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特開2025-1323X線CT装置及びX線CT装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001323
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】X線CT装置及びX線CT装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/046 20180101AFI20241225BHJP
【FI】
G01N23/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100838
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】506382792
【氏名又は名称】コムスキャンテクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 靖和
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA07
2G001HA14
2G001JA08
2G001JA09
(57)【要約】
【課題】ヘリカルスキャンにおいて、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できるX線CT装置及びX線CT装置の制御方法を提供する。
【解決手段】X線CT装置1は、X軸方向に位置決めされたステージ13を、回転軸P1を中心として回転させるとともに、ステージ13とX線源11及び検出器12とをZ軸方向に相対移動させ、ステージ面13a上に載置された被検体WにX線を照射することによって検出器12により投影データDP20を取得する撮影制御部30を有する。撮影制御部30は、回転駆動機構14を制御してステージ13を相対的に回転させるとともに、Y軸方向とZ軸方向との比率を維持しつつ検出領域12aの一部の対象領域をY軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、Z軸方向移動機構16を制御してステージ13をZ軸方向に相対移動させて、投影データDP20を取得する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X軸方向にX線を照射するX線源と、
前記X線源によって照射される前記X線の検出領域を有する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を支持可能なステージ面を有するステージと、
前記X線の照射方向及び前記ステージの前記ステージ面に対してそれぞれ直交する回転軸を中心として、前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させる回転駆動機構と、
前記X軸方向において、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを相対移動させるX軸方向移動機構と、
前記回転軸が延びる方向であるZ軸方向において、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを相対移動させるZ軸方向移動機構と、
前記X軸方向に位置決めされた前記ステージを、前記回転軸を中心として相対的に回転させるとともに、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを前記Z軸方向に相対移動させ、前記ステージ面に支持された前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により投影データを取得する撮影制御部と、
を有し、
前記投影データに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置であって、
前記撮影制御部は、前記回転駆動機構を制御して前記ステージを相対的に回転させるとともに、前記X軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ直交するY軸方向と前記Z軸方向との比率を維持しつつ前記検出領域の一部の対象領域を前記Y軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージを前記Z軸方向に相対移動させて、前記投影データを取得する、
X線CT装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記撮影制御部は、前記拡大倍率に基づいて、前記X軸方向移動機構を制御して前記ステージを前記X軸方向に相対移動させることにより、前記検出領域の一部の対象領域を拡大させた後、前記回転駆動機構を制御して前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させるとともに、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源とを前記Z軸方向に相対移動させて、投影データを取得する、
X線CT装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記撮影制御部は、前記検出領域の一部の対象領域が前記検出領域のY軸方向の範囲内に収まる倍率を前記拡大倍率として決定する、
X線CT装置。
【請求項4】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記撮影制御部は、前記被検体のうち、前記Y軸方向の幅が最も広い位置を基準として、前記拡大倍率を決定する、
X線CT装置。
【請求項5】
請求項1に記載のX線CT装置において、
前記撮影制御部は、前記Z軸方向において、拡大後の前記対象領域の他方端が前記検出領域の他方端に一致するまで、前記ステージを前記Z軸方向の一方に相対的に移動させる制御を行ってから、前記ステージを前記Z軸方向の他方に相対的に移動させる制御を行い、投影画像を取得する、
X線CT装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一つに記載のX線CT装置において、
前記撮影制御部は、
前記拡大倍率を設定する倍率決定部と、
前記拡大倍率によって拡大する場合に、前記Z軸方向において前記検出領域の範囲外に位置する前記対象領域の部分を撮影するための前記Z軸方向への移動量を決定するZ軸方向移動量決定部と、
前記拡大倍率に応じて、前記X軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源とを前記X軸方向に相対移動させるX軸方向移動制御部と、
前記Z軸方向への前記移動量に応じて、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを前記Z軸方向に相対移動させるZ軸方向移動制御部と、
を含む、
X線CT装置。
【請求項7】
X軸方向にX線を照射するX線源と、
前記X線源によって照射されるX線の検出領域を有する検出器と、
前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を支持可能なステージ面を有するステージと、
を有し、
前記X線の照射方向及び前記ステージの前記ステージ面に対してそれぞれ直交する回転軸を中心として、前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させながら、前記ステージ面に支持された前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により取得された投影データに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置の制御方法であって、
前記X軸方向及び前記回転軸が延びる方向であるZ軸方向にそれぞれ直交するY軸方向と前記Z軸方向との比率を維持しつつ前記検出領域の一部の対象領域を前記Y軸方向に拡大させる拡大ステップと、
前記ステージを回転させるとともに、前記拡大ステップにおける拡大倍率に基づいて、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを前記Z軸方向に相対移動させて、前記ステージ上に載置または取付られた前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により投影データを取得する投影データ取得ステップと、
を含む、
X線CT装置の制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載のX線CT装置の制御方法において、
前記拡大ステップでは、前記拡大倍率に基づいて、前記ステージを前記X軸方向に移動させる、
X線CT装置の制御方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載のX線CT装置の制御方法において、
前記回転軸に直交する方向の少なくとも一方向に見て、前記被検体の全体が、前記検出領域に収まるように前記被検体を前記X軸方向に位置決めする位置決めステップをさらに含み、
前記拡大ステップでは、前記被検体を前記X軸方向に位置決めした状態で、前記対象領域を拡大させる、
X線CT装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射によって被検体の断層画像を得るX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線源によってX線を被検体としての試料等に照射しながら前記被検体を回転テーブルによって回転させて、多数の方向から得られたX線投影データに基づいて、試料の断層画像を得るX線CT(Computed Tomography)装置が知られている。
【0003】
高い分解能の断層画像を得る方法の一つとして、X線投影データの撮影倍率を上げる方法がある。前記X線CT装置の前記回転テーブルを、前記被検体とともに、前記X線源に近づけることで、撮影倍率を上げることができる。また、例えば、X線を検出する検出器の検出領域の範囲内に、前記被検体の全体または一部の注目箇所が収まるように撮影倍率を設定することによって、より高い分解能の断層画像を得ることができる。しかしながら、前記検出器の検出領域の範囲内に、前記被検体が収まるように撮影倍率を設定するには、前記X線投影データを取得しながら、所望の撮影倍率が得られるまで何度も前記回転テーブルを移動させて、X線源に対する前記被検体の位置を修正する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献1では、所望の撮影倍率が得られる移動量の計算を容易に行うためのX線CT装置が開示されている。前記特許文献1のX線CT装置では、具体的には、予備的に取得したX線投影データに基づいて再構成した再構成画像を一方向に見た投影像において、ROI(関心領域)を設定し、前記ROIが検出器の検出領域に収まった状態で前記ROIをX線CT撮影できる移動量を計算する。
【0005】
また、特許文献2には、逆投影画像において高倍率の被検物が得られるようなX線源と被検物との距離を算出するための予備検査を行うX線検査装置が開示されている。前記特許文献2のX線検査装置は、本検査の前に前記予備検査を行う。前記予備検査では、被検物の投影像の拡大のために、複数の回転角度において取得したX線投影データにおける前記被検物の外縁部によって定まる被検物領域に基づいて、前記被検物をX線源へ近づける移動量を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-134528号公報
【特許文献2】国際公開第2016/170685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、回転テーブルを回転軸方向に移動させて被検体のX線投影データを取得するヘリカルスキャンという技術が知られている。前記ヘリカルスキャンによれば、例えば、回転テーブルの回転軸方向に長い被検体の全体を撮影できる。前記ヘリカルスキャンにおいて、前記被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、拡大倍率の設定を容易にすることが望まれている。
【0008】
特許文献1及び2には、前記ヘリカルスキャンにおいて、前記被検体が前記検出領域に収まるように撮影倍率を設定する方法が、具体的に開示されてない。したがって、所望の撮影倍率を得るためには、X線源に対する前記被検体の位置を試行錯誤して決める必要がある。このため、オペレータの知識及び経験によっては適切な拡大倍率を設定することが難しかったり、時間がかかったりしていた。
【0009】
本発明の目的は、ヘリカルスキャンにおいて、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できるX線CT装置及びX線CT装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1に係るX線CT装置は、X軸方向にX線を照射するX線源と、前記X線源によって照射される前記X線の検出領域を有する検出器と、前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を支持可能なステージ面を有するステージと、前記X線の照射方向及び前記ステージの前記ステージ面に対してそれぞれ直交する回転軸を中心として、前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させる回転駆動機構と、前記X軸方向において、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを相対移動させるX軸方向移動機構と、前記回転軸が延びる方向であるZ軸方向において、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを相対移動させるZ軸方向移動機構と、前記X軸方向に位置決めされた前記ステージを、前記回転軸を中心として相対的に回転させるとともに、前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを前記Z軸方向に相対移動させ、前記ステージ面に支持された前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により投影データを取得する撮影制御部と、を有し、前記投影データに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置である。前記X線CT装置の前記撮影制御部は、前記回転駆動機構を制御して前記ステージを相対的に回転させるとともに、前記X軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ直交するY軸方向と前記Z軸方向との比率を維持しつつ前記検出領域の一部の対象領域を前記Y軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージを前記Z軸方向に相対移動させて、前記投影データを取得する。
【0011】
上述の構成では、X軸方向への移動により投影像の一部を拡大できる。ここで、前記検出領域の一部の対象領域を拡大した場合、拡大後の前記対象領域が前記Z軸方向において前記検出領域の範囲外に位置する可能性がある。上述の構成では、前記検出領域の範囲外に位置する前記対象領域のはみ出し部分を撮影するために、前記被検体が前記Z軸方向に相対的に移動するように撮影する。
【0012】
これにより、幅方向(Y軸方向)に投影像を拡大できるとともに、Z軸方向に被検体の全体を撮影することができる。
【0013】
よって、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できる。
【0014】
態様2に係るX線CT装置は、態様1において、前記撮影制御部は、前記拡大倍率に基づいて、前記X軸方向移動機構を制御して前記ステージを前記X軸方向に相対移動させることにより、前記検出領域の一部の対象領域を拡大させた後、前記回転駆動機構を制御して前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させるとともに、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源とを前記Z軸方向に相対移動させて、投影データを取得する。
【0015】
上述の構成では、拡大倍率に基づいて、ステージを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出領域の一部の対象領域を拡大させる。また、前記X軸方向への移動の後、前記ステージを回転及びZ軸方向へ移動させて、投影データを取得する。これにより、前記検出領域の一部の対象領域を効率よく拡大できる。
【0016】
態様3に係るX線CT装置は、態様1において、前記撮影制御部は、前記検出領域の一部の対象領域が前記検出領域のY軸方向の範囲内に収まる倍率を前記拡大倍率として決定する。
【0017】
上述の構成によれば、Y軸方向において、検出器の検出領域の範囲を超えて、対象領域の拡大倍率が設定されることを防止できる。これにより、被検体が検出領域からはみ出るような投影データが取得されることを防止できる。よって、撮影時のエラーを抑制することができる。
【0018】
態様4に係るX線CT装置は、態様1において、前記撮影制御部は、前記被検体のうち、前記Y軸方向の幅が最も広い位置を基準として、前記拡大倍率を決定する。
【0019】
上述の構成では、Y軸方向の幅がZ軸方向において変化する場合でも、被検体が検出領域に収まるようにできる。これにより、被検体が検出領域からはみ出るような投影データが取得されることを防止できる。よって、撮影時のエラーを抑制することができる。
【0020】
態様5に係るX線CT装置は、態様1において、前記撮影制御部は、前記Z軸方向において、拡大後の前記対象領域の他方端が前記検出領域の他方端に一致するまで、前記ステージを前記Z軸方向の一方に相対的に移動させる制御を行ってから、前記ステージを前記Z軸方向の他方に相対的に移動させる制御を行い、投影画像を取得する。
【0021】
上述の構成では、ステージを効率よく移動させて撮影できる。これにより、撮影時間を短縮できる。
【0022】
態様6に係るX線CT装置は、態様1から5のいずれか一つにおいて、前記撮影制御部は、前記拡大倍率を設定する倍率決定部と、前記拡大倍率によって拡大する場合に、前記Z軸方向において前記検出領域の範囲外に位置する前記対象領域の部分を撮影するための前記Z軸方向への移動量を決定するZ軸方向移動量決定部と、前記拡大倍率に応じて、前記X軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源とを前記X軸方向に相対移動させるX軸方向移動制御部と、前記Z軸方向への前記移動量に応じて、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源及び前記検出器とを前記Z軸方向に相対移動させるZ軸方向移動制御部と、を含む。
【0023】
上述の構成によれば、設定した拡大倍率に応じて、Z軸方向への移動量及びX軸方向への移動量を決定できる撮影制御部を容易に実現することができる。
【0024】
態様7に係るX線CT装置の制御方法は、X軸方向にX線を照射するX線源と、前記X線源によって照射されるX線の検出領域を有する検出器と、前記X線源と前記検出器との間に位置し、被検体を支持可能なステージ面を有するステージと、を有し、前記X線の照射方向及び前記ステージの前記ステージ面に対してそれぞれ直交する回転軸を中心として、前記ステージを、前記X線源及び前記検出器に対して相対的に回転させながら、前記ステージ面上に支持された前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により取得された投影データに基づいて、前記被検体の断層画像を再構成するX線CT装置の制御方法である。前記X線CT装置の制御方法は、前記X軸方向及び前記回転軸が延びる方向であるZ軸方向にそれぞれ直交するY軸方向と前記Z軸方向との比率を維持しつつ前記検出領域の一部の対象領域を前記Y軸方向に拡大させる拡大ステップと、前記ステージを回転させるとともに、前記拡大ステップにおける拡大倍率に基づいて、前記ステージと前記X線源とを前記Z軸方向に相対移動させて、前記ステージ上に載置または取付られた前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により投影データを取得する投影データ取得ステップと、を含む。
【0025】
上述の構成では、X軸方向への移動により投影像の一部を拡大できる。ここで、前記検出領域の一部の対象領域を拡大した場合、拡大後の前記対象領域の一部が前記Z軸方向において前記検出領域の範囲外に位置する可能性がある。上述の構成では、前記検出領域の範囲外に位置する前記対象領域のはみ出し部分を撮影するために、前記被検体を前記Z軸方向に相対的に移動させるように撮影する。
【0026】
これにより、幅方向(Y軸方向)に投影像を拡大できるとともに、Z軸方向に被検体の全体を撮影することができる。
【0027】
よって、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できる。
【0028】
態様8に係るX線CT装置の制御方法は、態様7において、前記拡大ステップでは、前記拡大倍率に基づいて、前記ステージを前記X軸方向に移動させる。
【0029】
上述の構成では、拡大倍率に基づいて、ステージを前記X軸方向に移動させることにより、前記検出領域の一部の対象領域を拡大させる。これにより、前記検出領域の一部の対象領域を効率よく拡大させることができる。
【0030】
態様9に係るX線CT装置の制御方法は、態様7または8において、前記回転軸に直交する方向の少なくとも一方向に見て、前記被検体の全体が、前記検出領域に収まるように前記被検体を前記X軸方向に位置決めする位置決めステップをさらに含み、前記拡大ステップでは、前記被検体を前記X軸方向に位置決めした状態で、前記対象領域を拡大させる。
【0031】
上述の構成によれば、一方向から見て、Y軸方向の幅がZ軸方向において変化する場合でも、被検体を検出領域内に収めることができる。これにより、対象領域の拡大前に、前記被検体が前記検出領域からはみ出るような投影データが取得されることを抑制できる。よって、撮影時のエラーまたは断層画像の画質低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一態様に係るX線CT装置では、撮影制御部が、前記回転駆動機構を制御して前記ステージを回転させるとともに、前記X軸方向及び前記Z軸方向にそれぞれ直交するY軸方向と前記Z軸方向との比率を維持しつつ前記検出領域の一部の対象領域を前記Y軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、前記Z軸方向移動機構を制御して前記ステージと前記X線源とを前記Z軸方向に相対移動させて、前記投影データを取得する。
【0033】
上述の態様によれば、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、実施形態に係るX線CT装置の概略的構成を示す機能ブロック図である。
図2図2は、投影像の拡大倍率について説明する平面図である。
図3図3は、投影像の拡大倍率について説明する側面図であり、図2の白抜き矢印III矢視図である。
図4図4は、対象領域を拡大する前における検出領域と対象領域との関係を示す図である。
図5図5は、対象領域を拡大した後における検出領域と対象領域との関係を示す図である。
図6図6は、Z軸方向において検出領域の一方端と拡大後の対象領域の一方端とが一致するように相対移動させた状態を示す図である。
図7図7は、Z軸方向において検出領域の他方端と拡大後の対象領域の他方端とが一致するように相対移動させた状態を示す図である。
図8図8は、X線CT装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。なお、図中の同一または相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。また、各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表したものではない。
【0036】
(全体構成)
図1は、実施形態に係るX線CT装置1の概略的構成を示す機能ブロック図である。
【0037】
なお、図1において、矢印Xは、X線CT装置1の座標系におけるX軸を示し、矢印Yは、X線CT装置1の座標系におけるY軸を示し、矢印Zは、X線CT装置1の座標系におけるZ軸を示す。X軸、Y軸及びZ軸のそれぞれにおいて矢印の向きが正方向であり、矢印と逆の向きが負方向である。また、X軸及びY軸は、X線CT装置1の水平方向に延びる軸である。また、Z軸は、X線CT装置1の上下方向に延びる軸である。以下では、X線CT装置1の上下方向を単に上下方向と称する。Z軸方向において、Z軸の矢印の向きを一方と称し、矢印と逆の向きを他方と称する。Z軸は、X軸及びY軸を含む水平面に対して直交する。また、別の観点からいえば、Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向とに直交する。
【0038】
図1に示すように、X線CT装置1は、X線源11と、検出器12と、ステージ13と、回転駆動機構14と、X軸方向移動機構15と、Z軸方向移動機構16と、記憶部20と、撮影制御部30と、再構成部40と、操作部51と、表示部52と、を有する。
【0039】
X線源11は、コーンビーム状のX線を発生する。X線源11は、焦点が数マイクロメートルから数十マイクロメートルであるマイクロフォーカスX線管を含む。マイクロフォーカスX線管では、フィラメントから発生した電子を収束させ、収束させた電子をターゲットである陽極に当ててX線を発生させる。X線源11は、水平方向の一方向であるX軸方向に延びるX線光軸AXを有する。X線源11は、X線光軸AXの一方向に位置する検出器12に対してX軸方向にX線を照射する。
【0040】
検出器12は、X線源11によって照射されるX線の検出領域12aを有する。検出器12は、2次元状に配列された画素を有する2次元X線検出器である。検出器12は、検出したX線に基づき投影データDP20を生成する。
【0041】
ステージ13は、被検体Wを支持する台である。ステージ13は、X線源11と検出器12との間に位置する。ステージ13は、X-Y平面に対して平行なステージ面13aを有する。ステージ13では、ステージ面13a上に被検体Wを載置可能である。ステージ13は、後述の回転駆動機構14の駆動力によって、上下方向に延びる回転軸P1を中心として回転する。
【0042】
回転駆動機構14は、ステージ13を、上下方向に延びる回転軸P1を中心として、X線源11及び検出器12に対して相対的に回転させる。回転軸P1は、X線の照射方向であるX線光軸AX及びステージ13のステージ面13aに対してそれぞれ直交する。また、回転軸P1は、Z軸方向に延びる。これにより、回転駆動機構14は、ステージ13に載置される被検体Wを、回転軸P1を中心としてX線源11に対して相対的に回転させる。具体的には、回転駆動機構14は、ステージ13を、上下方向に延びる回転軸P1を中心として図1に示す矢印R11方向に一定速度で回転させる。回転駆動機構14は、被検体Wの撮影時、撮影制御部30の制御によって被検体Wを載置したステージ13を所定の角度または回数だけ回転させる。回転駆動機構14は、モータ等の駆動装置により実現される。
【0043】
X軸方向移動機構15は、X軸方向において、ステージ13をX線源11及び検出器12に対して相対移動させる。X軸方向移動機構15は、被検体Wの撮影時、撮影制御部30の制御によって被検体Wを載置したステージ13をX軸方向の所定の位置に移動させる。
【0044】
Z軸方向移動機構16は、Z軸方向において、ステージ13をX線源11及び検出器12に対して相対移動させる。Z軸方向移動機構16は、被検体Wの撮影時、撮影制御部30の制御によって被検体Wを載置したステージ13をZ軸方向の所定の位置に移動させる。
【0045】
X軸方向移動機構15及びZ軸方向移動機構16は、モータ等の電動機の回転駆動力を直線運動に変換する駆動機構及び前記機構を動作させるためのモーションコントローラボードにより実現される。
【0046】
記憶部20は、撮影制御部30において実行されるプログラム及びプログラムで使用されるデータ等の各種のデータを格納している。記憶部20は、例えば、揮発性又は不揮発性の記憶装置により実現できる。記憶部20は、例えば、内蔵、外付けの記憶装置又はリムーバブルメディアにより実現できる。記憶部20は、具体的に例示すると、キャッシュメモリ及び主記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、具体的に例示すると、SSD(Solid State Drive)又はHDD(ハードディスク)等の補助記憶装置により実現できる。また、記憶部20は、各角度において被検体Wを撮影することによって得られた投影データDP20を記憶する。
【0047】
撮影制御部30は、X線による被検体Wの撮影を制御する。X線CT装置1の撮影制御部30は、記憶部20に記憶されているプログラムを読みだして、読みだした前記プログラムをCPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)等の演算装置によって実行することにより各種機能を実現する。撮影制御部30は、前記X軸方向に位置決めされたステージ13を、回転軸P1を中心として回転させるとともに、ステージ13とX線源11及び検出器12とを前記Z軸方向に相対移動させ、ステージ面13a上に載置された被検体Wに前記X線を照射することによって検出器12により投影データを取得する。なお、撮影制御部30の詳細構成については後述する。
【0048】
再構成部40は、投影データDP20に基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する。
【0049】
操作部51は、X線CT装置1における各種の操作を行うためのユーザインターフェースである。操作部51は、例えば、キーボード、ボタン等の入力装置、又は、マウス、ペンタブレット及びタッチパネル等のポインティングデバイスにより実現できる。例えば、操作部51におけるオペレータの操作によって、X線CT装置1における撮影操作を行うことができる。
【0050】
表示部52は、ユーザに対してX線CT装置1における各種データを提示する。表示部52は、液晶又は有機EL等の表示装置により実現できる。
【0051】
(拡大倍率について)
図1に加えて図2及び図3も参照して、投影像の拡大倍率について説明する。図2は、投影像の拡大倍率について説明する平面図である。図3は、投影像の拡大倍率について説明する側面図であり、図2の白抜き矢印III矢視図である。
【0052】
X線CT装置1では、被検体WをX線源11に近づけるほど、幾何学的な拡大倍率が大きくなるため、より高い分解能の断層画像が得られる。
【0053】
以下の説明では、X線源11が位置する点PXは、X線源11の焦点の位置を意味する。なお、説明の便宜上、X線源11の焦点の大きさは考慮しない。
【0054】
図2及び図3に示すように、X線源11のX線光軸AXは、X線源11が位置する点PXから検出器12の検出領域12aに向かってX軸方向に延びる。X線光軸AXは、検出領域12aに直交する。X線源11が位置する点PXと検出領域12aとは、距離L1だけ離れて位置する。すなわち、距離L1は、FDD(Focus Detector Distance)である。
【0055】
被検体Wが、X線源11が位置する点PXから距離D1だけ離れた位置PS1にある場合の拡大倍率M1と、X線源11が位置する点PXから距離D2だけ離れた位置PS2にある場合の拡大倍率M2とについて比較する。なお、位置PS1及び位置PS2は、被検体Wを載置するステージ13の回転軸P1を基準とする。また、距離D1及び距離D2は、FOD(Focus Object Distance)である。
【0056】
位置PS1における幾何学的な拡大倍率M1及び位置PS2における幾何学的な拡大倍率M2は、それぞれ、以下の式(1)及び(2)によって与えられる。
M1=L1/D1 ・・・ (1)
M2=L1/D2 ・・・ (2)
【0057】
距離D2のほうが、距離D1よりも小さいので、位置PS2の拡大倍率M2のほうが、位置PS1の拡大倍率M1よりも大きい。
【0058】
さらに言えば、X線源11が位置する点PXから距離D1だけ離れた位置PS1では、検出器12の検出領域12aに投影される被検体Wの投影像の大きさは、高さH1及び幅W1である。位置PS1では、被検体Wの全体の投影像が検出領域12aに収まる。
【0059】
これに対して、位置PS1よりもΔxだけ、X線源11が位置する点PXに近い位置PS2では、検出器12の検出領域12aに投影される被検体Wの投影像の大きさは、高さH2及び幅W2である。位置PS2における投影像の高さH2及び幅W2は、それぞれ、位置PS1における投影像の高さH1及び幅W1よりも大きい。位置PS1では、被検体Wの投影像の一部が検出領域12aの範囲外である。
【0060】
(撮影制御部の詳細)
図1図3に加えて図4図7を参照して撮影制御部30の詳細を説明する。図4は、検出領域12aと対象領域TG1との関係を示す図である。図5は、対象領域TG1を拡大した後における検出領域12aと対象領域TG2との関係を示す図である。図6は、Z軸方向において検出領域12aの一方端と拡大後の対象領域TG2の一方端とが一致するように相対移動させた状態を示す図である。図7は、Z軸方向において検出領域12aの他方端と拡大後の対象領域TG2の他方端とが一致するように相対移動させた状態を示す図である。
【0061】
撮影制御部30は、X線源11、検出器12、回転駆動機構14、X軸方向移動機構15及びZ軸方向移動機構16を制御して被検体Wを撮影する。撮影制御部30は、回転駆動機構14を制御してステージ13を回転させるとともに、Y軸方向とZ軸方向との比率を維持しつつ検出領域12aの一部の対象領域TG1をY軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、Z軸方向移動機構16を制御してステージ13とX線源11及び検出器12とをZ軸方向に相対移動させて、投影データDP20を取得する。
【0062】
撮影制御部30は、具体的には、領域設定部31と、倍率決定部(撮影制御部)32と、Z軸方向移動量決定部33と、X軸方向移動制御部34と、Z軸方向移動制御部(撮影制御部)35とを有する。
【0063】
領域設定部31は、操作部51におけるオペレータの操作に応じて、拡大の対象となる対象領域TG1を設定する。例えば、図4に示すように、領域設定部31は、拡大前の位置PS1に位置する被検体Wに照射したX線を検出器12によって検出することによって投影像PR1を表示部52に出力する。操作部51において、投影像PR1の一部分の領域が指定された場合、投影像PR1の前記一部分を対象領域TG1として設定する。すなわち、領域設定部31は、投影像PR1を検出した検出領域12aの一部を対象領域TG1として設定する。
【0064】
倍率決定部32は、対象領域TG1に応じた拡大倍率を設定する。倍率決定部32は、検出領域12aの一部の対象領域TG1が検出領域12aのY軸方向の幅DW1内に収まる倍率を前記拡大倍率として決定する。上述の構成によれば、Y軸方向において、検出器12の検出領域12aの範囲を超えて、対象領域TG1の拡大倍率が設定されることを防止できる。これにより、Y軸方向において、被検体Wが検出領域12aからはみ出るような投影データDP20が取得されることを防止できる。よって、撮影時のエラーを抑制することができる。
【0065】
ここで、被検体Wは、Z軸方向の各位置において幅広であったり幅狭であったりする。例えば、被検体WのY軸方向における幅は、最も広い位置では、W1であり、最も狭い位置では、W10である。倍率決定部32は、被検体Wのうち、Y軸方向の幅が最も広い位置を基準として、前記拡大倍率を決定する。上述の構成によれば、Y軸方向の幅がZ軸方向において変化する場合でも、被検体Wが検出領域12aに収まるようにできる。これにより、被検体Wが検出領域12aからはみ出るような投影データDP20が取得されることを防止できる。よって、撮影時のエラーを抑制することができる。
【0066】
また、倍率決定部32は、図4及び図5に示すように、投影像のZ軸方向における中央C1を基準に対象領域TG1を拡大する。このため、前記拡大倍率によって対象領域TG1を拡大する場合、図5に示すようにZ軸方向において拡大後の対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22が検出領域12aの範囲外に位置する。すなわち、拡大後の対象領域TG2の高さH2は、検出領域12aのZ軸方向における高さDH1よりも大きくなる。
【0067】
また、倍率決定部32は、前記拡大倍率に応じたX軸方向への移動量を計算する。
【0068】
Z軸方向移動量決定部33は、前記拡大倍率に応じてZ軸方向への移動量を決定する。具体的には、Z軸方向移動量決定部33は、図4に示した対象領域TG1を前記拡大倍率によって拡大する場合に、図5に示すようにZ軸方向において検出領域12aの範囲外に位置する対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22を撮影するためのZ軸方向への移動量を決定する。上述の通り、投影像のZ軸方向における中央C1を基準に行われるため、図5に示すように、Z軸方向において対象領域TG2の一方端は、検出領域12aの一方端に対してΔzだけ一方向にズレて位置する。また、Z軸方向において対象領域TG2の他方端は、検出領域12aの他方端に対してΔzだけ他方向にズレて位置する。そこで、対象領域TG2をZ軸方向の一方にΔzだけ移動させると、拡大後の対象領域TG2の他方端が検出領域12aの他方端に一致する。このようにして、Z軸方向移動量決定部33は、Z軸方向において、拡大後の対象領域TG2の他方端が検出領域12aの他方端に一致する移動量Δzを計算する。
【0069】
X軸方向移動制御部34は、倍率決定部32が決定した前記拡大倍率及びX軸方向への移動量に応じて、X軸方向移動機構15を制御してステージ13とX線源11及び検出器12とをX軸方向に相対移動させる。X軸方向移動制御部34は、X軸方向の他方に、ステージ13をΔXだけ移動させる。これにより、X軸方向移動制御部34は、検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大させる。対象領域TG1の拡大によって、図5に示すように、対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22は、検出領域12aの範囲外となる。図5に示す状態において、検出器12では、対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22が範囲外となった状態の投影像PR2が得られる。すなわち、投影像PR2には、被検体Wの対象領域TG2のうち、一部だけが映っている。
【0070】
Z軸方向移動制御部35は、Z軸方向移動量決定部33が決定したZ軸方向への移動量Δzに基づいて、Z軸方向移動機構16を制御してステージ13とX線源11及び検出器12とをZ軸方向に相対移動させる。Z軸方向移動制御部35は、ステージ13をZ軸方向の一方に移動量Δzだけ移動させる。これにより、図6に示すように、Z軸方向において、拡大後の対象領域TG2の他方端が検出領域12aの他方端に一致する。さらに、Z軸方向移動制御部35は、投影データDP20の取得のためのステージ13の回転に伴って、ステージ13にZ軸方向の他方に移動させる。
【0071】
上述の構成では、ステージ13を効率よく移動させて撮影できる。これにより、撮影時間を短縮できる。
【0072】
以上に説明した撮影制御部30の構成によれば、設定した拡大倍率に応じて、Z軸方向への移動量及びX軸方向への移動量を決定できる撮影制御部30を容易に実現することができる。
【0073】
(拡大倍率の計算の具体例について)
X線CT装置1の倍率決定部32による拡大倍率の計算について具体例を挙げて説明する。以下では、次のパラメータを用いる(図2図5も参照)。
【0074】
位置PS1における拡大倍率:M1
検出器12の検出領域12aの範囲である分解能:幅DW1×高さDH1ピクセル
検出領域12aのピクセルサイズ:PxSz(mm)
対象領域TG1のサイズ:幅W1×高さH1(=DH1)ピクセル
拡大後の対象領域TG2の幅:W2=DW1ピクセル
すなわち、以下の説明において、拡大前の対象領域TG1の高さH1は検出領域12aの高さDH1と同じである。また、拡大後の対象領域TG2の幅W2は、検出領域12aの幅DW1と同じである。以下では、対象領域TG1の幅W1を、検出領域12aの幅DW1に引き延ばす拡大倍率を計算する場合について説明する。
【0075】
まず、倍率決定部32は、指定された対象領域TG1の検出領域12aにおけるピクセルサイズを計算する。
【0076】
上述のとおり、拡大倍率M1の投影像において対象領域TG1は幅W1である。このため、検出領域12aのピクセル上のサイズpx(y)は以下の式(3)により計算できる。
【0077】
px(y) = W1/M1 ・・・ (3)
このピクセル上のサイズpx(y)を、検出領域12aの幅DW1まで引き延ばすため、求める対象領域TG1の拡大倍率M2は、以下の式(4)により計算できる。
【0078】
M2=DW1/px(y) ・・・ (4)
また、上述の式(2)にM2を適用することによって、距離D2を求めることができる。
【0079】
倍率決定部32は、以上のようにして、拡大倍率M2及びステージ13を移動させるべき位置、すなわち距離D2を計算する。なお、X軸方向移動制御部34は、倍率決定部32が計算した距離D1と距離D2との差Δxに基づいてパルス変換を行い、X軸方向移動機構15を動作させるための信号を生成する。
【0080】
(移動量の計算の具体例について)
X線CT装置1のZ軸方向移動量決定部33による拡大倍率の計算について具体例を挙げて説明する。以下では、拡大倍率の計算の具体例で説明したパラメータを用いる。
【0081】
Z軸方向移動量決定部33は、図5に示した、Y軸方向とZ軸方向との比率を維持して拡大した後の対象領域TG2のうち、検出領域12aの範囲外に位置する対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22のサイズを計算する。
【0082】
まず、拡大後の対象領域TG2のうち、検出領域12aの範囲内において投影像として映っている範囲を計算する。
【0083】
まず、以下の式(6)によって、拡大前の対象領域TG2の幅W1と、拡大後の対象領域TG2の幅W2(すなわち、検出領域12aの幅DW1)との比RT1を求める。
RT1=W1/W2(=W1/DW1) ・・・ (6)
Y軸方向及びZ軸方向の比率が同じであるので、以下の式(7)によって、Z軸方向において、対象領域TG1の拡大後に検出領域12aに収まる対象領域TG1の部分のサイズPH1(図4参照)を求めることができる。
【0084】
PH1=H1×RT1 ・・・(7)
すなわち、対象領域TG1の幅W1×高さH1の範囲のうち、拡大後に検出領域12aに収まる部分のサイズは、幅W1×高さPH1である。一方、Z軸方向において、拡大後に検出領域12aの範囲外となる対象領域TG1の部分の大きさは、以下の式(8)によって計算することができる。
【0085】
XPH1=H1-PH1 ・・・(8)
上述のとおり、倍率決定部32は、投影像のZ軸方向における中央C1を基準に対象領域TG1を拡大する。このため、Z軸方向において、検出領域12aの範囲外となる拡大後の対象領域TG2の一方端部TG21及び他方端部TG22のサイズは同じである。したがって、Z軸方向において、図4に示す対象領域TG1において拡大後に検出領域12aの範囲外となる一方端部TG11及び他方端部TG12のサイズも同じである。
【0086】
Z軸方向において、対象領域TG1の一方端部TG11および他方端部TG12のサイズΔpzは、いずれも、以下の式(9)によって計算することができる。
【0087】
Δpz=XPH1/2 ・・・(9)
被検体Wを載置したステージ13を、X軸方向に移動させた後、Z軸方向に移動させるので、上述のとおりX軸方向への移動による拡大の前後において拡大倍率がM1からM2に変化する。
【0088】
式(9)によって計算したΔpzを対象領域TG1の拡大後の拡大倍率M2におけるスケールに変換する。この変換は以下の式(10)によって求めることができる。
【0089】
Δz=Δpz×(M2/M1) ・・・(10)
また、以下の式(11)によって、Δzのピクセル単位のサイズをmm単位のサイズΔz(mm)に変換することができる。
【0090】
Δz(mm)=Δz×(PxSz/M2) ・・・ (11)
Z軸方向移動量決定部33は、以上のようにして、Z軸方向への移動量Δz(mm)を計算する。なお、Z軸方向移動制御部35は、Z軸方向移動量決定部33が計算した移動量Δz(mm)に基づいてパルス変換を行い、Z軸方向移動機構16を動作させるための信号を生成する。
【0091】
以上に説明したように、X線CT装置1は、投影データDP20に基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する装置である。また、X線CT装置1の撮影制御部30は、回転駆動機構14を制御してステージ13をX線源11及び検出器12に対して相対的に回転させるとともに、Y軸方向とZ軸方向との比率を維持しつつ検出領域12aの一部の対象領域TG1をY軸方向に拡大させる拡大倍率に基づいて、Z軸方向移動機構16を制御してステージ13をZ軸方向に相対移動させて、投影データDP20を取得する。
【0092】
上述の構成では、X軸方向への移動により投影像の一部を拡大できる。ここで、前記検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大した場合、拡大後の対象領域TG2がZ軸方向において検出領域12aの範囲外に位置する可能性がある。上述の構成では、検出領域12aの範囲外に位置する対象領域TG1のはみ出し部分を撮影するために、被検体WがZ軸方向に相対的に移動するように撮影する。
【0093】
これにより、幅方向(Y軸方向)に投影像を拡大できるとともに、Z軸方向に被検体の全体を撮影することができる。
【0094】
よって、被検体の全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できる。
【0095】
また、X線CT装置1の撮影制御部30は、前記拡大倍率に基づいて、X軸方向移動機構15を制御してステージ13をX軸方向に相対移動させることにより、検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大させた後、回転駆動機構14を制御してステージ13を、X線源11及び検出器12に対して相対的に回転させるとともに、Z軸方向移動機構16を制御してステージ13とX線源11とをZ軸方向に相対移動させて、投影データDP20を取得する。
【0096】
上述の構成では、拡大倍率に基づいて、ステージ13をX軸方向に移動させることにより、検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大させる。また、X軸方向への移動の後、ステージ13を回転及びZ軸方向へ移動させて、投影データDP20を取得する。これにより、検出領域12aの一部の対象領域TG1を効率よく拡大できる。
【0097】
(X線CT装置の動作の流れ)
図8を参照して、X線CT装置1の動作の流れを説明する。図8は、X線CT装置1の制御方法S1の流れを示すフローチャートである。
【0098】
まず、X線CT装置1の制御方法S1では、X線CT装置1は、X軸方向に見て、被検体Wの全体の投影像が、検出領域12aに収まるように被検体WをX軸方向に位置決めする位置決めステップS11を実行する。例えば、図2及び図3に示すように、撮影制御部30は、X軸方向移動機構15を制御して、ステージ13を位置PS1に移動させる。上述の構成によれば、一方向に見て、Y軸方向の幅がZ軸方向において変化する場合でも、被検体Wを検出領域12a内に収めることができる。これにより、対象領域TG1の拡大前に被検体Wが検出領域12aからはみ出るような投影データDP20が取得されることを抑制できる。よって、撮影時のエラーまたは断層画像の画質低下を抑制できる。
【0099】
次に、領域設定部31が、対象領域TG1を設定する領域設定ステップS12を実行する。上述したように、X線CT装置1は、表示部52に、投影像PR1を出力する。また、X線CT装置1は、操作部51を介して、オペレータによる投影像PR1の一部分の領域の指定を取得する。
【0100】
次に、X線CT装置1は、Y軸方向とZ軸方向との比率を維持しつつ検出領域12aの一部の対象領域TG1をY軸方向に拡大させる拡大ステップS13を実行する。拡大ステップS13では、X線CT装置1は、前記拡大倍率に基づいて、ステージ13をX軸方向に移動させる。上述の構成では、前記拡大倍率に基づいて、ステージ13をX軸方向に移動させることにより、検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大させる。これにより、検出領域12aの一部の対象領域TG1を効率よく拡大させることができる。
【0101】
次に、X線CT装置1は、ステージ13を回転させるとともに、拡大ステップS13における拡大倍率に基づいて、ステージ13をZ軸方向に移動させて、ステージ13上に載置された被検体Wに前記X線を照射することによって検出器12により投影データDP20を取得する投影データ取得ステップS14を実行する。
【0102】
次に、X線CT装置1は、取得した投影データDP20に基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する再構成ステップS15を実行する。
【0103】
上述の構成では、X軸方向への移動により投影像の一部を拡大できる。ここで、検出領域12aの一部の対象領域TG1を拡大した場合、拡大後の対象領域TG2の一部がZ軸方向において検出領域12aの範囲外に位置する可能性がある。上述の構成では、検出領域12aの範囲外に位置する対象領域TG2のはみ出し部分を撮影するために、被検体WをZ軸方向に相対的に移動させるように撮影する。
【0104】
これにより、幅方向(Y軸方向)に投影像を拡大できるとともに、Z軸方向に被検体Wの全体を撮影することができる。
【0105】
よって、被検体Wの全体の断層画像の画質を向上させつつ、容易に拡大倍率を設定できる。
【0106】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0107】
前記実施形態では、X線CT装置1の撮影制御部30がプログラムを実行することにより各種機能を実現する。すなわち、撮影制御部30はソフトウェアによって実現されている。これに限られず、制御部は、専用の集積回路等のハードウェアによって実現されていてもよい。また、前記プログラムは、一時的ではなく実体的な記憶が可能な、コンピュータ読み取り可能記憶媒体に記憶されていてもよい。前記記憶媒体は、X線CT装置の記憶部の一部であってもよい。また、前記プログラムは、有線又は無線の任意の伝送媒体を介してX線CT装置に供給されてもよい。
【0108】
前記実施形態では、X線源11は、焦点が数マイクロメートルから数十マイクロメートルであるマイクロフォーカスX線管を含む。しかしながら、X線源は、マイクロメートルオーダーよりも大きい焦点を有していてもよい。
【0109】
前記実施形態では、X線源11は、水平方向の一方向に延びるX線光軸AXを有する。しかしながら、X線源のX線光軸は上下方向であってもよいし、別の他の方向であってもよい。例えば、X線源のX線光軸が上下方向である場合、ステージは、治具などを介して被検体を取り付け可能になっていてもよい。ステージが有するステージ面に対する被検体の支持方法に制限はない。
【0110】
前記実施形態では、特に説明しなかったが、X線源、検出器及び回転台は、それぞれ、Y軸方向に移動する移動機構を有していてもよい。
【0111】
前記実施形態では、ステージ13が回転駆動機構14によって回転する。しかしながら、回転駆動機構は、X線源及び検出器の対を、被検体に対して回転させてもよい。回転駆動機構は、被検体及び前記被検体にX線を照射するX線源の少なくとも一方を相対的に回転させてもよい。
【0112】
前記実施形態では、X線CT装置1が記憶部20に投影データDP20を記憶する。しかしながら、X線CT装置は、通信ネットワークを介して接続された外部のサーバに投影画像をアップロードしてもよい。
【0113】
前記実施形態では、再構成部40は、投影データDP20に基づいて、被検体Wの断層画像を再構成する。しかしながら、再構成部は、各種の補正処理が行われた投影データに基づいて、再構成を行ってもよい。また、撮像制御部が、撮影時に投影データに対して各種の補正を行ってもよい。
【0114】
前記実施形態では、X線CT装置1は、らせん状にステージ13を回転させて撮影するヘリカルスキャンを行う。しかしながら、X線CT装置は、Z軸方向にステージを移動させずに、前記ステージを、前記回転軸を中心として回転させながら、前記ステージ上に載置された前記被検体に前記X線を照射することによって前記検出器により投影データを取得するノンヘリカルスキャンを行ってもよい。また、前記ステージに対して、X線源のX線光軸及び前記検出器の検出領域を、Y軸方向にずらして撮影するオフセットスキャンを行ってもよい。
【0115】
前記実施形態では、領域設定部31は、操作部51におけるオペレータの操作に応じて、投影像PR1において拡大の対象となる対象領域TG1を設定する。しかしながら、領域設定部は、投影像に対して画像処理を行うことによって、被検体の輪郭を認識して、認識した前記輪郭に基づいて対象領域を設定してもよい。また、領域設定部は、投影像ではなく、投影データを再構成して得られた被検体の三次元モデルに基づいて対象領域を設定してもよい。すなわち、領域設定部は、三次元モデルを、回転軸に直交する方向のいずれかの方向に見た場合の外観に対して対象領域を設定してもよい。
【0116】
前記実施形態では、特に説明しなかったが、X線CT装置の制御方法の投影データ取得ステップの後、ステージを、対象領域の拡大前の位置に戻してもよい。
【0117】
前記実施形態では、特に説明しなかったが、撮影制御部30は、対象領域TG1に基づく拡大倍率が決定した後、X軸方向への相対的な移動またはZ軸方向への相対的な移動の少なくとも一方が制限されていない場合に、その後の撮影を開始してもよい。例えば、対象領域の拡大に伴うX軸方向またはZ軸方向の移動が、ハードウェア的またはソフトウェア的に移動が制限されている空間への移動である場合、撮影制御部は、撮影を中止してもよい。ハードウェア的な移動の制限とは、いわゆるハードウェアリミットのことである。被検体またはステージ等が移動を制限する空間内へ進入したことをセンサー等によって検知した場合、撮影制御部は撮影を中止する。
【0118】
また、ソフトウェア的な移動の制限とは、いわゆるソフトウェアリミットのことである。X線CT装置の3次元空間の座標系において、移動を制限する空間が設定される。撮影制御部は、対象領域の拡大に伴うX軸方向またはZ軸方向の移動によって、ステージ等の座標が、移動を制限する空間に移動するか否かを判定する。撮影制御部は、ステージ等の座標が移動を制限する空間に移動すると判定した場合、撮影を中止する。
【0119】
上述の構成では、対象領域の拡大に伴って、ステージが、移動を制限されている空間に移動することを防ぐことができる。よって、撮影ができないような無駄な移動が発生することを抑制することができる。
【0120】
前記実施形態では、対象領域TG1を拡大した後の対象領域TG2の幅W2と、検出領域12aの幅DW1とは、一致する。しかしながら、対象領域TG2の幅W2は、対象領域TG1の幅W1よりも大きく、検出領域12aの幅DW1よりも小さくてもよい。
【0121】
前記実施形態では、撮影制御部30は、ステージ13をZ軸方向の一方に移動させた後、ステージ13をZ軸方向の他方に移動させながら投影データDP20を取得する。しかしながら、撮影制御部は、ステージをZ軸方向の他方に移動させた後、ステージをZ軸方向の一方に移動させながら投影データの取得を行ってもよい。また、撮影制御部は、ステージをZ軸方向において往復移動させながら投影データの取得を行ってもよい。
【0122】
前記実施形態では、倍率決定部32は、投影像のZ軸方向における中央C1を基準に対象領域TG1を拡大する。しかしながら、倍率決定部は、投影像のZ軸方向におけるいずれの位置を基準に対象領域を拡大してもよい。
【0123】
前記実施形態では、倍率決定部32は、位置PS1における距離D1及び位置PS2における距離D2を、FODとして、Δxを計算する。しかしながら、倍率決定部は、距離D1及び距離D2に補正値を適用してもよい。例えば、倍率決定部は、被検体とX線源が位置する点とが最も近接する位置までをFODとしてもよい。そのために、倍率決定部は、被検体のX軸方向におけるサイズを補正値として、距離D1及び距離D2に適用してもよい。また、例えば、前記被検体が、Z軸方向に見て円柱形状を有する場合、倍率決定部は、円柱の半径Rを補正値として距離D1及び距離D2から差し引くことでそれぞれの位置におけるFODを計算してもよい。また倍率決定部は、X線CT装置ごとのキャリブレーション値によってX線源が位置する点の位置を補正してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、X線照射によって被検体の断層画像を得るX線CT装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 X線CT装置
11 X線源
12 検出器
13 ステージ
14 回転駆動機構
15 X軸方向移動機構
16 Z軸方向移動機構
20 記憶部
30 撮影制御部
31 領域設定部
32 倍率決定部
33 Z軸方向移動量決定部
34 X軸方向移動制御部
35 Z軸方向移動制御部
40 再構成部
51 操作部
52 表示部
DP20 投影データ
W 被検体
図1
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図8