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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025133432
(43)【公開日】2025-09-11
(54)【発明の名称】光導波路構造体
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/295 20060101AFI20250904BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20250904BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20250904BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20250904BHJP
【FI】
G02F1/295
G02B6/12 301
G02B6/122 311
G02B6/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031380
(22)【出願日】2024-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅重
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩市
【テーマコード(参考)】
2H137
2H147
2K102
【Fターム(参考)】
2H137AB12
2H137BA34
2H137BA53
2H137BB12
2H137BB25
2H137BC25
2H137DB16
2H147AB05
2H147AB11
2H147AC01
2H147AC04
2H147AC17
2H147BB02
2H147BC05
2H147BE23
2H147BG04
2H147BG06
2H147CA11
2H147CB10
2H147CD02
2H147EA12B
2H147EA13A
2H147EA13C
2H147EA14B
2H147GA10
2K102AA21
2K102AA28
2K102BA07
2K102BB04
2K102BB08
2K102BC04
2K102BC10
2K102DA04
2K102DC08
2K102DD03
2K102EA02
2K102EA05
2K102EB08
2K102EB20
2K102EB22
(57)【要約】
【課題】光導波路構造体において、複数本の導波路に伝搬する導波光の位相ばらつきを抑える補正を行うためにその導波光を取得する機能を、その導波路を有するチップに持たせる。
【解決手段】光放射部34は、基板12上において複数本の導波路22のそれぞれに設けられている。そして、その光放射部34は、位相調整器24を通過して導波路22に伝搬する導波光22aの一部を、光アンテナ部26が外部へ放射させる方向とは異なる方向へ導波路22から放射させる。また、光電変換器16は基板12上に設けられ、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側または他方側に配置されている。更に、その光電変換器16の配置位置は、複数本の導波路22のうちそれぞれの光放射部34から放射された放射光の位相が互いに揃ったときにその放射光によって構成される放射ビームが光電変換器16に入射するように定められている。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導波路構造体であって、
基板(12)と、
前記基板上に設けられ、第1方向(D1)へ延伸し、該第1方向に垂直な第2方向(D2)へそれぞれ揃ったピッチ(Pd)で並ぶように配列され、光を伝搬する複数本の導波路(22)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記導波路に伝搬する光の位相を制御する複数の位相調整器(24)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記位相調整器を通過して前記導波路に伝搬する光を該導波路からアンテナ部放射方向(Dan)へ放射させる複数の光アンテナ部(26)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記位相調整器を通過して前記導波路に伝搬する光の一部を放射光として、前記アンテナ部放射方向とは異なる方向へ前記導波路から放射させる複数の光放射部(34)と、
前記基板上に設けられ、前記複数の光放射部に対し前記第2方向の一方側もしくは他方側またはその両方に配置され、入射した光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換器(16、161、162)とを備え、
前記光電変換器の配置位置は、前記複数の光放射部のそれぞれから放射された前記放射光の位相が互いに揃ったときに該放射光によって構成される放射ビーム(Ba、B1a、B2a)が前記光電変換器に入射するように定められている、光導波路構造体。
【請求項2】
前記複数本の導波路はそれぞれ、該導波路のコア部(221)が前記第2方向に有するコア幅(Wc)が局所的に変化したコア幅変化部(341)を有し、
前記複数の光放射部は、前記コア幅変化部によってそれぞれ構成されている、請求項1に記載の光導波路構造体。
【請求項3】
前記複数本の導波路はそれぞれ、該導波路のコア部(221)が前記第2方向に有するコア幅(Wc)が局所的に狭くなったコア幅変化部(341)を有し、
前記複数の光放射部は、前記コア幅変化部によってそれぞれ構成されている、請求項1に記載の光導波路構造体。
【請求項4】
前記複数の光放射部は、前記導波路のコア部(221)に含まれる放射構成部(342)と、該放射構成部から光を出射させるように該放射構成部に近接して設けられると共に前記放射構成部に対し前記第2方向へずれた配置とされた近接配置部(343)とによってそれぞれ構成されている、請求項1に記載の光導波路構造体。
【請求項5】
前記複数の光放射部に含まれる前記近接配置部と前記複数本の導波路は前記基板に対し積層されるようにそれぞれ形成され、
複数の前記近接配置部はそれぞれ、前記導波路のコア部と同じ材料で構成され、該導波路のコア部と同じ層(14)に含まれる、請求項4に記載の光導波路構造体。
【請求項6】
前記光電変換器は複数設けられ、
複数の前記光電変換器は第1の光電変換器(161)と第2の光電変換器(162)とを含み、
前記第1の光電変換器は、前記第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向(D3)に沿う方向視で、前記複数の光放射部から構成された光放射部群(33)の中央(33a)を基準として、前記第2の光電変換器が配置された方位とは異なる方位に配置されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
【請求項7】
前記放射ビームを前記光電変換器へ導く受光用導波路(36)を備え、
前記第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向(D3)に沿う方向視で、前記受光用導波路は、前記複数の光放射部から構成された光放射部群(33)の中央(33a)へ向かって前記光電変換器から延伸している、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
【請求項8】
前記第3方向に沿う方向視で、前記受光用導波路は、該受光用導波路が延伸する方向に沿って前記光電変換器から離れるほど拡幅している、請求項7に記載の光導波路構造体。
【請求項9】
前記複数の光アンテナ部はそれぞれ、前記導波路毎に該導波路に沿って並び該導波路から光を放射させる複数の出光部(30)を有し、
前記複数の光放射部はそれぞれ、前記導波路毎に前記複数の出光部が形成する出光部並び(30c)の途中に配置されている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
【請求項10】
前記複数の光放射部はそれぞれ、前記導波路毎に前記光アンテナ部に対し前記位相調整器側とは反対側に設けられている、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光を伝搬する複数本の導波路を備えた光導波路構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光フェーズドアレイを構成する複数本の導波路から出射された出射光を取得して各導波路に生じた位相のばらつきを測定する位相測定装置が記載されている。この特許文献1の位相測定装置は、光フェーズドアレイから出射された出射光を取得する出射光取得部としてのカメラを、光フェーズドアレイとは別に備えている。そして、特許文献1の位相測定装置は、そのカメラから得られる画像情報に基づいて、各導波路に生じた位相のばらつきを算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-79493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数本の導波路から構成された光フェーズドアレイでは、製造時の加工誤差や部品ばらつき等に起因して、各導波路に伝搬する導波光の位相にばらつきが生じる。そのため、その導波光の位相ばらつきを抑える補正を各導波路の導波光に行う必要がある。この導波光の位相ばらつきを抑える補正を行うための装置として、例えば特許文献1の位相測定装置が提案されている。
【0005】
しかし、特許文献1の位相測定装置では、光フェーズドアレイを有するチップとは別個に、出射光を取得するカメラが必要になり、装置全体として大掛かりなものとなってしまう。このようなことから、光フェーズドアレイを有するチップに、その光フェーズドアレイに含まれる各導波路の導波光を取得する機能を持たせることが好ましいと考えられた。
【0006】
ここで、光フェーズドアレイを有するチップに各導波路の導波光を取得する機能を持たせるため、例えば、光フェーズドアレイの各導波路の相互間に、それぞれの導波路に光結合した導波光取得用の光結合導波路を設けることも考えられるが、これにはデメリットがある。なぜなら、このようにしたとすれば、導波光を伝搬する各導波路の相互間に、上記光結合導波路およびそれに接続される種々の素子が配置されることになり、導波路の並びの狭ピッチ化に制限が生じるからである。そして、導波路の並びの狭ピッチ化が制限されると、光フェーズドアレイの出射光で構成されるビームの走査範囲も制限されることになるからである。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0007】
本開示は上記点に鑑み、光導波路構造体において、複数本の導波路に伝搬する導波光の位相ばらつきを抑える補正を行うためにその導波光を取得する機能を、その導波路を有するチップに持たせることを目的とする。その際、本開示は、導波路の並びの狭ピッチ化を妨げにくい構成を実現する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示の1つの観点による光導波路構造体は、
基板(12)と、
基板上に設けられ、第1方向(D1)へ延伸し、その第1方向に垂直な第2方向(D2)へそれぞれ揃ったピッチ(Pd)で並ぶように配列され、光を伝搬する複数本の導波路(22)と、
基板上において複数本の導波路のそれぞれに設けられ、導波路に伝搬する光の位相を制御する複数の位相調整器(24)と、
基板上において複数本の導波路のそれぞれに設けられ、位相調整器を通過して導波路に伝搬する光をその導波路からアンテナ部放射方向(Dan)へ放射させる複数の光アンテナ部(26)と、
基板上において複数本の導波路のそれぞれに設けられ、位相調整器を通過して導波路に伝搬する光の一部を放射光として、アンテナ部放射方向とは異なる方向へ導波路から放射させる複数の光放射部(34)と、
基板上に設けられ、複数の光放射部に対し第2方向の一方側もしくは他方側またはその両方に配置され、入射した光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換器(16、161、162)とを備え、
光電変換器の配置位置は、複数の光放射部のそれぞれから放射された放射光の位相が互いに揃ったときにその放射光によって構成される放射ビーム(Ba、B1a、B2a)が光電変換器に入射するように定められている。
【0009】
このようにすれば、各導波路に伝搬する導波光の一部が放射光として複数の光放射部のそれぞれから放射され、その放射された放射光は、その放射光の位相が互いに揃ったときには放射ビームとなって光電変換器に入射する。従って、複数本の導波路における導波光の位相ばらつきを抑える補正を行うためにその導波光を取得する機能を、その光電変換器によって得ることができる。そして、その光電変換器は複数本の導波路と共通の基板上に設けられているので、上記導波光を取得する機能を、複数本の導波路を有するチップに持たせることが可能である。
【0010】
また、光電変換器は、複数の光放射部に対し第2方向の一方側もしくは他方側またはその両方に配置されているので、光電変換器の配置に起因して導波路の並びの狭ピッチ化が妨げられることはない。例えば、導波光を伝搬する各導波路の相互間に光電変換器などの種々の素子が配置される場合と比較して、導波路の並びの狭ピッチ化が妨げられにくいと言える。
【0011】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本開示は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一般的な光フェーズドアレイの概略構成を模式的に表した概念図である。
図2図1と同様の概念図を用いて第1参考例の構成を模式的に示すと共に、各導波路に伝搬する導波光の位相がばらつき揃っていない状態を示した図である。
図3】各導波路に伝搬する導波光の位相がばらつき揃っていない図2の状態において、光フェーズドアレイの光アンテナ部からの方位に対する出射光の光強度の分布を示した図である。
図4図1と同様の概念図を用いて第1参考例の構成を模式的に示すと共に、各導波路に伝搬する導波光の位相が揃った状態を示した図であって、図2に相当する図である。
図5】各導波路に伝搬する導波光の位相が揃った図4の状態において、光フェーズドアレイの光アンテナ部からの方位に対する出射光の光強度の分布を示した図であって、図3に相当する図である。
図6図1と同様の概念図を用いて第2参考例の概略構成を模式的に示した第1の図である。
図7】第2参考例の構成を模式的に示した第2の図であって、図6のVII部分を抜粋すると共に導波路の本数を減らして図示された上面図である。
図8】第2参考例および第1実施形態において、各導波路に設けられた光アンテナ部を模式的に示した斜視図である。
図9】第1実施形態において光導波路構造体の概略構成を模式的に表した概念図である。
図10】第1実施形態において図9のX部分を示した図であって、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図である。
図11】第1実施形態において、図10のXI-XI断面を模式的に示した断面図である。
図12】第1実施形態において、図10のXII部分を拡大して示した部分拡大図である。
図13】第1実施形態において、図10のXIII-XIII断面を模式的に示した断面図である。
図14図10と同様の上面図において、光フェーズドアレイの各光放射部から放射された放射光の位相がばらつき揃っていない状態を表した図である。
図15】各光放射部から放射された放射光の位相がばらつき揃っていない図14の状態において、第3方向に沿う方向視である平面視における光放射部群の中央からの方位と放射光の光強度との関係を示した光強度分布図である。
図16図10と同様の上面図において、光フェーズドアレイの各光放射部から放射された放射光の位相が互いに揃った状態を表した図である。
図17】各光放射部から放射された放射光の位相が互いに揃った図16の状態において、平面視における光放射部群の中央からの方位と放射光の光強度との関係を示した光強度分布図である。
図18】第2実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図19】第2実施形態において、図18のXIX部分を拡大して示した部分拡大図であって、図12に相当する図である。
図20】第3実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図21】第3実施形態において、図20のXXI-XXI断面を模式的に示した断面図であって、図13に相当する図である。
図22】第3実施形態において、図20のXXII部分を拡大して示した部分拡大図であって、図12に相当する図である。
図23】各光放射部から放射された放射光の位相が互いに揃った状態において、平面視における光放射部群の中央からの方位と放射光の光強度との関係を示した光強度分布図であって、第3実施形態で図17に相当する図である。
図24】第4実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図25】第4実施形態において、図24のXXV-XXV断面を模式的に示した断面図であって、図13に相当する図である。
図26】第5実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と複数の光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図27】第6実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器と受光用導波路とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図28】第7実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器と受光用導波路とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図29】第8実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図30】第9実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
図31】他の実施形態において、光導波路構造体のうち基板上に設けられた光フェーズドアレイの一部と光電変換器とを模式的に示した上面図であって、図10に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(光フェーズドアレイの説明)
後述する各実施形態で説明される光導波路構造体10は光フェーズドアレイを含むので、一般的な光フェーズドアレイ70について説明する。なお、光フェーズドアレイ、すなわちOptical Phased Arrayは、OPAと略して表記される場合がある。
【0014】
図1に示すように、光フェーズドアレイ70は、機械的な機構を用いることなく、光フェーズドアレイ70から出射されるビームBMの向きや形状を制御することが可能なデバイスである。光フェーズドアレイ70は、光入射部71と、その光入射部71に接続された光分配部72と、その光分配部72に接続され互いに並列配置された複数本の導波路73と、複数の位相調整器74と、複数の光アンテナ部75とを備えている。その位相調整器74は、複数本の導波路73それぞれの途中に設けられ、その導波路73に伝搬する導波光の位相を調整する。複数の光アンテナ部75は、複数本の導波路73のそれぞれの末端部分に設けられ、その導波路73から導波光を出射させる。
【0015】
そして、光入射部71と光分配部72と複数本の導波路73と複数の位相調整器74と複数の光アンテナ部75は、例えば不図示のSi基板上に積層されるようにして形成されている。その「Si」はシリコンを意味する。
【0016】
例えば、赤外線レーザ光源等である光源76から発せられた光は光フェーズドアレイ70の光入射部71に入射し、その入射した光は光分配部72で各導波路73へ分配される。光分配部72で分配され各導波路73に伝搬する光である導波光の位相はそれぞれ位相調整器74によって調整され、その位相調整後の導波光は各導波路73にて光アンテナ部75へ向かって進み、各光アンテナ部75から光フェーズドアレイ70の外部へ出射する。
【0017】
光フェーズドアレイ70は、各光アンテナ部75から出射された光波WBにより形成されるビームBMを、各導波路73に伝搬する導波光の位相を位相調整器74で規則的に制御することにより、任意の方向に形成することができる。
【0018】
ここで、例えば、位相調整器74で導波光の位相が全く制御されずに各光アンテナ部75から導波光が出射されたとすると、図2図3に示すように、まとまったビームBMは形成されない。なぜなら、光フェーズドアレイ70の製造時の加工誤差や部品ばらつき等に起因して、各導波路に伝搬する導波光の位相が不規則にばらついているからである。なお、図2および後述の図4の矢印A0は、図3および後述の図5の横軸に示される0°の方位を示している。
【0019】
そこで、光フェーズドアレイ70を使用する前提として、光フェーズドアレイ70の製造時の加工誤差や部品ばらつき等に起因した導波光の初期位相のばらつきを排除する位相補正が必要となる。その導波光の初期位相とは、位相調整器74で調整される前の導波光の位相である。その位相補正が実施され、各光アンテナ部75から出射する出射光の位相が互いに揃うと、図4図5に示すように、まとまった1本のビームBMが0°の方位に形成されることとなる。
【0020】
例えば、上記の位相補正を行う構成として、次に述べる第1参考例が想定される。その第1参考例では、図2図4に示すように、光フェーズドアレイ70を含むチップとは別個に赤外線カメラ77が設けられる。その赤外線カメラ77は、光フェーズドアレイ70に対する0°の方位に配置され、複数の光アンテナ部75から出射する出射光をその0°の方位から検出できるように設けられる。そして、複数の光アンテナ部75からの出射光が赤外線カメラ77によって監視されながら、図5に示すように、0°の方位における光強度P0が最大になるように各位相調整器74で導波光の位相が調整される。その調整の結果、図4に示すように、0°の方位に1本のビームBMが形成され、位相補正が完了する。
【0021】
上記した第1参考例では、位相補正を行うことは可能ではあるが、光フェーズドアレイ70を含むチップとは別個に赤外線カメラ77を設ける必要があるので、位相補正を行う装置全体が大掛かりなものになる。そのため、光フェーズドアレイ70を含むチップ内で各導波路73における導波光の位相を監視することができる技術が求められている。この要求に応える技術として、次に述べる第2参考例が想定される。
【0022】
その第2参考例では、図6図7に示すように、光フェーズドアレイ70の各導波路73の相互間に導波光取得部80と中継導波路81とフォトダイオード82とがそれぞれ設けられている。そして、その導波光取得部80と中継導波路81とフォトダイオード82と光フェーズドアレイ70は、共通のSi基板83上に形成されている。光フェーズドアレイ70の各導波路73には、光分配部72から矢印Aiで示されるように光が入射する。
【0023】
なお、図7、後述の図8では、導波路73は、その導波路73が有するコア部のみにより表示され、そのコア部周囲のクラッド層の図示は省略されている。このクラッド層の図示を省略する図示方法は、中継導波路81および後述の光結合導波路801の図示でも同様である。
【0024】
導波光取得部80は、一対の光結合導波路801と一対の反射器802と合波器803とを有している。一対の光結合導波路801は、導波光取得部80を挟むように一対を成す導波路73の一方と他方とに対しそれぞれ光結合するように配置されている。そのため、その一対の導波路73のそれぞれにて位相調整器74の通過し光アンテナ部75に到達する直前の導波光の一部が、矢印A1で示されるように導波路73から光結合導波路801へ移る。
【0025】
その光結合導波路801へ移った導波光は、矢印A2で示されるように反射器802で反射され、矢印A3で示されるように合波器803で合波される。更に、その合波器803で合波された光は、矢印A4で示されるように合波器803から中継導波路81を通ってフォトダイオード82へ入力される。導波光に対する位相補正では、フォトダイオード82へ入力される入力光の光強度に応じたフォトダイオード82の出力が、それぞれのフォトダイオード82において最大になるように各位相調整器74で導波光の位相が調整される。その調整の結果、図6にて実線で示されるように、0°の方位に1本のビームBMが形成され、位相補正が完了する。
【0026】
この第2参考例では、図7に示すように各導波路73の相互間に導波光取得部80などが設けられているので、導波路73のピッチP1は導波光取得部80のサイズよりも大きくなる。そして、導波光取得部80は反射器802および合波器803などを有しているので、その導波光取得部80のサイズが大きい。
【0027】
従って、第2参考例では、導波光取得部80が、導波路73のピッチP1を小さくする狭ピッチ化の妨げになっている。すなわち、第2参考例には、導波路73の狭ピッチ化が制限を受けるというデメリットがある。そして、ビームBMを走査することが可能なビーム走査範囲θは、導波路73のピッチP1と同じになる光アンテナ部75のピッチが小さいほど広くなる。従って、導波路73の狭ピッチ化が制限される第2参考例では、ビーム走査範囲θが、各導波路73の相互間に導波光取得部80などが設けられていることに起因して制限を受けることになる。
【0028】
なお、図6にて二点鎖線で示されたビームBMは、0°の方位以外の向きに走査されたビームBMを表している。また、図7では、図示簡略化のため、図6に表示された多数の導波路73を3本に減らして図示されている。
【0029】
また、第2参考例における光アンテナ部75は、図8に示すように、導波路73毎にその導波路73に沿って並びその導波路73から光を放射させる複数の出光部30を有している。そして、その複数の出光部30はそれぞれ、導波路73のコア部のうちその導波路73の長手方向における一部分を構成する第1出光構成部30aと、その第1出光構成部30aに隣接する回折格子である第2出光構成部30bとから構成される。
【0030】
従って、その第1出光構成部30aと第2出光構成部30bは一対を成して出光部30を構成し、複数の第2出光構成部30bは、それが属する出光部30が設けられた導波路73に沿って並んで配置されている。詳細には、複数の第2出光構成部30bはそれぞれ、第1出光構成部30aから染み出た光を回折させて出射させるようにその第1出光構成部30aに対し隣接して配置されている。そのため、矢印A5のように導波路73に伝搬する導波光は、複数の出光部30のそれぞれから導波路73の外部へ矢印A6のように出射する。従って、上記0°の方位は、図7では紙面手前側になる。
【0031】
なお、上記した第1出光構成部30aは例えばSiによって構成され、回折格子である第2出光構成部30bは例えばSiNによって構成されうる。ここで、「SiN」は窒化シリコンを意味する。また、図7では、判りやすい図示とするために、各導波路73、801、81および第2出光構成部30bにハッチングが付されている。また、導波路73の長手方向は図7図8中の第1方向D1に一致する。
【0032】
本開示において以下に説明する各実施形態の光フェーズドアレイ18を含む光導波路構造体10は、導波路73の狭ピッチ化が制限を受けるという第2参考例の上記デメリットに鑑みて構成されている。
【0033】
以下、図面を参照しながら、各実施形態を説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0034】
(第1実施形態)
図9図10に示すように、本実施形態の光導波路構造体10は、基板12、光電変換器16、および光フェーズドアレイ18などを備えている。これらの光電変換器16および光フェーズドアレイ18は、シリコンフォトニクス技術によって基板12上に形成されており、光導波路構造体10は、1つの光集積チップとして構成されている。
【0035】
なお、本実施形態の説明では、光導波路構造体10における向きを表すために、図9図11に示す第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3が用いられることがある。これら第1方向D1、第2方向D2、および第3方向D3は互いに交差する方向、厳密に言えば互いに垂直な方向である。また、図10および、その図10に相当する後述の図では、例えば図11に示されたクラッド層13の図示が省略されているので、光フェーズドアレイ18の導波路22は、その導波路22を構成するコア部221のみによって図示されている。
【0036】
基板12は例えばシリコンすなわちSiで構成され、第1方向D1および第2方向D2へ拡がった矩形の平板状に形成されている。この基板12上には光電変換器16と光フェーズドアレイ18とが形成されている。別言すると、光電変換器16と光フェーズドアレイ18は基板12に対し第3方向D3の一方側に配置され、その基板12に対し一体となるように構成されている。
【0037】
具体的に光導波路構造体10は積層構造を備えており、その光導波路構造体10の積層構造は、図11に示すように、基板12と下部クラッド層131と上部クラッド層132とコア層14とを有している。下部クラッド層131と上部クラッド層132は例えば酸化シリコンすなわちSiOで構成され、コア層14は例えばSiで構成されている。従って、例えば光フェーズドアレイ18が有する複数本の導波路22は互いに同じ材料構成となっている。
【0038】
光導波路構造体10の積層構造において下部クラッド層131は基板12に対し第3方向D3の一方側に積層され、コア層14は下部クラッド層131の一部分に対し第3方向D3の一方側に積層されている。また、上部クラッド層132は、下部クラッド層131に対し第3方向D3の一方側に積層されると共に、下部クラッド層131との間にコア層14を挟むようにそのコア層14に対する第3方向D3の一方側にも積層されている。本実施形態の説明では、下部クラッド層131と上部クラッド層132は、まとめて、クラッド層13と呼ばれる場合がある。
【0039】
図9図10に示すように、光フェーズドアレイ18は、光入射部19、光分配部20、複数本の導波路22、複数の位相調整器24、複数の光アンテナ部26、および複数の光放射部34を備えている。
【0040】
光入射部19と光分配部20と複数本の導波路22は、図11のコア層14と、クラッド層13のうちそのコア層14を囲む部分とによって構成されている。例えば図11に示すように、複数本の導波路22はそれぞれ、コア層14のうち導波路22に対応して形成されたコア部221と、クラッド層13のうちそのコア部221を囲むクラッド部222とから構成されている。
【0041】
図9図11に示すように、光入射部19は、光フェーズドアレイ18のうち、例えば赤外線レーザ光源等である光源76が発する光が入射する部分である。光分配部20は光入射部19に対し第1方向D1の一方側に配置され、複数本の導波路22のそれぞれに対し第1方向D1の他方側に配置されている。要するに、光分配部20は、光入射部19と複数本の導波路22との間に配置されている。そして、その光入射部19と複数本の導波路22はそれぞれ光分配部20に接続されている。この接続関係により、光分配部20は、光入射部19に入射した入射光を複数本の導波路22それぞれへ、矢印Aiで示されるように分配する。
【0042】
複数本の導波路22はそれぞれ、光分配部20から入射した光を伝搬する。この導波路22に伝搬する光は導波光22aと称される場合がある。複数本の導波路22は第1方向D1へそれぞれ延伸している。詳細には、複数本の導波路22はそれぞれ、互いに平行な姿勢で第1方向D1に沿って直線的に延伸している。例えば本実施形態では、複数本の導波路22は互いに同じ形状となるように形成されている。
【0043】
第1方向D1に垂直な横断面に表される導波路22のコア部221の横断面形状、例えば図11に表されるコア部221の断面形状は、矩形形状を成している。例えば、そのコア部221の横断面形状における第3方向D3の厚み寸法tcは「tc=0.21μm」であり、第2方向D2の幅寸法Wcは後述のコア幅変化部341を除き「Wc=0.5μm」である。
【0044】
また、複数本の導波路22は、それぞれ揃ったピッチPdで第2方向D2へ並ぶように配列されている。すなわち、その導波路22のピッチPdは等ピッチであり、複数本の導波路22の何れの相互間でも、その導波路22の相互間隔は同じ大きさとなっている。例えば本実施形態における導波路22のピッチPdは「Pd=1.5μm」とされている。
【0045】
複数の位相調整器24は、基板12上において複数本の導波路22のそれぞれに設けられている。詳細には、複数の位相調整器24は導波路22毎に1つずつ設けられている。従って、光フェーズドアレイ18は、導波路22と同数の位相調整器24を有している。
【0046】
そして、複数の位相調整器24はそれぞれ、その位相調整器24が設けられた導波路22に伝搬する導波光22aの位相を制御する。例えば、位相調整器24は、電気光学効果または熱光学効果により、導波路22のうち位相調整器24が配置された被調整部の構成材料の屈折率を変化させ、その屈折率の変化によってその被調整部を通過する導波光22aの位相を変化させる。
【0047】
位相調整器24が電気光学効果を利用する構成である場合には、位相調整器24は、導波路22を挟んで配置された一対の電極を有し、その一対の電極の間に電圧が印加されることにより導波光22aの位相が変化させられる。また、位相調整器24が熱光学効果を利用する構成である場合には、位相調整器24は、導波路22のうち被調整部を通電により加熱可能なヒータを有し、その被調整部がヒータによって加熱されることにより導波光22aの位相が変化させられる。
【0048】
複数の光アンテナ部26は、基板12上において複数本の導波路22のそれぞれに設けられている。詳細には、複数の光アンテナ部26は導波路22毎に1つずつ設けられている。従って、光フェーズドアレイ18は、導波路22と同数の光アンテナ部26を有している。
【0049】
そして、複数の光アンテナ部26はそれぞれ、その光アンテナ部26が設けられた導波路22に伝搬する導波光22aをその導波路22から放射させる。詳細には、光アンテナ部26は、位相調整器24に対し光分配部20側とは反対側、要するに位相調整器24に対し第1方向D1の一方側に配置されているので、位相調整器24を通過して導波路22に伝搬する導波光22aをその導波路22から放射させる。
【0050】
具体的に、複数の光アンテナ部26はそれぞれ、図8図10に示すように構成されている。すなわち、本実施形態でも上述の第2参考例と同様に、複数の光アンテナ部26はそれぞれ、導波路22毎にその導波路22に沿って並びその導波路22から光を放射させる複数の出光部30を有している。
【0051】
そして、その複数の出光部30はそれぞれ、導波路22のコア部221のうち第1方向D1における一部分を構成する第1出光構成部30aと、その第1出光構成部30aに隣接する回折格子である第2出光構成部30bとから構成される。この第2出光構成部30bは例えば窒化シリコンすなわちSiNで構成されている。そして、第2出光構成部30bは、図8図10図11に示すように、第1出光構成部30aに対して第3方向D3の一方側に配置され、上部クラッド層132内に包含されている。
【0052】
従って、その第1出光構成部30aと第2出光構成部30bは一対を成して出光部30を構成し、複数の第2出光構成部30bは、それが属する出光部30が設けられた導波路22に沿って並んで配置されている。詳細には、複数の第2出光構成部30bはそれぞれ、第1出光構成部30aから染み出た光を回折させて出射させるようにその第1出光構成部30aに対し第3方向D3の一方側に隣接して配置されている。言い換えると、複数の第2出光構成部30bはそれぞれ、第1出光構成部30aから導波光22aを導波路22の外部へ出射させるようにその第1出光構成部30aに近接して配置されている。
【0053】
そのため、導波路22に伝搬する導波光22aは、複数の出光部30のそれぞれから図8の矢印A6のように外部へ出射する。つまり、本実施形態では、導波路22に伝搬する導波光22aを光アンテナ部26が外部へ放射させる方向であるアンテナ部放射方向Danは、図11に示すように第3方向D3に沿った方向になる。なお、図10およびその図10に相当する後述の図では、判りやすい図示とするために、導波路22および第2出光構成部30bにハッチングが付されている。
【0054】
複数の光放射部34は、基板12上において複数本の導波路22のそれぞれに設けられている。詳細には、複数の光放射部34は導波路22毎に1つずつ設けられている。従って、光フェーズドアレイ18は、導波路22と同数の光放射部34を有している。本実施形態の説明では、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34はまとめて光放射部群33と称される場合がある。例えば、複数の光放射部34は、第1方向D1においては互いに揃った位置にそれぞれ設けられている。
【0055】
また、複数の光放射部34はそれぞれ、位相調整器24と光アンテナ部26との間に配置されている。この配置により、光放射部34は、位相調整器24を通過して導波路22に伝搬する導波光22aが光アンテナ部26へ到達する前にその導波光22aの一部を、図11のアンテナ部放射方向Danとは異なる方向へ導波路22から放射させる。例えば本実施形態では、複数の光放射部34はそれぞれ、その光放射部34から第2方向D2の一方側と他方側とへ導波光22aの一部を放射光として放射させる。
【0056】
具体的には図10図12図13に示すように、複数本の導波路22はそれぞれ、その導波路22のコア部221が第2方向D2に有するコア幅である上記の幅寸法Wcが局所的に変化したコア幅変化部341を有している。本実施形態では、導波路22のコア部221のコア幅は、コア幅変化部341にて局所的に狭くなっている。そして、複数の光放射部34は、そのコア幅変化部341によってそれぞれ構成されている。
【0057】
詳細には、導波路22のうちコア幅変化部341には、第2方向D2の一方側からコア部221に切り込まれるように形成され第3方向D3に抜けた溝341aが形成されている。この溝341aの形成により、コア幅変化部341におけるコア部221の幅寸法Wcは、導波路22のうちコア幅変化部341に対し隣接する部位におけるコア部221の幅寸法Wcよりも小さくなっている。
【0058】
なお、本実施形態の溝341aは図12に示すように矩形断面形状を成し、溝341aが第1方向D1に有する溝幅Wmは「Wm=0.1μm」とされ、溝341aが第2方向D2に有する溝深さHmも「Hm=0.1μm」とされている。この溝341aが大きくなるほど光放射部34から放射される光量が増すので、その光放射部34から放射される光量は、溝341aの大きさによって調整される。
【0059】
以上のように構成された光フェーズドアレイ18では、各光放射部34から放射された導波光22aである放射光の位相がばらつき揃っていないと、図14図15に示すように、各光放射部34からの放射光が矢印A7のように分散し、ビームは形成されない。これに対し、各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃った場合、例えばその放射光の位相が互いに同位相となっている場合には、図16図17に示すように、各光放射部34からの放射光によって構成される放射ビームBaが、ある特定の向きに形成される。
【0060】
この放射ビームBaの向きであるビーム形成方向Dba(図10参照)は、例えば導波路22に伝搬する導波光22aの波長に応じて変わるものである。そして、ビーム形成方向Dbaすなわち放射ビームBaの向きは、後述するように、光放射部群33に対する光電変換器16の相対的な配置を決める上で必要な情報である。そのため、本実施形態では、光源76が発する光の波長を予め決めた上で、ビーム形成方向Dbaは、コンピュータシミュレーションによって算出されている。
【0061】
なお、図16では光放射部群33から第2方向D2の一方側へ進む2本の放射ビームBaが矢印で表されているが、光放射部群33に対する第2方向D2の他方側にも一方側と同様に2本の放射ビームBaが形成される。また、図14の矢印B0は、図15および図17の横軸に示される0°の方位を示している。
【0062】
例えば本実施形態では、図10図17に示すように、複数本の放射ビームBaのうちの1本は、第3方向D3に沿う方向視で、図10のビーム軸線Lbaに沿う向きに形成される。すなわち、第3方向D3に沿う方向視で、その1本の放射ビームBaは、光放射部群33の中央33aを基準として第2方向D2の一方側ほど第1方向D1の一方側に位置するように第2方向D2に対し30.5°の角度αを持って形成される。
【0063】
なお、複数本の導波路22にそれぞれ設けられた光放射部34から放射された放射光は、その放射元である導波路22に対して並んで配置された他の導波路22を透過して第2方向D2の一方側と他方側とへ進む。そして、各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃っている場合には、他の導波路22を透過した放射光もそうでない放射光も合わさって放射ビームBaを構成することになる。
【0064】
図10図13に示すように、光電変換器16は、光フェーズドアレイ18が有する全部の導波路22に対し第2方向D2の一方側に配置されている。すなわち、光電変換器16は、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側に配置されている。
【0065】
光電変換器16は、その光電変換器16に入射した光の強度に応じた電気信号を出力するフォトディテクタである。その光電変換器16から出力される電気信号は、基板12上に設けられた不図示の接続端子によって光導波路構造体10の外部へ導かれる。また、光電変換器16は、コア層14のうちの一部分である台座部141に対し第3方向D3の一方側に積層され、その台座部141と上部クラッド層132とによって囲まれている。
【0066】
具体的に本実施形態の光電変換器16は、ゲルマニウムすなわちGeで構成されたフォトダイオードである。そして、光電変換器16に入射した光の強度が大きくなるほど、電気信号としての光電変換器16の出力は大きくなる。図10中の「PD」は、フォトダイオードすなわちphotodiodeの略である。
【0067】
また、図10に示すように、光電変換器16の配置位置は、各光放射部34から放射された放射光の位相が互いに揃ったときに放射ビームBaが光電変換器16に入射するように定められている。詳細に言えば、その放射ビームBaは複数本形成されるので、光電変換器16の配置位置は、その複数本の放射ビームBaのうちの少なくとも1本が光電変換器16に入射するように定められている。
【0068】
例えば本実施形態では、複数本の放射ビームBaのうちの1本は、上記したように、第3方向D3に沿う方向視で、図10のビーム軸線Lbaに沿うように形成される。そのため、第3方向D3に沿う方向視で、光電変換器16は、そのビーム軸線Lbaの延長上に配置されている。例えば、光電変換器16は、光放射部群33の中央33aに対し、第1方向D1の一方側かつ第2方向D2の一方側に配置されている。なお、図10のビーム軸線Lbaは、第2方向D2の一方側ほど第1方向D1の一方側へずれるように第2方向D2に対し角度αだけ傾いたビーム形成方向Dbaに、光放射部群33の中央33aを通って延伸している。
【0069】
以上説明したように構成された光導波路構造体10では、図9図10に示すように、光源76から発せられた光は光フェーズドアレイ18の光入射部19に入射し、その入射した光は光分配部20で各導波路22へ分配される。光分配部20で分配され各導波路22に伝搬する光である導波光22aの位相はそれぞれ位相調整器24によって調整され、その位相調整後の導波光22aは各導波路22にて光アンテナ部26へ向かって進み、各光アンテナ部26から光導波路構造体10の外部へ出射する。
【0070】
但し、本実施形態の光フェーズドアレイ18には光放射部34が設けられているので、各導波路22において、位相調整後の導波光22aのうちの一部分は光アンテナ部26へ到達する前に光放射部34から放射光として放射される。例えば本実施形態では、光放射部34から放射される放射光は、位相調整器24から出た導波光22aに対し3%程度の光量になる。
【0071】
また、本実施形態の光フェーズドアレイ18は、図1の光フェーズドアレイ70と同様にビームBMを走査することができる。すなわち、本実施形態の光フェーズドアレイ18は、各光アンテナ部26から出射された光により形成されるビームBMを、各導波路22に伝搬する導波光22aの位相を位相調整器24で規則的に制御することにより、任意の方向に形成することができる。
【0072】
そして、本実施形態では、各光放射部34からの放射光を利用して、各導波路22における導波光22aの初期位相のばらつきを排除する位相補正が実施される。具体的に、その導波光22aに対する位相補正では、光電変換器16の出力が調整可能な範囲内で最大になるように各位相調整器24で導波光22aの位相が調整される。
【0073】
上述したように、本実施形態によれば、図10図11に示すように、光放射部34は、基板12上において複数本の導波路22のそれぞれに設けられている。そして、その光放射部34は、位相調整器24を通過して導波路22に伝搬する導波光22aの一部を放射光として、図11のアンテナ部放射方向Danとは異なる方向へ導波路22から放射させる。また、光電変換器16は基板12上に設けられ、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側に配置されている。更に、その光電変換器16の配置位置は、複数本の導波路22のうちそれぞれの光放射部34から放射された放射光の位相が互いに揃ったときに放射ビームBaが光電変換器16に入射するように定められている。
【0074】
これにより、各導波路22に伝搬する導波光22aの一部が放射光として複数の光放射部34のそれぞれから放射され、その放射された放射光は、その放射光の位相が互いに揃ったときには放射ビームBaとなって光電変換器16に入射する。従って、複数本の導波路22における導波光22aの位相ばらつきを抑える位相補正を行うためにその導波光22aを取得する機能を、光電変換器16によって得ることができる。そして、その光電変換器16は複数本の導波路22と共通の基板12上に設けられているので、位相補正のために導波光22aを取得する機能を、複数本の導波路22を有するチップに持たせることが可能である。
【0075】
また、光電変換器16は、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側に配置されているので、光電変換器16の配置に起因して導波路22の並びの狭ピッチ化が妨げられることはない。例えば、導波光22aを伝搬する各導波路22の相互間に光電変換器16などの種々の素子が配置される構成、具体的には上記した第2参考例の構成と比較して、導波路22の並びの狭ピッチ化が妨げられにくいと言える。
【0076】
(1)また、本実施形態によれば、図10図12に示すように、複数本の導波路22はそれぞれ、その導波路22のコア部221が第2方向D2に有するコア幅である幅寸法Wcが局所的に変化したコア幅変化部341を有している。そして、複数の光放射部34は、そのコア幅変化部341によってそれぞれ構成されている。従って、導波路22の形状によって光放射部34を形成することができるので、光導波路構造体10の製造上、光放射部34を設けやすいというメリットがある。
【0077】
(2)また、本実施形態によれば、複数本の導波路22がそれぞれ有するコア幅変化部341は、導波路22のコア部221のコア幅が局所的に狭くなった部分である。従って、例えば導波路22のうちコア幅が第2方向D2に局所的に拡がった部分がコア幅変化部341とされる場合と比較して、導波路22の並びの狭ピッチ化を実現しやすいというメリットがある。
【0078】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。また、前述の実施形態と同一または均等な部分については省略または簡略化して説明する。このことは後述の実施形態の説明においても同様である。
【0079】
図18図19に示すように、本実施形態でも第1実施形態と同様に、複数本の導波路22がそれぞれ有するコア幅変化部341は、導波路22のコア幅である幅寸法Wcが局所的に変化した部分である。そして、複数の光放射部34は、そのコア幅変化部341によってそれぞれ構成されている。
【0080】
但し、本実施形態のコア幅変化部341に溝341a(図12参照)は形成されていない。その替わりに本実施形態では、コア幅変化部341に、第2方向D2の一方側へ突き出た突部341bが形成されている。従って、複数本の導波路22がそれぞれ有するコア幅変化部341は、導波路22のコア幅が局所的に拡大した部分となっている。
【0081】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0082】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0083】
図20図22に示すように、本実施形態では、光放射部34の構造が第1実施形態と異なっており、導波路22に図12の溝341aは形成されていない。従って、本実施形態の光放射部34は図12のコア幅変化部341を有していない。
【0084】
具体的に、本実施形態の複数の光放射部34はそれぞれ、放射構成部342と近接配置部343とを有している。その放射構成部342は、導波路22のコア部221のうち第1方向D1における一部分を構成している。また、近接配置部343は、放射構成部342に対し第2方向D2の一方側へずれた配置とされている。具体的に言うと、近接配置部343は、放射構成部342に対し第2方向D2の一方側へ微小な間隔をあけて並んで配置されている。
【0085】
詳細には、導波路22毎に設けられた複数の近接配置部343はそれぞれ、導波路22と同様に、基板12に対し第3方向D3の一方側に積層されるように形成されている。そして、その複数の近接配置部343はそれぞれ、複数本の導波路22のコア部221と同じ材料で構成され、光導波路構造体10の積層構造においてその導波路22のコア部221と同じコア層14に含まれる。つまり、近接配置部343は、コア部221と同じSiで構成され、コア部221と同じ厚み寸法tcを有する。
【0086】
更に、複数の光放射部34のそれぞれにおいて、近接配置部343は、放射構成部342から染み出た光を回折させて出射させるように、その放射構成部342に対し第2方向D2の一方側に隣接して配置されている。言い換えると、近接配置部343は、放射構成部342から導波光22aの一部を導波路22の外部へ出射させるようにその放射構成部342に近接して配置されている。
【0087】
また、近接配置部343は直方体形状を成している。例えば、近接配置部343における第1方向D1の幅である第1幅W1と、第2方向D2の幅である第2幅W2は「W1=W2=0.3μm」であり、第2方向D2における近接配置部343と放射構成部342との相互間隔CDは「CD=0.1μm」である。
【0088】
上記したように光放射部34の近接配置部343は、放射構成部342に対し第2方向D2へずれた配置とされているので、本実施形態でも複数の光放射部34はそれぞれ、その光放射部34から第2方向D2の一方側と他方側とへ導波光22aの一部を放射させる。
【0089】
(1)上述したように、本実施形態によれば、複数の光放射部34はそれぞれ、導波路22のコア部221に含まれる放射構成部342と、近接配置部343とを有している。そして、その近接配置部343は、放射構成部342から導波光22aの一部を出射させるようにその放射構成部342に近接して設けられると共に、放射構成部342に対し第2方向D2へずれた配置とされている。
【0090】
これにより、第2方向D2の一方側と他方側とへ導波光22aの一部を導波路22から放射させるための回折構造を、導波路22に直接形成せずに、導波路22から離隔させて形成することができる。従って、コア層14に対する寸法加工精度が低くても、例えば第1実施形態と比較して、位相補正に使用する光量を小さく設計することが可能である。位相補正に使用する光量が小さくなれば、その分、光アンテナ部26から出射される光量を多くすることができる。
【0091】
なお、図23に示すように、本実施形態でも、各光放射部34からの放射光によって構成される放射ビームBaが第1実施形態と同様に形成され、その放射ビームBaの向きであるビーム形成方向Dbaは、例えば第1実施形態と同じになっている。従って、本実施形態でも、光放射部群33に対する光電変換器16の相対的な配置は、第1実施形態と同じにされている。但し、本実施形態における放射ビームBaの光強度は第1実施形態と比較して低くなる。なお、図23の座標系において横軸を構成する方位は、図17の座標系において横軸を構成する方位と同じである。
【0092】
(2)また、本実施形態によれば、複数の近接配置部343はそれぞれ、複数本の導波路22のコア部221と同じ材料で構成され、光導波路構造体10の積層構造においてその導波路22のコア部221と同じコア層14に含まれる。従って、近接配置部343を設けることに起因した製造上の工数増加を抑えて、近接配置部343を容易に形成することが可能である。
【0093】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0094】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第3実施形態と異なる点を主として説明する。
【0095】
図24図25に示すように、本実施形態では、複数の光放射部34はそれぞれ放射構成部342と近接配置部343とを有しているが、その近接配置部343の配置が第3実施形態と異なっている。
【0096】
具体的に本実施形態では、複数の光放射部34のそれぞれにおいて近接配置部343は、放射構成部342に対し第2方向D2の他方側へずれた配置とされている。そして、近接配置部343はコア層14には含まれず、放射構成部342に対し微小な間隔をあけて第3方向D3の一方側に離れて配置され、近接配置部343のうちの一部分が、放射構成部342のうちの一部分に対し第3方向D3の一方側に重なっている。
【0097】
また、近接配置部343は、導波路22のコア部221と同じ材料で構成されていても構わないが、本実施形態ではコア部221の材料とは異なり例えばSiNで構成されている。
【0098】
本実施形態でも光放射部34の近接配置部343は、放射構成部342に対し第2方向D2へずれた配置とされているので、複数の光放射部34はそれぞれ、その光放射部34から第2方向D2の一方側と他方側とへ導波光22aの一部を放射させる。
【0099】
以上説明したことを除き、本実施形態は第3実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第3実施形態と共通の構成から奏される効果を第3実施形態と同様に得ることができる。
【0100】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0101】
図26に示すように、本実施形態では光電変換器16が基板12上に2つ設けられている。その2つの光電変換器16のうちの一方は第1の光電変換器161と称され、他方は第2の光電変換器162と称される。その第1、第2の光電変換器161、162はそれぞれ第1実施形態の光電変換器16と同じフォトディテクタであり、第3方向D3における第1、第2の光電変換器161、162の配置は第1実施形態の光電変換器16と同じである。
【0102】
その第1の光電変換器161は、第3方向D3に沿う方向視で、光放射部群33の中央33aを基準として、第2の光電変換器162が配置された方位とは異なる方位に配置されている。
【0103】
具体的に、第1の光電変換器161は、第3方向D3に沿う方向視で、光放射部群33の中央33aを通って延伸する第1ビーム軸線L1baに重なるように配置されている。その第1ビーム軸線L1baは、図26に矢印で示された第1放射ビームB1aに沿った直線である。そして、その第1放射ビームB1aは、光源76が発する光の波長が所定の第1波長λ1であって各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃った場合にその放射光によって構成される複数本の放射ビームBaのうちの1本である。このように、第1の光電変換器161の配置は、光源76が発する光の波長が第1波長λ1である場合に対応して定められている。
【0104】
また、第2の光電変換器162は、第3方向D3に沿う方向視で、光放射部群33の中央33aを通って延伸する第2ビーム軸線L2baに重なるように配置されている。その第2ビーム軸線L2baは、第1ビーム軸線L1baと交差し、図26に矢印で示された第2放射ビームB2aに沿った直線である。そして、その第2放射ビームB2aは、光源76が発する光の波長が第1波長λ1とは異なる所定の第2波長λ2であって各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃った場合にその放射光によって構成される複数本の放射ビームBaのうちの1本である。このように、第2の光電変換器162の配置は、光源76が発する光の波長が第2波長λ2である場合に対応して定められている。
【0105】
上記の第1放射ビームB1aに沿った第1ビーム軸線L1baの向きと配置は、光源76が発する光の波長を第1波長λ1と予め定めてコンピュータシミュレーションによって求めることができる。これと同様に、第2放射ビームB2aに沿った第2ビーム軸線L2baの向きと配置は、光源76が発する光の波長を第2波長λ2と予め定めてコンピュータシミュレーションによって求めることができる。
【0106】
(1)上述したように、本実施形態によれば、第1の光電変換器161は、第3方向D3に沿う方向視で、光放射部群33の中央33aを基準として、第2の光電変換器162が配置された方位とは異なる方位に配置されている。
【0107】
そして、光源76が発する光の波長が異なれば、その波長に応じて、各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃った場合にその放射光によって構成される放射ビームB1a、B2aの向きも異なる。従って、光源76が発する光が複数の異なる波長に切り替えられる場合に対応し、それぞれの波長で位相補正を行うために、各導波路22の導波光22aを取得する機能を光導波路構造体10に設けることができる。
【0108】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0109】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第4実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0110】
(第6実施形態)
次に、第6実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0111】
図27に示すように、光導波路構造体10は、光電変換器16に接続された受光用導波路36を備えている。この受光用導波路36は、各光放射部34からの放射光の位相が互いに揃った場合にその放射光によって構成され光放射部群33から放射される放射ビームBaを光電変換器16へ導く導波路である。そのため、第3方向D3に沿う方向視で、受光用導波路36は、光放射部群33の中央33aへ向かって光電変換器16から延伸している。
【0112】
例えば、受光用導波路36は、光導波路構造体10は積層構造において第3方向D3で光電変換器16と同じ積層位置に形成されたコア部と、図13のクラッド層13のうちそのコア部を囲むクラッド部とから構成されている。その受光用導波路36のコア部は例えばSiで構成されている。
【0113】
(1)上述したように、本実施形態によれば、第3方向D3に沿う方向視で、受光用導波路36は、光放射部群33の中央33aへ向かって光電変換器16から延伸している。従って、受光用導波路36は、光放射部群33から放射される放射ビームBaと平行または略平行になるように配置されている。
【0114】
そのため、放射ビームBaは受光用導波路36を通って光電変換器16へ導かれる一方で、放射ビームBaに対し交差する向きの外乱光Nzが光電変換器16へ入射することが受光用導波路36によって妨げられる。その結果、光電変換器16へ入射する放射ビームBaを利用した上記位相補正を高精度に行うことが可能になる。
【0115】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0116】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第5実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0117】
(第7実施形態)
次に、第7実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第6実施形態と異なる点を主として説明する。
【0118】
図28に示すように、第3方向D3に沿う方向視で、受光用導波路36は、その受光用導波路36が延伸する方向すなわちビーム軸線Lbaの延伸方向に沿って光電変換器16から離れるほど拡幅している。つまり、受光用導波路36のうち光放射部群33側の先端の方が光電変換器16側の基端よりも拡幅している。
【0119】
(1)上述したように、本実施形態によれば、第3方向D3に沿う方向視で、受光用導波路36は、その受光用導波路36が延伸する方向に沿って光電変換器16から離れるほど拡幅している。従って、受光用導波路36が光放射部群33側から受光可能な受光可能角度が狭くなる。別言すると、受光用導波路36が光放射部群33側から受光する際の指向性が高くなる。その結果、例えば受光用導波路36が幅一定で延伸した形状である場合と比較して、上記位相補正を高精度に行うことが可能になる。
【0120】
以上説明したことを除き、本実施形態は第6実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第6実施形態と共通の構成から奏される効果を第6実施形態と同様に得ることができる。
【0121】
(第8実施形態)
次に、第8実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0122】
図29に示すように本実施形態では、複数本の導波路22それぞれにおける光放射部34の配置場所が第1実施形態に対し異なっている。なお、図29および後述の図30において出光部30の相互間に表示された「・・・」は、複数の出光部30の図示が省略されていることを意味している。
【0123】
具体的に、本実施形態の複数の光放射部34はそれぞれ、導波路22毎に複数の出光部30が形成する出光部並び30cの途中に配置されている。例えば、複数本の導波路22のそれぞれにおいて、光放射部34に対する第1方向D1の一方側に複数の出光部30が設けられ、光放射部34に対する第1方向D1の他方側にも複数の出光部30が設けられている。
【0124】
ここで、各導波路22は実際には製造時の誤差を含んで形成されるので、導波光22aは、その導波光22aの位相の僅かな変化を伴いながら導波路22内を進むことになる。
【0125】
これに対し、本実施形態によれば、上記のように複数の光放射部34はそれぞれ、導波路22毎に複数の出光部30が形成する出光部並び30cの途中に配置されている。これにより、光放射部群33から光電変換器16へ入射する放射ビームBaは、導波路22のうち光アンテナ部26に重なる部位から発せられた光によって構成されることになる。
【0126】
従って、各導波路22で光放射部34が光アンテナ部26よりも第1方向D1の一方側または他方側に配置されている場合と比較して、複数の光アンテナ部26のそれぞれから出射される出射光の位相が高い精度で揃うように、上記位相補正を行うことが可能になる。その結果、各光アンテナ部26から出射された出射光により形成されるビームBMを高い精度で走査することが可能になる。
【0127】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0128】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第7実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0129】
(第9実施形態)
次に、第9実施形態について説明する。本実施形態では、前述の第1実施形態と異なる点を主として説明する。
【0130】
図30に示すように本実施形態では、複数本の導波路22それぞれにおける光放射部34の配置場所が第1実施形態に対し異なっている。
【0131】
具体的に、本実施形態の複数の光放射部34はそれぞれ、導波路22毎に光アンテナ部26に対し位相調整器24側とは反対側に設けられている。すなわち、複数本の導波路22のそれぞれにおいて、光放射部34は光アンテナ部26よりも第1方向D1の一方側に設けられている。
【0132】
従って、光アンテナ部26で出射されずに残った光を使って、位相補正用の放射ビームBaを形成することができるので、エネルギーの無駄なく位相補正を行うことが可能になる。
【0133】
以上説明したことを除き、本実施形態は第1実施形態と同様である。そして、本実施形態では、前述の第1実施形態と共通の構成から奏される効果を第1実施形態と同様に得ることができる。
【0134】
なお、本実施形態は第1実施形態に基づいた変形例であるが、本実施形態を前述の第2~第7実施形態の何れかと組み合わせることも可能である。
【0135】
(他の実施形態)
(1)上述の各実施形態では、例えば図10に示すように導波路22は3本設けられているが、2本であってもよいし、4本以上であってもよい。
【0136】
(2)上述の第1実施形態では、図10に示すように、光電変換器16は、光フェーズドアレイ18が有する全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側に配置されているが、これは一例である。例えば、光電変換器16は、その全部の光放射部34に対し第2方向D2の他方側、すなわち各導波路22において光放射部34の溝341aが形成される側とは反対側に配置されていても差し支えない。更に言えば、図31に示すように、光電変換器16は、全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側と他方側との両方それぞれに配置されていても差し支えない。複数の光放射部34はそれぞれ、その光放射部34から第2方向D2の一方側と他方側との両方へ導波光22aの一部を放射させるからである。
なお、上記のように光電変換器16が全部の光放射部34に対し第2方向D2の他方側に配置される場合であっても、第1実施形態と同様に、光電変換器16は導波路22の並びの狭ピッチ化を妨げない。このことは、上記のように光電変換器16が全部の光放射部34に対し第2方向D2の一方側と他方側との両方それぞれに配置される場合であっても同様である。
【0137】
(3)上述の各実施形態では、例えば図11に示す基板12はSiで構成され、クラッド層13はSiOで構成され、コア層14はSiで構成され、第2出光構成部30bはSiNで構成されているが、これは一例である。それら構成要素はそれぞれ他の材料で構成されていても差し支えない。
【0138】
例えばクラッド層13は、SiN、SiON、LN、InGaAsP、InPのうちの何れかで構成されていることも想定される。また、コア層14は、不純物がドープされたSiO、SiN、SiON、LN、InGaAsP、InPのうちの何れかで構成されていることも想定される。但し、コア層14の屈折率はクラッド層13の屈折率よりも高くされる必要があり、第2出光構成部30bは、クラッド層13に対し異なる屈折率を有する必要がある。
【0139】
(4)上述の各実施形態では、例えば図11に示す光電変換器16はGeで構成されているが、Ge以外の他の材料で構成されていても差し支えない。例えば光電変換器16の構成材料は、導波路22に伝搬する導波光22aの波長に応じて適宜選択される。
【0140】
(5)上述の各実施形態では、図11に示すように、各光アンテナ部26が外部へ放射させる方向であるアンテナ部放射方向Danは、第3方向D3に沿った方向になるが、これは一例である。例えば光アンテナ部26が図8とは異なる構造を備え、第1方向D1の一方側へ光を出射するように構成されていても差し支えない。
【0141】
(6)なお、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。
【0142】
また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0143】
(本開示の観点)
上記した本開示については、例えば以下に示す観点として把握することができる。
[第1の観点]
光導波路構造体であって、
基板(12)と、
前記基板上に設けられ、第1方向(D1)へ延伸し、該第1方向に垂直な第2方向(D2)へそれぞれ揃ったピッチ(Pd)で並ぶように配列され、光を伝搬する複数本の導波路(22)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記導波路に伝搬する光の位相を制御する複数の位相調整器(24)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記位相調整器を通過して前記導波路に伝搬する光を該導波路からアンテナ部放射方向(Dan)へ放射させる複数の光アンテナ部(26)と、
前記基板上において前記複数本の導波路のそれぞれに設けられ、前記位相調整器を通過して前記導波路に伝搬する光の一部を放射光として、前記アンテナ部放射方向とは異なる方向へ前記導波路から放射させる複数の光放射部(34)と、
前記基板上に設けられ、前記複数の光放射部に対し前記第2方向の一方側もしくは他方側またはその両方に配置され、入射した光の強度に応じた電気信号を出力する光電変換器(16、161、162)とを備え、
前記光電変換器の配置位置は、前記複数の光放射部のそれぞれから放射された前記放射光の位相が互いに揃ったときに該放射光によって構成される放射ビーム(Ba、B1a、B2a)が前記光電変換器に入射するように定められている、光導波路構造体。
[第2の観点]
前記複数本の導波路はそれぞれ、該導波路のコア部(221)が前記第2方向に有するコア幅(Wc)が局所的に変化したコア幅変化部(341)を有し、
前記複数の光放射部は、前記コア幅変化部によってそれぞれ構成されている、第1の観点に記載の光導波路構造体。
[第3の観点]
前記複数本の導波路はそれぞれ、該導波路のコア部(221)が前記第2方向に有するコア幅(Wc)が局所的に狭くなったコア幅変化部(341)を有し、
前記複数の光放射部は、前記コア幅変化部によってそれぞれ構成されている、第1の観点に記載の光導波路構造体。
[第4の観点]
前記複数の光放射部は、前記導波路のコア部(221)に含まれる放射構成部(342)と、該放射構成部から光を出射させるように該放射構成部に近接して設けられると共に前記放射構成部に対し前記第2方向へずれた配置とされた近接配置部(343)とによってそれぞれ構成されている、第1の観点に記載の光導波路構造体。
[第5の観点]
前記複数の光放射部に含まれる前記近接配置部と前記複数本の導波路は前記基板に対し積層されるようにそれぞれ形成され、
複数の前記近接配置部はそれぞれ、前記導波路のコア部と同じ材料で構成され、該導波路のコア部と同じ層(14)に含まれる、第4の観点に記載の光導波路構造体。
[第6の観点]
前記光電変換器は複数設けられ、
複数の前記光電変換器は第1の光電変換器(161)と第2の光電変換器(162)とを含み、
前記第1の光電変換器は、前記第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向(D3)に沿う方向視で、前記複数の光放射部から構成された光放射部群(33)の中央(33a)を基準として、前記第2の光電変換器が配置された方位とは異なる方位に配置されている、第1ないし第5の観点のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
[第7の観点]
前記放射ビームを前記光電変換器へ導く受光用導波路(36)を備え、
前記第1方向と前記第2方向とに垂直な第3方向(D3)に沿う方向視で、前記受光用導波路は、前記複数の光放射部から構成された光放射部群(33)の中央(33a)へ向かって前記光電変換器から延伸している、第1ないし第5の観点のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
[第8の観点]
前記第3方向に沿う方向視で、前記受光用導波路は、該受光用導波路が延伸する方向に沿って前記光電変換器から離れるほど拡幅している、第7の観点に記載の光導波路構造体。
[第9の観点]
前記複数の光アンテナ部はそれぞれ、前記導波路毎に該導波路に沿って並び該導波路から光を放射させる複数の出光部(30)を有し、
前記複数の光放射部はそれぞれ、前記導波路毎に前記複数の出光部が形成する出光部並び(30c)の途中に配置されている、第1ないし第8の観点のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
[第10の観点]
前記複数の光放射部はそれぞれ、前記導波路毎に前記光アンテナ部に対し前記位相調整器側とは反対側に設けられている、第1ないし第8の観点のいずれか1つに記載の光導波路構造体。
【符号の説明】
【0144】
10 光導波路構造体
12 基板
16 光電変換器
22 導波路
24 位相調整器
26 光アンテナ部
Ba 放射ビーム
D1 第1方向
D2 第2方向
Pd 導波路のピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31