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特開2025-13233顎部の筋力計測装置及び顎部アタッチメント
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013233
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】顎部の筋力計測装置及び顎部アタッチメント
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/22 20060101AFI20250117BHJP
   G01N 3/04 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
A61B5/22 200
G01N3/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107956
(22)【出願日】2024-07-04
(31)【優先権主張番号】P 2023114046
(32)【優先日】2023-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2024103881
(32)【優先日】2024-06-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000101558
【氏名又は名称】アニマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(72)【発明者】
【氏名】奥田 敏仁
(72)【発明者】
【氏名】小澤 桂
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA02
2G061AB01
2G061BA01
2G061CA20
2G061CB20
2G061CC11
2G061DA16
2G061EA01
2G061EB03
(57)【要約】
【課題】
嚥下時に作用する筋肉の筋力の定量的かつ再現性のある測定を行う。
【解決手段】
上面に筋力計2を備え、筋力計2で被験者の顎を受ける顎受け要素3と、被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素4と、両端が胸部当て要素4に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに固定される固定ベルト5と、を備え、顎受け要素3と胸部当て要素4は回動可能に連結されており、顎受け要素3の下面と胸部当て要素4の前面との間には長さ調整可能な支持要素6が設けてある、顎部の筋力計測装置。
【選択図】図4


【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に筋力計を備え、前記筋力計で被験者の顎を受ける顎受け要素と、
被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素と、
両端が前記顎受け要素あるいは/および前記胸部当て要素に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに固定される固定ベルトと、
を備え、
前記顎受け要素と前記胸部当て要素は回動可能に連結されており、前記顎受け要素の下面と前記胸部当て要素の前面との間には長さ調整可能な支持要素が設けてあり、前記支持要素の長さによって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度が決定され、
前記支持要素の長さ及び前記固定ベルトの長さによって、被験者に対する取付位置が決定される、
顎部の筋力計測装置。
【請求項2】
前記支持要素には、長さ調整時の当該支持要素の長さを示す指標が設けてある、
請求項1に記載の顎部の筋力計測装置。
【請求項3】
前記固定ベルトには、長さ調整時の当該固定ベルトの長さを示す指標が設けてある、
請求項2に記載の顎部の筋力計測装置。
【請求項4】
前記筋力計は、前記顎受け要素の上面に着脱可能である、
請求項1~3いずれか1項に記載の顎部の筋力計測装置。
【請求項5】
前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度を表示する角度表示部を備えている、
請求項1に記載の筋力計測装置。
【請求項6】
被験者の顎を受ける顎受け要素と、
被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素と、
両端が前記顎受け要素あるいは/および前記胸部当て要素に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに固定される固定ベルトと、
を備え、
前記顎受け要素と前記胸部当て要素は回動可能に連結されており、前記顎受け要素の下面と前記胸部当て要素の前面との間には長さ調整可能な支持要素が設けてあり、前記支持要素の長さによって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度が決定され、
前記支持要素の長さ及び前記固定ベルトの長さによって、被験者に対する取付位置が決定される、
顎部アタッチメント。
【請求項7】
前記顎受け要素には、計測器具や訓練器具が着脱可能に固定される被固定手段が設けてある、請求項6に記載の顎部アタッチメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎部の筋力計測装置、及び、筋力計等の器具を装着可能な顎部アタッチメントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
嚥下障害診療における喉頭挙上・食道入口改善のための訓練として頸部前面の頭部前屈筋力の訓練効果が証明され指導されている。例として、嚥下筋力向上のため、顎下にゴムボールを当て押しつぶすリハビリ訓練や空のペットボトルを挟んで潰すリハビリ訓練などが行われている。現状の筋力の把握や訓練の効果確認を行うためには、嚥下に関わる筋力の定量的な評価が必要である。
【0003】
現状の評価では、その頚部屈曲する力の度合いを「臥位で頭を持ち上げる力がある/ない」「おでこに手を当て頚部屈曲し、手で押す力に抗することができる/できない」などと漠然と表現したり、MMT(徒手筋力検査法)、GSグレード、開口力(専用の測定機器あり)などの方法により段階で評価をしており、従来、嚥下に関わる筋力(代表的には、舌骨上筋群の筋力)を数値として定量的に捉える手段はなかった。
【0004】
特許文献1には、高齢者の嚥下機能低下の原因が嚥下時の喉頭挙上に不可欠な舌骨上筋群の筋力低下にあることに着目し、嚥下時の喉頭挙上に必要な舌骨上筋群の筋力を定量的かつ正確に評価することを目的とした嚥下筋力測定器が開示されている。
【0005】
ここで、特に高齢者の場合、筋力の低下や姿勢の変化等により、体格(がっしりした男性、細身の女性など)や肢位の個人差がより大きくなりがちであり、嚥下筋力の計測や訓練を良好に行うには、被験者の体格・肢位に適合したデバイスが必要である。また、被験者の筋力を定量的に監視するためには、再現性のある計測を実施することが重要である。
【特許文献1】特開2023-37380
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、嚥下時に作用する筋肉の筋力の定量的かつ再現性のある測定や当該筋肉の訓練をおこなうことを可能とする装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は、
上面に筋力計を備え、前記筋力計で被験者の顎を受ける顎受け要素と、
被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素と、
両端が前記顎受け要素あるいは/および前記胸部当て要素に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに固定される固定ベルトと、
を備え、
前記顎受け要素と前記胸部当て要素は回動可能に連結されており、前記顎受け要素の下面と前記胸部当て要素の前面との間には長さ調整可能な支持要素が設けてあり、前記支持要素の長さによって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度が決定され、
前記支持要素の長さ及び前記固定ベルトの長さによって、被験者に対する取付位置が決定される、
顎部の筋力計測装置、である。
【0008】
1つの態様では、前記筋力計は、荷重計測部を備えており、前記顎受け要素の上面には複数の荷重センサを備えた荷重計測部が設けてある。
1つの態様では、前記固定ベルトは、第1要素と第2要素とから構成されており、第1要素と第2要素の重なりの程度を調整することで当該固定ベルトの長さが調整可能であり、調整後の長さを固定する手段を備えている。
1つの態様では、前記支持要素は、第1要素と第2要素とから構成されており、第1要素と第2要素の重なりの程度を調整することで当該支持要素の長さが調整可能であり、調整後の長さを固定する手段を備えている。
【0009】
1つの態様では、前記支持要素には、長さ調整時の当該支持要素の長さを示す指標が設けてある。
1つの態様では、前記指標はスケールである。
1つの態様では、前記固定ベルトには、長さ調整時の当該固定ベルトの長さを示す指標が設けてある。
1つの態様では、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度を表示する角度表示部を備えている。
【0010】
1つの態様では、前記筋力計は、前記顎受け要素の上面に着脱可能である。
1つの態様では、前記顎受け要素の上面、及び、前記筋力計の下面には面ファスナが設けてあり、当該面ファスナを介して、前記筋力計は、前記顎受け要素の上面に着脱可能である。
【0011】
本発明が採用した技術手段は、
被験者の顎を受ける顎受け要素と、
被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素と、
両端が前記顎受け要素あるいは/および前記胸部当て要素に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに固定される固定ベルトと、
を備え、
前記顎受け要素と前記胸部当て要素は回動可能に連結されており、前記顎受け要素の下面と前記胸部当て要素の前面との間には長さ調整可能な支持要素が設けてあり、前記支持要素の長さによって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度が決定され、
前記支持要素の長さ及び前記固定ベルトの長さによって、被験者に対する取付位置が決定される、
顎部アタッチメント、である。
【0012】
1つの態様では、前記顎受け要素には、計測器具や訓練器具が着脱可能に固定される被固定手段が設けてある。
1つの態様では、前記被固定手段は面ファスナである。
1つの態様では、前記被固定手段は凹部である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る筋力計測装置によれば、嚥下時に作用する筋力(主として舌骨上筋群の筋力)の定量的かつ再現性のある測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る顎部の筋力計測装置を、顎部アタッチメントと筋力計とに分離して示す図である。
図2】本実施形態に係る顎部アタッチメントを斜視図である。
図3】本実施形態に係る顎部アタッチメントを斜視図である。
図4】本実施形態に係る顎部の筋力計測装置を示す図である。
図5】本実施形態に係る顎部の筋力計測装置を装着した状態を示す図である。
図6】他の実施形態に係る顎部の筋力計測装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照しつつ、本実施形態に係る顎部の筋力計測装置及び顎部アタッチメントについて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る顎部の筋力計測装置は、顎部アタッチメント1と、顎部アタッチメント1に着脱可能な筋力計2と、からなる。
【0016】
図1図3等に示すように、顎部アタッチメント1は、被験者の顎を受ける顎受け要素3と、被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素4と、両端が胸部当て要素4に連結されており、長さ調整可能に被験者の首回りに装着される固定ベルト5と、を備えている。
【0017】
筋力計2は、方形プレート状の荷重計測部20と、荷重計測部20で取得した信号を出力するコード21と、荷重計測部20の上面を覆うように装着されたカバー22と、本体(図示せず)と、からなり、カバー22は弾性を備えた樹脂からなり、上面は緩やかな湾曲凹面となっており、被験者の顎の載置面を形成している。荷重計測部20の下面には面ファスナ23が設けてある。筋力計2の本体は、荷重計測部20で取得した信号の増幅部、演算部、表示部、操作部を備えている。本実施形態に係る荷重計測部20はいわば小型のフォースプレートであり、互いに離間して配置した複数(例えば4つ)の荷重センサを内蔵しており、あらゆる方向から荷重計測部20の上面に作用した力を複数の荷重センサで計測して合計することで出力する。本実施形態に係る筋力計測装置は、当該筋力計測装置を装着した被験者が下顎を下げる際に複数の荷重センサに作用する力を計測するようになっている。本実施形態に係る荷重計測部20は離間して配置した複数の荷重センサの値を合計して出力するようになっているので、被験者の顎と顎受け要素3(及び荷重計測部20)との位置合わせを厳密に行わなくても(計測毎に顎と載置面との位置が少々ズレてもよい)、顎から荷重計測部20に作用した力を精度良く取得することができ、再現性の良い計測が可能となっている。
【0018】
筋力計2の本体はコンピュータ(演算部と記憶部を備えている)から構成されている。荷重計測部20(複数の荷重センサを備えている)で取得した信号は無線で出力してもよい。本実施形態では、筋力計2の荷重計測部20が顎受け要素3に搭載されているが、荷重計測部20に加えてコンピュータ(演算部、記憶部)が顎受け要素3に搭載されていてもよい。また、1つの態様では、筋力計2の本体とは別にモニター装置(図示せず)が設けられ、モニター装置の表示部に被験者が下顎を下げる際に荷重計測部20に作用する力を取得して数値ないし数値をグラフ化したものを表示する。本体からモニター装置に計測データが無線ないし有線で送信される。モニター装置がコンピュータ(演算部と記憶部)を備えていてもよい。モニター装置の表示部は被験者が計測時に見ることができる位置にあり、被験者がモニター装置の表示部を確認しながら計測(訓練)を行うようになっている。モニター装置は、例えば、タブレットやスマートフォンから構成することができ、被験者は、例えば、筋力計2から無線で受信した計測データを、タブレットやスマートフォンを手で持って確認しながら訓練をおこなってもよい。
【0019】
顎受け要素3は、板状部30と、板状部30の幅方向両端から後方に延びる左右の延出片31と、を備えている。板状部30の上面には面ファスナ32が設けてある。板状部30の後端縁及び延出片31の内面には、クッション部材33が設けてある。本実施形態に係る顎受け要素3は金属製であるが、樹脂等の他の部材から形成してもよい。
【0020】
筋力計2の面ファスナ23を顎受け要素3の板状部30の上面の面ファスナ32に着脱可能に取り付けるようになっている。本実施形態に係る筋力計測装置では、筋力計2は面ファスナを用いて板状部30に着脱可能となっているが、着脱可能とする手段は面ファスナには限定されない。例えば、顎受け要素3の板状部30に凹部を形成して、筋力計が凹部に嵌るようにしてもよい。本実施形態に係る筋力計測装置では、筋力計2は着脱可能となっているが、筋力計は固定されていてもよい。
【0021】
胸部当て要素4は、被験者の胸部に当接するクッション性のパッド40と、パッド40の前面に設けた板状部41と、板状部40の幅方向両端から上方に延びる左右の延出片42と、を備えている。板状部41が胸部当て要素4の前面を形成している。左右の延出片42には前方に向かって延びる折曲片43が形成されており、左右の折曲片43には、顎受け要素3の左右の延出片31がそれぞれ回動可能に連結されている。本実施形態に係る胸部当て要素4の板状部41は金属製であるが、樹脂等の他の部材から形成してもよい。
【0022】
固定ベルト5は、第1部分50と、第2部分51と、からなり、第1部分の基端は、胸部当て要素4の板状部41の一方の延出片42に固定されており、第2部分51の基端は、他方の延出片42に固定されている。第1部分50と第2部分51の面部には面ファスナが設けてあり、面ファスナの重なり長さの調整によって、固定ベルト5の長さが調整可能となっている。本実施形態に係る固定ベルト5において、第1部分50が内側に位置し、第1部分50の外側に第2部分51が重なるようになっている。第1部分50の内面(被験者の首に当たる側)にクッションが設けてあり、外面に面ファスナが設けてあり、第2部分51の外面に面ファスナが設けてある。尚、長さが調整可能(調整後の長さを固定する手段を備えている)な固定ベルトの構成は、図示の態様に限定されるものではない。
【0023】
本実施形態に係る固定ベルト5において、第1部分50には、長さ方向に所定間隔を存して複数の第1指標500が形成されており、第2部分51の先端側には位置合わせ第2指標510が形成されており、第2指標510を選択された第1指標500に合わせるように第1部分50と第2部分51を面ファスナで固定する。本実施形態に係る複数の第1指標500は、色で互いに識別可能となっているが、番号等で識別可能としてもよい。あるいは、第1指標500は目盛りであってもよい。
【0024】
顎受け要素3の板状部30の下面と胸部当て要素4の板状部40の面部との間には長さ調整可能な支持要素6が設けてあり、支持要素6の長さによって、胸部当て要素4に対する顎受け要素3の角度が決定される。
【0025】
本実施形態では、支持要素6は、顎受け要素3側の第1要素60と、胸部受け要素4側の第2要素61と、第1要素60と第2要素61の重なり度合いの調整手段かつ固定手段と、を備えている。第1要素60及び第2要素61は長尺板状要素である。
【0026】
第1要素60の上端は、顎受け要素3の板状部30の下面に回動可能に連結されており、第1要素50の下端には螺子が形成された軸部600が前方に(板状要素の面部に対して垂直に)突設されている。第1要素60の前面にはスケール601が形成されている。第2要素61の下端は、胸部当て要素4の板状部40に回動可能に連結されている。第2要素61は長尺板状要素であり、長さ方向に沿って長穴610が形成されている。
【0027】
第1要素60と第2要素61は重なった状態で第1要素60の軸部600が第2要素61の長穴610から突出するようになっており、長穴610の長さ内において、第1要素60と第2要素61の重なりの程度が調整可能、すなわち、支持要素6の長さが調整可能である。この時、支持要素6の長さ、具体的には、第1要素60と第2要素61の重なりの程度はスケール601の目盛りによって決定することができる。より具体的には、第2要素61の所定部位をスケール601の目盛りに合わせることで決定することができる。
【0028】
軸部600にはつまみ62が設けてある。つまみ62は、雌螺子部を有しており、つまみ62の雌螺子部が軸部の螺子部に螺合しており、つまみ62は軸部600の長さ方向の往復動可能となっている。つまみ62には押圧部620を備えており、つまみ62を第1方向に回すことで、押圧部620が第1要素60に接近して第2要素61を押圧することで、第1要素60と第2要素61の重なり部を固定し、第1要素60の面部と第2要素61の面部が当接することで、側面視直線上に延びる支持要素6が形成される。
【0029】
つまみ62を第2方向に回すことで、押圧部620が第1要素60から離間して第2要素61の押圧状態が解除され、第1要素60と第2要素61の重なり部を固定状態が解除され(図2図3では固定状態が解除された状態を示している)、第1要素60、第2要素61がそれぞれ回動可能となって、第1要素60と第2要素61の重なりの程度が調整可能となる。尚、長さが調整可能(調整後の長さを固定する手段を備えている)な支持要素の構成は、図示の態様に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態に係る顎部の筋力計測装置は、支持要素6の長さ及び固定ベルト5の長さによって、被験者に対する当該筋力計測装置の取付位置が決定される。すなわち、支持要素6の長さ及び固定ベルト5の長さを調整することによって、被験者に固有な体格や肢位に適合して筋力計測装置を取り付けることが可能となる。この時、支持要素6の長さはスケール601によって決定され、固定ベルト5の長さは第1指標と第2指標の位置合わせによって決定されるので、支持要素6の長さ及び固定ベルト5の長さが再現可能であり、したがって再現性のある筋力計測が可能となる。
【0031】
本実施形態に係る顎部の筋力計測装置は、嚥下時の喉頭挙上に関係する舌骨上筋群をターゲットとして、舌骨上筋群の筋力を数値として測定することを可能とするものである。さらに、被験者に対する筋力計測装置の取付位置のアジャスト機能を備えたことによって、様々な体格や姿位の被験者に対し最適な加圧設定位置調整が可能となり、もって、被験者の体格・肢位の影響や体幹筋力などの外乱力の影響を受けることなく、再現性の高い筋力計測を可能とするものである。
【0032】
本実施形態に係る顎部アタッチメント1を用いて、嚥下筋力向上のためのリハビリ訓練に用いることが可能である。例えば、顎受け要素3の板状部30と顎下との間にゴムボールを当て押しつぶす訓練に用いてもよい。
【0033】
図6に他の実施形態に係る顎部の筋力計測装置を示す。図6に示す形態では、胸部当て要素4に対する顎受け要素3の角度を表示する角度表示部7を備えている。本実施形態に係る角度表示部7は、角度目盛81を備えた面板8と、角度目盛を指示する指示部9と、からなる。筋力計測装置の基本的な構成については、図1図5に示す実施形態と同じであるが、図6に示す実施形態では、固定ベルト5の第1部分50の基端、第2部分50の基端は金属製の固定片500を介して胸部当て要素4の板状部41の左右の延出片42に固定されている。
【0034】
胸部当て要素4の板状部41の一方の延出片42には、面板8が延出片42に対して垂直に立ち上がるように設けてある。より具体的には、左右の延出片42には前方に向かって延びる折曲片(立ち上がり片)43が立ち上がり形成されており、左右の折曲片43には、顎受け要素3の左右の延出片31がそれぞれ回動可能に連結されており(図1図2参照)、一方の折曲片(立ち上がり片)43(図6では面板8に隠れている)に面板8が取り付けられている。
【0035】
面板8は、顎受け要素3の一方の延出片31の側面に近接対向するように設けてあり、上端が弧状縁80となっており、弧状縁80に沿って角度目盛81が設けてある。顎部アタッチメント1の側面視において、延出片31の長さ方向と弧状縁80の径方向が一致しており、延出片31には、面部8との対向部位の上側に位置して、角度目盛を指示する指示部(矢印)9が設けてあり、指示部9が指し示す角度が、胸部当て要素4に対する顎受け要素3の角度となっている。被験者に対する筋力計測装置の取付位置の調整を、胸部当て要素4に対する顎受け要素3の角度を手掛かりに行うことができる。
【0036】
[付記]
本発明に係る筋力計測装置は、嚥下筋力評価部位として頸部前面筋力(頸部前側の領域にある、舌骨上筋群や舌骨下筋群の筋力)の数値化測定に着目し、顎を押し下げる力で筋力を捉えようとするものであり、被験者が下顎を下げる際に筋力計(荷重計測部)に作用する力を取得することで、嚥下に関わる筋力(代表的には、舌骨上筋群の筋力)を数値として定量的に捉える点に特徴を備えており、以下のような技術的思想として規定することができる。
被験者の胸部に位置して設けられる胸部当て要素と、
前記胸部当て要素の上方部位から前方に延び、上面に荷重計測部を備え、前記荷重計測部で被験者の顎を受ける顎受け要素と、
前記顎受け要素の下面と前記胸部当て要素の前面との間に設けられた支持要素と、
両端が前記顎受け要素あるいは/および前記胸部当て要素に連結されており、被験者の首回りに設けられる固定ベルトと、
を備えた、顎部の筋力計測装置。
前記支持要素によって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の位置(角度)が固定されており、当該筋力計測装置を装着した被験者が下顎を下げる際(顎を荷重計測部に押し付ける)に前記荷重計測部に作用する力を取得するようになっている。
被験者が下顎を下げる際に荷重計測部に作用する力は、嚥下時に作用する筋力(主として舌骨上筋群の筋力)を代表する値とみなすことができる。
本発明に係る筋力計測装置は、被験者の肩の動きによる力や、体幹の動きによる力(外力)を極力排除し、頸部前面筋力だけを計測することを可能とする。
1つの態様では、荷重計測部は互いに離間して配置した複数の荷重センサを備えており、受圧面上、どこに荷重が加わっても精度良く力を検出できる構造となっており、顎の乗せ位置、当て位置が受圧面の中央を外れても計測値のズレが生じないようになっており、計測の再現性が向上されている。
1つの態様では、前記顎受け要素と前記胸部当て要素は回動可能に連結されており、
前記支持要素は長さ調整可能であり、
前記支持要素の長さによって、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度が決定される。
支持要素の長さを調整可能とすることで、共通のデバイスを被験者の体格・肢位に適合させて用いることができる。
1つの態様では、前記支持要素には、長さ調整時の当該支持要素の長さを示す指標が設けてある。
1つの態様では、前記胸部当て要素に対する前記顎受け要素の角度を表示する角度表示部を備えている。
これらの指標を用いることで、被験者の性別体格によらず被験者毎にデバイスを再現性良く適合させることができ、再現性の高い計測が可能となる。
1つの態様では、前記固定ベルトは、長さ調整可能である。
固定ベルトの長さを調整可能とすることで、共通のデバイスを被験者の体格・肢位に適合させて用いることができる。
1つの態様では、前記固定ベルトには、長さ調整時の当該固定ベルトの長さを示す指標が設けてある。
このような指標を用いることで、被験者の性別体格によらず被験者毎にデバイスを再現性良く適合させることができ、再現性の高い計測が可能となる。
【0037】
1つの態様では、被験者が下顎を下げる際に前記荷重計測部(複数の荷重センサ)に作用する力を取得して表示するモニター装置を備えている。
被験者が下顎を下げる際に荷重計測部(複数の荷重センサ)に作用する力は、嚥下時に作用する筋力(主として舌骨上筋群の筋力)を代表する値とみなすことができる。
1つの態様では、本実施形態に係る顎部の筋力計測装置は被験者の顎部の筋力の訓練支援装置として用いることができる。
具体的な態様例では、
(1)本実施形態に係る筋力計測装置を用いて被験者の筋力を計測(100%の力)して最大筋力値を取得し、
(2)上記最大筋力値に従って訓練用の閾値を設定し、
(3)上記閾値を目標として繰り返し訓練(下顎を下げて荷重計測部を加圧する)を行い、
(4)訓練の評価のため、(1)の計測を行い、筋力増強の訓練効果を確認する。
(1)(3)(4)の計測値、(2)の閾値はモニターの表示部に表示され(典型的にはグラフ化して表示される)、被験者が表示部上の数値やグラフを確認しながら訓練を実行するようになっている。
被験者が下顎を下げる際に荷重計測部(複数の荷重センサ)に作用する力の定量的かつ再現性のある測定は、頸部前面の頭部前屈筋力の有効な訓練を行う上で重要である。
【符号の説明】
【0038】
1 顎部アタッチメント
2 筋力計
20 荷重計測部
3 顎受け要素
4 胸部当て要素
5 固定ベルト
6 支持要素
7 角度表示部

図1
図2
図3
図4
図5
図6