(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001333
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ある種の高い生体利用率を持つアスタキサンチンナノカプセルおよびその製造方法について
(51)【国際特許分類】
B01J 13/02 20060101AFI20241225BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20241225BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241225BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20241225BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20241225BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20241225BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241225BHJP
A61K 47/14 20170101ALI20241225BHJP
A23L 5/44 20160101ALN20241225BHJP
A23L 33/00 20160101ALN20241225BHJP
【FI】
B01J13/02
A61K8/11
A61K8/67
A61K31/122
A61K9/51
A61K47/40
A61K47/34
A61K47/14
A23L5/44
A23L33/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100852
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】519239296
【氏名又は名称】株式会社Breathing Space
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼文▲こう▼
(72)【発明者】
【氏名】李欣
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C206
4G005
【Fターム(参考)】
4B018MA01
4B018MD41
4B018ME10
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC23
4C076DD08F
4C076DD15F
4C076DD28C
4C076DD29C
4C076DD41C
4C076DD46F
4C076DD63F
4C076DD68F
4C076EE16H
4C076EE30H
4C076EE39H
4C076FF02
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF63
4C076GG31
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB431
4C083AC241
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC582
4C083AD071
4C083AD211
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD621
4C083AD622
4C083BB04
4C083CC01
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA10
4C206CB25
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA58
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA02
4C206NA03
4C206NA11
4C206ZC37
4G005AA02
4G005AB30
4G005BA12
4G005BB06
4G005DA05W
4G005DB12Z
4G005DB22X
4G005DC18W
4G005DC32W
4G005DC56W
4G005DD04Z
4G005DD12Z
4G005DD65Z
4G005EA01
4G005EA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水溶性が高く、安定性が高く、生体利用率を高めたアスタキサンチンのナノカプセルの製造法を提供する。
【解決手段】内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン原料、補助材料、球石(メディア)を投入し、一定の回転速度にて研磨することで、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。特徴として、仕込み比に従って、内張がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のボールミル用ポットにアスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤を投入し、均等に分散させた後、ボールミル機で内容物を粉砕し、100メッシュのふるいで篩過する。なお、ボールミル用ポットの容積は600mlであり、メディアは、直径15mmのステンレス製ボールを採用する。また、ボールを用いて充填率を8%~50%することができ、18%の充填率が好ましい。ボールミルは円筒回転式を採用し、回転速度は100rpmが好ましい。粉砕時間は4hが好ましい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある種のアスタキサンチンナノカプセルの製造方法。
製造手順:アスタキサンチン及び補助材料、球石(メディア)を容積600mlのボールミルに投入し、一定の速度で拡販し、メカノケミカル反応によって、アスタキサンチンを均一させ、担体に分散させ、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。
補助材料は、担体、表面活性剤、流動促進剤によって構成される。
固体分散体の中、成分の重量割合は、純度10%のアスタキサンチンが2%~3%、担体が80%~85%、表面活性剤が10%~20%、流動促進剤が0.2%~0.5%。
【請求項2】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、担体はアラビノガラクタン、ポリビニルピロリドン(平均分子量8000)、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【請求項3】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、表面活性剤は、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはホスファチジルコリンである。
【請求項4】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素、タルクまたはステアリン酸マグネシウムである。
【請求項5】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、球石(メディア)は直径5~15mmのステンレス製ボールであり、製造時に投入される個数は50個~300個である。
【請求項6】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、粉砕時間は0.5h~24h、4hが好ましい。
【請求項7】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、製造手順は下記の通りである。
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン、補助材料を合計30g~50g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨することで、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスタキサンチン及び関連化合物の新しい製造方法についての発明である。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチン(Astaxanthin、AST)、IUPAC名は3,3′-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4′-ジオンである。一部の鳥類、水生動物、藻類、酵母に含まれるキサントフィルの一種、ASTはキサントフィルの中で唯一血液脳関門を通過できるものとして、他の抗酸化成分と比べて、高い抗酸化作用およびフリーラジカル除去作用を持つ。
今流通されているアスタキサンチンは主に下記の製品に使われている。
(1) 化粧品原料;(2)健康食品、薬品;(3)食品添加物。
【0003】
アスタキサンチンは既に多くの商品に採用され、応用に関する開発も進んでいる
が、アスタキサンチンのいくつかの性質が、さらなる応用を阻みつつある。
(1) ASTは油溶性キサントフィルの一種、水溶性が極めて低い。基本は脂肪を通 して肌に吸収されるが、浸透性が肌の構造や肌質などに影響されやすい。
(2) ASTの安定性は低く、長い共役不飽和二重結合の構造によって、加工する際は光、熱、金属イオン、酸素およびフリーラジカルに酸化されやすく、抗酸化作用と生理作用を失い、さらに有害物質を発生させ、原料と製品の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
(3) ASTの生体利用率は低く、体内に摂取した際、油脂成分とともに吸収され、肌質や飲食、肝臓や胆嚢の機能によって影響されやすい。さらに、アスタキサンチン遊離体の用量を高めると、身体が分泌した表面活性剤と接合しミセルになり、飽和状態になったアスタキサンチンの生体利用率がさらに低下する。
以上の特徴が、アスタキサンチンの応用における課題となっている。
【0004】
従来のナノカプセル製造方法は、溶融混練法、溶媒蒸発法および噴霧乾燥法が挙げられる。これらの方法は工程上、クロロホルム、酢酸ブチルなどの中極性有機溶媒を使用することによって、有機溶媒の残留が問題視されている。特に化粧品製造の場合は、肌を刺激する恐れがある。また、噴霧乾燥法について、複雑なプロセスによって、製造工程における有効成分のロスが大きく、カプセル中のアスタキサンチン濃度を向上させることがより困難である。さらに、製造時にアスタキサンチンなどのキサントフィルの分解で得られる物質によって、アスタキサンチンの劣化が促進されるも問題になっている。
【0005】
メカノケミストリー法は、エネルギー消費が少なく、有機溶媒が必要としないなどの特徴が、化学製品の生産、研究において、大きな意味を持つ。特に水溶性・安定性の悪い成分、例えば酢酸レチノール、アセチルサリチル酸、タイム精油などのナノカプセル製造において、広く応用されている。
また、有機溶媒を使わないため、有機溶媒による環境汚染がない。さらに、加熱する必要がないため、製造時のアスタキサンチンの熱劣化が少なく、有効成分の濃度および安定性を向上するには、大きな役割を果している。
【0006】
以上を持って、本特許はメカノケミストリー法を応用し、溶媒を使わず、加熱しない方法でナノカプセルを製造し、アスタキサンチンの溶性と浸透性をより向上させ、製品の生体利用率および安定性を高めることを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. J. Su, N. E. Polyakov, W.H. Xu, W.K. Su. Preparation of Astaxanthin Micelles Self-Assembled by a Mechanochemical Method from Hydroxypropyl β-Cyclodextrin and Glyceryl Monostearate with Enhanced Antioxidant Activity[J]. International Journal of Pharmaceutics, 2021, 605:120799.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アスタキサンチンの難溶性・不安定性・生体利用率が低い特徴が、成分本来の抗酸化作用およびフリーラジカル除去効果を大きく制限している。また、アスタキサンチンは中極性成分であるため、従来の製造法は、有機溶媒を用いて原料を溶解する必要があるが、同時に有機溶媒による残留が製品の生産に影響を及ぼす。さらに、従来のアスタキサンチン製造法は、加熱・乾燥の工程があるため、アスタキサンチンの分解を促進し、安定性をさらに低下させる問題がある。
以上を持って、アスタキサンチンの生体利用率の低さ、有機溶媒の残留および有効成分のロスを改善することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、新たなアスタキサンチンカプセルおよびその製造法を提示する。本発明のアスタキサンチンカプセルの特徴は以下の通りである。
(1) アスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤によって構成される。
(2) 高分子担体はポリビニルピロリドン(平均分子量8000)、アラビノガラクタン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
(3) 表面活性剤は、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル(HLB値60)、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはホスファチジルコリンである。
(4) アスタキサンチンと高分子担体の質量比は1:10~1:100であり、1:30が好ましい。
(5) アスタキサンチンと表面活性剤の質量比は1:1~1:10であり、1:6が好ましい。
【0010】
本発明のアスタキサンチンナノカプセルの製造法の特徴は以下の通りである
(1) 仕込み比に従って、内張がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のボールミル用ポットにアスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤を投入し、均等に分散させた後、ボールミル機で内容物を粉砕し、100メッシュのふるいで篩過する。
(2) ボールミル用ポットの容積は600mlであり、球石(メディア)は直径15mmのステンレス製ボールを採用する。また、球石を用いて充填率を8%~50%することができ、18%の充填率が好ましい。
(3) ボールミルは円筒回転式を採用し、回転速度は50~220rpm、100rpmが好ましい。
(4) 粉砕時間は0.5h~24h、4hが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提示する新型アスタキサンチンナノカプセルは、既存商品と比べ、水溶性が高く(78倍に向上)、安定性が高い(90日の加速劣化試験行った結果、保存率が30%向上)。また、アスタキサンチンの生体利用率が45%AUC0-∞向上し、高利用率の化粧品・健康食品製造に適する。さらに、本発明で採用されるアスタキサンチンナノカプセルの製造法は、煩雑な手順がなく、メカノケミストリー法の特徴の一つとして、ジクロロメタン、酢酸ブチルなどの有機溶媒を必要としないことで、有機溶媒による汚染・残留を解決することができる。なお、本製造法は加熱・乾燥の工程がないため、原料の熱劣化を防ぎ、商品の安定性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は違う処方を投入した後血漿の中のアスタキサンチンの濃度変化を示した折れ線グラフである。
【
図2】
図2は違う処方を投入した後各組織の中のアスタキサンチンの濃度変化を示した棒グラフである。
【
図3】
図3は透過型電子顕微鏡で撮影した実施例2(
図3a)および実施例3(
図3b)のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
具体的な実施例を用いて本発明を解説する。なお、本発明の特許請求範囲は下記事例に限らない。
【実施例0014】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例1の結果とする。
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例2の結果とする。