(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013203
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
A63B 53/04 20150101AFI20250117BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20250117BHJP
【FI】
A63B53/04 E
A63B53/04 G
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099898
(22)【出願日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】63/526,869
(32)【優先日】2023-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブ・ランベス
【テーマコード(参考)】
2C002
【Fターム(参考)】
2C002AA03
2C002CH03
2C002LL01
2C002MM04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ボールが打撃される可能性が高い場所に重心を近づけると同時に、オフセンターヒットに対する寛容性も提供する。
【解決手段】ゴルフクラブヘッド100は、20°~54°のロフトと、トップ部130、トップ部と反対側のソール部140、ヒール部120、ヒール部と反対側のトウ部110、ヒール部から延びるホーゼル部150を含む本体とを含む。ホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための開放端を有するホーゼルボアと、ゴルフクラブシャフトを支持する支持面と、支持面からソール方向に延びる補助凹部とを含み、補助凹部は、2cm
3~3.5cm
3の容積を含む。ゴルフクラブヘッドは、仮想のフェース平面を画定し、フェース中心164を有する打撃フェース160と、仮想のフェース平面に垂直で、フェース中心を通って延びる仮想の垂直中心平面166と、仮想の垂直中心平面から5mm以内の重心170とをさらに含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、仮想接地平面に対して基準位置に置かれたときに、
20°から54°の間のロフト角;
ヘッド本体であって、
トップ部と、
前記トップ部と反対側のソール部と、
ヒール部と、
前記ヒール部と反対側のトウ部と、
前記ヒール部から延びるホーゼル部であって、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された支持面とを備えたホーゼルボア、および前記支持面からソール方向に延びる補助凹部であって、2立方センチメートルから3.5立方センチメートルの間の容積を有する補助凹部を含むホーゼル部と、
フェース中心を有し、かつ、仮想のフェース平面を規定する打撃フェースとを含むヘッド本体;
前記仮想のフェース平面に垂直で、前記フェース中心を通る仮想の垂直中心平面;並びに
前記仮想の垂直中心平面から5mm以内の重心、
を含むゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記ヘッド本体は、第1の融点および第1の密度を有する第1の材料で形成されており、
前記ゴルフクラブヘッドは、さらに、前記第1の融点よりも高い第2の融点および前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料で形成された補助要素を含み、
前記補助要素は、少なくとも一部が前記補助凹部内に配置され、かつ、少なくとも一部が前記第1の材料によって包まれている、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記補助要素は、セラミック材料を含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第2の密度は2.5g/cm3以下である、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記補助要素は、4.5g以上の要素質量Maを含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記補助要素は、5.0g以上の要素質量Maを含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記補助要素は、2.5cc以上の体積を含む、請求項2に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記打撃フェースは、さらに、
前記フェース中心を含む中央領域であって、第1の平均厚さを有する中央領域、
前記中央領域の上方に位置する上部領域であって、第2の平均厚さを有する上部領域、
前記中央領域のトウ側に位置するトウ領域であって、第3の平均厚さを有するトウ領域、および
前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲み、前記中央領域と前記上部領域および前記トウ領域の各々との間に配置された中間領域であって、前記第1の平均厚さ、前記第2の平均厚さおよび前記第3の平均厚さよりも大きい第4の平均厚さを有する、中間領域を含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
キャビティバックスタイルヘッドを含む、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
ゴルフクラブヘッドセットであって、
第1のゴルフクラブヘッド、並びに、第2のゴルフクラブヘッドを含み、
前記第1のゴルフクラブヘッドは、30°から54°の間の第1のロフト、および、第1の本体を含み、
前記第1の本体は、
第1のトップ部と、
前記第1のトップ部の反対側の第1のソール部と、
第1のヒール部と、
前記第1のヒール部の反対側の第1のトウ部と、
前記第1のヒール部から延びる第1のホーゼル部であって、ゴルフクラブシャフトを受けるための第1の開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第1の支持面とを含む第1のホーゼルボア、および前記第1の支持面からソール方向に延びる第1の補助凹部であって、2.25立方センチメートルより大きい容積を有する第1の補助凹部を含む第1のホーゼル部とを含み、
前記第2のゴルフクラブヘッドは、30°未満の第2のロフトおよび第2の本体を含み、
前記第2の本体は、
第2のトップ部と、
前記第2のトップ部の反対側の第2のソール部と、
第2のヒール部と、
前記第2ヒール部の反対側の第2のトウ部と、
前記第2のヒール部から延びる第2のホーゼル部であって、ゴルフクラブシャフトを受けるための第2の開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第2の支持面とを含む第2のホーゼルボア、および前記第2の支持面からソール方向に延びる第2の補助凹部であって、1立方センチメートル未満の容積を有する第2の補助凹部を含む第2のホーゼル部とを含む、
ゴルフクラブヘッドセット。
【請求項11】
前記第2の本体は、フェース中心を有する打撃フェースをさらに含み、前記打撃フェースは、
前記フェース中心を含む中央領域であって、第1の平均厚さを有する中央領域、
前記中央領域の上方に位置する上部領域であって、第2の平均厚さを有する上部領域、
前記中央領域よりもトウ側に位置するトウ側領域であって、第3の平均厚さを有するトウ領域、および
前記中央領域を少なくとも部分的に取り囲み、前記中央領域と、前記上部領域および前記トウ領域の各々との間に配置された中間領域であって、前記第1の平均厚さ、前記第2の平均厚さおよび前記第3の平均厚さよりも大きい第4の平均厚さを有する、中間領域を含む、請求項10に記載のゴルフクラブヘッドセット。
【請求項12】
前記第2のホーゼルボアと前記第2の補助凹部とは、前記第2のホーゼル部のホーゼル軸に沿って延びている、請求項10に記載のゴルフクラブヘッドセット。
【請求項13】
前記第1の本体は、第1の融点および第1の密度を有する第1の材料で形成されており、
前記第1のゴルフクラブヘッドは、さらに、前記第1の融点よりも高い第2の融点および前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料で形成された補助要素を含み、
前記補助要素は、少なくとも一部が前記第1の補助凹部内に配置され、少なくとも一部が前記第1の材料によって包まれている、請求項10に記載のゴルフクラブヘッドセット。
【請求項14】
前記第1のゴルフクラブヘッドおよび前記第2のゴルフクラブヘッドは、キャビティバックスタイルヘッドを含む、請求項10に記載のゴルフクラブヘッドセット。
【請求項15】
ゴルフクラブヘッドの相関セットの形成方法であって、
第1の打撃フェースおよび第1のホーゼル部を含む第1のゴルフクラブヘッドを提供することであって、
前記第1のホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受けるための第1の開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第1の支持面とを含む第1のホーゼルボア、および前記第1の支持面からソール方向に延びる補助凹部であって、2.25立方センチメートルより大きい容積を有する補助凹部を含む、第1のゴルフクラブヘッドを提供すること、
前記第1のゴルフクラブヘッドの少なくとも前記第1の打撃フェースにコーティングを適用すること、
180から120の間のグリットを有する酸化アルミニウムを含む第1のメディアブラストを前記第1の打撃フェースに適用すること、
第2の打撃フェースおよび第2のホーゼル部を含む第2のゴルフクラブヘッドを提供することであって、
前記第2のホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受けるための第2の開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第2の支持面とを含む第2のホーゼルボア、および前記第2の支持面からソール方向に延びる前記第2のボアであって、1立方センチメートル未満の体積を有する第2のボアを含む、第2のゴルフクラブヘッドを提供すること、
前記第2のゴルフクラブヘッドの少なくとも前記第2の打撃フェースに前記コーティングを適用すること、並びに
酸化アルミニウムとセラミックメディアとの混合物を含み、かつ、前記酸化アルミニウムは、180から120の間のグリットを有する第2のメディアブラストを、前記第2の打撃フェースに適用すること、
を含むゴルフクラブヘッドの相関セットの形成方法。
【請求項16】
前記コーティングは、クロムメッキを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2のメディアブラストは、それぞれ、酸化アルミニウムとセラミックメディアとの体積比が8:1~10:1である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ゴルフクラブヘッドの相関セットは、複数のキャビティバックスタイルのゴルフクラブヘッドを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のゴルフクラブヘッドは、第1の融点および第1の密度を有する第1の材料で形成された第1の本体を含み、
前記第1のゴルフクラブヘッドは、前記第1の融点よりも高い第2の融点および前記第1の密度よりも小さい第2の密度を有する第2の材料で形成された補助要素をさらに含み、
前記補助要素は、少なくとも一部が前記補助凹部内に位置し、かつ、少なくとも一部が前記第1の材料によって包まれている、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記第1のゴルフクラブヘッドの前記第1の打撃フェースの少なくとも一部をレーザーエッチングすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般にゴルフクラブの分野に関する。より詳細には、本開示は、クラブヘッドの少なくともホーゼル部にインサートを有するゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
ゴルフクラブヘッド設計の目標は、クラブヘッドの重心を、スイング中にゴルフボールと最も接触する可能性が高い打撃フェース上の位置に合わせることである。これにより、ショットの精度が向上し、ゴルファーのスイングから得られるエネルギーをできるだけ多くインパクトでゴルフボールに伝えることができるため、好ましいゴルフショットを実現することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この目標を所与の質量予算の制約内で達成することはしばしば困難である。いくつかの例では、慣性モーメントを増加させ、それによってオフセンターヒットでの「寛容性」を追加するために、アイアンまたはウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに周囲加重を追加することができる。しかしながら、そのような特徴は、スイートスポットの位置に悪影響を及ぼす可能性がある。したがって、クラブヘッドのある部分から別の部分に重量を個別に移動させて、ゴルフボールが打撃される可能性が高い場所に前記重心を近づけると同時に、オフセンターヒットに対する寛容性も提供する設計の必要性が存在する。
【0004】
本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッドは、基準位置に置かれたとき、20°から54°の間のロフト、および本体とを含み、前記本体は、トップ部と、前記トップ部と反対側のソール部と、ヒール部と、前記ヒール部と反対側のトウ部と、前記ヒール部から延びるホーゼル部とを含む。前記ホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された支持面とを有するホーゼルボア、および前記支持面からソール方向に延びる補助凹部を含み、前記補助凹部は、2立方センチメートルから3.5立方センチメートルの間の容積を有する。前記ゴルフクラブヘッドは、仮想のフェース平面を画定し、かつ、フェース中心を有する打撃フェース、前記仮想のフェース平面に垂直で、前記フェース中心を通って延びる仮想の垂直中心平面、および、前記仮想の垂直中心平面から5mm以内の重心をさらに含む。
【0005】
本開示の1つまたは複数の態様によるゴルフクラブヘッドセットは、第1のゴルフクラブヘッドを含む。基準位置に置かれたときに、前記第1のゴルフクラブヘッドは、30°から54°の間の第1のロフト、および第1の本体を含み、前記第1の本体は、第1のトップ部と、前記第1のトップ部と反対側の第1のソール部と、第1のヒール部と、前記第1のヒール部と反対側の第1のトウ部と、前記第1のヒール部から延びる第1のホーゼル部とを含む。前記第1のホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受けるための第1の開放端と、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第1の支持面とを有する第1のホーゼルボア、および前記支持面からソール方向に延びる補助凹部を含んでおり、前記補助凹部は2.25立方センチメートルより大きい容積を有する。前記セットは、第2のゴルフクラブヘッドを含む。第2のゴルフクラブヘッドは、30°未満の第2のロフト、および、第2の本体を含み、前記第2の本体は、第2のトップ部と、前記第2のトップ部と反対側の第2のソール部と、第2のヒール部と、前記第2のヒール部と反対側の第2のトウ部と、前記第2のヒール部から延びる第2のホーゼル部とを含む。前記第2のホーゼル部は、ゴルフクラブシャフトを受けるための第2の開放端を有する第2のホーゼルボアと、前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第2の支持面と、前記支持面からソール方向に延びる第2のボアとを含み、前記第2のボアは1立方センチメートル未満の容積を有する。
【0006】
ゴルフクラブヘッドの相関セットの形成方法は、第1のゴルフクラブヘッドを提供することであって、前記第1のゴルフクラブヘッドは、第1の打撃フェースと、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための第1の開放端を有する第1のホーゼルボア、および前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第1の支持面を含む第1のホーゼル部と、前記第1の支持面からソール方向に延びる補助凹部とを含み、前記補助凹部は、2.25立方センチメートルより大きい体積を有する第1のゴルフクラブヘッドを提供すること、前記第1のゴルフクラブヘッドの少なくとも前記第1の打撃フェースにコーティングを適用すること、並びに前記第1の打撃フェースに、180から120の間のグリットを有する酸化アルミニウムを含む第1のメディアブラストを適用すること、を含む。前記方法はさらに、第2のゴルフクラブヘッドを提供することであって、前記第2のゴルフクラブヘッドは、第2の打撃フェースと、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための第2の開放端を有する第2のホーゼルボア、および前記ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された第2の支持面を含む第2のホーゼル部と、前記第2の支持面からソール方向に延びる第2のボアとを含み、前記第2のボアは、1立方センチメートル未満の容積を有する第2のゴルフクラブヘッドを提供すること、前記第2のゴルフクラブヘッドの少なくとも前記第2の打撃フェースにコーティングを適用すること、並びに前記第2の打撃フェースに、酸化アルミニウムとセラミックメディアとの混合物を含み、かつ、前記酸化アルミニウムは、180と120との間のグリットを有する第2のメディアブラストを適用すること、を含む。
【0007】
本開示の様々な態様によるゴルフクラブヘッドおよびその製造方法のこれらおよび他の特徴および利点は、以下の説明、図面、および添付の特許請求の範囲に関して検討すれば、より明らかになるであろう。以下に記載される説明および図面は、例示のみを目的とするものであり、本発明の範囲をいかなる形でも限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一つ又は複数の態様による例示的なゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の例示的なゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一つ又は複数の態様による例示的なゴルフクラブヘッドのヒール側の立面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿ったゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図5】
図5は、ホーゼルが取り除かれた
図3のゴルフクラブヘッドの正面斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿ったゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図7】
図7は、
図3のゴルフクラブヘッドを製造する例示的な方法を示す。
【
図8】
図8は、
図3のゴルフクラブヘッド内のインサートの拡大図である。
【
図9】
図9は、
図8のインサートを設計する方法の一部として、複数のクラブヘッドの重なりを示す。
【
図10】
図10は、
図7の方法の第2ステップから得られるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図11】
図11は、
図7の方法の第3ステップから得られるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図12】
図12は、
図7の方法の第4ステップから得られるゴルフクラブヘッドを示す。
【
図13】
図13は、本開示の1つ以上の態様に従った、ゴルフクラブヘッドを製造する例示的な方法を示す。
【
図15】
図15は、本開示の1つ以上の態様によるゴルフクラブヘッドの背面図である。
【
図18】
図18は、
図17のXVIII-XVIII線に沿ったゴルフクラブヘッドの断面図である。
【
図20】
図20は、本開示の第2の実施形態によるゴルフクラブヘッドの背面斜視図である。
【
図25】
図25は、本開示の第3の実施形態によるゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図30】
図30は、本開示の別の実施形態によるゴルフクラブヘッドのポートフォリオを示す正面図である。
【
図31】
図31は、バウンスオプション#1および#2のゴルフクラブヘッドの特性を示す。
【
図33】
図33は、様々なゴルフクラブヘッドのロフトとCGyとを比較したプロットである。
【
図34】
図34は、様々なゴルフクラブヘッドのロフトとIyyとを比較したプロットである。
【
図35】
図35は、様々なゴルフクラブヘッドのロフトとIyy/CGyとを比較したプロットである。
【
図36】
図36は、例示的なゴルフクラブヘッドの様々なパラメータを列挙した表である。
【
図38】
図38は、例示的なゴルフクラブヘッドのR
2モデリングを示す。
【
図39A】
図39Aは、様々なゴルフクラブヘッドの Spk/Sk とのプロットを示す。
【
図39B】
図39Bは、様々なゴルフクラブヘッドの Svk/Sk とのプロットを示す。
【
図40】
図40は、本開示の第4の実施形態によるゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図42】
図42は、本開示の第4の実施形態の別のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【
図44】
図44は、本開示によるキャビティバッククラブヘッドの打撃フェースの例示的な後面の部分背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1および
図2に示されるのは、本開示の1つ以上の態様によるゴルフクラブヘッド100である。このゴルフクラブヘッドの本体は、トウ部110と、トウ部の反対側のヒール部120と、トップ部130と、トップ部の反対側のソール部140とによって境界を画定され得る。クラブヘッドを対応するシャフト(図示せず)に固定するためのホーゼル部150がヒール部から延びていてもよく、ホーゼル部は、仮想の中心ホーゼル軸152を規定することができる。
【0010】
クラブヘッドは、その前方部分に打撃フェース160をさらに含むことができる。打撃フェースは、仮想の打撃フェース面76に概ね一致し、打撃フェース面76と中心ホーゼル軸152との間で定まる工場で指定されたロフト角でゴルフボールに接触するように配置される、前方部分の実質的に平面状の外面部分である。打撃フェースは、打撃フェースと打撃されたゴルフボールとの間のトラクションを増大させる表面特徴で形成され、(例えば、濡れた状態での)ボールとの良好な接触を保証し、かつ、例えば、飛行中の安定性のため、または、打撃されたゴルフボールがバックスピンによって地面に戻った後の静止位置をより良く制御するために、ボールにある程度のスピンを付与してボールとの良好な接触を保証することができる。複数の実質的に平行な水平溝またはスコアライン162は、打撃フェースから凹んでいてもよい。打撃フェース上にテクスチャパターンを形成するために、スケールの小さい様々な特徴を考慮してもよい。
【0011】
打撃フェースは、概ね平面状の打撃フェース160とソール部140との間に形成される接合部を構成するリーディングエッジ161を含むことができる。リーディングエッジ161は、最前方点165を含む(
図1および
図3参照)。仮想の垂直中心平面166は、リーディングエッジ161の最前方点165を通過している。打撃フェースは、フェース中心164を含み得る。本明細書で使用されるフェース中心とは、クラブヘッドの打撃フェース上の点であって、スコアラインの最もトップ側の範囲と最もソール側の範囲との中間にあり、垂直中心平面166を通過する点を指す。いくつかの実施形態では、例えば、
図1に示す実施形態では、フェース中心は、好ましくは、スコアラインの最もヒール側の範囲と最もトウ側の範囲との中間に位置する。しかしながら、代替的な実施形態では、フェース中心は、スコアラインの最もヒール側の範囲と最もトウ側の範囲との中間に位置しない。例えば、スコアラインは、リーディングエッジの輪郭から横方向にオフセットしていてもよいし、スコアラインは打撃フェースのトウ部まで完全に延びていてもよい。フェース面に垂直な仮想の垂直中心平面166がクラブヘッドの前後方向にフェース中心を通って突出することがあり、ゴルフクラブヘッドの重心170がその仮想の垂直中心平面から間隔を置かれることがある。例えば、
図1において、重心は、仮想の垂直中心平面からヒール方向に間隔を置いてもよい。重心は、仮想の垂直中心平面から5mm未満の距離172で間隔を置いてもよく、より好ましい実施形態では、その仮想の垂直中心平面から2.5mm未満の間隔を置いてもよい。
【0012】
ゴルフクラブヘッドは "基準位置"にあるものとして
図1に示されている。本明細書において、"基準位置 "は、クラブヘッドのソール部が、ホーゼル部の仮想の中心ホーゼル軸152が仮想の垂直ホーゼル平面に位置し、スコアライン162が仮想接地平面10に対して水平に配向されるように仮想接地平面10に接触する、ゴルフクラブヘッド(例えば
図1のクラブヘッド)の位置を示す。別段の指定がない限り、本明細書で説明されるすべてのクラブヘッドの寸法は、クラブヘッドが基準位置にある状態で測定される。
【0013】
図1および
図2のゴルフクラブヘッドは、好ましくは、ウエッジ型クラブヘッドのようなアイアン型クラブヘッドを含み、好ましくは、39°以上のロフト角を有していてもよい。より好ましくは、ゴルフクラブヘッドは、特定のゴルファーによって「プレーヤー」タイプのクラブヘッドと呼ばれることもある伝統的なブレードタイプのクラブヘッドであってもよい。そのようなものとして、また
図2に示されるように、クラブヘッドの後部180は、上部ブレード部182および下部マッスル部184を含んでも良い。上部ブレード部は、好ましくは、実質的に平面状の表面からなり、したがって、好ましくは、実質的な周囲加重特徴を欠いていてもよい。マッスル部は、打撃フェースの平面に垂直な方向に上部ブレード部分から後方に突出してもよい。ゴルフクラブヘッドの質量は一般にマッスル部に集中し、そのため重心170はフェース中心よりソール側に位置する。そして、
図2に具体的に示すように、ゴルフクラブヘッドの慣性モーメント(「MOI」)Izz 186は、重心を通る仮想垂直軸187について測定され、ゴルフクラブヘッドのMOI Iyy188は、仮想接地平面に平行で、ヒールからトウの方向に延び、同様に重心を通る仮想水平軸189について測定される。当業者に知られているように、MOIは一般に、オフセンターゴルフボールインパクト時のある軸を中心とする回転に対するクラブヘッドの自然な抵抗を増加させることと相関している。
【0014】
本開示の一つ以上の態様のゴルフクラブヘッドは、好ましくは、他の「プレーヤー」タイプのゴルフクラブヘッドと比較して、ヒール部またはホーゼル部の下部からソール/マッスル部またはホーゼル部の上部に離散的に重量を移動させ、それによって重心をフェース中心に近づけ、すなわち、経験豊富なゴルファーが打撃フェース上でゴルフボールを打つ可能性が高い場所に移動させ、それに対応して垂直方向(Izz)および水平方向(Iyy)の両方のMOIを増加させる内部構造を有する。このような内部構造を有する例示的なゴルフクラブヘッドを以下に説明する。これらの例示的なクラブヘッドの各々は、
図1および2に関連して上述した本体構造を含むことができる。
【0015】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った、本開示の一態様によるゴルフクラブヘッドの断面を示す。図に示されるように、このクラブヘッドのホーゼル部150は、ホーゼル部の開放された最上端156からホーゼル部内に深さ155を延びるホーゼルボア154を含む。このボアは、上部の内径157と底部の内径158とを有していてもよく、これらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。そして、ホーゼルボアは、その底部において、仮想の中心ホーゼル軸152に向かって内側に突出する金属棚159で終端してもよい。ホーゼル部側壁は(ゴルフクラブヘッド本体の残りの部分と同様に)、好ましくは、鋼のような第1の材料、および/または、密度が8g/cm
3以上、および/または、融点が1600℃以下である材料で形成された第1の構成要素を構成することができる。そして、好ましくは、ホーゼルボアの底部で測定されるホーゼル部側壁の最小厚さ151は、ゴルフショットの振動フィードバックに悪影響を及ぼすことなくホーゼル部の構造的完全性を確保するのに十分であり得る。例えば、この最小厚さは、0.5mm以上であってもよく、より好ましくは0.75mm以上であってもよい。
【0016】
ホーゼルボアの底部の下方には、第2の、または補助的な、構成要素(すなわち、「補助インサート」)として機能するインサート190があってもよい。補助インサートは、仮想の中心ホーゼル軸152と同軸である中心軸を有する実質的に円筒形の部分192(
図8)を含むことができる。このインサートはまた、ゴルフクラブヘッドのヒール輪郭に概ね適合するように形作られたヒール部分を含むことができる。このインサートは、セラミックなどの補助材料で形成されてもよく、好ましくは、第1の構成要素の融点よりも高い融点および第1の構成要素の密度よりも低い密度を有してもよい。そのようなものとして、インサートは、ゴルフクラブヘッドにおいて約5g未満の質量を有してもよく、ゴルフクラブヘッドの全体質量に対して、インサートの質量は1.5%未満であってもよい。このインサートは、少なくとも60重量%の酸化アルミニウム(Al
2O
3)で構成することができる。より具体的には、このセラミックインサートは、(重量で)20%のSiO
2、10%のZrO
2、および、70%のAl
2O
3から構成されてもよいが、これらの割合はそれぞれ約10%まで変化することができる。セラミックの組成を調整することにより、インサートの材料特性は、重量配分目標、例えば、慣性モーメントの増加、より低い、及び/または、より中心化された重心位置、または、打撃時の特定の振動周波数を達成するように調整され得る。インサートはまた、(i)15MPaの結合強度、(ii)40%以下、好ましくは30%の気孔率、(iii)30%の吸着性、(iv)2500℃を超える融点、及び(v)好ましくは3g/cm
3以下、より好ましくは2g/cm
3以下の密度を有することができる。しかし、インサートの組成と同様に、インサートの結合強度、多孔性、吸着性及び密度は、特定の重量配分目標を達成するために変化する可能性がある。
【0017】
図5のVI-VI線の断面である
図6に示すように、インサート190は、ゴルフクラブヘッドのホーゼル部からヒール部へと延びることができる。また、このインサートは、ゴルフクラブヘッドの様々なMOI値に影響を与える可能性がある。例えば、垂直方向のMOI Izzは、好ましくは2500g・cm
2以上、より好ましくは3000g・cm
2以上であり、水平方向のMOI Iyyは、1000g・cm
2を超える場合がありえる。
【0018】
図7~
図12は、
図3~
図6のゴルフクラブヘッドを形成する例示的な方法200を示す。第1のステップ210において、インサートは、例えば、射出成形によって形成することができる。
図8は、この第1の形成ステップの後のインサート190の一実施形態を示している。このインサートは、好ましくは、コンピュータ支援設計(「CAD」)プログラムにおいて様々なクラブロフトを重ね合わせ、ホーゼル及び/またはヒール部分の完全性のための最小限の鋼の壁厚さなどの必要な制約を考慮しながら、それらのクラブヘッドの重なり領域を選択することによって設計することができる。例えば、
図9は、46°、54°及び64°のロフトを有するクラブヘッドの重なり合う領域に形成されたインサートを示す。この設計プロセスは、ゴルフクラブヘッドのロフト及びソール形状ごとに新しいインサートを設計する必要がないため、製造上の懸念を緩和し、様々なコスト上の利点を提供し得る。1つ以上の実施形態において、最小の鋼の壁厚さは、0.5mm以上、より好ましくは0.75mm以上である。
【0019】
図7に示す第2のステップ220において、ゴルフクラブヘッド本体は、次に、その中にインサートを少なくとも部分的に、好ましくは実質的に完全に封入するように、インサート190の周りに、例えば、ロストワックス鋳造によって形成することができる。このステップの結果は
図10に示されており、この図では、インサートは、ホーゼルボアの底部の金属棚159の下だけでなく、ホーゼルボアを通り、ホーゼル部150の最上端156の開口を越えて延びるように示されている。次に、インサートの上部194、すなわち、ホーゼル部の最上端の開口部を超えてホーゼルボア内に延びる部分は、
図7に示す第3ステップ230において、例えば、機械加工によって除去することができる。この第3のステップの結果である
図11に示すように、ホーゼルボア154及びホーゼル部の最上端156は、ゴルフクラブシャフトを受け入れることができるように開くことができ、インサート190は、ホーゼルボアの底部を画定する金属棚159の下方に延びることができる。
図11にも示すように、インサートは、スコアラインの最もヒール側の部分のトウ側に延びている。好ましくは、インサートは、少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも2mm、さらに好ましくは少なくとも3mm、最もヒール側の部分よりもトウ側に延びる。したがって、裁量質量は、質量特性、例えばクラブヘッドの重心の位置(例えば、重心高さ、打撃フェースからの重心深度、フェース中心からの重心横方向距離)及び慣性モーメント、特にIyyの望ましい組み合わせを達成するためにより適したクラブヘッドの部分に増加して再配置される。この中央領域への補助インサートのより大きな延長は、それ自体、重心のトウ方向への横方向シフトをもたらし、ブレード状のアイアンタイプ、例えばウェッジタイプのクラブヘッドの従来の形状のために重心がヒール方向に位置する自然の傾向に対抗することができる。さらに、補助インサートのトウ方向へのより大きな延長は、以下にさらに説明するように、より大きなインサート体積及びインサート質量を意味する。補助インサートは、好ましくは、本体の密度よりも低い密度を持つので、裁量質量が増加し、それによって、そのような裁量質量の選択的な再配置によって、慣性モーメント、例えば、Izz及びIyyの大きな増加を可能にする。本明細書に記載された方法で構成されたような補助インサートは、ショットの分散、感触、及びインパクト時の音響的考察を含む性能に有害な影響を与えることなく、記載された方法で延びることができることが発見された。さらに、好ましくは、そのようなゴルフクラブヘッドがクラブヘッドの相関セットにおいて提供される実施形態において、補助インサートの複数のスコアラインの最もヒール側の部分からのトウ側への延長は、ロフトの関数として、セット内のクラブヘッドの中で異なる。例えば、より低いロフトのゴルフクラブヘッドの形状及び質量は、より大きな質量(従って体積)の補助インサートを許容することができる。
【0020】
そして、
図7の最終ステップ240において、その結果が
図12に示されているが、インサートキャップ196がホーゼルボア内に導入されて金属棚159に載ることがある。アルミニウムまたはABSプラスチックで形成され得るこのインサートキャップは、シャフトの先端とインサートの最上端との間に保護バリアを提供し得る。他の実施形態では、シャフトの先端がホーゼルボア内に固定される場合、インサートの最上端がエポキシ層によって覆われるため、インサートキャップは必要ない場合がある。このようにインサートの周りにゴルフクラブヘッドの本体を形成することによって、そうでなければより密度の高い金属材料によって満たされるはずの空間が、代わりに、例えばセラミック材料によって占められる。このようにして、ホーゼル及びヒール部から質量が選択的に除去され、それによって、重心をフェース中心に近づけるという目的が達成される。
【0021】
他の例示的なクラブヘッドは、本発明の精神及び範囲内であると見なされる。例えば、
図13に示され、
図7の方法のように、まず、第1のステップ310で、例えば、射出成形によってインサート390を形成し、次に第2のステップ320で、例えば、ロストワックス鋳造によってゴルフクラブヘッドの本体をインサートの周りに形成してもよい。しかし、第3のステップ330において、ホーゼル部のホーゼルボアを形成するようにインサートの上部のみを除去する代わりに、ホーゼルボアの下に内部空洞を形成するようにインサートのより多くを除去することができる。より具体的には、
図14に示すように、内部空洞を形成するために、インサートの一部392、例えば、少なくとも50体積%、または全てを、例えば、機械的撹拌、化学エッチング、または電解エッチングによって除去することができる。いくつかの側面では、インサートは、水または水溶液に高い溶解度を有する材料で構成される場合がある。このような態様では、インサートは、ゴルフクラブヘッドから容易に溶解して、空洞を形成することができる。この空洞は、次に、後に固化するポリマーフォームなどの材料をそこに注入することによって、
図13の第4のステップ340で充填されることがある。この第4のステップは、したがって、クラブヘッド内に振動減衰材料を導入するか、または、例えば、ポリマー材料の密度を変化させることによって重心の位置をチューニングすることができる。そして、
図7の方法と同様に、次に、第5のステップ350で、ホーゼルボアの底部を画定する金属棚に載るようにインサートキャップをホーゼルボア内に導入することができる。
【0022】
さらに他の例示的なクラブヘッドも、本発明の精神及び範囲内にあるものと考えられる。例えば、
図15~
図19の例示的なゴルフクラブヘッド400に示すように、インサート490は、ゴルフクラブヘッドのソール部またはトウ部までさらに遠くまで延びても良い。このインサートは、実際には、ヒールからトウまでの全距離を延びる可能性がある。このような構成は、一般にこのようなインサートを収容するためにより大きなソール容積を有する「ゲーム向上」タイプのゴルフクラブヘッドにおいて、より実現できる可能性がある。「ゲーム向上」クラブヘッドを使用するゴルファーは、インサートが打撃フェースに延びることによって生じる音及び/または感触の変化も、あまり不快に感じないかもしれない。実際、インサートの存在は、振動減衰効果を提供し、オフセンターのインパクトでの感触を改善することができる。そして、
図17のゴルフクラブヘッドのXIX-XIX線に沿った断面である
図19に示すように、高密度部分492が、トウ部においてインサートと共に成形されるか、または他の方法でインサート内に位置することがある。この高密度部分は、金属材料、例えば、タングステン合金であってもよく、10g/cm
3を超える密度を有することができる。このような高密度部分をインサート内に含めることは、ゴルフクラブヘッドのトウ部に質量を加えてMOIを高めることができ、ゴルフボールを打つときのゴルフクラブヘッドの感触を改善することができ、最終的に製造コストを低減することができるので有益であり得る。
【0023】
上記の構造的な進歩、例えば、相対的に横方向の中心に重心を維持しながら裁量的な質量を増加させることに基づいて、ゴルフクラブヘッドを特に意図された使用者に適合させる際に、より大きな注意が払われる可能性がある。質量の望ましい再配置を考慮する際に、クラブヘッドの打撃フェースに関する複数の位置のそれぞれについて、インパクト確率を代表するモデルが生成される。次に、特定の性能特性、例えば、インパクト時のボール速度及び/又は平均キャリーの飛距離が、打撃フェースに関する複数の位置の各々で測定される。確率モデルをこのような性能特性に関連付けることにより、このような情報を集約し、それに基づいて、プレー中のゴルフショットの大きなサンプリングにわたってゴルファーが達成すると期待できるものを代表する全体的な性能値を計算するシステムが生成され得る。
【0024】
このようなモデルの生成と実行の結果、さまざまな属性が比較的許容され、又は、さらなる操作の場合に最小限のリターンをもたらすとみなされた。しかし、他の属性は、さらに操作するのに適していると見なされた。言い換えれば、ある属性を変化させると他の属性に悪影響を及ぼす可能性がある場合、確率に基づく総合的な性能を用いたモデルを採用することで、最も望ましい属性の組み合わせを指し示すことができる可能性がある。
【0025】
特に、例として、Iyy を増加させることは、より大きな検討に値すると考えられた。ウエッジ型ゴルフクラブヘッドの場合、ゴルファーは、(低ロフトのアイアン型ゴルフクラブと比較して)上下方向の変動が大きい打撃フェースでゴルフボールをインパクトする傾向がある。しかし、重心の横方向の位置は、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの重要な特性であることに変わりはない。他のゴルフクラブヘッドの側面も特に重要であり、例えば、打撃フェース上のスイートスポットの高さである。
【0026】
これらの理由から、スイートスポットの高さ及び比較的中央に位置する重心の横方向の配置のような様々な望ましい特性をほぼ維持し、又は少なくともそれらの操作を制限し、Iyyを大幅に増加させるような他の特性を操作することを優先したいという要望がある。
【0027】
特性のより望ましいこの組み合わせは、様々な方法で達成することができる。例えば、及び、上述のように、低密度インサート190は、より大きな質量、より大きな体積、したがって、ゴルフクラブヘッド全体のより大きなパーセント体積及びパーセント質量を含んでいてもよい。
【0028】
第1に、本発明者らは、許容できる閾値以下にゴルフクラブヘッドの構造的完全性を低下させることなく、より大きなインサート質量が実施可能であると判断した。第2に、複数の異なる低密度インサートが、複数のロフト可変ゴルフクラブヘッドのセット又はポートフォリオ又は提供物にわたって実施される場合、より大きなインサート体積が達成され得る。補助インサートが、セット又はポートフォリオの全ての異なるロフト(及びその他の点で異なる)のクラブヘッドにわたって単一の同一構造の構成要素に限定されていた場合、低密度インサートが適合し得る設計包絡線は、そのような全てのゴルフクラブヘッドを同じ向きで互いに重ね合わせた正味の重複空間と見なされることになる。その代わりに、複数の異なる低密度インサートを異なるロフトのクラブヘッドのセットに組み込むことが許容される場合、低密度インサートごとに重ね合わされるクラブヘッドが少なくなるか、全く重ね合わされない必要がある。その結果、一般に、設計の包絡線はより大きくなり、セット又は提供物全体にわたってより大きな全体的な設計の自由を許容することができる。
【0029】
上記によれば、低密度インサートは、好ましくは、4g/cc以下、より好ましくは、3g/cc以下、さらに好ましくは、2.5g/cc以下、さらに好ましくは、約2g/ccに相当する密度を有する。追加的または代替的に、低密度インサートは、4g以上、より好ましくは5.5g以上、より好ましくは6g以上、さらに好ましくは6gから8gの範囲内の質量、Maを有する。ここで質量が大きくなると、必然的に自由裁量の質量も大きくなるが、この場合の上限は実際の製造上の考慮事項を考慮したもので、これは、通常の使用例の範囲でクラブヘッドの構造的完全性を維持するという観点から、質量に下向きの圧力をかける傾向がある可能性がある。さらに、スコアラインの最もヒール側の部分よりもトウ側に補助インサートを延長することによって質量が増加する範囲では、クラブヘッドの中心位置近くで質量が除去されると、クラブヘッドの先端の位置からの質量除去に対してMOIに対する影響が小さくなる可能性があるため、利点が減少する可能性がある。追加的または代替的に、低密度インサートは、2cc以上、より好ましくは2.75cc以上、より好ましくは2.75ccから4ccの範囲内の体積を含む。この範囲は、補助インサートの質量に関して説明した同様の考察を反映している。
【0030】
追加的または代替的に、いくつかの実施形態では、補助インサート質量Maは、クラブヘッドの全体質量Mhに比して相対的に大きな割合を構成している。クラブヘッド全体の質量Mhは、少なくとも250g、及び/又は、320gを超えないことが好ましい。より好ましくは、Mhは、275g以上であり、310g以下である。最も好ましくは、Mhは、285gから305gの範囲内である。好ましくは、比Ma/Mhは0.0185以上であり、いくつかのそのような実施形態では0.020以上である。さらに、いくつかのそのような実施形態では、比Ma/Mhは、0.0185から0.0275の範囲内である。このようなパラメータは、クラブヘッドのより有益な領域に再配置するために自由裁量質量がどの程度生成されるかを意味し、また、有益でない領域から質量がどの程度除去されるかを意味し、それによって、例えば、本明細書に記載されるように、フェース中心に対し比較的横方向の中心に重心位置が維持され得る。
【0031】
しかしながら、上述のように、複数の低密度インサートを異なるロフトのクラブヘッドのセット又は提供物に適用することで、少なくとも特定のロフトに関して、より大きな設計の自由度が得られる。前記提供物とは、本明細書で使用される場合、単一の製品ラインとして意図され、かつ、見えるように、同様の美的及び機能的特性を有する複数の製品を指し、ユーザーは、ゴルフクラブまたはゴルフクラブヘッドのセットまたはセットの一部を構成するために、提供物から提供物の製品のすべて、または、すべてよりも少ない製品のセットを選択することが期待される。本明細書で使用されるセット、または相関セットは、組み合わせて販売されるか、または販売されるように提供される、類似または相関する機能性、及び/または、美観を有する複数の製品を指す。したがって、上記に加えて又は代替的に、低密度インサート体積は、好ましくは、以下の方法でセット又は提供物全体にわたってロフトに関連する:
体積≧0.0279cc/°*ロフト+0.7805cc
【0032】
一例として、
図30を参照すると、ゴルフクラブヘッドの様々なセットが配置され得るゴルフクラブヘッドのポートフォリオが、上記開示に従って示されている。ポートフォリオは、ゴルフクラブヘッドの第1のサブセット、500A~500Dの各々は、好ましくは同じ効果のバウンス(バウンスオプション#1)を共有するが、ロフトが漸次変化するものを含む。このポートフォリオはまた、ゴルフクラブヘッドの第2のサブセットであって、それぞれが同じ第2のバウンス(バウンスオプション#2)を共有しながら、ロフトについて漸進的に変化する、第2のサブセットを含む。アイアン型、より具体的にはウエッジ型クラブヘッドの第1の相関セットは、第1のサブセットの中から選択された少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つの異なるロフトを有するクラブヘッドを構成することができる。クラブヘッドの相関セットは、同様に、第2のサブセットの中から選択された2つ以上の異なるロフトのクラブヘッドを構成すると考えることができる。いくつかの代替実施形態では、相関セットは、異なる有効バウンス属性を有する異なるロフト付きクラブヘッドで構成され得る。 バウンスオプション#1及び#2のクラブヘッド及びインサートの特性は、
図31に示されている。ゴルフクラブヘッド500A~500Hはそれぞれ、本開示に従って低密度インサート190A~190Fのうちの1つを含み得、低密度インサートは、
図32A~32Hに示すような特性及び形状を有する。
【0033】
図32A~32Hのチャート及び画像に示されるように、したがって、固有のロフトを有する少なくとも4つのクラブヘッドのゴルフクラブヘッドのセット(例えばセットまたは提供物568)、例えばウエッジ型ゴルフクラブヘッド群は、(
図1に関して説明した態様で)ある特定のロフトのクラブヘッドから別の異なるロフトのクラブヘッドまで異なる、及び/または、別の特性、例えば提供するバウンスの変動で異なる低密度インサートを含みうることが企図される。より詳細には、少なくとも6つの固有の補助インサート(190A、190B、190C、190D、190E、及び190F)が、ロフト及び有効バウンスのいくつかの組み合わせにおいて様々に異なるクラブヘッドのポートフォリオ568に具現化される。いくつかの実施形態では、ポートフォリオの各ユニークなクラブヘッドに対して、ユニークな補助インサートが提供される。しかしながら、好ましくは、やはりいくつかのクラブヘッドが、ポートフォリオの中から、同様の、又は同一の補助インサートを負担する。したがって、より大きな裁量質量が達成され、この裁量質量は、クラブヘッドのより望ましい領域に再配置され、また、質量除去が望ましいと思われるクラブヘッドの領域、例えば、ヒール部の近傍、及び/または、y軸(すなわち、クラブヘッドが仮想接地平面に対して基準位置に置かれたときにクラブヘッドの重心を通る水平なヒール・トウ軸)の近傍から除去され得る。ひいては、Iyyがさらに増大する可能性がある。
【0034】
好ましくは、上述のように低密度インサートを大きくすることと組み合わせて、質量はクラブヘッドの様々な末端、好ましくはホーゼル部に近接して再配置される。例えば、低密度インサートを組み込んだ結果、ホーゼルが長くなることがある。好ましくは、ホーゼル長は、78mm以上、より好ましくは80mm以上、さらに好ましくは約85mmに等しいが、好ましくは90mmを超えない。いくつかのそのような実施形態では、ホーゼル長はロフトの関数と考えることができ、より低いロフトのクラブヘッドはより低いホーゼル長を備え、より高いロフトのクラブヘッドはより大きいホーゼル長を備える。例えば、約42°から約52°のロフトを有する
図1の実施形態によるクラブヘッドは、約75mmと約82mmとの間、より好ましくは約80mmのホーゼル長を備えることができるが、約56°から約64°のロフトを有する
図1の実施形態によるクラブヘッドは、約83mmと88mmとの間、より好ましくは約84mmのホーゼル長を備えてもよい。この態様において、慣性モーメント特性はさらに改善される。例えば、Iyyは、質量がy軸に対してより垂直方向に離れた領域に再配置されるにつれて増加すると考えられる。Izzは、質量が、Izzが測定されるz軸に対してより横方向に離れた領域に再配置されるにつれて、増加する可能性がある。さらに、このような属性は、確率的な観点から、インパクトのばらつきはロフトがあるほど大きくなるという考えを利用しており、それによって、ロフトによるIyyの増加に起因する見返りが増加する。さらに、質量がヒール方向の位置の近傍で除去され、ホーゼルの近傍に再配置されることを考慮すると、重心の望ましい横方向(ヒール・トウ)の位置が概ね維持され得る(軸からの距離の変化は、重心位置よりもMOIに著しく大きな影響を与える)。好ましくは、重心670は、仮想の垂直中心平面666から、5mm以下の距離D7(例えば、
図22参照)を有する。しかしながら、低密度インサートのより大きな質量及び体積を提供すると、この寸法に対するさらに大きな強化が達成され得る。したがって、D7は、より好ましくは2.5mm以下であり、さらに好ましくは1.25mm以下である。
【0035】
さらに、重心670は、好ましくは、正の値が後方に対応する打撃フェースへの法線を測定した打撃フェース面676からの深さD5、(
図23参照)が、2.5mm以下、より好ましくは2.25mm以下、さらに好ましくは2mm以下となる。いくつかの実施形態では、重心の深さは、重心が打撃フェースの前方にあることを示す負の値であり得る。そのような実施形態は、大量の裁量的質量がホーゼルに組み込まれることにより、特に実行可能である。これらの値は、一方では、定性的には、ゴルフクラブヘッドが、外観及び/または感触において、ブレード状、またはソリッドであることを示す。他方で、これらの値は、クラブヘッドのスイートスポットが打撃フェース上で比較的低いことを示すものとして機能し、これは、インパクト時に有益なスピンを生成するゴルフクラブヘッドの能力を考慮して、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに関して特に望ましい特徴と見なされることがある。
【0036】
追加的または代替的に、重心の深さD5は、好ましくはクラブヘッドのロフトに関係する。例えば、好ましくは、D5≦7.69mm-0.074mm/°*L、より好ましくは、D5≦7.19mm-0.074mm/°*Lとされる。これらの関係は、絶対形としてD5を形成することに関連する上述の利点を保証するが、D5がクラブのヘッドロフトに相関して変化する自然な傾向を考慮に入れている。
【0037】
上記構成に基づき、Iyyは、好ましくは1000g・cm2以上、より好ましくは1100g・cm2以上である。さらに、または代替的に、Izzは、好ましくは3000g・cm2以上、より好ましくは3250g・cm2以上、さらに好ましくは3300g・cm2以上である。これらの値は、上記のような確率に基づくモデルを用いて打撃フェースに関する位置の配列にわたって考慮される予想されたボールのキャリー距離及び/または予想されたボールインパクト速度を増加させると考えられ、それによってゴルフクラブヘッドの全体的に予想される性能を増加させる。
【0038】
図23を参照すると、追加的または代替的に、クラブヘッドのスイートスポット678は、仮想接地平面10から垂直に測定された、好ましくは24mm以下、より好ましくは19mmと23mmとの間の高さ、D1を有している。関連して、重心は、好ましくは22mm以下、より好ましくは19mmから21.5mmの範囲内の高さD3を有する。追加的または代替的に、クラブヘッドは、打撃フェース面から後方に、打撃フェース面に垂直な方向に測定された、好ましくは23mm以下、より好ましくは22mm以下、さらに好ましくは17mmから22mmの範囲内の全体深さ、D4を有している。クラブヘッドは、フェース中心とクラブヘッドの最もトウ側の部分との間の横方向距離であるトウ幅寸法D2をさらに有する。D2は、好ましくは44mm以上、より好ましくは45mm以上、さらに好ましくは45mmから48mmの範囲内である。追加的又は代替的に、クラブヘッドは、ホーゼル部を除くクラブヘッドの本体の垂直方向の範囲であるクラブヘッド高さ寸法D6を含む。高さD6は、好ましくは38mm以上であり、より好ましくは39mmから49mmの範囲内である。
【0039】
上述のように、確率に基づくモデリングの観点から、Izzを維持またはあまり強化せずに、Iyyを強化することがより望ましい場合があることが企図されている。したがって、Iyy/Izzの比は、好ましくは0.25以上、より好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.30以上、さらに好ましくは0.32以上である。好ましくは、そのような比率は、0.30から0.35の範囲内にある。このような特性は、クラブヘッドの全体的な確率論的な期待性能をさらに向上させる。
【0040】
上記に加えて、クラブヘッドのロフトは、ゴルフクラブヘッドの様々な質量関連パラメータ間の適切なトレードオフを確立し、したがってそれを支配する関係において特に重要な役割を果たすことが発見された。例えば、確率的な観点から、ロフトを増加させると、クラブヘッドの打撃フェースについて垂直方向により大きなユーザーインパクトの変動が生じることが信じられている。この発見により、Iyy がロフトに応じて変化する態様に焦点が当てられ、特に、ロフトが増加するにつれてIyy を増加させることに大きな注意が払われ、場合によっては、重要性が低いと考えられる他の属性が犠牲にされることになる。
【0041】
したがって、Iyyは、クラブヘッド(又はクラブヘッドのセット又はポートフォリオの2つ、3つ、又は好ましくは全てのクラブヘッド)について、以下の方法でロフトに関連することが好ましい:
Iyy≧16.63g・cm2/°×L+114g・cm2
【0042】
ロフトの増加とともに Iyy を増加させることが望ましいが、そのような目標は、フェース中心からの重心の横方向の間隔(実用的にはD7)の増加という代償を払うことになるかもしれない。D7の多少の増加は許容されると考えられるが、そのような不用意な増加を制限する閾値が依然として適用されることが好ましい。その結果、Iyy、D7及びロフトは、好ましくは次のように関係付けられる:
Iyy/D7≧527.4g・cm/°×L-23580g・cm
より好ましくは、Iyy、D7及びロフトは、以下のような関係にある:
Iyy/D7≧527.4g・cm/°×L-22170g・cm
さらに好ましくは、Iyy、D7及びロフトは、以下のような関係にある:
Iyy/D7≧527.4g・cm/°×L-20760g・cm
【0043】
追加的または代替的に、D7は、以下の方法でクラブヘッド(又はクラブヘッドのセット又はポートフォリオの2つ、好ましくは3つ、より好ましくは全てのクラブヘッド)についてのロフトに関連する:
D7≦10.1mm-0.135mm/°×L
より好ましくは、D7は、クラブヘッド(又はクラブヘッドのセット又はポートフォリオの2つ、好ましくは3つ、より好ましくは全てのクラブヘッド)についてのロフトに、以下の態様で関係する:
D7≦8.75mm-0.135mm/°×L
このような関係により、慣性モーメント、特にIyyを上げる努力、特に高ロフトのクラブヘッドについて、D7の不注意な増加による性能の不必要な全体的損失が生じないようにする。
【0044】
追加的または代替的に、Iyyは、好ましくは、以下の方法でロフトに関連する:
Iyy≧16.63g・cm2/°×L+114g・cm2
【0045】
これらの関係の独自性は、本開示の例示的な実施形態を既知の先行技術のゴルフクラブと比較する
図33~
図36の表及びプロットから例示的に示され得る。本明細書において、「CGy」は、定義上、D7と同等である。
【0046】
上述したように、ウェッジタイプのゴルフクラブヘッドに特有の求められる1つの特徴は、インパクト時にバックスピンを発生させる能力である。スイートスポットの位置及び慣性モーメントなどの上述の特徴に加えて、他のゴルフクラブヘッドの側面が、バックスピン生成に寄与するのを助けることができる。いくつかのそのような属性は、打撃フェースの表面粗さ特性である。
【0047】
アイアンタイプ、例えばウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの打撃フェースの表面粗さは、プロゴルフのプレーを管理する規則を公布する組織、例えば米国ゴルフ協会(USGA)によって様々な方法で規制されている。特に、USGAは、表面粗さの態様を制限する規則を含む、機器を管理する規則を公布している。これらの規則は、一部、平均表面粗さRaを180μinに制限すると考えられている。しかし、平均表面粗さは、表面の特性を表現する一つの方法に過ぎない。そのため、この許容範囲内であれば、複雑な表面変化も可能である。
【0048】
したがって、ウエット状態でのプレーに特に注目して、表面仕上げ工程の適切な選択によって、全体的な性能、例えばバックスピン量を高めることができることが見出された。好ましくは、上述の方法で形成されるスコアラインとは別に、打撃フェースは、好ましくはメディアブラストによってテクスチャー化される。
【0049】
1つ以上の実施形態において、打撃フェースは、好ましくは、メディアブラストを含む表面処理プロセスによってテクスチャー化される。特定のプロセス、及びそこから得られる構造は、全体的なバックスピン発生を上昇させ、より具体的には、ウエット状態におけるバックスピン量を著しく上昇させることが示されている。したがって、そのようなプロセスを使用し、および/または、そのような仕上げを生成することにより、ドライ状態とウエット状態との間に存在すると通常理解されるスピン性能のギャップが最小限に抑えられ、その結果、全体的なバックスピン量が大きくなるだけでなく、使用中のクラブヘッド性能がより安定する。
【0050】
いくつかのそのような実施形態では、クラブヘッドの打撃フェースを表面仕上げする工程は、コーティング、好ましくはクロムメッキを適用する第1のステップを含む。好ましくは、メッキを施すステップに続いて(しかしオプションとしてその前に)、打撃フェースにメディアブラストを施す第2のステップが発生する。クロムメッキ表面を適用するステップは、ウエット状態において特に効果的であり、それによって、上述のように、ドライ状態とウエット状態との間のスピン性能のギャップを最小化するのに役立つと考えられている。
【0051】
追加的または代替的に、表面テクスチャーは、クラブヘッドの相関セット、例えば上述したクラブヘッドの相関セット内のクラブヘッドからクラブヘッドまで変化する。
【0052】
より詳細には、例示として、いくつかの実施形態では、メディアブラストのステップは、好ましくは、180から120のグリットを有する酸化アルミニウムを適用することを含む。しかしながら、他の場合、特に特定のロフトを考慮すると、このステップは、180から120グリットの酸化アルミニウムとセラミックメディアとの混合物を構成するメディアを適用することを含む。好ましくは、そのような混合物は、酸化アルミニウムとセラミックとの体積比8:1~10:1、より好ましくは酸化アルミニウムとセラミックの体積比が約9:1である。
【0053】
ゴルフクラブヘッドのポートフォリオ又は相関セット、例えば本明細書に記載のクラブヘッドのポートフォリオ及びセットに関して、好ましくは、1つまたは複数の高ロフトクラブヘッドは、180~120グリットの酸化アルミニウムを構成するメディアブラストを受けるが、これは、好ましくは、クロムメッキされた打撃フェース表面には適用されない。さらに、好ましくは、同じポートフォリオまたはセットの1つ以上の中間ロフトのクラブヘッド(すなわち、高ロフトのクラブヘッドより少ないロフトを有する1つ以上のクラブヘッド)は、類似または同様のメディアブラストを受けるが、そのようなメディアブラストがクロムメッキされた表面に適用されることが追加される。さらに、好ましくは、同じポートフォリオまたはセットの1つまたは複数の低ロフトのクラブヘッド(すなわち、中間ロフトのクラブヘッドよりも小さいロフトを有する1つまたは複数のクラブヘッド)は、酸化アルミニウムとセラミックとの混合物、好ましくは酸化アルミニウムの体積比が大きく、より好ましくは酸化アルミニウムとセラミックとの体積比が8:1から10:1、さらに好ましくは酸化アルミニウムとセラミックとの体積比が約9:1のメディアブラストを受ける。さらに好ましくは、1つまたは複数の低ロフトクラブヘッドについて、メディアブラストは、好ましくはクロムメッキされた表面に適用される。メディアブラスト混合物にセラミックを組み込むことは、純粋な酸化アルミニウムほど表面に影響を与えず、その結果、ロフトに特有の性能期待と一致する表面粗さ効果が得られるという点で有益であることが示されている。さらに、メディアブラストがクロムメッキ基材の打撃フェースに適用される場合、クロム層が摩耗して下地表面が露出し、その結果、そのような下地表面の錆/酸化の懸念が生じないことが好ましい。メディアブラストの特定の選択、およびブラスト時間およびブラスト角度などのそのようなメディアブラストの適用を管理するパラメータに加えて、クロム層は、下層の表面が露出するような形で磨耗しないのに十分な厚さを有するように適用されることが好ましい。追加的または代替的に、好ましくはメディアブラストのステップに続く第3のステップが、最終的な、仕上げられた打撃フェースのテクスチャーにさらに影響を与えるように実施される。好ましくは、レーザーエッチングが打撃フェースに施される。さらに、セット又はポートフォリオの場合、レーザーエッチングは、ロフトの関数として変化する方法で適用される。例えば、いくつかの実施形態では、レーザーエッチングプロセスは、スコアライン間に介在する水平「線」をもたらす。「線」は、幅が狭く、それに比して長さが大きいフェースの領域を画定するテクスチャー領域に対応する場合がある。このようなレーザーエッチング領域は、もっぱらヒールからトウの方向に延びる単一の水平な「線」に対応することもあれば、あるいは、それぞれが同一直線上にあるが離散的である複数の線分に対応することができ、したがって、例えば、点線状の外観を形成することもある。そのようなレーザーエッチング領域は、さらに、周囲の打撃フェース部分に対して特に深い構造的特徴を有すると特徴付けることができる。より好ましくは、レーザーエッチングプロセスは、水平な「線」と、角度(例えば、仮想地面に対して、打撃フェースの平面で測定して、5°~80°、より好ましくは15°~60°)で延びる角度の線分の組合せをもたらす。好ましくは、水平線の数(したがって濃度)は、ロフトとともに増加する。さらに好ましくは、角度のついたレーザーエッチング領域の角度は、ロフトの増加とともに増加する(また好ましくは、打撃フェースの単位面積当たりのレーザーエッチング領域の全体的な濃度を増加させる)。部分的には、そのようなレーザーエッチング領域は、正確でRaの許容誤差を減少させる効果を有する方法で信じられる、さらなる粗面化を提供し、したがって、USGAの制限に近いRa値を目標とすることを可能にする。レーザーエッチング領域の追加は、特にウエット状態の場合にもスピン性能を向上させることが示されている。さらに、このようなレーザーエッチングは、ゴルファーに対して、異なるロフトのクラブヘッドごとの表面粗さの相対的な程度を視覚的に示す手がかりとなる。
【0054】
いくつかの特定の実施形態では、「未加工("raw")」又はメッキされていない仕上げが望まれる。一部のゴルファーは、そのような審美的かつ機能的な表面仕上げを好むからである。このような場合、打撃フェースには、錆びや酸化を最小化又は防止することを目的とした犠牲コーティング又は他のコーティングが施されていない場合がある。いくつかのそのようなケースでは、錆び又は酸化を特に促進するために、追加のコーティング又は化学物質の適用が導入される。このような場合、錆を抑制する表面を侵食するリスクは関係ない場合があり、したがって、例えば、メディアのグリットに関する制限はあまり気にする必要がない場合がある。したがって、例えば、未加工の仕上げを意図するクラブヘッドのセット又はポートフォリオの場合、メディアグリットのより大きなバリエーションを適用することができる。例えば、いくつかのそのような実施形態では、1つ又は複数の高ロフトクラブヘッドは、60グリットの酸化アルミニウムでメディアブラストされ、中間ロフトクラブヘッドは120グリットの酸化アルミニウムで、そして低ロフトクラブヘッドは180グリットの酸化アルミニウムでメディアブラストされ得る。特に、60グリット酸化アルミニウムメディアは、例えばクロムメッキされたクラブヘッドの場合、好ましくは適用されない。しかしながら、そのようなグリットの適用を可能にするために、例えばクロム蒸着層を厚くする方法を調整することによって、代替のプロセスを適用することができる。
【0055】
構造に関しては、上記のプロセスは、独特の表面特性をもたらし、好ましくは、セット又はポートフォリオの場合にはロフトによって変化する態様である。好ましくは、任意の個々のクラブヘッドに関して、表面テクスチャー特性は、部分的にはロフトの関数である。
【0056】
全体として、閾値の問題として、完成した打撃フェースは、好ましくは、USGA(及び同様の規制機関)によって公布された用具規則を満たす。上述したように、そのような規則は、一般に、180μin を超えない平均表面粗さRaを有する、アイアンタイプのクラブヘッドにおけるフェーステクスチャ(スコアラインを除く)を含むと理解される。USGAの用具規則はまた、アイアン型クラブヘッドのあらゆる打撃テクスチャ(スコアラインを除く)のRzを、1000μinを超えないRzに制限するものと理解される。したがって、好ましくは、ロフトに関係なく、上述の表面仕上げ工程から得られるゴルフクラブヘッドは、180μinを超えないRaを有し、好ましくは、1000μinを超えないRzを有する。実際、クラブヘッドのポートフォリオまたはセットの場合、Raは、好ましくは、セットまたはポートフォリオの2つ、より好ましくは3つ、最も好ましくは全ての異なるロフトのクラブヘッドの間で概ね一定である。例えば、ロフトが異なるセット又はポートフォリオの2つ、3つ、又は全てのクラブヘッドについて、Raは、好ましくは120μinから180μin、より好ましくは140μinから180μinの範囲内に維持される。
【0057】
それにもかかわらず、ロフトの変化に対するRaの相対的な一貫性にもかかわらず、他の標準的な表面粗さパラメータが焦点となることが好ましく、ロフトの関数として変化することが好ましい。例えば、上述のメディアブラストの変化は、高い(そしてロフトとともに漸増する)発達した界面の展開面積比Sdrと相関すると考えられている。このパラメータは、実用的には、表面の相対表面積と関連していると考えられるかもしれない。表面積を増やすことは、Sdrの観点から測定可能であると考えられており、特にウェットスピン条件においてスピン性能の大幅な向上をもたらすことが示されてきた。
図1に関して上述したゴルフクラブヘッドの打撃フェース面は、好ましくは1%以上、より好ましくは2%以上、さらに好ましくは3%以上のSdrを有する。このような値は、金属フェース、エラストマーゴルフボールコーティング及び水分間のユニークな相互作用を提供し、バックスピン生成に関して高い性能を生成する動的相互作用をもたらす。さらに、そのような好ましい性能結果は、
図1の実施形態に関して上述した質量属性(例えば、重心位置、及び慣性モーメント特性)と組み合わせた、そのような表面粗さ属性の特定の相乗的結果を達成すると考えられる。
【0058】
追加的または代替的に、Sdrはロフトの関数として変化し、したがって好ましくはゴルフクラブヘッドの相関するセットまたはポートフォリオ内で変化する。例えば、共通のセットの異なるロフトのクラブヘッドのSdr値間の絶対差は、好ましくは 0.75%以上、より好ましくは 1.0%以上である。 そのような変動及び値は、
図37A及び
図37Bに示されるプロットにおいてさらに示される。好ましくは、そのような変動は、46°~52°の範囲のロフトを有する第1のクラブヘッドと、56°~64°の範囲のロフトを有する第2のクラブヘッドとの間で生じる。
【0059】
平均表面粗さRa及びおそらく多くの一般的な表面粗さパラメータの場合と同様に、単一の属性が、さらなる追加の条件なしに、結果として生じる現象を純粋に示すことは稀である。例えば、本開示による例示的なクラブヘッドのR
2モデリングを示す
図38のプロットに示されるように、Sdrは、性能と高い相関性を有すると考えられている。
【0060】
しかしながら、高い表面積が比較的均一に分散している表面は、スピン性能の大幅な向上に対応する主要な要因であるとさらに信じられている。上記の複雑な動的相互作用は、部分的には、水分の凝集特性、表面張力特性及び基材材料の吸着特性に作用すると考えられている。言い換えれば、高いSdrを不注意に、しかし不均一な方法で負担する表面は、本明細書で達成される有益な結果を生じない可能性がある。一例として、実用的な観点から、この区別を定量化するための有用な手段は、さらに別の一般的な計量パラメータである「コア部に対する突出谷深さ比」、すなわちSpk/Skにある。
【0061】
追加的又は代替的に、上記実施形態のクラブヘッドの打撃フェースは、好ましくは、
図39A及び39Bのプロットに示されるように、2以下、より好ましくは1以下のSpk/Skを有する。
【0062】
追加的または代替的に、クラブヘッドのポートフォリオに係る実施形態に関して、好ましくは、かかるポートフォリオは、ロフトとは別に特性が異なるウェッジタイプのクラブヘッドを含む。例えば、クラブヘッドのポートフォリオは、好ましくは、例えば、低バウンスオプション、ミッドバウンスオプション及びフルバウンスオプションのような、変化するバウンスの提供を含む。そのような場合、変化するソールグラインド特徴と関連して、リーディングエッジ半径は、低バウンス、ミッドバウンス及びフルバウンスの各ケースで変化する。具体的には、好ましくは、リーディングエッジ半径は、ローバウンスからミッドバウンスへ、及び、ミッドバウンスからフルバウンスへ増加する。
図20~
図24において、別のクラブヘッドの実施形態が示されている。
図20~
図24のゴルフクラブヘッド600は、好ましくは、
図1の実施形態に関して上述したすべての特徴及び特性を含むが、外形輪郭及び外観において異なる。例えば、このクラブヘッド600は、好ましくは、顕著な質量特徴612、例えば、打撃フェース660の後方でクラブヘッドの上部トウ領域610に位置する三角形の質量特徴を含む。さらに好ましくは、第1剛性要素614及び第2剛性要素616は、打撃フェースの後面682に配置される。このような要素は、クラブヘッドの構造的完全性を確保することをさらに容易にする一方で、
図1の実施形態に関して上述した潜在特性を達成するための裁量的質量を増加させる。
【0063】
図25~29において、別のクラブヘッドの実施形態が示されている。
図25~
図29のゴルフクラブヘッド700は、好ましくは、
図1の実施形態に関して上述したすべての特徴及び特性を含むが、外観の輪郭及び外観が異なる。例えば、このクラブヘッド700は、好ましくは、顕著な質量特徴712、例えば、打撃フェース760の後方でクラブヘッドの上部トウ領域710に位置する三角形の質量特徴を含む。さらに、好ましくは、
図29に関して具体的に説明すると、メダリオン714が打撃フェースの後面782に固定され、好ましくはカバーの形態のインサート716がクラブヘッドの後面部780の下部(例えばマッスル部)の上面に関連付けられる。ゴルフクラブヘッド700は、一般に、ブレード状のウェッジタイプのゴルフクラブヘッドの形をとる。しかしながら、このクラブは、具体的には、例えば、クラブヘッドをより高いハンディキャップレベルのゴルファーに適応させるハイブリッド特徴を有する、「ゲーム向上」スタイルのウェッジタイプのクラブヘッドを構成することができる。例えば、マッスル部は、好ましくは本体の密度より大きい密度を有する、その中に質量特徴及び/または後部に設けられた質量インサートを有する凹部を含むことができる。例えば、そのような挿入物は、8g/cc以上、より好ましくは、10g/cc以上の密度を有することができる。連続性については、一方が好ましくはクラブヘッドのヒール部720に近接して位置し、他方が好ましくはクラブヘッドのトウ部710に近接して位置する凹部は、上述のカバーによって覆われる。カバーは、クラブヘッドの後面部780の下側のマッスル部に、例えばファスナー及び/またはプレスフィットなどのインターロックフィットによって機械的に固定され得る。代替的または追加的に、化学接着剤を適用して、カバーをクラブヘッドのかかる後方部分に接着することができる。さらに、いくつかの実施形態では、特に
図28を参照すると、クラブヘッドの打撃フェース760は、打撃フェースの全体にわたって実質的に延びる複数のスコアライン762を含むことができる。そのようなことは、ゴルファーがショット選択においてより大きな柔軟性を有するだけでなく、より高いハンディキャップのゴルファーの場合には、より大きな寛容性を有することを可能にする。そのような特徴はまた、
図1の実施形態に関して上述したように、ゴルフクラブヘッドに適用される潜在質量特性から利益を得る。このような要素は、
図1の実施形態に関して上述した潜在的特性を達成するための任意の質量を増加させながら、クラブヘッドの構造的完全性を確保することをさらに容易にする。
【0064】
図40~44は、さらに別のクラブヘッドの実施形態を示す。特に断りのない限り、
図40~44に示され説明されているゴルフクラブヘッドは、
図1の実施形態に関して上述された特徴および特性を実質的に含んでいる。さらに、特に
図40および42に関して示され説明されているゴルフクラブヘッドは、相関関係にある一連のクラブヘッドの部品であり、好ましくは、相関関係にある一連のゴルフクラブヘッド内の1つ以上の他のゴルフクラブ(またはクラブヘッド)を代表するものである。一連のゴルフクラブヘッドには、
図40~44に示され説明されているものと同様の特徴を含む追加のゴルフクラブヘッドが含まれる場合があることを理解すべきである。
【0065】
ゴルフクラブヘッドのセットは、アイアンタイプのゴルフクラブヘッドのセットを含むことができる。そのため、ゴルフクラブヘッドのロフトは、18度から56度の範囲、または20度から54度の間で異なる場合がある。いくつかの例では、ゴルフクラブヘッドのセットは、「ゲーム向上」スタイルのアイアンタイプのクラブヘッドを含んでいる場合がある。本明細書で説明するゴルフクラブヘッドのセットには、キャビティバックスタイルのゴルフクラブヘッドが含まれる場合があるが、ゴルフクラブヘッドのセットには、さらに、または代替として、中空スタイルのゴルフクラブヘッドが含まれる場合があることを理解されたい。
【0066】
図40は、ゴルフクラブヘッドのセットの第1のゴルフクラブヘッド800の正面図を示す。ゴルフクラブヘッド800は、ロフトの高いアイアンを含んでいる場合があり、その場合、ロフト角は30度から54度の間である。しかしながら、
図40に関して示され、説明されているゴルフクラブヘッド800の特徴は、ロフトが30度未満、または、54度よりも大きいアイアンタイプのゴルフクラブヘッドに組み込むことができる。ゴルフクラブヘッド800は、本体802を含むことができる。本体802は、トップ部804、トップ部と反対側のソール部806、トウ部808、および、トウ部808と反対側のヒール部810を含むことができる。本体802は、さらに、ヒール部810から延びるホーゼル部812を含むことができる。ホーゼル部812は、ゴルフクラブのシャフトを受け入れるための開放端816を備えたホーゼル穴814と、ゴルフクラブのシャフトを支えるように構成された支持面818とを含むことができる。
【0067】
いくつかの例では、ゴルフクラブヘッド800は、少なくとも一部が補助凹部820内に位置する補助部品822を含むことができる。前述のように、補助部品822は、ゴルフクラブヘッド800の本体802とは異なる材料で形成することができるため、本体802とは異なる材料特性を含むことができる。いくつかの例では、補助部品822は、少なくとも部分的に本体802によって包まれている場合がある。補助部品822は、先に説明したインサート190と実質的に類似している場合がある。補助部品822は、補助凹部820と実質的に同様の容積を含んでいる場合がある。さらに、補助部品は、4.0g以上、4.5g以上、または5.0g以上の質量を含んでいる場合がある。
【0068】
図40に示されるように、アイアン型クラブヘッド内に補助部品822を組み込むと、特に補助部品822の密度がクラブヘッド本体または少なくともホーゼル領域の隣接部分よりも低い場合、任意の質量を増やして、クラブヘッドのより適切な部分に再配置することができ、質量特性、例えばクラブヘッドの重心の位置(例えば、重心の高さ、打撃面からの重心の深さ、およびフェース中心からの重心の横方向の間隔)と慣性モーメント、特にIyyまたはIzzとの望ましい組み合わせを実現することができる。
【0069】
図40に示すように、補助凹部820および対応する補助部品822は、ヒール部810からトウ部808に向かって延びていてもよい。いくつかの例では、補助凹部820および補助部品822は、ゴルフクラブヘッド800の打撃フェース826に形成されたスコアライン824のヒール側の最延長部823までしか延びていない。あるいは、いくつかの例では、補助凹部820および補助部品822は、スコアライン824のヒール側の最延長部823よりもヒール側の場所で終わっていてもよい(
図40に示すように)。
【0070】
図41は、補助凹部820と、補助凹部820内に配置された補助部品822とを有するゴルフクラブヘッド800の背面図を示す。前述のように、ゴルフクラブヘッド800には、打撃壁の背面に配置された周囲重み付け要素828が含まれ、周囲重み付け要素828は後方に開いたメインキャビティを定義し、これにより、クラブヘッドをキャビティバックスタイルのアイアン型ゴルフクラブヘッドとして任意に識別することに貢献する。
【0071】
図42は、ゴルフクラブヘッドのセットの第2のゴルフクラブヘッド900の正面図を示している。ゴルフクラブヘッド900は、例えば、
図41のクラブヘッドのロフトよりも小さい第2のロフトを有するロフト付きアイアンを含むことができる、その場合、30度未満のロフトを含むことができる。しかし、
図42に関して示され説明されているゴルフクラブヘッド900の特徴は、いくつかの例では、ロフト角が30度を超えるアイアンタイプのゴルフクラブヘッドに組み込まれても良い。ゴルフクラブヘッド900は、本体902を含むことができる。本体902は、トップ部904、トップ部904と反対側のソール部906、トウ部908、および、トウ部908と反対側のヒール部910を含むことができる。本体902は、ヒール部910から延びるホーゼル部912をさらに含んでもよい。ホーゼル部912は、ゴルフクラブシャフトを受け入れるための開口端916を有するホーゼルボア914と、ゴルフクラブシャフトを支持するように構成された支持面918とを含んでもよい。ホーゼル部912は、支持面918からソール方向に延びる第2のボア920も含んでもよい。いくつかの例では、第2のボア920およびホーゼルボア914は、ホーゼル部912のホーゼル軸922に沿って延びている。いくつかの例では、第2のボア920は、約(例えば、+/-0.1cc)1.0cc未満、約0.75cc未満、または約0.7cc未満の容積を有してもよい。
【0072】
いくつかの例では、第2のボア920は空であるか、または第2のボア920はインサートまたは補助部品によって部分的にまたは全体的に占有されている可能性がある。第2のボア920が占有されている例では、第2のボア920は、
図40および41に関して示され、かつ、説明されている補助部品と同様の補助部品によって占有されている可能性がある。ただし、第2のボア920内に配置されたインサートは、第2のボア920の容積内に収まるサイズになる。
【0073】
図43は、ゴルフクラブヘッド900の背面図を示す。前述のように、ゴルフクラブヘッド900には、打撃壁の背面に配置された周囲重み付け要素924が含まれ、キャビティバックスタイルのアイアン型ゴルフクラブヘッドとしてのクラブヘッド900のアイデンティティに貢献する。
【0074】
いくつかの例では、クラブセット内のロフトの低いクラブヘッド(例えば、30度未満)の1つ以上は、補助凹部を省略し、例えば、代替の特徴を優先して、しっかりと構築されたホーゼル部を有し、一方、好ましくは、ロフトの高いクラブヘッド(例えば、ロフトが30度を超えるクラブヘッド)の1つ以上は、このような補助凹部を含む。例えば、クラブヘッド900は、可変のフェース厚さを有する打撃フェース926を含むことができる。いくつかのそのような実施形態では、このような可変のフェース厚さパターンは、ロフトの高いクラブヘッドの1つ以上では存在せず、または、代替として、ロフトの高いクラブヘッドの1つ以上における第2の可変のフェース厚さパターンとは異なる。
【0075】
図44は、クラブヘッド900の打撃フェース926の例示的な後面928の部分背面図を示す。
図44に示すように、後面928には、上部領域、中央領域、トウ領域、および下部領域に凹部が含まれる。より詳細には、後面928には、後面928の周囲に隣接する上部領域溝またはチャネル930、トウ領域溝またはチャネル932、および下部領域溝またはチャネル934が含まれる。中央領域凹部936(または主凹部)は、上部領域溝930、トウ領域溝932、および、下部領域溝934の間の中央領域に形成される。中間領域938は、中央領域凹部936と、上部領域溝930、トウ領域溝932、および、下部領域溝934のそれぞれを囲む。さらに、中間領域938の平均厚さは、中央領域凹部936、上部領域溝930、トウ領域溝932、および下部領域溝934のそれぞれよりも大きい。
【0076】
このような可変フェース厚さは、ロフトの低いアイアンでは補助凹部の提供による恩恵が少ないため、補助凹部および補助部品の代わりにロフトの低いアイアンで使用することができる。その代わりに、可変フェース厚さは、同様の応力限界、外観、及びクラブヘッド全体の重量を維持しながら、クラブヘッド900の質量及び性能特性を改善することができる。いくつかの例では、改善された質量および性能特性は、例えば、クラブヘッド900の反発係数(COR)、特性時間(CT)、慣性モーメント(MOI)、および/または重心(CG)位置を含み得る。いくつかの例では、キャビティバック又は中空ボディのアイアンタイプのクラブヘッドは、クラブヘッド900の質量、および/または、性能特性を改善するために、クラブヘッドの打撃フェースからクラブヘッドの他の領域へ裁量的な重量を移動させることを可能にする改善された可変フェース厚さパターンを有する。有利には、そのようなクラブヘッドは、同様の応力限界を維持しながら、同等のクラブヘッドよりも、打撃フェース上のより高いCOR、より高いMOI、およびより横方向に中心があり、より深く、より低いCG位置などの、改善された質量および性能特性を有することができる。加えて、そのようなクラブヘッドは、一部のプレーヤーに好まれうる伝統的な外観、寸法(例えば、ブレードの長さ、トップラインの厚さ)、及びクラブヘッド全体の重量(例えば、スイングウェイト)を犠牲にしない。
【0077】
いくつかの例では、上述した可変フェース厚さの特徴に加えて、または、その代わりに、ロフトの低いアイアン(例えば、30度未満)の1つまたは複数は、クラブセットのロフトの高い(例えば、30度と54度との間)クラブの1つまたは複数の打撃フェース826に適用される表面処理とは異なる、ゴルフクラブヘッド900の打撃フェース926に適用される表面処理を含むことができる。
【0078】
例えば、第1のゴルフクラブヘッド800は、第1のゴルフクラブヘッド800の少なくとも打撃フェース826に施されたコーティングを受けることができる。そのようなコーティングはクロムメッキを含み得る。コーティングが打撃フェース826に適用されると、第1のメディアブラストが打撃フェース826に適用されてもよい。第1のメディアブラストは、酸化アルミニウムなどのメディアを組み込んでよく、および/または180~120の間のグリットを有してよい。
【0079】
代替的に、または、それに加えて、第2のゴルフクラブヘッド900も同様に、クラブヘッド800に関して説明したフェースコーティングに類似しているが、好ましくは異なるコーティングを、第2のゴルフクラブヘッド900の少なくとも打撃フェース926に施してもよい。このようなコーティングは、クロムメッキを含む。コーティングが打撃フェース926に適用されると、第2のメディアブラストが打撃フェース926に適用される。この場合の第2のメディアブラストには、前述のクラブヘッド800のフェースコーティングに関して組み込まれたメディアとは異なるメディアが組み込まれることが好ましい。このような違いは、例えば、メディアの組成および/またはメディアの粒度にある。例えば、好ましくは、第2のメディアは、酸化アルミニウムとセラミックメディアとの混合物を含んでおり、酸化アルミニウムは、180と120との間のグリットを有する。第2のメディアブラストは、それぞれ、8:1~10:1の酸化アルミニウムとセラミックメディアとの体積比を含んでいてもよい。より高いロフトのクラブセットおよびより低いロフトのクラブセットを表面仕上げする異なる方法は、様々なショットタイプにわたって、および様々な条件下で、より望ましいスピン特性をもたらす可能性があり、これは、ゴルフクラブセット全体にわたってより高い一貫性を提供する可能性がある。このような表面仕上げのプロセス及び結果は、以前にさらに詳細に記載されている。
【0080】
前述の議論では、本発明をその特定の例示的な態様を参照して説明してきた。しかしながら、本発明のより広い精神および範囲から逸脱することなく、これらの例示的な態様に様々な修正および変更を加えることができることは明らかであろう。したがって、前述の議論および添付の図面は、いかなる方法によってもその範囲を限定するものではなく、本発明を単に例示するものとみなされる。
【符号の説明】
【0081】
100 ゴルフクラブヘッド
110 トウ部
120 ヒール部
130 トップ部
140 ソール部
150 ホーゼル部
154 ホーゼルボア
160 打撃フェース
164 フェース中心
166 垂直中心平面
170 重心
818 支持面