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特開2025-13439感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いた印刷版の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013439
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いた印刷版の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/14 20060101AFI20250117BHJP
   G03F 7/00 20060101ALI20250117BHJP
   G03F 7/26 20060101ALI20250117BHJP
   G03F 7/095 20060101ALI20250117BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20250117BHJP
   B41C 1/055 20060101ALI20250117BHJP
   B41M 1/08 20060101ALI20250117BHJP
   B41M 1/28 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B41N1/14
G03F7/00 502
G03F7/26 511
G03F7/095
G03F7/027
B41C1/055 501
B41M1/08
B41M1/28
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024192581
(22)【出願日】2024-11-01
(62)【分割の表示】P 2021543349の分割
【原出願日】2021-07-26
(31)【優先権主張番号】P 2020153534
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】井戸 健二
(72)【発明者】
【氏名】油 努
(72)【発明者】
【氏名】舘 教仁
(57)【要約】
【課題】本発明は、感光性樹脂層の剥離を抑制することができる感光性樹脂印刷版原版を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が、少なくともエチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有し、前記感光性樹脂層が、印刷面を含む第一感光性樹脂層および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層を少なくとも有し、第一感光性樹脂層における(A)成分のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二感光性樹脂層における(A)成分のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大きい、感光性樹脂印刷版原版。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、
該感光性樹脂層が、少なくとも
エチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有し、
前記感光性樹脂層が、印刷面を含む第一感光性樹脂層および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層を少なくとも有し、
第一感光性樹脂層における(A)成分((A-1))のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二感光性樹脂層における(A)成分((A-2))のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大きい、感光性樹脂印刷版原版。
【請求項2】
前記F1が、1,000(g/eq)以上19,000(g/eq)以下である、請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項3】
前記F2に対するF1の比(F1/F2)が、1.0より大きく5.0以下である、請求項1または2に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項4】
前記(A-1)の重量平均分子量M1が、前記(A-2)の重量平均分子量M2以上である、請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項5】
前記M1が、20,000以上200,000以下である、請求項4に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項6】
前記M2に対するM1の比(M1/M2)が、1.0以上6.5以下である、請求項4または5に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項7】
第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層とが隣接する、請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項8】
第一感光性樹脂層の厚さが、5μm以上100μm以下である、請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項9】
第二感光性樹脂層の厚さが、100μm以上2.0mm以下である、請求項1~8のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項10】
前記(A)成分として、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールおよび/または3級窒素原子含有ポリアミドを含有する、請求項1~9のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版を用いた印刷版の製造方法であって、
少なくとも前記感光性樹脂印刷版原版の感光性樹脂層に紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させる露光工程、および、
少なくとも水および/または有機溶剤を使用して感光性樹脂層の未硬化部を除去する現像工程を有する、印刷版の製造方法。
【請求項12】
前記現像工程において、ブラシ式洗い出し機により未硬化部を溶出させる、請求項11に記載の印刷版の製造方法。
【請求項13】
前記印刷版が、ドライオフセット印刷用である、請求項11または12に記載の印刷版の製造方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により得られる印刷版を用いて2ピース金属缶に印刷する、ドライオフセット印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂印刷版原版およびそれを用いた印刷版の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性樹脂印刷版原版にレリーフを形成する方法として、画像マスクや原画フィルムを介して感光性樹脂層に紫外線を照射して画像部を選択的に硬化させ、硬化させなかった部分を、現像液を用いて除去する方法が、一般的に用いられている。
【0003】
レリーフを形成した感光性樹脂印刷版の耐刷性を向上させる技術として、少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、該感光性樹脂層が部分ケン化ポリビニルアルコール化合物、塩基性窒素を有するポリアミド、エチレン性二重結合を有する化合物、および光重合開始剤を含有し、該感光性樹脂層が少なくとも下層および印刷面層を含み、前記支持体、前記下層および前記印刷面層をこの順に有し、かつ、前記部分ケン化ポリビニルアルコール化合物として、平均重合度が1200~2600であるものを印刷面層に、平均重合度が400~800であるものを下層に含有する感光性樹脂印刷版原版(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/038970号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討により、特許文献1に記載された感光性樹脂印刷版原版により耐刷性が向上するものの、レリーフを形成する製版工程において、感光性樹脂層中に部分的または全面的に層間剥離が発生しやすくなる課題があることが分かった。これは、印刷面層中の部分ケン化ポリビニルアルコール化合物の架橋密度が高いために、露光により、印刷面層の部分ケン化ポリビニルアルコール化合物同士の光硬化が優先的に進行し、下層中の部分ケン化ポリビニルアルコール化合物の光硬化が進行しにくくなるためと考えられる。この場合、現像により、印刷面層と下層との間に現像液が浸透すると、印刷面層が膜状に剥がれやすくなり、層間剥離が発生する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みて見出されたものであり、感光性樹脂層の剥離を抑制することができる感光性樹脂印刷版原版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は主として下記の構成を有する。
少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、
該感光性樹脂層が、少なくとも
エチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有し、
前記感光性樹脂層が、印刷面を含む第一感光性樹脂層および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層を少なくとも有し、
第一感光性樹脂層における(A)成分(A-1)のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二感光性樹脂層における(A)成分(A-2)のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大きい、感光性樹脂印刷版原版。
【発明の効果】
【0008】
本発明の感光性樹脂印刷版原版によれば、感光性樹脂層の剥離を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の感光性樹脂印刷版原版(以下、「印刷版原版」と記載する場合がある)は、少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する。ここで、感光性樹脂層とは、後述するエチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有する層を指す。感光性樹脂層を有することにより、例えば紫外線を画像様に照射することにより、支持体上に所望のレリーフを形成することができる。感光性樹脂層を2層以上有してもよい。支持体は、感光性樹脂層やレリーフを保持する作用を有する。
【0010】
本発明の印刷版原版において、感光性樹脂層は、少なくともエチレン性二重結合を有するポリマー(A)(以下、「(A)成分」と記載する場合がある)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)(以下、「(B)成分」と記載する場合がある)および光重合開始剤(C)(以下、「(C)成分」と記載する場合がある)を含有する。感光性樹脂層に光を照射すると、感光性樹脂層中の(C)成分からフリーラジカルが発生する。発生したフリーラジカルは、(B)成分および/または(A)成分との間でラジカル重合し、架橋構造により所望の印刷画像を得るためのレリーフを形成することができる。また、(A)成分は、感光性樹脂層やレリーフのマトリックスとして、これらに構造的な強度を付与する作用を有する。さらに、(A)成分がエチレン性二重結合を有することにより、(C)成分とのラジカル重合によって、より光硬化を進め、画像再現性を向上させることができる。
【0011】
本発明において、(A)成分とは、エチレン性二重結合を有する、重量平均分子量が10,000以上であるものを指す。ここで、(A)成分の重量平均分子量は、GPC測定により求めることができる。本発明においては、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度40℃、流速0.7mL/分の条件で、重量平均分子量を測定する。
【0012】
(A)成分は、現像液に用いられる溶媒に溶解または分散できることが好ましい。このようなポリマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリブタジエンラテックス、スチレン-ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエン共重合体ラテックス、ポリウレタン、セルロース誘導体、ポリエステル、ポリアクリル酸誘導体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミドなどが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。これらの中でも、環境負荷軽減や人体に対する影響低減に寄与できることから、水に分散または溶解可能なポリマーが好ましい。水に分散または溶解可能なポリマーとしては、親水性基を有するポリマーや、ポリマー主鎖自体が水膨潤性または水溶解性を有するポリマーが好ましい。親水性基としては、例えば、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、リン酸基、スルホン酸基やそれらの塩等が挙げられる。親水性基を有するポリマーとしては、例えば、カルボキシル化スチレンブタジエンラテックス、カルボキシル基を有する脂肪族共役ジエンの重合体、リン酸基および/またはカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物の乳化重合体、スルホン酸基含有ポリウレタンなどが挙げられる。また、ポリマー主鎖自体が水膨潤性または水溶解性を有するポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、ビニルアルコール-アクリル酸ナトリウム共重合体、ビニルアルコール-メタクリル酸ナトリウム共重合体、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル含有ポリアミド、3級窒素原子含有ポリアミド、ポリエーテル、セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、でんぷん、でんぷん-ポリアクリル酸ナトリウムグラフト化物、でんぷん-ポリアクリロニトリルグラフト化物のケン化物、セルロースポリアクリル酸グラフト化物、部分架橋ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール誘導体等が挙げられる。これらの中でも、工業的に安価に入手できるという点や、水に対する高い溶解性により画像再現性をより向上させることができる点からは、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、物理的な強度が高く、耐刷性をより向上させることができる点や、強度と溶媒に対する溶解性とのバランスの点からは、3級窒素原子含有ポリアミドが好ましく用いられる。部分ケン化ポリビニルアルコールがより好ましい。
【0013】
(A)成分は、画像再現性をより向上させる観点から、側鎖にエチレン性二重結合を有することが好ましい。エチレン性二重結合を有する基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。これらを2種以上有してもよい。
【0014】
前述のポリマーにエチレン性二重結合を導入する方法としては、例えば、部分ケン化ポリビニルアルコールの場合、(1)部分ケン化ポリビニルアルコールと酸無水物とを反応させ、部分ケン化ポリビニルアルコールの水酸基を起点としてカルボキシル基などの反応性基をポリマー側鎖に導入し、その反応性基に不飽和エポキシ化合物を反応させる方法、(2)酢酸ビニルと、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸塩および/または不飽和カルボン酸エステルとの共重合体を部分ケン化し、このポリマーのもつカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物を反応させる方法などが挙げられる。また、ポリアミドの場合、ポリアミド骨格中にピペラジン環などの3級窒素原子を含む構造を導入し、グリシジルメタクリレートおよび/またはグリシジルアクリレートを用いた窒素の4級化によってエチレン性二重結合を付加させる方法などが挙げられる。
【0015】
本発明においては、感光性樹脂層の支持体に対して反対側の面(以下、「印刷面」と記載する場合がある)における(A)成分のエチレン性二重結合当量が、感光性樹脂層内部における(A)成分のエチレン性二重結合当量よりも大きいことが必要である。前述のとおり、感光性樹脂層中、印刷面の(A)成分の架橋密度が高い場合、露光により、印刷面の光硬化が優先的に進行し、感光性樹脂層内部の光硬化が進行しにくくなる。この場合、現像により、感光性樹脂層の内部と印刷面との間に現像液が浸透し、印刷面が剥がれやすくなる。本発明においては、感光性樹脂層内部に対して印刷面の架橋密度を小さくすること、すなわち、印刷面の(A)成分のエチレン性二重結合当量を感光性樹脂層内部の(A)成分のエチレン性二重結合当量よりも大きくすることにより、(A)成分の光硬化を印刷面から内部まで均一に進行させることができる。これは、印刷面側から照射された光が、感光性樹脂層を透過する際に減衰すること、印刷面より内部においてラジカル発生しにくくなることに対して、内部の架橋密度を大きくすることより、感光性樹脂層内部を十分に光硬化させることができるためである。これにより、感光性樹脂層の剥離を抑制することができる。
【0016】
本発明において、感光性樹脂層は、印刷面を含む第一感光性樹脂層(以下、「第一層」と記載する場合がある)および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層(以下、「第二層」と記載する場合がある)を少なくとも有する。前述の観点から、第一層における(A)成分(A-1)のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二層における(A)成分(A-2)のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大きいことが必要である。これにより、感光性樹脂層の剥離を抑制することができる。
【0017】
ここで、(A)成分のエチレン性二重結合当量とは、(A)成分のポリマー中のエチレン性二重結合1モルあたりのポリマーモル重量で表される。また、本発明において、前記印刷面とは、感光性樹脂層のうち、支持体に対して反対側の表面から、支持体側に向かって深さ5μmまでの部分を指す。また、感光性樹脂層内部とは、感光性樹脂層と支持体との境界面から印刷面側に向かって深さ50μmの位置から深さ100μmの位置までの部分を指す。(A)成分の構造が既知である場合、理論上の1モル当たりの重量を、ポリマー1分子に含まれるエチレン性二重結合の個数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。また、H-NMRによりポリマー中のエチレン性二重結合のモル数を分析し、分析に使用した試料重量を、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出することができる。
【0018】
F1は、1,000g/eq以上19,000g/eq以下が好ましい。F1を1,000g/eq以上とすることにより、印刷版のレリーフ表面の硬度を適度に抑え、印刷再現性を向上させることができる。一方、F1を19,000g/eq以下とすることにより、印刷面の光硬化を十分に進め、画像再現性および耐刷性をより向上させることができる。
【0019】
F2は、F1がF2よりも大きくなる範囲で、任意に選択することができる。
【0020】
F2に対するF1の比(F1/F2)は、1.0より大きく、5.0以下であることが好ましい。F1/F2を5.0以下とすることにより、感光性樹脂層における印刷面の架橋密度を適度に高め、画像再現性をより向上させることができる。
【0021】
本発明においては、A-1の重量平均分子量M1が、A-2の重量平均分子量M2以上であることが好ましい。後述する現像工程において、感光性樹脂層の未硬化部を除去する。この工程において、(A)成分の重量平均分子量が小さいほど、除去されやすい傾向にある。特に、感光性樹脂層内部の(A)成分の重量平均分子量が小さいほうが、支持体に近い領域まで短時間で未露光部が除去されやすく、現像時間を短くすることができる。一方、現像液に接する印刷面においては、現像液に対する耐性を向上させる観点から、重量平均分子量が大きいことが好ましい。このため、本発明においては、M2に対するM1の比(M1/M2)は、1.0以上6.5以下が好ましい。M1/M2を1.0以上とすることにより、耐刷性をより向上させることができる。一方、M1/M2を6.5以下とすることにより、第一層と第二層との現像性の差を小さくして、現像時間を適度に短く保ち、感光性樹脂層の剥離をより抑制することができる。ここで、M1およびM2は、前述のとおり、GPC測定により求めることができる。
【0022】
A-1の重量平均分子量M1は、感光性樹脂層の剥離をより抑制し、耐刷性をより向上させる観点から、20,000以上が好ましく、70,000以上がより好ましい。一方、M1は、感光性樹脂層の加工性の観点から、200,000以下が好ましい。
【0023】
M2は、好ましくはM1とM2が上記関係を満たすように、任意に選択することができる。
【0024】
本発明においては、第一層と第二層とが隣接することが好ましい。第一層と第二層が直接隣接することにより、架橋密度の高い第二層の(A)成分(A-2)が、露光により、印刷面を含む第一層内の(A)成分(A-1)と直接化学結合を形成するため、第一層をより強固に固定することができ、感光性樹脂層の剥離をより抑制することができる。
【0025】
第一層の厚さは、5μm以上が好ましく、現像工程における欠けを抑制することができる。一方、第一層の厚さは、100μm以下が好ましく、活性光線照射量が少ない場合にも第二層を十分に光硬化させやすく、第二層との密着性をより向上し、感光性樹脂層の層間剥離をより抑制することができる。
【0026】
第二層の厚さは、100μm以上が好ましく、印刷版のレリーフの高さを確保して、印刷時に支持体表面にインキが付着するいわゆる底付き現象を抑制することができる。一方、第二層の厚さは、2.0mm以下が好ましく、印刷再現性を向上させることができる。
【0027】
エチレン性二重結合を有する化合物(B)とは、エチレン性二重結合を有する、分子量が10,000未満であるものを指す。(B)成分の分子量は、2,000以下が好ましい。
【0028】
(B)成分としては、例えば、国際公開第2017/038970号に記載される(メタ)アクリレートや、グリセロールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジグリシジルエーテルの(メタ)アクリル酸付加物、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタクリレートの総称であり、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸とメタクリル酸の総称である。
【0029】
感光性樹脂層中における(B)成分含有量は、(A)成分100質量部に対して、5~200質量部が好ましい。
【0030】
光重合開始剤(C)としては、光吸収によって、自己分解や水素引き抜きによってラジカルを生成する機能を有するものが好ましく用いられる。例えば、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン類、アントラキノン類、ベンジル類、アセトフェノン類、ジアセチル類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
【0031】
感光性樹脂層中における(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して0.1~20質量部が好ましい。
【0032】
感光性樹脂層には、前記(A)~(C)成分とともに、必要に応じて、相溶助剤、重合禁止剤、染料、顔料、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、香料などを含有してもよい。
【0033】
感光性樹脂層に相溶助剤を含有することにより、感光性樹脂層を構成する成分の相溶性を高め、低分子量成分のブリードアウトを抑制し、感光性樹脂層の柔軟性を向上させることができる。相溶助剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールやこれらの誘導体などの多価アルコール類が挙げられる。感光性樹脂層中における相溶助剤の含有量は、30質量%以下が好ましい。
【0034】
感光性樹脂層に重合禁止剤を含有することにより、熱安定性を向上させることができる。重合禁止剤としては、例えば、フェノール類、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒドロキシアミン誘導体などが挙げられる。これらを1種以上含有してもよい。感光性樹脂層中における重合禁止剤の含有量は、0.001~5質量%が好ましい。
【0035】
支持体としては、例えば、ポリエステルなどからなるプラスチックシート、スチレン-ブタジエンゴムなどからなる合成ゴムシート、スチール、ステンレス、アルミニウムなどからなる金属板などが挙げられる。
【0036】
支持体の厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、100~350μmの範囲が好ましい。
【0037】
支持体は、易接着処理されていることが好ましく、感光性樹脂層との接着性を向上させることができる。易接着処理方法としては、例えば、サンドブラストなどの機械的処理、コロナ放電などの物理的処理、コーティングなどによる化学的処理などが挙げられる。これらの中でも、接着性の観点から、コーティングにより易接着層を設けることが好ましい。
【0038】
本発明の印刷版原版は、前述の支持体と感光性樹脂層に加え、必要に応じて、感光性樹脂層上にカバーフィルムや感熱マスク層を有してもよい。
【0039】
感光性樹脂層上にカバーフィルムを有することにより、感光性樹脂層表面を保護し、異物等の付着を抑制することができる。感光性樹脂層とカバーフィルムは直接接していてもよいし、感光性樹脂層とカバーフィルムの間に粘着防止層などを1層以上有してもよい。
【0040】
カバーフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどからなるプラスチックシートが挙げられる。カバーフィルムの厚さは、取扱性および柔軟性の観点から、10~150μmが好ましい。また、カバーフィルム表面は粗面化されていてもよく、原画フィルムとの密着性を向上させることができる。粗面化の方法としては、例えば、サンドブラスト、ケミカルエッチング、マット化粒子含有塗工剤のコーティングなどが挙げられる。
【0041】
また、本発明の印刷版原版が、デジタルデバイスで制御された画像データに基づいてレーザー照射を行い、マスク層要素から画像マスクをその場で形成し、露光・現像するいわゆるCTP製版方式に用いられる場合、印刷版原版は、さらに感熱マスク層を有していてもよい。感熱マスク層は、紫外光を事実上遮断し、描画時には赤外レーザー光を吸収し、その熱により瞬間的に一部または全部が昇華するまたは融除されるものが好ましい。これによりレーザーの照射部分と未照射部分の光学濃度に差が生じ、従来の原画フィルムと同様の機能を果たすことができる。印刷版原版が感熱マスク層を有する場合、感光性樹脂層と感熱マスク層との間に接着力調整層を有してもよく、感熱マスク層とカバーフィルムの間に剥離補助層を有してもよい。
【0042】
感熱マスク層、接着力調整層、剥離補助層としては、例えば、国際公開第2017/038970号に記載されたものが挙げられる。
【0043】
次に、感光性樹脂組成物および印刷版原版の製造方法について、支持体上に、第一層、第二層およびカバーフィルムを有する場合を例に説明する。
【0044】
例えば、二重結合当量F1を有する(A)成分、(B)成分、(C)成分および必要に応じてその他添加剤を溶媒に加熱溶解し、第一層用の感光性樹脂組成物溶液を得る。また、二重結合当量F2を有する(A)成分を用いること以外は第一層用と同様にして第二層用の感光性樹脂組成物溶液を得る。溶媒としては、水/アルコール混合溶媒などが挙げられる。
【0045】
必要により易接着層を有する支持体上に、第二層用の感光性樹脂組成物溶液を流延し、乾燥して第二層を形成する。次に、第二層上に、第一層用の感光性樹脂組成物溶液を流延し、乾燥して第一層を形成する。さらに、必要により粘着防止層を塗布したカバーフィルムを第一層上に密着させることにより、印刷版原版を得ることができる。
【0046】
次に、本発明の印刷版原版を用いた印刷版の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、少なくとも印刷版原版の感光性樹脂層に紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させる露光工程、および、少なくとも水および/または有機溶剤を使用して感光性樹脂層の未硬化部を除去する現像工程を有する。
【0047】
露光工程においては、カバーフィルムを有する場合にはこれを剥離した感光性樹脂層上に、ネガティブまたはポジティブの原画フィルムを密着させ、波長300~400nmの紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させる。紫外線照射には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノン灯、カーボンアーク灯、ケミカル灯、UV-LEDランプなどを用いることが好ましい。
【0048】
現像工程においては、未硬化部をスプレー式現像装置やブラシ式洗い出し機により溶出させることが好ましい。これらの中でも、未硬化部の感光性樹脂層を効率的に除去できる観点から、ブラシ式洗出し機による現像が好ましい。
【0049】
さらに、必要に応じて、現像後に紫外線を照射する後露光工程を設けてもよい。後露光工程により、未反応の(B)成分の反応によって、レリーフをより強固にすることができる。
【0050】
本発明の感光性樹脂印刷版原版を用いて製造された印刷版は、ラベル印刷用輪転印刷機や間欠式輪転印刷機などを用いた凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途、フレキソ印刷用途などに用いることできる。これらの中でも、凸版印刷用途、ドライオフセット印刷用途に、好適に用いることができる。特に、ドライオフセット印刷においては、印刷版と弾性の高いブランケットとの間でインキを授受するため、印刷版表面の微細な欠点が被印刷体に転写されやすい傾向がある。本発明の印刷版は、感光性樹脂層の剥離を抑制することができることから、ドライオフセット印刷用途において、感光性樹脂層の剥離に起因する印刷欠点を抑制することができるため、より好適に用いることができる。
【0051】
ドライオフセット印刷により印刷される対象としては、飲料容器として広く使われている2ピース缶などの金属缶が好ましい。2ピース金属缶印刷においては、一般的に、硬質の金属に、数百万缶を連続して印刷することから、高い耐刷性が求められている。本発明により、感光性樹脂層の層間剥離に起因する印刷欠点を抑制することができる。
【実施例0052】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
【0053】
(1)(A)成分のエチレン性二重結合当量
各実施例および比較例において作製した(A)成分の溶液から、バーコート塗布により、厚さ300μmの乾燥塗膜を形成した。内標として3-(トリメチルシリル)プロピオン酸ナトリウム-2,2,3,3dを添加した重水/重メタノール混合溶媒に、乾燥塗膜100mgを溶解し、H-NMR測定を行い、エチレン性二重結合のモル数を測定した。分析に使用した試料中の(A)成分を、検出されたエチレン性二重結合のモル数で除することにより、エチレン性二重結合当量を算出した。
【0054】
(2)(A)成分の重量平均分子量
上記(1)に記載の方法により得られた乾燥塗膜について、Wyatt Technology製ゲル浸透クロマトグラフ-多角度光散乱光度計を用いて、カラム温度40℃、流速0.7mL/分の条件でGPC測定を行い、重量平均分子量を測定した。
【0055】
(3)感光性樹脂層剥離
各実施例および比較例により得られた印刷版原版から、カバーフィルムを剥離した。このとき、ポリエステルフィルムのみが剥離され、乾燥膜厚1μmの部分ケン化ポリビニルアルコール膜は、感光性樹脂層上に残存した。
【0056】
部分ケン化ポリビニルアルコール膜を有する感光性樹脂層上に、300μm幅の抜き細線画像を含むネガフィルムおよび感度測定用グレースケールネガフィルムを真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL-360 20ワット(三菱電機オスラム(株)製)を用いて、グレースケール感度16±1段となる条件で露光した。その後、現像装置としてブラシ式洗い出し機を用いて、35℃から40℃の水により現像し、60℃で10分間乾燥し、印刷版を得た。得られた印刷版のレリーフ表面を、25倍のルーペを用いて観察し、感光性樹脂層の剥離の有無を評価した。ここで、感光性樹脂層の剥離には、第一層と第二層との層間の剥離を含む。剥離が認められない場合を無、剥離が認められる場合を有として表1~3に示した。
【0057】
(4)画像再現性
各実施例および比較例により得られた印刷版原版から、カバーフィルムを剥離した。このとき、ポリエステルフィルムのみが剥離され、乾燥膜厚1μmの部分ケン化ポリビニルアルコール膜は、感光性樹脂層上に残存した。
【0058】
部分ケン化ポリビニルアルコール膜を有する感光性樹脂層上に、150線3%の網点画像を含む画像再現性評価用ネガフィルムおよび感度測定用グレースケールネガフィルムを真空密着させ、ケミカル灯FL20SBL-360 20ワットを用いて、グレースケール感度16±1段となる条件で露光した(主露光)。その後、現像装置としてブラシ式洗い出し機を用いて、25℃の水により現像し、60℃で10分間乾燥した。さらに、ケミカル灯FL20SBL-360 20ワットを用いて、主露光と同条件で後露光を行い、画像再現性評価用印刷版を得た。
【0059】
倍率20倍の拡大鏡を用いて、1cm×1cmの領域に形成された150線3%の網点を観察し、網点の再現性を下記基準により評価した。4点以上であれば合格とした。
5:欠けが認められない
4:最外周部エリアの網点に欠けが認められる
3:最外周部および最外周から2列目のエリアに欠けが認められる
2:最外周から3列目を含む内部のエリアに欠けが認められる
1:全網点エリアの20%以上の面積に欠けが認められる。
【0060】
(5)耐刷性
150線3%の網点画像を含む画像再現性評価用ネガフィルムのかわりに直径12mmの抜き円形画像を含むネガフィルムを用いたこと以外は上記(4)に記載の方法により、直径12mmの円形ベタ部を有する印刷版を得た。
【0061】
得られた印刷版の版面に水蒸気を当て、クラックが発生しやすい状態にした後、間欠式輪転印刷機LR3(岩崎鉄工(株)製)を用いて、印圧調整ハンドルの目盛:5.05、印刷スピード:100ショット/分の条件で、厚さ90μmの両面コート紙(マルウ接着(株)製)に、“BEST CURE”(登録商標) UV161藍S((株)T&K TOKA製)を印刷した。3000刷、5000刷、8000刷、10000刷後の印刷版のレリーフ表面を、25倍のルーペを用いて観察し、クラックの有無を評価した。各刷数において、クラックが認められない場合をA、認められる場合をBとして表1~3に示した。
【0062】
次に、各実施例および比較例に用いた材料の作製方法について説明する。
【0063】
<易接着層を有する支持体の作製>
“バイロン”(登録商標)31SS(不飽和ポリエステル樹脂のトルエン溶液、東洋紡(株)製)260質量部およびPS-8A(ベンゾインエチルエーテル、和光純薬工業(株)製)2質量部の混合物を70℃で2時間加熱した後、30℃に冷却し、エチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート7質量部を加えて2時間混合した。さらに、“コロネート”(登録商標)3015E(多価イソシアネート樹脂の酢酸エチル溶液、東ソー(株)製)25質量部およびEC-1368(工業用接着剤、住友スリーエム(株)製)14質量部を添加して混合し、易接着層用塗工液1を得た。
【0064】
次に、“ゴーセノール”(登録商標)KH-17(ケン化度78.5~81.5モル%のポリビニルアルコール、三菱ケミカル(株)製)50質量部を、“ソルミックス”(登録商標)H-11(アルコール混合物、日本アルコール(株)製)200質量部および水200質量部の混合溶媒中、70℃で2時間混合した後、“ブレンマー”(登録商標)G(グリシジルメタクリレート、日本油脂(株)製)1.5質量部を添加して1時間混合した。ここに、さらに(ジメチルアミノエチルメタクリレート)/(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)重量比2/1の共重合体(共栄社化学(株)製)3質量部、“イルガキュア”(登録商標)651(ベンジルメチルケタール、チバ・ガイギー(株)製)5質量部、エポキシエステル70PA(プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物、共栄社化学(株)製)21質量部およびエチレングリコールジグリシジルエーテルジメタクリレート20質量部を添加して90分間混合し、50℃に冷却した後、“メガファック”(登録商標)F-556(DIC(株)製)を0.1質量部添加して30分間混合して易接着層用塗工液2を得た。
【0065】
厚さ250μmの“ルミラー”(登録商標)T60(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)上に、前記易接着層用塗工液1を、バーコーターを用いて、乾燥後膜厚が40μmになるように塗布し、180℃のオーブンを用いて3分間加熱して溶媒を除去した。その上に、前記易接着層用塗工液2を、バーコーターを用いて、乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、160℃のオーブンを用いて3分間加熱して、易接着層を有する支持体を得た。
【0066】
<アナログ版用のカバーフィルムの作製>
表面粗さRaが0.1~0.6μmとなるように粗面化された厚さ100μmの“ルミラー”(登録商標)S10(ポリエステルフィルム、東レ(株)製)に、“ゴーセノール”(登録商標)AL-06(ケン化度91~94モル%の部分ケン化ポリビニルアルコール、三菱ケミカル(株)製)を、乾燥膜厚が1μmとなるように塗布し、100℃で25秒間乾燥し、アナログ版用のカバーフィルムを得た。
【0067】
[実施例1]
三菱ケミカル(株)製の部分ケン化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KH-17(平均重合度2,200、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、“ゴーセノール”KH-17 100質量部に対して、無水コハク酸を3.8質量部添加し、60℃で6時間撹拌して部分ケン化ポリビニルアルコールの分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去した後、乾燥した。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここに、グリシジルメタクリレートを6質量部添加して、部分ケン化ポリビニルアルコール中にエチレン性二重結合を導入し、(A-1)成分であるa-1の溶液を調製した。前述の方法により測定したa-1のエチレン性二重結合当量F1は6,234g/eq、重量平均分子量M1は1.7×10であった。
【0068】
次いで、得られた(A-1)成分と、エタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒を、撹拌用ヘラおよび冷却管を取り付けた3つ口フラスコ中に表1に記載の量添加し、90℃で2時間加熱して溶解させた。得られた混合物を70℃に冷却した後、表1に記載のその他の成分を添加して30分間撹拌し、第一層用溶液を得た。
【0069】
次に、三菱ケミカル(株)製の部分ケン化ポリビニルアルコール“ゴーセノール”KL-05(平均重合度500、ケン化度80モル%)をアセトン中で膨潤させ、“ゴーセノール”KL-05 100質量部に対して、無水コハク酸を4.2質量部添加し、60℃で6時間撹拌して部分ケン化ポリビニルアルコールの分子鎖にカルボキシル基を付加させた。このポリマーをアセトンで洗浄して未反応の無水コハク酸を除去した後、乾燥した。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここに、グリシジルメタクリレートを6質量部添加して、部分ケン化ポリビニルアルコール中にエチレン性二重結合を導入し、(A-2)成分であるa-2の溶液を調製した。得られたa-2のエチレン性二重結合当量F2は5,611g/eq、重量平均分子量M2は0.4×10であった。
【0070】
(A-1)にかえて(A-2)を用いたこと以外は第一層用溶液の作製と同様にして、第二層用溶液を得た。
【0071】
上記のようにして得られた第二層用溶液を、前記易接着層を有する支持体の易接着層側に流延し、60℃で2.5時間乾燥して第二層を形成した。このとき、乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.90mmとなるよう調節した。その後、前記第一層用溶液を第二層の上に流延し、60℃で1時間乾燥して印刷面を含む第一層を形成した。このとき、乾燥後の版厚(ポリエステルフィルム+感光性樹脂層)が0.95mmとなるよう調節した。
【0072】
このようにして得られた感光性樹脂層上に、水/エタノール=50/50(質量比)の混合溶媒を塗布し、表面に前記アナログ版用のカバーフィルムを圧着し、印刷版原版を得た。得られた印刷版原版を用いて、前記方法により印刷版の特性を評価した結果を表1に示す。
【0073】
[実施例2]
第二層用溶液中の(A-2)成分として、“ゴーセノール”KH-17を用い、無水コハク酸の添加量を10.9質量部として得られたa-3(F2:2,158g/eq、M2:1.7×10)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0074】
[実施例3]
第一層用溶液中の(A-1)成分として、前述のa-2を用いたこと以外は実施例2と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0075】
[実施例4]
第一層用溶液中の(A-1)成分として、無水コハク酸の添加量を0.8質量部として得られたa-4(F1:22,444g/eq、M1:1.7×10)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0076】
[実施例5]
第一層用溶液中の(A-1)成分として、無水コハク酸の添加量を1.3質量部として得られたa-5(F1:18,703g/eq、M1:1.7×10)を用いたこと以外は実施例2と同様の方法で感光性樹脂印刷版原版を得た。
【0077】
[実施例6]
ε-カプロラクタム10質量部、N-(2-アミノエチル)ピペラジンとアジピン酸のナイロン塩90質量部および水100質量部をステンレス製オートクレーブに入れ、内部の空気を窒素ガスで置換した後に、180℃で1時間加熱し、ついで水分を除去して3級窒素原子を有するポリアミド樹脂を得た。このポリマー100質量部をエタノール/水=30/70(質量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここに、グリシジルメタクリレートを2質量部添加して、3級窒素原子を有するポリアミド樹脂中にエチレン性二重結合を導入し、(A-1)成分であるa-6の溶液を調製した。前述の方法により測定したa-6のエチレン性二重結合当量F1は3,289g/eq、重量平均分子量M1は1.2×10であった。
【0078】
また、前記3級窒素原子を有するポリアミド樹脂100質量部をエタノール/水=30/70(重量比)の混合溶媒200質量部に80℃で溶解した。ここに、グリシジルメタクリレートを3質量部添加して、3級窒素原子を含むポリアミド樹脂中にエチレン性二重結合を導入し、(A-2)成分であるa-7の溶液を調製した。得られたa-7のエチレン性二重結合当量F2は1,315g/eq、重量平均分子量M2は1.2×10であった。
【0079】
このようにして得られた(A-1)と(A-2)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0080】
[比較例1]
第一層用溶液中の(A-1)成分として、無水コハク酸の添加量を4.2質量部として得られたa-8(F1:5,611g/eq、M1:1.7×10)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0081】
[比較例2]
第一層用溶液中の(A-1)成分として、前述のa-3を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で印刷版原版を得た。
【0082】
[比較例3]
第二層用溶液中の(A-2)成分として、前述のa-5を用いたこと以外は実施例3と同様の方法で感光性樹脂印刷版原版を得た。
【0083】
各実施例および比較例の感光性樹脂層の組成と評価結果を表1~3に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【手続補正書】
【提出日】2024-11-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は主として下記の構成を有する。
少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、
該感光性樹脂層が、少なくとも
エチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有し、
前記感光性樹脂層が、印刷面を含む第一感光性樹脂層および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層を少なくとも有し、
第一感光性樹脂層における(A)成分(A-1)のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二感光性樹脂層における(A)成分(A-2)のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大き前記(A-1)の重量平均分子量M1が、前記(A-2)の重量平均分子量M2以上である、感光性樹脂印刷版原版。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
以下、実施例により本発明を具体的に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例3は、比較例に読み替えるものとする。なお、実施例および比較例における評価方法を以下に示す。
【手続補正3】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも支持体と感光性樹脂層を有する感光性樹脂印刷版原版であって、
該感光性樹脂層が、少なくとも
エチレン性二重結合を有するポリマー(A)、エチレン性二重結合を有する化合物(B)および光重合開始剤(C)を含有し、
前記感光性樹脂層が、印刷面を含む第一感光性樹脂層および感光性樹脂層内部を含む第二感光性樹脂層を少なくとも有し、
第一感光性樹脂層における(A)成分((A-1))のエチレン性二重結合当量F1(g/eq)が、第二感光性樹脂層における(A)成分((A-2))のエチレン性二重結合当量F2(g/eq)よりも大き前記(A-1)の重量平均分子量M1が、前記(A-2)の重量平均分子量M2以上である、感光性樹脂印刷版原版。
【請求項2】
前記F1が、1,000(g/eq)以上19,000(g/eq)以下である、請求項1に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項3】
前記F2に対するF1の比(F1/F2)が、1.0より大きく5.0以下である、請求項1または2に記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項4】
前記M1が、20,000以上200,000以下である、請求項1~3のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項5】
前記M2に対するM1の比(M1/M2)が、1.0以上6.5以下である、請求項1~4のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項6】
第一感光性樹脂層と第二感光性樹脂層とが隣接する、請求項1~5のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項7】
第一感光性樹脂層の厚さが、5μm以上100μm以下である、請求項1~6のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項8】
第二感光性樹脂層の厚さが、100μm以上2.0mm以下である、請求項1~7のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項9】
前記(A)成分として、ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールおよび/または3級窒素原子含有ポリアミドを含有する、請求項1~8のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の感光性樹脂印刷版原版を用いた印刷版の製造方法であって、
少なくとも前記感光性樹脂印刷版原版の感光性樹脂層に紫外線を照射し、感光性樹脂層の露光部を光硬化させる露光工程、および、
少なくとも水および/または有機溶剤を使用して感光性樹脂層の未硬化部を除去する現像工程を有する、印刷版の製造方法。
【請求項11】
前記現像工程において、ブラシ式洗い出し機により未硬化部を溶出させる、請求項10に記載の印刷版の製造方法。
【請求項12】
前記印刷版が、ドライオフセット印刷用である、請求項10または11に記載の印刷版の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法により得られる印刷版を用いて2ピース金属缶に印刷する、ドライオフセット印刷方法。