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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001342
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド及び液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
B41J2/14 305
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100864
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】324006865
【氏名又は名称】理想テクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】肥田 真一郎
(72)【発明者】
【氏名】下里 正志
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF69
2C057AG33
2C057AG44
2C057AG47
2C057AG84
2C057AG91
2C057AP22
2C057AP55
(57)【要約】
【課題】 実装性の高い液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供する。
【解決手段】一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、基板と、圧電部材と、振動板と、電極配線と、を備える。基板は、配線面を有する。圧電部材は、前記基板の配線面に設けられる。圧電部材は、一方の側面部が前記配線面に対して90°より大きく、180°より小さい角度で傾斜する傾斜面を有する。振動板は、前記圧電部材の前記基板と反対側に対向配置される。電極配線は、前記圧電部材の前記傾斜面に形成される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線面を有する基板と、
前記基板の配線面に設けられ、一方の側面部が前記配線面に対して90°より大きく、180°より小さい角度で傾斜する傾斜面を有する、圧電部材と、
前記圧電部材の前記基板と反対側に対向配置される振動板と、
前記圧電部材の前記傾斜面に形成される電極配線と、
を備える液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記振動板に対向配置される圧力室を形成する流路部と、
前記基板の配線面に形成され、前記側面部に形成される電極配線に接続される、基板配線と、を備える、請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記圧電部材の前記一方の側面部と前記基板の配線面との間の角度は、135°より大きく、前記圧電部材の他方の側面部と前記基板の配線面との間の角度よりも大きい、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記基板は、前記基板配線に異方導電性フィルムを介して部品が実装される実装部を前記配線面に備える、請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備える液体吐出装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、液体吐出ヘッド及び液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタヘッドなどの液体吐出装置の駆動源として、PZTなどの圧電体を用いた圧電アクチュエータが用いられる。インクジェットプリンタヘッドなどでは非常に細かい間隔でアクチュエータが並べられており、1つの圧電体に多数の溝を形成し、溝によって分割された複数の柱部をそれぞれ1つのアクチュエータとする構造がある。アクチュエータを駆動するために柱部には、伸縮する面と直交する面に電極が設けられており、アクチュエータ表面の電極にはんだ接合によりフレキシブルケーブルが直接接続される。
【0003】
このような構成において、アクチュエータとフレキシブルケーブルの接合強度が低いために、接合部が破損しやすく、電気的接続のオープンが生じやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-56730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、実装性の高い液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態にかかる液体吐出ヘッドは、基板と、圧電部材と、振動板と、電極配線と、を備える。基板は、配線面を有する。圧電部材は、前記基板の配線面に設けられる。圧電部材は、一方の側面部が前記配線面に対して90°より大きく、180°より小さい角度で傾斜する傾斜面を有する。振動板は、前記圧電部材の前記基板と反対側に対向配置される。電極配線は、前記圧電部材の前記傾斜面に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るインクジェットヘッドの構成を示す断面図。
図2】同インクジェットヘッドの構成を示す断面図。
図3】同インクジェットヘッドの構成を示す斜視図。
図4】同インクジェットヘッドの製造方法を示す説明図。
図5】他の実施形態にかかるインクジェットヘッドを示す説明図。
図6】実施形態に係るインクジェット記録装置の概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、実施形態に係るアクチュエータ20、液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッド1及び液体吐出装置であるインクジェット記録装置100について、図1乃至図6を参照して説明する。図1及び図2はインクジェットヘッド1の概略構成を示す断面図である。図2図1のII-II断面を示す。図3はインクジェットヘッド1の一部を示す斜視図、図4はインクジェットヘッドの製造方法を示す説明図であり、図6は、インクジェット記録装置100の概略構成を示す説明図である。図中矢印X、Y、Zは互いに直交する3方向をそれぞれ示す。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示す。
【0009】
図1及び図2に示すように、インクジェットヘッド1は、基板10と、一対のアクチュエータ20と、流路部40と、複数のノズル51を有するノズルプレート50と、フレーム部60と、駆動回路70と、を備える。
【0010】
一例として、インクジェットヘッド1は、アクチュエータ20を2つ備え、複数のノズル51が列方向(X方向)に並ぶノズル列、複数の圧力室31が列方向に並ぶ圧力室列、及び複数の圧電素子21、22、が列方向に並ぶ素子列をそれぞれ2列ずつ有する。本実施形態において、アクチュエータ20における複数の圧電体層211の積層方向、駆動圧電素子21の振動方向、振動板30の振動方向、がそれぞれZ方向に沿う例を示す。
【0011】
基板10は一対のアクチュエータ20を支持する回路基板である。基板10は例えばアルミナなどから板状に構成され、延出方向及び並列方向に沿う表面である実装面101を有する。基板10の、アクチュエータ20が搭載される実装面101には、基板電極層11、12が形成される。実装面101は配線面ともいう。例えば基板10の実装面101において、一対のアクチュエータ20が対向する方向の一対のアクチュエータ20の両側部となる外側領域には個別電極を構成する基板電極層11が形成され、一対のアクチュエータ20の間の内側領域には共通電極を構成する基板電極層12が形成される。一対のアクチュエータ20の対向面が内側領域であり、一対のアクチュエータ20の対向面と反対側の面が外側領域である。
【0012】
例えば基板10の実装面101において、一対のアクチュエータ20の外側領域においては列方向に基板電極層11が分離されることで複数の基板配線である個別配線102を有する所定の配線パターンが形成される。例えば個別配線102はアクチュエータ20の表面のうち外側となる一方の側面部に形成される外部電極223(電極)と連続し、個別電極を構成する。
【0013】
一例として実装面101上のアクチュエータ20の近傍の領域であって、少なくとも傾斜面からの反射光が届く反射光範囲内において、個別配線102は、アクチュエータ20の側面部の外部電極223と同方向に延びる。
【0014】
基板10の実装面101における外側領域には、ACF75を介して部品としてのFPC71が実装される実装部76が設けられる。
【0015】
個別配線102は、例えば真空蒸着法や無電解メッキ法等の手法で、導電性材料が形成され、たとえばフォトリソグラフィーによるパターニング加工により、所定形状にパターニングされる。
【0016】
また、基板10の実装面101において、一対のアクチュエータ20の間の内側領域に形成された基板電極層12は、共通配線103(配線)を構成する。共通配線103は、アクチュエータ20のうち内側となる他方の側面部に形成される外部電極224(電極)と連続し、共通電極を構成する。
【0017】
アクチュエータ20は、基板10の一方側である実装面101に接合される。例えばY方向に2つのアクチュエータ20が並んで配置される。
【0018】
図1乃至図3に示すように、アクチュエータ20は、列方向に沿って交互に配列されるアクチュエータとなる複数の駆動圧電素子21、及び複数の非駆動圧電素子22と、これら複数の圧電素子21、22を基板10側で一体に連結する連結部26と、を備える。
【0019】
アクチュエータ20は、複数の圧電体層211と複数の内部電極221,222とが積層される積層圧電部材である。
【0020】
アクチュエータ20において、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22とは、一定の間隔で一方向に並ぶ。
【0021】
アクチュエータ20は、振動板30側となる頂部側から所定深さまで形成される溝23により複数に分割され、複数の駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22が例えば、同ピッチで列方向に並ぶ。溝23はアクチュエータ20の延出方向における全長にわたって形成される。
【0022】
一対のアクチュエータ20は、一対のアクチュエータ20の対向方向であるY方向における外側の一方側の側面部203が、基板10側に向けて斜めに拡がる台形状に構成される。アクチュエータ20は、例えば、短手方向の幅が、頂部側から基板10側に向かって片側に漸次大きくなる。アクチュエータ20の短手方向に沿った断面の断面形状は、台形状に形成される。即ち、アクチュエータ20は、短手方向の一方側の側面部203に傾斜する傾斜面を有する。たとえばアクチュエータ20の圧電部材202の一方の側面部203は、基板10の実装面101との間の角度が90°より大きく180°より小さい傾斜面を有する。
【0023】
また、各圧電部材202において、一対のアクチュエータ20が対向する内側となる他方の側面部204は、基板10の実装面101との角度が、一方の側面部203と実装面101との角度よりも小さく構成される。一例として、側面部204は、Z方向に沿って延び、基板10の実装面101との角度は90°となる。
【0024】
アクチュエータ20において、例えば複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22とは、それぞれ、Z方向から見た平面視において、短手方向が素子列の列方向に沿うとともに、長手方向が列方向及びZ方向に対して直交する延出方向に沿う、矩形状に構成される。
【0025】
複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22は、個別電極が形成される一方の側面が基板側に拡大する傾斜面を形成するとともに、共通電極が形成される他方の側面がZ方向に沿って延び、断面視において片側が傾斜する台形状に構成される。
【0026】
駆動圧電素子21は、Z方向において、流路部40に形成された複数の圧力室31にそれぞれ対向する位置に配列される。一例として、駆動圧電素子21の列方向及び延出方向の中心位置と、圧力室31の列方向及び延出方向の中心位置とが、Z方向に並んで配列される。
【0027】
非駆動圧電素子22は、Z方向において、流路部40に形成された複数の隔壁部42にそれぞれ対向する位置に配列される。複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22は、列方向において、溝23を挟んで交互に並列配置される。
【0028】
例えば、アクチュエータ20を構成する圧電部材202は、積層圧電体で構成される積層圧電部材であり、シート状の圧電材料を積層して焼結することで形成される。
【0029】
圧電部材202は、積層された複数の圧電体層211と、各圧電体層211の主面に形成される内部電極221、222と、一方側の側面部203に形成された外部電極223と、他方側の側面部204に形成された224と、を備える。一対のアクチュエータ20の対向面と反対側の面である外側領域側が、圧電部材202の一方側の側面部203である。一対のアクチュエータ20の対向面である内側領域側が、圧電部材202の他方側の側面部204である。なお、一例として、駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22は同じ積層構造である。
【0030】
圧電体層211は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系、または無鉛のKNN(ニオブ酸ナトリウムカリウム)系等の圧電セラミック材料から薄板状に構成される。複数の圧電体層211は厚さ方向が積層方向に沿って積層され、互いに接着されている。例えば本実施形態において圧電体層211の厚さ方向及び積層方向が、振動方向(Z方向)に沿って配置される。
【0031】
内部電極221、222は、銀パラジウムなどの焼成可能な導電性材料で所定形状に構成される導電膜である。内部電極221、222は各圧電体層211の主面の所定領域に形成される。内部電極221、222は、互いに異なる極である。例えば、一方の内部電極221は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の並び方向である列方向(X方向)、振動方向(Z方向)の双方と直交する方向である延出方向(Y方向)において、圧電体層211の一方の端部に至り、圧電体層211の他方の端部には至らない領域に形成される。他方の内部電極222は、延出方向において、圧電体層211の一方の端部には至らず、圧電体層211の他方の端部に至る領域に形成される。内部電極221、222は圧電素子21、22の側面に形成される外部電極223、224にそれぞれ接続される。
【0032】
また駆動圧電素子21、非駆動圧電素子22を構成する圧電部材202は、基板10側とノズルプレート50側の端部のいずれかまたは両方に、電界がかからず変形しないダミー層をさらに備えていてもよい。ダミー層は、圧電体層211と同材料であり、圧電体としては機能せず、固定の際のベースとなり、あるいは組立中や組立後の精度を出すために研磨する研磨代となる。
【0033】
外部電極223、224は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の表面に形成され、内部電極221、222の端部に接続される。
【0034】
例えば外部電極223は、圧電部材202の延出方向における一方の側面部203の傾斜面に形成される。外部電極223は素子毎に分離され、個別配線を構成する。各外部電極223は、基板10上の基板電極層11で構成される個別配線102にそれぞれ連続する。
【0035】
たとえば、各外部電極223は、フォトリソグラフィー処理における光の照射方向から見て、少なくともアクチュエータ20の近傍の領域における各個別配線102と同じ方向に延びている。
【0036】
本実施形態において、基板配線部の個別配線102は、実装面101に沿って形成されるとともに、少なくとも反射光が届く反射光範囲内において、アクチュエータ20の傾斜面の配線である外部電極223と、同方向に延びる。具体的には、例えば露光方向となる第3方向(Z方向)から見た平面視において、圧電部材202の短手方向である第2方向(Y方向)に向けて同一直線上に延びる。すなわち、個別配線102は、少なくとも圧電部材202からの距離が所定距離以下となる反射光範囲内において、複数のノズル51の配列方向である第1方向(X方向)に対して直交する直線上であって、傾斜面となる側面部203の縁部である上辺及び下辺に対して、垂直となる方向に延びる。そして、基板10の個別配線102は、実装面101に沿って、アクチュエータ20の短手方向である第2方向(Y方向)に延びる。
【0037】
外部電極224は、圧電部材202の延出方向における他方の側面部204に形成される。また外部電極224は基板10上の基板電極層12で構成される共通配線103に連続する。
【0038】
外部電極223、224はメッキ法やスパッタ法などの方法で、Ni、Cr、Auなどにより成膜される。外部電極223と外部電極224は、異なる極である。
【0039】
本実施形態において一例として外部電極223は圧電素子21毎に分離された個別電極であり、外部電極224は共通電極である。複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の個別電極となる外部電極223は、製造工程において圧電部材202の一方の側面に形成される電極層が分割され、互いに圧電素子21毎に独立して配置される。すなわち、電極層が並列方向において互いに離間して独立し、複数の個別電極としての外部電極223を構成する。
外部電極223は、溝23によって互いに離間して配置され、例えば基板10上の個別配線102を介して、配線基板の一例であるフレキシブル基板としてのFPC71を介して駆動回路70に接続される。例えば、個々の外部電極223は、ACF75を用いたACF実装により接続されたFPC71により駆動回路70の駆動IC72を介して、駆動部としての制御部116に接続され、制御回路1161による制御によって駆動制御可能に構成される。なお、外部電極224は外部電極223側の側面に取り回され、FPC71を介して駆動回路70に接続されてもよい。
【0040】
外部電極224は、溝23の底部よりも基板10側の領域において電極層が連続し、共通電極を構成する。外部電極224は、圧電部材202の他方の側面において互いに連結されるとともに基板10上の共通配線103に接続され、例えば接地される。
【0041】
また、各圧電素子21、22の振動方向は積層方向に沿っており、電界を印加することで、d33方向に変位する。
【0042】
一例として、各圧電素子21、22は、3層以上、50層以下、各層の厚さを10μm以上、40μm以下とし、厚さと総積層数の積を1000μm未満とする。
【0043】
駆動圧電素子21は、外部電極223、224を介して内部電極221、222に電圧が印加されることで、振動する。本実施形態において、駆動圧電素子21は、圧電体層211の積層方向に沿って縦振動する。ここで言う縦振動とは、例えば「圧電定数d33で定義される厚み方向の振動」である。駆動圧電素子21は、縦振動により、振動板30を変位させ、圧力室31を変形させる。
【0044】
流路部40は、変形方向においてアクチュエータ20の一方側に対向配置される振動板30と、振動板30の一方側に積層される複数の流路基板405、406と、を備える。
【0045】
振動板30は振動方向において流路基板405とアクチュエータ20との間に設けられる。振動板30は、流路基板405とともに、流路部40を構成する。振動板30は、圧電部材202の個別電極及び共通電極が形成される側面に対して交差する方向に延びる。
【0046】
振動板30は振動方向であるZ方向と直交する面に沿って延び、複数の圧電素子21、22の振動方向の一方側、即ち、ノズルプレート50側の面に接合される。振動板30は、例えば変形可能に構成される。振動板30は、アクチュエータ20の駆動圧電素子21及び非駆動圧電素子22と、フレーム部60と、に接合される。例えば振動板30は、圧電素子21、22に対向する振動領域301と、フレーム部60に対向する支持領域302と、を有する。
【0047】
振動領域301は、例えば厚さ方向が圧電体層211の振動方向となるように配された平板状である。振動板30は、複数の駆動圧電素子21及び複数の非駆動圧電素子22の並び方向に面方向が延びる。振動板30は、例えば金属板である。振動板30は、各圧力室31に対向するとともに個別に変位可能な複数の振動部位を有する。振動板30は、複数の振動部位が一体に連なって形成される。
【0048】
一例として、振動板30はニッケルやSUS板で構成され、振動方向に沿う厚さ寸法は5μm~15μm程度に構成される。なお、振動領域301は、複数の振動部位が、変位しやすいように、振動部位と隣接する部位あるいは互いに隣接する振動部位間に、折り目や段差が形成されていてもよい。振動領域301は、駆動圧電素子21の伸長と圧縮によって、当該駆動圧電素子21に対向配置された部位が変位することで、変形する。例えば、振動板30は、電鋳法等により、形成される。振動板30はアクチュエータ20の上端面に接着などで接合される。
【0049】
支持領域302は、フレーム部60と流路基板405との間に配置される板状部材である。支持領域302は、共通室32に連通する貫通孔を有する連通部33を有する。
【0050】
例えば連通部33は貫通孔として液体が通過可能な多数の細孔を有するフィルタ部材を備える。
【0051】
流路基板405、406は、振動方向においてノズルプレート50と振動板30の間に配置される。たとえば流路基板405は振動板30の振動方向の一方側に接合される。流路基板406は流路基板405の振動方向の一方側に接合される。
【0052】
流路基板405、406は、複数の圧力室31や、圧力室31と共通室32とを連通する複数の個別流路を有する、所定のインク流路を形成する。
【0053】
たとえば流路基板405は隔壁部41や、隔壁部42や、周壁部43を有する。
【0054】
たとえば隔壁部41は、一対のアクチュエータ20に対向する圧力室31の列の間を仕切る壁部材である。
【0055】
隔壁部42は、並列方向に並ぶ複数の圧力室31間を隔てるとともに、圧力室31及びの両側部を構成する壁部材である。隔壁部42は振動板30を介して、非駆動圧電素子22に対向配置され、非駆動圧電素子22によって支持される。隔壁部42は、複数の圧力室31が並ぶピッチと同ピッチで複数設けられる。
【0056】
周壁部43は複数の個別流路や共通流路を含むインク流路の外周部を囲む壁部材である。
【0057】
流路基板406は、各圧力室31からノズル51に連通する流路を形成するフレーム部44を有する。
【0058】
流路部40内には、各アクチュエータ20においてそれぞれX方向に並ぶ圧力室31の列が2列形成される。各列において、X方向に並ぶ圧力室31の間は隔壁部42によって隔てられる。すなわち、圧力室31の並列方向の両側は隔壁部42によって構成される。また、一方のアクチュエータ20に対向配置される圧力室31の列と他方のアクチュエータ20に対向する圧力室31の列との間は、隔壁部41によって隔てられる。各圧力室31は、一方側に配されるノズルプレート50に形成されたノズル51に連通する。また、圧力室31は、ノズルプレート50の反対側が振動板30によって塞がれる。
【0059】
複数の圧力室31は、振動板30の振動領域301の一方側に形成される空間であり、個別流路や連通部33を介して共通室32に連通する。複数の圧力室31は、ノズルプレート50に形成されたノズル51に連通する。また、圧力室31は、ノズルプレート50の反対側が振動板30によって塞がれる。
【0060】
複数の圧力室31は共通室32から供給される液体を保有し、圧力室31の一部を形成する振動板30の振動によって変形することで、ノズル51から液体を吐出する。
【0061】
ノズルプレート50は、例えばSUS・Niなどの金属やポリイミドなどの樹脂材料からなる厚さ10μm~100μm程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート50は圧力室31の一方側の開口を覆うように、流路基板405の一方側に配置されている。
【0062】
ノズル51は圧力室31の並び方向と同じ第1方向に複数並び、ノズル列が形成される。例えばノズル51は、2列設けられ、各ノズル51が、2列に配列された複数の圧力室31に対応する位置にそれぞれ設けられている。本実施形態において、ノズル51は、圧力室31の、延出方向における端部の位置に、それぞれ設けられている。
【0063】
フレーム部60は圧電素子21、22とともに振動板30に接合される構造体である。フレーム部60は圧電素子21、22の、振動板30の、流路基板405とは反対側に設けられ、例えば本実施形態においてはアクチュエータ20に隣接して配置される。フレーム部60は、振動板30の他方側に接合され、振動板30と基板10の間に設けられ、インクジェットヘッド1の外郭を構成する。またフレーム部60は、内部に液体の流路を形成する。本実施形態において、フレーム部60は、共通室32を形成する。
【0064】
共通室32は、フレーム部60の内側に形成され、振動板30に設けられた連通部33、及び個別流路を通じて、圧力室31に連通する。
【0065】
駆動回路70は、基板10の実装面101の個別配線102及び共通配線103を介してアクチュエータ20に接続されるFPC71(Flexible printed circuits:フレキシブルプリント回路基板)と、FPC71に搭載された駆動IC72と、FPC71の他端に実装されたプリント配線基板73と、を備える。
【0066】
駆動回路70は、駆動IC72により駆動電圧を外部電極223、224に印加することで、駆動圧電素子21を駆動し、圧力室31の容積を増減させて、ノズル51から液滴を吐出させる。
【0067】
FPC71は基板10の実装面101に接続され、個別配線102及び共通配線103を介してアクチュエータ20の複数の外部電極223、224に接続される。FPC71として、電子部品として駆動IC72が実装されたCOF(Chip on Film)が用いられる。
【0068】
駆動IC72は、FPC71を介して外部電極223、224に接続される。駆動IC72は、吐出制御に用いられる電子部品である。
【0069】
駆動IC72は、各駆動圧電素子21を動作させるための制御信号及び駆動信号を生成する。駆動IC72は、インクジェットヘッド1が搭載されるインクジェット記録装置100の制御部116から入力された画像信号に従い、インクを吐出させるタイミング及びインクを吐出させる駆動圧電素子21を選択するなどの制御のための制御信号を生成する。また、駆動IC72は、制御部116からの制御信号に従って駆動圧電素子21に印加する電圧、すなわち駆動信号を生成する。駆動IC72が駆動圧電素子21に駆動信号を印加すると、駆動圧電素子21は、振動板30を変位させて圧力室31の容積を変化させるように駆動する。これにより、圧力室31に充填されたインクは、圧力振動を生じる。圧力振動により、圧力室31に連通するノズル51からインクが吐出する。なお、インクジェットヘッド1は、1画素に着弾するインク滴の量を変更することで階調表現を実現できるようにしてもよい。また、インクジェットヘッド1は、インクの吐出回数を変えることで、1画素に着弾するインク滴の量を変更できるようにしてもよい。このように、駆動IC72は、駆動信号を駆動圧電素子21に印加する印加部の一例である。
【0070】
例えば、駆動IC72は、データバッファ、デコーダ、及びドライバを備えている。データバッファは、印字データを駆動圧電素子21毎に時系列に保存する。デコーダは、駆動圧電素子21毎に、データバッファに保存された印字データに基づいて、ドライバを制御する。ドライバは、デコーダの制御に基づき、各駆動圧電素子21を動作させる駆動信号を出力する。駆動信号は、例えば各駆動圧電素子21に印加する電圧である。
【0071】
プリント配線基板73は、各種電子部品やコネクタが搭載されたPWA(Printing Wiring Assembly)であり、ヘッド制御回路731を有する。プリント配線基板73は、インクジェット記録装置100の制御部116に接続される。
【0072】
以上のように構成されたインクジェットヘッド1において、ノズルプレート50と、フレーム部60と、流路部40とによって、ノズル51に連通する複数の圧力室31と、複数の圧力室31にそれぞれ連通する共通室32と、を有するインク流路が形成される。例えば共通室32はカートリッジに連通し、インクが共通室32を通じて各圧力室31へ供給される。全ての駆動圧電素子21は配線により電圧が印加可能に接続されている。インクジェットヘッド1は、例えばインクジェット記録装置100の制御部116が、駆動IC72により電極221、222に駆動電圧を印加すると、駆動対象の駆動圧電素子21が例えば積層方向、すなわち各圧電体層211の厚さ方向に振動する。つまり、駆動圧電素子21は縦振動する。
【0073】
具体的には、制御部116は、駆動対象の駆動圧電素子21の内部電極221、222に駆動電圧を印加して、駆動対象の駆動圧電素子21を選択的に駆動する。そして、駆動対象の駆動圧電素子21による、引張方向の変形と圧縮方向の変形を組み合わせて、振動板30を変形させ、圧力室31の容積を変化させることで、共通室32から液体を導き、ノズル51から吐出させる。
【0074】
本実施形態にかかるインクジェットヘッド1の製造方法の一例について図4を参照して説明する。まず、圧電材料からなるシート状の圧電体層211の表面に、内部電極221、222を印刷処理により形成する。そして内部電極221、222が形成された複数枚の圧電体層211を積層し、焼成処理、及び分極処理を行い、積層圧電部材である圧電部材202を構成する。
【0075】
そして、あらかじめ内部電極221、222を形成した圧電部材202の圧電素子21の分極処理を行い、基板10の実装面101上に接着剤等で貼り付ける。
【0076】
そして、基板10上に圧電部材202が配置された状態で、基板10及び圧電部材202の表面を表面加工することで、実装面101と圧電部材202の外面を成形する。このとき、例えば砥石を用いた研削加工などの機械加工により、圧電部材202の一方の側面から基板10の実装面101まで、段差のない連続した表面を形成する。なお、基板10や圧電体を加工できる砥石を用いた場合にバリなどが形成される場合には、仕上げにバフ研磨やサンドブラスト等の表面処理を行うことが好ましい。
【0077】
続いて、圧電部材202の頂面部および両側の側面部203,204を含む表面と、基板10の実装面101に、メッキ処理により、金属膜を成膜する。たとえば、圧電部材202の面部および両側の側面部を含む表面部と、アクチュエータ20の周りの実装面101の全面にNi無電解メッキなどで、電極を形成することで、外部電極223、224となる電極層を形成するとともに、基板10の実装面101に基板電極層11,12を形成する。そして、圧電部材202の頂面部に研磨処理を施し、頂面部の電極を除去するとともに、頂面部の接合面を形成する。研磨処理によって、後工程で振動板30が接合される圧電部材202の頂面部の平面度を確保する。
【0078】
続いてダイヤモンドカッターなどのツールをZ方向に移動させてダイシング加工することで、アクチュエータ20に複数の溝23を形成する。例えば基板10に接合された圧電部材202を、基板10側とは反対側となる頂部側からダイシング加工により所定深さまで溝23を形成することで、圧電部材202を分離する。以上により、溝23によって隔てられるとともに所定ピッチで並ぶ複数の駆動圧電素子21,非駆動圧電素子22が形成される。
【0079】
そして、圧電部材202及び基板10の表面の電極層を、フォトリソグラフィー処理、PEP法などでパターニング加工し、所定の配線パターンを形成する。フォトリソグラフィーによるパターニング加工において、たとえば感光性レジスト材料を塗布した後、フォトマスクを介して図4に示すように照射ヘッドSから紫外線を照射することにより所定のパターンで露光処理を行い、現像処理、エッチング処理を経て、配線層をパターニングする。
【0080】
すなわち、圧電部材202及び基板10の表面に全面的に成膜された配線層について、個別電極を構成する一方側の領域、すなわち一対のアクチュエータ20が対向する外側の領域に、所定のパターンで露光して所定箇所を除去し、個別配線102側となる一端側の基板電極層11を複数に分割するパターニング加工を行う。このとき、個別配線102側の側面部203は実装面101に対して傾斜するテーパ状となっているため、連続した面を形成する側面部203と基板10の実装面101とに同時に光を照射でき、同時にパターニングすることが可能である。すなわち、テーパ状の傾斜面を有する圧電部材202の側面部203の電極層と、基板10の実装面101とに形成された基板電極層11を、素子毎に分割することで、外部電極223と個別配線102とをパターン加工する。
【0081】
外部電極223は、圧電部材202のノズルプレート50側の部位が溝23によって分離され、基板10側の部位がパターニングによって分離される。
【0082】
一方、他方側の基板電極層12はパターニングにより分割されず、連続した状態で共通配線103を構成する。以上により、圧電部材202の一方側には素子毎に分割された複数の個別配線102が形成され、他方側には連続した共通配線103が形成される。
【0083】
基板10上において所定形状に成形された個別配線102や共通配線103等の配線パターンに、制御部品としての、駆動IC72等の電子部品が実装されたFPC71を、ACF(異方導電性フィルム)75により接続する。さらにFPC71に、ヘッド制御回路731を有するプリント配線基板73を、接続する。以上により、基板10上においてACF75を用いた実装部76が構成される。
【0084】
さらに、アクチュエータ20に、振動板30、流路基板405、406及びノズルプレート50を、間に接合材を介して積層して位置決めを行い、アクチュエータ20の外周にフレーム部60を配置し、これら複数の部材を接合することで、インクジェットヘッド1が完成する。
【0085】
以下、インクジェットヘッド1を備えるインクジェット記録装置100の一例について、図6を参照して説明する。インクジェット記録装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
【0086】
インクジェット記録装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路Rに沿って、吐出対象物である印刷媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行う液体吐出装置である。
【0087】
筐体111は、インクジェット記録装置100の外郭を構成する。筐体111の所定箇所に、用紙Pを外部に排出する排出口を備える。
【0088】
媒体供給部112は複数の給紙カセットを備え、各種サイズの用紙Pを複数枚積層して保持可能に構成される。
【0089】
媒体排出部114は、排出口から排出される用紙Pを保持可能に構成された排紙トレイを備える。
【0090】
画像形成部113は、用紙Pを支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
【0091】
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
【0092】
支持部117は、画像形成の際に、搬送ベルト118の上面である保持面に用紙Pを支持するとともに、ベルトローラ120の回転によって所定のタイミングで搬送ベルト118を送ることにより、用紙Pを下流側へ搬送する。
【0093】
ヘッドユニット130は、複数(4色)のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしてのインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、供給ポンプ134と、を備える。
【0094】
本実施形態において、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1と、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132を備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。
【0095】
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結される。そして、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズル51に供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
【0096】
供給ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。供給ポンプ134は、供給流路に設けられている。供給ポンプ134は、配線により制御部116の制御回路1161に接続され、制御部116により制御可能に構成される。供給ポンプ134は、インクジェットヘッド1に液体を供給する。
【0097】
搬送装置115は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る搬送路Rに沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路Rに沿って配置される複数のガイドプレート対121と、複数の搬送用ローラ122と、を備えている。
【0098】
複数のガイドプレート対121は、それぞれ、搬送される用紙Pを挟んで対向配置される一対のプレート部材を備え、用紙Pを搬送路Rに沿って案内する。
【0099】
搬送用ローラ122は、制御部116の制御によって駆動されて回転することで、用紙Pを搬送路Rに沿って下流側に送る。なお、搬送路Rには用紙の搬送状況を検出するセンサが各所に配置される。
【0100】
制御部116は、コントローラであるCPU(Central Processing Unit)等の制御回路1161と、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
【0101】
以上のように構成されたインクジェット記録装置100において、制御部116は、例えばインターフェイスにおいてユーザが操作入力部の操作による印刷指示を検出すると、搬送装置115を駆動して用紙Pを搬送するとともに、所定のタイミングでヘッドユニット130に対して印字信号を出力することで、インクジェットヘッド1を駆動する。インクジェットヘッド1は吐出動作として、画像データに応じた画像信号により、駆動IC72に駆動信号を送り、内部電極221、222に駆動電圧を印加して吐出対象の駆動圧電素子21を選択的に駆動して例えば積層方向に縦振動させ、圧力室31の容積を変化させることでノズル51からインクを吐出し、搬送ベルト118上に保持された用紙Pに画像を形成する。また、液体吐出動作として、制御部116は、供給ポンプ134を駆動することで、インクタンク132からインクジェットヘッド1の共通室32にインクを供給する。
【0102】
ここで、インクジェットヘッド1を駆動する駆動動作について、説明する。本実施形態に係るインクジェットヘッド1は、圧力室31に対向配置される駆動圧電素子21を備え、これらの駆動圧電素子21は配線により電圧が印加可能に接続されている。制御部116は、画像データに応じた画像信号により、駆動IC72に駆動信号を送り、駆動対象の駆動圧電素子21の内部電極221、222に駆動電圧を印加して、駆動対象の駆動圧電素子21を選択的に変形させる。そして、振動板30の引張方向の変形と圧縮方向の変形を組み合わせて、圧力室31の容積を変化させることで、液体を吐出させる。
【0103】
例えば制御部116は、引っ張り動作と、圧縮動作とを交互に行う。インクジェットヘッド1において、対象の圧力室31の内容積を増加させる引張時には、駆動対象の駆動圧電素子21を収縮し、駆動対象外の駆動圧電素子21は変形させない。また、インクジェットヘッド1において対象の圧力室31の内容積を減少させる圧縮時には、対象の駆動圧電素子21を伸長する。なお、非駆動圧電素子22は変形させない。
【0104】
上述した実施形態に係るインクジェットヘッド1及びインクジェット記録装置100によれば、アクチュエータ20の片側の側面部が傾斜面を有する台形状としたことにより、露光などの光照射によるパターン加工処理の加工性を向上できる。また、アクチュエータ20の側面部203から実装面101までを連続させることで、電極の導出が容易となり、実装性をより向上できる。たとえばフォトリソグラフィー処理などの露光処理によるパターニング加工において光を一方向から照射した場合、アクチュエータの側面部の電極配線と実装面101の配線部が直交している構造の場合、側面部に配線パターンを形成することができないが、側面部との角度を90°より大きく、180°より小さくしたことにより、実装面101と側面部203を同時にパターニングできる。
【0105】
また、実装面101においてACF75を用いて部品を実装することにより、はんだ接合による不良を回避できる。すなわち、はんだ接合を用いる場合、圧電部材と電極の密着強度や、はんだ接合の密着強度が低いために、フレキシブルケーブルに応力が掛かった際に、はんだ接合部が破損しやすかったが、ACF実装とすることで、密着強度を確保し、破損を防止できる。
【0106】
また、フレキシブルケーブルを挟んで圧電体を加熱するはんだ実装と比べ、加圧及び加熱による負荷を低減できる。また、はんだ実装の場合に加圧が不十分となると接合不良によるオープン等が発生する可能性があるが、ACF実装とすることで接合性を向上できる。さらに、例えば圧電部材の表面にはんだ接合する場合にははんだにより接合面が拘束され、圧電部材が変形しにくい場合があるが、ACF実装とすることで、はんだの拘束を回避し変形特性を向上できる。また、圧電部材の表面にはんだ接合する場合には圧電部材の変形によって実装部が破損する場合があるが、ACF実装とすることにより、破損しにくい構成とすることができる。
【0107】
なお、たとえばシェアモード構造の場合、圧電部材の両側(1面とその反対側の面)に電極配線のパターニングを行う必要があるため両側に傾きを設ける必要があるが、本実施形態にかかるアクチュエータ20は、片側が共通電極であってパターニングを行う必要がないため、共通電極には傾きを設ける必要がない。すなわちアクチュエータ20の片側の面のみ傾きを設ければよいため、インクジェットヘッド1の幅を小さくすることができ、小型化が可能となる。
【0108】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0109】
上記実施形態の圧電素子21、22の具体的な材料や構成は上記に限られるものではなく、適宜変更されるものである。
【0110】
たとえば、配線パターンの形成には、他にレーザーパターニングを用いることもできる。この場合にもレーザー光を、表面及び傾斜面に同時に照射できるため、上記実施形態と同様の効果が得られる。
【0111】
配線の具体的な形状は上記に限られるものではない。たとえば、基板10の実装面101の配線パターンと、傾斜面となる側面部203の配線パターンの、延出方向が揃う例を示したがこれに限られるものではない。たとえば、傾斜面から基板に反射する反射光に対応した反転パターンとなっていてもよい。あるいは延出方向が異なっていてもよい。
【0112】
たとえば、圧電部材202に近い部分の配線パターンの方向が揃っていない場合、傾斜面の角度を調整することにより、露光時の側面部203と実装面101との間における反射光による影響を無くすことができる。この場合、傾斜面となる側面部203と実装面101とが交差する角度は、135°より大きくすることが望ましい。すなわち、他の実施形態として図5に示すように、傾斜角度θを135°より大きい角度とすることで、配線パターンの各配線の延出方向の制約が少なく、配線の自由度が高い構成とすることができる。
【0113】
なお、個別配線102のパターン加工は、斜面の外部電極223のパターニングと同時に形成されてもよく、別工程にて形成されていてもよい。
【0114】
また、上記実施形態においては、複数層の圧電体層211を積層し、積層方向の縦振動(d33)を用いて駆動圧電素子21を駆動する構成としたが、これに限られるものではない。例えば駆動圧電素子21が単層の圧電部材で構成される形態にも適用可能であるし、d31方向に変位する横振動により駆動する形態にも適用可能である。
【0115】
ノズル51や圧力室31の配列も上記実施形態に限られるものではない。たとえばノズル51を2列以上配列してもよい。また複数の圧力室31の間に、ダミー室となる空気室を形成してもよい。循環式に限らず非循環タイプのインクジェットヘッドであってもよい。
【0116】
この他、流路部40、ノズルプレート50、フレーム部60を含む各種部品の構成や位置関係は上述した例に限られるものではなく、適宜変更可能である。
【0117】
また、上記実施形態においては基板10上にアクチュエータ20が2つ並列配置された例を示したが、これに限られるものではなく、アクチュエータ20が単数であってもよく、3個以上であってもよい。
【0118】
また、吐出する液体は印字用のインクに限られるものではなく、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
【0119】
また、上記実施形態において、インクジェットヘッド1は、インクジェット記録装置等の液体吐出装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではなく、例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
【0120】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、実装性を向上できる液体吐出ヘッド及び液体吐出装置を提供できる。
【0121】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0122】
1…インクジェットヘッド、10…基板、20…アクチュエータ、202…圧電部材、21…駆動圧電素子、22…非駆動圧電素子、23…溝、30…振動板、31…圧力室、32…共通室、33…連通部、40…流路部、42…隔壁部、50…ノズルプレート、51…ノズル、60…フレーム部、70…駆動回路、71…FPC、72…駆動IC、73…プリント配線基板、731…ヘッド制御回路、100…インクジェット記録装置、111…筐体、112…媒体供給部、113…画像形成部、114…媒体排出部、115…搬送装置、117…支持部、118…搬送ベルト、119…支持プレート、120…ベルトローラ、121…ガイドプレート対、122…搬送用ローラ、130…ヘッドユニット、132…インクタンク、133…接続流路、134…供給ポンプ、116…制御部、1161…制御回路、211…圧電体層、221…内部電極、222…内部電極、223…外部電極、224…外部電極、301…振動領域、302…支持領域、405、406…流路基板。

図1
図2
図3
図4
図5
図6