(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013678
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】シートパッドの製造方法および小パッド
(51)【国際特許分類】
B29C 44/58 20060101AFI20250117BHJP
A47C 7/18 20060101ALI20250117BHJP
A47C 27/15 20060101ALI20250117BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20250117BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20250117BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20250117BHJP
B29C 44/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B29C44/58
A47C7/18
A47C27/15 A
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/12
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024197967
(22)【出願日】2024-11-13
(62)【分割の表示】P 2021045401の分割
【原出願日】2021-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003425
【氏名又は名称】株式会社東洋クオリティワン
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】内田 悠太
(57)【要約】
【課題】発泡中のフォームが周り込んで固化した部分に起因する異音の発生を低減できるシートパッドの製造方法および小パッドを提供する。
【解決手段】シートパッドの製造方法は、第1型のキャビティ表面に小パッドを取り付ける取付工程と、第1型と第2型とを閉じる型閉じ工程と、第1型と第2型との間でパッド本体の原料液を発泡させてパッド本体と小パッドとを一体化する成形工程と、を備え、第2型は、第1型と第2型とが閉じられたときの第1型に向かって突出する突起を備え、型閉じ工程では、小パッドの本体部に突起を押し付けて、小パッドの鍔をキャビティ表面に押し付ける。小パッドは、軟質フォームから露出する第1面を有する本体部と、第1面に隣接する第1鍔面を有し本体部から張り出す鍔と、を備え、鍔は、第1面と第1鍔面とのなす角が135°以上180°未満になるように傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部から張り出す鍔と、を備える弾性体からなる小パッドと、軟質フォームからなるパッド本体と、を一体化させるシートパッドの製造方法であって、
第1型のキャビティ表面に前記小パッドを取り付ける取付工程と、
前記第1型と第2型とを閉じる型閉じ工程と、
前記第1型と前記第2型との間で前記パッド本体の原料液を発泡させて前記パッド本体と前記小パッドとを一体化する成形工程と、を備え、
前記第2型は、前記第1型と前記第2型とが閉じられたときの前記第1型に向かって突出する突起を備え、
前記型閉じ工程では、前記突起を前記本体部に押し付けて、前記鍔を前記キャビティ表面に押し付けるシートパッドの製造方法。
【請求項2】
前記小パッドは、前記軟質フォームから露出する第1面を有する本体部と、
前記第1面に隣接する第1鍔面を有し前記本体部から張り出す鍔と、を備え、
前記鍔は、前記第1面と前記第1鍔面とのなす角が135°以上180°未満になるように傾斜している請求項1記載のシートパッドの製造方法。
【請求項3】
軟質フォームと一体化される弾性体からなる小パッドであって、
前記軟質フォームから露出する第1面を有する本体部と、前記第1面に隣接する第1鍔面を有し前記本体部から張り出す鍔と、を備え、
前記鍔は、前記第1面と前記第1鍔面とのなす角が135°以上180°未満になるように傾斜している小パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は弾性体からなる小パッドと軟質フォームからなるパッド本体とが一体化したシートパッドの製造方法および小パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
弾性体からなる小パッドと軟質ウレタンフォームからなるパッド本体とが一体化したシートパッドは知られている(特許文献1)。この種のシートパッドは、第1型のキャビティ表面に小パッドを固定した後、第1型と第2型との間でパッド本体の原料液を発泡させてパッド本体と小パッドとを一体化して作られる。第1型のキャビティ表面と小パッドとの間にできた隙間に発泡中のフォームが周り込むと、フォームが周り込んで固化した余剰部分は、乗物のボディに擦れて異音の原因になることがある。特許文献1に開示の技術では、凹みを設けた小パッドを準備し、第1型のキャビティ表面に設けた壁を小パッドの凹みに嵌め、キャビティ表面と小パッドとの間の隙間を減らし、発泡中のフォームの周り込みを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしこの技術には改善の余地がある。
【0005】
本発明はこの要求に応えるためになされたものであり、フォームが回り込んで固化した部分に起因する異音の発生を低減できるシートパッドの製造方法および小パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
シートパッドは、軟質フォームからなるパッド本体と弾性体からなる小パッドとを備える。小パッドは、パッド本体から露出する第1面とパッド本体に接する第2面とを有する本体部と、本体部から張り出す鍔と、を備える。鍔は、第1面に隣接する第1鍔面と、第1鍔面に隣接しパッド本体が接する先端面と、先端面および第2面に隣接しパッド本体が接する第2鍔面と、を備える。
【0007】
本発明のシートパッドの製造方法は、第1型のキャビティ表面に小パッドを取り付ける取付工程と、第1型と第2型とを閉じる型閉じ工程と、第1型と第2型との間でパッド本体の原料液を発泡させてパッド本体と小パッドとを一体化する成形工程と、を備える。第2型は、第1型と第2型とが閉じられたときの第1型に向かって突出する突起を備える。取付工程では、本体部と鍔との間の境界とキャビティ表面との間に少なくとも隙間を設けて小パッドを第1型に取り付ける。型閉じ工程では、突起を本体部に押し付けて隙間を低減し、鍔をキャビティ表面に押し付ける。
【0008】
本発明の小パッドは、シートパッドの製造方法の実施に直接使用するものである。小パッドは弾性体からなり、軟質フォームから露出する第1面を有する本体部と、第1面に隣接する第1鍔面を有し本体部から張り出す鍔と、を備える。鍔は、第1面と第1鍔面とのなす角が135°以上180°未満になるように傾斜している。
【発明の効果】
【0009】
シートパッドによれば、小パッドに本体部から張り出す鍔があるので、鍔が張り出す分だけ、シートパッドの製造時に本体部の第1面に発泡中のフォームが周り込み難くなる。
【0010】
本発明の小パッドによれば、本体部の第1面と鍔の第1鍔面とのなす角が135°以上180°未満になるように鍔が傾斜しているから、成形型の中で軟質フォームと一体化されるときの熱の影響などによって鍔が変形しても、第1鍔面と成形型との間に隙間が生じ難くなる。鍔の第1鍔面に発泡中のフォームの周り込みが生じ難くなるので、フォームが周り込んで固化した部分に起因する異音の発生を低減できる。
【0011】
本発明のシートパッドの製造方法によれば、型閉じ工程において鍔をキャビティ表面に押しつけるから、鍔とキャビティ表面との間に隙間が生じ難くなる。鍔とキャビティ表面との間に侵入する、発泡中のフォームの量を低減できるので、鍔の第1鍔面にフォームの周り込みが生じ難くなる。よってフォームが周り込んで固化した部分に起因する異音の発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施の形態におけるシートパッドの断面図である。
【
図2】(a)は小パッドを取り付けた成形型の断面図であり、(b)は型閉じした成形型の断面図である。
【
図3】(a)は
図2の矢印IIIa方向から見た小パッドの背面図であり、(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb線における小パッドの断面図である。
【
図4】(a)は第2実施の形態における小パッドの背面図であり、(b)は
図4(a)のIVb-IVb線における小パッドの断面図である。
【
図5】(a)は第3実施の形態における小パッドの背面図であり、(b)は
図5(a)のVb-Vb線における小パッドの断面図である。
【
図6】(a)は第4実施の形態における小パッドの背面図であり、(b)は
図6(a)のVIb-VIb線における小パッドの断面図である。
【
図7】(a)は第5実施の形態における小パッドの背面図であり、(b)は
図7(a)のVIIb-VIIb線における小パッドの断面図であり、(c)は
図7(a)のVIIc-VIIc線における小パッドの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態におけるシートパッド10の断面図である。なお、
図1の矢印X,Y,Zは、シートパッド10及び小パッド30の互いに直交する第1方向、第2方向、第3方向をそれぞれ示している(
図2から
図7においても同じ)。
図1では、シートパッド10に配置される裏面材などの図示は省略されている。シートパッド10は、軟質ポリウレタンフォーム等の軟質フォームからなるパッド本体20と、弾性体からなる小パッド30と、が一体化されている。
【0014】
シートパッド10は、自動車や船舶などの乗物のシートにクッション材として用いられる。シートパッド10の表面11は、着座者の臀部や大腿部が接する面であってパッド本体20で形成されている。表面11の反対側のシートパッド10の裏面12に、小パッド30がパッド本体20に埋設されるように配置されている。シートパッド10の裏面12は、乗物のボディ(図示せず)が接する面である。パッド本体20には、シートパッド10の表面11と小パッド30とをつなぐ穴13が設けられている。穴13の分だけパッド本体20の硬さを低下させることができる。
【0015】
小パッド30を構成する弾性体は、例えば合成樹脂の中に連続気泡や独立気泡が分散した発泡体または多孔質体である。弾性体は、パッド本体20の成形時の熱に耐え得る耐熱性と機械的強度とを有しており、パッド本体20の材料である軟質フォームと材料の種類が異なるものであれば、特に制限なく用いることができる。弾性体を構成する合成樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリスチレン、ポリウレタン、フェノール樹脂、ポリ塩化ビニルが例示される。弾性体の材料はゴムやエラストマーでも良い。
【0016】
小パッド30を構成する弾性体は、軟質フォームと密度や硬さが異なるものを適宜選択して用いることができる。軟質フォームよりも低密度の弾性体を用いることにより、その分だけシートパッド10を軽量化できる。軟質フォームよりも硬さが大きい弾性体を用いることにより、その分だけシートパッド10の硬さを大きくできる。軟質フォームよりも低密度かつ硬さが大きい弾性体(例えば発泡ポリプロピレンや発泡ポリスチレン)からなる小パッド30がパッド本体20に埋め込まれると、シートパッド10の軽量化および硬さの増加を図ることができる。
【0017】
小パッド30は、本体部31と、本体部31から張り出す鍔32と、を備えている。本体部31は、パッド本体20から露出する第1面33と、パッド本体20と接する第2面34と、を有している。パッド本体20の穴13は第2面34につながっている。本体部31の第1面33の全部が、シートパッド10の裏面12の一部を形成している。
【0018】
鍔32は、第1面33に隣接する第1鍔面35と、第1鍔面35に隣接する先端面37と、先端面37及び本体部31の第2面34に隣接する第2鍔面36と、を含む。先端面37及び第2鍔面36はパッド本体20に接している。先端面37は、本体部31から第1方向(X方向)に最も離れている。第1鍔面35の縁35aは、シートパッド10の裏面12に位置し、パッド本体20に接している。
【0019】
本体部31の鍔32の付け根と先端面37との間の第1方向(X方向)の鍔32の長さは、第1方向に垂直な第2方向(Y方向)の鍔32の厚さよりも大きい。これにより鍔32の厚さが鍔32の長さよりも大きい場合に比べ、鍔32が曲がり易くなる。例えば鍔32の長さは30-100mmであり、鍔32の厚さは10-30mmである。本体部31の第2方向の厚さは、鍔32の厚さよりも大きい。
【0020】
小パッド30は、本体部31の第1面33と鍔32の第1鍔面35との間の境界に、第2鍔面36へ向かって凹む第1凹部38が設けられている。小パッド30は、本体部31の第2面34と鍔32の第2鍔面36との間の境界に、第1鍔面35へ向かって凹む第1凹部39が設けられている。第1凹部38,39は鍔32の幅方向に延び、第1凹部38の両端は第1鍔面35の縁35aにつながっている。第1凹部39の両端も第2鍔面36の縁につながっている。
【0021】
第1凹部38,39によって第1鍔面35と第2鍔面36との間の距離が短くなるから、鍔32が曲がり易くなる。特に小パッド30の硬さがパッド本体20の硬さよりも大きい場合に効果的である。第1凹部39は第2鍔面36と第2面34との間に設けられているので、第1凹部39の分だけ鍔32とパッド本体20との間の接触面積が増える。よって鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。
【0022】
鍔32には、第1鍔面35から第2鍔面36まで突き抜ける第2凹部40が形成されている。第2凹部40にはパッド本体20が接している。第2凹部40の分だけ鍔32とパッド本体20との間の接触面積が増えるから、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。小パッド30の硬さがパッド本体20の硬さよりも大きい場合には、第2凹部40の分だけ鍔32の断面積が小さくなるから、鍔32の硬さを低下させることができる。
【0023】
図2(a)及び
図2(b)を参照してシートパッド10の製造方法について説明する。
図2(a)は小パッド30を取り付けた成形型50の断面図である。
図2(b)は型閉じした成形型50の断面図である。
図2(a)及び
図2(b)では、成形型50に配置される裏面材は補強材の図示は省略されている。裏面材はシートパッド10の裏面12に配置される不織布などであり、補強材はパッド本体20に埋設される吊り込みワイヤーや樹脂クリップ、フレームなどである。
【0024】
シートパッド10は成形型50によって製造される。成形型50は、第1型51及び第2型52と、第1型51と第2型52とを開閉可能に接続するヒンジ53と、を備えている。成形型50を閉じると、第1型51と第2型52との間にキャビティ54が形成される。第1型51のキャビティ表面55によってシートパッド10の裏面12を含む部分が成形され、第2型52のキャビティ表面56によってシートパッド10の表面11を含む部分が成形される。
【0025】
第1型51のキャビティ表面55には、小パッド30を取り付けるピン57が設けられている。第2型52のキャビティ表面56には、成形型50を閉じたときの第1型51のキャビティ表面55に向かって突出する突起58が設けられている。突起58は、小パッド30の大きさや形状によって、第2型52の複数か所に設けても良い。
【0026】
図3(a)及び
図3(b)を参照して、第1型51に取り付けられる小パッド30を説明する。
図3(a)は
図2の矢印IIIa方向から見た小パッド30の背面図である。
図3(b)は
図3(a)のIIIb-IIIb線における小パッド30の断面図である。
図3(a)及び
図3(b)では、本体部31の一部の図示が省略されている(
図4(a)から
図7(c)においても同じ)。
【0027】
図3(a)に示すように本体部31の第1面33及び鍔32の第1鍔面35に隣接する第1凹部38は、断面形状が半円の溝であり、第1鍔面35の縁35aにつながっている。第1凹部38の断面形状は半円に限るものではなく、三角形や四角形などの多角形でも良い。本体部31の第2面34及び鍔32の第2鍔面36に隣接する第1凹部39も、第1凹部38と同様に、鍔32の幅方向(Z方向)の全長に亘って設けられている。
【0028】
鍔32を厚さ方向に貫通する第2凹部40は、鍔32の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、鍔32の幅方向に互いに間隔をあけて設けられている。本実施形態では第2凹部40の断面形状は円形であるが、これに限るものではなく、楕円、三角形や四角形などの多角形でも良い。
【0029】
図3(b)に示すように、第1型51に小パッド30が取り付けられる前の状態では、本体部31の第1面33と鍔32の第1鍔面35とのなす角θが135°以上180°未満になるように、鍔32は傾斜している。角度θは、本体部31の第1面33と鍔32の第1鍔面35との境界と第1鍔面35の縁35aとを結ぶ線分と、第1面33のうち第1鍔面35に最も近い部分と、のなす角をいう。小パッド30がパッド本体20と一体化したシートパッド10は、鍔32や本体部31を投影する平面がこの線分に平行な平面に等しい(
図1参照)。
【0030】
図2(a)に戻って説明する。第1型51に小パッド30を取り付ける取付工程では、第1型51のキャビティ表面55と、小パッド30の本体部31の第1面33及び鍔32の第1鍔面35と、が対面するように、本体部31に設けられた穴31aにピン57をはめて小パッド30を第1型51に固定する。小パッド30を第1型51に固定するときに、鍔32の付け根とキャビティ表面55との間に隙間59があっても良い。
【0031】
軟質ウレタンフォームの原料液を混合し、注入装置(図示せず)から第2型52に供給した後、型閉じ工程において、
図2(b)に示すように成形型50を閉じる。突起58は、成形型50を閉じたときに小パッド30の本体部31を第1型51に押し付けるように位置や長さが設定されている。型閉じに伴い、突起58によって小パッド30は第1型51に向かって押し付けられる。取付工程において隙間59がある場合には、型閉じ工程において隙間59が無くなる又は隙間59が小さくなる。
【0032】
小パッド30の本体部31の第1面33は、突起58が本体部31を押す力によってキャビティ表面55に押し付けられる。小パッド30は弾性体からなり、本体部31の第1面33に対して鍔32の第1鍔面35は傾斜しているので、本体部31の第1面33及び鍔32の第1鍔面35がキャビティ表面55に押し付けられると、鍔32は弾性変形する(曲がる)。突起58が本体部31を押す力に加え、鍔32の弾性変形の復元力によって鍔32の第1鍔面35はキャビティ表面55を強く押す。
【0033】
小パッド30は、本体部31の第1面33と鍔32の第1鍔面35とのなす角θが135°以上180°未満なので、キャビティ表面55の形状にもよるが、小パッド30がキャビティ表面55に押し付けられたときに、鍔32の破損を防ぎながら所望の復元力を鍔32に発生させることができる。鍔32の破損を防ぐため、角度θは165°以上178°以下がより好ましい。
【0034】
第2型52に供給された原料液は発泡して、成形工程において、小パッド30の第2面34、第2鍔面36及び先端面37に接しながらキャビティ54を満たし、突起58の部分に穴13があいたパッド本体20となる。鍔32の第1鍔面35は、突起58が本体部31を押す力に鍔32の復元力を加えた力によってキャビティ表面55に押し付けられている。従って発泡中のフォームが侵入する隙間が、第1鍔面35とキャビティ表面55との間に生じ難い。よって隙間に侵入したフォームが固化した部分が第1鍔面35に生じ難い。
【0035】
小パッド30の材料や形状にもよるが、成形工程における成形型50の温度や原料液の反応による発熱によって小パッド30の第1面33の縁33aの付近が変形し、縁33aの付近が反って縁33aとキャビティ表面55との間に隙間が生じることがある。この隙間に発泡中のフォームが周り込んで固化すると、固化した部分が乗物のボディに擦れて異音の原因になることがある。
【0036】
このフォームの周り込みの発生を低減するため、第1面33の縁33aの付近に反りが発生し易い箇所に、本体部31から張り出す鍔32を設けるのが好ましい。成形工程において鍔32が変形しても、鍔32の復元力によって第1鍔面35の縁35aとキャビティ表面55との間に隙間が生じ難いからである。従って本体部31の第1面33のうち反りが発生し易い部分に選択的に鍔32を設ければ良い。本体部31の第1面33の縁33aの全周に鍔32を設けても良い。
【0037】
鍔32の長さ(X方向の寸法)は、鍔32の厚さ(Y方向の寸法)よりも大きいから、型閉じ工程においてキャビティ表面55の形状に従って鍔32を変形させ易くできる。さらに小パッド30に第1凹部38,39及び第2凹部40が設けられているから、キャビティ表面55の形状に従って鍔32を変形させ易くできる。第2凹部40は鍔32の幅方向に間隔をあけて複数設けられているから、鍔32の幅方向(Z方向)の曲げやねじりによる変形が生じ易くなり、キャビティ表面55の形状に従って鍔32をさらに変形させ易くできる。
【0038】
シートパッド10は、軟質フォームからなるパッド本体20に小パッド30が埋め込まれている。小パッド30に本体部31から張り出す鍔32があるので、鍔32が張り出す分だけ本体部31の第1面33にフォームが到達し難くなる。小パッド30は第1鍔面35に平行な平面上に投影された鍔32の面積が、その平面上に投影された本体部31の面積より小さいので、シートパッド10を着座者が使用して、その平面にほぼ垂直にパッド本体20に力が加わったときに鍔32に加わる力は、本体部31に加わる力よりも小さくなる。鍔32や本体部31に加わる力が小さいほど、フォームが周り込んで固化した部分に起因する異音は生じ難くなるので、第1鍔面35に仮にフォームの周り込みがあっても、第1鍔面35にフォームが周り込んで固化した部分と車体のボディとが擦れて生じる異音を低減できる。
【0039】
図4(a)及び
図4(b)を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では、鍔32を厚さ方向に貫通する第2凹部40が鍔32に設けられる場合について説明した。第2実施形態では、鍔32を貫通しない凹みからなる第2凹部61,62が鍔32に設けられる場合について説明する。第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0040】
図4(a)は第2実施の形態における小パッド60の背面図である。
図4(b)は
図4(a)のIVb-IVb線における小パッド60の断面図である。小パッド60は、小パッド30と同様に、パッド本体20と一体化されシートパッド10を構成する。
【0041】
小パッド60は、鍔32の第1鍔面35の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、第2鍔面36に向かって凹む球冠状の第2凹部61が、鍔32の幅方向(Z方向)に互いに間隔をあけて設けられている。小パッド60は、鍔32の第2鍔面36の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、第1鍔面35に向かって凹む球冠状の第2凹部62が、鍔32の幅方向に互いに間隔をあけて設けられている。第2凹部61,62の位置や形状、数は適宜設定される。
【0042】
小パッド60の第1鍔面35や第2鍔面36に第2凹部61,62があるから、鍔32が曲がり易くなる。よって小パッド60を第1型51に取り付けるときに、キャビティ表面55の形状に従って鍔32を変形させ易くできる。第2凹部62の分だけパッド本体20と第2鍔面36との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。さらに第2凹部61,62は鍔32を貫通していないし、第2凹部61は第1鍔面35の縁35aにつながっていないので、第2凹部61,62から第1鍔面35に軟質フォームが侵入しないようにできる。
【0043】
図5(a)及び
図5(b)を参照して第3実施の形態について説明する。第2実施形態では、鍔32の幅方向(Z方向)に互いに間隔をあけて第2凹部61,62が設けられる場合について説明した。第3実施形態では、鍔32の幅方向に延びる第2凹部71,72が鍔32に設けられる場合について説明する。第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0044】
図5(a)は第3実施の形態における小パッド70の背面図である。
図5(b)は
図5(a)のVb-Vb線における小パッド70の断面図である。小パッド70は、小パッド30と同様に、パッド本体20と一体化されシートパッド10を構成する。
【0045】
小パッド70は、鍔32の第1鍔面35(本実施形態では1箇所)に、第2鍔面36に向かって凹む第2凹部71が設けられている。第2凹部71は鍔32の幅方向に延び、第1鍔面35の縁35aに第2凹部71の両端がつながっている。小パッド70は、鍔32の第2鍔面36(本実施形態では1箇所)に、第1鍔面35に向かって凹む第2凹部72が設けられている。第2凹部72は鍔32の幅方向に延び、第2鍔面36の縁に第2凹部72の両端がつながっている。
【0046】
小パッド70の第1鍔面35や第2鍔面36に第2凹部71,72があるから、鍔32が曲がり易くなる。よって小パッド70を第1型51に取り付けるときに、キャビティ表面55の形状に従って鍔32を変形させ易くできる。第2凹部72の分だけパッド本体20と第2鍔面36との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。
【0047】
図6(a)及び
図6(b)を参照して第4実施の形態について説明する。第3実施形態では、鍔32の幅方向(Z方向)に延びる第2凹部71,72が鍔32に設けられる場合について説明した。第4実施形態では、鍔32の長さ方向(X方向)に延びる第2凹部81,82が鍔32に設けられる場合について説明する。第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0048】
図6(a)は第4実施の形態における小パッド80の背面図である。
図6(b)は
図6(a)のVIb-VIb線における小パッド80の断面図である。小パッド80は、小パッド30と同様に、パッド本体20と一体化されシートパッド10を構成する。
【0049】
小パッド80は、鍔32の第1鍔面35の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、第2鍔面36に向かって凹む第2凹部81が設けられている。第2凹部81は、第1鍔面35の縁35aのうち鍔32の先端面37と第1鍔面35とが交わる縁から本体部31に向かって鍔32の長さ方向に延びている。第2凹部81は第1凹部38と離れている。
【0050】
小パッド80は、鍔32の第2鍔面36の複数箇所(本実施形態では3箇所)に、第1鍔面35に向かって凹む第2凹部82が設けられている。第2凹部82は、第2鍔面36の縁のうち鍔32の先端面37と第2鍔面36とが交わる縁から本体部31に向かって鍔32の長さ方向に延びている。第2凹部82は第1凹部39と離れている。
【0051】
小パッド80の第1鍔面35や第2鍔面36に第2凹部81,82があるから、鍔32が曲がり易くなる。よって小パッド80を第1型51に取り付けるときに、キャビティ表面55の形状に従って鍔32を変形させ易くできる。第2凹部82の分だけパッド本体20と第2鍔面36との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。
【0052】
第2凹部81にフォームが侵入すれば、第2凹部81の分だけパッド本体20と第1鍔面35との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。第2凹部81にフォームが侵入する量が少なければ、原料液が発泡・反応するときに発生するガスや成形型50内に残留した空気を第2凹部81にためることができる。ガスの残留が原因で、小パッド80の先端面37とパッド本体20との間に生じ易い軟質フォームの欠肉を低減できる。
【0053】
図7(a)、
図7(b)及び
図7(c)を参照して第5実施の形態について説明する。第3実施形態では、鍔32の幅方向(Z方向)に延びる第2凹部71,72が鍔32に設けられる場合について説明した。第4実施形態では、鍔32の長さ方向(X方向)に延びる第2凹部81,82が鍔32に設けられる場合について説明した。第5実施形態では、第2凹部71,72,81,82が鍔32に設けられる場合について説明する。第1実施形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0054】
図7(a)は第5実施の形態における小パッド90の背面図である。
図7(b)は
図7(a)のVIIb-VIIb線における小パッド90の断面図である。小パッド90は、小パッド30と同様に、パッド本体20と一体化されシートパッド10を構成する。
【0055】
小パッド90の第1鍔面35に第2凹部71,81が設けられ、第2鍔面36に第2凹部72,82が設けられている。第2凹部71,81は互いに交わり、第2凹部72,82は互いに交わっている。これにより鍔32がさらに曲がり易くなる。よって小パッド90を第1型51に取り付けるときに、キャビティ表面55の形状に従って鍔32をより変形させ易くできる。
【0056】
第2凹部72,82の分だけパッド本体20と第2鍔面36との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。また第2凹部71,81の分だけパッド本体20と第1鍔面35との接触面積が増えるので、鍔32とパッド本体20との間の接合強度を向上できる。さらに第4実施形態と同様に、第2凹部81によって軟質フォームの欠肉を低減できる。
【0057】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0058】
実施形態では、クッションパッドを例示してシートパッド10を説明したが、これに限られるものではない。シートパッド10をバックパッドに適用することは当然可能である。
【0059】
実施形態では、第1型51と第2型52とがキャビティ54を作る成形型50を用いてシートパッド10を製造する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1型51と第2型52との間に中子を設ける成形型を用いてシートパッド10を製造することは当然可能である。
【0060】
実施形態では、第1型51のキャビティ表面55が略平坦な場合を説明したが、これに限られるものではない。キャビティ表面55に曲面や段差などを設定することは当然可能である。小パッドの第1面33や第1鍔面35の形状は、キャビティ表面55の形状に応じて設定される。
【0061】
実施形態では、シートパッド10及び成形型50に配置される裏面材(図示しない)を設けたが、これに限られるものではない。裏面材は設けなくても良い。
【0062】
実施形態では、本体部31の周の一部に鍔32が張り出す小パッドを説明したが、これに限られるものではない。鍔32は本体部31の周の複数箇所に設けても良いし、本体部31の全周に設けても良い。
【0063】
実施形態では、鍔32の第1凹部38及び第2凹部71が、第1鍔面35の幅方向の全体に亘って連続して設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1鍔面35の幅方向の全体に亘って断続的に第1凹部38や第2凹部71を設けたり、第1鍔面35の幅方向の一部に第1凹部38や第2凹部71を設けたりすることは当然可能である。
【0064】
実施形態では、鍔32の第1凹部39及び第2凹部72が、第2鍔面36の幅方向の全体に亘って連続して設けられる場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第2鍔面36の幅方向の全体に亘って断続的に第1凹部39や第2凹部72を設けたり、第2鍔面36の幅方向の一部に第1凹部39や第2凹部72を設けたりすることは当然可能である。本体部31や鍔32の形状に応じて、第1凹部38,39や第2凹部71,72を屈曲させたり幅や深さを変化させたりすることは当然可能である。
【0065】
実施形態では、第1鍔面35に第1凹部38を設けるときに第2鍔面36に第1凹部39を設け、第1鍔面35に第2凹部61,71,81を設けるときに第2鍔面36に第2凹部62,72,82を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1凹部39,39の片方を省略して第1鍔面35と第2鍔面36のどちらかに第1凹部を設けたり、第2凹部61,71,81と第2凹部62,72,82の片方を省略して第1鍔面35と第2鍔面36のどちらかに第2凹部を設けたりすることは当然可能である。
【0066】
実施形態では、第1型51に設けたピン57と小パッド30との間の摩擦力によって小パッド30をキャビティ表面55に固定する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。他の力によって小パッド30を第1型51に固定することは当然可能である。他の力としては磁力、粘着力が例示される。
【0067】
実施形態では、第2型52に設けた突起58によって成形型50を閉じるときに小パッド30を第1型51に押し付ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。ピン57等によって第1型51が小パッド30をキャビティ表面55に引き付ける力が、キャビティ表面55に引き付けられることで弾性変形した鍔32の復元力による鍔32がキャビティ表面55を押す力よりも大きければ、鍔32が弾性変形した状態でパッド本体20の成形が行われるので、突起58を省略できる。また、小パッド30に突起を設け、成形型50を閉じるときに小パッド30の突起が第2型52に押されて小パッド30が第1型51に押し付けられる場合には、第2型52の突起58は省略できる。
【符号の説明】
【0068】
10 シートパッド
20 パッド本体
30,60,70,80,90 小パッド
31 本体部
32 鍔
33 第1面
34 第2面
35 第1鍔面
35a 第1鍔面の縁
36 第2鍔面
37 先端面
38,39 第1凹部
40,61,62,71,72,81,82 第2凹部
51 第1型
52 第2型
55 キャビティ表面
58 突起