(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001325
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】回転電機および回転電機を用いた空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
H02K 9/19 20060101AFI20241225BHJP
H02K 5/173 20060101ALI20241225BHJP
H02K 5/20 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
H02K9/19 Z
H02K5/173 A
H02K5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100841
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹内 啓祐
(72)【発明者】
【氏名】木村 守
(72)【発明者】
【氏名】浅海 勇介
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605BB10
5H605BB17
5H605CC02
5H605CC04
5H605DD13
5H605EB10
5H605EB21
5H609BB03
5H609BB19
5H609PP02
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP11
5H609QQ05
5H609QQ20
5H609RR26
5H609RR46
5H609RR48
5H609RR51
(57)【要約】
【課題】外部から供給される冷却媒体を用いて回転電機の発熱部位を効率的に冷却する。
【解決手段】回転軸8と、回転子10と、回転軸8を軸支する軸受16、21と、固定子26と、これらを収容するハウジング2を備える回転電機1において、ハウジング2の円筒部3の一端側を保持するエンドブラケット30に、軸受16、21を収容する円筒状の軸受収容部31を一体に形成する。エンドブラケット30には、外部から供給するされる冷却媒体の流路(42、43)を形成し、軸方向に延在する軸方向流路43を分岐させて、回転子10の端面に冷却媒体を噴射するノズル50に接続する第一の流路44と、軸受16、21に冷却媒体を噴射するノズル55に接続する第二の流路45を形成した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、回転軸と、前記回転軸に固定される回転子コアを備える回転子と、前記回転子コアの一方側及び他方側において前記回転軸を回転自在に軸支する軸受と、固定子コアと電機子巻線を備える固定子を有し、前記軸受は前記ハウジングに保持される回転電機であって、
前記ハウジングは、円筒部と、前記円筒部の両側に設けられるブラケット部により形成され、
前記ブラケット部に前記軸受の外輪を保持するための軸受ホルダが形成され、
前記ブラケット部には、前記ハウジングの外部から供給される冷却媒体の導入流路と、前記導入流路に接続され前記回転軸の軸線方向に延在するように前記軸受ホルダ内に形成される軸方向流路が形成され、
前記軸方向流路は、前記軸受ホルダから前記回転子の前記回転軸と直交する端面に前記冷却媒体を軸方向に噴射する第一の流路を有し、前記軸方向流路の途中から分岐して前記軸受に冷却媒体を噴射する第二の流路が形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記第一の流路は第一のノズルに接続され、前記第一のノズルの噴射開口の断面積は、前記第一の流路の断面積よりも小さく形成され、
前記第二の流路は第二のノズルに接続され、前記第二のノズルの噴射開口の断面積は、前記第二の流路の断面積よりも小さく形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載の回転電機において、
前記第二のノズルの噴射開口は複数設けられ、
前記第二の流路の断面積は、複数の前記第二のノズルの噴射開口の断面積の合計よりも大きく形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機において、
前記第一のノズルの噴射開口は、前記回転軸から径方向に見て、前記回転子コアの前記端面の占める径方向範囲の中央よりも前記回転軸に近い内側に設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項3に記載の回転電機において、
前記軸受ホルダは円筒状であって、
前記第一のノズルは、前記軸受ホルダの長手方向の端面に設けられ、
前記第二のノズルは、前記軸受ホルダの内周面に設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機において、
前記第一のノズルの前記噴射開口の形状は、円形、楕円形、もしくは、四角形のいずれかにて形成されることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項5に記載の回転電機において、
前記第一のノズルの前記噴射開口からの前記冷却媒体の噴射方向が、前記回転子の回転方向へ所定の角度だけ傾斜して設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の前記回転電機と、
前記回転電機によって駆動されるエアエンドと、を備えることを特徴とする空気圧縮機。
【請求項9】
ハウジング内に、回転軸と、前記回転軸に固定され永久磁石を有する回転子と、
前記回転子の前側及び後側において前記回転軸を回転自在に軸支する軸受と、
固定子コアと電機子巻線とを備える固定子と、を備える回転電機であって、
前記ハウジングは、円筒状の胴体部と、前記胴体部の前側を塞ぐと共に前記回転軸が貫通する貫通孔を有する前側エンドブラケットと、前記胴体部の後側を塞ぐ後側エンドブラケットを含んで形成され、
前記前側エンドブラケットの内側には、前記回転軸の前側を軸支する前側軸受の外輪を保持するための前側軸受ホルダが形成され、
前記前側エンドブラケットには、外部から冷却媒体を供給する前側導入流路と、前記前側導入流路に接続され前記回転軸の軸線方向に延在された前側軸方向流路が形成され、
前記前側軸方向流路は、先端の開口が絞り込まれた形状とされることにより前記冷却媒体が速度を速めて前記回転子の前側側面に噴射され、
前記後側エンドブラケットの内側には、前記回転軸の後側を軸支する後側軸受の外輪を保持するための前側軸受ホルダが形成され、
前記後側エンドブラケットには、外部から冷却媒体を供給する前側導入流路と、前記前側導入流路に接続され前記回転軸の軸線方向に延在された後側軸方向流路が形成され、
前記後側エンドブラケットの前記後側軸方向流路は、先端の開口が絞り込まれた形状とされることにより前記冷却媒体の速度を速めて前記回転子の後側側面に噴射することを特徴とすることを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項9に記載の回転電機において、
前記前側軸方向流路には、前記回転軸と交差する方向であって前記軸受に冷却媒体を供給する第二の前側流路に分岐するように形成され、
前記後側軸方向流路には、前記回転軸と交差する方向であって前記軸受に冷却媒体を供給する第二の後側流路に分岐するように形成されていることを特徴とする回転電機。
【請求項11】
請求項10に記載の回転電機において、
前記第二の前側流路の開口部分に、先端の開口が細く絞り込まれた第二の前側ノズルが設けられ、
前記第二の後側流路の開口部分に、先端の開口を細く絞り込まれた第二の後側ノズルが設けられることを特徴とする回転電機。
【請求項12】
請求項11に記載の回転電機において、
前記前側エンドブラケットには、2つの軸受が軸線方向に距離を隔てて設けられ、前記第二の前側ノズルの開口部分は、2つ前記軸受の間に位置することを特徴とする回転電機。
【請求項13】
請求項9乃至請求項12のいずれかに記載の前記回転電機と、
前記回転電機によって駆動されるエアエンドと、を備えることを特徴とする空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機および、それを用いた空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は出力密度向上や、それによる低コスト化を実現するため、その一手段である高速回転が要請されている。回転電機は、高速回転化によって回転軸を回転自在に支持する軸受における摩擦損失の増加が懸念され、高周波数化によって回転子における渦電流損失やヒステリシス損失等の増加が懸念される。これらの損失によって局所的な発熱が生ずるが、それら発熱箇所の冷却が重要となる。この対策に、冷却媒体を外部から供給し、冷却対象に対して高速かつ拡散させずに噴射させることが行われている。具体的には、冷却媒体の噴射部を冷却対象の近傍に配置し、噴射部までの冷却媒体の流路を構成する。
【0003】
回転電機の回転軸を軸支する軸受と、回転子はいずれも回転部分であるため、これらを効率よく冷却するには連れ回って回転する周囲の流体層に阻まれないように、冷却媒体を確実に冷却対象に当てるための工夫を要する。例えば、特許文献1に記載された回転電機が知られている。特許文献1の回転電機は、エンドブラケットに加工された冷却媒体流路から、回転軸と軸受に向けて潤滑油を供給する。これにより、回転軸と軸受との冷却媒体流路を単一の冷却媒体回路で構成できるため、安価かつシンプルに軸受の潤滑と、軸受と回転子の冷却を実現できる。しかしながら、2つの軸受が回転軸線方向に見てエンドブラケットの厚さ内に収まるように固定されるため、エンドブラケットの厚さが大きくなる。また、厚くなったエンドブラケット内において径方向に延在する冷却媒体流路を設けているので、各部品が干渉しないように配管および噴射部を取り廻すと装置の複雑化を招いてしまう。
【0004】
別の先行技術文献として、特許文献2が知られている。特許文献2ではハウジングの外周部分に冷却媒体(オイル)を供給する流路を設け、回転電機の回転体の外周側から回転子に向けて径方向に冷却媒体を供給している。また、ハウジングの外周部分から分岐させて、エンドブラケットを通って軸受に冷却媒体を供給するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007-523308号公報
【特許文献2】特開2018-91301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の回転電機では軸受と回転軸に対してのみ冷却媒体を供給し、さらに回転軸へ供給する冷却媒体は密封リップによりシールされるため、回転子の主たる発熱箇所である回転子コアや、回転子の界磁源への冷却効果を期待できない。界磁源とは、永久磁石モータの場合は永久磁石、誘導モータや巻線界磁モータの場合は回転子導体を意味する。これにより回転子の熱膨張、磁石の熱減磁、回転子導体の抵抗率増大などによる回転電機の性能劣化を招く。特許文献2の回転電機では、回転子の外周面に対して冷却媒体を噴射する流路を加工し、両流路は1つの給油口から分流して設けられる。しかしながら、回転子の外周側に冷却媒体を充てる方法では、回転子の回転によって連れ回る流体層に弾かれて、効率の良い冷却が阻害される恐れがある。加えて、冷却媒体を軸受と回転子へ確実に供給するために、分岐部をハウジングの円筒部の空間内に配置する必要があり、構造が複雑化する。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、回転電機の外部から冷却用の媒体を供給することにより、回転電機の冷却性能を向上させることにある。
本発明の他の目的は、回転電機のハウジングを形成するエンドブラケットの内部を貫通させる貫通孔を用いた冷却媒体流を形成することで、冷却構造を向上させると共に、部品点数を低減させた回転電機と、回転電機を用いた空気圧縮機を実現させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、ハウジング内に、回転軸と、回転軸に固定される回転子コアを備える回転子と、回転子コアの一方側(前側)及び他方側(後側)において回転軸を回転自在に軸支する軸受と、固定子コアと電機子巻線を備える固定子を有し、軸受はハウジングに保持される回転電機において、ハウジングは円筒部と円筒部の両側に設けられるブラケット部により形成され、ブラケット部に軸受の外輪を保持するための軸受ホルダが形成される。ブラケット部には、ハウジングの外部から供給される冷却媒体の導入流路と、導入流路に接続され回転軸の軸線方向に延在するように軸受ホルダ内に形成される軸方向流路が形成される。軸方向流路は、軸受ホルダの回転子に近い端面から、回転子の回転軸と直交する端面に冷却媒体を軸方向に噴射する第一の流路と、軸方向流路の途中から軸受に冷却媒体を噴射する第二の流路が形成される。第一の流路の下流側端部は第一のノズルに接続され、第一のノズルの噴射開口の断面積を、第一の流路の断面積よりも小さく形成した。第二の流路の下流側端部には第二のノズルが接続され、第二のノズルの噴射開口の断面積は、第二の流路の断面積よりも小さく形成した。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、第二のノズルの噴射開口は1つ又は複数設けられ、第二の流路の断面積は、複数の第二のノズルの噴射開口の断面積の合計よりも大きくなるように形成する。また、第一のノズルの噴射開口は、回転軸から径方向に見て、回転子コアの端面の占める径方向範囲の中央よりも回転軸に近い内側に設けられるようにする。第一のノズルは、軸受ホルダの長手方向の端面、即ち回転子に近い端面に設けられ、第二のノズルは、軸受ホルダの内周面に設けられる。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、第一のノズルの噴射開口の形状は、円形、楕円形、もしくは、四角形のいずれかにて形成すると良い。また、第一のノズルの噴射開口からの冷却媒体の噴射方向が、回転子の回転方向(周方向)へ向けて所定の角度だけ傾斜して設けられるようにしても良い。以上のような回転電機を用いて、エアエンドを駆動することで、効率が高い空気圧縮機を実現できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転電機の冷却性能を向上させるための冷却構造を、簡易な流路構成にて実現でき、回転電機の製造コストおよびメンテナンス性が改善する。また、冷却媒体を高速にて回転子の端面に噴射するため、回転子の回転によって連れ回る流体層に弾かれずに、確実に冷却媒体を当てて冷却することが可能となる。さらに、回転子の端面だけでなく軸受部分にも同時に冷却媒体を供給できるので、軸受及びその周辺の効果的な冷却を達成できる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例に係る回転電機1の外観を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施例に係る回転電機1の正面図である。
【
図3】回転電機1の軸方向前半部分の縦断面図である。
【
図4】回転電機1の軸方向後半部分の縦断面図である。
【
図5】
図3に示す回転電機1の冷却媒体流路40の部分拡大図である。
【
図6】
図5に示す軸受収容部31付近の部分拡大図である。
【
図7】
図4に示す回転電機1の冷却媒体流路70の部分拡大図である。
【
図8】
図3の第一の流路44と第二の流路45の流路断面の比較図である。
【
図9】回転子10と軸受21の連れ回る流体層の厚みの比較図である。
【
図10】本発明の第2の実施例に係る第一の流路の流路断面図である。
【
図11】本発明の第3の実施例に係る第一の流路の流路断面図である。
【
図12】本発明の実施例4に係る空気圧縮機200を示す斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例に係る回転電機1を、図面を参照して説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また、本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。本実施例の回転電機1は、空気圧縮機の駆動源として用いるのに好適であるが、本発明において駆動される対象(被駆動機器)は特に限定されない。尚、回転子10の回転軸Ax方向を単に「軸方向」と呼び、回転方向θは「周方向」と呼んで説明する場合がある。
【実施例0014】
図1は、本発明に係る回転電機1の斜視図であり、
図2は
図1に示す回転電機1の正面図である。回転電機1は埋込磁石同期モータであって、図では見えない回転子と固定子をハウジング2内に収容したものである。ハウジング2は、前側及び後側に開口を有する円筒形の胴体部3と、胴体部3の前側開口に取り付けられる前側のエンドブラケット30と、胴体部3の後側開口に取り付けられる後側のエンドブラケット60によって主に構成される。本実施例では、ハウジング2を3つの部材(胴体部3、エンドブラケット30、エンドブラケット60)に分割して形成している。エンドブラケット30、60が、本発明の「ブラケット部」に相当する。尚、ハウジング2をどのような分割形式で構成するかは任意である。
【0015】
前側のエンドブラケット30には貫通孔32が形成され、回転子10(
図3で後述)が固定される回転軸8の一端側がハウジング2の外部に突出する。ハウジング2には、冷却媒体を供給するための2つの供給口41、71が形成される。回転軸線Ax方向に見て前側に位置するエンドブラケット30の外周面の一か所(ここでは上側)に、冷却媒体を供給するための供給口41が形成される。また、回転軸線Ax方向に見て後側に位置するエンドブラケット60の外周面の一か所(ここでは上側)に、冷却媒体を供給するための供給口71が形成される。本明細書では
図2にて示すように、回転子10の径方向をr(+rが外周側)で表し、回転子10の回転軸8の軸方向(回転軸方向)をAxで表し、回転子10の回転方向をθで表す。
【0016】
図3は、回転電機1の軸方向前半部分の縦断面図(
図2のI-I部に相当する断面図)である。回転電機1の前方側は、外側を円筒形の一体構造で製造された胴体部3と、胴体部3の前側開口3aを塞ぐエンドブラケット30によりハウジング2が形成される。エンドブラケット30は、回転軸8を前方に貫通させるための貫通孔32が形成され、貫通孔32の周囲から内側の回転子10方向に向けて、円筒状の軸受収容部31が形成される。軸受収容部31は2つの軸受16、21を保持するために形成されるもので、軸受収容部31が、本発明の「軸受ホルダ」に相当する。軸受収容部31は、エンドブラケット30と同一の材料にて一体に製造される。尚、軸受収容部31とエンドブラケット30を一体式でなくて別ピースにて形成しても良い。
【0017】
回転子10は回転軸8に固定されるもので、略円柱状であり、回転子コア11と、永久磁石12と、回転子端板13とを備える。固定子26は略円筒状の固定子コア27と、電機子巻線28とを備える。回転子コア11と固定子コア27は、例えば、公知の手法により薄い電磁鋼板を回転軸線Ax方向に複数積層することによって製造される。
【0018】
固定子26は胴体部3の内周面に固定され、回転子10は軸受16、21を介してエンドブラケット30の軸受収容部31に回転自在な状態にて軸支される。また、エンドブラケット30は胴体部3に対して、回転子10と固定子26の同心を確保するように固定される。エンドブラケット30と胴体部3の固定の方法は任意であり、例えば図示しないボルトで固定する。また、回転電機1の内部への夾雑物の侵入および冷却媒体の漏れを防ぐために、エンドブラケット30と胴体部3の開口部3a間の接触面にOリング6が介在される。エンドブラケット30、60(
図4で後述)と胴体部3の材質としては、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム合金などを用いることができ、回転子端板13、14(
図4で後述)の材質としては非磁性ステンレス鋼、アルミ、銅合金などが考えられる。
【0019】
回転子コア11および回転子端板14は、回転軸8に圧入もしくは焼き嵌めして固定される。回転子コア11の固定のためのその他の方法としては螺着、接着、溶接などが考えられる。永久磁石12は回転子コア11に嵌装され、追加で接着もしくは樹脂一体モールドにより固定しても良い。回転軸8は動力伝達用の出力軸として機能し、回転子コア11および永久磁石12は回転子10の磁気回路として機能する。回転子端板13は切削等による局所的な質量軽減により、回転子10の静バランス、動バランスの調整部品としての機能を有する。固定子26は固定子コア27に電機子巻線28を巻回して製作され、電機子巻線28に制御された電流・電圧を通電して固定子コア27に回転磁界を発生させ、回転子10に回転動力を与える機能を有する。
【0020】
軸受16、21の外輪は、軸受収容部31に対して、すきまばめ、もしくは中間ばめにて嵌合される。本実施例では軸受16、21は背面合わせの2列組合せアンギュラ玉軸受であり、回転軸線Ax方向に2列並んで構成される。しかしながら、軸受の種類や、配置数は任意であり、単列もしくは複数列の任意の転がり軸受や、その他の軸受手段を適用することも可能である。2列の軸受16、21の間には外輪間座55と内輪間座7bが配置される。外輪間座55は軸受収容部31と嵌め合い、軸方向の両面において軸受16及び軸受21の外輪と接触する。内輪間座7bは回転軸8と嵌め合い、軸方向の両面において軸受16及び軸受21の内輪と接触する。また、軸受16の外輪は外輪押さえ35により回転子10に近い側(後方側)から軸方向前方側に押圧され、軸受21の内輪は内輪押さえ7aにより軸方向の回転子10に近い側(後方側)に押圧される。このように軸受16、21は所定の予圧により保持された状態にて回転電機1が運転されることにより、摩擦損失や振動・騒音を低減でき、疲れ寿命を長くすることができる。
【0021】
エンドブラケット30には冷却媒体流路40が形成される。冷却媒体流路40は、供給口41からノズル50及び外輪間座55に至るもので、径方向に延在する導入流路42と、導入流路42の回転軸線Axに近い端部から軸受収容部31内を回転軸線Ax方向に向けて延在する軸方向流路43と、軸方向流路43の途中で下方向に分岐する第2の流路45を含んで形成される。ここで、「軸方向」とは、回転軸線Axと完全に平行であることが要求されるのはなく、ある程度の範囲を許容するもので、平行状態からずれるような流路であっても良い。軸方向流路43の回転子10に近い端部には、冷却媒体の第一の噴射部となるノズル50が設けられる。つまり、ノズル50は、軸受ホルダの長手方向(回転軸線Ax方向)の端面に設けられる。
【0022】
第2の流路45の下流側には、冷却媒体の第二の噴射部となる外輪間座55が設けられる。ここで、軸方向流路43は略円筒形の軸受収容部31の周方向に見て上側部分に1か所だけ配置される。その周方向の位置は、
図2のように回転軸線Ax方向視においてI-I断面と、IV-IV断面の交差する点付近とするのが好ましい。このように配置することで、エンドブラケット30の上端に形成される供給口41から軸方向流路43に至る経路、即ち導入流路42を中心軸線Axを中心とした径方向上に、最短距離で配置できる。
【0023】
回転電機1の外部から温度が調整された冷却媒体(図示せず)が、供給口41へ所定の圧力で圧送される。供給口41を介して圧送される冷却媒体の一部は、導入流路42、軸方向流路43からノズル50に至り、ノズル50から噴射され、回転子10の回転軸8と直交する端面、ここでは回転子端板13に到達する。また、圧送されるの冷却媒体の残りは、軸方向流路43から分岐して第二の噴射部となる外輪間座55に到達し、外輪間座55から噴射されることにより軸受16、21に到達して排熱の一手段とされる。このようにハウジング2の外部から冷却用の媒体(図示せず)が主に2つの部位(回転子10、軸受16、21)に供給される。その後、軸受収容部31の径方向内側に残留した冷却媒体は、軸受16、21の間に設けられた外輪間座55の貫通孔58及び第一の貫通孔46と、第一の貫通孔46に対して軸方向において回転電機1の外側に設けられた第二の貫通孔47から重力および吸引ポンプ91による負圧などによりハウジング2の鉛直方向下側へ誘導され、排出口4、排出口5(
図4参照)からハウジング2の外へ排出される。本実施例では、冷却媒体として潤滑油を用いることを想定しているが、潤滑剤を添加したHFC等、油以外の冷却媒体も適用できる。
【0024】
所定の部位を冷却した後に、高温になった冷却媒体は、重力により胴体部3の内側底面付近に移動し、排出口4から所定の負圧で吸引される。この冷却媒体の循環回路を構成するために、回転電機1には、外部冷却媒体回路90が接続される。外部冷却媒体回路90は、吸引ポンプ91により、排出口4、5(後述の
図4参照)から回転電機1内部の冷却媒体を吸引し、冷却媒体用のタンク92に一時貯蔵する。タンク92に貯蔵された冷却媒体は、ポンプ95により所定の圧力で吸い出され、フィルター93にて夾雑物を除去した後に熱交換器94に送出される。熱交換器94では、外部の空気との熱交換によって冷却媒体を所定の低い温度に調整し、その後に冷却媒体は配管を通って再び供給口41、71(後述の
図4参照)に供給される。以上により、冷却媒体が回転電機1の内部空間内に供給され、所定の冷却対象部位を冷却する。
【0025】
図4は、回転電機1の後半部分の縦断面図(
図2のI-I部に相当する断面)である。回転電機1の後半部分は、基本的に前半分と対称形状に構成すると良いが、軸受66の形状や数、軸受収容部61の形状等を変えて構成することも可能である。ハウジング2の胴体部3の後側開口3bは、後側のエンドブラケット60にて閉鎖される。回転電機1の後ろ側には回転軸8が貫通しないため、エンドブラケット60には回転軸線Ax方向に貫通する貫通孔は形成されない。エンドブラケット60の内側の回転軸近傍には、回転軸線Ax方向前方側に突き出した円筒状の軸受収容部61が形成され、内側に軸受66を保持する。軸受収容部61が、本発明の「後側の軸受ホルダ」に相当する。つまり、本実施例では回転子10の前側と後側にそれぞれ軸受ホルダが設けられる。ここでは軸受収容部61にて保持される軸受66の数が一つであり、円筒ころ軸受が使用される。軸受収容部61の回転軸線Ax方向の長さは、軸受66の数が1つであるので、
図3で示した軸受収容部31の長さよりも短くなっている。軸受66の外輪69は、軸受収容部61に対して、すきまばめ、もしくは中間ばめにて嵌合される。
【0026】
前側のエンドブラケット30(
図3参照)と同様に、エンドブラケット60内にも冷却媒体流路70が形成される。冷却媒体流路70は、供給口71から径方向に延在する導入流路72と、導入流路72の回転軸線Axに近い端部から回転軸線Ax方向前方に向けて延在する軸方向流路73と、軸方向流路73の途中で分岐する第二の流路75を含んで形成される。軸方向流路73は略円筒形の軸受収容部61の周方向に見て最上部の1か所だけに配置される。軸方向流路73の回転子10に近い端部には、冷却媒体の第一の噴射部となるノズル80が設けられる。第二の流路75の下流側には、冷却媒体の第二の噴射部となる外輪間座85が設けられる。外輪間座85は、エンドブラケット60の壁面と軸受66の外輪の後方側との間を所定の距離に保つための機能を有すると共に、冷却媒体を所定の方向に噴射するためのノズルとしての機能も有する。軸受66の外輪69の前方側は外輪押され65によって保持される。
【0027】
ノズル80から前方に向けて噴射される冷却媒体は、回転子端板14に到達する。回転子端板14に到達し、回転子端板14から熱を奪った冷却媒体は、重力によって胴体部3の内側底面付近に落下する。また、詳細は
図7にて後述するが、第二の噴射部となる外輪間座85から噴射された冷却媒体は軸受66に到達する。軸受66の後側の外輪間座85の下側には貫通孔88が形成され、貫通孔88が軸受収容部61に形成された貫通孔76と連通することにより、軸受66から熱を奪った余剰の冷却媒体が胴体部3の内側底面に落下する。このようにハウジング2の外部から冷却用の媒体が供給されることにより、回転子10や軸受66付近の排熱除去の一手段とされる。ハウジング2の内側底部に溜まった冷却媒体は、胴体部3の下側に形成された排出口5を介して吸引ポンプ91により所定の負圧で吸引され、冷却媒体のタンク92(
図3参照)に戻る。
【0028】
図5は、
図3に示す回転電機1の冷却媒体流路40の部分拡大図である。冷却媒体流路40はエンドブラケット30の回転電機1の外側に面する端面に開口した供給口41(
図3参照)から、回転子10の近傍、及び、冷却対象の軸受16、21まで至る流路である。供給口41(
図3参照)から回転電機1内部に向かって圧送された冷却媒体は、F1のように流れる。尚、本実施例では供給口41がエンドブラケット30の径方向端面における鉛直方向端部(上端)に開口しているが、冷却媒体は圧送されるため、径方向端面のどこに開口していても良い。冷却媒体流路40は、導入流路42にて径方向外側から内側まで延在し、接続点43aにて軸方向流路43に接続され、冷却媒体はF2のように流れる。導入流路42と軸方向流路43の断面の形状と断面積の大きさは同一にすると良い。これら2つの流路42、43は、ドリルによる穿孔加工で容易に形成できる。
【0029】
軸方向流路43の途中の分岐点43bにおいて流れF6のように下向きに向かう第2の流路45が分岐する。分岐点43bより下流側の軸方向流路43は、F3の流れの第一の流路としてノズル50まで接続される。ノズル50は、先端の開口が細く絞り込まれた形状とされ、流れF3の断面を絞ることで早い速度の流れF4にて、冷却媒体を回転子端板13に噴射する。一方、分岐点43bより下流側の第2の流路45への冷却媒体の流れF6は、ノズルの機能を兼ねる外輪間座55から流れF7のように流れて第一の軸受16に到達し、流れF8のように流れて第二の軸受21に到達する。
【0030】
本実施例ではエンドブラケット30に軸受収容部31を形成し、その軸受収容部31内に冷却媒体を供給するための軸方向流路43を設けた。さらに、この軸方向流路43を分岐点43bにて第一の流路44と第2の流路45に分岐するようにしたので、1本の流路(軸方向流路43)により、複数個所の冷却対象への冷却媒体の供給が可能となった。しかも、軸方向流路43は軸受収容部31内に形成されるので、軸受収容部31の外側に別の管を配置する必要が無い。尚、回転電機1から軸方向流路43へ冷却媒体を供給する流路(導入流路42)を設ける位置は任意である。本実施例では、エンドブラケット30の径方向外側から内側へ穿孔加工によって形成できることから、径方向に向けて導入流路42を形成したが、導入流路42を別の管路として配置することも可能である。例えば、回転電機1外側の軸方向端面(接続点43a)の部分から最短距離となるエンドブラケット30の外表面(矢印30a付近)に接続するようにしても良い。
【0031】
第一の軸受16は、外輪18と内輪19の間に多数のボール等の転動体17を有するアンギュラ玉軸受を用いることができる。また、第二の軸受21は、外輪23と内輪24の間に多数のボール等の転動体22を有するアンギュラ玉軸受を用いることができる。ここでは、外輪18と外輪23の接触角の配置及び向きが逆向きになるように配置している。第一の軸受16の外輪18と、第二の軸受21の外輪23の間に設けられる外輪間座55は、外輪18、23の間を一定に保つための機能だけでなく、第二の流路を通る矢印F6で示す冷却媒体の第二の噴射部(ノズル)としての機能も果たす。第一の軸受16の内輪19と、第二の軸受21の内輪24の間には、円筒状の内輪間座7bが設けられる。また、第二の軸受21の内輪24の前方側は、円筒状の内輪押さえ7aによって軸受21の軸方向前方側への移動を制限する。
【0032】
本実施例において第一の噴射部50からの噴射の狙い位置は、軸方向流路43による第一の流路の延長線上と回転子10が初めて衝突する位置であり、回転子端板13が位置する回転子10の側面である。回転子端板13が回転子コア11よりも小径、もしくは回転子端板13が設けられない場合には、回転子コア11もしくは永久磁石12が噴射の狙い位置であっても良い。第二の噴射部55の狙い位置は、軸受16の内輪19もしくは転動体17であり、さらに、軸受21の内輪24もしくは転動体22である。ただし、第二の噴射部55の狙い位置は、外輪18及び23であっても良い。
【0033】
第一の噴射部50は軸線方向の流速成分を持つように設定され、矢印F4に示すように冷却媒体は回転子10の回転軸Axに対して略平行方向に噴射され、垂直な面(回転子端板13)にかかる。その後、矢印F5に示すように冷却媒体は回転する回転子10の遠心力により周方向に回転しつつも主に径方向外側へ伝っていく。第一の噴射部50の矢印F4で示す噴射の狙い位置は、回転軸線Axから半径Roである。この回転軸8の中心軸(回転軸)Axとの距離は、回転子コア11とはめあう軸方向位置における回転軸8の外半径Rsよりも大きく、回転子コア11の外半径Rrよりも小さき地点であって、回転子コア11の前側の端面の占める径方向範囲のほぼ中央(=(Rs+Rr)/2)の位置よりも小さくなるようにする。このように矢印F4で示す噴射の狙い位置は、回転子コアの中央付近よりも回転軸8に近い内側領域内に設定される。
【0034】
回転子端板13に付着した冷却媒体は、回転子10の主たる発熱源である回転子コア11および永久磁石12の熱を、回転子端板13を介して奪う。冷却媒体は矢印F4のように回転子端板14の外周面に達した後、遠心力により回転しながら矢印F5の径方向方向に分散するように飛散し、電機子巻線28の軸方向の端部へかかり、コイル28への通電により発生した熱を冷却する。冷却媒体は、その後重力および吸引ポンプ91による負圧などによりハウジング2の鉛直方向下側へ誘導され、排出口4(
図3参照)、排出口5(
図4参照)からハウジング2の外へ排出される。
【0035】
第二の噴射部である外輪間座55から噴射された冷却媒体の一部は、軸受16にかかり、転動体17および内輪19の回転により周方向に攪拌され、軸受16全体に亘って転動体17と内輪19および外輪18との間に潤滑膜を形成して潤滑する。同様に、外輪間座55から噴射された冷却媒体の残りは軸受21にかかり、転動体22および内輪24の回転により周方向に攪拌され、軸受21全体に亘って転動体22と内輪24および外輪23との間に潤滑膜を形成して潤滑する。このように、冷却媒体流路40によって、温度調整された冷却媒体を継続噴射することにより、機械損失により軸受16、21に発生する熱を冷却することができる。
【0036】
図6は、
図5に示す回転電機1の軸受収容部31付近のさらなる拡大図である。
図6では2つの軸受16、21の図示を省略している。導入流路42の長さ、即ち供給口41(
図3参照)から接続点43aまでの長さはHである。接続点43aから軸線Ax方向に延在する軸方向流路43の長さはL1である。また、軸方向流路43の先端には、ノズル50によって長さL2分の流路が追加される。従って、接続点43aから噴射のための開口53aまでの長さは、L(=L1+L2)となる。長さL1は、長さL2よりも大きくすると好ましく、L1>L2の関係で構成することにより、ノズル50を小形にでき、製作性および組立性を改善できる。
【0037】
ノズル50は、エンドブラケット30とは別部品で形成されたもので、円柱状の部材に、軸方向流路43の断面と同径の太径部51と、断面を小さく形成された細径部53と、太径部51から細径部53に至る部位を漏斗状に絞り込むように形成されたテーパー部52をそれぞれ形成したものである。ここで細径部53の先端の開口53aの形状は、円形である。ノズル50の外形部の一部には雄ネジ54が形成され、軸受収容部31の雌ネジが形成された取付孔48にねじ込み接続され、シールテープやシールワッシャ等で冷却媒体が漏れないように配慮される。外輪押さえ35は略円環状の部位35aと、円環部の内周側端部から前方側に延在する胴体部35bが一体に製造されたような形状とされる。尚、
図6では図示していないが、ノズル50を軸受収容部31に螺合させる場合に、外輪押さえ35も共締めするようにして、外輪押さえ35も固定するように構成しても良い。
【0038】
第二の噴射部たる外輪間座55には、第2の流路45に連通する貫通孔56が形成される。貫通孔56の下側端面は閉鎖されており、下側端面付近から後方側に貫通する第一の噴射孔57aと、前方側に貫通する第2の噴射孔57bが形成される。噴射孔57aからは矢印F7のように斜め下側に向けて、即ち、第一の軸受16の内輪19に向けて冷却媒体が噴射され、噴射孔57bからは矢印F7のように斜め前側に向けて、即ち、第二の軸受21の内輪24に向けて冷却媒体が噴射される。噴射孔57a、57bの断面の大きさは、貫通孔56の断面の大きさに比べて十分小さくし、噴射孔57a、57bの断面積の合計が、第2の流路45の断面積よりも小さくなるように設定すると良い。
【0039】
図7は、
図4に示す回転電機1の冷却媒体流路70の部分拡大図である。導入流路72は、即ち供給口71(
図4参照)から接続点73aまでの鉛直方向に延在するように伸び、接続点73aから軸線Ax方向前方に延在する軸方向流路73が形成される。軸方向流路73の先端には、ノズル80が接続される。また、軸方向流路73の途中の分岐点73bから下方向に分岐する第二の流路75が形成される。第二の流路75の下流側には、冷却媒体の第二の噴射部となる外輪間座85が設けられる。ここで、軸方向流路73は略円筒形の軸受収容部61の周方向に見て上側部分に1つだけ配置される。その周方向の配置は、
図2のように回転軸線Ax方向視においてI-I断面と、IV-IV断面の交差する点付近とするのが好ましい。
【0040】
ノズル80は、軸受収容部61とは別部品で形成されたもので、円柱状の部材に、軸方向流路73の断面と同径の太径部81と、断面を小さく形成された細径部83と、太径部81から細径部83に至る部位を漏斗状に絞り込むように形成されたテーパー部82をそれぞれ形成したものである。ここで細径部83の開口83aの形状は、円形である。ノズル80の外形部の一部には雄ネジ部(図示せず)が形成され、軸受収容部61の雌ネジが形成された取付孔76にねじ込み接続され、シールテープやシールワッシャ等で冷却媒体が漏れないように配慮される。尚、
図7では図示していないが、ノズル80を軸受収容部31に螺合させる際に、外輪押さえ65も共締めするようにしても良い。
【0041】
外輪押さえ65は略円環状の部位65aと、内周側端部から前方側に延在する円筒部65bにより形成される。外輪間座85は、第2のノズルを形成するものであり、第二の流路75に連結される穴部86を有し、穴部86の底面付近から細長い貫通孔87が接続される。貫通孔87の直径は、穴部86の断面の大きさに対して十分小さく形成される。
【0042】
供給口71(
図4参照)から導入流路72に流入する冷却媒体はF11のように径方向外側から内側に向かって流れ、分岐点73bにてF12のように軸方向流路73に向きを変えて流れ、流れF13からF14のようにノズル80から後側の回転子端板14の側面に噴射される。導入流路72の分岐点73bからは、F15に示す第二の流路75が分岐されるので、第2のノズルである外輪間座85内に到達した冷却媒体は、矢印F16の方向に軸受66の外輪67、転動体68に対して噴射される。冷却対象の軸受66付近から熱を奪って高温になった冷却媒体は、ハウジング2の内側において重力により底部に落下し、排出口5(
図4参照)から所定の負圧で回転電機1の外へ排出される。
【0043】
図8は第一の流路44と第二の流路45の流路断面の比較図である。第一の噴射部であるノズル50の流路断面積Sr2と第二の噴射部であるノズル55の流路断面積Sb2はそれぞれ、分岐点43b近傍の第一の流路44の流路断面積Sr1、第二の流路45の流路断面積Sb1よりも小さく設けられる。また、第二の噴射部のノズル55の流路断面積Sb2は、第一の噴射部のノズル50の流路断面積Sr2よりも小さくなるように設定される。
【0044】
次に、本実施例の作用効果および原理について説明する。冷却媒体流路40は、エンドブラケット30に加工された単一の供給口41から冷却媒体を圧送し、分岐部43bにおいて回転子端板14へ噴射する第一の流路44と、軸受16、21へ噴射する第二の流路45に分岐するように形成される。これにより、追加の配管部材を回転電機1内部に設置することなく回転子端板14及び軸受16、21に冷却媒体を供給でき、装置の簡素化、低コスト化が可能となり、分解が容易になってメンテナンス性に優れる。
【0045】
導入流路42に接続される軸方向流路43は、分岐点43bから第一の流路44として第一の噴射部(ノズル50)に至る流路を形成する。つまり、第一の流路44は、軸方向流路43の分岐点43bよりも下流側の一部を指している。第一の流路44を形成したことで、冷却媒体を回転子端板14の近傍まで容易に取り廻すことができ、回転子10の端面に冷却媒体を当てることができるので、回転子10の周囲を連れ回る流体層に阻まれずに回転子10を効率良く冷却することができる。さらに、この軸方向流路43による流路は、軸受収容部31の軸受16、21の外径側を軸方向に通るので、軸受16の外輪18、軸受21の外輪23から軸受収容部31やエンドブラケット30へ伝達される熱を冷却する効果もある。
【0046】
このように、本実施例の冷却機構により、軸受16、21の温度を低下させて軸受すきまを適正に保ち、機械損失の低減と疲れ寿命の改善を実現できる。また、複雑な配管構成を取ることなく、分岐点43bから下方向(径方向)に延在する第二の流路45を形成し、それに取り付けた簡易な構造の外輪間座55を用いて軸受16、21に対する冷却媒体の噴射機構を実現した。この噴射機構は、軸受16、21の近傍まで容易に取り廻すことができる。これにより、冷却媒体の噴射流速の減衰を小さく抑え、拡散を防ぐことができ、軸受16、21の周囲を連れ回る流体層に阻まれずに冷却媒体を当てて確実に冷却することができる。
【0047】
第一の噴射部50は軸方向の流速成分を持つ向きに設けられ、回転子10の回転軸Axに対して略垂直な面にかかる。この時、冷却媒体が回転子10にかかった後に摩擦力および遠心力により周方向と径方向へ伝って拡散し、広い面積にわたって冷却媒体が吸着する。例えば、回転軸8の円筒面に対して径方向内向きに冷却媒体を噴射した場合は、冷却媒体は回転子10にかかった後、周方向にのみ伝って飛散するため、冷却媒体の吸着面積は限定される。以上より、本実施例は冷却性能を向上させることができる。
【0048】
第一の噴射部50は回転子端板14に冷却媒体をかけ、回転子端板14は軸方向において回転子コア11および永久磁石12と接触して設けられる。回転子10において、永久磁石12は渦電流損失により発熱し、高温時には熱減磁による回転電機1の性能劣化を招く。回転子コア11は渦電流損失およびヒステリシス損失により発熱し、高温時には熱応力で損失の更なる増加、回転軸8へ熱伝達されて軸方向に熱膨張して軸受16、21の予圧異常、内輪19へ熱伝達し軸受16、21の運転すきま減少による機械損失の増大と疲れ寿命の短縮が発生して回転電機1の性能劣化を招く。回転子端板14に冷却媒体をかけることにより、回転子端板14を介して回転子コア11および永久磁石12を冷却することができ、さらにそれぞれは軸方向において接触して設けられるため、効率よく冷却でき、結果として上述の性能劣化を防ぎ、回転電機1の性能を改善できる。尚、回転子端板14が第一の噴射部50と回転子コア11の間に設けられない場合(回転子端板14が、第一の噴射部50の中心線の延長線よりも小径、もしくは無い場合も同様)においても、回転子コア11もしくは永久磁石12に冷却媒体が直接かかるため、同等以上の冷却効果が得られる。
【0049】
第一の噴射部50の流路断面積Sr2と第二の噴射部55の流路断面積Sb2は、それぞれ、分岐点43b近傍の第一の流路の流路断面積Sr1、第二の流路45の流路断面積Sb1よりも小さく設けられる。これにより、冷却媒体を軸受16、21および回転子10に対して高速かつ大きく拡散させずに噴射することができ、連れ回る周囲の流体層を貫いて確実に冷却媒体を当てて冷却することができる。
【0050】
第二の噴射部55の流路断面積Sb2は、第一の噴射部50の流路断面積Sr2よりも小さくなるように設けられる。
図9は回転子10と軸受21の連れ回る流体層の厚みの比較図である。軸受21は転動体22が周方向において等間隔に配置されて回転している。そのため、周囲の流体は転動体22により攪拌され、軸方向における転動体22の厚さと同等の厚さWbの高速回転する流体層が形成される。一方で回転子端板14の軸方向端面は、表面粗さおよび周囲の流体の粘度に応じてごく表層の厚さWrの流体層のみが高速回転している。WbはWrに対して非常に大きいため、流体層に阻まれないために必要となる噴射速度は軸受21の方が高い。冷却媒体の狙い位置において、回転子10の方が軸受21よりも外径側に位置し、周速が大きい場合も必要な噴射速度は軸受21の方が高い。このため、第二の噴射部55の流路断面積Sb2は、第一の噴射部50の流路断面積Sr2よりも小さくなるように設けることで、確実に冷却媒体を回転子10に当てつつ、軸受16および21にかける冷却媒体の量を多くすることができ、冷却性能を向上させることができる。第一の噴射部50と第二の噴射部55の流路断面形状を円形となるように設けられる。これにより、冷却媒体流路40の圧力損失を小さくすることができ、ポンプ95の出力を低減でき、安価かつ小形な外部冷却媒体回路90を構成できる。
【0051】
以上、実施例を用いて回転電機の冷却構造を説明した。
図8及び
図9で説明した特徴は、
図4及び
図7で示す後方側の冷却媒体流路70にも同様に適用される。本実施例は埋込磁石同期モータを想定しているが、他の種類のモータ、ジェネレータにおいても本開示と同じ構成で同様の効果が得られる。表面磁石同期モータの場合は、磁石の径方向の位置・形状のみが異なるため、同じ原理で同様の効果が得られる。誘導モータおよび巻線界磁モータの場合は界磁源が永久磁石でなく回転子導体であり、運転中は界磁電流を通電してオームの法則に則った銅損が発生して発熱する。高温になった場合は回転子導体の抵抗率増大による銅損の更なる増加で性能が劣化するため、同じ構成を適用することで性能劣化を防ぐことができる。回転子に界磁源を持たず、最低限の構成として回転軸および回転子コアのみを有すシンクロナスリラクタンスモータ、スイッチトリラクタンスモータなどに関しても、上述した回転子コアの発熱による性能劣化が生じるため、同じ冷却構成で同様の効果が得られる。以上より、回転子に発熱要因を持つ任意のモータ、ジェネレータ等の回転電機に関して本構成で同様の効果が得られる。