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特開2025-13668レーザ加工機の動作を教示する教示装置及び教示方法、並びに、干渉確認プログラムを生成する装置及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013668
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】レーザ加工機の動作を教示する教示装置及び教示方法、並びに、干渉確認プログラムを生成する装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/042 20140101AFI20250117BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20250117BHJP
   G05B 19/4069 20060101ALI20250117BHJP
   G05B 19/4093 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B23K26/042
G05B19/42 P
G05B19/4069
G05B19/4093 E
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024197674
(22)【出願日】2024-11-12
(62)【分割の表示】P 2023550914の分割
【原出願日】2021-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋平
(57)【要約】
【課題】従来、レーザ加工機が出射したレーザ光と、作業セルに存在する物体(例えば、治具)との干渉を有効に検証する技術が求められている。
【解決手段】レーザ加工機12に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する装置90は、干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付ける入力受付部84と、入力受付部84が受け付けた動作パラメータに基づいて、干渉確認動作におけるレーザ加工機12の動作速度を、レーザ加工動作よりも低い速度に定める動作速度設定部86と、干渉確認動作において、動作速度設定部86によって定められた動作速度でレーザ加工機12を動作させて、レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を加工箇所へ照射させる指令を規定した干渉確認プログラムを生成するプログラム生成部88とを備える。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体をレーザ加工するレーザ加工機の動作を教示するための教示装置であって、
前記物体をモデル化した物体モデルを取得するモデルデータ取得部と、
前記物体モデルに設定された加工箇所に仮想レーザ光を模擬的に照射する仮想レーザ加工動作において該仮想レーザ光と該物体モデルとの干渉を検出するための干渉検出条件の入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部が受け付けた前記干渉検出条件に基づいて、前記仮想レーザ加工動作で発生する前記干渉を検出する干渉検出部と、を備え、
前記干渉検出条件は、前記仮想レーザ光のビームサイズ、又は、前記干渉の検出を無効とするために前記物体モデルに対して設定する無効領域を含む、教示装置。
【請求項2】
前記物体は、レーザ加工されるワークを有し、
前記物体モデルは、前記ワークをモデル化したワークモデルを有し、
前記入力受付部は、前記干渉検出条件として、前記ワークモデル上の前記仮想レーザ光の照射位置から所定の距離の範囲内を前記無効領域として設定するために該所定の距離の入力を受け付ける、請求項1に記載の教示装置。
【請求項3】
前記入力受付部は、複数の前記加工箇所毎に前記干渉検出条件の入力を受け付ける、請求項1又は2に記載の教示装置。
【請求項4】
前記干渉検出条件を入力するための入力画像データを生成する画像生成部をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載の教示装置。
【請求項5】
前記モデルデータ取得部は、前記レーザ加工機をモデル化したレーザ加工機モデルをさらに取得し、
前記教示装置は、前記物体モデル及び前記レーザ加工機モデルと、前記加工箇所の位置データとに基づいて、前記レーザ加工機モデルを模擬的に動作させて前記仮想レーザ光を前記加工箇所へ照射する前記仮想レーザ加工動作を生成する動作生成部をさらに備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の教示装置。
【請求項6】
前記動作生成部が生成した前記仮想レーザ加工動作に基づいて、前記レーザ加工機が実行するレーザ加工動作のための加工プログラムを生成するプログラム生成部と、をさらに備える、請求項5に記載の教示装置。
【請求項7】
ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する装置であって、
前記干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部が受け付けた前記動作パラメータに基づいて、前記干渉確認動作における前記レーザ加工機の動作速度を、前記レーザ加工動作よりも低い速度に定める動作速度設定部と、
前記干渉確認動作において、前記動作速度設定部によって定められた前記動作速度で前記レーザ加工機を動作させて、前記レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を前記加工箇所へ照射させる指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成するプログラム生成部と、を備える、装置。
【請求項8】
前記動作速度は、前記レーザ加工機が、前記加工箇所に設定された加工経路に沿ってレーザ光を移動させる走査速度を有し、
前記入力受付部は、前記動作パラメータとして、前記走査速度、レーザ光を前記加工経路の始点から終点まで移動させる走査時間、及び該走査時間の許容時間のうちの少なくとも1つの入力を受け付け、
前記動作速度設定部は、前記入力受付部が受け付けた前記少なくとも1つに基づいて、前記干渉確認動作における前記走査速度を定める、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記レーザ加工動作において前記レーザ加工機がレーザ照射装置を位置決めする教示点の位置データを取得する位置データ取得部をさらに備え、
前記プログラム生成部は、前記干渉確認動作において前記レーザ照射装置を前記教示点へ位置決めする前記指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記レーザ加工機は、前記レーザ加工動作において、前記レーザ照射装置を第1の前記教示点から第2の前記教示点へ移動させる間に、レーザ光を前記加工箇所に設定された加工経路の始点から終点まで移動させるレーザ走査を実行し、
前記プログラム生成部は、前記干渉確認動作において前記レーザ照射装置を前記第1の教示点及び前記第2の教示点へ順に位置決めする毎に前記レーザ走査を実行させる前記指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記入力受付部は、前記ワークに設定された複数の前記加工箇所毎に、前記動作パラメータの入力を受け付け、
前記動作速度設定部は、前記複数の加工箇所毎に、前記干渉確認動作における前記動作速度を定める、請求項7~10のいずれか1項に記載の装置。
【請求項12】
前記動作パラメータを入力するための入力画像データを生成する画像生成部をさらに備える、請求項7~11のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか1項に記載の装置を備える、前記レーザ加工動作を教示するための教示装置。
【請求項14】
物体をレーザ加工するレーザ加工機の動作を教示する方法であって、
プロセッサが、
前記物体をモデル化した物体モデルのモデルデータを取得し、
前記物体モデルに設定された加工箇所に仮想レーザ光を模擬的に照射する仮想レーザ加工動作において該仮想レーザ光と該物体モデルとの干渉を検出するための干渉検出条件の入力を受け付け、
受け付けた前記干渉検出条件に基づいて、前記仮想レーザ加工動作で発生する前記干渉を検出し、
前記干渉検出条件は、前記仮想レーザ光のビームサイズ、又は、前記干渉の検出を無効とするために前記物体モデルに対して設定する無効領域を含む、方法。
【請求項15】
ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する方法であって、
プロセッサが、
前記干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付け、
受け付けた前記動作パラメータに基づいて、前記干渉確認動作における前記レーザ加工機の動作速度を、前記レーザ加工動作よりも低い速度として定め、
前記干渉確認動作において、定められた前記動作速度で前記レーザ加工機を動作させて、前記レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を前記加工箇所へ照射させる指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工機の動作を教示する教示装置及び教示方法、並びに、干渉確認プログラムを生成する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工機の動作を教示する教示装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-35404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、レーザ加工機が出射したレーザ光と、作業セルに存在する物体(例えば、治具)との干渉を有効に検証する技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様において、物体をレーザ加工するレーザ加工機の動作を教示するための教示装置は、物体をモデル化した物体モデルを取得するモデルデータ取得部と、物体モデルに設定された加工箇所に仮想レーザ光を模擬的に照射する仮想レーザ加工動作において該仮想レーザ光と該物体モデルとの干渉を検出するための干渉検出条件の入力を受け付ける入力受付部と、入力受付部が受け付けた干渉検出条件に基づいて、仮想レーザ加工動作で発生する干渉を検出する干渉検出部とを備え、干渉検出条件は、仮想レーザ光のビームサイズ、又は、干渉の検出を無効とするために物体モデルに対して設定する無効領域を含む。
【0006】
本開示の他の態様において、物体をレーザ加工するレーザ加工機の動作を教示する方法は、プロセッサが、物体をモデル化した物体モデルのモデルデータを取得し、物体モデルに設定された加工箇所に仮想レーザ光を模擬的に照射する仮想レーザ加工動作において該仮想レーザ光と該物体モデルとの干渉を検出するための干渉検出条件の入力を受け付け、受け付けた干渉検出条件に基づいて、仮想レーザ加工動作で発生する干渉を検出し、干渉検出条件は、仮想レーザ光のビームサイズ、又は、干渉の検出を無効とするために物体モデルに対して設定する無効領域を含む。
【0007】
本開示のさらに他の態様において、ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する装置は、干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付ける入力受付部と、入力受付部が受け付けた動作パラメータに基づいて、干渉確認動作におけるレーザ加工機の動作速度を、レーザ加工動作よりも低い速度に定める動作速度設定部と、干渉確認動作において、動作速度設定部によって定められた動作速度でレーザ加工機を動作させて、レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を加工箇所へ照射させる指令を規定した干渉確認プログラムを生成するプログラム生成部とを備える。
【0008】
本開示のさらに他の態様において、ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する方法は、プロセッサが、干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付け、受け付けた動作パラメータに基づいて、干渉確認動作におけるレーザ加工機の動作速度を、レーザ加工動作よりも低い速度として定め、干渉確認動作において、定められた動作速度でレーザ加工機を動作させて、レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を加工箇所へ照射させる指令を規定した干渉確認プログラムを生成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、発生し得るレーザ光と物体との干渉について、有効に検証できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態に係るレーザ加工システムの図である。
図2図1に示すレーザ加工システムのブロック図である。
図3図1に示すレーザ照射装置の一例を示す。
図4図1に示す移動機構の一例を示す。
図5図1に示す教示装置が生成する仮想空間の一例を示す。
図6】ワークモデルに設定された加工箇所の一例を示す。
図7図6に示す加工箇所に設定された加工経路の一例を示す。
図8】干渉検出条件を入力するための入力画像データの一例を示す。
図9】レーザ加工システムの他の機能を示すブロック図である。
図10】レーザ加工動作において1つの加工箇所をレーザ走査する間の移動機構の動作を示す。
図11】干渉確認動作の動作パラメータを入力するための入力画像データの一例を示す。
図12】干渉確認動作のフローの一例を示すフローチャートである。
図13図12中のステップS2のフローの一例を示すフローチャートである。
図14】他の実施形態に係るレーザ加工システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下に説明する種々の実施形態において、同様の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。まず、図1図3を参照して、一実施形態に係るレーザ加工システム10について説明する。レーザ加工システム10は、レーザ加工機12、制御装置14、及び教示装置50を備える。
【0012】
レーザ加工機12は、制御装置14からの指令の下、ワーク102に設定された加工箇所PLにレーザ光LBを照射し、該レーザ光LBによって該加工箇所PLをレーザ加工(レーザ溶接、レーザ切断等)する。具体的には、レーザ加工機12は、レーザ発振器16、レーザ照射装置18、及び移動機構20を備える。
【0013】
レーザ発振器16は、固体レーザ発振器(例えば、YAGレーザ発振器、又はファイバレーザ発振器)、又は、ガスレーザ発振器(例えば、炭酸ガスレーザ発振器)等であって、制御装置14からの指令に応じて、光共振によって内部でレーザ光LBを生成し、導光部材22を通してレーザ光LBをレーザ照射装置18に供給する。導光部材22は、例えば、光ファイバ、中空又は透光材からなる導光路、反射鏡、及び光学レンズの少なくとも1つを有し、レーザ光LBをレーザ照射装置18へ導光する。
【0014】
レーザ照射装置18は、レーザスキャナ(ガルバノスキャナ)、又は、レーザ光とアシストガスを出射するノズルを有するレーザ加工ヘッド等であって、レーザ発振器16から供給されたレーザ光LBを集光し、ワーク102に照射する。図3に、レーザスキャナとしてのレーザ照射装置18の構成を模式的に示す。図3に示すレーザ照射装置18は、筐体24、受光部26、ミラー28及び30、ミラー駆動装置32及び34、光学レンズ36、レンズ駆動装置38、及びレーザ光出射部40を有する。
【0015】
筐体24は中空であって、その内部にレーザ光LBの伝搬路を画定する。受光部26は、筐体24に設けられ、導光部材22を伝搬したレーザ光LBを受光する。ミラー28は、軸線A1の周りに回動可能となるように、筐体24の内部に設けられている。ミラー28は、受光部26を通して筐体24の内部に入射したレーザ光LBをミラー30へ向かって反射する。ミラー駆動装置32は、例えばサーボモータであって、制御装置14からの指令に応じて、ミラー28を軸線A1の周りに回動させる。
【0016】
一方、ミラー30は、軸線A2の周りに回動可能となるように、筐体24の内部に設けられている。軸線A2は、軸線A1と略直交してもよい。ミラー30は、ミラー28が反射したレーザ光LBを光学レンズ36へ向かって反射する。ミラー駆動装置34は、例えばサーボモータであって、制御装置14からの指令に応じて、ミラー30を軸線A2の周りに回動させる。一般的に、ミラー28及び30は、ガルバノミラーと称されることがあり、ミラー駆動装置32及び34は、ガルバノモータと称されることがある。
【0017】
光学レンズ36は、フォーカスレンズ等を有し、レーザ光LBを集光する。本実施形態においては、光学レンズ36は、入射するレーザ光LBの光軸Oの方向に移動可能となるように、筐体24の内部に支持されている。レンズ駆動装置38は、圧電素子、超音波振動子、又は超音波モータ等を有し、制御装置14からの指令に応じて、光学レンズ36を光軸Oの方向へ変位させ、これにより、ワーク102に照射されるレーザ光LBの焦点FPを、光軸Oの方向へ変位させる。レーザ光出射部40は、光学レンズ36によって集光されたレーザ光LBを、筐体24の外部へ出射する。
【0018】
再度、図1及び図2を参照して、移動機構20は、例えばサーボモータを有し、レーザ照射装置18をワーク102に対して相対的に移動させる。例えば、移動機構20は、レーザ照射装置18を移動機構座標系C1における任意の位置へ移動可能な多関節ロボットである。代替的には、移動機構20は、レーザ照射装置18を移動機構座標系C1のx-y平面に沿って移動させるとともに、移動機構座標系C1のz軸方向に移動させる複数のボールねじ機構を有してもよい。
【0019】
移動機構座標系C1は、移動機構20の動作を自動制御するための座標系であって、移動機構20に対して設定される。一方、レーザ照射装置18には、ツール座標系C2が設定される。ツール座標系C2は、移動機構座標系C1におけるレーザ照射装置18の位置を規定する座標系である。なお、本稿において「位置」とは、位置及び姿勢を表す場合がある。
【0020】
本実施形態においては、ツール座標系C2は、その原点が、レーザ照射装置18のレーザ光出射部(図3に示す例では、レーザ光出射部40)の中心に配置され、そのz軸が、該レーザ光出射部から出射されるレーザ光LBの光軸Oと平行となる(例えば、一致する)ように、レーザ照射装置18に対して設定される。
【0021】
図4に、垂直多関節ロボットとしての移動機構20の構成を模式的に示す。図4に示す移動機構20は、ロボットベース42、旋回胴44、下腕部46、上腕部48、及び手首部49を有する。ロボットベース42は、作業セルの床の上に固定されている。旋回胴44は、鉛直軸周りに旋回可能となるようにロボットベース42に設けられている。下腕部46は、水平軸周りに回動可能となるように旋回胴44に設けられ、上腕部48は、該下腕部46の先端部に回動可能に設けられている。手首部49は、互いに直交する2つの軸の周りに回動可能となるように上腕部48の先端部に設けられている。
【0022】
移動機構20の各コンポーネント(ロボットベース42、旋回胴44、下腕部46、上腕部48、及び手首部49)には、サーボモータ(図示せず)が設けられ、該サーボモータは、制御装置14からの指令に応じて、移動機構20の各可動コンポーネント(旋回胴44、下腕部46、上腕部48、及び手首部49)を駆動軸周りに回転駆動する。
【0023】
図4に示す移動機構20に対して、移動機構座標系C1は、その原点がロボットベース42の中心に配置され、そのz軸が旋回胴44の旋回軸に一致するように、設定される。移動機構20の動作によりレーザ照射装置18を移動機構座標系C1の任意の目標位置に位置決めする場合、制御装置14は、まず、移動機構座標系C1においてツール座標系C2を設定する。次いで、制御装置14は、設定したツール座標系C2によって表される位置にレーザ照射装置18を位置決めするように、移動機構20を動作させる。
【0024】
こうして、制御装置14は、移動機構20の動作により、レーザ照射装置18を移動機構座標系C1における任意の目標位置に配置することができる。なお、以下の説明においては、便宜上、移動機構座標系C1のx軸プラス方向を右方、y軸プラス方向を前方、z軸プラス方向を上方として言及することがある。
【0025】
制御装置14は、レーザ加工機12の動作を制御する。具体的には、制御装置14は、プロセッサ(CPU、GPU等)、及びメモリ(ROM、RAM等)を有するコンピュータである。制御装置14は、レーザ発振器16によるレーザ光生成動作を制御する。また、制御装置14は、レーザ照射装置18のミラー駆動装置32及び34を動作させることでミラー28及び30の向きをそれぞれ変化させ、これにより、ワーク102に照射されたレーザ光LBを、該ワーク102に対して高速移動させることができる。
【0026】
また、制御装置14は、レーザ照射装置18のレンズ駆動装置38を動作させることで光学レンズ36を変位させ、これにより、レーザ光出射部40から出射されたレーザ光LBの焦点FPを、光軸Oの方向へ移動させる。また、制御装置14は、移動機構20を動作させることで、レーザ照射装置18をワーク102に対して移動させる。
【0027】
教示装置50は、レーザ加工機12の動作を教示するためのものである。図2に示すように、教示装置50は、プロセッサ52、メモリ54、及びI/Oインターフェース56を有するコンピュータである。なお、教示装置50は、例えば、デスクトップ型若しくはタブレット型のPC、教示操作盤、又は教示ペンダントのような、如何なるタイプのコンピュータであってもよい。
【0028】
プロセッサ52は、CPU又はGPU等を有し、バス58を介してメモリ54及びI/Oインターフェース56に通信可能に接続されている。プロセッサ52は、メモリ54及びI/Oインターフェース56と通信しつつ、後述する教示機能を実現するための演算処理を行う。
【0029】
メモリ54は、RAM又はROM等を有し、プロセッサ52が実行する教示機能のための演算処理で利用される各種のデータ、及び該演算処理の途中で生成される各種データを、一時的又は恒久的に記憶する。I/Oインターフェース56は、例えば、イーサネット(登録商標)ポート、USBポート、光ファイバコネクタ、又はHDMI(登録商標)端子を有し、プロセッサ52からの指令の下、外部機器との間でデータを有線又は無線で通信する。
【0030】
教示装置50には、入力装置60及び表示装置62が設けられている。入力装置60は、キーボード、マウス、又はタッチパネル等を有し、オペレータからデータ入力を受け付ける。表示装置62は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を有し、各種データを表示する。
【0031】
入力装置60、及び表示装置62は、I/Oインターフェース56に、有線又は無線で通信可能に接続されている。なお、入力装置60及び表示装置62は、教示装置50の筐体とは別体として設けられてもよいし、又は、教示装置50の筐体に一体に組み込まれてもよい。
【0032】
プロセッサ52は、入力装置60への入力データに応じて、制御装置14を介して移動機構20の各サーボモータへ指令を送り、該指令に従って該移動機構20をジョグ動作させることができるように構成されている。オペレータは、入力装置60を操作することで、制御装置14を介して移動機構20を制御し、レーザ加工機12によるレーザ加工動作LPOを教示する。
【0033】
ここで、作業セルには、上述したワーク102と、該ワーク102の周辺に配置された環境物104とを含む、様々な物体100が存在している。環境物104は、例えば、ワーク102を作業セルに設置する治具、作業セルに配置された柱等の建造物、及び、ワーク102の周囲に配置された周辺機器等を含む。
【0034】
制御装置14が、レーザ加工機12を動作させてワーク102の加工箇所PLをレーザ加工するレーザ加工動作LPOを実行するときに、レーザ照射装置18から出射されたレーザ光LBと環境物104との干渉を避ける必要がある。教示装置50は、このようなレーザ光LBと環境物Sとの干渉を考慮しつつ、レーザ加工機12のレーザ加工動作LPOを教示する。
【0035】
以下、教示装置50を用いてレーザ加工動作LPOを教示する方法について説明する。まず、オペレータは、レーザ加工機12をモデル化したレーザ加工機モデル12Mの図面データと、物体100をモデル化した物体モデル100Mの図面データとを用意する。レーザ加工機モデル12M及び物体モデル100Mの図面データは、例えば3次元CADデータである。
【0036】
なお、以下の説明においては、実空間における部材の名称が「XX」であった場合、その部材のモデルを「XXモデル」として言及する。よって、レーザ加工機モデル12Mは、レーザ発振器16をモデル化したレーザ発振器モデル16M、レーザ照射装置18をモデル化したレーザ照射装置モデル18M、及び、移動機構20をモデル化した移動機構モデル20M(図3に示す例では、ロボットベースモデル42M、旋回胴モデル44M、下腕部モデル46M、上腕部モデル48M、及び手首部モデル49M)を備える。また、物体モデル100Mは、ワーク102をモデル化したワークモデル102M、及び環境物104をモデル化した環境物モデル104Mを有する。
【0037】
一例として、オペレータは、教示装置50とは別のコンピュータである設計支援装置(CAD/CAM装置)を用いて、レーザ加工機モデル12M及び物体モデル100Mを作成し、該レーザ加工機モデル12M及び該物体モデル100Mの図面データを、I/Oインターフェース56を通して教示装置50にダウンロードしてもよい。
【0038】
他の例として、設計支援装置の機能が、例えばソフトウェアとして教示装置50に実装され、オペレータは、教示装置50に設けられた表示装置62を視認しつつ、入力装置60を操作して、レーザ加工機モデル12M及び物体モデル100Mを教示装置50において作成してもよい。
【0039】
プロセッサ52は、ダウンロード又は作成されたレーザ加工機モデル12M及び該物体モデル100Mの図面データを取得し、教示装置50のメモリ54に格納する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、レーザ加工機モデル12M及び該物体モデル100Mを取得するモデルデータ取得部64(図2)として機能する。
【0040】
オペレータが、入力装置60を操作して教示開始指令CMtを入力すると、プロセッサ52は、メモリ54からレーザ加工機モデル12M及び物体モデル100Mを読み出し、仮想空間VS内に配置する。なお、プロセッサ52は、レーザ加工機モデル12Mのうち、レーザ照射装置モデル18Mと移動機構モデル20Mのみを仮想空間VS内に配置してもよい。
【0041】
図5に、図4に示す移動機構20の移動機構モデル20Mと、レーザ照射装置モデル18M及び物体モデル100Mとが配置された仮想空間VSの例を示す。本実施形態においては、ワークモデル102Mは、互いに接続された複数の表面モデル106M、108M及び110Mを有している。
【0042】
プロセッサ52は、仮想空間VSに配置した移動機構モデル20M及びレーザ照射装置モデル18Mに対し、図4に示す位置関係で移動機構座標系C1及びツール座標系C2を設定する。プロセッサ52は、構築した仮想空間VSの画像データを生成し、表示装置62に表示する。
【0043】
また、プロセッサ52は、ワークモデル102Mに設定される加工箇所PLの位置データPDを取得する。図6に、加工箇所PLの一例を示す。図6に示す例では、ワークモデル102Mの表面モデル106Mに、加工箇所PL及びPLが設定され、表面モデル108Mに、加工箇所PL及びPLが設定され、表面モデル110Mに、加工箇所PL及びPLが設定されている。
【0044】
これら複数の加工箇所PL(n=1~6)の各々には、所定の形状の加工経路PTが設定される。図7に、加工経路PTの一例を示す。図7に示す例では、加工経路PTは、四角形であって、始点P1及び終点P2を有する。実際のレーザ加工動作LPOにおいては、レーザ加工機12は、レーザ照射装置18から照射したレーザ光LBを、始点P1から終点P2まで、加工経路PTに沿って、時計回り方向(又は反時計回り方向)へ移動させることで、加工箇所PLをレーザ加工する。なお、本稿においては、加工経路PTの始点P1から終点P2までレーザ光LBを1回だけ移動させることを、1回の「レーザ走査」として言及する。
【0045】
一例として、オペレータは、入力装置60を操作して、ワークモデル102Mの図面データとは別の形式(例えば、別のフォーマット)のデータとして、移動機構座標系C1において加工箇所PL(具体的には、加工経路PT)を設定し、これにより、加工箇所PLの位置データPDを作成する。
【0046】
代替的には、オペレータは、教示装置50とは別のコンピュータである設計支援装置(CAD/CAM装置)を用いて、ワークモデル102Mを作成するとともに、該ワークモデル102Mに加工箇所PLを設定し、これにより、ワークモデル102Mと同じ形式(又は別の形式)のデータとして、加工箇所PLの位置データPDを作成してもよい。プロセッサ52は、移動機構座標系C1に設定された各々の加工箇所PL(加工経路PT)の位置データPDを、移動機構座標系C1の座標として取得する。
【0047】
次いで、プロセッサ52は、仮想空間VS内でワークモデル102Mに設定された加工箇所PLに仮想レーザ光LBvを模擬的に照射する仮想レーザ加工動作VLP(すなわち、レーザ加工動作LPOのシミュレーション)を実行するための動作パラメータPRvの入力を受け付ける。
【0048】
動作パラメータPRvは、例えば、仮想レーザ加工動作VLPにおいて各々の加工箇所PLに設定された加工経路PTをレーザ走査する回数N、加工経路PTを1回レーザ走査する時間t、走査周波数f(すなわち、加工経路PTを1秒間にレーザ走査する回数)、仮想レーザ光LBvを加工経路PTに沿って移動させる走査速度V、複数の加工箇所PLをレーザ走査する順序OR、及び、移動機構モデル20Mがレーザ照射装置モデル18Mを移動させる移動速度Uのうちの少なくとも1つを含む。
【0049】
例えば、プロセッサ52は、動作パラメータPRvを入力するための入力画像データID1を生成し、表示装置62に表示する。オペレータは、表示装置62に表示された入力画像データID1を視認しつつ、入力装置60を操作して動作パラメータPRv(すなわち、回数N、時間t、走査周波数f、走査速度V、順序OR又は移動速度U)を入力する。
【0050】
そして、プロセッサ52は、仮想空間VS内に配置された物体モデル100M(具体的には、ワークモデル102M、及び環境物モデル104M)、及びレーザ加工機モデル12M(例えば、レーザ照射装置モデル18M、及び移動機構モデル20M)と、上述の位置データPD及び動作パラメータPRvとに基づいて、仮想空間VS内でレーザ加工機モデル12Mを模擬的に動作させて仮想レーザ光LBvを加工箇所PLへ照射する仮想レーザ加工動作VLPを生成する。
【0051】
例えば、プロセッサ52が、動作パラメータPRvとして、各々の加工箇所PLについて、回数N=10、走査速度V=100[mm/sec]、及び、加工箇所PL→PL→PL→PL→PL→PLという順序ORの入力を受け付けたとする。この場合、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPを、以下のような一連の動作を仮想空間VS内で模擬的に行うように、生成する。
【0052】
具体的には、プロセッサ52は、仮想空間VS内で移動機構モデル20Mを模擬的に動作させて、移動機構座標系C1において、レーザ照射装置モデル18Mを、所定の移動経路MPvに沿って右方へ移動させるとともに、レーザ照射装置モデル18Mを模擬的に動作させて、レーザ照射装置モデル18Mから仮想レーザ光LBvを、加工箇所PL→PL→PL→PL→PL→PLという順序ORで、模擬的に照射する。
【0053】
このとき、プロセッサ52は、各々の加工箇所PLにおいて、レーザ照射装置モデル18Mからの仮想レーザ光LBvを、加工経路PTに沿って走査速度V=100[mm/sec]で移動させて、各々の加工箇所PLを、回数N=10回だけ、レーザ走査する。
【0054】
プロセッサ52は、このような一連の動作を含む仮想レーザ加工動作VLPを、物体モデル100M、レーザ加工機モデル12M、位置データPD、及び動作パラメータPRvに基づいて、自動で生成する。より具体的には、プロセッサ52は、移動経路MPvを自動で決定する。
【0055】
なお、移動経路MPvは、複数の教示点TP、TP、・・・TP(mは正の整数)から画定され、プロセッサ52は、教示点TPを自動で決定することで、移動経路MPvを決定してもよい。移動経路MPv(又は、教示点TP)は、移動機構座標系C1の座標として決定される。
【0056】
また、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて各々の加工箇所PLに仮想レーザ光LBvを照射する照射タイミングRTv(例えば、照射開始時間と照射終了時間)と、該照射タイミングRTvでレーザ照射装置モデル18Mから仮想レーザ光LBvを出射する方向(又は、ワークモデル102M上の照射位置)とを、自動で決定する。
【0057】
このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPを生成する動作生成部66(図2)として機能する。なお、プロセッサ52は、生成した仮想レーザ加工動作VLPを、動画の画像データとして表示装置62に表示させてもよい。この場合、オペレータは、仮想レーザ加工動作VLPを、シミュレーション動画として視認することができる。
【0058】
また、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉を検出するための干渉検出条件CDの入力を受け付ける。干渉検出条件CDは、例えば、仮想レーザ光LBvのビームサイズBS、又は、干渉の検出を無効とするために物体モデル100Mに対して設定する無効領域IAを含む。
【0059】
プロセッサ52は、干渉検出条件CDを入力するための入力画像データID2を生成し、表示装置62に表示する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、入力画像データID2を生成する画像生成部68(図2)として機能する。図8に、入力画像データID2の一例を示す。
【0060】
入力画像データID2は、オペレータに干渉検出条件CDを入力可能にするためのグラフィカルユーザインターフェース(GUI)であって、加工箇所選択画像領域110と、条件設定画像領域112とを有する。加工箇所選択画像領域110には、プロセッサ52が位置データPDを取得した加工箇所PL(n=1~6)が、リスト形式で列挙されている。
【0061】
また、加工箇所選択画像領域110には、スクロールバー画像114が表示され、オペレータは、入力装置60を操作してスクロールバー画像114を画像上で上下にスライドさせることで、表示する加工箇所PLを変更できるようになっている。オペレータは、入力装置60を操作して、加工箇所選択画像領域110に表示された複数の加工箇所PLのうちの1つを画像上でクリックすることによって選択する。なお、図8に示す例は、加工箇所PLが選択されている状態を示している。
【0062】
条件設定画像領域112は、加工箇所選択画像領域110で選択されている加工箇所PLについて干渉検出条件CD(具体的には、ビームサイズBS及び無効領域IA)を設定するためのものである。具体的には、条件設定画像領域112は、ビームサイズBSを設定するための数値入力画像116と、無効領域IAを設定するための数値入力画像118とを含む。
【0063】
数値入力画像116は、加工箇所選択画像領域110で選択されている加工箇所PL図8に示す例では、加工箇所PL)の加工経路PTに照射する仮想レーザ光LBvのビームサイズBSを入力するためのものである。ビームサイズBSは、例えば、仮想レーザ光LBvの直径(又は半径)R(単位:[mm])、又は、断面積E(単位:[mm])として表され得る。なお、図8は、数値入力画像116に、ビームサイズBSとして直径R[mm]を入力する例を示している。
【0064】
オペレータは、入力装置60を操作して数値入力画像116にビームサイズBSを入力することができる。例えば、図8に示すように加工箇所PLが選択されているときに、数値入力画像116にビームサイズBSとして直径R=0.400[mm]を入力した場合、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPを実行したときに、直径R=0.400[mm]を有する円柱状の仮想レーザ光LBvを加工箇所PLに模擬的に照射し、加工経路PTをレーザ走査することになる。
【0065】
一方、数値入力画像118は、加工箇所選択画像領域110で選択されている加工箇所PLに仮想レーザ光LBvを模擬的に照射するときに、ワークモデル102M上の照射位置から所定の距離dの範囲内を無効領域IAとして設定するために、該所定の距離d(単位:[mm])を入力するためのものである。オペレータは、入力装置60を操作して、数値入力画像118に、無効領域IAを画定する距離dを入力することができる。
【0066】
例えば、図8に示すように加工箇所PLが選択されているときに、数値入力画像118に距離d=1.000[mm]を入力した場合、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPで加工箇所PLに照射される仮想レーザ光LBvの伝搬領域のうち、該加工箇所PLが設定されている表面モデル106M上の照射位置から距離d=1.000[mm]の範囲内を、無効領域IAとして設定する。なお、プロセッサ52は、無効領域IAを、表面モデル106M上の照射位置から距離d=1.000[mm]以内の半球状の領域(つまり、照射位置を中心とした半径dの半球領域)として、設定してもよい。
【0067】
ここで、物体モデル100Mの図面データの形式によっては、プロセッサ52が、ワークモデル102Mと環境物モデル104Mとを識別できない場合がある。この場合、プロセッサ52は、ワークモデル102Mと環境物モデル104Mとを1つの物体モデル100Mとして認識し、仮想レーザ加工動作VLPを実行したときに、仮想レーザ光LBvが、ワークモデル102Mと干渉しているのか、又は環境物モデル104Mと干渉しているのか、識別できない。
【0068】
このような場合において、仮想レーザ加工動作VLPで加工箇所PLを仮想レーザ光LBvでレーザ走査すると、仮想レーザ光LBvとワークモデル102Mとが、演算上、干渉することになり、プロセッサ52は、このような干渉を検出してしまうことになる。本実施形態によれば、上述のように無効領域IAをワークモデル102Mに対して設定することによって、仮想レーザ光LBvとワークモデル102Mとの干渉を無効とし、検出しないようにできる。
【0069】
以上のように、プロセッサ52は、入力画像データID2を通して、複数の加工箇所PL毎に、干渉検出条件CD(具体的には、ビームサイズBS、及び無効領域IAを画定する距離d)の入力をそれぞれ受け付けている。したがって、本実施形態においては、プロセッサ52は、干渉検出条件CDの入力を受け付ける入力受付部70(図2)として機能する。
【0070】
その後、オペレータは、入力装置60を操作して、仮想レーザ加工動作VLPを開始する指令CM1を入力する。例えば、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPを開始するための開始ボタン画像データ(図示せず)を生成し、表示装置62に表示してもよい。プロセッサ52は、入力装置60を通して指令CM1を受け付けると、仮想空間VS内で、上述した仮想レーザ加工動作VLPを実行する。
【0071】
この仮想レーザ加工動作VLPを実行している間、プロセッサ52は、入力画像データID2を通して入力を受け付けた干渉検出条件CDに基づいて、仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉を検出する。具体的には、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて、加工箇所PLに対し、干渉検出条件CDとして設定されたビームサイズBSを有する仮想レーザ光LBvを模擬的に照射したときの該仮想レーザ光LBvの伝搬領域を演算し、該仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉の有無を検出する。
【0072】
このとき、干渉検出条件CDとして加工箇所PLに対し無効領域IAが設定されているので、プロセッサ52は、仮想レーザ光LBvとワークモデル102Mとの干渉を検出しない一方、仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉を検出することになる。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、干渉検出条件CDに基づいて仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉を検出する干渉検出部72(図2)として機能する。
【0073】
プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPで仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉を検出すると、その旨を報知する報知信号NSを生成する。この報知信号NSは、例えば、仮想レーザ光LBvが環境物モデル104Mと干渉した位置を示す情報(例えば、干渉位置を環境物モデル104M上で強調表示する画像データ)を含む。
【0074】
オペレータは、報知信号NSによって仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉が発生したことを認識すると、動作生成部66が生成した仮想レーザ加工動作VLPを修正する。具体的には、オペレータは、入力装置60を操作して、上述の移動経路MPv(又は、教示点TP)、移動速度U、又は照射タイミングRTv等のパラメータを変更するための指令CM2を入力する。該指令CM2に応じて、プロセッサ52は、動作生成部66として機能し、設定されている移動経路MPv(又は、教示点TP)、移動速度U、又は照射タイミングRTv等のパラメータを変更することで、仮想レーザ加工動作VLPを修正する。
【0075】
このようにして、オペレータは、仮想レーザ加工動作VLPを試行し、試行した仮想レーザ加工動作VLPで仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉が発生した場合に、該仮想レーザ加工動作VLPを修正する作業を繰り返す。その結果、プロセッサ52(動作生成部66)は、仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉が発生しない仮想レーザ加工動作VLPを生成することができる。
【0076】
次いで、オペレータは、入力装置60を操作して、レーザ加工機12が実空間で実行するレーザ加工動作LPOのための加工プログラムPPGを生成するための指令CM3を入力する。このとき、プロセッサ52は、加工プログラムPPGを生成するためのボタン画像データ(図示せず)を生成し、表示装置62に表示してもよい。
【0077】
プロセッサ52は、入力装置60を通して指令CM3を受け付けると、上述のように生成した仮想レーザ加工動作VLPに基づいて、加工プログラムPPGを生成する。具体的には、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPの動作を規定する、加工箇所PLの位置データPD、移動経路MPv(又は、教示点TP)、照射タイミングRTv、及び、動作パラメータPRv(走査回数N、走査時間t、走査周波数f、走査速度V、順序OR又は移動速度U)が指令CMv(例えばコード)として規定された加工プログラムPPGを、自動で生成する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、加工プログラムPPGを生成するプログラム生成部74(図2)として機能する。
【0078】
以上のように、本実施形態においては、入力受付部70が、干渉検出条件CDとしてビームサイズBS及び無効領域IAの入力を受け付け、干渉検出部72が、受け付けた干渉検出条件CDに基づいて、仮想レーザ加工動作VLPで発生する干渉を検出している。
【0079】
ここで、従来は、仮想レーザ光LBvを、断面積がゼロの線として定義した上で、仮想レーザ加工動作VLPを実行し、仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉の有無を検出していた。この場合、仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉検出に誤差が存在し得なくなる。
【0080】
このような干渉検出に基づく仮想レーザ加工動作VLPの結果として作成された加工プログラムに従ってレーザ加工動作を実行した場合、レーザ加工機12の照射タイミング、加工箇所PLの位置、又は、ワーク102と環境物104の配置に僅かな誤差があると、実際のレーザ光LBが環境物104と干渉してしまう可能性がある。
【0081】
本実施形態において、干渉検出条件CDとしてビームサイズBSの入力を受け付けた場合、仮想レーザ光LBvを、ビームサイズBSに応じた断面積を有する領域として定義した上で仮想レーザ加工動作VLPを実行し、該仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉を検出する。
【0082】
この構成によれば、仮に、レーザ加工機12の照射タイミング、加工箇所PLの位置、又は、ワーク102と環境物104の配置等に僅かな誤差があったとしても、実際のレーザ加工動作LPOにおいてレーザ光LBが環境物104と干渉してしまうことを避けることができる。
【0083】
また、従来は、上述したように、物体モデル100Mの図面データの形式によってワークモデル102Mと環境物モデル104Mとを識別できない場合があった。本実施形態において、干渉検出条件CDとして無効領域IAの入力を受け付けた場合、仮想レーザ加工動作VLPで仮想レーザ光LBvとワークモデル102Mとの干渉を検出してしまうのを回避できる。以上のようにビームサイズBS又は無効領域IAを干渉検出条件CDとして受け付けることによって、発生し得る干渉について有効に検証できる。
【0084】
また、本実施形態においては、入力受付部70は、無効領域IAを設定するための干渉検出条件CDとして、距離dの入力を受け付けている。この構成によれば、オペレータは、無効領域IAを、所望の大きさの領域として簡単に設定可能となるとともに、仮想空間VS内における無効領域IAの範囲を、直感的に認識することもできる。
【0085】
また、本実施形態においては、入力受付部70は、複数の加工箇所PL毎に、干渉検出条件CDの入力を受け付けている。この構成によれば、オペレータは、加工箇所PL毎に、干渉検出条件CDを詳細に設定できるようになる。例えば、仮想レーザ加工動作VLPにおいて、加工箇所PL及びPLをレーザ走査するときは、レーザ照射装置モデル18Mを比較的速い移動速度Uv1で移動させる一方、加工箇所PL及びPLをレーザ走査するときは、レーザ照射装置モデル18Mを比較的遅い移動速度Uv2(<Uv1)で移動させる場合がある。
【0086】
ここで、レーザ照射装置モデル18Mをより低い移動速度Uv2で移動させる場合は、仮想レーザ光LBvと物体モデル100M(具体的には、環境物モデル104M)との干渉検出の結果と、実際のレーザ加工動作LPOにおけるレーザ光LBと物体100(具体的には、環境物104)との干渉状態との間に乖離が生じ難いため、仮想レーザ加工動作VLPでの干渉検出のクリアランスを小さく設定したい場合がある。
【0087】
その一方で、レーザ照射装置モデル18Mをより速い移動速度Uv1で移動させる場合は、仮想レーザ光LBvと物体モデル100Mとの干渉検出の結果と、実際のレーザ加工動作LPOにおけるレーザ光LBと物体100との干渉状態との間に乖離が生じ易くなるため、仮想レーザ加工動作VLPでの干渉検出のクリアランスを大きく設定したい場合がある。
【0088】
本実施形態によれば、レーザ照射装置モデル18Mを速い移動速度Uv1で移動させてレーザ走査する加工箇所PL及びPLに対しては、比較的大きなビームサイズBS及びBSを設定する一方、レーザ照射装置モデル18Mを低い移動速度Uv1で移動させてレーザ走査する加工箇所PL及びPLに対しては、比較的小さなビームサイズBS及びBSを設定できる。こうして、オペレータは、加工箇所PL毎に、最適なビームサイズBSを設定できる。
【0089】
また、オペレータは、ワークモデル102Mと環境物モデル104Mとの位置関係に応じて、ワークモデル102Mに設定する無効領域IAの範囲を調整したい場合もある。本実施形態によれば、加工箇所PL毎に、無効領域IAの範囲を適宜設定できる。このように、加工箇所PL毎に干渉検出条件CDの入力を受け付けることで、干渉検出条件CDを加工箇所PL毎に最適化できる。
【0090】
また、本実施形態においては、画像生成部68は、干渉検出条件CDを入力するための入力画像データID2(図8)を生成する。この構成によれば、オペレータは、入力画像データID2を視認しつつ干渉検出条件CDを入力することができることから、干渉検出条件CDを設定する作業を簡単化できる。
【0091】
また、本実施形態においては、動作生成部66は、物体モデル100M及びレーザ加工機モデル12Mと、加工箇所PLの位置データPDとに基づいて、仮想レーザ加工動作VLPを生成する。この構成によれば、仮想レーザ加工動作VLPをプロセッサ52に自動で生成させることができ、オペレータは、仮想レーザ加工動作VLPを確認及び検証することができる。これにより、レーザ加工動作LPOの教示に係る作業を簡単化できる。
【0092】
また、本実施形態においては、プログラム生成部74は、動作生成部66が生成した仮想レーザ加工動作VLPに基づいて、レーザ加工動作LPOのための加工プログラムPPGを生成する。この構成によれば、仮想レーザ加工動作VLP及び加工プログラムPPGを自動で生成できるので、レーザ加工動作LPOの教示に係る作業を、さらに簡単化できる。
【0093】
なお、プロセッサ52は、移動機構モデル20Mがレーザ照射装置モデル18Mを移動させる移動速度Uに応じて、ビームサイズBSを自動で設定してもよい。この場合において、移動速度UとビームサイズBSとを互いに関連付けて格納したデータテーブルが、メモリ54に予め格納され、プロセッサ52は、動作パラメータPRvとして受け付けた移動速度Uを該データテーブルに適用することで、ビームサイズBSを設定してもよい。この場合、入力受付部70は、ビームサイズBSの入力を受け付けず、無効領域IAの入力だけを受け付けてもよい。
【0094】
また、例えば、物体モデル100Mの図面データの形式によってワークモデル102Mと環境物モデル104Mとを識別可能である場合は、干渉検出部72は、仮想レーザ光LBvとワークモデル102Mとの干渉を無効とし、仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉のみを検出するように構成できる。この場合、入力受付部70は、無効領域IA入力を受け付けず、ビームサイズBSの入力だけを受け付けてもよい。
【0095】
また、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて、レーザ照射装置モデル18Mから加工箇所PLへ向かうにつれて断面積が縮小する円錐状の仮想レーザ光LBvを、該レーザ照射装置モデル18Mから出射してもよい。この場合において、入力受付部70は、干渉検出条件CDとして、ビームサイズBSに加えて、断面積が縮小する縮小率λ(又は、テーパ率)の入力をさらに受け付けてもよい。
【0096】
例えば、入力受付部70が、加工箇所PLに関する干渉検出条件CDとして、ビームサイズBS=直径R=0.400[mm]、縮小率λの入力を受け付けたとする。この場合、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて、レーザ照射装置モデル18Mのレーザ光出射部モデル40Mでの直径Rが0.400[mm]であり、該レーザ光出射部モデル40Mから加工箇所PLに向かうにつれて縮小率λで断面積が縮小するような円錐状の仮想レーザ光LBvを、模擬的に出射する。
【0097】
代替的には、プロセッサ52は、仮想レーザ加工動作VLPにおいて、レーザ光出射部モデル40Mから加工箇所PLに位置へ向かって縮小率λで断面積が縮小して加工箇所PLの位置で直径Rが0.400[mm]となるような円錐状の仮想レーザ光LBvを、模擬的に出射する。このような円錐状の仮想レーザ光LBvを生成することで、実際のレーザ加工動作LPOでのレーザ光LBに類似する仮想レーザ光LBvで、仮想レーザ加工動作VLPを実行できる。
【0098】
なお、入力受付部70は、無効領域IAのための干渉検出条件CDとして、上述の距離dとともに、無効領域IAを設定するときの基準とする表面モデル106M、108M、110Mを指定する入力を受け付けてもよい。例えば、オペレータが、図8に示すように加工箇所PLを選択しているときに、入力装置60を操作して、加工箇所PLが設定されている表面モデル106Mを指定したとする。
【0099】
この場合、プロセッサ52は、入力受付部70として機能し、無効領域IAの基準として表面モデル106Mを指定する入力を受け付け、該表面モデル106M上の照射位置から、入力された距離d(例えば、1.000[mm])の範囲内を無効領域IAとして設定する。
【0100】
このとき、プロセッサ52は、画像生成部68として機能して、入力画像データID2に、オペレータが視認可能とするためにワークモデル102Mの画像を表示してもよい。なお、距離dは、予め定められた設定値(例えば、d=1.000[mm])として、メモリ54に予め記憶されてもよい。この場合、プロセッサ52は、距離dの入力を受け付けずに、無効領域IAを設定することになる。
【0101】
また、本実施形態においては、動作生成部66が、仮想レーザ加工動作VLPを自動で生成する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、オペレータが入力装置60を操作して仮想レーザ加工動作VLPを手動で生成してもよい。この場合、教示装置50から動作生成部66を省略できる。
【0102】
また、本実施形態においては、プログラム生成部74が加工プログラムPPGを自動で生成する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、オペレータが入力装置60を操作して加工プログラムPPGを手動で生成してもよい。この場合、教示装置50からプログラム生成部74を省略できる。
【0103】
また、本実施形態においては、仮想レーザ加工動作VLPで仮想レーザ光LBvと環境物モデル104Mとの干渉が発生した場合に、オペレータが、移動経路MPv(教示点TP)、移動速度U、又は照射タイミングRTvを変更するための指令CM2を入力する場合について述べた。
【0104】
しかしながら、これに限らず、プロセッサ52が、動作生成部66として機能して、発生した干渉の位置に基づいて、該干渉を回避するように、移動経路MPv(教示点TP)、移動速度U、又は照射タイミングRTvを自動で変更することで、仮想レーザ加工動作VLPを自動で修正してもよい。
【0105】
また、上述の加工プログラムPPGは、移動機構20を動作させるための第1の加工プログラムPPG1と、レーザ照射装置18を動作させるための第2の加工プログラムPPG2とを有してもよい。この場合において、プログラム生成部74は、第1の加工プログラムPPG1と第2の加工プログラムPPG2とを、別々のデータとして(例えば、異なるデータ形式又はフォーマットで)、生成してもよい。
【0106】
なお、上述のモデルデータ取得部64、動作生成部66、画像生成部68、入力受付部70、干渉検出部72、及びプログラム生成部74は、例えば、プロセッサ52が実行するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。なお、モデルデータ取得部64、動作生成部66、画像生成部68、入力受付部70、干渉検出部72、及びプログラム生成部74の少なくとも1つの機能は、制御装置14に実装されてもよい。この場合、制御装置14のプロセッサが、教示装置50の機能を担う。
【0107】
次に、図9を参照して、レーザ加工システム10の他の機能について説明する。実空間の作業セルにおいて、制御装置14は、図2に示す実施形態の方法(又は、他の方法)によって生成された加工プログラムPPGに従って、実機のレーザ加工機12への指令を生成し、該レーザ加工機12にレーザ加工動作LPOを実行させる。
【0108】
このレーザ加工動作LPOにおいて、レーザ加工機12は、移動機構20を動作させて、レーザ照射装置18を、移動経路MPv(つまり、教示点TP、TP、・・・TP)に沿って右方へ移動させるとともに、レーザ照射装置18を動作させてレーザ光LBを出射し、複数の加工箇所PLを、順序ORでレーザ走査する。
【0109】
図10に、レーザ加工動作LPOにおいて、1つの加工箇所PLをレーザ光LBでレーザ走査する間の移動機構20の動作を示している。例えば、加工プログラムPPGに走査回数N=10が規定されていた場合、移動機構20が、レーザ照射装置18を、教示点TP(第1の教示点)から教示点TPm+1(第2の教示点)へ、移動経路MPvに沿って、移動速度Uで右方へ移動させる間に、レーザ照射装置18が、出射したレーザ光LBで、加工箇所PLに設定された加工経路PTを、走査速度Vで10回レーザ走査する。
【0110】
このような動作を行っているときに、実空間においてレーザ光LBと環境物104との干渉が発生し得るが、レーザ加工動作LPOでの移動機構20の移動速度Uとレーザ照射装置18の走査速度Vは高速であることから、オペレータが、実際のレーザ加工動作LPO中にレーザ光LBと環境物104との干渉を目視で確認することは困難である。
【0111】
そこで、本実施形態においては、教示装置50は、レーザ光LBと環境物104との干渉を事前に確認するための干渉確認動作IVOを実行させる干渉確認プログラムIPGを生成する。ここで、干渉確認動作IVOとは、実際のレーザ加工動作LPOとは異なる動作であって、干渉確認のためにレーザ加工機12を、レーザ加工動作LPOよりも低い動作速度νで動作させて、レーザ加工動作LPOとは異なる光学特性のレーザ光LBgを加工箇所PLに試験的に照射する動作である。
【0112】
レーザ加工機12の動作速度νは、移動機構20がレーザ照射装置18を移動させる移動速度Uと、レーザ照射装置18がレーザ光LBgを加工経路PLに沿って移動させる走査速度Vとを有する。また、レーザ光LBgは、レーザ加工動作LPOで出射されるレーザ光LBとは異なる波長を有する可視光(いわゆる、ガイドレーザ)であって、該レーザ光LBよりも低いレーザパワーを有する。本稿においては、干渉確認動作IVOで出射されるレーザ光LBgを、ガイドレーザLBgとして言及する。
【0113】
以下、干渉確認プログラムIPGを生成する方法について説明する。オペレータが、入力装置60を操作して干渉確認プログラムIPGを生成するための指令CM4を入力すると、プロセッサ52は、加工箇所PLの位置データPDを取得する。例えば、位置データPDは、メモリ54に格納されてもよいし、加工プログラムPPGに規定されてもよい。
【0114】
また、プロセッサ52は、加工プログラムPPGから、教示点TP及びTPm+1の位置データPDTPを取得する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、レーザ加工動作LPOにおいてレーザ加工機12がレーザ照射装置18を位置決めする教示点TPの位置データPDTPを取得する位置データ取得部80(図9)として機能する。
【0115】
次いで、プロセッサ52は、干渉確認動作IVOのための動作パラメータPRiの入力を受け付ける。動作パラメータPRiは、例えば、干渉確認動作IVOにおいてガイドレーザLBgを加工経路PLに沿って移動させる走査速度Vi_n、ガイドレーザLBgを加工経路PLの始点P1から終点P2まで移動させる走査時間t、及び、該走査時間tの許容時間τを含む。
【0116】
プロセッサ52は、動作パラメータPRiを入力するための入力画像データID3を生成し、表示装置62に表示する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、入力画像データID3を生成する画像生成部82(図9)として機能する。図11に、入力画像データID3の一例を示す。
【0117】
入力画像データID3は、オペレータに動作パラメータPRiを入力可能にするためのGUIであって、上述のスクロールバー画像114を含む加工箇所選択画像領域110と、パラメータ設定画像領域120とを有する。パラメータ設定画像領域120は、加工箇所選択画像領域110で選択されている加工箇所PLについて動作パラメータPRiを設定するためのものである。
【0118】
具体的には、パラメータ設定画像領域120は、走査速度Vi_nを設定するための数値入力画像122と、走査時間tを設定するための数値入力画像124と、許容時間τを設定するための数値入力画像126とを含む。数値入力画像122、124及び126は、それぞれ、加工箇所選択画像領域110で選択されている加工箇所PL図11に示す例では、加工箇所PL)に対して、走査速度Vi_n、走査時間t、及び許容時間τ図11に示す例では、走査速度Vi_2、走査時間t、許容時間τ)を入力するためのものである。
【0119】
このように、オペレータは、加工箇所選択画像領域110で所望の加工箇所PLを選択し、加工箇所PL毎に、数値入力画像122、124及び126を通して、動作パラメータPRiとして走査速度Vi_n、走査時間t、及び許容時間τを入力できるようになっている。よって、本実施形態においては、プロセッサ52は、動作パラメータPRiの入力を受け付ける入力受付部84(図9)として機能する。
【0120】
次いで、プロセッサ52は、受け付けた動作パラメータPRiに基づいて、干渉確認動作IVOにおけるレーザ加工機12の動作速度νを定める。例えば、オペレータが、図11に示すように加工箇所選択画像領域110で加工箇所PLを選択しているときに、パラメータ設定画像領域120において、動作パラメータPRiとして、走査速度Vi_2=1[mm/sec]、走査時間t=1[sec]、許容時間τ=5[sec]と入力したとする。
【0121】
この場合、プロセッサ52は、まず、加工箇所PLの位置データPDから、加工箇所PLに設定された加工経路PTの始点P1から終点P2までの経路長Lを取得する。そして、経路長Lを用いて、動作パラメータPRiとして入力された走査時間t及び許容時間τに対応する走査速度Vt2及びVτ2をそれぞれ求める。
【0122】
例えば、経路長L=40[mm]であったとする。この場合、プロセッサ52は、走査時間tに関し、経路長Lを該走査時間tでレーザ走査するときの走査速度Vt2を、Vt2=L/t=40[mm/sec]として求める。同様に、プロセッサ52は、許容時間τに関し、経路長Lを該許容時間τでレーザ走査するときの走査速度Vτ2を、Vτ2=L/τ=8[mm/sec]として求める。
【0123】
そして、プロセッサ52は、動作パラメータPRiとして入力された走査速度Vi_2と、演算により求めた走査速度Vt2及び走査速度Vτ2とを、MAX(MIN(Vi_2,Vt2),Vτ2)なる条件式(I)に適用する。この条件式(I)について、MIN(Vi_2,Vt2)は、Vi_2とVt2のうちの小さい方を選択することを表している。すなわち、本実施形態の場合は、MIN(Vi_2,Vt2)=Vi_2(=1[mm/sec])となり、故に、MAX(MIN(Vi_2,Vt2),Vτ2)=MAX(Vi_2,Vτ2)となる。
【0124】
一方、MAX(Vi_2,Vτ2)は、Vi_2とVτ2のうちの大きい方を選択することを表している。すなわち、本実施形態の場合は、MAX(Vi_2,Vτ2)=Vτ2(=8[mm/sec])となる。こうして、プロセッサ52は、動作パラメータPRiとして入力された走査速度Vi_2、走査時間t、及び許容時間τと、条件式(I)とから、干渉確認動作IVOで加工箇所PLをレーザ走査するときの走査速度Vを、V=Vτ2=8[mm/sec]として定める。
【0125】
以下、条件式(I)を用いる技術的意義について説明する。仮に、オペレータが、動作パラメータPRiとしての走査速度Vi_2を、目視による干渉確認を容易にする観点から、比較的低い速度として入力したとする。この場合、入力された走査速度Vi_2で経路長Lをレーザ走査するのに要する走査時間tV2は、比較的長い走査時間tV2=L/Vi_2となる。
【0126】
一方、オペレータが、干渉確認動作IVOのサイクルタイム縮減の観点から、動作パラメータPRiとしての走査時間tを、比較的短い時間で入力したとする。この場合、入力された走査時間tに対応する走査速度Vt2は、比較的高くなり、その結果、目視による干渉確認が困難となり得る。上述の条件式(I)では、MIN(Vi_2,Vt2)によって、速度Vi_2と速度Vt2のうちの小さい方を選択することで、目視による干渉確認が困難となり得る速度Vt2を除外している。
【0127】
しかしながら、MIN(Vi_2,Vt2)によって選択された速度Vi_2では、上述のように走査時間tV2が長くなってしまい、この場合は、干渉確認動作IVOのサイクルタイムが過度に増大してしまう可能性が生じる。そこで、条件式(I)では、MAX(Vi_2,Vτ2)によって、速度Vi_2と、許容時間τに対応する速度Vτ2とのうちの大きい方を選択することで、サイクルタイムが過度に冗長となり得る速度Vi_2を除外し、許容時間τに対応する速度Vτ2を、干渉確認動作IVOで加工箇所PLをレーザ走査するときの走査速度Vとして定めている。
【0128】
このように、本実施形態においては、許容時間τは、干渉確認動作IVOで加工箇所PLの加工経路PTをレーザ走査するのに要する走査時間tを、干渉確認動作IVOのサイクルタイムが過度に冗長とならない程度の許容範囲内に収めるために、動作パラメータPRiとして入力されるものであって、条件式(I)によれば、速度Vi_2,Vt2及びVτ2のいずれが選択されたとしても、走査時間tが許容時間τを超えることがなくなる。
【0129】
なお、仮にオペレータが、適切な走査速度Vi_2又は走査時間tを入力(例えば、走査速度Vi_2=10[mm/sec]、走査時間t=5[sec]、許容時間τ=10[sec]と入力)した場合は、プロセッサ52は、条件式(I)から、干渉確認動作IVOで加工箇所PLをレーザ走査するときの走査速度Vを、走査時間t(=5[sec])に対応する走査速度Vt2(=8[mm/sec])として定めることになる。このように目視による干渉確認を可能とするために定められた走査速度Vは、レーザ加工動作LPOにおける走査速度V(例えば、100[mm/sec])よりも低い値に設定されることになる。
【0130】
以上のように、プロセッサ52は、動作パラメータPRiに基づいて、干渉確認動作IVOで加工箇所PLをレーザ走査するときの動作速度ν(具体的には、走査速度V)を、レーザ加工動作LPOよりも低い速度(V<V)として、定めている。したがって、本実施形態においては、プロセッサ52は、動作速度νを設定する動作速度設定部86(図9)として機能する。
【0131】
なお、動作パラメータPRiに基づいて定めた動作速度νが、所定の閾値νth以上である場合、プロセッサ52は、例えば、「干渉確認動作における動作速度が高速であるため、目視により干渉確認が困難となる可能性があります」という警告信号ASを、画像又は音声のデータ形式で生成し、表示装置62又はスピーカ(図示せず)を通して出力してもよい。この場合において、閾値νthは、例えば、レーザ加工動作LPOの動作速度ν(例えば、加工プログラムPPGに規定されている走査速度V又は移動速度U)を基準として、νth=αν(αは正の係数)として予め定められてもよい。
【0132】
次いで、プロセッサ52は、干渉確認動作IVOとしてレーザ加工機12に以下のような一連の動作を実行させる指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成する。すなわち、干渉確認動作IVOにおいて、レーザ加工機12は、レーザ発振器16を動作させてガイドレーザLBgを生成し、移動機構20を動作させてレーザ照射装置18を移動させつつ、レーザ照射装置18を動作させて複数の加工箇所PLをガイドレーザLBgによって順序ORvでレーザ走査する。
【0133】
1つの加工箇所PLをレーザ走査するとき、レーザ加工機12は、まず、移動機構20を動作させて、レーザ照射装置18を教示点TP図10)に位置決めする。次いで、レーザ加工機12は、レーザ照射装置18を教示点TPに静止させた状態で、ガイドレーザLBgを加工箇所PLに照射し、動作速度設定部86によって定められた走査速度Vで、該加工箇所PLの加工経路PTを繰り返しレーザ走査する。
【0134】
次いで、オペレータから干渉確認指令CM5を受け付けると、レーザ加工機12は、ガイドレーザLBgの照射を停止した後、移動機構20を動作させて、レーザ照射装置18を教示点TPm+1に位置決めする。次いで、レーザ加工機12は、レーザ照射装置18を教示点TPm+1に静止させた状態で、ガイドレーザLBgを加工箇所PLに再度照射し、該加工箇所PLの加工経路PTを走査速度Vで繰り返しレーザ走査する。こうして、レーザ加工機12は、レーザ照射装置18を教示点TP及びTPm+1へ順に位置決めする毎に、レーザ走査を実行する。
【0135】
次いで、オペレータから干渉確認指令CM6を受け付けると、レーザ加工機12は、ガイドレーザLBgの照射を停止した後、移動機構20を動作させてレーザ照射装置18を、次の加工箇所PLn+1に対して設定された教示点TPへ移動し、該次の加工箇所PLn+1に対し、上述した一連のレーザ走査を実行する。
【0136】
以上のような一連のレーザ走査を複数の加工箇所PLに対して順序ORvで繰り返し実行することで、レーザ加工機12は、干渉確認動作IVOを実行する。プロセッサ52は、加工プログラムPPGに規定されている加工箇所PLの位置データPD及び教示点TPの位置データPDTPと、動作速度設定部86によって定められた走査速度Vとに基づいて、上述のような一連の干渉確認動作IVOをレーザ加工機12に実行させるための指令CMiが規定された干渉確認プログラムIPGを、自動で生成する。このように、本実施形態においては、プロセッサ52は、干渉確認プログラムIPGを生成するプログラム生成部88(図9)として機能する。
【0137】
図12に、干渉確認動作IVOの一例を示すフローチャートを示す。教示装置50のプロセッサ52(又は、制御装置14のプロセッサ)は、プログラム生成部88が生成した干渉確認プログラムIPGに従って、図12に示すフローを実行する。図12に示すフローは、プロセッサ52が、オペレータ、上位コントローラ、又はコンピュータプログラム(例えば、干渉確認プログラムIPG)から、動作開始指令CM7を受け付けたときに、開始する。
【0138】
ステップS1において、プロセッサ52は、第nの加工箇所PLを特定する番号「n」を「1」にセットする。ステップS2において、プロセッサ52は、第nの加工箇所PLをレーザ走査する。このステップS2について、図13を参照して説明する。ステップS2の開始後、ステップS11において、プロセッサ52は、移動機構20を動作させて、レーザ照射装置18を、第nの加工箇所PLに対して設定された第1の教示点TPに位置決めする。
【0139】
ステップS12において、プロセッサ52は、レーザ走査を開始する。具体的には、プロセッサ52は、上述のように、レーザ発振器16を動作させてガイドレーザLBgを生成し、レーザ照射装置18を第1の教示点TPに静止させた状態でガイドレーザLBgを第nの加工箇所PLに照射して、該第nの加工箇所PLの加工経路PTを、該ガイドレーザLBgによって、走査速度Vで繰り返しレーザ走査する。
【0140】
オペレータは、このステップS12で第nの加工箇所PLに対するレーザ走査が実行されている間に、ガイドレーザLBgと環境物104との干渉の有無を、目視によって確認することができる。干渉確認を完了すると、オペレータは、入力装置60を操作して、干渉確認指令CM5を入力する。
【0141】
ステップS13において、プロセッサ52は、干渉確認指令CM5を受け付けたか否かを判定する。プロセッサ52は、干渉確認指令CM5を受け付けた(すなわち、YES)と判定した場合は、ステップS12で開始したレーザ走査を終了(つまり、ガイドレーザLBgの出射を停止)し、ステップS15へ進む一方、NOと判定した場合は、ステップS14へ進む。
【0142】
ステップS14において、プロセッサ52は、確認信号RSを生成する。例えば、プロセッサ52は、確認信号RSとして、「ガイドレーザと環境物との干渉を確認してください。干渉がない場合は次のステップへ進んでください。」という確認信号RSを、画像又は音声のデータ形式として生成する。プロセッサ52は、生成した確認信号RSを、表示装置62又はスピーカ(図示せず)を通して出力し、ステップS13へ戻る。
【0143】
このように、プロセッサ52は、ステップS13でYESと判定するまで、ステップS13及びS14をループする。ステップS15において、プロセッサ52は、移動機構20を動作させて、レーザ照射装置18を、第nの加工箇所PLに対して設定された第2の教示点TPm+1に位置決めする。
【0144】
ステップS16において、プロセッサ52は、レーザ走査を開始する。具体的には、プロセッサ52は、上述のように、レーザ照射装置18を第2の教示点TPm+1に静止させた状態でガイドレーザLBgを第nの加工箇所PLに再度照射し、該第nの加工箇所PLの加工経路PTを、ガイドレーザLBgによって、走査速度Vで繰り返しレーザ走査する。
【0145】
オペレータは、このステップS16で第nの加工箇所PLに対するレーザ走査が実行されている間に、ガイドレーザLBgと環境物104との干渉の有無を、目視によって再度確認する。干渉確認を完了すると、オペレータは、入力装置60を操作して、干渉確認指令CM6を入力する。
【0146】
ステップS17において、プロセッサ52は、干渉確認指令CM6を受け付けたか否かを判定する。プロセッサ52は、YESと判定した場合は、ステップS16で開始したレーザ走査を終了し、図12中のステップS3へ進む一方、NOと判定した場合はステップS18へ進む。ステップS18において、プロセッサ52は、上述のステップS14と同様に確認信号RSを生成し、ステップS17へ戻る。このように、プロセッサ52は、ステップS17でYESと判定するまで、ステップS17及びS18をループする。
【0147】
再度、図12を参照して、ステップS3において、プロセッサ52は、第nの加工箇所PLを特定する番号「n」を「1」だけインクリメントする(n=n+1)。ステップS4において、プロセッサ52は、この時点で設定されている番号「n」が「6」よりも大きい(すなわち、n>6)か否かを判定する。
【0148】
プロセッサ52は、n>6である(すなわち、YES)と判定した場合は、図12に示す干渉確認動作IVOのフローを終了する一方、n≦6である(すなわち、NO)と判定した場合は、ステップS2へ戻る。こうして、プロセッサ52は、ステップS4でYESと判定するまで、ステップS2~S4のループを繰り返し実行する。プロセッサ52は、干渉確認プログラムIPGに従って、図12に示す各ステップS1~S4を実行する。したがって、干渉確認プログラムIPGには、各ステップS1~S4を実行するための指令CMi(例えば、コード)が規定されている。
【0149】
以上のように、本実施形態においては、プロセッサ52は、位置データ取得部80、画像生成部82、入力受付部84、動作速度設定部86、及びプログラム生成部88として機能して、干渉確認プログラムIPGを生成している。したがって、位置データ取得部80、画像生成部82、入力受付部84、動作速度設定部86、及びプログラム生成部88は、干渉確認プログラムIPGを生成する装置90(図9)を構成する。なお、位置データ取得部80、画像生成部82、入力受付部84、動作速度設定部86、及びプログラム生成部88は、例えば、プロセッサ52が実行するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。
【0150】
この装置90においては、動作速度設定部86は、入力受付部84が受け付けた動作パラメータPRiに基づいて、干渉確認動作IVOにおける動作速度ν(走査速度V)を、レーザ加工動作LPOよりも低い速度に定めている。そして、プログラム生成部88は、干渉確認動作IVOにおいてレーザ加工機12を動作速度ν(走査速度V)で動作させて、ガイドレーザLBgを加工箇所PLへ照射させる(図13のステップS12、S16)ための指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成する。
【0151】
この装置90によれば、干渉確認動作IVOにおいて、レーザ加工動作LPOよりも低い動作速度νでレーザ加工機12を動作させることにより、オペレータは、実際のレーザ加工動作LPOを行う前に、レーザ光LBgと環境物104との干渉を目視で確認することができる。その結果、該干渉の有無を事前に有効に検証することができ、干渉が発生した場合は、該干渉を回避するように加工プログラムPPGを修正する等の対策を講じることができる。
【0152】
また、装置90においては、入力受付部84は、動作パラメータPRiとして、走査速度Vi_n、走査時間t、及び許容時間τの入力を受け付け、動作速度設定部86は、該走査速度Vi_n、該走査時間t、及び該許容時間τに基づいて、干渉確認動作IVOにおける走査速度Vを定めている。この構成によれば、干渉確認動作IVOにおける走査速度Vを、オペレータが目視によって干渉確認できる速度として、自動で決定できる。
【0153】
また、装置90においては、位置データ取得部80は、レーザ加工動作LPOでレーザ照射装置18を位置決めする教示点TP、TPm+1の位置データPDTPを取得し、プログラム生成部88は、干渉確認動作IVOにおいてレーザ照射装置18を教示点TP、TPm+1へ位置決めする(図13のステップS11、S15)ための指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成している。
【0154】
この構成によれば、レーザ加工動作LPOにおける(より具体的には、加工プログラムPPGに規定されている)教示点TP、TPm+1を用いて、干渉確認動作IVOを実行できる。したがって、実際のレーザ加工動作LPOで発生し得る干渉を、事前に行う干渉確認動作IVOによって高精度に検証することができる。
【0155】
また、装置90においては、プログラム生成部88は、干渉確認動作IVOにおいてレーザ照射装置18を第1の教示点TP及び第2の教示点TPへ順に位置決めする毎にレーザ走査を実行する(図13のステップS11及びS12、ステップS15及びS16)ための指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成する。
【0156】
この構成によれば、干渉確認動作IVOにおいて、実際のレーザ加工動作LPOで加工箇所PLをレーザ走査するときのレーザ照射装置18の移動の始点(第1の教示点TP)と終点(第2の教示点TPm+1)で、ガイドレーザLBgによるレーザ走査を実行することになる。これにより、実際のレーザ加工動作LPOで加工箇所PLをレーザ走査するときに発生し得る干渉を、より効率的に検証することができる。
【0157】
また、装置90においては、入力受付部84は、複数の加工箇所PL毎に動作パラメータPRi(走査速度Vi_2、走査時間t、許容時間τ)の入力を受け付け、動作速度設定部86は、複数の加工箇所PL毎に、干渉確認動作IVOにおける動作速度ν(走査速度V)を定めている。
【0158】
この構成によれば、オペレータは、ワーク102と環境物104との位置関係等を考慮しつつ、干渉確認動作IVOでの動作速度νを、加工箇所PL毎に詳細に設定できるようになる。このため、干渉確認動作IVOでの目視による干渉確認を容易化することができる。
【0159】
また、装置90においては、画像生成部82は、動作パラメータPRiを入力するための入力画像データID3を生成する。この構成によれば、オペレータは、入力画像データID3を視認しつつ動作パラメータPRiを入力することができることから、動作パラメータPRiを設定する作業を簡単化できる。
【0160】
なお、本実施形態においては、動作速度設定部86が、動作速度νとして、走査速度Vを定める場合について述べた。しかしながら、これに限らず、動作速度設定部86は、動作速度νとして、走査速度Vの代わりに(又は、走査速度Vに加えて)、移動機構20がレーザ照射装置18を移動させる移動速度Uを定めてもよい。この場合において、入力受付部84は、複数の加工箇所PL毎に、動作パラメータPRiとして、移動速度Uの入力を受け付けてもよい。
【0161】
また、入力受付部84は、動作パラメータPRiとして、上述の走査時間tの代わりに(又は、加えて)、走査周波数fi_n(=1/t)を受け付けてもよい。この場合、動作速度設定部86は、入力された走査周波数fi_nに対応する走査速度Vfnを、Vfn=fi_n×Lなる式(但し、Lは、加工箇所PLの加工経路PTの経路長)から求め、該走査速度Vfnを、MAX(MIN(Vi_n,Vfn),Vτn)なる条件式(I)に適用することで、干渉確認動作IVOにおける走査速度Vを定めてもよい。
【0162】
なお、上述の条件式(I)は、MAX(MIN(Vi_n,Vtn),Vτn)なる論理式に限定されない。オペレータは、条件式(I)として、如何なる論理式を用いてもよい。例えば、条件式(I)として、MIN(MAX(Vi_n,Vtn),Vτn)なる論理式を用いてもよい。
【0163】
なお、本実施形態においては、入力受付部70が、動作パラメータPRiとして、走査速度Vi_n、走査時間t、及び許容時間τの入力を受け付ける場合について述べた。しかしながら、これに限らず、入力受付部70は、走査速度Vi_n、走査時間t、及び許容時間τの1つ(又は2つ)のみを受け付けてもよい。この場合、動作速度設定部86は、該1つ(又は2つ)に基づいて動作速度νを定める。
【0164】
また、本実施形態においては、位置データ取得部80が、教示点TPの位置データPDTPを取得し、プログラム生成部88が、干渉確認動作IVOでレーザ照射装置18を教示点TPに位置決めする指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成する場合について述べた。
【0165】
しかしながら、これに限らず、プログラム生成部88は、位置データPDTPを用いることなく、干渉確認動作IVOでレーザ照射装置18を任意の位置に位置決めする指令CMiを規定した干渉確認プログラムIPGを生成してもよい。該任意の位置は、実行する干渉確認動作IVOに応じて、オペレータによって定められてもよい。すなわち、この場合、装置90から位置データ取得部80を省略できる。
【0166】
また、本実施形態においては、プログラム生成部88は、図13中のステップS12及びS16でレーザ照射装置18を教示点TP及びTPm+1に静止させた状態でレーザ走査するように、干渉確認プログラムIPGを生成する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、プログラム生成部88は、ステップS12及びS16でレーザ照射装置18を、教示点TP及びTPm+1に静止させることなく、該教示点TP及びTPm+1を通過する間にレーザ走査を実行するように、干渉確認プログラムIPGを生成してもよい。
【0167】
なお、図13に示す干渉確認動作IVOのフローから、ステップS13、S14、S17及びS18を省略してもよい。例えば、干渉確認動作IVOにおいて、プロセッサ52は、ステップS12の開始後に、第nの加工箇所PLを、所定の回数Nだけ繰り返しレーザ走査した後に、ステップS15へ進んでもよい。
【0168】
また、プロセッサ52は、ステップS16の開始後に、第nの加工箇所PLを、所定の回数Nだけ繰り返しレーザ走査した後に、ステップS2を終了してもよい。この場合において、入力受付部84は、動作パラメータPRiとして、加工箇所PL毎に、回数Nの入力をさらに受け付けてもよい。
【0169】
また、装置90の機能(すなわち、位置データ取得部80、画像生成部82、入力受付部84、動作速度設定部86、及びプログラム生成部88)は、制御装置14に実装することもできる。この場合、制御装置14のプロセッサが、装置90として機能する。
【0170】
なお、図2及び図9に示す実施形態においては、画像生成部68及び82が、画像データID2(図8)及びID3(図11)をそれぞれ生成する場合について述べた。しかしながら、これに限らず、プロセッサ52は、画像データID2又はID3を生成することなく、例えば、オペレータの音声によって干渉検出条件CD又は動作パラメータPRiの入力を受け付けてもよい。この場合、教示装置50には、オペレータの音声入力を受け付けるマイクロフォンがさらに設けられる。すなわち、この場合は、教示装置50又は装置90から画像生成部68又は82を省略できる。
【0171】
また、上述の実施形態においては、ワーク102及びワークモデル102Mに、6つの加工箇所PLが設定されている場合について述べた。しかしながら、これに限らず、ワーク102及びワークモデル102Mに、1つのみの加工箇所PLが設定されてもよいし、如何なる数の加工箇所PLが設定されてもよい。又は、また、加工経路PTは、図7に示すような四角形に限らず、例えば三角形、円形、又は直線状の線分等、如何なる形状として設定されてもよい。
【0172】
また、上述の制御装置14は、レーザ発振器16及びレーザ照射装置18の動作を制御する第1の制御装置14Aと、移動機構20の動作を制御する第2の制御装置14Bとを有してもよい。このような形態を図14に示す。第1の制御装置14A及び第2の制御装置14Bは、各々がプロセッサ(CPU、GPU等)及びメモリ(ROM、RAM等)を有するコンピュータであって、互いに通信可能に接続されている。
【0173】
第1の制御装置14Aと第2の制御装置14Bとは、互いに通信しつつ、レーザ発振器16及びレーザ照射装置18の動作と、移動機構20の動作とを互いに同期させつつ、レーザ加工動作LPO又は干渉確認動作IVOを実行する。以上、実施形態を通じて本開示を説明したが、上述の実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0174】
10 レーザ加工システム
12 レーザ加工機
14 制御装置
16 レーザ発振器
18 レーザ照射装置
20 移動機構
50 教示装置
52 プロセッサ
64 モデルデータ取得部
66 動作生成部
68,82 画像生成部
70,84 入力受付部
72 干渉検出部
74,88 プログラム生成部
80 位置データ取得部
86 動作速度設定部
90 装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する装置であって、
前記干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付ける入力受付部と、
前記入力受付部が受け付けた前記動作パラメータに基づいて、前記干渉確認動作における前記レーザ加工機の動作速度を、前記レーザ加工動作よりも低い速度に定める動作速度設定部と、
前記干渉確認動作において、前記動作速度設定部によって定められた前記動作速度で前記レーザ加工機を動作させて、前記レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を前記加工箇所へ照射させる指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成するプログラム生成部と、を備える、装置。
【請求項2】
前記動作速度は、前記レーザ加工機が、前記加工箇所に設定された加工経路に沿ってレーザ光を移動させる走査速度を有し、
前記入力受付部は、前記動作パラメータとして、前記走査速度、レーザ光を前記加工経路の始点から終点まで移動させる走査時間、及び該走査時間の許容時間のうちの少なくとも1つの入力を受け付け、
前記動作速度設定部は、前記入力受付部が受け付けた前記少なくとも1つに基づいて、前記干渉確認動作における前記走査速度を定める、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記レーザ加工動作において前記レーザ加工機がレーザ照射装置を位置決めする教示点の位置データを取得する位置データ取得部をさらに備え、
前記プログラム生成部は、前記干渉確認動作において前記レーザ照射装置を前記教示点へ位置決めする前記指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記レーザ加工機は、前記レーザ加工動作において、前記レーザ照射装置を第1の前記教示点から第2の前記教示点へ移動させる間に、レーザ光を前記加工箇所に設定された加工経路の始点から終点まで移動させるレーザ走査を実行し、
前記プログラム生成部は、前記干渉確認動作において前記レーザ照射装置を前記第1の教示点及び前記第2の教示点へ順に位置決めする毎に前記レーザ走査を実行させる前記指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記入力受付部は、前記ワークに設定された複数の前記加工箇所毎に、前記動作パラメータの入力を受け付け、
前記動作速度設定部は、前記複数の加工箇所毎に、前記干渉確認動作における前記動作速度を定める、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記動作パラメータを入力するための入力画像データを生成する画像生成部をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の装置を備える、前記レーザ加工動作を教示するための教示装置。
【請求項8】
ワークに設定された加工箇所をレーザ加工するレーザ加工動作を実行するレーザ加工機に、レーザ光と環境物との干渉を事前に確認するための干渉確認動作を実行させる干渉確認プログラムを生成する方法であって、
プロセッサが、
前記干渉確認動作のための動作パラメータの入力を受け付け、
受け付けた前記動作パラメータに基づいて、前記干渉確認動作における前記レーザ加工機の動作速度を、前記レーザ加工動作よりも低い速度として定め、
前記干渉確認動作において、定められた前記動作速度で前記レーザ加工機を動作させて、前記レーザ加工動作とは異なる光学特性のレーザ光を前記加工箇所へ照射させる指令を規定した前記干渉確認プログラムを生成する、方法。