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特開2025-133508車載通信システム、車載装置および中継装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025133508
(43)【公開日】2025-09-11
(54)【発明の名称】車載通信システム、車載装置および中継装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/28 20060101AFI20250904BHJP
【FI】
H04L12/28 100A
H04L12/28 200D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031503
(22)【出願日】2024-03-01
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓也
【テーマコード(参考)】
5K033
【Fターム(参考)】
5K033BA06
5K033DA13
5K033DB19
(57)【要約】
【課題】車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制する。
【解決手段】車載通信システムは、複数の車載装置と、前記車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置とを備え、前記車載装置である第1車載装置は、他の前記車載装置である第2車載装置へ送信すべき前記フレームに、前記第2車載装置が接続される第1通信線を識別可能な第1識別情報を含めて前記中継装置へ送信し、前記中継装置は、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車載装置と、
前記車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置とを備え、
前記車載装置である第1車載装置は、他の前記車載装置である第2車載装置へ送信すべき前記フレームに、前記第2車載装置が接続される第1通信線を識別可能な第1識別情報を含めて前記中継装置へ送信し、
前記中継装置は、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定する、車載通信システム。
【請求項2】
前記車載装置は、複数の前記第2車載装置との間で通信を行い、
前記複数の第2車載装置は、それぞれ複数の前記第1通信線に接続され、
各前記第1通信線には、優先度が付与されており、
前記フレームは、さらに、前記フレームに含まれる前記第1識別情報に対応する前記第1通信線の前記優先度を示す優先度情報を含む、請求項1に記載の車載通信システム。
【請求項3】
前記フレームは、前記フレームにおける格納場所、または値が前記優先度に応じて設定された前記第1識別情報を含む、請求項2に記載の車載通信システム。
【請求項4】
前記車載装置は、複数の前記第2車載装置との間で通信を行い、
前記複数の第2車載装置は、それぞれ複数の前記第1通信線に接続され、
前記中継装置は、前記複数の第1通信線がそれぞれ接続される複数の通信ポートを含み、
前記中継装置は、前記通信ポートと前記第1識別情報との対応関係を示す対応情報を取得し、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報、および取得した前記対応情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項5】
前記車載通信システムは、複数の前記中継装置を備え、
前記複数の中継装置のうちの少なくともいずれか1つの前記中継装置に他の前記中継装置が接続され、
前記他の中継装置に、第2通信線を介して前記第2車載装置が接続され、
前記対応情報は、前記通信ポートと、前記第1識別情報と、前記第2通信線を識別可能な第2識別情報との対応関係を示す、請求項4に記載の車載通信システム。
【請求項6】
前記フレームは、さらに、前記第1車載装置と前記中継装置とを接続する第3通信線を識別可能な第3識別情報を含み、
前記中継装置は、前記車載装置から前記フレームを受信すると、応答フレームを、前記フレームに含まれる前記第3識別情報に対応する前記第3通信線へ出力する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車載通信システム。
【請求項7】
車両に搭載され、前記車両における他の車載装置と中継装置を介してフレームの送受信を行う車載装置であって、
前記他の車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを作成する作成部と、
前記作成部によって作成された前記フレームを前記中継装置へ送信する送信部とを備える、車載装置。
【請求項8】
車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置であって、
前記フレームの送信元の前記車載装置から、前記フレームの送信先の前記車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを受信する中継部と、
前記中継部によって受信された前記フレームに含まれる前記識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記通信線を特定する処理部とを備える、中継装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載通信システム、車載装置および中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載ネットワークにおいて、車載装置間でやり取りされるフレームの中継処理に用いるルーティングテーブルを更新する技術が開発されている。たとえば、特許文献1(特開2018-152758号公報)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、情報管理システムは、車両に搭載される車載装置(11)と、該車載装置と通信可能に構成されたサーバ(12)と、を備える情報管理システム(1)であって、前記車載装置は、ルーティングテーブル(41)に基づいて、それぞれ所定の機能を実現する複数の機能部(32、32a,32n)同士の通信を中継するように構成された通信中継部(51)と、前記複数の機能部それぞれに対応する複数の個別の識別情報のうちの少なくとも1つを取得するように構成された情報取得部(61)と、前記情報取得部により取得された前記少なくとも1つの個別の識別情報を前記サーバに送信するように構成された送信部(23)と、を備え、前記サーバは、前記送信部により送信された前記少なくとも1つの個別の識別情報に対応する少なくとも1つの前記機能部の個別の属性情報を取得するように構成された属性取得部(24)を備え、さらに、前記属性取得部により取得された少なくとも1つの前記機能部の個別の属性情報を含む、前記複数の機能部それぞれに対応する複数の個別の属性情報に基づいて、前記ルーティングテーブルの変更箇所を決定するように構成された決定部(62)と、前記決定部により決定された前記変更箇所に基づいて、前記ルーティングテーブルの変更を実行するように構成された変更部(52)と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-152758号公報
【特許文献2】特開2014-045421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある車種の車両において、車載ネットワークの構成に複数のバリエーションを持たせる場合がある。この場合、車載ネットワークの構成のバリエーションごとに、ルーティングテーブルを管理する必要があり、メンテナンスコストを要する。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制することが可能な車載通信システム、車載装置および中継装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の車載通信システムは、複数の車載装置と、前記車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置とを備え、前記車載装置である第1車載装置は、他の前記車載装置である第2車載装置へ送信すべき前記フレームに、前記第2車載装置が接続される第1通信線を識別可能な第1識別情報を含めて前記中継装置へ送信し、前記中継装置は、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定する。
【0007】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載通信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、車両運転支援システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0008】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える車載装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、車載装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0009】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える中継装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、中継装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。
図2図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一例を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ECUの構成の一例を示す図である。
図4図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一部を示す図である。
図5図5は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。
図6図6は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置が保存するフラグテーブルの一例を示す図である。
図7図7は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ECUがCANフレームを作成する処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図8図8は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置がバス特定処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図9図9は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおける中継処理のシーケンスの一例を示す図である。
図10図10は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。
図11図11は、本開示の第2の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一部を示す図である。
図12図12は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置が保存するフラグテーブルの一例を示す図である。
図13図13は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置が保存するフラグテーブルの他の例を示す図である。
図14図14は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置がバス特定処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
図15図15は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置の変形例が保存するフラグテーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示の実施の形態の内容を列記して説明する。
(1)本開示の実施の形態に係る車載通信システムは、複数の車載装置と、前記車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置とを備え、前記車載装置である第1車載装置は、他の前記車載装置である第2車載装置宛ての前記フレームに、前記第2車載装置が接続される第1通信線を識別可能な第1識別情報を含めて前記中継装置へ送信し、前記中継装置は、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる第1識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定する。
【0013】
このような構成により、中継装置において、ルーティングテーブルを参照することなく、車載装置から受信したフレームに含まれる第1識別情報を用いて当該フレームを送信すべき通信線を認識することができるため、たとえば、車載ネットワークの構成に複数のバリエーションを持たせる場合において、バリエーションごとのルーティングテーブルの管理が不要となる。したがって、車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【0014】
(2)上記(1)において、前記車載装置は、複数の前記第2車載装置との間で通信を行ってもよく、前記複数の第2車載装置は、それぞれ複数の前記第1通信線に接続されてもよく、各前記第1通信線には、優先度が付与されていてもよく、前記フレームは、さらに、前記フレームに含まれる前記第1識別情報に対応する前記第1通信線の前記優先度を示す優先度情報を含んでもよい。
【0015】
このような構成により、車載装置から受信したフレームの送信先の通信線が複数存在する車載通信システムにおいて、当該フレームを優先度が高い通信線から順に出力することができるため、フレームを円滑に中継することができる。
【0016】
(3)上記(2)において、前記フレームは、前記優先度に応じて、前記フレームにおける格納場所または値が設定された前記第1識別情報を含んでもよい。
【0017】
このような構成により、フレームに含まれる第1識別情報を優先度の判断に用いることができるため、フレームの優先制御を効率的に行うことができる。
【0018】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記車載装置は、複数の前記第2車載装置との間で通信を行ってもよく、前記複数の第2車載装置は、それぞれ複数の前記第1通信線に接続されてもよく、前記中継装置は、前記複数の第1通信線がそれぞれ接続される複数の通信ポートを含んでもよく、前記中継装置は、前記通信ポートと前記第1識別情報との対応関係を示す対応情報を取得し、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報、および取得した前記対応情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定してもよい。
【0019】
このような構成により、車載通信システムにおいて、対応情報を用いて、フレームの送信先の通信線を簡単に特定することができる。
【0020】
(5)上記(4)において、前記車載通信システムは、複数の前記中継装置を備えてもよく、前記複数の中継装置のうちの少なくともいずれか1つの前記中継装置に他の前記中継装置が接続されてもよく、前記他の中継装置に、第2通信線を介して前記第2車載装置が接続されてもよく、前記対応情報は、前記通信ポートと、前記第1識別情報と、前記第2通信線を識別可能な第2識別情報との対応関係を示してもよい。
【0021】
このような構成により、車載装置から送信されるフレームが複数の中継装置を介して中継される車載通信システムにおいて、各中継装置が、対応情報を用いてフレームの送信先の通信線を簡単に特定することができる。
【0022】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記フレームは、さらに、前記第1車載装置と前記中継装置とを接続する第3通信線を識別可能な第3識別情報を含んでもよく、前記中継装置は、前記車載装置から前記フレームを受信すると、応答フレームを、前記フレームに含まれる前記第3識別情報に対応する前記第3通信線へ出力してもよい。
【0023】
このような構成により、車載装置から受信したフレームに対応する応答フレームを送信する車載通信システムにおいて、たとえば、通信ポートとフレームの送信元との対応関係を示すテーブルを参照することなく、第3識別情報を用いて応答フレームの送信先を簡単に特定することができる。そして、フレームが中継装置に到着したことを車載装置において確認することができるため、車載通信システムの信頼性を向上させることができる。
【0024】
(7)本開示の実施の形態に係る車載装置は、車両に搭載され、前記車両における他の車載装置と中継装置を介してフレームの送受信を行う車載装置であって、前記他の車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを作成する作成部と、前記作成部によって作成された前記フレームを前記中継装置へ送信する送信部とを備える。
【0025】
このような構成により、中継装置において、ルーティングテーブルを参照することなく、車載装置から受信したフレームに含まれる第1識別情報を用いて当該フレームを送信すべき通信線を認識することができるため、たとえば、車載ネットワークの構成に複数のバリエーションを持たせる場合において、バリエーションごとのルーティングテーブルの管理が不要となる。したがって、車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【0026】
(8)本開示の実施の形態に係る中継装置は、車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置であって、前記フレームの送信元の前記車載装置から、前記フレームの送信先の前記車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを受信する中継部と、前記中継部によって受信された前記フレームに含まれる前記識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記通信線を特定する処理部とを備える。
【0027】
このような構成により、中継装置において、ルーティングテーブルを参照することなく、車載装置から受信したフレームに含まれる第1識別情報を用いて当該フレームを送信すべき通信線を認識することができるため、たとえば、車載ネットワークの構成に複数のバリエーションを持たせる場合において、バリエーションごとのルーティングテーブルの管理が不要となる。したがって、車載ネットワークの構成のバリエーション増加に伴うメンテナンスコストの増大を抑制することができる。
【0028】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0029】
<第1の実施の形態>
[車載通信システム]
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。図1を参照して、車載通信システム301は、たとえば、1つの中継装置101と、複数の車載ECU(Electronic Control Unit)202とを備える。車載通信システム301は、車両1に搭載される。中継装置101は、複数の車載ECU202を備える車載通信システム301において用いられる。車載ECU202は、車載装置の一例である。
【0030】
図1に示す例では、車載通信システム301は、車載ECU202である車載ECU202A,202B,202C,202Dを備える。
【0031】
なお、車載通信システム301は、4つの車載ECU202を備える構成に限らず、2つ、3つまたは5つ以上の車載ECU202を備える構成であってもよい。
【0032】
車載ECU202は、TCU(Telematics Communication Unit)、パワートレイン系ECU、シャシー系ECUおよびボディ系ECU等である。なお、車載装置は、車載ECU202に限らず、センサ、ナビゲーション装置およびカメラ等であってもよい。
【0033】
中継装置101および複数の車載ECU202は、車載ネットワーク401を構成する。複数の車載ECU202は、たとえば、CAN(Controller Area Network)の規格に従うCANバス51を介して中継装置101と接続されている。
【0034】
車載ECU202A,202Bは、CANバス51であるCANバス51Aを介して中継装置101と接続されている。車載ECU202C,202Dは、CANバス51であるCANバス51Bを介して中継装置101と接続されている。CANバス51Aは第3通信線の一例であり、CANバス51Bは第1通信線の一例である。
【0035】
なお、車載通信システム301では、2つのCANバス51が設けられる構成に限らず、3つ以上のCANバス51が設けられる構成であってもよい。
【0036】
また、複数の車載ECU202は、CANの規格に従うCANバス51を介して中継装置101と接続される構成に限らず、CAN FD(CAN with Flexible Data Rate)、CAN XL(CAN Extra Lоng)およびイーサネット(登録商標)等の規格に従う通信線を介して中継装置101と接続される構成であってもよい。
【0037】
中継装置101は、互いに異なるCANバス51に接続された複数の車載ECU202間において送受信されるフレームを中継する。
【0038】
たとえば、各車載ECU202には、図示しない検出機器がケーブルを介して接続されている。検出機器は、車両1に関する情報を検出する。検出機器は、たとえば各種センサである。検出機器は、たとえば定期的に計測を行い、計測結果を示す検出データを車載ECU202へ送信する。本実施の形態では、一例として、1つの車載ECU202に1つの検出機器が接続される。
【0039】
車載ECU202は、たとえば定期的または不定期に、自己に接続された検出機器から受信した検出データ等を含むCANフレームを他の車載ECU202へ送信する。
【0040】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一例を示す図である。図2を参照して、CANフレームは、SOF(Start Of Frame)フィールドと、拡張ID(Identifier)フィールドと、ベースIDフィールドと、RTR(Remote Transmission Request)フィールドと、DLCフィールドと、データフィールド(以下、DATフィールドとも称する)と、CRC(Cyclic Redundancy Check)フィールドと、ACKフィールドと、EOF(End Of Frame)フィールドとを、フレームの先頭からこの順に有する。
【0041】
[車載ECU]
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ECUの構成の一例を示す図である。図3を参照して、車載ECU202は、通信部11と、処理部12と、記憶部13とを備える。通信部11および処理部12の一方または両方は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。記憶部13は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。通信部11は送信部の一例であり、処理部12は作成部の一例である。
【0042】
通信部11は、自己の車載ECU202が接続されたCANバス51経由で他の車載ECU202または中継装置101からCANフレームを受信すると、受信したCANフレームを処理部12へ出力する。
【0043】
処理部12は、通信部11からCANフレームを受けると、自己の車載ECU202のCAN-IDが当該CANフレームに含まれているか否かを確認する。
【0044】
より詳細には、たとえば、記憶部13は、自己の車載ECU202が受信すべきCANフレームに含まれるCAN-ID、を示す受信リストを記憶する。受信リストは、たとえば、車両1の出荷時に、車両1の製造事業者によって記憶部13に登録される。
【0045】
処理部12は、通信部11からCANフレームを受けると、記憶部13における受信リストを読み出す。そして、処理部12は、受信リストを参照することにより、当該CANフレームに含まれるCAN-IDが受信リストに登録されているか否かを確認する。
【0046】
処理部12は、たとえば、受信したCANフレームに含まれるCAN-IDが受信リストに登録されていることを確認すると、当該CANフレームに含まれる検出データに基づいて、所定の処理を行う。一方、処理部12は、たとえば、受信したCANフレームに含まれるCAN-IDが受信リストに登録されていない場合、当該CANフレームを破棄する。
【0047】
また、処理部12は、他の車載ECU202を送信先とするCANフレームを作成してCANバス51へ出力する。
【0048】
図2および図3を参照して、たとえば、処理部12は、自己の車載ECU202Aに接続された検出機器から検出データを受信すると、当該検出データがDATフィールドに格納されたCANフレームを作成する。
【0049】
たとえば、記憶部13は、自己の車載ECU202Aに接続された検出機器からの検出データの種別を示し、かつCANフレームの送信元の車載ECU202を示すCAN-ID(以下、「データID」とも称する。)を記憶する。
【0050】
処理部12は、CANフレームを作成すると、記憶部13に保存されているデータIDをCANフレームにおけるベースIDフィールドに格納する。
【0051】
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一部を示す図である。
【0052】
図3および図4を参照して、処理部12は、自己の車載ECU202と異なるCANバス51に接続された他の車載ECU202へ送信すべきCANフレームに、当該CANバス51を識別可能な識別情報(以下、「送信先バス情報」とも称する。)を含めて通信部11経由で中継装置101へ送信する。送信先バス情報は、第1識別情報の一例である。
【0053】
CANフレームにおいて、拡張IDフィールドのMSB(Most Significant Bit)がフラグF1であり、MSBから2ビット目がフラグF2である。フラグF1は、CANバス51AがCANフレームの送信先であるか否かを示すフラグFである。フラグF2は、CANバス51BがCANフレームの送信先であるか否かを示すフラグFである。フラグF1,F2の初期値は「ゼロ」である。なお、CANフレームにおけるフラグF1,F2の格納場所は、上記以外であってもよい。
【0054】
処理部12は、CANフレームを、自己の車載ECU202と異なるCANバス51に接続された他の車載ECU202へ送信する場合、拡張IDフィールドにおける当該CANバス51に対応するフラグを「1」に設定する。また、処理部12は、CANフレームを、自己の車載ECU202と同じCANバス51に接続された他の車載ECU202へ送信する場合、拡張IDフィールドにおける各フラグFの値を初期値に維持する。
【0055】
以下、車載ECU202Aが、自己が接続されているCANバス51Aと異なるCANバス51Bに接続されている車載ECU202、たとえば車載ECU202Cを送信先とするCANフレームを作成する例について説明する。
【0056】
処理部12は、CANフレームを作成すると、拡張IDフィールドにおけるフラグF2を「1」に設定する。
【0057】
たとえば、CANフレームは、さらに、車載ECU202Aが接続されるCANバス51Aを識別可能な送信元バス情報を含む。送信元バス情報は、第3識別情報の一例である。
【0058】
より詳細には、たとえば、CANフレームのDATフィールドおいて、MSBがフラグG1であり、MSBから2ビット目がフラグG2である。フラグG1は、CANバス51AがCANフレームの送信元であるか否かを示すフラグGである。フラグG2は、CANバス51BがCANフレームの送信元であるか否かを示すフラグGである。フラグG1,G2の初期値は「ゼロ」である。なお、CANフレームにおけるフラグG1,G2の格納場所は、上記以外であってもよい。
【0059】
処理部12は、CANフレームを作成すると、DATフィールドにおけるフラグG1を「1」に設定する。
【0060】
処理部12は、CANフレームにおいて、フラグF2およびフラグG1の値を「1」に設定すると、当該CANフレームを通信部11へ出力する。
【0061】
通信部11は、処理部12からCANフレームを受けると、当該CANフレームを、自己の車載ECU202Aが接続されたCANバス51Aへ出力するとともに、当該CANフレームを後述する再送処理のために記憶部13に保存する。また、通信部11は、CANフレームをCANバス51へ出力すると、図示しないタイマを起動する。
【0062】
[中継装置]
図5は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置の構成の一例を示す図である。図5を参照して、中継装置101は、複数の通信ポート21と、中継部22と、処理部23と、記憶部24とを備える。中継部22および処理部23の一方または両方は、たとえば、1または複数のプロセッサを含む処理回路により実現される。記憶部24は、たとえば上記処理回路に含まれる不揮発性メモリである。
【0063】
通信ポート21は、CANバス51を接続可能な端子である。各通信ポート21は、CANバス51を介して対応の車載ECU202に接続されている。図5に示す例では、中継装置101は、通信ポート21である通信ポート21A,21B,21Cを備える。
【0064】
各通信ポート21には、固有のポート番号が割り当てられている。ここでは、通信ポート21A,21B,21Cのポート番号は、それぞれP1,P2,P3である。
【0065】
[課題の説明]
ところで、CAN-IDと、CANフレームの送信先の車載ECUが接続されているCANバス(以下、「送信先バス」とも称する。)との対応関係を示すルーティングテーブルを用いて、フレームの中継処理を行う中継装置が知られている。たとえば、中継装置は、ある車載ECUからCANフレームを受信すると、ルーティングテーブルを参照することにより、当該CANフレームに対応する送信先バスを特定する。
【0066】
ここで、ある車種の車両1において、車両1の駆動方式または仕向け地等に応じて、車載ネットワーク401の構成に複数のバリエーションを持たせる場合がある。中継装置101において、ルーティングテーブルを用いて中継処理を行う場合、車載ネットワーク401の構成のバリエーションごとに、当該ルーティングテーブルを管理する必要があり、メンテナンスコストを要する。
【0067】
そこで、本開示の実施の形態に係る車載通信システム301では、以下のような構成および動作により、このような課題を解決する。
【0068】
[中継装置]
本実施の形態では、中継装置101は、ルーティングテーブルを用いずに、車載ECU202Aから受信したCANフレームの送信先のCANバス51を特定する。
【0069】
より詳細には、たとえば、中継部22は、CANバス51A経由で車載ECU202AからCANフレームを受信すると、受信したCANフレームを処理部23へ出力する。
【0070】
処理部23は、中継部22経由で車載ECU202Aから受信したCANフレームに含まれる送信先バス情報を用いて、当該CANフレームの送信先のCANバス51を特定するバス特定処理を行う。
【0071】
処理部23は、中継部22からCANフレームを受けると、当該CANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF1,F2を確認する。
【0072】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、フラグF1およびフラグF2の各々の値が「ゼロ」であることを確認した場合、当該CANフレームを破棄する。
【0073】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、フラグF1またはフラグF2が「1」であることを確認した場合、バス特定処理を行う。ここでは、処理部23は、フラグF2が「1」であることを確認する。
【0074】
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置が保存するフラグテーブルの一例を示す図である。
【0075】
図6を参照して、記憶部24は、通信ポート21のポート番号とフラグFとの対応関係を示すフラグテーブルTb10を記憶する。フラグテーブルTb10は、対応情報の一例である。
【0076】
フラグテーブルTb10では、ポート番号「P1」に対応するフラグFは「フラグF1」である。ポート番号「P2」に対応するフラグFは「フラグF2」である。ポート番号「P3」に対応するフラグFは「該当なし」である。なお、図6に示すフラグGについては、後述する。
【0077】
再び図5を参照して、処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF2が「1」である場合、記憶部24におけるフラグテーブルTb10を参照することにより、フラグF2に対応するポート番号としてポート番号「P2」を特定する。そして、処理部23は、特定したポート番号「P2」を示すポート通知S1、および当該CANフレームを中継部22へ出力する。
【0078】
中継部22は、ポート通知S1およびCANフレームを処理部23から受けると、当該CANフレームを、ポート通知S1の示すポート番号「P2」、の通信ポート21Bに接続されたCANバス51Bへ出力する。
【0079】
(応答フレーム)
たとえば、中継部22は、車載ECU202AからCANフレームを受信すると、応答フレームを、受信したCANフレームに含まれる送信元バス情報に対応するCANバス51へ出力する。
【0080】
より詳細には、たとえば、処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグFが「1」である場合、当該CANフレームのDATフィールドにおけるフラグG1およびフラグG2のうち、値が「1」であるフラグGを確認する。ここでは、処理部23は、フラグG1が「1」であることを確認する。
【0081】
図6に示すフラグテーブルTb10は、さらに、通信ポート21のポート番号とフラグGとの対応関係を示す。
【0082】
フラグテーブルTb10において、ポート番号「P1」に対応するフラグGは「フラグG1」である。ポート番号「P2」に対応するフラグGは「フラグG2」である。ポート番号「P3」に対応するフラグGは「該当なし」である。
【0083】
処理部23は、フラグG1の値が「1」であることを確認すると、記憶部24におけるフラグテーブルTb10を参照することにより、フラグG1に対応するポート番号としてポート番号「P1」を特定する。
【0084】
処理部23は、フラグG1に対応するポート番号を特定すると、車載ECU202Aを送信先とする応答フレームを作成する。
【0085】
具体的には、たとえば、記憶部24は、さらに、データIDと、応答フレームに含めるべきCAN-ID(以下、「応答ID」とも称する。)との対応関係を示す応答テーブルを記憶する。たとえば、応答IDは、CANフレームの種別が応答フレームである旨、および応答フレームの送信先の車載ECU202を示す。
【0086】
処理部23は、フラグG1に対応するポート番号を特定すると、記憶部24における応答テーブルを参照することにより、中継部22から受けたCANフレームに含まれるデータIDに対応する応答IDを特定する。そして、処理部23は、特定した応答IDがベースIDフィールドに格納された応答フレームを作成する。
【0087】
また、たとえば、記憶部24は、さらに、中継装置101を識別可能なID(以下、「中継装置ID」とも称する。)を記憶する。
【0088】
処理部23は、応答フレームを作成すると、記憶部24に保存されている中継装置IDを当該応答フレームにおけるDATフィールドに格納する。そして、処理部23は、特定したポート番号を示すポート通知S2、および当該応答フレームを中継部22へ出力する。
【0089】
中継部22は、ポート通知S2および応答フレームを処理部23から受けると、当該応答フレームを、ポート通知S2の示すポート番号「P1」、の通信ポート21Aに接続されたCANバス51Aへ出力する。
【0090】
再び図3を参照して、車載ECU202Aにおいて、通信部11は、タイマを起動してから所定時間経過する前に、CANバス51A経由で中継装置101からCANフレームを受信すると、記憶部13における受信リストを参照することにより、受信したCANフレームに含まれる応答IDが受信リストに登録されていることを確認する。すなわち、通信部11は、当該CANフレームが受信すべき応答フレームであることを確認する。
【0091】
そして、通信部11は、受信したCANフレームに含まれる中継装置IDを確認することにより、車載ECU202Cへ送信すべきCANフレームが中継装置101に到着したと判断する。
【0092】
一方、通信部11は、タイマを起動してから所定時間経過するまでに、中継装置101からの応答フレームが到着しない場合、車載ECU202Cへ送信すべきCANフレームを再送する再送処理を行う。具体的には、たとえば、通信部11は、記憶部13に保存されている当該CANフレームをCANバス51Aへ出力する。
【0093】
[動作の流れ]
次に、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システム301における車載ECU202および中継装置101の動作の流れについて説明する。
【0094】
図7は、本開示の第1の実施の形態に係る車載ECUがCANフレームを作成する処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図7は、車載ECU202Aが車載ECU202Cへ送信すべきCANフレームを作成する場合を示している。
【0095】
図7を参照して、まず、車載ECU202Aは、自己に接続された検出機器からの検出データの到着を待ち受け(ステップS101においてNO)、検出データを受信すると(ステップS101においてYES)、受信した検出データがDATフィールドに格納されたCANフレームを作成する(ステップS102)。
【0096】
次に、車載ECU202Aは、検出データの種別を示し、かつCANフレームの送信元の車載ECU202を示すデータIDをCANフレームにおけるベースIDフィールドに格納する(ステップS103)。
【0097】
次に、車載ECU202Aは、車載ECU202Cが接続されるCANバス51Bを識別可能な送信先バス情報をCANフレームに含める。たとえば、上述したように、車載ECU202Aは、CANフレームの拡張IDフィールドにおいて、MSBから2ビット目のフラグF2を「1」に設定する(ステップS104)。
【0098】
次に、車載ECU202Aは、車載ECU202Aが接続されるCANバス51Aを識別可能な送信元バス情報をCANフレームに含める。たとえば、上述したように、車載ECU202Aは、CANフレームのDATフィールドにおいて、MSBのフラグG1を「1」に設定する(ステップS105)。なお、ステップS103からステップS105は、順序を入れ替え実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0099】
次に、車載ECU202Aは、車載ECU202Cへ送信すべきCANフレームをCANバス51Aへ出力する(ステップS106)。
【0100】
次に、車載ECU202Aは、CANフレームを送信してから所定時間経過する前に、中継装置101からの応答フレームを受信した場合(ステップS107においてYES)、当該CANフレームが中継装置101に到着したと判断し(ステップS108)、新たな検出データの到着を待ち受ける(ステップS101においてNO)。
【0101】
一方、車載ECU202Aは、CANフレームを送信してから所定時間経過しても、中継装置101から応答フレームが到着しない場合(ステップS107においてNO)、CANフレームを再送し(ステップS109)、応答フレームの到着を待ち受ける(ステップS107においてNO)。
【0102】
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る中継装置がバス特定処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図8は、中継装置101が車載ECU202Aから受信したCANフレームを車載ECU202Cへ中継する場合を示している。
【0103】
図8を参照して、まず、中継装置101は、CANフレームの到着を待ち受け(ステップS201においてNO)、CANフレームを受信した場合(ステップS201においてYES)、CANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF1,F2を確認する(ステップS202)。
【0104】
そして、中継装置101は、フラグF1またはフラグF2が「1」であることを確認した場合(ステップS203においてYES)、受信したCANフレームの送信先バスを特定するバス特定処理を行う。ここでは、中継装置101は、フラグF2が「1」であることを確認し、CANバス51Bを送信先バスとして特定する(ステップS204)。
【0105】
次に、中継装置101は、受信したCANフレームを、特定した送信先バス、すなわちCANバス51Bへ出力する(ステップS205)。
【0106】
次に、中継装置101は、受信したCANフレームにおける、フラグG1またはフラグG2が「1」である場合(ステップS206においてYES)、応答フレームをCANバス51へ出力する。ここでは、中継装置101は、フラグG1が「1」であることを確認し、応答フレームをフラグG1に対応するCANバス51Aへ出力し(ステップS207)、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS201においてNO)。
【0107】
一方、中継装置101は、受信したCANフレームにおけるフラグF1およびフラグF2の各々の値が「ゼロ」である場合(ステップS203においてNO)、当該CANフレームを破棄し(ステップS208)、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS201においてNO)。
【0108】
また、中継装置101は、受信したCANフレームにおけるフラグG1,G2が「ゼロ」である場合(ステップS206においてNO)、応答フレームを出力せず、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS201においてNO)。
【0109】
図9は、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システムにおける中継処理のシーケンスの一例を示す図である。
【0110】
図9を参照して、まず、車載ECU202Aは、自己に接続された検出機器から検出データを受信する(ステップS301)。
【0111】
次に、車載ECU202Aは、検出データがDATフィールドに格納されたCANフレームを作成する(ステップS302)。
【0112】
次に、車載ECU202Aは、検出データの種別を示し、かつCANフレームの送信元の車載ECU202を示すデータIDをCANフレームにおけるベースIDフィールドに格納する(ステップS303)。
【0113】
次に、車載ECU202Aは、車載ECU202Cが接続されるCANバス51Bを識別可能な送信先バス情報をCANフレームに含める。たとえば、上述したように、車載ECU202Aは、CANフレームの拡張IDフィールドにおいて、MSBから2ビット目のフラグF2を「1」に設定する(ステップS304)。
【0114】
次に、車載ECU202Aは、車載ECU202Aが接続されるCANバス51Aを識別可能な送信元バス情報をCANフレームに含める。たとえば、上述したように、車載ECU202Aは、CANフレームのDATフィールドにおいて、MSBのフラグG1を「1」に設定する(ステップS305)。なお、ステップS303からステップS305は、順序を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0115】
次に、車載ECU202Aは、フラグF2およびフラグG1を「1」に設定したCANフレームをCANバス51A経由で中継装置101へ送信する(ステップS306)。
【0116】
次に、中継装置101は、車載ECU202AからCANフレームを受信すると、受信したCANフレームにおけるフラグF1,F2を確認する。ここでは、中継装置101は、当該CANフレームにおいて、フラグF2が「1」であることを確認する(ステップS307)。
【0117】
次に、中継装置101は、受信したCANフレームの送信先バスを特定するバス特定処理を行う。ここでは、中継装置101は、CANバス51Bを送信先バスとして特定する(ステップS308)。
【0118】
次に、中継装置101は、受信したCANフレームを、特定した送信先バス経由で車載ECU202Cへ送信する(ステップS309)。
【0119】
次に、車載ECU202Cは、中継装置101からCANフレームを受信すると、当該CANフレームに含まれる検出データに基づいて、所定の処理を行う(ステップS310)。
【0120】
次に、中継装置101は、車載ECU202Aから受信したCANフレームにおけるフラグG1が「1」であることを確認し、車載ECU202A宛ての応答フレームを作成する(ステップS311)。なお、ステップS310およびステップS311は、順序を入れ替えて実行してもよいし、並行して実行してもよい。
【0121】
次に、中継装置101は、作成した応答フレームを、CANバス51A経由で車載ECU202Aへ送信する(ステップS312)。
【0122】
次に、車載ECU202Aは、応答フレームを受信し、車載ECU202C宛てのCANフレームが中継装置101に到着したと判断する(ステップS313)。
【0123】
なお、本開示の第1の実施の形態に係る車載通信システム301において、車載ECU202Aは、自己が接続されるCANバス51を識別可能な送信元バス情報を含むCANフレームを送信する構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載ECU202Aは、送信元バス情報を含まないCANフレームを送信する構成であってもよい。この場合、中継装置101は、応答フレームを車載ECU202Aへ送信しない。
【0124】
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0125】
<第2の実施の形態>
上述した本開示の第1の実施の形態では、車載通信システム301における1つの中継装置101が、車載ECU202から受信したCANフレームに含まれる送信先バス情報を用いてバス特定処理を行う。これに対して、本開示の第2の実施の形態では、車載通信システム301は、複数の中継装置101を備え、各中継装置101がバス特定処理を行う。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る車載通信システム301と同様である。
【0126】
図10は、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システムの構成の一例を示す図である。図10を参照して、車載通信システム302は、複数の中継装置101と、複数の車載ECU202とを備える。
【0127】
図10に示す例では、車載通信システム302は、中継装置101である中継装置101A,101Bと、車載ECU202である車載ECU202Aから車載ECU202Hとを備える。
【0128】
中継装置101Aは、CANバス51であるCANバス51Cを介して中継装置101Bと接続されている。
【0129】
車載ECU202E,202Fは、CANの規格に従うCANバス52であるCANバス52Aを介して中継装置101Bと接続されている。車載ECU202G,202Hは、CANバス52であるCANバス52Bを介して中継装置101Bと接続されている。CANバス52は、第2通信線の一例である。
【0130】
なお、車載通信システム302は、2つの中継装置101を備える構成に限らず、3つ以上の中継装置101を備える構成であってもよい。
【0131】
[車載ECU202A]
図11は、本開示の第2の実施の形態に係る車載装置により送信されるCANフレームの一部を示す図である。
【0132】
図11を参照して、たとえば、CANフレームにおいて、拡張フィールドのMSBがフラグF1であり、MSBから2ビット目がフラグF2であり、MSBから3ビット目がフラグF3であり、MSBから4ビット目がフラグF4であり、MSBから5ビット目がフラグF5である。なお、CANフレームにおけるフラグF1からF5の格納場所は、上記以外であってもよい。
【0133】
フラグF3、フラグF4およびフラグF5は、それぞれCANバス51C、CANバス52AおよびCANバス52BがCANフレームの送信先であるか否かを示すフラグFである。
【0134】
また、たとえば、DATフィールドのMSBがフラグG1であり、MSBから2ビット目がフラグG2であり、MSBから3ビット目がフラグG3であり、MSBから4ビット目がフラグG4であり、MSBから5ビット目がフラグG5である。フラグF1からフラグF5の初期値は「ゼロ」である。なお、CANフレームにおけるフラグG1からG5の格納場所は、上記以外であってもよい。
【0135】
フラグG3、フラグG4およびフラグG5は、それぞれCANバス51C、CANバス52AおよびCANバス52BがCANフレームの送信元であるか否かを示す。
【0136】
本実施の形態では、車載ECU202Aは、自己が接続されているCANバス51Aと異なる複数のCANバスにそれぞれ接続されている複数の車載ECU202との間で通信を行う。以下、車載ECU202Aが、CANバス52Aに接続されている車載ECU202E、およびCANバス52Bに接続されている車載ECU202Gへ送信すべきCANフレームを作成する例について説明する。この場合、車載ECU202Aは第1車載装置の一例であり、車載ECU202E,202Gは第2車載装置の一例である。
【0137】
再び図3図10および図11を参照して、たとえば、CANバス51およびCANバス52には、優先度が付与されている。車載ECU202Aから送信されるCANフレームは、当該CANフレームに含まれる送信先バス情報に対応するCANバスの優先度を示す優先度情報を含む。
【0138】
より詳細には、たとえば、車載ECU202Aから送信されるCANフレームは、当該CANフレームにおける格納場所がCANバスの優先度に応じて設定された送信先バス情報を含む。
【0139】
具体的には、たとえば、CANフレームの拡張IDフィールドにおいて、各フラグFにフラグ番号が設定されている。フラグ番号は、CANフレームの通信調停に用いられる。たとえば、フラグ番号の値が小さいほど、優先度が高い。
【0140】
たとえば、拡張IDフィールドにおいて、フラグFのフラグ番号が、LSB(Least Significant Bit)に近いほど小さい。すなわち、図11に示す例では、フラグF5に対応するCANバス52B、フラグF4に対応するCANバス52A、フラグF3に対応するCANバス51C、フラグF2に対応するCANバス51B、およびフラグF1に対応するCANバス51Aの順に優先度が高い。
【0141】
この場合、CANバス52Bに接続される車載ECU202G,202Hは、たとえば、ASIL(Automotive Safety Integrity Level)レベルが所定レベル以上であるパワートレイン系ECUである。また、CANバス52Aに接続される車載ECU202E,202Fは、たとえば、ASILレベルが所定レベル以上であって、かつCANバス52Bに接続される車載ECU202のASILレベルより小さいパワートレイン系ECUである。また、CANバス51Bに接続される車載ECU202C,202Dは、たとえばシャシー系ECUである。また、CANバス51Bに接続される車載ECU202A,202Bは、たとえばボディ系ECUである。
【0142】
なお、車載ECU202から送信されるCANフレームは、CANフレームにおける格納場所の代わりに、優先度に応じてCANバスの値が設定された送信先バス情報を含む構成であってもよい。具体的には、たとえば、車載通信システム302において、CANバスの番号が優先度に応じて設定され、CANフレームが「1」,「2」等のCANバス51,52の番号を含む構成であってもよい。この場合、中継装置101は、CANバス51,52の番号の昇り順または降り順に従ってCANフレームを出力する。
【0143】
車載ECU202Aにおいて、処理部12は、車載ECU202E,202Gへ送信すべきCANフレームを作成する場合、当該CANフレームにおけるフラグF4,F5を「1」に設定し、かつフラグG1を「1」に設定する。
【0144】
[中継装置101A]
再び図5を参照して、中継装置101Aにおける処理部23は、中継部22からCANフレームを受けると、当該CANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF1からF5を確認する。
【0145】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、フラグF1からF5の各々の値が「ゼロ」であることを確認した場合、当該CANフレームを破棄する。
【0146】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、フラグF1からF5のうちの少なくともいずれか1つのフラグFの値が「1」であることを確認した場合、バス特定処理を行う。ここでは、処理部23は、フラグF4,F5が「1」であることを確認する。
【0147】
図12は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置が保存するフラグテーブルの一例を示す図である。図12は、中継装置101Aが保存するフラグテーブルTb20を示す。
【0148】
図12を参照して、たとえば、フラグテーブルTb20は、通信ポート21と、送信先バス情報と、中継装置101Bに接続されるCANバス52を識別可能な識別情報(以下、「接続バス情報」とも称する。)との対応関係を示す。接続バス情報は、第2識別情報の一例である。
【0149】
具体的には、たとえば、フラグテーブルTb20は、通信ポート21のポート番号と、CANバス51に対応するフラグF(以下、「フラグFa」とも称する。)と、CANバス52に対応するフラグF(以下、「フラグFb」とも称する。)との対応関係を示す。すなわち、フラグテーブルTb20は、図6に示すフラグテーブルTb10と比べて、フラグFbをさらに示し、かつポート番号「P3」に対応する情報が登録されている。
【0150】
図12に示すフラグテーブルTb20では、通信ポート21Cのポート番号「P3」に対応するフラグFaは、「フラグF3」である。通信ポート21Aのポート番号「P1」に対応するフラグFbは、「該当なし」である。通信ポート21Bのポート番号「P2」に対応するフラグFbは、「該当なし」である。通信ポート21Cのポート番号「P3」に対応する、フラグFbおよびフラグGは、それぞれ「フラグF4,F5」および「フラグG4,G5」である。
【0151】
たとえば、処理部23は、フラグテーブルTb20を用いてバス特定処理を行う。より詳細には、たとえば、処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、フラグF4,F5が「1」であることを確認すると、記憶部24におけるフラグテーブルTb20を参照することにより、フラグF4,F5に対応するポート番号としてポート番号「P3」を特定する。そして、処理部23は、特定したポート番号「P3」を示すポート通知S11、および当該CANフレームを中継部22へ出力する。
【0152】
中継部22は、ポート通知S11およびCANフレームを処理部23から受けると、当該CANフレームを、ポート通知S11の示すポート番号「P3」、の通信ポート21Cに接続されたCANバス51Cへ出力する。
【0153】
[中継装置101B]
(バス特定処理)
中継装置101Bにおいて、中継部22は、CANバス51C経由で中継装置101AからCANフレームを受信すると、受信したCANフレームを処理部23へ出力する。
【0154】
処理部23は、中継部22からCANフレームを受けると、当該CANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF4,F5が「1」であることを確認する。
【0155】
図13は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置が保存するテーブルの他の例を示す図である。図13は、中継装置101Bが保存するフラグテーブルTb20を示す。
【0156】
図13に示すフラグテーブルTb20は、図6に示すフラグテーブルTb10と比べて、各ポート番号に対応するフラグFaが異なるとともに、フラグFbをさらに示す。当該フラグテーブルTb20において、ポート番号「P1」に対応する、フラグFaおよびフラグFbは、それぞれ「フラグF4」および「該当なし」である。ポート番号「P2」に対応する、フラグFaおよびフラグFbは、それぞれ「フラグF5」および「該当なし」である。ポート番号「P3」に対応する、フラグFaおよびフラグFbは、それぞれ「フラグF3」および「フラグF1,F2」である。
【0157】
また、図13に示すフラグテーブルTb20において、ポート番号「P1」に対応するフラグGは「フラグG4」である。ポート番号「P2」に対応するフラグGは「フラグG5」である。ポート番号「P3」に対応するフラグGは「フラグG1,G2」である。
【0158】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームにおけるフラグF4,F5が「1」であることを確認すると、記憶部24におけるフラグテーブルTb20を参照することにより、フラグF4に対応するポート番号およびフラグF5に対応するポート番号として、それぞれポート番号「P1」およびポート番号「P2」を特定する。
【0159】
再び図5および図10を参照して、たとえば、処理部23は、特定したポート番号が複数存在する場合、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおける、値が「1」であるフラグ番号に従って、優先度が高いポート番号を確認する。
【0160】
上述したように、ここでは、フラグF5に対応するCANバス52BがフラグF4に対応するCANバス52Aより優先度が高い。
【0161】
そして、処理部23は、特定した複数のポート番号と、当該複数のポート番号にそれぞれ対応する複数のフラグ番号とを示すポート通知S12、およびバス特定処理において用いたCANフレームを中継部22へ出力する。
【0162】
中継部22は、ポート通知S12およびCANフレームを処理部23から受けると、ポート通知S12の示す複数のフラグ番号に従って、当該CANフレームをCANバス52へ出力する。ここでは、ポート通知S12は、フラグF4,F5のフラグ番号を示す。この場合、中継部22は、処理部23から受けたCANフレームを、フラグF5に対応するCANバス52B、およびフラグF4に対応するCANバス52Aの順に出力する。
【0163】
一方、処理部23は、特定したポート番号が1つである場合、当該ポート番号を示すポート通知S13、およびバス特定処理において用いたCANフレームを中継部22へ出力する。
【0164】
中継部22は、ポート通知S13およびCANフレームを処理部23から受けると、当該CANフレームを、ポート通知S13の示すポート番号、の通信ポート21に接続されたCANバス51へ出力する。
【0165】
(応答フレーム)
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグFが「1」である場合、当該CANフレームのDATフィールドにおけるフラグG1からフラグG5のうち、値が「1」であるフラグGを確認する。ここでは、処理部23は、フラグG1が「1」であることを確認する。
【0166】
図13に示すフラグテーブルTb20において、ポート番号「P1」に対応するフラグGは「該当なし」である。ポート番号「P2」に対応するフラグGは「該当なし」である。ポート番号「P3」に対応するフラグGは「G1,G2」である。
【0167】
処理部23は、フラグG1の値が「1」であることを確認すると、記憶部24におけるフラグテーブルTb20を参照することにより、フラグG1に対応するポート番号としてポート番号「P3」を特定する。
【0168】
そして、処理部23は、応答フレームを作成し、特定したポート番号「P3」を示すポート通知S21、および当該応答フレームを中継部22へ出力する。
【0169】
中継部22は、ポート通知S21および応答フレームを処理部23から受けると、当該応答フレームを、ポート通知S21の示すポート番号「P3」、の通信ポート21に接続されたCANバス51Cへ出力する。
【0170】
[動作の流れ]
次に、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システム301における中継装置101Bの動作の流れについて説明する。
【0171】
図14は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置がバス特定処理を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。図14は、中継装置101Bが、車載ECU202E,202Gへ送信すべきCANフレームを中継装置101A経由で車載ECU202Aから受信する場合を示している。
【0172】
図14を参照して、まず、中継装置101Bは、CANフレームの到着を待ち受け(ステップS401においてNO)、CANフレームを受信した場合(ステップS401においてYES)、CANフレームにおけるフラグF1からF5を確認する(ステップS402)。
【0173】
そして、中継装置101Bは、CANフレームにおけるフラグF1からF5のうち少なくともいずれか1つのフラグFが「1」であることを確認した場合(ステップS403においてYES)、受信したCANフレームの送信先バスを特定するバス特定処理を行う。ここでは、中継装置101Bは、フラグF4,F5が「1」であることを確認し、CANバス52A,52Bを送信先バスとして特定する(ステップS404)。
【0174】
次に、中継装置101Bは、特定した送信先バスが複数である場合(ステップS405においてYES)、受信したCANフレームにおいて、値が「1」であるフラグFのフラグ番号に従って、送信先バスの優先度を確認する。ここでは、中継装置101Bは、CANバス52BがCANバス52Aより優先度が高いことを確認する(ステップS406)。
【0175】
次に、中継装置101Bは、受信したCANフレームを、CANバス52BおよびCANバス52Aの順に出力する(ステップS407)。
【0176】
次に、中継装置101Bは、受信したCANフレームにおけるフラグGが「1」である場合(ステップS408においてYES)、応答フレームをCANバス51へ出力する。ここでは、中継装置101は、フラグG1が「1」であることを確認し、応答フレームをフラグG1に対応するCANバス51Cへ出力し(ステップS409)、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS401においてNO)。
【0177】
一方、中継装置101は、受信したCANフレームにおける各フラグFの値が「ゼロ」である場合(ステップS403においてNO)、当該CANフレームを破棄し(ステップS410)、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS401においてNO)。
【0178】
また、中継装置101Bは、特定した送信先バスが1つである場合(ステップS405においてNO)、送信先バスの優先度を確認せず、受信したCANフレームを当該送信先バスへ出力する(ステップS407)。
【0179】
また、中継装置101Bは、受信したCANフレームにおけるフラグGが「ゼロ」である場合(ステップS408においてNO)、応答フレームを出力せず、新たなCANフレームの到着を待ち受ける(ステップS401においてNO)。
【0180】
なお、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システム302において、車載ECU202から送信されるCANフレームは、CANバス51,52の優先度を示す優先度情報を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。車載ECU202から送信されるCANフレームは、優先度情報を含まない構成であってもよい。この場合、中継装置101は、車載ECU202E,202Gへ送信すべきCANフレームを車載ECU202Aから受信すると、当該CANフレームを所定の順序に従って出力する。
【0181】
また、本開示の第2の実施の形態に係る車載通信システム302において、車載ECU202から送信されるCANフレームは、当該CANフレームにおける格納場所、または値がCANバス51,52の優先度に応じて設定された送信先バス情報を含む構成であるとしたが、これに限定するものではない。送信先バス情報の格納場所または値が、優先度に応じて設定されていない構成であってもよい。この場合、たとえば、車載ECU202から送信されるCANフレームは、複数の送信先バス情報の各々の優先度を示す情報を含む。
【0182】
[変形例]
車載通信システム302において、中継装置101Aにおける通信ポート21Cに、中継装置101Bの代わりに、CANバス51Cを介して複数の車載ECU202が接続された場合、以下のような処理を行う構成であってもよい。
【0183】
変形例では、図10に示す車載ECU202E,202FがCANバス51Cを介して中継装置101Aにおける通信ポート21Cに接続される場合について説明する。また、車載ECU202Aが、車載ECU202Cおよび車載ECU202Eへ送信すべきCANフレームを作成する場合について説明する。この場合、車載ECU202Aは第1車載装置の一例であり、車載ECU202C,202Eは第2車載装置の一例である。
【0184】
再び図3および図11を参照して、車載ECU202Aにおいて、処理部12は、フラグF2,F3を「1」に設定し、かつフラグG1を「1」に設定したCANフレームを作成する。
【0185】
図15は、本開示の第2の実施の形態に係る中継装置の変形例が保存するテーブルの一例を示す図である。
【0186】
図15を参照して、中継装置101Aにおいて、記憶部24は、図12に示すフラグテーブルTb20の代わりにフラグテーブルTb21を記憶する。フラグテーブルTb21は、図6に示すフラグテーブルTb10と比べて、ポート番号「P3」に対応する情報が登録されている。
【0187】
フラグテーブルTb21において、フラグF3に対応する、フラグFaおよびフラグGは、それぞれ「フラグF3」および「フラグG3」である。
【0188】
処理部23は、中継部22から受けたCANフレームの拡張IDフィールドにおけるフラグF2,F3が「1」であることを確認すると、記憶部24におけるフラグテーブルTb21を参照することにより、フラグF2に対応するポート番号としてポート番号「P2」を特定し、フラグF3に対応するポート番号としてポート番号「P3」を特定する。
【0189】
そして、処理部23は、特定した複数のポート番号、および当該複数のポート番号にそれぞれ対応する複数のフラグ番号を示すポート通知S14、ならびにバス特定処理において用いたCANフレームを中継部22へ出力する。
【0190】
中継部22は、ポート通知S13およびCANフレームを処理部23から受けると、ポート通知S14の示す複数のフラグ番号に従って、当該CANフレームをCANバス52へ出力する。ここでは、ポート通知S14の示す複数のフラグ番号は、フラグF2,F3のフラグ番号である。この場合、中継部22は、処理部23から受けたCANフレームを、フラグF3に対応するCANバス51C、およびフラグF2に対応するCANバス51Bの順に出力する。
【0191】
上述の実施の形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0192】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
複数の車載装置と、前記車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置とを備える車載通信システムにおける中継方法であって、
前記車載装置である第1車載装置が、他の前記車載装置である第2車載装置へ送信すべき前記フレームに、前記第2車載装置が接続される第1通信線を識別可能な第1識別情報を含めて前記中継装置へ送信するステップと、
前記中継装置が、前記第1車載装置から受信した前記フレームに含まれる前記第1識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記第1通信線を特定するステップとを含む、中継方法。
【0193】
[付記2]
車両に搭載され、前記車両における他の車載装置と中継装置を介してフレームの送受信を行う車載装置におけるフレーム送信方法であって、
前記他の車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを作成するステップと、
作成した前記フレームを前記中継装置へ送信するステップとを含む、フレーム送信方法。
【0194】
[付記3]
車両に搭載され、前記車両における他の車載装置と中継装置を介してフレームの送受信を行う車載装置において用いられるフレーム送信プログラムであって、
コンピュータを、
前記他の車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを作成する作成部と、
前記作成部によって作成された前記フレームを前記中継装置へ送信する送信部、
として機能させるための、フレーム送信プログラム。
【0195】
[付記4]
車両に搭載され、前記車両における他の車載装置と中継装置を介してフレームの送受信を行う車載装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記他の車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを作成し、
作成した前記フレームを前記中継装置へ送信する、車載装置。
【0196】
[付記5]
車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置における中継方法であって、
前記フレームの送信元の前記車載装置から、前記フレームの送信先の前記車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを受信するステップと、
受信した前記フレームに含まれる前記識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記通信線を特定するステップとを含む、中継装置。
【0197】
[付記6]
車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置において用いられる中継プログラムであって、
コンピュータを、
前記フレームの送信元の前記車載装置から、前記フレームの送信先の前記車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを受信する中継部と、
前記中継部によって受信された前記フレームに含まれる前記識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記通信線を特定する処理部、
として機能させるための、中継プログラム。
【0198】
[付記7]
車載装置間において送受信されるフレームを中継する中継装置であって、
処理回路を備え、
前記処理回路は、
前記フレームの送信元の前記車載装置から、前記フレームの送信先の前記車載装置が接続される通信線を識別可能な識別情報を含む前記フレームを受信し、
受信した前記フレームに含まれる前記識別情報を用いて、前記フレームの送信先の前記通信線を特定する、中継装置。
【符号の説明】
【0199】
1 車両
11 通信部
12,23 処理部
13,24 記憶部
21,21A,21B,21C 通信ポート
22 中継部
51,51A,51B,52,52A,52B 通信バス
101,101A,101B 中継装置
202 車載ECU(車載装置)
301,302 車載通信システム
401 車載ネットワーク
Tb10,Tb20,Tb21 フラグテーブル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15