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特開2025-13285化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法
<図1A-1C>
  • 特開-化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法 図1A-1C
  • 特開-化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法 図2A
  • 特開-化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法 図2B
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013285
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250117BHJP
   B24B 37/00 20120101ALI20250117BHJP
   C09K 3/14 20060101ALI20250117BHJP
   C09G 1/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
H01L21/304 622D
B24B37/00 H
C09K3/14 550D
C09K3/14 550Z
C09G1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024111762
(22)【出願日】2024-07-11
(31)【優先権主張番号】18/351,031
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.iPhone
(71)【出願人】
【識別番号】504089426
【氏名又は名称】デュポン・エレクトロニック・マテリアルズ・ホールディング・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】DuPont Electronic Materials Holding, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】イ・グォ
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・モズリー
【テーマコード(参考)】
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C158AA07
3C158CB01
3C158CB03
3C158CB10
3C158DA02
3C158DA12
3C158DA17
3C158EA11
3C158EB01
3C158ED03
3C158ED04
3C158ED05
3C158ED10
3C158ED16
3C158ED24
3C158ED26
5F057AA28
5F057BA15
5F057BB16
5F057CA12
5F057DA03
5F057EA01
5F057EA07
5F057EA17
5F057EA18
5F057EA26
5F057EA28
5F057EA29
5F057EA33
(57)【要約】
【課題】 化学機械研磨組成物及び研磨パッド溝閉塞の防止方法を提供する。
【解決手段】 半導体基板を研磨するための水性系化学機械研磨組成物は、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材と、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコールと、電解質と、7を超えるpHとを含み、半導体基板を研磨して基板を平坦化する方法。水性系化学機械研磨組成物及び方法は、半導体基板の化学機械研磨中の研磨パッド溝閉塞を抑制する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、及び7を超えるpHを含む、化学機械研磨組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコールが80~89%加水分解されている、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールが87~89%加水分解されている、請求項2に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項4】
80%~90%以下加水分解されている前記ポリビニルアルコールの重量平均分子量が9000g/モル以上である、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項5】
前記重量平均分子量が12,000~150,000g/モルである、請求項4に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項6】
80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコールの量が0.001~0.01重量%である、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項7】
前記化学機械研磨組成物が4mS/cm以上の伝導率を有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項8】
前記pHが8~12である、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項9】
前記二峰性分布の細長いコロイド状シリカ粒子が、50~100nmの第1の粒径最大値を有する第1のモード及び100~200nmの第2の粒径最大値を有する第2のモードを有する、請求項1に記載の化学機械研磨組成物。
【請求項10】
酸化ケイ素を含む基板を提供することと;水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、任意選択的に殺生物剤、任意選択的に界面活性剤、任意選択的に、pH調整剤、及び7を超えるpHからなる化学機械研磨組成物を提供することと;
研磨面及び溝を有する化学機械研磨パッドを提供することと;前記化学機械研磨パッドの研磨面と前記基板との間の界面で20~35kPaの下向きの力で動的接触を生み出すことと;前記化学機械研磨パッドと前記基板との間の前記界面で又は前記界面近くで、前記化学機械研磨組成物を前記化学機械研磨パッド上へ分配することと
を含む、基板の化学機械研磨方法であって、前記酸化ケイ素のいくらかが前記基板から除去される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学機械研磨組成物並びに化学機械研磨及び平坦化中の研磨パッド溝閉塞の防止方法に向けられる。より具体的には、本発明は、化学機械研磨組成物並びに化学機械研磨及び平坦化中の研磨パッド溝閉塞の防止方法に向けられ、ここで、化学機械研磨組成物は、水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、7を超えるpH及び良好な伝導率を含む。
【背景技術】
【0002】
集積回路及び他の電子デバイスの製造において、導電性、半導体及び誘電材料の多層が半導体ウェハーの表面上に堆積される又は表面から除去される。導電性、半導体、及び誘電材料の薄層は、様々な堆積技術によって堆積させることができる。近代処理における一般的な堆積技術としては、スパッタリングとしても知られる、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、プラズマ支援化学蒸着(PECVD)、及び電気化学めっき(ECP)が挙げられる。
【0003】
材料の層が結果として堆積される及び除去されるので、ウェハーの最上表面は非平面になる。その後の半導体処理(例えば、金属化)は、ウェハーが平面を有することを必要とするので、ウェハーは、平坦化される必要がある。平坦化は、望ましくない表面地形及び表面欠陥、例えば粗い表面、造粒物、結晶格子損傷、引っ掻き傷、及び汚染された層又は材料などを除去するのに有用である。
【0004】
化学機械平坦化、又は化学機械研磨(CMP)は、半導体ウェハーなどの、基板を平坦化するために用いられる一般的な技術である。従来のCMPでは、ウェハーは、キャリアアセンブリ上に取り付けられ、CMP装置において研磨パッドと接触して配置される。キャリアアセンブリは、制御可能な圧力をウェハーに提供し、ウェハーを研磨パッドに押し付ける。パッドは、外部駆動力によってウェハーに対して動かされる(例えば回転させられる)。それと同時に、研磨組成物(「スラリー」)又は他の研磨液が、ウェハーと研磨パッドとの間に提供される。こうして、ウェハー表面は、パッド表面及びスラリーの化学作用及び機械作用によって研磨され、平坦にされる。
【0005】
CMPに関与する多くの複雑性が存在する。各タイプの材料は、独特の研磨組成物、適切に設計された研磨パッド、研磨及びCMP後清掃の両方のための最適化プロセス設定並びに特有の材料の研磨の適用のために個別に調整されなければならない他の因子を必要とする。
【0006】
様々な研磨材粒子を、研磨又は平坦化プロセスで使用することができる。様々なサイズのコロイド状シリカ粒子が、多くの場合、半導体ウェハーの研磨及び平坦化のための選り抜きの研磨材である。粒子は、サイズに加えて様々な形状を有することができる。円形の、楕円形の、細長い又は、小塊形状を有するコロイド状シリカ粒子が一般的である。細長いコロイド状シリカ粒子は、他の形状のシリカ粒子に比べてそれらの高められた研磨効率のために、アルカリ性ILDスラリーでの使用にとって人気のある選択になりつつある。
【0007】
半導体ウェハーを研磨する及び平坦化するためのある種の有数のスラリーは、多くの場合、他の形状のコロイド状シリカ粒子と組み合わせて、細長いコロイド状シリカ粒子を含む。しかしながら、そのようなスラリーと関連した主な問題は、広範な研磨期間後に幾つかのタイプの市販研磨パッドのパッド溝閉塞を引き起こし得ることである。そのようなパッド溝は、典型的には形状が環状である。パッド溝閉塞の結果は、研磨一様性性能の実質的な除去である。これは、研磨中のスラリー輸送の局所閉塞が原因の半導体ウェハー表面上の研磨一様性の徐々の変化によって示される。
【0008】
図1A~Cは、水及び約12重量%Optiplane(商標)1735研磨材コロイド状シリカ粒子からなる水性化学機械研磨スラリーで半導体ウェハーを研磨した後のVisionPad(商標)5000ポリウレタン研磨パッドの研磨面(中心-縁)の写真である。コロイド状シリカ粒子は、球形コロイド状シリカ粒子と、細長い及び結節性粒子との混合物を含む。研磨スラリーのpHは、約10.7であった。環状溝は、8mmの幅、2mmの深さ、340mmの外縁半径及び335mmの内縁半径を有した。研磨は、Applied Materials Mirra(登録商標)研磨装置で、スラリー流量:100mL/分、約34.5kPaの下向きの力、圧盤速度108rpm及び102rpmのキャリア速度で行われた。
【0009】
図1A~Cは、図1Aに示されるように、パッドの中心近くから進行するパッドベースの研磨面内にセットされた環状溝の閉塞の程度を例示し、図1Aは、溝の閉塞はわずかに減少して、図1Bに示されるように、中心より遠位のセクションに向かう、及び次いで溝の閉塞が実質的にゼロの、図1Cに示されるように、パッドの周辺に向かう溝の実質的な閉塞を示す。これは、研磨一様性の徐々の変化を例示するものである。環状溝が、より多く閉塞されればされるほど、半導体ウェハー表面の平坦化は、一様性が少なくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故に、化学機械研磨スラリー及び研磨パッド溝閉塞を抑制する並びに同時に良好な研磨及び平坦化性能を維持するための方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、及び7を超えるpHを含む、化学機械研磨組成物を提供する。
【0012】
本発明は、更に、水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%~89%加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、pH調整剤、及び8~12のpHを含む化学機械研磨組成物を提供する。
【0013】
本発明は、その上、水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、87%~89%加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、pH調整剤、及び9~11のpHを含む化学機械研磨組成物を提供する。
【0014】
本発明はまた、酸化ケイ素を含む、基板を提供することと;水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、90%未満加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、及び7を超えるpHを含む化学機械研磨組成物を提供することと;
研磨面及び溝を有する化学機械研磨パッドを提供することと;化学機械研磨パッドの研磨面と基板との間の界面で20~100kPaの下向きの力で動的接触を生み出すことと;化学機械研磨パッドと基板との間の界面で又は界面近くで、化学機械研磨組成物を化学機械研磨パッド上へ分配することとを含む、基板の化学機械研磨方法であって、酸化ケイ素のいくらかが基板から除去される方法を提供する。
【0015】
意外にも、水、細長いコロイド状シリカ粒子を含む二峰性分布のコロイド状シリカ粒子を有する研磨材、80%加水分解された~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、及び7を超えるpHを含む化学機械研磨組成物、及び溝を含有する研磨パッドを使った二酸化ケイ素を含有する基板の研磨方法は、化学機械研磨中に研磨パッドの溝の望ましくない閉塞を抑制する。溝の閉塞の抑制は、スラリー輸送の局所遮断が原因の半導体ウェハー表面上の研磨一様性の徐々の変化を実質的に防ぎ、こうして研磨及び平坦化性能の改善を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A】従来の研磨スラリーでの環状溝閉塞を例示する研磨後のVP5000ポリウレタン研磨パッドの研磨面の中心近くのセクションのNikon SMZ 1500実体顕微鏡で撮られた写真である。
図1B】従来の研磨スラリーでの環状溝閉塞を例示する研磨後のIC1000(商標)ポリウレタン研磨パッドの研磨面の中心より遠位のセクションのNikon SMZ 1500実体顕微鏡で撮られた写真である。
図1C】研磨スラリーを実質的に含まない環状溝を例示する研磨後のIC1000(商標)ポリウレタン研磨パッドの研磨面の周辺上のセクションのNikon SMZ 1500実体顕微鏡で撮られた写真である。
図2A】研磨スラリーを含まない複数の環状溝を例示する本発明のスラリーで研磨後のVP5000ポリウレタンパッドの研磨面のiPhoneで撮られた写真である。
図2B】研磨スラリーを含まない複数の環状溝を例示する本発明のスラリーで研磨後のVP5000ポリウレタン研磨パッドの研磨面のセクションのNikon SMZ 1500実体顕微鏡で撮られた写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書の全体にわたって使用される場合、以下の略語は、文脈が別段に指示しない限り、以下の意味を有する:L=リットル;mL=ミリリットル;kPa=キロパスカル;Å=オングストローム;nm=ナノメートル;cm=センチメートル;mm=ミリメートル;g=グラム;min=分;rpm=1分当たりの回転;重量%=重量パーセント;RR=除去速度;PVA=ポリビニルアルコール;PS=本発明の研磨スラリー;PC=比較研磨スラリー;Mw=重量平均分子量 g/モル;k=1000;mS=ミリジーメンス;「~」=約;及びVP5000=VisionPad(商標)5000ポリウレタン研磨パッド。
【0018】
「化学機械研磨」又は「CMP」という用語は、基板が化学力及び機械力のみによって研磨されるプロセスを指し、電気バイアスが基板に適用される電気化学-機械研磨(ECMP)とは区別される。「TEOS」という用語は、オルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)の分解から形成される酸化ケイ素を意味する。コロイド状シリカ研磨材粒子に関連して「細長い」という用語は、研磨材粒子がそれらの幅よりも大きい長さを有することを意味する。コロイド状シリカ粒子に関連して「球形」という用語は、研磨材粒子が、形状が丸みを帯びた又は円形であることを意味する。「二峰性分布」という用語は、頻度が各ピークの周りで最初は増加し、次いで減少し、ピークの高さが等しくない場合、より高い頂点若しくはピークが主要モードであり、より低いピークがマイナーモードであるように、値がその周りに群がる傾向がある2つの(2)ピーク又はモードを有するスコアのセットを意味する(コロイド状シリカ研磨材粒子については、それは、Y軸上の粒子の相対重量対X軸上のミクロン単位での粒子径としてのデカルト平面で表され得、ここで、X軸は、リニアーであるか又は好ましくはlogである)。「多峰性」という用語は、幾つかのモード、モダリティ、又は最大値を有する又は含むことを意味する。「単峰性」又は「一峰性」という用語は、分布が1つだけのピークを有することを意味する。「平均値」という用語は、第1のモードと第2のモードとの間に入る(第2のモードに近い)値を指し、相対的粒子重量対ミクロン単位の粒子径の全体デカルト平面グラフの平均値である。本明細書において使用されるような、「支配している」という用語は、圧倒的な影響を有する又は基板の化学機械研磨中に研磨材コロイド状シリカ粒子の二峰性粒子分布の最も重量なモードである研磨材コロイド状シリカ粒子の二峰性粒子分布のモードを意味する。「組成物」及び「スラリー」という用語は、本明細書の全体にわたって同じ意味で使用される。「ハロゲン化物」という用語は、塩化物、臭化物、フッ化物及びヨウ化物を意味する。「電解質」という用語は、それが水に溶解させられるときにイオン(電荷を有する粒子)に分裂する物質を意味する。「ジーメンス(S)」という用語は、電気伝導率の国際標準(SI)である。「1つの(a)」及び「1つの(an)」という用語は、単数及び複数の両方を指す。全ての百分率は、別段の記載がない限り、重量による。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計して100%になるように制約されることが論理的である場合を除いて、包含的であり、且ついかなる順序でも組み合わせ可能である。
【0019】
本発明の化学機械研磨組成物は、二峰性粒子分布を有する細長い及び球形コロイド状シリカ研磨材粒子を含む。好ましくは、使用されるコロイド状シリカは、沈澱シリカ及び凝集シリカの少なくとも1つを含有する。好ましくは、コロイド状シリカ研磨材粒子の二峰性粒子分布は、50~100nm、より好ましくは60~90nm、更に好ましくは70~90nm、最も好ましくは80~90nmの第1の平均粒径最大値を有する第1のモードを示す。好ましくは、細長いコロイド状シリカ研磨材粒子は、100~200nm、より好ましくは120~180nm、更に好ましくは130~170nm、更により好ましくは140~165nm、最も好ましくは140~150nmの第2の平均粒径最大値を有する第2のモードを示す。第1のモードは、球形粒子を反映しており、一方、第2のモードは、細長い粒子を示している。第2のモードは、二峰性粒子分布を支配している。
【0020】
好ましくは、二峰性粒子分布の平均値は、95~200nm、より好ましくは110~180nm、最も好ましくは135~165nmである。好ましくは、平均値は、第1のモードと第2のモードとの間に入る(第2のモードに近い)。
【0021】
本発明の化学機械研磨組成物は、好ましくは、5~30重量%のコロイド状研磨材シリカ粒子を含み、コロイド状研磨材シリカ粒子の50重量%以上は、細長いコロイド状研磨材シリカ粒子である。より好ましくは、本発明の化学機械研磨組成物は、10~30重量%のコロイド状研磨材シリカ粒子を含み、コロイド状研磨材シリカ粒子の50~95重量%は、細長い研磨材シリカ粒子であり、更により好ましくは、化学機械研磨組成物は、10~20重量%のコロイド状研磨材シリカ粒子を含み、その70~90重量%は、細長いコロイド状シリカ研磨材粒子である。
【0022】
本発明のコロイド状シリカ研磨材粒子は、好ましくは75~80nmの平均粒径を有するコロイド状シリカ研磨材粒子の第1の集団と、好ましくは110~140nmの平均粒径を有するコロイド状シリカ研磨材粒子の第2の集団との混合物である。
【0023】
二峰性分布の細長いコロイド状シリカ研磨材粒子を含む市販のコロイド状シリカ研磨材の例は、DuPontから入手可能な、Merck KgAA、Darmstadt、Germanyによって製造されるKlebosol(商標)1635コロイド状シリカである。
【0024】
本発明の化学機械研磨組成物は、ポリビニルアルコールを含む。ポリビニルアルコールは、当技術分野において公知の方法によりポリ酢酸ビニルの加水分解から形成される。好ましくは、ポリビニルアルコールの加水分解度は、80%~90%以下加水分解されており、より好ましくは、ポリビニルアルコールは、80~89%加水分解され、最も好ましくは、87~89%加水分解されている。加水分解度は、遊離のヒドロキシル基とアセチル化ヒドロキシル基との合計と比べてポリビニルアルコール上に存在する遊離のヒドロキシル基の量を指す。
【0025】
好ましくは、本発明の80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコールは、9000g/モル以上、より好ましくは10,000~200,000g/モル、更により好ましくは10,000~190,000g/モル、更に好ましくは12,000~150,000g/モル、最も好ましくは30,000~50,000g/モルの重量平均分子量を有する。
【0026】
好ましくは、ポリビニルアルコールは、0.001~0.05重量%、より好ましくは0.0025~0.01重量%最も好ましくは0.005~0.01重量%の量で本発明の化学機械研磨組成物中に含まれる。
【0027】
1種以上の電解質(無機又は有機)が、所望の伝導率を与えるために本発明の化学機械研磨組成物中に含まれる。好ましくは、本発明の化学機械研磨組成物の伝導率は、4mS/cm以上から、より好ましくは4~7mS/cm、最も好ましくは5~7mS/cmである。
【0028】
無機電解質としては、塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、水酸化ナトリウム及びカリウムなどの、アルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム及びカリウムなどの、アルカリ金属炭酸塩、重炭酸ナトリウムなどの、アルカリ金属重炭酸塩、リン酸カリウムなどの、リン酸塩、硝酸カリウムなどの、硝酸塩、硫酸カリウムなどの、硫酸塩、及び前述のものの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
有機電解質としては、塩化コリン、クエン酸及び酢酸などの、カルボン酸、塩化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化フェニルトリメチルアンモニウム、臭化フェニルトリメチルアンモニウム及び水酸化フェニルトリメチルアンモニウムなどの、第四級アンモニウム塩が挙げられるが、これらに限定されない。前述のものの混合物を、本発明の化学機械研磨組成物に含めることができる。
【0030】
無機電解質及び有機電解質は、所望の伝導率を得るのに十分な量で化学機械研磨組成物中に含まれる。好ましくは、無機及び有機電解質は、少なくとも0.01重量%以上、より好ましくは0.01~1重量%、更に好ましくは0.05~0.25重量%の量で含まれる。
【0031】
本発明の化学機械研磨方法で使用される化学機械研磨組成物は、>7、好ましくは8~12、より好ましくは9~11のpHを有する。
【0032】
任意選択的に、化学機械研磨組成物は、pHを所望の範囲内に維持するための1種以上のpH調整剤を含むことができる。好ましくは、pH調整剤は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、アンモニウムハロゲン化物及び硝酸塩の1種以上から選択される。
【0033】
任意選択的に、化学機械研磨組成物は、KORDEK(商標)MLX(9.5~9.9%のメチル-4-イソチアゾリン-3-オン、89.1~89.5%の水及び≦1.0%の関連反応生成物)又はそれぞれ、International Flavors&Fragrances,Inc.によって製造される、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン及び5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの有効成分を含有するKATHON(商標)ICP III(KATHON及びKORDEKは、International Flavors&Fragrances,Inc.の商標である)などの、殺生物剤を含有する。
【0034】
殺生物剤が本発明の化学機械研磨組成物中に含まれる場合、殺生物剤は、0.0001重量%~0.1重量%、好ましくは0.001重量%~0.05重量%、より好ましくは0.001重量%~0.01重量%、更により好ましくは0.001重量%~0.005重量%の量で含まれる。
【0035】
本発明の化学機械研磨方法で使用される化学機械研磨組成物中に含有される水は、好ましくは、偶発的な不純物を制限するために脱イオン水及び蒸留水のうちの少なくとも1つである。
【0036】
好ましくは、化学機械研磨組成物は、水、二峰性分布のコロイド状シリカ粒子の研磨材(ここで、コロイド状シリカ粒子は細長い及び球形である)、80%~90%以下加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、任意選択的に殺生物剤、任意選択的にpH調整剤及び7を超えるpHからなる。
【0037】
より好ましくは、化学機械研磨組成物は、水、二峰性分布のコロイド状シリカ粒子の研磨材(ここで、コロイド状シリカ粒子は細長い及び球形である)、87~89%加水分解されたポリビニルアルコール、電解質、任意選択的に殺生物剤、任意選択的にpH調整剤及び8~12のpHからなる。
【0038】
更に好ましくは、化学機械研磨組成物は、水、二峰性分布のコロイド状シリカ粒子の研磨材(ここで、コロイド状シリカ粒子は細長い及び球形である)、87~89%加水分解された及び9000g/モル以上の重量平均分子量を有するポリビニルアルコール、電解質、任意選択的に殺生物剤、任意選択的にpH調整剤及び9~11のpHからなる。
【0039】
最も好ましくは、化学機械研磨組成物は、水、二峰性分布のコロイド状シリカ粒子の研磨材(ここで、コロイド状シリカ粒子は細長い及び球形である)、87~89%加水分解された及び12,000~150,000g/モルの重量平均分子量を有するポリビニルアルコール、電解質(4mS/cm以上の伝導率)、任意選択的に殺生物剤、任意選択的にpH調整剤及び9~11のpHからなる。
【0040】
本発明の化学機械研磨方法で研磨される基板は、酸化ケイ素を含む。基板中の酸化ケイ素としては、ホウリンケイ酸ガラス(BPSG)、プラズマ助長オルトケイ酸テトラエチル(PETEOS)、TEOSとして知られるオルトケイ酸テトラエチル(Si(OC)の分解から形成される酸化ケイ素、熱酸化物、非ドープのケイ酸塩ガラス、及び高密度プラズマ(HDP)酸化物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
酸化ケイ素除去のための本発明の化学機械研磨方法で使用される化学機械研磨パッドは、当技術分野において公知の任意の好適な研磨パッドであることができる。化学機械研磨パッドは、任意選択的に、織られた及び不織研磨パッドから選択することができる。化学機械研磨パッドは、様々な密度、硬度、厚さ、圧縮率、及び弾性率の任意の好適なポリマー製であることができる。本発明の研磨方法で使用される化学機械研磨パッドは、環状溝などの、溝を研磨面上に含む。溝の寸法は、変わることができる。所与のパッド上の溝は全て、同じ寸法を有することができるか、又は溝は、寸法で変わることができる。例えば、一実施形態において、環状溝は、3~8mmの幅、0.5~2mmの深さ、335~340mmの外縁半径及び330~335mmの内縁半径を有することができる。別の実施形態において、溝は、3~8mmの幅、0.5~2mmの深さ、35~45mmの外縁半径及び30~40mmの内縁半径を有することができる。
【0042】
本発明の方法を実施するために使用することができる市販の研磨パッドとしては、VISIONPAD 5000/K7(商標)ポリウレタン研磨パッド、IC1000(商標)ポリウレタン研磨パッド及びIC1010(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP,LLCから入手可能な)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
本発明の化学機械研磨方法で使用される化学機械研磨組成物は、低い名目上の研磨下向きの力パッド圧力での、例えば、1分当たり93~123回転の圧盤速度、1分当たり87~117回転のキャリア速度、及び40~300mL/分の化学機械研磨組成物流量の300mm研磨機で20~35kPaでの運転を可能にする。
【0044】
本発明の化学機械研磨組成物及び方法は、化学機械研磨パッドの溝の閉塞を抑制して、ウェハー表面からのTEOSのかなりの除去速度で半導体ウェハーの一様な平坦化を可能にする。例えば、図2A~Bは、水並びに11.5重量%のKLEBOSOL(商標)1635研磨材コロイド状シリカ粒子、0.005重量%の89%加水分解されたポリビニルアルコール、0.055の塩化ベネジルトリメチルアンモニウム、0.055重量%の塩化コリン及び0.164重量%の炭酸カリウム及びpH10.7からなる本発明の水性化学機械研磨スラリーで半導体ウェハーを研磨した後のVP5000ポリウレタン研磨パッドの研磨面の写真である。コロイド状シリカ粒子は、約90%の細長いコロイド状シリカ粒子を含み、残りは球形粒子であった。
【0045】
環状溝は、8mmの幅、2mmの深さ、340mmの外縁半径及び335mmの内縁半径を有した。研磨は、Applied Materials Mirra(登録商標)研磨装置で、スラリー流量:100mL/分、約34.5kPaの下向きの力、圧盤速度108rpm及び102rpmのキャリア速度で行われた。
【0046】
図2A~Bは、パッドベースの研磨面内にセットされた環状溝を例示する。図2Aは、研磨後の研磨パッドベースの研磨面における複数の環状溝を示し、それは、溝が全て研磨スラリーを含まないことを示す。図2Bは、溝が研磨スラリーを含まない研磨パッド表面のより綿密な画像である。本発明の化学機械研磨組成物及び方法は、研磨パッド溝閉塞の予期せぬ抑制を示した。
【実施例0047】
以下の実施例は、本発明を例示することを意図するが、その範囲を限定することを意図しない。
【0048】
以下の実施例において、別段示されない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度及び標準圧力である。
【0049】
以下の原材料を、引き続く実施例において使用した。
【0050】
研磨除去速度実験は、160 20.3cmブランケットウェハーで行った。Applied Materials Mirra(登録商標)研磨装置を実施例のために使用した。溝40ミル(1mm)深さ、18ミル(0.45mm)グルーブ及び120ミル(3mm)ピッチ付きのVISIONPAD 5000/K7(商標)ポリウレタン研磨パッド(Rohm and Haas Electronic Materials CMP,Inc.から入手可能な)を使用して、31.7kPa(4.6psi)の下向きの力、100mL/分の化学機械研磨スラリー組成物流量、108rpmのテーブル回転速度及び102rpmのキャリア回転速度で、研磨実施例を行った。パッドの溝を、研磨の前後に清浄度について目視観察した。KLA-Tencor FX200計測ツールを使用して研磨の前後にフィルム厚さを測定することによってTEOS除去速度を求めた。化学機械研磨中、研磨スラリーを約10.7のpHに維持した。水性2重量%のKOHを各スラリーに添加して所望のpHを維持した。YSI 3200伝導率計(YSI Incorporated、Yellow Springs、OH 45387 USAから入手可能な)でスラリー伝導率を測定した。CPS Disc Centrifuge(商標)ナノ粒径分析計(CPS Instruments,Inc.、Stuart、Floridaから入手可能な)を使用して研磨材コロイド状シリカ粒子についての平均及びモードを測定した。
【0051】
実施例1
比較の化学機械研磨組成物
水性化学機械研磨スラリーを、下の表1に示されるように調製した。
【0052】
【表1】
【0053】
研磨材:DuPontから入手可能な、Merck KgAA、Darmstadt、Germanyによって製造される50重量%の細長い粒子を含有し、残りが球形、楕円形、又は結節性であるKlebosol(商標)1635二峰性コロイド状シリカ粒子。
【0054】
【表2】
【0055】
Klebosol(商標)1635二峰性コロイド状シリカ粒子は、有機及び無機電解質と一緒に、有意のVISIONPAD 5000/K7(商標)ポリウレタン研磨パッド溝閉塞をもたらした。研磨パッドの環状溝は、実質的に図2A~Bにおけるように見えた。対照的に、比較の研磨パッドの環状溝は、実質的に図1A~Bに示されるように見えた。
【0056】
実施例2
化学機械研磨組成物、TEOS RR及びパッド溝閉塞の抑制
水性化学機械研磨スラリーを、下の表3A及び3Bに示されるように調製した。11.5重量%のKlebosol(商標)1635コロイド状シリカ研磨材が、各化学機械研磨スラリー中に含まれた。Klebosol(商標)1635コロイド状シリカ研磨材は、50重量%の細長い粒子を含んだ。
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】
【表5】
【0060】
研磨結果は、細長いコロイド状シリカ研磨材と、9000~186000g/モルのMwを有する80~89%加水分解されたPVAとの組合せが、VISIONPAD 5000/K7(商標)ポリウレタン研磨パッドの溝の閉塞を著しく防ぐことを示した。加えて、TEOS除去速度は、PVAを排除した上記の実施例1の研磨組成物PC-1~PC-6のTEOS除去速度よりも良好でない場合に、それらと同程度に良好であった。
【0061】
PC-7は良好なTEOS除去速度を示したが、約16の溝が閉塞された。これは、146000~186000g/モルのMwを有する99%加水分解されたPVAが、VISIONPAD 5000/K7(商標)ポリウレタン研磨パッドの溝閉塞の抑制にとって有害であることを示した。
【0062】
実施例3
細長い対球形コロイド状シリカ粒子を使った化学機械研磨組成物、TEOS RR及びパッド溝閉塞の抑制
水性化学機械研磨スラリーを、下の表5に示されるように調製した。
【0063】
【表6】
【0064】
Klebosol(商標)1501-50コロイド状シリカ研磨材は、80重量%を超える球形粒子を含み、残りが、細長い、楕円形の又は結節性であり、DuPontから入手可能な、Merck KgAA、Darmstadt、Germanyによって製造されるものであった。
【0065】
【表7】
【0066】
単峰性PC-8は、電解質及び80%加水分解されたPVAを含む二峰性PS-11及びPS-12よりも高いTEOS除去速度を有したが、それにもかかわらず、PS-11及びPS-12は、依然として高いTEOS除去速度を示した。更に重要なことには、PC-8は、いくらかの望ましくない溝閉塞を有し、一方、PS-11及びPS-12は何の閉塞も示さなかった。
図1A-1C】
図2A
図2B
【外国語明細書】