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特開2025-1333ある種の高い生体利用率を持つアスタキサンチンナノカプセルおよびその製造方法について
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001333
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ある種の高い生体利用率を持つアスタキサンチンナノカプセルおよびその製造方法について
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/02 20060101AFI20241225BHJP
   A61K 8/11 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 31/122 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 47/40 20060101ALI20241225BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20241225BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20241225BHJP
   A23L 5/44 20160101ALN20241225BHJP
   A23L 33/00 20160101ALN20241225BHJP
【FI】
B01J13/02
A61K8/11
A61K8/67
A61K31/122
A61K9/51
A61K47/40
A61K47/34
A61K47/14
A23L5/44
A23L33/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023100852
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】519239296
【氏名又は名称】株式会社Breathing Space
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼文▲こう▼
(72)【発明者】
【氏名】李欣
【テーマコード(参考)】
4B018
4C076
4C083
4C206
4G005
【Fターム(参考)】
4B018MA01
4B018MD41
4B018ME10
4C076AA65
4C076BB01
4C076BB31
4C076CC23
4C076DD08F
4C076DD15F
4C076DD28C
4C076DD29C
4C076DD41C
4C076DD46F
4C076DD63F
4C076DD68F
4C076EE16H
4C076EE30H
4C076EE39H
4C076FF02
4C076FF09
4C076FF21
4C076FF36
4C076FF43
4C076FF63
4C076GG31
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB431
4C083AC241
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC582
4C083AD071
4C083AD211
4C083AD221
4C083AD222
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD621
4C083AD622
4C083BB04
4C083CC01
4C083FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA10
4C206CB25
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA58
4C206MA72
4C206MA83
4C206NA02
4C206NA03
4C206NA11
4C206ZC37
4G005AA02
4G005AB30
4G005BA12
4G005BB06
4G005DA05W
4G005DB12Z
4G005DB22X
4G005DC18W
4G005DC32W
4G005DC56W
4G005DD04Z
4G005DD12Z
4G005DD65Z
4G005EA01
4G005EA03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水溶性が高く、安定性が高く、生体利用率を高めたアスタキサンチンのナノカプセルの製造法を提供する。
【解決手段】内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン原料、補助材料、球石(メディア)を投入し、一定の回転速度にて研磨することで、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。特徴として、仕込み比に従って、内張がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のボールミル用ポットにアスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤を投入し、均等に分散させた後、ボールミル機で内容物を粉砕し、100メッシュのふるいで篩過する。なお、ボールミル用ポットの容積は600mlであり、メディアは、直径15mmのステンレス製ボールを採用する。また、ボールを用いて充填率を8%~50%することができ、18%の充填率が好ましい。ボールミルは円筒回転式を採用し、回転速度は100rpmが好ましい。粉砕時間は4hが好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある種のアスタキサンチンナノカプセルの製造方法。
製造手順:アスタキサンチン及び補助材料、球石(メディア)を容積600mlのボールミルに投入し、一定の速度で拡販し、メカノケミカル反応によって、アスタキサンチンを均一させ、担体に分散させ、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。
補助材料は、担体、表面活性剤、流動促進剤によって構成される。
固体分散体の中、成分の重量割合は、純度10%のアスタキサンチンが2%~3%、担体が80%~85%、表面活性剤が10%~20%、流動促進剤が0.2%~0.5%。
【請求項2】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、担体はアラビノガラクタン、ポリビニルピロリドン(平均分子量8000)、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
【請求項3】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、表面活性剤は、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはホスファチジルコリンである。
【請求項4】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、流動促進剤はコロイド状二酸化ケイ素、タルクまたはステアリン酸マグネシウムである。
【請求項5】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、球石(メディア)は直径5~15mmのステンレス製ボールであり、製造時に投入される個数は50個~300個である。
【請求項6】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、粉砕時間は0.5h~24h、4hが好ましい。
【請求項7】
請求項1に述べた製造方法の特徴として、製造手順は下記の通りである。
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン、補助材料を合計30g~50g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨することで、アスタキサンチンのナノカプセルを製造する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスタキサンチン及び関連化合物の新しい製造方法についての発明である。
【背景技術】
【0002】
アスタキサンチン(Astaxanthin、AST)、IUPAC名は3,3′-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4′-ジオンである。一部の鳥類、水生動物、藻類、酵母に含まれるキサントフィルの一種、ASTはキサントフィルの中で唯一血液脳関門を通過できるものとして、他の抗酸化成分と比べて、高い抗酸化作用およびフリーラジカル除去作用を持つ。
今流通されているアスタキサンチンは主に下記の製品に使われている。
(1) 化粧品原料;(2)健康食品、薬品;(3)食品添加物。
【0003】
アスタキサンチンは既に多くの商品に採用され、応用に関する開発も進んでいる
が、アスタキサンチンのいくつかの性質が、さらなる応用を阻みつつある。
(1) ASTは油溶性キサントフィルの一種、水溶性が極めて低い。基本は脂肪を通 して肌に吸収されるが、浸透性が肌の構造や肌質などに影響されやすい。
(2) ASTの安定性は低く、長い共役不飽和二重結合の構造によって、加工する際は光、熱、金属イオン、酸素およびフリーラジカルに酸化されやすく、抗酸化作用と生理作用を失い、さらに有害物質を発生させ、原料と製品の品質に悪影響を及ぼす恐れがある。
(3) ASTの生体利用率は低く、体内に摂取した際、油脂成分とともに吸収され、肌質や飲食、肝臓や胆嚢の機能によって影響されやすい。さらに、アスタキサンチン遊離体の用量を高めると、身体が分泌した表面活性剤と接合しミセルになり、飽和状態になったアスタキサンチンの生体利用率がさらに低下する。
以上の特徴が、アスタキサンチンの応用における課題となっている。
【0004】
従来のナノカプセル製造方法は、溶融混練法、溶媒蒸発法および噴霧乾燥法が挙げられる。これらの方法は工程上、クロロホルム、酢酸ブチルなどの中極性有機溶媒を使用することによって、有機溶媒の残留が問題視されている。特に化粧品製造の場合は、肌を刺激する恐れがある。また、噴霧乾燥法について、複雑なプロセスによって、製造工程における有効成分のロスが大きく、カプセル中のアスタキサンチン濃度を向上させることがより困難である。さらに、製造時にアスタキサンチンなどのキサントフィルの分解で得られる物質によって、アスタキサンチンの劣化が促進されるも問題になっている。
【0005】
メカノケミストリー法は、エネルギー消費が少なく、有機溶媒が必要としないなどの特徴が、化学製品の生産、研究において、大きな意味を持つ。特に水溶性・安定性の悪い成分、例えば酢酸レチノール、アセチルサリチル酸、タイム精油などのナノカプセル製造において、広く応用されている。
また、有機溶媒を使わないため、有機溶媒による環境汚染がない。さらに、加熱する必要がないため、製造時のアスタキサンチンの熱劣化が少なく、有効成分の濃度および安定性を向上するには、大きな役割を果している。
【0006】
以上を持って、本特許はメカノケミストリー法を応用し、溶媒を使わず、加熱しない方法でナノカプセルを製造し、アスタキサンチンの溶性と浸透性をより向上させ、製品の生体利用率および安定性を高めることを目的とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】W. J. Su, N. E. Polyakov, W.H. Xu, W.K. Su. Preparation of Astaxanthin Micelles Self-Assembled by a Mechanochemical Method from Hydroxypropyl β-Cyclodextrin and Glyceryl Monostearate with Enhanced Antioxidant Activity[J]. International Journal of Pharmaceutics, 2021, 605:120799.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
アスタキサンチンの難溶性・不安定性・生体利用率が低い特徴が、成分本来の抗酸化作用およびフリーラジカル除去効果を大きく制限している。また、アスタキサンチンは中極性成分であるため、従来の製造法は、有機溶媒を用いて原料を溶解する必要があるが、同時に有機溶媒による残留が製品の生産に影響を及ぼす。さらに、従来のアスタキサンチン製造法は、加熱・乾燥の工程があるため、アスタキサンチンの分解を促進し、安定性をさらに低下させる問題がある。
以上を持って、アスタキサンチンの生体利用率の低さ、有機溶媒の残留および有効成分のロスを改善することが課題となっている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、新たなアスタキサンチンカプセルおよびその製造法を提示する。本発明のアスタキサンチンカプセルの特徴は以下の通りである。
(1) アスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤によって構成される。
(2) 高分子担体はポリビニルピロリドン(平均分子量8000)、アラビノガラクタン、β-シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。
(3) 表面活性剤は、モノステアリン酸グリセロール、ショ糖脂肪酸エステル(HLB値60)、大豆レシチン、卵黄レシチン、またはホスファチジルコリンである。
(4) アスタキサンチンと高分子担体の質量比は1:10~1:100であり、1:30が好ましい。
(5) アスタキサンチンと表面活性剤の質量比は1:1~1:10であり、1:6が好ましい。
【0010】
本発明のアスタキサンチンナノカプセルの製造法の特徴は以下の通りである
(1) 仕込み比に従って、内張がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のボールミル用ポットにアスタキサンチン、高分子担体、表面活性剤を投入し、均等に分散させた後、ボールミル機で内容物を粉砕し、100メッシュのふるいで篩過する。
(2) ボールミル用ポットの容積は600mlであり、球石(メディア)は直径15mmのステンレス製ボールを採用する。また、球石を用いて充填率を8%~50%することができ、18%の充填率が好ましい。
(3) ボールミルは円筒回転式を採用し、回転速度は50~220rpm、100rpmが好ましい。
(4) 粉砕時間は0.5h~24h、4hが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明が提示する新型アスタキサンチンナノカプセルは、既存商品と比べ、水溶性が高く(78倍に向上)、安定性が高い(90日の加速劣化試験行った結果、保存率が30%向上)。また、アスタキサンチンの生体利用率が45%AUC0-∞向上し、高利用率の化粧品・健康食品製造に適する。さらに、本発明で採用されるアスタキサンチンナノカプセルの製造法は、煩雑な手順がなく、メカノケミストリー法の特徴の一つとして、ジクロロメタン、酢酸ブチルなどの有機溶媒を必要としないことで、有機溶媒による汚染・残留を解決することができる。なお、本製造法は加熱・乾燥の工程がないため、原料の熱劣化を防ぎ、商品の安定性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は違う処方を投入した後血漿の中のアスタキサンチンの濃度変化を示した折れ線グラフである。
図2図2は違う処方を投入した後各組織の中のアスタキサンチンの濃度変化を示した棒グラフである。
図3図3は透過型電子顕微鏡で撮影した実施例2(図3a)および実施例3(図3b)のTEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
具体的な実施例を用いて本発明を解説する。なお、本発明の特許請求範囲は下記事例に限らない。
【実施例0014】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例1の結果とする。
【実施例0015】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例2の結果とする。
【実施例0016】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、アラビノガラクタン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例3の結果とする。
【実施例0017】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、モノステアリン酸グリセロール6.0g、ポリビニルピロリドン(平均分子量8000)30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例4の結果とする。
【実施例0018】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、ショ糖脂肪酸エステル6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例5の結果とする。
【実施例0019】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、コレステロール6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例6の結果とする。
【実施例0020】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、大豆レシチン6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例7の結果とする。
【実施例0021】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、卵黄レシチン6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例8の結果とする。
【実施例0022】
容積が600mlの内張がPTFEのボールミルポットにアスタキサンチン1.0g、ホスファチジルコリン6.0g、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン30g、コロイド状二酸化ケイ素0.11g、L-システイン0.37g、直径15mmのステンレス製ボール64個を投入し、回転速度を100rpmにし、4時間研磨する。得られるアスタキサンチンナノカプセルを実施例9の結果とする。
【実施例0023】
アスタキサンチン濃度測定方法:(実施例10以降は上記実施例結果についての分析及びテストである)
アスタキサンチンの標準曲線の描画手順:
アスタキサンチン(Shanghai Aladdin Bio-Chem Technology Co., LTD製、純度98%)を0.0055g取り、容積50mlのメスフラスコに投入し、分析用アセトンで定容し、十分に混合する、それぞれ55 μg/ml、27.5 μg/ml、22 μg/ml、11 μg/ml、1.1μg/mlに希釈し、孔径0.45 μmのろ紙でろ過した後、HPLC法で濃度を測定する。
【0024】
HPLCの測定条件は以下の通りである:
測定機械:UV/VIS検出器
カラム:YMC-Carotenoid (4.6×250mm,5um)
カラム温度:25℃
流速:1.0ml/min
注入量:20μL
移動相:メチルtert-ブチルエーテル、メタノール、1 %リン酸水溶液
測定波長:474nm
グラジエント溶離の条件は表1の通りである。
【0025】
【表1】

異なる濃度のピーク面積を得て、濃度に対し線形回帰分析を行う。なお回帰式は
y =3.6386x-0.4621(R^2= 0.9999)であり、適用濃度範囲は(1.1μg/ml-55μg/ml)である。
測定溶液を標準曲線ピーク面積範囲内に収まるよう希釈し、希釈倍率をVとする。HPLCで溶液のピーク面積PAを測定し、下記の計算式(数1)で溶液中のアスタキサンチン濃度を計算する。
【0026】
【数1】
【実施例0027】
実施例アスタキサンチンナノカプセルの溶解度測定
実施例のすべての結果に対し、可溶化の測定を行う。手順は下記の通りである。
5gのアスタキサンチンナノカプセルを50mlの蒸留水に投入し、十分に混合させる。その後、温度設定37℃、振盪速度180rpmのシェイキングバスに設置し、24時間を経て十分に飽和状態まで溶解させ、飽和状態の溶液を孔径0.45 μmのろ紙でろ過する。さらにHPLC法でろ液のピーク面積PAを測定し、標準曲線を用いて飽和溶液の中のアスタキサンチン濃度を計算する。実施例1~9のアスタキサンチンナノカプセルの溶解度は、表1にて示す。
【0028】
表2の示す通り、実施例1~9のアスタキサンチンナノカプセルの中、実施例3のアスタキサンチンナノカプセルの溶解度は最も優れており、24時間での飽和溶解度は914.29 mg/Lになっており、市販サンプルの78.61倍となっている。
【0029】
【表2】
【実施例0030】
実施例アスタキサンチンナノカプセル安定性の測定方法
実施例のアスタキサンチンの安定性について検証する、具体的な検証方法は下記の通りである。
それぞれ実施例1~9を50mg取り、100mlのメスフラスコに投入し、アセトンを用いて定容する。実施例11に示したHPLC測定法でアスタキサンチンの濃度C0 (mg/L)を測定し、さらに実施例1~9それぞれ5gを取り、密封袋に保存し、アルミ箔袋で密封する、袋に番号を振り当て、安定性試験器にセットし安定性を検証する。
安定性試験器の設定に関して、温度を37℃±2℃、相対湿度を65%±5%にする。三ヶ月保存した後、50mgの中身を取り、100mlのメスフラスコに投入し、アセトンを用いて定容する。実施例11に示したHPLC測定法でアスタキサンチンの濃度C0 (mg/L)を測定し、下記の計算式(数2)を用いてアスタキサンチンの保存率Rva %を計算する。
【0031】
【数2】
【0032】
実施例1~9の加速劣化保存率の結果は表3にて示す。
【0033】
【表3】
【0034】
以上を持って、実施例3のアスタキサンチンナノカプセルは最も安定性し、溶解度と合わせ総合的に考え、実施例2および実施例3のアスタキサンチンナノカプセルの溶解度・安定性は最も優れており、アスタキサンチン原料と市販サンプルと比べ、溶解度と安定性が著しく改善されている。
【実施例0035】
生体利用率評価
安定性・溶解度の良い実施例2および実施例3に対し、SDラット体内での生体利用率検証を行う。なお、対照として市販アスタキサンチンカプセル(BioAstin製)を採用する。検証方法は下記の通りである。
SDラットが実験適応にできるよう、投薬前一週間から温度・相対湿度一定で、12時間/12時間の明暗周期がある環境に管理する。なお餌および水の投与は適度に行い、投薬前12時間から投薬後3時間の給餌はしない。
実施例2,3および対照品を同じ用量(0.72mg/kg体重)を取り、10ml 1%のカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を調製し、SDラットに経口投与を行う。なお、個体差を補正するため、単群試験と並行群間比較試験を合わせて検証する。投薬直後、1、2、3、4、5、6、8、10、12、24、48、72時間後、SDラットの眼窩静脈叢から採血(200ul)し、5mlのヘパリンの入った遠心管に注入し、十分に混合させ、回転数14000r/minの遠心機で20分間遠心した後、上清の血漿をー70℃の冷凍庫にて保管する。
【0036】
直射日光を避け、室温環境にて実施例13で得られた血漿サンプルを解凍した後、それぞれ100μLを取り、1.5mlの遠心管に投入し、さらに200μl 1:9のエタノールとテトラヒドロフラン溶液を加え、2分間攪拌し、14000 rpm/minの回転数で20分間遠心する。50μLの上清液を取り、窒素を注入し40℃の環境で蒸発させた後、アセトンを用いて再溶解させる。実施例10に述べた方法で、違う処方を投入した後血漿の中のアスタキサンチンの濃度変化を計算し、描画する。濃度数値を薬物動態学ソフトDAS2.0に導入し、血中濃度曲線(図1)および薬物動態パラメータを算出する。なお算出したパラメータは表4に示す。
【0037】
【表4】
【0038】
以上を持って、実施例2および3は、市販サンプルより、アスタキサンチンの生体利用率が高いことが証明される。
【実施例0039】
アスタキサンチンの体内分布について測定する:溶解度および安定性の高い実施例2と実施例3をSDラットに経口投与した後の生体利用率を測定する、なお対照として市販アスタキサンチンカプセル(BioAstin製)を採用する。実験手順は以下の通りである。
SDラットが実験適応にできるよう、投薬前一週間から温度・相対湿度一定で、12時間/12時間の明暗周期がある環境に管理する。なお餌および水の投与は適度に行い、投薬前12時間から投薬後3時間の給餌はしない。
実施例2,3および対照品を同じ用量(7.2mg/kg体重)を取り、10ml 1%のカルボキシメチルセルロースナトリウム水溶液を調製し、SDラットに経口投与を行う。七日後、すべてのSDラットにケタミン(400mg/kg体重)及びキシラジン(20mg/kg体重)を腹腔内投与し安楽死させた後、肝臓、脾臓、腎臓、肺、心臓などの臓器を摘出し秤量する。各組織を均質化し、蒸留水、メタノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(500mg/L)、クロロホルムと混合し、均質化する。均質化した混合物を4℃の環境で4000rmpの回転速度で15分間遠心する。上清を回収し、40℃の窒素気流下の元で蒸発させ、アセトンで還流させる。実施例10に示した方法で、違う処方を投入した後各組織の中のアスタキサンチンの濃度変化を描画する(図2)。
【実施例0040】
実施例2および3の微細形態
透過型電子顕微鏡で実施例2と実施例3の飽和溶液の微細形態を観察する。手順は以下の通りである。
1mgぐらいのサンプルを3mlの純水に混合し、毛細管で吸引し、銅板に複数回スポットする。5回繰り返した後銅板を乾燥させ、透過型電子顕微鏡(HITACHI製、HT7700)で観察し撮影する。なお加速電圧は100kVとする。
撮影したTEM画像(図3)から、実施例2(図3a)、実施例3(図3b)の中にアスタキサンチンは担体材料と一体化し、ナノカプセルになっていることが確認でき、溶解度の向上及び安定性の向上が実現できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明はある種のアスタキサンチンナノカプセルの製造法についての発明である。方法として、アスタキサンチン及び補助材料、球石(メディア)を600mlのボールミルに投入し、一定の攪拌速度でのメカノケミカル反応によって、アスタキサンチンを均一し、担体に分散させ、アスタキサンチンナノカプセルを製造する。
本発明は、温和な条件で、複雑な手順がなく、低コストでアスタキサンチンのナノカプセルを製造できる特徴や、有機溶媒と複雑な機材を必要としないことが、アスタキサンチンのナノカプセルを生産するにおける大きなメリットであり、従来法と比べて、大きな可能性や応用価値が有することが考えられる。
図1
図2
図3
【外国語明細書】