(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013684
(43)【公開日】2025-01-24
(54)【発明の名称】重度腎機能障害を有する癌患者に対する治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/513 20060101AFI20250117BHJP
A61K 31/7072 20060101ALI20250117BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20250117BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61K31/513
A61K31/7072
A61P43/00 121
A61P35/00
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024198108
(22)【出願日】2024-11-13
(62)【分割の表示】P 2023032977の分割
【原出願日】2017-02-03
(31)【優先権主張番号】62/291,799
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000207827
【氏名又は名称】大鵬薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一郎
(57)【要約】
【課題】重度の腎機能障害を有する癌患者の癌治療方法の提供。
【解決手段】クレアチニンクリアランスが15mL/min以上30mL/min未満で
ある患者における癌の治療方法であって、α,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)
と5-クロロ-6-[(2-イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4
(1H,3H)-ジオン塩酸塩をモル比1:0.5で含有する配合剤を、FTD換算量と
して30~50mg/m2/日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与する
ことを含む、治療方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療方法で
あって、α,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-イミ
ノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩を
モル比1:0.5で含有する配合剤を、FTD換算量として30~50mg/m2/日の
用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与することを含む、治療方法。
【請求項2】
患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下の患
者である、請求項1記載の癌の治療方法。
【請求項3】
FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与する、請
求項1又は2記載の癌の治療方法。
【請求項4】
投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の癌の治療方法。
【請求項5】
投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14日間休
薬である、請求項1~4のいずれか1項に記載の癌の治療方法。
【請求項6】
癌が、消化器癌又は乳癌である、請求項1~5のいずれか1項に記載の癌の治療方法。
【請求項7】
癌が、大腸癌である、請求項1~6のいずれか1項に記載の癌の治療方法。
【請求項8】
クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療剤であ
って、α,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-イミノ
ピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩をモ
ル比1:0.5で含有する配合剤が、FTD換算量として30~50mg/m2/日の用
量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与される、治療剤。
【請求項9】
患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下の患
者である、請求項8記載の癌の治療剤。
【請求項10】
FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与される、
請求項8又は9記載の癌の治療剤。
【請求項11】
投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、請求項8~
10のいずれか1項に記載の癌の治療剤。
【請求項12】
投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14日間休
薬である、請求項8~11のいずれか1項に記載の癌の治療剤。
【請求項13】
癌が、消化器癌又は乳癌である、請求項8~12のいずれか1項に記載の癌の治療剤。
【請求項14】
癌が、大腸癌である、請求項8~13のいずれか1項に記載の癌の治療剤。
【請求項15】
クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療剤を製
造するためのα,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-
イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸
塩をモル比1:0.5で含有する配合剤の使用であって、前記配合剤が、FTD換算量と
して30~50mg/m2/日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与され
る、使用。
【請求項16】
患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下の患
者である、請求項15記載の使用。
【請求項17】
FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与される、
請求項15又は16記載の使用。
【請求項18】
投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、請求項15
~17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14日間休
薬である、請求項15~18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
癌が、消化器癌又は乳癌である、請求項15~19のいずれか1項に記載の使用。
【請求項21】
癌が、大腸癌である、請求項15~20のいずれか1項に記載の使用。
【請求項22】
クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療に使用
するためのα,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-イ
ミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩
をモル比1:0.5で含有する配合剤であって、FTD換算量として30~50mg/m
2/日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与される、配合剤。
【請求項23】
患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下の患
者である、請求項22記載の配合剤。
【請求項24】
FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与される、
請求項22又は23記載の配合剤。
【請求項25】
投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、請求項22
~24のいずれか1項に記載の配合剤。
【請求項26】
投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14日間休
薬である、請求項22~25のいずれか1項に記載の配合剤。
【請求項27】
癌が、消化器癌又は乳癌である、請求項22~26のいずれか1項に記載の配合剤。
【請求項28】
癌が、大腸癌である、請求項22~27のいずれか1項に記載の配合剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重度腎機能障害を有する癌患者に対する治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トリフルリジン(別名:α,α,α-トリフルオロチミジン。以下、「FTD」とも称
す)は、チミジレート生成阻害作用によるDNA合成阻害とDNAへの取り込みによるD
NA機能障害により抗腫瘍効果を発揮する。他方、チピラシル塩酸塩(化学名:5-クロ
ロ-6-[(2-イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3
H)-ジオン塩酸塩。以下、「TPI」とも称す)は、チミジンホスホリラーゼ阻害作用
を有する。TPIがチミジンホスホリラーゼによるFTDの生体内での分解を抑制するこ
とにより、FTDの抗腫瘍効果が増強されることが知られている(特許文献1)。
現在、FTDとTPIをモル比1:0.5で含有する配合剤(以下、「FTD・TPI
配合剤」とも称す)は、固形癌の治療剤として開発中であり、米国においては進行・再発
の結腸直腸癌の治療剤として、商品名ロンサーフ配合錠として承認されている(非特許文
献1及び2)。臨床におけるFTD・TPI配合剤の用法用量は、通常、成人には、体表
面積を基準に、FTDとして70mg/m2/日を、1日2回、5日間連続経口投与した
のち2日間休薬する。これを2回繰り返したのち14日間休薬する。これを1サイクルと
して投与を繰り返す、と定義されている。
【0003】
FTD・TPI配合剤は、TPIが腎排泄型の薬剤であることから、腎機能が低下した
患者へ投与した場合、FTDの曝露が増加する可能性があると理論上考えられている。臨
床試験においても、FTD・TPI配合剤投与患者のクレアチニンクリアランス(以下、
「CLcr」とも称す)値を基に腎機能障害別の有害事象発現率を比較した結果、骨髄抑
制に関連する副作用(血小板数減少、赤血球数減少、ヘモグロビン減少、好中球数減少)
の発現率が、腎機能正常(CLcr:≧90mL/min)に比べて軽度腎機能障害(C
Lcr:60-89mL/min)及び中等度腎機能障害(CLcr:30-59mL/
min)の方が高い傾向が認められている。この患者のクレアチニンクリアランス(CL
cr)値は、Cockcroft-Gault式を用いて算出され、米国食品医薬品局(
FDA;Food and Drug Administration)のガイダンス(
Guidance for Industry Pharmacokinetics i
n Patients with Impaired Renal Function
- Study Design, Data Analysis, and Impac
t on Dosing and Labeling)の腎機能分類基準に基づいて分類
したものである。そのため、重度の腎機能障害を有する患者(CLcr:15~29mL
/min)については適応外とされ、これまでに行われた臨床試験においても当該患者に
FTD・TPI配合剤は投与されていなく、安全性、有効性に関する情報は一切ない。
一般に、腎機能障害患者への薬物投与は、腎機能の程度に応じた投与量又は投与間隔の
調節が必要とされ、上記FDAガイダンスによれば薬物動態(PK)に基づいて用量を選
択することが推奨されている。
しかしながら、重度の腎機能障害を有する癌患者に対してより安全で、かつ有効性の高
い癌治療を行うことは容易ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Invest New Drugs 26(5):445-54,2008
【非特許文献2】Lancet Oncol.13(10):993-1001,2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、重度の腎機能障害を有する癌患者の癌治療方法を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、CLcrが15~29mL/minである重度の腎機能障害を有する癌患
者に対してFTD・TPI配合剤による癌治療を試みたところ、FTD換算量として1日
30~50mg/m2の用量を1日2~4回に分割して経口投与すれば、重篤な副作用を
回避しつつも、顕著な抗癌効果が認められることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明〔1〕~〔28〕を提供するものである。
〔1〕クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療方
法であって、α,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-
イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸
塩をモル比1:0.5で含有する配合剤を、FTD換算量として30~50mg/m2/
日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与することを含む、治療方法。
〔2〕患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下
の患者である、〔1〕記載の癌の治療方法。
〔3〕FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与する
、〔1〕又は〔2〕記載の癌の治療方法。
〔4〕投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、〔1〕
~〔3〕のいずれか1に記載の癌の治療方法。
〔5〕投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14日
間休薬である、〔1〕~〔4〕のいずれか1に記載の癌の治療方法。
〔6〕癌が、消化器癌又は乳癌である、〔1〕~〔5〕のいずれか1に記載の癌の治療方
法。
〔7〕癌が、大腸癌である、〔1〕~〔6〕のいずれか1に記載の癌の治療方法。
〔8〕クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療剤
であって、α,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(2-イ
ミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩
をモル比1:0.5で含有する配合剤が、FTD換算量として30~50mg/m2/日
の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与される、治療剤。
〔9〕患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以下
の患者である、〔8〕記載の癌の治療剤。
〔10〕FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与さ
れる、〔8〕又は〔9〕記載の癌の治療剤。
〔11〕投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、〔8
〕~〔10〕のいずれか1に記載の癌の治療剤。
〔12〕投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14
日間休薬である、〔8〕~〔11〕のいずれか1に記載の癌の治療剤。
〔13〕癌が、消化器癌又は乳癌である、〔8〕~〔12〕のいずれか1に記載の癌の治
療剤。
〔14〕癌が、大腸癌である、〔8〕~〔13〕のいずれか1に記載の癌の治療剤。
〔15〕クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療
剤を製造するためのα,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[
(2-イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオ
ン塩酸塩をモル比1:0.5で含有する配合剤の使用であって、前記配合剤が、FTD換
算量として30~50mg/m2/日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投
与される、使用。
〔16〕患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以
下の患者である、〔15〕記載の使用。
〔17〕FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与さ
れる、〔15〕又は〔16〕記載の使用。
〔18〕投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、〔1
5〕~〔17〕のいずれか1に記載の使用。
〔19〕投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14
日間休薬である、〔15〕~〔18〕のいずれか1に記載の使用。
〔20〕癌が、消化器癌又は乳癌である、〔15〕~〔19〕のいずれか1に記載の使用
。
〔21〕癌が、大腸癌である、〔15〕~〔20〕のいずれか1に記載の使用。
〔22〕クレアチニンクリアランスが30mL/min未満である患者における癌の治療
に使用するためのα,α,α-トリフルオロチミジン(FTD)と5-クロロ-6-[(
2-イミノピロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン
塩酸塩をモル比1:0.5で含有する配合剤であって、FTD換算量として30~50m
g/m2/日の用量を1日2~4回に分割して前記患者に経口投与される、配合剤。
〔23〕患者が、クレアチニンクリアランスが15mL/min以上29mL/min以
下の患者である、〔22〕記載の配合剤。
〔24〕FTD換算量として40mg/m2/日の用量を1日2回に分割して経口投与さ
れる、〔22〕又は〔23〕記載の配合剤。
〔25〕投与スケジュールが、1週あたり、5日間連続経口投与2日間休薬である、〔2
2〕~〔24〕のいずれか1に記載の配合剤。
〔26〕投与スケジュールが、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち14
日間休薬である、〔22〕~〔25〕のいずれか1に記載の配合剤。
〔27〕癌が、消化器癌又は乳癌である、〔22〕~〔26〕のいずれか1に記載の配合
剤。
〔28〕癌が、大腸癌である、〔22〕~〔27〕のいずれか1に記載の配合剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明の治療方法によれば、重篤な副作用を発症させることなく、重度の腎機能障害を
有する癌患者の優れた癌治療効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、投与後12日目のクレアチニンクリアランスとFTDの経口クリアランスの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明では、α,α,α-トリフルオロチミジンと5-クロロ-6-[(2-イミノピ
ロリジン-1-イル)メチル]ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン塩酸塩をモル
比1:0.5で含有する配合剤が用いられる。
FTD及びTPIはそれぞれ公知の化合物であり、例えば、国際公開第1996/30
346号パンフレットに記載の方法に従って合成することができる。また、FTD・TP
I配合剤も公知である(非特許文献1及び2)。また、錠剤形態のFTD・TPI配合剤
は、米国において進行・再発の結腸直腸癌の治療剤として承認されている。
【0012】
本発明で用いられるFTD・TPI配合剤は、経口投与可能な形態であればよい。例え
ば、錠剤、被覆錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤等が挙げら
れる。これらの製剤は、薬学的に許容される担体等を用い、この分野で通常知られた慣用
的な製剤化方法により製剤化することができる。
【0013】
また、FTD・TPI配合剤は、30~50mg/m2/日の用量を1日2~4回に分
割投与されるように、適宜分割して包装することも可能である。包装方法としては、この
分野で通常知られた慣用的な包装方法であれば特に制限はなく、例えば、錠剤であれば、
湿気及び酸素保護包装用材料中に包装することができる。
【0014】
薬学的に許容される担体としては、例えば、通常の薬剤に汎用される各種のもの、例え
ば賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、保湿剤、吸着剤、コーテ
ィング剤、溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、pH調整剤、緩衝剤、安定化剤、着
色剤、矯味剤、矯臭剤等を例示できる。
【0015】
賦形剤としては、乳糖、白糖、D-マンニトール、デンプン、結晶セルロース、ケイ酸
カルシウム等が挙げられる。
【0016】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロ
リドン、アメ粉、ヒプロメロース等が挙げられる。
【0017】
崩壊剤としては、デンプン、グリコール酸ナトリウム、カルメロースカルシウム、クロ
スカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、
部分アルファー化デンプン等が挙げられる。
【0018】
滑沢剤としては、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ステア
リン酸、フマル酸ステアリルナトリウム等が挙げられる。
【0019】
崩壊抑制剤としては、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油等が挙げられる
。
【0020】
吸収促進剤としては、第4級アンモニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられ
る。
【0021】
保湿剤としては、グリセリン、デンプン等が挙げられる。
【0022】
吸着剤としては、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等が挙
げられる。
【0023】
コーティング剤としては、エチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマ
ーRS、ヒプロメロース、白糖等が挙げられる。
【0024】
溶剤としては、水、プロピレングリコール、生理食塩液が挙げられる。
【0025】
溶解補助剤としては、ポリエチレングリコール、エタノール、α-シクロデキストリン
、マクロゴール400、ポリソルベート80等が挙げられる。
【0026】
懸濁化剤としては、カラギーナン、結晶セルロース・カルメロースナトリウム、ポリオ
キシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0027】
等張化剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、塩化カリウム等が挙げられる。
【0028】
pH調節剤・緩衝剤としては、クエン酸ナトリウム、塩酸、乳酸、リン酸、リン酸二水
素ナトリウム等が挙げられる。
【0029】
安定化剤としては、ピロ亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、エリソルビン酸、酸
化マグネシウム、ジブチルヒドロキシトルエン等が挙げられる。
【0030】
着色剤としては、酸化チタン、三二酸化鉄、食用青色1号、銅クロロフィル等が挙げら
れる。
【0031】
矯味・矯臭剤としてはアスパルテーム、サッカリン、スクラロース、l-メントール、
ミントフレーバー等が挙げられる。
【0032】
本発明において、FTD・TPI配合剤は、FTD換算量として30~50mg/m2
/日の用量を1日2~4回に分割して経口投与される。
FTD・TPI配合剤の用量は、FTD換算量として30~50mg/m2/日である
が、好ましくは30~48mg/m2/日であり、好ましくは35~45mg/m2/日で
あり、好ましくは40mg/m2/日である。
【0033】
また、1日あたりの投与回数は、2~4回であるが、好ましくは2~3回であり、より
好ましくは2回である。
【0034】
投与と投与の間隔は、6時間以上あけるのが好ましい。
【0035】
ここで、患者に対する投与量は、患者の身長及び体重から算出された体表面積(BSA
)により決定される。体表面積の計算方法としては、患者の人種、性別、健康状態、症状
等により適宜慣用の方法が用いられるが、例えば、下記1~6のような計算式が挙げられ
、好ましくは下記1または2(a)である。
1.The Mosteller formula(N Engl J Med 198
7 Oct 22;317(17):1098(letter)参照)
BSA(m2)=([身長(cm)×体重(kg)]/3600)1/2
2.The DuBois and DuBois formula(Arch Int
Med 1916 17:863-71;J Clin Anesth.1992;4
(1):4-10参照)
(a)BSA(m2)=0.20247×身長(m)0.725×体重(kg)0.425
(b)BSA(m2)=0.007184×身長(cm)0.725×体重(kg)0.425
3.The Haycock formula(The Journal of Ped
iatrics 1978 93:1:62-66参照)
BSA(m2)=0.024265×身長(cm)0.3964×体重(kg)0.5378
4.The Gehan and George formula(Cancer Ch
emother Rep 1970 54:225-35参照)
BSA(m2)=0.0235×身長(cm)0.42246×体重(kg)0.51456
5.The Boyd formula(Minneapolis:universit
y of Minnesota Press,1935参照)
BSA(m2)=0.0003207×身長(cm)0.3×体重(grams)(0.7285-
(0.0188 x LOG(grams))
6.The Fujimoto formula(Nihon Eiseigaku Z
asshi、1968 23(5):443-450参照)
BSA(m2)=0.008883×身長(cm)0.663×体重(kg)0.444
【0036】
例えば、身長175cm、体重70kgの癌患者の体表面積を上記1の計算式を用いて
計算した場合、体表面積は([175(cm)×70(kg)]/3600)1/2=1.
84(m2)と算出される。当該患者において投与量をFTD換算量として50mg/m2
/日とする場合は、1.84×50=92mgとなり、1日合計投与量は92mgと設定
される。
【0037】
本発明において、投与対象者はCLcrが30mL/min未満の癌患者である。より
好ましくは15mL/min以上30mL/min未満の癌患者である。特に好ましくは
15mL/min以上29mL/min以下の癌患者である。
患者のCLcrの値は腎機能の指標であり、CLcrが15~29mL/minの患者
は、重度の腎機能障害を有する患者(重度腎機能障害患者)を含む。重度腎機能障害患者
は高度腎機能障害患者ともいう。
【0038】
本発明において、CLcrは、次に示すCockcroft-Gault式を用いて算
出される。
[Cockcroft-Gault式]
男性:CLcr(mL/min)={(140-年齢)×体重(kg)}÷{血清クレア
チニン値(mg/dL)×72}
女性:CLcr(mL/min)={(140-年齢)×体重(kg)}÷{血清クレア
チニン値(mg/dL)×72}×0.85
なお、血清クレアチニン値は、常法により測定することができる。
【0039】
本発明において、投与スケジュールは、1週あたり、5日間連続経口投与したのち2日
間休薬するのが好ましい。また、5日間連続経口投与2日間休薬を2回繰り返したのち1
4日間休薬する、これを1サイクルとして投与を繰り返すのが好ましい。
【0040】
本発明の治療方法の対象となる癌は、例えば、頭頚部癌、消化器癌(食道癌、胃癌、十
二指腸癌、肝臓癌、胆道癌(胆嚢・胆管癌等)、膵臓癌、小腸癌、大腸癌(結腸直腸癌、
結腸癌、直腸癌等)等)、肺癌(非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、乳癌、卵巣癌、子宮癌(
子宮頚癌、子宮体癌等)、腎癌、膀胱癌、前立腺癌、皮膚癌等が挙げられる。なお、ここ
で癌には、原発巣のみならず、他の臓器(肝臓等)に転移した癌をも含む。このうち、抗
腫瘍効果と副作用の観点から、頭頸部癌、消化器癌、肺癌、乳癌、腎癌、皮膚癌が好まし
く、消化器癌又は乳癌がより好ましく、食道癌、大腸癌、胃癌がより好ましく、大腸癌が
特に好ましい。また、本発明の治療方法は、腫瘍を外科的に摘出した後に再発防止のため
に行われる術後補助化学療法であっても、腫瘍を外科的に摘出するために事前に行われる
術前補助化学療法であってもよい。
【実施例0041】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により
何ら限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常
の知識を有する者により可能である。
【0042】
(実施例1)重度腎機能障害を有する癌患者における投与量の推定
結腸/・直腸癌を含む固形癌の患者を対象に、FTD・TPI配合剤(FTDとTPI
とのモル比1:0.5の混合物)1回35mg/m2(FTDとして、以下、同様)を1
日2回5日間連続経口投与し2日間休薬する投与スケジュールを2回繰り返した後、14
日間休薬することを1サイクルとして繰り返す治療を行った際のFTDの薬物動態を検討
した。
患者は、投与開始前に上記Cockcroft-Gault式によりCLcrの値を算
出して腎機能を評価し、コントロール(正常、CLcr:≧90mL/min)、軽度(
CLcr:60~89mL/min)、中等度(CLcr:30~59mL/min)に
群分けした。FTD・TPI配合剤投与後1日目および12日目の投与前および投与後0
.5、1、2、4、6、8、10、12時間に採血を実施し、血漿中FTDおよびTPI
濃度を測定した。得られた血漿中濃度を用いてFTDおよびTPIの薬物動態パラメータ
を算出し、結果を表1に示した。
【0043】
【0044】
FTD・TPI配合剤においてFTDは抗癌活性を示す活性本体であり、TPIはFT
Dの血漿中濃度を上昇させるモジュレータである。したがって、反復投与後のFTD血漿
中濃度がFTD・TPI配合剤の効果および安全性に最も強く関係している。軽度腎機能
障害患者(Cohort 1)では腎機能正常患者と比較してFTDのAUC
0-12は約1
6%高く、中等度腎機能障害患者(Cohort 2)では約51%高いことから、腎機
能の低下と共にFTDのAUCが上昇するため、重度腎機能障害患者ではFTD・TPI
配合剤の投与量を減量する必要性が示唆された。FTDの消失半減期は軽度腎機能障害患
者で2.40時間、中等度腎機能障害患者で3.22時間であり、腎機能正常患者の2.
09時間と比較して大きな延長はみられていない。FTDの半減期の長さは一日二回投与
した場合の投与間隔、12時間と比較して十分に短いために投与間隔を変更することなく
、適切な投与量に減量することでFTD・TPI配合剤の効果を維持することができる。
重度腎機能障害患者に適切な投与量を決定するため、投与後12日目のFTDの経口ク
リアランス(CL/F)とクレアチニンクリアランス(CLcr)の回帰分析を行った。
結果を
図1に示す。
【0045】
図1のとおり、両パラメータの関係は以下のパワー曲線により近似することが可能であ
った。
FTD CL/F (L/hr) = 0.3432 × CLcr (mL/m
in)
0.4870
【0046】
本回帰式を用いてCLcrから各腎機能障害レベルにおけるFTDのCL/Fを算出し
、さらにFTDのAUCの腎機能正常患者に対する比率を算出し、これらの結果を表2に
示した。このとき、腎機能正常患者のCLcrの中央値(109mL/min)を対照(
1.00)として比率を算出した。重度腎機能障害患者にFTD・TPI配合剤を15m
g/m2、20mg/m2および25mg/m2で投与した場合のFTDのAUCは、それ
ぞれ腎機能正常患者、軽度腎機能障害患者、中等度腎機能障害患者に35mg/m2を投
与した場合のAUCに類似することが示唆された。一方、重度腎機能障害患者にFTD・
TPI配合剤をそのまま35mg/m2で投与した場合にはFTDのAUCは腎機能正常
患者の2倍以上に上昇すると考えられた。
【0047】
【0048】
本試験の安全性成績では、腎機能正常患者、軽度腎機能障害患者、中等度腎機能障害患
者のいずれもFTD・TPI配合剤の35mg/m2に忍容可能であった。したがって、
重度腎機能障害患者にFTD・TPI配合剤を15mg/m2、20mg/m2および25
mg/m2で投与した場合のFTDのAUCはいずれも忍容可能なレベルである。しかし
、15mg/m2を投与した場合のFTDのAUCは腎機能正常患者のAUCよりも低く
なり効果減弱の可能性がある。一方、重度腎機能障害患者の腎機能は不安定であることか
ら、25mg/m2を投与した場合にはFTDのAUCが予測を上回る可能性がある。こ
れらのことから、重度腎機能障害患者(CLcr:15~29mL/min)においては
、FTD・TPI配合剤は20mg/m2で投与することが最も好ましい。
重度腎機能障害患者にはFTD・TPI配合剤をFTD換算量として30~50mg/
m2/日の投与量に減量することにより、特にFTD換算量として40mg/m2/日の投
与量に減量することにより、安全性を維持しながら奏効を期待できる。