(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013167
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】超広帯域コヒーレント光コムを用いた生化学検出
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3577 20140101AFI20250117BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20250117BHJP
【FI】
G01N21/3577
G06N20/00
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024076982
(22)【出願日】2024-05-10
(31)【優先権主張番号】18/220,482
(32)【優先日】2023-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-カイ・チェン
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE12
2G059GG02
2G059GG08
2G059GG10
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ30
2G059KK01
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM17
(57)【要約】
【課題】超広帯域コヒーレント光コムを用いた生化学検出のためのシステムおよび方法を提供すること。
【解決手段】例示のバイオセンサは、光励起信号を生成するように構成された励起光源と、プログラム可能光フィルタと、光検出器と、コヒーレント混合検出を適用するように構成された検出回路とを含む。バイオセンシング作動中に、光励起信号は、少なくとも1つの目標生化学薬剤を含む生化学試料に適用され、光学検出器は、光励起信号の適用に対応するスペクトル応答を含む第1の信号を捕捉する。プログラム可能光フィルタは、目標生化学薬剤に関する一致する目標リファレンス信号に基づいて、光励起信号の複製に光フィルタリングを適用し、第2の信号を生成する。検出回路は、第1の信号と生成された第2の信号とにコヒーレント混合検出を適用する。コヒーレント混合検出を適用することは、第1の信号と第2の信号とを線ごとに結合することを含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオセンシングのためのシステムであって、
光励起信号を生成するように構成された励起光源と、
光フィルタリングを適用するように構成されたプログラム可能光フィルタと、
光検出器と、
コヒーレント混合検出を適用するように構成された検出回路と
を含み、バイオセンシング作動中に、
前記光励起信号が、少なくとも1つの目標生化学薬剤を含む生化学試料に適用され、
前記光検出器が、前記光励起信号を前記生化学試料に適用することに対応するスペクトル応答を含む第1の信号を捕捉し、
前記プログラム可能光フィルタが、前記少なくとも1つの目標生化学薬剤のスペクトル応答プロファイルを含む一致する目標リファレンス信号に基づいて、前記光励起信号の複製に光フィルタリングを適用し、
前記検出回路が、前記第1の信号と、前記光励起信号の前記複製に前記光フィルタリングを適用することに基づいて生成された第2の信号とにコヒーレント混合検出を適用し、前記コヒーレント混合検出を適用することは、前記第1の信号と前記第2の信号とを線ごとに結合することを含む
ように構成されるシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記励起光源は、パルス化コムレーザ源を含む、システム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムであって、光増幅を適用するように構成された光増幅器をさらに含み、前記光増幅器は、前記プログラム可能光フィルタの出力に光増幅を適用して前記第2の信号を生成する、システム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムであって、1つまたは複数の目標生化学薬剤を検出する際に使用するリファレンス信号を提供するように構成された制御およびスペクトルライブラリ回路をさらに含む、システム。
【請求項5】
請求項4に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、前記一致する目標リファレンス信号を前記プログラム可能光フィルタに提供するように構成される、システム。
【請求項6】
請求項4に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、制御データを、前記コヒーレント混合検出を適用するための前記検出回路に提供するように構成される、システム。
【請求項7】
請求項4に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、前記1つまたは複数の目標生化学薬剤に対応する1つまたは複数のリファレンス信号を含むスペクトルライブラリを保守するように構成される、システム。
【請求項8】
請求項7に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、前記スペクトルライブラリにおいて、前記リファレンス信号のうち少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するように構成される、システム。
【請求項9】
請求項8に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、人工知能(AL)ベースの処理を使用して前記少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するように構成される、システム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステムであって、前記制御およびスペクトルライブラリ回路は、前記人工知能(AL)ベースの処理を使用する場合、機械学習(ML)を適用するように構成される、システム。
【請求項11】
バイオセンシングのための方法であって、
励起光源によって、光励起信号を生成するステップと、
前記光励起信号を、少なくとも1つの目標生化学薬剤を含む生化学試料に適用するステップと、
光検出器によって、前記光励起信号を前記生化学試料に適用することに対応するスペクトル応答を含む第1の信号を捕捉するステップと、
プログラム可能光フィルタによって、前記少なくとも1つの目標生化学薬剤のスペクトル応答プロファイルを含む一致する目標リファレンス信号に基づいて、前記光励起信号の複製に光フィルタリングを適用するステップと、
前記第1の信号と、前記光励起信号の前記複製に前記光フィルタリングを適用することに基づいて生成された第2の信号とにコヒーレント混合検出を適用するステップと
を含み、
コヒーレント混合検出を適用するステップは、前記第1の信号と前記第2の信号とを線ごとに結合するステップを含む、
方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記光励起信号は、パルス化コムレーザ信号を含む、方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、前記光フィルタリングの出力に光増幅を適用して前記第2の信号を生成するステップをさらに含む方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、前記一致する目標リファレンス信号に基づいて前記光フィルタリングを構成するステップをさらに含む方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記一致する目標リファレンス信号に基づいて前記光励起信号の前記複製を再成形するために、前記光フィルタリングを構成するステップをさらに含む方法。
【請求項16】
請求項11に記載の方法であって、前記コヒーレント混合検出を適用するステップを制御するための制御データを生成するステップをさらに含む方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、1つまたは複数の目標生化学薬剤に対応する1つまたは複数のリファレンス信号を含むスペクトルライブラリを保守するステップをさらに含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記スペクトルライブラリにおいて、前記リファレンス信号のうち少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するステップをさらに含む方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、人工知能(AL)ベースの処理を使用して前記少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するステップをさらに含む方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、前記人工知能(AL)ベースの処理を使用する場合、機械学習(ML)を適用するステップをさらに含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示の態様は、センサセンシング関連の解決策に関し、特に生化学検出に関する。より具体的には、本開示のいくつかの実装形態は、超広帯域コヒーレント光コムを用いた生化学検出を実施および利用するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]生化学検出のための従来の慣例的なデバイスおよび解決策の制限および欠点は、そのようなシステムを、図面を参照して本出願の残りの部分で説明される本開示のいくつかの態様と比較することによって、当業者には明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0003】
[0003]実質的に図面のうちの少なくとも1つの図面に示される、および/またはそれに関連して説明され、特許請求の範囲においてより完全に規定される、超広帯域コヒーレント光コムを用いた生化学検出のためのシステムおよび方法が提供される。
【0004】
[0004]本開示のこれらおよび他の利点、態様および新規な特徴、ならびにその図示される実施形態の詳細は、以下の説明および図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】[0005]例示の生体流体ベースのセンサの図である。
【
図2】[0006]光(フォトニック)検出のための一致応答で使用される可能性のあるスペクトル応答を示すグラフ図である。
【
図3】[0007]本開示に基づく例示のバイオセンサシステムを示すブロック図である。
【
図4A】[0008]本開示に基づく例示の実装形態によるバイオセンサシステムを利用する場合の例示の使用事例の図である。
【
図4B】[0008]本開示に基づく例示の実装形態によるバイオセンサシステムを利用する場合の例示の使用事例の図である。
【
図5】[0009]本開示に基づく超広帯域コヒーレント光コムによる生化学検出を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
[0010]
図1は、例示の生体流体ベースのセンサの図である。
図1には、バイオセンサ100、パッチ型バイオセンサ110、眼鏡型バイオセンサ120、および腕時計型バイオセンサ130が示されている。
【0007】
[0011]この点において、バイオセンサは、特定の生化学物質または薬剤(例えば、生化学化合物または分子)の検出に使用するように構成された分析センシングデバイスである。一般的にバイオセンサは、生物学的コンポーネントと物理化学的検出コンポーネントとを組み合わせる。例えば、バイオセンサは、(例えば、酵素、抗体、細胞、核酸などの)生体レセプタ、変換器(例えば、半導電性材料/ナノ材料)、および1つまたは複数の機能(例えば、信号増幅、信号処理など)を実現するための電子機器部品から構成され得る。いくつかの事例では、バイオセンサは、バイオセンサとの間でデータを通信するための送受信機、ユーザの入出力を可能にするための入出力(I/O)コンポーネントなど、追加機能を提供するための追加コンポーネントを組み込むこともできる。該当する場合、バイオセンサのコンポーネントは、これらのコンポーネントによって実行される機能の様々な態様を実装するための適切な回路および他の物理的サブコンポーネントを含むことができる。
【0008】
[0012]バイオセンサの一例示のタイプとして、グルコースバイオセンサがあり、これは人体内のグルコースを感知(測定)するのに使用される。この点において、バイオセンサ100、パッチ型バイオセンサ110、眼鏡型バイオセンサ120、および腕時計型バイオセンサ130は、このようなグルコースバイオセンサの異なる例示の実装形態に対応し得る。これらのバイオセンサのそれぞれは、体内のグルコースの測定を容易にするために、特定の生体流体を感知して作動するように構成することができる。
【0009】
[0013]例えば、バイオセンサ100は、汗または血液などの流体中のグルコースを測定するように構成された適切なハウジング内に物理的センサを含む、生体流体センシングのための最も一般的な実装形態を表すことができる。この点において、いくつかの事例では、バイオセンサ100は、皮膚を刺す、またはそれ以外のやり方で皮膚を貫通することにより、グルコースの測定を可能にするように構成することができる。他のバイオセンサは、皮膚を刺す必要なくセンシング(および測定)を行う代替解決策を表す。例えば、腕時計型バイオセンサ130は、間質液(ISF)を感知するように、つまり、腕時計型バイオセンサ130の下のエリアにおいて、皮膚表面に排出される汗中のグルコースを感知して測定するように構成された電気化学的グルコメータであってもよい。同様に、着用可能パッチ型バイオセンサ110は、ISF感知用に、つまり、パッチ型バイオセンサ110の下のエリアにおいて、皮膚表面に排出される汗中のグルコースを感知して測定するように構成されたグルコースモニタであってもよい。眼鏡型バイオセンサ120は、眼または涙のISFの光学的特性を捉え、その中のグルコースを感知して測定するように構成されたグルコースモニタであってもよい。涙を感知するための一体型コンタクトレンズグルコースセンサ、ISF感知用に構成された一時的なタトゥーベースのグルコースモニタなど、他のタイプのグルコースモニタを使用することもできる。
【0010】
[0014]前述のように、生体流体ベースのセンサなどの一部のバイオセンサは、侵襲的な方法(例えば、皮膚を刺す方法)で使用しなければならない場合があるが、非侵襲的な方法でバイオセンシングを行うことが好ましい。したがって、一部のバイオセンサは、非侵襲的なやり方で機能し得る検出技術を組み込むことがある。いくつかの事例では、バイオセンシングは、特定の生化学物質または薬剤(例えば、特定の生化学化合物、分子など)の存在を検出するために、一致応答を測定および評価すること、ならびに任意選択でそれらの量を測定することなどにより、例えば光学ベースの検出を使用して実施されてもよい。例えば、
図1に示すように、バイオセンサ100、パッチ型バイオセンサ110、眼鏡型バイオセンサ120、および腕時計型バイオセンサ130の各々は、光学ベースの検出を用いて、それらに特性的なグルコースバイオセンシング機能を実行するように構成され得る。それにもかかわらず、本開示はグルコースバイオセンサに限定されるものではなく、本開示に基づく解決策は、光学検出が利用され得る任意の適切なバイオセンサにおいて使用され得る。
【0011】
[0015]光学ベースの検出は、一致応答に基づくフォトニック検出を使用して行われてもよい。これは、レーザ光源などの光源を特定の生体流体または任意の適切な生化学材料に当て、スペクトル応答を検出および測定することによって行うことができる。次いでスペクトル応答は、利用可能な既知の応答データ(例えば、特定の波長にわたる、同定された生化学物質の吸光度特性)と照合され、存在する可能性のある生化学化合物または分子を同定することができる。一致応答に基づくフォトニック検出は、
図2に関してさらに詳細に説明される。
【0012】
[0016]
図2は、光(フォトニック)検出のための一致応答で使用される可能性のあるスペクトル応答を示すグラフ図である。
図2にはグラフ200と210が示される。
[0017]この点において、グラフ200は、波長(x軸)の関数としての近赤外分光法(NIR)ベースの吸収応答(y軸)を表すデータを含む。特に、グラフ200に取り込まれたデータは、尿素、乳酸、トリアセチン、アスコルビン酸(ビタミンC)、アラニン、およびグルコースなどの異なる生化学材料/分子に対応する。グラフ200に示されるように、最初の倍音領域では明確な共鳴はないか、ほとんど見られないが、スペクトル全体では、様々な分子が異なる吸収挙動を示す。グラフ210は、波長(x軸)の関数としての中赤外(Mid-IR)分光法ベースの吸収応答(y軸)を表すデータを含む。特に、グラフ200に取り込まれたデータは、ヒト血液の吸光度、特に(酸化されていない)ヘモグロビンと酸化ヘモグロビンによる吸光度を示す。グラフ210に示すように、データは、量子カスケードレーザを使用するなどして、特定の波長範囲(例えば、2.5~25μmまたは2.5~10μm)の照明を使用して取得される。グラフ210に示されるように、ヘモグロビンは約3.3μmおよび約7.1μmにピークを持つ吸収応答を示し、約8.3~10μmでより強い信号吸光度を示す。それにもかかわらず、非酸化ヘモグロビンは、スペクトル全体で酸化ヘモグロビンとは異なる吸収挙動を示す。
【0013】
[0018]上述のように、一致応答ベースの検出を組み込むバイオセンサは、既知のスペクトル応答(例えば、グラフ200および210に示すようなもの)を利用することができる。この点において、応答一致に基づく光(フォトニック)検出を利用する解決策では、レーザ光が検査対象の試料に投射され、その後、スペクトル応答は、例えば、そのような既知のスペクトル応答に関して測定および分析される。スペクトルの広い帯域でこれを行うことで、既知の分子のスペクトル応答と照合され得るスペクトル応答を構築することができる。
【0014】
[0019]複数の波長にわたって検出された振幅に基づいた一致応答を利用することがある従来の解決策には、いくつかの制限および/または欠点がある可能性がある。この点において、応答一致ベースの光(フォトニック)検出を実施するために、様々な設計を用いることができる。例えば、いくつかの実装形態では、複数の狭い線幅のレーザを使用して、(異なる周波数または波長で)広いスペクトル範囲にわたって強度応答を精密に計画し、リファレンス薬剤の予め決定された吸収スペクトル応答に基づいて、目標生化学薬剤を同定することができる。この点において、目標(例えば、生体流体の試料など)は、既知の波長を有するレーザのアレイを使用することなどにより、照射され得る。アレイベースの実装形態は、各レーザが規定波長に固定された(高消費電力の)レーザのアレイを組み込むことができる。あるいは、波長可変レーザを用いて、スペクトルの少なくとも1つの部分を線ごとに(例えば、異なる周波数または波長で)一定時間スキャンするなどして、異なる波長でスペクトル応答をサンプリングすることもできる。しかし、各波長ポイントにおける目標の吸収強度は、時間、温度、サイズなどによって変化する可能性があるため、これにはいくつかの問題が生じ得る。薬剤は移動する可能性もあるため、スキャンおよび検出に時間がかかればかかるほど、より多くの不確実性がもたらされることがある。さらに、スペクトル応答を測定するには、典型的には位相と振幅の両方を測定する必要がある。しかし、従来の解決策では、位相と振幅の両方のデータを同時に捕捉することができない場合がある。この点において、目標生化学薬剤(例えば分子)の位相応答を捕捉することは、目標の吸収スペクトルが類似のアンサンブル応答を持つ多くの周囲材料によって埋もれてしまう可能性があるため、不可能な場合がある。
【0015】
[0020]本開示に基づく解決策は、従来の解決策の制限および欠点のいくつかに対処し得る。この点において、本開示に基づく実装形態は、類似の応答を有する周囲材料が存在する場合であっても、生化学薬剤(例えば、化合物、分子など)の検出を改善できるようにするための様々な特徴を組み込むことができる。例えば、相関性の高い高密度光周波数レーザコム光源を利用することで、広いスペクトル範囲にわたって目標薬剤の相関した強度および位相応答を記録することができ、これは薬剤の動きを避けるために短いスナップショットで同時に行うことができる。コヒーレント検出は、例えば、未知の試料からの吸収光学応答のスペクトルコム線を、目標生化学薬剤(例えば、分子)のスペクトル応答を有する予め訓練されたリファレンス光コム応答と混合することによって実現されてもよく、このリファレンス光コム応答はリファレンス経路を介して取得され得る。特に、試料信号とスペクトル応答リファレンス信号との線ごとのスペクトル混合は、光検出器などで行われてもよく、これにより、バックグラウンドおよびノイズを識別しつつ、目標薬剤の応答とリファレンスとの相関スペクトル積が強調される。励起光源として、モードロックレーザまたはゲインスイッチレーザなどの光周波数レーザコム光源を使用して、検出器への混合対象となる、目標薬剤と、リファレンス経路にある、予め訓練されたリファレンスフィルタの両方を照射することができる。あるいは、プログラム/訓練された光フィルタをリファレンス経路に利用するのではなく、目標薬剤の実際の試料が使用されてもよい。目標薬剤とリファレンスフィルタからの線ごとの周波数応答は同一ソースから来るので、1つの検出器でコヒーレント混合を行い、スペクトル範囲全体でコム線ごとに振幅および位相のアンサンブル類似性を収集する。このような1つの検出器を用いたコヒーレント検出は、旧式の方法における、発振周波数を既知の周波数標準にロックする必要性、および線ごとの周波数応答を収集するための検出器バンクの必要性を回避する。
【0016】
[0021]スペクトル応答リファレンス信号は、スペクトル形状および応答(「リファレンスフィルタ応答」とも呼ばれる)が目標生化学薬剤(例えば、分子)をエミュレートするようにプログラムされた規定の光フィルタに、同一励起レーザコム光源の一部を通過させることにより、コヒーレントに作成することができる。リファレンスフィルタ応答は、収集されたライブラリデータをエミュレートするように構築されてもよいし(例えば、検証されたデータセットを用いて訓練する)、既知の薬剤を目標試料として応答をフィットさせるように訓練されてもよい(例えば、既知の物理的リファレンス材料を用いて訓練する)。いくつかの事例では、人工知能(AI)(例えば、機械学習(ML))ベースの処理などによる高度な処理技術が、制御された環境ノイズ下でのエミュレーションの精度を高めるためのリファレンスフィルタ応答の構築など、検出プロセスの様々な態様の制御に使用される場合がある。本開示に基づくバイオセンサの例示の実装形態が
図3に示され、それに関して説明される。
【0017】
[0022]
図3は、本開示に基づく例示のバイオセンサシステムを示すブロック図である。
図3には、バイオセンサシステム(またはその一部)300が示される。
[0023]バイオセンサシステム300は、本開示に基づく光学的バイオセンシングベースの機能を実行するための適切な回路を含み得る。特に、バイオセンサシステム300は、本明細書に記載されるように、1組の超広帯域コヒーレント光コムを用いるなど、光励起信号(例えば、レーザ信号)を用いて強化された生化学検出を行うように構成され得る。
図3で図示される例示の実装形態に示すように、バイオセンサシステム300は、励起光源310と、制御およびスペクトルライブラリブロック320と、プログラム可能光フィルタ330と、光フィルタ340と、相関コヒーレント混合検出ブロック350とを備える。
【0018】
[0024]励起光源310は、予め決定された具体的な特性を満たす励起信号を生成し、出力するための適切な回路を含むことができる。特に、励起光源310は、一連の離散的な周波数線からなる発光スペクトルを有する光励起信号を生成するように構成される。この点において、コム線同士の間隔を等しくする必要はない。例示の一実装形態では、それぞれ単一線について、各周波数線の2つの応答を取得することができ、次いで線ごとの結果を1つの検出器で加算することができる。これは、自己リファレンス型の線ごと混合(self-referencing line-by-line mixing)と呼ばれることもある。一例示の実装形態では、励起光源310はモードロックレーザ、ゲインスイッチレーザ、または非線形媒質によって作り出される1組のコヒーレントコム線から発せられるなど、予め決定された具体的な特性を満たすレーザ励起信号を発するように構成されたパルス化コムレーザ源から構成されてもよい。
【0019】
[0025]制御およびスペクトルライブラリブロック320は、光学フィルタの制御関連光成形機能を提供するため、ならびにバイオセンサシステム300における処理中に使用するための様々な既知の薬剤をエミュレートするリファレンス信号のスペクトルライブラリを保守するための、適切な回路から構成され得る。この点において、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、バイオセンサシステム300内の1つまたは複数の他のリファレンスコンポーネントの光学応答の動作を制御するための制御信号を生成および伝達するように構成され得る。さらに、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、目標生化学薬剤でコヒーレント検出を行う準備ができたコム光源のリファレンス光学応答を提供することができる。この点において、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、1つまたは複数の薬剤についてスペクトルライブラリを保守することができる。制御およびスペクトルライブラリブロック320は、1つまたは複数の薬剤をエミュレートする(例えば、リファレンス信号を含む)スペクトル関連データを生成および/または更新するように構成され得る。いくつかの事例では、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、バイオセンサシステム300において学習された特定の薬剤の処理から得られたフィードバックデータに基づいてスペクトルライブラリを更新するように構成され得る。
【0020】
[0026]いくつかの事例では、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、AI/MLベースの処理などの高度な処理技術の使用を組み込むように構成され得る。この点において、AI/MLベースの処理は、例えば、スペクトルライブラリ内のデータ(例えば、リファレンス信号)の構築および/または修正のために使用することができる。例えば、リファレンス一致応答スペクトル信号の構築および更新は、機械学習(ML)アルゴリズムを使用して行うことができる。このような機械学習(ML)アルゴリズムは、例えば、線形回帰に基づくアルゴリズム、非線形回帰に基づくアルゴリズム、ロジスティック回帰に基づくアルゴリズム、決定木アンサンブル(勾配ブースティングまたはランダムフォレストなど)に基づくアルゴリズム、ニューラルネットワークに基づくアルゴリズム、再帰ニューラルネットワークに基づくアルゴリズム、長短記憶ネットワーク、ガウス過程アルゴリズム、ベイズアルゴリズム、グラフ中立ネットワーク、超次元計算、生成的敵対ネットワーク、変換器、チャットGPT、大規模言語モデルなどで構成されてもよい。
【0021】
[0027]プログラム可能光フィルタ330は、光フィルタリングを行うための適切な回路を含むことができる。この点において、プログラム可能光フィルタ330は、予めプログラムされたフィルタリングスペクトル形状および応答に基づいて、つまりプログラム可能光フィルタ330のリファレンスフィルタ応答に基づいて入力信号をフィルタリングするように構成され得る。リファレンスフィルタ応答は、制御およびスペクトルライブラリブロック320によって提供されるリファレンス信号に基づいてプログラムされてもよい。
【0022】
[0028]光増幅器340は、入力信号に対して光増幅を行うための適切な回路で構成することができる。この点において、光増幅器340は、予め定義された利得および/または時間遅延を入力信号に適用するように構成され、試料およびリファレンスフィルタを通過する2つの信号経路間のテストセットアップにおけるハードウェアの相違から、コヒーレント検出を較正および最適化することができる。いくつかの事例では、光増幅器340はプログラム可能であってもよく、光増幅器340によって適用される利得および遅延が較正される(例えば、制御およびスペクトルライブラリブロック320、またはシステム内の任意の他のコントローラと協調して)。
【0023】
[0029]相関コヒーレント混合検出ブロック350は、光検出を実行するための適切な回路から構成されてもよく、これは具体的に、本明細書に記載される相関コヒーレント混合に基づいて行われてもよい。
【0024】
[0030]動作中、バイオセンサシステム300は、生化学検出を行うために使用され得る。この点において、励起光源310は、生化学センシングにおいて使用するための励起信号源(例えば、レーザ)を提供し得る。励起信号は、広いスペクトル範囲にわたって強度応答および位相応答の両方を記録できるように、また目標薬剤とリファレンス光フィルタの両方を平行して通過させてそれを同時に(または少なくとも同時的に)行うように適応的に構成される。特に、励起光源310によって生成される励起信号は、離散的に離間された一連のコム(周波数線)からなるスペクトルを有する信号(例えば、レーザパルス信号)を含むことができる。励起信号の一部は目標(例えば、身体接触)360を通過し、対応するスペクトル応答が光検出器352などによって捕捉される。この点において、スペクトル応答は、目標生化学薬剤のスペクトル応答に加えて、周囲材料に対応する(したがって、事実上ノイズを構成する)他のスペクトル応答を含んでいてもよい。
【0025】
[0031]励起信号の他の一部もまた、プログラム可能光フィルタ330に入力信号として提供され、プログラム可能光フィルタ330は、リファレンス薬剤のプリセット基準に基づいて予め訓練された光フィルタリング応答を適用するように構成され得る。具体的には、プログラム可能光フィルタ330は、制御およびスペクトルライブラリブロック320によってプログラムされ得る。この点において、プログラミングを容易にするために、制御およびスペクトルライブラリブロック320は、プログラム可能光フィルタ330によってリファレンス薬剤をエミュレートするスペクトル応答を作り出すためのフィルタの制御およびプログラミングを実現することができる。このように、プログラム可能光フィルタ330は出力として、一致する目標スペクトルリファレンス信号のスペクトル応答を表す信号を、プログラムされた光フィルタの出力において生成する。プログラム可能光フィルタ330の出力は次いで光増幅器340を介して増幅され、光増幅器340の出力は次いで相関コヒーレント混合検出ブロック350に入力され、同時に捕捉されたスペクトル応答とのコヒーレント混合に使用される。バイオセンサシステム300における例示の使用事例が、
図4A~
図4Bに示され、それらに関してより詳細に説明される。
【0026】
[0032]
図4A~
図4Bは、本開示に基づく例示の実装形態によるバイオセンサシステムを利用する場合の例示の使用事例の図である。
図4A~
図4Bには、例示の使用事例のシナリオの間に、バイオセンサシステム300で生成され得る信号が示される。
【0027】
[0033]この点において、励起光源310は、広いスペクトル範囲をカバーする数組の周波数コムの強度応答と位相応答の両方を記録できるように、またそれを同時に(または少なくとも同時的に)行うように適応的に構成された励起信号400を生成する。特に、
図4Aに示されるように、励起信号400は、各パルスが、周波数領域グラフに示されるように、一連の相関する離散的に等しく離間されたコム(相関周波数線)からなるスペクトルを処理する、(1つの周波数帯域につき1組のパルスを有する時間領域グラフに示されるように)複数の周波数帯域をカバーする1つまたは1組のパルス信号であってもよい。励起信号400は、目標生化学材料(薬剤)とバックグラウンド(非目標)材料の両方を含み得る目標(例えば、身体接触)に適用される。目標生化学材料およびバックグラウンド材料の例示のスペクトルプロファイルを、それぞれグラフ420と430に示す。したがって、励起信号400の一部を目標に適用すると、目標生化学材料とバックグラウンド材料の両方に対応するスペクトル応答が得られる。この点において、目標生化学材料とバックグラウンド材料のスペクトル応答が、それぞれグラフ440と450に示される。示されるように、スペクトル応答の各々は、対応する振幅および位相の複数の線を含み、これらは、目標生化学材料およびバックグラウンド材料の対応するスペクトルプロファイル(グラフ420および430)に基づいて設定(調節)される。このように、(光検出器352によって捕捉された)複合スペクトル応答信号470は、目標生化学材料およびバックグラウンド材料の両方のスペクトル応答から構成される。
【0028】
[0034]同時的に、励起信号400の残りの一部は、スペクトル応答リファレンス信号480の生成に使用される。この点において、スペクトル応答リファレンス信号480は、例えば、目標薬剤の予め訓練された一致するスペクトルリファレンス信号460(これは、予め訓練されたスペクトルライブラリブロック320からの制御パラメータによって用意できる)を使用することなどによって、規定のフィルタリングスペクトル形状および応答を作り出すように構成された光フィルタに励起信号400を適用することによって同時に作成される。この点において、一致する目標のスペクトルリファレンス信号460は、システムに保存(例えば構築)された、目標材料の予め訓練されたスペクトル表現に対応する。したがって、光フィルタリングは、励起信号400を構成すること、つまり、目標生化学物質に対応する予め訓練されたスペクトル特性に従って、離散周波数線の各々における振幅および位相を規定することを可能にする。次いで光フィルタリングの出力は、テストセットアップの経路損失および遅延の差をバランスさせるために、(例えば、光増幅器340を介して)光増幅を受け、スペクトル応答リファレンス信号480を与える。故に、スペクトル応答リファレンス信号480は実質的に、バックグラウンド材料なしで励起信号400を受けたときの目標材料のスペクトル応答の増幅された複製を表現する。
【0029】
[0035]次に、スペクトル応答リファレンス信号480および複合スペクトル応答信号470は、相関コヒーレント混合検出を受ける(例えば、相関コヒーレント混合検出ブロック350を介して)。この点において、相関コヒーレント混合検出は、スペクトル応答リファレンス信号480と複合スペクトル応答信号470とを線ごとにコヒーレントに(例えば、乗算により)結合することを含み、この結果、すべてのコム線からのアンサンブルがスペクトル範囲にわたって建設的に加算される場合、目標薬剤の周波数応答が、バックグラウンド材料からの非相関周波数応答と比較して各コム線のリファレンスフィルタから来るものと類似するとき、より大きな応答(パルス)が得られる。このため、バックグラウンド材料のフィルタリング除去が可能になる。この点において、スペクトル範囲にわたる各コム線の振幅と位相の不一致のため、バックグラウンド材料に対応するアンサンブル応答は相殺して結合され、著しく減少する。
【0030】
[0036]いくつかの事例では、相関コヒーレント混合検出の結果を使用して、目標材料のスペクトルプロファイルを更新すること、または新しいタイプの目標材料を確立することができる。例えば、目標材料として既知の材料が使用される場合、相関コヒーレント混合検出の結果は、既存のリファレンス要素ライブラリをスペクトルライブラリブロック320に更新するように、光フィルタの制御パラメータを最適化するためにフィードバックされ得る。
【0031】
[0037]いくつかの実装形態では、本明細書に記載されるのと同じ処理経路を使用して、スペクトルライブラリを構築および/または較正することができる。例えば、特定の生化学薬剤の試料は、制御された環境で、つまりバックグラウンド材料のない状態で検出にかけることができる。こうして対応する捕捉されたスペクトル応答によって、スペクトルライブラリにおいて、新しいリファレンス信号を作成すること、または既存のリファレンス信号を更新することができる。
【0032】
[0038]
図5は、本開示に基づく超広帯域コヒーレント光コムによる生化学検出を示すフローチャートである。
図5には、超広帯域コヒーレント光コムを用いて強化された生化学検出を提供するために適切なシステム(例えば、
図3のバイオセンサシステム300)において実行され得る複数の例示のステップ(ブロック502~512として表される)を含むフローチャート500が示される。
【0033】
[0039]ステップ502では、(例えば、1つまたは複数のパルス化コムレーザ源によって)励起信号が生成される。関連する周波数線を有するレーザ光源の数は、関心対象の具体的な材料または薬剤が際立ったスペクトル特性を示すスペクトル範囲または帯域を実現するように選択される。次に励起信号の一部が、目標生化学薬剤/材料、および場合によっては異なる種類のバックグラウンド材料を含む物体に適用される。励起信号の他の一部は、目標生化学薬剤/材料に対応する一致応答スペクトルリファレンス(信号)に基づいて構成された光フィルタに同時的に与えられる。
【0034】
[0040]ステップ504では、励起信号の目標への適用によるスペクトル応答が捕捉される。例えば、目標生化学薬剤/材料とバックグラウンド材料の両方に対応するスペクトル応答を含む複合スペクトル応答信号が得られる。
【0035】
[0041]ステップ506において、励起信号の複製からの光フィルタリング応答は、目標薬剤の予め訓練されたスペクトルリファレンスとして一致する応答に成形され、ステップ508において、光フィルタリングの出力に光増幅が適用され、目標薬剤のリファレンススペクトル応答を有するリファレンスコム信号が生成される。
【0036】
[0042]ステップ510では、スペクトル応答リファレンス信号は、試料からの捕捉されたスペクトル応答とコヒーレントに(例えば、周波数線ごとの複合スペクトル応答に)混合され、ステップ512では、コヒーレント混合された周波数線のアンサンブル結果に基づいて検出が実行される。
【0037】
[0043]したがって、本開示に基づく解決策は、従来の解決策より優れた多くの利点を提供する。特に、本開示に基づく実装形態は、振幅と位相の両方の情報による確かな識別を可能にする。これにより、複数の独立した励起レーザ光源を使用する場合、特定の周波数グリッドを知ることなく、または特定の周波数グリッドにロックされることなく、広いスペクトルカバレッジにわたって、周波数の線ごとに、より正確な相関スペクトル応答を可能にすることができる。また、これらの実装形態は高い感度を有することができる。この点において、一致したフィルタ動作は、不要なバックグラウンド材料からの無秩序なノイズおよび応答、ならびに/または、同一励起レーザ光源からの増幅して成形されたリファレンス光によって与えられるコヒーレント利得の使用を低減することができる。加えて、周波数グリッドの使用または周波数ロックなど周波数尺度の必要性は、これらの実装形態では排除される場合がある。これは、光源レーザの光寿命内でのコヒーレントな自己リファレンス型検出の精度によるものである。また、少数の低コストのゲインスイッチパルスレーザまたはモードロックパルスレーザを使用して、広いスペクトル範囲をカバーすることができる。さらに、これらの実装形態は、AI/MLを用いた認知学習および追跡の使用など、高度な処理技術を組み込むことができる。この点において、このような技術を用いることで、複合スペクトル応答を持つ複数の生体薬剤のマルチドメイン同定が可能になり得る。さらに、このような技術は、接触、環境の変化による物理チャネルの変動に適応することを可能にし得る。
【0038】
[0044]本開示によると、バイオセンシングのための例示のシステムは、光励起信号を生成するように構成された励起光源と、光フィルタリングを適用するように構成されたプログラム可能光フィルタと、光検出器と、コヒーレント混合検出を適用するように構成された検出回路とを備え、システムは、バイオセンシング作動中に、光励起信号が、少なくとも1つの目標生化学薬剤を含む生化学試料に適用され、光検出器が、光励起信号を生化学試料に適用することに対応するスペクトル応答を含む第1の信号を捕捉し、プログラム可能光フィルタが、少なくとも1つの目標生化学薬剤のスペクトル応答プロファイルを含む一致する目標リファレンス信号に基づいて、光励起信号の複製に光フィルタリングを適用し、検出回路が、第1の信号と、光励起信号の複製に光フィルタリングを適用することに基づいて生成された第2の信号とのコヒーレント混合検出を適用し、コヒーレント混合検出を適用することが、第1の信号と第2の信号とを線ごとに結合することを含むように構成される。
【0039】
[0045]例示の一実施形態では、励起光源はパルス化コムレーザ源を備える。
[0046]例示の一実施形態において、システムは、検出器においてコヒーレント混合利得を高めるために光増幅を適用するように構成された光増幅器をさらに備え、光増幅器は、プログラム可能光フィルタの出力に光増幅を適用して第2の信号を生成する。
【0040】
[0047]例示の一実施形態において、システムは、1つまたは複数の目標生化学薬剤を検出する際に使用するリファレンス信号を提供するように構成された制御およびスペクトルライブラリ回路をさらに備える。
【0041】
[0048]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、一致する目標リファレンス信号をプログラム可能光フィルタに提供するように構成される。
[0049]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、制御データを、コヒーレント混合検出を適用するための検出回路に提供するように構成される。
【0042】
[0050]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、1つまたは複数の目標生化学薬剤に対応する1つまたは複数のリファレンス信号を含むスペクトルライブラリを保守するように構成される。
【0043】
[0051]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、スペクトルライブラリにおいて、リファレンス信号のうち少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するように構成される。
【0044】
[0052]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、人工知能(AL)ベースの処理を使用して少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するように構成される。
【0045】
[0053]例示の一実施形態において、制御およびスペクトルライブラリ回路は、人工知能(AL)ベースの処理を使用する場合、機械学習(ML)を適用するように構成される。
[0054]本開示によると、バイオセンシングのための例示の方法は、励起光源によって、光励起信号を生成するステップと、光励起信号を、少なくとも1つの目標生化学薬剤を含む生化学試料に適用するステップと、光検出器によって、光励起信号を生化学試料に適用することに対応するスペクトル応答を含む第1の信号を捕捉するステップと、プログラム可能光フィルタによって、少なくとも1つの目標生化学薬剤のスペクトル応答プロファイルを含む一致する目標リファレンス信号に基づいて、光励起信号の複製に光フィルタリングを適用するステップと、第1の信号と、光励起信号の複製に光フィルタリングを適用することに基づいて生成された第2の信号とにコヒーレント混合検出を適用するステップとを含み、コヒーレント混合検出を適用するステップが、第1の信号と第2の信号とを線ごとに結合するステップを含む。
【0046】
[0055]例示の一実施形態では、光励起信号はパルス化コムレーザ信号を含む。
[0056]例示の一実施形態において、方法は、光フィルタリングの出力に光増幅を適用して第2の信号を生成するステップをさらに含む。
【0047】
[0057]例示の一実施形態において、方法は、一致する目標リファレンス信号に基づいて光フィルタリングを構成するステップをさらに含む。
[0058]例示の一実施形態において、方法は、一致する目標リファレンス信号に基づいて光励起信号の複製を再成形するために、光フィルタリングを構成するステップをさらに含む。
【0048】
[0059]例示の一実施形態において、方法は、コヒーレント混合検出を適用するステップを制御するための制御データを生成するステップをさらに含む。
[0060]例示の一実施形態において、方法は、1つまたは複数の目標生化学薬剤に対応する1つまたは複数のリファレンス信号を含むスペクトルライブラリを保守するステップをさらに含む。
【0049】
[0061]例示の一実施形態において、方法は、スペクトルライブラリにおいて、リファレンス信号のうち少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するステップをさらに含む。
【0050】
[0062]例示の一実施形態において、方法は、人工知能(AL)ベースの処理を使用して少なくとも1つのリファレンス信号を生成または更新するステップをさらに含む。
[0063]例示の一実施形態において、方法は、人工知能(AL)ベースの処理を使用する場合、機械学習(ML)を適用するステップをさらに含む。
【0051】
[0064]本明細書で利用される場合、「および/または」は、「および/または」で連結されたリスト中の項目のうちの任意の1つまたは複数を意味する。一例として、「xおよび/またはy」とは、3要素集合{(x),(y),(x,y)}の任意の要素を意味する。換言すると、「xおよび/またはy」は「xとyの一方または両方」を意味する。別の例として、「x、y、および/またはz」とは、7要素集合{(x),(y),(z),(x,y),(x,z),(y,z),(x,y,z)}の任意の要素を意味する。換言すると、「x、y、および/またはz」は、「x、y、およびzのうちの1つまたは複数」を意味する。本明細書で利用される場合、「例示の」という用語は、非限定的な例、事例、または図示としての役割を果たすことを意味する。本明細書で利用される場合、「例えば、(for example)」および「例えば、(e.g.)」という用語は、1つまたは複数の非限定的な例、事例、または図示のリストを開始する。
【0052】
[0065]本明細書で利用される場合、「ある回路(circuits)」および「回路(circuitry)」という用語は、物理的な電子機器部品(例えば、ハードウェア)、ならびにハードウェアを構成し、ハードウェアによって実行され、およびまたは他の方法でハードウェアに関連付けられ得る任意のソフトウェアおよび/またはファームウェア(「コード」)を指す。本明細書で使用される場合、例えば、特定のプロセッサおよびメモリ(例えば、揮発性または不揮発性メモリデバイス、一般的なコンピュータ可読媒体など)は、コードの第1の1つまたは複数の行を実行するときに第1の「ある回路(circuit)」を構成し、コードの第2の1つまたは複数の行を実行するときに第2の「ある回路(circuit)」を構成することができる。加えて、ある回路(a circuit)はアナログ回路および/またはデジタル回路で構成されることもある。このような回路は、例えば、アナログ信号および/またはデジタル信号に対して作動することができる。ある回路(a circuit)は、単一のデバイスまたはチップ内、単一のマザーボード上、単一のシャーシ内、単一の地理的位置の複数の筐体内、複数の地理的位置に分散された複数の筐体内などに存在する可能性があることを理解されたい。同様に、「モジュール」という用語は、例えば、物理的な電子機器部品(例えば、ハードウェア)、ならびにハードウェアを構成し、ハードウェアによって実行され、およびまたは他の方法でハードウェアに関連付けられ得る任意のソフトウェアおよび/またはファームウェア(「コード」)を指す場合がある。
【0053】
[0066]本明細書で利用される場合、回路またはモジュールは、機能の実行が(例えば、ユーザ構成可能な設定、工場出荷調整などによって)無効化されているかどうか、または有効化されていないかどうかにかかわらず、回路またはモジュールが機能を実行するために必要なハードウェアおよびコード(必要な場合)を含むときはいつでも、機能を実行するように「動作可能」である。
【0054】
[0067]本発明の他の実施形態は、機械および/またはコンピュータによって実行可能な少なくとも1つのコードセクションを有する機械コードおよび/またはコンピュータプログラムを記憶させた、非一時的なコンピュータ可読媒体および/もしくは記憶媒体、ならびに/または非一時的な機械可読媒体および/もしくは記憶媒体であって、その機械コードおよび/またはコンピュータプログラムによって機械および/またはコンピュータに本明細書に記載される処理を実行させる、非一時的なコンピュータ可読媒体および/もしくは記憶媒体、ならびに/または非一時的な機械可読媒体および/もしくは記憶媒体を提供することができる。
【0055】
[0068]したがって、本発明による様々な実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアとソフトウェアとの組み合わせとして実現することができる。本発明は、少なくとも1つのコンピューティングシステムにおいて集中させた様式で実現してもよいし、異なる要素が相互接続された複数のコンピューティングシステムに分散して配置される分散させた様式で実現してもよい。本明細書に記載される方法を遂行するために適合されたあらゆる種類のコンピューティングシステムまたは他の装置が好適である。典型的な実装形態は、1つもしくは複数の特定用途向け集積回路(ASIC)、1つもしくは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および/または1つもしくは複数のプロセッサ(例えば、x86、x64、ARM、PIC、および/または任意の他の適切なプロセッサアーキテクチャ)、ならびに関連する支持回路(例えば、ストレージ、DRAM、FLASH、バスインターフェース回路など)から構成され得る。それぞれ別個のASIC、FPGA、プロセッサ、またはその他の回路は「チップ」と呼ばれることがあり、複数のそのような回路は「チップセット」と呼ばれることがある。別の実装形態は、機械によって実行されると、機械に本開示に記載されるような処理を実行させるコードの1つまたは複数の行を記憶させた、非一時的な機械可読(例えば、コンピュータ可読)媒体(例えば、FLASHドライブ、光ディスク、磁気記憶ディスクなど)を含んでもよい。別の実装形態は、機械によって実行されると、機械を本開示に記載されるようなシステムとして動作するように構成されるようにする(例えば、ソフトウェアおよび/またはファームウェアをその回路にロードする)コードの1つまたは複数の行を記憶させた、非一時的な機械可読(例えば、コンピュータ可読)媒体(例えば、FLASHドライブ、光ディスク、磁気記憶ディスクなど)から構成されてもよい。
【0056】
[0069]本発明による様々な実施形態は、コンピュータプログラム製品に埋め込むこともでき、このコンピュータプログラム製品は、本明細書に記載される方法の実装を可能にするすべての特徴を含み、コンピュータシステムにロードされると、これらの方法を遂行することができる。本文脈におけるコンピュータプログラムとは、情報処理機能を有するシステムに、直接的に、または次のいずれかもしくは両方に従って、特定の機能を実行させることが意図された命令の集合を、任意の言語、コードまたは表記法で表現した任意のものを意味する:a)別の言語、コード、表記法への変換、b)異なる物質形態としての複製品。
【0057】
[0070]本方法および/またはシステムは、特定の実装形態を参照して説明されてきたが、本方法および/またはシステムの範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、等価物が代用され得ることが、当業者には理解されるであろう。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本開示の教示に適合させるために、多くの修正を加えることができる。したがって、本方法および/またはシステムは、開示された特定の実装形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実装形態を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0058】
100 バイオセンサ
110 パッチ型バイオセンサ
120 眼鏡型バイオセンサ
130 腕時計型バイオセンサ
300 バイオセンサシステム
310 励起光源
320 制御およびスペクトルライブラリブロック
330 プログラム可能光フィルタ
340 光増幅器
350 相関コヒーレント混合検出ブロック
352 光検出器
360 目標
400 励起信号
460 スペクトルリファレンス信号
470 複合スペクトル応答信号
480 スペクトル応答リファレンス信号
500 フローチャート
【外国語明細書】