2025-133602 コネクタ

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2025133602

(43)【公開日】2025-09-11

(54)【発明の名称】コネクタ

(51)【国際特許分類】

   H01R 13/631 20060101AFI20250904BHJP

   H01R 13/6581 20110101ALI20250904BHJP

   H01R 12/91 20110101ALI20250904BHJP

   H01R 24/38 20110101ALI20250904BHJP

【ＦＩ】

H01R13/631

H01R13/6581

H01R12/91

H01R24/38

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2024031642

(22)【出願日】2024-03-01

(71)【出願人】

【識別番号】390012977

【氏名又は名称】イリソ電子工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110001519

【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】久保 薫

(72)【発明者】

【氏名】高根 徹

【テーマコード（参考）】

5E021

5E223

【Ｆターム（参考）】

5E021FA03

5E021FA08

5E021FA14

5E021FA16

5E021FB02

5E021FB11

5E021FB16

5E021FC06

5E021FC19

5E021FC31

5E021FC40

5E021HA05

5E223AA16

5E223AB01

5E223AB26

5E223AC19

5E223BA12

5E223BA15

5E223CA13

5E223CC09

5E223CD01

5E223DB08

5E223DB11

5E223DB38

5E223GA08

5E223GA11

5E223GA22

5E223GA52

(57)【要約】

【課題】接続相手の位置ずれを許容しながらも小型なコネクタを提供する。
【解決手段】本開示は、接続対象物に接続可能な端子１１と、端子１１を支持するハウジング１２と、を備えるコネクタ１０であって、端子１１は、基板１に接続可能な端子側接続部１４と、ハウジング１２に支持される端子側被支持部１７と、端子側接続部１４と端子側被支持部１７との間に位置する弾性変形可能な端子側ばね部１５と、を有し、ハウジング１２は、端子側接続部１４を基板１に接続した状態で、端子側ばね部１５の弾性変形に応じて、端子側接続部１４を固定端として基板１に対して傾動可能である。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

接続対象物に対して所定の接続方向に接続可能な端子と、前記端子を支持するハウジングと、を備えるコネクタであって、
前記端子は、取付対象物に接続可能な端子側接続部と、前記ハウジングに支持される端子側被支持部と、前記端子側接続部と前記端子側被支持部との間に位置する弾性変形可能な端子側ばね部と、を有し、
前記ハウジングは、前記端子側接続部を前記取付対象物に接続した状態で、前記端子側ばね部の弾性変形に応じて、前記端子側接続部を固定端として前記取付対象物に対して傾動可能である
ことを特徴とするコネクタ。

【請求項2】

前記端子側ばね部は、前記接続方向において折り返すことなく前記接続方向に延びる
ことを特徴とする請求項１に記載のコネクタ。

【請求項3】

前記端子側被支持部の前記接続方向における配置位置の少なくとも一部は、前記端子側ばね部の前記接続方向における配置位置と重なる
ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のコネクタ。

【請求項4】

前記端子を覆うシェルを備え、
前記シェルは、前記取付対象物に接続可能なシェル側接続部と、前記ハウジングに支持されるシェル側被支持部と、前記シェル側接続部と前記シェル側被支持部との間に位置するシェル側ばね部と、を有し、
前記シェル側ばね部は、前記取付対象物に対する前記ハウジングの傾動に応じて弾性変形可能である
ことを特徴とする請求項１または請求項２に記載のコネクタ。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本開示は、コネクタに関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、フローティング機構付き同軸コネクタが開示されている。このコネクタは、基板や電子機器筐体等の支持体に固定されるハウジング基部と、ハウジング基部に対して中心コンタクトとともに移動可能なハウジング可動部と、一端がハウジング基部に固定され、他端がハウジング可動部に固定されたフローティング用バネ体とを備える。ハウジング可動部がハウジング基部に対して相対的に移動することで、ハウジング可動部の挿通孔に対する接続対象物の位置ずれを許容している。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１６－６２６６１号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に記載のフローティング機構付き同軸コネクタ（コネクタ）では、フローティング用バネ体の一端が固定されたハウジング可動部が、フローティング用バネ体の他端が固定されたハウジング基部に対して相対的に移動する。このため、フローティング用バネ体を固定するための相対移動可能な２つのハウジングが必要になるとともに、フローティング用バネ体をハウジングに対して複数箇所で固定する必要があるので、コネクタの部品点数が増大し、サイズが大型化してしまう可能性がある。

【0005】

そこで、本開示は、接続相手の位置ずれを許容しながらも小型なコネクタの提供を目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記課題を解決するため、本発明の第１の態様は、接続対象物に対して所定の接続方向に接続可能な端子と、前記端子を支持するハウジングと、を備えるコネクタであって、前記端子は、取付対象物に接続可能な端子側接続部と、前記ハウジングに支持される端子側被支持部と、前記端子側接続部と前記端子側被支持部との間に位置する弾性変形可能な端子側ばね部と、を有し、前記ハウジングは、前記端子側接続部を前記取付対象物に接続した状態で、前記端子側ばね部の弾性変形に応じて、前記端子側接続部を固定端として前記取付対象物に対して傾動可能である。

【0007】

上記構成では、ハウジングは、端子の端子側接続部を取付対象物に接続した状態で、取付対象物に対して傾動可能である。このため、ハウジングを取付対象物に傾動不能に固定する場合とは異なり、端子の傾動がハウジングによって規制されないので、端子の接続相手である接続対象物の位置ずれを許容することができる。

【0008】

また、ハウジングが、取付対象物に対して端子側接続部を固定端として傾動可能であるので、簡易な構成で接続相手の位置ずれを許容することができる。例えば、ハウジングを、接続方向と直交する方向にスライド移動可能に構成する場合には、ハウジングをスライド移動可能に支持するための構成（例えば他のハウジング）が必要になるが、上記構成では、端子側接続部を固定端として傾動可能であるので、簡易な構成で接続相手である接続対象物の位置ずれを許容する小型なコネクタとすることができる。

【0009】

本発明の第２の態様は、上記第１の態様のコネクタであって、前記端子側ばね部は、前記接続方向において折り返すことなく前記接続方向に延びる。

【0010】

上記構成では、端子側ばね部が、接続方向において折り返すことなく接続方向に延びる。このように、端子側ばね部は、接続方向において折り返すような屈曲形状を有しないばね部であるので、端子側ばね部の長さ（経路長）を抑えることができ、端子の高速伝送特性を高めることができる。また、端子側ばね部を配置するためのスペースを抑えることができるので、コネクタを小型化することができる。

【0011】

本発明の第３の態様は、上記第１の態様又は上記第２の態様のコネクタであって、前記端子側被支持部の前記接続方向における配置位置の少なくとも一部は、前記端子側ばね部の前記接続方向における配置位置と重なる。

【0012】

上記構成では、接続方向における端子側被支持部の配置位置は、接続方向における端子側ばね部の配置位置と互いに重なるので、端子側被支持部と端子側ばね部とを接続方向における異なる位置に配置する場合とは異なり、コネクタの接続方向における長さを抑えることができ、小型化することができる。

【0013】

本発明の第４の態様は、上記第１の態様又は上記第２の態様のコネクタであって、前記端子を覆うシェルを備え、前記シェルは、前記取付対象物に接続可能なシェル側接続部と、前記ハウジングに支持されるシェル側被支持部と、前記シェル側接続部と前記シェル側被支持部との間に位置するシェル側ばね部と、を有し、前記シェル側ばね部は、前記取付対象物に対する前記ハウジングの傾動に応じて弾性変形可能である。

【0014】

上記構成では、コネクタがシェルを備えるので、コネクタの伝送特性を高めることができる。

【0015】

また、シェルがハウジングの傾動に応じて弾性変形可能なシェル側ばね部を有するので、シェルは、シェル側接続部を取付対象物に接続した状態で、シェル側ばね部の弾性変形によってハウジングの傾動を許容することができる。すなわち、端子の傾動がシェルによっても規制されないので、シェルを設けても、端子の接続相手である接続対象物の位置ずれを許容することができる。

【発明の効果】

【0016】

本開示によれば、接続相手の位置ずれを許容しながらも小型なコネクタを提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0017】

【図1】本発明の一実施形態に係るコネクタにプラグを接続した状態を示す説明図である。

【図2】本発明の一実施形態に係るコネクタの上方からの斜視図である。

【図3】図１をIII方向から視たコネクタの側面図である。

【図4】図１のIV－IV矢視断面図である。

【図5】コネクタの下方からの斜視図である。

【図6】端子の斜視図である。

【図7】ハウジングの上方からの斜視図である。

【図8】ハウジングの下方からの斜視図である。

【図9】シェルの斜視図である。

【図10】コネクタが傾動している状態を示す説明図である。

【発明を実施するための形態】

【0018】

以下、本発明の一実施形態に係るコネクタを図面に基づいて説明する。なお、各図及び下記の説明において、Ｘ方向は接続方向を示す。また、径方向は、接続方向に延びる端子の中心を軸とした場合の径方向を示す。

【0019】

図１は、本発明の一実施形態に係るコネクタにプラグを接続した状態を示す説明図である。図２は、本発明の一実施形態に係るコネクタの上方からの斜視図である。図３は、図１をIII方向から視たコネクタの側面図である。図４は、図１のIV－IV矢視断面図である。図５は、コネクタの下方からの斜視図である。図６は、端子の斜視図である。図７は、ハウジングの上方からの斜視図である。図８は、ハウジングの下方からの斜視図である。図９は、シェルの斜視図である。

【0020】

（コネクタ）
図１に示すように、本発明の一実施形態に係るコネクタ１０は、電子部品（例えば、カメラモジュールの撮像ユニット等。図示省略。）の一部を構成する。コネクタ１０は、使用する際には、基板（取付対象物）１上に実装される。コネクタ１０は、例えば、同軸ケーブル２からのプラグ（接続対象物）３が基板１とは反対側からＸ方向に沿って導通接続（以下、単に「接続」という。）されることによって、プラグ３と基板１とを接続する。本実施形態のプラグ３は、中心でＸ方向に延びる軸状の内側導体３ａと、内側導体３ａの径方向の外側でＸ方向に筒状に延びる外側導体３ｂと、内側導体３ａと外側導体３ｂとの間の誘電体３ｃとを有する。すなわち、接続方向であるＸ方向は、プラグ（接続対象物）３や後述する端子１１等の軸方向でもある。なお、以下の説明では、接続方向（Ｘ方向）を上下方向として説明するので、Ｘ方向のＸ１側を上側という場合があり、Ｘ方向のＸ２側を下側という場合があるが、接続方向は上下方向に限定されるものではない。また、以下の説明において「傾動」とは、基板１に対する傾動を意味し、傾動前の軸方向（Ｘ方向）に対する傾動を意味する。

【0021】

図２～図５に示すように、コネクタ１０は、プラグ３の内側導体３ａ（図１参照）に対して上下方向（所定の接続方向）に接続可能な端子１１と、端子１１を支持するハウジング１２と、を備える。本実施形態では、コネクタ１０は、端子１１及びハウジング１２に加えて、端子１１を覆うシェル１３を備える。

【0022】

（端子）
図２～図６に示すように、コネクタ１０の端子１１は、導電性の金属材料で形成したものであり、シェル１３の径方向の内側に配置され、プラグ３の内側導体３ａ（図１参照）の下端部（Ｘ２側の端部）に接続可能である。端子１１は、基板１に接続可能な端子側接続部１４と、端子側接続部１４から上方へ延びる弾性変形可能な端子側ばね部１５と、端子側ばね部１５から上方へ延びる筒状の端子本体１６と、端子本体１６から下方へ延びてハウジング１２に支持される端子側被支持部１７と、を一体的に有する。すなわち、端子１１は、基板１に接続されて基板１に支持される部分（端子側接続部１４）と、ハウジング１２に支持される部分（端子側被支持部１７）とを有する。そして、端子側ばね部１５は、他の部材に支持される部分である端子側接続部１４と端子側被支持部１７との間に位置している。

【0023】

（端子側接続部）
端子側接続部１４は、端子１１のうち、基板１に対して接続される部分である。例えば、本実施形態では、端子側接続部１４は、上下方向と交叉する板状に形成され、基板１に対してＳＭＴ（Ｓｅｒｆａｃｅ Ｍｏｕｎｔ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ（表面実装））でのはんだ付けによって固定されて接続される。なお、端子側接続部１４の形状及び基板１に対する接続方法は、上記に限定されるものではない。例えば、端子側接続部１４を上下方向に延びる棒状に形成し、ＤＩＰ（Ｄｕａｌ－ｉｎ－ｌｉｎｅ ｐａｃｋａｇｅ）によって基板１に対して接続してもよい。或いは、端子側接続部１４をプレスフィットによって基板１に対して接続してもよい。端子側接続部１４を基板１に固定することによって、端子１１は、基板１に支持される。

【0024】

（端子側ばね部）
端子側ばね部１５は、端子側接続部１４から連続して上方へ延びる。本実施形態の端子側ばね部１５は、端子側接続部１４の径方向の内端部から曲折して上方へ延びる。端子側ばね部１５の上端側は、端子本体１６の後述する基部１６ａの周方向の一部の領域に下方から連続している。すなわち、端子側ばね部１５は、端子本体１６のいずれかの径方向（図５に一点鎖線Ａで示す径方向。以下では、この径方向を、「第１径方向」と称する。）の一側に設けられる。本実施形態の端子側ばね部１５は、端子側接続部１４から略直角に曲折して上方へ延びる下部領域１５ａと、下部領域１５ａの上端から連続して第１径方向の内側へ傾斜するように上方へ延びて端子本体１６に連続する上部領域１５ｂとを有する。すなわち、本実施形態の端子側ばね部１５は、上下方向において折り返すことなく上下方向に延びる。

【0025】

端子側ばね部１５は、弾性変形可能である。本実施形態の端子側ばね部１５は、第１径方向と交叉する板状に形成されることによって、第１径方向に弾性変形可能である。すなわち、端子側ばね部１５の上端側は、端子側ばね部１５の下端部を軸として第１径方向に傾動可能である。また、本実施形態の端子側ばね部１５は、その幅に対して上下方向の長さが十分に長く設定され、上面視における第１径方向と交叉する方向にも傾動可能となっている。すなわち、本実施形態の端子側ばね部１５は、上面視において３６０°いずれの方向にも傾動可能となっている。なお、端子側ばね部１５の形状は、板状に限定されるものではなく、例えば、上下方向に延びる柱状（例えば円柱状）であってもよい。

【0026】

（端子本体）
端子本体１６は、プラグ３の内側導体３ａ（図１参照）の挿入を許容するように上下方向に延びる略筒状に形成される。本実施形態の端子本体１６は、下端側の円筒状の基部１６ａと、周方向に等分（本実施形態では３等分）された状態で基部１６ａから連続して上方へ延びる複数（本実施形態では３つ）の端子片１６ｂとを有する。すなわち、複数の端子片１６ｂは、下端側が基部１６ａに片持ち状に支持される。複数の端子片１６ｂは、下端側を軸として径方向に弾性変形可能である。複数の端子片１６ｂの上端側は、径方向に拡径するように形成され、プラグ３の内側導体３ａを上方から挿入し易くなっている。なお、端子本体１６の形状は、上記に限定されるものではなく、接続対象物（本実施形態ではプラグ３）に対して上下方向に接続可能な形状であればよい。

【0027】

（端子側被支持部）
端子側被支持部１７は、端子１１のうちハウジング１２に支持される部分であって、端子本体１６の基部１６ａのうち、端子側ばね部１５が連続している領域とは異なる領域から連続して下方へ延びる。このように、端子側被支持部１７は、端子側ばね部１５と同様に、端子本体１６の基部１６ａから連続して下方へ延びる。図４に示すように、端子側被支持部１７と端子側ばね部１５とは、接続方向と直交する方向から見たときに、少なくとも一部が互いに重なる高さ位置に配置される。すなわち、端子側被支持部１７の上下方向（接続方向）における配置位置（高さ位置）Ｒ１の少なくとも一部（本実施形態では全部）は、端子側ばね部１５の上下方向（接続方向）における配置位置（高さ位置）Ｒ２と重なる。端子側被支持部１７の下端２５は、端子側接続部１４よりも上方に位置している。

【0028】

端子側被支持部１７の形状は、特に限定されるものではなく、ハウジング１２に支持されることが可能な形状であればよい。例えば、本実施形態では、径方向と交叉する板状に形成され、端子本体１６の基部１６ａから下方へ延びる２つの端子側被支持部１７が設けられる。２つの端子側被支持部１７は、上面視において、端子側ばね部１５側へ向かって開くハの字状に配置される。２つの端子側被支持部１７は、端子本体１６の基部１６ａから径方向の外側の下方へ傾斜して延びる上部領域１７ａと、上部領域１７ａの下端から軸方向に沿って下方へ延びる下部領域１７ｂとを有する。端子側被支持部１７の下部領域１７ｂには、ハウジング１２に対して係止可能な係止部１８が設けられる。なお、端子１１がハウジング１２に支持されるとは、コネクタ１０を基板１に取り付ける前の状態において、端子１１がハウジング１２に支持されていることを意味し、コネクタ１０を基板１に取り付けた状態では、端子１１がハウジング１２を傾動可能に支持しているともいえる。

【0029】

（ハウジング）
図４、図５、図７及び図８に示すように、ハウジング１２は、端子１１（本実施形態では、端子１１及びシェル１３）を支持するための部材であって、絶縁性の材料（例えば樹脂材料）で形成される。ハウジング１２は、端子１１の端子本体１６が挿通する端子挿通孔１９と、端子１１の端子側被支持部１７を支持する端子支持部２０と、端子挿通孔１９から第１径方向の外側へ延びる溝部２１と、シェル１３を支持するシェル支持部２２とを有する。

【0030】

（端子挿通孔）
端子挿通孔１９は、ハウジング１２を上下方向に貫通する貫通孔であって、端子１１の端子本体１６の挿通を許容する大きさに形成される。端子挿通孔１９の上端部には、径方向の内側へ突出する凸部２３（図４参照）が設けられる。凸部２３の下側には傾斜面が設けられる。凸部２３は、後述するように、ハウジング１２に対する端子１１の下方への移動を規制するストッパとして機能する。

【0031】

（端子支持部）
端子支持部２０は、端子挿通孔１９の径方向の外側に配置され、下方から上方へ延びる有底孔である。端子支持部２０は、端子１１の端子側被支持部１７の下部領域１７ｂの下方からの挿入を許容する大きさに形成される。端子支持部２０は、端子挿通孔１９に対して連通部２４によって径方向に連通している。連通部２４は、端子支持部２０の上部からハウジング１２の下面１２ａまで延びており、端子１１をハウジング１２に取り付ける際に、端子側被支持部１７の上部領域１７ａが下方から上方へ移動する通路となる。また、端子支持部２０内には、端子１１の端子側被支持部１７の下部領域１７ｂの係止部１８を係止可能な係止部（図示省略）が設けられる。なお、端子支持部２０の形状は、上記に限定されるものではなく、端子１１の端子側被支持部１７を支持可能な形状であればよい。

【0032】

（溝部）
図４、図５、図７、及び図８に示すように、溝部２１は、ハウジング１２の下面１２ａから上方へ凹んだ状態で、端子挿通孔１９から連続して第１径方向の外側へ延び、ハウジング１２の側方へ開放される。溝部２１の幅は、端子側接続部１４及び端子側ばね部１５の幅よりも広い。溝部２１は、端子側接続部１４の上方に位置し、端子側接続部１４の延設方向に沿って第１径方向に延びる。

【0033】

（シェル支持部）
シェル支持部２２は、シェル１３を支持する部分である。シェル支持部２２の形状は、特に限定されるものではない。本実施形態では、シェル支持部２２は、ハウジング１２の径方向（図５に一点鎖線Ｂで示す径方向。この径方向を以下では、「第２径方向」と称する。）の両側に設けられ、ハウジング１２の外側面から第２径方向の外側へ突出する。シェル支持部２２が突出する第２径方向は、端子側ばね部１５が設けられる第１径方向と直交する径方向である。

【0034】

端子１１（図６参照）をハウジング１２（図７及び図８参照）に取り付ける際には、端子１１の端子本体１６をハウジング１２の端子挿通孔１９に下方から挿入すると共に、端子１１の端子側被支持部１７の下部領域１７ｂを端子支持部２０に下方から挿入する。端子１１の端子本体１６をハウジング１２の端子挿通孔１９に下方から挿入すると、端子本体１６の基部１６ａが端子挿通孔１９内の凸部２３の下方の傾斜面に当接する。そこから更に端子１１を上方へ押し込むと、端子本体１６が径方向の内側へ弾性変形しながら上方へ移動し、端子本体１６の基部１６ａがハウジング１２の凸部２３を上方へ越えると、端子本体１６が弾性回復する。この状態で、ハウジング１２の凸部２３は、端子本体１６の下端に下方から当接し、ハウジング１２に対する端子１１の下方への移動を規制するストッパとして機能する。また、端子側被支持部１７の下部領域１７ｂを端子支持部２０に挿入して押し込むと、下部領域１７ｂの係止部１８が端子支持部２０内の上記係止部（図示省略）に係止される。端子支持部２０が端子１１の係止部１８を係止した状態では、ハウジング１２の端子支持部２０に対する端子１１の端子側被支持部１７の上下方向への移動が規制される。これにより、端子１１の端子側被支持部１７が、ハウジング１２に支持された状態となり、端子１１がハウジング１２に取り付けられる。

【0035】

図３及び図４に示すように、端子１１をハウジング１２に取り付けた状態では、端子１１の端子側被支持部１７の下端２５は、端子１１の端子側接続部１４よりも上方に位置する。また、端子１１の端子側ばね部１５の下端部及び端子側接続部１４は、ハウジング１２の下面１２ａよりも下方へ露出する。また、図４に示すように、端子側ばね部１５の第１径方向の外側面２６は、ハウジング１２の内面から離間しており、端子側ばね部１５の第１径方向の外側面２６とハウジング１２の内面との間には空間２７が設けられる。また、図４及び図５に示すように、ハウジング１２のうち端子１１の端子側接続部１４の上方には、ハウジング１２の下面１２ａから上方へ凹む溝部２１が位置している。

【0036】

図３及び図４に示すように、コネクタ１０を基板１に取り付けた状態では、ハウジング１２の下面１２ａは、基板１の上面よりも上方へ離間した位置に位置する。基板１の上面とハウジング１２の下面１２ａとの間は、間隙（空間）であることが好ましいが、これに限定されるものではなく、変形可能な部材（例えば、ゴムやゲル等）が介在していてもよい。

【0037】

（シェル）
図２～図５、及び図９に示すように、シェル１３は、導電性の金属材料で形成したものであり、ハウジング１２に支持されるシェル側被支持部２８と、シェル側被支持部２８から上方へ延びるシェル本体２９と、シェル側被支持部２８から下方へ延びるシェル側ばね部３０と、基板１に接続可能なシェル側接続部３１とを一体的に有する。すなわち、シェル１３は、基板１に接続されて基板１に支持される部分（シェル側接続部３１）と、ハウジング１２に支持される部分（シェル側被支持部２８）とを有する。そして、シェル側ばね部３０は、他の部材に支持される部分であるシェル側接続部３１とシェル側被支持部２８との間に位置している。本実施形態のシェル１３は、プラグ３の外側導体３ｂ（図１参照）に接続され、グランドとして機能する。

【0038】

（シェル側被支持部）
シェル側被支持部２８は、シェル１３のうち主としてハウジング１２に支持される部分である。シェル側被支持部２８の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態ではハウジング１２に外接する枠状に形成される。本実施形態のシェル側被支持部２８は、ハウジング１２のシェル支持部２２に係止される被係止部２８ａを有する。シェル側被支持部２８は、被係止部２８ａがハウジング１２のシェル支持部２２に係止されることによって、ハウジング１２に支持される。

【0039】

（シェル本体）
シェル本体２９は、上下方向に延びる筒状に形成される。シェル本体２９の下端部は、シェル側被支持部２８に連続し、シェル側被支持部２８に支持される。シェル本体２９の上部は、上方へ向かうほど拡径する形状に形成され、上端部には、径方向の外側へ突出した状態で周方向に延びる膨出部３２が設けられる。膨出部３２は、コネクタ１０をプラグ３に接続した際に、プラグ３の外側導体３ｂ（図１参照）の内周面に接触する。シェル本体２９には、上端から下方へ延びる複数のスリット３３が周方向に等間隔に設けられる。これにより、シェル本体２９の上端側は、径方向の内側へ弾性変形可能となっている。

【0040】

（シェル側ばね部）
シェル側ばね部３０は、シェル１３のうち弾性変形可能に形成される部分である。本実施形態のシェル側ばね部３０は、シェル側被支持部２８から下方へ延び、上下方向に弾性変形に形成される。具体的には、本実施形態のシェル側ばね部３０は、上下方向と交叉する所定方向（本実施形態では第１径方向に平行な方向）へ折り返されるばね状に形成される。本実施形態のシェル側ばね部３０は、シェル側被支持部２８のうち第２径方向の両側に位置する面に片側２箇所（両側で計４箇所）設けられる。４箇所のシェル側被支持部２８は、第１径方向に対称的に、かつ第２径方向に対称的に設けられる。

【0041】

（シェル側接続部）
シェル側接続部３１は、シェル１３のうち基板１に対して接続される部分である。例えば、本実施形態では、シェル側ばね部３０から連続してシェル側ばね部３０の下端部に一体的に設けられる。シェル側接続部３１は、端子１１の端子側接続部１４と上下方向の略同じ高さ位置に配置される。すなわち、シェル側接続部３１は、ハウジング１２の下面１２ａよりも下方に位置している。シェル側接続部３１は、基板１の上面に沿って水平に延び、基板１に対してＳＭＴでのはんだ付けによって固定されて接続される。シェル側接続部３１を基板１に固定することによって、シェル１３は、基板１に支持される。なお、シェル側接続部３１の形状及び基板１に対する接続方法は、上記に限定されるものではなく、上述したＤＩＰによって基板１に対して接続してもよいし、或いは、プレスフィットによって基板１に対して接続してもよい。

【0042】

次に、コネクタ１０の傾動について説明する。図１０は、コネクタが傾動している状態を示す説明図である。

【0043】

図１０に示すように、コネクタ１０を基板１に取り付けた状態では、ハウジング１２は、端子１１の端子側ばね部１５の弾性変形に応じて、端子側接続部１４を固定端として基板１に対して傾動可能である。すなわち、ハウジング１２は、傾動前の接続方向に沿う軸（図１０中に一点鎖線Ｃで示す軸）に対して傾動可能である。また、シェル１３のシェル側ばね部３０は、基板１に対するハウジング１２の傾動に応じて弾性変形可能である。具体的には、上下方向に伸縮するように弾性変形可能である。

【0044】

上記のように構成されたコネクタ１０では、ハウジング１２は、端子１１の端子側接続部１４を基板１に接続した状態で、基板１に対して傾動可能である。このため、ハウジング自体を基板１に傾動不能に固定する場合とは異なり、端子１１の傾動がハウジング１２によって規制されないので、端子１１の接続相手であるプラグ（接続対象物）３の位置ずれを許容することができる。例えば、プラグ３をコネクタ１０に対して接続する際に、プラグ３の軸が基板１及びコネクタ１０の端子１１に対して傾いた場合に、端子１１が基板１に対して傾動可能であるので、プラグ（接続対象物）３の位置ずれを許容して接続することができる。また、プラグ３をコネクタ１０に対して接続した後に、プラグ３が基板１に対して傾いた場合に、端子１１が基板１に対して傾動可能であるので、プラグ３の傾きに起因するプラグ３及びコネクタ１０の破損を防止することができる。

【0045】

また、ハウジング１２が、基板１に対して端子１１の端子側接続部１４を固定端として傾動可能であるので、簡易な構成で接続相手の位置ずれを許容することができる。例えば、ハウジングを、接続方向と直交する方向にスライド移動可能に構成する場合には、ハウジングをスライド移動可能に支持するための構成（例えば他のハウジング）が必要になるが、上記のように構成されたコネクタ１０では、端子１１の端子側接続部１４を固定端として傾動可能であるので、簡易な構成で接続相手の位置ずれを許容する小型なコネクタ１０とすることができる。

【0046】

このように、本実施形態によれば、接続相手であるプラグ３の位置ずれを許容しながらも小型なコネクタ１０を提供できる。

【0047】

また、端子１１の端子側ばね部１５が、上下方向（接続方向）において折り返すことなく上下方向に延びる。このように、端子側ばね部１５は、上下方向において折り返すような屈曲形状を有しない端子側ばね部１５であるので、端子側ばね部１５の長さ（経路長）を抑えることができ、端子１１の高速伝送特性を高めることができる。また、端子側ばね部１５を配置するためのスペースを抑えることができるので、コネクタ１０を小型化することができる。

【0048】

また、上下方向における端子１１の端子側被支持部１７の配置位置は、上下方向における端子側ばね部１５の配置位置（高さ位置）と互いに重なるので、端子側被支持部１７と端子側ばね部１５とを異なる（重ならない）高さ位置に配置する場合とは異なり、コネクタ１０の上下方向における長さを抑えることができ、小型化することができる。

【0049】

また、コネクタ１０がシェル１３を備えるので、コネクタ１０の伝送特性を高めることができる。

【0050】

また、シェル１３がハウジング１２の傾動に応じて弾性変形可能なシェル側ばね部３０を有するので、シェル１３は、シェル側接続部３１を基板１に接続した状態で、シェル側ばね部３０の弾性変形によってハウジング１２の傾動を許容することができる。すなわち、端子１１の傾動がシェル１３によっても規制されないので、シェル１３を設けても、端子１１の接続相手であるプラグ３の位置ずれを許容することができる。

【0051】

また、シェル１３の４箇所のシェル側被支持部２８は、第１径方向に対称的に、かつ第２径方向に対称的に設けられる。このため、シェル１３の安定性を確保した上で、端子１１の傾動を許容することができる。

【0052】

なお、本実施形態では、基板１に接続されるシェル１３を設けたが、これに限定されるものではなく、例えば、基板１に接続されることなくハウジング１２に支持されるシェルを設けてもよい。

【0053】

また、本実施形態では、上下方向における端子１１の端子側被支持部１７の配置位置と、上下方向における端子側ばね部１５の配置位置とを、互いに重なる高さ位置に配置したが、これに限定されるものではない。

【0054】

また、本実施形態では、端子１１の端子側ばね部１５を、接続方向において折り返すことなく接続方向に延びる端子側ばね部１５としたが、これに限定されるものではなく、少なくともハウジング１２が端子側ばね部１５の弾性変形に応じて傾動可能であれば、他の形状であってもよい。

【0055】

以上、本発明について、上記実施形態に基づいて説明を行ったが、本発明は上記実施形態の内容に限定されるものではなく、当然に本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。すなわち、この実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論である。

【符号の説明】

【0056】

１：基板（取付対象物）
３：プラグ（接続対象物）
１０：コネクタ
１１：端子
１２：ハウジング
１３：シェル
１４：端子側接続部
１５：端子側ばね部
１７：端子側被支持部
２８：シェル側被支持部
３０：シェル側ばね部
３１：シェル側接続部

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】