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特開2025-1330注意機能検査支援システムおよび注意機能検査支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001330
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】注意機能検査支援システムおよび注意機能検査支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/16 20060101AFI20241225BHJP
   A61B 3/113 20060101ALI20241225BHJP
   A61B 5/11 20060101ALI20241225BHJP
   A61B 5/18 20060101ALN20241225BHJP
【FI】
A61B5/16 400
A61B3/113
A61B5/11 230
A61B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100849
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直行
(72)【発明者】
【氏名】大保 武慶
(72)【発明者】
【氏名】寄田 明宏
(72)【発明者】
【氏名】青村 茂
【テーマコード(参考)】
4C038
4C316
【Fターム(参考)】
4C038PP03
4C038PQ03
4C038PR04
4C038PS00
4C038PS07
4C316AA21
4C316FA01
4C316FA02
4C316FA19
4C316FB03
4C316FB12
(57)【要約】
【課題】注意機能検査を行う被検者の検査の負担を減らすこと。
【解決手段】注意機能検査用の画像を画面(7a)に表示する検査用画像表示手段(71)と、画像上においていずれかの文字を選択する入力を行うための接触部(8a)が画面(7a)に接触する位置を検出する接触位置検出手段(72)と、接触部(8a)が画面(7a)に接触する圧力を検出する圧力検出手段(73)と、被検者が画面(7a)上の見ている位置を検出する視線検出手段(74)と、接触位置検出手段(72)の検出結果と、圧力検出手段(73)の検出結果と、視線検出手段(74)の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する記憶手段(76)と、記憶手段(76)に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて接触部(8a)の位置と圧力と見ている位置とを画面(7a)に表示する結果表示手段(77)と、を備えた注意機能検査支援システム(S)。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検査用の文字が離散的に配置された注意機能検査用の画像を画面に表示する検査画像表示手段と、
前記画像上においていずれかの文字を選択する入力を行うための接触部が前記画面に接触する位置を検出する接触位置検出手段と、
前記接触部が前記画面に接触する圧力を検出する圧力検出手段と、
前記注意機能検査を受ける被検者の視線に基づいて、被検者が前記画像上の見ている位置を検出する視線検出手段と、
前記接触位置検出手段の検出結果と、前記圧力検出手段の検出結果と、前記視線検出手段の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置とを前記画面に表示する結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする注意機能検査支援システム。
【請求項2】
被検者の手の動きを検出する動作検出手段と、
前記動作検出手段の検出結果も時間経過に応じて記憶する前記記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置と手の動きとを前記画面に表示する前記結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の注意機能検査支援システム。
【請求項3】
前記画面を有する端末と、
前記端末に内蔵された撮像手段と、
前記撮像手段の画角を拡張する拡張手段と、
前記撮像手段での撮像結果に基づいて、前記被検者の手の動きを検出する前記動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする請求項2に記載の注意機能検査支援システム。
【請求項4】
前記複数の検査用の文字のそれぞれに付与された表示順番に基づいて、前記複数の検査用の文字の中の一部の文字を前記画面に表示すると共に、表示された文字を選択する入力がされた場合に、入力がされた文字を非表示とし、前記表示順番が次の前記検査用の文字を前記画面に表示する前記検査画像表示手段、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の注意機能検査支援システム。
【請求項5】
コンピュータを、
複数の検査用の文字が離散的に配置された注意機能検査用の画像を画面に表示する検査画像表示手段、
前記画像上においていずれかの文字を選択する入力を行うための接触部が前記画面に接触する位置を検出する接触位置検出手段、
前記接触部が前記画面に接触する圧力を検出する圧力検出手段、
前記注意機能検査を受ける被検者の視線に基づいて、被検者が前記画像上の見ている位置を検出する視線検出手段、
前記接触位置検出手段の検出結果と、前記圧力検出手段の検出結果と、前記視線検出手段の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置とを前記画面に表示する結果表示手段、
として機能させるための注意機能検査支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の注意機能の検査を支援するための注意機能検査支援システムおよび注意機能検査支援プログラムに関し、特に、医師等が注意機能の診断、判断に好適に利用可能な注意機能検査支援システムおよび注意機能検査支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
交通事故や脳血管障害等が原因で脳に大きな損傷を負った場合、知能の低下、記憶障害、注意障害、推敲機能障害などの高次脳機能障害を呈する場合があることが知られている。脳損傷の軽症者、中小者を含めて、脳損傷を負った人が、社会復帰に際し自動車運転の再開を検討する必要があるが、自動車運転の再開には注意機能の配分性が最も重要と考えられている。特に、高齢運転者による脳機能の低下も社会的に問題となっている。これらの社会背景より、高次脳機能障害患者や高齢者に対して運転再開の判断や注意機能の検査への需要が高まっている。
注意機能の検査として神経心理学テスト注意機能検査(TMT:Trail Making Test)が知られている。TMTは、1~25までの数字が離散的に印刷された紙上で、数字の小さい順に結んでいくAタイプや、数字と仮名文字が離散的に印刷された紙上で「1→あ→2→い→3→う→…」のように数字と仮名文字を交互に順につなげていくBタイプの2種類がある。従来のTMT検査では、AタイプやBタイプにおいて検査開始から終了までの時間を計測して、注意機能の検査、診断を行っている。
【0003】
TMTに関する技術として、非特許文献1~3には、紙で行われていたTMTをタブレット端末に表示して、タブレット端末の画面を指やペンでなぞると共に、視線計測センサを併用して、TMT実施とその解析を行う技術が公知である。
また、非特許文献4,5には、視線を入力としたTMT実施とその解析を行う技術が公知である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】殿村隆太、他4名、“自動運転再開への新たな指標に関する注意機能評価支援システム”、日本交通科学学会、2018年、日本交通科学学会誌、第18号、第2号、p3-p12
【非特許文献2】小野田千明、他1名、“タブレットPC版Trail Making Testによる認知機能評価の可能性”、日本教育情報学会、2013年、日本交通科学学会第29回年会(2013)、P412-P413
【非特許文献3】武田隆宏、“タブレット端末を利用したスマートTMTの開発”、第一工業大学、2021年、第一工業大学研究報告、第33号(2021)pp.47-50
【非特許文献4】奥田悠、他2名、“アイトラッキングによるトレイルメイキングテストの個人差の分析”、比治山大学、吉田研究室、卒論要旨(2016)
【非特許文献5】Stephen L. Hicks,他7名、“An Eye-Tracking Version of the Trail-Making Test(視線追跡型TMT) ”、PLOS ONE、2013年12月18日発行、December 2013,Volume 8, Issue12, e84061
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
(従来技術の問題点)
非特許文献1~5記載の従来技術では、解析のためにTMTの経過時間や誤答記録などの詳細で正確なデータ並びに視線計測の動きや眼球運動の違いなどを解析している。しかしながら、従来技術では、TMTに関する手の動きと、視線の動きとをそれぞれ計測しているだけであり、両者の関係性については検討がされていない。
例えば、被検者が、次の数字、文字を探しているのか、手元(ペン先)を確認しているのか、次の文字を注視しているのか、次の文字に向けて指先(ペン先)を移動させながら次の次の文字を探しているのか、等、解析すべきことは多々あるが、従来技術ではこのような解析は行われておらず、従来技術ではこのような解析は困難である。特に、指先がどの辺りにあるのか脳が認識できない場合は頻繁に手元を確認しやすかったり、半側空間無視では脳が認識できない領域があるためやはり手元を見やすい場合もある。
【0006】
また、TMT自体は、最初から全ての文字が提示されているため、いわば、静的なテストである。一方、自動車の運転は、自動車の走行に伴う道路、周辺状況の変化や、信号機の変化、歩行者や自転車、他の車等の動きも関係する。すなわち、自動車の運転は、いわば、動的な要素が多く、テストを行うのであれば動的な要素が含まれた方がより適切である。したがって、TMTでは、動的な要素が少なく、自動車運転の再開にむけた注意機能の評価としては不十分であるという問題がある。
さらに、非特許文献1-3に記載の従来技術では、視線検出用のセンサや手の動きを検出するためのセンサや解析用のPCなどが必要であり、このシステムが整った場所でしかTMTを行うことができず、簡便性、利便性が低い問題がある。
【0007】
本発明は、従来技術と比べて、注意機能検査を行う被検者の検査の負担を減らすことを第1の技術的課題とする。
また、動的な注意機能検査を実現することを第2の技術的課題とする。
さらに、注意機能検査の簡便性の向上を第3の技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の注意機能検査支援システムは、
複数の検査用の文字が離散的に配置された注意機能検査用の画像を画面に表示する検査画像表示手段と、
前記画像上においていずれかの文字を選択する入力を行うための接触部が前記画面に接触する位置を検出する接触位置検出手段と、
前記接触部が前記画面に接触する圧力を検出する圧力検出手段と、
前記注意機能検査を受ける被検者の視線に基づいて、被検者が前記画像上の見ている位置を検出する視線検出手段と、
前記接触位置検出手段の検出結果と、前記圧力検出手段の検出結果と、前記視線検出手段の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置とを前記画面に表示する結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の注意機能検査支援システムにおいて、
被検者の手の動きを検出する動作検出手段と、
前記動作検出手段の検出結果も時間経過に応じて記憶する前記記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置と手の動きとを前記画面に表示する前記結果表示手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の注意機能検査支援システムにおいて、
前記画面を有する端末と、
前記端末に内蔵された撮像手段と、
前記撮像手段の画角を拡張する拡張手段と、
前記撮像手段での撮像結果に基づいて、前記被検者の手の動きを検出する前記動作検出手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の注意機能検査支援システムにおいて、
前記複数の検査用の文字のそれぞれに付与された表示順番に基づいて、前記複数の検査用の文字の中の一部の文字を前記画面に表示すると共に、表示された文字を選択する入力がされた場合に、入力がされた文字を非表示とし、前記表示順番が次の前記検査用の文字を前記画面に表示する前記検査画像表示手段、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
前記技術的課題を解決するために、請求項5に記載の発明の注意機能検査支援プログラムは、
コンピュータを、
複数の検査用の文字が離散的に配置された注意機能検査用の画像を画面に表示する検査画像表示手段、
前記画像上においていずれかの文字を選択する入力を行うための接触部が前記画面に接触する位置を検出する接触位置検出手段、
前記接触部が前記画面に接触する圧力を検出する圧力検出手段、
前記注意機能検査を受ける被検者の視線に基づいて、被検者が前記画像上の見ている位置を検出する視線検出手段、
前記接触位置検出手段の検出結果と、前記圧力検出手段の検出結果と、前記視線検出手段の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する記憶手段、
前記記憶手段に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置とを前記画面に表示する結果表示手段、
として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1,5に記載の発明によれば、時系列に応じて前記接触部の位置と圧力と見ている位置とを記憶し、表示することで、従来技術と比べて、注意機能検査を行う被検者の検査の負担を減らすことができる。
請求項2に記載の発明によれば、手の動きを検出しない場合に比べて、更に多視点からの解析、評価ができる。
請求項3に記載の発明によれば、内蔵の撮像手段を有する端末で注意機能検査が可能となり、視線検出用のセンサが必要な従来構成に比べて、注意機能検査の簡便性を向上させることができる。
請求項4に記載の発明によれば、全ての検査用の文字が表示される従来技術に対して、動的な注意機能検査を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施例1の注意機能検査支援システムの説明図である。
図2図2は実施例1の注意機能検査支援システムの機能ブロック図である。
図3図3は実施例の結果画像の一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例0016】
図1は本発明の実施例1の注意機能検査支援システムの説明図である。
図1において、本発明の実施例1の注意機能検査支援システムSは、情報処理装置の一例としてのサーバ1を有する。サーバ1は、サーバ本体1aやディスプレイ1b、入力装置の一例としてのキーボード1cやマウス1dを有する。サーバ本体1は、情報通信回線2に接続されている。
被検者が利用する端末の一例としてのタブレット端末7は、表示部(画面)の一例であって、入力部の一例としてのタッチパネル7aを有する。また、タッチパネル7aの外縁部には、撮像部材の一例であって、視線検知部材の一例としてのカメラ7bが配置されている。タブレット端末7は、無線通信で情報通信回線2を介してサーバ1との間で通信可能に構成されている。
【0017】
実施例1のタブレット端末7では、入力器具の一例としてのペン部材8を使用してタッチパネル7aへの入力が可能に構成されている。ペン部材8の先端部には、圧力検知部材の一例としての圧力センサ(図示せず)が内蔵されており、ペン部材8の先端部とタッチパネル7aとの接触圧を検知可能である。ペン部材8は、タブレット端末7との間で、無線通信で情報の送受信が可能に構成されている。なお、実施例では、ペン部材8の圧力センサを使用して接触圧(筆圧)を検出する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、タッチパネル7a自体が筆圧を検知可能な構成であれば、指を使用して入力をする場合でも接触圧の検出が可能である。
【0018】
また、実施例のタブレット端末7のカメラ7bには、拡張部材の一例としての広角レンズ9が装着されている。広角レンズ9は、カメラ7bの画角を拡張する。よって、実施例1のカメラ7bは、動作検出部材の一例としての機能も有し、カメラ7bで人の手の移動(手の動き)を検出可能である。
なお、実施例1では、ペン部材8を使用してタッチパネル7aへの入力を検知する構成を例示したが、これに限定されない。カメラ7bで検出された指の位置に基づいて、タッチパネル7aへの入力を検知することも可能である。このとき、指がタッチパネル7aに近接し且つ非接触な状態で入力を検知する態様、いわゆる、タッチレス入力の態様とすることも可能である。また、指とタッチパネル7aとの距離に基づいて、距離が近いほど筆圧が高いと判別、検知する態様とすることも可能である。
【0019】
(タブレット端末7の機能)
図2は実施例1の注意機能検査支援システムの機能ブロック図である。
図2において、実施例1の注意機能検査支援システムSにおいて、タブレット端末7の制御部70は、外部との信号の入出力および入出力信号レベルの調節等を行うI/O(入出力インターフェース)、必要な起動処理を行うためのプログラムおよびデータ等が記憶されたROM(リードオンリーメモリ)、必要なデータ及びプログラムを一時的に記憶するためのRAM(ランダムアクセスメモリ)、ROM等に記憶された起動プログラムに応じた処理を行うCPU(中央演算処理装置)ならびにクロック発振器等を有する携帯型のコンピュータ装置により構成されている。よって、タブレット端末7の制御部70は、前記ROM及びRAM等に記憶されたプログラムを実行することにより種々の機能を実現することができる。
【0020】
実施例1のタブレット端末7の制御部70は、下記の機能手段(プログラムモジュール)71~77を有する。
検査用画像表示手段71は、複数の検査用の文字(数字やかな文字)が離散的に配置された注意機能検査用の画像を、タッチパネル7aに表示させる。実施例1の検査用画像表示手段71は、動的な要素を出すために、離散的に配置された検査用の文字のそれぞれに、表示する順番を付与しておき、タッチパネル7aには、複数の文字の中で表示順番の小さいものから順に、いずれか1つまたは複数を表示する。すなわち、従来のTMTと異なり、一度にすべての文字を表示するのではなく、全ての文字の中の一部(1つまたは複数)を、タッチパネル7aに表示する。なお、検査用画像表示手段71は、表示されている文字のいずれか1つを選択する入力がされると、選択された文字の表示をタッチパネル7aから消し、次の表示順番の文字をタッチパネル7aに表示する。なお、タッチパネル7aに一度に表示される文字の個数が少ない場合は、短期記憶的に容易に追従できるが、表示個数が多くなるにつれ通常のTMTに近づくこととなる。
接触位置検出手段72は、ペン部材8の先端部がタッチパネル7aに接触する位置(座標)を検出する。接触位置検出手段72は、タッチパネル7a上で予め定められた原点(一例としてタッチパネル7aの左下の角)を基準とする座標を検出する。
【0021】
圧力検出手段73は、接触部(ペン部材8の先端部8a)がタッチパネル7aに接触する圧力を検出する。実施例1の圧力検出手段73は、ペン部材8から送信された圧力センサの検出結果に基づいて、接触圧力を検出する。
視線検出手段74は、被検者が画面上の見ている位置を検出する。実施例1の視線検出出手段74は、カメラ7bで撮影した画像に基づいて、被検者の視線を検出する。なお、視線の検出自体は、従来公知のアイトラッキング技術を使用可能である。アイトラッキング技術は、例えば、非特許文献4,5に記載されており、従来公知であるため詳細な説明は省略する。
【0022】
動作検出手段75は、被検者の手の動きを検出する。実施例1の動作検出手段75は、カメラ7bの検出結果に基づいて、被検者の手の動きを検出する。手の動きとしては、一例として、注意機能検査において次の文字に向けてペン部材8を移動させる際に手がタッチパネル7aに対して上方向、下方向、左方向または右方向に移動しているのか、円を描くように移動しているのか、同じ場所で往復動(振動、痙攣)しているのか、といった動きを検出することが可能である。
記憶手段76は、接触位置検出手段72の検出結果と、圧力検出手段73の検出結果と、視線検出手段74の検出結果と、動作検出手段75の検出結果とを、時間経過に応じて記憶する。実施例1の記憶手段76は、注意機能検査の開始からの経過時間に対応づけて、接触位置や接触圧力、視線、動作の検知結果の時間履歴情報(プロファイルデータ、時系列マルチモーダルデータ)を記憶する。
【0023】
図3は実施例の結果画像の一例の説明図である。
結果表示手段77は、記憶手段76に記憶された情報に基づいて、時系列に応じて前記接触部(ペン部材8の先端部8a)の接触位置と、接触圧力と、被検者が見ている位置(視線)と、手の動きとを含む結果画像101をタッチパネル7aに表示する。図3において、実施例1の結果画像101では、経過時間を示す時間バー102aと、経過時間を進める再生ボタン102bと、表示する時間を指定するための時間指定入力部102cとを有する。なお、実施例1では時間バー102aには、現在表示中の時刻を表示する時刻表示部102dが含まれており、時刻表示部102dを指やペン部材8で触れて時間バー102aに沿って移動させることで、表示する時刻を変更可能に構成されている。また、結果画像101は、接触位置を表示する接触位置表示部103と、接触圧力を表示する圧力表示部104と、視線を表示する視線表示部105と、手の動きを表示する動作表示部106とを有する。
【0024】
実施例1の接触位置表示部103では、一例として、接触位置の経過時間に応じた履歴が表示され、時刻表示部102dよりも前の時間(経過済み)の部分は実線で表示され、時刻表示部102dよりも後の時間(未経過)の部分は破線で表示される。圧力表示部104では、一例として、横軸に経過時間、縦軸に圧力を取ったグラフで表示され、時刻表示部102dに対応する時刻に破線104aが表示されている。視線表示部105では、一例として、視線の経過時間に応じた履歴が表示され、時刻表示部102dよりも前の時間(経過済み)の部分は実線で表示され、時刻表示部102dよりも後の時間(未経過)の部分は破線で表示される。動作表示部106は、各時刻における動作の判定結果が表示される。
また、実施例1の結果画像101では、TMTが終了するまでにかかった時間を表示する終了時間表示部107や、正答率を表示する正答率表示部108も有する。
【0025】
(実施例1の作用)
前記構成を備えた実施例1の注意機能検査支援システムSでは、注意機能検査を行う際に、終了までの時間だけでなく、経過時間に対応付けて接触位置、接触圧力、視線、動作についても記憶されている。したがって、従来のTMTのように終了までの時間だけでなく、各時刻におけるペン部材8の先端部が接触位置や、接触圧力、視線、動作を表示することができる。したがって、被検者の注意機能の診断を行う医師が、注意機能検査が終了するまでの時間だけで診断するのではなく、注意機能検査の途中での被検者のペン部材8の動きや、筆圧(接触圧力)、視線、手の動き等を考慮して判断することが可能になる。
ペン部材8の動きは、注意機能検査の正答、誤答の判断に利用可能であるし、動きと時間経過との組み合わせから、次の文字を探しながら低速で動かしているとか、次の次の文字まで認識していて高速で動かしているとか、を医師が判断することが可能である。また、筆圧が低いと次の文字に向けてスムーズに移動させているとか、を医師が判断可能である。さらに、視線の動きで、被検者が次の文字を探しているのか、手元を見ているのか、を医師が判断可能である。さらに、手の動きで同じ場所で振動していると、次の文字が見つけられずに精神的にいらだっているといった判断も可能である。他にも、ペン部材8の動きと視線の動きから、「次の対象を探索している段階」と「目標を派遣してからそこに向かって移動している段階」を判断することも可能となり、多角的な分析が可能になる。
【0026】
したがって、実施例1の注意機能検査支援システムSでは、従来のTMTよりも注意機能の検査について、医師が診断をする際に、被検者個人個人に応じたきめ細かい診断の支援をすることができる。また、例えば、注意機能検査の全体における視線の分布のクラスタリングや(例えば、手元を見ていることが多いとか)、解析手法における特徴点としてのノード(注視している位置の代表点、もしくは、通過点)の結合関係の有無による視線移動・サッケード(視線移動の速い箇所)を抽出することも可能である。また、入力されたペン部材8の筆圧や手の位置等の時系列データに対してもクラスタリング等の解析を可能としている。
【0027】
また、高次脳機能障害患者のような注意機能の症状を有する被検者や、高齢の被検者に適用する場合には、従来のTMTのように終了するまでの時間だけで診断する単一の判断基準だけでの診断ではなく、ペン部材8の移動の時間履歴や筆圧の時間履歴、視線の時間履歴等から多視点からの詳細な解析・評価が可能であり、注意機能だけでなく、認知機能に関する解析・評価への適用も期待される。したがって、注意機能だけでなく認知機能にも適用することで、例えば、自動車運転の可否判断やリハビリテーションにも応用して役立てることが可能である。特に、実施例1の注意機能検査支援システムSでは、タブレット端末7を使用した1回の検査で、注意機能だけでなく、認知機能や、半側空間無視等の診断に利用できる可能性があり、認知機能用の検査やその他の疾患用の検査を、被検者が個別に行わなければいけなかった従来の技術に比べて、被検者の検査の負担を減らすことが可能になる。さらに、被検者が、例えば、1年に1回のような定期的な検査を行って検査結果を蓄積することで、加齢や時間経過に伴う注意機能や認知機能の変化(症状の悪化や治療による回復過程等)も長期的にモニタリング、評価することも可能である。
【0028】
さらに、実施例1では、タッチパネル7aに表示される文字は、順番に離散的に表示されており、一度にすべてが表示される従来のTMTに比べて、動的な要素が多い。よって、静的な検査しか行うことができない従来のTMTに比べて、動的な検査が可能であり、自動車の運転のような動的な要素が必要な状況における注意機能や認知機能の検査が可能である。
また、実施例1の注意機能検査支援システムSでは、注意機能検査をタブレット端末7のみで行うことが可能である。従来のTMTでは、視線検出用のセンサや手の動きを検出するためのセンサ、解析用のPCが必要となり、このシステムが整った場所でしかTMTを行うことができず、簡便性、利便性が低い問題があった。これに対して、実施例1では、タブレット端末7の内蔵のカメラ7bを使用し、広角レンズ9を設置するという、センサの追加に比べて少ない追加構成で、注意機能検査が可能になっている。よって、タブレット端末7を持ち運んで様々な場所で注意機能検査が可能であり、簡便性、利便性が向上している。
【0029】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)~(H05)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、注意機能検査の画像表示や検出をタブレット端末7で集中して処理を行う構成を例示したが、各手段72~76を、ネットワークに接続されたサーバやコンピュータ装置等で分散して処理を行う構成とすることも可能である。
【0030】
(H02)前記実施例において、手の動きを検出することがより多視点からの検査が可能であるため好ましいが、これに限定されない。手の動きの検出はしない構成とすることも可能である。逆に、他の指標を増やすことも可能であり、例えば、心拍数や、脈拍等の情報を追加で検出する構成とすることも可能である。
(H03)前記実施例において、タブレット端末7で検査と記憶、表示を行う構成を例示したがこれに限定されない。例えば、注意機能検査を行う端末(検査端末)と、結果を表示する端末(表示端末)を別の端末とし、検査端末から検査結果をサーバ1に送信してサーバ1に蓄積すると共に、表示端末ではサーバ1から配信された情報を表示する構成とすることも可能である。したがって、検査端末であるタブレット端末7よりも大画面のディスプレイ(表示端末)に表示することも可能である。また、注意機能検査の実行中に、タブレット端末7の画像を大画面ディスプレイで表示して、医師等の被検者以外の人がリアルタイムで確認、観覧可能な構成とすることも可能である。
【0031】
(H04)前記実施例において、人の手の動きを、広角レンズ9を装着したカメラ7bで検知する構成を例示したがこれに限定されない。例えば、赤外線センサを設置して、人の手の温度(熱)を検出して、人の手の動きを検出する構成とすることも可能である。
(H05)前記実施例において、文字が選択される度に次の文字が離散的な位置に順に表示されていく動的な注意機能検査を行う構成を例示したが、これに限定されず、従来のTMTと同様の静的な検査を実行することも可能である。
【符号の説明】
【0032】
7a…画面、
8a…接触部、
70…制御部、
71…検査用画像表示手段、
72…接触位置検出手段、
73…圧力検出手段、
74…視線検出手段、
75…動作検出手段、
76…記憶手段、
77…結果表示手段、
S…注意機能検査支援システム。
図1
図2
図3