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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013243
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】電解無機仕上げのための表面処理
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/36 20060101AFI20250117BHJP
   C25D 11/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C23F1/36
C25D11/00 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024109339
(22)【出願日】2024-07-08
(31)【優先権主張番号】63/526,368
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/620,308
(32)【優先日】2024-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500520743
【氏名又は名称】ザ・ボーイング・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グリフィン, ブルース エム.
【テーマコード(参考)】
4K057
【Fターム(参考)】
4K057WA07
4K057WA10
4K057WB05
4K057WE21
4K057WE30
4K057WF10
4K057WG03
4K057WK01
4K057WK10
4K057WN06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】大型金属製品及び構造的構成要素に対して無機仕上げを適用するための、新規の基板表面処理方法及び組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの態様において、方法は、金属基板を脱脂すること、1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、電解研磨技術によって又はアルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、エッチング済み金属基板が、約8μインチ(0.2μm)から約16μインチ(0.4μm)の平均表面粗さ(R)を有する、金属基板をエッチングすること、エッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、アルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、任意選択的に、エッチング-洗浄及び必要に応じて酸洗いを実施して、酸化物を除去し、コーティングを処理済み金属基板上に堆積させてコーティング済み金属基板を形成することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を前記金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて前記金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板(22又は41)を形成することであって、前記エッチング済み金属基板(22又は41)が、約250μインチ(6.4μm)以下の平均表面粗さ(R)を有する、前記金属基板をエッチングすること、
前記エッチング済み金属基板(22又は41)を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、
任意選択的に2回目のアルカリ洗浄を前記処理済み金属基板に実施すること、及び
コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
前記アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記処理済み金属基板が、約8μインチ(0.2μm)から約16μインチ(0.4μm)の平均表面粗さRを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記処理済み金属基板の表面の最大ピークと最小バレーの和(R)が、約158μインチ(4μm)から約236μインチ(6μm)である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチング済み金属基板(22又は41)を酸洗いすることが、前記エッチング済み金属基板(22又は41)を、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液中に浸漬することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、前記無機仕上げの前記電解堆積が、
前記処理済み金属基板を対電極に取り付けること、
前記処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
前記処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を前記処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成すること、
前記コーティング済み金属基板(16又は18)を前記無機仕上げ液から取り出すこと、及び
前記コーティング済み金属基板(16又は18)をすすぐこと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電流密度が、前記処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属基板に適用された前記コーティング(35又は37)が、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔、及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属基板に適用された前記コーティング(35又は37)が、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔、及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を前記金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて前記金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板(22又は41)を形成することであって、前記アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、前記金属基板をエッチングすること、
約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液を用いて前記エッチング済み金属基板(22又は41)を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、
2回目のアルカリ洗浄を前記処理済み金属基板に実施することであって、任意選択的に、前記アルカリエッチング液と、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液とを用いてアルカリエッチング洗浄を実施して、必要に応じて酸化物を除去し、硝酸酸洗い溶液は、単独で又は他の酸洗い溶液と組み合わされて、必要に応じて酸化物を除去する、2回目のアルカリ洗浄を前記処理済み金属基板に実施すること、
コーティング(35又は37)を前記酸洗い済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成すること
を含む方法。
【請求項11】
コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、前記無機仕上げの前記電解堆積が、
前記処理済み金属基板を対電極に取り付けること、
前記処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
前記処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を前記処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成すること、
前記コーティング済み金属基板(16又は18)を前記無機仕上げ液から取り出すこと、及び
前記コーティング済み金属基板(16又は18)をすすぐこと
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記処理済み金属基板が、約8μインチ(0.2μm)から約16μインチ(0.4μm)のRを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記処理済み金属基板の表面のRが、約158μインチ(4μm)から約236μインチ(6μm)である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記電流密度が、前記処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記金属基板に適用された前記コーティング(35又は37)が、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔、及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を前記金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて前記金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板(22又は41)を形成することであって、前記アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、前記金属基板をエッチングすること、
酸洗い溶液を用いて前記エッチング済み金属基板(22又は41)を酸洗いして、処理済み金属基板を形成することであって、前記酸洗い溶液が、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む、前記エッチング済み金属基板(22又は41)を酸洗いすること、
2回目のアルカリ洗浄を前記処理済み金属基板に実施することであって、任意選択的に、前記アルカリエッチング液と、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液とを用いて、アルカリエッチング洗浄を実施して、必要に応じて酸化物を除去する、2回目のアルカリ洗浄を前記処理済み金属基板に実施すること、
コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成することであって、コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、前記無機仕上げの前記電解堆積が:
前記処理済み金属基板を2つ以上の対電極に取り付けること、
前記処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
前記処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を前記処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板(16又は18)を形成すること、及び
前記コーティング済み金属基板(16又は18)をすすぐこと
を含む、コーティング(35又は37)を前記処理済み金属基板上に堆積させること
を含む方法。
【請求項17】
前記処理済み金属基板に印加される前記電流密度が、約0.2mA/cmから約0.5mA/cmである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電流密度が、前記処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記電流密度が、定電流として前記処理済み金属基板に印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
約79μインチ(2μm)から約8μインチ(0.2μm)の平均表面粗さを有する金属基板を含むエッチング済み金属基板(22又は41)であって、
前記エッチング済み金属基板(22又は41)の前記平均表面粗さが、前記金属基板をエッチング液中でエッチングし、前記金属基板を、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液中で酸洗いすることにより得られる、エッチング済み金属基板(22又は41)と、
前記エッチング済み金属基板(22又は41)の上に配置される無機仕上げ(35又は41)であって、図2に実質的に示される形態を有する、無機仕上げ(35又は41)と
を含む、コーティング済み金属基板(16又は18)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]この出願は、2023年7月12日に提出された米国仮特許出願第63/526,368号の利益及び優先権を主張し、この仮特許出願は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
分野
[0002]本開示は、基板の表面処理の方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003]航空機の製造は、大型金属製品又は前記製品の構造的構成要素部品を構築するための効率的な組み立てプロセスを必要とする。航空機の製造では、各構成要素の穴を個別に開けてから、構成要素をスタックにまとめて互いに取り付けることができ、これにより、常套的な組み立て方法に関連付けられる、構成要素を積み上げて2回位置合わせしなければならないという従来の要件が排除される。しかしながら、効率的な組み立てプロセスは製造時間と費用を低減する一方で、そのような組み立てプロセスから製造される大型金属製品及び構造的構成要素は、処理、組み立て、及び使用を通して腐食及び環境劣化を依然として受けやすい。
【0004】
[0004]そのような大型金属製品及び構造的構成要素の処理、組み立て、及び使用から生じ得る腐食及び環境劣化を低減及び/又は排除するために、無機仕上げの適用が広く使用されている。しかしながら、そのようなコーティング(例えば、酸洗い液)を適用するために一般に実施されるプロセス及び表面処理は、コーティングが適用される基板の表面に望ましくない影響を有する可能性がある。
【0005】
[0005]したがって、大型金属製品及び構造的構成要素に対して無機仕上げを適用するための、新規の基板表面処理方法及び組成物を開発する必要がある。
【0006】
[0006]引用のための参照は、情報開示の記述(37C.F.R.1.97(h)):米国特許第11,155,928号、同11,303,047号、同11,661,665、米国特許出願第16/721,081号、同12/137,948号である。
【発明の概要】
【0007】
[0007]本開示は、基板表面処理の方法及び組成物に関する。
【0008】
[0008]少なくとも1つの態様において、方法は、金属基板を脱脂すること、1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、エッチング済み金属基板が、約250μインチ(6.4μm)以下の平均表面粗さ(R)を有する、金属基板をエッチングすること、エッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、及び任意選択的に、追加のエッチング洗浄及び酸洗いを実施して酸化物を除去し、コーティングを処理済み金属基板上に堆積させてコーティング済み金属基板を形成することを含む。
【0009】
[0009]少なくとも1つの態様において、方法は、金属基板を脱脂すること、1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %の50%水酸化ナトリウム、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、金属基板をエッチングすること、エッチング済み金属基板を、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液で酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、任意選択的に、アルカリエッチング液を用いて追加のエッチング洗浄を実施して、エッチング済み金属基板を形成することであって、アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %の50%水酸化ナトリウム、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、追加のエッチング洗浄を実施すること、エッチング済み金属基板を、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液で酸洗いして、処理済み金属基板を形成し、コーティングを酸洗い済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板を形成することを含む。
【0010】
[0010]少なくとも1つの態様において、方法は、金属基板を脱脂すること、1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %の50%水酸化ナトリウム、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、金属基板をエッチングすること、酸洗い溶液を用いてエッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成することであって、酸洗い溶液が、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む、エッチング済み金属基板を酸洗いすること、2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、任意選択的に、前記アルカリエッチング液を用いてアルカリエッチング洗浄を実施することと、エッチング済み金属基板を酸洗いして、必要に応じて酸化物を除去することであって、酸洗い溶液が、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い剤と組み合わせて使用される約40 vol%から60 vol%の硝酸を含む、エッチング済み金属基板を酸洗いすることと、コーティングを処理済み金属基板上に堆積させてコーティング済み金属基板を形成することとを含み、コーティングを処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、無機仕上げの電解堆積が、処理済み金属基板を2つ以上の対電極に取り付けること、処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、処理済み金属基板を無機仕上げ液に浸漬すること、電流密度を処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板を形成すること、及びコーティング済み金属基板をすすぐことを含む。
【0011】
[0011]少なくとも1つの態様において、コーティング済み金属基板は、エッチング済み金属基板であって、約79μインチ(2μm)から約8μインチ(0.2μm)の平均表面粗さを有する金属基板を含み、金属基板の平均表面粗さは、金属基板を、エッチング液中でエッチングし、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液中で酸洗いすることにより得られる、エッチング済み金属基板と、エッチング済み金属基板の上に配置された無機仕上げであって、図2に実質的に示される形態を有する無機仕上げとを含む。
【0012】
本開示の上記の特徴が詳細に理解されるように、上記で簡単に要約した本開示のさらに詳細な説明が、態様を参照することによって得られ、それら態様のうちのいくつかは、添付図面に例示される。しかしながら、添付図面は本開示の典型的な態様を示しているにすぎず、したがって、その範囲を限定しているとみなすべきではなく、本開示は他の等しく有効な態様を認めるものであることに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]固定システムを用いて固定する前の、構造アセンブリの断面模式図である。
図2】[0014]アルカリエッチング液組成物を用いた化学エッチングと、50vol %のHNOを有する酸洗い溶液を使用した酸洗いを受けた、アルミニウム基板の代表的な一実施例を示している。
図3】[0015]酸洗い液組成物を用いた化学エッチングと、クロメート酸洗い成分を有する酸洗い溶液を使用した酸洗いとを受けた、アルミニウム基板の代表的な一実施例を示している。
図4】[0016]中性塩霧環境内で336時間後の、アルカリエッチング液組成物を用いた化学エッチングと、50vol %のHNOを有する酸洗い溶液を使用した酸洗いとを受け、無機仕上げで電解コーティングされた、7075-T6アルミニウム金属基板を示している。
図5】[0017]中性塩霧環境内で336時間後の、アルカリエッチング液組成物を用いた化学エッチングと、50vol %のHNOを有する酸洗い溶液を使用した酸洗いとを受け、無機仕上げで電解コーティングされた、2024-T3アルミニウム金属基板を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[0018]異なる構造要素(本明細書では基板ともいう)の穴の個別の事前形成(例えば、事前穿孔)(例えば、地理的に遠隔した位置、異なる時間、同じ地理的領域内の異なる位置などにおける)と、次いで穴が形成された後、構造要素をまとめてそれらを組み立て(例えば、位置合わせ、スタッキング、及び固定して)、構造アセンブリを形成することが含まれる。
【0015】
[0019]図1に模式的に示すように、装置は、構造アセンブリ12及び固定システムを含む。構造アセンブリ12は、少なくとも2つの構造要素(例えば、第1の構造要素16及び第2の構造要素18)を含み、少なくとも2つの構造要素は、固定システムを介して互いに固定される。1つ又は複数の態様では、構造アセンブリ12は、まとめられて、航空機、宇宙船、陸上ビークル、エンジン、推進構造、宇宙再突入ビークル及び/若しくはその構造、発電タービン、又はこれらの組み合わせの1つ又は複数の構成要素を形成することができる。いくつかの態様では、構造アセンブリ12は、接続具及び/又は継手、例えば:燃料タンク用継手、翼用継手、胴体用継手、機体の側面用継手、及び大型接続具のうちの1つ又は複数であり得る。
【0016】
[0020]図1の実施例では、少なくとも2つの構造要素は、2つの構造要素、すなわち第1の構造要素16と第2の構造要素18とを含んでいる。しかしながら、他の実施例では、構造アセンブリ12は、固定システムによってまとめて固定される2つより多い構造要素、例えば3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、又は8つ以上の構造的構成要素を含む。加えて、第1の構造要素16は、第1の構造要素の側壁22及び第1の構造要素の穴の側壁35をさらに含んでいる。第2の構造要素18は、第2の構造要素の側壁41及び第2の構造要素の穴の側壁37をさらに含んでいる。いくつかのこのような実施例では、2つより多い構成要素は、事前形成され、スタッキングされ、組み立てられ、次いで互いに固定される
【0017】
[0021]第2の構造要素18の少なくとも一部分は、少なくとも第1の構造要素16の一部分と第2の構造要素18の一部分とが互いに直接物理的に触れる/接触するように、第1の構造要素16に隣接して配置される。その複雑性に起因して、第1の構造要素16及び第2の構造要素18は、いくつかの実施例では、同じ航空機部品の構成要素を含む(例えば、両方の構造要素が燃料タンクの構成要素であり得る)。しかしながら、他の実施例では、第1の構造要素16及び第2の構造要素18は、隣接する異なる航空機部品の構成要素(例えば、翼と燃料タンク、翼とエンジン、翼と胴体など)を含み、いくつかのこのような実施例では、第1の構造要素16と第2の構造要素18は、互いに固定されて異なる航空機部品を連結する。まとまって、第1の構造要素16と第2の構造要素18は構造アセンブリ12を形成する。
【0018】
[0022]いくつかの航空機組み立てプロセスでは、構造要素を構造アセンブリ12へと組み立てる前に、第1の構造要素16及び第2の構造要素18に、穴を事前形成する(例えば、事前穿孔、予備成型、事前リーミング、又はそれ以外の方法で事前形成する)。特に、第1の構造要素の穴48は、第1の構造要素16に、穿孔、成型、リーミング、又はそれ以外の方法で形成され、第2の構造要素の穴50は、第2の構造要素18に、穿孔、成型、リーミング、又はそれ以外の方法で形成される。図1には、第1の構造要素の穴48及び第2の構造要素の穴50の各々が1つしか示されていないが、他の実施例では、第1の構造要素16及び第2の構造要素18は、複数の第1の構造要素の穴48及び第2の構造要素の穴50を含む。いくつかのこのような実施例では、第1の構造要素16及び第2の構造要素18に含まれる第1の構造要素の穴48及び第2の構造要素の穴50の数は、構造アセンブリ12のサイズ及び形状と、特定の用途のための所望の固定レベルに応じて決まる。
【0019】
[0023]組み立てに先立ち、構造アセンブリの1つ又は複数の構造要素上にコーティングを堆積させることが望ましい場合がある。当業者であれば、基板をコーティングする方法は、コーティングされる基板、コーティングの組成、及びコーティング堆積の実装方法に応じて、多様な方法プロセスを含み得ることが分かるであろう。いくつかの態様では、1つ又は複数の構造要素上にコーティングを堆積させる方法は、1つ又は複数の基板洗浄プロセス、1つ又は複数の基板表面処理プロセス、及び1つ又は複数のコーティング堆積プロセスを含む。基板の形状及び構造は、組み立てプロセスに関連付けられるパラメータに従って任意に選択することができ、平面に限定されない。例えば、基板は、非平面形状を有してもよく、コーティングを適用可能な表面を有する。1つ又は複数の態様では、基板は、アルミニウム、アルミニウム合金、又はこれらの混合物から選択される金属基板である。
【0020】
[0024]1つ又は複数の態様では、金属基板を、基板を脱脂することを含む洗浄ステップに供する。金属基板は、例えば、アセトン又は水性アルカリ脱脂剤といった任意の脱脂剤を使用して脱脂され得る。このステップは、油脂がそれらの表面に残らなくなるまで、約5分から約30分にわたり金属基板を脱脂剤に浸漬すること、布を用いて手洗浄すること、及び約5分から約20分にわたり超音波攪拌を適用することを含む。加えて、脱脂ステップの後で、ホットエアを使用して金属基板を乾燥させてもよい。いくつかの実施形態では、金属基板は、溶媒蒸気脱脂、真空サイクル核形成(VCN)、及びこれらの組み合わせを使用して脱脂され得る。
【0021】
[0025]1つ又は複数の態様では、洗浄済み金属基板を形成するために、金属基板をアルカリ洗浄ステップに供する。アルカリ洗浄は、金属基板を、約5分から約30分にわたる期間、例えば、38から60g/LのBonderite C-AK 4215 NC LT Aero及び0から0.25重量%の範囲のBonderite C-AD 4215 Aeroといった水性アルカリ洗浄剤に浸漬することにより行われ得る。少なくとも1つの態様において、アルカリ洗浄は、約40℃から約60℃の温度で実行される。
【0022】
[0026]洗浄済み金属基板は、当業者に既知の1つ又は複数のエッチング方法、例えば化学エッチング、酸洗い、物理的摩耗、機械的研磨、機械加工、電解研磨、又はこれらの組み合わせを介してエッチングされ得る。
【0023】
[0027]いくつかの態様では、アルカリエッチング液を使用してエッチング済み金属基板を形成するために、洗浄済み金属基板を化学エッチングされる。少なくとも1つの態様において、アルカリエッチング液は、約2vol %から約6vol %、例えば約2vol %から約4vol %のトリエタノールアミンを含む。少なくとも1つの態様において、アルカリエッチング液は、約2vol %から約30vol %、例えば約10vol %から約20vol %の硫化ナトリウム添加物を含む。少なくとも1つの態様において、アルカリエッチング液は、約10vol %から約40vol %、例えば約15vol %から約20vol %の50%水酸化ナトリウム添加物を含む。少なくとも1つの態様において、アルカリエッチング液は、約0g/Lから約75g/L、例えば約75g/L以下の溶解金属含有物を含む。少なくとも1つの態様において、アルカリエッチング液は、約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む。
【0024】
[0028]1つ又は複数の態様では、洗浄済み金属基板の化学エッチングは、洗浄済み金属基板を、アルカリエッチング液中に、約1分から約10分間、例えば約2分から約7分間浸漬することを介して実行される。いくつかの態様では、洗浄済み金属基板の化学エッチングは、洗浄済み金属基板、アルカリエッチング液、又はそれらの両方を、約30℃から約55℃、例えば約35℃から約50℃の温度に加熱することを含む。
【0025】
[0029]いくつかの態様では、エッチング済み金属基板を形成するために、洗浄済み金属基板を物理的に摩耗する、及び/又は機械的に研磨する。1つ又は複数の態様では、物理的摩耗プロセスは、金属基板を、アルミナグリット、炭化ケイ素グリット、ガラスビーズ、スチールグリット、及びこれらの組み合わせのうちの1つ又は複数を用いてドライブラスト処理することを含むことができる。1つ又は複数の代替的な態様では、金属基板は、エメリー紙を用いて手動で及び/又は機械的に研磨して、任意の適切な方法を介して金属基板の表面に残った粉末を除去してもよい。
【0026】
[0030]いくつかの態様では、洗浄済み金属基板を、参照により本明細書に援用されるPS12050.1 Sec. 3.3.1に従って硝酸/HF溶液中への浸漬を介してエッチングする。
【0027】
[0031]1つ又は複数の態様では、洗浄済み金属基板表面を、当業者に既知の任意の1つ又は複数の電解研磨を介して所望の表面粗さにエッチングする。
【0028】
[0032]1つ又は複数の態様では、処理済み金属基板を形成するために、エッチング済み金属基板を酸洗いプロセスに供する。酸洗いプロセスは、アルミニウム基板を、例えば、35重量%から50重量%の範囲の硝酸(HNO)を含有する脱酸素槽に1から5分の期間にわたり及び/又は酸洗い剤、例えば、18重量%から20重量%の範囲の非クロム脱酸剤であるBonderite C-IC SmutGo NC Aeroに1から10分の期間にわたり浸漬することにより実行され得る。いくつかの態様では、エッチング済み金属基板は、非クロム脱酸剤であるBONDERITE C-IC SmutGo AERO ACIDを含む脱酸素槽中での約4分から約12分にわたる浸漬を介して酸洗いされた。酸洗いプロセスは、例えば、約20℃から約50℃の範囲の温度で実行され得る。その後、アルミニウム基板は、例えば、まず水道水で、続いて脱イオン水で、すすいでもよい。いくつかの態様では、エッチング済み金属基板を酸洗いすることは、約40vol %から約60vol %、例えば約50vol %の硝酸からなる酸洗い溶液中にエッチング済み金属基板を浸漬することを含む。エッチング済み金属基板は、酸洗い溶液中に、約1分から約10分間、例えば約7分間浸漬される。
【0029】
[0033]いくつかの態様では、処理済み金属基板をアルカリ洗浄に供する。アルカリ洗浄は、処理済み金属基板を、例えば、38から60g/Lの範囲のBonderite C-AK 4215 NC LT Aero及び0から0.25重量%の範囲のBonderite C-AD 4215 Aeroといった水性アルカリ洗浄剤に、約5分から約30分、例えば約10分から20分の期間にわたり浸漬することによって行われ得る。少なくとも1つの態様において、アルカリ洗浄は、約35℃から約65℃、例えば約40℃から約60℃、例えば約45℃から約55℃、例えば約47℃から約52℃の温度で実行され、金属基板、水性アルカリ洗浄剤、又はそれら両方は加熱される。いくつかの態様では、アルカリ洗浄溶液は、約10から約12のpHを有する。
【0030】
[0034]いくつかの態様では、ASME B46.1によって規定される処理済み金属基板テクスチャの表面粗さ構成要素は、約500μインチ(13μm)以下、例えば約400μインチ(10μm)以下、例えば約300μインチ(7.6μm)以下、例えば約250μインチ(6.4μm)以下、例えば約200μインチ(5.1μm)以下、例えば約150μインチ(3.8μm)以下、例えば約100μインチ(2.5μm)以下、例えば約50μインチ(1.3μm)以下、例えば約25μインチ(0.6μm)以下、例えば約10μインチ(0.3μm)以下、例えば約5μインチ(0.13μm)以下、例えば約2.5μインチ(0.1μm)以下、例えば約1μインチ(0.03μm)以下の平均表面粗さ(R)を有する。1つ又は複数の代替的実施形態では、処理済み金属基板は、約250μインチ(6.4μm)から約0.001μインチ(0.025nm)、例えば約200μインチ(5.1μm)から約0.005μインチ(0.13nm)、例えば約100 in(2.5μm)から約0.01μインチ(0.25nm)、例えば約50μインチ(1.3μm)から約0.025μインチ(0.64nm)、例えば約25μインチ(0.6μm)から約0.05μインチ(1.3nm)、例えば約10μインチ(0.3μm)から約0.075μインチ(1.9nm)、例えば約5μインチ(0.13μm)から約0.1μインチ(2.5nm)、例えば約2.5μインチ(0.1μm)から約0.15μインチ(3.8nm)、例えば約2μインチ(0.05μm)から約0.2μインチ(0.01μm)のRを有する。
【0031】
[0035]いくつかの態様では、処理済み金属基板は、R=R+R(式中、Rは、Rから測定された最大バレー深さの絶対値であり、Rは、Rから測定された最大ピーク高さである)によって決定される最大ピークと最小バレーの和(R)を有する。いくつかの態様では、処理済み金属基板は、約550μインチ(14μm)から約710μインチ(18μm)、例えば約590μインチ(15μm)から約670μインチ(17μm)のRを有する。1つ又は複数の代替的な態様では、処理済み金属基板は、約197μインチ(5μm)から約394μインチ(10μm)、代替的に約158μインチ(4μm)から約236μインチ(6μm)、代替的に約236μインチ(6μm)から約315μインチ(8μm)のRを有する。
【0032】
[0036]いくつかの態様では、コーティングを、処理済み金属基板上に堆積させる。処理済み金属基板を、適切な導電材料から作製されたラックに固定し、コーティング溶液に浸漬する。少なくとも1つの態様において、コーティング溶液は、無機仕上げ液である。加えて、適切な導電材料から作製された母線を、無機仕上げ液の上に吊り下げる。2つ以上の対電極を、電極が作業面から1フィート以内で溶液中に浸漬されるように、母線に取り付ける。対電極は、部品上に高電流密度領域が生じるのを避けるために、部品より浅い深さに浸漬される。さらに、対電極に所望の極性(陰極又は陽極)を付与するために、母線を整流器に電気的に接続する。
【0033】
[0037]加えて、処理済み金属基板が固定されたラックを、ラックが対電極の反対の極性となるように、整流器に電気的に接続する。次いで整流器に、無機仕上げプロセスの全期間にわたって給電する。無機仕上げ堆積が終了したら、整流器の電源を切り、ラックを整流器から接続解除して、無機仕上げ液から取り出す。次いでコーティング済み金属基板を、ラックから取り出し、水及び/又は任意の適切な溶媒ですすぎ、当業者に既知の任意の適切な方法を介して乾燥させる。代替的に、ラック及び母線は、整流器に電気的に接続されてもよく、整流器は、ラックを無機仕上げ液に浸漬する前に給電される。いくつかの実施形態では、ラックは、整流器がオンである間に、無機仕上げプロセスの終了時に取り除いてもよい。
【0034】
[0038]いくつかの態様では、処理済み金属基板は、無機仕上げ液に浸漬され、処理済み金属基板上にコーティングを堆積させるための電流密度を供給される。1つ又は複数の態様では、処理済み金属基板は、MIL-DTL-81706 Type II化成コーティング溶液に浸漬され、この化成コーティング溶液は無機仕上げ液である。いくつかの態様では、コーティングを堆積させる間に処理済み金属基板に供給される電流密度は、陰極又は陽極電流密度を提供するために、適切なDC電源により、定電流モード、パルス電流モード、又はこれらの組み合わせで供給される。
【0035】
[0039]1つ又は複数の態様では、処理済み金属基板に供給される電流密度は、約0.2mA/cmから約0.5mA/cm、例えば約0.25mA/cmから約0.45mA/cmの電流密度を有する定電流である。少なくとも1つの態様において、定電流は、約2分から約5分、例えば約2.5分から約4分の期間にわたり、処理済み金属基板に印加される。
【0036】
[0040]1つ又は複数の実施形態では、電流密度は、コーティングを基板上に十分に堆積させるために、所望の電位閾値に到達するまで、処理済み金属基板に定電圧を用いることにより供給される。1つ又は複数の実施形態では、金属基板に印加される電圧は、約0.5Vから約10V、例えば約1.0Vから約8V、例えば約1.5Vから約6V、例えば約 Vから約2V、例えば約4Vから約3Vである。少なくとも1つの態様において、電圧は、処理済み金属基板に、約30秒から約10分、例えば約1分から約8分、例えば約2分から約6分、例えば約2分から約4分、例えば約2分から約3分にわたり印加される。
【0037】
[0041]コーティング堆積プロセスが終了したら、当業者に既知の1つ又は複数の適切な方法を介して、コーティング済み金属基板を取り出し、すすぎ、乾燥させる。
【0038】
[0042]いくつかの態様では、コーティング済み金属基板のコーティングは、約0.05mg/cmから約0.11mg/cm、例えば約0.07mg/cmから約0.09mg/cmの膜質量を有する。
【0039】
[0043]コーティング済み金属基板上に堆積させたコーティングは、腐食保護を提供する。ASTM B117に準拠して操作すると、処理済み金属基板に適用されたコーティングは、0.031インチを上回る直径を有する膜孔の形成なしで、30平方インチの領域内に5個を上回る膜孔の形成なしで、及び/又は150平方インチの領域内に15個を上回る膜孔の形成なしで、最低336時間にわたり塩霧環境における腐食保護を提供する。1つ又は複数の態様では、コーティング済み金属基板上に堆積させたコーティングは、最低約336時間、例えば約500時間から約800時間にわたり、そのような腐食保護を提供する。
【0040】
追加の態様
[0044]本開示は、とりわけ、以下の態様を提供する。各態様は、任意の代替的な態様を任意選択的に含むとみなされ得る。
【0041】
条項1.
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、エッチング済み金属基板が、約250μインチ(6.4μm)以下の平均表面粗さ(R)を有する、金属基板をエッチングすること、
エッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、
任意選択的に2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、及び
コーティングを処理済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板を形成すること
を含む方法。
【0042】
条項2.アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %の50%水酸化ナトリウム、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、条項1の方法。
【0043】
条項3.処理済み金属基板が、約8μインチ(0.2μm)から約79μインチ(2μm)の平均表面粗さRを有する、条項1又は2の方法。
【0044】
条項4.処理済み金属基板の表面の最大ピークと最小バレーの和(R)が、約158μインチ(4μm)から約236μインチ(6μm)である、条項1から3のいずれかの方法。
【0045】
条項5.エッチング済み金属基板を酸洗いすることが、エッチング済み金属基板を、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液中に浸漬することを含む、条項1から4のいずれかの方法。
【0046】
条項6.コーティングを処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、無機仕上げの電解堆積が:
処理済み金属基板を対電極に取り付けること、
処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板を形成すること、
コーティング済み金属基板を無機仕上げ液から取り出すこと、及び
コーティング済み金属基板をすすぐこと
を含む、条項1から5のいずれかの方法。
【0047】
条項7.電流密度が、処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、条項1から6のいずれかの方法。
【0048】
条項8.金属基板に適用されたコーティングが、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、条項1から7のいずれかの方法。
【0049】
条項9.金属基板に適用されたコーティングが、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、条項1から8のいずれかの方法。
【0050】
条項10.
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %の50%水酸化ナトリウム、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、金属基板をエッチングすること、
単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液を用いてエッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、
2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施することであって、任意選択的に、前記アルカリエッチング液を用いてアルカリエッチング洗浄を実施する、2回目のアルカリ洗浄を実施すること、
必要に応じて酸化物を除去するために、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液を用いてエッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、及び
コーティングを酸洗い済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板を形成すること
を含む方法。
【0051】
条項11.コーティングを処理済み金属基板上に堆積させることが、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、無機仕上げの電解堆積が:
処理済み金属基板を対電極(陰極)に取り付けること、
処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を処理済み金属基板に印加してコーティング済み金属基板を形成すること、
コーティング済み金属基板を無機仕上げ液から取り出すこと、及び
コーティング済み金属基板をすすぐこと
を含む、条条項10の方法。
【0052】
条項12.処理済み金属基板が、約8μインチ(0.2μm)から約79μインチ(2μm)のRを有する、条項10又は11の方法。
【0053】
条項13.処理済み金属基板の表面のRが、約158μインチ(4μm)から約236μインチ(6μm)である、条項10から12のいずれかの方法。
【0054】
条項14.電流密度が、処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、条項10から13のいずれかの方法。
【0055】
条項15.金属基板に適用されたコーティングが、約0.031インチ以下の直径を有する膜孔、30平方インチ内に5個より少ない膜孔及び150平方インチの領域内に15個より少ない膜孔なしで、最低336時間の塩霧環境における腐食保護を提供する、条項10から14のいずれかの方法。
【0056】
条項16.
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、
アルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして、エッチング済み金属基板を形成することであって、アルカリエッチング液が、約2vol %から約6vol %のトリエタノールアミン、約2vol %から約30vol %の硫化ナトリウム添加物、約10vol %から約40vol %(例えば、50%水酸化ナトリウムの)、約75g/L以下の溶解金属含有物、及び約6g/L以下のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を含む、金属基板をエッチングすること、
酸洗い溶液を用いてエッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成することであって、酸洗い溶液が、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む、エッチング済み金属基板を酸洗いすること、
2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施することであって、任意選択的に、前記アルカリエッチング液を用いてアルカリエッチング洗浄を実施し、単独で又は鉄系若しくはクロメート酸洗い溶液と組み合わせて使用され得る約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液を用いてエッチング済み金属基板を酸洗いして、必要に応じて酸化物を除去する、2回目のアルカリ洗浄を実施すること、
コーティングを処理済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板を形成することであって、その上に無機仕上げを電解堆積させることを含み、無機仕上げの電解堆積が:
処理済み金属基板を2つ以上の対電極に取り付けること、
処理済み金属基板を電源に電気的に接続すること、
処理済み金属基板を無機仕上げ液中に浸漬すること、
電流密度を処理済み金属基板に印加して、コーティング済み金属基板を形成すること、及び
コーティング済み金属基板をすすぐこと
を含む、コーティングを処理済み金属基板に堆積させること
を含む方法。
【0057】
条項17.処理済み金属基板に印加される電流密度が、約0.2mA/cmから約0.5mA/cmである、条項16の方法。
【0058】
条項18.電流密度が、処理済み金属基板に約2分から約5分にわたって印加される、条項16又は17の方法。
【0059】
条項19.電流密度が、定電流として処理済み金属基板に印加される、条項16から18のいずれかの方法。
【0060】
条項20.
金属基板を脱脂すること、
1回目のアルカリ洗浄を金属基板に実施すること、
電解研磨技術により又はアルカリエッチング液を用いて金属基板をエッチングして5μmから13μmの材料を確実に除去し、エッチング済み金属基板を形成することであって、エッチング済み金属基板が、約2μインチ(0.05μm)から約20μインチ(0.5μm)の平均表面粗さ(R)を有する、金属基板をエッチングすること、
エッチング済み金属基板を酸洗いして、処理済み金属基板を形成すること、
任意選択的に2回目のアルカリ洗浄を処理済み金属基板に実施すること、及び
コーティングを処理済み金属基板上に堆積させて、コーティング済み金属基板を形成すること
を含む方法。
【0061】
条項21.
約79μインチ(2μm)から約8μインチ(0.2μm)の平均表面粗さを有する金属基板を含むエッチング済み金属基板であって:
金属基板の平均表面粗が、エッチング液中で金属基板をエッチングし、金属基板を、約40vol %から約60vol %の硝酸を含む酸洗い溶液中で酸洗いすることによって得られる、エッチング済み金属基板、及び
エッチング済み金属基板の上に配置された無機仕上げであって、化成コーティングが図2に実質的に示される形態を含む、無機仕上げ
を含む、コーティング済み金属基板。
【実施例0062】
試料の調製
[0045]7050-T7451、7075-T6、及び2024-T3アルミニウム被験物を、所望のサイズ及び形状に機械加工し、脱脂し、アセトンで洗浄し、アルカリ洗浄に供して、洗浄済みアルミニウム基板を生成した。洗浄済みアルミニウム基板を、トリエタノールアミン、硫化ナトリウム添加物、水酸化ナトリウム、金属含有物、及びエチレンジアミン四酢酸を含むアルカリエッチング液組成を用いて化学エッチングした。次いでエッチング済みアルミニウム基板を酸洗いプロセスに供し、各試料を、約50vol %のHNOを有する酸洗い組成物中に浸漬した。約50vol %のHNOを有する酸洗い組成物を使用することで、アルミニウム基板はエッチングされないが金属間化合物が攻撃されることに注意することが重要である。
【0063】
[0046]比較のために、追加の洗浄済みアルミニウム基板を、PS12050.1に従って、酸洗い液組成物及びプロセスを用いて化学エッチングした。次いでエッチング済み金属被験物の各々を、酸洗い溶液がクロメート酸洗い成分を含む酸洗いプロセスに供した。
【0064】
表面分析
[0047]基板のエッチング及び酸洗いの前と後で、酸洗い済みアルミニウム基板を、スタイラスタイプ(表面接触)の粗面計及び白色光干渉計を使用して観察し、基板の表面特性を分析した。表面粗さを特徴付けるための前者の方法は、基板表面と接触させて0.25mmから0.8mmの距離を引っ張る規定直径のスタイラスを利用し、Mitutoyo Surftestなどの機器を用いて実施され、後者の方法は、表面粗さの推定のために、光源からの光波と基板からの反射光の干渉に依存する非接触表面形態であり、Bruker Contour GT-K 3D Optical Microscopeなどの機器を用いて実施される。図2は、アルカリエッチング液組成物を用いた化学エッチングと、50vol %のHNOを有する酸洗い溶液を使用した酸洗いを受けた、アルミニウム基板の代表的な一実施例を示している。図3は、酸洗い液組成物を用いた化学エッチングと、クロメート酸洗い成分を有する酸洗い溶液を使用した酸洗いを受けた、アルミニウム基板の代表的な一実施例を示している。
【0065】
電解コーティング
[0048]酸洗い済みアルミニウム基板を、チタニウム合金ラックに置き、SurTec 650無機仕上げ液に浸漬する電解コーティングプロセスを使用して、酸洗い済みアルミニウム基板をコーティングした。適切なDC電源を、チタニウム合金ラック及び2つの1000シリーズアルミニウム対電極に接続した。次いで電源を動作させて、1.0mA/cmを超えない陰極又は陽極電流密度を提供する定電圧を供給した。コーティング形成の期間は、電源をオフにするまでの10分以下であり、コーティング済みアルミニウム基板を無機仕上げ液から取り出した。次いでコーティング済みアルミニウム基板をすすぎ、乾燥させた。
【0066】
塩霧試験
[0049]コーティングの性能を、ASTM B117に概要が示される中性塩霧試験に従って評価した。アルミニウム金属基板に適用されたコーティングは、中性塩霧環境において、最低336時間、0.031インチを上回る直径を有する膜孔が存在せず、30平方インチの領域内に5個を上回る膜孔が形成されず、かつ150平方インチの領域内に15個を上回る膜孔が形成されない場合に、MIL-A-8625基準に合格すると決定された。ここで、膜孔は、目視できる黒色の斑点若しくは周囲に白色の腐食生成物を呈する膜孔、又は尾形状の膜孔と定義される。図4及び図5は、中性塩霧環境内で336時間後の、アルカリエッチング液組成物を用いた化学エッチング、50vol %のHNOを有する酸洗い溶液を使用した酸洗い、及び無機仕上げでの電解コーティングを受けた、7075-T6、及び2024-T3アルミニウム金属基板を示している。
【0067】
[0050]別段の断りがない限り、「本質的になる」及び「本質的になっている」という表現は、本明細書において具体的に言及されているかどうかに関わらず、他のステップ、要素、又は材料が本開示の基本的な新規の特徴に影響を与えない限り、そのような他のステップ、要素、又は材料を排除せず、加えて、使用される要素及び材料に通常関連付けられる不純物及び及び差異を排除しない。
【0068】
[0051]本明細書で使用される数値範囲は、範囲内で記載される数を含む。例えば、数値範囲「1wt %から10wt %」は、記載される範囲内に1wt %及び10wt %を含む。
【0069】
[0052]簡潔に示すために、本明細書には一部の範囲のみが明示的に開示されている。しかしながら、任意の下限からの範囲を任意の上限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を記載することができるだけでなく、任意の下限からの範囲を任意の他の下限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を記載することができ、同様に、任意の上限からの範囲を任意の他の上限と組み合わせて、明示的に記載されない範囲を記載することができる。加えて、1つの範囲は、明示的に記載されてはいなくとも、その端点間のすべての点又は個々の値を含む。したがって、すべての点又は個々の値は、任意の他の点若しくは個々の値又は任意の他の下限若しくは上限と組み合わされて、明示的に記載されない範囲を記載するために、それ自体の下限又は上限となり得る。
【0070】
[0053]本明細書の発明を実施するための形態のセクションに含まれるすべての数値は、示される値の前に付した「約」により修飾されて、当業者であれば予期するであろう実験誤差及び差異を考慮に入れる。
【0071】
[0054]本明細書に記載されるすべての文献は、あらゆる優先文書及び/又は試験手順を含め、それらが本明細書のテキストと矛盾しない範囲で参照により本明細書に援用される。先述の一般的な説明と具体的な態様から明らかであるように、本開示の複数の形態を図示及び説明したが、本開示の原理及び範囲から逸脱せずに、種々の修正例が作製可能である。したがって、本開示がそれらにより限定されないことが意図されている。同様に、用語「含む(comprising)」は、米国法の目的上、用語「含む(including)」と同義である。同様に、組成物、要素又は要素群「を含む」というときは常に、それら組成物、要素、又は要素群「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」同じ組成物、又は要素群であることが想定され、かつその逆も想定される。
【0072】
[0055]本開示は複数の態様及び実施例に関して記載されたが、本開示の恩恵を受ける当業者であれば、本開示の範囲及び原理を逸脱しない他の態様が考案され得ることが分かるであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
【外国語明細書】