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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013087
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】半導体レーザ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/12 20210101AFI20250117BHJP
   H01S 5/227 20060101ALI20250117BHJP
   H01S 5/11 20210101ALI20250117BHJP
   H01S 5/028 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01S5/12
H01S5/227
H01S5/11
H01S5/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146509
(22)【出願日】2023-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2023114263
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515288122
【氏名又は名称】ルーメンタム オペレーションズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Lumentum Operations LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 厚
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AA05
5F173AA47
5F173AA48
5F173AB14
5F173AB16
5F173AB65
5F173AB72
5F173AD17
5F173AF33
5F173AF96
5F173AL03
5F173AR14
5F173AR33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高光出力特性と横高次モードの発生の低減を両立した半導体レーザの提供
【解決手段】基板と、前記基板上に形成された活性層と、前記活性層の上に形成されたクラッド層と、第1屈折率領域と第2屈折率領域を含む回折格子層と、を備え、前記クラッド層の一部はメサ構造を形成し、前記メサ構造が第1幅を持つ第1領域10と、前記第1幅より広い第2幅を持つ第2領域20を含み、前記第1領域は、ブラッグ波長の光を反射する前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が同じ周期で交互に配置された回折格子領域を備え、前記第2領域は、前記ブラッグ波長の光を反射する前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が交互に配置された回折格子領域と、前記ブラッグ波長の光を透過する非回折格子領域を備え、前記第1領域の回折格子領域と前記第2領域の回折格子領域は、共振器を構成し、前記第1領域の規格化結合係数は、前記第2領域の規格化結合係数より大きい。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上のメサ構造内に形成された活性層と、
前記メサ構造内の前記活性層の上に形成されたクラッド層と、
前記クラッド層の中に形成され、複数の第1屈折率領域及び複数の第2屈折率領域を含む回折格子層と、
前記メサ構造の延伸する方向の両端面に設けられた低反射端面コーティング膜と、
を備え、
前記メサ構造は、平面視で、第1幅を持つ第1領域と、前記第1幅より広い第2幅を持つ第2領域を含み、
前記第1領域は、ブラッグ波長の光を反射させるための前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が交互に配置された第1回折格子領域を備え、
前記第2領域は、前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が交互に配置された第2回折格子領域と、前記ブラッグ波長の光を透過する非回折格子領域を備え、
前記第1回折格子領域と前記第2回折格子領域は、共振器を構成し、
前記第1領域の規格化結合係数は、前記第2領域の規格化結合係数より大きい、半導体レーザ。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1幅は、前記ブラッグ波長の光に対して、カットオフ幅以下である、半導体レーザ。
【請求項3】
請求項2に記載の半導体レーザであって、
前記第2幅は、前記ブラッグ波長の光に対して、カットオフ幅以上である、半導体レーザ。
【請求項4】
請求項2または3に記載の半導体レーザであって、
前記第2幅は、前記第1幅の1.2倍以上である、半導体レーザ。
【請求項5】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1幅は、前記ブラッグ波長の1.5倍以下である、半導体レーザ。
【請求項6】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1領域の規格化結合係数は、前記半導体レーザ全体の規格化結合係数の60%以上である、半導体レーザ。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1領域の規格化結合係数は、前記半導体レーザ全体の規格化結合係数の80%以下である、半導体レーザ。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1回折格子領域の前記メサ構造が延伸する方向の長さは、前記回折格子層層全体の長さの、40%以下である、半導体レーザ。
【請求項9】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第2回折格子領域および前記非回折格子領域は、複数ある、半導体レーザ。
【請求項10】
請求項9に記載の半導体レーザであって、
前記複数の第2回折格子領域および前記複数の非回折格子領域の前記メサ構造が延伸する方向の長さは、各々異なる、半導体レーザ。
【請求項11】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第2回折格子領域および前記非回折格子領域は、それぞれ1つである、半導体レーザ。
【請求項12】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記メサ構造は、前記第1領域と前記第2との間に第3領域をさらに備え、
前記第3領域のメサ幅は前記第1幅から前記第2幅に変化する、半導体レーザ。
【請求項13】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
スポットサイズ変換部をさらに備え、
前記スポットサイズ変換部は、前記第2領域に接し、
前記スポットサイズ変換部は、前記回折格子領域を含まず、
前記スポットサイズ変換部の前記メサ構造の幅は、前記第2幅より徐々に小さくなる、半導体レーザ。
【請求項14】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1領域は、前記第2領域側に非回折格子領域を含む、半導体レーザ。
【請求項15】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記活性層に電圧を印加するための電極、をさらに備え、
前記電極は、前記第1領域と前記第2領域に跨って一体的に配置される、半導体レーザ。
【請求項16】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記第1領域は、前記第1回折格子領域の前記第2領域側の先端に、λ/4位相シフト部を含む、半導体レーザ。
【請求項17】
請求項1に記載の半導体レーザであって、
前記活性層に電流を注入するためのスルーホールを備える、半導体レーザ。
【請求項18】
請求項17に記載の半導体レーザであって、
前記スルーホールは、前記第1領域および前記第2領域に跨って配置される、半導体レーザ。
【請求項19】
請求項17に記載の半導体レーザであって、
前記スルーホールは、前記第1領域において、離散的に配置される、半導体レーザ。
【請求項20】
請求項17に記載の半導体レーザであって、
前記スルーホールは、前記第1領域において、平面視で、前記第1領域全体の20%以上50%以下の領域に配置される、半導体レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光源として半導体レーザが広く使われている。半導体レーザの一つに、分布帰還型半導体レーザ(DFBレーザ)が知られている。DFBレーザは回折格子を備えている。また特性向上のために、回折格子に位相シフト部を備えた構造が知られている。半導体レーザの両端面に無反射膜(低反射膜)を形成し、回折格子にλ/4シフト部を配置することで安定した単一波長動作が得られる(特許文献1)。特許文献1では、位相シフト部の前後でブラッグ反射の光に対する反射率を変更することで、一方の端面からの出力を大きくすることが開示されている。
【0003】
また結合係数κを調整するために、一定周期で回折格子を除去した構造が知られている
(特許文献2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-47685
【特許文献2】特開2004-128372
【特許文献3】特開2004-259924
【特許文献4】特開2011-119434
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動のために注入された電流を一部に集中させることを目的として、メサ構造を備えた半導体レーザが知られている。メサ構造が延伸する方向に垂直な方向の幅(以下、メサ幅)を狭くすることで電流が注入される領域を限定することができる。光出力を増加させるためにはメサ幅を広げることが有効である。メサ幅が広い場合は、実効的に駆動される活性層の幅が広くなり、高光出力が得られる。
【0006】
メサ幅は導波路を伝搬する光のモードを決定する役割も担う。メサ幅が狭い場合は、横モードは基本モードのみが伝搬するが、メサ幅が広くなると横高次モードも伝搬する。横高次モードを含む光出力は、光通信用の光源としては望ましくない。以上のように光出力を増加させるためにメサ幅を広げた場合、横高次モードの発生が問題となる。横高次モードの発生は、電流と光出力特性の連続性の低下、いわゆるキンクの発生へとつながり、通信用の光源としては好ましくない。
【0007】
本発明は、高光出力特性と横高次モードの発生の低減を両立した半導体レーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の第1態様による半導体レーザは、基板と、前記基板上のメサ構造内に形成された活性層と、前記メサ構造内の前記活性層の上に形成されたクラッド層と、前記クラッド層の中に形成され、複数の第1屈折率領域及び複数の第2屈折率領域を含む回折格子層と、前記メサ構造の延伸する方向の両端面に設けられた低反射端面コーティング膜と、を備え、前記メサ構造は、平面視で、第1幅を持つ第1領域と、前記第1幅より広い第2幅を持つ第2領域を含み、前記第1領域は、ブラッグ波長の光を反射させるための前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が同じ周期で交互に配置された第1回折格子領域を備え、前記第2領域は、前記第1屈折率領域と前記第2屈折率領域が同じ周期で交互に配置された第2回折格子領域と、前記ブラッグ波長の光を透過する非回折格子領域を備え、前記第1回折格子領域と前記第2回折格子領域は、共振器を構成し、前記第1領域の規格化結合係数は、前記第2領域の規格化結合係数より大きい、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施形態にかかる半導体レーザの上面図である。
図2図1に示す半導体レーザのII-II線に沿う概略断面図である。
図3図1に示す半導体レーザのIII-III線に沿う概略断面図である。
図4図1に示す半導体レーザのIV-IV線に沿う概略断面図である。
図5】第1の実施形態にかかる半導体レーザの上面図である。
図6】第1の実施形態の変形例に係る半導体レーザの上面図である。
図7】第2の実施形態にかかる半導体レーザの上面図である。
図8図7に示す半導体レーザのVIII-VIII線に沿う概略断面図である。
図9】第3の実施形態にかかる半導体レーザの上面図である。
図10】第4の実施形態にかかる半導体レーザの上面図である。
図11】第4の実施形態にかかる半導体レーザの概略断面図である。
図12】第4の実施形態の変形例に係る半導体レーザの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面に基づき、本発明の実施形態を具体的かつ詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、以下に示す図は、あくまで、実施形態の実施例を説明するものであって、図の大きさと本実施例記載の縮尺は必ずしも一致するものではない。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態にかかる半導体レーザ1の上面図である。図2は、図1のII-II線に沿う概略断面図を表す。図3は、図1のIII-III線に沿う概略断面図を表す。図4は、図1のIV-IV線に沿う概略断面図を表す。図5は、半導体レーザ1の上面図であって、内部に含まれる各領域の位置について説明するための図である。半導体レーザ1は、裏面に第1電極2、表面に第2電極3を備える。第1電極2及び第2電極3は金属層である。第1電極2と第2電極3との間に電流を注入することで、前方端面40(図1で左側の端面)から光が出射される。後述するメサ構造の延伸する方向の両端面、すなわち、前方端面40および後方端面50(図1で右側の端面)には低反射端面コーティング膜4が形成されている。低反射端面コーティング膜4の反射率は、1%以下である。
【0012】
半導体レーザ1は、第1導電型の基板5の上に第1導電型の光閉じ込め層(SCH層)6、活性層7、第2導電型の光閉じ込め層8(SCH層)、第2導電型のクラッド層9、第2導電型のコンタクト層13の順で半導体層が積層されている。また、第2導電型のクラッド層9の中には回折格子層11が形成されている。半導体レーザ1は、DFBレーザである。活性層7は、例えば多重量子井戸層で形成されている。また多重量子井戸層は、真性半導体もしくはn型半導体であってよい。なお、ここでは第1導電型はn型、第2導電型はp型であるが、逆であっても構わない。また、上記各層を含む半導体層は、メサ構造15を有している。例えば、活性層7は、基板5上のメサ構造内に形成されており、クラッド層9は、メサ構造15内の活性層7の上に形成されている。メサ構造15は、光を取り出す方向(第1方向D1)に延伸している。なおメサ構造15の下部は基板5の一部である。メサ構造15の両側は半絶縁性の半導体埋め込み層17で覆われている。なお、埋め込み層17はp型、n型の半導体層の積層体であっても構わない。図1の点線は、メサ構造15の上部と埋め込み層17の境界の位置を示している。
【0013】
半導体レーザ1は、表面に絶縁膜14を備える。絶縁膜14は一部を除いて半導体レーザ1の表面を覆っている。絶縁膜14は、メサ構造15の上部に相当する領域に開口(スルーホール)18を含む。第2電極3と第2導電型のコンタクト層13はスルーホール18を介して接続され、メサ構造15を有する半導体層に電気信号が印加される(電流が注入される)。ここでスルーホール18は第1方向D1に沿って設けられている。また第1方向D1に垂直な第2方向D2において、スルーホール18の幅はメサ構造15の幅より広い。ただし、両者は同じ幅であっても構わない。
【0014】
回折格子層11は、複数の第1屈折率領域及び複数の第2屈折率領域を含む。具体的には、回折格子層11はフローティング型であり、断面視で、第2導電型クラッド層9の屈折率とは異なる第1屈折率の領域と、第2導電型のクラッド層9が配置された第2屈折率の領域と、で構成されている。すなわち、回折格子層11は、第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bが交互に配置された構造である。ここでは第1屈折率は第2屈折率より高い。ただし、屈折率の関係は逆であっても構わない。
【0015】
メサ構造15は、第1方向D1に垂直な第2方向D2において、第1方向D1が延伸する方向で異なる幅の領域を有する。以降、メサ構造15の第2方向D2方向の幅をメサ幅と呼ぶ。半導体レーザ1はメサ幅W1である第1領域10と、メサ幅がW2である第2領域20を含む。ここでW2はW1より広い。すなわち、メサ構造は、平面視で、第1幅を持つ第1領域と、第1幅より広い第2幅を持つ第2領域を含む。また、メサ構造15は、第1領域10と第2領域20の間であって、メサ幅がW1からW2に徐々に変化する第3領域30を含む。第2電極3は、第1領域10、第2領域20、そして第3領域30に跨って一体的に配置されている。なお、それぞれの領域に、第2電極3が個別に配置されても構わないが、この場合、個別に配置された各電極は同一の電源に接続されることが望ましい。
【0016】
図5は半導体レーザ1の上面図であって、回折格子層11に含まれる各領域の位置を説明するための図である。説明のために一部の要素を図示していない。回折格子層11のうち、第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bが同じ周期で交互に配置された領域を回折格子領域12Aと呼称する。一方、回折格子層11のうち、第1屈折率領域11Aのみ、もしくは第2屈折率領域11Bのみが配置された領域を非回折格子領域12Bと呼称する。本実施形態では非回折格子領域12Bは第2屈折率領域11Bで構成されている。第1領域10における回折格子層11は、回折格子領域12Aが一つ配置されている。なお、本実施形態の回折格子領域12Aは、第1方向D1に第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bが同じ周期で交互に配置された均一回折格子構造を有する。すなわち、第1領域10は、ブラッグ波長の光を反射させるための第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bが同じ周期で交互に配置された回折格子領域を備える。本回折格子のブラッグ波長は1.3μm帯に対応させている。なお、1.55μm帯など他のブラッグ波長であっても構わない。第1領域10は、第3領域30との接続箇所に近い方に非回折格子領域12Bを有する。なお、第1領域10が非回折格子領域12Bを含まず、第1領域10の全領域に回折格子領域12Aが配置されていても構わない。
【0017】
第2領域20は、回折格子領域12Aと非回折格子領域12Bが交互に配置されている。ここで、回折格子領域12Aおよび非回折格子領域12Bは、第2領域20の中に第1領域10から伝達されるブラッグ波長の光を反射するように配置される。特定の波長(ブラッグ波長)の光を強く反射させるためには、第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bの周期(回折格子周期)を調整する必要がある。また回折格子周期とブラッグ波長の関係は実効屈折率に依存する。本実施形態では、第1領域10と比較して第2領域20はメサ幅が広いために、実効屈折率が大きい。しかし、同時に第2領域20全体で見た時に回折格子構造がない領域(非回折格子領域12Bの領域)が多いために、その分だけ実効屈折率は小さくなる。トータルとしてメサ幅が広くなることによる実効屈折率の増加分と、回折格子構造が配置されていないことによる実効屈折率の低減分の両者によって、第2領域20全体の平均的な実効屈折率が決定される。この第1領域10と第2領域20のそれぞれの平均実効屈折率の違いを考慮して、第2領域20に配置される回折格子領域12Aと非回折格子領域12Bは決定される。ここで、第2領域20の回折格子領域12Aの回折格子周期は、第1領域10の回折格子領域12Aの回折格子周期と異なっていても構わないし、同じであっても構わない。同一の回折格子周期とする場合は、複数の回折格子領域12Aと複数の非回折格子領域12Bのそれぞれの第1方向D1の長さや、それぞれの間隔を調整して、第2領域20全体の平均的な回折格子周期が所望のブラッグ波長の光を反射するように設定すればよい。以下、特に区別する場合には、第1領域10に含まれる回折格子領域12Aを第1回折格子領域と呼称し、第2領域20に含まれる回折格子領域12Aを第2回折格子領域と呼称する。なお、第2領域20の回折格子領域12Aと非回折格子領域12Bの各々の第1方向D1の長さは、各々異なっていてもよい。例えば、所望のブラッグ波長で反射するような条件の下で、各々の長さはブラッグ波長に対して高次の回折後散乱を抑制するように異なっていることが好ましい。
【0018】
高い波長単一性を得るためには、第1領域10と第2領域20で共振器を構成することが望ましい。第1領域10と第2領域20で共振器を構成するためには、互いの回折格子領域の位相がπシフトしている必要がある。ここで回折格子領域の位相とは、回折格子構造の位相である。例えば第1領域10と第2領域20の実効屈折率が同じである場合、単純に第1回折格子領域(第1領域10の回折格子領域12A)の位相に対して、第2回折格子領域(第2領域20の回折格子領域12A)の位相をπシフトさせて配置すればよい。しかし、本実施形態では第1領域10と第2領域20の実効屈折率が異なる。そのため、第2回折格子領域の位相は、第1回折格子領域の位相をπシフトした位相と異なる必要がある。本実施形態では、第1回折格子領域の位相と第2回折格子領域の位相はπシフトではないが、第1領域10と第2領域20で共振器を構成している。さらに、本実施形態では両端面に低反射端面コーティング膜4が形成されているために、非常に高い波長単一性を有する。なお、第1領域10と第2領域20には第2電極3が跨って配置されており、注入される電流量による実効屈折率の変化具合は、略同一であり、広い動作条件において高い波長単一性を実現する。
【0019】
本実施形態においては、第1領域10の規格化結合係数κ1L1は、第2領域20の規格化結合係数κ2L2より大きい。ここで第1領域10の結合係数κ1と第2領域20の結合係数κ2は、メサ幅の違いなどにより同一でない場合がある。しかし、その差は小さく、第1領域10と第2領域20の規格化結合係数の違いの要因は、それぞれに含まれる回折格子領域12Aの第1方向D1における長さが支配的である。ここで、第1領域10の長さL1は、第1回折格子領域の長さである。すなわち、第1領域10の長さL1は、メサ幅がW1である領域の長さではなく、回折格子領域12Aが配置されている領域の長さである。第2領域20の長さL2は、複数の第2回折格子領域のトータルの長さである。非回折格子領域12Bは、ブラッグ波長の光が反射しないため、結合係数κは事実上0と見なすことができる。そのため規格化結合係数κLに寄与する長さL2は、複数の第2回折格子領域が配置されている領域のトータルの長さとなる。第1領域10のκ1L1が第2領域20のκ2L2より大きいために、前方端面40から出力される光出力強度は、後方端面50から出力される光出力強度より大きくなる。第1領域10と第2領域20の規格化結合係数が同じ値の場合は、前方端面40と後方端面50から出力される光出力強度は同一となる。本発明では、複数の第2回折格子領域が配置される領域のトータルの長さを第1回折格子領域が配置される領域の長さより短くすることで、前方端面40から出力される光の強度を大きくしている。なお、ここで前方および後方とは便宜上の呼び方に過ぎず、光出力が大きい方の端面を前方端面と呼称しているに過ぎない。一般的な光通信においては、光強度は大きい方が好ましく、前方端面からの光が通信に用いられる。また複数の第2回折格子領域の第1方向D1のトータルの長さは、複数の非回折格子12Bのトータルの長さより短い。本構造により、第2領域20の結合係数κ2を小さくすることによる前方からの光出力の増大効果を高めることができる。
【0020】
第3領域30は、回折格子領域12Aを含まない。ただし、第1領域10との接続箇所付近に第1領域10に配置された回折格子領域12Aと同じ回折格子構造が含まれていてもよい。同様に第2領域20との接続箇所付近に第2領域20に配置された回折格子領域12Aと同じ回折格子構造が含まれていてもよい。なお、第3領域30の全体に回折格子領域12Aを配置する場合は、メサ幅の変化に伴う実効屈折率の変化に応じて第1屈折率領域11Aと第2屈折率領域11Bのそれぞれの幅や両者の間隔を調整することが望ましい。
【0021】
第1領域10のメサ幅W1は、ブラッグ波長の光に対して、横高次モードが発生しない幅以下に設定される。換言するとW1は、カットオフ幅以下に設定される。例えば、W1は、2μm以下である。また駆動条件により横高次モードの発生条件が変わることもある。安定した横高次モードの抑制効果を得るためには、W1はブラッグ波長の1.5倍以下が好ましい。例えばブラッグ波長が1.3μmであれば、W1は1.95μm以下が好ましい。
【0022】
第2領域20のメサ幅W2はW1より広い。メサ幅W2は、W1の1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上が好ましい。またW2は、カットオフ幅以上であっても構わない。換言すると、第2領域20は、ブラッグ波長の光の横高次モードが導波できる幅であっても構わない。例えば、W2は、3μm以上である。メサ幅が広いほど生成される光の総量が多くなるため、半導体レーザ1の光出力強度を増加させることができる。なお、第3領域30のメサ幅は、第1領域10と第2領域20との間が滑らかに接続されるように、第1領域10から第2領域20へ向かって徐々に広くなることが望ましい。すなわち、第3領域30のメサ構造は、上面から見て第1方向D1に対して傾斜したテーパ形状を有することが好ましいが、これに限定はされない。例えば、第3領域30のメサ構造と埋め込み層17との境界は、上面から見て直線的に変化しても曲線を含んで変化しても構わない。
【0023】
本発明に係る半導体レーザ1においては、第2領域20のメサ幅W2がカットオフ幅以上である場合であっても、端面から出力される光は横高次モードを含まず、横高次モードを原因とするキンクが発生しない優れた光出力特性を有する。これは第1領域10のメサ幅W1がカットオフ幅以下であることに起因する。半導体レーザ1の内部で共振するレーザ光は、第1領域10、第2領域20及び第3領域30を含む全体の構造で決定される。仮に第2領域20で横高次モードの光が発生したとしても、その光は、第1領域10では導波できないため第1領域10で反射されることはない。そのため、その光は、半導体レーザ1内で強い強度として存在できない。一方、第1領域10を導波できる横基本モードの光は、第2領域20でも導波できる。そのため、横基本モードの光は、第1領域10と第2領域20の間で反射されて強め合うことで、非常に強い光(いわゆるレーザ光)となって端面より出力される。ここで、本効果を十分に得るためには横高次モードの光が第1領域10で発生しないように十分に抑える必要がある。そのためには、第1領域10の規格化結合係数κ1L1は、第2領域20の規格化結合係数κ2L2より大きい必要がある。例えば、半導体レーザ1の全体の規格化結合係数に対して、κ1L1は60%以上(すなわちκ2L2は40%以下)であることが好ましい。さらにL1を長くすることでκ1L1を大きくすると、光出力を増加させる第2領域20の素子全体に対する比率が小さくなる。この場合、高出力化の効果が十分に得られなくなってしまうため、κ1L1は80%以下が好ましい。より高出力特性が必要な場合は、κ1L1は70%以下が好ましい。
【0024】
ここで半導体レーザ1の共振器長は、第1領域10、第2領域20、そして第3領域30全体の第1方向D1の合計の長さである。本実施形態では、前方端面40から出力される光出力強度を後方端面50から出力される光出力強度より大きくすることも目的である。そのためには、第1領域10(より厳密には第1回折格子領域)は、後方側にある方が好ましい。例えば、第1回折格子領域は、共振器の後方端部(ここでは後方端面50)から共振器長の40%以下までの領域に配置されていることが好ましい。すなわち、第1回折格子領域のメサ構造が延伸する方向の長さは、回折格子層層全体の長さの、40%以下である、ことが好ましい。さらに好ましくは30%以下が良い。換言すると、第1回折格子領域の第3領域30側の端部Gtは、共振器長の後方側から40%以下、もしくは30%以下の位置に配置されることが好ましい。Gtの位置は小さい方が好ましいが、小さすぎるとκ1L1が小さくなりすぎる。例えばκ1L1が1より小さくなると、発振の閾値が大きくなり、消費電力の観点で好ましくない。そのためκ1L1は1以上となる、より好ましくは1.5以上となるようにκ1L1を設定する必要がある。
【0025】
以上の構成により、半導体レーザ1は、光路長を考慮した回折格子位相がπシフトしている第1領域10と第2領域20を有し、かつ両端面に低反射端面コーティング膜4が形成されていることで、高い波長単一性を有する。さらに、第1領域10の規格化結合係数κ1L1が第2領域20の規格化結合係数κ2L2より大きいために、前方端面40からの光出力強度を大きくすることができる。さらに、第2領域20のメサ幅W2が第1領域10のメサ幅W1より広いために、第2領域20と第1領域10のメサ幅が同じ構造のものと比較して、本実施形態に係る半導体レーザ1は高出力特性を備える。そして、第1領域10のメサ幅W1がカットオフ幅以下であるために、横高次モードが発生しない、つまりキンクが発生しない優れた光出力特性を実現できる。
【0026】
[変形例]
図6は、第1の実施形態の変形例にかかる半導体レーザ1の上面図である。図6は、図5に対応する図である。変形例にかかる半導体レーザ1の第2領域20には、一つの回折格子領域12Aと非回折格子領域12Bが含まれる。本変形例においては、第2領域20の規格化結合係数を決定する長さは、一つの回折格子領域12Aの第1方向D1の長さである。第1の実施形態同様に、第2領域20の規格化結合係数κ2L2は、第1領域10の規格化結合係数κ1L1より小さい。以上のように、第2領域20において必ずしも複数の回折格子領域12Aと非回折格子領域12Bを配置する必要はない。ただし第1回折格子領域の先端Gtから第2回折格子領域の第1領域10側の先端Gt2までの長さは、第1回折格子領域の長さの半分以下であることが好ましい。GtからGt2の間の領域は非回折格子領域12Bであり、この非回折格子領域12Bの長さが第1領域10の長さの半分より大きい場合は、所望のブラッグ波長とは異なる波長の発振が生じる場合がある。なお、第1の実施形態のように複数の非回折格子領域12Bを含む場合は、第3領域30を含むすべての非回折格子領域12Bの長さが、それぞれ第1回折格子領域の長さの半分以下であればよく、複数の非回折格子領域12Bの合計の長さが第1回折格子領域より長くても構わない。
【0027】
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態にかかる半導体レーザ201の上面図である。図8は、図7のVIII-VIII線に沿う概略断面図を表す。第2の実施形態は、半導体レーザ201が第2領域20と前方端面40との間にスポットサイズ変換部60を備える点で第1の実施形態と異なる。
【0028】
スポットサイズ変換部60は、基板5の上に、第1導電型のSCH層6,活性層7,第2導電型のSCH層8,そして第2導電型のクラッド層9の順で積層された半導体層を有する。第2導電型のクラッド層9の上には絶縁膜14が配置される。なお、クラッド層9と絶縁膜14の間にコンタクト層13が含まれていてもよい。スポットサイズ変換部60には回折格子領域12Aは含まれない。回折格子層11と同じ高さの領域には、第2導電型のクラッド層9、つまり第2屈折率領域11Bが配置される。スポットサイズ変換部60もメサ構造215の一部である。スポットサイズ変換部60と第2領域20の境界におけるメサ幅はW2であり、スポットサイズ変換部60のメサ幅は、前方端面40に向かってW2より徐々に細くなる。最も狭い箇所は前方端面40と接する箇所である。スポットサイズ変換部60の最も前方端面40側のメサ幅は、所望の光出力形状が得られるように設定される。当該メサ幅は、例えばW1より小さい。また、第2電極203の一部がスポットサイズ変換部60まで至っているが、これに限定はされず、第2電極203はスポットサイズ変換部60の全体に配置されていても構わない。またスポットサイズ変換部60にコンタクト層13および第2電極203が配置されていても構わない。
【0029】
本実施形態においても、第1領域10および第2領域20の構造、特に回折格子層11の構造は第1の実施形態と同じであり、高出力、高波長単一性、そしてキンクフリーの特性を実現する。
【0030】
[第3の実施形態]
図9は、第3の実施形態にかかる半導体レーザ301の上面図である。スルーホール318の形状以外は、第1の実施形態の半導体レーザ1と同じ構造である。図9では説明のために、メサ構造315の位置を破線、スルーホール318の位置を二点鎖線で示している。また第2電極3は図示していない。
【0031】
スルーホール318は、絶縁膜314に設けられた開口である。スルーホール318は第1領域310において、メサ構造315の上面の一部には配置されていない。換言すると、スルーホール318は、第1領域310において、離散的に配置される。すなわち、第1領域310においては、メサ構造315の上面の一部には絶縁膜314が配置されている。第2領域320および第3領域330においては、スルーホール318は全体に設けられている。なお第2電極3はスルーホール318全体を覆っている。
【0032】
第1の実施形態で説明したように、第1領域310の規格化結合係数κ1L1は第2領域320の規格化結合係数κ2L2より大きい。第1領域310の第1方向D1と第3領域330との境は、半導体レーザ301の中央部より後方側(図9の右側)に配置されている。そのため、第1領域310の光子密度は第2領域320の光子密度よりも小さくなる。誘導放出によるキャリアの消費は光子密度が大きいほど大きくなるため、第1領域310と第2領域320の注入電流密度が等しい場合は、第1領域310のキャリア密度は第2領域320のキャリア密度より大きくなる。キャリア密度の増大は、半導体レーザの特性、例えば相対雑音強度特性を劣化させる要因となる。キャリア密度は、注入される電流量に依存する。そこで、本実施形態では、第1領域310において、電流が注入される領域を制限することでキャリア密度の増大を低減する。電流が注入される領域を制限するために、第1領域310のスルーホール318は、メサ構造315の上面全体ではなく、一部に配置されない構造を備える。換言すると第1領域310のメサ構造315の上面は、第1方向D1に沿って開口部(スルーホール318)と非開口部(絶縁膜314)が交互に配置されている。非開口部(絶縁膜314)が配置されている領域には電流は注入されないため、第1領域310全体のキャリア密度を低減することができる。
【0033】
第1領域310全体に対する開口部が設けられた割合は、60%以下が好ましい。より好ましくは、スルーホール318は、第1領域310において、平面視で、第1領域310全体の20%以上50%以下の領域に配置されることが望ましい。
【0034】
[第4の実施形態]
図10は、第4の実施形態にかかる半導体レーザ401の上面図である。図10は、第1の実施形態の図5に相当し、説明のために回折格子層511に含まれる各領域の位置を表示している。図11は、第1の実施形態の図2に相当し、メサ構造415が延伸する方向の概略断面図である。第1の実施形態との違いは、第1領域410に位相シフト部470が含まれている点である。図11に示すように、位相シフト部470は、2個の第1屈折率領域11Aが連続で配置された構造(すなわち、他の第1屈折率領域11Aの2倍の長さ)を有するλ/4位相シフト部である。換言すると、位相シフト部470の前後で回折格子構造の位相はπシフトしている。なお、位相シフト部470は、2個の第2屈折率領域11Bが連続で配置された構造であってもよい。ここで第1領域410内であって、位相シフト部470より第2領域420側に配置される回折格子構造の領域を位相シフト回折格子領域12Cと呼称する。第1領域410は、均一回折格子構造である一つの回折格子領域12A、位相シフト部470、そして位相シフト回折格子領域12Cを含む。なお、図11には位相シフト回折格子領域12Cと第3領域430との間に非回折格子領域12Bが含まれるが、この非回折格子領域12Bは無くてもよい。第1領域410の回折格子領域12Aと位相シフト回折格子領域12Cは、位相シフト部470を挟んで共振器構造を形成しているといえる。
【0035】
第2領域420の回折格子領域12Aの位相は、位相シフト回折格子領域12Cと同じ位相である。ただし、メサ構造415の幅の違いによる実効屈折率の差に応じた光路長の違いを加味して微調整している。換言すると、第1の実施形態同様に第1領域410の回折格子領域12Aと第2領域420で共振器を構成している。
【0036】
本実施形態において、第1領域410の規格化結合係数κ1L1を決定する回折格子構造の長さL1は、第1回折格子領域(第1領域410の回折格子領域12A)の長さである。ここで、回折格子領域12Aは、後方端面50から位相シフト部470までの間である。一方、第2領域420の規格化結合係数κ2L2を決定する回折格子構造の長さL2は、複数の第2回折格子領域(第2領域420に含まれる回折格子領域12A)の合計の長さである。本実施形態おいても、κ1L1はκ2L2よりも大きい。また第1領域410のメサ構造415の幅W1は、第2領域420のメサ構造415の幅W2の幅より狭い。なお、位相シフト回折格子領域12C部分の規格化結合係数も、前方端面40から出力される光の強度に影響を与える。そのため、位相シフト回折格子領域12Cの規格化結合係数と第2領域420の規格化結合係数κ2L2の合計が、第1領域410の規格化結合係数κ1L1より小さい必要がある。例えば、位相シフト回折格子領域12Cの第1方向D1の長さは、第1領域410の回折格子領域12Aの長さの1/5以下が望ましい。
【0037】
[変形例]
図12は第5の実施形態の変形例に係る半導体レーザ501の上面図である。本変形例では位相シフト部470が第3領域430に配置されている。本変形例のように位相シフト部470は必ずしも第1領域410に配置される必要はない。ここで前方端面40から出力される光強度を高めるためには、位相シフト部470を境に後方側(図12の右側)の規格化結合係数が、前方側の規格化結合係数より大きい必要がある。後方側の規格化結合係数は、位相シフト部470より後方端面50側に配置される回折格子領域の長さにより決定される。具体的には第1回折格子領域(第1領域410の回折格子領域12A)の長さL1(ここでは第1領域の長さと同じ)と、第3領域430に配置される回折格子領域のうち位相シフト部470より第1領域410側の領域の長さL3の合計できまる。一方、前方側の規格化結合係数を決める回折格子領域の長さは、位相シフト回折格子領域12Cの長さと、第2領域420の複数の回折格子領域12Aの合計の長さである。しかし、第3領域430に配置される回折格子領域の長さL3は、第1領域410および第2領域420に配置される回折格子領域と比較すると短い。例えば、L3は、第1回折格子領域の長さ(L1)と比較して1/2以下である。そのため、本実施形態においても第1領域410の規格化結合係数κ1L1が第2領域420の規格化結合係数κ2L2より大きくすれば、前方端面40からの光出力強度を大きくすることができる。
【0038】
以上のように、本発明はメサ幅の狭い第1領域とメサ幅の広い第2領域が共振器を構成することで、高出力特性と高い単一波長性を実現できる。さらに第1領域のメサ幅W1をカットオフ幅以下とすることで、横高次モードの発生を抑制しつつ高出力特性を得ることができる。ここで、第1領域と第2領域が共振器を構成するとは、光路長を加味した回折格子位相がπシフトした関係にあることを示す。例えば、第1の実施形態においては位相がπシフトする領域は、第1回折格子領域の先端Gtと、第2回折格子領域のうち最も第1領域10に近い側の先端と、の間の領域である。第1領域10を伝達した光は、第2領域20で第1領域10側に反射される。同様に第2領域20を伝達した光は、第1領域10で第2領域20に反射される。このように反射の境となる箇所が位相シフト部となる。そして互いに反射するために共振器を構成しているといえる。また、第4の実施形態に示したように、回折格子層11に第1屈折率領域11Aもしくは第2屈折率領域11Bが連続して配置された位相シフト部470を配置してもよい。
【0039】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態を説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。また埋め込み型の半導体レーザに限定されず、リッジ型の半導体レーザあっても適用できる。半導体レーザは、CW光源であっても直接変調型レーザあっても構わない。また、第1実施形態から第5実施形態では、メサ構造の幅がW1とW2の2種である例を挙げたが、メサ構造の幅は3種以上であってもよい。具体的には、例えば第1実施形態において、第2領域20の前方端面40(図1で左側の端面)側に、W2よりも広い幅W3を有するメサ構造が設けられた第4領域と、該第4領域と第2領域の間に設けられた第5領域と、が設けられてもよい。ここで、第5領域は、第3領域と同様に、メサ幅がW2からW3に徐々に変化する。このような構成であっても、横高次モードの発生を低減しつつ、より高光出力特性を向上することができる。
【0040】
本発明は、メサ構造を有する半導体レーザにおいて、高出力特性と高波長単一性、そして横モードのキンクを低減する。本発明の実施形態は、メサ構造はW1の幅を持つ第1領域と、W1より幅の広いW2の幅を持つ第2領域で構成され、第1領域の第1回折格子領域と第2領域の第2回折格子領域で共振器を構成し、第1領域の規格化結合係数は第2領域の規格化結合係数より大きいことで、これを実現する。第1領域と第2領域の互いの光路長を加味した回折格子の位相は、πシフトしている。第1領域は、ブラッグ波長の光を反射させるための第1屈折率領域と第2屈折率領域が同じ周期で交互に配置された第1回折格子領域を備える。第2領域は、第1屈折率領域と第2屈折率領域が同じ周期で交互に配置された第2回折格子領域と、ブラッグ波長の光を透過する非回折格子領域を備える。非回折格子領域は、第1屈折率領域もしくは第2屈折率領域のみで構成される。第2領域の回折格子領域と非回折格子領域を複数備える。ただし、それぞれ一つずつでも構わない。複数の回折格子領域と複数の非回折格子領域は、それぞれが異なる長さであってもよい。第1領域のメサ構造の幅W1は、ブラッグ波長の光に対してカットオフ幅以下であってよい。またW1はブラッグ波長の1.5倍以下であってもよい。第2領域のメサ構造の幅W2は、W1の1.2倍、より好ましくは1.5倍以上であってよい。第2領域のメサ構造の幅W2は、ブラッグ波長の光に対してカットオフ幅以上であってよい。第1領域の規格化結合係数は、半導体レーザ全体の規格化結合係数の60%以上であってよい。第1領域と第2領域の間にメサ構造の幅がW1からW2に変化する第3領域を配置してもよい。また、第2領域の前方にスポットサイズ変換部を備えてもよい。回折格子層領域は、活性層の上にあっても下にあってもよい。半導体レーザは、メサ構造が半導体で埋め込まれた埋め込み型でもよいし、メサ構造が半導体層で埋め込まれていないリッジ型であってもよい。さらに第1領域のキャリア密度を低減することで特性を向上できる。キャリア密度を低減するために、第1領域のスルーホールの開口割合は60%以下、好ましくは20%以上~50%以下がよい。本発明の半導体レーザは1.3μm帯もしくは1.55μm帯の波長を発振する。だだし、他の波長帯であっても構わない。
【符号の説明】
【0041】
1 半導体レーザ
2 第1電極
3 第2電極
4 低反射端面コーティング膜
5 基板
6 第1導電型の光閉じ込め層
7 活性層
8 第2導電型の光閉じ込め層
9 第2導電型のクラッド層
11 回折格子層
11A 第1屈折率領域
11B 第2屈折率領域
12A 回折格子領域
12B 非回折格子領域
13 第2導電型のコンタクト層
14 絶縁膜
15 メサ構造
17 埋め込み層
18 スルーホール
10 第1領域
20 第2領域
30 第3領域
40 前方端面
50 後方端面
60 スポットサイズ変換部
201 半導体レーザ
203 第2電極
215 メサ構造
220 第1領域
230 第2領域
301 半導体レーザ
314 絶縁膜
315 メサ構造
318 スルーホール
310 第1領域
320 第2領域
330 第3領域
401 半導体レーザ
415 メサ構造
410 第1領域
420 第2領域
430 第3領域
12C 位相シフト回折格子領域
470 位相シフト部
D1 第1方向
D2 第2方向
W1 メサ幅
W2 メサ幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12