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特開2025-13118空間光変調ユニット及び空間光変調装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013118
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】空間光変調ユニット及び空間光変調装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/01 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
G02F1/01 D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220389
(22)【出願日】2023-12-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-18
(31)【優先権主張番号】202310854692.5
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】598098331
【氏名又は名称】ツィンファ ユニバーシティ
(71)【出願人】
【識別番号】500080546
【氏名又は名称】鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HON HAI PRECISION INDUSTRY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】66,Chung Shan Road,Tu-Cheng New Taipei,236(TW)
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲ライ▼ 麗文
(72)【発明者】
【氏名】柳 鵬
(72)【発明者】
【氏名】張 春海
(72)【発明者】
【氏名】周 段亮
(72)【発明者】
【氏名】李 群慶
(72)【発明者】
【氏名】▲ハン▼ 守善
【テーマコード(参考)】
2K102
【Fターム(参考)】
2K102BA05
2K102BB01
2K102BC04
2K102BC10
2K102BD08
2K102DC09
2K102DD10
2K102EA02
2K102EA19
(57)【要約】
【課題】本発明は、空間光変調ユニット及び空間光変調装置を提供する。
【解決手段】空間光変調ユニットは、第一電極、第二電極及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含む。前記第一電極と前記第二電極は、互いに絶縁されて間隔をあけて配置される。前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極と前記第二電極にそれぞれ電気的に接続される。前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造及びパラフィン層を含み、前記パラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造を覆い、且つ前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透する。また、本発明は、空間光変調ユニットを含む空間光変調装置を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間光変調ユニットは、第一電極、第二電極及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含み、
前記第一電極と前記第二電極は、互いに絶縁されて間隔をあけて配置され、
前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極と前記第二電極にそれぞれ電気的に接続され、
前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造及びパラフィン層を含み、前記パラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造を覆い、且つ前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透することを特徴とする空間光変調ユニット。
【請求項2】
前記パラフィン層は、前記超配向カーボンナノチューブ構造に敷設され、少なくとも一部の厚さのパラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透することを特徴とする、請求項1に記載の空間光変調ユニット。
【請求項3】
前記パラフィン層の一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透して、もう一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の表面を覆うことを特徴とする、請求項1に記載の空間光変調ユニット。
【請求項4】
空間光変調装置は、絶縁基板、複数の行電極、複数の列電極、及び複数の空間光変調ユニットを含み、
複数の前記行電極と複数の前記列電極とは、前記絶縁基板の表面上において互いに交差して、互いに絶縁されて設置され、二つの隣接する前記行電極、及び二つの隣接する前記行電極と交叉する二つの隣接する前記列電極ごとに、グリッドが形成され、各空間光変調ユニットが一つの前記グリッドに対応して、
各々の前記空間光変調ユニットは、第一電極、第二電極及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含み、前記第一電極及び前記第二電極は、それぞれ前記行電極及び前記列電極に電気的に接続され、前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極と前記第二電極にそれぞれ電気的に接続され、前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造及びパラフィン層を含み、前記パラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造を覆い、且つ前記パラフィン層の少なくとも部分的に前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透することを特徴とする空間光変調装置。
【請求項5】
前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極及び前記第二電極に搭載され、前記絶縁基板の上方に宙吊りされることを特徴とする、請求項4に記載の空間光変調装置。
【請求項6】
前記パラフィン層の一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の微孔に浸透して、もう一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の表面を覆うことを特徴とする、請求項5に記載の空間光変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間光変調ユニット及び空間光変調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超配向カーボンナノチューブ(Super Aligned Carbon Nanotube)フィルムの著しく小さい単位面積熱容量と高速熱応答特性に基づいて、超配向カーボンナノチューブフィルムは急速に電気的に変調され、加熱され、及びNDIR温室効果ガスモニタリングの赤外線光源とすることができる。また、超配向カーボンナノチューブフィルムは、極薄、導電性、透明性、柔軟性、伸縮性、均一性、高放射率、大面積作製容易性などの優れた特性を有して、これらの優れた特性により、超配向カーボンナノチューブフィルムの光学及び熱的管理などに対する研究の興味が注目される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、超配向カーボンナノチューブフィルムの光アクティブ制御への応用には、まださらなる開発が必要である。典型的な応用は空間光変調である。空間光変調は、フォトニック結晶、液晶、表面プラズマ及び相変化材料に基づいて、実現することができる。超配向カーボンノチューブフィルムは、高速熱応答、超小型HCPUA、大面積の作製と切断が容易という利点があるので、高速制御可能な白熱光源アレイ、高速熱アクチュエータ、高速適応熱偽装などの機能を成功裏に実現することができる。従来技術では、超配向カーボンナノチューブフィルムが空間光変調の分野に応用される例はない。
【0005】
従って、超配向カーボンナノチューブフィルムを利用した空間光変調ユニット及び空間光変調装置を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
空間光変調ユニットは、第一電極、第二電極及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含む。前記第一電極と前記第二電極は、互いに絶縁されて間隔をあけて配置される。前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極と前記第二電極にそれぞれ電気的に接続される。前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造及びパラフィン層を含み、前記パラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造を覆い、且つ前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透する。
【0007】
前記パラフィン層は、前記超配向カーボンナノチューブ構造に敷設され、少なくとも一部の厚さのパラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透する。
【0008】
前記パラフィン層の一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透して、他の一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の表面を覆う。
【0009】
空間光変調装置は、絶縁基板、複数の行電極、複数の列電極、及び複数の空間光変調ユニットを含む。複数の前記行電極と複数の前記列電極とは、前記絶縁基板の表面上において互いに交差して、互いに絶縁されて設置され、二つの隣接する前記行電極、及び二つの隣接する前記行電極と交叉する二つの隣接する前記列電極ごとに、グリッドが形成され、各空間光変調ユニットが一つの前記グリッドに対応する。各々の前記空間光変調ユニットは、第一電極、第二電極及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含み、前記第一電極及び前記第二電極は、それぞれ前記行電極及び前記列電極に電気的に接続され、前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極と前記第二電極にそれぞれ電気的に接続され、前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造及びパラフィン層を含み、前記パラフィン層が前記超配向カーボンナノチューブ構造を覆い、且つ前記パラフィン層が少なくとも部分的に前記超配向カーボンナノチューブ構造に浸透する。
【0010】
前記超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、前記第一電極及び前記第二電極に搭載され、前記絶縁基板の上方に宙吊りされる。
【0011】
前記パラフィン層の一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の微孔に浸透して、一部が前記超配向カーボンナノチューブ構造の表面を覆う。
【発明の効果】
【0012】
従来技術と比べて、本発明から提供される空間光変調ユニット及び空間光変調装置は、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を含む。超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造は、超配向カーボンナノチューブ構造とパラフィン層とを含む。超配向カーボンナノチューブ構造が急速な熱応答を有するので、超配向カーボンナノチューブ構造に電圧を印加することによって、加熱して変調する場合には、超配向カーボンナノチューブ構造を覆うパラフィンの温度も急速に変化し、その結果、パラフィンに急速な相変化が生じる。それによって、超配向カーボンナノチューブ構造が加熱装置の役割を果たす。回路の制御下で、超配向カーボンナノチューブ構造がパラフィンを加熱するにつれて、元の超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造における固化状態のパラフィンが溶け、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造の低い光透過率が高い光透過率に変換される。それによって、透過光強度は、大きな差が生じ、空間光変調が実現される。超配向カーボンナノチューブ構造は、温度を数百ミリ秒オーダーで急速に昇降させることができるので、透過光強度も数百ミリ秒オーダーで素早く応答して回復し、迅速な空間光変調効果を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態から提供される空間光変調装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施形態における超配向カーボンナノチューブフィルム-パラフィン複合構造の構成を示す図である。
図3】単層の超配向カーボンナノチューブフィルムの走査型電子顕微鏡写真である。
図4】超配向カーボンナノチューブ複合構造におけるパラフィン層が溶ける前後の超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造の透明度の比較写真である。
図5】パラフィン層が固化状態にあるときの、異なる表面密度を持つ超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造の光透過率スペクトル線を示す図である。
図6】パラフィン層の表面密度が2.81*10-4g/mmである場合に、電源のオン・オフを繰り返すときの超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造の光透過率を示す図である。
図7】パラフィン層の表面密度が2.81*10-4g/mmである場合に、電源のオン・オフを繰り返すときの超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造の光透過率の差を示す図である。
図8】変調されたパルス電圧信号を印加することによって、シリコン(Si)検出器(作用帯域:350nm~1100nm)で得られた変調加熱される時の透過信号の比較を示す図である。
図9】空間光変調装置の背面から撮影され、アドレス指定可能な回路によって変調された「THU」を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面及び具体的な実施形態を参照して、本発明の技術方案の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0015】
図1及び図2を参照すると、本発明は、絶縁基板202、複数の行電極204、複数の列電極206、及び複数の空間光変調ユニット220を含む空間光変調装置20を、提供する。複数の行電極204と複数の列電極206とは、絶縁基板202上において互いに交差して設置される。複数の行電極204又は複数の列電極206は、絶縁誘電体層216によって分離される。2つの隣接する行電極204及び2つの隣接する列電極206ごとに、グリッド214が形成され、各グリッド214には一つの空間光変調ユニット220が位置決められ、即ち、空間光変調ユニット220とグリッド214とは、1対1に対応する。
【0016】
絶縁基板202は、絶縁性の透明基板又は可視光線帯域で透過率ができるだけ高い基板である。絶縁基板202は、例えば、ガラス基板、樹脂基板、石英基板等の一種又は多種であってもよく、PIなどのフレキシブル基板であってもよい。絶縁基板202の大きさ及び厚さは限定されず、当業者であれば、例えば、空間光変調装置20の所定の大きさなどの実際のニーズに応じて、絶縁基板202のサイズを設計してもよい。本実施形態において、絶縁基板202は、厚さが約0.33mmであり、辺長が約80mmである正方形のソーダライムガラス基板であることが好ましい。
【0017】
複数の行電極204と複数の列電極206とは、互いに交差するように配置され、且つ行電極204と列電極206の交差部には、絶縁誘電体層216が設けられる。絶縁誘電体層216は、行電極204と列電極206とが互いに電気的に絶縁されることを確保することができ、短絡を防止するようになる。複数の行電極204又は列電極206は、等間隔に配置されてもよいし、不等間隔に配置されてもよい。複数の行電極204又は列電極206は、等間隔に配置されることが好ましい。行電極204及び列電極206は、導電性材料又は導電性材料層でコーティングされた絶縁性材料からなる。本実施形態では、複数の行電極204及び複数の列電極206は、導電性銀ペーストで印刷された平面導体であることが好ましく、且つ複数の行電極204の行間隔は3mmであり、複数の列電極206の列間隔は3mmであり、或いは、ニーズに応して間隔の大きさを設定してもよい。レーザーカットされた超配向カーボンナノチューブフィルムの精度が、数十ミクロン以下であるので、その間隔は、スクリーン印刷と超配向カーボンナノチューブフィルムの加工精度によって決められる。行電極204及び列電極206の幅は200μm~1000μmであり、厚さは30μm~100μmである。具体的には、行電極204及び列電極206の幅及び厚さは、この範囲に限定されず、実際のニーズ及び製造プロセスに応じて設定してもよい。本実施形態では、行電極204と列電極206の交差角度は、10度~90度であり、90度であることが好ましい。本実施形態では、スクリーン印刷によって絶縁基板202に導電性ペーストを印刷して、行電極204及び列電極206を製造する。導電性ペーストの成分としては、金属粉末、低融点ガラス粉末及びバインダーを含む。その中には、金属粉末は銀粉末が好ましく、バインダーはテルピネオール又はエチルセルロースが好ましく、金属粉末やバインダーの具体的な物性は、ニーズに応じて調節してもよい。
【0018】
複数の空間光変調ユニット220は、複数のグリッド214にそれぞれ1対1に対応して配置される。空間光変調ユニット220がマトリクス状に配置されて、加熱点アレイを形成することが理解できる。各空間光変調ユニットは、独立した加熱点に対応する。各空間光変調ユニット220は、第一電極210、第二電極224及び超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造208を含む。第一電極210と第二電極224とが対応して、且つ互いに絶縁されて間隔をあけて配置される。各グリッド214における第一電極210と第二電極224との間の距離は、絶縁誘電体層の厚さである。超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造208は、第一電極210と第二電極224との間に配置され、第一電極210と第二電極224にそれぞれ電気的に接続される。スクリーン印刷と超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造アレイの製造手順は、次のとおりである。
【0019】
1)列電極層を印刷する。
2)絶縁誘電体層を印刷する。
3)行電極層を印刷する。
4)第一電極及び第二電極を印刷し、両方とも1つの印刷スクリーンで作製することができる。
5)印刷アレイ全体の幅よりも広い幅を有する単層の超配向カーボンナノチューブフィルムを印刷アレイ全体に敷設する。
6)レーザー切断機を用いて、超配向カーボンナノチューブフィルムを指定されたアブレーションプログラムで切断し、第一電極及び第二電極と接触する部分、及び第一電極と第二電極との間の部分のみを残す。
7)上記の手順が完了した基板全体を、温度がパラフィンの融点を超えるホットプレートに置く。本実施形態において、パラフィンは番号が58であるパラフィンであり、その融点が58℃である。溶けたパラフィンを印刷アレイ全体の四隅に流し込み、パラフィンがアレイに均一に広がった後、ホットプレートの電源を切り、パラフィンが自然に固まるまで待ち、最終的な空間光変調アレイを形成する。
【0020】
上記の手順から、一つのグリッド214において、電極部分、誘電体絶縁部分、及び第一電極210と第二電極224との間に形成された超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造を除いて、他の領域もパラフィンで覆われることが分かる。パラフィンの厚さが電極を十分に覆う厚さより厚い場合に、電極もパラフィンに覆われる。しかしながら、作業エリアは超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造208という箇所だけに制限される。本実施形態では、同じ行の空間光変調ユニット220における第一電極210は、同じ行電極204に電気的に接続され、同じ列の空間光変調ユニット220における第二電極224は、同じ列電極206に電気的に接続される。
【0021】
第一電極210及び第二電極224は、金属層などの導体である。第一電極210は、行電極204の延長部であってもよく、第二電極224は、列電極206の延長部であってもよい。第一電極210と行電極204は一体成型してもよく、第二電極224と列電極206も一体成型してもよい。本実施形態において、第一電極210及び第二電極224は、いずれも面状導体であり、導電性電極であれば、その材料が行電極又は列電極の印刷材料と同じであってもよい。第一電極210は行電極204に直接的に電気的に接続され、第二電極224は列電極206に直接的に電気的に接続される。第一電極210及び第二電極224は、長さが100μm~1mmであり、幅が100μm~1mmであり、厚さが10μm~500μmであるが、ニーズに応して、関連するサイズパラメータはこれらの範囲に限定されない。第二電極224及び第一電極210の長さが100μm~1mmであり、幅が10μm~500μmであり、厚さが10μm~500μmであることが好ましく、ニーズに応して、関連するサイズパラメータはこれらの範囲に限定されない。本実施形態では、第一電極210及び第二電極224は、材料が導電性ペーストであり、スクリーン印刷により絶縁基板202に印刷される。導電性ペーストの組成は、上記の行電極及び列電極に用いられる導電性ペーストの組成と同じである。
【0022】
空間光変調ユニット220において、超配向カーボンナノチューブフィルムを敷設する前に、第一電極210及び第二電極224に接着層を印刷してもよい。接着層は、材料が行電極204のスラリーにおける接着剤であり、超配向カーボンナノチューブフィルムを接着して固定することに用いられ、超配向カーボンナノチューブフィルムを第一電極210及び第二電極224により強固に固定させる。接着層は選択できる構造であり、空間光変調ユニット220も接着層を含まなくてもよいことが理解できる。また、便宜上、第一電極210及び第二電極224と超配向カーボンナノチューブフィルムとの接続に影響を与えない限り、接着層は、電極ペーストから直接的に形成されてもよい。本実施形態で、接着層は、電極を印刷する銀ペーストを使用する。
【0023】
図2を参照すると、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造208は、超配向カーボンナノチューブ構造2082及びパラフィン層2084を含む。パラフィン層2084は、パラフィン材料の薄い層である。パラフィン層2084は超配向カーボンナノチューブ構造2082に浸透して、少なくとも一部の厚さのパラフィン層2084が超配向カーボンナノチューブ構造2082の微孔に浸透する。超配向カーボンナノチューブ構造2082の厚さは、30μm~100μmであり、パラフィン層の厚さは300μm~1mmである。
【0024】
超配向カーボンナノチューブ構造は自立構造である。ここで、「自立構造」とは、支持体材を利用せず、自体の所定の形状を保持でき、超配向カーボンナノチューブ構造を独立して支持することができるという形態のことである。すなわち、超配向カーボンナノチューブ構造を対向する両側から支持して、超配向カーボンナノチューブ構造の構造を変化させずに、超配向カーボンナノチューブ構造を懸架させることができることを意味する。自立構造の超配向カーボンナノチューブ構造は、複数のカーボンナノチューブを含み、複数のカーボンナノチューブが分子間力によって互いに引き付けられ、超配向カーボンナノチューブ構造が所定の形状を有するようにする。超配向カーボンナノチューブ構造におけるカーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ及び多層カーボンナノチューブの中の一種又は複数種を含む。単層カーボンナノチューブの直径は、0.5ナノメートル~50ナノメートルであり、二層カーボンナノチューブの直径は、1.0ナノメートル~50ナノメートルであり、多層カーボンナノチューブの直径は、1.5ナノメートル~50ナノメートルである。超配向カーボンナノチューブ構造におけるカーボンナノチューブの間は、多くの隙間を持ち、それによって、超配向カーボンナノチューブ構造は、多くの微孔を持つ。カーボンナノチューブ構造の単位面積当たりの熱容量は、7.7×10-3ジュール/平方メートルケルビンである。カーボンナノチューブの熱容量が小さいので、超配向カーボンナノチューブ構造は、熱応答速度が速く、物体を速く加熱することができる。
【0025】
超配向カーボンナノチューブ構造は、少なくとも一層の超配向カーボンナノチューブフィルムを含む。図3を参照すると、具体的には、超配向カーボンナノチューブフィルムは、連続して配向に配列する複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。複数のカーボンナノチューブセグメントは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメントは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。カーボンナノチューブセグメントは、任意の幅、厚さ、均一性及び形状を有する。超配向カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って配列されている。超配向カーボンナノチューブフィルムは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られたものである。
【0026】
本実施形態から提供される空間光変調装置20は、以下の方法によって得ることができる。絶縁基板に行電極(横向きの電極)を印刷し、絶縁誘電体層を印刷し、列電極(長手方向の電極)を印刷し、超配向カーボンナノチューブフィルムが搭載される第一電極及び第二電極を印刷し、超配向カーボンナノチューブフィルムを接着することに用いられる接着層を印刷し、単層の超配向カーボンナノチューブフィルムを敷設し、レーザーで超配向カーボンナノチューブフィルムを切断し、溶融パラフィンを超配向カーボンナノチューブフィルムアレイに浸透させる。第一電極及び第二電極は共にCNT電極となる。横向きの電極、長手方向の電極、CNT電極及び接着層は、同じ銀ペーストで印刷されたものであり、また、その後、アレイ全体の回路制御を考慮すると、横向きの銀電極及び長手方向の銀電極の端部を太く長く設計して、制御回路との接続を容易にする。各層を印刷した後、各層を硬化する必要があり、横向きの銀電極、長手方向の銀電極、絶縁誘電体層及びCNT電極は、すべて570℃で焼結及び硬化する必要があるが、超配向カーボンナノチューブフィルムを接着するために使用される接着層は、単層の超配向カーボンナノチューブフィルムを敷設した後、表面温度150℃のホットプレートにアレイ全体を置き、5分間加熱すればよい。最後に、超配向カーボンナノチューブフィルムをレーザーで切断し、且つCNT電極の間の超配向カーボンナノチューブフィルムを残し、完全な超配向カーボンナノチューブフィルムアレイを得る。その後、ガラス基板とパラフィンを入れたシャーレを温度100℃のホットプレートに置き、パラフィンが溶けた後、超配向カーボンナノチューブフィルムアレイの縁の十字というマーキングを除いた四隅にパラフィン液滴を滴らし、溶けたパラフィンを超配向カーボンナノチューブフィルムアレイに均一に散布すると、均一的な超配向カーボンナノチューブフィルムとパラフィン層との複合構造が形成されて、即ち、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造が形成される。最後に、ホットプレートの電源を切り、パラフィンが自然に固まるまで待ち、最終サンプルを得る。
【0027】
本発明により提供される空間光変調装置は、光強度の周期的な変化を実現することができる。空間光変調装置を応用する時、空間光変調装置における超配向カーボンナノチューブ構造に電圧を印加することによって、超配向カーボンナノチューブ構造がジュール熱を発生して温度が上昇し、超配向カーボンナノチューブ構造を覆うパラフィンが加熱され、パラフィン層が溶ける。パラフィン層が溶けた後、超配向カーボンナノチューブ-パラフィンの複合構造の光透過率が増加し、回路の制御下でアレイの対応する点にある超配向カーボンナノチューブフィルムが加熱されると、パラフィンが溶けて、元のパラフィンの固化状態の低い光透過率は高い光透過率に変換され、アドレス指定可能なアレイで効率的な空間光変調を実現する。
【0028】
本発明では、スクリーン印刷技術を使用して、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造をアドレス指定可能なアレイに作製し、回路で超配向カーボンナノチューブフィルム複合構造アレイの対応するピクセルの温度を制御する。その結果、超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造において、超配向カーボンナノチューブ構造と複合化されたパラフィン層の温度も急速に調節される。超配向カーボンナノチューブ構造が急速な熱応答を有するので、超配向カーボンナノチューブ構造を覆うパラフィンの温度も急速に変化し、その結果、急速な相変化変調が生じる。回路の制御下で、アレイの対応する点にある超配向カーボンナノチューブ構造が加熱されると、パラフィン層が溶け、元のパラフィンの固化状態の低い光透過率が高い光透過率に変換され、光透過率の大幅な差が実現される。これにより、アドレス指定可能なアレイの効率的な空間光変調が実現される。
【0029】
本実施形態では、超配向カーボンナノチューブ構造は、一層の超配向カーボンナノチューブフィルムを含む。図4を参照すると、ドットマトリクスの裏面の基板に「C」の文字が印刷された白い紙を貼り付け、その点に通電して加熱する。図4は、ドットマトリクスのパラフィンが溶融する前後の文字「C」の表示比較を示す。パラフィン層が溶融する前は、単層の超配向カーボンナノチューブフィルム及びガラス基板の光透過率はともに高いものの、固化されたパラフィンが存在するので、ガラス基板の裏面にある文字はほとんど表示されない。パラフィン層が溶けた後、超配向カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが見えるようになっただけでなく、ガラス基板の裏面にある「C」の文字も見えるようになり、且つインクジェット印刷された文字の周囲のトナーも観察されることができる。これは、パラフィンが溶融する前後、加熱されたドットマトリクスは、大きな光透過率の差が生じることを示す。これは、パラフィンが溶けると屈折率が下がり、液体のパラフィンの屈折率が約1.43であり、水の屈折率の1.33に近くなるので、パラフィンが溶けると、複合構造の反射率が小さくなり、光透過率が大きくなるからである。
【0030】
図5もパラフィン層が溶けた後、超配向カーボンナノチューブ複合構造の光透過率が大幅に増加することを示す。図中の表面密度はパラフィンの質量表面密度を指す。パラフィン相変化前後の超配向カーボンナノチューブ複合構造の光透過率の変化をテストするために、パラフィンが溶けた後の複合構造の光透過率をテストし、且つアレイに位置する超配向カーボンナノチューブフィルムに対して、電源のオンとオフを繰り返す。パラフィンの表面密度が2.81*10-4g/mmであるサンプルの光透過率の繰り返しテストを実施して、その結果を図6に示す。さらに、図7に示すように、電源をオンしたときとオフしたときのパラフィンの凝固状態と溶融状態の往復変化による光透過率の差を計算する。これによって、パラフィンの表面密度が2.81*10-4g/mmである複合構造アレイは、光透過率の差が48%以上に達することができることが分かる。計算することによって、400~900nmの帯域では、光透過率の差の平均値が57.57%に達することが分かる。従って、透過光強度は、大きな差が生じる。
【0031】
別のテスト実験では、空間光変調装置全体の真上に空間光変調装置全体を照らすランプを設置して、空間光変調装置の背面に一定の距離を置いて白い紙を置き、アレイにおけるドットマトリクスに位置する超配向カーボンナノチューブ複合構造をパルス電圧信号によって周期的に加熱すると、白い紙にある影が変化することを観察する。そしてシリコン検出器で、電源のオンとオフを繰り返した後の光強度の変化を検出して、その結果を図8に示す。上記のすべての結果に基づいて、すりガラスをガラス基板の背面に配置し、スクリーン印刷によって得られたアドレス指定可能アレイの特性と組み合わせて、制御回路を利用して空間光変調効果図を取得して、図9に示すように、「THU」の三つの字母というパターンである。これによって、構築されたアレイにより、非常に明確な「THU」という字母が得られることが分かる。
【0032】
従来技術と比較して、本発明によって提供される空間光変調装置は、超配向カーボンナノチューブ複合構造を含む。超配向カーボンナノチューブ複合構造は、カーボンナノチューブ構造とパラフィン層とを含む。超配向カーボンナノチューブフィルムが急速な熱応答を有するので、超配向カーボンナノチューブ構造を覆うパラフィンの温度も急速に変化し、その結果、急速な相変化が生じる。回路の制御下で、超配向カーボンナノチューブ構造がパラフィンを加熱するにつれて、パラフィンが溶け、元のパラフィンの固化状態の低い光透過率が高い光透過率に変換される。それによって、空間光変調が実現される。本発明は、超配向カーボンナノチューブフィルムアレイとパラフィンとを複合し、超配向カーボンナノチューブフィルムの高速電気変調性能に基づいて、短時間で急速な相変化と空間光変調を実現することができる。本発明では、超配向カーボンナノチューブフィルムアレイとパラフィンとを複合し、超配向カーボンナノチューブフィルムの高速電気変調性能に基づいて、短時間で急速な相変化と空間光変調を実現することができる。本発明では、スクリーン印刷技術を用いて、超配向カーボンナノチューブフィルムをアドレス指定可能なヒーターアレイに作製し、回路を介して超配向カーボンナノチューブフィルムアレイの対応する画素点に位置する超配向カーボンナノチューブフィルムを変調加熱して、超配向カーボンナノチューブフィルムの画素点を覆うパラフィンの温度も高速に変調され、アレイ全体の空間光変調効果も制御される。
【0033】
また、当業者であれば、本発明の精神の範囲内で他の変更を行うことができる。もちろん、本発明の精神に従ってなされたこれらの変更は、いずれも本発明の保護請求する範囲に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0034】
20 空間光変調装置
202 絶縁基板
204 行電極
206 列電極
208 超配向カーボンナノチューブ-パラフィン複合構造
210 第一電極
220 第二電極
214 グリッド
216 絶縁誘電体層
220 空間光変調ユニット
2082 超配向カーボンナノチューブ構造
2084 パラフィン層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9