(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013418
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】様々な用途のためのエネルギー送達の最適化
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20250117BHJP
【FI】
A61B18/12
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024191796
(22)【出願日】2024-10-31
(62)【分割の表示】P 2023135986の分割
【原出願日】2018-12-26
(31)【優先権主張番号】62/610,430
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/693,622
(32)【優先日】2018-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522244964
【氏名又は名称】ガルヴァナイズ セラピューティクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100143638
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 真久
(72)【発明者】
【氏名】ウォルドシュトライヒャー,ジョナサン ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】クリムスキー,ウィリアム サンフォード
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ケビン ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】タロフスキー,ローマン
(72)【発明者】
【氏名】ニール,ロバート イー.,セカンド
(57)【要約】
【課題】エネルギー送達の最適化1を図る。
【解決手段】パルス電界(PEF)の形で、及び限局的治療を提供するやり方で、体腔又は通路にエネルギーを伝送する方法、システム及びデバイスが提供される。いくつかの実施形態では、PEFは典型的には単極式で、エネルギー送達体の独立した電気活性電極を通して送達される。このような送達は、より小さな表面積一帯に電気エネルギーを集中させることで、内腔又は通路のまわりに周方向に延在する電極を通る送達よりも効果が強くなっている。このような送達はまた、段階的な局部的アプローチで電気エネルギーが送達されるように強制し、周囲の組織を通る優先的な電流経路の効果を軽減する。PEFの限局的送達は、正確なタイミング及び電極へのエネルギー送達の順番付けを用いることによって、組織致死率の上昇を提供することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001] 本出願は、2017年12月26日に出願され、「Methods, Apparatuses, and Systems for the Treatment of Pulmonary Disorders」という名称の米国仮特許出願第62/610,430号、及び2018年7月3日に出願され、「Optimization of Energy Delivery for Various Applications」という名称の米国仮特許出願第62/693,622号に対する優先権を主張し、それぞれの内容全体が、参照によって完全な形で本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 疾病及び苦痛を治療するために治療用エネルギーを身体に送達するために、様々なデバイス及び方法が開発されてきた。いくつかの実例では、このような送達は、体腔、通路又は類似する解剖学的構造内の組織に対するものであり、通路壁に沿った患部組織、若しくは通路壁内の患部組織を治療するように、又は通路に関連する疾病、若しくは通路を介して到達し得る疾病に影響を与えるようにする。このようなデバイスは通常、曲がりくねった内腔の解剖学的構造を渡るように、可撓性を有する細長いシャフトと、その上に設置された、このようなエネルギーを遠隔の場所、又は体腔のような閉鎖された場所に送達するエネルギー送達素子と、を含む。このようなデバイスは、例えば、肺又は脈管構造の血管の通路を治療するために開発されてきた。例えば、気道なのか、血液で満たされた環境なのかなど環境が異なると、及び、表面組織に影響を与える疾病であるのか、もっと深い層又は組織に影響を与える疾病であるのかなど疾病が異なると、これらのデバイスの目的が様々に変わってくる。本開示の実施形態は、これらの目的のうちの少なくともいくつかを満たすであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
[0003] 第1の態様では、身体内の通路であって内側周面を有する通路を治療する方法であって、複数の電極が通路の内側周面にわたるように複数の電極を通路内に位置決めすることと、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出し、複数の電極のうちの少なくとも1つを通る第1の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって、通路の内側周面の少なくとも1つの追加の部分に沿って少なくとも1つの追加の治療区域を作り出し、複数の電極のうちの少なくとも1つを通る少なくとも1つの追加の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、を含み、第1の部分及び少なくとも1つの追加の部分は、内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように、内側周面に沿って延在する方法が提供される。
【0004】
[0004] いくつかの実施形態では、不整脈を治療するために、通路は心臓内に設けられ、機能上連続的な治療区域は肺静脈と左心房との間に電気的切断を含む。任意選択的に、通路は肺静脈を含む。いくつかの実施形態では、機能上連続的な治療区域は経壁性病変を含む。他の実施形態では、通路は肺内に気道を含み、機能上連続的な治療区域は、気道の軟骨層を維持しながら、細胞型の空孔を作り出す。いくつかの実施形態では、細胞型は、上皮細胞、杯状細胞及び/又は粘膜下腺細胞を含む。いくつかの実施形態では、機能上連続的な治療区域は、最大2.5cmまで且つこれを超えない深度を有する。
【0005】
[0005] いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは二相である。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態では、通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出すことは、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを10,000μs以下の間供給することによって実現される。任意選択的に、通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出すことは、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを500μs以下の間供給することによって実現される。なおもさらには、いくつかの実施形態では、通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出すことは、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを5μs~50μsの間供給することによって実現される。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは1000個以下のパケット、40~500個のパケット、又は最大10個までのパケットで構成される。いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは単極構成で送達される。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の部分は2~7個の追加の部分を含む。いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは、第1の治療区域及び少なくとも1つの追加の治療区域が連続して作り出されるようなやり方で複数の電極に供給される。いくつかの実施形態では、第1の治療区域及び少なくとも1つの追加の治療区域は重複する。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態では、第1の治療区域を作り出すことは、複数の段階で第1の治療区域にパルス電界エネルギーを供給することを含む。任意選択的に、少なくとも1つの追加の治療区域を作り出すことは、複数の異なる段階で少なくとも1つの追加の治療区域にパルス電界エネルギーを供給することを含み、複数の段階及び複数の異なる段階は同時に起こらない。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の治療区域を作り出すことは、複数の異なる段階で少なくとも1つの追加の治療区域にパルス電界エネルギーを供給することを含み、複数の段階及び複数の異なる段階は繰り返しパターンを形成する。いくつかの実施形態では、方法は、段階の合間に、第1の治療区域及び/又は少なくとも1つの追加の治療区域にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給することをさらに含み、メンテナンスパルス電界エネルギーはパルス電界エネルギーよりも低電圧を有する。任意選択的に、メンテナンスパルス電界エネルギーはパルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する。
【0010】
[0010] いくつかの実施形態では、複数の電極は、拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている複数の電極を含み、複数の電極を位置決めすることは拡張可能部材を拡張することを含む。いくつかの実施形態では、複数の電極は拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含み、バスケット形状の一部は絶縁されており、複数の電極を位置決めすることは電極送達体を拡張することを含む。
【0011】
[0011] 第2の態様では、身体内の通路であって内側周面を有する通路を治療するための方法であって、電極が通路の内側周面の一部にわたるように電極を通路内に位置決めすることと、電極にパルス電界エネルギーを供給することによって、通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出すことと、電極を通路内に1回又は複数回通路内に再位置決めし、電極が再位置決めされるごとに電極が内側周面の追加の部分にわたるようにすることと、電極が再位置決めされるごとに再位置決めされた電極にパルス電界エネルギーを供給することによって、通路の内側周面の各追加の部分に沿って追加の治療区域を作り出すことと、を含み、第1の部分及び各追加の部分は、内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように内側周面に沿って延在する方法が提供される。
【0012】
[0012] 第3の態様では、身体内の通路を治療するためのシステムであって、第1の電極及びその遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの追加の電極を含むカテーテルであって、第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極がパルス電界エネルギーを通路の内側周面に伝送することができるように、カテーテルの遠位端部が通路内に位置決めされるように構成されたカテーテルと、第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極と電気的に通信するジェネレータであって、a)第1の電極を通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、パルス電界エネルギーの電気信号を第1の電極に供給して、第1の治療区域を作り出し、b)電気信号が供給されたときに、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれを通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、パルス電界エネルギーの電気信号を少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに個々に供給するように切り替えて、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに対応する追加の治療区域を作り出すようにする、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含むジェネレータと、を含み、第1の治療区域及び追加の治療区域は、内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように、通路の内側周面に沿って延在するシステムが提供される。
【0013】
[0013] いくつかの実施形態では、通路は心臓内に設けられ、カテーテルの遠位端部は心臓内に位置決めされるように構成されるとともに、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、不整脈を治療するために機能上連続的な治療区域に肺静脈と左心房との間に電気的切断を含むようにさせる信号パラメータを含む。任意選択的に、通路は肺静脈を含み、カテーテルの遠位端部は肺静脈内に位置決めされるように構成されている。いくつかの実施形態では、信号パラメータは機能上連続的な治療区域に経壁性病変を含むようにさせる。
【0014】
[0014] いくつかの実施形態では、通路は肺内に気道を含み、カテーテルの遠位端部が、気道内に位置決めされるように構成され、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、機能上連続的な治療区域に気道の軟骨層を維持しながら細胞型の空孔を含むようにさせる信号パラメータを含む。いくつかの実施形態では、細胞型は上皮細胞、杯状細胞及び/又は粘膜下腺細胞を含む。いくつかの実施形態では、機能上連続的な治療区域は最大2.5cmまで且つこれを超えない深度を有する。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは二相である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の電極のうちの少なくとも1つに、パルス電界エネルギーを10,000μs以下の間供給して、第1の治療区域及び/又は少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の電極のうちの少なくとも1つに、パルス電界エネルギーを500μs以下の間供給して、第1の治療区域及び/又は少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の電極のうちの少なくとも1つに、パルス電界エネルギーを5μs~50μsの間供給して、第1の治療区域及び/又は少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは、1000個以下のパケット、40~500個のパケット、又は10個以下のパケットで構成される。
【0017】
[0017] いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは単極構成で送達される。
【0018】
[0018] いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の電極は2~7個の追加の電極を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに、連続してパルス電界エネルギーの電気信号を供給する。いくつかの実施形態では、第1の治療区域及び少なくとも1つの追加の治療区域は重複する。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の段階で第1の電極にパルス電界エネルギーの電気信号を供給するように構成されている。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の異なる段階で少なくとも1つの追加の電極にパルス電界エネルギーの電気信号を供給するように構成され、複数の段階及び複数の異なる段階は同時に起こらない。いくつかの実施形態では、複数の段階及び複数の異なる段階は繰り返しパターンを形成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、段階の合間に、第1の電極及び/又は少なくとも1つの追加の電極にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給し、メンテナンスパルス電界エネルギーは、パルス電界エネルギーよりも低電圧を有する。いくつかの実施形態では、メンテナンスパルス電界エネルギーは、パルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態では、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極が、拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含むとともに、バスケット形状の一部は絶縁されている。
【0021】
[0021] 第4の態様では、身体内の通路を治療するためのシステムであって、その遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの電極を含むカテーテルであって、少なくとも1つの電極がパルス電界エネルギーを通路の内側表面に伝送することができるように、カテーテルの遠位端部が前記通路内に位置決めされるように構成されたカテーテルと、少なくとも1つの電極と電気的に通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが通路の内側表面上の細胞に送達されるように、少なくとも1つの電極に電気信号を供給する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含むジェネレータと、を含み、電気信号は複数のパケットを含み、各パケットは複数の二相のサイクルを含み、且つ各パケットは0.0001~10秒で時間的に離隔されているシステムが提供される。
【0022】
[0022] いくつかの実施形態では、複数のパケットは、10,000μs以下の間、500μs以下の間、又は5μs~50μs以下の間、パルス電界エネルギーを生成する。いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは、1000個以下のパケット、40~500個のパケット又は10個以下のパケットで構成される。いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは単極構成で送達される。
【0023】
[0023] いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電極は、通路の内側表面の周面にパルス電界エネルギーを送達するように配置された、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに別の複数のパケットを供給するのに先立って、第1の電極に複数のパケットを供給する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数のパケットを第1の電極に送達することを終える前に、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに別の複数のパケットを供給する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、パケットの合間に、第1の電極及び/又は少なくとも1つの追加の電極にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給し、メンテナンスパルス電界エネルギーは、パルス電界エネルギーよりも低電圧を有する。いくつかの実施形態では、メンテナンスパルス電界エネルギーは、パルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する。
【0024】
[0024] いくつかの実施形態では、システムは、患者の心臓信号を取得するように構成された心臓モニタをさらに含み、ジェネレータが心臓信号と同期してメンテナンスパルス電界エネルギーを供給する。
【0025】
[0025] いくつかの実施形態では、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている。いくつかの実施形態では、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含み、バスケット形状の一部は絶縁されている。いくつかの実施形態では、パルス電界エネルギーは、最大2.5cmまで且つこれを超えない深度で細胞のホメオスタシスを破壊するように、通路の内側表面上の細胞に送達される。いくつかの実施形態では、システムは、患者の心臓信号を取得するように構成された心臓モニタをさらに含み、ジェネレータが心臓信号と同期して電気信号を供給する。
【0026】
[0026] 第5の態様では、身体内の通路であって内側周面を有する通路を治療する方法であって、複数の電極が通路の内側周面の少なくとも一部分にわたるように、複数の電極を通路内に位置決めすることと、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって通路の内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出し、複数の電極のうちの少なくとも1つを通る第1の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって通路の内側周面の少なくとも1つの追加の部分に沿って少なくとも1つの追加の治療区域を作り出し、複数の電極のうちの少なくとも1つを通る少なくとも1つの追加の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、を含み、第1の部分及び少なくとも1つの追加の部分は、平衡が保たれた治療区域を作り出すように、内側周面に沿って延在する方法が提供される。
【0027】
[0027] 第6の態様では、身体内の通路を治療するためのシステムであって、第1の電極及びその遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの追加の電極を含むカテーテルであって、第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極がパルス電界エネルギーを通路の内側周面に伝送することができるように、カテーテルの遠位端部が通路内に位置決めされるように構成されたカテーテルと、第1の電極、及び少なくとも1つの追加の電極と電気的に通信するジェネレータであって、a)第1の電極を通るエネルギー送達に優先順位をつけるようにパルス電界エネルギーの電気信号を第1の電極に供給して、第1の治療区域を作り出し、b)電気信号が供給されたときに、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれを通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、パルス電界エネルギーの電気信号を少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに個々に供給するように切り替えて、少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに対応する追加の治療区域を作り出すようにする、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含むジェネレータと、を含み、第1の治療区域及び追加の治療区域は、平衡が保たれた治療区域を作り出すように、通路の内側周面に沿って延在するシステムが提供される。
【0028】
[0028] これらの実施形態及び他の実施形態は、添付の図面に関連する下記の説明においてさらに詳細に説明される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
身体内の通路であって内側周面を有する前記通路を治療する方法であって、
複数の電極が前記通路の前記内側周面にわたるように前記通路内に前記複数の電極を位置決めすることと、
前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって前記通路の前記内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出し、前記複数の電極のうちの少なくとも1つを通る前記第1の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、
前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって前記通路の前記内側周面の少なくとも1つの追加の部分に沿って少なくとも1つの追加の治療区域を作り出し、前記複数の電極のうちの少なくとも1つを通る前記少なくとも1つの追加の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、
を含み、
前記第1の部分及び前記少なくとも1つの追加の部分は、前記内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように前記内側周面に沿って延在する、方法。
(項目2)
不整脈を治療するために、前記通路が心臓内に設けられ且つ前記機能上連続的な治療区域が肺静脈と左心房との間に電気的切断を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記通路は前記肺静脈を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記機能上連続的な治療区域は経壁性病変を含む、項目2又は3に記載の方法。
(項目5)
前記通路は肺内に気道を含み、前記機能上連続的な治療区域は前記気道の軟骨層を維持しながら細胞型の空孔を作り出す、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記細胞型は上皮細胞、杯状細胞及び/又は粘膜下腺細胞を含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記機能上連続的な治療区域は、最大2.5cmまで且つこれを超えない深度を有する、項目5又は6に記載の方法。
(項目8)
前記パルス電界エネルギーは二相である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
前記通路の前記内側周面の前記第1の部分に沿って前記第1の治療区域を作り出すことは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つに、10,000μs以下の間パルス電界エネルギーを供給することによって実現される、項目1~8のいずれか一項に記載の方法
。
(項目10)
前記通路の前記内側周面の前記第1の部分に沿って前記第1の治療区域を作り出すことは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つに、500μs以下の間パルス電界エネルギーを供給することによって実現される、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記通路の前記内側周面の前記第1の部分に沿って前記第1の治療区域を作り出すことは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つに、5μs~50μsの間パルス電界エネルギーを供給することによって実現される、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記パルス電界エネルギーは1000個以下のパケットで構成される、項目1~11のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記パルス電界エネルギーは40~500個のパケットで構成される、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記パルス電界エネルギーは最大10個までのパケットで構成される、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記パルス電界エネルギーは単極構成で送達される、項目1~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記少なくとも1つの追加の部分は2~7個の追加の部分を含む、項目1~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記パルス電界エネルギーは、前記第1の治療区域及び前記少なくとも1つの追加の治療区域が連続して作り出されるやり方で前記複数の電極に供給される、項目1~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記第1の治療区域及び前記少なくとも1つの追加の治療区域は重複する、項目1~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記第1の治療区域を作り出すことは、前記第1の治療区域に前記パルス電界エネルギーを供給することを含む、項目1~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記少なくとも1つの追加の治療区域を作り出すことは、複数の異なる段階で前記少なくとも1つの追加の治療区域に前記パルス電界エネルギーを供給することを含み、前記複数の段階及び前記複数の異なる段階は同時に起こらない、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記少なくとも1つの追加の治療区域を作り出すことは、複数の異なる段階で前記少なくとも1つの追加の治療区域に前記パルス電界エネルギーを供給することを含み、前記複数の段階及び前記複数の異なる段階は繰り返しパターンを形成する、項目20に記載の方法。
(項目22)
段階の合間に前記第1の治療区域及び/又は前記少なくとも1つの追加の治療区域にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給することをさらに含み、前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーよりも低電圧を有する、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記複数の電極は拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている複数の電極を含み、前記複数の電極を位置決めすることは前記拡張可能部材を拡張することを含む、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記複数の電極は拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含み、前記バスケット形状の一部は絶縁されており、前記複数の電極を位置決めすることは前記電極送達体を拡張することを含む、項目1~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
身体内の通路であって内側周面を有する前記通路を治療する方法であって、
電極が前記通路の前記内側周面の一部にわたるように前記通路内に前記電極を位置決めすることと、
前記電極にパルス電界エネルギーを供給することによって前記通路の前記内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出すことと、
前記電極が再位置決めされるごとに前記電極が前記内側周面の追加の部分にわたるように、前記電極を前記通路内に1回又は複数回前記通路内に再位置決めすることと、
前記電極が再位置決めされるごとに前記再位置決めされた電極にパルス電界エネルギーを供給することによって、前記通路の前記内側周面の各追加の部分に沿って追加の治療区域を作り出すことと、
を含み、
前記第1の部分及び各追加の部分は、前記内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように前記内側周面に沿って延在する、方法。
(項目27)
身体内の通路を治療するためのシステムであって、
第1の電極及びその遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの追加の電極を含むカテーテルであって、前記第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極がパルス電界エネルギーを前記通路の内側周面に伝送することができるように、前記カテーテルの前記遠位端部が前記通路内に位置決めされるように構成された前記カテーテルと、
前記第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極と電気的に通信するジェネレータであって、
a)前記第1の電極を通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、前記パルス電界エネルギーの電気信号を前記第1の電極に供給して、第1の治療区域を作り出し、
b)電気信号が供給されたときに前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれを通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、前記パルス電界エネルギーの前記電気信号を前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに個々に供給するように切り替えて、前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに対応する追加の治療区域を作り出すようにする、
少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む前記ジェネレータと、
を含み、
前記第1の治療区域及び前記追加の治療区域は、前記内側周面にわたる機能上連続的な治療区域を作り出すように前記通路の前記内側周面に沿って延在する、システム。
(項目28)
前記通路は心臓内に設けられ、前記カテーテルの前記遠位端部は前記心臓内に位置決めされるように構成されたシステムであって、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、不整脈を治療するために前記機能上連続的な治療区域に肺静脈と左心房との間に電気的切断を含むようにさせる信号パラメータを含む、項目27に記載のシステム。
(項目29)
前記通路は前記肺静脈を含み、前記カテーテルの前記遠位端部は前記肺静脈内に位置決めされるように構成された、項目28に記載のシステム。
(項目30)
前記信号パラメータは前記機能上連続的な治療区域に経壁性病変を含むようにさせる、項目29に記載のシステム。
(項目31)
前記通路は肺内に気道を含み、前記カテーテルの前記遠位端部は前記気道内に位置決めされるように構成されるシステムであって、前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記機能上連続的な治療区域に前記気道の軟骨層を維持しながら細胞型の空孔を含むようにさせる信号パラメータを含む、項目27に記載のシステム。
(項目32)
前記細胞型は上皮細胞、杯状細胞及び/又は粘膜下腺細胞を含む、項目31に記載のシステム。
(項目33)
前記機能上連続的な治療区域は最大2.5cmまで且つこれを超えない深度を有する、項目31に記載のシステム。
(項目34)
前記パルス電界エネルギーは二相である、項目27~33のいずれか一項に記載のシステム。
(項目35)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを10,000μs以下の間供給して、前記第1の治療区域及び/又は前記少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す、項目27~34のいずれか一項に記載のシステム。
(項目36)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを500μs以下の間供給して、前記第1の治療区域及び/又は前記少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す、項目35に記載のシステム。
(項目37)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを5μs~50μsの間供給して、前記第1の治療区域及び/又は前記少なくとも1つの追加の治療区域のそれぞれを作り出す、項目36に記載のシステム。
(項目38)
前記パルス電界エネルギーは1000個以下のパケットで構成される、項目27~37のいずれか一項に記載のシステム。
(項目39)
前記パルス電界エネルギーは40~500個のパケットで構成される、項目38に記載のシステム。
(項目40)
前記パルス電界エネルギーは10個以下のパケットで構成される、項目38に記載のシステム。
(項目41)
前記パルス電界エネルギーは単極構成で送達される、項目27~40のいずれか一項に記載のシステム。
(項目42)
前記少なくとも1つの追加の電極は2~7個の追加の電極を含む、項目27~41のいずれか一項に記載のシステム。
(項目43)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに、連続して前記パルス電界エネルギーの前記電気信号を供給する、項目27~42のいずれか一項に記載のシステム。
(項目44)
前記第1の治療区域及び前記少なくとも1つの追加の治療区域は重複する、項目27~43のいずれか一項に記載のシステム。
(項目45)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の段階で前記第1の電極に前記パルス電界エネルギーの前記電気信号を供給するように構成された、項目27~44のいずれか一項に記載のシステム。
(項目46)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、複数の異なる段階で前記少なくとも1つの追加の電極に前記パルス電界エネルギーの前記電気信号を供給するように構成され、前記複数の段階及び前記複数の異なる段階は同時に起こらない、項目45に記載のシステム。
(項目47)
前記複数の段階及び前記複数の異なる段階は繰り返しパターンを形成する、項目46に記載のシステム。
(項目48)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、段階の合間に、前記第1の電極及び/又は前記少なくとも1つの追加の電極にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給し、前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーよりも低電圧を有する、項目46に記載のシステム。
(項目49)
前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する、項目48に記載のシステム。
(項目50)
前記少なくとも第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極は拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている、項目27~49のいずれか一項に記載のシステム。
(項目51)
前記少なくとも第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含み、前記バスケット形状の一部は絶縁されている、項目27~49のいずれか一項に記載のシステム。
(項目52)
身体内の通路を治療するためのシステムであって、
その遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの電極を含むカテーテルであって、前記少なくとも1つの電極がパルス電界エネルギーを前記通路の内側表面に伝送することができるように、前記カテーテルの前記遠位端部が前記通路内に位置決めされるように構成された前記カテーテルと、
前記少なくとも1つの電極と電気的に通信するジェネレータであって、パルス電界エネルギーが前記通路の前記内側表面上の細胞に送達されるように、前記少なくとも1つの電極に電気信号を供給する、少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む前記ジェネレータと、
を含み、
前記電気信号は複数のパケットを含み、
各パケットは複数の二相のサイクルを含み、且つ、
各パケットは0.0001~10秒で時間的に離隔されている、システム。
(項目53)
前記複数のパケットは、前記パルス電界エネルギーを10,000μs以下の間生成する、項目52に記載のシステム。
(項目54)
前記複数のパケットは、前記パルス電界エネルギーを500μs以下の間生成する、請求項53に記載のシステム。
(項目55)
前記複数のパケットは、前記パルス電界エネルギーを5μs~50μs以下の間生成する、項目54に記載のシステム。
(項目56)
前記パルス電界エネルギーは1000個以下のパケットで構成される、項目52~55のいずれか一項に記載のシステム。
(項目57)
前記パルス電界エネルギーは40~500個のパケットで構成される、項目56に記載のシステム。
(項目58)
前記複数のパケットは10個以下のパケットを含む、項目56に記載のシステム。
(項目59)
前記パルス電界エネルギーは単極構成で送達される、項目52~58のいずれか一項に記載のシステム。
(項目60)
前記少なくとも1つの電極は、前記通路の前記内側表面の周面に前記パルス電界エネルギーを送達するように配置された、少なくとも第1の電極及び少なくとも1つの追加の電極を含む、項目52~59のいずれか一項に記載のシステム。
(項目61)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに別の複数のパケットを供給するのに先立って、前記第1の電極に前記複数のパケットを供給する、項目60に記載のシステム。
(項目62)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、前記複数のパケットを前記第1の電極に送達することを終える前に、前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに前記別の複数のパケットを供給する、項目60に記載のシステム。
(項目63)
前記少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムは、パケットの合間に、前記第1の電極及び/又は前記少なくとも1つの追加の電極にメンテナンスパルス電界エネルギーを供給し、前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーよりも低電圧を有する、項目60に記載のシステム。
(項目64)
前記メンテナンスパルス電界エネルギーは前記パルス電界エネルギーの電圧の半分未満の電圧を有する、項目63に記載のシステム。
(項目65)
患者の心臓信号を取得するように構成された心臓モニタをさらに含み、前記ジェネレータは前記心臓信号と同期して前記メンテナンスパルス電界エネルギーを供給する、項目63に記載のシステム。
(項目66)
前記少なくとも第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能部材の上に設置されているか又は中に埋め込まれている、項目60~65のいずれか一項に記載のシステム。
(項目67)
前記少なくとも第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極は、拡張可能なバスケット形状を有する電極送達体を形成する複数のワイヤ又はリボンを含み、前記バスケット形状の一部は絶縁されている、項目60~65のいずれか一項に記載のシステム。
(項目68)
前記パルス電界エネルギーは、最大2.5cmまで且つこれを超えない深度で細胞のホメオスタシスを破壊するように前記通路の前記内側表面上の前記細胞に送達される、請求項52~67のいずれか一項に記載のシステム。
(項目69)
前記患者の心臓信号を取得するように構成された心臓モニタをさらに含み、前記ジェネレータは前記心臓信号と同期して前記電気信号を供給する、項目52~68のいずれか一項に記載のシステム。
(項目70)
身体内の通路であって内側周面を有する前記通路を治療する方法であって、
前記通路内に複数の電極を位置決めし、前記複数の電極が前記通路の前記内側周面の少なくとも一部分にわたるようにすることと、
前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって前記通路の前記内側周面の第1の部分に沿って第1の治療区域を作り出し、前記複数の電極のうちの前記少なくとも1つを通る前記第1の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、
前記複数の電極のうちの少なくとも1つにパルス電界エネルギーを供給することによって前記通路の前記内側周面の少なくとも1つの追加の部分に沿って少なくとも1つの追加の治療区域を作り出し、前記複数の電極のうちの前記少なくとも1つを通る前記少なくとも1つの追加の治療区域へのエネルギー送達に優先順位をつけるようにすることと、
を含み、
前記第1の部分及び前記少なくとも1つの追加の部分は、平衡が保たれた治療区域を作り出すように前記内側周面に沿って延在する方法。
(項目71)
身体内の通路を治療するためのシステムであって、
第1の電極及びその遠位端部の付近に設けられた少なくとも1つの追加の電極を含むカテーテルであって、前記第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極がパルス電界エネルギーを前記通路の内側周面に伝送することができるように、前記カテーテルの前記遠位端部が前記通路内に位置決めされるように構成された前記カテーテルと、
前記第1の電極及び前記少なくとも1つの追加の電極と電気的に通信するジェネレータであって、
a)前記第1の電極を通るエネルギー送達に優先順位をつけるように前記パルス電界エネルギーの電気信号を前記第1の電極に供給して、第1の治療区域を作り出し、
b)前記電気信号が供給されたときに、前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれを通るエネルギー送達に優先順位をつけるように、前記パルス電界エネルギーの電気信号を前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに個々に供給するように切り替えて、前記少なくとも1つの追加の電極のそれぞれに対応する追加の治療区域を作り出すようにする、
少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズムを含む前記ジェネレータと、
を含み、
前記第1の治療区域及び前記追加の治療区域は、平衡が保たれた治療区域を作り出すように前記通路の前記内側周面に沿って延在する、システム。
【0029】
参照による援用
[0029] 本明細書で言及されるすべての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物、特許、又は特許出願が具体的、且つ個別に参照により組み込まれることが示されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
図面の簡単な説明
[0030] 本開示の原理が利用されている例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照して、本開示の特徴及び利点の例を記載する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】[0031]患者を治療する際の使用に適した既存の既知の肺組織修正システムの一実施形態を図示する。
【
図2】[0032]
図1の治療用エネルギー送達カテーテルを拡大した図である。
【
図3A】[0033]エネルギー送達アルゴリズムにより供給される信号の波形の一実施形態を図示する。
【
図3B】[0034]切り替え時間を間に有する(正のピーク及び負のピークを含む)二相のパルスの様々な例を図示する。
【
図3C】[0035]有効電界閾値と切り替え時間との間の関係を図示する。
【
図3D】[0036]別のエネルギー送達アルゴリズムの波形の例を図示する。
【
図3E】[0037]電圧が等しくない波形のさらなる例を図示する。
【
図3F】[0037]電圧が等しくない波形のさらなる例を図示する。
【
図3G】[0038]別のエネルギー送達アルゴリズムの波形の一例を図示する。
【
図3H】[0039]単相のパルスを有する波形のさらなる例を図示する。
【
図3I】[0040]反対の極性の等しくない数のパルスに反転する前に、1つの極性で2つ以上のパルスを送達することにより実現された位相不均衡を有する波形の例を図示する。
【
図3J】[0041]別のエネルギー送達アルゴリズムの波形の一例を図示する。
【
図4】[0042]遠位端部の付近に少なくとも1つのエネルギー送達体を有する細長いシャフトを含む治療用エネルギー送達カテーテルの一実施形態を図示する。
【
図4A】[0043]一連のステップにおいて治療用エネルギー送達カテーテルの一実施形態を用いて、体腔に沿った周方向のリングにエネルギーを送達する方法を図示する。
【
図4B】[0043]一連のステップにおいて治療用エネルギー送達カテーテルの一実施形態を用いて、体腔に沿った周方向のリングにエネルギーを送達する方法を図示する。
【
図4C】[0043]一連のステップにおいて治療用エネルギー送達カテーテルの一実施形態を用いて、体腔に沿った周方向のリングにエネルギーを送達する方法を図示する。
【
図4D】[0043]一連のステップにおいて治療用エネルギー送達カテーテルの一実施形態を用いて、体腔に沿った周方向のリングにエネルギーを送達する方法を図示する。
【
図5A】[0044]
図4Aの方法に対応する治療結果を図示する。
【
図5B】[0044]
図4Bの方法に対応する治療結果を図示する。
【
図5C】[0044]
図4Cの方法に対応する治療結果を図示する。
【
図5D】[0044]
図4Dの方法に対応する治療結果を図示する。
【
図6】[0045]カテーテルを回転させずに周方向にエネルギーを体腔に送達し易くするように構成された4個の電極を有する電極体の一実施形態を図示する。
【
図7】[0046]
図6の電極体を単極構成で使用した場合の図示例である。
【
図8A】[0047]
図2のエネルギー送達体などを用いて周方向にエネルギーが送達される場合の、気道壁の様々な組織層を通した電界分布の一例を図示する。
【
図8B】[0048]限局的送達の下での気道壁の様々な組織層を通した電界分布の一例を図示し、
図6の第1の電極などの電極が、単独で通電されている。
【
図9】[0049]エネルギー送達体の一実施形態が位置決めされた、体腔の一例の断面図を図示する。
【
図10】[0050]パルス電界(PEF:pulsed electric field)エネルギー送達に応じた経時的な細孔又は欠陥の形成を示すプロットの一例である。
【
図11】[0051]致死率に関して最適化されない典型的な間隔でPEFエネルギーが送達される場合の、細孔又は欠陥の形成を示すプロットの一例である。
【
図12】[0052]間隔をあけてPEFエネルギーパケットが送達される場合の、細孔又は欠陥の形成を示すプロットの一例であり、各パケット間の休止期間は、壊れた膜を維持するには十分な近さだが、細胞含有物漏出の累積量が増加するには十分に遠い距離で後続のPEFが送達されるようになっている。
【
図13】[0053]エネルギー送達体が位置決めされた壁を有する体腔の一例の断面図を図示する。
【
図14】[0054]複数のPEFパケット(5個のパケット)を各電極に順々に送達することの効果を示すプロットの一例である。
【
図15】[0055]連続パターンではなく、一部重複したパターンで、間隔をあけて配置されたパケットを電極に送達することを伴う、複数のPEFパケットを順々に送達することの効果を示すプロットの一例である。
【
図16】[0056]一次PEF及びメンテナンスPEFを間に含むPEFのシーケンスの一例を示すプロットである。
【
図17】[0057]
図16の送達シーケンスが標的膜中の細孔数に及ぼす効果の一例を示すプロットである。
【
図18A】[0058]心臓周期の様々な部分の間にメンテナンスPEFを使用する単極のエネルギー送達シーケンスの一実施形態を図示する。
【
図18B】[0058]心臓周期の様々な部分の間にメンテナンスPEFを使用する単極のエネルギー送達シーケンスの一実施形態を図示する。
【
図18C】[0058]心臓周期の様々な部分の間にメンテナンスPEFを使用する単極のエネルギー送達シーケンスの一実施形態を図示する。
【
図18D】[0058]心臓周期の様々な部分の間にメンテナンスPEFを使用する単極のエネルギー送達シーケンスの一実施形態を図示する。
【
図19A】[0059]別の電極への一次PEFと同時に、メンテナンスPEFを様々な電極に送達することの、潜在効果を図示する。
【
図19B】[0059]別の電極への一次PEFと同時に、メンテナンスPEFを様々な電極に送達することの、潜在効果を図示する。
【
図20A】[0060]一次PEFが単極式で送達されている状態で、メンテナンスPEFを双極式で送達する一例を図示する。
【
図20B】[0060]一次PEFが単極式で送達されている状態で、メンテナンスPEFを双極式で送達する一例を図示する。
【
図20C】[0060]一次PEFが単極式で送達されている状態で、メンテナンスPEFを双極式で送達する一例を図示する。
【
図20D】[0060]一次PEFが単極式で送達されている状態で、メンテナンスPEFを双極式で送達する一例を図示する。
【
図21A】[0061]エネルギーを2つ以上の電極に送達することによって、限局的送達の効果が実現可能な実施形態を図示する。
【
図21B】[0061]エネルギーを2つ以上の電極に送達することによって、限局的送達の効果が実現可能な実施形態を図示する。
【
図22】[0062]エネルギー送達体の一部分を被覆し、別の部分を露出したままにする絶縁材料の一例を図示するが、この露出部分は電極と見なされる。
【
図23】[0063]エネルギー送達体の一部分を被覆し、2つの部分を露出したままにし、これにより、第1の電極及び第2の電極を作り出す絶縁材料の一例を図示する。
【
図24】[0064]リングを含む電極の一例を図示し、リングを通して送達されたエネルギーが、リングを通って、及びリングのまわりに膨張する拡張可能部材によって、リングの区域に集中及び制限される。
【
図25】[0065]ディスクを含む電極の一例を図示し、ディスクを通して送達されたエネルギーが、ディスクの両側に設けられた拡張可能部材によって集中及び制限されるように構成されている。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
[0066] 治療用エネルギーは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)(例えば、慢性気管支炎、肺気腫)、喘息、間質性肺繊維症、嚢胞性繊維症、気管支拡張症、原発性線毛運動不全症(PCD)、急性気管支炎などの肺の疾病及び疾患、或いはこれらに関連する様々な肺の疾病及び疾患、及び/又は、他の肺の疾病若しくは疾患の治療の際に、肺通路に適用することができる。肺通路を通して到達可能な肺組織の例には、上皮(杯状細胞、多列線毛円柱上皮細胞、及び基底細胞)、固有層、粘膜下組織、粘膜下腺、基底膜、平滑筋、軟骨、神経、組織の近く又は内部に存在する病原体、或いは前述のうちの任意の、又はすべての組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0033】
[0067] いくつかの実例では、治療用エネルギーは、概して、細胞外マトリクス中の組織レベルの構築タンパク質をほとんど、又はまったく破壊せずに標的組織の除去を可能にする高電圧パルスによって特徴付けられる。これにより、血管狭窄又は食道瘻などの、危険な副次的影響を防ぐとともに、数日間の処置内で健康な新たな標的組織の再生成もまた可能になる。この種の治療を提供するシステムの例には、それぞれがあらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される米国仮特許出願第62/355,164号及び第62/489,753号に対する優先権を主張する、「GENERATOR AND A CATHETER WITH AN ELECTRODE AND A METHOD FOR TREATING A LUNG PASSAGEWAY」という名称の、国際特許出願第PCT/US2017/039527号を含む、同一出願人による特許出願に記載された肺組織修正システム(例えば、エネルギー送達カテーテルシステム)が含まれる。このような治療は成功を収めているが、改良が望まれる場合がある。例えば、気道内腔の周面全体にわたる治療効果の規則性を増すことが望まれる場合がある。
【0034】
[0068] 治療用エネルギーはまた、アテローム性動脈硬化(特に、血管形成後の再狭窄の予防において)、及び心房細動を含む様々な症状の治療のために血管に適用することも可能である。心房細動は最もよく見られる持続性の心臓不整脈であり、特に発作を引き起こすことによって、罹患者の死亡リスクを著しく高める。この現象では、誤った電気インパルスの生成が原因で心臓が正常な洞調律から外れる。心房細動は、肺静脈(PV:pulmonary vein)の心筋組織内の細胞に自動性が存在することが原因でPVの心筋スリーブ内で発生すると考えられる。これらの細胞からのペースメーカー活動により、心房細動を起こす異所性拍動が生じると考えられる。PVはまた、心房細動の持続において重要であると考えられている。その理由は、これらの血管の混沌としたアーキテクチャ、及び電気生理学的特性が、心房細動が永続し得る環境をもたらすからである。したがって、PVの心筋スリーブ内のこれらの異常性のペースメーカー細胞の破壊又は除去が目標であり、心房細動は、治療用エネルギーを肺静脈に送達することによって治療される場合が多い。しかしながら、PV狭窄が報告されていることにより、従来このアプローチは、PV洞を標的としてPVと左心房との間に導通遮断を実現するアプローチに修正されてきている。PV洞は、肺静脈に加えて、左心房ルーフ及び後部壁、並びに右側肺静脈洞の場合には、心房中隔の一部分を取り囲んでいる。いくつかの実例では、この技法により、肺静脈口の絶縁と比較して、成功率が高くなり、合併症率が低くなる。
【0035】
[0069] 熱アブレーション治療、特に高周波(RF)アブレーションは、現在のところ、局所的な組織壊死による症候性心房細動の治療の「最も基準となる」ものである。利用可能な方法を用いて洞律動の再建が改良されているにもかかわらず、成功率及び安全性はいずれも、これらの処置の熱的性質によって制限される。したがって、臨床の現場で技術を維持しながら、高電圧エネルギーの短時間のパルスによって引き起こされる細胞膜の元に戻らない透過化に基づく治療である不可逆電気穿孔法(IRE:irreversible electroporation)を含む、異常組織を除去するより安全で、より汎用性の高い方法が使用されてきた。IREは、組織特異的であり、壊死ではなくアポトーシスをトリガし、心筋に隣接する構造に対してより安全であることがわかっている。しかしながら、これまでのところ、これらのIRE方法論の成功は不均質である。
【0036】
[0070] いくつかの実例では、IREエネルギーの送達により、異常性の電気リズムの遮断が不完全になる。これは、肺静脈のまわりに周方向に治療する不規則性、及び/又は壁エネルギーの経壁送達が不十分になることが原因である可能性がある。いずれの場合も、心房細動が十分に治療されないか、又は、心房細動が後で再発する。そのため、心房細動治療の改良が望まれている。
【0037】
[0071] 多くの特定の疾病及び症状を治療するために、治療用エネルギーを多種多様な体腔に適用し得ることが理解されるであろう。いくつかの実例では、環境又は疾病の特性は、現在のデバイスからのエネルギーの送達の改善、及び/又は改良されたデバイス及び方法が望まれるようなものである。上述したように、エネルギー送達の深度の向上が望まれる場合もあれば、内腔壁への周方向の送達の改善、又はこの2つの何らかの組み合わせが望まれる場合もある。同様に、他の実例では、エネルギー送達の空間的歪み若しくは累積的な歪みの低減、又は様々な不均質性の環境要因若しくは他の環境要因による送達方向の予期せぬ変更などの、送達の制御の改善が望まれる。通常、送達される総エネルギーを維持又は削減しつつ、且つ、処置時間を維持又は短縮しつつ、このような改善が望まれる。これは、例えば、コスト及び副作用の管理の助けとなり得る。前述の目的のうちの少なくともいくつかは、本開示の実施形態によって実現可能である。
【0038】
[0072] ここで図面を参照しながら、開示されているデバイス、送達システム、及び方法の具体的な実施形態を説明する。この詳細な説明では、いかなる特定の構成要素、特徴、又はステップも任意の実施形態に必須であることの含意を意図するものはない。
【0039】
I.全体像
[0073] 様々な症状の下での結果を改善するように、身体の部分、特に体腔への治療用エネルギーの最適化された送達のための方法、デバイス及びシステムを提供する。特に、組織修正システムとともに使用するための、専用のカテーテル設計及び/又は別個のエネルギー送達アルゴリズムを提供する。このような組織修正システムの例には、米国仮特許出願第62/355,164号及び第62/489,753号に対する優先権を主張する「GENERATOR AND A CATHETER WITH AN ELECTRODE AND A METHOD FOR TREATING A LUNG PASSAGEWAY」という名称の、同一出願人による国際特許出願PCT/US2017/039527号、並びに、米国仮特許出願第62/610,430号に対する優先権を主張する「METHODS, APPARATUSES, AND SYSTEMS FOR THE TREATMENT OF DISEASE STATES AND DISORDERS」という名称の、同一出願人による国際特許出願PCT/___________号に記載された肺組織修正システムが含まれ、それらのすべてが、あらゆる目的のために参照によって本明細書に援用される。これらのカテーテル設計及びエネルギー送達アルゴリズムは、肺通路へのエネルギー送達を提供し、ある特定の症状に対する結果を改善する。同様に、これらのカテーテル設計及びエネルギー送達アルゴリズムにより、血管などの他の体腔の治療において、特に、心房細動の治療用に肺組織修正システムの態様を利用することが可能になる。
【0040】
[0074]
図1及び
図2は、患者Pの体腔又は通路の治療に用いられる肺組織修正システム100の一実施形態を図示する。この実施形態では、システム100は、ジェネレータ104に接続可能な治療用エネルギー送達カテーテル102を含む。この実施形態では、カテーテル102は、その遠位端部の付近に少なくとも1つのエネルギー送達体108と、近位端部にハンドル110と、を有する細長いシャフト106を有する。カテーテル102のジェネレータ104への接続は、他にも色々機能するが特に、エネルギー送達体108に電気エネルギーを供給する。
図1に図示されているように、カテーテル102は、例えば、気管支鏡112の内腔を通すなど、多種多様な方法により患者Pの気管支通路の中に挿入可能である。
【0041】
[0075]
図2は、
図1の治療用エネルギー送達カテーテル102の実施形態を拡大した図を示す。この実施形態では、エネルギー送達体108は、単極の送達電極をただ1つだけ含む。エネルギー送達体108は、近位端拘束部122及び遠位端拘束部124により拘束され、電極として機能する螺旋形状のバスケットを形成する、複数のワイヤ又はリボン120を含む。代替的な実施形態では、ワイヤ又はリボンは、螺旋形状に形成されたものではなく、直線形状である(すなわち、直線形状のバスケットを形成するように構成されている)。さらに別の実施形態では、エネルギー送達体108は、レーザ切断されてチューブを形成する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体108は、自己拡張可能であり、折り畳まれた構成で標的区域に送達される。この折り畳まれた構成は、例えば、エネルギー送達体108上にシース126を配置することによって実現することができる。
図2では、(シース126内の)カテーテルシャフト106は、近位端拘束部122で終端しており、遠位端拘束部124は実質的に拘束ないままであり、カテーテル102のシャフト106に対して自由に移動することができる。エネルギー送達体108上でシース126を前進させることにより、遠位端拘束部124が前方に移動し、これにより、エネルギー送達体108の伸長/折り畳み、及び拘束が可能になる。
【0042】
[0076] この例に示されるように、カテーテル102は、その近接端部にハンドル110を含む。いくつかの実施形態では、ハンドル110は、ハンドル取り外しボタン130を押すなどして、取り外すことができる。この実施形態では、ハンドル110は、エネルギー送達体操作ノブ132を含み、ノブ132の動きにより、バスケット形状の電極を拡張、又は収縮/折畳させる。この例では、ハンドル110は、気管支鏡112と接続するための気管支鏡作業ポートスナップ134と、ジェネレータ104と接続するためのケーブルプラグインポート136と、もまた含む。
【0043】
[0077]
図1に戻って参照すると、この実施形態では、治療用エネルギー送達カテーテル102は、患者Pの皮膚に外部から適用される分散(帰路)電極140とともにジェネレータ104と接続可能である。したがって、この実施形態では、カテーテル102の遠位端部の付近に設けられたエネルギー送達体108と、帰路電極140との間にエネルギーを供給することによって、単極のエネルギー送達が実現される。しかしながら、双極のエネルギー送達及び他の構成を代替的に使用してもよいことが理解されるであろう。双極のエネルギー送達を使用する場合、治療用エネルギー送達カテーテル102は、複数のエネルギー送達体108を含むようにするなど、全体的な設計が異なってもよいし、或いは、双極式に機能するように構成されたエネルギー送達体108をただ1つだけ含むようにするなど、全体的な設計が同じようであってもよい。いくつかの実例では、双極のエネルギー送達は、単極のエネルギー送達と比べて、低電圧を使用して治療効果を実現することができる。双極構成では、正極と負極は、互いに十分に接近しており、極柱、及び極柱間のいずれにおいても治療効果をもたらす。これにより、より大きな表面積に治療効果を広げることができ、したがって、単極と比較して、治療効果の実現に要する電圧を低くすることとができる。同様に、この低電圧を使用して浸透の深度を小さくすることができる。加えて、送達される電圧が十分に低く、心筋細胞の刺激が回避される場合には、電圧要件が低くなったことで、心臓同期の使用が不要となる場合がある。
【0044】
[0078]
図1のジェネレータ104は、ユーザインタフェース150と、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152と、プロセッサ154と、データ記憶/検索部156(メモリ及び/又はデータベースなど)と、送達されるエネルギーを生成し、貯蔵するエネルギー貯蔵サブシステム158と、を含む。いくつかの実施形態では、エネルギー貯蔵/送達に1つ又は複数のキャパシタを用いているが、任意の他の適切なエネルギー貯蔵素子を使用してもよい。加えて、1つ又は複数の通信ポートが含まれる。
【0045】
[0079] いくつかの実施形態では、ジェネレータ104は、3つのサブシステム、すなわち、1)高エネルギー貯蔵システム、2)高電圧、中周波数スイッチング増幅器、並びに、3)システムコントローラ、ファームウェア、及びユーザインタフェースを含む。システムコントローラは、パルスエネルギー出力を患者の心臓リズムに同期させることを可能にする心臓同期トリガモニタを含む。ジェネレータは、交流電流(AC)本線を取り込み、複数の直流電流(DC)電源に電力供給する。ジェネレータのコントローラは、エネルギー送達を開始する前に、DC電源に高エネルギーキャパシタ貯蔵バンクを充電させることが可能である。治療用エネルギー送達を開始する際に、ジェネレータのコントローラ、高エネルギー貯蔵バンク、及び二相のパルス増幅器は同時に動作して、高電圧、中周波数の出力を生み出すことができる。
【0046】
[0080] 数多くのジェネレータの電気的アーキテクチャを用いて、エネルギー送達アルゴリズムを実行し得ることが理解されるであろう。特に、いくつかの実施形態では、同じエネルギー貯蔵及び高電圧送達システムとは別に、パルス電界回路をエネルギー送達電極に向けることが可能な高度なスイッチングシステムが使用される。さらに、急変するパルスのパラメータ(例えば、電圧、周波数、等々)又は複数のエネルギー送達電極を用いる高度なエネルギー送達アルゴリズムで用いられるジェネレータは、高度にカスタマイズ可能な波形及び地理的なパルス送達パラダイムを容易にするモジュラーエネルギー貯蔵システム及び/又は高電圧システムを利用してもよい。本明細書で上述した電気的アーキテクチャは、単なる例にすぎず、パルス電界を送達するシステムは、追加のスイッチング増幅器構成部品を含んでもよいし、含まなくてもよいことがさらに理解されるはずである。
【0047】
[0081] ユーザインタフェース150は、オペレータが患者データを入力し、治療アルゴリズム(例えば、エネルギー送達アルゴリズム152)を選択し、エネルギー送達を開始し、記憶/検索部156に記憶された記録を閲覧し、及び/又はそれ以外の方法でジェネレータ104と通信することを可能にするタッチスクリーン及び/又は従来のボタンを含むことができる。
【0048】
[0082] いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース150は、オペレータが定義した入力を受け取るように構成されている。オペレータが定義した入力は、エネルギー送達の継続時間、エネルギー送達パルスの1つ又は複数の他の時間的側面、電力、及び/又は動作のモード、或いはこれらの組み合わせを含むことができる。動作のモードの例には、システム始動及び自己テスト、オペレータ入力、アルゴリズム選択、治療前のシステム状態及びフィードバック、エネルギー送達、エネルギー送達後の表示又はフィードバック、治療データ閲覧及び/又はダウンロード、ソフトウェア更新、或いはこれらの任意の組み合わせ若しくはサブ組み合わせが含まれる場合がある(が、これらに限定されない)。
【0049】
[0083] いくつかの実施形態では、システム100は、外部心臓モニタ170などの心電図(ECG)を取得するためのメカニズムもまた含む。心臓モニタの例は、AccuSync Medical Research Corporationから入手可能である。いくつかの実施形態では、外部心臓モニタ170は、ジェネレータ104に動作可能に接続されている。心臓モニタ170を使用してECG信号を連続的に取得することができる。外部電極172を患者Pに付けてECGを取得してもよい。ジェネレータ104は、1つ又は複数の心臓周期を分析し、エネルギーを患者Pに適用しても安全である期間の始まりを識別することで、エネルギー送達を心臓周期と同期させる能力を提供する。いくつかの実施形態では、エネルギーパルスがT波で送達される場合に生じる恐れがある不整脈の誘発を回避するために、この期間は、(ECG QRS群の)R波のミリ秒以内である。このような心臓同期は、通常、単極のエネルギー送達を使用するときに利用されることが理解されるであろう。ただし、他のエネルギー送達方法の一部として利用される場合もある。
【0050】
[0084] いくつかの実施形態では、プロセッサ154は、他にも色々動作するが特に、エネルギー送達アルゴリズム間の修正及び/又は切り替え、エネルギー送達及び任意のセンサのデータのモニタリング、フィードバックループを介して、モニタリングデータに対する応答を行う。いくつかの実施形態では、プロセッサ154は、1つ又は複数の測定されたシステムのパラメータ(例えば、電流)、1つ又は複数の測定された組織のパラメータ(例えば、インピーダンス)、及び/又はこれらの組み合わせに基づきフィードバック制御ループを実行するための、1つ又は複数のアルゴリズムを実行するように構成されている。
【0051】
[0085] データ記憶/検索部156は、送達された治療に関連するデータを記憶するが、これらのデータは、デバイス(例えば、ラップトップ又はサムドライブ)を通信ポートに接続することによって、任意選択的にダウンロードすることが可能である。いくつかの実施形態では、デバイスは、例えば、データ記憶/検索部156に記憶された、プロセッサ154により実行可能な命令など、情報のダウンロードを指図するために使用されるローカルソフトウェアを有する。いくつかの実施形態では、ユーザインタフェース150によって、オペレータは、限定される訳ではないが、例えば、コンピュータデバイス、タブレット、モバイルデバイス、サーバ、ワークステーション、クラウドコンピューティング装置/システムなどの、デバイス及び/又はシステムへのデータのダウンロードを選択することが可能になる。有線及び/又は無線接続が可能な通信ポートにより、上述の通りデータのダウンロードが可能となるが、カスタムアルゴリズムのアップロードなどのデータのアップロード又はソフトウェア更新の提供もまた可能になる。
【0052】
[0086] 本明細書で説明した通り、多種多様なエネルギー送達アルゴリズム152が、メモリ又はデータ記憶/検索部156に記憶させるなど、ジェネレータ104にプログラム可能であるか、又は事前にプログラムすることができる。或いは、エネルギー送達アルゴリズムをデータ記憶/検索部に追加して、プロセッサ154が実行するようにしてもよい。これらのアルゴリズム152はそれぞれ、プロセッサ154により実行可能である。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、いくつか例を挙げると、温度、インピーダンス、抵抗、キャパシタンス、導電率、誘電率、及び/又はコンダクタンスの判定に使用可能な1つ又は複数のセンサ160を含む。センサのデータを用いて、治療法を計画し、治療法をモニタリングし、且つ/又はプロセッサ154によって直接フィードバックを提供することができ、これによりエネルギー送達アルゴリズム152を後で変更することができる。例えば、インピーダンス測定値は、適用する初期用量の決定に用いることができるだけでなく、さらなる治療の必要の有無の判定にもまた用いることができる。
【0053】
[0087] システム100は、温度、様々な電圧又はAC周波数におけるインピーダンス、治療期間、又はエネルギー送達パルスの他の時間的側面、治療電力及び/又はシステム状態などの入力に応答して、動的に対応し、治療を調整及び/又は中止することが可能な自動治療送達アルゴリズムを含む場合があることが理解されるであろう。
【0054】
[0088] いくつかの実施形態では、
図1に図示されているように、別個の撮像スクリーン180と接続した気管支鏡112など、市販のシステムを使用して撮像を行うことができる。画像診断装置は、カテーテル102に組み込み可能であるか、又はカテーテル102の傍らで、又はカテーテル102と連携させて使用可能であることが理解されるであろう。画像診断装置は、任意の適切なメカニズムを用いて、カテーテル102に機械的に、動作可能に、且つ/又は通信可能に結合することができる。
【0055】
II.エネルギー送達アルゴリズム
[0089] 前述したように、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、患者Pに送達するために、ジェネレータ104にプログラム可能であるか、又は事前にプログラムすることができる。1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152は、(例えば、熱アブレーションの閾値未満;凝固性熱損傷を誘発する閾値未満の)非熱的な、炎症を低減又は回避し、且つ、基質タンパク質の変性を防ぐ気道壁Wに送達されるエネルギーを供給する電気信号を指定する。概して、アルゴリズム152は、所定の深度まで組織に影響を与えるように、且つ/又は送達されるエネルギーに対する特定のタイプの細胞応答を標的にするように個別に調整されている。深度及び/又はターゲティングは、1つ又は複数のエネルギー送達アルゴリズム152により規定されるエネルギー信号のパラメータ、カテーテル102(特に、1つ又は複数のエネルギー送達体108)の設計、及び/又は単極のエネルギー送達であるか又は双極のエネルギー送達であるかの選択に影響される場合があることが理解され得る。特に、気道又は肺通路の内壁を治療する場合、通常、深度最大0.01mmまで、最大0.02mmまで、0.01~0.02mm、最大0.03mmまで、0.03~0.05mm、最大0.05mmまで、最大0.08mmまで、最大0.09mmまで、最大0.1mmまで、最大0.2mmまで、最大0.5mmまで、最大0.7mmまで、最大1.0mmまで、最大1.5mmまで、最大2.0mmまで、又は最大2.3mmまで、或いは、2.3mm未満を標的にすることができる。いくつかの実例では、気道上皮及び粘膜下腺を標的とする場合などに標的にされる所定の深度は0.5mmであり、深度2.3mmでの罹患率に関連する軟骨の影響を防ぐために有意な安全域がある。他の実例では、標的にされる効果深度を深くして、すべての気道上皮細胞及び粘膜下腺を深度最大1.36mmまで治療する一方で、依然として深度2.3mmでの軟骨への安全性に関連する影響を防いでいる。他の実施形態では、心臓への適用など、別の臨床用途にこのような治療を適用する場合などに、アルゴリズム152は、より深い所定の深度まで、例えば、最大0.1cmまで、最大0.2cmまで、最大0.3cmまで、最大0.5cmまで、最大0.8cmまで、最大0.9cmまで、最大1cmまで、又は0.5cmから1cmまで組織に影響を与えるように個別に調整されている。さらに他の実施形態では、さらに深い標的を伴う臨床用途にこのような治療を適用する場合などに、アルゴリズム152は、さらに深い所定の深度まで、例えば、最大2cmまで、又は最大2.5cmの深度まで組織に影響を与えるように個別に調整されている。
【0056】
[0090] いくつかの実例では、双極のエネルギー送達は、単極のエネルギー送達と比べて、低電圧を使用して治療効果を実現することができる。双極構成では、正極と負極は、互いに十分に接近しており、極柱、及び極柱間のいずれにおいても治療効果をもたらす。これにより、具体的な組織区域に治療効果を集中させることができ、したがって、単極と比較して、治療効果の実現に伴う電圧を低くすることができる。同様に、低電圧を用いたこの限局的能力は、粘膜下細胞ではなく上皮細胞に影響を与えるなど、浸透深度を低減するために使用することができる。他の実例では、上皮層及び粘膜下層を標的にするなどのために、この効果の浸透深度の減少を使用して、より深い軟骨組織を温存しながら、エネルギーを集中させてもよい。加えて、送達される電圧が十分に低く、心筋細胞の刺激が回避される場合には、電圧要件が低くなったことで、心臓同期の使用が不要となる場合がある。
【0057】
[0091] 多種多様なエネルギー送達アルゴリズム152を使用してもよいことが理解され得る。いくつかの実施形態では、アルゴリズム152は、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは、一連の高電圧パルスを含む。このような実施形態では、アルゴリズム152は、いくつか例を挙げると、パケットの数、パケット内のパルスの数、及びパルスシーケンスの基本周波数で構成されるエネルギー振幅(例えば、電圧)、並びに適用されるエネルギーの持続時間などの信号のパラメータを指定する。追加のパラメータには、二相のパルスにおける極性間の切り替え時間、二相のサイクル間の不感時間、及びパケット間の休止時間が含まれ得るが、これらは後段で詳述する。パケット間に固定された休止期間がある場合もあれば、パケットが心臓周期にゲートされる場合もあり、したがって、パケットは患者の心拍数に応じて可変である。意図的な、可変の休止期間アルゴリズムがある場合もあれば、パケット間に休止期間が適用されない場合もある。センサ情報及び自動遮断仕様などに基づくフィードバックループが含まれている場合がある。
【0058】
[0092]
図3Aは、エネルギー送達アルゴリズム152により規定される信号の波形400の一実施形態を図示する。ここでは、2つのパケット、すなわち第1のパケット402及び第2のパケット404が示されており、パケット402、404は休止期間406によって離隔されている。この実施形態では、各パケット402、404は、(第1の正のパルスのピーク408及び第1の負のパルスのピーク410を含む)第1の二相のサイクルと、(第2の正のパルスのピーク408’及び第2の負のパルスのピーク410’を含む)第2の二相のサイクルと、で構成される。第1の二相のパルス及び第2の二相のパルスは、各パルス間の不感時間412(すなわち、一時停止)によって離隔されている。この実施形態では、二相のパルスは対称であり、これにより、設定電圧416は正のピーク及び負のピークに対して同じであるようになっている。ここでは、二相の、対称形をした波は方形波でもあり、これにより、正の電圧波の大きさと時間は負の電圧波の大きさと時間にほぼ等しいようになっている。双極構成を使用する場合、負の電圧波に面する気道壁Wの細胞の部分は、これらの領域で細胞が脱分極し、通常負に帯電した細胞膜領域が一時的に正になる。逆に、正の電圧波に面する気道壁Wの細胞の部分は過分極し、細胞膜領域の電位が極端に負になる。二相パルスのそれぞれの正の位相又は負の逆相では、気道壁Wの細胞の部分が反対の効果を受けることが理解され得る。例えば、負電圧に面する細胞膜の部分は脱分極し、一方、この部分に対して180°の部分は過分極することになる。いくつかの実施形態では、過分極した部分は、分散電極又は帰路電極140に面する。
【0059】
A.電圧
[0093] 使用され、検討される電圧は、方形波の頂部とすることもできるし、正弦波形又は鋸波形の最高点とすることもできるし、正弦波形又は鋸波形のRMS電圧とすることもできる。いくつかの実施形態では、エネルギーは単極式で送達され、高電圧パルス電圧又は設定電圧416がそれぞれ、約500Vから10,000V、特に約500Vから5000V、約500Vから4000V、約1000Vから4000V、約2500Vから4000V、約2000Vから3500V、約2000Vから2500V、約2500Vから3500Vの間であり、約500V、1000V、1500V、2000V、2500V、3000V、3500V、4000Vを含めて、その間にあるすべての値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、高電圧パルスはそれぞれ、およそ1000Vから2500Vの範囲にあり、上皮細胞などの特定の細胞を幾分浅く治療するか、又は特定の細胞に影響を与えるように、特定のパラメータの組み合わせで気道壁Wを浸透することができる。いくつかの実施形態では、高電圧パルスはそれぞれ、およそ2500Vから4000Vの範囲にあり、粘膜下細胞又は平滑筋細胞など、幾分深く位置する特定の細胞を治療するか、又は特定の細胞に影響を与えるように、特定のパラメータの組み合わせで気道Wを浸透することができる。
【0060】
[0094] 設定電圧416は、エネルギーが双極式で送達されるのか、又は双極式で送達されるのかに応じて変わる場合があることが理解され得る。双極の送達では、電界が小さくなり有向性が高まるため、低電圧が使用される場合がある。いくつかの実施形態では、エネルギーは双極式で送達され、各パルスは、およそ100Vから1900V、具体的には100Vから999V、より具体的にはおよそ500Vから800Vの範囲にあり、例えば、500V、550V、600V、650V、700V、750V、800Vである。他の実施形態では、エネルギーは双極式で送達され、各パルスは、250から1500ボルトを含む、およそ50から5000ボルトの間である。
【0061】
[0095] 治療で使用するために選択される双極電圧は、電極同士の離隔距離によって決まるのに対して、遠隔分散パッド電極を使用する単極電極構成は、身体に置いたカテーテル電極及び分散電極の正確な配置をそれほど考慮せずに送達することができる。単極電極の実施形態では、身体を通して送達されるエネルギーが、有効離隔距離10cmから100cmのオーダーの分散電極に到達するまでの分散的な挙動に起因して、通常、より大きな電圧が使用される。逆に、双極電極構成では、電極の活性領域は、1mmから1cmを含む0.5mmから10cmのオーダーであり、比較的近いことにより、離隔距離から組織に送達される電気エネルギー濃度及び有効用量に与える影響が大きくなる。例えば、適切な組織の深度(1.3mm)で所望の臨床効果を引き起こすために、標的とされる距離対電圧の比率が3000V/cmである場合に、離隔距離が1mmから1.2mmに変更されれば、これにより、治療電圧を300から約360Vへ増加させること、すなわち20%の変更が必要となる。
【0062】
B.周波数
[0096] 時間1秒当たりの二相のサイクルの数が周波数である。いくつかの実施形態では、二相のパルスを利用して、望ましくない筋肉刺激、特に、心筋刺激を低減させる。他の実施形態では、パルス波形は単相であり、明らかな固有の周波数はなく、代わりに、単相のパルス長を2倍して周波数を導き出し、基本周波数と見なすことができる。いくつかの実施形態では、信号は、100kHz~1MHzの、より詳細には100kHz~1000kHzの範囲で周波数を有する。いくつかの実施形態では、信号は、およそ100~600kHzの範囲の周波数を有し、通常、粘膜下細胞又は平滑筋細胞など、幾分深く位置する特定の細胞を治療するか、又は特定の細胞に影響を与えるように、気道Wを浸透する。いくつかの実施形態では、信号は、およそ600kHz~1000kHz又は600kHz~1MHzの範囲の周波数を有し、通常、上皮細胞など、幾分浅く特定の細胞を治療するか、又は特定の細胞に影響を与えるように、気道壁Wを浸透する。一部の電圧では、300kHz以下の周波数が、望ましくない筋肉刺激を引き起こす場合があることが理解され得る。したがって、いくつかの実施形態では、信号は、400~800kHz又は500~800kHzの範囲の周波数、例えば、500kHz、550kHz、600kHz、650kHz、700kHz、750kHz、800kHzを有する。特に、いくつかの実施形態では、信号は600kHzの周波数を有する。加えて、影響を受け易いリズム周期中の望ましくない心筋刺激を低減又は回避するために、心臓同期が通常利用される。信号アーチファクトを最小限に抑える成分があれば、さらに高周波数を用いてもよいことが理解され得る。
【0063】
C.電圧-周波数の平衡化
[0097] 送達される波形の周波数は、適切な治療効果を保持するために、治療電圧に関して同調して変わる場合がある。このような相乗効果的な変化には、より強い効果を引き起こす周波数の減少が含まれ、電圧の低下と組み合わさると、より弱い効果を引き起こすことになる。例えば、ある場合では、800kHzの波形周波数で、単極式で3000Vを使用して治療を送達することができ、一方、他の場合では、400kHzの波形周波数で2000Vを使用して治療を送達することができる。
【0064】
[0098] 反対方向で使用すると、治療パラメータは、効果的になり過ぎるように操作される可能性があり、それは筋収縮の尤度、又は、気道治療の場合の軟骨などの望ましくない組織へのリスク効果が高まる可能性がある。例えば、800kHzで2000Vを使用するなど、周波数が増加し、電圧が低下した場合、その治療には、十分な臨床治療の恩恵がない可能性がある。反対に、電圧を3000Vに上げ、周波数を400kHzに下げた場合、軟骨組織又は他の副行感受性組織に望ましくない治療効果の程度である可能性がある。場合によっては、これらの望ましくない組織を過剰に治療すると、患者の罹患率又は安全性の懸念が生じる可能性がある。
【0065】
D.パケット
[0099] 上述したように、アルゴリズム152は、一連のエネルギーパケットを含む波形を有する信号を規定し、各エネルギーパケットは、一連の高電圧パルスを含む。サイクル数420は、それぞれの二相のパケット内のパルスの数の半分である。
図3Aを参照すると、第1のパケット402は、2(すなわち、4つの二相のパルス)であるサイクル数420を有する。いくつかの実施形態では、サイクル数420は、1パケット当たり1から100の間に設定され、その間にあるすべての値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、サイクル数420は、最大5パルスまで、最大10パルスまで、最大25パルスまで、最大40パルスまで、最大60パルスまで、最大80パルスまで、最大100パルスまで、最大1000パルスまで、又は最大2000パルスまでであり、その間のすべての値及び部分範囲を含む。
【0066】
[00100] パケット期間はサイクル数によって決まる。サイクル数が多いほど、パケット期間が長くなり、送達されるエネルギーの量も多くなる。いくつかの実施形態では、パケット期間は、およそ50から100マイクロ秒の範囲、例えば、50μs、60μs、70μs、80μs、90μs、又は100μsなどである。他の実施形態では、パケット期間は、およそ100から1000マイクロ秒の範囲、例えば、150μs、200μs、250μs、500μs、又は1000μsなどである。
【0067】
[00101] 治療中に送達されるパケットの数、すなわちパケット数は、1パケット、2パケット、3パケット、4パケット、5パケット、10パケット、15パケット、20パケット、50パケット、100パケット、1000パケット、最大5パケットまで、最大10パケットまで、最大15パケットまで、最大20パケットまで、最大100パケットまで、又は最大1,000パケットまでを含むことができ、その間にあるすべての値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、各パケットが100マイクロ秒のパケット持続時間、及び2500Vの設定電圧を有する5つのパケットが送達される。いくつかの実施形態では、各パケットが100マイクロ秒のパケット持続時間、及び2500Vの設定電圧を有する5から10のパケットが送達され、これにより、治療効果の効力及び均一性が向上されている。いくつかの実施形態では、各パケットが100マイクロ秒のパケット持続時間、及び2500Vの設定電圧を有する20パケット未満を送達して、軟骨層CLへの影響を回避する。いくつかの実施形態では、設定電圧2500Vで、合計エネルギー送達期間0.5から100ミリ秒が、治療効果に最適である可能性がある。
【0068】
E.休止期間
[00102] いくつかの実施形態では、パケット間の時間は、休止期間406と呼ばれるが、約0.1秒から約5秒の間に設定され、この間のすべての値及び部分範囲を含む。他の実施形態では、休止期間406は、約0.001秒から約10秒の範囲にあり、この間のすべての値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、休止期間406はおよそ1秒である。特に、いくつかの実施形態では、心拍に対して指定された期間内で各パケットが同期して送達されるように信号を心臓リズムに同期させることで、休止期間を心拍と一致させている。心臓同期を利用する他の実施形態では、パケット間の休止期間は、後段で説明するように、心臓同期に影響を受ける可能性があるため、休止期間406は変わる可能性がある。
【0069】
F.切り替え時間及び不感時間
[00103]
図3B及び
図3Cで図示されるように、切り替え時間は、二相のパルスの正のピークと負のピークとの間に送達されるエネルギーがない遅延又は期間である。
図3Bは、切り替え時間403を間に有する、(正のピーク408及び負のピーク410を含む)二相のパルスの様々な例を図示する(しかしながら、切り替え時間403がゼロの場合、それは現われない)。いくつかの実施形態では、切り替え時間は、約0から約1マイクロ秒の間の範囲にあり、この間のすべての値及び部分範囲を含む。他の実施形態では、切り替え時間は、1から20マイクロ秒の間の範囲にあり、この間のすべての値及び部分範囲を含む。
図3Cは、有効電界閾値と切り替え時間との間の関係を図示する。
【0070】
[00104] 遅延もまた、「不感時間」と呼ばれて、二相のパルスの各サイクルの間に差し挟まれる場合がある。不感時間は、パケット内に発生するが、二相のパルス間で発生する。これは、パケット間に発生する休止期間とは対照的である。いくつかの実施形態では、不感時間412は、0から20マイクロ秒を含む約0から約500ナノ秒の間に設定され、この間のすべての値及び部分範囲を含む。他の実施形態では、不感時間412は、およそ0から10マイクロ秒、又は約0から約100マイクロ秒の、又は約0から約100ミリ秒の範囲にあり、この間のすべての値及び部分範囲を含む。いくつかの実施形態では、不感時間412は、0.2から0.3マイクロ秒の範囲にある。不感時間を使用して、パケット内の別個の単相パルス間の期間を定義してもまたよい。
【0071】
[00105] 切り替え時間及び不感時間などの遅延をパケットに導入して、波形内の二相性の相殺の影響を低減させる。二相性の相殺又は双極性の相殺とは、特に、切り替え時間及び不感時間が10μs未満のように短い場合に、単相の波形に対する二相の波形に応じて細胞調整の誘発の減少を指すのに使用される用語である。ここで、この現象の説明の1つを示すが、他の生物学的、物理的、若しくは電気的特性、又は二相の波形からの調整の減少をもたらす変化がありそうであることが理解され得る。細胞が電界の存在によって誘発された起電力にさらされるとき、細胞内液及び細胞外液の内部でイオン及び溶質の界面動電運動がある。これらの電荷は、細胞及び細胞小器官膜などの誘電体境界に蓄積し、休止膜内外電位差(TMP:transmembrane potential)を変化させる。電界が取り除かれると、操作されたTMPを生成した駆動力もまた除去され、通常の生体輸送及び濃度勾配で動作するイオン動力学、溶質の規範的分布の復元を開始する。これは、膜上の操作されたTMPの対数減衰を誘発する。しかしながら、電界を除去するのではなく、電界極性は保持されているが、極性が逆の場合であれば、誘発された現存するTMPを活発に除去する新たな起電力が存在し、その後、反対の極性でTMPが蓄積される。最初に操作されたTMPのこの活発な排泄は、セルに発生し得る下流効果カスケードをかなり制限し、初期電界暴露による治療効果を弱める。さらに、反対の極性を有する後続の電界が、生成された元々のTMP操作を最初に「取消し」し、次に、反対の極性でそれ自身のTMPの蓄積を開始しなければならない場合には、電界の第2の位相によって到達した最後のTMPは、サイクルの各位相の継続時間が同一であると仮定して、元々のTMPほど強くない。これにより、波形の各位相から生み出される治療効果が減少し、サイクル内のいずれかのパルスによって生み出される治療効果が単独で達成するものよりも低くなる。この現象は、二相性の相殺と呼ばれる。多くのサイクルを有するパケットの場合、このパターンは、パケットのサイクル内のサイクル及び位相変化のセット全体にわたって繰り返される。これは、治療による効果を劇的に制限する。細胞の挙動が、純粋に膜内外電位差の操作以外のメカニズムによるパルス電界の結果調整される場合、二相性の相殺の効果はそれほど明白ではなく、したがって、切り替え時間及び不感時間が治療結果に及ぼす影響が低減されることが理解され得る。
【0072】
[00106] したがって、いくつかの実施形態では、二相性の相殺の影響は、切り替え時間遅延及び不感時間を導入することによって低減される。いくつかの実例では、切り替え時間及び不感時間の両方を一緒に増やして、効果を増強させる。他の実例では、切り替え時間だけ、又は不感時間だけを増やして、この効果を誘発する。
【0073】
[00107] 通常、適切なタイミングは、TMPの弛緩が充電時間の5倍である定数τの後に完了することが理解され得る。ほとんどの細胞の場合、時定数は、1μsと概算することができる。したがって、いくつかの実施形態では、切り替え時間及び不感時間はいずれも、二相性の相殺を除去するために少なくとも5μsに設定されている。他の実施形態では、二相性の相殺の低減は、極性を反転させる前に完全な細胞弛緩を必要としない場合があり、したがって、切り替え時間及び不感時間は、いずれも0.5μsから2μsに設定される。他の実施形態では、切り替え時間及び不感時間は、個々のパルス長と同じ長さに設定される。その理由は、これらの遅延がさらに増加すると、治療効果の増大及び筋収縮の付随的な増加という点で見返りが小さくなるだけである可能性があるためである。このように、より長いスケールのパルス持続時間(>500ns)と、実質的な切り替え時間及び不感時間遅延を有する積層されたパルス周期と、の組み合わせでは、二相性の相殺に起因して生じる治療効果を大幅に低減させることなく、二相の波形を使用することが可能である。場合によっては、これらのパラメータの微調整を行って、筋収縮を同等に比例して増加させることなく、より強い治療効果を引き起こすことができる。例えば、切り替え時間=不感時間=1.66μs(パルスとしての持続時間の2倍)で600kHzの波形を使用して、単相のパルス波形に対する筋収縮の低減を保持しつつも、治療効果の強化を保持することができる。
【0074】
[00108] いくつかの実施形態では、切り替え時間期間は、遠隔細胞効果に対する治療効果の程度が、治療の標的に対して最適化されるように調節される。いくつかの実施形態では、局所治療効果が低下すると、切り替え時間期間を最小限に抑えて遠隔筋細胞収縮を減少させる。他の実施形態では、追加の遠隔筋細胞収縮が起こる可能性があれば、切り替え時間期間を延長して局所治療効果を増加させる。いくつかの実施形態では、切り替え時間又は不感時間期間を延長して、局所治療効果を増加させ、神経筋の麻痺者を使うことを採用して、生じる筋収縮の増加を制御する。いくつかの実施形態では、切り替え時間期間は、10nsから2μsであり、一方、他の実施形態では、切り替え時間期間は、2μsから20μsである。いくつかの実例では、膜内外電位差操作が、標的とする治療効果を引き起こすために必要な主要なメカニズムではないやり方で細胞調整を標的にすると、切り替え時間及び不感時間遅延は、0.1μs未満に、又は0μsに最小化される。この遅延の除去により、あまり重要でない、骨格筋収縮又は心筋活動電位、及び収縮のような、標的としない治療効果が最小限に抑えられるが、標的部位での治療効果の効力を変えることはない。
【0075】
[00109] 二相の波形の治療効果を増加させるために切り替え時間及び不感時間遅延を利用することの別の恩恵は、ジェネレータの需要を減らすことであり、これにより、一時停止を導入することで、非対称/不平衡パルス波形を必要とせずに治療効果を強化することが可能になる。この場合、不平衡波形は、単相であるか、不平衡の持続時間若しくは電圧を有するか、又は一方の極性ともう一方の極性との組み合わせである波形として説明される。場合によっては、不平衡とは、波形の正の部分の積分が、波形の負の部分の積分と等しくないことを意味する。不平衡波形を送達することが可能なジェネレータには、別個の一連の設計上の検討事項があり、これが、ジェネレータが複雑になる可能性を高める原因となっている。
【0076】
G.波形
[00110]
図3Aは、一方の方向(すなわち、正方向又は負方向)のパルスの電圧及び持続時間が、もう一方の方向のパルスの電圧及び持続時間と等しいような、対称なパルスを有する波形400の一実施形態を図示する。
図3Dは、電圧不均衡を有する波形400が別のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定された波形例400を図示する。ここでは、2つのパケット、すなわち第1のパケット402及び第2のパケット404が示されており、パケット402、404は休止期間406によって離隔されている。この実施形態では、各パケット402、404は、(第1の電圧V1を有する第1の正のパルスのピーク408、及び第2の電圧V2を有する第1の負のパルスのピーク410を含む)第1の二相のサイクルと、(第1の電圧V1を有する第2の正のパルスのピーク408’、及び第2の電圧V2を有する第2の負のパルスのピーク410’を含む)第2の二相のサイクルと、で構成される。ここでは、第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも大きい。第1の二相パルス及び第2の二相パルスは、各パルス間の不感時間412によって離隔されている。したがって、一方の方向(すなわち、正方向又は負方向)の電圧は、曲線の正の部分の下の面積が曲線の負の部分の下の面積と等しくないように、もう一方の方向の電圧よりも大きい。優位を占める方の正の振幅又は負の振幅が、同じ電荷の細胞膜電荷の電位の期間が長くなるので、この不平衡波形により、治療効果がより明白になる。この実施形態では、第1の正ピーク408は、第1の負ピーク410の設定電圧416’(V2)よりも大きい設定電圧416(V1)を有する。
図3Eは、電圧が等しくない波形のさらなる例を図示する。ここでは、簡潔に図解するために、単一の図の中に4つの異なるタイプのパケットが示されている。第1のパケット402は、電圧は等しくないが、パルス幅が等しいパルスで構成され、切り替え時間及び不感時間がない。したがって、第1のパケット402は、4つの二相のパルスで構成され、それぞれ、第1の電圧V1を有する正のピーク408と、第2の電圧V2)を有する負のピーク410と、を含む。ここでは、第1の電圧V1は、第2の電圧V2よりも大きい。第2のパケット404は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しくないが、対称なパルス幅を有するパルスで構成され、切り替え時間が不感時間と等しい。第3のパケット405は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しくないが、対称なパルス幅を有するパルスで構成され、切り替え時間が不感時間よりも短い。第4のパケット407は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しくないが、対称なパルス幅を有するパルスで構成され、切り替え時間が不感時間よりも長い。いくつかの実施形態では、二相の波形の正の位相及び逆相は同一ではないが、平衡が保たれており、一方の方向(すなわち、正方向又は負方向)の電圧は、もう一方の方向の電圧よりも大きいが、パルス長は、正の位相の曲線の下の面積が、負の位相の曲線の下の面積と等しいように計算されることが理解され得る。
【0077】
[00111] いくつかの実施形態では、不均衡は、パルス幅の持続時間が等しくないパルスを含む。いくつかの実施形態では、二相の波形は不平衡であり、これにより、一方の方向の電圧がもう一方の方向の電圧と等しいようになっているが、一方の方向(すなわち、正方向又は負方向)の持続時間は、もう一方の方向の持続時間よりも大きく、これにより、波形の正の部分の曲線の下の面積は、波形の負の部分の下の面積と等しくないようになっている。
【0078】
[00112]
図3Fは、パルス幅が等しくない波形のさらなる例を図示する。ここでは、簡潔に図解するために、単一の図の中に4つの異なるタイプのパケットが示されている。第1のパケット402は、電圧は等しいが、パルス幅が等しくないパルスで構成され、切り替え時間及び不感時間がない。したがって、第1のパケット402は、4つの二相のパルスで構成され、それぞれ、第1のパルス幅PW1を有する正のピーク408と、第2のパルス幅PW2)を有する負のピーク410と、を含む。ここでは、第1のパルス幅PW1は、第2のパルス幅PW2よりも大きい。第2のパケット404は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しいが、パルス幅が等しくないパルスで構成され、切り替え時間が不感時間と等しい。第3のパケット405は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しいが、パルス幅が等しくないパルスで構成され、切り替え時間が不感時間よりも短い。第4のパケット407は、(第1のパルス402におけるように)電圧は等しいが、パルス幅が等しくないパルスで構成され、切り替え時間が不感時間よりも長い。
【0079】
[0113]
図3Gは、別のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定された、波形例400を図示し、波形は単相性であり、波形の正の部分だけ、又は負の部分だけがある不均衡の特殊なケースである。ここでは、2つのパケット、すなわち第1のパケット402及び第2のパケット404が示されており、パケット402、404は休止期間406によって離隔されている。この実施形態では、各パケット402、404は、第1の単相のパルス430と、第2の単相パルス432と、で構成される。第1の単相パルス430、及び第2の単相パルス432は、各パルス間の不感時間412によって離隔されている。この単相の波形であれば、同じ電荷の細胞膜電位を保持する期間が長くなるので、より望ましい治療効果につながる可能性がある。しかしながら、隣接する筋肉群は、二相の波形と比較して、単相の波形による方が多くの刺激を受けることになる。
【0080】
[00114]
図3Hは、単相のパルスを有する波形のさらなる例を図示する。ここでは、簡潔に図解するために、単一の図の中に4つの異なるタイプのパケットが示されている。第1のパケット402は、同一の電圧及びパルス幅を有するパルスで構成され、(パルスが単相であるので)切り替え時間がなく、不感時間がアクティブ時間と等しい。場合によっては、不感時間の持続時間が所与のパルスのアクティブ時間よりも短いことがある。したがって、第1のパケット402は3つの単相のパルス430で構成され、それぞれが正のピークを含む。不感時間がアクティブ時間と等しい実例では、波形は、アクティブ時間の2倍の周期のサイクルを表す基本周波数を有し、且つ、不感時間がない不平衡であると見なすことができる。第2のパケット404は、(第1のパケット402におけるように)電圧及びパルス幅が等しい単相のパルス430で構成され、不感時間が長くなっている。第3のパケット405は、(第1のパケット402におけるように)電圧及びパルス幅が等しい単相のパルス430で構成され、不感時間がさらに長くなっている。第4のパケット407は、(第1のパケット402におけるように)電圧及びパルス幅が等しい単相のパルス430で構成され、不感時間がなお一層長くなっている。
【0081】
[00115] いくつかの実施形態では、不平衡波形が、反対の極性の等しくない数のパルスに反転する前に、1つの極性で2つ以上のパルスを送達することにより実現される。
図3Iは、このような位相不均衡を有する波形のさらなる例を図示する。ここでは、簡潔に図解するために、単一の図の中に4つの異なるタイプのパケットが示されている。第1のパケット402は、等しい電圧及びパルス幅を有する4つのサイクルで構成されるが、反対の極性のパルスが単相のパルスと混合されている。したがって、第1のサイクルは、正のピーク408及び負のピーク410を含む。第2のサイクルは単相であり、正のパルスだけを含み、後続の負のパルス430がない。その後、これを繰り返している。第2のパケット404は、(第1のパケット402におけるように)二相のサイクル及び単相のサイクルの混合で構成される。ただし、パルスは、電圧が等しくない。第3のパケット405は、(第1のパケット402におけるように)二相のサイクル及び単相のサイクルの混合で構成される。ただし、パルスは、パルス幅が等しくない。第4のパケット407は、(第1のパケット402におけるように)二相のパルス及び単相のパルスの混合で構成される。ただし、パルスは、電圧が等しくなく、且つパルス幅が等しくない。したがって、複数の組み合わせ及び順列が可能である。
【0082】
[00116] 二相のサイクルのそれぞれの正の位相又は負の位相では、エネルギーの両側に面する気道壁Wの細胞の部分が、逆の効果を受けることになることに留意されたい。いくつかの実施形態では、過分極した部分は、分散電極又は帰路電極140に面する。細胞は生来の負の休止電気膜内外電位差(TMP)を有することがさらに理解され得る。したがって、負のTMPを促進する細胞の側で生来のTMPに変更を加えると、絶対TMPが誇張されることになる。逆に、正のTMPを誘発する細胞の側は、誘発される到達絶対TMPが低くなる。いずれの場合も、生来の細胞TMPを乱し、最終的な絶対TMPに関係なく細胞の挙動を変化させることで、所望の治療結果を生じさせることができる。さらに、細胞内小器官で誘発されるTMPを考慮すると、この違いは変わる場合がある。
【0083】
[00117] 波形が等しくないことの有用性に関しては、不平衡TMP操作により、二相性の相殺の影響の低減が実現される。完全に不平衡であるような単極の波形に近似する不均衡の程度と、TMP操作の強度との間には相関関係がある。これにより、治療効果の程度と同様に、筋収縮の程度との間にも比例関係が生じる。したがって、不均衡波形に近似するほど、二相波形に対して同じ電圧及び周波数(適用可能な場合には)で、純粋平衡二相波形から生じる治療効果よりも強い治療効果が可能になる。例えば、パケット内の830ns-415ns-830ns-等々のパルス長のシーケンスによって引き起こされる治療効果は、元々の位相の継続時間の半分であるサイクルの後半を構成するパルスを有することになる。これにより、サイクルの第2の位相によるTMP操作の誘発が制限されることになるが、生成される反転TMPも少なくなり、元々の長さで後続のサイクルの元々の極性からの効果を強くすることが可能になる。別の例では、波形の「正の」部分は、2500Vとすることができ、「負の」部分が、1500V(2500-1250-2500-等々V)である場合、パルス持続時間不均衡について説明したような効果に匹敵する効果をTMP分極に誘発することになる。これらのどちらの場合でも、反対の極性の強度を操作することで、サイクル内の正のパルスに対して、より強力なTMP操作が累積されることになる。したがって、これは二相性の相殺の影響を低減し、組織に送達される総エネルギーの堆積が少ないにもかかわらず、830-830-830ns又は2500-2500-2500Vのプロトコルよりも強い治療効果を生み出すことになる。このように、TMP操作が治療の作用メカニズムに不可欠である場合、組織に送達する総エネルギーが少なくなる可能性があるが、所望の治療効果を引き起こすことが可能である。
【0084】
[00118] さらに拡張すると、完全に不均衡な波形であれば、極性が反対の成分を含まないが、正の位相でのみ送達される短時間のパルスの部分を依然として含む場合がある。この一例は、830nsの正の極性、エネルギーが送達されない830nsの一時停止、その後に続く別の830nsの正の極性、等々を含んでいるパケットである。パルス長不均衡を検討するにせよ、電圧不平衡を検討するにせよ、負のパルスがないことは、「負の」部分に対して、これらのパラメータのいずれかをゼロに設定することと同等であるので、同じアプローチが当てはまる。
【0085】
[00119] しかしながら、適切な治療の送達は、二相波形によって提供される利点、すなわち、二相性の相殺に起因する筋収縮の低減も同様に低減されることを考慮に入れている。したがって、適切な治療効果の程度は、許容可能な筋収縮度と天秤にかけられる。例えば、理想的な電圧不均衡は、2500-1000-2500-...V、若しくは2500-2000-2500-...V、又は830-100-830-...ns、若しくは830-500-830-...nsとすることができる。
【0086】
H.波形形状
[00120]
図3Jは、別のエネルギー送達アルゴリズム152によって規定された波形例400を図示し、パルスは方形ではなく、正弦曲線形状である。ここでもまた、2つのパケット、すなわち第1のパケット402及び第2のパケット404が示されており、パケット402、404は休止期間406によって離隔されている。この実施形態では、各パケット402、404は、3つの二相のパルス440、442、444で構成される。また、方形波ではなく、3つのパルス440、442、444は正弦曲線形状である。正弦曲線形状の恩恵の1つは、平衡が保たれているか、又は対称的であることで、各位相の形状が等しいということである。平衡が保たれていることは、望ましくない筋肉刺激の低減に役立つ。
【0087】
[00121] カテーテル102のボタン164、又はジェネレータ104に動作可能に接続されたフットスイッチ168を使用するなどして、多種多様なメカニズムによってエネルギー送達を作動させることができる。このような作動は、通常、単一のエネルギー用量を供給する。エネルギー用量は、送達されるパケットの数及びパケットの電圧によって定められる。気道壁Wに送達されるエネルギー用量はそれぞれ、壁Wの、又は壁内の温度を熱アブレーションの、特に、基底膜内、又はより深い粘膜下の細胞外タンパク質マトリクス内の基質タンパク質の変性を含む基底膜BMの熱アブレーションの閾値未満に維持する。加えて、エネルギー用量は、治療処置中の熱の蓄積をさらに低減又は除去するように、時間とともに滴定又は減速することができる。タンパク質凝固として定義される熱損傷を誘発するのではなく、エネルギー用量は、最終的には健康な組織の再生成につながる生物学的メカニズム及び細胞効果を誘発するレベルで、エネルギーを供給する。
【0088】
III.血管への適用
[00122] いくつかの実施形態では、
図1及び
図2の組織修正システムは、血管及び他の心臓組織の治療で、特に、心房細動の治療に使用するように適合されている。いくつかの実施形態では、組織修正システムは、特に心臓への適用のために、より具体的には、心房細動をうまく治療するやり方で組織に影響を与えるように構成されたエネルギー送達アルゴリズムを利用する。治療の考えられる心臓の標的には、異常性電気信号の生成、又は伝導に関与する領域が含まれる。これらの信号は、心臓のミオサイトの、特に、房室結節の上流の心房領域に協調を欠く活性化を誘発する場合がある。心房の手術が不味いと、それらの機能性が低下し、患者の狭心症、発作、又は他の心臓事象のリスクが高まる可能性がある。いくつかの実施形態では、PVの心筋組織内の細胞に自動性が存在することにより、肺静脈(PV)内の領域、特に、PVの心筋スリーブが標的とされる。いくつかの実施形態では、PVを治療するために
図2の治療用エネルギー送達カテーテル102が利用される。他の実施形態では、PVを治療するために
図2の治療用エネルギー送達カテーテル102の修正版が利用される。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、遠位端部が、PVにアクセスするために利用される誘導針シース角度に近い角度に曲がるように修正される。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、電極体108の長さを短くすることなどによって、接触長さが短くなるように修正される。同様に、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、大腿部アクセス用に修正される。通常、PVへの大腿部アクセスは、大腿静脈にアクセスすることと、下大静脈を介してカテーテル102のエネルギー体108を右心房内に、次に、経中隔穿刺を介して左心房内に前進させることと、を伴う。100cm又は150cmなど、長さを大きくした細長いシャフト206を含む
図2のカテーテル102の修正によって、このより長い経路に対処して、経中隔誘導針シース全体を通して確実に適合させる。追加の修正には、拡張特性及びPV内の周方向の治療接触を達成する尤度を向上させるための内部拡張部材(例えばバルーン)を使用するなどによる、エネルギー送達体108の補助展開が含まれる。このような送達は、通常、エネルギー送達体108の物理的配置を導くために超音波及び血管造影法を使用して実現される。
【0089】
[00123] さらに、いくつかの実施形態では、カテーテル102及びエネルギー送達アルゴリズムは、他の内腔標的とは対照的に、特に心臓組織を治療するようにカスタマイズされる。例えば、いくつかの実施形態では、このようなカスタマイズ化は、特に心房細動の治療を目的としており、異常性律動を引き起こす表面の心筋細胞を死滅させること、又は経壁繊維化組織の再構築を生じさせて適切な電気導通遮断を提供することを含む。経壁効果を生じさせるときに、エネルギー送達体108の電極は、エネルギーを適切に集中させて、肺静脈、その心門、又は心房のいずれかで標的部位の厚さ全体に十分に浸透する非常に集中した治療効果を達成するように、十分に低く、且つ、集中した接触域を有する。交互に、他の、より表面的な内腔標的に対して送達される電気電圧を上昇させることにより、元々の電極接触域を保持しながら、送達されるエネルギーの強さを全般的に高める。加えて、いくつかの実施形態では、二次的なパルスパラメータがさらに修正されて、(二相のパルス電界周波数を減少させることなどにより、個々のパルス長を上げるなどによって)標的細胞層の致死電界閾値を減少させ、所与のパケット内のパルスのサイクルの数を増やす(これは総パケット持続時間を増やす)か、又は、送達されるパケットの数を増やす。加えて、いくつかの実施形態では、(長さ若しくは電圧が)非対称の波形、又は単相の波形の使用を用いて、治療効果を大幅に強化する。ただし、非対称のパルス又は単相のパルスの程度は、患者の筋収縮の程度が確実に許容域内にとどまるように、平衡が保たれている。必要ならば、筋肉の麻痺者を使うことを採用して、筋収縮をさらに低減し、パルスプロトコルの強化、又は非対称の二相の波形又は単相の波形を可能にすることもまた可能である。
【0090】
[00124] 上述したように、いくつかの実施形態では、エネルギー送達体108は単一の単極送達電極を含み、この場合には、エネルギー送達体108は、電極として機能する螺旋形状のバスケットを形成する複数のワイヤ又はリボン120で構成される。エネルギー送達体108はPV内に位置決めされ、パルス電界は、エネルギー送達体108を介してPVに送達され、その領域内で心筋細胞及びの他の名目上の細胞型の細胞死を誘発するようにし、それらが組織治癒プロセスの一部として繊維組織堆積と置き換わる。この繊維組織は、電気導通には不十分な導管であり、したがって、この組織の周方向の経壁誘導は、通常、適切な電気導通遮断として機能し、PV洞で生成された異常電流が心房を通って伝播するのを防ぐ。異常性電流を停止することによって、心房心筋細胞は、細動を除去して、活性化をより良好に協調させることができる。
【0091】
[00125] 心臓への適用には、血液で満たされた領域を伴うことが理解されるであろう。脈管構造の数値シミュレーションにより、血液が導電性媒体であり、仮想電極としてある程度作用し、血管に沿って長手方向に電気エネルギーを散逸させ、電極接触点での限局的な電界強度を低下させることが示されている。これにより、非導電性の空気で満たされた肺通路と比較して、心臓標的に対する治療効果の深度を減らすことができる。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、血液への電流漏出を減らすように、電極体108の部分を電気的に絶縁するように適合されている。いくつかの実施形態では、これには、血管を通って流れる血液と最も多く接触している電極体108の近位部分及び遠位部分を絶縁することを伴う。いくつかの実施形態では、これにより、血液への電流漏出が大幅に減少する。同様に、いくつかの実施形態では、本開示のエネルギー送達アルゴリズムは、このような条件下での(すなわち、導電性媒体が存在する状態での)エネルギー送達の向上をもたらすように構成されている。いくつかの実施形態では、このようなアルゴリズムは、さらに大きなパルス強度を用い、これにより、電圧の上昇、周波数の減少、1パケット当たりのサイクル数の増加、又は活性部位ごとに送達される総パケット数の増加など、より深い経壁厚さ効果の実現も同様に達成する。しかしながら、電流漏出効果を克服する別のアプローチは、周方向の電極体108の接触領域を電気的に絶縁して血液への導通を防ぎ、標的組織自体へのエネルギー送達の濃度を著しく増加させ、より強い治療効果を誘発することである。
【0092】
[00126] 理想的な状態の間、エネルギー送達体108によって体腔壁に送達されるエネルギーは、内腔周面全体にわたって完全に平衡が保たれている。しかしながら、状況によっては、組織の電気的特性及び/又は環境が、単極送達中に特定の区域を通る優先的な電流の流れを誘発する。したがって、これらの特定の区域に向けての電界の自然の歪みが存在する場合が多い。これは、これらの区域での治療効果を増加させ、非優先区域での治療効果を低下させる。このような不規則性は、状況によっては重要でない場合があるが、他の状況では、このような不規則性が治療結果に影響を与える場合がある。したがって、規則性を高めれば、治療がより予測可能になり、処置時間を短縮し、エネルギー消費を低減しつつ、患者の予後を向上させることができる。本開示の専用のカテーテル設計、別個のエネルギー送達アルゴリズム及び使用方法の実施形態は、このような規則性の向上を提供する。このような向上は、血管への適用を含むが、これに限定されない多種多様な体腔の治療に有用な場合がある。このような向上は、血管及び胃腸の内腔などの体腔を治療するときに特に有用な場合があり、肺通路を治療する際に有用な場合がある。
【0093】
[00127] 血管を治療する場合、環境条件、血管壁の自然な組織構造、及び治療プロトコルの詳細により、適切なエネルギー送達が実現される様々な状況を作り出すことができる。内腔周面全体にわたる治療効果の規則性に加え、浸透の深度の増加もまた望まれる場合がある。例えば、気道を治療する場合、疾病状態の治療での適切なエネルギー送達のためには、比較的浅い深度の浸透で十分な場合がある。しかしながら、血管を治療する場合、特に、心房細動などの症状を治療する場合には、適切なエネルギー送達及び組織効果のためには、より深い深度の浸透が望まれる場合がある。
【0094】
[00128] 心房細動の治療におけるいくつかの既知のカテーテル、及び外科的アブレーションアプローチは、PVを左心房(LA)壁から電気的に絶縁する。左心房からのPVの完全な電気的切断は、不整脈の確実な制御を実現するための要因である電気生理学的エンドポイントである。電気的切断は、従来の処置が終了するまでには実現されることが多いが、カテーテルアブレーションの長期的な効力は中程度にとどまる。ほとんどの患者は、妥当な効力を実現するためには1~2回の処置が必要になる。処置を繰り返す主な理由は、PVからLAへの導通が回復するからである。
【0095】
[00129] いくつかの既知の研究により、時間依存性のPV導通回復の不可避性と、将来の心房細動再発との関係が示されている。最初にPVを絶縁した後、最大60分までの処置内待機期間中に、最大50%~64%までのPVが再接続する。AFが再発した患者を2回目又はそれ以降の処置で調べた研究により、カテーテルアブレーション後のAF再発は通常、PV-LA導通の再開と関連しているがことが示されている。
【0096】
[00130] PV-LA導通再開の推定される理由は、アブレーションライン内のギャップ及び/又は経壁病変生成の失敗である。ラインのギャップは、PVからLAへの電気的活動の再開を可能にし、PVトリガに心房細動を再度開始させるとともに、他のマイクロリエントラント心房性不整脈のトリガとしてもまた機能する場合がある。同様に、可逆的な心房損傷は、不完全な病変形成に起因する場合があり、一時的な電気的結合解除を生じるが、細胞死は生じない。線状病変全体にわたる永続的な導通遮断は、細胞死を伴う経壁性病変を必要とし、且つ/又は使用する。前述したように、本開示の専用のカテーテル設計、別個のエネルギー送達アルゴリズム、及び使用方法は、周方向のアブレーションの規則性の向上を提供する。これにより、アブレーションライン内の導通ギャップが減少する。加えて、本開示の専用のカテーテル設計、別個のエネルギー送達アルゴリズム、及び使用方法は、経壁性病変を形成する能力を高めることが可能である。このような改良は、心房細動を治療する際に有益な場合があるとともに、肺通路、胃腸の通路、並びに、身体内の他の自然通路及び人工通路を含む、多種多様な他の症状及び/又は他の体腔を治療する際に有用な場合がある。
【0097】
IV.限局的治療
[00131] 上述したアルゴリズムは、パルス電界(PEF)の形でエネルギーを体腔又は通路に提供する。限局的治療を提供するようにPEFを送達するために、特定のカテーテル設計及び方法が開発されてきた。いくつかの実施形態では、PEFは、典型的には単極式で、エネルギー送達体の独立した電気活性電極を通して送達される。このような送達は、より小さな表面積一帯に電気エネルギーを集中させることで、内腔又は通路のまわりに周方向に延在する電極を通る送達よりも効果が強くなっている。このような送達はまた、段階的な局部的アプローチで電気エネルギーが送達されるように強制し、周囲の組織を通る優先的な電流経路の効果を軽減する。これらの優先的な電流経路は、隣接する領域を通るのではなく、これらの優先的な電流経路を通る電流の局所的な増加を誘発する電気的特性を有する領域である。このような経路により、通常、標的とされる内腔の周面のまわりの電流分布が不規則になり、これにより、電界が歪められ、一部の領域では治療効果が不規則に増加し、他の領域では治療効果が低下する。これは、標的領域の周面のまわりの治療効果を安定させる限局的治療を使用して、軽減又は回避することができる。したがって、PEFを一度にある特定の領域に「分割すること」によって、電気的にエネルギーは、周面の様々な領域全体にわたって「押しやられ」、治療の周方向の規則性の程度が、確実に向上するようにしている。
【0098】
[00132]
図4は、限局的治療を提供するように構成された、本開示の治療用エネルギー送達カテーテル202の一実施形態を図示する。この実施形態では、カテーテル202は、その遠位端部の付近に少なくとも1つのエネルギー送達体208を有する細長いシャフト206を有する。カテーテル202は、
図2のハンドル110に類似したハンドルのような、ハンドル211(図示せず)をその近位端部に含む。カテーテル202は、
図1のジェネレータ104のようなジェネレータに接続可能であり、他にも色々機能するが特に、電気エネルギーをエネルギー送達体208に供給する。この実施形態では、エネルギー送達体208は、電極212がその上に設置されているか、又はその中に組み込まれている膨脹式バルーンのような拡張可能部材210を含む。エネルギー送達体208は、折り畳まれた構成で標的区域に送達される。この折り畳まれた構成は、例えば、シース226をエネルギー送達体208上に配置することによって実現することができ、それは、折り畳まれた構成を維持することで、滑らかな送達を可能にする。展開が望まれる場合、シース226を収縮させるか、又は、カテーテル202を前進させて、エネルギー送達体208が拡張できるようにする。
【0099】
[00133] この実施形態では、電極212は、比較的広い表面積及び薄い断面を有するパッド形態を有する。このパッドの形状により、ワイヤ形状などの他の形状よりも表面積が広くなっている。電極212は、電極212をジェネレータと電気的に接続する導線ワイヤ214と接続されている。この実施形態では、電極体208は、ただ1つだけの電極212を有するが、後段でより詳細に説明するように、エネルギー送達体208は、この代わりに、複数個の、例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個又は10個以上の電極212を含む場合があることが理解されるであろう。電極212は、拡張可能部材210に取り付けられるか、又は拡張可能部材210に形成される可撓性の回路パッド又は他の材料で構成される場合がある。電極212は、拡張可能部材210の周面のまわりに放射状に分布している場合があり、且つ/又はそれらは、拡張可能部材210の長さに沿って長手方向に分布している場合がある。このような設計により、展開及び収縮の質を向上させ、ユーザの操作、及び標準的な誘導針の内腔との互換性を容易にすることができる。
【0100】
[00134] 使用時、ガイドワイヤなどを介してカテーテル202を身体通路又は内腔Lの中に、内腔Lの長さに沿って標的セグメントまで前進させる。標的セグメントは、長さを有し、典型的には、体腔Lの壁Wの内側表面のまわりに周方向に延在しており、したがって、リングを形成している。いくつかの実施形態では、
図4A~
図4Dに図示されているような一連のステップで周方向のリングにエネルギーを送達することが望まれ、対応する治療区域の結果が
図5A~
図5Dに図示されている。
図4Aは、体腔Lの標的セグメント内にエネルギー送達体208を拡張させることで、電極212が、内腔Lの壁Wの第1の部分に隣接して、当接して、又は押し付けられて位置決めされるようにする第1のステップを図示する。次に、エネルギーが、電気的に接続されたジェネレータから壁Wの第1の部分に送達され、第1の治療区域A1を作り出す。
図5Aは、標的セグメントにおける体腔Lの断面図を提供し、周方向の内腔壁の上部の4分の1に沿った第1の治療区域A1を示す。エネルギー送達体208は、次に、少なくとも部分的に空気を抜かれるか、又は収縮され、カテーテル202は、
図4Bに図示されるように、例えば、90度時計回りの方向に回転する。エネルギー送達体208は、次に、拡張され、電極212は、内腔Lの壁Wの第2の部分に隣接して、当接して、又は押し付けられて位置決めされる。エネルギーが、電気的に接続されたジェネレータから壁の第2の部分に送達され、第2の治療区域A2を作り出す。
図5Bは、標的セグメントにおける体腔Lの断面図を提供し、周方向の内腔壁Wの右側の4分の1に沿った第2の治療区域A2を示す。カテーテル202は、次に、
図4Cに図示されているように、例えば、さらに90度時計回り方向に再び回転する。電極212は、内腔Lの壁の第3の部分に隣接して、当接して、又は押し付けられて位置決めされる。エネルギーが、電気的に接続されたジェネレータから壁の第3の部分に送達され、第3の治療区域A3を作り出す。
図5Cは、標的セグメントにおける体腔Lの断面図を提供し、周方向の内腔壁Wの底部の4分の1に沿った第3の治療区域A3を示す。カテーテル202は、次に、
図4Dに図示されているように、例えば、さらに90度時計回り方向に再び回転する。電極212は、内腔Lの壁の第4の部分に隣接して、当接して、又は押し付けられて位置決めされる。エネルギーが、電気的に接続されたジェネレータから壁の第4の部分に送達され、第4の治療区域A4を作り出す。
図5Dは、標的セグメントにおける体腔Lの断面図を提供し、周方向の内腔壁Wの左側の4分の1に沿った第4の治療区域A4を示す。このようにして、治療区域A1、A2、A3、A4は、体腔Lの壁Wの内側表面のまわりの周方向のリングを集合的に網羅することで、ギャップのない連続的な治療区域を形成している。
【0101】
[00135] いくつかの実施形態では、カテーテル202が、シャフト206の周面のまわりの1つ又は複数のマーキングなど、そのシャフト206に沿って1つ又は複数のマーキングを含み、ユーザが回転全体にわたってカテーテル202の向きを合わせ易いようにしていることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のマーキングは、一定の距離の分だけ間隔をあけて配置された複数のマーキングを含み、各マーキングは、回転度数を表示する。例えば、各マーキングは、15度の回転距離を表示することができる。いくつかの実施形態では、例えば、大きなマーキングが90度の回転を表示し、小さなマーキングが45度の回転を表示するなど、特定のマーキングが、既知の回転距離を表示する。いくつかの実施形態では、特定のマーキングが「上部」など、既知の向きを表示し、且つ/又は特定のマーキングが電極212との位置合わせを表示する。いくつかの実施形態では、ハンドル211及び/又はシース226に沿って目印が設けられていることが理解されるであろう。したがって、ユーザは、(気管支鏡又はカテーテルのような)送達デバイス及びカテーテル202の両方を回転させることができるし、或いはカテーテル202だけを独立して回転させることができる。
【0102】
[00136] 代替的な電極体208設計により、カテーテル202を回転させずに体腔Lへの周方向のエネルギー送達が可能になる。このような電極体208の一実施形態が、
図6に図示されている。ここでは、電極体208は、4個の電極、すなわち、第1の電極212aと、第2の電極212bと、第3の電極212cと、第4の電極212dと、を含む。ここでは、電極212a、212b、212c、212dは、拡張可能部材210のまわりに、互いに均等に間隔をあけて設けられている。電極212a、212b、212c、212dはそれぞれ、ジェネレータ104からのエネルギーを供給する対応する導線ワイヤ214a、214b、214c、214dを有する。この実施形態では、電極212a、212b、212c、212dは、それらの導線ワイヤ214a、214b、214c、214dを介して、独立して通電される。
図7に図示されるように、単極構成で使用した場合、電極212a、212b、212c、212dはそれぞれ、分散(帰路)電極140への電気経路を形成する。
図7に示されるように、第1の電極212aは、第1の電気経路216aを形成し、第2の電極212bは、第2の電気経路216bを形成し、第3の電極212cは、第3の電気経路216cを形成し、第4の電極212dは、第4の電気経路216dを形成している。例えば、第1の電極212aに通電され、残りの電極212b、212c、212dに通電されない場合、エネルギーのすべてが、第1の電気経路216aに沿って分散電極140に流れる。これは、電流の流れに自然に生じるあらゆる優先順位が電気経路216aを通る誘導電流の流れによって克服された、予測可能な経路を提供する。これにより、第1の電気経路216aが通って流れる内腔壁の組織区域での治療効果が増加する。
【0103】
[00137] 治療効果のこのような増加には、規則性及び浸透の深度の増大が含まれる。
図8A及び
図8Bは、このような浸透の深度の増大を図示する。
図8Aは、バスケット型電極を有するエネルギー送達体108(例えば、
図2を参照)を用いるなどして、単極構成でエネルギーが周方向に送達される場合の、気道壁の様々な組織層を通した電界分布の一例を図示する。
図8Aに示されるように、組織層は、電極に沿って様々なレベルの電界を受け取る。対照的に、
図8Bは、限局的送達の下での気道壁の様々な組織層を通した電界分布の一例を図示し、第1の電極212aなどの電極パッドが、単独で通電されている。
図8Bで確認できるように、組織層は、電極の長さに沿ってはるかに一貫性の高いレベルのエネルギーを受け取り、電界の強度の低下は、より深いレベルで生じている。これにより、送達される全体の電圧又は電流を増やさずに、経壁効果の向上が可能になる。加えて、これにより、筋収縮、痛み、又はその区域への熱損傷など、副次的影響の尤度が減少する。
【0104】
[00138] 例えば、第2の電極212bに通電され、残りの電極212a、212c、212dに通電されない場合、エネルギーのすべてが、第2の電気経路216bに沿って分散電極140に流れることが理解されるであろう。同様に、これは、エネルギーのすべてが第3の電気経路な216cに沿って流れる第3の電極212c、及びエネルギーのすべてが第4の電気経路216dに沿って流れる第4の電極212dについて繰り返すことができる。これは、
図9に図示されるように、カテーテル202を回転させずに容易に実現することができる。
図9は、壁Wを有する体腔の断面図を図示し、エネルギー送達体208がそこに位置決めされている。エネルギー送達体208の拡張可能部材210は、第1の電極212a、第2の電極212b、第3の電極212c、及び第4の電極212dが、体腔の壁Wに当接して存在するように拡張する。次に、電極212a、212b、212c、212dは、順番に個別に通電される。第1の電極212aに通電すると、第1の治療区域A1が作り出され、第2の電極212bに通電すると、第2の治療区域A2が作り出され、第3の電極212cに通電すると、第3の治療区域A3が作り出され、第4の電極212dに通電すると、第4の治療区域A4が作り出される。このような電極構成を使用すると、壁組織のリング全体が、ギャップを残さずに、しかもカテーテル212を回転させる場合よりも正確に、且つ、時間をかけずに切除することができる。
【0105】
[00139]
図8に示されているように、エネルギーの限局的送達を多種多様なやり方で利用して、組織への効果を向上及び/又は最大化することができる。特に、電極(例えば212a、212b、212c、212d)へのエネルギー送達の正確なタイミング及び順番付けを利用して、以下でさらに説明するように、エネルギーを受け取る組織内の細胞死を確実にすることができる。これは、心房細動の治療に特に有用な場合がある。前述したように、線状病変全体にわたる永続的な導通遮断は、一時的な可逆的効果ではなく、細胞死を伴う経壁性病変を使用し、且つ/又は必要とする。いくつかの実施形態では、PEF波形は、ナノ秒からマイクロ秒のパルス持続時間を反映する周波数を有する双極性の相殺を用いて、麻痺者の有無にかかわらず、細胞及び細胞小器官膜の両方を不安定化させる能力を保持しながら、全身性の筋収縮の程度を容認可能な低レベルまで軽減するものである。これは、ナノ秒のパルス電界(nsPEF)又は従来のミリ秒の不可逆的電気穿孔(IRE)法のいずれかを用いて到達したものを超える、一意的に治療結果を強化する素因となる細胞に及ぼす色々な形態の効果を誘発する。したがって、送達されるエネルギーは、標的組織で十分に大きく、且つ効果的な治療ゾーンを誘発することができるが、これは、nsPEFにとっての課題であり、一方、有利な安全性及び筋収縮プロファイルを維持することは、従来のミリ秒のIREにとっての、特に、外部の分散パッドを使用する単極パルス送達構成にとっての課題である。
【0106】
[00140] 所与の治療徴候のために電極のタイプを選択するとき、単極の電気パルス送達を用いる電極構成(例えば、電極回路は、離れた二次電極との電気回路を完成させる電極の活性部分を有する)と、それに対する双極又は多極の電気パルス送達を用いる電極構成(例えば、電気パルスエネルギーの送達及び戻りがいずれも、電極デバイス自体の内部に閉じ込められている)の利点及び欠点を考慮することが重要である。単極の回路構成で電気パルスを送達するとき、システムの総インピーダンスは比較的一定しており、電気アークの可能性は、低度~最小限である。これにより、パルス電界を送達するための非常に安定した、また制御された環境だけでなく、大幅に簡素化された電極設計の使用も同様に可能になる。しかしながら、回路で離れた帰路電極を用いると、電気エネルギーは、患者の身体全体にわたってより大きく分散され、これにより、非常に大きな病変が所望される場合、患部の制御がある程度制限される可能性がある。さらに、追加の筋肉活性化を生じる可能性があり、これは、パルス電界パラメータを注意深く選択して、筋収縮なしで治療効果を保持することによって、又は、麻痺者を使うことを採用することによって、適切に補償することができるが、したがって、それはまた、処置のために全身麻酔を必要とすることにもなる。
【0107】
[00141] 逆に、双極電極及び多極電極の設計は、治療用パルス電界送達を実際に用いる際に、特有の一連の利点及び課題に直面する。電気回路のすべての活性部分の封じ込めは、非常に集中した電気エネルギー送達を可能にし、電界分布の制御の追加の態様、及び筋収縮の尤度の低減が可能になる。しかしながら、電流がそのように閉じ込められているため、システムのインピーダンスが非常に低くなる場合がよくあり、所与のパルスプロトコルに対する電気アークのリスクが非常に高い可能性があり、これにより、使用可能な最大パルス電界送達電圧が減少する。これらの要因を組み合わせて、特に内腔への適用では、治療効果の浸透深度を厳しく制限する。さらに、治療効果は、双極電極構成及び多極電極構成の電極の離隔距離に非常に影響され易いため、接触領域離隔距離の微妙な変動又は変化が、様々な標的部位、特に内腔への適用における治療結果の予測可能性を減少する。電極が様々な幾何学的形状の標的部位で適用され、様々な展開範囲の電極が必要になり、これにより、電極接触離隔距離が変わる可能性があるからである。このような側面を克服すると、治療デバイス設計がさらに複雑になる可能性がある。したがって、本明細書に記載の実施形態は、単極の電極回路システム、及び双極/多極の両方の電極回路システムに適合させることが可能である一方で、適切に微調整された単極の治療システムは、用途に応じて、効果の浸透深度を大きくし、治療の周方向の規則性を向上させ、治療ゾーンの予測可能性を向上させ、且つ/又は、治療送達処置をオペレータにとって大幅に簡素化することが可能であることを理解されたい。
【0108】
[00142] PEFは、適切な振幅、波形、周波数、繰り返し、及び繰り返し率で送達されると、細胞及び細胞小器官膜を不安定化し易くする。これにより、細胞が所望の細胞内外の環境を維持する能力、及び正常な機能を維持する能力が低下し、最終的には細胞が破壊され、且つ/又は組織内のその場所から除去されてしまう可能性がある。生体内では、これは、組織特異的である組織再構築の複雑なカスケードを起こし、新たな細胞による患部領域の再生成、及び/又は繊維性瘢痕形成の生成を伴う場合がある。パルス電界に対する細胞及び組織スケールの応答は、細胞を死滅させる性質にも、細胞自体の再生成能力にも部分的に関連する可能性がある。例えば、肝臓が部分的な外科的切除後に再生成することが知られている場合、それはパルス電界により死滅した後に再生成することが同様に示されている。しかしながら、前庭領域及び心房の心筋細胞及び組織は、同じ再生成傾向を示さず、したがって、その細胞死に続いて、線維芽細胞浸潤がフィブリン及び他の結合組織成分を堆積させ、患部領域を、組織治癒プロセスの自然な一部としての瘢痕組織の非導電性パッチと置き換える尤度が高くなる。パルス電界を使用してこのプロセスを開始することによって、結合組織の堆積が自然治癒プロセスの一部として発生するが、その一方で、熱依存性アブレーション技術が凝固壊死を誘発し、タンパク質の構造を本質的に変えることで、異なる治癒プロセス及び瘢痕タイプの形成をもたらし、これにより、壊死の発生率、又は食道若しくは横隔神経など、隣接する組織への許容しがたい副次的損傷の患者リスクが増す可能性があることに留意されたい。
【0109】
[00143] 心房細動の治療に使用するとき、PEFは、治療に有効な治療手段として機能するいくつかの可能性を提供する。PEF効果は熱メカニズムに依存しないので、血液灌流ヒートシンク効果は、例えば、熱損傷に基づく有害事象のリスクを軽減する上で、無関係、又は有益にさえなり得ると見なすことができる。加えて、影響され易い構造及び組織の安全性が向上したため、熱アブレーションにあまり適していない領域でPEF治療を送達することが可能である。
【0110】
V.段階的なエネルギー送達
[00144] PEFの限局的送達は、上述したように、電極(例えば、212a、212b、212c、212d)へのエネルギー送達の正確なタイミング及び順番付けを用いることによって、組織致死率を高めることができる。この目的のために、本開示の実施形態は、高度な区間理論に従って設計された少なくとも1つのエネルギー送達アルゴリズム252を提供する。このようなアルゴリズム252は、
図1に図示された肺組織修正システム100のような組織修正システム、又は他の身体組織及び/又は体腔の治療に利用される類似したシステムによって利用してもよい。いずれの場合も、少なくとも1つのアルゴリズム252が、ジェネレータからカテーテル202及びエネルギー送達体208へのエネルギーの送達を制御する。
【0111】
[00145] いくつかの実施形態では、アルゴリズム252は、単一の量又は制限された量でPEFエネルギーを各電極に送達させ、次に、これを複数回繰り返して、治療の送達を完了する。例えば、
図9に示されるように、エネルギーは、時計回りの構成で順々に、電極212a、212b、212c、212dに供給することができる。この回転は、1回又は複数回繰り返される場合がある。しかしながら、電極に任意の順序で個別に通電することを含め、他のシーケンスを使用してもよいことが理解されるであろう。そのシーケンス全体を繰り返してもよいし、或いは、シーケンスのサブセットを繰り返してもよいことが理解されるであろう。同様に、異なるシーケンスを後続のサイクルに利用してもよい。
【0112】
[00146] 本開示の高度な送達アルゴリズム252は、特に、単極の治療システムにおいて、PEF送達に固有の能力である、欠陥及び細孔の生成及び解決を含む、膜動力学の性質を活用する。膜での欠陥の生成は、細胞小器官では数ナノ秒のオーダーで、また、細胞膜では数百ナノ秒からマイクロ秒のオーダーで急速に発生する。しかしながら、欠陥の解決及び正常な膜構造への復元が、数秒から数十秒のオーダーで発生する。この時間差分は、一括的な損傷時間を操作するために利用することができる。したがって、高度な送達アルゴリズム252は、経時的に一括的な損傷の割合を増加させ、内腔周囲のスパンのまわりに、周方向に細胞死を引き起こすために使用される必要な電圧又は総パケット数を減少させる時系列でエネルギーを送達する。これは、治療効力を調節するために、送達されるPEFの数を単に調節してするだけのアプローチとは対照的である。PEFの数を増やすと、治療時間が延びるだけでなく、特に、処置の期間全体にわたりすべての電極にエネルギーを同時に送達する場合は、より強力なジェネレータの使用が必要になる場合もある。したがって、高度な送達アルゴリズム252は、特定の領域へのPEF暴露の回数を減少させ、蓄積した損傷ではなく膜のナノスケールの欠陥の生成に効果を集中させるが、その場合、治療される細胞は、逆戻りさせるのではなく最終的には殺される。細胞小器官又は細胞膜が物理的に破壊されると、膜は、細胞小器官又は細胞の環境障壁として機能するその能力を失う場合がある。生存能力を維持するために、細胞は、外的環境から細胞への望ましくない量又は物質の流入を防止又は妨害しながら、細胞内の機能及び生存能力のための基本的な構成要素を保持することにより、ホメオスタシスを保持しなければならない。したがって、細胞膜が破壊されると、拡散勾配により、細胞の必要に反して、物質が細胞の内外へと駆り立てられる。このホメオスタシスの損失によって誘発された損傷が細胞の許容量を超え、残留する細胞内アデノシン三リン酸(ATP)が貯蔵されて効果から回復し、適切な濃度に戻ると、細胞が死滅する。この原理は、PEFから生じる細胞小器官の含有物の漏出、特に、いずれもが細胞のアポトーシスを促進するカルシウム及びカスパーゼ3の、ある特定の細胞小器官からの漏出に適用してもまたよい。細胞小器官が破壊された状態が長期間にわたるほど、これらの含有物の漏出が継続し、逆戻りすることが困難になる可能性がある。
【0113】
[00147] 細胞ホメオスタシスに作用するための細胞小器官及び細胞標的はいずれも、細胞で欠陥が長く維持されるほど、その致死率が高くなる。これらの欠陥が急速に発生し、数秒のオーダーの対数減衰で解決する場合、細胞への継続的な損傷を維持するには、数秒から数十秒ごとに一度、PEFを送達しさえすればよい、と結論付けることができる。
図10は、PEFエネルギー送達に応答した経時的な細孔又は欠陥形成の一例を示すプロットである。細孔、欠陥、及び開口は、ホメオスタシスを失う可能性につながるような、細胞又は細胞小器官の壁内の不整合性を記載するために区別なく使用されていることが理解され得る。図示されているように、細孔数はマイクロ秒スケールで上昇する。その後、細孔数は徐々に時間とともに減少する。この例では、細孔数半減期4秒を使用すると、細孔のおよそ25%がまだ開いており、PEFを適用してから8秒後においてさえ、細胞のホメオスタシスを損傷し続けている。
【0114】
[00148]
図11は、致死率に関して最適化されない間隔でPEFエネルギーが送達される場合の、細孔又は欠陥の形成を図示する。特に、
図11は、細孔数に対する5つのパケットの送達(各パケットの間に休止期間を有する)の効果を示すプロットである。5つのエネルギーパケットはそれぞれ、一連の二相の高電圧パルスを含む。したがって、5つのピーク350a、350b、350c、350d、350eが
図11に図示されており、それぞれが細孔数の最大値に達している。この例では、5つのパケットが送達された後、細孔数が時間とともに減少し、(曲線に沿った位置352で表示された)13秒で、細孔のおよそ25%がまだ開いているようになり、細胞のホメオスタシスに損傷を与えている。
図12は、5つのパケットの送達の別の例を示すプロットであり、各エネルギーパケットは、一連の二相の高電圧パルスを含む。したがって、5つのピーク350a、350b、350c、350d、350eが図示されており、それぞれが細孔数の最大値に達している。しかしながら、この例では、各パケット間の休止期間は、後続のPEFが、破壊された膜を維持するのに十分に接近しているが、細胞含有物の漏出の累積量を増やすのに十分に離れて送達されるようになっている。その結果、細胞の損傷が、より長い期間にわたって起こる。この例では、細孔が時間とともに減少し、細孔のおよそ25%がまだ開いているようになり、(曲線に沿った位置354で表示された)25秒で、細胞のホメオスタシスに損傷を与えている。したがって、PEFレジメンの致死率に影響を与えるのは、PEFの数だけでなく、送達されるPEF送達の律動でもある。この長期間にわたる破壊の別の側面は、特に、欠陥が解決するまでの時間を提供されている場合、細胞が絶え間なくエネルギー(ATP)を費やして、適切な細胞内及び細胞外の、並びに細胞小器官の物質バランスを復元して機能を維持することである。欠陥は繰り返し生成されるか、又は長期間絶え間なく維持されるため、細胞は、ホメオスタシスを復元するためにエネルギーを使い続け、その継続的な生存能力に不可欠な他の機能のためのエネルギー貯蔵を使い果たし、したがって、長期化した罹患期間の間に壊死性又はアポトーシス性細胞死の尤度が高まる。
【0115】
[00149] 本開示のいくつかの実施形態によれば、このような長期間にわたる破壊は、1つ又は複数の電極へのPEFの送達を順番に引き起こす1つ又は複数のアルゴリズムによって実現される。PEFのシーケンスは、単極の送達(すなわち、各電極が外部の分散電極140と順々に電気的に通信している)を使用しながら、電極(例えば、212a、212b、212c、212d)に個別に適用される。上述したように、1つ又は複数のアルゴリズムは、通常、ジェネレータによって制御及び自動化され、カテーテル202を回転又は操作する必要がなくなる。
【0116】
[00150]
図13は、壁Wを有する体腔の断面図を図示し、エネルギー送達体208がそこに位置決めされている。ここでは、エネルギー送達体208は、第1の電極212a、第2の電極212b、及び第3の電極212cを有する拡張可能部材210を含み、これらの電極は、体腔の壁Wの内側表面に沿って連続的なリングを位置決め、及び切除可能であるように、拡張可能本体210に沿ってサイズ及び向きが決められている。したがって、各電極はエネルギーを、周方向の内腔壁のおよそ3分の1に送達する。電極212a、212b、212cは、順番に個別に通電される。第1の電極212aに通電すると、第1の治療区域A1が作り出され、第2の電極212bに通電すると、第2の治療区域A2が作り出され、第3の電極212cに通電すると、第3の治療区域A3が作り出される。治療区域のそれぞれが電気エネルギーを受け取っているだけではなく、電極のサイズが小さくなると、電極の境界効果により、組織が受け取るエネルギーの量が増加する。電流は、電極の鋭端部及び境界に集中している。したがって、電界は、電極の中心部よりも端部の方が強い。したがって、複数の小型電極では、組織のより多くが、電極の中心であれば起こるであろう電界深度の低下ではなく、境界効果の深度を得ている。これにより、内腔の適用範囲が広くなり、壁組織のリング全体がギャップを残さずに切除される。
【0117】
[00151]
図14及び
図15は、単一の電極ではなく複数の電極(212a、212b、212c)への送達に関係するときの、
図11及び
図12の概念を示すプロットである。
図14は、複数のPEF(5つのパケット)を各電極212a、212b、212cに順々に送達することの効果を示すプロットである。各エネルギーパケットが一連の二相の高電圧パルスを含むことが理解されるであろう。最初に、5つのパケットが第1の電極212aに送達され、一方、第2の電極212b及び第3の電極212cにはエネルギーが供給されない。次に、5つのパケットが第2の電極212bに送達され、一方、第1の電極212a及び第3の電極212cにはエネルギーが供給されない。次に、5つのパケットが第3の電極212cに送達され、一方、第1の電極212a及び第2の電極212bにはエネルギーが供給されない。
図14は、各治療区域(A1、A2、A3)の経時的な細孔数を図示する。示されるように、各線グラフは時間とともに減少し、第1のパケットが対応する電極に送達された時から13秒で、細孔のおよそ25%がまだ開いているようになり、細胞のホメオスタシスに損傷を与えている。したがって、
図14は、それぞれの治療区域ごとに繰り返された
図11の概念を図示する。したがって、連続的な病変を作り出すのには効果的であるが、PEFエネルギー送達は、細胞の致死率について最適化されない。
【0118】
[00152] 致死率の最適化は、複数のPEF(例えば、5つのパケット)を各電極212a、212b、212cに順々に送達することによって実現することができ、各パケットは、細胞死に寄与する要因の累積を増加及び/又は最大化する休止期間の分だけ間隔をあけて配置されることが理解されるであろう。しかしながら、このようなシーケンスだと、治療期間が長くなる。これを短縮するために、致死率の所望の量及び/又は最適化を維持しながら、治療時間を短縮及び/又は最小化する代替的なシーケンスが提供される。1つの実施形態では、シーケンスは、連続パターンではなく、一部重複したパターンで、間隔を置いたパケットを電極212a、212b、212cに送達することを伴い、その効果が、
図15に図示されている。例えば、第1のパケットが電極212aに送達され、次に、第1のパケットは電極212bに送達され、そして第1のパケットは電極212cに送達される。これにより、シーケンスパターンの1ラウンド又はローテーションが完了する。次に、第2のパケットは電極212aに送達され、第2のパケットが電極212bに送達され、そして次に、第2のパケットは電極212cに送達される。このパターンが、5つのパケットが各電極212a、212b、212cに送達されるまで繰り返される。パケットは、より長期間にわたって細胞損傷を生じさせる休止期間で、各電極に送達される。細孔数が時間とともに減少し、21秒で細孔のおよそ25%がまだ開いているようになり、細胞のホメオスタシスに損傷を与えていることを想起されたい。したがって、21秒後間もなく、体腔の周面のまわりに連続的な病変が作り出され、致死率及び経壁浸透が増加している。これは、エネルギーを電極に順々に送達することによって同様の結果を実現するために、3倍の長さ(この例では、周面にわたって3つの電極があるため)を待機するのとは対照的である。同様に、次のPEFに進む前にすべてのPEFを各接触領域に完全に送達する代わりに、サイクルを一部重複させることによって、標的領域の周面全体では、送達されたPEFの総数と同じ数で、より長い時間にわたって、細胞小器官及び細胞膜の欠陥が発生している。
【0119】
[00153] 単極式で動作する多電極エネルギー送達体208を使用する恩恵には、以下のこと、すなわち、
a.致死率の増加、
b.優先的な電流経路の効果の軽減、したがって、ジェネレータの電力需要の低減を可能にする個々のPEFのエネルギー必要量の減少、
c.低電圧に起因する局部組織に対する副次的損傷のリスクの低減、
d.PEFの総数の減少、
e.存在する場合には、熱の影響の減少、
f.存在する場合には、筋収縮の低減、及び
g.心臓不整脈を誘発するリスクの低減(特に、本開示を心臓以外に適用する場合)が含まれる。
【0120】
[00154] 高度な区間理論の恩恵を活用する別のアプローチには、メンテナンスPEFの使用が組み込まれている。送達シーケンスのPEFのうちのいくつかをメンテナンスPEFに置き換えることによって、エネルギー必要量がさらに低減される可能性がある。メンテナンスPEFは、通常の、又は一次PEFと比較して、強度が低くなっている。初期の膜の欠陥の発生は、PEFからの電界にさらされた細胞で生成される比較的強い膜内外の電位差を伴う。しかしながら、効果が生じた後には、局所的な領域のインピーダンスは、(周囲ではなく)細胞を通る電流経路の改善により減少する。さらに、概して、細胞の全体にわたり、且つ、貫通する電解質の移動を可能にする細胞の欠陥、電界強度、欠陥生成のサイズ、数、及び分布の間にバランスが作り出される。したがって、欠陥を誘発するために初期のエネルギー障壁閾値を超えた後、膜内外電位差は、その誘電容量と同様に、大幅に減少する。これは、後で、欠陥の生成に必要な強度よりも強度を下げて電界又はPEFにさらすことによって、より長い時間にわたって欠陥を維持することが可能になる場合があることを意味する。したがって、PEFを追加してPEF治療の効力を高めるのではなく、一次PEFに加えてメンテナンスPEFを標的領域に送達することで、エネルギー必要量を大幅に増やすことなく効力を高めることができる。
【0121】
[00155]
図16は、一次PEF及びメンテナンスPEFを間に含む、PEFのシーケンスを示すプロットである。PEFは、パルス又はパケットと見なしてもよいことが理解されるであろう。
図16を参照すると、第1の一次PEF400の後に続けて3つのメンテナンスPEF402が示されている。次に、3つのメンテナンスPEF402が後に続く第2の一次PEF404、そして次に、3つのメンテナンスPEF402が後に続く第3の一次PEF406等々が続く。任意の数のメンテナンスパルスが用いられる場合もあれば、また、(
図16に示されるような)規則的なパターン、又は一次パルス間に異なる数のメンテナンスパルスを有するなど、不規則的なパターンを形成する場合もあることが理解されるであろう。同様に、送達シーケンス全体にわたって、メンテナンスパルスの強度が同じである場合もあれば、異なる場合もあることが理解されるであろう。
【0122】
[00156]
図17は、
図16におけるような送達シーケンスが標的膜中の細孔数に及ぼす効果を示すプロットである。示されるように、細孔数は、第1の一次PEF400を受け取ると、最大レベルに達する。その後、細孔数は、メンテナンスPEF402を受け取るまで下落し、その後、最大レベルに向かって細孔数が復元される。これは、各メンテナンスPEF402で繰り返され、次に、後続の一次PEF、続いてメンテナンスPEFで繰り返される。いくつかの実例では、メンテナンスPEFは、後続の一次PEFがそれほど頻繁に必要でないように、又は、まったく必要でないように、細孔数を(「補填する」など)復元するのに十分であることが理解されるであろう。
【0123】
[00157] メンテナンスPEF402を含むシーケンスは、一次PEFだけを含むシーケンスと同じやり方で複数の電極に送達し得ることが理解されるであろう。例えば、
図13に関連して、第1のパケットが電極212aに送達され、次に、第1のパケットは電極212bに送達され、そして第1のパケットは電極212cに送達され得る。これにより、シーケンスパターンの1ラウンド又はローテーションが完了する。次に、第1のメンテナンスパケットが電極212aに送達され、第1のメンテナンスパケットが電極212bに送達され、そして次に、第1のメンテナンスパケットが電極212cに送達される。このパターンが、4つのメンテナンスパケットが各電極212a、212b、212cに送達されるまで繰り返される。これには、合計5つのパケット(1つの一次パケットと後続する4つのメンテナンスパケット)を各電極212a、212b、212cに一部を重複させて送達することが必要になる。いくつかの実例では、これにより、5つの一次パケットを送達するのと同じ効果を、サイクルの一部を重複させることがもたらす時間の節約という追加の恩恵とともに有することになる。
【0124】
[00158] 通常、後続のPEFは、PEFのすべてが心臓リズムの安全な期間内に送達されるように、一次PEFの送達の直後に(例えば、一次PEFの完了後1~100msで)送達される。上述したように、いくつかの実施形態では、エネルギー信号を患者の心臓周期と同期させて心臓不整脈の誘発を防ぐ。したがって、患者の心臓周期は通常、心電図(ECG)を使用してモニタリングされる。典型的なECGトレースは、心房脱分極を表すP波、心室脱分極及び心房再分極を表すQRS群、並びに心室再分極を表すT波の繰り返し周期を含む。心臓に非常に近接してエネルギーを安全に送達するために、エネルギー送達と患者の心臓周期との間の同期化を用いて、心臓不整脈のリスクを低減させる場合が多い。送達されたエネルギーが、イオン輸送を可能にする心筋細胞膜の透過性を増加させ、心臓不整脈、特に、心室細動を誘発する可能性があるので、高電圧エネルギーが、心筋内の時期尚早の活動電位をトリガする場合がある。心臓不整脈を回避するために、電気エネルギーは、心筋の「細動受攻期」を避けるやり方で気道に送達される。心臓周期(心拍)内では、心室筋の細動受攻期は、T波全体によってECG上に表示される。通常、心室心筋の場合、細動受攻期は、T波の中間期及び終末期と同時に起こる。しかしながら、心室に非常に近接して高エネルギーのパルスを送達するとき、細動受攻期は、心拍よりも数ミリ秒早く発生する場合がある。したがって、T波全体が心室の細動受攻期内にあると見なすことができる。
【0125】
[00159] 心臓周期の残りの部分は、P波及びQRS群であり、これらは両方とも心房又は心室の筋肉が高電圧エネルギーの刺激に対して反応しない期間を含む。高電圧エネルギーのパルスが筋肉の反応しない期間中に送達されれば、不整脈発生の可能性を最小限に抑えることができる。第1の心臓周期のSTセグメント(心室脱分極と再分極との間の間隔)及びTQ間隔(第1の心臓周期の終わりと、第2の心臓周期の中間点と、を含む間隔)は、心筋が脱分極した状態(反応しない期間)にあることに起因する心臓不整脈を誘発せずに、高電圧エネルギーを送達することが可能な期間である。
【0126】
[00160] しかしながら、メンテナンスPEFは、一次PEFよりも低い電気エネルギー(高周波数、低電圧、少ないサイクル数、等々)で送達されるため、いくつかの実例では、患者に異常性の心臓リズムを誘発するリスクなしに、一次PEFの間で周期的に(「細動受攻期」の間など)メンテナンスPEFを送達することが可能である。この後者の態様は、心臓からの物理的な近さが遠くなっていること、したがって、不整脈を誘発する処置上のリスクが本質的に低くなっていることにより、特に、気道内の送達など、心臓以外の用途に適用可能である。このように送達すると、一次PEFの間で任意の数のメンテナンスPEFを供給することが可能な場合がある。
図18A~
図18Dは、心臓周期の様々な部分の間にメンテナンスPEFを使用する、単極の限局的エネルギー送達シーケンスの一実施形態を図示する。
図18A~
図18Dは、膨張式部材210の周面のまわりに間隔をあけて配置された3つの電極212a、212b、212cを有するエネルギー送達体208の一実施形態の断面図を提供する。エネルギーが電極のうちの1つに送達されると、電気的な経路が外部の分散電極140へと形成される。特に、
図18Aは、第1の電極212aに送達される第1の一次PEF400を図示する。これは、心臓リズムの安全期間中に起こる。
図18Bは、安全期間中以外に電極212a、212b、212cのそれぞれに送達されるメンテナンスPEF402を図示する。このような送達は、同時であってもよいし、時間をずらせてもよい。
図18Cは、心臓リズムの安全期間中に第2の電極212bに送達される第2の一次PEF404を図示する。
図18Dは、安全期間中以外に電極212a、212b、212cのそれぞれに送達されるメンテナンスPEF402を図示する。このパターンは、任意の回数繰り返されてもよい。
【0127】
[00161] いくつかの実施形態では、メンテナンスPEF402が、(一次又はメンテナンス)PEFがエネルギー送達体208の関電極に送達されるのと同時に、電極に送達されることが理解されるであろう。一次PEFと同期して送達されるとき、エネルギーが純粋に限局的に分布していないので、限局的送達PEFの恩恵の一部が幾分希薄化する可能性がある。これは、標的とする治療用PEFパラメータ特性を維持することが可能な電気ジェネレータを、同様に、関電極領域に同時に差動電圧を送達するためにも、利用することにもなる。この概念は、
図19A及び
図19Bに図示されている。
図19Aは、4つの電極エネルギー送達体208のうちの第1の電極212aに送達される一次PEFを図示するが、第2の電極212b、第3の電極212c、及び第4の電極212dにはエネルギーが送達されていない。効果ゾーンが、エネルギー送達の有効面積を表示する破線で図示されている。
図19Bは、第1の電極212aに送達される一次PEFを図示するが、メンテナンスPEFが第2の電極212b、第3の電極212c、及び第4の電極212dに送達されている。図示されるように、効果ゾーンは、破線で表示されるように、電極212aの広い表面のまわりにより広範囲に広がり、(電極から離れている)隣接する組織内にはそれほど深く広がらない。これは、メンテナンスPEFにより、エネルギーの焦点が拡張可能部材140の周面のまわりで希薄化されるからである。さらなる例では、エネルギー送達体208は、その周囲に周方向に分布した3つの電極を含み、一次PEFは、3000Vで、第1の電極212aに送達することができるが、一方、他の2の電極212b、212cはそれぞれ、同じ極性の500VのPEFを受け取る。ここでもまた、これにより、メンテナンスPEFを受け取る組織での導電率がわずかに増加するため、限局的送達を使用することによる恩恵が幾分か希薄化される可能性がある。これは、いくつかの優先的な電流経路の効果が可能になるだけでなく、送達用の多重電圧信号を生成するためのジェネレータの電力需要を増やすことができる。しかしながら、いくつかの実施形態では、メンテナンスPEFを一部の電極に送達することと同時に一次PEFを他の電極に送達すると、メンテナンスのみのPEFセットを送達するための時間帯を遅らせるのではなく、すべてのPEFを安全な心臓リズムのウィンドウで送達することが可能になる。
【0128】
[00162] 上記の例は、例示的なものであり、範囲を限定するものとは見なされないことが理解されるであろう。一次PEF及びメンテナンスPEFは、任意の組み合わせ又はパターンで様々な電極に供給することができる。例えば、3つの電極212a、212b、212cを有するいくつかの実施形態では、一次PEFは、第1の電極212aに供給され、その後に3つの電極212a、212b、212cのすべてに同時に適用されたメンテナンスパルスが続く。次に、一次PEFは、第2の電極212bに適用され、その後に3つの電極212a、212b、212cのすべてに同時に適用されたメンテナンスパルスが続く。次に、一次PEFは、第3の電極212cに適用され、その後に3つの電極212a、212b、212cのすべてに同時に適用されたメンテナンスパルスが続く。このパターンは、任意の回数繰り返されてもよい。同様に、いくつかの実施形態では、一次PEFは、第1の電極212aに適用され、次に、第2の電極212bに、そして次に、第3の電極212cに適用される。この後に、3つの電極212a、212b、212cのすべてに適用されたメンテナンスパルスが続く。このパターンは、任意の回数繰り返されてもよい。いくつかの実施形態では、一次PEFは、第1の電極212aに適用され、メンテナンスPEFは、第2の電極212b及び第3の電極212cに適用される。次に、一次PEFは、第2の電極212bに適用され、メンテナンスPEFは、第1の電極212a及び第3の電極212cに適用される。次に、一次PEFは、第3の電極212cに適用され、メンテナンスパルスは、第1の電極212a及び第2の電極212bに適用される。このような例は、様々な組み合わせのごく一部を例示したものである。
【0129】
[00163] いくつかの実施形態では、メンテナンスPEFを使用して、インピーダンスなど、治療特性を示すものである特定の変数を測定することにより、治療特性を判定することができる。メンテナンスPEFは、エネルギーが一次PEFよりも低いので、PEFが組織に及ぼす効果は小さくなり(したがって、治療環境にそれほど影響せず)、これにより、提供されるデータがより有用になる。したがって、PEFの強さが低下すると、組織レベルの主要な効果を低下させ、治療効果の蓄積/進行、組織の温度、細胞の密度及び組成、局部の細胞生存率、並びにその他の組織の側面などの側面を表示する、よりクリーンなデータを提供する。双極及び多極電極送達スキームを有する電気回路システムの局所的な性質により、この概念の適用は、このような電極デバイス設計に特に好適である。
【0130】
[00164] 本明細書で提供される概念の多くは、双極送達に適用可能であることが理解されるであろう。例えば、メンテナンスPEFは、一次PEFが単極送達される場合であっても、双極式で送達することができる。
図20A~
図20Dは、このような送達シーケンスを図示する。
図20A~
図20Dは、膨張式部材210の周面のまわりに間隔をあけて配置された4つの電極212a、2l2b、212c、2l2dを有するエネルギー送達体208の一実施形態の断面図を提供する。第1の一次PEF400が単極構成で第1の電極212aに送達されると、
図20Aに図示されるように、電気経路が外部の分散電極140へと形成される。これは、心臓リズムの安全期間中に起こる。
図20Bは、安全期間中以外に双極式で電極2l2a、212b、212c、2l2dのそれぞれに送達されるメンテナンスPEF402を図示する。心臓リズムにおいて別の安全期間に到達すると、
図20Cに図示されるように、第2の一次PEF404が、単極式で第2の電極2l2bに送達される。ここでもまた、電気経路が外部の分散電極140へと形成される。
図20Dは、安全期間中以外に双極式で電極212a、2l2b、212c、2l2dのそれぞれに送達されるメンテナンスPEF402を図示する。このパターンは、任意の回数繰り返されてもよい。
【0131】
[00165] 細孔をより長く開いているように維持することに加えて、メンテナンスパルスを使用して、標的領域の症状に関するシステムレベル(単極)又は局所レベル(双極)のデータを収集することもまた可能である。これは、より低いパラメータ設定を有する基本パルスメトリック(Z’、i’など)を含むか、又は、組織の組成、効果の深度/サイズ/効力、温度、高分子の摂取など、組織の特性を示す可能性がある分光データ、又は多重周波数データ点の評価などの、より高度な感知及び演繹手法を使用することも可能であろう。
【0132】
[00166] 一次PEFを一度に1つだけの電極に適用して、限局的送達の効果が得られることが本明細書で説明されてきたが、特定の状況において、エネルギーを2つ以上の電極に送達することによってもまた、限局的送達の効果を実現し得ることが理解されるであろう。例えば、
図21Aは、膨張式部材又は拡張可能部材210の周面のまわりに設けられた8個の電極212a、212b、212c、212d、212e、212f、212g、212hを有するエネルギー送達体208の一実施形態を図示する。この実施形態では、電極は2個1組で機能する。例えば、電極212a、212bは、互いに隣接して設けられ、したがって、エネルギーが電極212a、212bに同時に送達されるときに、単一の電極の作用を模倣することができる。同様に、電極212c、212dは、2個1組となり単一の電極として作用することが可能であり、212e/212f、及び212g/212hも同様に可能である。単一の電極ではなく、2個1組の電極を有することにより、より小さな電極の使用が可能になり、拡張可能部材210の拡張及び収縮、及び/又は他の設計上の特徴にとって有益な場合がある。任意の数の電極を使用してもよく、その場合、電極は2個1組ではなくグループで機能することが理解されるであろう。例えば、
図21Bは、膨張式部材210の周面のまわりに設けられた9個の電極212a、212b、212c、212d、212e、212f、212g、212h、212iを有するエネルギー送達体208の一実施形態を図示する。この実施形態では、電極は3個1組、すなわち、212a/212b/212c、212d/212e/212f、及び212g/212h/212iで機能する。したがって、電極212a、212b、212cは、互いに隣接して設けられ、したがって、エネルギーが電極212a、212b、212cに同時に送達されるときに、単一の電極の作用を模倣することができる。したがって、電極は、2個、3個、4個、5個、6個以上を含む任意のサイズのグループで機能することができる。同様に、シーケンス全体にわたってグループ分けを変えて、治療効果を最大化することができる。例えば、シーケンスの1つの部分の間の、212a/212b/212c、212d/212e/212f、及び212g/212hの/212iなどのグループ分けは、シーケンスの別の部分の間に、212b/212c/212d、212e/212f/212g、及び212h/212iの/212aに変えることができる。
【0133】
[00167] 同様に、レベルが異なるエネルギーを隣接する電極に送達してもよいことが理解されるであろう。例えば、2個1組の電極がエネルギーを受け取って単一の電極として作用するのではなく、2個1組のうちの第1の電極が一次PEFを受け取り、2個1組のうちの第2の電極がメンテナンスPEFを受け取ることができる。この実例では、メンテナンスPEFを受け取る第2の電極は、何らかの「補填エネルギー」をその境界に加えることによって、第1の電極の適用範囲を効果的に拡張する。これにより、第1の電極の放射状適用範囲が向上することになる。
【0134】
[00168] いくつかの実施形態では、薬剤又は治療薬がPEFと組み合わせて送達される。このような薬品の送達は、PEFの送達に先行してもよいし、PEFの送達と一部を重複させてもよいし、或いはPEFの送達の後に続けてもよい。いくつかの実施形態では、このような治療の組み合わせにより、所与のPEF送達アルゴリズムのより強力な効果が生み出される。いくつかの実例では、これは、PEFの送達を増やして効果を高めるよりも好適である。いくつかの実例では、治療の組み合わせによる効果の強化は、治療薬の選択及び所望される結果によっては、有益な場合がある追加のPEFを加えることほど大きくない可能性があることが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、遅延を追加することにより、少なくとも大きな細孔を、治療薬をまださらに受け取るのに十分長時間、開いたままにしておくことができる。いくつかの実施形態では、界面動電学的に駆動されるアジュバント薬剤の摂取を助長するために、単相で、より弱く(非常に低電圧)、任意選択的に、長時間(1μsから10ms)のメンテナンスPEFが利用される。このような状況では、細胞は依然としていくつかの細孔を開いたまま維持することになるが、PEFは、ここではそれ以上に、細胞のまわりで治療薬を動かして、細胞内に「押し込む」ように設計されることになる。
【0135】
[00169] 多種多様な治療薬、いくつか例を挙げると、化学療法薬、特定の組織のタイプを標的とする遺伝子治療、及び(全身性の毒性(脳水腫)を軽減するという追加の利点を有するCAR-Tのような)免疫療法などを使用することができる。心臓組織を治療する場合、治療薬は、異所性病巣を「鎮静する」ためのアミオダロンなどの抗不整脈薬を含むことができる。肺組織を治療する場合、治療薬は、ステロイド及びその他の抗炎症薬を含むことができる。消化管の組織を治療する場合、治療薬は、炎症性腸疾患の患者に使用されるステロイド及び抗TNF薬を含むことができる。このような例は、例示的なものであり、限定するものとは見なされない。
【0136】
[00170] したがって、(様々なサイズの電極、複数の電極、治療薬送達メカニズム、等々を含む)専用カテーテル設計、及び様々な組み合わせの(間隔送達、メンテナンスPEF、単極/双極協調、等々を含む)別個のエネルギー送達アルゴリズムは、局在性及び深度を含む有効な接触域に多くの所望の効果を有する可能性があることが理解されるであろう。これは、所与のジェネレータ容量及びPEF設定で、治療用エネルギー送達カテーテル202の効果の周方向性及び深度を微調整する強力な方法として機能する。これはまた、治療時間を延長したり、筋収縮のリスクを高めたり、副次的損傷を増加させたり、又は、処置の間に心臓不整脈を誘発するリスクを高めたりすることなく実現される。多くの実例では、これらの技法を望み通りに組み合わせることにより、治療時間の高速化、筋収縮の低減、副次的損傷の減少、及び/又は心臓不整脈誘発のリスクの軽減が可能になる。
【0137】
[00171] 本明細書に記載されたカテーテル設計は、例であり、本開示の範囲を限定するようには意図されないことが理解されるであろう。例示的な実施形態をさらに図示するために、追加の設計が提供される。例えば、いくつかの実施形態では、治療用エネルギー送達カテーテル202のエネルギー送達体208は、単極の送達用に設計されており、電極212は、近位端拘束部222及び遠位端拘束部224により拘束され、
図22に図示されるような螺旋形状のバスケットを形成する複数のワイヤ又はリボン220で構成されている。エネルギー送達体208が単極のエネルギー送達用に構成されているので、バスケットは単一の電極として作用する。エネルギー送達体208の部分は、限局的送達用の電極212のサイズ及び輪郭を縮小するように絶縁されている。
図22は、電極212と見なされる露出された別の部分を残して、エネルギー送達体208の一部(網掛けで表示された)を被覆する絶縁材料300を図示する。このような絶縁は、多種多様な方法によって実現することができる。例えば、絶縁は、螺旋形状のバスケットを、シリコーンなどの絶縁材料300でコーティングし、所望の区域で絶縁材料300を除去して電極212の形状でワイヤ220を露出させるか、又は、絶縁材料300でコーティングする前にワイヤ220の所望の区域をマスキングし、次にマスキングを除去して電極212の形状でワイヤ220を露出させるか、のいずれかによって実現することができる。コーティングは、いくつかの例を挙げると、浸漬、噴霧又は蒸着など、多種多様な方法によって実現することができる。或いは、絶縁は、エネルギー送達体208が拡張されるとき、螺旋形状のバスケットなどの本体208の部分をマスキングすることによって、達成することが可能であろう。これは、エネルギー送達体208をバルーン又は他の適合しているマスキング材料内に位置決めすることによって実現することができ、材料は、1つ又は複数の窓部を作成するなど、1つ又は複数の部分が除去されている。エネルギー送達体208が拡張することにより、本体208は材料に押し付けられ、任意選択的に、材料を拡張させる。1つ又は複数の窓部を通して露出されたエネルギー送達体208の部分は、エネルギーを送達することが可能になり、一方、被覆された部分は絶縁されることになるであろう。これは、可動性にするべき個々の編組ワイヤ間の距離によって決まるワイヤ又は編組上のコーティングを避けることになるであろう。
【0138】
[00172] 他の実施形態では、ワイヤ220又はワイヤ220の部分は、螺旋形状のバスケットに編組する前に絶縁される。次に、編組した後に絶縁材料300の部分を除去して、電極212を作成することができる。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体208のワイヤ220のうちの一部又はすべてが、独立して活性化することが可能な場合、同様の方法によってエネルギー送達体208のまわりに、又はエネルギー送達体208に沿って、複数の電極を作成してもよい。これは、独立して活性化することが可能なワイヤ220が露呈されるように、絶縁材料300を戦略的に除去、又はマスキングすることによって実現される。例えば、
図23は、第1の電極212a及び第2の電極212bを作成している、露出された2つの部分を残して、エネルギー送達体208の(網掛けで表示された)一部を被覆する絶縁材料300を図示する。これらの電極212a、212bは、ワイヤ220の構造及び向きのおかげで、独立して活性化することができる。
【0139】
[00173] 血液などの導電性媒体を包含するか、又は導電性媒体に隣接する内腔、又は組織を標的とするために、パルス電界を送達することに対して影響があることが理解されるであろう。組織壁内へのパルス送達を強制するために電極が適切に絶縁されておらず、これにより導電性媒体がパルスに露出されている場合、電流の一部は、標的とされた組織壁ではなく導電性媒体を通って流れることになる。パルス電界治療で送達された累積エネルギーが少ないため、これが有害事象のリスクをもたらすことは恐らくないであろうが、電界分布を希薄化するか、又は弱体化する可能性があり、これにより、組織への電界強度浸透深度が減少する。これは、前述した電界強度の電極接触表面積への依存に類似した効果であり、これにより、血液は半導電性仮想電極としての機能を果たす。したがって、電極設計及びエネルギー送達プロトコルのいくつかの実施形態は、パルスのパラメータを適切に微調整すること、又は導電性媒体に対するパルス暴露量を制限することが可能な電極デバイスを設計することなどによって、この効果を克服するように設計されている。導電性の粘液の薄層が気道、及び他の同様の可能性のある内腔標的の内側を覆っている一方で、電界強度の希薄化に利用可能な容量は少ない場合が多く、したがって、これらの標的適応症でこの効果を克服する必要性が減少していることが理解されるであろう。しかしながら、この効果は、血管標的ではより重要になり、経壁周方向の病変に達するための追加の課題の1つとして機能する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体208は、それ自体機械的に拡張可能であり、また、他の実施形態では、エネルギー送達体208は、拡張可能部材210を使用して拡張可能であることが理解されるであろう。拡張可能部材210を利用する場合、拡張可能部材210それ自体は、絶縁体として作用することができる。例えば、
図24では、電極212はリング310を含む。リング310を通して送達されるエネルギーは、示されるように、リング310を通って、及びリング310のまわりに膨張する拡張可能部材210によって、リング310の区域に集中及び制限される。この実施形態では、拡張可能部材210の直径は、リング310によって、リング310の区域内に制限される。しかしながら、リング310の端部を越えて延びる拡張可能部材210の部分は、体腔Lの周囲の組織をわずかに圧縮させながら、さらに拡張することが可能である。これにより、完全な、又は実質的に完全なエネルギーの遮断が作り出されて、リング310の区域へのエネルギー送達を制限する。このような設計は、血液などの導電性媒体を有する環境で特に有用な場合があり、エネルギーが血液に送達されることなく、組織に向けられることが理解されるであろう。
図22及び
図23に図示されているような、バスケット形状を有する、エネルギー送達体内の拡張可能部材の膨張もまた、血管内腔で血液にエネルギーを送達しにくくする場合があることもまた理解され得る。
【0140】
[00174]
図25は、拡張可能部材210が絶縁体として作用する類似した実施形態を提供する。この実施形態では、エネルギー送達体208は、ディスク状の螺旋形状のバスケットを形成する複数のワイヤ、又はリボン220を含む。この実施形態では、エネルギー送達体208は自己拡張型である。拡張可能部材210は、エネルギー送達体208の両側に設けられている。体腔Lに当接して拡張すると、拡張可能部材210は、エネルギーの完全な遮断を作り出し、エネルギー送達体208の区域へのエネルギー送達を制限する。いくつかの実施形態では、エネルギー送達体208は、自己拡張ではなく内部の拡張部材によって拡張可能であることが理解されるであろう。任意選択的に、この内部の拡張部材は、相互接続された膨張用内腔などによって、エネルギー送達体208の両側の拡張可能部材210と一致して拡張可能であってもよい。
【0141】
[00175] 絶縁領域を有する多種多様なカテーテル設計が、体腔を通る流れの減少を追加で提供し得ることが理解されるであろう。血管で利用すると、血流が減少し、それは、いくつかの処置では有益な場合がある。
【0142】
[00176] 本明細書に記載のカテーテル設計及びアルゴリズムの多くは、二相のPEF送達に限定されることなく、多種多様なタイプのエネルギーの送達で利用可能であることが理解されるであろう。このような追加の種類のエネルギー及びエネルギーに基づいた治療には、電気化学療法、ナノ秒パルス電界、不可逆電気穿孔法、電気化学的治療、及び電気遺伝子治療が含まれるが、これらに限定されない。
【0143】
[00177] 本明細書では本開示の実施形態を示し、説明してきたが、このような実施形態が例としてのみ提供されていることが当業者には明らかであろう。当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、数多くの変形、変更、及び置換に想到するはずである。本開示のシステム及び方法を実装する際に、本明細書に記載された実施形態に対して様々な代替的選択肢を使用し得ることを理解されたい。