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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013164
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 201F
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024074436
(22)【出願日】2024-05-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0091820
(32)【優先日】2023-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー、キュン リュル
(72)【発明者】
【氏名】ユン、キ ミョン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、チャン ヒー
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH07
5E001AJ02
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成し、コア部の分率を増大させて誘電容量特性を向上させ、積層型電子部品のDC-Bias特性を向上させる。
【解決手段】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つは、コア部、及び上記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含むコア-シェル構造を有し、上記コア部の断面は多角形状を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均長さは80nm以上200nm以下であり、上記誘電体結晶粒の直径に対して上記コア部の長さは70%以上であることができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つは、コア部及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含むコア-シェル構造を有し、
前記コア部の断面は多角形を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均長さは、80nm以上200nm以下であり、
前記誘電体結晶粒の長さに対する前記コア部の長さは70%以上である、積層型電子部品。
【請求項2】
前記コア-シェル構造の誘電体結晶粒は、互いに異なる多角形のコア部の断面を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記多角形は、正三角形及び二等辺三角形を含む三角形と、正方形、長方形、菱形、台形、等辺台形、及び平行四辺形を含む四角形と、五角形と、六角形と、のうち1つ以上を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記多角形の内角の和は、実質的に180°、360°、540°、及び720°のうち1つ以上である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記内角は、互いに異なる辺を延長した直線間の角度である、請求項4に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記複数の誘電体結晶粒の間には誘電体結晶粒界が配置され、
前記コア部の断面の形状の少なくとも一部は、誘電体結晶粒界と実質的に平行である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記シェル部は希土類元素を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体層は複数の誘電体層を含み、前記複数の誘電体層の少なくとも一つは平均厚さが0.45μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記内部電極は複数の内部電極を含み、前記複数の内部電極の少なくとも一つは平均厚さが0.45μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記本体は、前記誘電体層、及び前記誘電体層と第1方向に交互に配置される前記内部電極を含む容量形成部と、前記容量形成部の前記第1方向の両端面にそれぞれ配置されるカバー部を含み、前記第1方向に互いに向かい合う第1面及び第2面、前記第1面及び前記第2面と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面及び第4面、前記第1面から前記第4面と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面及び第6面を含み、
前記本体の前記第5面及び前記第6面にそれぞれ配置されるサイドマージン部を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記積層型電子部品は、1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下のサイズである、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記外部電極は、前記本体上に配置されて前記内部電極と連結される電極層、及び前記電極層上に配置されるめっき層を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つは、コア部、及び前記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含むコア-シェル構造を有し、
前記コア部は六面体状を含み、
前記複数の誘電体結晶粒の平均長さは、80nm以上200nm以下であり、
前記誘電体結晶粒の体積に対する前記コア部の体積は30%以上である、積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)などの映像機器、コンピュータ、スマートフォン及び携帯電話などの様々な電子製品のプリント回路基板に装着されて電気を充電または放電させる役割を果たすチップ形態のコンデンサである。
【0003】
かかる積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として用いられることができる。コンピュータ、モバイル機器などの各種電子機器が小型化、高出力化されながら、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化の要求が増大している。
【0004】
一方、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成するために、薄層の誘電体層を適用することができるが、誘電体層の薄層化が進行することによって誘電体結晶粒界の数が減少するなど、積層型電子部品の絶縁抵抗値が劣化したり、電気導電度が増加して信頼性が低下するおそれがあり、誘電容量特性及びDC-Bias特性も減少することができる。これにより、誘電体物質の内部に該当するコア部の結晶性を向上させて誘電容量を増大させ、外部に該当するシェル部は高い濃度の添加剤分布を有するように製作して、電界印加時に比較的高い絶縁抵抗値を有するようにして、信頼性を増大させる研究が活発に進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許公報第10-2017-0127647号
【特許文献2】韓国公開特許公報第10-2018-0073359号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成することである。
【0007】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、コア部の分率を増大させて誘電容量特性を向上させることである。
【0008】
本発明が解決しようとする様々な課題の一つは、積層型電子部品のDC-Bias特性を向上させることである。
【0009】
但し、本発明が解決しようとする様々な課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態による積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つは、コア部及び上記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含むコア-シェル構造を有し、上記コア部の断面は多角形状を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均長さは80nm以上200nm以下であり、上記誘電体結晶粒の直径に対する上記コア部の長さは70%以上であってもよい。
【0011】
本発明の他の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つはコア部及び上記コア部の少なくとも一部を囲むシェル部を含むコア-シェル構造を有し、上記コア部は六面体状を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均長さは80nm以上200nm以下であり、上記誘電体結晶粒の体積に対する上記コア部の体積は30%以上であり得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成することである。
【0013】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品の常温誘電率特性を向上させることである。
【0014】
本発明の様々な効果の一つは、積層型電子部品のDC-Bias特性を向上させることである。
【0015】
但し、本発明の多様でありながらも有意義な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程で、より容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものである。
図2】内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものである。
図3図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図4図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものである。
図5図3のP領域の拡大図を概略的に示したものである。
図6】本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を概略的に示したものである。
図7】誘電体粒子を概略的に示したものである。
図8】(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を透過電子顕微鏡(TEM)を介して撮影したイメージであり、(b)は、(a)に対してEDS分析を進行して特定元素をマッピング(mapping)したイメージであり、(c)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を透過電子顕微鏡(TEM)を介して撮影したイメージであり、(d)は、(c)についてEDS分析を進行して特定元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、いくつかの他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(又は強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上に同一符号で示される要素は同一要素である。
【0018】
尚、図面において本発明を明確に説明するために説明と関係ない部分は省略し、図示した各構成の大きさ及び厚さは、説明の便宜のために任意で示したものであるため、本発明は必ずしも図示により限定されない。また、同一の思想の範囲内の機能が同一である構成要素は、同一の参照符号を用いて説明することができる。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というのは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0019】
図面において、第1方向は積層方向または厚さ(T)方向、第2方向は長さ(L)方向、第3方向は幅(W)方向と定義することができる。
【0020】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態による積層型電子部品の斜視図を概略的に示したものであり、図2は、内部電極の積層構造を示した分離斜視図を概略的に示したものであり、図3は、図1のI-I'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図4は、図1のII-II'線に沿った断面図を概略的に示したものであり、図5は、図3のP領域の拡大図を概略的に示したものであり、図6は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を概略的に示したものであり、図7は、誘電体粒子を概略的に示したものである。
【0021】
以下、図1図7を参照して、本発明の一実施形態による積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は誘電体を利用する様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、またはサーミスタなどにも適用されることができる。
【0022】
本発明の一実施形態による積層型電子部品100は、誘電体層111、及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒の少なくとも一つはコア部11及び上記コア部11の少なくとも一部を囲むシェル部12を含むコア-シェル構造10を有し、上記コア部11の断面は多角形状を含み、上記複数の誘電体結晶粒の平均長さは80nm以上200nm以下であり、上記誘電体結晶粒10の直径に対する上記コア部11の長さは 705%以下であってもよい。
【0023】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0024】
より具体的には、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0025】
本体110の具体的な形状に特に制限はないが、図示のように本体110は六面体状やこれと類似した形状からなることができる。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体状ではないが、実質的に六面体状を有することができる。
【0026】
本体110は、第1方向に互いに向かい合う第1面1及び第2面2、第1面1及び第2面2と連結され、第2方向に互いに向かい合う第3面3及び第4面4、第1面1、第2面2、第3面3及び第4面4と連結され、第3方向に互いに向かい合う第5面5及び第6面6を有することができる。
【0027】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であり、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0028】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り、制限されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO)系材料を用いることができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料またはチタン酸ストロンチウム系材料などを用いることができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO、BaTiOにCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)などが一部固溶された(Ba1-xCa)TiO(0<x<1)、Ba(Ti1-yCa)O(0<y<1)、(Ba1-xCa)(Ti1-yZr)O(0<x<1、0<y<1)またはBa(Ti1-yZr)O(0<y<1)などが挙げられる。
【0029】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO)などの粉末に本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0030】
誘電体層111の厚さは特に限定する必要はない。
【0031】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために誘電体層111の厚さは0.6μm以下であることができ、好ましくは0.45μm以下、より好ましくは0.4μm以下であり得る。
【0032】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1内部電極121及び第2内部電極122の間に配置される誘電体層111の1つの厚さtdを意味することができるが、好ましくは全ての誘電体層の厚さtdを意味するものであり得る。
【0033】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向の大きさを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0034】
誘電体層111の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)を用いてイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの誘電体層111の第1方向の平均大きさは、スキャンされたイメージにおいて1つの誘電体層111を第2方向に等間隔の30つの地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔の30つの地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0035】
一方、積層型電子部品の小型化及び高容量化を達成するために、薄層の誘電体層を適用することができるが、誘電体層の薄層化が進行することによって誘電体結晶粒界の数が減少するなど、積層型電子部品の絶縁抵抗値が劣化したり、電気導電度が増加して信頼性が低下するおそれがあり、誘電容量特性及びDC-Bias特性も減少するおそれがある。これにより、誘電体物質の内部に該当するコア部の結晶性を向上させて誘電容量を増大させ、外部に該当するシェル部は高い濃度の添加剤分布を有するように製作して、電界印加時に比較的高い絶縁抵抗値を有するようにして信頼性を増大させることができる。
【0036】
誘電体層111に含まれる誘電体物質、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)系誘電体は、一般的に常温で正方晶系(tetragonal)結晶格子構造を有するが、添加剤などの一部元素が置換された領域、例えば、シェル部(shell)は立方晶系(cubic)結晶格子構造に変形することができる。誘電体物質内のシェル部の格子構造を変形させることにより、正方晶系構造と立方晶系構造による双極子(dipole)モーメントが存在する相(phase)に切り替えることができ、これにより誘電特性が向上することができる。
【0037】
これにより、本発明による一実施形態の誘電体層111は複数の誘電体結晶粒を含み、複数の誘電体結晶粒の少なくとも一つはコア部11及び上記コア部11の少なくとも一部を囲むシェル部12を含むコア-シェル構造10を有することができる。すなわち、コア-シェル構造10を有する誘電体結晶粒と、コア-シェル構造を有さない誘電体結晶粒を含むことができる。
【0038】
誘電体の有効容量は、誘電体結晶粒内において、立方晶系結晶格子構造を有する領域の大きさに対して、正方晶系結晶格子構造を有する領域の大きさが大きい場合に向上すると知られている。換言すると、同じ大きさを有する誘電体結晶粒において、(正方晶系結晶格子構造の大きさ/立方晶系結晶格子構造)の割合が大きい誘電体微細構造であるほど誘電率が向上することができる。
【0039】
添加剤などの一部元素が置換されたシェル領域は、格子(lattice)の大きさの単位で酸素空孔(oxygen vacancy)や欠陥双極子(defect dipole)などのイオン欠陥によって格子内の欠陥が発生したドメインウォール(domain wall)が生成されることができ、このような欠陥格子は電界(electric field)印加時に、非可逆的なドメインウォールモーション(motion)を発生させて、電圧印加時に実現することができる有効容量の減少を引き起こすことがある。すなわち、シェル領域は、添加剤がドーピングされるにつれて絶縁抵抗特性などが向上して、信頼性が増大する側面があるが、電圧印加による有効容量の減少をもたらすことがある。
【0040】
したがって、誘電体結晶粒径に対してコアの大きさが増加する場合、DC-Bias電圧印加時に有効容量が向上することができる。
【0041】
本発明では、常温誘電率、誘電容量特性または電圧印加時の有効容量を極大化するために誘電体結晶粒内のコアの形状を制御することにより、粒成長率を最小化することができるように制御することができ、これにより誘電容量確保及び誘電率の減少率の改善効果、DC-Bias特性が向上することができる。
【0042】
誘電体層に含まれた誘電体結晶粒は3次元的形状を有することができるが、従来のコア部は球状(断面は円形)を有することにより、粒成長によりコア部の分率が比較的減少することができ、比較的高い表面エネルギーにより低い温度で焼結が進行するにつれて添加剤の分散性が低下するか、誘電体結晶粒界の三重点に気孔(pore)が配置されて信頼性が低下するおそれがある。
【0043】
一方、本発明の一実施形態によるコア部11は六面体状を有することができる。
【0044】
誘電体結晶粒10のコア部11が六面体状を有することにより、誘電体結晶粒10内でコア部11の分率を増大させることができ、シェル部12との大きさ分率を最適化することができ、焼成過程で隙間のない焼結による気孔(pore)の生成を抑制することができるため、誘電容量向上及び信頼性を向上させることができる。
【0045】
これは、焼成前の誘電体粒子を六面体状に製造した後、添加剤をドーピングし、焼成した結果であり得る。より具体的に図7を参照して説明すると、焼成前の誘電体粒子10'のコア部11'が六面体状を有することができ、添加剤ドーピングによる誘電体粒子10'のシェル部12'も六面体状を有することができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0046】
本発明において、誘電体粒子は焼成前の誘電体物質を意味することができ、誘電体結晶粒は焼成後の誘電体物質を意味することができる。また、誘電体結晶粒の間に誘電体結晶粒界が配置されることができ、3つ以上の誘電体結晶粒(または誘電体結晶粒界)が接する地点に三重点(triple point)が配置されることができる。本発明で説明する用語の定義は、特別な場合ではない以上、本発明の技術分野で一般的に用いられる用語の定義に従うことができる。
【0047】
一般的に、焼成後の誘電体結晶粒で観察されるコア部(core)の大きさは、焼成前の誘電体粒子の大きさによって決定される傾向があり、誘電体粒子を焼結するか、または粒成長する段階ではコアの大きさに影響をほぼ与えないように制御することができるため、焼成後の誘電体結晶粒のコア大きさで焼成前の誘電体粒子の大きさ及び粒成長率を予測することができる。
【0048】
微細構造の誘電体結晶粒は、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を基準に容量形成部Ac内の中央部に位置した誘電体層111を走査電子顕微鏡(SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscopy)を通じて観察することが容易であることができ、このとき、コア部の断面が露出することができる。
【0049】
そこで、以下では、本発明の一実施形態に係るコア部11の形状を断面を基準に説明する。
【0050】
本発明の一実施形態によるコア部11の断面(cross-section)は様々な多角形状を含むことができ、換言すると、複数の誘電体結晶粒のコア部11の断面は互いに異なる多角形状を有することができる。
【0051】
コア部11の断面が多角形状を含むことで、コア部11がコア-シェル構造の誘電体結晶粒10の内部で高い分率を有することができ、これにより誘電容量及びDC-Bias特性が向上することができる。
【0052】
本発明において、多角形は、直線のみからなる多角形のみを意味するものではなく、角が丸い(頂点が存在しない)多角形を含むことができ、実質的な多角形状を含むことを意味することができる。
【0053】
ここで、多角形は、正三角形及び二等辺三角形を含む三角形と正方形、長方形、菱形、台形、等辺台形及び平行四辺形を含む四角形と五角形及び六角形のうち1つ以上を含むことができ、多角形の定義に応じて、多角形の内角の和は、実質的に180°、360°、540°、及び720°のうち1つ以上であることができるが、特にこれに制限されるものではない。ここで、内角の和が実質的に180°、360°、540°、及び720°のうち1つ以上であるという意味は、±5°程度の誤差を含むことを意味することができる。
【0054】
特に、本発明における多角形は、六面体(cube)の断面(cross-section)で得られる多角形を意味することができる。
【0055】
また、コア部11の断面形状の少なくとも一部は、誘電体結晶粒界と実質的に平行であってもよい。これにより、円形のコア部の断面よりも誘電特性が向上することができる。
【0056】
ここで、コア部11の断面形状の少なくとも一部が誘電体結晶粒界と実質的に平行であるという意味は、コア部11とシェル部12の一境界線が誘電体結晶粒界と実質的に平行であることを意味することができ、そして実質的に平行であるという意味は絶対的に平行であることを意味するものではなく、後述するコア部11とシェル部12の一境界線であるコア部11の一辺(仮想の直線)の50%以上が誘電体結晶粒界と実質的に平行であることを意味することができる。
【0057】
本発明の一実施形態を参照して説明すると、図8の(a)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を透過電子顕微鏡(TEM)を介して撮影したイメージであり、図8の(b)は、図8の(a)に対してエネルギー分散X線分光法(EDS、Energy Dispersive X-Ray Spectrometer)分析を進行してジスプロシウム(Dy)元素をマッピング(mapping)したイメージであり、図8の(c)は、本発明の一実施形態の誘電体結晶粒を透過電子顕微鏡(TEM)を介して撮影したイメージであり、図8の(d)は、図8の(c)に対してEDS分析を進行してジスプロシウム(Dy)元素をマッピング(mapping)したイメージである。
【0058】
図8の(b)及び図8の(d)から確認できるように、横1.0μm×縦0.6μmの大きさのイメージ内に含まれた複数の誘電体結晶粒の少なくとも1つはコア-シェル構造を有し、互いに異なる形状の多角形コア部が複数個であることを確認することができる。
【0059】
多角形の内角は、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したコア部11の断面を基準として、互いに異なる辺を延長した直線L1、L2間の角度(∠a゜)を測定して求めることができる。
【0060】
ここで、多角形の辺は、誘電体結晶粒のコア部11の中心を通る最小長さを基準に50%以上の長さを有する直線を意味することができ、多角形とは、コア部11の断面が3つ以上の辺を含む形態を意味することができ、好ましくは3個以上6個以下の辺を含む形態を意味することができるが、特にこれに制限されるものではない。
【0061】
一方、誘電体結晶粒10の体積に対するコア部11の体積分率は30%以上であることが好ましい。
【0062】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の体積に対するコア部11の体積分率が30%以上を満たすことで、目標とする誘電容量、常温誘電率を達成することができ、DC-Bias特性が向上することができる。
【0063】
コア部11の体積分率が30%以下である場合、コア部11の誘電特性が不足して誘電率の大きさが低下する可能性があり、DC-Bias特性または高温信頼性が劣化するおそれがある。
【0064】
誘電体結晶粒10の長さに対するコア部11の長さは70%以上であってもよい。
【0065】
ここで、コア部11の長さは、コア部11の中心を通る直線のうち最も長い長さを有する最大長さDを意味することができる。また、誘電体結晶粒10の長さは、上記コア部11の最大長さを通る直線を延長した直線を含むことを意味することができ、コア部11とシェル部12の長さを合わせた値を意味することができる。
【0066】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の長さに対するコア部11の長さが70%以上を満たすことで、目標とする誘電容量、常温誘電率を達成することができ、DC-Bias特性が向上することができる。
【0067】
コア-シェル構造の誘電体結晶粒10の直径に対するコア部11の長さが70%未満である場合、十分な誘電容量を形成することが難しいことがあり、DC-Bias特性が低下するおそれがある。
【0068】
なお、誘電体結晶粒10の長さに対するコア部11の長さは95%以下、または90%以下であることができるが、特にこれに制限されるものではない。これは、シェル部12の領域が不足する場合、信頼性が低下するという問題が発生する可能性があり、信頼性低下が現れない程度にシェル部12を形成することが好ましいと予想されたため、上限値の一例示を挙げたものである。
【0069】
シェル部12は、希土類元素を含むことができ、コア部11の希土類元素濃度よりも高いことができる。
【0070】
希土類元素は、イットリウム(Y)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ガドリニウム(Gd)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ツリウム(Tm)、ランタン(La)及びイッテルビウム(Yb)のうち1つ以上を含むことができる。
【0071】
一方、コア部11とシェル部22を区分する基準は、走査電子顕微鏡-エネルギー分散分光法(SEM-EDS:Scanning Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)または透過電子顕微鏡-エネルギー分散分光法(TEM-EDS:Transmission Electron Microscopy-Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析を通じて進行することができ、コア-シェル構造の誘電体結晶粒に含まれた希土類元素の含有量を測定して区分することができる。
【0072】
例えば、希土類元素の一種類であるジスプロシウム(Dy)の場合、コア部の内部への拡散が難しいため、誘電体結晶粒のEDS分析時にDyが拡散しない領域をコア部と定義し、コア部を覆ったり囲んでいる領域をシェル部と定義することができる。すなわち、希土類元素の濃度が比較的高く測定されるコア部の外側から誘電体結晶粒までの領域をシェル部と定義することができる。
【0073】
あるいは、コア-シェル構造を有する一つの誘電体結晶粒において、ラインプロファイル(line-profile)を用いて分析したとき、Dyの含有量が急激に変化する地点を基準として、Dyの含有量が少ない領域をコア部と定義し、Dyの含有量が高い領域をシェル部と定義することができる。
【0074】
本発明の一実施形態による誘電体結晶粒は、平均長さが80nm以上200nm以下であることができる。
【0075】
誘電体結晶粒の平均長さが80nm以上200nm以下を満たすことにより、平均厚さ0.45μm以下の誘電体層でも誘電率または誘電容量に優れることができる。
【0076】
誘電体結晶粒の平均長さが80nm未満の場合、十分な誘電容量を確保することができないか、または容量温度係数(TCC)が低下するおそれがあり、誘電体結晶粒の平均長さが200nm超過である場合、絶縁抵抗特性が低下するおそれがある。
【0077】
本発明の一実施形態において、誘電体層tdの平均厚さが0.45μm以下であり、誘電体結晶粒の平均長さ80nm以上200nm以下であり、誘電体結晶粒のコア部11の断面が多角形を含む場合に、誘電特性またはDC-Bias特性がより向上することができる。
【0078】
ここで、誘電体結晶粒の平均長さは、容量形成部Acの誘電体層内の任意の10μm×10μm領域を走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)を用いて撮影した画像イメージで観察される誘電体結晶粒の最大直径を測定して平均した値を意味することができる。このとき、コア-シェル構造の誘電体結晶粒10だけでなく、コア-シェル構造を有さない誘電体結晶粒も含んで計算することができる。
【0079】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されることができる。
【0080】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1内部電極121及び第2内部電極122は本体110を構成する誘電体層111を挟んで互いに向かい合うように交互に配置され、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ露出することができる。
【0081】
より具体的には、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を通して露出することができる。本体110の第3面3には第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0082】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1内部電極121及び第2内部電極122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されることができる。
【0083】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートを交互に積層した後、焼成して形成されることができる。
【0084】
内部電極121、122を形成する材料は特に制限されず、電気導電性に優れた材料を用いることができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含むことができる。
【0085】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち1つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法は、スクリーン印刷法またはグラビア印刷法などを用いることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0086】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0087】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であることができ、好ましくは0.45μm以下、より好ましくは0.4μm以下であることができる。
【0088】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向の大きさを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0089】
内部電極121、122の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、1つの内部電極の第1方向の平均大きさは、スキャンされたイメージにおいて1つの内部電極を第2方向に等間隔の30の地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値であることができる。上記等間隔の30の地点は容量形成部Acで指定されることができる。また、このような平均値測定を10つの内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均大きさをさらに一般化することができる。
【0090】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されたカバー部112、113を含むことができる。
【0091】
より具体的には、カバー部112、113は容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0092】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0093】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0094】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0095】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品ではより好ましくは20μm以下であることができる。
【0096】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向の大きさを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均大きさを意味することができる。
【0097】
カバー部112、113の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、1つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて第2方向に等間隔の30つの地点で第1方向の大きさを測定して計算した平均値であることができる。
【0098】
なお、上述した方法で測定したカバー部の第1方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)において、カバー部の第1方向の平均大きさと実質的に同じ大きさを有することができる。
【0099】
一方、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上にはサイドマージン部114、115が配置されることができる。
【0100】
より具体的には、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114及び第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。すなわち、サイドマージン部114、115は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)に配置されることができる。
【0101】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を基準として、第1内部電極121及び第2内部電極122の第3方向の両端と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0102】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的または化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0103】
サイドマージン部114、115は、セラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成されるところを除いて導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5面5及び第6面6に露出するように切断した後、単一誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)に第3方向に積層して形成することもできる。
【0104】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えばチタン酸バリウム(BaTiO)系セラミック材料を含むことができる。
【0105】
一方、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0106】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115の幅wmは100μm以下であることができ、好ましくは30μm以下であることができ、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であることができる。
【0107】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115のそれぞれの第3方向の大きさを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均大きさを意味することができる。
【0108】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均大きさは、本体110の第1方向及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的には、1つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔の10つの地点で第3方向の大きさを測定して計算した平均値を意味することができる。
【0109】
本発明の一実施形態においては、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0110】
外部電極131、132は本体110上に配置されて、内部電極121、122と連結されることができる。
【0111】
より具体的には、外部電極131、132は、本体110の第3面3及び第4面4にそれぞれ配置され、第1内部電極121及び第2内部電極122とそれぞれ連結される第1外部電極131及び第2外部電極132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて、第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて、第2内部電極122と連結されることができる。
【0112】
外部電極131、132は、金属などのように電気導電性を有するものであれば、どのような物質を用いても形成されることができ、電気的特性、構造的安定性などを考慮して、具体的な物質が決定されることができ、さらに多層構造を有することができる。
【0113】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a及び電極層131a、132a上に配置されるめっき層131b、132bを含むことができる。
【0114】
電極層131a、132aに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132aは、導電性金属及びガラスを含む焼成電極であるか、導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であることができる。
【0115】
また、電極層131a、132aは、本体110上に焼成電極及び樹脂系電極が順次形成された形態であることができる。
【0116】
また、電極層131a、132aは、本体110上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されるか、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであることができる。
【0117】
電極層131a、132aに用いられる導電性金属は、静電容量形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結されることができる材質であれば特に制限されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、スズ(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された1つ以上を含むことができる。電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成されることができる。
【0118】
めっき層131b、132bは、実装特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0119】
めっき層131b、132bの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、パラジウム(Pd)、及びこれらの合金のうち1つ以上を含む単一層のめっき層131b、132bであることができ、複数の層で形成されることができる。
【0120】
めっき層131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131b、132bは、Niめっき層またはSnめっき層であることができ、電極層131a、132a上にNiめっき層及びSnめっき層が順次形成された形態であることができ、Snめっき層、Niめっき層、及びSnめっき層が順次形成された形態であることができる。また、めっき層131b、132bは、複数のNiめっき層及び/または複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0121】
積層型電子部品100のサイズは特に限定する必要はない。
【0122】
但し、小型化及び高容量化を同時に達成するためには誘電体層及び内部電極の厚さを薄くして積層数を増加させなければならないため、3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)サイズ以下、好ましくは1005(長さ×幅:1.0mm×0.5mm)以下のサイズを有する積層型電子部品100において、本発明による効果がより顕著になることができる。
【0123】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0124】
(実施例)
主成分母材としては、コア部を形成する平均粒径が100nmのキューブ(Cube)形状のBaTiO粒子と、シェル部を形成する平均粒子大きさが10nmのBaTiO球状粒子を設計比率に合わせて混合して用いた。ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散媒介体(media)として用いて、ジスプロシウム(Dy)等の添加剤粒子、エタノール/トルエン溶媒、キューブ及び球状BaTiO、そして分散剤を一緒に混合して5時間ミリング(milling)し、バインダー(binder)を混合した後、5時間さらにミリング(milling)した。このようにして製造されたスラリー(slurry)をシート(sheet)製造用成形機を用いて0.8μmと0.6μmの厚さで成形シートを製造した。成形シートにニッケル(Ni)の内部電極を印刷した。上・下部カバー部は、平均厚さが10μm以上13μm以下のカバー部用シートを25層でそれぞれ積層して製作し、31層のニッケル(Ni)の内部電極が印刷されたシートを加圧した後、積層してバー(bar)を製作した。圧着バーは、切断機を用いて3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)サイズのチップ(chip)に切断した。製作が完了した3216サイズのMLCC chipは、仮焼を行った後、還元雰囲気0.1% H/99.9% N~0.5% H/99.5% N(HO/H/N雰囲気)で1100~1150℃の温度で維持時間10分の条件で焼成をした後、1000℃のN雰囲気で0.5時間再酸化を行った。ここで、0.1%水素濃度は酸素分圧測定器で850℃測定環境で起電力670mVの条件、そして0.5%水素濃度は起電力760mVの条件に該当する。焼成されたチップに対して銅(Cu)ペースト(paste)でターミネーション(termination)工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。これにより、焼成後の誘電体層(内部電極間に配置される誘電体層を意味する)の厚さが約0.4μmであり、誘電体層の数が30層である3216サイズのMLCCチップを製作した。
【0125】
MLCCチップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを用いて1kHz、AC0.5V/μm条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体厚さ、内部電極面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗は10個ずつサンプルを取って、DC10V/μmを印加した状態で60秒経過後に測定した。温度による静電容量の変化は、-55℃~105℃の温度範囲で測定した。加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)は、各試験例(比較例及び実施例)当たり40個のサンプルについて125℃で電界23V/μmに該当する電圧を印加して故障が発生する時間を測定して平均時間(MTTF:Mean Time to Failure)を算出した。また、静電容量のDC Bias変化率は、チップにDC電圧1Vと3Vを印加した状態で測定を進めた。
【0126】
比較例は、従来の円形誘電体粒子を用いたものであり、TEM-EDS観察結果の焼成後にコア部の形状が実質的に円形に該当し、互いに異なる多角形状のコア部を含まないことを確認した。
【0127】
実施例は、本発明の六面体型誘電体粒子を用いたものであり、TEM-EDS観察結果の焼成後、複数のコア部が互いに異なる多角形状を含むことを確認した。製造条件は比較例と同様に進行した。
【0128】
DC-Bias変化率は、DC電圧を印加しなかった場合の誘電容量を基準に、DC電圧を1V及び3Vをそれぞれ印加したときの誘電容量の変化率を意味する。
【0129】
過酷信頼性評価(HALT、Highly Accelerated Life Test)は、温度条件125℃で電圧1.5Vrを印加したときの平均故障時間(MTTF、Mean Time To Failure)を測定したものである。初期絶縁抵抗(R)10Ωを基準にショート(short)が発生した場合、故障と判断した。比較例及び実施例のいずれも400個のサンプルチップを使用し、全てのサンプルチップが故障した時間の平均時間をMTTFとして計算した。
【0130】
【表1】
【0131】
表1から確認できるように、比較例の場合、誘電率は3230であり、DC-Bias変化率は電圧未印加に対して1V印加時に-27%の容量変化率を示し、3V印加時に-77%の容量変化率を示しており、HALT評価時にMTTFが32.5時間と測定された。一方、実施例の場合、誘電率は3810と比較例に比べて向上し、DC-Bias変化率は電圧未印加に対して1V印加時に-18%の容量変化率を示し、3V印加時に-68%の容量変化率を示しているため、同様に比較例に比べて容量変化率が改善されたことが確認できる。また、HALT評価時にもMTTFが54.9時間と測定され、比較例に比べて平均故障時間が改善されたことが分かる。これにより、円形のコア部を有する誘電体結晶粒を含む積層型電子部品に対して、多角形状を含むコア部を有する誘電体結晶粒を含む積層型電子部品の誘電率及びDC-Bias特性が改善されたことが分かる。
【0132】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって多様な形態の置換、変形、及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属するといえる。
【0133】
また、本明細書において用いされた「一実施例」という表現は、互いに同一の実施例を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかしながら、上記提示された一実施例は、他の一実施例の特徴と組み合わせて実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施例において説明された事項が他の一実施例に説明されていなくても、他の一実施例においてその事項と反対または矛盾する説明がない限り、他の一実施例に関連する説明として理解することができる。
【0134】
本明細書で用いられた用語は、単に一実施例を説明するために用いられたものであり、本開示を限定する意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0135】
100 積層型電子部品
110 本体
111 誘電体層
112、113 カバー部
114、115 サイドマージン部
121、122 内部電極
131、132 外部電極
10 誘電体結晶粒
10' 誘電体粒子
11、11' コア部
12、12' シェル部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8