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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013061
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】回転弁駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/44 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
F16K31/44 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116351
(22)【出願日】2023-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】522484146
【氏名又は名称】ハンドトラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131679
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼橋 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】栗屋野 盛一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 治男
【テーマコード(参考)】
3H063
【Fターム(参考)】
3H063AA02
3H063BB01
3H063BB35
3H063DA15
3H063DB50
3H063EE11
3H063EE15
3H063GG06
(57)【要約】
【課題】 回転弁の弁体の開放状態と閉鎖状態で静止させることができ、油圧式揺動ベーンモータ内の昇圧された油の温度上昇を効果的に抑制することができる回転弁駆動装置を提供する。
【解決手段】 回転弁10に固定された下側台座30と、下側台座30の上方に配置され、回転弁の弁棒11を貫通固着した位置固定回転板40と、位置固定回転板40に設けられた貫通孔から挿入される円柱状ピン51を含む、1個又は2個のロック部材50と、位置固定回転板40の上方に配置され、下側台座30と固定される、上側台座60と、上側台座60の上方に配置され、昇圧された油をベーンに当てて、回転弁の弁棒11と接続された出力軸を回転させる、油圧式揺動ベーンモータ70と、を備える、回転弁駆動装置20により課題を解決した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転弁に固定された下側台座と、該下側台座の上方に配置され、該回転弁の弁棒を貫通固着した位置固定回転板と、該位置固定回転板に設けられた貫通孔から挿入される円柱状ピンを含む、1個又は2個のロック部材と、該位置固定回転板の上方に配置され、該下側台座と固定される、上側台座と、該上側台座の上方に配置され、昇圧された油をベーンに当てて、該回転弁の弁棒と接続された出力軸を回転させる、油圧式揺動ベーンモータと、を備えることを特徴とする回転弁駆動装置。
【請求項2】
前記回転弁駆動装置は、2個のロック部材で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の回転弁駆動装置。
【請求項3】
前記下側台座の外周部分には、前記ロック部材の円柱状ピンの先端と嵌合する凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の回転弁駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧式揺動ベーンモータを用いた回転弁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
直径500mm~1500mm程度の回転弁(以下、「大口径の回転弁」という。)は、例えば、水力発電所に水を導く水圧管の止め弁として用いられ、水力発電用の水車に大量の水を運ぶため、回転弁の弁体は開放状態又は閉鎖状態が継続される。例えば、水圧管の止め弁では、閉鎖状態においては、大量の水を塞き止めるために必要となる閉塞力と、閉鎖状態から開放状態に至る動作における流体流からくる流体力と、回転弁の弁体が開放状態において、回転弁の弁体の位置を留めておく拘束力の全ての力に打ち勝つ駆動装置が必要となる。
【0003】
閉鎖状態における閉塞力、閉鎖状態から開放状態に至るまでの流体力及び開放状態における拘束力は、すべて、回転弁の弁軸で受けることになるため、大口径の回転弁駆動装置には、回転弁の弁体を回転させるための巨大な推力を発生できることが条件となる。
【0004】
大口径の回転弁の弁体を大量の水が通過する場合、大量の水は常に回転弁の弁体に衝撃・振動を与えながら通過するが、その衝撃・振動は、回転弁駆動装置を加振し続けることになる。
【0005】
大量の水が通過する際に生じる衝撃・振動は、回転弁駆動装置を構成する電子部品を損傷させるだけでなく、回転弁駆動装置を構成する機械部品の摩耗や亀裂破損に繋がり、回転弁の使命である開閉動作を停止させてしまう原因ともなる。そのため、特に、大口径の回転弁駆動装置は、シンプルかつ、コンパクトであることが要求されるが、さらに回転弁の弁棒に少しでも近づけることも必要となる。
【0006】
大口径の回転弁駆動装置としては、電動モータ式駆動装置及び油圧ピストンシリンダ式駆動装置が現在主流となっている。
【0007】
電気モータ式駆動装置は、減速機を必要とするため、必然的に大型化と高重量化が避けられないだけでなく、減速機を設置した先に電気モータを設置しなければならないため、電気モータが回転弁の弁棒から遠く離れてしまい、大量の水が通過する際に生じる衝撃・振動がさらに助長されるという欠点がある。
【0008】
油圧ピストンシリンダ式駆動装置は、水平移動するピストンシリンダを回転弁の回転推力に変換させる回転ギアを必要とするため、大型化と高重量化が避けられないだけでなく、水平移動する油圧ピストンシリンダは、回転ギアの回転を生み出すための水平距離を確保する必要があるため、必然的に水平移動距離が長くなり、シリンダ及びロッドも長くなることから、油圧ピストンシリンダが回転弁の弁体から遠く離れ、大量の水が通過する際に生じる衝撃・振動がさらに助長されるという欠点がある。
【0009】
これに対し、油圧式揺動ベーンモータを使用した駆動装置は、ベーンの受圧面積に比例した力が直接伝わる、ベーンモータの出力軸に直接接続することができるという、シンプルな構造で、故障率も低減でき、減速機や増幅器などの付属設備も不要であるという、小型化という観点から優位的な特徴があり、大量の水が通過する際に発生する衝撃・振動源に非常に近い、回転弁の弁棒に直接設置することができるため、大量の水が回転弁の弁体を通過する影響は少なく、油圧式揺動ベーンモータの特徴としてのクリアランスによる金属面への影響もないことから、大口径の回転弁駆動装置としては、電気モータ式駆動装置及び油圧ピストンシリンダ式駆動装置より適しているとも考えられる。
【0010】
一方、大口径の回転弁駆動装置においては、回転弁の弁体の開放状態と閉鎖状態で静止させることが必要不可欠となる。電気モータ式駆動装置では、減速機などにより軸方向を変換することで達成することができ、油圧ピストンシリンダ式駆動装置では、ピストンシールリングを使用することにより達成することができるが、油圧式揺動ベーンモータを使用した駆動装置では、油圧ピストンシリンダ式駆動装置に用いられるシール方式では対応することができず、油が常にリークしてしまうため、回転弁の弁体の開放状態と閉鎖状態で静止させることが難しいという課題がある。
【0011】
以上のことから、油圧式揺動ベーンモータは、例えば、特許文献1に示すように、動力操向装置の出力側に配設されるにとどまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭62-46792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
油圧式揺動ベーンモータは、ベーンという仕切りの表面に当たった昇圧された油の油力を受け、ベーンが筐体(箱)中を回転移動するものであり、回転弁の弁棒に直接接続できるということが大きな特徴であるが、回転接触を低減するシールが難しく、通常のリング状のシール構造も使用できないため、ベーンと筐体のクリアランス(隙間)をなるべく少なくすることで、油のリークに対応しているのが現状であって、ベーンを押すための昇圧された油を供給し続けた場合、油圧式揺動ベーンモータは、油圧ピストンシリンダ式駆動装置のように、供給油圧を封じ込めたとしても、ベーンと筐体とのクリアランスによって油のリークが続くという不都合が生じることになる。
【0014】
大口径の回転弁駆動装置に油圧式揺動ベーンモータを使用した場合には、油圧式揺動ベーンモータの出力軸と回転弁の弁棒が直接接続されているため、油圧式揺動ベーンモータの出力軸は、回転弁の弁棒の力を受けることから、油圧式揺動ベーンモータ内にベーンを押すための昇圧された油を供給し続ける必要があるが、油圧式揺動ベーンモータ内に昇圧された油を供給し続けると、昇圧された油のリークが続くことになって、その結果、油圧式揺動ベーンモータ内の油の温度が上昇して、油の粘度が変化し、それに伴い、油の圧力が飽和して、その後、停止した油圧式揺動ベーンモータの出力軸が動き始め、そして、油圧が弱くなると、回転弁の弁体を通過する流体圧力に負け、油圧式揺動ベーンモータの出力軸が自由な方向に回転してしまうという好ましくない現象が発生する。
【0015】
油圧式揺動ベーンモータ内の油の温度上昇は、減圧時(リーク部分の開放側)のキャビテーション・エロージョンも引き起こすため、機器の損傷につながり、最悪の場合、作動停止も生じることになる。
【0016】
本発明の目的とするところは、回転弁の弁体の開放状態と閉鎖状態で静止させることができ、油圧式揺動ベーンモータ内の油の温度上昇を効果的に抑制することができる回転弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、位置固定回転板と、位置固定回転板を固定する円柱状ピンを含むロック部材と、を備えた回転弁駆動装置が、上記目的を達成することを見出し、本発明をするに至った。
【0018】
即ち、本発明の回転弁駆動装置は、回転弁に固定された下側台座と、該下側台座の上方に配置され、該回転弁の弁棒を貫通固着した位置固定回転板と、該位置固定回転板に設けられた貫通孔から挿入される円柱状ピンを含む、1個又は2個のロック部材と、該位置固定回転板の上方に配置され、該下側台座と固定される、上側台座と、該上側台座の上方に配置され、昇圧された油をベーンに当てて、該回転弁の弁棒と接続された出力軸を回転させる、油圧式揺動ベーンモータと、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の把持装置において、上述した回転弁駆動装置は、2個のロック部材で構成されていることが好ましく、上述した下側台座の外周部分には、上述したロック部材の円柱状ピンの先端と嵌合する凹部が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の回転弁駆動装置を用いることにより、設置領域を極限まで小さくできるほか、回転弁の弁体の開放状態と閉鎖状態で静止させることができるため、大量の水が回転弁の弁体を通過又は衝突の際に生じる衝撃・振動を効果的に抑制することができ、機械部品への損傷要素を減らすことができるだけでなく、動力も押さえることができ、極限まで油の温度上昇も抑制することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の回転弁駆動装置の使用状態の一例を示す図である。
図2】本発明の回転弁駆動装置の使用状態の他の一例を示す図である。
図3】本発明の回転弁駆動装置に用いる下側台座の一例を示す図である。
図4】本発明の回転弁駆動装置に用いる位置固定回転板の一例を示す図である。
図5】本発明の回転弁駆動装置に用いる位置固定回転板の他の一例を示す図である。
図6】本発明の回転弁駆動装置に用いる下側台座と位置固定回転板を組み合わせた状態の一例を示す図である。
図7】本発明の回転弁駆動装置に用いるロック部材の一例を示す図である。
図8】本発明の回転弁駆動装置に用いるロック部材の移動状態の一例を示す断面図である。
図9】本発明の回転弁駆動装置に用いる上側台座の一例を示す図である。
図10】本発明の回転弁駆動装置に用いる油圧式揺動ベーンモータの一例を示す図である。
図11】本発明の回転弁駆動装置に用いる油圧式揺動ベーンモータの一例を示すA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の回転弁駆動装置の実施の形態について説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0023】
回転弁駆動装置20は、図1及び図2に示すように、下側台座30と、位置固定回転板40と、ロック部材50と、上側台座60と、油圧式揺動ベーンモータ70とを備える。
【0024】
下側台座30は、回転弁10の上方に設置され、回転弁10の本体に固定される。下側台座30には、例えば、図3に示すように、ボルト穴34,34,34,34,34,34,34,34が設けられ、下側台座30が、回転弁10の本体に、ボルト締めで固定される。
【0025】
下側台座30の四隅には、図3に示すように、固定支柱62,62,62,62が取り付け可能となる固定支柱用凹部35,35,35,35が設けられ、固定支柱62,62,62,62を介して、上側台座60と固定される。下側台座30の中心には、図3に示すように、回転弁の弁棒11を貫通する弁棒用貫通孔31が設けられ、回転弁の弁棒11を貫通する。
【0026】
下側台座30の外周部分には、図8に示すように、回転弁の弁体12の揺動をより効果的に防止するため、ロック部材50の円柱状ピン51の先端51aと嵌合するピン用凹33部が設けられているのが好ましい。ロック部材が1個の場合は、ピン用凹部が下側台座の外周部分に2か所設けられ、ロック部材が2個の場合は、ピン用凹部が下側台座の外周部分に3か所設けられる。
【0027】
下側台座30には、図3に示すように、位置固定回転板40の回転し過ぎを防止すべく、回転止め用突起32を突設してもよい。
【0028】
位置固定回転板40は、下側台座30の上方に配置され、回転弁の弁棒11と同時に同方向へ回転する。
【0029】
位置固定回転板40の中心には、図4及び図5に示すように、回転弁の弁棒11を貫通する弁棒用貫通孔41及び角柱が挿入可能なキー用貫通孔42が設けられている。楔として機能する角柱部材45がキー用貫通孔42に挿入され、回転弁の弁棒11は位置固定回転板40と貫通固着される。
【0030】
位置固定回転板40の外周付近には、ロック部材50の円柱状ピン51を貫通するピン用貫通孔43が、図4に示すように、ロック部材50が1個の場合は2個(開放状態ピン用貫通孔,閉鎖状態ピン用貫通孔)、図5に示すように、ロック部材50が2個の場合は3個(開放状態ピン用貫通孔,開放状態ピン用貫通孔と閉鎖状態ピン用貫通孔を兼用する兼用ピン用貫通孔,閉鎖状態ピン用貫通孔)設けられ、所望により、円柱状ピン51が貫通する。
【0031】
位置固定回転板40の外周には、図4図5及び図6に示すように、下側台座30の回転止め用突起32と相俟って、位置固定回転板40の回転し過ぎを防止するための突出部分44を設けてもよい。
【0032】
ロック部材50は、回転弁の弁体12の揺動を防止する。本発明では、ロック部材50は、1個又は2個で構成される。ロック部材が3個以上になると、回転弁駆動装置が大きくなるだけでなく、円柱状ピンの制御も複雑になり過ぎるからである。また、本発明では、ロック部材50は、2個で構成されるのが好ましい。ロック部材が1個より2個の方がより確実かつ強固に回転弁の弁体を固定できるため、好ましいからである。
【0033】
ロック部材50は、例えば、図7に示すように、上下動が可能な円柱状ピン51と、円柱状ピン51を移動するための推進力を提供する油圧ピストンシリンダ52と、円柱状ピン51と油圧ピストンシリンダ52を接続する接続部材53と、油圧ピストンシリンダ52を取り付けるピストンシリンダ取付板54と、ピストンシリンダ取付板54を支える六角支柱55により構成される。
【0034】
油圧ピストンシリンダ52は、制御装置81による指令に基づき、適宜、円柱状ピン51を下降又は上昇させる。
【0035】
制御装置81による指令に基づき、油圧ピストンシリンダ52が上昇すると、それに伴い、円柱状ピン51が上昇して、円柱状ピン51が位置固定回転板40のピン用貫通孔43から引き抜かれ、その後、円柱状ピン51が位置固定回転板40のピン用貫通孔43から完全に脱出する。円柱状ピン51が位置固定回転板40のピン用貫通孔43から完全に脱出すると、位置固定回転板40は回転可能な状態となり、油圧式揺動ベーンモータ70の出力軸72の回転に伴い、位置固定回転板40が、同方向に回転し、同時に、回転弁の弁軸11も同方向に回転する。
【0036】
制御装置81による指令に基づき、油圧ピストンシリンダ52が下降すると、それに伴い、円柱状ピン51が下降して、円柱状ピン51が位置固定回転板40のピン用貫通孔43を貫通し、円柱状ピンの先端51aが下側台座30の凹部付近(図1)又は下側台座30の凹部(図8)に達する。円柱状ピンの先端51aが下側台座30の凹部付近又は下側台座30の凹部に達すると、位置固定回転板40、回転弁の弁棒11及び油圧式揺動ベーンモータ70の出力軸72は、固定された状態となり、回転弁の弁体12の揺動と油圧式揺動ベーンモータ70の回転軸の揺動が抑制される。
【0037】
円柱状ピン51が位置固定回転板40のピン用貫通孔43を貫通すると、回転弁の弁体12の揺動が抑制される。図8に示すように、円柱状ピンの先端51aが下側台座30のピン用凹部33と嵌合すると、回転弁の弁体12の揺動がより効果的に抑制される。
【0038】
上側台座60は、ロック部材50と油圧式揺動ベーンモータ70を支える。上側台座60の四隅には、図9に示すように、固定支柱62,62,62,62が取り付けられ、下側台座30と固定される。上側台座60の中心には、図9に示すように、回転弁の弁棒11を貫通する弁棒用貫通孔61が設けられ、回転弁の弁棒11が貫通される。上側台座60の端部には、例えば、図9に示すように、円柱状ピン用貫通孔63と六角支柱用貫通孔64,64,64,64が設けられ、ロック部材50が上に突き抜けた状態で配置される。
【0039】
油圧式揺動ベーンモータ70は、回転弁の弁棒11を回転する役割をする。油圧式揺動ベーンモータ70は、例えば、図11に示すように、筐体71と、出力軸(回転軸)72と、出力軸72に差し込まれたベーン(羽根)73と、ベーン73を回転させる昇圧された油を供給する油供給排出口a74及び油供給排出口b75からなる。
【0040】
油圧発生装置か82ら送られた昇圧された油は、不図示の油切替弁を経由して、所望により、油圧式揺動ベーンモータ70の油供給排出口a74と油供給排出口b75のいずれかに供給される。
【0041】
油供給排出口a74から昇圧された油が供給されると、ベーン73の右側に当たり、大きなトルクが発生するため、ベーン73が左に回転し、それに伴い、油圧式揺動ベーンモータの出力軸72が左に回転して、油圧式揺動ベーンモータの出力軸72と接続された回転弁の弁棒11が左に回転することから、回転弁の弁体12が開放状態となる方向に回転する。
【0042】
油供給排出口b75から昇圧された油が供給されると、ベーン73の左側に当たり、大きなトルクが発生するため、ベーン73が右に回転し、それに伴い、油圧式揺動ベーンモータの出力軸72が右に回転して、油圧式揺動ベーンモータの出力軸72と接続された回転弁の弁棒11が右に回転することから、回転弁の弁体12が閉鎖状態となる方向に回転する。
【0043】
油圧式揺動ベーンモータの出力軸72は、軸接手76で、回転弁の弁棒11と接続される。油圧式揺動ベーンモータの出力軸72と回転弁の弁棒11には、楔として機能する角柱が挿入可能なキー用凹部が設けられ、角柱部材の挿入により、軸接手76の結合をより強固にしている。
【0044】
回転弁の弁体12の位置は、回転弁位置検出器77により検出される。回転弁位置検出器77は、例えば、図1及び図2に示すように、回転弁の弁体12の回転方向に対応する油圧式揺動ベーンモータ70の回転軸上に取り付けられる。回転弁位置検出器77は、一定の条件下で、回転弁の弁体12の位置情報を制御装置81に送信する。
【0045】
制御装置81は、上述した場合の他に、不図示の遠方操作器から送られた、回転弁の弁体12を所定の角度に開いた開放状態とする旨の開放信号及び回転弁の弁体12を閉鎖状態とする旨の閉鎖信号に基づき、油圧発生装置82と不図示の油切替弁とロック部材50の位置を制御し、回転弁位置検出器77から送られた回転弁の弁体12の位置情報に基づき、油圧発生装置82と不図示の油切替弁とロック部材の円柱状ピン51の位置を制御する。
【0046】
回転弁の弁体が閉鎖状態から所定の角度に開いた開放状態に至るまでの動作の一例を以下に示す。
【0047】
回転弁の弁体を所定の角度に開いた開放状態にする旨の開放信号を受信した制御装置は、油圧発生装置を起動させるための起動信号を送信すると共に、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給するため、油切替弁を切り替える油供給信号を送り、円柱状ピンを位置固定回転板の閉鎖状態ピン用貫通孔から引き抜くため、ロック部材に、貫通孔引抜指令信号を送信する。
【0048】
制御装置から送られた起動信号を受信した油圧発生装置は、静止状態から起動を開始するため、昇圧された油が油切替弁に送り込まれるが、制御装置から送られた油供給信号を受信した油切替弁は、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給する方向に弁を切り替えるため、油圧発生装置から昇圧された油が油圧式揺動ベーンモータに供給され、油圧式揺動ベーンモータの回転が開始する。
【0049】
制御装置から送られた貫通孔引抜指令信号を受信したロック部材は、円柱状ピンを位置固定回転板の閉鎖状態ピン用貫通孔から引き抜く方向に移動させて、位置固定回転板を回転可能な状態にする。油圧式揺動ベーンモータが回転を開始すると、油圧式揺動ベーンモータの出力軸と接続されている回転弁の弁棒は、同方向に回転し、それに伴い、回転弁の弁体は、弁を開放する方向に回転する。
【0050】
回転弁が所定の角度に回転すると、回転弁位置検出器は、所定の角度に回転したことを検出し、回転停止信号を制御装置に送信する。
【0051】
回転弁位置検出器から送られた回転停止信号を受信した制御装置は、油圧発生装置を停止させる停止信号を送信すると共に、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給することを停止する油停止信号を送信し、ロック部材を位置固定回転板の開放状態ピン用貫通孔に押し込むため、ロック部材に、貫通孔押込指令信号を送信する。
【0052】
制御装置から送られた停止信号を受信した油圧発生装置は、起動を停止し、制御装置から送られた油停止信号を受信した油切替弁は、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給しない方向に弁を切り替わるため、油圧発生装置から昇圧された油が油圧式揺動ベーンモータに供給されず、油圧式揺動ベーンモータの回転が停止する。
【0053】
制御装置から送られた貫通孔押込指令信号を受信したロック部材は、円柱状ピンを位置固定回転板の開放状態ピン用貫通孔に押し込む方向に移動させて、位置固定回転板を回転不能な状態とする。
【0054】
位置固定回転板が回転不能な状態となると、回転弁の弁体が所定の角度に開いた開放状態で維持固定されるため、大量の水が回転弁の弁体を通過する際に生じる衝撃・振動が抑制される。油圧式揺動ベーンモータの回転が停止すると、油圧式揺動ベーンモータ内の油の温度上昇は、抑制される。
【0055】
次に、回転弁の弁体が所定の角度に開いた解放状態から閉鎖状態に至るまでの動作の一例を以下に示す。
【0056】
回転弁の弁体を閉鎖状態にする旨の閉鎖信号を受信した制御装置は、油圧発生装置を起動させるための起動信号を送信すると共に、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給するため、油切替弁を切り替える油供給信号を送信し、円柱状ピンを位置固定回転板の開放状態ピン用貫通孔から引き抜くため、ロック部材に、貫通孔引抜指令信号を送信する。
【0057】
制御装置から送られた起動信号を受信した油圧発生装置は、静止状態から起動を開始するため、昇圧された油が油切替弁に送り込まれるが、制御装置から送られた油供給信号を受信した油切替弁は、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給する方向に弁を切り替えるため、油圧発生装置から昇圧された油が油圧式揺動ベーンモータに供給され、油圧式揺動ベーンモータが上述した方向とは逆の方向に回転する。
【0058】
制御装置から送られた貫通孔引抜指令信号を受信したロック部材は、円柱状ピンを位置固定回転板の開放状態ピン用貫通孔から引き抜く方向に移動させて、位置固定回転板を回転可能な状態にする。油圧式揺動ベーンモータが回転を開始すると、油圧式揺動ベーンモータの出力軸と接続されている回転弁の弁棒は、同方向に回転し、それに伴い、回転弁の弁体は、弁を閉鎖する方向に回転する。
【0059】
回転弁の弁体が閉鎖状態になると、回転弁位置検出器は、回転弁の弁体が閉鎖状態になったことを検出し、回転停止信号を制御装置に送信する。
【0060】
回転弁位置検出器から送られた回転停止信号を受信した制御装置は、円柱状ピンを位置固定回転板の閉鎖状態ピン用貫通孔に押し込む旨の指示をするため、ロック部材に、貫通孔押込指令信号を送信する。
【0061】
制御装置から送られた貫通孔押込指令信号を受信したロック部材は、円柱状ピンを位置固定回転板の閉鎖状態ピン用貫通孔に押し込む方向に移動させて、位置固定回転板を回転不能な状態とする。
【0062】
位置固定回転板が回転不能な状態となると、制御装置は、油圧発生装置を停止させるための停止信号を送信すると共に、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給することを停止するため、油切替弁を切り替える油停止信号を送信する。
【0063】
制御装置から送られた停止信号を受信した油圧発生装置は、起動を停止し、制御装置から送られた油停止信号を受信した油切替弁は、昇圧された油を油圧式揺動ベーンモータに供給しない方向に弁を切り替えるため、油圧発生装置から昇圧された油が油圧式揺動ベーンモータに供給されず、油圧式揺動ベーンモータが回転を停止する。
【0064】
位置固定回転板が回転不能な状態となると、回転弁が閉鎖状態で維持固定されるため、大量の水が回転弁の弁体に衝突した際に生じる衝撃・振動が抑制される。油圧式揺動ベーンモータの回転が停止すると、油圧式揺動ベーンモータ内の油の温度上昇は抑制される。
【符号の説明】
【0065】
10 回転弁
11 回転弁の弁棒
12 回転弁の弁体
20 回転弁駆動装置
30 下側台座
31 弁棒用貫通孔
32 回転止め用突起
33 ピン用凹部
34 ボルト穴
35 固定支柱用凹部
40 位置固定回転板
41 弁棒用貫通孔
42 キー用貫通孔
43 ピン用貫通孔
44 突出部分
45 角柱部材
50 ロック部材
51 円柱状ピン
51a 円柱状ピンの先端
52 油圧ピストンシリンダ
53 接続部材
54 シリンダ取付板
55 六角支柱
60 上側台座
61 弁棒用貫通孔
62 固定支柱
63 円柱状ピン用貫通孔
64 六角支柱用貫通孔
70 油圧式揺動ベーンモータ
71 筐体
72 出力軸(回転軸)
73 ベーン
74 油供給排出口a
75 油供給排出口b
76 軸接手
77 回転弁位置検出器
81 制御装置
82 油圧発生装置
図1
図2
図3
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図11