することが望まれる。
【0044】
そこで、本実施例では、端子台80の位置決め精度を向上する為に、端子台80とケース18との位置決めを、バスバー68と一体化している端子台本体82にて行う。例えば、
図5に示すように、ケース18特にはケース本体18bは、端子台本体82が嵌め込まれる孔88が形成されている。孔88は、端子台本体82の形状に合わせた開口部88oを有している。
【0045】
端子台本体82は、一端側つまり電動機MG側のMG側本体82mと、他端側つまり電力制御ユニット54側のPCU側本体82pと、を含んでいる。MG側本体82mの外周形状は、開口部88oの形状とは、MG側本体82mが開口部88oにガタ無く嵌め入れられる程度に合致している。MG側本体82mが孔88に完全に嵌め込まれた状態では、PCU側本体82pがケース本体18bと接触させられる。端子台80は、PCU側本体82pがボルト89等によってケース本体18bに取り付けられることによってケース本体18bに固定される。
【0046】
上述のように、本実施例によれば、ケース18は、端子台本体82の形状に合わせた開口部88oを有する、端子台本体82が嵌め込まれる孔88が形成されている。これにより、孔88に端子台本体82が嵌め込まれることで端子台80が位置決めされる。バスバー68と一体化された端子台本体82で位置決めすることにより、例えば別体のピンとピンを挿入する孔とで位置決めすることに比べて、バスバー68とMGバスバー84やPCUバスバー86との相対的な位置ズレ量を低減することができる。よって、端子台80の位置決め精度を向上することができる。又、別体のピンとピンを挿入する孔とが不要になり、スペース性も向上するという、副次的な効果も得られる。
【0047】
また、本実施例によれば、バスバー68は、端子台本体82から電力制御ユニット54側に延びる長手状であって且つ電力制御ユニット54側の先端部68ptにて電力制御ユニット54が接続されるPCU側端子部68pを有している。端子台80の位置決め精度が向上することで、先端部68ptとPCUバスバー86との結線時に発生する応力が抑制されるので、PCU側端子部68pの長手方向の長さを短くすることができる(
図5参照)。つまり、バスバー68を短くすることができる。
【0048】
また、本実施例によれば、PCU側端子部68pは、電動車両10における搭載状態において、端子台本体82から鉛直方向の上方に延びている。PCU側端子部68pの長手方向の長さが短くされることで、電動車両10における搭載状態においてトランスアクスル92に対して鉛直方向の上方に電力制御ユニット54が配置されている駆動ユニット90の鉛直方向の体格を低減することができる。つまり、駆動ユニット90の低背化を図ることができ、駆動ユニット90の搭載スペースを削減することができる。
【0049】
また、本実施例によれば、端子台80は、電動車両10における搭載状態において、第2電動機MG2に対して電動車両10の前後進方向に設置されていると共に第1電動機MG1に対して鉛直方向の上方に設置されている。端子台80は、第1電動機MG1及び第2電動機MG2の配置によって生み出された空間に設置されているので、駆動ユニット90の低背化を適切に図ることができる。
【0050】
また、本実施例によれば、PCU側端子部68pの先端部68ptは、電動車両10における搭載状態において、電力制御ユニット54の鉛直方向上側部分から鉛直方向の下方に延びたPCUバスバー86と接続される。端子台80の位置決め精度が向上することで、PCU側端子部68pの長手方向の長さを適切に短くすることができ、駆動ユニット90の低背化を適切に図ることができる。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0052】
例えば、前述の実施例において、トランスアクスル92は、電動車両10における搭載状態において、第1軸線CL1、第2軸線CL2、第3軸線CL3、及び第4軸線CL4の各々の位置が、前後進方向の後方から前方に第1電動機MG1、ドリブン軸30、ディファレンシャルギヤ34、第2電動機MG2の順とされていても良い。又、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とは、各々別のケースに収容されるものであっても良い。又、電力制御ユニット54は、必ずしもトランスアクスル92の鉛直方向上部に配置されていなくても良い。又、トランスアクスル92と電力制御ユニット54とは、ケース18内において、隔壁によって区切られた空間にそれぞれ収容されていたが、隔壁による区切りがない同じ空間に収容されても良い。
【0053】
また、前述の実施例において、電動車両は、駆動用の電動機を備えた電気自動車であっても良い。この電気自動車は、前述の実施例の電動車両10とは、例えば第1軸線CL1回りの各構成部材(エンジン12、第1電動機MG1を含む変速部24)を備えていないことが主な相違点である。又、この電気自動車では、例えば
図3に示したトランスアクスル92の各構成部材の配置位置において、第1電動機MG1が削除され、第2電動機MG2が電気自動車の電動機として機能する。又は、電動車両は、エンジンと、動力源として機能する駆動用の電動機と、エンジンに動力伝達可能に連結されてエンジンの動力によって発電する電力供給用の電動機と、を備えたシリーズハイブリッド車両であっても良い。このようなシリーズハイブリッド車両では、クラッチの作動によって、エンジンと駆動輪との間の動力伝達経路が遮断又は接続される構成であっても良い。又は、電動車両は、エンジンと、エンジンからの動力を駆動輪に伝達する動力伝達装置と、その動力伝達装置を介して駆動輪に動力が伝達される電動機と、を備えたパラレルハイブリッド車両であっても良い。
【0054】
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:電動車両 16:動力伝達装置 18:ケース 54:電力制御ユニット(電力制御装置) 68:バスバー 68p:PCU側端子部(長手状且つ先端部にて電力制御装置が接続される部位) 68pt:先端部 80:端子台 82:端子台本体(本体) 86:PCUバスバー(電力制御装置側バスバー) 88:孔 88o:開口部 90:駆動ユニット(機電一体ユニット) 92:トランスアクスル(駆動装置) CL1:第1軸線(第1電動機の回転軸線) CL2:第2軸線(動力伝達装置の回転軸線) CL3:第3軸線(第2電動機の回転軸線) CL4:第4軸線(動力伝達装置の回転軸線) MG:電動機 MG1:第1電動機(電動機) MG2:第2電動機(電動機)