IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ デクセリアルズ株式会社の特許一覧

特開2025-13237導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法
<>
  • 特開-導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法 図1
  • 特開-導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法 図2
  • 特開-導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法 図3
  • 特開-導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法 図4
  • 特開-導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013237
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 11/01 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
H01R11/01 501C
H01R11/01 501A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024108536
(22)【出願日】2024-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2023115715
(32)【優先日】2023-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉岡 早織
(72)【発明者】
【氏名】浅羽 康祐
(72)【発明者】
【氏名】平山 大幹
(72)【発明者】
【氏名】玉川 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】江頭 桜太
(57)【要約】
【課題】粒子捕捉数を増やすことが可能であり、うねりのあるセラミック基板かつ小接続パッドの基板に対応できる導電フィルムを得ること。
【解決手段】導電フィルムは、絶縁性の高粘度樹脂層と、絶縁性の低粘度樹脂層と、平均粒子径13μm以上の導電粒子とを含み、前記高粘度樹脂層上に前記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、前記高粘度樹脂層と前記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、前記導電粒子は、前記高粘度樹脂層及び前記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が前記低粘度樹脂層側に出ている位置より、前記高粘度樹脂層側に配置されている。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の高粘度樹脂層と、絶縁性の低粘度樹脂層と、平均粒子径13μm以上の導電粒子とを含み、
前記高粘度樹脂層上に前記低粘度樹脂層が積層されており、
80℃における、前記高粘度樹脂層と前記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、
前記導電粒子は、前記高粘度樹脂層及び前記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が前記低粘度樹脂層側に出ている位置より、前記高粘度樹脂層側に配置されている、
導電フィルム。
【請求項2】
絶縁性の高粘度樹脂層の表面に、規則配置させた平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、
前記高粘度樹脂層における前記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、前記高粘度樹脂層中に、前記導電粒子を埋め、
前記高粘度樹脂層における前記導電粒子を埋め込んだ表面側に、絶縁性の低粘度樹脂層を配置し、圧着するか、あるいは、
絶縁性の低粘度樹脂層の表面に、規則配置させた平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、
前記低粘度樹脂層における前記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、前記低粘度樹脂層中に、前記導電粒子を埋め、
前記低粘度樹脂層における前記導電粒子を埋め込んだ表面側に、絶縁性の高粘度樹脂層を配置し、圧着し、
前記高粘度樹脂層と、前記低粘度樹脂層と、前記導電粒子とを含み、前記高粘度樹脂層上に前記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、前記高粘度樹脂層と前記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、前記導電粒子は、前記高粘度樹脂層及び前記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が前記低粘度樹脂層側に出ている位置より、前記高粘度樹脂層側に配置されている、導電フィルムの製造方法。
【請求項3】
第1の電子部品と第2の電子部品とを、導電フィルムで電気的に接合する接合工程を含み、
前記導電フィルムは、絶縁性の高粘度樹脂層と、絶縁性の低粘度樹脂層と、平均粒子径13μm以上の導電粒子とを含み、前記高粘度樹脂層上に前記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、前記高粘度樹脂層と前記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、前記導電粒子は、前記高粘度樹脂層及び前記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が前記低粘度樹脂層側に出ている位置より、前記高粘度樹脂層側に配置されている、
接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記接合工程が、前記高粘度樹脂層を、前記第2の電子部品側に配置し、接合する工程である、
請求項3に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の電子部品が、20μm以上のうねりを有する基板である、
請求項3又は4に記載の接続構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電フィルム、導電フィルムの製造方法および接続構造体の製造方法に関し、詳細には、大径粒子整列型導電フィルムである大径粒子整列型異方性導電フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電フィルムは、電子部品を基板に実装する際に広く使用されている。近年、スマートフォンなどでは部品の高密度化が進んでおり、ケース内の場所制約が発生している。特にカメラモジュールでは、カメラの大型化や多眼化が進み、画像精度を上げるためにイメージャー基板サイズの大型化が進んでいる。一方で、接続パッドはより小さくなり、本用途における小接続面積でもより安定した導通抵抗値を得ることが求められている。カメラモジュール用としてはセラミック基板が用いられ、その基板の凹凸や段差を考慮して、異方性導電フィルムに大径粒子が用いられることがある。また、大径粒子の場合、分散型異方性導電フィルム(以下、分散型ACF)では対応面積とショートの問題があるため、フィルム平面視で導電粒子を規則配列させた異方性導電フィルム(整列型ACF)が求められる。
【0003】
例えば、特許文献1には、フィラーが樹脂層に分散しているフィラー分散層を有するフィラー含有フィルムであって、フィラー近傍の樹脂層の表面が、隣接するフィラー間の中央部における樹脂層の接平面に対して凹みを有する異方性導電フィルムが記載されている。また、特許文献2には、絶縁接着剤層と、該絶縁接着剤層に平面視で規則配列した導電粒子を含む異方性導電フィルムであって、導電粒子径が13μm以上であり、該フィルムの厚さが導電粒子径の等倍以上3.5倍以下であり、該フィルムの厚さ方向の導電粒子の位置のばらつき幅が導電粒子径の10%未満であり、異方性導電フィルムの長手方向に面積lmm×1mmの領域を10個抽出し、各領域の平面視の粒子密度を測定した場合の最大値と最小値との差が、各領域の粒子密度の平均の20%未満であり、更に、平面視で導電粒子が規則配列されている該絶縁接着剤層とは異なる別の絶縁接着剤層が積層されている異方性導電フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-031649号公報
【特許文献2】特開2019-087536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の異方性導電フィルムでは、大径粒子を用いた場合における最小接続面積の粒子の捕捉数をより安定化させるには更なる改善の余地がある。なお、導電フィルムにおいても、意図した場所で捕捉させるといった観点などから同様に改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明の目的は、粒子捕捉数を増やすことが可能であり、うねりのあるセラミック基板かつ小接続パッドの基板に対応できる導電フィルムや異方性導電フィルムを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、下記を見出し、本発明を想到した。即ち、導電フィルム(異方性導電フィルム)において、より安定した導通抵抗値を維持するためには各端子(接続パッド)毎に一定数以上の粒子を捕捉され、且つ各接続構造体毎においても各接続パッドにおける捕捉数が一定範囲内で安定していることが接続構造体における品質安定性の上ではよいが、大径粒子を用いた単層の場合、粘度だけの制御では粒子捕捉性の向上に限界がある。単層で粒子捕捉性を向上したい場合、規則配置した導電粒子の粒子配置を変えることも効果があるが、より高い粒子捕捉性を担保するためには粘度差を設けた2層品とすることが好ましい。一方で、うねりのあるセラミック基板を使用するカメラモジュール基板においては、うねりによる高低差を解消するために13μm未満の小径粒子の使用は困難であるため、13μm以上の大径粒子を使用したうえで、2層品とすることが、より望ましくなる。
【0008】
本発明の導電フィルムは、絶縁性の高粘度樹脂層と、絶縁性の低粘度樹脂層と、平均粒子径13μm以上の導電粒子とを含み、上記高粘度樹脂層上に上記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、上記高粘度樹脂層と上記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、上記導電粒子は、上記高粘度樹脂層及び上記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が上記低粘度樹脂層側に出ている位置より、上記高粘度樹脂層側に配置されている。
【0009】
また、本発明の導電フィルムの製造方法は、絶縁性の高粘度樹脂層の表面に、規則配置させた平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、上記高粘度樹脂層における上記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、上記高粘度樹脂層中に、上記導電粒子を埋め、上記高粘度樹脂層における上記導電粒子を埋め込んだ表面側に、絶縁性の低粘度樹脂層を配置し、圧着するか、あるいは、絶縁性の低粘度樹脂層の表面に、規則配置させた平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、上記低粘度樹脂層における上記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、上記低粘度樹脂層中に、上記導電粒子を埋め、上記低粘度樹脂層における上記導電粒子を埋め込んだ表面側に、絶縁性の高粘度樹脂層を配置し、圧着し、上記高粘度樹脂層と、上記低粘度樹脂層と、上記導電粒子とを含み、上記高粘度樹脂層上に上記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、上記高粘度樹脂層と上記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、上記導電粒子は、上記高粘度樹脂層及び上記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が上記低粘度樹脂層側に出ている位置より、上記高粘度樹脂層側に配置されている。尚、導電フィルムの製造方法時における圧着は、接続工程における圧着とは異なる。導電フィルムの製品ライフに影響しない温度および圧力である。
【0010】
また、本発明の接続構造体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、導電フィルムで電気的に接合する接合工程を含み、上記導電フィルムは、絶縁性の高粘度樹脂層と、絶縁性の低粘度樹脂層と、平均粒子径13μm以上の導電粒子とを含み、上記高粘度樹脂層上に上記低粘度樹脂層が積層されており、80℃における、上記高粘度樹脂層と上記低粘度樹脂層との粘度比が7:4以上であり、上記導電粒子は、上記高粘度樹脂層及び上記低粘度樹脂層の境界から、粒子径の2/3が上記低粘度樹脂層側に出ている位置より、上記高粘度樹脂層側に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電フィルムは、大径粒子を用いた粒子整列型ACFであり、粘度差を設けた2層構成のフィルムである。これにより、本発明の導電フィルムは、粒子捕捉数を増やすことが可能になり、うねりのあるセラミック基板かつ小接続パッドの基板に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態の異方性導電フィルム(導電フィルム)の平面図である。
図2】実施形態の異方性導電フィルム(導電フィルム)の断面図である。
図3】圧着時の仮貼りを模式的に表す図である。
図4】実施例3の異方性導電フィルム(導電フィルム)の断面図である。
図5】比較例2の異方性導電フィルム(導電フィルム)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下、本発明の説明は異方性導電フィルムを中心に行うが、導電フィルムにおいても適用されるものと考えてもよい。
【0014】
具体的には、以下に、実施形態の異方性導電フィルムについて、構成、特性及び製造方法等を説明する。これら構成、特性及び製造方法等については、導電フィルムにおいても適用されるものと考えてよい。なお、導電フィルムは異方性導電フィルム及び等方性導電フィルムを包含するものであるが、同じ導電フィルムであっても、接続対象によって、異方導電性を示す異方性導電フィルムとして見なされ得る場合の他、導電フィルム(導電粒子含有型接着フィルム、接合フィルム)として見なされ得る場合もある。また、近年の電子部品の電極(端子、接続パッド、パッド)の構成(各種寸法)やレイアウト等の複雑化の要請という観点からも、それらの峻別が困難になる場合がある。さらに、以下に、実施形態の接続構造体の製造方法について、上記異方性導電フィルムを使用した場合を説明する。この製造方法については、上記導電フィルムを使用した場合においても適用されるものと考えてよい。
【0015】
図1は、実施形態の異方性導電フィルムの平面図であり、図2は、実施形態の異方性導電フィルムの断面図である。異方性導電フィルム1は、絶縁性の樹脂層10として絶縁性の高粘度樹脂層11及び絶縁性の低粘度樹脂層12と、導電粒子20とを含み、高粘度樹脂層11上に低粘度樹脂層12が積層されている。なお、図2は、図1に示す線A-Aでの断面図である。線A-Aでの断面図は、導電粒子20の中心を通る。また、実施形態の異方性導電フィルムは、例えば長さ5m以上の長尺のフィルム形態とすることができ、巻き芯に巻いた巻装体とすることもできる。
【0016】
図1のように、異方性導電フィルム1では、導電粒子20は樹脂層10に平面視で規則配列している。即ち、平面視で正方格子(4方格子)に配列している。このように、異方性導電フィルム1において導電粒子20の規則配列は、導電粒子20の平面配置に粗密のばらつきができないように規則的に配列していることが好ましい。例えば、フィルムの長手方向Xに面積1mm×1mmの領域を10箇所抽出し、各領域における導電粒子の粒子密度を測定した場合の粒子密度の最大値と最小値との差が、各領域の粒子密度の平均に対して20%未満となるようにすることが好ましい。そのために導電粒子20を、正方格子(4方格子)の他、斜方格子、長方格子(矩形格子)、6方格子等に格子配列させてもよい。規則的に配列させると、端子が形成されている接続面にうねりがあっても導電粒子が端子に捕捉されやすくなり、導通不良やショートの発生を顕著に低減させることができる。
【0017】
なお、導電粒子がランダムに分散している場合、異方導電性接続時に導電粒子の粒子密度の低い部分がモジュール基板のうねりの凸部にある端子上に配置されると、その端子上の導電粒子が流れてその部分の粒子密度が一層低くなり、端子における導電粒子の捕捉数が低減し、導通不良(十分な導電性能が得られないこと)が起こることがある。
【0018】
異方性導電フィルム1において、導電粒子20は格子配列しているが、その配列の格子軸Bは、粒子捕捉性を安定化させる観点から、長手方向Xと交叉している。例えば、ファインピッチ用の異方性導電フィルムとする場合、異方性導電フィルム1の長手方向Xと格子軸Bとのなす角度θを好ましくは10°~40°にする。また、格子軸Bは、異方性導電フィルム1の長手方向Xや短手方向Yに対して平行でもよく、端子幅、端子ピッチなどに応じて定めることができる。
【0019】
導電粒子20の粒子密度は、導通信頼性の点から、20個/mm2以上であることが好ましく、40個/mm2以上であることがより好ましく、150個/mm2以上であることが更により好ましい。また、導電粒子20の粒子密度は、導通信頼性の点から、2000個/mm2以下であることが好ましく、1500個/mm2以下であることがより好ましく、850個/mm2以下であることが更により好ましい。導電粒子20の粒子密度(個数密度)は、例えば、特許文献1に記載の方法により求めることができる。
【0020】
導電粒子20の規則配列に関し、隣接する導電粒子の中心間距離が短すぎるとショートが発生しやすくなり、長すぎると端子に捕捉される導電粒子数が不足して十分な導通接続ができなくなる。このため、短絡防止及び導通接続の安定性の両立が求められる。捕捉数を一定以上に確保し導通安定性を良好にする観点からは最も近接して隣接する導電粒子20同士の中心間距離を平均粒子径の1.2倍以上とすることが好ましく、1.5倍とすることがより好ましい。また、導電粒子が連結するなどして端子間で導通してしまう短絡防止の点から、最も近接して隣接する導電粒子20同士の中心間距離を平均粒子径の100倍以下とすることが好ましく、80倍以下とすることがより好ましい。電極の構成やレイアウトといった接続対象物の条件などから、適宜選択すればよい。
【0021】
導電粒子20の平均粒子径は、セラミック製モジュール基板のように表面にうねりがある場合でも安定した導通がとれるようにする点から、13μm以上である。また、ショートのリスクの観点から、30μm以下であることが好ましい。平均粒子径は、粒度分布計を使用して、10000個以上の粒子を測定し、その平均粒子径を用いる。画像型粒度分布計で測定することが好ましい。また、導電粒子が球状である場合には、フィルム平面視で200個以上を計測した平均としてもよい。
【0022】
導電粒子20自体の構成は、公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができる。例えば、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウムなどの金属粒子、コア樹脂粒子を金属被覆した金属被覆樹脂粒子などが挙げられる。導電粒子20は、2種以上を併用することもできる。ここで、金属被覆樹脂粒子の金属被覆は、無電解メッキ法、スパッタリング法等の公知の金属膜形成方法を利用して形成することができる。コア樹脂粒子は、樹脂のみから形成してもよい。粒子は球形であることが好ましいが、粒子の表面に突起が形成された突起粒子であってもよい。導電粒子の表面は、公知の技術で絶縁処理が施されていてもよい。
【0023】
異方性導電フィルム1において、80℃における、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12との粘度比(80℃における高粘度樹脂層11の粘度:80℃における低粘度樹脂層12の粘度)は7:4以上であり、好ましくは4:1以上である。これにより、異方導電性接続時の押し込みの際、樹脂が流動して導電粒子の捕捉性が低下するのを防止できる。また、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12との粘度比は、好ましくは30:1以下であり、より好ましくは10:1以下である。
なお、上記粘度比については、下記のように言い換えることができる。異方性導電フィルム1において、80℃における高粘度樹脂層11の粘度/80℃における低粘度樹脂層12の粘度は、7/4以上であり、好ましくは4/1以上である。また、80℃における高粘度樹脂層11の粘度/80℃における低粘度樹脂層12の粘度は、好ましくは30/1以下であり、より好ましくは10/1以下である。
【0024】
高粘度樹脂層11の粘度は、30000Pa・s以下であることが好ましい。モジュール基板にはイメージセンサやレンズが搭載されているために、通常、異方導電性接続は温度190℃以下、圧力2MPa以下の低温低圧条件で行われる。高粘度樹脂層11の粘度が上記範囲にあると、低温低圧条件においても好適に異方導電性接続が行える。高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12とが積層された異方性導電フィルム1において、80℃における粘度は、30000Pa・s以下であることが好ましい。また、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12とが積層された異方性導電フィルム1において、80℃における粘度の下限は、1000Pa・s以上であることが好ましく、2000Pa・s以上であることが好ましい。
【0025】
高粘度樹脂層11の粘度は、回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、昇温速度10℃/分、測定圧力5g一定、使用測定プレート直径8mmという条件で溶融粘度測定し、80℃の時の粘度を読み取った値である。低粘度樹脂層12の粘度も同様に測定し、読み取ることができる。そして、これらの値から、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12との粘度比が求められる。
【0026】
高粘度樹脂層11の厚さ及び低粘度樹脂層12の厚さは、異方性導電フィルムの基板への仮貼り性の観点から、それぞれ、導電粒子20の平均粒子径の2/3以上であることが好ましい。また、高粘度樹脂層11の厚さ及び低粘度樹脂層12の厚さの合計は、通常、導電粒子20の平均粒子径の3.5倍以下である。
【0027】
高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12としては、公知の異方性導電フィルムで使用される絶縁性樹脂層を適宜採用することができる。即ち、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12との粘度比が上記範囲となるように、適宜採用することができる。例えば、アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含む光ラジカル重合型樹脂層、アクリレート化合物と熱ラジカル重合開始剤とを含む熱ラジカル重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱カチオン重合開始剤とを含む熱カチオン重合型樹脂層、エポキシ化合物と熱アニオン重合開始剤とを含む熱アニオン重合型樹脂層等を使用することができる。また、これらの樹脂層は、必要に応じて、それぞれ重合した樹脂層であってもよい。また、熱ラジカル重合型樹脂層の場合は、アクリレート化合物100質量部に対し、熱ラジカル重合開始剤を好ましくは2~60質量部、より好ましくは5~40質量部の量で用いることが好ましい。
【0028】
高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12には、さらに、膜形成樹脂、シランカップリング剤が含まれていることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂を挙げることができる。膜形成樹脂は2種を併用することができる。これらの中でも、製膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂が好適に用いられる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。また、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12には、必要に応じてシリカ微粒子、アルミナ、水酸化アルミ等の絶縁性フィラーが含まれていてもよい。例えば、熱ラジカル重合型樹脂層の場合は、アクリレート化合物100質量部に対し、絶縁性フィラーを5~50質量部の量で用いることが好ましい。さらに、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12には、上述の絶縁性フィラーとは別に充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤などが含まれていてもよい。
【0029】
導電粒子20は、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12の境界Cから、粒子径の2/3が上記低粘度樹脂層側に出ている位置より、高粘度樹脂層11側に配置されている。このように、異方性導電フィルム1においては、厚さ方向Zに対して導電粒子20が特定の位置に配置されているため、異方導電性接続時の押し込みの際、樹脂が流動して導電粒子の捕捉性が低下するのを防止できる。導電粒子の捕捉性の観点から、導電粒子20は、好ましくは、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12の境界Cから、粒子径の1/2が低粘度樹脂層12側に出ている位置に配置されているか、又は、粒子径の1/2が低粘度樹脂層12側に出ている位置より、高粘度樹脂層11側に配置されている。なお、導電粒子20は、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12の境界Cから出ておらず、全体が高粘度樹脂層11側に配置されていてもよい。言い換えると、高粘度樹脂層11及び低粘度樹脂層12の境界Cに対して、導電粒子20は、高粘度樹脂層に粒子径の1/3より大きく埋まっている。また、境界Cに対して、導電粒子20は、高粘度樹脂層に粒子径の1/2以上が埋まっていることが好ましい。また、境界Cに対して、導電粒子20は、高粘度樹脂層に粒子径の2/3以上が埋まっていることがより好ましい。また、境界Cに対して、導電粒子20は、高粘度樹脂層に全体が埋まっていてもよい。
【0030】
厚さ方向Zに対して導電粒子20が特定の位置に配置されていることは、例えば、以下のようにして確認できる。即ち、異方性導電フィルム1を図1の線A-Aを通る断面で切断し、電子顕微鏡により断面を観察し、導電粒子20の位置が確認できる。
【0031】
異方性導電フィルム1において、厚さ方向Zの導電粒子20の位置のばらつき幅は、平均粒子径の10%未満であることが好ましい。このばらつき幅は、異方性導電フィルム1のいずれか一方の表面と各導電粒子20との距離Lのばらつき幅として測定される。より具体的には、まず、異方性導電フィルム1の長手方向Xに連続して100個の導電粒子20を抽出し、各導電粒子20について距離Lを測定したときの最大値と最小値との差ΔLを得る。次いで、ばらつき幅は、ΔLの平均粒子径に対する割合として求めることができる。
【0032】
異方性導電フィルム1は、上述のように、導電粒子20の平均粒子径、高粘度樹脂層11と低粘度樹脂層12との粘度比、及び厚さ方向Zに対する導電粒子20の位置が特定の範囲にある。これにより、異方性導電フィルム1は、異方導電性接続時の押し込みの際、樹脂が流動して導電粒子の捕捉性が低下するのを防止できる。従って、異方性導電フィルム1は、粒子捕捉数を増やすことが可能となり、うねりのあるセラミック基板かつ小接続パッドの基板に対応できる。
【0033】
異方性導電フィルム1は、上記絶縁性の高粘度樹脂層の表面に、規則配置させた上記平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、上記高粘度樹脂層における上記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、上記高粘度樹脂層中に、上記導電粒子を埋め、上記高粘度樹脂層における上記導電粒子を埋め込んだ表面側に、上記低粘度樹脂層を配置し、圧着して製造することができる。より具体的には、異方性導電フィルム1は、例えば、下記のように製造できる。まず、導電粒子20の配置に対応した凸部を有する金型を、平坦な金属プレートに機械加工やレーザー加工、フォトリソグラフィなどの方法で作製する。次いで、その金型に硬化性樹脂を充填し、硬化させることにより凹凸が反転した樹脂型を作製する。この樹脂型を導電粒子用マイクロキャビティとし、その凹部に導電粒子20を入れ、その上に、予め形成しておいた高粘度樹脂層11を配置し、表面に導電粒子20が付着した状態で高粘度樹脂層11を剥離する。高粘度樹脂層11について、導電粒子20が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、高粘度樹脂層11中に、所望の位置となるまで導電粒子20を埋める。導電粒子20が埋まった高粘度樹脂層11について、導電粒子20を埋め込んだ表面側に、予め形成しておいた低粘度樹脂層12を配置し、圧着する。このようにして、図1及び図2に示すような異方性導電フィルム1が得られる。高粘度樹脂層11中に導電粒子20を埋める際、印加する熱及び圧力を適宜調整することにより、厚さ方向Zに対する導電粒子20の位置を特定の範囲にできる。なお、予め形成しておいた低粘度樹脂層12の表面に導電粒子20を付着させて埋め、導電粒子20を埋め込んだ表面側に、高粘度樹脂層11を圧着して製造してもよい。すなわち、異方性導電フィルム1は、上記絶縁性の低粘度樹脂層の表面に、規則配置させた上記平均粒子径13μm以上の導電粒子を付着し、上記低粘度樹脂層における上記導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、上記低粘度樹脂層中に、上記導電粒子を埋め、上記低粘度樹脂層における上記導電粒子を埋め込んだ表面側に、上記高粘度樹脂層を配置し、圧着して製造してもよい。
【0034】
<接続構造体の製造方法>
実施形態の接続構造体の製造方法は、第1の電子部品と第2の電子部品とを、上述した異方性導電フィルムで電気的に接合する接合工程を含む。詳細には、この工程により、第1の電子部品の接続端子と、第2の電子部品の接続端子との異方導電性接続が行われる。異方導電性接続するのに好適な端子(接続パッド)について、幅(短手)は、好ましくは12μm以上である。また、上記幅の上限は、好ましくは500μm以下である。また、上記端子(接続パッド)について、長さ(長手)は、好ましくは20μm以上、より好ましくは50μm以上である。また、上記長さの上限は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは240μm以下である。また、端子(接続パッド)について、第1の電子部品側の端子、第2の電子部品側の端子共に、高さは、好ましくは6μm以上である。また、上記高さの上限は、好ましくは35μm以下である。また、上記端子(接続パッド)について、ピッチは、好ましくは40μm以上である。また、上記ピッチの上限は、好ましくは1500μm以下である。また、接合工程は、具体的には、高粘度樹脂層を、第2の電子部品側に配置し、接合する工程である。
【0035】
第1の電子部品としては、フレキシブル基板などが挙げられ、第2の電子部品としては、セラミック基板などが挙げられる。第2の電子部品は後述するように平滑ではなく「うねり」を有する基板であることが、本発明の導電フィルムおよび異方性導電フィルムには適している。セラミック基板はカメラモジュールを搭載もしくは組み込まれたものであってもよい。第2の電子部品がセラミック基板である場合は、通常20μm以上のうねりを有し、具体的には20~50μmのうねりを有する。セラミック基板のうねりは、表面粗さ計(株式会社小坂研究所、サーフコーダSE-400)を用いて測定することができる。具体的には、表面粗さ計の触針を、セラミック基板における端子の配列方向に走査し、表面凹凸のプロファイルを得て、このプロファイルにおける、高さの最大値と最小値との差から、うねりを求められる。特許第6425382号公報と同様に測定してもよい。
【0036】
このように第2の電子部品に「うねり」がある、従来用いられているガラス基板やプラスチック基板のように平滑ではない基板上に電極(端子、接続パッド)が所定以上の高さが設けられており、且つ第1の電子部品は従来用いられているFPCのように電極に所定以上の高さがある場合に、本発明の導電フィルム、異方性導電フィルムが必要になる。接続対象物がこのような構成を備えて対向させた場合、少なくとも一面側に「うねり」が存在するため、対向した電極間に導電粒子を挟持させることが難しくなることから、粒子径を13μm以上とし、導電粒子の補足数を安定化させるために積層した樹脂層の流動性も踏まえて設計する必要がある。これが、本発明の設計思想をなす前提の条件になる。
【0037】
実施形態の接続構造体の製造方法によれば、上述した異方性導電フィルムを用いることにより、第1電子部品と第2電子部品とが好適に異方導電性接続され、安定した導通抵抗値を有する接続構造体が得られる。
【0038】
特に、第2の電子部品が平滑ではない「うねり」を有する基板(セラミック基板)である場合、このうねりの凸部にある端子も凹部にある端子も、それぞれ対向する端子と良好に導通接続される。これは、以下のように考えられる。異方導電接続時に、絶縁性の樹脂層(高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層)を形成する樹脂が溶融し流動する。しかしながら、上述した異方性導電フィルムでは、導電粒子の平均粒子径が特定の範囲にあり、絶縁性の樹脂層が、特定の粘度比を有する高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層で構成されており、さらに、厚さ方向に対する導電粒子の位置が特定の範囲にある。このため、樹脂が溶融し流動する際にも、うねりの凸部にある端子上の導電粒子が流れ難くなり、粒子捕捉数を増やすことが可能となり、良好な導通接続が達成できる。
【0039】
なお、接合工程は、低粘度樹脂層を、第2の電子部品側に配置し、接合する工程であってもよい。この場合も、得られた接続構造体は安定した導通抵抗値を示す。粒子捕捉数の観点からは、接合工程は、具高粘度樹脂層を、第2の電子部品側に配置し、接合する工程である方が好ましい。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
<A:絶縁接着剤層の作製>
表1に示す配合A~Dの4種類の組成物から、それぞれ絶縁接着剤フィルムA~Dを厚み16μmで作製した。なお、表1における配合は、溶剤分を除いた配合量である。
【0041】
作製した4種類の絶縁接着剤フィルムA~Dについて、回転式レオメータ(TA Instruments社製)を用い、室温から加熱していき、昇温速度10℃/分、測定圧力5g一定、使用測定プレート直径8mmという条件で溶融粘度測定し、80℃の時の粘度を読み取った。この結果も表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
<B: 樹脂型の作製>
密度600pcs/mm2で、凸部が4方格子のパターンを有する金型をニッケルプレートに切削加工することにより作製した。公知の透明性樹脂のペレットを溶融させた状態で金型に流し込み、冷やして固めることで凹部が凸部と同様のパターンの樹脂型を形成した。
【0044】
[実施例1]
図1図2に示す異方性導電フィルムを作製した。
<B: 樹脂型の作製>で得られた樹脂型の凹部に導電粒子(平均粒子径20μm、積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパール(登録商標))を充填し、その上に絶縁接着剤フィルムAを被せた。表面に導電粒子が付着した状態で絶縁接着剤フィルムAを剥離した。絶縁接着剤フィルムAについて、導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、絶縁接着剤フィルムA中に、所望の位置となるまで導電粒子を埋めた。導電粒子が埋まっている絶縁接着剤フィルムAについて、導電粒子を埋め込んだ表面側に、予め形成しておいた絶縁接着剤フィルムDを配置し、圧着した。なお、作製した異方性導電フィルムAにおいて、絶縁接着剤フィルムAが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムDが低粘度樹脂層を構成していた。導電粒子は、高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層の境から、粒子径の1/2が低粘度樹脂層側に出ている位置に配置されていた。また、異方性導電フィルムAは、厚み:35μm、幅(短手方向):1mmであった。
図3に示すように、作製した異方性導電フィルムA(異方性導電フィルム1)を、アルミナ製セラミック基板2側が高粘度樹脂11層となるように仮貼りした。次いで、フレキシブルプリント基板3を載せて140℃、6秒、2MPaの条件にて圧着して圧着サンプルAを作製した。ここで、フレキシブルプリント基板(FPC)3は、銅配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子31高さ:12μm、ポリイミド厚み:25μmであった。また、アルミナ製セラミック基板(PWB)2は、タングステン配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子(配線)21高さ:10μm、基板厚み:0.4mm、うねり=20μmであった。
圧着サンプルAについて、粒子捕捉率を算出したところ、50%となった。また、作製した圧着サンプルAの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0045】
[実施例2]
絶縁接着剤フィルムAの代わりに絶縁接着剤フィルムCを用いた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムBを作製した。なお、作製した異方性導電フィルムBにおいて、絶縁接着剤フィルムCが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムDが低粘度樹脂層を構成していた。
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムBを用いた以外は、実施例1と同様にして圧着サンプルBを作製した。
圧着サンプルBについて、粒子捕捉率を算出したところ、48%となった。また、作製した圧着サンプルBの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0046】
[実施例3]
図1図4に示す異方性導電フィルムを作製した。図4は、実施例3の異方性導電フィルムの断面図であり、図1に示す線A-Aでの断面図である。
<B: 樹脂型の作製>で得られた樹脂型の凹部に導電粒子(平均粒子径20μm、積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパール(登録商標))を充填し、その上に絶縁接着剤フィルムBを被せた。表面に導電粒子が付着した状態で絶縁接着剤フィルムBを剥離した。絶縁接着剤フィルムBについて、導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、絶縁接着剤フィルムB中に、所望の位置となるまで導電粒子を埋めた。導電粒子が埋まっている絶縁接着剤フィルムBについて、導電粒子を埋め込んだ表面側に、予め形成しておいた絶縁接着剤フィルムCを配置し、圧着した。なお、作製した異方性導電フィルムCにおいて、絶縁接着剤フィルムBが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムCが低粘度樹脂層を構成していた。導電粒子は、高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層の境から、粒子径の1/3が低粘度樹脂層側に出ている位置に配置されていた。また、異方性導電フィルムCは、厚み:35μm、幅(短手方向):1mmであった。
作製した異方性導電フィルムCを、アルミナ製セラミック基板側が高粘度樹脂層となるように仮貼りした。次いで、フレキシブルプリント基板を載せて140℃、6秒、2MPaの条件にて圧着して圧着サンプルCを作製した。ここで、フレキシブルプリント基板(FPC)は、銅配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子高さ:12μm、ポリイミド厚み:25μmであった。また、アルミナ製セラミック基板(PWB)は、タングステン配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子(配線)高さ:10μm、基板厚み:0.4mm、うねり=20μmであった。
圧着サンプルCについて、粒子捕捉率を算出したところ、46%となった。また、作製した圧着サンプルCの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0047】
[実施例4]
絶縁接着剤フィルムAの代わりに絶縁接着剤フィルムBを用い、絶縁接着剤フィルムDの代わりに絶縁接着剤フィルムCを用いた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムDを作製した。なお、作製した異方性導電フィルムDにおいて、絶縁接着剤フィルムBが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムCが低粘度樹脂層を構成していた。
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムDを用いた以外は、実施例1と同様にして圧着サンプルDを作製した。
圧着サンプルDについて、粒子捕捉率を算出したところ、40%となった。また、作製した圧着サンプルDの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0048】
[実施例5]
絶縁接着剤フィルムAの代わりに絶縁接着剤フィルムCを用いた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムEを作製した。なお、作製した異方性導電フィルムEにおいて、絶縁接着剤フィルムCが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムDが低粘度樹脂層を構成していた。
作製した異方性導電フィルムEを、フレキシブルプリント基板側が高粘度樹脂層となるように仮貼りした。次いで、アルミナ製セラミック基板を載せて140℃、6秒、2MPaの条件にて圧着して圧着サンプルEを作製した。ここで、フレキシブルプリント基板(FPC)は、銅配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子高さ:12μm、ポリイミド厚み:25μmであった。また、アルミナ製セラミック基板(PWB)は、タングステン配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子(配線)高さ:10μm、基板厚み:0.4mm、うねり=20μmであった。
圧着サンプルEについて、粒子捕捉率を算出したところ、43%となった。また、作製した圧着サンプルEの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0049】
[比較例1]
絶縁接着剤フィルムDの代わりに絶縁接着剤フィルムAを用いた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムFを作製した。
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムFを用いた以外は、実施例1と同様にして圧着サンプルFを作製した。
圧着サンプルFについて、粒子捕捉率を算出したところ、35%となった。また、作製した圧着サンプルFの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0050】
[比較例2]
図1図5に示す異方性導電フィルムを作製した。図5は、比較例2の異方性導電フィルムの断面図であり、図1に示す線A-Aでの断面図である。
<B: 樹脂型の作製>で得られた樹脂型の凹部に導電粒子(平均粒子径20μm、積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパール(登録商標))を充填し、その上に絶縁接着剤フィルムDを被せた。表面に導電粒子が付着した状態で絶縁接着剤フィルムDを剥離した。絶縁接着剤フィルムDについて、導電粒子が付着した表面に対し、熱及び圧力を印加しながら、絶縁接着剤フィルムD中に、所望の位置となるまで導電粒子を埋めた。導電粒子が埋まっている絶縁接着剤フィルムDについて、導電粒子を埋め込んだ表面側に、予め形成しておいた絶縁接着剤フィルムAを配置し、圧着した。なお、作製した異方性導電フィルムGにおいて、絶縁接着剤フィルムAが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムDが低粘度樹脂層を構成していた。導電粒子は、高粘度樹脂層及び低粘度樹脂層の境から、粒子径の2/3が低粘度樹脂層側に出ている位置に配置されていた。また、異方性導電フィルムGは、厚み:35μm、幅(短手方向):1mmであった。
作製した異方性導電フィルムGを、アルミナ製セラミック基板側が高粘度樹脂層となるように仮貼りした。次いで、フレキシブルプリント基板を載せて140℃、6秒、2MPaの条件にて圧着して圧着サンプルGを作製した。ここで、フレキシブルプリント基板(FPC)は、銅配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子高さ:12μm、ポリイミド厚み:25μmであった。また、アルミナ製セラミック基板(PWB)は、タングステン配線:ライン/スペース=100μm/100μm、端子(配線)高さ:10μm、基板厚み:0.4mm、うねり=20μmであった。
圧着サンプルGについて、粒子捕捉率を算出したところ、28%となった。また、作製した圧着サンプルGの導電接続はすべてのチャンネルで測定可能であった(30/30ch)。
【0051】
[比較例3]
導電粒子(平均粒子径20μm、積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパール)の代わりに、導電粒子(平均粒子径3μm、積水化学工業株式会社製、商品名:ミクロパール)を用いた以外は、実施例1と同様にして異方性導電フィルムHを作製した。なお、作製した異方性導電フィルムHにおいて、絶縁接着剤フィルムAが高粘度樹脂層を構成し、絶縁接着剤フィルムDが低粘度樹脂層を構成していた。
異方性導電フィルムAの代わりに異方性導電フィルムHを用いた以外は、実施例1と同様にして圧着サンプルHを作製した。
圧着サンプルHでは、小径粒子はセラミック基板のうねりに対応することができず、粒子捕捉率の算出が困難であった。また、セラミックのうねりの影響により、作製した圧着サンプルHの導電接続はエッジ部の測定端子各2ch分以外では測定できず、導通不良が発生した(4/30ch)。
各実施例及び比較例で得られた異方性導電フィルムについて、評価結果を表2に示す。なお、各実施例及び比較例で得られた異方性導電フィルムにおいて、厚さ方向の導電粒子の位置のばらつき幅は平均粒子径の10%未満であった。
【0052】
【表2】
【0053】
<評価方法>
(厚さ方向に対する導電粒子の位置、ばらつき幅)
異方性導電フィルムを図1の線A-Aを通る断面で切断し、電子顕微鏡により断面を観察して求めた。具体的には、断面図において、導電粒子の球の中心を通るように切断された導電粒子50pcsについて、厚さ方向における導電粒子の位置を測定し、平均値を求めた。
なお、ばらつき幅は、明細書本文中の記載に沿って求めた。
(粒子捕捉率)
仮貼り後に、アルミナ製セラミック基板の接続端子上の粒子数をカウントし、「圧着前の端子上の粒子数(a)」とした。次いで、フレキシブルプリント基板を圧着し、フレキシブルプリント基板を剥離した後に、上記接続端子上に残った粒子数(b)を数え、「圧着後の端子上の粒子数(b)」とした。次いで、下記式(1)を用いて粒子捕捉率を算出した。
粒子捕捉率(%)=圧着後の端子上の粒子数(b)÷圧着前の端子上の粒子数(a)
×100 ・・・(1)
但し、実施例5では、仮貼り後に、フレキシブルプリント基板の接続端子上の粒子数をカウントし、「圧着前の端子上の粒子数(a)」とした。次いで、アルミナ製セラミック基板を圧着し、アルミナ製セラミック基板を剥離した後に、上記接続端子上に残った粒子数(b)を数え、「圧着後の端子上の粒子数(b)」とした。
(導通抵抗)
圧着サンプルの導通抵抗は、デジタルマルチメータ(34401A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を使用し、4端子法にて、電流1mAを流して測定した。測定された抵抗値が2Ω以下の場合を合格とし、2Ωを超える場合を不合格とする。30ch測定し、合格のch数を求めた。
(総合判定)
粒子捕捉率が40%以上であり、かつ、導通抵抗が、30ch測定した際全て合格である場合を、合格とした。また、粒子捕捉率が40%未満であるか、又は、導通抵抗が、30ch測定した際全て合格ではない場合を不合格とした。
【符号の説明】
【0054】
1 異方性導電フィルム
10 絶縁性の樹脂層
11 高粘度樹脂層
12 低粘度樹脂層
20 導電粒子
2 アルミナ製セラミック基板
3 フレキシブルプリント基板
21、31 端子
図1
図2
図3
図4
図5