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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025001378
(43)【公開日】2025-01-08
(54)【発明の名称】送受信装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20241225BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023100917
(22)【出願日】2023-06-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大山 浩市
(72)【発明者】
【氏名】守口 智博
(72)【発明者】
【氏名】遠山 浩平
【テーマコード(参考)】
2H249
5J084
【Fターム(参考)】
2H249AA02
2H249AA04
2H249AA50
2H249AA65
2H249AA66
5J084AA05
5J084BA50
5J084BB04
5J084BB26
5J084BB28
5J084CA08
5J084EA18
(57)【要約】
【課題】信号品質の低下を抑制することができる送受信装置を提供する。
【解決手段】送受信装置は、筐体と、筐体の内部に配置され、電磁波を送信する送信部と、筐体の内部に配置され、電磁波を受信する受信部と、筐体の開口部を覆う透過部50と、透過部50に形成された回折格子60と、透過部50を加熱する発熱体70と、を備え、発熱体70は、透過部50の表面に配置され、送信部20が送信する電磁波を回折する形状とされており、回折格子の少なくとも一部は、発熱体によって構成されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受信装置であって、
筐体(10)と、
前記筐体の内部に配置され、電磁波を送信する送信部(20)と、
前記筐体の内部に配置され、電磁波を受信する受信部(20)と、
前記筐体の開口部を覆う透過部(50)と、
前記透過部に形成された回折格子(60)と、
前記透過部を加熱する発熱体(70)と、を備え、
前記発熱体は、前記透過部の表面に配置され、前記送信部が送信する電磁波を回折する形状とされており、
前記回折格子の少なくとも一部は、前記発熱体によって構成されている送受信装置。
【請求項2】
前記送信部は、光信号を送信する光源(21)を備え、
前記受信部は、光信号を受信する受光素子(22)を備え、
前記透過部は、光信号が透過する光学窓(51)を備え、
前記発熱体は、前記光源が送信する光信号を回折する形状とされている請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記発熱体は、前記透過部の表面にストライプ状に配置されており、前記送信部が送信する電磁波に対して回折格子として機能するピッチで配置されている請求項1に記載の送受信装置。
【請求項4】
前記発熱体のピッチは場所により変化する請求項3に記載の送受信装置。
【請求項5】
前記発熱体の線幅は場所により変化する請求項3に記載の送受信装置。
【請求項6】
前記透過部の表面に平行な一方向を第1方向とし、
前記透過部の表面に平行でかつ前記第1方向に対して傾斜した方向を第2方向として、
前記発熱体は、前記第1方向に平行なストライプ状に配置された第1発熱体(71)と、前記第2方向に平行なストライプ状に配置された第2発熱体(72)とを含んで構成されている請求項3ないし5のいずれか1つに記載の送受信装置。
【請求項7】
前記第1発熱体のピッチは一定であり、
前記第2発熱体のピッチは場所により変化する請求項6に記載の送受信装置。
【請求項8】
前記第1発熱体の線幅は一定であり、
前記第2発熱体の線幅は場所により変化する請求項6に記載の送受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送受信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の周囲の物体を検知するLiDAR(Light Detection And Ranging)等に用いられる光送受信装置は、開口部が形成された筐体と、筐体の内部に配置された光源および受光素子と、光源の出力光を回折する回折格子と、筐体の開口部を覆う光学窓とを備える。そして、例えば出力光の波長制御と回折機能の組み合わせにより、検知範囲内で光を走査する。また、例えば回動素子によって回折格子への出力光の入射角を変化させることにより、光を走査する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-28594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回折格子を光学窓の前段に配置すると、回折格子と光学窓との距離や所望の検知範囲に応じて光学窓を大きくする必要がある。したがって、光送受信装置の体格が大型化するおそれがある。
【0005】
これに対して、光学窓に回折格子を配置することにより、回折格子と光学窓との距離を小さくして、光学窓の大型化および光送受信装置の大型化を抑制することが考えられる。しかしながら、光学窓は種々の機能を有する複数の層で構成されることが多い。例えば、光学窓に雪や水滴等が付着すると機能低下のおそれがあるため、光学窓に導電性材料で構成された発熱体が形成された層を配置し、発熱体に電流を流すことにより、光学窓に付着した雪等を除去することが考えられる。そして、光学窓に回折格子を配置するために光学窓の層数を増やすと、信号品質が低下するおそれがある。このことは、光以外の電磁波を送受信する場合も同様である。
【0006】
本開示は上記点に鑑みて、信号品質の低下を抑制することができる送受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の1つの観点によれば、送受信装置は、筐体(10)と、筐体の内部に配置され、電磁波を送信する送信部(20)と、筐体の内部に配置され、電磁波を受信する受信部(20)と、筐体の開口部を覆う透過部(50)と、透過部に形成された回折格子(60)と、透過部を加熱する発熱体(70)と、を備え、発熱体は、透過部の表面に配置され、送信部が送信する電磁波を回折する形状とされており、回折格子の少なくとも一部は、発熱体によって構成されている。
【0008】
これによれば、回折格子の少なくとも一部が発熱体によって構成されているため、回折格子の配置による透過部の層数の増加を抑制し、信号品質の低下を抑制することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態にかかる送受信装置の断面図である。
図2】第1実施形態にかかる送受信装置の断面図である。
図3】PIC(Photonic Integrated Circuit)の上面図である。
図4】射出光の波長の変化を示す図である。
図5】レンズユニットの構成を示す図である。
図6】光学窓の上面図である。
図7図6のVII-VII断面図である。
図8】射出光の振れ角について説明するための図である。
図9A】回折格子の製造方法を示す断面図である。
図9B図9Aに続く回折格子の製造方法を示す断面図である。
図10】第2実施形態における光学窓の上面図である。
図11】第3実施形態における光学窓の上面図である。
図12】第3実施形態における光学窓の上面図である。
図13】第3実施形態における光学窓の上面図である。
図14】第4実施形態における光学窓の上面図である。
図15】第5実施形態における光学窓の上面図である。
図16】他の実施形態における送信部の構成を示す図である。
図17】他の実施形態における送信部の構成を示す図である。
図18】他の実施形態における送信部の構成を示す図である。
図19】他の実施形態における光学窓の上面図である。
図20】他の実施形態における光学窓の上面図である。
図21】他の実施形態における回折格子の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。本実施形態では、送受信装置をFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のLiDARに用いる場合について説明するが、送受信装置をTOF(Time of Flight)方式のLiDARに用いてもよい。図1図2に示すように、送受信装置は、筐体10と、PIC20と、レンズユニット30と、偏向子40と、透過部50と、回折格子60と、回折格子60とを備える。なお、図2では、PIC20およびレンズユニット30の図示を省略している。
【0013】
筐体10は、光を透過しない材料で構成されている。筐体10の内部には空間が形成されており、この内部の空間には、PIC20、レンズユニット30、偏向子40が配置されている。
【0014】
図3に示すように、PIC20は、光信号を送信する光源21と、光信号を受信する受光素子22とを備えている。PIC20の内部には、光源21と受光素子22とが一体化された同軸光学系が構成されている。PIC20は、送信部および受信部に相当する。
【0015】
本実施形態のPIC20は、互いに異なる波長の光を射出する4つの光源21を備えている。4つの光源21をそれぞれ光源211、212、213、214とする。光源211~214が備える図示しない導波路はPIC20の端面に露出するように並列に配置されており、光源211~214はPIC20の端面から光を射出する。
【0016】
光源211~214の射出光の波長をそれぞれλ、λ、λ、λとする。波長λ~λは、例えばO-bandまたはC-bandに含まれる波長とされるが、波長λ~λが他の波長帯に含まれる波長とされていてもよい。また、光源211~214は時間の経過とともに波長λ~λを変化させるように構成されており、波長λ~λは、それぞれΔλ、Δλ、Δλ、Δλの帯域幅で変化する。
【0017】
具体的には、図4に示すように、光源211、212は、波長λ、λを、FMCW方式の測距のために三角波形状に変化させる。そして、所定の時刻t1になると、光源211、212は、波長λ、λを、後述するY方向における射出光の走査のために変化させる。ここでは、時刻t1の前よりも後の方が波長λ、λが長くなっている。光源213、214についても、同様に、波長λ、λをFMCW方式の測距のために変化させるとともに、射出光の走査のために変化させる。これらの変化は、Δλ、Δλ、Δλ、Δλの帯域幅で行われる。
【0018】
PIC20は、4つの受光素子22を備えており、4つの受光素子22は、それぞれ、Δλ、Δλ、Δλ、Δλの帯域幅で変化する波長λ~λの光信号を受信するように構成されている。
【0019】
レンズユニット30は、光源21の射出光を拡大コリメートするものである。レンズユニット30は、2つのレンズを組み合わせて構成されている。具体的には、図5に示すように、レンズユニット30は、支持体31と、第1レンズ32と、第2レンズ33とを備える。支持体31は両端部が開口した筒状の部材とされており、第1レンズ32、第2レンズ33は、支持体31の内部に配置されている。そして、レンズユニット30は、支持体31の一端側開口部から入射した光が第1レンズ32、第2レンズ33を順に通過して他端側開口部から出射するように構成されている。
【0020】
偏向子40は、光源21の射出光の向きを変え、筐体10の外部に射出される光を走査するものである。図1に示すように、偏向子40は、多角柱状の部材で構成されており、表面は光を反射するミラーとされている。そして、偏向子40は中心軸まわりに回転するようになっており、回転する偏向子40の表面で光源21の射出光が反射することにより、筐体10の外部への射出光の向きが変化する。なお、図1では偏向子40は六角柱状とされているが、他の多角柱状とされていてもよい。例えば、偏向子40が五角柱状とされていてもよいし、七角柱状とされていてもよい。
【0021】
筐体10の上面には開口部が形成されており、透過部50は、この開口部を覆うように配置されている。透過部50は、ガラス(SiO)等の光信号が透過する材料で構成された板状の光学窓51を備えており、光学窓51によって筐体10の開口部が覆われている。光学窓51の上面に平行で互いに垂直な2方向をそれぞれX方向、Y方向とし、X方向およびY方向に垂直な方向をZ方向とする。図6に示すように、光学窓51の上面には、回折格子60が形成されている。なお、光学窓51が、上面および下面のいずれか一方または両方に図示しない機能膜が積層された多層構造とされていてもよい。
【0022】
回折格子60は、筐体10の外部への射出光の向きを変化させるためのものである。図7に示すように、回折格子60は、のこぎり波状の断面を有するブレーズド回折格子とされている。回折格子60をブレーズド回折格子とすることにより、干渉縞の発生を抑制し、光損失を低減することができる。回折格子60は、透過部50の上面を半導体プロセスによってのこぎり波状に加工することによって形成されている。回折格子60の一部は、発熱体70で構成されている。
【0023】
発熱体70は、透過部50を加熱して、透過部50に付着した雪等を除去するためのものであり、アルミニウム等の導電性金属で構成されている。発熱体70は、回折格子60と一体に構成されており、回折格子60の一部は、発熱体70によって構成されている。具体的には、回折格子60は、のこぎり波状の断面における谷の部分が一部除去されており、この除去された部分に発熱体70が埋め込まれて、回折格子60と発熱体70とでのこぎり波状の断面を構成している。このような構成により、発熱体70は、光源21の出力光を回折する形状となっている。光学窓51の外周部には、発熱体70に接続された図示しない配線が形成されており、この配線を介して発熱体70に電流を流すことにより、発熱体70が発熱し、光学窓51に付着した雪を溶かして除去する。なお、光学窓51が多層構造とされる場合には、回折格子60の一部が発熱体70によって構成されることにより、回折格子60と発熱体70とは、光学窓51を構成する複数の層のうち同じ層に形成される。
【0024】
図6に示すように、発熱体70は、光学窓51の表面に、X方向に平行なストライプ状に配置されている。そして、発熱体70は、光源21の出力光に対して回折格子として機能する所定のピッチで配置されている。なお、発熱体70の一部のみがこの所定のピッチでストライプ状に配置されていてもよい。
【0025】
図8に示すように、回折格子60および発熱体70のピッチをdとし、回折格子60および発熱体70への光の入射角をαとし、出射角をβとする。また、回折格子60および発熱体70の屈折率をnとする。そして、回折格子60および発熱体70に入射する光の波長をλとすると、dsinα+dsinβ=λ/nとなる。これを変形すると、β=arcsin(λ/dn-sinα)となる。
【0026】
例えば、ピッチdを700nmとし、屈折率nを1.55とし、波長λを中心波長1550nm、帯域幅200nmで変化させる。そして、入射角αが45degのとき、出射角βの振れ角Δβを15.45degとしたい場合には、λ/dn-sinαが0.63~0.81となるようにピッチdを設定する。例えば、λ/dn-sinαが0.6より大きくなるように、すなわち、d<λ/n(0.6+sinα)となるようにピッチdを設定する。
【0027】
本実施形態では、波長λ~λと帯域幅Δλ~Δλに対して、このように所望の振れ角Δβを得られるようにピッチdを設定する。
【0028】
回折格子60および発熱体70は、例えば以下のように製造される。まず、SiOで構成された板状の光学窓51を用意する。そして、図9Aに示すように、エッチングにより光学窓51の上面にX方向に平行なストライプ状の凹部を形成する。続いて、図9Bに示すように、図9Aに示す工程で形成された凹部にアルミニウム膜80を蒸着する。続いて、光学窓51およびアルミニウム膜80の一部をエッチングで除去することにより、図7に示す形状の回折格子60および発熱体70が形成される。
【0029】
送受信装置の動作について説明する。光源21が光を射出すると、射出光はレンズユニット30によって拡大コリメートされた後、偏向子40に照射される。偏向子40に照射された光は偏向子40の表面で反射した後、透過部50を通過して筐体10の外部に射出される。
【0030】
図1の矢印A1で示すように偏向子40が軸まわりに回転することにより、偏向子40に照射された光は、Z方向の上部へ射出され、矢印A2で示すようにX方向に走査される。また、回折格子60がX方向に平行なストライプ状に形成されているため、光源21が射出光の波長を変化させることにより、回折格子60における出射角が図8に示すように変化し、筐体10の外部への射出光がY方向に走査される。そして、光源211~214が異なる波長帯域で波長λ~λを変化させることにより、図2の矢印A3~A6で示すように、波長λ~λの光が異なる領域で走査され、LiDARにおいて広い範囲で物体を検知することができる。
【0031】
射出光が物体で反射すると、反射光は光学窓51を透過して受光素子22に入射する。そして、入射光の強度等に応じて受光素子22から受信信号が出力され、図示しないECU(Electronic Control Unit)等において、この受信信号に基づいて物体検知判定が行われる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態では発熱体70が回折格子60と一体に構成されており、回折格子60の一部が発熱体70によって構成されているため、回折格子60と発熱体70を光学窓51の同じ層に配置することが可能になる。これにより、光学窓51の層数の増加による信号品質の低下を抑制することができる。
【0033】
また、回折格子60を光学窓51から離した状態で筐体10の内部に配置する場合に比べて、光学窓51の大型化を抑制することができる。また、回折格子60を光学窓51から離した状態で筐体10の外部に配置する場合に比べて、送受信装置を小型化することができる。
【0034】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対して発熱体70の構成を変更したものであり、その他については第1実施形態と同様であるため、第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
図10に示すように、発熱体70は第1発熱体71と第2発熱体72とを備えている。光学窓51の表面に平行な一方向を第1方向とし、光学窓51の表面に平行でかつ第1方向に対して傾斜した方向を第2方向とする。第1発熱体71は第1方向に平行なストライプ状に配置されており、第2発熱体72は第2方向に平行なストライプ状に配置されている。
【0036】
本実施形態では、第1発熱体71はX方向に平行なストライプ状に配置されており、第1実施形態の発熱体70と同様の構成とされている。第2発熱体72は、Y方向に平行なストライプ状に配置されている。
【0037】
本実施形態の回折格子60および発熱体70は、例えば、以下のように製造される。まず、SiOで構成された板状の光学窓51を用意する。そして、エッチングにより光学窓51の上面にX方向に平行なストライプ状の凹部、および、Y方向に平行なストライプ状の凹部を形成する。続いて、これらの凹部にアルミニウム膜を蒸着する。続いて、X方向に垂直な断面がのこぎり波状となるように光学窓51およびアルミニウム膜の一部をエッチングで除去することにより、図10に示す形状の回折格子60および発熱体70が形成される。
【0038】
本実施形態は、第1実施形態と同様の構成および作動からは第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0040】
(1)発熱体70は、第1方向に平行なストライプ状に配置された第1発熱体71と、第2方向に平行なストライプ状に配置された第2発熱体72とを含んで構成されている。これによれば、第1発熱体71が断線した場合にも第2発熱体72で電流経路を確保し、発熱性能を維持することができる。また、第1発熱体71に加えて第2発熱体72を配置することにより、発熱体70の発熱量を増加させることができる。
【0041】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して第2発熱体72のピッチを変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0042】
本実施形態では、第1発熱体71のピッチが一定であるのに対し、第2発熱体72のピッチが場所により変化している。
【0043】
例えば図11に示すように、第2発熱体72は、ピッチd1で配置された部分と、ピッチd1よりも大きいピッチd2で配置された部分とを含む。ピッチd2で配置された部分は、ピッチd1で配置された部分に挟まれている。これによれば、第2発熱体72を等間隔で配置した場合に比べて、干渉縞を低減することができる。
【0044】
あるいは、図12に示すように、光学窓51のX方向両端部における第2発熱体72のピッチを、光学窓51のX方向中央部におけるピッチより小さくしてもよい。これによれば、光学窓51のX方向中央部における光損失を低減して物体検知性能を維持しつつ、発熱性能を維持することができる。
【0045】
あるいは、図13に示すように、光学窓51のX方向一方側端部における第2発熱体72のピッチを、光学窓51のX方向中央部およびX方向他方側端部におけるピッチより小さくしてもよい。これによれば、光学窓51のX方向中央部およびX方向他方側端部における光損失を低減して物体検知性能を維持しつつ、発熱性能を維持することができる。
【0046】
本実施形態は、第1、第2実施形態と同様の構成および作動からは第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0047】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0048】
(1)第1発熱体71のピッチは一定であり、第2発熱体72のピッチは場所により変化する。これによれば、第2発熱体72を等間隔で配置した場合に比べて、干渉縞を低減することができる。
【0049】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して第2発熱体72の線幅を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0050】
図14に示すように、本実施形態では第2発熱体72の線幅が第1発熱体71よりも大きくされている。これによれば、第2発熱体72における発熱量が増加するため、発熱体70の発熱性能を向上させることができる。
【0051】
本実施形態は、第1、第2実施形態と同様の構成および作動からは第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0052】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対して第2発熱体72の線幅を変更したものであり、その他については第2実施形態と同様であるため、第2実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0053】
本実施形態では、第1発熱体71の線幅が一定であるのに対し、第2発熱体72の線幅が場所により変化している。具体的には、図15に示すように、光学窓51のX方向両端部における第2発熱体72の線幅が、光学窓51のX方向中央部における線幅よりも大きくされている。これによれば、光学窓51のX方向中央部における光損失を低減して物体検知性能を維持しつつ、発熱性能を向上させることができる。
【0054】
本実施形態は、第1、第2実施形態と同様の構成および作動からは第1、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0056】
(1)第1発熱体71の線幅は一定であり、第2発熱体72の線幅は場所により変化する。これによれば、線幅が大きい部分における発熱量を増加させることができる。また、線幅が小さい部分における光損失を低減することができる。
【0057】
(他の実施形態)
なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更が可能である。また、上記各実施形態は、互いに無関係なものではなく、組み合わせが明らかに不可な場合を除き、適宜組み合わせが可能である。また、上記各実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、上記各実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0058】
送信部および受信部が上記各実施形態とは異なる構成とされていてもよい。例えば、図16に示すようにPIC20の端面にマイクロレンズ23を配置し、光源21の出力光がマイクロレンズ23を通ってレンズユニット30に入射するようにしてもよい。また、図17に示すようにPIC20の端面に対して斜めに対向するようにミラー24を配置し、光源21の射出光がミラー24で反射した後にレンズユニット30に入射するようにしてもよい。また、図18に示すようにミラー24をPIC20の内部に配置してもよい。また、PIC20が1つの光源21のみを備え、この光源21から波長の異なる複数の光を重ねて出力してもよい。また、PIC20が1つの光源21のみを備え、この光源21が単一波長の光を出力してもよい。
【0059】
光源21が走査のための波長変化を行わず、FMCW方式の測距のための波長変化のみを行ってもよい。
【0060】
レンズユニット30を構成する第1レンズ32、第2レンズ33を貼り合わせて用いてもよい。また、レンズユニット30がレンズを1つのみ備えていてもよい。また、送受信装置がレンズユニット30を備えず、光源21の射出光が偏向子40に直接照射されてもよい。
【0061】
偏向子40が液晶偏光素子、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、ボイスコイルモータで揺動するミラー、焦点面アレイ(Focal Plane Array)で構成されていてもよい。偏向子40を焦点面アレイで構成する場合には、同じ波長の光を射出する光源21を複数配置し、光を射出する光源21を周期的に切り替え、焦点面アレイに光が入射する場所を変えることにより、筐体10の外部への出射光を走査することができる。
【0062】
送受信装置が偏向子40を備えていなくてもよい。すなわち、射出光をX方向には走査せず、波長変化によるY方向の走査のみを行ってもよい。
【0063】
第2実施形態ではX方向を第1方向とし、X方向に垂直なY方向を第2方向として第1発熱体71と第2発熱体72とを配置したが、第2方向が第1方向に垂直でなくてもよい。また、発熱体70を構成する導電体が3方向以上に延設されていてもよい。例えば、図19に示すように、発熱体70が第1発熱体71、第2発熱体72に加えて第3発熱体73を備え、第2発熱体72および第3発熱体73がX方向およびY方向の両方に傾斜した方向に平行なストライプ状に配置されていてもよい。第2発熱体72をX方向およびY方向の両方に傾斜した方向に延設することにより、干渉縞を低減することができる。
【0064】
図10等では、第2発熱体72が、第1発熱体71が形成された領域のY方向一端側から他端側まで連続した直線状に形成されているが、第2発熱体72が途中で途切れていてもよい。例えば、図20に示すように、第2発熱体72が破線状に形成されていてもよい。これによれば、断線を抑制するとともに、第2発熱体72を連続した直線状に形成した場合に比べて光損失を低減することができる。
【0065】
発熱体70がVPH(Volume phase holographic)回折格子を構成していてもよい。例えば、光学窓51の上面の全体に積層されたITO(酸化インジウムスズ)膜で発熱体70を構成し、図21に示すように面内で屈折率分布を設けることにより、回折格子60を構成してもよい。なお、図21では、点ハッチングの密度によって屈折率を表している。回折格子60をVPH回折格子とすることにより、光損失を低減することができる。回折格子60を発熱体70で構成されたVPH回折格子とすること等によって、回折格子60の全体を発熱体70で構成してもよい。
【0066】
送受信装置が、光信号以外の電磁波を送受信する構成とされていてもよい。すなわち、送受信装置が、電磁波を送信する送信部と、電磁波を受信する受信部と、電磁波を透過する透過部とを備え、発熱体70が、送信部が送信する電磁波を回折する形状とされていてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10 筐体
20 PIC
50 透過部
60 回折格子
70 発熱体
図1
図2
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図5
図6
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図8
図9A
図9B
図10
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図21