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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013190
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】粘着剤および粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/02 20060101AFI20250117BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20250117BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20250117BHJP
【FI】
C09J153/02
C09J11/08
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095862
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2023114633の分割
【原出願日】2023-07-12
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松帆 志幸
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA05
4J004AB01
4J004BA02
4J004FA08
4J040BA202
4J040DM011
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA26
4J040MA02
4J040MB05
4J040MB09
(57)【要約】
【課題】
60%以上という高いバイオマス度を有し、粘着力、凝集力(保持力)および曲面性に優れ、さらには粘着面同士の貼り合わせに好適な粘着剤の提供。
【解決手段】
熱可塑性ブロック共重合体(X)および粘着付与樹脂(Y)を含むバイオマス度が60%以上の粘着剤であって、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、モノビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体であり、前記粘着付与樹脂(Y)が、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とを含む、粘着剤により解決される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ブロック共重合体(X)および粘着付与樹脂(Y)を含むバイオマス度が60%以上の粘着剤であって、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、モノビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体であり、前記粘着付与樹脂(Y)が、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とを含む、粘着剤。
【請求項2】
前記熱可塑性ブロック共重合体(X)は、ブロック共重合体(X)の全質量中、ジブロック比率が40質量%以下かつスチレン含有率が12~35質量%であるスチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、請求項1記載の粘着剤。
【請求項3】
前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体およびスチレン-イソプレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、請求項1記載の粘着剤。
【請求項4】
前記23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)の含有量が、熱可塑性ブロック共重合体(X)100質量部に対して、15~180質量部であることを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項5】
さらに可塑剤(Z)を含むことを特徴とする請求項1記載の粘着剤。
【請求項6】
前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体およびスチレン-イソプレンブロック共重合体を含むことを特徴とする、請求項1記載の粘着剤。
【請求項7】
基材上に請求項1~6のいずれか一項に記載の粘着剤から形成された粘着剤層を有する、粘着シート。
【請求項8】
基材がバイオマス度を有する基材である、請求項7記載の粘着シート。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、モノビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体(X)および粘着付与樹脂(Y)を含み、バイオマス度が60%以上の粘着剤に関する。また本発明は、かかる粘着剤から形成された粘着剤層を備えた粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着剤から形成した粘着剤層を有する粘着シートは、取り扱いが容易であることから、ラベル、テープおよび接着用途として幅広い分野で使用されている。例えば、ベースポリマーとしてスチレン-イソプレンブロック共重合体などの熱可塑性ブロック共重合体に石油系樹脂などの粘着付与樹脂を配合した合成ゴム系粘着剤は、接着性、耐久性等に優れていることから広く普及している。
【0003】
一方、近年では、環境問題への地球規模の意識が高まる中、地球温暖化に影響を及ぼす石油由来原料を用いないか、少なくとも使用量を減らし、植物等のバイオマス資源由来の原料を用いた粘着剤がますます求められている。
【0004】
そこで、特許文献1では、バイオマス度が70%以上である(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体に由来する構成単位を全構成単位に対して30質量%~95質量%含む(メタ)アクリル系共重合体と、粘着付与樹脂と、架橋剤と、を含む粘着剤組成物および粘着シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、熱可塑性ブロック共重合体と、50%以上のバイオマス度を有する天然樹脂と、を含むホットメルト接着剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-123782号公報
【特許文献2】特開2022-187888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の粘着剤は、再剥離性は良好であるものの、側鎖に長鎖アルキル基を有するアクリル系粘着剤であるため被着体に対する密着性が不十分であり、強固な接着性が求められる用途においては剥がれの問題があった。
【0008】
また、特許文献2の粘着剤は、天然樹脂の含有量が低く、接着剤としての高いバイオマス度と接着性能を両立することは困難であった。
【0009】
そこで、本発明の実施形態は、60%以上という高いバイオマス度を有し、粘着力、凝集力(保持力)および曲面性に優れ、さらには粘着面同士の貼り合わせに好適な粘着剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、本発明を完成した。すなわち、本発明の実施形態は以下に関する。しかし、本発明は以下に記載する実施形態に限定されることなく、様々な実施形態を含む。
【0011】
本発明は、熱可塑性ブロック共重合体(X)および粘着付与樹脂(Y)を含む、バイオマス度が60%以上の粘着剤であって、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、モノビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体であり、前記粘着付与樹脂(Y)が、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とを含む、粘着剤に関する。
【0012】
また、本発明は、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)は、ブロック共重合体(X)の全質量中、ジブロック比率が40質量%以下かつスチレン含有率が12~35質量%であるスチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする、前記粘着剤に関する。
【0013】
また、本発明は、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体およびスチレン-イソプレンブロック共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする、前記粘着剤に関する。
【0014】
また、本発明は、前記23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)の含有量が、熱可塑性ブロック共重合体(X)100質量部に対して、15~180質量部であることを特徴とする、前記粘着剤に関する。
【0015】
また、本発明は、さらに可塑剤(Z)を含むことを特徴とする、前記粘着剤に関する。
【0016】
また、本発明は、前記熱可塑性ブロック共重合体(X)が、スチレン-ブタジエンブロック共重合体およびスチレン-イソプレンブロック共重合体を含むことを特徴とする、前記粘着剤に関する。
【0017】
また、本発明は、基材上に前記粘着剤から形成された粘着剤層を有する、粘着シートに関する。
【0018】
また、本発明は、基材がバイオマス度を有する基材である、前記粘着シートに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、バイオマス由来原料の使用比率が高い粘着剤(バイオマス度が60%以上)であって、粘着特性を充分に満足する粘着剤の提供が可能となる。また、上記粘着剤を用いた粘着シートの提供が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の説明の前に用語を定義する。
本明細書で記載する「粘着シート」とは、基材と、本発明の粘着剤からなる粘着剤層とを有することを意味する。
【0021】
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むことを意味する。
本明細書に記載する各種成分は、特に注釈しない限り、それぞれ独立して1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本明細書において、熱可塑性ブロック共重合体(X)をブロック共重合体(X)と略記することがある。また、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)をロジン系樹脂(Y1)、23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)を樹脂(Y2)と略記することがある。
【0023】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限り、これらの内容に限定されない。
【0024】
<1>粘着剤
本発明の一実施形態である粘着剤は、熱可塑性ブロック共重合体(X)および粘着付与樹脂(Y)を含むバイオマス度が60%以上の粘着剤である。
【0025】
本発明において粘着剤の「バイオマス度」は、粘着剤を構成する各成分のバイオマス度を算出し、各成分の質量比から粘着剤全体のバイオマス度を算出している。なお、各成分のバイオマス度はメーカー公表値を用いる。
【0026】
<ブロック共重合体(X)>
ブロック共重合体(X)は、モノビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物との共重合体である熱可塑性ブロック共重合体である。本発明の粘着剤は、ブロック共重合体(X)を含むことで充分な粘着特性を発現できる。
【0027】
本発明において、「モノビニル置換芳香族化合物と共役ジエン化合物とのブロック共重合体」とは、モノビニル置換芳香族化合物を50質量%以上含むポリマーからなるセグメント(以下「セグメントA」ともいう。)と、共役ジエン化合物を50質量%以上含むポリマーからなるセグメント(以下「セグメントB」ともいう。)とを、それぞれ少なくとも一つ有するブロックポリマーをいう。ブロック共重合体の代表的な構造として、セグメントBの両端にそれぞれセグメントAを有するトリブロック構造の共重合体(A-B-A構造)、一つのセグメントAと一つのセグメントBとからなるジブロック構造の共重合体(A-B構造)等が挙げられる。一般に、セグメントAのガラス転移温度がセグメントBのガラス転移温度より高く、セグメントAをハードセグメント、セグメントBをソフトセグメントと呼ぶ。
【0028】
前記モノビニル置換芳香族化合物とは、ビニル基を有する官能基が芳香環に1つ結合した化合物を指す。上記芳香環の代表例として、ベンゼン環が挙げられる。上記モノビニル置換芳香族化合物の具体例としては、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン等が挙げられ、単独または2種以上を併用して用いることができる。スチレン、α-メチルスチレンが耐熱性の点で好ましい。
【0029】
前記共役ジエン化合物の具体例としては、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられ、単独または2種以上を併用して用いることができる。1,3-ブタジエン、イソプレンが溶剤型粘着剤に使用する際に有機溶剤への溶解性に優れ、また高い粘着力が発現する点で好ましい。
【0030】
前記ブロック共重合体(X)におけるセグメントA(ハードセグメント) は、セグメ
ントAを構成する単量体100質量%中の上記モノビニル置換芳香族化合物の含有率が70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。上記ブロック共重合体におけるセグメントB(ソフトセグメント) は、セグメントBを構成する単量体100質量%中の上記共役ジエン化合物の含
有率が70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、実質的に100質量%であってもよい。かかるブロック共重合体(X)によると、より高性能な粘着シートが実現され得る。
【0031】
前記ブロック共重合体(X)は、ジブロック体、トリブロック体、放射状(RADIA
L)体、これらの混合物、等の形態であり得る。トリブロック体および放射状体においては、ポリマー鎖の末端にセグメントAが配されていることが好ましい。ポリマー鎖の末端に配されたセグメントAは、集まって硬質ドメインを形成しやすく、これにより疑似的な架橋構造が形成されて粘着剤の凝集力(保持力)が向上する。一方、ジブロック体はセグメントBの運動性が高いために濡れ性が向上する。
【0032】
本発明におけるブロック共重合体(X)としては、ブロック共重合体(X)の全質量中ジブロック比率が40質量%以下であることが好ましく、上記範囲内にすることで、凝集力(保持力)を維持させることができる。
本発明におけるブロック共重合体(X)としては、ハードセグメントとして少なくとも一つのスチレンブロックを有するスチレン系ブロック共重合体が好ましく、スチレン含有量(St含有量)は12~35質量%が好ましい。
スチレン系ブロック共重合体の「スチレン含有量」とは、当該ブロック共重合体の全体質量に占めるスチレン成分の質量割合をいう。スチレン含有量は15~31質量%がより好ましい。前記範囲にすることで、粘着力と凝集力(保持力)を両立することが容易となる。上記スチレン含有量は、メーカーカタログ値より確認することが出来る。
【0033】
スチレン系ブロック共重合体としては、例えばスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(「SIS」ともいう) 、スチレン- ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「SBS」ともいう)、水素添加されたスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(「SEPS」ともいう)および水素添加されたスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(「SEBS」ともいう)が挙げられる。その中でも、SISおよびSBSからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。SISを含むことがより好ましく、SISとSBSを含むことがさらに好ましい。SISおよびSBSからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことで、粘着力を高めることができる。
【0034】
スチレン系ブロック共重合体は2種以上を併用することで粘着付与樹脂(Y)との相溶性が向上し高い粘着性能を発揮できる場合がある。その中でも、SBSとSISを組み合わせることにより、粘着力と保持力を高度に両立することができる。
【0035】
<粘着付与樹脂(Y)>
粘着付与樹脂(Y)は、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と、23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とを含む。23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と、23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とを含むことで、高いバイオマス度を有しながら、優れた粘着特性を発揮することが可能となる。
【0036】
23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)としては、例えば、SYLVALITE
RE12、SYLVALITE RE25、SYLVALITE 2038、SYLVALITE RE5S(いずれもクレイトン社製)や、フォーラリン5020F(イーストマンケミカル社製)、KE-364C(荒川化学社製)などが挙げられる。23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)は軟化点が低いため、これらを含むことで粘着剤にタックが付与され、被着体への密着性を向上させることが出来る。
【0037】
23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)の軟化点は、40℃以下が好ましい。また、軟化点を有さなくても良い。ロジン系樹脂(Y1)の軟化点が40℃以下または軟化点を有さないと、粘着剤へのタック付与が充分となる。なお、軟化点は、JIS K 5902に規定する軟化点試験方法(環球法)に基づいて測定された値として定義される。
【0038】
本発明の粘着剤における23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)の含有量は、ブロック共重合体(X)100質量部に対して、15~180質量部であることが好ましく
、より好ましくは20質量部以上、さらに好ましくは40質量部以上である。また、より好ましくは150質量部以下であり、さらに好ましくは130質量部以下である。ロジン系樹脂(Y1)の配合量を、15質量部以上にすることで粘着剤へのタックが付与でき、180質量部以下にすることで凝集力(保持力)を確保することが可能となる。
【0039】
23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)とは、23℃で固体の粘着付与樹脂のことである。例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油系樹脂などが挙げられ、その中でもロジン系樹脂、テルペン系樹脂がバイオマス度を高くできるため好ましい。樹脂(Y2)を含むことで粘着剤の被着体に対する密着性が向上し、粘着力と曲面性を高めることができる。
【0040】
23℃で流動性を有さないロジン系樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンの未変性ロジンをアルコールなどでエステル化したロジンエステルや、未変性ロジンを変性した不均化ロジン、重合ロジン、水添ロジンなどの変性ロジン、これら変性ロジンをさらにアルコールなどでエステル化した不均化ロジンエステル、重合ロジンエステル、水添ロジンエステルなどの変性ロジンエステル、未変性ロジンにフェノールを付加したロジンフェノール等が挙げられる。例えば、パインクリスタルKE-359、スーパーエステルA-75、スーパーエステルA-100、ペンセルD-125(いずれも荒川化学社製)、SYLVALITE RE80HP、SYLVALITE 85GB、SYLVALITE RE105L(いずれもクレイトン社製)や、フォーラリン85E、フォーラリン110(いずれもイーストマンケミカル社製)などが挙げられる。
【0041】
23℃で流動性を有さないテルペン系樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペン樹脂などがあり、例えば、YSレジンPX1000、YSレジンPX1250、YSポリスターT115、YSポリスターT130、クリアロンP105(いずれもヤスハラケミカル社製)、SYLVARES TR105、SYLVARES TP2040(いずれもクレイトン社製)などが挙げられる。
【0042】
23℃で流動性を有さない石油系樹脂としては、C9系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂などがあり、例えば、アルコンP-90、アルコンP-100、アルコンP-125、アルコンM-115、アルコンM-135(いずれも荒川化学社製)、アイマーブS-100、アイマーブS-110、アイマーブP-100(いずれも出光興産社製)などが挙げられる。
【0043】
23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の軟化点は、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。また、160℃以下が好ましく、140℃以下がさらに好ましい。樹脂(Y2)の軟化点が80℃以上であると凝集力(保持力)を確保することができ、160℃以下であると粘着力を向上させることができる。
【0044】
本発明の粘着剤における23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の含有量は、ブロック共重合体(X)100質量部に対して、60質量部以上が好ましく、80質量部以上がさらに好ましい。また、220質量部以下が好ましく、200質量部以下がさらに好ましい。樹脂(Y2)の配合量が60質量部以上であると粘着力を向上させることができ、220質量部以下であるとタックを確保でき被着体に対する密着性を向上させることができる。
【0045】
本発明の粘着剤における23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)と、23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の合計含有量は、ブロック共重合体(X)100質量部に対して、170質量部以上が好ましく、180質量部以上がさらに好ましい。また、320質量部以下が好ましく、300質量部以下がさらに好ましい。ロジン系樹脂(Y1)と樹
脂(Y2)の合計含有量が170質量部以上であるとバイオマス度と高めながら粘着力を向上させることができ、320質量部以下であると凝集力(保持力)を確保することができる。
【0046】
本発明の粘着剤における23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)の含有量をVY1、23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の含有量をVY2とした場合、VY1/V
は、0.05以上が好ましく、0.2以上がさらに好ましい。また、1.7以下が好ましく、1.5以下がさらに好ましい。VY1/VY2が0.05以上であると粘着剤への
タックが付与でき、1.7以下にすることで凝集力(保持力)を確保することができる。
【0047】
本発明の粘着剤はさらに可塑剤(Z)を含むことが出来る。可塑剤(Z)を含むことで、粘着力がさらに向上する場合がある。可塑剤(Z)は、例えば、炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数1~18の単官能アルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル、炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸と2~4価アルコールとのエステル、炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステル、ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのジエステル、トリエステル、テトラエステル、不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステル、リン酸エステル、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系オイル等が挙げられる。中でも、ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのエステル、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルが好ましく、パラフィン系オイルが特に好ましい。
【0048】
炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸と炭素数1~18の単官能アルコールとのエステルとしては、例えば、オレイン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸イソステアリル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジイソデシル、トリメリット酸トリ(2-エチルヘキシル) 、フタル酸ジメチル、
フタル酸ジブチル、およびフタル酸ジ(2-エチルヘキシル) 等が挙げられる。
【0049】
炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸と2~4官能アルコールとのエステルを構成する炭素数14 ~18の不飽和脂肪酸と2~4価アルコールとしては、以下の通り
である。炭素数14~18の不飽和脂肪酸または分岐酸は、例えば、ミリストレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。2~4官能アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン等が挙げられる。
【0050】
炭素数1~18の一塩基酸または多塩基酸とポリアルキレングリコールとのエステルとしては、ジヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジ-2-エチルヘキシル酸ポリエチレングリコール、ジラウリル酸ポリエチレングリコール、ジオレイン酸ポリエチレングリコール、およびアジピン酸ジポリエチレングリコールメチルエーテル等が挙げられる。
【0051】
ヒドロキシ酸と一塩基酸またはアルコールのエステルとしては乳酸オクチルドデシル、リンゴ酸ジイソステアリル、2-ヒドロキシミリスチン酸メチル、12-ヒドロキシステアリン酸2-エチルヘキシル、リシノール酸エチル、アセチルリシノール酸メチル、アセチルリシノール酸ブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリ(2-エチルヘキシル) 等が挙げられる。
【0052】
不飽和部位を過酸化物等でエポキシ化した脂肪酸エステルは、例えば、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化綿実油等のエポキシ化油脂や炭素数8~18の不飽和脂肪酸をエポキシ化した化合物と、炭素数1~6の直鎖または分岐アルコールとのエスル化合物等が挙げられる。
【0053】
リン酸エステルは、例えば、リン酸と炭素数2~18の直鎖または分岐アルコールとのエステル化合物が挙げられ、具体的には、トリブチルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0054】
パラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよび芳香族系オイルとしては、市販品を用いることができる。例えば、出光興産社製のダイアナフレシアS32、ダイアナプロセスオイルPW-90、DNオイルKP-68、プロセスオイルNS100、BPケミカルズ社製のEnerperM1930 、Crompton社製のKaydol、エッソ社製の
Primol352などが挙げられる。
【0055】
本発明の粘着剤における可塑剤(Z)の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、5質量部以上がさらに好ましい。また、40質量部以下が好ましく、20質量部以下がさらに好ましい。可塑剤(Z)の含有量が2質量部以上であるとタックの向上により粘着面同士の密着性が高まり、40質量部以下であると凝集力(保持力)を確保することができる。
【0056】
<その他成分>
本発明の一実施形態である粘着剤は、粘着剤としての特性とバイオマス度を大きく低下させない程度であれば、上記成分以外に一般的な硬化剤、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)以外の粘着付与樹脂、添加剤をさらに含んでもよい。使用できる硬化剤として、例えば、イソシアネート硬化剤、エポキシ硬化剤、メラミン硬化剤、カルボジイミド硬化剤、オキサゾリン硬化剤、およびアジリジン硬化剤等が挙げられる。使用できる粘着付与樹脂として、例えば、23℃で流動性を有するテルペン樹脂、石油樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。使用できる添加剤として、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、帯電防止剤、剥離調整剤、充填剤、着色剤、老化防止剤、および界面活性剤等が挙げられる。酸化防止剤としては、例えばフェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤を例示できる。
【0057】
本発明の粘着剤は、硬化剤を含まない1液型粘着剤であることが好ましく、硬化剤を含まないことでブロック共重合体(X)同士が共有結合による架橋をしないため、粘着面同士の密着性を高めることができる。
【0058】
<2>粘着シート
本発明の他の実施形態は、粘着シートに関する。粘着シートは、に、上記実施形態の粘着剤から形成されてなる粘着剤層を有する。すなわち、粘着シートは、基材と、上記実施形態の粘着剤から構成される粘着剤層とを有する。一実施形態において、基材と接していない粘着剤層の他方の面には、異物の付着を防止するために剥離シートを設けてよい。通常、粘着剤層は、使用する直前まで剥離シートによって保護される。
【0059】
基材は、柔軟なシートおよび板材であればよく、制限なく使用できる。例えば、プラスチック、紙、および金属箔、ならびにこれら1種以上の材料から構成される積層体等が挙げられる。粘着剤層と接する基材の表面は、密着性向上のため、簡便な接着処理を適用してもよい。例えば、コロナ放電処理等の乾式処理、アンカーコート剤塗布等の湿式処理を適用することができる。
【0060】
一実施形態において、基材を構成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のエステル系樹脂
;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)およびシクロオレフィンポリマー(COP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)等のビニル系樹脂;ナイロン66等のアミド系樹脂;ウレタン系樹脂(発泡体を含む)等が挙げられる。
【0061】
一実施形態において、基材の原料となる樹脂はバイオマス度を有しているのが好ましく、例えば、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂(PTT MCC バイオケム社製BioPBS FZ71、FZ91、FZ92)、ポリ乳酸(PLA)樹脂(NaturteWorks社製3000~7000シリーズ、Total Corbion社製Lシ
リーズ、LXシリーズ、Dシリーズ)、等が挙げられる。
【0062】
上記樹脂用いて基材(シート)へ成形加工する方法は、押出機を用いてTダイにて押出したシートをキャストロールで冷却固化する押出成形や、インフレーション成形機により成形する方法等が適している。
【0063】
基材の厚みは、一般的に10~300μmであってよい。基材としてポリウレタンシート(発泡体を含む)を使用する場合、基材(シート)の厚みは、一般的に20~50,000μmであってよい。基材として紙を使用することもできる。例えば、普通紙、コート紙、およびアート紙等が挙げられる。また、基材として金属箔を使用することもできる。金属箔としては、例えば、アルミニウム箔、および銅箔等が挙げられる。
【0064】
剥離シートは、公知の構成を有する剥離シートであってよい。例えば、プラスチックまたは紙等のシート状の材料表面に、シリコーン系剥離剤等の公知の剥離処理を適用した剥離シートを使用できる。
【0065】
粘着シートの製造方法としては、例えば、基材の表面または両面に上記実施形態の粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで必要に応じて塗工層を乾燥および硬化して、粘着剤層を形成する方法が挙げられる。粘着剤は有機溶剤に溶解して塗工しても良く、無溶剤まま熱溶融させて塗工しても良い。加熱および乾燥温度は、一般的に60~200℃であってよい。粘着剤層の厚みは、一般的に1~200μmであってよい。
【0066】
有機溶剤に溶解して塗工する方法としては、アプリケーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、コンマコーター、ナイフコーター、リバースコ-ター、スピンコーターなどが挙げられ、熱溶融させて塗工する方法としては、アプリケーター、グラビアコーター、ロールコーター、ダイコーター、スリットコーターなどが挙げられる。
【0067】
また、上記方法とは別の方法として、剥離シートの表面に上記実施形態の粘着剤を塗工して塗工層を形成し、次いで必要に応じて塗工層を乾燥および硬化することによって粘着剤層を形成し、最後に粘着剤層の露出面に基材を貼り合わる方法が挙げられる。この方法において、基材の代わりに剥離シートを粘着剤層に貼り合わせると、剥離シート/粘着剤層/剥離シートの構成を有するキャスト粘着シートが得られる。
【実施例0068】
以下、本発明の実施態様について実施例によって説明する。なお、本発明の実施態様が実施例に限定されないことはいうまでもない。以下に記載する「部」は「質量部」を意味し、「%」は「質量%」を意味する。
また、以下に記載する実施例および表に記載された原料(溶剤を除く)の配合量は、不揮発分換算の値である。
【0069】
表1に示した材料は、以下のとおりである。
<ブロック共重合体(X)>
D1101:KRATON D1101、SBS、St含有量31%、ジブロック比率16%、クレイトン社製(バイオマス度0%)
D1161:KRATON D1161、SIS、St含有量15%、ジブロック比率19%、クレイトン社製(バイオマス度0%)
D1124:KRATON D1124、SIS、St含有量30%、ジブロック比率30%、クレイトン社製(バイオマス度0%)
G1650:KRATON G1650、SEBS、St含有量30%、ジブロックなし、クレイトン社製(バイオマス度0%)
D1113:KRATON D1113、SIS、St含有量16%、ジブロック比率55%、クレイトン社製(バイオマス度0%)
<ブロック共重合体(X)以外の熱可塑性ブロック共重合体>
LA2140:クラリティLA2140、アクリル系ブロック共重合体、ジブロックなし、クラレ社製(バイオマス度0%)
【0070】
<粘着付与樹脂(Y)>
[23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)]
SYL2038:SYLVALITE2038、軟化点37℃、クレイトン社製(バイオマス度94%)
F-5020F:フォーラリン5020F、軟化点なし、イーストマンケミカル社製(バイオマス度95%)
[23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)]
A-100:スーパーエステルA-100、軟化点100℃、荒川化学社製(バイオマス度99%)
T-130:YSポリスターT-130、軟化点130℃、ヤスハラケミカル社製(バイオマス度65%)
[23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)以外の粘着付与樹脂]
NL:ニカノールL、23℃で流動性を有するキシレン樹脂系粘着付与樹脂、軟化点なし、フドー社製(バイオマス度0%)
【0071】
<可塑剤(Z)>
PW-90:ダイアナプロセスオイルPW-90、パラフィン系オイル、出光興産社製(バイオマス度0%)
【0072】
上記原料において、バイオマス度は、製造時に使用したバイオマス由来の原料の質量割合(質量%)、またはASTM D6866に基づいた含有率である。
【0073】
[粘着剤および粘着シートの製造例]
(実施例1)
KRATON D1011 100部、SYLVALITE2038 35部、スーパーエステルA-100 160部に、不揮発分40%になるようトルエンを加えて溶解し、粘着剤溶液を得た。厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)の上に、アプリケーターを用いて先に調製した粘着剤溶液を乾燥後の厚みが20μmとなるように塗工し、熱風オーブンにて100℃、2分間乾燥して粘着剤層を作製した。乾燥後、厚さ38μmの剥離性シート(ポリエチレンテレフタレート製)にラミネートし粘着シートを得た。
【0074】
(実施例2~14、比較例1~4)
実施例1の材料および配合量(質量部)を表1に示すとおりに変更し、これ以外は実施例1と同様にして、それぞれ実施例2~14、比較例1~4の粘着剤および粘着シートを
得た。
【0075】
(実施例15)
実施例2において、厚さ50μmのPETを下記記載のポリ乳酸からなる基材に変更する以外は実施例2と同様にして、実施例15の粘着シートを得た。
<ポリ乳酸からなる基材の製造>
ポリ乳酸(Total Corbion社製LX175)樹脂を、30mmΦインフレー
ション押出機(東測精密工業社製)を用いて温度180℃ にて押出成形を行い、さらに
110℃で10分間熱処理を行うことで厚さ80μmのフィルム基材を得た。
【0076】
[粘着剤のバイオマス度]
粘着剤のバイオマス度とは、粘着剤の総質量に対し、粘着剤の製造時に使用したバイオマス由来の原料の質量割合であり、以下の計算式(1)にしたがって算出した。なお、各質量は不揮発分換算である。
計算式(1):
粘着剤のバイオマス度(質量%)=100×[バイオマス由来の原料の質量(g)]/[粘着剤の総質量(g)]
【0077】
[粘着シートの物性評価]
実施例1~15、および比較例1~4で得た粘着剤を使用して製造した粘着シートについて、以下の方法に従い測定試料を作製し、各種物性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0078】
(1)SUS粘着力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃、相対湿度50%(50%RH)の環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ステンレス(SUS)板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
AA:剥離強度が25N/25mm以上(優良)
A:剥離強度が20N/25mm以上25N/25mm未満(良好)
B:剥離強度が15N/25mm以上20N/25mm未満(使用可)
C:剥離強度が15N/25mm未満(使用不可)
【0079】
(2)PP粘着力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。次いで23℃、相対湿度50%(50%RH)の環境下、粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、ポリプロピレン(PP)板に貼付し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、剥離角度180°の条件で、剥離強度を測定した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
AA:剥離強度が20N/25mm以上(優良)
A:剥離強度が15N/25mm以上20N/25mm未満(良好)
B:剥離強度が10N/25mm以上15N/25mm未満(使用可)
C:剥離強度が10N/25mm未満(使用不可)
【0080】
(3)自着面粘着力
得られた粘着シートを2枚準備し、23℃50%RHの環境下、一方の粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着面を、他方の粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着面にラミネートした。次いで積層された粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出し、2kgロールにより1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、23℃50%RHの環境下で24時間保存した後、引張試験機(オリエンテック社製「テンシロン」)を用いて、剥離速度300mm/分、積層された粘着シート間のT型剥離強度を測定した。評価は、下記基準に基づいて評価した。
評価基準
AA:剥離強度が20N/25mm以上(優良)
A:剥離強度が15N/25mm以上20N/25mm未満(良好)
B:剥離強度が10N/25mm以上15N/25mm未満(使用可)
C:剥離強度が10N/25mm未満(使用不可)
【0081】
(4)40℃保持力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、幅30mm、長さ150mmのSUS板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、40℃環境下で20分保存した後、粘着シートの下端部に1kgの重りを用いて荷重をかけ、7万秒放置することで保持力を測定した。評価は、粘着シートの貼付面上端部が元の位置から下にずれた長さを測定した。
評価基準
A:ずれなし、またはずれた長さが0.5mm未満(良好)
B:ずれた長さが0.5mm以上3.0mm未満(使用可)
C:ずれた長さが3.0mm以上(使用不可)
【0082】
(5)70℃保持力
得られた粘着シートを幅25mm、長さ150mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、幅30mm、長さ150mmのSUS板の下端部幅25mm、長さ25mmの部分に貼着し、2kgロールで1往復させて測定試料を作製した。この測定試料を、70℃環境下で20分保存した後、粘着シートの下端部に1kgの重りを用いて荷重をかけ、保持力を測定した。評価は、粘着シートおよび重りがSUS板から落下するまでの時間を測定した。
評価基準
A:1万秒以上経過しても落下しない(良好)
B:落下するまでの時間が1千秒以上1万秒未満(使用可)
C:落下するまでの時間が1千秒未満(使用不可)
【0083】
(6)曲面性
得られた粘着シートを幅15mm、長さ25mmの大きさに切り出した。切り出した粘着シートから剥離性シートを剥がして露出した粘着剤層を、直径10mmのポリプロピレン(PP)棒の円周方向に対して平行に粘着シートの長さ方向で貼着し、測定試料を作製した。この測定試料を、23℃環境下で20分保存した後、40℃環境下で24時間保持した。評価は、粘着シートの貼付面端部が剥がれた長さを測定した。
評価基準
A:剥がれなし、または剥がれた長さが0.5mm未満(良好)
B:剥がれた長さが0.5mm以上1.0mm未満(使用可)
C:剥がれた長さが1.0mm以上(使用不可)
【0084】
【表1】
【0085】
表1に示すように本発明の粘着剤(実施例)は、特定のブロック共重合体(X)、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃温で流動性を有さない樹脂(Y2)を含んでいることで、粘着剤のバイオマス度が高く、粘着特性を充分に満たしていることが確認できた。
【0086】
一方、比較例の粘着剤では、所望とする粘着特性を得ることが困難であった。比較例1および比較例2は、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)のいずれかを使用していない。比較例3は23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の両方を使用していない。比較例4は熱可塑性ブロック共重合体(X)を使用していない。
以上のことから、本発明の粘着剤は、特定のブロック共重合体(X)、23℃で流動性を有するロジン系樹脂(Y1)および23℃で流動性を有さない樹脂(Y2)の使用によって、所望とする粘着特性を実現できることが分かる。