(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013299
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】梯子体
(51)【国際特許分類】
E06C 7/06 20060101AFI20250117BHJP
E06C 1/30 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
E06C7/06
E06C1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112444
(22)【出願日】2024-07-12
(31)【優先権主張番号】P 2023114639
(32)【優先日】2023-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】393018130
【氏名又は名称】長谷川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】木下 佳彦
(72)【発明者】
【氏名】杉木 道明
【テーマコード(参考)】
2E044
【Fターム(参考)】
2E044AA01
2E044BA05
2E044CA05
2E044CA08
2E044CB03
2E044CC01
2E044DA01
2E044DB01
2E044DC02
2E044EA04
2E044EB02
(57)【要約】
【課題】例えば遠隔操作機構付き伸縮脚装置のような所定の操作部を備えている梯子体であって、支柱を手で把持したままの状態で操作部の操作を容易に行いうる利便性に優れたものを提供する。
【解決手段】梯子体2は、左右2本の支柱3間に複数本の踏桟4A~4Eが段状に渡し止められているものであって、所定の動作を行う動作部(昇降部材9)と、所定の操作を行うことにより動作部(昇降部材9)を動作させうる操作部10とを備えている。操作部10が、支柱3を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部101を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右2本の支柱間に複数本の踏桟が段状に渡し止められている梯子体であって、
所定の動作を行う動作部と、所定の操作を行うことにより動作部を動作させうる操作部とを備えており、
操作部が、支柱を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部を有していることを特徴とする、梯子体。
【請求項2】
左右2本の支柱間に複数本の踏桟が段状に渡し止められている梯子体であって、
各支柱にスライド自在に連結されて梯子体の脚を構成している左右2本の伸縮脚部材と、各伸縮脚部材を各支柱に対して任意のスライド位置でロックしうる左右2つのロック機構と、左右のロック機構を遠隔操作するための遠隔操作機構とを有する伸縮脚装置を備えており、
各ロック機構が、各伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、梯子体の下部に設けられかつ各伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能な係止部材とを有しており、
遠隔操作機構が、各支柱に沿って設けられかつ所定方向に動作可能な左右2つの伝動部材と、梯子体および/または左右の伝動部材における左右のロック機構の係止部材よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を動作させうる操作部と、各伝動部材の動作を各ロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替える下部伝達部とを有しており、
操作部が、支柱を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部を有していることを特徴とする、梯子体。
【請求項3】
手指操作部が、支柱を把持した状態で手指が掛けられる大きさを有していることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項4】
手指操作部の表面に、支柱を把持した状態で操作する際に手指に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項5】
手指操作部が、所定方向にのびる軸を中心として揺動自在となされていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項6】
手指操作部が、所定方向に直動自在となされていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項7】
手指操作部が、支柱の背側に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項8】
手指操作部が、少なくとも操作前の初期位置において側面より見て支柱の前側および背側にはみ出さないように、支柱の左右方向内側または外側に配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【請求項9】
操作部が、手指操作部を有しかつ支柱、踏桟または動作部に動作可能に取り付けられた手指操作部材よりなることを特徴とする、請求項1記載の梯子体。
【請求項10】
操作部が、手指操作部を有しかつ支柱、踏桟または伝動部材に動作可能に取り付けられた手指操作部材よりなることを特徴とする、請求項2記載の梯子体。
【請求項11】
さらに、手指操作部を操作後の作動位置から操作前の初期位置まで付勢力により復元させる付勢手段を備えていることを特徴とする、請求項1または2記載の梯子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、左右2本の支柱間に複数の踏桟が段状に渡し止められている梯子体に関し、より詳細には、例えば伸縮脚装置等に設けられた動作部と、該動作部を動作させるための操作部とを備えている梯子体に関する。
【背景技術】
【0002】
構成要素の少なくとも一部として梯子体を備えている梯子、専用脚立、梯子兼用脚立、足場台等の高所作業用構造体において、例えば、梯子体に伸縮脚装置を設けたものが知られている(例えば下記の特許文献1参照)。
この伸縮脚装置は、梯子体の脚を構成するように各支柱にスライド自在に連結されている左右2つの伸縮脚部材と、各伸縮脚部材を各支柱に対して任意のスライド位置でロックする左右2つのロック機構とを備えている。
各ロック機構は、各伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されているラック等の被係止部と、梯子体の下部に設けられかつ各伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能な係止部材とを有している。係止部材は、通常、支柱の下端部付近に揺動可能に設けられており、被係止部と係合させられる係止部を有している。また、係止部材は、スプリング等の付勢部材により、係止部が被係止部と係合させられる方向に向かって付勢されている。さらに、係止部材には、付勢部材の付勢力に抗して係止部材をその係止部が被係止部から外れる方向に揺動させる操作レバー部が設けられている。
【0003】
また、梯子体の伸縮脚装置として、ロック機構を遠隔操作するための遠隔操作機構を備えたものも知られている。
例えば、下記の特許文献2に記載された梯子体の伸縮脚装置の場合、遠隔操作機構は、下から数えて複数段目に位置する第1上部踏桟の背面に所定の動作を行いうるように設けられた上部操作部材と、各支柱に沿って設けられかつ上部操作部材と各係止部材とを連動させるための左右2つの伝動部材とを備えており、上部操作部材を操作して所定の動作を行わせることにより、伝動部材を介して係止部材がロック解除位置に切り替えられるようになっている。伝動部材は、例えば、支柱の長さ方向に沿ってスライド自在となされかつ上部操作部材の動作が伝達されることにより下降する板状の昇降部材によって構成される。昇降部材の下端部には、上部操作部材の動作に伴って昇降部材が下降させられた際に係止部材の所要箇所を押圧して被係止部と係止部との係合が解除される方向に回動させる押圧部材が取り付けられている。
上記の遠隔操作機構を備えた伸縮脚装置によれば、例えば、梯子体を立てた状態で、立ったままの楽な姿勢で、伸縮脚部材の伸縮操作を簡単に行いうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-193780号公報
【特許文献2】特開2019-167693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、伸縮脚装置のロック解除操作を梯子体の支柱を把持した状態で行うことができれば、ロック解除時またはロック解除後に梯子体を持ち上げたり移動させたりする際に、手を持ち替えなくてもよくなる。
この発明は、例えば遠隔操作機構付き伸縮脚装置等のような所定の操作部を備えている梯子体であって、支柱を手で把持したままの状態で操作部の操作を容易に行いうる利便性に優れたものを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
【0007】
なお、この発明を特定するに当たり、梯子体において作業者が昇降を行う側を「前」側といい、これと反対側を「背」側または「後」側といい、「左右」は前側から見た場合の左右をいうものとする。
また、この発明を特定するに当たり、「梯子体」には、梯子、専用脚立、梯子兼用脚立、および足場台のうちいずれかの一部または全体を構成するものが含まれることとする。
【0008】
1)左右2本の支柱間に複数本の踏桟が段状に渡し止められている梯子体であって、
所定の動作を行う動作部と、所定の操作を行うことにより動作部を動作させうる操作部とを備えており、
操作部が、支柱を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部を有していることを特徴とする、梯子体。
【0009】
2)左右2本の支柱間に複数本の踏桟が段状に渡し止められている梯子体であって、
各支柱にスライド自在に連結されて梯子体の脚を構成している左右2本の伸縮脚部材と、各伸縮脚部材を各支柱に対して任意のスライド位置でロックしうる左右2つのロック機構と、左右のロック機構を遠隔操作するための遠隔操作機構とを有する伸縮脚装置を備えており、
各ロック機構が、各伸縮脚部材にその長さ方向に沿って形成されている被係止部と、梯子体の下部に設けられかつ各伸縮脚部材の被係止部と係合するロック状態および被係止部との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能な係止部材とを有しており、
遠隔操作機構が、各支柱に沿って設けられかつ所定方向に動作可能な左右2つの伝動部材と、梯子体および/または左右の伝動部材における左右のロック機構の係止部材よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材を動作させうる操作部と、各伝動部材の動作を各ロック機構の係止部材に伝達して係止部材をロック解除状態に切り替える下部伝達部とを有しており、
操作部が、支柱を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部を有していることを特徴とする、梯子体。
【0010】
3)手指操作部が、支柱を把持した状態で手指が掛けられる大きさを有していることを特徴とする、前記1)または2)の梯子体。
【0011】
4)手指操作部の表面に、支柱を把持した状態で操作する際に手指に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部が形成されていることを特徴とする、前記1)~3)のいずれか1つの梯子体。
【0012】
5)手指操作部が、所定方向にのびる軸を中心として揺動自在となされていることを特徴とする、前記1)~4)のいずれか1つの梯子体。
【0013】
6)手指操作部が、所定方向に直動自在となされていることを特徴とする、前記1)~4)のいずれか1つの梯子体。
【0014】
7)手指操作部が、支柱の背側に配置されていることを特徴とする、前記1)~6)のいずれか1つの梯子体。
【0015】
8)手指操作部が、少なくとも操作前の初期位置において側面より見て支柱の前側および背側にはみ出さないように、支柱の左右方向内側または外側に配置されていることを特徴とする、前記1)~6)のいずれか1つの梯子体。
【0016】
9)操作部が、手指操作部を有しかつ支柱、踏桟または動作部に動作可能に取り付けられた手指操作部材よりなることを特徴とする、前記1)、3)~8)のいずれか1つの梯子体。
【0017】
10)操作部が、手指操作部を有しかつ支柱、踏桟または伝動部材に動作可能に取り付けられた手指操作部材よりなることを特徴とする、前記2)~8)のいずれか1つの梯子体。
【0018】
11)さらに、手指操作部を操作時の作動位置から操作前の初期位置まで付勢力により復元させる付勢手段を備えていることを特徴とする、前記1)~10)のいずれか1つの梯子体。
【発明の効果】
【0019】
この発明の梯子体によれば、支柱を手で把持したままの状態で手指操作部を手指で操作することにより、動作部を動作させることができるので、例えば、動作部の動作時または動作後(遠隔操作機構による伸縮脚部材のロック解除時またはロック解除後)に梯子体を持ち上げたり移動させたりする際に、手を持ち替える必要がなく、利便性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明による第1の実施形態の梯子体を備えた梯子兼用脚立の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】同梯子兼用脚立において、伸縮脚装置の係止部材がロック状態となされた時の一方の梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図3】伸縮脚装置の係止部材がロック解除状態となされた時の同梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図4】同伸縮脚装置の下部構造を示す後方斜視図である。
【
図5】同伸縮脚装置の上部構造を示す後方斜視図である。
【
図6】同伸縮脚装置の上部構造を分解して示す後方斜視図である。
【
図7】この発明による第2の実施形態の梯子体を備えた梯子兼用脚立の一部を示す後方斜視図である。
【
図8】同梯子兼用脚立において伸縮脚装置の係止部材がロック状態となされた時の一方の梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図9】伸縮脚装置の係止部材がロック解除状態となされた時の同梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図10】同伸縮脚装置の下部構造を一部分解して示す後方斜視図である。
【
図11】同伸縮脚装置の下部構造を示すものであって、(a)は係止部材がロック状態となされた時の水平断面図であり、(b)は同正面図であり、また、(c)は係止部材がロック解除状態となされた時の水平断面図であり、(d)は同正面図である。
【
図12】(a)は伸縮脚装置の上部構造を示す斜視図であり、(b)は同上部構造を分解して示す斜視図である。
【
図13】手指操作部材、下から3段目の踏桟、および取付金具を分解して示す後方斜視図である。
【
図14】伸縮脚装置の上部構造を示す垂直断面図であって、(a)は手指操作部が初期位置にある状態を示しており、(b)は手指操作部が作動位置にある状態を示している。
【
図15】この発明による第3の実施形態の梯子体を備えた梯子兼用脚立の一部を示す前方斜視図である。
【
図16】同梯子兼用脚立において伸縮脚装置の係止部材がロック状態となされた時の一方の梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図17】伸縮脚装置の係止部材がロック解除状態となされた時の同梯子体の一部を示すものであって、(a)は正面図であり、(b)は垂直断面図である。
【
図18】同伸縮脚装置の下部構造を示すものであって、(a)は係止部材がロック状態となされた時の水平断面図であり、(b)は同正面図であり、また、(c)は係止部材がロック解除状態となされた時の水平断面図であり、(d)は同正面図である。
【
図19】伸縮脚装置の上部構造を示す水平断面図であって、(a)は手指操作部が初期位置にある状態を示しており、(b)は手指操作部が作動位置にある状態を示している。
【
図20】(a)は伸縮脚装置の上部構造を示す後方斜視図であり、(b)は同上部構造を分解して示す後方斜視図である。
【
図21】この発明による第4の実施形態の梯子体を備えた梯子兼用脚立における伸縮脚装置の上部構造を示す垂直断面図であって、(a)は手指操作部が初期位置にある状態を示しており、(b)は手指操作部が作動位置にある状態を示している。
【
図22】同伸縮脚装置の上部構造を示す後方斜視図である。
【
図23】同伸縮脚装置の上部構造を分解して示す後方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1~
図23を参照して、この発明の実施形態を説明する。
以下の各実施形態では、この発明による梯子体を梯子兼用脚立に適用した態様を示している。
なお、以下の説明において、
図2(b)、
図3(b)、
図8(b)、
図9(b)、
図16(b)、
図17(b)、
図21(a)(b)の各右側を「前」、同左側を「背」または「後」といい、また、「左右」は前から見た場合の左右(例えば
図2(a)、
図3(a)、
図8(a)、
図9(a)、
図16(a)、
図17(a)の各左右)をいうものとする。
【0022】
<第1の実施形態>
図1~
図6には、この発明の第1の実施形態に係る梯子体を備えた梯子兼用脚立が示されている。
例えば
図1に示すように、梯子兼用脚立(1)は、前後2つの梯子体(2)の上端部どうしがヒンジ金具(21)により開閉自在に連結されてなる。また、梯子兼用脚立(1)は、一方の梯子体(2)を上下反転するように回動させることによって、梯子としても使用できるように構成されている。
なお、2つの梯子体(2)は、前後対向状に配置されている点を除いて実質的に同形同大のものであるので、以下では、主として一方の梯子体(2)について、図面に基づいて説明を行うこととする。また、梯子体(2)は、その左右幅中心線を通る面を対称面として左右対称形であるので、
図2~
図6では梯子体(2)の右部のみを表している。
【0023】
梯子体(2)は、左右2本の支柱(3)と、両支柱(3)間に上下方向に間隔をおいて段状に渡し止められた複数本(例えば5本)の踏桟(4A)(4B)(4C)(4D)(4E)とを備えている。
最上段の踏桟(4E)は、脚立として使用する際、天板を構成する。
2つの梯子体(2)における左支柱(3)の上部どうしの間および右支柱(3)の上部どうしの間には、それぞれ、リンク機構を有する開き止め金具(22)が渡し止められている。
梯子体(2)には、伸縮脚装置(5)が設けられている。
【0024】
梯子体(2)の左右各支柱(3)は、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)よりなる。また、図示の支柱(3)は、左右方向内方に開口した略コ字形の横断面を有する中空状のものとなされている。
各踏桟(4A)~(4E)も、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)よりなる。また、図示の踏桟(4A)~(4E)は、それぞれ略四角形の横断面を有する中空状のものとなされている。図示は省略したが、各踏桟(4A)~(4E)の上面および下面、すなわち踏面には、左右長さ方向に沿ってのびる複数の滑り止め用の凸条部および凹溝部が前後幅方向に交互に形成されている。
最下段の踏桟(4A)および下から2段目の踏桟(4B)の左右各端部は、それぞれ前後1対のブラケット(401)(402)を介して、左右各支柱(3)に取り付けられている。それら以外の踏桟(4C)(4D)(4E)の左右各端部は、左右各支柱(3)の内部に差し込まれて、例えばリベットにより、支柱(3)の前後壁部に直接取り付けられている。
なお、梯子体(2)を構成する支柱(3)および踏桟(4A)~(4E)の形状・取付構造等は、上記態様に限定されず、適宜変更可能である。
【0025】
梯子体(2)に設けられた伸縮脚装置(5)は、各支柱(3)にスライド自在に連結されて梯子体(2)の脚を構成している左右2本の伸縮脚部材(6)と、各伸縮脚部材(6)を各支柱(3)に対して任意のスライド位置でロックしうる左右2つのロック機構(7)と、左右のロック機構(7)を遠隔操作するための遠隔操作機構(8)とを備えている。
【0026】
伸縮脚部材(6)は、支柱(3)内にその下端からスライド自在に挿入されている。伸縮脚部材(6)の下端部には、接地部(61)が設けられている。
伸縮脚部材(6)は、通常、金属形材(好適には、アルミニウム合金形材)により構成されている。
また、この実施形態の伸縮脚部材(6)は、略方形の横断面を有している。
図4に詳しく示すように、伸縮脚部材(6)の上端部には、伸縮脚部材(6)が支柱(3)から抜け落ちるのを防止するための抜け止め部(62)が設けられている。抜け止め部(62)は、伸縮脚部材(6)の上端部に嵌合固定された抜け止め用キャップ(62)よりなる。抜け止め用キャップ(62)は、左右方向内方に突出した内方凸部(621)を有している。この内方凸部(621)が、後述するカバー部材(404)の上端縁と当接することによって、伸縮脚部材(6)が支柱(3)から抜け落ちるのが防止される。
なお、伸縮脚部材は、上記態様のように中空状の支柱の内部にスライド自在に挿入されたものとする他、支柱の外部、例えば左右方向外側部にスライド自在に連結されたものであってもよい。
【0027】
ロック機構(7)は、
図2~
図4に詳しく示すように、各伸縮脚部材(6)にその長さ方向に沿って形成されている被係止部(71)と、梯子体(2)の下部に設けられかつ各伸縮脚部材(6)の被係止部(71)と係合するロック状態および被係止部(71)との係合が解除されるロック解除状態の間で切り替え可能な係止部材(72)とを有している。また、ロック機構(7)は、係止部材(72)をロック状態が保持されるように所定方向に向かって付勢する付勢部材(73)を有している。
被係止部(71)は、例えば、各伸縮脚部材(6)の左右方向内側面に設けられかつ伸縮脚部材(6)の長さ方向に並んだ多数の歯(711)を有するラック(71)によって構成できる。
係止部材(72)は、梯子体(2)における各支柱(3)の下端部付近、より詳細には、最下段の踏桟(4A)の左右各端部を支柱(3)に取り付けるための前後ブラケット(401)に前後方向にのびる揺動軸(720)を中心として揺動自在に取り付けられている。
係止部(721)は、揺動軸(720)が挿通されている中心部(723)から左右方向外方にのびており、その先端部分に、ラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる歯(721a)が形成されている。
付勢部材(73)は、係止部材(72)をその係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる方向に向かって付勢するスプリング(73)よりなる。
また、係止部材(72)には、中心部(723)から左右方向内方にのびた操作レバー部(722)が設けられている。この操作レバー部(722)に対して上向きの操作力を加えることにより、係止部材(72)が、スプリング(73)のばね弾性力(付勢力)に抗して、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)から外れる方向に揺動させられるようになっている。
つまり、係止部材(72)は、所定方向に揺動させられることによって、係止部(721)の歯(721a)がラック(71)の歯(711)と係合するロック状態、および、係止部(721)の歯(721a)とラック(71)の歯(711)との係合が外れるロック解除状態の間で、切り替え可能となされている。
スプリング(73)は、係止部材(72)の操作レバー部(722)上面と最下段の踏桟(4A)の下面との間に、上下方向に伸縮自在に介在させられている。係止部材(72)には、操作レバー部(722)上面の長さ中間位置から上方にのびるスプリング保持部(724)が形成されており、同スプリング保持部(724)と中心部(723)との間に、スプリング(73)の下端部が挿入されて保持されている。
各支柱(3)の下端部には、横断面略コ字形のカバー部材(404)が、各支柱(3)の開口を覆うように嵌め被せられている。前後のブラケット(401)は、このカバー部材(404)の前後壁部の上から、支柱(3)の前後壁部にリベット等によって取り付けられている。カバー部材(404)には、その下部に、ラック(71)の一部の歯(711)を露出させるための連通窓(404a)が形成されている。係止部材(72)の係止部(721)の歯(721a)は、この連通窓(404a)を通じて、ラック(71)の歯(711)と噛み合わせられる。
なお、ロック機構は、図示の態様には限定されず、適宜変更可能である。例えば、係止部材は、図示のように最下段の踏桟(4A)の下方に設ける他、同踏桟(4A)の内部に組み込むか、あるいは同踏桟(4A)の上方に設けてもよい。
【0028】
遠隔操作機構(8)は、各支柱(3)に沿って設けられかつ所定方向に動作可能な左右2つの伝動部材(9)と、梯子体(2)および/または左右の伝動部材(9)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により伝動部材(9)を動作させうる操作部(10)と、各伝動部材(9)の動作を各ロック機構(7)の係止部材(72)に伝達して係止部材(72)をロック解除状態に切り替える下部伝達部(91)とを有している。
操作部(10)は、支柱(3)を把持した状態で手指により操作可能な手指操作部(101)を有している。
【0029】
伝動部材(9)は、支柱(3)の長さ方向に沿ってスライド自在となされかつ操作部(10)の動作が伝達されることにより上昇または下降する昇降部材(9)で構成されている。この実施形態の昇降部材(9)は、支柱(3)の長さ方向に沿ってのびる略帯板状のものであって、操作部(10)の動作が伝達されることにより下降するように構成されている。昇降部材(9)は、左右各支柱(3)と最下段の踏桟(4A)および下から2段目の踏桟(4B)の左右各端部との間隙(S)に通されることにより、スライド自在となされている。
昇降部材(9)の下端部には、操作部(10)の動作に伴って昇降部材(9)が下降させられた際に係止部材(72)の所要箇所、より詳細には、係止部材(72)における係止部(721)の上面を押圧して被係止部(71)と係止部(721)との係合が解除される方向に回動させる押圧部材(91)が取り付けられている。この押圧部材(91)と、係止部(721)の上面よりなる被押圧部とによって、下部伝達部が構成されている。
昇降部材(9)の上端部には、スライドガイド(92)が取り付けられている。スライドガイド(92)は、略直方体状の外形を有するものであって、支柱(3)の内部に支柱(3)の長さ方向に沿ってスライド可能に収容された状態で、昇降部材(9)の上端部に固定されている。このスライドガイド(92)の存在により、昇降部材(9)が昇降する際のガタツキや揺れが抑制される。
【0030】
図5および
図6に詳しく示すように、この実施形態において、操作部は、手指操作部(101)を有しかつ左右各支柱(3)に動作可能に取り付けられた左右2つの手指操作部材(10)よりなる。
また、これに伴い、遠隔操作機構(8)には、手指操作部材(10)の動作を昇降部材(9)に伝達して昇降部材(9)を昇降させる上部伝達部(103)(105)が設けられている。
【0031】
各手指操作部材(10)は、左右方向にのびる揺動軸部(102)と、揺動軸部(102)の一端部(左右方向内側端部)から上方にのびる手指操作部(101)と、揺動軸部(102)の一端部から前方にのびるアーム部(103)とを備えており、揺動軸部(102)を中心として揺動自在となされている。
【0032】
揺動軸部(102)は、支柱(3)の後壁部外面に取り付けられた取付金具(104)の畝状凸部(104a)と支柱(3)の後壁部外面とによって形成された軸挿通孔に回転可能に挿通されている。揺動軸部(102)の他端部(左右方向外側端部)には、抜け止め用頭部(102a)が形成されている。
【0033】
手指操作部(101)は、支柱(3)の背側(支柱(3)の長さ方向から見て支柱(3)の後壁部外面よりも後側)に配置されている。
この実施形態の手指操作部(101)は、支柱(3)を梯子体(2)の前側(昇降面側)から手で持った状態で、手指、特に人差し指で操作するのに適しており、トリガー部として機能しうる。
手指操作部(101)は、操作前(ロック状態)の初期位置では、その先端が支柱(3)の後壁部外面から所定距離だけ離れるように上斜め後方を向いており、また、操作時(ロック解除状態)の作動位置では、その先端が支柱(3)の後壁部表面に近接するように略上方を向いている。
手指操作部(101)は、支柱(3)を把持した状態で手指、より詳細には、人差し指の第1間接付近が掛けられる大きさ(操作面積)を有している。
手指操作部(101)の表面には、支柱(3)を把持した状態で操作する際に手指に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部(101a)が形成されている。湾曲部(101a)は、手指操作部(101)の長さ方向に沿う断面形状が凹弧状となるように形成されている。
初期位置における手指操作部(101)と、支柱(3)の前壁部外面(昇降側表面)との間の距離は、支柱(3)を握った状態で自然に手指を掛けられるように設定されているのが好ましい。具体的には、例えば、支柱(3)の長さ方向と直交する方向において、支柱(3)の前壁部外面から、初期位置における手指操作部(101)の湾曲部(101a)の最も凹んだ箇所までの距離が、55~75mmとなされているのが好ましく、より好ましくは60~65mmとなされる。
この実施形態のような梯子兼用脚立(1)や専用脚立の場合、運搬や保管に際して2つの梯子体(2)を互いに近づくように閉じた形態にできるが、その際、一方の梯子体(2)の手指操作部(101)が、他方の梯子体(2)の手指操作部(101)や支柱(3)、踏桟(4C)等と干渉しないようになっているのが好ましい。また、足場台も、両側の梯子体が足場板の下面に沿うように折り畳まれた形態とすることができ、その際に、各梯子体の手指操作部が足場板の下面と干渉しないのが好ましい。そのため、初期位置における手指操作部(101)の、支柱(3)の後壁部外面からの突出長さは、上記の要件を満たしているのが好ましい。上記突出長さは、梯子兼用脚立(1)等の種類やサイズ等によっても異なるが、例えば、図示の実施形態の梯子兼用脚立(1)の場合であれば、10~15mm程度となされるのが好ましい。
支柱(3)の後壁部外面に対する手指操作部(101)の角度は、初期位置において手指操作部(101)に動作方向(前方)に向かって手指で自然に力を加え易いように設定されているとともに、作動位置において手指操作部(101)をそのまま手指で保持し易いように設定されているのが好ましい。
初期位置から作動位置までの手指操作部(101)のストローク(前後方向の変位量)は、操作前後の若干の遊びも含めた手指による操作性を考慮すると、5~12mm程度となされているのが好ましい。
【0034】
アーム部(103)は、その先端部(前端部)が昇降部材(9)の上端部に相対回動可能にリンク結合されている。より詳細には、アーム部(103)の先端部に形成された貫通孔(103a)に回動リング(141)が同軸状に緩く挿入され、この回動リング(141)に軸部が通されたビス等の連結部材(105)によって、昇降部材(9)の上端部にリンク結合されている。
手指操作部(101)が初期位置から作動位置まで変位するように、手指操作部材(10)が動作方向(例えば
図2(b)の時計回り方向)に揺動させられると、それに連動して昇降部材(9)が下降させられる。
すなわち、手指操作部材(10)のアーム部(103)および連結部材(105)によって、上部伝達部が構成されている。
【0035】
上記遠隔操作機構(8)による伸縮脚部材(6)のロック解除操作は、例えば以下の手順で行うことができる。
まず、梯子兼用脚立(1)の一方の梯子体(2)の昇降面側に立った使用者は、左右の支柱(3)の所要高さ部分、具体的には、両支柱(3)における下から3段目の踏桟(4C)の下側部分を両手で把持する。
そして、支柱(3)を把持した手の手指、より具体的には人差し指の第1間接付近を、手指操作部材(10)の手指操作部(101)の湾曲部(101a)に掛けて、手前に引く操作を行う。すると、手指操作部(101)が初期位置から作動位置まで変位するように、手指操作部材(10)が揺動軸部(102)を中心として動作方向に揺動し、それに連動して、手指操作部材(10)のアーム部(103)とリンク結合された昇降部材(9)が下降させられる。昇降部材(9)が下降すると、その下端部の押圧部材(91)によって係止部材(72)の係止部(721)上面(被押圧部)が下方に向かって押圧され、それによって係止部材(72)がロック解除方向に揺動させられ、伸縮脚部材(6)の被係止部(71)と係止部材(72)の係止部(721)との係合が解除される。
以上の操作により、伸縮脚部材(6)が支柱(3)に対してスライド自在となるので、使用者は、伸縮脚部材(6)を所要長さ分だけ伸縮させることができる。この際、使用者は、ロック解除のために両支柱(3)を把持した手を持ち替えることなく、そのままの状態で伸縮脚部材(6)を伸縮させるために梯子体(2)を持ち上げたり降ろしたりできる。
また、ロック解除操作は、左右の手指操作部材(10)を個別に操作することにより、左右の伸縮脚部材(6)毎に個別に行える他、左右の手指操作部材(10)を両手の手指で同時に操作すれば、左右の伸縮脚部材(6)のロック解除を同時に行える。
【0036】
上記操作によって伸縮脚部材(6)の伸縮(梯子体(2)の脚の長さ調整)が完了したら、手指操作部(101)に掛けていた手指を離すと、スプリング(73)のばね弾性力によって係止部材(72)がロック方向に揺動させられ、それによって係止部(721)が被係止部(71)に係合させられて、伸縮脚部材(6)が再びロックされる。
また、係止部材(72)の上記揺動により、係止部材(72)の係止部(721)上面(被押圧部)によって押圧部材(91)が押し上げられ、それによって昇降部材(9)が上昇し、それに連動して手指操作部材(10)がロック解除時と反対の復元方向(例えば
図3(b)の反時計回り方向)に揺動させられ、手指操作部(101)が作動位置から初期位置まで戻される。
【0037】
以上の通り、第1の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)によれば、支柱(3)を手で持ったままの状態で遠隔操作機構(8)の手指操作部(101)を手指で操作することにより、伸縮脚部材(6)のロック解除操作を簡単に行うことができる。
したがって、遠隔操作機構(8)による伸縮脚部材(6)のロック解除時またはロック解除後に梯子体(2)を持ち上げたり移動させたりする際に、いちいち手を持ち替える必要がなく、利便性に優れている。
また、手指操作部(101)は、支柱(3)を把持した状態で手指が掛けられる大きさを有しており、その表面には、手指に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部(101a)が形成されているので、操作性に優れている。
また、手指操作部(101)は、支柱(3)の背側に配置されているので、使用者が梯子体(2)を昇降する際などにも邪魔にならない。
さらに、遠隔操作機構(8)の操作部が、手指操作部(101)を有しかつ支柱(3)に動作可能に取り付けられた手指操作部材(10)により構成されているので、部品のサイズを小さくすることができ、梯子兼用脚立(1)の軽量化にも寄与する。
【0038】
<第2の実施形態>
図7~
図14は、この発明の第2の実施形態を示したものである。
この実施形態の梯子体(2)は、以下の点を除いて、
図1~
図6に示す第1の実施形態の梯子体(2)と実質的に同一の構成を有している。
すなわち、この実施形態の梯子体(2)では、遠隔操作機構(8)が、各支柱(3)に沿って設けられかつ周方向に回転可能な左右2つの回転部材(9X)と、梯子体(2)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)よりも上方位置に設けられかつ所定の操作により回転部材(9X)を回転させうる操作部(10X)と、各回転部材(9X)の回転動作を各ロック機構(7)の係止部材(72)に伝達して係止部材(72)をロック解除状態に切り替える下部伝達部(11)(725)とを有している。
操作部は、手指操作部(101X)を有しかつ左右各支柱(3)に動作可能に取り付けられた左右2つの手指操作部材(10X)よりなる。また、これに伴い、遠隔操作機構(8)には、さらに、手指操作部材(10X)の動作を回転部材(9X)に伝達して回転部材(9X)を所定方向に回転させる上部伝達部(103X)(12)が設けられている。
【0039】
回転部材(9X)は、支柱(3)の長さ方向に沿ってのびる長尺材よりなる。より詳細には、回転部材(9X)は、例えば金属や合成樹脂等よりなる棒材または筒材によって構成しうる。
図示の回転部材(9X)は、支柱(3)の開口部付近、より詳細には、支柱(3)の後壁部の左右方向内側縁に近接した位置に配置されている。但し、回転部材(9X)の配置は、上記に限定されず、例えば支柱(3)の内部に入り込んで配置されることもありうる。
回転部材(9X)は、所定の保持手段によって、周方向に回転可能に保持されるが、保持手段については後述する。
【0040】
手指操作部材(10X)は、左右方向にのびる揺動軸部(102X)と、揺動軸部(102X)から下方にのびる手指操作部(101X)と、手指操作部(101X)の下端部から前方にのびるアーム部(103X)とを備えており、揺動軸部(102X)を中心として揺動自在となされている。
また、手指操作部材(10X)は、手指操作部(101X)を操作後の作動位置から操作前の初期位置まで付勢力により復元させる付勢手段(106)を備えている。
【0041】
揺動軸部(102X)は、後方に向かって短くのびかつ先端部分が横断面略半円形状となされた小片状となされている。
下から3段目の踏桟(4C)には、その上面に連なるように背面側に張り出した上部張出壁部(41)が一体に形成されている。上部張出壁部(41)下面の端部には、保持金具(107)が取り付けられている。そして、この保持金具(107)に形成された横断面後方凸円弧状の保持部(107a)と、同保持部(107a)と前後に向かい合う踏桟(4C)の後壁部とによって、手指操作部材(10X)の揺動軸部(102X)が揺動自在に保持されている。
なお、揺動軸部(102X)は、第1の実施形態と同様に、支柱(3)の後壁部に取付金具によって取り付けられてもよい。
【0042】
手指操作部(101X)は、揺動軸部(102X)の下側に、下方にのびる垂直断面略く字形の接続部(108)を介して、これらと一体的に設けられている。手指操作部(101X)は、その一部が接続部(108)よりも左右方向外方に張り出して支柱(3)の後壁部の後方に位置するように構成されたものであって、第1の実施形態の手指操作部(101)と同様に、支柱(3)を把持した状態で手指、特に人差し指の第1間接付近が掛けられる程度の大きさを有しており、トリガー部として機能しうる。
【0043】
アーム部(103X)は、手指操作部材(10X)のロック解除方向への揺動に伴い、踏桟(4C)の下方空間を前方に向かって移動するようになっている。アーム部(103X)の先端部分には、同部分の厚み方向(左右方向)に貫通した係合孔(103a)が形成されている。係合孔(103a)は、その上下の孔縁部が凹弧状となされ、前後の孔縁部が凸弧状となされている。
【0044】
回転部材(9X)の上端部には、上部伝達部材(12)が連結固定されている。
上部伝達部材(12)は、垂直部(121)と、垂直部(121)の上部から側方に突出した係合凸部(122)とを有するものであって、例えば合成樹脂成形品によって構成することができる。
垂直部(121)の下端面には嵌合凹部(図示略)が形成されており、同嵌合凹部に回転部材(9X)の上端部が嵌め入れられることによって、上部伝達部材(12)が回転部材(9X)に連結固定されている。また、垂直部(125)周面の前側部には、側方開口凹部(123)が形成されている。
係合凸部(122)は、手指操作部材(10X)のアーム部(103X)の係合孔(103a)に左右方向外側から挿入されている。
手指操作部(101X)に操作力(手指によって手前に引く力)が加えられることにより手指操作部材(10X)が作動位置に向かって揺動させられると、アーム部(103X)が前方に移動させられ、同アーム部(103X)の動作が、係合孔(103a)および係合凸部(122)を介して上部伝達部材(12)に伝達されることにより、上部伝達部材(12)が回転部材(9X)と共にロック解除方向(C)(例えば
図8(b)の反時計回り方向)に回転させられる。
以上の通り、この実施形態では、手指操作部材(10X)のアーム部(103X)および上部伝達部材(12)によって、上部伝達部が構成されている。
なお、上部伝達部は、上記以外の態様であってもよく、例えば、手指操作部材(10X)のアーム部(103X)に左右方向外方にのびる係合凸部を形成するとともに、係合凸部と係合しうる係合孔または係合凹部を上部伝達部材(12)に形成するようにしてもよい。
【0045】
手指操作部材(10X)のアーム部(103X)には、支柱(3)の内部空間に向かって左右方向外方に突出した外方突出部(103b)が一体に形成されている。手指操作部材(10X)に対してロック解除方向と反対方向に比較的大きな外力が作用した際、この外方突出部(103b)が支柱(3)の後壁部に当接させられることにより、アーム部(103X)の係合孔(103a)と上部伝達部材(12)の係合凸部(122)との係合が外れるのが確実に防止される。
【0046】
付勢手段は、手指操作部材(10X)の揺動軸部(102X)から下方に向かって手指操作部(101X)と二股をなすようにのびる板バネ部(106)によって構成されている。この板バネ部(106)は、手指操作部(101X)が初期位置にある時に、その下端部が下から3段目の踏桟(4C)の後壁部外面に当接するように設けられており、操作力が加えられることにより手指操作部(101X)が初期位置から作動位置へ変位させられると、それによって弾性変形させられ、手指操作部(101X)を初期位置に戻す方向に手指操作部材(10X)を付勢するようになっている。なお、付勢手段は、上記のような板バネ部の他、例えば、手指操作部材(10X)の揺動軸部(102X)と踏桟(4C)の後壁部との間に介在させた圧縮コイルばね等で構成することも可能である。
【0047】
また、遠隔操作機構(8)は、上部伝達部材(12)を回転可能に保持する上部保持部(13)を有している。この上部保持部(13)によって、上部伝達部材(12)が回転可能に保持されることにより、上部伝達部材(12)と一体的に設けられた回転部材(9X)の上部も回転可能に保持される。したがって、これらの保持手段を簡素化でき、軽量化にも寄与しうる。
上部保持部は、支柱(3)に固定された上部保持部材(13)よりなる。図示の上部保持部材(13)は、前後方向にのびる側壁部と、側壁部の前後縁部から左右方向外方にのびる前後壁部とを有する横断面略コ字形のものであって、例えば合成樹脂成形品によって構成できる。側壁部の左右方向内側面には、上部伝達部材(12)の側方開口凹部(123)と係合しうるように後方に突出した側方凸部(131)が一体的に形成されている。側方開口凹部(123)と側方凸部(131)とが係合した状態で、手指操作部材(10X)のアーム部(103X)からの力が加えられると、上部伝達部材(12)の前方への移動が規制されるので、その力が上部伝達部材(12)を回転させる力に効率良く変換される。従って、上部伝達部材(12)は、手指操作部材(10X)の動作が伝達された際、側方凸部(131)の先端を支点として周方向にスムーズに回転させられる。
【0048】
次に、回転部材(9X)の回転動作をロック機構(7)の係止部材(72)に伝達するための下部伝達部について説明する。
図10および
図11に詳しく示すように、この実施形態の下部伝達部は、回転部材(9X)の下端部に固定状に連結されている下部伝達部材(11)と、係止部材(72)の中心部(723)から上方にのびた上方突出部(725)とで構成されている。
下部伝達部材(11)は、垂直部(111)と、垂直部(111)の下部から側方に突出した側方突出部(112)とを有するものであって、例えば合成樹脂成形品によって構成できる。
垂直部(111)は、その上端面に嵌合凹部(図示略)を有している。この嵌合凹部に、回転部材(9X)の下端部が嵌め入れられることにより、回転部材(9X)の下端部に下部伝達部材(11)が連結固定されている。側方突出部(112)は、平面視略円弧状に屈曲させられている。
そして、下部伝達部材(11)の側方突出部(112)の先端部分よりなる押圧凸部(112a)が、係止部材(72)の上方突出部(725)の左右方向内側面よりなる被押圧部(725a)と係合させられるようになっている。
【0049】
また、遠隔操作機構(8)は、下部伝達部材(11)を回転可能に保持する下部保持部を有している。この下部保持部によって、下部伝達部材(11)が回転可能に保持されることにより、下部伝達部材(11)と一体的に設けられた回転部材(9X)の下部も回転可能に保持される。したがって、これらの保持手段を簡素化でき、軽量化にも寄与しうる。
好適な態様において、下部保持部は、少なくともその一部が、梯子体(2)における左右のロック機構(7)の係止部材(72)に近接する部分(より詳細には、例えば、最下段の踏桟(4A)および/または同踏桟(4A)を支柱(3)に取り付けるための取付部品(404)(405)等)によって構成されている。上記の態様によれば、下部保持部を構成するための部品を別途用意して取り付ける負担が軽減されるので、部品コストが抑えられ、より一層の軽量化が図られる。
上記態様の一例として、この実施形態では、下部伝達部材(11)が、その周囲を取り囲むように配置された最下段の踏桟(4A)の下壁部(44)および後壁部(46)、カバー部材(404)における上部連通窓(404b)の縁部、踏桟(4A)の端部を前後ブラケット(401)に取り付けるためのリベット(405)、ならびに係止部材(72)の上方突出部(725)によって、垂直軸を中心として回転可能に保持されている(
図10等参照)。
但し、下部保持部は、上記の態様には限定されず、下部伝達部材の形状や配置等に応じて適宜の構成とすればよい。
【0050】
上記遠隔操作機構(8)による伸縮脚部材(6)のロック解除操作は、例えば以下の手順で行うことができる。
まず、梯子兼用脚立(1)の一方の梯子体(2)の昇降面側に立った使用者は、左右の支柱(3)の所要高さ部分、具体的には、両支柱(3)における下から3段目の踏桟(4C)の下側部分を両手で把持する。
そして、支柱(3)を把持した手の手指、より具体的には人差し指の第1間接付近を、手指操作部材(10X)の手指操作部(101X)の湾曲部(101a)に掛けて、手前に引く操作を行う。すると、手指操作部(101X)が初期位置から作動位置まで移動するように、手指操作部材(10X)が揺動軸部(102X)を中心として動作方向(ロック解除方向)に揺動し、その動作が手指操作部材(10X)のアーム部(103X)および上部伝達部材(12)を介して回転部材(9X)に伝達されることにより、回転部材(9X)がロック解除方向に回転させられる。回転部材(9X)が上記方向に回転すると、その下端部に連結された下部伝達部材(11)の押圧凸部(112a)が、係止部材(72)の被押圧部(725a)に係合して、被押圧部(725a)を左右方向外方に向かって押圧する。これにより、係止部材(72)が、ロック解除方向(D)に揺動させられて、係止部材(72)と被係止部(71)との係合が外れたロック解除状態に切り替えられる(
図11参照)。
以上の操作により、伸縮脚部材(6)が支柱(3)に対してスライド自在となるので、使用者は、伸縮脚部材(6)を所要長さ分だけ伸縮させることができる。この際、使用者は、ロック解除のために両支柱(3)を把持した手を持ち替えることなく、そのままの状態で伸縮脚部材(6)を伸縮させるために梯子体(2)を持ち上げたり降ろしたりできる。
また、ロック解除操作は、左右の手指操作部材(10X)を個別に操作することにより、左右の伸縮脚部材(6)毎に個別に行える他、左右の手指操作部材(10X)を両手の手指で同時に操作すれば、左右の伸縮脚部材(6)のロック解除を同時に行える。
【0051】
上記操作によって伸縮脚部材(6)の伸縮(梯子体の脚の長さ調整)が完了したら、手指操作部(101X)に掛けていた手指を離すと、スプリング(73)のばね弾性力によって係止部材(72)がロック方向に揺動させられ、それによって係止部(721)が被係止部(71)に係合させられて、伸縮脚部材(6)が再びロックされる。
また、係止部材(72)の上記揺動により、その被押圧部(725a)が、下部伝達部材(11)の押圧凸部(112a)をロック解除方向(D)と反対方向に押圧し、それによって、下部伝達部材(11)、回転部材(9X)、および上部伝達部材(12)がロック解除方向(C)と反対方向に回転させられ、手指操作部材(10X)がロック解除方向(A)と反対方向に揺動させられて、手指操作部(101X)が初期位置まで復元させられる。この際、手指操作部材(10X)には、板バネ部(106)のばね弾性力も作用するので、手指操作部材(10X)が初期位置まで速やかにかつ確実に戻る。
【0052】
以上から明らかなように、第2の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)によれば、第1の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)と実質的に同様の効果が奏される。
【0053】
<第3の実施形態>
図15~
図20は、この発明の第3の実施形態を示したものである。
この実施形態の梯子体(2)は、以下の点を除いて、
図7~
図14に示す第2の実施形態の梯子体(2)と実質的に同一の構成を有している。
【0054】
まず、この実施形態の梯子体(2)にあっては、遠隔操作機構(8)の操作部が、回転部材(9X)の上端部に固定状に連結された手指操作部材(10Y)によって構成されている。したがって、遠隔操作機構(8)には、上部伝達部が設けられていない。
手指操作部材(10Y)は、回転部材(9X)の上端部に連結された連結部(109)と、連結部(109)の上部から左右方向内方にのびる手指操作部(101Y)とを備えている。また、手指操作部材(10Y)には、連結部(109)から上方に延長状にのびる上方突出軸部(110)が一体的に形成されている。
連結部(109)は、その下端面に嵌合凹部(図示略)を有しており、この嵌合凹部に回転部材(9X)の上端部が嵌め込まれて固定されることにより、手指操作部材(10Y)が回転部材(9X)の上端部に固定状に連結されている。連結部(109)の上部は、後方に開口するように中空状となされている。
この実施形態の手指操作部(101Y)は、支柱(3)を梯子体(2)の前側(昇降面側)から手で持った状態で、手指、特に親指で操作するのに適しており、プッシュレバー部として機能しうる。
図示の手指操作部(101Y)は、連結部(109)に、初期位置において左右方向内方に向かって斜め後方に短くのびた接続部(113)を介して、初期位置において左右方向内方に向かってやや斜め前方にのびるように形成された略垂直板片状となされている。
この手指操作部(101Y)は、支柱(3)を把持した状態で手指、より詳細には、親指の指先部(第1間接よりも先端側部分)が掛けられる大きさ(操作面積)を有している。手指操作部(101Y)の表面(前面)には、支柱(3)を把持した状態で操作する際に手指(親指の指先部)に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部(101a)が形成されている。湾曲部(101a)は、手指操作部(101)の突出長さ方向に沿う断面形状が凹弧状となるように形成されている。
好適な態様として、手指操作部(101Y)は、少なくとも操作前の初期位置において側面より見て支柱(3)の前側および背側にはみ出さないように、支柱(3)の左右方向内側(または外側)に配置されている。上記の配置構成によれば、例えば梯子兼用脚立(1)を梯子の形態として使用する場合や、この実施形態の梯子体を梯子に適用した場合に、地面等に平置きすることが可能となる。この実施形態の場合、手指操作部材(10Y)の全体が、操作前の初期位置および操作後の作動位置において、側面より見て支柱(3)の前側および背側にはみ出さないように、支柱(3)の左右方向内側に配置されているので、上記効果がより一層確実に奏される(
図19参照)。
【0055】
また、遠隔操作機構(8)は、手指操作部材(10Y)を回転可能に保持する上部保持部(13)を有している。
上部保持部(13)は、支柱(3)に固定された上部保持部材(13)よりなる。
図示の上部保持部材(13)は、略直方体状の外形を有するものであって、支柱(3)の所定高さ部分(下から3段目の踏桟(AC)の下方部分)の内部に収容された状態で、リベット等の固定手段(130)により、支柱(3)に連結固定されている。上部保持部材(13)には、その左右方向内側面から左右方向内方に張り出すように第1保持部(131)が形成されている。第1保持部(131)は、その下面に凹部を有しており、この凹部に手指操作部材(10Y)の上方突出軸部(110)が挿入されることにより、手指操作部材(10Y)が回転可能に保持されるとともに、手指操作部材(10Y)と一体的に設けられた回転部材(9X)の上部も回転可能に保持される。したがって、これらの保持手段を簡素化でき、軽量化にも寄与しうる。
また、上部保持部材(13)には、その左右方向内側面から斜め前方にのびた第2保持部(132)が一体的に形成されている。第2保持部(132)は、その先端部が手指操作部材(10Y)の連結部(109)の上部内に位置するように設けられている。この第2保持部(132)により、手指操作部材(10Y)の回転動作が、ガタツキや揺れを生じることなく、よりスムーズに行われる。
【0056】
ロック解除のために手指操作部(101Y)を手指(親指)で操作して手指操作部材(10Y)を揺動させると、これに連動して回転部材(9X)が回転させられるが、その回転方向は、第2の実施形態における回転部材(9X)のロック解除時の回転方向とは逆になる。
したがって、この実施形態では、ロック解除時の下部伝達部材(11)の回転方向も、第2の実施形態のそれとは逆になるので、下部伝達部材(11)の配置も、その垂直部(111)が係止部材(72)の前側に位置するように変更されている(
図18参照)。
【0057】
上記遠隔操作機構(8)による伸縮脚部材(6)のロック解除操作に際しては、梯子兼用脚立(1)の一方の梯子体(2)の昇降面側に立った使用者が、左右の支柱(3)の所要高さ部分、具体的には、両支柱(3)における下から3段目の踏桟(4C)の下側部分を両手で把持した状態で、手指、より具体的には親指の指先部を、手指操作部材(10Y)の手指操作部(101Y)の湾曲部(101a)に掛けて、後方に向かって押す操作を行う。
第3の実施形態の梯子体(2)におけるロック解除操作時の上記以外の手順および再びロック状態に戻す際の操作手順は、第2の実施形態のそれらと実質的に同一であるので、詳しい説明は省略する。
【0058】
第3の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)によれば、第1および第2の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)と同様の効果が奏される。
また、第3の実施形態の梯子体(2)の場合、前述した通り、手指操作部(101Y)が支柱(3)の左右方向内側に配置されているので、例えば梯子兼用脚立(1)を梯子の形態として使用する場合や同梯子体(2)を適用した梯子を使用する際に地面等に平置きすることが可能となる。
さらに、第3の実施形態の梯子体(2)の場合、手指操作部材(10Y)が垂直な揺動軸部(連結部(109))を中心として揺動させられるものであるので、例えば、梯子兼用脚立(1)を梯子の形態で使用する場合に上下反転させられる梯子体(2)に備えられた手指操作部材(10Y)の手指操作部(101Y)が、誤って使用者に踏まれたとしても、手指操作部(101Y)が不用意に作動するのが防止される。
【0059】
<第4の実施形態>
図21~
図23は、この発明の第4の実施形態を示したものである。
この実施形態の梯子体(2)は、以下の点を除いて、
図1~
図6に示す第1の実施形態の梯子体(2)と実質的に同一の構成を有している。
【0060】
すなわち、第4の実施形態の梯子体(2)では、遠隔操作機構(8)の操作部を構成する左右2つの手指操作部材(10Z)が、所定方向(具体的には前後方向)に直動自在となされている。
手指操作部材(10Z)は、前後方向にのびるスライドベース部(114)と、スライドベース部(114)の後端部に設けられた手指操作部(101Z)と、スライドベース部(114)の下側に設けられた下方突出部(115)とを備えている。
手指操作部材(10Z)は、上部保持部(13Z)によって、前後方向にスライド自在に保持されている。
【0061】
手指操作部材(10Z)のスライドベース部(114)は、前後方向にのびる平坦な板片状に形成されている。
上部保持部(13Z)は、
図21等に示すように、支柱(3)に固定された上部保持部材(13Z)よりなる。この上部保持部材(13Z)により、手指操作部材(10Z)のスライドベース部(114)が、支柱(3)の長さ方向と直交する前後方向にスライド自在に保持されている。
上部保持部材(13Z)は、一端部が支柱(3)の前後各壁部にリベット等によって固定されている前後2つの側壁部(133)と、両側壁部(133)の上縁の先端部分どうしを連結している連結部(134)と、連結部(134)から低い立上り部を介して支柱(3)に近づく方向にのびている上部張出壁部(135)とを備えている。そして、両側壁部(133)の上縁と連結部(134)と上部張出壁部(135)とによって形成される間隙部に、手指操作部材(10Z)のスライドベース部(114)が配置されて、スライド自在となされている。
また、上部保持部材(13Z)は、上部張出壁部(135)の上面に形成されかつ上端が踏桟(4C)の下面に当接させられる凸条部(136)を備えている。
【0062】
手指操作部材(10Z)の手指操作部(101Z)は、スライドベース部(114)の後端部から上方に向かって略直角に折れ曲がった板片状に形成されており、支柱(3)の背側に配置されている。
この実施形態の手指操作部(101Z)も、支柱(3)を梯子体(2)の前側から手で持った状態で手指(特に人差し指)で操作するのに適しており、トリガー部として機能しうる。
手指操作部(101Z)は、操作前(ロック状態)の初期位置では、側面から見て支柱(3)の後壁部外面から所定距離だけ後方に離れるように配置され(
図21(a)参照)、また、操作時(ロック解除状態)の作動位置では、側面から見て支柱(3)の後壁部とほぼ重なるように配置されている(
図21(b)参照)。
図示は省略したが、第1の実施形態と同様に、手指操作部(101Z)の表面に、支柱(3)を把持した状態で操作する際に手指に沿いうるように凹状に湾曲した湾曲部を形成してもよい。また、手指操作部(101Z)の大きさ、配置、ストローク等についても、第1の実施形態の手指操作部(101)とほぼ同様に設定することができる。
【0063】
手指操作部材(10Z)の下方突出部(115)は、前上がりに傾斜した下辺(115a)を有する垂直板状に形成されている。
一方、昇降部材(9)の上端部に、支柱(3)と反対側に向かって突出しかつ先端に頭部(931)を有する側方突出軸部(93)が形成されている。側方突出軸部(93)の頭部(931)は、昇降部材(9)と協同して、手指操作部材(10Z)の左右方向の移動を規制する位置決め機能を有するものであり、それによって手指操作部材(10Z)の前後方向の移動(スライド)がスムーズに行われる。
そして、手指操作部材(10Z)の下方突出部(115)および昇降部材(9)の側方突出軸部(93)により、手指操作部材(10Z)の動作を昇降部材(9)に伝達して、昇降部材(9)を昇降させる上部伝達部が構成されている。具体的には、下方突出部(115)の下辺(115a)(原動節)と、側方突出軸部(93)(従動節)とによって、手指操作部材(10Z)の前後運動を昇降部材(9)の上下運動に変換するカム機構が構成されている。
なお、上部伝達部は、上記の構成態様には限定されず、同様の機能を奏するものであれば適宜変更可能である。
手指操作部材(10Z)の前方への移動は、スライドベース部(114)の前端部が、上部保持部材(13Z)における上部張出壁部(135)の前端から下方にのびた前端壁部(137)に当接することで規制される(
図21(b)参照)。一方、手指操作部材(10Z)の後方への移動は、下方突出部(115)の後部の上端部分(115b)が上部保持部材(13Z)の後側壁部(133)に当接することで規制されるようになっている(
図21(a)参照)。なお、手指操作部材(10Z)の前後方向の移動を規制するための構成は、上記態様には限定されず、例えば、手指操作部材(10Z)の上記以外の部分と、上部保持部材(13Z)、踏桟(4C)または支柱(3)の所要部分とが当接するようにしてもよい。
【0064】
支柱(3)の所要箇所を把持した手の手指を手指操作部材(10Z)の手指操作部(101Z)に掛けて手前に引くと(
図22参照)、手指操作部材(10Z)が前方(動作方向)にスライドし、手指操作部(101Z)が初期位置から作動位置まで変位させられる。これに伴い、手指操作部材(10Z)の下方突出部(115)の下辺(115a)により昇降部材(9)の側方突出軸部(93)が押し下げられて、昇降部材(9)が下降させられ、ロック機構(7)による伸縮脚部材(6)のロックが解除される。
上記操作後に、手指操作部(101Z)に掛けていた手指を離すと、ロック機構(7)により伸縮脚部材(6)が再びロックされ、これに伴い、ロック機構(7)の係止部材(72)の係止部(721)上面によって押圧部材(91)が押し上げられ、それによって昇降部材(9)が上昇する。すると、昇降部材(9)の側方突出軸部(93)によって手指操作部材(10Z)の下方突出部(115)の下辺(115a)に上向きの外力が加えられ、手指操作部材(10Z)のスライドベース部(114)が後方にスライドさせられ、手指操作部(101Z)が作動位置から初期位置まで戻される。
以上の通り、第4の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)によれば、第1の実施形態の梯子体(2)を備えた梯子兼用脚立(1)と実質的に同様の効果が奏される。
【0065】
なお、第4の実施形態で使用されている直動タイプの手指操作部は、昇降部材が上昇させられることによって、ロック機構による伸縮脚部材のロックが解除される遠隔操作機構においても適用可能である。
この場合、例えば、手指操作部材のスライドベース部の上面に、カムとして機能する傾斜状の上辺を備えた上方突出部を形成するとともに、昇降部材の上端部に、手指操作部材の前方への移動に伴って上方突出部の上辺により押し上げられる側方突出軸部を形成した構成とすることができる。
【0066】
<その他の実施形態>
この発明による梯子体は、上記各実施形態には限定されず、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で適宜に変更を加えた形態で実施することも勿論可能である。以下は、この発明のその他の実施形態を例示的に示したものである。
【0067】
この発明による梯子体、特に第3の実施形態のように手指操作部が支柱の左右方向内側配置されている梯子体において、操作部の手指操作部を覆うカバー部を設けてもよい。このカバー部により、例えば、梯子兼用脚立を梯子の形態で使用する際に上下反転させられる梯子体に備えられた手指操作部が誤って使用者に踏まれたり、あるいは昇降等の際に手指操作部に物品等が当たったりすることにより破損するのが効果的に防止される。
カバー部は、例えば、手指操作部を操作するためのスペースを確保しながらボックス状とすることができ、また、手指操作部に近接する部品、例えば第3の実施形態の上部保持部材と一体にまたは同部品とは別体に設けることができる。カバー部を上部保持部材と一体に設ける場合、例えば上部保持部材を直方体等の多面体の形態とするとともに、手指操作部が動作する部分を空洞となるように構成することができる。
また、カバー部のうち手指操作部の下方を覆う部分は、梯子として使用するために梯子体が上下反転させられた態様において使用者が誤って載せた足を踏桟の踏面に誘導しうるように、支柱側から左右方向内方に向かって踏桟に近づくように傾斜させられているのが好ましい。
【0068】
この発明による梯子体、特に第3の実施形態のように手指操作部が支柱の左右方向内側に垂直な揺動軸を中心として揺動自在に設けられている梯子体において、手指操作部が支柱を把持した手の人差し指や中指で操作できるように、手指操作部が支柱の左右方向内壁部により接近して配置されるように斜め後方または斜め前方にのびるように設けられていてもよい。
この態様の手指操作部の場合、梯子体の中心に向かって突出する長さが抑えられ、また、一方の梯子体の正面側(昇降面側)に立った使用者が、奥側に位置する他方の梯子体の手指操作部を操作することも可能となる。
さらに、手指操作部が垂直な揺動軸を中心として揺動自在に設けられている梯子体の場合、手指操作部を前後二股状に2つ形成してもよい。この場合、一方の梯子体の正面側(昇降面側)に立った使用者は、同一方の梯子体の伸縮脚部材のロック解除操作を行う場合には手前側の手指操作部を操作し、また、奥側に位置する他方の梯子体の伸縮脚部材のロック解除操作を行う場合には奥側の手指操作部を操作すればよい。
【0069】
この発明による梯子体、特に第1または第2の実施形態のように手指操作部が支柱の背側に配置されている梯子体において、左右の支柱における手指操作部に、対応する高さ付近や手指操作部に近接する踏桟部分に、手指操作部の高さ位置を示すための表示を、梯子体の昇降面側に立っている使用者から視認可能となるように設けてもよい。
当該表示は、例えば、シール・プレート等よりなる表示部材を支柱や踏桟の所要箇所に取り付けたり、印刷・刻印等の表示を支柱や踏桟の所要箇所に設けることにより形成できる。
【0070】
上記各実施形態の梯子体では、操作部が左右2つの手指操作部材で構成されているが、操作部は、例えば、所定の踏桟(下から3段目の踏桟等)の下側、背側または内部に伝動部材を動作させうるように設けられた操作部本体と、操作部本体と連動するようにこれと一体または別体に設けられた端部操作部(端部操作部材)とで構成し、端部操作部を手指操作部とするようにしても構わない。
【0071】
上記の各実施形態では、この発明による梯子体を、遠隔操作機構付き伸縮脚装置を備えた梯子兼用脚立に適用しているが、この発明は、梯子体を備えたその他の高所作業用構造体、すなわち、梯子、専用脚立、足場台等についても、同様に適用できる。
また、上記の各実施形態では、その特徴構成である手指操作部を備えた操作部が、伸縮脚装置の遠隔操作機構を操作対象としているが、操作部の操作対象は上記に限定されず、その他、例えば、支柱の外側に開閉自在に設けられるアウトリガー、梯子体の上部に伸縮自在に設けられる上枠部、梯子体の所定高さ位置に折り畳み自在に設けられるワークステップ(天板)・物品載置用トレイ・開き止め装置のロック/ロック解除機構等についても、同様に操作対象とすることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0072】
この発明は、高所作業用構造体である梯子、専用脚立、梯子兼用脚立、足場台等の梯子体であって、例えば、伸縮脚装置の遠隔操作機構に設けられた伝動部材等よりなる動作部と、該動作部を動作させるための操作部とを備えている梯子体について好適に使用されるものである。
【符号の説明】
【0073】
(1):梯子兼用脚立
(2):梯子体
(3):支柱
(4A)(4B)(4C)(4D)(4E):踏桟
(5):伸縮脚装置
(6):伸縮脚部材
(7):ロック機構
(71):ラック(被係止部)
(72):係止部材
(725):上方突出部(下部伝達部)
(8):遠隔操作機構
(9):昇降部材(伝動部材)
(9X):回転部材(伝動部材)
(91):押圧部材(下部伝達部)
(10)(10X)(10Y)(10Z):手指操作部材(操作部)
(101)(101X)(101Y)(101Z):手指操作部
(101a):湾曲部
(11):下部伝達部材(下部伝達部)