(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013212
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】熱成形用積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20250117BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20250117BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/36 102
B32B27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024103486
(22)【出願日】2024-06-27
(31)【優先権主張番号】P 2023113640
(32)【優先日】2023-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】597003516
【氏名又は名称】MGCフィルシート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】若山 彰太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 由斎
(72)【発明者】
【氏名】中村 仁美
(72)【発明者】
【氏名】根本 雅史
(72)【発明者】
【氏名】植木 昭武
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA19C
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK25B
4F100AK25C
4F100AK45A
4F100AK51C
4F100AK52C
4F100BA03
4F100BA05
4F100CA05C
4F100CA30C
4F100EH46C
4F100EJ08C
4F100EJ54C
4F100JB14C
4F100JK09
4F100JL06
4F100YY00C
(57)【要約】
【課題】長期間防汚性に優れたプレキュア型の熱成形用積層体を提供すること。
【解決手段】上記課題は、基材層およびハードコート層を含む熱成形用積層体であって、前記基材層が、ポリカーボネート樹脂を含む層と、高硬度樹脂を含む層とが積層されたものであり、前記基材層中の高硬度樹脂を含む層上に、前記ハードコート層が積層され、前記ハードコート層が、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびヒンダードアミン系光安定剤を含み、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~4.0質量部である、前記熱成形用積層体によって解決することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層およびハードコート層を含む熱成形用積層体であって、
前記基材層が、ポリカーボネート樹脂を含む層と、高硬度樹脂を含む層とが積層されたものであり、
前記基材層中の高硬度樹脂を含む層上に、前記ハードコート層が積層され、
前記ハードコート層が、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびヒンダードアミン系光安定剤を含み、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~4.0質量部である、前記熱成形用積層体。
【請求項2】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、請求項1に記載の熱成形用積層体。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、R
2は、炭化水素を含む基、またはエーテル基を表す。)
【請求項3】
前記ヒンダードアミン系光安定剤が、下記構造式で表される化合物群から選択される少なくとも一つを含む、請求項1または2に記載の熱成形用積層体。
【化2】
【請求項4】
前記高硬度樹脂が、ポリメチルメタクリレート樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載の熱成形用積層体。
【請求項5】
前記ハードコート層が、1~10μmの厚みを有する、請求項1~4のいずれかに記載の熱成形用積層体。
【請求項6】
前記ハードコート層の表面であって、前記基材層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有し、かつ、前記基材層の表面であって、前記ハードコート層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有する、請求項1~5のいずれかに記載の熱成形用積層体。
【請求項7】
前記ハードコート層が、光重合開始剤、及び光硬化性重合基を有するシリコーン系レベリング剤を含むが、光硬化性重合基を有するフッ素系レベリング剤を含まない、請求項1~6のいずれかに記載の熱成形用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキュア型の熱成形用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の家電や車載品等は、これまでプラスチックの成形品を必要に応じてコーティングして製造されることが一般的であった。しかし、そのような方法は環境負荷が大きいことから、熱成形可能な加飾フィルムをインサート成形する方法をはじめとして、種々の方法が検討されてきた。近年では、成形品の耐薬品性や耐擦傷性に対する要求が大きくなってきていることから、ハードコート付きの熱成形用積層体(例えばフィルム)の需要が特に増加している。ハードコート付きの熱成形用積層体は、一般的に、ハードコート液を基材上に塗布後、硬化させて製造される(特許文献1)。
一般的に、加飾フィルムには防汚性が求められるが、長期間使用すると防汚性が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来における問題を解決し、長期間防汚性に優れたプレキュア型の熱成形用積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂および特定量のヒンダードアミン系光安定剤を含むハードコート層を用いることにより、長期間防汚性に優れたプレキュア型の熱成形用積層体が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下の通りである。
<1> 基材層およびハードコート層を含む熱成形用積層体であって、
前記基材層が、ポリカーボネート樹脂を含む層と、高硬度樹脂を含む層とが積層されたものであり、
前記基材層中の高硬度樹脂を含む層上に、前記ハードコート層が積層され、
前記ハードコート層が、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびヒンダードアミン系光安定剤を含み、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~4.0質量部である、前記熱成形用積層体である。
<2> 前記ヒンダードアミン系光安定剤が、下記一般式(1)で表される化合物を含む、上記<1>に記載の熱成形用積層体である。
【化1】
(一般式(1)中、R
1は、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、R
2は、炭化水素を含む基、またはエーテル基を表す。)
<3> 前記ヒンダードアミン系光安定剤が、下記構造式で表される化合物群から選択される少なくとも一つを含む、上記<1>または<2>に記載の熱成形用積層体である。
【化2】
<4> 前記高硬度樹脂が、ポリメチルメタクリレート樹脂である、上記<1>~<3>のいずれかに記載の熱成形用積層体である。
<5> 前記ハードコート層が、1~10μmの厚みを有する、上記<1>~<4>のいずれかに記載の熱成形用積層体である。
<6> 前記ハードコート層の表面であって、前記基材層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有し、かつ、前記基材層の表面であって、前記ハードコート層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有する、上記<1>~<5>のいずれかに記載の熱成形用積層体である。
<7> 前記ハードコート層が、光重合開始剤、及び光硬化性重合基を有するシリコーン系レベリング剤を含むが、光硬化性重合基を有するフッ素系レベリング剤を含まない、上記<1>~<6>のいずれかに記載の熱成形用積層体である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、長期間防汚性に優れたプレキュア型の熱成形用積層体を提供することができる。本発明の熱成形用積層体から得られた成形体は、例えば、モバイル機器、自動車内装部材、家電等において用いられる樹脂フィルム積層体として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る熱成形用積層体の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係るプレキュア型熱成形用積層体の各構成要素、製造方法等について、詳細に説明する。
[1]熱成形用積層体
実施形態に係る熱成形用積層体は、基材層およびハードコート層を含み、該基材層は、ポリカーボネート樹脂を含む層(以下、「ポリカーボネート樹脂層」と呼ぶことがある。)と、高硬度樹脂を含む層(以下、「高硬度樹脂層」と呼ぶことがある。)とが積層されたものであり、該高硬度樹脂層上に、前記ハードコート層が積層されている。
本発明の好ましい一実施形態では、前記ハードコート層の表面であって、前記基材層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有する。更に好ましい一実施形態では、前記ハードコート層の表面であって、前記基材層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有し、かつ、前記基材層の表面であって、前記ハードコート層との積層面とは反対側の表面に保護フィルムを有する。
【0009】
図1は、実施形態に係る熱成形用積層体の一例を示す概略断面図である。
図1において、熱成形用積層体10は、基材層(高硬度樹脂層20とポリカーボネート樹脂層22とからなる基材層)上に、ハードコート層16が積層され、その上にさらに保護フィルム12が積層された構造を有する。すなわち、ハードコート層16は、その表面が保護フィルム12によって保護されている。ポリカーボネート樹脂層22の外表面に保護フィルムが積層されている態様も好ましい。
【0010】
実施形態に係る熱成形用積層体は、プレキュア型である。したがって、実施形態に係る熱成形用積層体は、硬化されたハードコート層を具備している。ハードコート層を硬化させる手段は、ハードコート層の材料に依存するが、例えば、活性エネルギー線または熱による硬化が挙げられる。実施形態に係る熱成形用積層体は、保護フィルムを貼り付けたまま首尾よく成形することが可能である。したがって、成形時のハードコート層の傷付きや異物の噛みこみを防ぐことができる。
以下、実施形態に係る熱成形用積層体の各層について順に説明する。
【0011】
[2]基材層
基材層は、ハードコート層の保護フィルムとは反対側の表面に接するように積層されていることが好ましい。ただし、これに限定されるものではなく、基材層とハードコート層との間に他の層が配置されていてもよい。
【0012】
基材層は、ポリカーボネート樹脂層と、高硬度樹脂層とが積層されたものである。
<ポリカーボネート樹脂層>
ポリカーボネート樹脂層とは、主としてポリカーボネート樹脂を含む層である。ポリカーボネート樹脂層に含まれるポリカーボネート樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよい。ポリカーボネート樹脂を主成分とするポリカーボネート樹脂層においては、ポリカーボネート樹脂層に対するポリカーボネート樹脂の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。ポリカーボネート樹脂の含有量を増やすことで、耐衝撃性が向上する。
【0013】
ポリカーボネート樹脂の種類としては、分子主鎖中に炭酸エステル結合-[O-R-OCO]-(Rは、脂肪族基、芳香族基、または脂肪族基と芳香族基の双方を含む基であり、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい)を含むものであれば、特に限定されない。中でも、ビスフェノール骨格を有するポリカーボネート樹脂が好ましく、ビスフェノールA骨格を有するビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂、またはビスフェノールC骨格を有するビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂が特に好ましい。ポリカーボネート樹脂として、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂の混合物、またはビスフェノールAとビスフェノールCの共重合体を用いてもよい。ポリカーボネート樹脂層の硬度を向上させるためには、ビスフェノールC型のポリカーボネート樹脂(例えば、ビスフェノールCからなるポリカーボネート樹脂、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とビスフェノールC型ポリカーボネート樹脂の混合物、またはビスフェノールAとビスフェノールCの共重合体)を用いることが好ましい。
【0014】
<高硬度樹脂層>
高硬度樹脂層とは、主として高硬度樹脂を含む層である。本明細書において、高硬度樹脂とは、ポリカーボネート樹脂層に含まれるポリカーボネート樹脂よりも硬度の高い樹脂であり、鉛筆硬度がHB以上の樹脂を意味する。高硬度樹脂の鉛筆硬度は、HB~3Hであることが好ましく、H~3Hであることがより好ましく、2H~3Hであることが特に好ましい。高硬度樹脂層に含まれる高硬度樹脂は、1種類であっても2種類以上であってもよい。
高硬度樹脂を主成分とする高硬度樹脂層においては、高硬度樹脂層に対する高硬度樹脂の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
高硬度樹脂の具体的としては、特に限定されないが、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、メチルメタクリレート(MMA)に代表される各種(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、またはPMMAやMMAもしくはこれらを構成する単量体と他の1種以上の単量体との共重合体が好ましく挙げられる。また、複数の樹脂の混合物を使用することもできる。これらの中でも、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が特に好ましく挙げられる。
【0015】
ポリカーボネート樹脂層や高硬度樹脂層には、その他の樹脂として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド等の各種熱可塑性樹脂が含まれていてもよい。
【0016】
本発明で使用される基材層は、ポリカーボネート樹脂層と、高硬度樹脂層とが積層されたものであるが、2層構造に限定されるものではなく、3層以上であってもよい。本発明では、高硬度樹脂層上にハードコート層が積層される。耐候性に劣るポリカーボネート樹脂層上に、耐候性に優れる高硬度樹脂層およびハードコート層を積層することで耐候性に優れたフィルムを得ることができる。また、ポリカーボネート樹脂層と高硬度樹脂層とを含む多層構造の基材層を用いることにより、基材層の表面硬度を向上させながら、基材層の熱成形性を維持することが可能である。
【0017】
基材層に含まれる樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは15,000~40,000であり、より好ましくは20,000~35,000であり、さらに好ましくは22,500~25,000である。
【0018】
基材層は、上述した樹脂以外の成分として添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色剤等が挙げられ、基材層はこれらのうち1種または2種以上を含み得る。さらには、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等を基材層に添加してもよい。
【0019】
基材層の厚さ、即ち、ポリカーボネート樹脂層と高硬度樹脂層との合計厚みは、特に限定されないが、0.10mm~1.0mmであることが好ましい。基材層の厚さは、例えば、0.15mm~0.80mm、0.18mm~0.60mm、あるいは0.25mm~0.40mmである。このような厚みの基材層を使用することにより、成形性と硬度が優れたフィルムを実現できる。
【0020】
[3]ハードコート層
ハードコート層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂およびヒンダードアミン系光安定剤を含み、該ヒンダードアミン系光安定剤の含有量が、前記ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~4.0質量部である。このようなハードコート層を用いることによって、長期間防汚性に優れたプレキュア型熱成形用積層体を形成することができる。
ハードコート層は、特性を向上させるための種々の添加剤をさらに含んでいてもよく、そのような添加剤としては、ナノ粒子、レベリング剤、光重合開始剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0021】
(1)ウレタン(メタ)アクリレート樹脂
ハードコート層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を含む。具体的には、以下に記載するようなイソシアネート化合物とアクリレート化合物との共重合体であるウレタン(メタ)アクリレート樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、メタクリレートおよび/またはアクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、メタクリロイル基および/またはアクリロイル基を意味する。その他の同様の記載も、上記のように解される。
【0022】
・イソシアネート化合物
イソシアネート化合物としては、例えば、アルキル置換基(メチル基等)を有していてもよい芳香族イソシアネートであって、好ましくは炭素数6~16の芳香族イソシアネート、さらに好ましくは炭素数7~14の芳香族イソシアネート、特に好ましくは炭素数8~12の芳香族イソシアネートが挙げられる。
イソシアネート化合物は、芳香族イソシアネートであることが好ましいものの、脂肪族系、脂環式系のイソシアネートも好ましく用いられる。
【0023】
イソシアネート化合物の具体例としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、変性ジフェニルメタンジイソシアネート、水添化キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、フェニレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等のポリイソシアネート、これらポリイソシアネートの3量体化合物もしくは4量体化合物、ビューレット型ポリイソシアネート、水分散型ポリイソシアネート(例えば、日本ポリウレタン工業(株)社製、「アクアネート100」、「アクアネート110」、「アクアネート200」、「アクアネート210」等)、およびこれらポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物等が挙げられる。
【0024】
これらのイソシアネート化合物の中で、特に好ましくは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネートのトリメチロールプロパン(TMP)アダクト体、トルエンジイソシアネートのイソシアネート体、キシレンジイソシアネートのTMPアダクト体、および下記式で表されるジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等である。
【化3】
【0025】
・アクリレート化合物
環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂を形成するためのアクリレート化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(アクリル酸ヒドロキシプロピル;HPA)等が挙げられる。
また、アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシル基とを有する化合物、例えば、ヒドロキシル基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物を用いることもできる。
【0026】
ヒドロキシル基を有する単官能性(メタ)アクリル系化合物としては、例えば、ヒドロキシル基含有モノ(メタ)アクリレート{例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2~20アルキル-(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシC2~12アルキル-(メタ)アクリレート、さらに好ましくはヒドロキシC2~6アルキル-(メタ)アクリレート]、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート[例えば、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリC2~4アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート]、3つ以上のヒドロキシル基を有するポリオールのモノ(メタ)アクリレート[例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート、ジグリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールの多量体のモノ(メタ)アクリレート]}、N-ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド(例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミドなどのN-ヒドロキシC1~4アルキル(メタ)アクリルアミド)、これらの化合物(例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート)のヒドロキシル基にラクトン(例えば、ε-カプロラクトンなどのC4~10ラクトン)が付加した付加体(例えば、ラクトンが1~5モル程度付加した付加体)などが挙げられる。
なお、これらのアクリレート化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
(メタ)アクリロイルオキシ基を形成するための化合物の好ましい具体例として、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートが挙げられる。
上述した中でも、特に、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)、および(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(アクリル酸ヒドロキシプロピル;HPA)が好ましい。
【0028】
・イソシアネート化合物とアクリレート化合物との共重合体
イソシアネート化合物とアクリレート化合物との共重合体、すなわち、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例としては、キシリレンジイソシアネート(XDI)とペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との共重合体、XDIとジペンタエリスリトールペンタアクリレート(DPPA)との共重合体、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)とPETAとの共重合体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とPETAとの共重合体、XDIと(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)との共重合体等が挙げられる。
【0029】
また、環状骨格の分子構造を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂として、上述したイソシアネート化合物とアクリレート化合物に加え、ポリオール化合物を使用した共重合体も挙げられる。ポリオール化合物(多価アルコール)は1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物であって、例えば、以下のものが挙げられる。すなわち、ポリオール化合物の例として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、3-メチル-1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、2,3-ジメチルトリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、3-メチル-4,3-ペンタンジオール、3-メチル-4,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピヴァリン酸ネオペンチルグリコールエステルなどの2価アルコール;これらの2価アルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加したポリラクトンジオール;ビス(ヒドロキシエチル)テレフタレートなどのエステルジオール類;ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのポリエーテルジオール類;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのα-オレフィンエポキシド;カージュラE10[シェル化学社製、合成高分岐飽和脂肪酸のグリシジルエステル]などのモノエポキシ化合物;グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジグリセリン、トリグリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニットなどの3価以上のアルコール;これらの3価以上のアルコールにε-カプロラクトンなどのラクトン類を付加させたポリラクトンポリオール類;1,4-シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールFなど脂環族多価アルコールなどが挙げられる。
【0030】
ポリオール構成単位として、下記式で表されるトリシクロジデカンジメタノール(TCDDM)に由来する構成単位を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂が好適に使用される。
【化4】
【0031】
ポリオール構成単位を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例としては、トリシクロジデカンジメタノール(TCDDM)とIPDIとPETAとの共重合体、TCDDMとH12MDIとPETAとの共重合体、これらの共重合体のうちPETAの代わりに、あるいはPETAとともにDPPAを使用した共重合体、TCDDMとキシリレンジイソシアネート(XDI)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル(HPA)との共重合体等が挙げられる。
【0032】
イソシアネート化合物と、(メタ)アクリロイルオキシ基およびヒドロキシル基を有する化合物とに加え、ポリオール化合物に由来する構成単位を含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、下記式(i)で表される成分を少なくとも含むことが好ましい。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3) ・・・(i)
(式(i)において、
A1は、上述のポリオール化合物に由来するアルキレン基であり、
A2は、それぞれ独立して、上述のイソシアネート化合物に由来するアルキレン基であり、
A3は、それぞれ独立して、上述した(メタ)アクリロイルオキシ基とヒドロキシル基とを有する化合物に由来するアルキル基である。
A3を形成するための化合物として、例えば、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートが挙げられる。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、(メタ)アクリロイルオキシ基およびヒドロキシル基を有する化合物に由来する構成単位と、イソシアネート化合物に由来する構成単位との比率は、99:1~30:70(重量比)であることが好ましく、より好ましくは97:3~60:40であり、さらに好ましくは95:5~80:20である。
【0034】
(アクリレートを含むウレタン(メタ)アクリレート樹脂)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の好ましい具体例として、ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位と(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを含むものが挙げられる。このようなウレタン(メタ)アクリレート樹脂のより好ましい具体例として、6官能ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位と2官能(メタ)アクリレートに由来する構成単位とを含むものが挙げられる。
【0035】
・(6官能)ウレタンアクリレート
上述のように、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、ウレタン(メタ)アクリレート、特に、6官能ウレタン(メタ)アクリレートに由来する構成単位を含むことが好ましい。
6官能ウレタンアクリレートの好ましい例として、以下の式で表されるもの、すなわち、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)とペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)との反応生成物、イソホロンジイソシアネート(IPDI)とPETAとの反応生成物等が挙げられる。これらの6官能ウレタンアクリレートの好ましい製品の具体例としては、CN-968(IPDIとPETAとの反応生成物:サートマー・ジャパン株式会社製)、CN-975(サートマー・ジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【化5】
【化6】
【0036】
・(メタ)アクリレート(2官能(メタ)アクリレート等)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂を構成し得る(メタ)アクリレート構成単位は、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基と、少なくとも1つのビニルエーテル基とを含み、置換基を有していてもよい炭素数4~20の化合物に由来する構成単位であることが好ましい。(メタ)アクリレートの炭素数は、好ましくは6~18であり、より好ましくは8~16である。(メタ)アクリレートの置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
また、(メタ)アクリレートは、2官能であることが好ましい。
(メタ)アクリレートとして、例えば、下記式の(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル[アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル:VEEA]が好適に用いられる。
【化7】
(上記式中、Rは、水素原子またはメチル基である。)
【0037】
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂において、ウレタンアクリレートに由来する構成単位と(メタ)アクリレートに由来する構成単位との比率は、99:1~30:70(重量比)であることが好ましく、より好ましくは97:3~60:40であり、さらに好ましくは95:5~80:20である。
【0038】
(含フッ素ウレタン(メタ)アクリレート樹脂)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂として、含フッ素ウレタンアクリレート樹脂を用いてもよい。含フッ素ウレタンアクリレート樹脂は、下記式(ii)で表される成分を少なくとも含むことが好ましい。
(A3)-O(OC)HN-A2-HN(OC)-O-A1-O-(CO)NH-A2-NH-(CO)O-(A3)・・・(ii)
上記式(ii)において、A1は、置換基を有していてもよい、炭素数8以下の含フッ素ジオール由来のアルキレン基であることが好ましく、炭素数は、好ましくは6以下、例えば1~4である。A1のアルキレン基に含まれる置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
【0039】
上記式(ii)において、A2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数4~20の脂肪族または脂環式のイソシアネート由来のアルキレン基である。A2の炭素数は、好ましくは6~16であり、より好ましくは8~12である。A2のアルキレン基の置換基としては、アルキル基などが挙げられる。
また、A2を形成する脂環式のイソシアネートとして、例えば、下記式のイソホロンジイソシアネートが挙げられる。
【化8】
【0040】
上記式(ii)において、A3は、それぞれ独立して、少なくとも1つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含み、さらに置換基を有していてもよい炭素数4~30のアルキル基である。A3の炭素数は、好ましくは6~20であり、より好ましくは8~16である。A3のアルキル基の置換基としては、分岐状のアルキル基などが挙げられる。A3は、少なくとも2つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含むことが好ましく、例えば3つの(メタ)アクリロイルオキシ基を含んでいてもよい。
また、A3は、例えば、下記式のペンタエリスリトールトリアクリレートに由来する。
【化9】
【0041】
含フッ素ウレタンアクリレート樹脂としては、上述の各化合物から形成されているものが好ましく、含フッ素ウレタンアクリレートは、例えば下記式(IV)で表される化合物を含む。
【化10】
【0042】
・その他の活性エネルギー線硬化性樹脂
ハードコート層は、本発明による効果を損なわない範囲で、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂以外の活性エネルギー線硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を含んでもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、活性エネルギー線硬化性を有する樹脂であればいずれも使用可能である。活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば、エポキシ(メタ)アクリレートポリマー、ポリエステル(メタ)アクリレートポリマーなどが挙げられる。特に、(メタ)アクリロイル基を有するポリマー、例えば、(メタ)アクリロイル基を有するエポキシ(メタ)アクリレートポリマー、(メタ)アクリロイル基を有するポリエステル(メタ)アクリレートポリマーなどが挙げられる。活性エネルギー線硬化性樹脂は各社から容易に入手することが可能である。
また、活性エネルギー線硬化性樹脂として、例えば、(メタ)アクリロイル基を含まない(メタ)アクリレートポリマー、あるいは(メタ)アクリレート骨格を含まない(メタ)アクリレートポリマーなども使用できる。更に、活性エネルギー線硬化性樹脂として、(メタ)アクリレート化合物以外のもの、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物等も使用できる。
【0043】
ハードコート層に含まれる樹脂は、1種類であっても、2種以上であってもよい。ハードコート層における樹脂の含有量は、ハードコート層に含まれる成分の合計を100質量%としたとき、好ましくは40~99質量%、より好ましくは50~95質量%、さらに好ましくは60~90質量%である。
【0044】
本発明で使用されるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、500~200,000の重量平均分子量を有することが好ましく、より好ましくは1,000~100,000であり、更に好ましくは2,000~50,000であり、更により好ましくは3,000~30,000であり、特に好ましくは5,000~10,000である。このような重量平均分子量のウレタン(メタ)アクリレート樹脂を用いることで成形性と耐擦傷性に優れた熱成形用積層体を得ることができる。
重量平均分子量は、特開2007-179018号公報の段落[0061]~[0064]の記載に基づいて測定できる。測定法の詳細を以下に示す。
【表1】
【0045】
すなわち、まず、ポリスチレンを標準ポリマーとしたユニバーサルキャリブレーション法により、溶出時間とポリマーの分子量との関係を示す検量線を作成する。そして、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の溶出曲線(クロマトグラム)を、上述の検量線の場合と同一の条件で測定する。さらに、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂の溶出時間(分子量)およびその溶出時間のピーク面積(分子数)から、重量平均分子量(Mw)を算出する。重量平均分子量は、以下の式(A)で表され、式(A)において、Niは分子量Miを有する分子数を意味する。
Mw=Σ(NiMi2)/Σ(NiMi)・・・・(A)
【0046】
(2)ヒンダードアミン系光安定剤
ハードコート層は、ヒンダードアミン系光安定剤を必須成分として含む。ハードコート層におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~4.0質量部であり、好ましくは0.3~3.5質量部であり、より好ましくは0.5~3.0質量部である。
【0047】
本発明の好ましい一実施形態では、ヒンダードアミン系光安定剤は、下記一般式(1)で表される化合物を含む。
【化11】
一般式(1)中、R
1は、水素原子、アルキル基、またはアルコキシ基を表し、好ましくは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、または炭素数6~13のアルコキシ基を表す。
一般式(1)中、R
2は、炭化水素を含む基、またはエーテル基を表し、前記炭化水素を含む基は、フェニル基などの置換基を有していてもよい。R
2は、好ましくは、-O-C(=O)-を有するアルキレン基またはエーテル基を表す。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態では、ヒンダードアミン系光安定剤は、下記構造式で表される化合物群から選択される少なくとも一つを含む。
【化12】
【0049】
本発明においては、ヒンダードアミン系光安定剤として、Tinuvin123(BASF社製)、Tinuvin770DF(BASF社製)、Tinuvin144(BASF社製)、LA-81(ADEKA社製)、Tinuvin152(BASF社製)、Tinuvin292(BASF社製)などを好ましく使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
(3)ナノ粒子
ハードコート層は、ナノ粒子を含んでいてもよい。それにより、ハードコート層の耐擦傷性や硬度を向上させることができる。ナノ粒子は、無機粒子であっても有機粒子であっても構わないが、好ましくは無機ナノ粒子であり、より好ましくは無機酸化物ナノ粒子である。例えば、ナノシリカ、ナノアルミナ、ナノチタニア、ナノジルコニアなどの金属酸化物ナノ粒子が用いられる。またナノダイヤモンドなどを用いてもよい。
【0051】
ハードコート層は、ナノ粒子としてアルミナ粒子またはシリカ粒子を含むことが好ましい。ハードコート層に含まれるナノ粒子は、好ましくは、表面処理剤で処理される。表面処理により、無機ナノ粒子をハードコート組成物中、特にウレタン(メタ)アクリレート樹脂中に安定した状態で分散させることができる。
【0052】
ナノ粒子に対する表面処理剤としては、ナノ粒子の表面に結合可能な置換基と、ナノ粒子を分散させるハードコート層の成分(例えば、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂等)との相溶性の高い置換基とを有する化合物が好適に用いられる。例えば、表面処理剤として、シラン化合物、アルコール、アミン、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸等が用いられる。
【0053】
無機ナノ粒子は、好ましくは、表面に重合性基を有する。重合性基は、無機ナノ粒子の表面処理によって導入可能であり、重合性基の具体例として、ビニル基、メタ(アクリル)基、フリーラジカル重合性基等が挙げられる。
ナノ粒子の平均粒子径は、好ましくは1~150nm、より好ましくは10~100nm、特に好ましくは15~50nmである。なお、ナノ粒子の平均粒子径はハードコート層の断面を電子顕微鏡写真で観察することにより測定することが出来る。例えばFIB加工などによって作製した粒子断面のTEM像を撮影し、観察された粒子50個の直径を測定して平均値を計算することで平均粒子径とすることができる。粒子が球形でない場合には長径と短径の平均値をその粒子の直径と見なす。
【0054】
ハードコート層は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、0.1~20質量部のナノ粒子、例えば無機ナノ粒子を含むことが好ましい。より好ましくは、0.5~10質量部の無機ナノ粒子を含み、特に好ましくは、1~5質量部の無機ナノ粒子を含む。
【0055】
(4)レベリング剤
ハードコート層は、レベリング剤を含んでいてもよい。それにより、ハードコート層のレベリング性、防汚性、耐摩耗性が向上する。レベリング剤としては、シリコーン系添加剤、フッ素系添加剤等が好ましく使用される。フッ素系添加剤に含まれるフッ素系化合物としては、例えば、パーフルオロポリエーテル結合を有する化合物が挙げられる。フッ素系添加剤は自分で合成することも可能であるが、市販品を容易に入手することが可能である。例えばDIC社のメガファックRSシリーズ、信越化学社のKYシリーズ、ダイキン社のオプツールシリーズなどが使用可能である。
シリコーン系添加剤に含まれるシリコーン系化合物としては、ポリアルキルシロキサン結合を有する化合物が挙げられる。シリコーン系添加剤は自分で合成することも可能であるが、市販品を容易に入手することが可能である。例えば信越シリコーン社のKPシリーズ、ビックケミージャパン社のBYKシリーズ、EVONIK社のTEGO Glideシリーズなどが使用可能である。より具体的には、ビックケミージャパン社製のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK-UV3500や、DIC社製のRS-57などが挙げられる。
本発明の一実施形態では、耐布擦傷性の観点から、ハードコート層が、光重合開始剤、及び光硬化性重合基を有するシリコーン系レベリング剤を含むが、光硬化性重合基を有するフッ素系レベリング剤を含まない態様が好ましい。特に、PFAS規制の観点からフッ素化合物を含まない方が好ましい。
【0056】
レベリング剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001~10質量部、より好ましくは0.005~5質量部、特に好ましくは0.01~5質量部である。
【0057】
(5)光重合開始剤
ハードコート層に含まれるウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、活性エネルギー線硬化性または熱硬化性である。よってハードコート層は、光重合開始剤をさらに含んでいてもよい。光重合開始剤としては、IRGACURE 184(1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン)、IRGACURE 1173(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1- オン)、IRGACURE TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド)、IRGACURE 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、EsacureONE(オリゴ(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン)等が用いられる。これらの中で、耐熱性の観点から、Esacure One等が光重合開始剤として好ましい。
【0058】
ハードコート層における光重合開始剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対し、好ましくは1~15質量部、より好ましくは2~10質量部であり、特に好ましくは3~7質量部である。
【0059】
(6)紫外線吸収剤
ハードコート層は、紫外線吸収剤を含んでいてもよい。それにより耐候性試験中の紫外線照射によるウレタン(メタ)アクリレート樹脂の変質を抑制することができる。紫外線吸収剤としては、DAINSORB-T0(大和化成社製)、Tinuvin405(BASF社製)、Tinuvin477(BASF社製)、Tinuvin479(BASF社製)、Tinuvin928(BASF社製)、UVA-903KT(BASF社製)等を使用可能である。
ハードコート層における紫外線吸収剤の含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート樹脂100質量部に対し、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~10質量部、特に好ましくは1~10質量部である。
【0060】
(7)その他の添加剤
ハードコート層は、その他の添加剤、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、着色剤等を含んでいてもよい。所望の物性を著しく損なわない限り、帯電防止剤、蛍光増白剤、防曇剤、流動性改良剤、可塑剤、分散剤、抗菌剤等をハードコート層に添加してもよい。
【0061】
ハードコート組成物の調製に用いられる希釈溶剤は、粘度を調整するために用いられ、非重合性のものであれば特に制限なく使用することができる。希釈溶剤を使用することにより、ハードコート組成物を基材層上に容易に塗布することができる。
【0062】
希釈溶剤としては、例えばトルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、エチルセルソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、3-メトキシブタノール等が挙げられる。
【0063】
<ハードコート層の製造>
ハードコート層は、上述したような材料を含むハードコート組成物を、基材層中の高硬度樹脂層上に塗布することにより製造される。例えば、各材料を混合し、さらにディスパーにより撹拌して、ハードコート組成物を調製することができる。
【0064】
ハードコート組成物を塗布する方法として、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ディップコート、スプレーコートなどを使用する方法が例示される。このとき、ハードコート組成物を塗工後、所定の温度で乾燥を行う。乾燥温度としては30~150℃が好ましく、60~130℃がより好ましい。上記範囲の温度で乾燥することにより、ハードコート層から有機溶媒を除去することができ、また加熱による他の層の変形を防止することができる。
【0065】
ハードコート層の膜厚は、特に限定されないが、好ましくは1~10μm、より好ましくは2~7μmである。膜厚を上記範囲とすることにより、ハードコート層としての所望の性能を得ることができ、密着性や成形性における問題も生じにくい。
【0066】
[4]保護フィルム
ハードコート層表面には、成形工程等におけるハードコート層表面の傷つきを防止するため、保護フィルムが配置されることが好ましい。更に、基材層の外表面にも保護フィルムが配置されることが好ましい。保護フィルムは、例えば基材層上にハードコート組成物を塗布して乾燥させた後、ハードコート層表面に貼り付けられる。保護フィルムのハードコート層に接する表面は、適度な粘着力を有する粘着面であり、ハードコート層の表面に貼り付けられるようになっていることが好ましい。保護フィルムの構成は特に限定されないが、粘着層のみの単層フィルムであるか、基材と粘着層との2層構造を有するフィルムであることが好ましい。2層構造の保護フィルムにおいては、粘着層の粘着面がハードコート層に接するようにハードコート層上に積層される。保護フィルムは、上述の基材と粘着層以外の層をさらに含む多層構造であってもよい。また、保護フィルムは、単層構造であってもよく、単層構造の保護フィルムにおいても、ハードコート層側の表面である粘着面が適度な粘着力を有している。
【0067】
保護フィルムが基材を有する場合、基材は熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、ポリオレフィン樹脂を含むことがさらに好ましい。保護フィルムに含まれるポリオレフィン樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられ、単独重合体であっても共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂の中でもポリエチレンが好ましい。
ポリエチレンとしては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等を用いることができるが、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0068】
また、ポリオレフィン共重合体としては、エチレンまたはプロピレンと、これらと共重合可能な単量体との共重合体を用いることができる。エチレンまたはプロピレンと共重合することができる単量体として、例えば、α-オレフィン、スチレン類、ジエン類、環状化合物、酸素原子含有化合物等が挙げられる。
【0069】
α-オレフィンとしては、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等が挙げられる。スチレン類としては、スチレン、4-メチルスチレン、4-ジメチルアミノスチレン等が挙げられる。ジエン類としては、1,3-ブタジエン、1,5-ヘキサジエン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン等が挙げられる。環状化合物としては、ノルボルネン、シクロペンテン等が挙げられる。酸素原子含有化合物としては、ヘキセノール、ヘキセン酸、オクテン酸メチル等が挙げられる。これら共重合することができる単量体は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、エチレンとプロピレンとの共重合体であってもよい。
また、共重合体は、交互共重合、ランダム共重合、ブロック共重合のいずれであってもよい。
【0070】
保護フィルムの基材に含まれるポリオレフィン樹脂には、少量のアクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体によって変性された変性ポリオレフィン樹脂が含まれていてもよい。変性は、通常、共重合またはグラフト変性により可能である。
【0071】
保護フィルムの基材における熱可塑性樹脂(例えばポリオレフィン樹脂)の含有量は、基材の全質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0072】
保護フィルムの粘着層は、エラストマーまたは熱可塑性樹脂を含むことが好ましい。粘着層に含まれる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂が挙げられ、単独重合体であっても共重合体であってもよい。ポリオレフィン樹脂の中でもポリエチレンが好ましい。
【0073】
保護フィルムの粘着層におけるエラストマーまたは熱可塑性樹脂の含有量は、粘着層の全質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0074】
保護フィルムの厚さは、好ましくは10~100μm、より好ましくは20~80μmである。保護フィルムが2層以上で構成される場合であっても、各層の厚さの合計が上記範囲内であることが好ましい。
【0075】
保護フィルムにおいては、ハードコート層に貼付される前(未貼付)の状態において、ハードコート層に接することとなる粘着面における表面粗さSaの値(ISO 25178)が、0.100μm以下であることが好ましい。保護フィルムの粘着面における未貼付の状態の表面粗さSaの値は、より好ましくは0.090μm以下であり、さらに好ましくは0.080μm以下であり、特に好ましくは0.070μm以下である。
【0076】
保護フィルムの粘着面における粘着力の値は、PMMA(高硬度樹脂層)の表面に対し、5(mN/25mm)以上かつ5000(mN/25mm)以下であることが好ましく、より好ましくは9(mN/25mm)以上かつ3000(mN/25mm)以下である。
【0077】
[5]熱成形用積層体の製造方法
実施形態に係る熱成形用積層体は、以下のように製造される。まず、基材層の材料を従来の手法で層状(シート状)に加工し、基材層を作製する。例えば、押出成形、キャスト成形等を用いることができる。押出成形の例としては、樹脂組成物のペレット、フレークあるいは粉末を押出機で溶融、混練後、Tダイ等から押し出し、得られた半溶融状のシートをロールで挟圧しながら、冷却、固化してシートを形成する方法が挙げられる。
そして得られた複数の層(ポリカーボネート樹脂層および高硬度樹脂層)を有する基材層の高硬度樹脂層外側表面に、上述した材料を混合して得られたハードコート組成物を塗布して、ハードコート層を形成する。
さらに、必要により、ハードコート層上に上述の保護フィルムを貼り合わせて、熱成形用積層体が製造される。更に、基材層の外側表面にも上述の保護フィルムを貼り合わせることが好ましい。
【実施例0078】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の内容がこれらにより限定されるものではない。
【0079】
<防汚性能試験>
試験片に人工指紋液としてオレイン酸2μlを滴下し、シリコンパットで押し広げたのちにクロスを取り付け、人工指紋液の上を完全に通過させた。15回を上限として目視で指紋の跡が見えなくなるまで、この操作を繰り返し、その回数から下記評価基準に従い防汚性を評価した。
○:指紋ふき取り回数が10回未満
△:拭き取り回数が10回以上15回未満
×:拭き取り回数15回後も指紋の跡が残っている
【0080】
<防汚性能の長期安定性試験>
ATLAS社製Ci4000型を用いて、試験規格SAE J2412準拠で試験時間509時間(積算照射量:790KJ/m
2 制御波長340nm)の試験を実施した。試験条件を以下の表に示す。試験後に上記の防汚性能試験と同様の方法で防汚性能の長期安定性を評価した。
【表2】
【0081】
<耐布擦傷性試験>
試験片にガーゼ(オオサキメディカル社製)を500gf/cm2の圧力下で往復させ、ハードコート層を擦傷した。擦傷した試験片の外観を観察し、下記評価基準に従い擦傷性を評価した。
◎:1000往復で傷なし
〇:100往復で傷なし
×:100往復で傷あり
【0082】
(実施例1)
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(根上工業社製、型番UN-954、重量平均分子量5,000、官能基数6)100質量部に対し、無機酸化物粒子(ビックケミー社製、ナノアルミナ粒子ディスパージョンNANOBYK-3610:平均粒子径20~25nm)1質量部、シリコーン系レベリング剤(ビックケミー社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンBYK-UV3500)0.5質量部、フッ素系レベリング剤(DIC社製、RS-75A)1質量部、光重合開始剤ESACURE-ONE 5質量部および下記構造式で表されるヒンダートアミン系光安定剤(BASF社製、Tinuvin144)0.5質量部を添加した。その後、希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテルを固形分濃度が13質量%となるように加えて撹拌し、ハードコート組成物を得た。
基材層として、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂とPMMAの2層品であるDF02U(三菱ガス化学社製、厚さ0.254mm)を準備した。ワイヤーバーコーターを用いて乾燥後の膜厚が3μmとなるよう上記で得られたハードコート組成物を、基材層のPMMA側に塗布した。ハードコート組成物を80℃で3分間乾燥させた後、紫外線照射機(ヘレウス社製)を用いて200mJ/cm
2の紫外線を照射し、熱成形用積層体を作製した。
得られた熱成形用積層体について、初期の防汚性能および防汚性能の長期安定性を評価した結果を下記表に示す。
【化13】
【0083】
(実施例2~17、比較例1~5)
下記表に示す成分を下記表に示す量で使用した以外は、実施例1と同様に熱成形用積層体を作製した。得られた熱成形用積層体について、初期の防汚性能および防汚性能の長期安定性を評価した結果を下記表に示す。
【0084】
(実施例18、19)
下記表に示す成分を下記表に示す量で使用し、ハードコート組成物を60℃で4分間乾燥させた後、紫外線照射機(ヘレウス社製)を用いて400mJ/cm2の紫外線を照射した以外は、実施例1と同様に熱成形用積層体を作製した。
【0085】
【0086】
<表中の成分の説明>
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(EBECRYL 4491):ダイセル・オルネクス社製、重量平均分子量7000、官能基数2
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂(H-340):根上工業社製、重量平均分子量8000、官能基数6
オルガノシリカゾル(MEK-AC-2140Z):日産化学社製
アクリル基型表面改質剤(KP-420):信越シリコーン社製
フッ素系防汚添加剤(KY-1216):信越化学工業社製
シリコーン系レベリング剤(RS-57):DIC社製
【化14】
ヒンダートアミン系光安定剤(Tinuvin123):BASF社製
【化15】
ヒンダートアミン系光安定剤(Tinuvin770DF):BASF社製
【化16】
紫外線吸収剤(Tinuvin400):BASF社製
紫外線吸収剤(Tinuvin477):BASF社製、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物
紫外線吸収剤(Tinuvin479):BASF社製、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系化合物
【0087】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。