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特開2025-13195端面発光半導体レーザの二重導波路構造およびその形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013195
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】端面発光半導体レーザの二重導波路構造およびその形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/20 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H01S5/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098546
(22)【出願日】2024-06-19
(31)【優先権主張番号】18/221,103
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】アニッサ ゼグジ
(72)【発明者】
【氏名】ルネ トート
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AB65
5F173AP35
5F173AR13
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高出力の端面発光半導体レーザとその製造方法を提供する。
【解決手段】第1の導波路層および第1のクラッド層の多層配置構成の上に配置された第2のパッシブ導波路およびクラッド層を含む端面発光半導体レーザとその製造方法を開示する。レーザの活性領域は、標準的なデバイスと同様に、第1の導波路層の下面内または下面に沿って含まれる。再成長界面は、この界面が第1の導波路層内に位置する先行技術と比較して、第1のクラッド層の上面に沿って位置する。その結果得られる構成は、伝播光モードをアクティブ導波路層内に維持して、再成長界面から離すことにより、結合効率の改善を示すものとなる。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端面発光半導体レーザであって、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1の導電型のクラッド層と、
前記クラッド層上に形成された第1の導電型の導波路層と、
前記導波路層の規定領域上に配置された活性領域と、
前記活性領域上に形成された第2の逆の導電型の第1の導波路層と、
前記第1の導波路層上に形成された第2の導電型の第1のクラッド層であって、前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の組合せの規定された領域が除去され、除去によって露出した前記第1の導電型の導波路層の表面に沿って再成長界面を規定する、第1のクラッド層と、
前記再成長界面上に形成された第2の導電型の第2の導波路層と、
前記第2の導電型の第2の導波路層上に形成された第2の導電型の第2のクラッド層であって、前記第2の導電型の第1の導波路層およびクラッド層の組成および厚さが、伝播縦光モードと前記再成長界面との間に規定された分離を形成するように選択される、第2の導電型の第2のクラッド層とを備えることを特徴とする端面発光半導体レーザ。
【請求項2】
請求項1に記載の端面発光レーザにおいて、
前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の除去の規定された領域が、当該端面発光レーザの前面ファセットに沿った凹状領域を含み、前記凹状領域に形成された第2の導波路層およびクラッド層が、当該端面発光レーザの非吸収ミラーを形成することを特徴とする端面発光レーザ。
【請求項3】
請求項2に記載の端面発光レーザにおいて、
前記第2の導電型の第1の導波路層および前記第2の導電型の第1のクラッド層の組成および厚さが、前記再成長界面の位置と一致する伝播縦モードの強度値がゼロに近くなるように選択されることを特徴とする端面発光レーザ。
【請求項4】
請求項1に記載の端面発光レーザにおいて、
前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の除去の規定された領域が、中央注入ストライプおよび導波領域を形成する電流注入領域に近接する部分に、当該端面発光レーザの両側の側部領域を含み、前記両側の側部領域に沿って形成された前記第2の導波路層および前記第2のクラッド層の組合せによって、受動的な電流閉じ込めおよび横モード抑制が提供されることを特徴とする端面発光レーザ。
【請求項5】
請求項4に記載の端面発光レーザにおいて、
前記第2の導波路層およびクラッド層の組成および厚さは、前記第1の導波路層およびクラッド層の組成および厚さに対して、前記第2の導波路層の屈折率が前記第1の導波路層の屈折率よりも大きくなるように選択され、それにより熱誘起導波路の存在下で反導波レーザ構造を形成することを特徴とする端面発光レーザ。
【請求項6】
請求項4に記載の端面発光レーザにおいて、
前記第2の導波路層およびクラッド層の組成および厚さは、前記第1の導波路層およびクラッド層の組成および厚さに対して、前記第2の導波路層の屈折率が前記第1の導波路層の屈折率よりも小さくなるように選択され、それにより熱誘起導波路の存在下で横モードの制御された誘導を形成することを特徴とする端面発光レーザ。
【請求項7】
レーザ構造を製造する方法であって、
第1の導電型の半導体基板を提供するステップと、
前記半導体基板上に、前記第1の導電型のクラッド層と前記第1の導電型の導波路層を順に形成するステップと、
前記第1の導電型の導波路層の上面にわたって活性領域を形成するステップと、
前記活性領域上に、第2の逆の導電型の第1の導波路層と、第2の逆の導電型の第1のクラッド層とを順に形成するステップであって、形成された構成が、前面ファセットと反対側の後面ファセットとを有するものとして規定され、作動時に、光ビームが少なくとも前面ファセットを介して放射される、ステップと、
形成された構成の一部分から、前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の組合せを除去するステップであって、除去によって形成された露出面が再成長界面として規定される、ステップと、
第2の導電型の第2の導波路層と、第2の導電型の第2のクラッド層とを前記再成長界面上に順に形成し、それらが、伝播縦光モードと前記再成長界面との間に規定された分離を形成するように選択されるステップとを備えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、
除去するステップを実行する際に、前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の組合せのうち、前記レーザ構造の前面ファセットに近接する端部が除去され、それにより、前記第2の導電型の第2の導波路層および第2のクラッド層を順に形成するステップの間に非吸収ミラーが形成されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、
除去するステップを実行する際に、前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の組合せのうち、前記レーザ構造の電流注入領域に近接する側部が除去され、それにより、電流閉じ込めおよび横モード抑制構造が形成されることを特徴とする方法。
【請求項10】
端面発光半導体レーザであって、
半導体基板と、
前記半導体基板上に形成された第1の導電型のクラッド層と、
前記クラッド層上に形成された第1の導電型の導波路層と、
前記導波路層の規定領域上に配置された活性領域と、
前記活性領域上に形成された第2の逆の導電型の第1の導波路層と、
前記第1の導波路層上に形成された第2の導電型の第1のクラッド層であって、前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の組合せの規定された領域が除去され、除去によって露出した前記第1の導電型の導波路層の表面に沿って再成長界面を規定する、第1のクラッド層と、
前記再成長界面上に形成された第2の導電型の第2の導波路層と、
前記第2の導電型の第2の導波路層上に形成された第2の導電型の第2のクラッド層であって、前記第2の導電型の第1の導波路層およびクラッド層の組成および厚さが、伝播縦方向光モードと前記再成長界面との間に規定された分離を形成するように選択される、第2の導電型の第2のクラッド層とを備え、
前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の除去の第1の規定された領域が、当該端面発光レーザの前面ファセットに沿った凹状領域を含み、前記凹状領域に形成された第2の導波路層およびクラッド層が、当該端面発光レーザの非吸収ミラーを形成し、
前記活性領域、前記第1の導波路層および前記第1のクラッド層の除去の第2の規定された領域が、中央注入ストライプおよび導波領域を形成する電流注入領域に近接する部分に当該端面発光レーザの両側の側部領域を含み、前記両側の側部領域に沿って形成された前記第2の導電型の第2の導波路層およびクラッド層の組合せによって、受動的な電流閉じ込めおよび横モード抑制が提供されることを特徴とする端面発光レーザ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端面発光半導体レーザに関し、より詳細には、二重導波路構造を利用して、必要なレベルの注入電流の存在下でレーザの高出力性能を改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
高出力端面発光半導体レーザは、ドープされたファイバ増幅器用の高出力ポンプ光源、機械加工用の高出力切削工具、自由空間光通信システム用の高出力信号経路などを含む様々な用途において重要な構成要素となっている。
【0003】
多くの場合、長寿命、信頼性の高い安定した出力、高出力パワー、高い電気光学効率および高ビーム品質などの特徴が一般に望まれる。そのような高出力レーザの長期的な信頼性の一つの鍵は、レーザキャビティの対向ミラーを形成するために劈開されたレーザファセットの安定性に直接関係している。レーザファセットの劣化は、光、電流および熱によって引き起こされる複雑な反応であり、それにより出力が低下し、深刻な場合には、ミラー表面自体に壊滅的な光学的損傷(COD)が生じる。
【0004】
半導体レーザ構造の完全性を改善する1つのアプローチでは、構造の前面ファセット(端面)から縦方向の深さに沿って存在する活性領域材料を(例えば、エッチングプロセスを使用して)除去し、続いてパッシブ層の配置構成のエピタキシャル再成長を行うことによって、ファセットの安定性が向上する。以下で詳述するように、この再成長エピタキシャルミラーは、しばしば「非吸収ミラー」タイプのレーザファセットと呼ばれる。しかしながら、非吸収ミラーには、例えば、構造のエッチングされていない部分と、エッチングされた非吸収ミラー部分との間の結合効率の点で、あるいは、再成長界面が活性領域に近すぎて、高い吸収と、場合によってはCOD(まず第一に、回避することが意図されている)が生じる可能性があるという点で問題が残る。
【0005】
高出力端面発光レーザの性能に関する他の問題は、所望の出力レベルを得るために必要な注入電流のレベルに関連する。注入電流の存在は、注入ストライプに沿った局所的な領域の温度を上昇させて、電流注入領域の相対屈折率を、複数の横モードを導くことができる熱誘起導波路(thermally induced waveguide)を形成するのに十分な量だけ上昇させ、それにより高出力出射ビームのビーム品質を低下させることが知られている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書には、構造のアクティブ導波路部分とパッシブ導波路部分との間の光結合効率に影響を与えることなく、または再成長界面における高い吸収の可能性を生じさせることなく、端面発光半導体レーザのファセットに必要な保護を提供する端面発光半導体レーザの特定の構成が開示されている。開示の構造は、熱的に誘起される屈折率の局所的な変化を補償し、励起される横モードの数を制御するように特別に調整することができる。
【0007】
本開示の教示によれば、端面発光半導体レーザは、元のクラッド層(典型的には、それらはp型層である)の上に順に配置される第2の導波路層および第2のクラッド層を含むように作製される。第1のクラッド層が形成(成長)されると、先行技術と同様に、非吸収ミラーファセットを規定するために、構造の一部がエッチングされる。その後、第2の導波路層およびクラッド層が成長され、第1および第2の導波路層およびクラッド層の完全なスタックを含む「エッチングされていない領域」(「エピI」とも規定される)と、第2の導波路層およびクラッド層のみを含む(第2の導波路層に沿って活性領域は含まれない)「エッチングされた領域」(「エピII」とも規定される)とを形成する。一実施形態では、エピII領域が、端面発光半導体レーザの前面(発光)ファセットまたは背面ファセットにおいて非吸収ミラーの配置構成を形成するために使用され得る。二重導波路レーザ構造の他の実施形態では、一対のエピII構造を、(リッジ型構造を作成する必要なく)電流の広がりを最小限に抑えるために、端面発光レーザの中央に配置された注入ストライプの側部端面に沿って配置することができる。
【0008】
元の(第1の)導波路層およびクラッド層と、第2の(パッシブ)導波路層およびクラッド層との組合せは、以下では「二重導波路」構造とも呼ばれる。レーザの活性領域は、標準的なデバイスと同様に、第1の導波路層の下面内または下面に沿って含まれる。開示の構造における再成長界面は、第1のクラッド層と第2の導波路層との間に位置し、それにより伝播モードと再成長界面との間の垂直方向の分離を(先行技術と比較して)増大させる。
【0009】
開示の半導体レーザの垂直モードプロファイルは、元の(第1の)導波路層および関連するクラッド層の特性(例えば、厚さ、組成など)を制御して、伝播光モードが、規定された内部領域(「エピI」領域ともいう)内で再成長界面に沿って最小値(実質的にゼロ)を示すようにすることによって調整することができる。第2の導波路層およびクラッド層に適切なパラメータ(例えば、厚さ、組成など)を選択することにより、アクティブエピI領域からファセットに沿って隣接する非吸収ミラー領域(「エピII」領域ともいう)への伝播モードの効率的な結合が確保される。
【0010】
さらに、注入ストライプ領域の両側の側部に沿って含まれる一対の二重導波路構造の厚さおよび組成の制御は、上述したように注入ストライプに沿った屈折率の熱誘起変化の結果として励起される横モードの数を制御するために使用され得ると考えられる。パッシブ導波路層およびクラッド層の組成および/または寸法は、中央のアクティブ導波路と側部のパッシブ導波路との間に屈折率の段階的変化を生じさせる。材料の選択により、デバイスの横方向にわたって正の段階的屈折率変化(すなわち、反導波構成:anti-guiding configuration)または負の段階的屈折率変化(導波構成:guiding configuration)のいずれかが生じる。
【0011】
本開示の一実施形態は、端面発光半導体レーザの形態をとることができ、この端面発光半導体レーザは、半導体基板と、半導体基板上に形成された第1の導電型のクラッド層と、クラッド層上に形成された第1の導電型の導波路層と、導波路層の規定領域上に配置された活性領域と、活性領域上に形成された第2の逆の導電型の第1の導波路層と、第1の導波路層上に形成された第2の導電型の第1のクラッド層であって、活性領域、第1の導波路層および第1のクラッド層の組合せの規定された領域が除去され、除去によって露出した第1の導電型の導波路層の表面に沿って再成長界面を規定する、第1のクラッド層とを備える。さらに、このレーザ構造は、再成長界面上に形成された第2の導電型の第2の導波路層と、第2の導電型の第2の導波路層上に形成された第2の導電型の第2のクラッド層とを備え、第2の導電型の第1の導波路層およびクラッド層の組成および厚さが、伝播縦光モードと再成長界面との間に規定された分離を形成するように選択されている。
【0012】
別の実施形態は、そのような上記半導体レーザを製造する方法を含むことができ、この方法は、第1の導電型の半導体基板を提供するステップと、半導体基板上に、第1の導電型のクラッド層と第1の導電型の導波路層を順に形成するステップと、第1の導電型の導波路層の上面にわたって活性領域を形成するステップと、活性領域上に、第2の逆の導電型の第1の導波路層と、第2の逆の導電型の第1のクラッド層とを順に形成するステップであって、形成された構成が、前面ファセットと反対側の後面ファセットとを有するものとして規定され、作動時に、光ビームが少なくとも前面ファセットを介して放射される、ステップと、形成された構成の一部分から、活性領域、第1の導波路層および第1のクラッド層の組合せを除去するステップであって、除去によって形成された露出面が再成長界面として規定される、ステップと、第2の導電型の第2の導波路層と、第2の導電型の第2のクラッド層とを再成長界面上に順に形成し、それらが、伝播縦光モードと再成長界面との間に規定された分離を形成するように選択されるステップとを含む。
【0013】
本開示の他のおよび更なる実施形態および態様は、以下の説明の過程で、添付図面を参照することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
ここで、図面を参照する。
図1図1は、初期エピタキシャル成長プロセス後の先行技術の端面発光半導体レーザの構成を示している。
図2図2は、図1の先行技術のレーザの製造プロセスに続くステップを示しており、非吸収ミラーが後で形成され得る、前面ファセットに沿って凹状領域が形成される様子を示している。
図3図3は、前面ファセット領域に沿った非吸収ミラー構造の形成を含む、エピタキシャル再成長プロセスに続く先行技術の端面発光レーザの構成を示している。
図4図4は、図1図3の先行技術の端面発光レーザの側面図であり、デバイスの注入ストライプに沿って励起電流を印加する際に熱誘起導波路が発生する様子を示している。
図5図5は、活性領域上での完全なp型導波路層およびp型クラッド層の形成を含む、本開示に従って形成された端面発光半導体レーザの初期構成を示している。
図6図6は、開示のレーザ構造の製造プロセスにおける次のステップを示しており、前面ファセットにおける非吸収ミラー構造の形成に備えるために、前面ファセットに沿って活性領域の一部およびその上の導波路層およびクラッド層を除去する様子を示している。
図7図7は、第2の導波路層および第2のクラッド層のエピタキシャル成長を含み、それら層の末端部分が非吸収ミラー構造を形成している、開示の端面発光半導体レーザのその後の構成を示している。
図8図8は、活性領域(すなわち、レーザの「エッチングされていない」部分/「エピI」ともいう)を含む開示の半導体レーザの内部部分の屈折率プロファイルおよび関連するモード強度を示している。
図9図9は、非吸収ミラー構造が形成される領域(すなわち、レーザの「エッチングされた」部分/「エピII」ともいう)に関連する、開示の半導体レーザの端部分の屈折率プロファイルおよびモード強度を示している。
図10図10は、先行技術の構造内の基本モード伝播のシミュレーションであり、内部部分と関連する非吸収ミラー構造との間の貧弱な光結合を示している。
図11図11は、本開示に記載の二重導波路構造を有する半導体レーザの動作のシミュレーションであり、デバイスの内部部分の第1の(アクティブ)導波路層と、開示のレーザの前面ファセットに沿った非吸収ミラー構造の第2の(パッシブ)導波路層との間の高い結合効率を示している。
図12図12は、本開示の教示に従って形成された半導体レーザの等角図であり、伝播光モードの横方向の閉じ込めを変更するための二重導波路の配置構成の使用を示している。
図13図13は、図12のデバイスに関連するプロットのセットを含み、デバイスの中央導波領域に対する実効屈折率の正の変化を示す二重導波路構成を使用した結果を示している。
図14図14は、図12のデバイスに関連するプロットの別のセットを含み、この場合、二重導波路の特性が、中央導波領域に対する実効屈折率の負の段階的変化を示すように制御されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の原理は、その技術的詳細を、前面(発光)および背面ファセットに沿って非吸収ミラーを含むように形成された先行技術の半導体レーザのそれと比較することによって、最もよく理解されるであろう。図1は、先行技術の端面発光半導体レーザを製造するプロセスにおける中間ステップの説明図である。説明のために、図1図3は、矢印の方向に出力光を発する(すなわち、デバイス構造の前面ファセットから出射する)レーザデバイスの縦断面図である。
【0016】
図示のように、先行技術の半導体レーザ1は、基板2を含み、その上に第1のクラッド層3が成長(または堆積)される。多くの場合、半導体レーザはn型基板を利用し、第1のクラッド層3は、基板2の露出した上面上にエピタキシャル成長するn型材料である。その後、図示のように、n型導波路層4(n型クラッド層3よりも高い屈折率値を有する)が形成され、活性領域5がn型導波路層4の露出した上面を覆うように配置される。活性領域5は、伝播する光信号に利得を付与するために当該技術分野で周知の任意のタイプの構成、例えば、1または複数の量子井戸(または同様の量子構成など)を含むことができる。活性領域5の形成に続いて、初期厚さtのp型導波路層6が、活性領域5を覆うように形成される(以下で明らかな理由により、層6-1ともいう)。レーザ1の前面ファセット7Fは、図1に示す配置構成の右側の端面に沿って規定され、放出された光波は、図示のように縦方向に沿って伝播する。
【0017】
図2に示すように、ファセットの劣化を最小限に抑える先行技術のプロセスにおける次のステップは、ファセット7Fの近傍の活性領域5およびp型クラッド層6-1をエッチング除去することである。その結果、図2に示すようにエッチングされた構造は、前面ファセット7Fの位置に対して凹んだ位置で活性領域5が終端となる位置に内部段差を含む。図2に示すようなエッチング構造の上面は、(その上に追加のエピタキシャル層が形成される)再成長界面8として規定される。この特定の構造では、再成長界面8は、第1の再成長界面8-1セクション(p型クラッド層6-1のエッチングされていない上面)と、n型導波路層4の露出した表面上の第2の再成長界面セクション8-2とを含むものとして示されている。
【0018】
図3には、再成長界面セクション8-1、8-2上におけるエピタキシャル材料(p型)の成長を含む、先行技術の製造プロセスにおける後続のステップが示されている。初期成長ステップは、p型導波路層6(図3では6-2と表記される追加の導波路サブ層)の残りの所望の厚さを供給するために使用され、層6-1、6-2の厚さの組合せにより、p型導波路構造の所望の厚さが形成される。その後、p型クラッド層9が、p型導波路層6上にエピタキシャル成長される(電気コンタクト層9Cが構造の最上層として形成される)。構造の端部分内の導波路サブ層6-2とクラッド層9の組合せにより、活性領域5の終端部と前面ファセット7Fとの間に非吸収ミラー構成が形成され、それにより、生成されたレーザ発光の継続的な伝播がサポートされるが、ビームに追加のエネルギーは付与されない。
【0019】
上述したように、活性領域5と再成長界面8との間の垂直方向の分離は、デバイス性能の重要な要素である。すなわち、再成長界面8の位置によっては、レーザ構造のエッチングされていないエピI部分とエッチングされたエピII部分との間の結合効率が低くなるか、または、過成長ステップ中に再成長界面で発生し得る欠陥によって、伝播モードの吸収が高レベルとなり、CODの可能性が生じる。
【0020】
さらに、高レベルの出力パワーを生成するのに必要な条件下での端面発光半導体レーザの動作には、かなりの量の注入電流が必要であることが知られている。図4には、図3の線分4-4に沿った先行技術の断面図が示されている。レーザデバイス1の動作中、電流は、ストライプ位置Sに沿う規定された位置で注入され、その結果、注入ストライプの下の領域内の温度が局所的に上昇する。この領域の屈折率も上昇し、(図4に示すように)熱誘起導波路構造Δnが形成される。熱誘起導波路は、いくつかの不要な横モードをサポートすることができる。
【0021】
本開示の原理によれば、効率的なモード結合と熱誘起導波路の減少の両方の観点から、再成長界面を伝播光モードから遠ざけるように機能する追加のp型導波路/クラッド構造(すなわち、「二重導波路」)を含むことによって、デバイス性能が改善される。二重導波路構成は、活性領域と非吸収ミラー(すなわち、エピIとエピII)の間の結合効率を改善することが判明しており、追加の導波路層とクラッド層を含むことで、レーザ本体(エピI)内の垂直プロファイルとファセット(例えば、エピII領域)のプロファイルを個別に調整する機能が提供される。
【0022】
図5図7は、先行技術のデバイスに見られる結合効率の低下(またはCODの増加)を生じることなく1または複数のファセットに沿って所望の非吸収ミラー機能を提供するように、端面発光半導体レーザ構造に第2の(パッシブ)p型導波路層および関連するクラッド層を追加するために使用され得る一連の製造ステップを示している。図5は、製造プロセスの中間ステップにおける端面発光半導体レーザ10の一部を示している。先行技術のレーザ1の説明と同様に、端面発光半導体レーザ10は、n型クラッド層14およびn型導波路層16が形成された基板(n型)12を含むものとして示されている。その後、活性領域18が、n型導波路層16の露出した上部主表面上に形成され、活性領域18が、いくつかの既知のタイプの配置構成(量子井戸、ドット、ワイヤなど)のうちのいずれか1つを含むことができる。また、図5には、活性領域18上に第1のp型導波路層20が形成され、その後、第1のp型導波路層20を覆うように第1のp型クラッド層22が形成される様子が示されている。第1のp型導波路層20は、以下では「アクティブ」導波路層20ともいう。図5に示すような構造は、前面(発光)ファセット24Fを含むものとして規定される。
【0023】
非吸収ミラーが前面ファセット24Fにおいて配置される領域を規定するためにエッチングプロセスが実行されるのは、製造のこの時点である。これは、デバイスの前面ファセット24Fから(すなわち、レーザ構造の端部分から)凹んだ縦方向の範囲に沿って活性領域18、第1の導波路層20および第1のクラッド層22を除去する様子を示す、図6に示されている。このステップにより、活性領域18がレーザ10の内部の位置で終端となり、活性領域18に関連する高温によってレーザファセット24Fに損傷を与える可能性が減少する。
【0024】
周知のパターニングおよびエッチングプロセスを使用して、図示のような構造を作成することができる。再成長界面26は、この構造では、エッチングされていないp型クラッド層22の上面22Sに沿った第1のセクション26-1と、エッチングプロセス中に露出したn型導波路層16の表面16S上に延びる第2のセクション26-2とを含むものとして示されている。以下、図6に示すような構造を、「エッチングされていないエピタキシャル領域I」(または単に「エピI」)と「エッチングされたエピタキシャル領域II」(または単に「エピII」)とを含むものとして規定する。非吸収ミラー構造Mは、エピII内に規定される。
【0025】
図7は、再成長界面26上に第2のp型導波路層30とそれに続くp型クラッド層32を形成する次のステップを示している。特に、第2の層30、32は、再成長界面26-1、26-2の両方のセクション上に成長される。次に、コンタクト層34が第2のp型クラッド層32上に形成される。特に詳細には示さないが、レーザ発振を開始するために注入される電流は、コンタクト層34に沿って形成される中央ストライプ35の規定された位置に印加される。図7に示すような構造は、本開示に従って形成される二重導波路レーザ構造の一例として考えられる。
【0026】
以下で詳細に説明するように、レーザ構造10のエピI部分内の第1および第2の導波路層およびクラッド層の完全なスタックにより、伝播モードに対する再成長界面26-1の位置を制御することが可能になる。特に、第2の(パッシブ)導波路層およびクラッド層を含むことによって、再成長界面が第1のp型クラッド層22の上面に対して上方にシフトすることが可能になる。レーザ構造のエピII部分は、n型クラッド層14およびn型導波路層16と、第2の導波路層およびクラッド層30、32とのスタックを含む。活性領域18が構造のエピII部分には存在しないため(すなわち、第2の導波路層30は「パッシブ導波路」と呼ばれる)、形成された非吸収ミラー領域Mは、生成されたレーザ発光の前面ファセット24Fに向かう伝播をサポートするが、信号に追加の利得を与えることはない。
【0027】
本開示の原理によれば、第1のp型導波路層20および関連するp型クラッド層22の厚さおよび組成は、好ましくは、伝播縦光モードの最小値(すなわち、「ヌル」)が再成長界面26-1の位置に整列するように選択される。
【0028】
図8は、半導体レーザ10の内部部分(すなわち、上記で規定したエピIセクション)の垂直設計構成に関連する、例示的な屈折率プロファイルおよび関連する光モード強度を含む。光モードは、図8において破線で示されている。この特定の例では、光モードのピークが活性領域18と一致するように示されている。しかしながら、光モードのピークと活性領域18との重なりは、最先端の垂直高出力レーザキャビティでは必ずしも当てはまるものではないことに留意されたい。
【0029】
図7に関連して上述した方法で第1のp型導波路層20および第1のp型クラッド層22の組成および厚さを制御することによって、図8に示す屈折率プロファイルは、図8において「X」で示すように、再成長界面26-1で光モードが本質的にゼロになるようなものとなる。これは、上述したように、光モードの伝播を第1のp型導波路層20内に閉じ込める(そして再成長界面26から遠ざける)という設計目的も裏付ける。したがって、再成長界面で光モードにヌルを形成することにより、光モードはn型導波路層16および第1のp型導波路層20内に閉じ込められたままとなる。
【0030】
第2のパッシブp型導波路層30およびクラッド層32の組成および厚さを適切に選択することにより、伝播モードは、第2のパッシブp型導波路層30(すなわち、エピII)に効率的に結合されるものとなる。特に、図9は、端面発光二重導波路半導体レーザ10のエピII領域の屈折率プロファイルおよび関連する光モードフィールド(破線)を含む。パッシブp型導波路層30および第2のp型クラッド層32の特性は、レーザ構造の2つのセクション間(すなわち、エピIとエピIIとの間)の良好な結合効率を確保するように選択される。その結果、いくつかの先行技術の非吸収ミラー構成に見られるやや弱い出力とは対照的に、比較的高い光出力パワーが非吸収ミラーMから出射される可能性がある。
【0031】
開示の二重導波路構造に関連するレーザ動作の改善は、図10図11のシミュレーション図を比較することによって確認することができる。図10は、(図1図4に示すような)先行技術のデバイスと関連しており、レーザ構造のエッチングされていないエピI部分とエッチングされたエピII部分との間の比較的低い結合効率を示している。これとは対照的に、(開示の二重導波路の配置構成に関連する)図11のシミュレーションは良好な結合効率を示し、実際に、伝播光モードの100%近くが非吸収ミラー構造内のパッシブ導波路に結合される。
【0032】
開示の二重導波路端面発光レーザは、上述したように、端面発光レーザ構造の中央注入ストライプ(エピI)の両側に配置された一対の(エピIIの形態の)側部領域の形態を有するように構成することもできる。図12は、この実施例に従って、中央注入ストライプ(すなわち、中央導波領域)60を含むように形成された二重導波路レーザ構造40の一例を示しており、中央導波領域60の両方の側部に沿って配置された一対の二重導波路構造62、64を備える。
【0033】
上述した二重導波路レーザ構造10と同様に、二重導波路レーザ構造40は端面発光デバイスであり、適切な材料の半導体基板上に形成(成長)されたn型およびp型の導波路層およびクラッド層を含む。この特定の例では、二重導波路レーザ40が基板42を含み、この基板42上にn型クラッド層44およびn型導波路層46が形成されている。活性領域48は、n型導波路層46上に形成されている。また、上述した二重導波路レーザ構造10と同様に、第1のp型導波路層50および第1のp型クラッド層52が活性領域48上に形成されている。
【0034】
この特定の配置構成では、活性領域48、第1の導波路層50および第1のクラッド層52を除去するために、作成された構造の両側の側部が公知の方法でエッチングされる。再成長界面54が、このエッチングされた表面を規定し、続く第2のp型導波路層56および第2のp型クラッド層58が界面54上に成長される。その結果、図12に示すように、二重導波路構造は、第2のp型導波路層およびクラッド層56、58の一対の側部パッシブ構造(エピII)と、第1のp型導波路層およびクラッド層50、52と第2のp型導波路層およびクラッド層56、58の両方の中央の完全な「スタック」とを含む。
【0035】
レーザ構造の側部に沿って、かつその光軸に沿って縦方向に延びる二重導波路構造を含むことにより、不要な高次モードの伝播をサポートする可能性のある熱誘起導波路の特性を制御することができることも見出されている。先行技術の図4の説明で述べたように、注入ストライプ内に高い電流レベルが存在すると、電流の流れに近接する半導体層の温度と屈折率プロファイルが上昇することが知られている。この温度差によって生じる熱誘起導波路は、レーザデバイスの性能に悪影響を与える横モードをサポートすることが知られている(電流レベルが上昇して、温度/屈折率差が大きくなると、さらに悪影響が大きくなる)。
【0036】
端面発光半導体レーザ40の中央導波領域60の両側の側部に沿って二重導波路パッシブセクション62、64を含めることにより、注入電流に伴う温度上昇によって影響を受ける光学特性を制御することができる機構を提供することが提案されている。特に、パッシブ導波路/クラッド層56、58は、伝播横モードの位置をシフトさせ(エピIとエピIIの間の縦モードに提供されるシフトと同様)、それら横モードの影響/出現を最小限に抑えるように機能する。
【0037】
図12に示すように二重導波路パッシブセクション62、64を含むように半導体レーザ40を形成することにより、望ましくない横モードの励起が抑制されることが判明している。パッシブ導波路およびクラッド層62、64の厚さおよび組成は、望ましい必要なモード抑制量を提供するように調整され得る。実際に、それらの層の組成は、中央導波領域60に対して「正の」屈折率の段階的変化、または導波領域60に対して「負の」屈折率の段階的変化のいずれかを生じさせるようなものとすることができる。
【0038】
図13は、二重導波路レーザ構造40のエピII領域とエピI領域との間の屈折率の正の段階的変化の影響を示すプロットを含む。プロット(a)は、エピII(すなわち、領域62、64)の実効屈折率がエピI(すなわち、中央導波領域60)の実効屈折率よりも大きくなるように構成されている正の段階的変化自体を示している。図示のように、この正の段階的な関係は「反導波」構造と呼ばれ、実効屈折率の差はΔnantiguideとして規定される。この正の段階的な関係を有するレーザに通電すると、中央導波領域60内で生じる温度の上昇が、先行技術のレーザと同様にその実効屈折率を増加させるが(図4と比較)、反導波の追加の実効屈折率の変化は、図13のプロット(b)に示すように、領域62、64における実効屈折率の上昇をもたらす。高次の横モードは、中央領域および側部領域の実効屈折率よりも低いモード屈折率nを有することができ、抑制される。プロット(c)は、高い放射損失を生じる非導波横モードの強度を示している。
【0039】
図14には、エピIIとエピIの間の実効屈折率の負の段階的な変化を除いて、図13と同様のプロットが含まれている。この境界を横切る実効屈折率の変化は、Δnguideとして規定される。この場合、モード屈折率nを有する例示的な横モードは、図14のプロット(b)のモード屈折率nの位置によって示すように、中央活性領域60内で導波されたままであり、パッシブセクション62、64の特定の特性は、伝播フィールドに寄与する励起横モードの数を制御するように調整することができる。例えば、Δnguideの値は、縦モードの近接場幅を安定化させるために使用することができる。図14のプロット(c)は、このΔnguideの関係に関連する横モードの強度を示している。
【0040】
開示のレーザ構造は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化することができる。記載の実施形態は、すべての点で、単なる例示としてみなされるべきであり、限定的なものではない。したがって、本開示の範囲は、前述した説明によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特許請求の範囲の意義および同等の範囲内に入るすべての変更は、その範囲内に包含されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】