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特開2025-13792オーディオトランスデューサに関するシステム、方法、およびデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013792
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】オーディオトランスデューサに関するシステム、方法、およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/16 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
H04R7/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024170042
(22)【出願日】2024-09-30
(62)【分割の表示】P 2021532538の分割
【原出願日】2019-08-14
(31)【優先権主張番号】745284
(32)【優先日】2018-08-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】521068312
【氏名又は名称】ウィング アコースティックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パーマー, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】パーマー, マイケル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存の技術の欠点のいくつかに対処するためにいくらか機能する、代替的なオーディオトランスデューサデバイス及びその製造の方法並びに個人用オーディオデバイスを提供する。
【解決手段】オーディオトランスデューサA100は、振動板A101と、複数のヒンジマウントA107a、A107bを含む振動板サスペンションと、主本体A110及び変換機構の導電性コイルA106とを含むトランスデューサ基部構造体と、を備える。振動板サスペンションは、振動板A101をトランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントする。振動板サスペンションは、軟らかい材料及び/又は減衰材料から作られる。振動板A101の回転軸の位置は、振動板A101のノード軸に基づいて決定される。オーディオトランスデューサの変換機構は、動く振動板A101と協働して音を変換し、磁石が動く設計又はコイルが動く設計を含む。
【選択図】図1F
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
前記振動板を前記トランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、前記トランスデューサ基部構造体に対する前記振動板の主回転軸が、前記振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、前記振動板のノード軸を含む面に配置されるように配置された振動板サスペンションシステムと、
前記振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサ。
【請求項2】
前記ノード軸が予め決められる、請求項1に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項3】
前記主回転軸が前記ノード軸と実質的に同軸である、請求項1または2に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項4】
前記主回転軸が前記振動板の質量中心軸と実質的に同軸である、請求項1から4のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項5】
前記振動板が、前記主回転軸から半径方向に延在する単一の振動板本体を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項6】
前記振動板に結合され、動作中、機械的な力を前記振動板に、または前記振動板から伝えるように構成された振動板側変換構成要素を前記変換機構が含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項7】
前記振動板側変換構成要素が、前記主回転軸に沿って前記振動板と重なる、請求項6に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項8】
前記振動板側変換構成要素が、前記振動板の最大幅を超えて前記最大幅の寸法の約20%より大きくは延在しない、請求項6または7に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項9】
前記振動板側変換構成要素が前記振動板と一体化されている、請求項6から8のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項10】
前記振動板側変換構成要素が、前記振動板の側部に沿って剛性に結合されている、請求項6から9のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項11】
前記振動板側変換構成要素が、前記振動板の両側間に前記主回転軸に実質的に平行な軸に沿って前記振動板に結合されている、請求項6から10のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項12】
前記振動板側変換構成要素を含む前記振動板が、前記主回転軸に実質的に垂直な前記振動板の中央矢状面に関して実質的に対称である、請求項6から11のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項13】
前記振動板が、前記主回転軸に実質的に垂直な前記振動板の矢状面に関して実質的に対称である、請求項1から12のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項14】
前記振動板サスペンションが、前記振動板と前記トランスデューサ基部構造体との間に結合された複数のヒンジマウントを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項15】
前記ヒンジマウントが、前記回転軸に実質的に垂直な前記振動板の中央矢状面の両側に配置され、各ヒンジマウントが、前記中央矢状面から前記振動板の最大幅の少なくとも0.2倍の距離のところに配置される、請求項14に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項16】
前記振動板サスペンションが少なくとも1つのヒンジマウントを含み、前記ヒンジマウントが実質的に軟らかい材料から形成された、請求項1から15のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項17】
各ヒンジマウントが並進方向に実質的にコンプライアントである、請求項16に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項18】
前記実質的に軟らかい材料が約8ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を備える、請求項16または17に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項19】
前記振動板サスペンションが少なくとも1つのヒンジマウントを含み、前記マウントが実質的に減衰材料から形成された、請求項1から18のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項20】
各ヒンジマウントが、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が0.005より大きい材料から形成された、請求項19に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項21】
前記振動板サスペンションが、少なくとも1つの実質的に可撓性のヒンジマウントを含む、請求項1から20のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項22】
前記振動板サスペンションが、実質的に剛性の高い接触要素から形成された少なくとも1つのヒンジマウントを実質的に含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項23】
前記振動板サスペンションが、動作中、互いに対して動いて、支持された振動板または振動板構造体を回転させるように構成された一対の協働する接触面を含む少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項1から22のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項24】
動作中、各マウントの協働する接触面を互いの方へ付勢して係合を維持するように構成された実質的にコンプライアントな付勢構成要素をさらに備える、請求項24に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項25】
前記接触面の一方が前記振動板の一部分を形成し、他方の接触面が前記トランスデューサ基部構造体の一部を形成する、請求項23または24に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項26】
前記振動板サスペンションが、7個より少ない転がり要素を有する玉軸受を含む少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項1から25のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項27】
前記トランスデューサ基部構造体を、隣接する、前記振動板以外の前記オーディオトランスデューサの構成要素に可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムをさらに備える、請求項1から26のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項28】
前記オーディオトランスデューサがハウジングまたはバッフルをさらに備え、前記デカップリングマウンティングシステムが、前記トランスデューサ基部構造体を前記ハウジングまたはバッフルに可撓的にマウントする、請求項27に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項29】
前記オーディオトランスデューサが前記振動板を取り囲む構造体をさらに備え、前記構造体が、前記主回転軸から遠位の前記振動板の末端部に対向する1つまたは複数の補強領域を含み、前記1つまたは複数の補強領域が、周囲の前記構造体の1つまたは複数の隣接する領域に比べて剛性が高い、請求項1から28のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項30】
前記振動板が、
1つまたは複数の主面を有する振動板本体と、
動作中に、引張-圧縮力に抗するために各主面における、または各主面に隣接する垂直応力補強材と
を含む、請求項1から29のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項31】
前記垂直応力補強材が、前記振動板の質量中心から近位の前記振動板の領域に比べて前記質量中心から遠位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい、請求項30に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項32】
振動板本体が、前記振動板の質量中心から近位の前記振動板の領域に比べて前記質量中心から遠位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備える、請求項1から31のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項33】
前記振動板が、振動板基部構造体に剛性に結合された振動板本体を含む、請求項1から32のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項34】
前記振動板本体が、剛性の高い1つまたは複数の構成要素を介して前記振動板基部構造体に結合され、前記剛性の高い1つまたは複数の構成要素が、動作中、前記剛性の高い構成要素の曲げ変形が実質的に無視できるほど十分に真っ直ぐで、および/または十分に支持され、および/または十分に厚い、請求項1から33のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項35】
前記振動板が、前記変換機構の振動板側変換機構に剛性に結合された振動板本体を含む、請求項1から34のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項36】
前記振動板本体が、剛性の高い1つまたは複数の構成要素を介して前記振動板側変換構成要素に結合され、前記剛性の高い1つまたは複数の構成要素が、動作中、前記剛性の高い1つまたは複数の構成要素の曲げ変形が実質的に無視できるほど十分に真っ直ぐで、および/または十分に支持され、および/または十分に厚い、請求項35に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項37】
各振動板が、各振動板に結合された位置センサを含まない、請求項1から36のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項38】
前記変換機構が、磁石または磁気構造体に協働的に結合された導電コイルを含む電磁変換機構である、請求項1から37のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項39】
前記磁石または磁気構造体が前記振動板に剛性に結合され、動作中、前記振動板とともに回転する、請求項38に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項40】
前記主回転軸が、前記磁石または磁気構造体の本体を通って延在する、請求項38または39に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項41】
前記磁石または磁気構造体が、単一の対の磁極であって、それぞれが前記磁石または磁気構造体の長手方向の長さに沿って実質的に連続的に延在する、単一の対の磁極を含む、請求項38から40のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項42】
前記振動板が振動板本体を含み、前記振動板本体の厚さが、前記本体の長手方向の長さに沿って変化し、
第1の領域の厚さが、前記振動板本体の中央領域から、前記主回転軸のところの、または前記主回転軸に隣接する前記振動板本体の基部端部まで薄くなっていき、
第2の領域の厚さが、前記振動板の前記中央領域と前記主回転軸から遠位の前記振動板の末端部との間で薄くなっていき、
前記振動板本体の冠状面に対する前記中央領域と前記基部端部との間の前記振動板本体の放射面の角度の絶対値が、前記中央領域と前記末端部との間の前記放射面の角度の絶対値より小さい、請求項1から41のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項43】
複数の振動板を含む振動板構造体と、
トランスデューサ基部構造体と、
前記振動板構造体が前記トランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転することができるように前記振動板構造体を前記トランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションと、
前記振動板構造体に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサ。
【請求項44】
前記複数の振動板が互いに剛性に接続された、請求項43に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項45】
前記振動板サスペンションが、少なくとも1つの実質的に可撓性のヒンジマウントを含む、請求項43または44に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項46】
前記振動板サスペンションが、実質的に軟らかい材料から形成された少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項43から45のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項47】
各ヒンジマウントが並進方向に実質的にコンプライアントである、請求項46に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項48】
前記実質的に軟らかい材料が約8GPaより小さい平均ヤング率を備える、請求項46または47に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項49】
前記変換機構が振動板側変換構成要素を含み、前記振動板側変換構成要素が、前記振動板構造体に結合され、動作中、機械的な力を前記振動板構造体に、または前記振動板構造体から伝えるように構成された、請求項43から48のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項50】
前記振動板側変換構成要素が導電コイルを含む、請求項50に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項51】
前記振動板側変換構成要素が磁石または磁気構造体を含む、請求項49に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項52】
前記磁石または磁気構造体が、動作中、前記振動板構造体とともに回転するように構成された、請求項51に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項53】
前記磁石または磁気構造体が、前記振動板構造体の振動板の矢状面に実質的に垂直に延在し、単一の対の磁極であって、それぞれが前記磁石または磁気構造体の長手方向の長さに沿って実質的に連続的に延在する、単一の対の磁極を含む、請求項51または52に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項54】
前記磁石または磁気構造体が、前記回転軸に沿って前記振動板構造体と重なる、請求項51から53のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項55】
前記振動板側変換構成要素が圧電構成要素を含む、請求項49に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項56】
前記圧電構成要素が前記振動板構造体に一体化された、請求項55に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項57】
各振動板が実質的に厚い振動板本体を含む、請求項43から56のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項58】
各振動板が、振動板本体の中央領域から、前記回転軸から遠位の前記振動板の末端部の方へ薄くなる厚さプロファイルを備える前記振動板本体を含む、請求項43から57のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項59】
各振動板が、複合材料から形成された振動板本体を含む、請求項43から58のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項60】
各振動板が、前記回転軸から近位の領域の単位面積当たりの質量に比べて、前記回転軸から遠位の前記振動板の末端部に近位の領域の単位面積当たりの質量が相対的に小さい振動板本体を含む、請求項43から59のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項61】
前記振動板サスペンションが少なくとも1つのヒンジマウントを含み、前記マウントが実質的に減衰材料から形成された、請求項43から60のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項62】
前記オーディオトランスデューサが各振動板を取り囲む構造体をさらに備え、前記構造体が、主回転軸から遠位の各振動板の末端部に対向する1つまたは複数の補強領域を含み、前記1つまたは複数の補強領域が、周囲の前記構造体の1つまたは複数の隣接する領域に比べて剛性が高い、請求項43から61のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項63】
前記トランスデューサ基部構造体を、隣接する、前記振動板構造体以外の前記オーディオトランスデューサの構成要素に可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムをさらに備える、請求項43から62のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項64】
前記振動板サスペンションが、玉軸受を含む少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項43から63のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項65】
前記振動板サスペンションが、7個より少ない転がり要素を有する玉軸受を含む少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項43から64のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項66】
前記オーディオトランスデューサが、磁石または磁気構造体の構成要素以外の1つまたは複数の他の強力な強磁性構成要素を備えてもよく、前記磁石または磁気構造体が、前記1つまたは複数の他の強磁性構成要素から実質的に遠位にある、請求項43から65のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項67】
前記磁石または磁気構造体との間の距離が、前記磁石または磁気構造体の両極間の最大距離の少なくとも約0.4倍であるように、前記磁石または磁気構造体が前記1つまたは複数の他の強磁性構成要素から実質的に遠位にある、請求項66に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項68】
前記オーディオトランスデューサを取り囲むプラスチックのハウジングをさらに備える、請求項43から67のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項69】
各振動板が振動板本体を含み、前記振動板本体の厚さが、前記本体の長手方向の長さに沿って変化し、
第1の領域の厚さが、前記振動板本体の中央領域から、前記回転軸のところの、または前記回転軸に隣接する前記振動板本体の基部端部まで薄くなっていき、
第2の領域の厚さが、前記振動板の前記中央領域と前記回転軸から遠位の前記振動板の末端部との間で薄くなっていき、
前記振動板本体の冠状面に対する前記中央領域と前記基部端部との間の前記振動板本体の放射面の角度の絶対値が、前記中央領域と前記末端部との間の前記放射面の角度の絶対値より小さい、請求項43から68のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項70】
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板構造体が前記トランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転することができるように前記振動板を前記トランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションであって、少なくとも1つの実質的に柔らかなヒンジマウントまたは少なくとも1つの実質的に減衰ヒンジマウントを含む振動板サスペンションと、
前記振動板構造体に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサ。
【請求項71】
前記振動板サスペンションが、約8ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を有する実質的に軟らかい材料から形成された少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項70に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項72】
前記振動板サスペンションが、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が0.005より大きい実質的に減衰材料から形成された少なくとも1つのヒンジマウントを含む、請求項70または71に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項73】
前記オーディオトランスデューサが前記振動板を取り囲む構造体を備え、前記構造体が前記振動板の周辺部に隣接する内壁に保護材料を含む、請求項70から72のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項74】
前記変換機構が振動板側変換構成要素を含み、前記振動板側変換構成要素が、前記振動板構造体に結合され、動作中、機械的な力を前記振動板構造体に、または前記振動板構造体から伝えるように構成され、前記振動板側変換構成要素が導電コイル、あるいは磁石または磁気構造体を含む、請求項70から73のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項75】
前記変換機構が振動板側変換構成要素を含み、前記振動板側変換構成要素が、前記振動板構造体に結合され、動作中、機械的な力を前記振動板構造体に、または前記振動板構造体から伝えるように構成され、前記振動板側変換構成要素が、前記回転軸から、前記振動板の長さの75%以内の距離に配置された、請求項70から74のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項76】
前記振動板が実質的に厚い振動板本体を含む、請求項70から75のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項77】
各ヒンジマウントが、前記振動板または前記トランスデューサ基部構造体のうちのどちらかに剛性に接続され、かつ前記回転軸と実質的に同軸に延在するピンを含み、前記ヒンジマウントの柔らかな可撓性材料が前記ピンと密着している、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項78】
各ヒンジマウントが細長い可撓性要素を含み、前記要素の一方の端部が前記振動板に接続することができ、他方の端部が前記トランスデューサ基部構造体に接続することができ、前記振動板から前記トランスデューサ基部構造体まで前記可撓性要素を通る最短長さが、前記長さに垂直な方向に前記可撓性要素を横切る最小厚さの1.5倍より長くてもよい、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項79】
各ヒンジマウントが、前記回転軸における、または前記回転軸に沿うねじれ要素位置を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項80】
各ヒンジマウントが、互いに対して角度付けされた一対の可撓性ヒンジ要素を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項81】
各ヒンジマウントが、前記振動板と前記トランスデューサ基部構造体との間を延在する複数のスポークを含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項82】
各ヒンジマウントが少なくとも1つの凹状の外面を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項83】
各ヒンジマウントが、空気または前記マウントの本体に比べて低密度の材料で満たされた1つまたは複数の空洞を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項84】
各ヒンジマウントが異方性材料から形成された主要な本体を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項85】
各ヒンジマウントが、動作中、互いに対して動いて、支持された振動板を回転させるように構成された一対の協働する接触面を含む、請求項70から76のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項86】
前記接触面の一方が前記振動板の一部分を形成し、他方の接触面が前記トランスデューサ基部構造体の一部を形成する、請求項85に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項87】
前記トランスデューサ基部構造体を、隣接する、前記振動板以外の前記オーディオトランスデューサの構成要素に可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムをさらに備える、請求項70から86のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項88】
前記振動板に結合され、使用時、力を前記振動板に、または前記振動板から伝えるように構成された振動板側変換構成要素を前記変換機構が含み、前記振動板側変換構成要素が前記回転軸に沿って延在する、請求項70から87のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項89】
前記変換機構が、前記振動板に結合されて前記回転軸にまたは前記回転軸から近位に延在する磁石または磁気構造体を含む、請求項70から88のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項90】
各振動板が振動板本体を含み、前記振動板本体の厚さが、前記本体の長手方向の長さに沿って変化し、
第1の領域の厚さが、前記振動板本体の中央領域から、前記回転軸のところの、または前記回転軸に隣接する前記振動板本体の基部端部まで薄くなっていき、
第2の領域の厚さが、前記振動板の前記中央領域と前記回転軸から遠位の前記振動板の末端部との間で薄くなっていき、
前記振動板本体の冠状面に対する前記中央領域と前記基部端部との間の前記振動板本体の放射面の角度の絶対値が、前記中央領域と前記末端部との間の前記放射面の角度の絶対値より小さい、請求項70から89のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項91】
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
前記振動板が前記トランスデューサ基部構造体に対して回転することができるように前記振動板を前記トランスデューサ基部構造体にマウントするように構成された振動板サスペンションと、
オーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構であって、前記振動板に結合され、かつ動作中、前記振動板とともに動くことができる磁石または磁気組立体を含む変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサ。
【請求項92】
前記トランスデューサがスピーカである、請求項1から91のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサ。
【請求項93】
ユーザの耳から10cm以内で使用するように構成され、請求項1から92のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサを少なくとも1つ備える個人用オーディオデバイス。
【請求項94】
使用時にユーザの耳に当てて配置されるような大きさで構成され、内部に組み込まれた前記少なくとも1つのオーディオトランスデューサを有する少なくとも1つのインターフェースデバイスを備える、請求項93に記載の個人用オーディオデバイス。
【請求項95】
各インターフェースデバイスが、使用時にユーザの頭にまたがるように構成された、請求項94に記載の個人用オーディオデバイス。
【請求項96】
一対のインターフェースデバイスを備える、請求項95に記載の個人用オーディオデバイス。
【請求項97】
各インターフェースデバイスが、関連する1つまたは複数のオーディオトランスデューサによって独立したオーディオ信号を再生するように構成された、個人用オーディオデバイス。
【請求項98】
電気音響トランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、前記空洞の深さ寸法が、前記空洞の実質的に直交する長さ寸法より短い、および/または前記空洞の実質的に直交する幅寸法よりも短い、ハウジングと、
前記空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを回転するように構成された振動板を有する、請求項1から91のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサであって、前記電気音響トランスデューサが、前記振動板の回転軸が前記空洞の前記深さ寸法に実質的に平行であるように、前記空洞内で向けられた、オーディオトランスデューサと
を備え、
前記ハウジングの深さ寸法が前記ハウジングの幅寸法および長さ寸法より実質的に短い、電子デバイス。
【請求項99】
ハウジングであって、
1つまたは複数の側面によって接続された一対の対向する主面であって、前記側面のそれぞれよりも相対的に大きな表面積を有する主面と、
電気音響トランスデューサのための空洞であって、前記主面に実質的に直交する短い深さ寸法を有する空洞と
を有するハウジングと、
前記空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成された振動板を有する、請求項1から91のいずれか一項に記載の電気音響トランスデューサであって、前記振動板の回転軸が、前記空洞の前記深さ寸法に実質的に平行であるように、前記空洞内で向けられた電気音響トランスデューサと
を備える電子デバイス。
【請求項100】
請求項1から91のいずれか一項に記載のオーディオトランスデューサを有するオーディオデバイスと、
前記トランスデューサの入力におけるオーディオ信号を最適化するために前記オーディオデバイスに動作可能に結合されたオーディオ調整システムと
を備えるオーディオシステム。
【請求項101】
前記オーディオ調整システムが、関連するオーディオデバイスの各出力チャネルに対して受信したオーディオ信号を補正するように構成されたイコライザを含む、請求項100に記載のオーディオシステム。
【請求項102】
前記イコライザが、オーディオ信号の振動数応答のステップを除去して、補正されたオーディオ信号をオーディオトランスデューサの変換機構に送出するように構成された、請求項101に記載のオーディオシステム。
【請求項103】
前記オーディオ調整システムが、音源と動作可能に結合するように構成された入力と、前記変換機構と動作可能に結合するように構成された出力とを有するハイパスフィルタを含んで、所定のカットオフ振動数より下の振動数の、前記音源からのオーディオ信号を減衰させることができ、前記オーディオトランスデューサの前記振動板サスペンションが、十分に可撓性があり、前記所定のカットオフ振動数が、振動板サスペンションのコンプライアンスと関連する前記振動板の共振振動数に基づく、請求項100から102のいずれか一項に記載のオーディオシステム。
【請求項104】
振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法であって、
a)前記振動板のノード軸を決定するステップと、
b)前記変換機構を前記振動板および前記トランスデューサ基部構造体に結合するステップと、
c)前記トランスデューサ基部構造体に対する前記振動板の回転軸が、前記振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、前記振動板の前記ノード軸を含む面に配置されるように、前記振動板を、振動板サスペンションシステムを介して前記トランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントするステップと
を含む方法。
【請求項105】
振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法であって、
a)i.前記変換機構を前記振動板および前記トランスデューサ基部構造体に結合することと、
ii.前記振動板を、振動板サスペンションシステムを介して前記トランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントすることと
によって前記オーディオトランスデューサを組み立てるステップと、
b)部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの前記振動板を回転させるように前記変換機構を動作させるステップと、
c)前記部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の動作特性を分析するステップと、
d)前記1つまたは複数の動作特性を最適化するように前記部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の物理特性を調節するステップと、
e)必要ならば、前記1つまたは複数の動作特性の1つまたは複数の所望の基準が達成されるまでステップb)~d)を繰り返すステップと
を含む方法。
【請求項106】
振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法であって、
a)前記振動板の質量中心軸を決定するステップと、
b)前記変換機構を前記振動板および前記トランスデューサ基部構造体に結合するステップと、
c)前記トランスデューサ基部構造体に対する前記振動板の回転軸が、前記振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、前記振動板の前記質量中心軸を含む面に配置されるように、前記振動板を、振動板サスペンションシステムを介して前記トランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントするステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラウドスピーカおよびマイクロホンなどの中で使用されるものなどのような、オーディオトランスデューサ、および、関連のデバイスまたは方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ラウドスピーカドライバは、作動機構を使用して振動板を揺動させることによってサウンドを発生させるオーディオトランスデューサの一種であり、作動機構は、当技術分野で知られている電磁組立体、静電組立体、圧電組立体、または任意の他の適切な移動可能な組立体であることが可能である。ドライバは、一般的に、ハウジングの中に含有されている。従来のドライバにおいて、振動板は、剛性のハウジングに線形に連結されているフレキシブル膜構成要素である。したがって、ラウドスピーカドライバは、共振系を形成しており、共振系では、振動板は、動作の間の特定の振動数における望まれない機械的な共振(振動板ブレークアップとしても知られている)の影響を受けやすい。これは、ドライバの性能および音質に影響を与える。
【0003】
回転作用ラウドスピーカは、振動板を回転させることによって動作し、サウンドを発生させる。ラウドスピーカ技術における最近の開発は、このアプローチから利益を受けており、従来の線形のドライバ技術に対して性能および音質を改善させる。そのような開発は、PCT刊行物のWO2017/046716に例示されており、例えば、そこでは、例えば振動板および振動板サスペンションを含む、複数のドライバ態様に対する剛性のアプローチが、約リスナーの聞こえる範囲を超えるか、または、約ドライバの意図する動作の振動数範囲を超える振動数まで、望まれない共振を押すために用いられる。
【0004】
ラウドスピーカの設計が性能および意図した用途を含む要因に依存することを所与として、特定の用途により良好に適している可能性がある代替的な設計に対する必要性が存在し続けている。
【0005】
本発明の目的は、既存の技術の欠点のいくつかに対処するためにいくらか機能する、代替的なオーディオトランスデューサデバイスまたは製造の方法を提供することであり、または、少なくとも、有用な選択肢を公衆に提供することである。
【発明の概要】
【0006】
デバイスの態様
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、トランスデューサ基部構造体に対する振動板の主回転軸が、振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、振動板の所定のノード軸を含む面に配置されるように配置された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0007】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、トランスデューサ基部構造体に対する振動板の主回転軸と振動板の質量中心軸とが実質的に同軸であるように配置された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0008】
いくつかの態様では、本発明は概して、
複数の振動板を備える振動板構造体と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板構造体がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転することができるように振動板構造体をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションと、
振動板構造体に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0009】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板構造体がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションであって、少なくとも1つのヒンジを備える振動板サスペンションと、
振動板構造体に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0010】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体にマウントするように構成された振動板サスペンションと、
オーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構であって、振動板に結合され、動作中、振動板とともに動くことができる磁石または磁気組立体を備える変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0011】
デバイスの実施形態
特に明記しない限り、以下の実施形態は、上記の態様のうちの任意の1つまたは複数の態様に適用してもよく、任意の2つ以上の実施形態の特徴は任意の態様と組み合わせてもよい。
【0012】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは単一の振動板を備えてもよい。回転動作トランスデューサの場合、単一の振動板は、回転軸から単一の方向に半径方向に延在してもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、複数の振動板を含む振動板構造体を備えてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、複数の振動板は、互いに対してある角度で中央位置から延在してもよい。回転動作トランスデューサの場合、複数の振動板は、例えば、回転軸の周りに間隔をおいて半径方向に配置されてもよい。複数の振動板は、均一な間隔で半径方向に配置されてもよい。例えば、一対の振動板を180度の間隔をおいて配置してもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、複数の振動板は互いに実質的に剛性に接続される。
【0016】
以下の実施形態は、単一振動板トランスデューサの実施形態または複数振動板トランスデューサの実施形態に関係付けることができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、各振動板は、使用時、実質的に高い剛性のままである。
【0018】
いくつかの実施形態では、各振動板は、複合材料から形成された振動板本体を備えてもよい。振動板本体は、三次元的に変化する相互接続された構造を備えてもよい。振動板本体は、実質的に低密度のマトリックスを備えてもよい。振動板本体は、ポリスチレン発泡体など低密度の発泡材から形成されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、各振動板は、実質的に厚い振動板本体を備える。振動板本体の最大厚さは、振動板本体の長さの12%または15%よりも厚くてもよい。振動板本体の最大厚さは、振動板本体の長さの20%よりも厚くてもよい。振動板本体の最大厚さは、対角長さなど、振動板本体の最大寸法の9%または11%よりも厚くてもよい。振動板本体の最大厚さは、対角長さなど、振動板本体の最大寸法の14%よりも厚くてもよい。
【0020】
いくつかの実施形態では、回転軸から反対側の末端部までの振動板の長さは、振動板または振動板構造体の軸方向の幅よりも約6倍未満、または4倍未満、または3倍未満長くてもよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、各振動板の質量は、振動板の長さに沿って変化してもよい。いくつかの実施形態では、各振動板は、振動板の質量中心から近位の振動板の領域に比べて質量中心から遠位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。いくつかの実施形態では、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転するように構成されている場合、各振動板は、振動板の回転軸から近位の振動板の領域に比べて回転軸から遠位の領域では、小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。いくつかの実施形態では、各振動板は、振動板の一方の端部から近位の領域に比べて反対側の端部から近位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、相対的に小さな質量の領域の振動板の厚さは、相対的に大きな質量の領域に比べて薄くてもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、各振動板は実質的に楔形であってもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、各振動板の厚さは、振動板の長さに沿ってテーパ状であってもよい。各振動板の厚さは、振動板の長さに沿って実質的に滑らかなテーパ状であってもよい。振動板の厚さは、回転振動板の場合には回転軸から遠位の末端部、または質量中心から遠位の末端部に向かって薄くなっていってもよい。振動板の厚さは、中央領域から末端部の方へテーパ状であってもよい。振動板の厚さは、回転振動板の場合には回転軸から近位の基部端部、または質量中心から近位の基部端部から中央領域まで実質的に均一であってもよい。これに代えて、振動板の厚さは、中央領域から基部端部の方へテーパ状であってもよい。このテーパ状の厚さは、中央領域から基部端部に向かって薄くなっていってもよい。中央領域は、振動板の基部端部と末端部との間の長手方向の長さの約15~50%のところに配置されてもよい。中央領域は、振動板の基部端部と末端部との間の長手方向の長さの約20%のところに配置されてもよい。
【0025】
各テーパは階段状であってもよいし、連続的であってもよい。各テーパは直線的あってもよいし、湾曲していてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、振動板の冠状面に対する中央領域と基部端部との間の振動板の放射面の角度の絶対値は、中央領域と末端部との間の放射面の角度の絶対値より小さい。
【0027】
いくつかの実施形態では、各振動板の少なくとも1つの主面の輪郭は、振動板の長手方向の長さに沿って、および/または振動板の矢状断面に沿って実質的に凸状である。いくつかの実施形態では、各振動板の各主面の輪郭は、振動板の長手方向の長さに沿って、および/または振動板の矢状断面に沿って、実質的に凸状である。
【0028】
いくつかの実施形態では、各振動板は、1つまたは複数の主放射面を有する振動板本体と、本体に結合された垂直応力補強材とを備えてもよく、垂直応力補強材は、動作中に、本体の面に受ける、または本体の面に隣接して受ける圧縮-引張応力に抗するために主放射面の少なくとも1つに隣接して結合される。2つの対向する放射面があってもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、垂直応力補強材は、振動板の質量中心から近位の振動板の領域に比べて質量中心から遠位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。いくつかの実施形態では、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転するように構成されている場合、垂直応力補強材は、振動板の回転軸から近位の振動板の領域に比べて回転軸から遠位の領域では、小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。いくつかの実施形態では、垂直応力補強材は、振動板の一方の端部から近位の領域に比べて反対側の端部から近位の領域では、相対的に小さな単位面積当たりの質量を備えてもよい。
【0030】
いくつかの実施形態では、垂直応力補強材の質量が相対的に小さい領域には凹部があってもよいし、垂直応力補強材がなくてもよい。いくつかの実施形態では、垂直応力補強材の質量が相対的に小さい領域では、垂直応力補強材の厚さが薄くてもよいし、薄くなっていってもよい、または幅が狭くてもよいし、または狭くなっていってもよく、またはその両方でもよい。
【0031】
いくつかの実施形態では、垂直応力補強材の質量および/または振動板の質量が相対的に大きな領域の表面積は主面の表面積の約30~70%であり、垂直応力補強材の質量および/または振動板の質量が相対的に小さな領域の表面積は主面の表面積の約30~70%である。
【0032】
いくつかの実施形態では、垂直応力補強材の質量および/または振動板の質量が相対的に小さな領域は、質量中心から遠位の、または、回転振動板の場合には回転軸から遠位の振動板の端部から振動板の長さの約20%以内に配置されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、各振動板は、1つまたは複数の主放射面を有する振動板本体と、動作中に本体が受けるせん断変形に抗する、および/またはせん断変形を実質的に軽減するために、本体内に埋め込まれて、前記主面の少なくとも1つに対してある角度で向けられた少なくとも1つの内部補強部材とを備えてもよい。複数の内部補強部材があってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、質量中心から末端部まで、または一方の端部から反対側の端部まで、または回転振動板の場合には回転軸から反対側の端部までの各振動板の長さは、振動板の幅より約20%長くてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、回転軸から反対側の末端部までの各振動板の長さは、振動板組立体の軸方向の幅より約6倍未満、4倍未満、または3倍未満長くてもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、各振動板は、振動板本体に剛性に結合された振動板基部構造体を備えてもよい。振動板基部構造体は、軸に、または軸から近位に配置されてもよい。振動板基部構造体は、振動板組立体の質量の大部分を構成してもよい。振動板基部構造体は、構造的には剛体シャフトとして働いてもよい。振動板基部構造体は、振動板本体を含んでもよく、または振動板本体を振動板サスペンションに剛性に接続してもよい。振動板は、振動板基部構造体を介して振動板サスペンションにすぐ近くで剛性に接続されてもよい。振動板基部構造体は変換機構を備えてもよい。振動板基部構造体は、振動板本体を変換機構に剛性に接続してもよい。振動板は、振動板基部構造体を介して変換機構にすぐ近くで剛性に接続されてもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、振動板基部構造体は、各振動板の垂直応力補強材に剛性に接続されてもよい。
【0038】
いくつかの実施形態では、振動板基部構造体は、実質的に平面状の1つまたは複数の部品で構成されてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、振動板基部構造体は、剛性の高い1つまたは複数の構成要素を介して振動板本体に剛性に結合されてもよく、その剛性の高い1つまたは複数の構成要素は、動作中、剛性の高い1つまたは複数の構成要素の曲げ変形が実質的に無視できるほど十分に真っ直ぐで、および/または十分に支持され、および/または十分に厚い。
【0040】
いくつかの実施形態では、振動板基部構造体は、比較的高いヤング率、好ましくは約0.5GPaより大きい、より好ましくは約2GPaより大きい、最も好ましくは約4GPaより大きいヤング率を有する構成要素のみを介して振動板本体に剛性に結合されてもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、各振動板本体は、関連する振動板基部構造体に剛性に結合される。
【0042】
いくつかの実施形態では、振動板基部構造体は、少なくとも約8GPa、または少なくとも約20GPaのヤング率を有する比較的剛性の高い材料を含む。いくつかの実施形態では、 各振動板は振動板サスペンションに剛性に接続される。いくつかの実施形態では、各振動板は変換機構に剛性に接続される。
【0043】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、各振動板をすぐ近くで取り囲む構造体をさらに備える。ハウジングなどの単一の構造体が、すべての振動板、および/またはトランスデューサの残りの部分を取り囲んでもよいし、別々の構造体が、各振動板を個別に取り囲んでもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、各振動板は、振動板と関連する、すぐ近くで取り囲む構造体の内部と少なくとも部分的に物理的な接続がない外周部を備える。
【0045】
いくつかの実施形態では、振動板は、周囲部の内部と物理的に接続しない1つまたは複数の周辺領域を備えてもよく、1つまたは複数の周辺領域が周辺部の長さまたは周長の少なくとも20%を構成するように外周部は物理的な接続がほとんどない。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の周辺領域が周辺部の長さまたは周長の少なくとも50%を構成することができるように外周部は実質的に物理的な接続をなくすることができる。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の周辺領域は周辺部の長さまたは周長の少なくとも80%を構成してもよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、通常動作中に(他の領域に対して)かなりの距離を動く振動板の外周部のすべての領域は、周囲構造体の内部とほとんど物理的な接続をなくすることができる。
【0047】
いくつかの実施形態では、振動板の質量中心位置から遠位の振動板の外周部のすべての領域は、周囲構造体の内部とほとんど物理的な接続をなくすることができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、周囲部の内部と物理的な接続がない振動板の外周部の1つまたは複数の領域は、エアギャップによってハウジングから隔てられてもよい。比較的狭いエアギャップが、周囲構造体の内部と振動板の1つまたは複数の周辺領域とを隔ててもよく、その結果、各周辺領域と周囲構造体との間の距離によって定められるエアギャップの幅は、振動板の長さの約1/10未満、または約1/20未満、または約1/40未満であってもよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、比較的狭いエアギャップが、周囲構造体の内部と振動板の1つまたは複数の周辺領域とを隔ててもよく、その結果、各周辺領域と周囲構造体との間の距離によって定められるエアギャップの幅は、約1mm未満、約0.8mm未満、または約0.5mm未満である。
【0050】
いくつかの実施形態では、周囲構造体は、動作中の振動板が動く実質的に全範囲にわたって振動板の周辺部の周りで実質的にぴったりと合っているが、物理的には分離され、その結果、周囲構造体は効果的に封止される。
【0051】
いくつかの実施形態では、周囲部とぴったりと合うことと、トランスデューサを取り囲むためにハウジングおよび/またはバッフルを使用することとを組み合わせると、特定の回転方向のときに正の空気圧を生成する振動板の放射主面に隣接する空気が振動板の反対側の主放射面に隣接する空気から効果的に隔てられる。
【0052】
いくつかの実施形態では、各周囲構造体は、回転軸から遠位にある関連する振動板の末端部に対向する補強領域を備えてもよい。補強領域は、動作中、最も長い距離を動くように構成された振動板の末端部に対向してもよく、動作中、末端部が動く全範囲に沿って延在してもよい。補強領域は、周囲構造体の隣接する領域に比べて剛性が高くてもよい。回転振動板の場合、補強領域は、関連する振動板の末端部にすぐ隣接して配置された周囲構造体の湾曲壁に設けられてもよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、補強は、末端部の全幅にわたって軸に実質的に平行な方向になされる。
【0054】
いくつかの実施形態では、補強領域は、周囲構造体の隣接する領域に比べて厚くてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、補強領域は1つまたは複数の補強リブを備えてもよい。
【0056】
いくつかの実施形態では、補強領域は、隣接する領域の材料よりも相対的に剛性の高い材料を備えてもよい。
【0057】
いくつかの実施形態では、周囲構造体は、振動板の周辺部に隣接する内壁にビロードまたはシリコーンなどの保護材料を備えてもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、周囲構造体は、振動板の周辺部に隣接する内壁に、中空のコンプライアントな形状、例えば、リブまたは発泡体に形成された、シリコーンまたはゴムなどのエラストマー保護材料を備えてもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、周囲構造体は、使用時に放射面が内壁に接触および衝突することを防ぐために、関連する振動板の一方または両方の放射面に隣接する内壁に1つまたは複数のストッパを備えてもよい。
【0060】
いくつかの実施形態では、ストッパは、振動板の先端縁部の向こう側のハウジングに対して、回転軸に垂直で振動板の先端の方への振動板の過度な変位を防ぐ。この方向の最大変位は約0.5mm、より好ましくは0.35mm、最も好ましくは0.2mmであってもよい。
【0061】
いくつかの実施形態では、振動板の主放射面に隣接する周囲構造体の開口は、エンクロージャの前部にあり、聴取者の方を向いている。
【0062】
いくつかの実施形態では、周囲部内の振動板の冠状面は、最大可動角度のところにあって聴取者の方へ変位しているとき、聴取者の方を向く。
【0063】
いくつかの実施形態では、各振動板は、振動板の矢状面に関して実質的に対称であってもよい。
【0064】
いくつかの実施形態では、各振動板は、回転軸に実質的に垂直な振動板の矢状面に関して実質的に対称であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動板と、変換機構の振動板側変換構成要素とを含む振動板組立体を備えてもよく、振動板側変換構成要素は、動作中、力を振動板に、または振動板から伝えるように構成され、振動板組立体は、振動板の矢状面に関して実質的に対称である。
【0066】
いくつかの実施形態では、各振動板は、内側または外側に位置センサを備えていない。
【0067】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動板、または複数振動板構成の振動板構成体をトランスデューサ基部構造体に回転可能に結合するように構成された振動板サスペンションを備えてもよい。
【0068】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、軸の両側で約10度、または軸の両側で約15度、または軸の両側で約20度の範囲の角運動ができるように振動板の回転軸周りの回転を可能にしてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、少なくとも1つのヒンジマウントを備えてもよい。各ヒンジマウントは、振動板または振動板構造体に、およびトランスデューサ基部構造体に結合されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは複数のヒンジマウントを備えてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板または振動板構造体に結合された一対のヒンジマウントを備えてもよい。
【0072】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板とトランスデューサ基部構造体との間で振動板の両側で結合された一対のヒンジマウントを備えてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、振動板のノード軸および/または質量中心軸と実質的に同軸であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態では、一対のヒンジマウントは振動板の両側部で結合されてもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板をトランスデューサ基部構造体に回転可能に結合する少なくとも2つのヒンジマウントを備えてもよく、少なくとも2つのヒンジマウントは、回転軸に実質的に垂直な振動板または振動板構造体の振動板の中央矢状面の両側に配置され、各ヒンジマウントは、中央矢状面から振動板の最大幅の少なくとも0.2倍の距離のところに配置される。
【0076】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板をトランスデューサ基部構造体に回転可能に結合する少なくとも2つのヒンジマウントを備えてもよく、少なくとも2つのヒンジマウントは、回転軸に実質的に垂直な振動板または振動板構造体の振動板の中央矢状面の両側に配置され、各ヒンジマウントは、中央矢状面から振動板の最大幅の約0.47倍、0.45倍、0.42倍より短い距離のところに配置される。
【0077】
各ヒンジマウントは、変換機構の振動板側変換構成要素の外側に配置されてもよい。
【0078】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、トランスデューサ基部構造体に対する振動板または振動板構造体の回転軸が、振動板または振動板構造体の冠状面に実質的に垂直な面で、振動板または振動板構造体の所定のノード軸を含む面に配置されるように配置されてもよい。
【0079】
いくつかの実施形態では、ノード軸は予め決められてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、回転軸とノード軸は実質的に平行である。
【0081】
いくつかの実施形態では、回転軸とノード軸は実質的に同軸である。
【0082】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、トランスデューサ基部構造体に対する振動板または振動板構造体の回転軸と振動板または振動板構造体の質量中心軸とが実質的に平行であるように配置されてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、トランスデューサ基部構造体に対する振動板または振動板構造体の回転軸と振動板または振動板構造体の質量中心軸とが実質的に同軸であるように配置されてもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、ノード軸は、事実上実質的に支持されずに作動された状態(振動板が振動板サスペンションシステムに結合されず、変換機構によって発生させられた移動力を示す)の振動板の回転軸を特定することによって決定することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ノード軸は、以下の方法のうちのどれか一つを用いて予め決めることができる。
・コンピュータシミュレーションを行って、振動板サスペンションシステムを除いたオーディオトランスデューサのコンピュータモデルの回転軸が、モデルの変換機構が模擬オーディオ信号によって作動させられたときにどこにあるかを定める
・物理モデルの振動板が事実上実質的に支持されていないオーディオトランスデューサの物理モデルの変換機構を作動させて、振動板の回転軸を決定する
【0086】
いくつかの実施形態では、変換機構を作動させるステップは、振動板の質量制御された領域内の振動板を振動させるように機構を作動させることを含んでもよい。変換機構を作動させるステップは、振動板の質量制御された領域内の振動板を、振動板の冠状面に垂直な方向の振動板並進運動の強い要素を含む共振モードに関して振動させるように機構を作動させることを含んでもよい。
【0087】
いくつかの実施形態では、例えば軟らかい発泡材の上に載る重い部品で振動板を非常に軽くマウントし、その結果、振動板は事実上実質的に支持されていない状態になり、使用時生じる方向と実質的に同じ方向に起振力および/またはトルクをかけ、次いで、例えば軽量な加速度計を用いて、またはレーザドップラー振動計によって、または近接センサを用いて直接ノードを測定することによって、所定のノード軸を実験的に決定することができる。これに代えて、またはこれに加えて、所定のノード軸は、トランスデューサ基部構造体に対して事実上実質的に支持されなくなる振動数でトランスデューサを動作させることによって決定することができる。
【0088】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板または振動板構造体をトランスデューサ基部構造体に可撓的にマウントしてもよい。各ヒンジマウントは、少なくとも1つの軸の周りの回転コンプライアンスを備えてもよい。
【0089】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、LiquidmetalまたはVitreloyなどのアモルファス金属合金から形成された少なくとも1つのマウントを備えてもよい。
【0090】
いくつかの実施形態では、ドライバ基部構造体のように振動板構造体が実質的に剛体のままである振動板の動きを含むいくつかの共振モードがあり、コンプライアンスは基本的に振動板サスペンションにある。これらのモードのうち、振動板の主軸の周りの回転を含むモードが最も低い振動数を有することが好ましい。その振動数は、その次に高い振動数モードの振動数の0.75より低いことが好ましく、0.5より低いことがより好ましい。
【0091】
いくつかの実施形態では、可撓性ヒンジマウントは合わさって、使用時、トランスデューサ基部構造体に対する振動体の並進変位に対する一次抵抗を提供することができる。
【0092】
いくつかの実施形態では、可撓性ヒンジマウントは合わさって、使用時、トランスデューサ基部構造体に対する、少なくとも2つの実質的に直交する軸に沿う振動体の並進変位に対する一次抵抗を提供することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、可撓性ヒンジマウントは合わさって、使用時、トランスデューサ基部構造体に対する、少なくとも3つの実質的に直交する軸に沿う振動体の並進変位に対する一次抵抗を提供することができる。
【0094】
可撓性ヒンジマウントは、トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸周りの回転に対する一次コンプライアンスを提供する。
【0095】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、約8ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を有する実質的に軟らかい材料から形成された少なくとも1つのマウントを備えてもよい。少なくとも1つの可撓性マウントは、約4ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を有する実質的に軟らかい材料から形成されてもよい。少なくとも1つの可撓性マウントは、約2ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を有する実質的に軟らかい材料から形成されてもよい。少なくとも1つの可撓性マウントは、約1ギガパスカル(GPa)より小さい平均ヤング率を有する実質的に軟らかい材料から形成されてもよい。
【0096】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、振動板基本共振振動数が約100ヘルツより低くなるように十分低いヤング率を有する少なくとも1つのヒンジマウントを備えてもよい。基本共振振動数は約70ヘルツより低くてもよい。基本共振振動数は約50ヘルツより低くてもよい。
【0097】
いくつかの実施形態では、実質的に軟らかい各ヒンジマウントは、ヒンジマウントが少なくとも1つの軸に沿って実質的に線形に変形することができるように並進方向に実質的にコンプライアントであってもよい。軟らかい各ヒンジマウントは、ヒンジマウントが少なくとも2つの直交軸に沿って実質的に線形に変形することができるように並進方向に実質的にコンプライアントであってもよい。実質的に軟らかい各ヒンジマウントは、ヒンジマウントが3つの直交軸に沿って実質的に線形に変形することができるように並進方向に実質的にコンプライアントであってもよい。
【0098】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、エラストマーまたは軟らかいプラスチック材料から形成された少なくとも1つのマウントを備えてもよい。軟らかいプラスチック材料は、熱硬化性ウレタンなどのウレタン、またはシリコーンプラスチック材料、またはニトリルゴム(NBR)であってもよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、各マウントは、射出成形などの成形から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは一次ヒンジ支持である。
【0100】
いくつかの実施形態では、各マウントは、1GPaより小さい、より好ましくは0.5GPaより小さい、より好ましくはさらに0.1GPaより小さい、最も好ましくは0.05GPaより小さい圧縮におけるヤング率を有する材料から形成されてもよい。好ましくは、この材料はまた、0.003GPaより大きい、より好ましくは0.005GPaより大きい、より好ましくはさらに0.0065GPaより大きい、最も好ましくは0.008GPaより大きいヤング率を有する。いくつかの実施形態では、この材料は、ショアAスケールで、90より小さい、より好ましくは85より小さい、最も好ましくは75より小さいデュロメーターを有してもよい。いくつかの実施形態では、この材料は、ショアAスケールで、30より大きい、より好ましくは40より大きい、最も好ましくは55より大きいデュロメーターを有してもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは、一方の端部で振動板に、反対側の端部でトランスデューサ基部構造体に剛性に結合されたブッシュを備えてもよい。ブッシュは実質的に中空であってもよい。ブッシュは、間隔をおいて半径方向に配置された長手方向の複数のチャネルを備えてもよい。ブッシュは、半径方向に延在する個別の複数の内部スポークを備えてもよい。各ブッシュは、振動板またはトランスデューサ基部構造体から、振動板のノード軸および/または質量中心軸と実質的に同軸の軸に沿って横方向に延在するそれぞれのピンに剛性に結合されてもよい。各可撓性ブッシュは、トランスデューサ基部構造体または振動板の対応する側にある凹部と結合するように構成される。各凹部の内周の形状は、対応するブッシュの外周に対応してもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、振動板またはトランスデューサ基部構造体のうちのどちらかに剛性に接続され、回転軸と実質的に同軸に延在するピンを備えてもよく、ヒンジマウントの柔らかな可撓性材料はピンと密着している。可撓性材料は、ピンの周りに延在する振動板またはトランスデューサ基部構造体のうちの他方の一部分に接続することができる。
【0103】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは細長い可撓性要素を備えてもよい。一方の端部は振動板に接続することができ、他方の端部はトランスデューサ基部構造体に接続することができる。振動板からトランスデューサ基部構造体まで屈曲材料を通る最短長さは、長さに垂直な方向に細長い要素を横切る最小厚さの1.5倍より長く、より好ましくは2倍より長く、最も好ましくは2.5倍より長くてもよい。
【0104】
いくつかの実施形態では、軟らかいヒンジは、軸に配置されたねじれ要素を備える。振動板組立体はこの要素の一端で接続され、ドライバ基部は他端で接続されてもよい。一方または両方の接続部は実質的に軸に配置されてもよい。
【0105】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは細長い可撓性ヒンジ要素を備えてもよい。一方の端部は振動板に接続することができ、他方の端部はトランスデューサ基部構造体に接続することができる。振動板からトランスデューサ基部構造体まで可撓性ヒンジ要素を通る最短長さは、長さに垂直な方向に細長い要素を横切る最小厚さの1.5倍より長く、より好ましくは2倍より長く、最も好ましくは2.5倍より長くてもよい。屈曲材料を通る長さは実質的に真っ直ぐであることが好ましい。いくつかの実施形態では、ヒンジは、かなり異なる方向に向けられた別の細長い可撓性要素を備えてもよく、これは、各要素が長さに沿う方向に小さなコンプライアンスを提供することができるので、並進運動に対する強い支持を提供することができる。振動板とトランスデューサ基部構造体との接続点は、各可撓性ヒンジ要素の中央部に比べて厚い輪郭を備えてもよい。各可撓性要素は実質的に平面状で、回転軸に実質的に平行な方向に向けられてもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは実質的に減衰されてもよい。
【0107】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が0.005より大きい材料から形成されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.01より大きい材料から形成されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.02より大きい材料から形成されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.05より大きい材料から形成されてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が0.005より大きい材料によって支持されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.01より大きい材料によって支持されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.02より大きい材料によって支持されてもよい。各ヒンジマウントは、摂氏30度および動作振動数100ヘルツにおける材料の損失係数が約0.05より大きい材料によって支持されてもよい。
【0109】
材料は可撓性があり、その変形によって振動板が回転しやすくなることが好ましい。これに代えて、前記材料は、振動板を回転しやすくするように別の構成要素に当たって転がる。さらに別の代替策では、前記材料は、振動板を回転しやすくすることに主に関わる構成要素とは別である。
【0110】
いくつかの実施形態では、この材料は、100Hzの振動数において、振動板が主面に垂直な方向に並進運動するとき、サスペンションシステムに生じる並進方向のコンプライアンスのかなりの割合を占める。
【0111】
いくつかの実施形態では、この材料は、振動板の主面に垂直な方向のサスペンションシステムの大きな並進方向の変位を含む1つまたは複数の共振モードの機械的減衰にかなり寄与することができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、少なくとも1つの軸に沿う並進方向の変位に関して減衰することができる。各ヒンジマウントは、少なくとも2つの直交軸に沿う並進方向の変位に関して減衰することができる。各ヒンジマウントは、少なくとも3つの直交軸に沿う並進方向の変位に関して減衰することができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは異方性材料から形成されてもよい。各可撓性ヒンジマウントの異方性とは、マウントの回転方向の変形に比べて、振動板の冠状面に実質的に垂直な方向の並進方向の変形に対して抵抗するようなものであってもよい。
【0114】
いくつかの実施形態では、各可撓性マウントのヤング率は、振動板の冠状面に垂直な方向により大きくてもよい。
【0115】
いくつかの実施形態では、可撓性ヒンジマウントは発泡材から形成されてもよい。
【0116】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは少なくとも1つの実質的に凹状の外面を備えてもよい。各可撓性ヒンジマウントは、マウント本体の長手方向軸に沿って延在する少なくとも1つの実質的に凹状の外面を備えてもよい。各可撓性ヒンジマウントは、回転軸に平行な方向にマウント本体に沿って延在する少なくとも1つの実質的に凹状の外面を備えてもよい。各可撓性ヒンジマウントは、少なくとも1つの外面の少なくとも1つの実質的に凹状の断面輪郭を備えてもよく、断面輪郭は、マウントの長手方向軸または回転軸に実質的に直交するマウントの横断面を横切る。各可撓性ヒンジマウントの1つまたは複数の凹面は振動板の方を向いてもよい。
【0117】
各可撓性ヒンジマウントの1つまたは複数の凹面はトランスデューサ基部構造体に面してもよい。
【0118】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは中央領域と、中央領域に向かって内側に角度付けされたまたは湾曲した少なくとも1つの外面とを備えてもよい。
【0119】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは中央領域と、中央領域に向かって内側に角度付けされたまたは湾曲した少なくとも2つの外面とを備えてもよく、その結果、中央領域は両側の隣接する領域よりも相対的に薄い。
【0120】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは中央軸と、中央軸に向かって内側に角度付けされたまたは湾曲した少なくとも1つの外面とを備えてもよい。
【0121】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは、密度が変化する構造体から形成されてもよい。
【0122】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは、1つまたは複数の空洞を備えてもよい。各空洞は開放されていてもよい。各空洞は、空気のような気体などの流体で満たされてもよい。各空洞は閉鎖されていてもよい。各空洞は、マウント本体の残りの部分に比べて低密度の材料で満たされてもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、各可撓性ヒンジマウントは、複数の実質的に可撓性要素を備えてもよい。この要素はスポークの形態であってもよい。この要素は縦断的であってもよい。各要素は実質的に細くてもよい。各要素は実質的に短くて厚くてもよい。振動板または振動板構造体とトランスデューサ基部構造体との間を延在する複数のスポークがあってもよい。
【0124】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、中央基部から延在する、間隔をおいて半径方向に配置された長手方向の複数の要素を備えてもよい。中央基部の長手方向軸は、振動板または振動板構造体の回転軸と実質的に同軸であってもよい。各ヒンジ要素は、要素が動作中に屈曲または変形するように、約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成されてもよい。各ヒンジ要素は、約2GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成されてもよい。各ヒンジ要素は、約1GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成されてもよい。各ヒンジ要素は、約0.5GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成されてもよい。
【0125】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、要素間に空気チャネルを備えてもよい。各ヒンジマウントは、要素間に相対的に低密度の材料を備えてもよい。
【0126】
いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは、振動板とトランスデューサ基部構造体との間に結合された十字ばね式ピボットヒンジ構成要素を備えてもよい。各ヒンジ構成要素は、可撓性および弾力性のある材料から形成されてもよい。
【0127】
いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは間隔をおいて半径方向に配置された2つのスポークを備えてもよい。いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは間隔をおいて半径方向に配置された複数のスポークを備えてもよい。各スポークの内側端部はマウントの中央本体部に結合されてもよい。各スポークの反対側の外側端部はヘッドを備えてもよい。各ヘッドまたはスポークは、その場で、トランスデューサ基部構造体の壁の対応する形成物に結合するように構成されてもよい。各スポークは、その場で張力のかかった状態で保持されてもよい。2つ以上のスポークが主ヒンジ軸から実質的に半径方向に延在する。スポークは別のスポークに対して、30度より大きな角度に、より好ましくは45度より大きな角度に、最も好ましくは60度より大きな角度に向けられてもよい。
【0128】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、動作中、互いに対して動いて、支持された振動板または振動板構造体を回転させるように構成された一対の協働する接触面をそれぞれが有する1つまたは複数のヒンジ継手を備えてもよい。接触面の一方は、振動板または振動板構造体の一部を形成してもよく、他方の接触面はトランスデューサ基部構造体の一部を形成してもよい。
【0129】
いくつかの実施形態では、各ヒンジマウントは、互いに対して角度付けされた一対のヒンジ要素を備えてもよい。一対のヒンジ要素は、互いに対して実質的に直交していてもよく、軸の周りに回転されてもよい。一対のヒンジ要素は可撓性要素を備えてもよい。
【0130】
いくつかの実施形態では、各可撓性マウントは十字ばね式ピボットヒンジ構成要素を備えてもよい。
【0131】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、少なくとも1つのヒンジ継手を備えてもよく、各ヒンジ継手は、動作中、互いに対して動いて、支持された振動板を回転させるように構成された一対の協働する実質的に剛性の高い接触面を有する。振動板サスペンションは、通常の動作中、一対の協働する接触面を互いの方へコンプライアントに付勢して、接触面間の実質的に一貫した物理的な接触を維持するように構成された付勢機構を備えてもよい。接触面の一方は振動板または振動板構造体の一部分を形成してもよく、他方の接触面はトランスデューサ基部構造体の一部を形成してもよい。
【0132】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、1つまたは複数の玉軸受ヒンジを備えてもよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、少なくとも1つのヒンジ継手を備えてもよく、各ヒンジ継手は玉軸受を備え、玉軸受は7個より少ない玉を備える。各ヒンジ継手は玉軸受を備え、玉軸受は6個より少ない玉を備える。各ヒンジ継手は玉軸受を備え、玉軸受は5個より少ない玉を備える。
【0134】
いくつかの実施形態では、変換機構は、使用時に力を振動板または振動板構造体に、あるいは振動板または振動板構造体から伝えるように構成された振動板側変換構成要素を備えてもよい。
【0135】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板または振動板構造体に直接結合されてもよい。
【0136】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板または振動板構造体に剛性に結合されてもよい。
【0137】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、1つまたは複数の剛性の高い中間構成要素を介して振動板または振動板構造体に剛性に接続されてもよい。1つまたは複数の剛性の高い中間構成要素のヤング率は、少なくとも約8GPa、または少なくとも約20GPaであってもよい。
【0138】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板または振動板構造体と一体化されてもよいし、一体的に形成されてもよい。
【0139】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板の側部、または振動板構造体の振動板の側部に沿って延在してもよい。
【0140】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板の端部、または振動板構造体の振動板の端部に沿って延在してもよい。
【0141】
いくつかの実施形態では、回転動作トランスデューサの場合、振動板側変換構成要素は、回転軸に実質的に平行な軸に沿って結合してもよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、振動板または振動板構造体と重なってもよい。回転動作トランスデューサの場合、振動板側変換構成要素は、回転軸に沿って振動板または振動板構造体と重なってもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸に実質的に平行に延在してもよい。これに代えて、またはこれに加えて、振動板側変換構成要素は、振動板または振動板構造体の質量中心に沿って振動板または振動板構造体と重なってもよい。
【0143】
いくつかの実施形態では、振動板構造体の共通基部から延在する複数の振動板を有する複数振動板構造体の場合、振動板は共通基部と重なってもよい。
【0144】
いくつかの実施形態では、回転動作トランスデューサの場合、振動板側変換構成要素は、回転軸から実質的に近位にのみ配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、振動板の長さ、または振動板構造体の振動板の長さ、または振動板構造体の半径の75%以内の距離に配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、振動板の長さ、または振動板構造体の振動板の長さ、または振動板構造体の半径の50%以内の距離に配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、振動板の長さ、または振動板構造体の振動板の長さ、または振動板構造体の半径の40%以内の距離に配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、振動板の長さ、または振動板構造体の振動板の長さ、または振動板構造体の半径の30%以内の距離に配置されてもよい。
【0145】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、回転軸から、対角長さ寸法など、振動板の最大長さ寸法、または振動板構造体の振動板の最大長さの20%以内の距離に配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、最大長さ寸法の15%以内の距離に配置されてもよい。振動板側変換構成要素は、回転軸から、最大長さ寸法の10%以内の距離に配置されてもよい。
【0146】
いくつかの実施形態では、回転動作トランスデューサの場合、振動板側変換構成要素は、振動板の最大幅、または振動板構造体の最大幅、または振動板構造体の共通基部の最大幅を超えて、回転軸に沿って幅寸法の約20%より大きく、または約15%より大きく、または約10%より大きくは延在しない。最大幅寸法は回転軸に実質的に平行であってもよい。
【0147】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、少なくとも1つの軸に関して、または少なくとも2つの直交軸に関して、または3つの直交軸に関して実質的に対称であってもよい。
【0148】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、実質的に純粋なトルクを振動板または振動板構造体に、あるいは振動板または振動板構造体から加えて、または伝えてもよい。純粋なトルクは、実質的にゼロの正味の並進方向の力成分を備えてもよい。
【0149】
いくつかの実施形態では、振動板または振動板構造体は、1つまたは複数の実質的に平面状の部品または構成要素を介して変換機構に剛性に結合されてもよい。
【0150】
いくつかの実施形態では、振動板または振動板構造体は、剛性の高い1つまたは複数の構成要素を介して変換機構に剛性に結合されてもよく、その剛性の高い1つまたは複数の構成要素は、動作中、剛性の高い1つまたは複数の構成要素の曲げ変形が実質的に無視できるほど十分に真っ直ぐで、および/または十分に支持され、および/または十分に厚い。
【0151】
いくつかの実施形態では、変換機構は、コイルに動作可能に結合された磁石または磁気構造体を備える電磁変換機構を備えてもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、変換機構は、実質的に非整流であってもよい。磁石とコイルは流体ギャップで隔てられてもよい。磁石は、流体ギャップに隣接した実質的に湾曲した表面を備えてもよい。流体ギャップはエアギャップであってもよい。コイルは、流体ギャップに隣接した実質的に湾曲した表面を備えてもよい。コイルと磁石の湾曲した表面は相補的であってもよい。回転動作トランスデューサの場合、磁石の表面は回転軸の周りに湾曲していてもよい。回転動作トランスデューサの場合、コイルの表面は回転軸の周りに湾曲していてもよい。
【0153】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、コイルと磁石との間に配置された強磁性流体または材料を備えてもよい。
【0154】
いくつかの実施形態では、電磁変換機構は、オーディオトランスデューサの矢状面に関して実質的に対称であってもよい。
【0155】
いくつかの実施形態では、変換機構は磁石を含んでもよい。磁石は実質的に非交流磁場を備えてもよい。磁石は永久磁石であってもよい。磁石はネオジム材料から形成されてもよい。これに代えて、磁石は電磁石であってもよい。電磁石は直流電磁石であってもよい。磁石はアーマチュアでないことが好ましい。
【0156】
いくつかの実施形態では、磁石は振動板側変換構成要素であってもよい。磁石は、動作中、振動板または振動板構造体とともに動くように構成されてもよい。回転動作トランスデューサの場合、磁石は、動作中、回転軸の周りを振動板または振動板構造体とともに回転するように構成されてもよい。
【0157】
いくつかの実施形態では、磁石は、磁石に剛性に結合された1つまたは複数のポールピースを備えてもよい。ポールピースは合わさって、磁石の全体積の約50%より小さい体積を備えてもよい。ポールピースは合わさって、磁石の全体積の約30%より小さい体積を備えてもよい。ポールピースは合わさって、磁石の全体積の約5%より小さい体積を備えてもよい。
【0158】
いくつかの実施形態では、磁石は、振動板側部に凸状の外面を備える。磁石は対向する凸状の外面を備えてもよい。
【0159】
いくつかの実施形態では、磁石は、振動板の対応する面に結合するように構成された外面を備えてもよい。外面と対応する面は相補的であってもよい。外面は実質的に平面状であってもよく、対応する振動板の面は実質的に平面状であってもよい。
【0160】
いくつかの実施形態では、磁石は、振動板の対応する面に結合するように構成された1つまたは複数の面を備える。1つまたは複数の面は、十分剛性な接続を達成するために十分な表面積を含む。その面は、半径方向に延在する振動板の主面に隣接して延在するように、および/または半径方向に延在する振動板の主面と同じまたは類似の面に延在するように構成された磁石の側部にあってもよい。その面は、振動板の垂直応力補強材に直接結合されてもよい。
【0161】
磁石は、振動板から最も近位の磁石の領域で振動板に直接結合されてもよい。最も近位の領域は、変換機構の隣接するコイルおよび/またはポールピースよりも振動板に近くてもよい。
【0162】
磁石は、動作中、主せん断変形力を示すように構成された振動板本体の表面に直接結合されてもよい。
【0163】
高温接着剤を用いて磁石を振動板に接合してもよい。磁石接合面はニッケルめっきされ、硝酸などの酸で処理されてもよい。
【0164】
磁石と振動板は、磁石および振動板の一方または両方の対応する開口またはスロットに入るように構成された1つまたは複数の構成要素を介して結合されてもよい。
【0165】
代替の実施形態では、磁石は基部構造体側変換構成要素であってもよい。磁石は、動作中、相対的に静止していてもよい。磁石は、トランスデューサ基部構造体に剛性に結合されてもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、磁石は、磁石の長さに沿って実質的に連続して延在する一対の対向する磁極を備えてもよい。磁石は、単一の対の磁極のみで構成されてもよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、磁石は回転軸と重なってもよい。磁石は、回転軸に沿って振動板と重なってもよい。回転動作トランスデューサでは、磁極は、回転軸の両側に配置されてもよい。回転軸は、磁石の本体を通って延在してもよい。
【0168】
いくつかの実施形態では、磁極間の主要な内部磁場の方向は、回転軸に対して角度付けされてもよい。主磁場の方向は、回転軸に実質的に直交していてもよい。
【0169】
いくつかの実施形態では、主要な内部磁場の方向は、振動板、または振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に角度付けされてもよい。主磁場の方向は、振動板、または振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に直交していてもよい。
【0170】
いくつかの実施形態では、主要な内部磁場の方向は、振動板、または振動板構造体の振動板の主放射面に対して実質的に角度付けされてもよい。主磁場の方向は、振動板、または振動板構造体の振動板の放射面に対して実質的に直交していてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、磁極は磁石の冠状面の両側に延在してもよい。
【0172】
いくつかの実施形態では、両極間の磁石の主要な内部磁場は、振動板の冠状面に実質的に平行であってもよい。主要な内部磁場は、振動板の回転軸に対して直交するなど、実質的に角度付けされてもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、磁石は回転軸の周りに実質的に湾曲していてもよい。振動板の外面は回転軸の周りに湾曲していてもよい。
【0174】
いくつかの実施形態では、磁石は、変換機構の対応するコイルに隣接する湾曲した表面を備えてもよい。
【0175】
いくつかの実施形態では、磁石または磁気構造体の質量中心は、振動板または振動板構造体の回転軸に、または回転軸の近位に配置されてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態では、磁石または磁気構造体は、振動板の長手方向軸に関して、振動板の回転軸の両側に、またはその近位に配置されてもよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、磁石に剛性に接続されて磁石構造体または組立体から強い磁束を運ぶ1つまたは複数の他の強力な強磁性構成要素を備えてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、磁石構造体または組立体以外の強力な強磁性材料を備える他の構成要素を備えることができない。
【0179】
強力な強磁性材料を有する構成要素とは、その場で(静止した振動板で)、約300mμより大きい、または約500mμより大きい、または約1000mμより大きい最大比透磁率を有する構成要素を意味することができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、磁気構造体または組立体の構成要素以外の1つまたは複数の他の強力な強磁性構成要素を備えてもよく、磁気組立体は、他の強磁性構成要素から実質的に遠位にある。
【0181】
いくつかの実施形態では、他の強磁性構成要素は、磁石あるいは磁気構造体または組立体の方を向く1つまたは複数の相対的に大きな面または主面を備えてもよい。他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面は、磁石あるいは磁気構造体また組立体を用いて他の強磁性構成要素の反作用を緩和するまたはかなり最小化するために、磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面から実質的に遠位にあってもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の最大距離の少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられてもよい。
【0182】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の距離とほぼ同じ距離だけ隔てられてもよい。
【0183】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の最大距離の少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ隔てられてもよい。
【0184】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石あるいは磁気構造体または組立体の両極間の距離とほぼ同じ距離だけ隔てられてもよい。
【0185】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられてもよい。
【0186】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石の最大寸法の少なくとも約0.6倍の距離だけ隔てられてもよい。
【0187】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、回転軸に実質的に垂直な軸に沿って、磁石の最大寸法とほぼ同じ距離だけ隔てられてもよい。
【0188】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さの少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さの少なくとも約0.6倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さとほぼ同じ距離だけ隔てられてもよい。
【0189】
磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さの少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さの少なくとも約0.6倍の距離だけ隔てられてもよい。磁石あるいは磁気構造体または組立体の最も近い面、あるいは相対的に大きな面または主面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面または主面から、磁石の最大長さとほぼ同じ距離だけ隔てられてもよい。
【0190】
磁石組立体の最も近い面または相対的に大きな面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面から、軸に垂直なある方向に、前記面の領域において前記面に平行な方向の磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ隔てられる。磁石組立体の最も近い面または相対的に大きな面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面から、軸に垂直なある方向に、前記面の領域において前記面に平行な方向の磁石の最大寸法の約0.6倍の距離だけ隔てられる。磁石組立体の最も近い面または相対的に大きな面は、他の強磁性構成要素の相対的に大きな面から、軸に垂直なある方向に、前記面の領域において前記面に平行な方向の磁石の最大寸法と実質的に同様の距離だけ隔てられる。
【0191】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、磁石あるいは磁気構造体または組立体に、磁石組立体に作用する重力による力の70倍より大きい、より好ましくは50倍より大きい、最も好ましくは40倍より大きい力を加える他の強磁性構成要素を備えない。
【0192】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、磁石あるいは磁気構造体または組立体を反対方向に引っ張る、磁石あるいは磁気構造体または組立体の方を向く他の強磁性構成要素を備える。いくつかの実施形態では、他の強磁性構成要素による磁石あるいは磁気構造体または組立体への正味の力は無視できる、またはほぼゼロである。
【0193】
いくつかの実施形態では、他の強磁性構成要素によって振動板に働く正味の力は、重力の効果による振動板への力より20倍も大きくない、好ましくは10倍も大きくない、最も好ましくは5倍も大きくない。
【0194】
いくつかの実施形態では、他の強磁性構成要素によって振動板に働く正味の力は、その場の重力の効果による振動板への力をほぼ相殺することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、磁石は、1立方センチメートル当たり約2.2グラムより小さい密度の金属部品に収められてもよい。いくつかの実施形態では、磁石の近くの金属部品は、磁石の実体積より小さい実体積、または磁石の実体積の約0.8倍より小さい実体積を有してもよい。金属部品は、磁石の平均半径より小さな平均半径のところに配置されてもよい。
【0196】
いくつかの実施形態では、変換機構はコイルを含んでもよい。コイルは1つまたは複数のコイル巻線を備えてもよい。コイルは振動板側変換構成要素であってもよく、動作中、振動板または振動板構造体とともに動くように構成されてもよい。
【0197】
いくつかの実施形態では、コイルは基部構造体側変換構成要素である。コイルは、変換機構の対応する磁石の周囲を延在する単一のコイル巻線を備えてもよい。
【0198】
いくつかの実施形態では、コイルは強磁性コアと密着することができない。
【0199】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、近くの無関係な強磁性材料の変換機構の方への磁気引力または変換機構の方から離す磁気反発力を実質的に軽減するように構成された、強磁性材料から形成された遮蔽体をさらに備えてもよい。遮蔽体は、ねじりなど、変換機構の無関係な強磁性材料の方への動きまたは無関係な強磁性材料から離れる動きを弱めることができる。遮蔽体は変換機構の周りに延在してもよい。遮蔽体はいかなるコイルにも密着していてはいけない。遮蔽体は、間に隙間ができるように各コイルから実質的に遠位にあってもよい。隙間は、例えば、少なくとも1mmであってもよい。遮蔽体は振動板または振動板構造体に働く正味の力を実質的にゼロにすることができる。
【0200】
いくつかの実施形態では、強磁性遮蔽体は、音波を通りやすくするように穴または他の隙間を有してもよい。
【0201】
いくつかの実施形態では、強磁性遮蔽体はグリルとして兼用してもよい。
【0202】
いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位の側のコイルの面または側部は、密着するいかなる強力な強磁性材料も有することができない。いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位の側のコイルの面または側部は、剛性に接続されたいかなる強力な強磁性材料も有することができない。
【0203】
いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位の側のコイルの面または側部は、いかなる強力な強磁性材料に対しても少なくとも1mm、より好ましくは少なくとも2mm、最も好ましくは少なくとも4mmの隙間を有してもよい。
【0204】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサはコイルの周りにいかなるポールピースも備えることができない。代替の実施形態では、オーディオトランスデューサはコイルの周りにポールピースを備えることができる。
【0205】
いくつかの実施形態では、コイルは、振動板サスペンションのヒンジマウントのピンのあたりで結合してもよい。
【0206】
いくつかの実施形態では、コイルは、振動板サスペンションを接続するヒンジの軸ピンの周りを迂回してもよい。
【0207】
いくつかの実施形態では、コイルは、変換機構の磁石に隣接して配置され、その周りに巻かれていてもよい。
【0208】
いくつかの実施形態では、コイルは、変換機構の磁石に隣接して配置され、磁石の極に隣接した領域の周りに巻かれてもよい。この領域は、極にすぐ隣接していてもよい。
【0209】
いくつかの実施形態では、磁石または磁気構造体とコイルとの間の最短距離は、約1.5mmより短い、より好ましくは約1mmより短い、最も好ましくは約0.5mmより短い。
【0210】
いくつかの実施形態では、コイルは、磁石または磁気構造体の両側で対称であってもよい。
【0211】
いくつかの実施形態では、コイルは、振動板の長手方向軸に対して実質的に横断する面内を延在する。
【0212】
いくつかの実施形態では、コイルは、回転軸に実質的に平行に、回転軸の両側に沿って延在する。
【0213】
いくつかの実施形態では、複数のコイルは、変換機構の磁石に隣接して配置されてもよく、それぞれ、磁石の極の1つに隣接する領域の周りに巻かれている。この領域は極にすぐ隣接してもよい。複数のコイルは、(例えば、強磁性コアによって)電気的および磁気的に接続されなくてもよい。コイルは接続されてもよい。コイルは直列または並列に接続されてもよい。第1のコイルは、変換機構の磁石に隣接して配置されて、磁石の第1の極に隣接した領域の周りに巻かれてもよく、第2のコイルは、磁石に隣接して配置されて、磁石の第2の極に隣接した領域の周りに巻かれてもよい。
【0214】
いくつかの実施形態では、コイルの長手方向軸は、変換機構の対応する磁石の主磁場に実質的に垂直であってもよい。コイル軸は磁石の中央領域を横切ってもよい。コイル軸は、磁石の長手方向軸の中央領域を横切ってもよい。
【0215】
いくつかの実施形態では、コイルは約2.5オームより小さい抵抗を備えてもよい。コイルは約2オームより小さい抵抗を備えてもよい。コイルは約1オームより小さい抵抗を備えてもよい。
【0216】
いくつかの実施形態では、変換機構は圧電機構を備えてもよい。振動板側変換構成要素は圧電機構の構成要素または部品であってもよい。
【0217】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ基部構造体は複数の冷却フィンを備えてもよい。
【0218】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ基部構造体はアルミナから形成されてもよい。
【0219】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、トランスデューサ基部構造体を、隣接する、振動板または振動板構造体以外のオーディオトランスデューサの構成要素に可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムをさらに備えてもよい。
【0220】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、オーディオトランスデューサを取り囲むように構成されたハウジングまたはバッフルをさらに備えてもよく、デカップリングマウンティングは、トランスデューサ基部構造体をハウジングまたはバッフルに可撓的にマウントする。
【0221】
いくつかの実施形態では、デカップリングマウンティングシステムは、オーディオトランスデューサの所定のトランスデューサノード軸に、またはその近位に位置するように構成された少なくとも1つのトランスデューサノード軸マウントを備えてもよい。所定のトランスデューサノード軸は、オーディオトランスデューサが事実上実質的に支持されずに作動された状態(オーディオトランスデューサがハウジングから事実上デカップリングされ、トランスデューサ基部構造体が振動板の回転中の動きの反力を示す)のトランスデューサ基部構造体の回転軸を特定することによって決定することができる。いくつかの実施形態では、所定のトランスデューサノード軸は、支持されずに作動された状態のオーディオトランスデューサのモデルのコンピュータシミュレーションを用いて決定することができる。
【0222】
いくつかの実施形態では、デカップリンググシステムは、所定のトランスデューサノード軸から遠位に位置するように構成された少なくとも1つの遠位マウントを備えてもよい。
【0223】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのトランスデューサノード軸マウントは、少なくとも1つの遠位マウントよりも相対的にコンプライアントでなくてもよく、および/または相対的に可撓性が小さくてもよい。
【0224】
いくつかの実施形態では、デカップリングシステムは、トランスデューサ基部構造体の両側に配置された一対のトランスデューサノード軸マウントを備えてもよい。各トランスデューサノード軸マウントは、トランスデューサ基部構造体に剛性に結合されてトランスデューサノード軸と実質的に一直線上にある軸に沿ってトランスデューサ基部構造体の一方の側から横方向に延在するピンを備えることが好ましい。各トランスデューサノード軸マウントは、ピンの周りで剛性に結合されてハウジングの対応する凹部内に配置されるように構成されたブッシュをさらに備えることが好ましい。ハウジングの対応する凹部は、ブッシュを凹部内に剛性に受け入れて保持するためのスラグ(slug)を備えることが好ましい。
【0225】
いくつかの実施形態では、各遠位マウントは、実質的に可撓性のマウンティングパッドを備えてもよい。デカップリングシステムは、トランスデューサ基部構造体の外面とハウジングの内面との間で接続された一対のマウンティングパッド備えることが好ましい。マウンティングパッドは、トランスデューサ基部構造体の対向面で結合されることが好ましい。各マウンティングパッドは、頂部端部および基部端部を有するパッドの深さに沿って実質的にテーパ状の幅を備えることが好ましい。基部端部は、トランスデューサ基部構造体またはハウジングのうちの一方に剛性に接続され、頂部端部は、トランスデューサ基部構造体またはハウジングのうちの他方に接続されることが好ましい。
【0226】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、入力オーディオ信号から音圧を発生させるように構成された電気音響トランスデューサ/スピーカであってもよい。
【0227】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、入力音圧からオーディオ信号を発生させるように構成された音響電気トランスデューサ/マイクロホンであってもよい。
【0228】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動板または振動板構造体、トランスデューサ基部構造体、および変換機構を取り囲むためのハウジングを備えてもよい。ハウジングはプラスチック材料から作られてもよい。
【0229】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動数帯域が200Hz~20kHzの音を変換するように構成された中音域および高音域トランスデューサであってもよい。
【0230】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動数帯域が約20Hz~約200Hzの音を変換するように構成された低音域トランスデューサであってもよい。
【0231】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、振動数帯域が約20Hz~約20kHzの音を変換するように構成された個人用オーディオトランスデューサであってもよい。
【0232】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、100Hzより低い、または約70Hzより低い、または最も好ましくは50Hzより低い基本共振振動数を備えてもよい。
【0233】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションの各ヒンジマウントは、振動板基本共振振動数が約100Hzより低い振動数で生じるように十分低いヤング率を有する。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションの各ヒンジマウントは、振動板基本共振振動数が約70Hzより低い振動数で生じるように十分低いヤング率を有する。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションの各ヒンジマウントは、振動板基本共振振動数が約50Hzより低い振動数で生じるように十分低いヤング率を有する。
【0234】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、約200Hzより高い、または約300Hzより高い、または約400Hzより高い並進共振振動数を備えてもよい。
【0235】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の振動板サスペンション構成要素は、並進方向のコンプライアンスと関連する振動板共振振動数が、約200Hzより高い、より好ましくは約300Hzより高い、最も好ましくは約400Hzより高い振動数で生じるようにするために剛性が十分高い。並進方向のコンプライアンスと関連する振動板組立体共振振動数は、冠状面に垂直な方向の振動板の大きな変位に関係することがある。
【0236】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションの各ヒンジマウントは、並進方向のコンプライアンスと関連する振動板共振振動数が、約200Hzより高い、より好ましくは約300Hzより高い、最も好ましくは約400Hzより高い振動数で生じるようにするために剛性が十分高い。並進方向のコンプライアンスと関連する振動板組立体共振振動数は、冠状面に垂直な方向の振動板の大きな変位に関係することがある。
【0237】
いくつかの態様では、本発明は概して、ユーザの耳から約10cm以内で使用するように構成され、ハウジングと、ハウジング内に配置された前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサとを備えるオーディオデバイスで構成されてもよい。
【0238】
いくつかの実施形態では、オーディオデバイスは、使用時にユーザの耳に当てて配置されるような大きさで構成された少なくとも1つのインターフェースデバイスであって、ハウジングとオーディオトランスデューサとを備える少なくとも1つのインターフェースデバイスを備えてもよい。
【0239】
各インターフェースデバイスは、使用時にユーザの耳の位置、または耳に隣接した位置でユーザの頭にまたがるように構成されてもよい。
【0240】
各オーディオデバイスは、ユーザの両耳用の一対のインターフェースデバイスを備えてもよい。一対のインターフェースデバイスは、関連するオーディオトランスデューサによって少なくとも2つの独立したオーディオ信号を再生するように構成されてもよい。
【0241】
いくつかの実施形態では、各インターフェースデバイスは、使用時にユーザの耳に、または耳の周りに装着されるように構成されたヘッドホンカップである。
【0242】
いくつかの実施形態では、各インターフェースデバイスは、使用時にユーザの外耳道に、外耳道に隣接して、または外耳道内に位置するように構成されたインターフェースプラグである。各イヤホンインターフェースは、装着時に関係する外耳道の周りを封止しなくてもよい。各インターフェースデバイスは、外耳道開口からデバイスの通気孔へ延在する空気チャネルを備えてもよい。
【0243】
いくつかの実施形態では、インターフェースデバイスは携帯電話サウンドインターフェースである。
【0244】
いくつかの実施形態では、このデバイスは補聴器インターフェースである。
【0245】
いくつかの態様では、本発明は概して、ハウジングと、ハウジング内に配置された前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサとを備える携帯電話デバイスで構成されてもよい。
【0246】
いくつかの態様では、本発明は概して、ハウジングと、ハウジング内に配置された前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサとを備える補聴器で構成されてもよい。
【0247】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が実質的に短い、ハウジングと、
前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサと
を備え、
オーディオトランスデューサは空洞内に配置され、振動板は、動作中、主回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成され、オーディオトランスデューサは、主回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられ、深さ寸法に実質的に直交する面に沿う、主回転軸から最も遠位の振動板の末端部の全直線変位が、空洞の深さ寸法と実質的に同じ、または空洞の深さ寸法より長い、電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0248】
いくつかの態様では、本発明は概して、
電気音響トランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が、空洞の実質的に直交する長さ寸法より短い、および/または空洞の実質的に直交する幅寸法よりも短い、ハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを回転するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサであって、電気音響トランスデューサが、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられた、オーディオトランスデューサと
を備え、
ハウジングの深さ寸法がハウジングの幅寸法および長さ寸法より実質的に短い、電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0249】
いくつかの実施形態では、ハウジングの深さ寸法は、ハウジングの幅寸法および長さ寸法よりもかなり短くてもよい。例えば、ハウジングの深さ寸法は、ハウジングの幅寸法および/または長さ寸法の約0.2倍より短くてもよい、ハウジングの幅寸法および/または長さ寸法の約0.15倍より短くてもよい、あるいはハウジングの幅寸法および/または長さ寸法の約0.1倍より短くてもよい。
【0250】
別の態様では、本発明は概して、
ハウジングであって、
1つまたは複数の側面によって接続された一対の対向する主面であって、側面のそれぞれよりも相対的に大きな表面積を有する主面と、
電気音響トランスデューサのための空洞であって、主面に実質的に直交する短い深さ寸法を有する空洞と
を有するハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様による電気音響トランスデューサであって、振動板の回転軸が、空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられた電気音響トランスデューサと
を備える電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0251】
いくつかの態様では、本発明は概して、
電気音響トランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が、空洞の実質的に直交する長さ寸法より短い、および/または空洞の実質的に直交する幅寸法よりも短い、ハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを回転するように構成された振動板を有する、オーディオトランスデューサであって、電気音響トランスデューサが、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられた、オーディオトランスデューサと
を備え、
ハウジングの深さ寸法がハウジングの幅寸法および長さ寸法より実質的に短い、電子デバイスで構成される。
【0252】
いくつかの態様では、本発明は概して、
ハウジングであって、
1つまたは複数の側面によって接続された一対の対向する主面であって、側面のそれぞれよりも相対的に大きな表面積を有する主面と、
電気音響トランスデューサのための空洞であって、主面に実質的に直交する短い深さ寸法を有する空洞と
を有するハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサであって、電気音響トランスデューサが、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられた、オーディオトランスデューサと
を備える電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0253】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が、空洞の実質的に直交する長さ寸法および空洞の実質的に直交する幅寸法に対して短い、ハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを回転するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサであって、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられた、オーディオトランスデューサと
を備える電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0254】
いくつかの態様では、本発明は概して、
電気音響トランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が実質的に短い、ハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサであって、電気音響トランスデューサが、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられ、深さ寸法に実質的に直交する面に沿う振動板の末端部の全直線変位の少なくとも成分が、空洞の深さ寸法と実質的に同じ、または空洞の深さ寸法より長く、全直線変位の成分が深さ寸法に実質的に直交し、振動板の末端部が回転軸から最も遠位の振動板の端部にある、オーディオトランスデューサと
を備える電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0255】
いくつかの態様では、本発明は概して、
電気音響トランスデューサのための空洞を有するハウジングであって、空洞の深さ寸法が実質的に短い、ハウジングと、
空洞内に配置されて、動作中、回転軸の周りを第1の末端位置と第2の末端位置との間を回転可能に振動するように構成された振動板を有する、前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサであって、電気音響トランスデューサが、振動板の回転軸が空洞の深さ寸法に実質的に平行であるように、空洞内で向けられ、深さ寸法に実質的に直交する面に沿う振動板の末端部の全直線変位の少なくとも成分が、空洞の深さ寸法と実質的に同じ、または空洞の深さ寸法より大きく、全直線変位の成分が深さ寸法に実質的に直交し、振動板の末端部が回転軸から最も遠位の振動板の端部にある、オーディオトランスデューサと
を備える電子デバイスで構成されると言うことができる。
【0256】
いくつかの態様では、本発明は概して、
前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサを有するオーディオデバイスと、
トランスデューサの入力におけるオーディオ信号を最適化するためにオーディオデバイスに動作可能に結合されたオーディオ調整システムと
を備えるオーディオシステムで構成されると言うことができる。
【0257】
オーディオ調整システムは、オーディオシステムのオーディオデバイスに、あるいは外部または遠隔のデバイスに実装されてもよい。
【0258】
別の態様では、本発明は概して、
前述の態様のうちの任意の1つの態様によるオーディオトランスデューサと、
トランスデューサへの入力オーディオ信号を最適化するためにオーディオトランスデューサに動作可能に結合されたオーディオ調整システムと
を備えるオーディオデバイスで構成されると言うことができる。
【0259】
オーディオ調整システムは、アナログ回路および/またはデジタル回路で実装されてもよい。
【0260】
いくつかの実施形態では、本発明のオーディオ調整システムは、関連するオーディオデバイスの各出力チャネルに対して受信したオーディオ信号を補正するように構成されたイコライザを含む。イコライザは、関係するオーディオトランスデューサの特性を補償するように構成される。このような特性には、オーディオトランスデューサの振動数応答、オーディオトランスデューサの位相応答、オーディオトランスデューサのインパルス応答、および/または質量-ばね-ダンパ集中定数特性のうちの1つまたは複数の任意の組合せが含まれてもよい(この場合、基本モードがモデル化され、任意選択的に、1つまたは複数の並進モードもモデル化される)。
【0261】
いくつかの実施形態では、イコライザは、オーディオ信号の振動数応答のステップを除去して、補正されたオーディオ信号をオーディオトランスデューサの変換機構に送出するように構成されてもよい。
【0262】
いくつかの実施形態では、イコライザは、オーディオ信号の振動数応答のスパイクまたはブリップ(blip)を除去して、関係するオーディオトランスデューサの変換機構に補正されたオーディオ信号を送出するように構成されてもよい。スパイクまたはブリップは、例えば、振動数応答に少なくとも1dBのスパイクを引き起こすことがある。
【0263】
イコライザは、オーディオ信号の位相応答の位相スパイクまたはブリップまたはステップを除去するように構成されてもよい。
【0264】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、振動板基本共振振動数に基づいて、変換機構への入力信号の振動数応答および/または位相応答および/または過渡応答を補正するように構成されてもよい。
【0265】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、変換機構への入力信号の振動数応答および/または位相応答および/または過渡応答を補正して、質量-ばね-ダンパなどの振動板の集中定数特性と関連する、振幅および/または位相および/または過渡特性を補償するように構成されてもよい。集中定数特性には、振動板基本共振モード、および並進方向のヒンジのコンプライアンスと関連する振動板組立体の大きな並進成分を含む1つまたは複数の共振モードの両方含まれてもよい。
【0266】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、変換機構の入力における振動数の上昇とともにオーディオ信号の振動数応答を上昇させて高周波ロールオフに対して補償するように構成されてもよい。高周波ロールオフは、コイルインダクタンスに関係付けられることがある。
【0267】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、振動板サスペンションの並進方向のコンプライアンスによる振動板構造体の並進運動を含む運動を有する共振モードの影響の補償に対応する振動数で、またはその近くで生じる音圧のステップ変化を含む振動数応答曲線を組み入れるように構成されてもよい。組み入れられた振動数応答曲線はまた、振動板サスペンションの並進方向のコンプライアンスによる振動板構造体の並進運動を含む運動を有する共振モードと関連する応答ピークおよび/または応答の谷に対する補正を含んでもよい。
【0268】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、音源と動作可能に結合するように構成された入力と、変換機構と動作可能に結合するように構成された出力とを有するハイパスフィルタを備えて、1つまたは複数の所定のカットオフ振動数より下の振動数の、音源からのオーディオ信号を減衰させてもよい。振動板サスペンションシステムも十分に可撓性がある場合の実施形態では、振動板サスペンションシステムのコンプライアンスと関連する共振モードと関連する共振振動数は、所定のカットオフ振動数のうちの1つまたは複数の振動数より低いことがある。
【0269】
いくつかの実施形態では、オーディオ調整システムは、入力オーディオ信号の比較的低振動数成分をフィルタリングするためのハイパスフィルタを備える。フィルタはまた、動作中、フィルタリングされたオーディオ信号を関連するトランスデューサの変換機構に与えるように構成される。
【0270】
フィルタは、トランスデューサの振動数応答のより低いロールオフ振動数に基づいて、関連するオーディオトランスデューサの振動数成分をフィルタリングするように構成されてもよい。
【0271】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサの振動板サスペンションは、並進方向のコンプライアンスと関連する振動板の共振振動数がフィルタのカットオフ振動数より低くなるように十分コンプライアントであってもよい。カットオフ振動数は、例えば、フィルタの-3DB振動数であってもよい。共振モードは、振動板の主共振モードでないことが好ましい。共振モードの振動数において、振動板は実質的に剛体のままであること好ましい。共振モードは、主軸の領域の振動板の並進方向のコンプライアンス/動きを含むことが好ましい。共振モードは、主軸以外の軸の周りを振動板が回転しやすくなるサスペンションシステムのコンプライアンス/動きを含むことが好ましい。この軸は主軸に平行に配置されることが好ましい。並進運動は、振動板の主面に垂直な方向の大きな成分であることが好ましい。共振モードは、振動数応答測定において、1dBより大きい、より好ましくは2dBより大きい、最も好ましくは3dBより大きい共振ピークになるモードであることが好ましい、共振モードは、振動数応答プロットにおいて、0.5dBより大きい、より好ましくは1dBより大きい、最も好ましくは1.5dBより大きいレベルのステップと関連するモードであることが好ましい。
【0272】
並進方向のヒンジのコンプライアンスと関連する振動板共振振動数は、冠状面に垂直な方向の振動板の大きな変位を含んでもよい。軸上で1m離れて測定されるとき、並進方向のヒンジのコンプライアンスと関連する振動板共振振動数は、関連する振動数応答の1dB以上のずれを生じさせることがある。軸上で1m離れて測定されるとき、並進方向のヒンジのコンプライアンスと関連する振動板組立体共振振動数は、0.5dB以上の関連する振動数応答ステップを生じさせることがある。
【0273】
いくつかの実施形態では、オーディオデバイスは、動作中、入力オーディオ信号を増幅して、増幅された信号を変換機構に出力するための増幅器をさらに備えてもよい。増幅器は、増幅器の入力におけるフィードバックとして出力電流を受信するように構成されてもよい。増幅器は、デジタルおよび/またはアナログであってもよい。
【0274】
いくつの態様では、本発明は概して、振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法で構成されると言うことができ、本方法は、
a)振動板のノード軸を決定するステップと、
b)変換機構を振動板およびトランスデューサ基部構造体に結合するステップと、
c)トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸が、振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、振動板のノード軸を含む面に配置されるように、振動板を、振動板サスペンションシステムを介してトランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントするステップと
を含む。
【0275】
いくつかの実施形態では、ステップa)からc)の順番は、ステップc)がステップa)の後に実行されるのであれば変えてもよい。
【0276】
いくつかの実施形態では、回転軸は、ノード軸と実質的に同軸であってもよい。
【0277】
いくつかの実施形態では、振動板のノード軸を決定するステップは、振動板を事実上実質的に支持されてない状態で動作させ、ノード軸を示す回転軸を観測するステップを含んでもよい。
【0278】
いくつかの実施形態では、振動板のノード軸を決定するステップは、
・オーディオトランスデューサのコンピュータモデルを生成するステップと、
・モデルの変換機構が、モデルのトランスデューサ基部構造体に対して事実上実質的に支持されてない状態のモデルの振動板を回転させる動作状態をシミュレートするステップと、
・モデルの振動板の回転軸をシミュレーションから決定するステップと、
・モデルの振動板の回転軸からオーディオトランスデューサのノード軸を決定するステップと
を含んでもよい。
【0279】
いくつかの実施形態では、この動作状態では、振動板サスペンションのノード軸の位置への影響は無視できる。振動板サスペンションのノード軸位置への影響が無視できるほど、この動作状態の時間間隔は十分短くなり得る、および/またはこの状態の動作振動数は十分高くなり得る。この動作状態では、(振動板サスペンションの屈曲/振動板変位に対し)振動板の屈曲のノード軸位置への影響は無視できる。振動板が実質的に剛体のままであるほど、または少なくとも、振動板のいかなる変形も決定されたノード軸位置への影響が無視できるほど、この動作状態は十分長くなり得る、および/またはこの状態の動作振動数は十分低くなり得る。
【0280】
いくつかの実施形態では、等価なコンピュータモデル技法を用いて、ノード軸が目標位置に生じるように、振動板の質量分布および/またはトランスデューサの質量分布および/または振動板の励振位置および方向を設計することができる。
【0281】
いくつかの実施形態では、振動板のノード軸を決定するステップは、運動学の法則を使用すること、および/またはニュートンの第二法則を適用することを含む。
【0282】
いくつかの実施形態では、振動板は実質的に剛体であるという仮定をすることできる。トランスデューサ基部構造体は実質的に剛体であるという仮定をすることができる。振動板サスペンションの運動への影響は実質的に無視できるという仮定をすることができる。振動板の回転軸の位置の計算を行うことができる。初期条件として、振動板とトランスデューサ基部構造体との間の相対的な動きはゼロとすることができる。力は、実際のドライバにおいて加えられるのと同じ方向と位置に加えることができる。力は、生じる変位が小さいまたは無視できるように、十分短い時間、加えられてもよい。力が加わった後に実質的に並進運動がない振動板の位置を決定することができる。
【0283】
いくつかの実施形態では、運動学の法則に基づく等価な技法を用いて、ノード軸が何らかの目標位置に生じるように、振動板の質量分布および/またはトランスデューサの質量分布および/または振動板の励振位置および方向を設計することができる。
【0284】
いくつかの実施形態では、振動板のノード軸を決定するステップは、
・オーディオトランスデューサの物理モデルを生成するステップと、
・モデルのトランスデューサ基部構造体に対して事実上実質的に支持されてない状態のモデルの振動板を回転させるようにモデルの変換機構を動作させるステップと、
・トランスデューサ基部構造体に対するモデルの振動板の回転軸を決定するステップと、
・モデルの振動板の回転軸からオーディオトランスデューサのノード軸を決定するステップと
を含んでもよい。
【0285】
いくつかの実施形態では、この動作状態では、振動板サスペンションのノード軸位置への影響は無視できる。振動板サスペンションのノード軸位置への影響が無視できるほど、この動作状態の時間間隔は十分短くなり得る、および/またはこの状態の動作振動数は十分高くなり得る。この動作状態では、(振動板サスペンションの屈曲/振動板変位に対し)振動板の屈曲のノード軸位置への影響は無視できる。振動板が実質的に剛体のままであるほど、または少なくとも、振動板のいかなる変形も決定されたノード軸位置への影響が無視できるほど、この動作状態は十分長くなり得る、および/またはこの状態の動作振動数は十分低くなり得る。
【0286】
いくつかの実施形態では、モデルの回転軸を決定するステップは、加速度計、レーザドップラー振動計(LDV:Laser Doppler Vibrometer)、または近接センサなどの1つまたは複数のセンサまたは測定デバイスを用いて軸を測定するステップを含んでもよい。
【0287】
いくつかの態様では、本発明は概して、振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法で構成されると言うことができ、本方法は、
a)i.変換機構を振動板およびトランスデューサ基部構造体に結合することと、
ii.振動板を、振動板サスペンションシステムを介してトランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントすることと
によってオーディオトランスデューサを組み立てるステップと、
b)部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの振動板を回転させるように変換機構を動作させるステップと、
c)部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の動作特性を分析するステップと、
d)1つまたは複数の動作特性を最適化するように部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の物理特性を調節するステップと、
e)必要ならば、1つまたは複数の動作特性の1つまたは複数の所望の基準が達成されるまでステップb)~d)を繰り返すステップと
を含む。
【0288】
いくつかの実施形態では、所望の基準は予め決められてもよい。
【0289】
いくつかの実施形態では、これに加えて、またはこれに代えて、b)は、振動板サスペンションのノード位置への影響が無視できないような態様でドライバを動作させることを含んでもよい。
【0290】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の動作特性には、少なくとも意図された動作振動数範囲内のトランスデューサの振動数応答の任意の1つまたは複数が含まれてもよい。
【0291】
いくつかの実施形態では、ステップc)は、振動数応答の1つまたは複数のステップ状の変化を示すパラメータの値が所定の閾値より大きいかどうかを判定するためにトランスデューサの振動数応答を分析することを含んでもよい。
【0292】
いくつかの実施形態では、ステップc)は、振動数応答のピーク値が所定の閾値より大きいかどうかを判定するためにトランスデューサの振動数応答を分析することを含んでもよい。
【0293】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の物理特性には、振動板に対する振動板サスペンションシステムの位置、トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸の位置、トランスデューサ基部構造体の質量プロファイル、振動板の質量プロファイル、振動板の1つまたは複数の寸法、振動板の形状プロファイル、振動板サスペンションシステムの形状プロファイル、振動板サスペンションシステムの剛性プロファイル、変換機構の力生成プロファイルのうちの1つまたは複数の任意の組合せが含まれてもよい。
【0294】
いくつかの態様では、本発明は概して、振動板と、トランスデューサ基部構造体と、変換機構とを有するオーディオトランスデューサを製造する方法で構成されると言うことができ、本方法は、
a)振動板の質量中心軸を決定するステップと、
b)変換機構を振動板およびトランスデューサ基部構造体に結合するステップと、
c)トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸が、振動板の冠状面に実質的に垂直な面で、振動板の質量中心軸を含む面に配置されるように、振動板を、振動板サスペンションシステムを介してトランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントするステップと
を含む。
【0295】
いくつかの実施形態では、回転軸は、質量中心軸と実質的に同軸であってもよい。
【0296】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、振動板の外側とトランスデューサ基部構造体の隣接する側との間に結合された少なくとも1つの可撓性マウントを備える振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁石または磁気構造体と、その場で磁石または磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイルとを備える電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0297】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイルとを備える電磁変換機構であって、回転軸に、または回転軸から近位に配置され、それによって、動作中に実質的に正味の並進力成分なしに振動板にトルクを働かせる電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0298】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、振動板の回転軸が振動板の所定のノード軸と実質的に同軸であるように配置された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成された、電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0299】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、振動板の回転軸が振動板の質量中心軸と実質的に同軸であるように配置された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成された、電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0300】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、振動板の回転軸が振動板の所定のノード軸と実質的に同軸であるように配置された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成された、電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0301】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成され、磁気構造体と導電コイル構造体との間の最短の距離が約1.5mmより短い、電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0302】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成された、電磁変換機構と、
変換機構の周りを延在して、近くの無関係な強磁性材料に働く磁気引力または磁気反発力を実質的に軽減する強磁性遮蔽体と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。いくつかの実施形態では、本発明は、ドライバ(モータの一部ではない)の効率を著しくは改善しない強磁性遮蔽体を備える。
【0303】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成され、導電コイル構造体の抵抗が約2.5オームより小さい、電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0304】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサであって、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換し、磁気構造体と、その場で磁気構造体の磁場内に配置された、関連する導電コイル構造体とを備える電磁変換機構であって、磁気構造体が動作中に動くように構成された、電磁変換機構と
を有するオーディオトランスデューサと、
オーディオトランスデューサを中に収めるためのエンクロージャまたはバッフルを含むハウジングと、
トランスデューサ基部構造体とハウジングとの間の振動の機械的な伝達を少なくとも部分的に緩和するためにトランスデューサ基部構造体をハウジングに可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムと
を備えるオーディオデバイスで構成されると言うことができる。
【0305】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、振動板とトランスデューサ基部構造体との間を結合する一対の可撓性マウントを有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性マウントが、約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0306】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、振動板とトランスデューサ基部構造体との間を結合する一対の可撓性要素を有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性要素が、約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成され、可撓性要素が互いに対して角度付けされた、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0307】
いくつかの実施形態では、各可撓性要素は、基本モードの振動板回転をしやすくするように大きな曲げ変形を受けるように構成されてもよい。
【0308】
いくつかの実施形態では、可撓性要素は、互いに対して、少なくとも40度、より好ましくは少なくとも50度、最も好ましくは少なくとも60度、角度付けされる。
【0309】
いくつかの実施形態では、各可撓性要素は、主に引張/圧縮の負荷がかかることによって、振動板サスペンションシステムの主回転軸に実質的に垂直な軸に沿う振動板の並進運動に抵抗することができる。振動板の並進運動のいくつかの方向は主回転軸に垂直であることが好ましく、その場合、可撓性要素の1つは最小限の引張/圧縮の負荷のみかかり、他の可撓性要素は引張/圧縮の負荷がかかることによって並進運動に抵抗する。
【0310】
いくつかの実施形態では、可撓性要素は近接して配置されてもよい。一対の可撓性要素は、単一の可撓性マウント構成要素の一部分として形成されてもよい。
【0311】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、1つまたは複数の可撓性マウントを有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性マウントが外壁、および本体の長手方向軸の周りで外壁に向かって半径方向に延在する複数の内部スポークを有する実質的に長手方向の本体から構成され、各マウントの内部スポークが、動作中、屈曲または変形するように約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から形成された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0312】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサであって、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、1つまたは複数の可撓性マウントを有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性マウントが約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から主に形成された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を有するオーディオトランスデューサと、
オーディオトランスデューサを中に収めるためのエンクロージャまたはバッフルを含むハウジングと、
トランスデューサ基部構造体とハウジングとの間の振動の機械的な伝達を少なくとも部分的に緩和するためにトランスデューサ基部構造体をハウジングに可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムと
を備えるオーディオデバイスで構成されると言うことができる。
【0313】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサであって、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成され、振動板とトランスデューサ基部構造体との間に結合された1つまたは複数の振動減衰構成要素を有する振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を有するオーディオトランスデューサと、
オーディオトランスデューサを中に収めるためのエンクロージャまたはバッフルを含むハウジングと、
トランスデューサ基部構造体とハウジングとの間の振動の機械的な伝達を少なくとも部分的に緩和するためにトランスデューサ基部構造体をハウジングに可撓的にマウントするデカップリングマウンティングシステムと
を備えるオーディオデバイスで構成されると言うことができる。
【0314】
いくつかの態様では、本発明は概して、
オーディオトランスデューサであって、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、1つまたは複数の可撓性マウントを有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性マウントが約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から主に形成された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を有するオーディオトランスデューサと、
オーディオトランスデューサを中に収めるためのエンクロージャまたはバッフルを含むハウジングと、
振動板が不必要に動いて損傷することを防ぐために、振動板が所定の最大変位を越えて過度に変位することを防ぐ1つまたは複数の振動板ストッパと
を備えるオーディオデバイスで構成されると言うことができる。
【0315】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して可撓的および回転可能にマウントするように構成され、1つまたは複数の可撓性マウントを有する振動板サスペンションシステムであって、各可撓性マウントが約8GPaより小さいヤング率を有する1つまたは複数の材料から主に形成された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備え、
可撓性マウントは、振動板の振動板本体の主面に垂直な方向の、トランスデューサ基部構造体に対する振動体の並進変位に対する一次抵抗を提供する、オーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0316】
いくつかの態様では、本発明は概して、
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
動作中、振動板がトランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転可能に振動することができるように振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするために、少なくとも1つのヒンジ継手を備える振動板サスペンションシステムであって、ヒンジ継手が、摂氏30度および100ヘルツにおける材料の損失係数(タンデルタ特性)が0.005より大きい材料を含む、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備え、
ヒンジ継手は合わさって、振動板の振動板本体の主面に実質的に垂直な軸に沿う、トランスデューサ基部構造体に対する振動体の並進変位に対する一次抵抗を提供する、オーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0317】
いくつかの態様では、本発明は概して、
第1の領域および第2の領域を有する実質的に剛体の振動板本体であって、第1の領域の厚さが第2の領域よりも相対的に厚く、第2の領域の厚さが、第1の領域から離れる方向に薄くなるテーパ状である、実質的に剛体である振動板本体と、
動作中に本体が受ける圧縮-引張応力に抗するために振動板本体の少なくとも1つの主面において、またはそれに隣接して振動板本体に結合された垂直応力補強材と
を備え、
振動板本体の第1の領域の厚さが、
実質的に一定、または
第2の領域のテーパ状の厚さよりも実質的に勾配が小さい、第2の領域に向かって薄くなるテーパ状、または
第2の領域に向かって厚くなるテーパ状
である、オーディオトランスデューサ振動板で構成されると言うことができる。
【0318】
いくつかの態様では、本発明は概して、
トランスデューサ基部構造体と、
トランスデューサ基部構造体に可動的に結合された振動板であって、
第1の領域および第2の領域を有する実質的に剛体の振動板本体であって、第1の領域の厚さが第2の領域よりも相対的に厚く、第2の領域の厚さが、第1の領域から離れる方向に薄くなるテーパ状である、実質的に剛体である振動板本体と、
動作中に本体が受ける圧縮-引張応力に抗するために振動板本体の少なくとも1つの主面において、またはそれに隣接して振動板本体に結合された垂直応力補強材と
を備え、
振動板本体の第1の領域の厚さが、
実質的に一定、または
第2の領域のテーパ状の厚さよりも実質的に勾配が小さい、第2の領域に向かって薄くなるテーパ状、または
第2の領域に向かって厚くなるテーパ状
である、振動板と、
振動板に動作可能に結合されて、振動板本体の第1の領域に剛性に結合された磁石または導電コイルを有する電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0319】
いくつかの態様では、本発明は概して、
トランスデューサ基部構造体と、
トランスデューサ基部構造体に可動的に結合された振動板であって、
第1の領域および第2の領域を有する実質的に剛体の振動板本体であって、第1の領域の厚さが第2の領域よりも相対的に厚く、第2の領域の厚さが、第1の領域から離れる方向に薄くなるテーパ状であり、振動板本体の第1の領域の厚さが、
実質的に一定、または
第2の領域のテーパ状の厚さよりも実質的に勾配が小さい、第2の領域に向かって薄くなるテーパ状、または
第2の領域に向かって厚くなるテーパ状
である、実質的に剛体である振動板本体を有する振動板と、
振動板をトランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションシステムであって、トランスデューサ基部構造体に対する振動板の主回転軸と振動板の質量中心軸とが実質的に同軸であるように配置された、振動板サスペンションシステムと、
振動板に動作可能に結合されて、振動板本体の第1の領域に剛性に結合された磁石または導電コイルを有する電磁変換機構と
を備えるオーディオトランスデューサで構成されると言うことができる。
【0320】
上の実施形態または好ましい特徴のうちに任意の1つまたは複数は、上の態様のうちの任意の1つまたは複数と組み合わせることができる。
【0321】
本発明の他の態様、実施形態、特徴、および利点は、本発明の原理を例によって示す詳細な説明および添付の図面から明らかとなろう。
【0322】
定義
本明細書で使用されているような「オーディオトランスデューサ」という語句は、電気音響トランスデューサ(例えば、ラウドスピーカなど)または音響電気トランスデューサ(例えば、マイクロホンなど)を包含することを意図している。パッシブラジエータは技術的にトランスデューサではないが、本明細書の目的のために、「オーディオトランスデューサ」という用語は、その定義の中にパッシブラジエータを含むことも意図している。
【0323】
トランスデューサまたはデバイスに関連して本明細書および特許請求の範囲で使用されているような「パーソナルオーディオ」という語句は、オーディオ再生のために動作可能であり、ならびに、オーディオ再生の間にユーザの耳または頭部の極めて近接して(例えば、ユーザの耳または頭部の約10cm以内など)利用するようにサイズ決めされ、意図され、および/または特化されている、ラウドスピーカトランスデューサまたはデバイスを意味している。パーソナルオーディオデバイスは、典型的に、使用中にユーザの耳に対して位置するようにサイズ決めおよび構成されているサウンドインターフェースを含む。インターフェースは、例えば、イヤホン、ヘッドホン、もしくは補聴器の場合などでは、マウント可能であり得、または、インターフェースは、例えば、モバイルフォンの場合などでは、ユーザの耳に押し付けるようにサイズ決めされ得る。サウンドインターフェースは、好ましくは、ユーザの耳よりも小さくなっているか、または、ユーザの耳と約同様にサイズ決めされている。パーソナルオーディオトランスデューサまたはデバイスの例は、ヘッドホン、イヤホン、補聴器、およびモバイルフォンなどを含む。
【0324】
本明細書および特許請求の範囲で使用されているような「含む(comprising)」という用語は、「少なくとも部分的に~からなる」を意味している。「含む(comprising)」という用語を含む本明細書および特許請求の範囲の中のそれぞれの記述を解釈するときに、その用語によって前置きされる1つまたは複数のもの以外の特徴が存在している可能性もある。「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などのような関連の用語は、同じ様式で解釈されるべきである。
【0325】
本明細書で使用されているように、「および/または」という用語は、手段「および」もしくは「または」、またはその両方を意味している。
【0326】
本明細書で使用されているように、名詞に続く「(s)」は、その名詞の複数形および/または単数形を意味している。
【0327】
数値範囲
本明細書で開示されている数の範囲(例えば、1から10)を参照することは、また、その範囲の中のすべての有理数または無理数(例えば、1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、および10)、および、また、その範囲の中の有理数または無理数の任意の範囲(例えば、2から8、1.5から5.5、および3.1から4.7)を参照することを組み込んでおり、したがって、本明細書で明示的に開示されているすべての範囲のすべてのサブレンジが、これによって明示的に開示されていることが意図されている。これらは、具体的に意図されるものの単なる例に過ぎず、列挙されている最低値と最高値との間の数値のすべての可能な組合せは、同様の様式で本明細書に明示的に記述されているものと考えられるべきである。
【0328】
本発明は、先述のものにあり、また、以下のものが単に例を示すに過ぎない構築物を想定している。本発明のさらなる態様および利点は、以下の説明から明らかになる。
【0329】
本発明の好適な実施形態は、単なる例として、図面を参照して説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0330】
図1A】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサの斜視図である。
図1B】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサの平面図である。
図1C】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサの側断面図(断面G-G)である。
図1D】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサのフロント端面図である。
図1E】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサのヒンジ領域の拡大図である。
図1F】本発明の第1の実施形態のオーディオトランスデューサの分解斜視図である。
図1G図1A図1Fのトランスデューサと同様のモデルオーディオトランスデューサに対するシミュレーションの有限要素解析結果を示す図である。
図1H図1A図1Fのトランスデューサと同様のモデルオーディオトランスデューサに対するシミュレーションの有限要素解析結果を示す図である。
図1I図1A図1Fのトランスデューサと同様のモデルオーディオトランスデューサに対するシミュレーションの有限要素解析結果を示す図である。
図2A図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の斜視図である。
図2B図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の平面図である。
図2C図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の側面図である。
図2D図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板のヒンジ領域の拡大図である。
図2E図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の正面図である。
図2F図1A図1Fのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の分解斜視図である。
図3A図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の斜視図である。
図3B図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の振動板のフロント端部に隣接する保護サラウンドの領域の拡大図である。
図3C図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態のラウドスピーカの側断面図(断面C-C)である。
図3D図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の上面図である。
図3E図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の断面上面図(断面I-I)である。
図3F図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の振動板の側部に隣接する保護サラウンドの拡大図である。
図3G図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態の分解斜視図である。
図3H図1A図1Fのオーディオトランスデューサを含む本発明のラウドスピーカの実施形態のラウドスピーカの保護サラウンドの内壁の拡大斜視図である。
図4A】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第1の実施形態の端面図である。
図4B】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第1の実施形態の側面図である。
図4C】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第1の実施形態の斜視図である。
図5A】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第2の実施形態の端面図である。
図5B】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第2の実施形態の側面図である。
図5C】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第2の実施形態の斜視図である。
図6A】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第3の実施形態の端面図である。
図6B】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第3の実施形態の側面図である。
図6C】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第3の実施形態の斜視図である。
図6D】本発明のオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されることになるフレキシブルマウントの第3の実施形態の分解斜視図である。
図7A】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの斜視図である。
図7B】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの側部断面図(断面A-A)である。
図7C】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの前方端面図である。
図7D】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの平面図である。
図7E】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの変換機構のクローズアップした断面図である。
図7F】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの側部断面図(断面B-B)である。
図7G】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサのヒンジ領域のクローズアップした断面図である。
図7H】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサのヒンジに沿った断面図(断面DーD)である。
図7I】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサのヒンジの片側のクローズアップした図である。
図7J】本発明の第2の実施形態のオーディオトランスデューサの分解組立斜視図である。
図8A図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されるべき可撓性マウントの第4の実施形態の端面図である。
図8B図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されるべき可撓性マウントの第4の実施形態の側面図である。
図8C図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサのヒンジ機構のヒンジ要素として使用されるべき可撓性マウントの第4の実施形態の斜視図である。
図9A図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の斜視図である。
図9B図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の平面図である。
図9C図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の側面図である。
図9D図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサの振動板構造体の振動板の分解組立斜視図である。
図10】動作中の図7Aから図7Jのオーディオトランスデューサの振動板が受ける潜在的なベクトル力のベクトル図である。
図11図10の結果としての力のベクトルと振動板の回転軸との間の距離を示すベクトル図である。
図12A】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の斜視図である。
図12B】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の側面図である。
図12C】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の断面図である(断面A-A)。
図12D】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板の縁部のクローズアップした断面図である。
図12E】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の変換機構のクローズアップした断面図である。
図12F】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の側部断面図である(断面B-B)。
図12G】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジ領域のクローズアップした断面図である。
図12H】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジに沿った断面図である(断面C-C)。
図12I】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の中心を横切る断面図である(断面D-D)。
図12J】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジの片側のクローズアップした図である。
図12K】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の分解組立斜視図である。
図12L】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の斜視図である。
図12M】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の前方図である。
図12N】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体を横切る断面図である(断面E-E)。
図12O】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の中心を横切る断面図である(断面F-F)。
図12P】本発明の第3のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の分解組立斜視図である。
図13A】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の斜視図である。
図13B】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の側面図である。
図13C】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の断面図である(断面A-A)。
図13D】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板の縁部のクローズアップした断面図である。
図13E】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の変換機構のクローズアップした断面図である。
図13F】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の側部断面図である(断面B-B)。
図13G】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジ領域のクローズアップした断面図である。
図13H】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジに沿った断面図である(断面C-C)。
図13I】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の中心を横切る断面図である(断面D-D)。
図13J】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジの片側のクローズアップした図である。
図13K】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の分解組立斜視図である。
図13L】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の斜視図である。
図13M】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の前方図である。
図13N】本発明の第4のオーディオトランスデューサの振動板構造体を横切る断面図である(断面E-E)。
図13O】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の中心を横切る断面図である(断面F-F)。
図13P】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の分解組立斜視図である。
図14A】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むオーディオデバイスの斜視図である。
図14B】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むオーディオデバイス断面図である(断面H-H)。
図14C】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むオーディオデバイスの前方図である。
図14D】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むオーディオデバイスの断面図である(断面G-G)。
図15A】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込む薄型電子デバイスの斜視図である。
図15B】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込む薄型電子デバイスの分解組立斜視図である。
図15C】本発明の第4のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込む薄型電子デバイス内のトランスデューサおよびトランスデューサ空洞のクローズアップした分解組立図である。
図16A】本発明の第5のオーディオトランスデューサの実施形態の振動板構造体の斜視図である。
図16B】本発明の第5のオーディオトランスデューサの実施形態の側部断面図である。
図16C】本発明の第5のオーディオトランスデューサの実施形態のヒンジのクローズアップした断面図である。
図17A】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の斜視図である。
図17B】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の端部のクローズアップした図である。
図18A】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の斜視図である。
図18B】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の端部のクローズアップした図である。
図19A】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の斜視図である。
図19B】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の端面図である。
図19C】本発明の別のヒンジマウントの実施形態の断面図である(断面X-X)。
図20A】本発明のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むヘッドホン装置の斜視図である。
図20B】本発明のオーディオトランスデューサの実施形態を組み込むヘッドホン装置を示す図であり、ヘッドホンインターフェースの1つの分解組立斜視図である。
図21A】オーディオチューニングシステムと本発明のオーディオトランスデューサの実施形態のうちの任意の1つまたは複数とを組み込む、本発明のオーディオシステム実施形態を示すブロック図である。
図21B】音源デバイスの中にオーディオチューニングシステムを組み込む、本発明のオーディオシステム実施形態を示すブロック図である。
図22A】本発明のオーディオトランスデューサの実施形態のいずれかを組み立てるかまたは製造するための第1の方法のフローチャートである。
図22B】本発明のオーディオトランスデューサの実施形態のいずれかを組み立てるかまたは製造するための第2の方法のフローチャートである。
図22C】本発明のオーディオトランスデューサの実施形態のいずれかを組み立てるかまたは製造するための第3の方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0331】
ここで、本発明のさまざまなオーディオトランスデューサの実施形態が、図を参照して説明されることになる。本明細書で説明されているオーディオトランスデューサの実施形態のそれぞれにおいて、オーディオトランスデューサは、基部(例えば、トランスデューサ基部構造体、および/または、ハウジング、サポート、もしくはバッフルの一部など)に対して移動可能に連結されている振動板構造体を含む。基部は、振動板構造体よりも相対的に高い質量を有している。振動板構造体に関連付けられる変換機構は、電気音響トランスデューサの場合には、電気エネルギーに応答して振動板構造体を移動させ、または、音響電気トランスデューサの場合には、振動板構造体の移動を電気エネルギーへと変換する。本明細書において、変換機構は、励起機構とも称され得る。変換機構の一方のパーツまたは側は、基部(「基部側変換構成要素」または「トランスデューサ基部構造体側変換構成要素」)に連結され得、変換機構の別の側またはパーツは、振動板構造体(「振動板側変換構成要素」)に連結され得る。
【0332】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、電磁変換機構を含むことが可能である。電磁変換機構は、典型的に、磁界を発生させるように構成されている磁石または磁気構造体と、少なくとも1つの導電性コイル(本明細書では、「コイル」と称される)とを含み、少なくとも1つの導電性コイルは、磁界の中に位置するように、および、(電気音響トランスデューサの場合には)受信される電気信号に応答して移動するように、または、(音響電気トランスデューサの場合には)移動に応答して電気信号を発生させるように構成されている。電磁変換機構は、磁石とコイルとの間の物理的な連結を必要としないので、一般的に、機構の一方のパーツが、基部に連結されることになり、機構の他のパーツが、振動板構造体に連結されることになる。いくつかの実施形態では、磁石は、トランスデューサ基部構造体に連結されているか、または、トランスデューサ基部構造体の一部を形成しており、コイルは、振動板構造体に連結されているか、または、振動板構造体を形成している。他の実施形態では、磁石は、振動板構造体に連結されているか、または、振動板構造体の一部を形成しており、コイルは、トランスデューサ基部構造体に連結されているか、または、トランスデューサ基部構造体の一部を形成している。代替的な実施形態では、他の変換機構(例えば、圧電機構、静電機構、または、当技術分野で知られている他の適切な機構など)が、本明細書で説明されているオーディオトランスデューサの実施形態の中に組み込まれ得る。
【0333】
いくつかの実施形態では、振動板構造体は、単一の振動板を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、振動板構造体は、中央の基部領域から延在する複数の振動板本体を含む複数の振動板を含むことが可能である。複数の振動板は連結され得、動作の間に同時に移動可能になっていることが可能である。
【0334】
振動板構造体は、振動板サスペンションを介して基部に対して移動可能に連結されている。回転作用オーディオトランスデューサの実施形態において、振動板は、基部に対して回転可能に揺動する。回転作用オーディオトランスデューサにおいて、振動板サスペンションは、振動板構造体を基部に回転可能に連結するように構成されているヒンジを含む。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、基部に対する振動板構造体の線形移動を可能にすることができる。
【0335】
オーディオトランスデューサは、ハウジングまたはサラウンドの中に収容され、オーディオトランスデューサ組立体を形成することが可能であり、それは、また、オーディオデバイスまたはオーディオデバイスの一部(例えば、複数のオーディオトランスデューサ組立体を含むことができるイヤホンまたはヘッドホンデバイスの一部など)を形成することが可能である。いくつかの実施形態では、トランスデューサ基部構造体は、オーディオトランスデューサ組立体のハウジングまたはサラウンドの一部を形成することが可能である。オーディオトランスデューサ、または、少なくとも振動板構造体は、デカップリングマウンティングシステムを介して、ハウジングまたはサラウンドにマウントされている。PCT/IB2016/055472に説明されているように、動作の間の望まれない共振に起因するオーディオトランスデューサからハウジングへの(その逆もまた同様)機械的な振動の伝送を少なくとも軽減するために、ハウジングまたはサラウンドからオーディオトランスデューサをデカップリングするように構成されているマウンティングシステムのタイプが、本発明の実施形態のいずれか1つにおいて利用され得る。
【0336】
これらのセクションの下で説明されているさまざまな構造体、組立体、機構、デバイス、またはシステムは、本発明のオーディオトランスデューサの実施形態のうちのいくつかに関連付けて説明されているが、これらの構造体、組立体、機構、デバイス、またはシステムは、代替的に、本発明の範囲を逸脱することなく、任意の他の適切なオーディオトランスデューサ組立体の中に組み込まれ得ることが理解される。そのうえ、本発明のオーディオトランスデューサの実施形態は、代替的な実施形態に関して他の組合せで組み込まれ得るさまざまな特徴、構造体、組立体、機構、デバイス、またはシステムのうちの1つまたは複数の特定の組合せを組み込む。
【0337】
オーディオトランスデューサ、オーディオデバイス、または、さまざまな構造体、組立体、機構、デバイス、もしくはシステムのいずれかを構築する方法は、簡潔にするために、すべてではないがいくつかの実施形態に関して本明細書で説明されている。他の実施形態へのそのような方法の適用は、本発明の範囲から除外されることを意図されていない。また、本発明は、本明細書で説明されている動作の原理および/またはオーディオトランスデューサ特徴を使用してオーディオ信号を変換する方法をカバーすることを意図している。
【0338】
本発明のオーディオトランスデューサ、または、関連の構造体、機構、デバイス、組立体、もしくはシステムの実施形態または構成は、ラウドスピーカドライバなどのような電気音響トランスデューサを参照して、本明細書の中で説明されている。別段の記述がない限り、本明細書で説明されているオーディオトランスデューサ、または、関連の構造体、機構、デバイス、組立体、またはシステムは、そうでなければ、マイクロホンなどのような音響電気トランスデューサとして実装されるかまたはその中に実装され得る。そうであるので、本明細書で使用されているようなオーディオトランスデューサという用語は、別段の記述がない限り、電気音響(例えば、ラウドスピーカ)実装形態および音響電気(例えば、マイクロホン)実装形態の両方を含むことを意図している。
【0339】
1. 第1のオーディオトランスデューサの実施形態
図1A図1Fを参照すると、本発明の回転作用オーディオトランスデューサ100の第1の実施形態が、振動板A101を含んで示されており、振動板A101は、実質的に可撓性の振動板サスペンションを介してトランスデューサ基部構造体A102に回転可能に連結されている。振動板A101は、単一の本体構造体であるが、代替的に、いくつかの実施形態では、複数の振動板本体構造体を含むことが可能である。振動板A101は、変換機構に動作可能に連結されており、変換機構は、電気的なオーディオ信号を振動板A101の回転運動に変換するように構成されている。この実施形態では、変換機構は、導電性コイルA106および磁石A205を含む電磁機構である。特に指定のない限り、磁石という用語は、1つもしくは複数の永久磁石、または、1つもしくは複数の直流電流電磁石、または、それらの任意の組合せを意味することが可能である。この実施形態では、磁石は、永久磁石A205である。特に指定のない限り、本明細書で使用されているような「導電性コイル」または「コイル」という用語は、単一のまたは複数のコイル巻線を含むことが可能である。この実施形態では、導電性コイルA106は、基部構造体A102に連結されており、磁石A205は、振動板A101に連結されている。代替的な構成では、これは、逆になっていてもよい。
【0340】
振動板サスペンションは、トランスデューサ基部構造体A102に対して振動板A101をフレキシブルにおよび回転可能にマウントしている。振動板サスペンションは、1つまたは複数のフレキシブルヒンジマウントA107a、bを含み、1つまたは複数のフレキシブルヒンジマウントA107a、bは、マウントのフレクシャを介した、主回転軸A103の周りでのトランスデューサ基部構造体A102に対する振動板A101の回転を可能にするように構成されている。フレキシブルマウントA107a、bは、1つもしくは複数の直交軸の周りでの回転運動の観点から、および/または、1つもしくは複数の直交軸に沿った並進運動の観点から、フレキシブルになっている。これは、コンプライアント振動板サスペンションを結果として生じさせ、コンプライアント振動板サスペンションは、主回転軸A103以外の方向へのトランスデューサ基部構造体に対する振動板の移動を可能にする。コンプライアンスの程度は、印加される力の方向に応じて異なっていることが可能である。振動板サスペンションは、並進および回転においてコンプライアントであることが好適である。振動板サスペンションシステムは、1つまたは複数の軸に沿った並進の観点から実質的にコンプライアントであることが好適であり、その1つまたは複数の軸は、
・振動板A101の主放射面A212a/A212bおよび/もしくは冠状面A211に対して実質的に垂直になっており;
・振動板A101の主面A212a/A212bおよび/もしくは冠状面A211に対して実質的に平行になっており、主回転軸A103に対して実質的に垂直になっており;ならびに/または、
・主回転軸A103に対して実質的に平行になっている。
【0341】
振動板サスペンションは、上述の軸のうちの1つまたは複数の任意の組合せに沿って、より好ましくは、2つ以上の任意の組合せ、および、最も好ましくはすべての3つの任意の組合せに沿って、コンプライアントであることが可能である。振動板サスペンションは、好ましくは、主回転軸A103、および1つの直交軸、より好ましくは、2つの他の直交軸の周りの回転の観点からコンプライアントである。また、振動板サスペンションは、1つまたは複数の方向へのトランスデューサ基部構造体に対する振動板の変位を制限するためのストッパまたは他のリミッタを含むことが可能である。フレキシブルヒンジマウントは、動作の間の振動板の回転に関して一次コンプライアンスを提供することが好適である。また、振動板サスペンションは、通常の使用において、上述の方向へのトランスデューサ基部構造体に対する振動板の運動/変位に対して、一次抵抗を提供する(さらなる移動に抵抗するというよりもむしろ阻止する上述のストッパまたはリミッタの他に)。
【0342】
いくつかの場合には、ヒンジにおける並進コンプライアンスに関連付けられる振動板の共振モードが存在している場合には、そのようなモードの振動数に主に影響を与えるものは、振動板サスペンションのコンプライアンスであり、一方では、ストッパおよびトーションバーなどのような他の要素は、そのような振動数にそれほど影響を与えない可能性がある。本出願において、振動板の冠状面に対して垂直の方向へのヒンジ並進コンプライアンスが、いくつかの場合において関心のものである。その理由は、大きい振動板面積が空気に連結する方向に移動することが可能であるという事実に起因して、そのような共振が、かなりの量のサウンドを発生させることが可能であるからである。
【0343】
この実施形態では、サスペンションシステムは、振動板A101の両側に1対の実質的にフレキシブルなマウントA107aおよびA107bを含む。フレキシブルマウントは、好ましくは、主軸A103に沿って、および、振動板の矢状面A201の両側において、振動板A101の対向する外側に連結されている。フレキシブルマウントA107aおよびA107bは、好ましくは、実質的に可撓性のおよび弾性の材料から形成されている。
【0344】
それぞれのマウントA107a、A107bは、好ましくは、実質的に軟質の材料から形成されている。それぞれの実質的に軟質ヒンジマウントA107a、A107bは、好ましくは、並進において実質的にコンプライアントになっており、ヒンジマウントが、少なくとも1つの軸に沿って、好ましくは、少なくとも2つの直交軸に沿って、最も好ましくは、3つの直交軸に沿って、実質的に線形に変形することができるようになっている。この実施形態では、例えば、エラストマーまたは軟質プラスチック材料が使用され得る。
【0345】
それぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、好ましくは、少なくとも1つの軸に沿った、より好ましくは、少なくとも2つの直交軸に沿った、最も好ましくは、少なくとも3つの直交軸に沿った並進変位の観点からダンピングを提供する材料(本明細書では「ダンピングされた材料」または「ダンピングされたヒンジマウント」と称される)から形成されている。この実施形態では、例えば、エラストマーまたは軟質プラスチック材料が使用され得る。
【0346】
本明細書において、オーディオトランスデューサ振動板または振動板構造体に関するヒンジまたはヒンジマウントの文脈において、使用される材料の観点からの「軟質の」および「可撓性の」という用語は、約8ギガパスカル(GPa)未満の、約4GPa未満の、約2GPa未満の、1.5GPa未満の、1GPa未満の、または0.1GPa未満の全体的なヤング率を有する1つまたは複数の材料を意味することが意図されている。
【0347】
一般的に、そのようなヤング率の値は、十分に低く、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振モードを振動数に関して動作帯域幅の外側に押し上げるアプローチは可能でない可能性があり、設計アプローチは、そのような共振を動作帯域幅の中で管理すること、または、振動数に関して動作帯域幅の下方へシフトさせるという反対のアプローチをとることのいずれか1つになる。
【0348】
また、これらの値は、十分に低いため、材料が十分にダンピングされ得、それは、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振を管理するのにも有利である可能性がある。それぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、好ましくは、十分にダンピングされる材料から形成されており、それが、摂氏30度および100ヘルツ動作振動数において、0.005よりも大きいか、約0.01よりも大きいか、約0.02よりも大きいか、または、約0.05よりも大きい材料損失係数を有するようになっている。
【0349】
この実施形態では、それぞれのマウントA107a、A107bは、熱硬化性のウレタンエラストマー(例えば、50から70の間のショアA硬度を有するものなど)から形成された1つまたは複数の主本体を含むことが可能である。そのような材料は、例えば、約6MPaから約100MPaの間のヤング率を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれのマウントは、シリコーンゴムまたはニトリルゴムから形成され得る。好ましくは、それぞれのマウントは、以下の特性のうちの1つまたは複数の組合せを有する材料から主に形成されている:接着剤またはオーバーモールディングなどを介してサポートに取り付けられる能力、重力および/または磁気的な引力などのような荷重下での長期クリープに対する抵抗、十分なサイクルおよび使用中の温度範囲にわたる十分な変形に耐える能力、ならびに、時間の経過に伴うまたは温度の変化を伴う特性(例えば、剛性およびダンピングなど)の変化に対する十分な抵抗。それぞれのマウントA107a、A107bは、好ましくは、すべての上述の特性を示す。それぞれのマウントA107a、A107bは、射出成形などのような成形プロセスから形成され得る。
【0350】
いくつかの実施形態では、それぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、十分に低いヤング率を有しており、基本的な振動板共振振動数が、約100ヘルツ未満、約70ヘルツ未満、または約50ヘルツ未満になるようになっている。
【0351】
振動板A101は、例えば、WO2017/046716に説明されているように、実質的に剛性の構築物から構成されている。同様に、トランスデューサ基部構造体は、例えば、WO2017/046716に説明されているように、実質的に剛性になっており、比較的にスクワットな(squat)幾何学形状を含む。
【0352】
フレキシブルヒンジマウントA107aおよびA107bを含む振動板サスペンションは、ヒンジを形成しており、振動板A101が回転軸A103の周りでトランスデューサ基部構造体A102に対して回転可能に揺動することを可能にする。マウントA107aおよびA107bの場所は、回転軸A103が振動板A101のノード軸A104と一致するように選ばれる。ノード軸A104は、事前に決定され得るか、または、デバイスの製造/据え付けの間に決定され得る。振動板ノード軸A104は、主に、振動板A101の質量分布、および、動作の間に変換機構から振動板が経験する力ベクトルに依存する。さらに詳細に下記に説明されることになるように、振動板ノード軸A104は、主軸であり、振動板A101が効果的に実質的に支持されておらず、変換機構A106/A205によって印加されるのと同じ力を受ける場合には、振動板A101がその主軸の周りに回転することになる。
【0353】
この実施形態では、変換機構は、振動板A101のノード軸A104が振動板A101の質量中心軸(また、この実施形態ではA104)と実質的に同軸になるように設計されている。とりわけ、この実施形態では、変換機構は、動作の間に振動板A101に印加される約ゼロの並進力ベクトルを有する実質的に純粋なトルクを印加するように構成されている。このように、および、さらに詳細に下記に説明されることになるように、これは、振動板A101の質量中心軸A104に、または、振動板A101の質量中心軸A104の実質的に近位に、振動板のノード軸A104を位置する。そのうえ、この実施形態では、振動板A101は、質量中心軸A104が振動板A101の一方の端部の近位に位置するように設計されている。
【0354】
振動板サスペンションのそれぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、振動板をトランスデューサ基部構造体に回転可能に連結するために、一次ヒンジサポートを振動板に提供する。一次ヒンジサポートは、回転軸に対して垂直のおよび振動板の冠状面に対して垂直の方向へのサポートの剛性性に著しく貢献するヒンジを意味することが可能であり、振動板サスペンションの並進コンプライアンスがこの方向に変更される場合には、前記ヒンジサポートの近位の振動板の並進を伴う1つまたは複数の主要な共振モードの振動数の対応するおよび著しい変化が存在するようになっている。
【0355】
図3A図3Hを参照すると、いくつかの構成において、オーディオトランスデューサA100は、スピーカエンクロージャA301/A302の中に収容され得、好ましくは、例えば、PCT刊行物のWO2017/046716のセクション4に説明されているように、デカップリングマウンティングシステムを介してスピーカエンクロージャA301/A302からデカップリングされている。エンクロージャA301/A302は、好ましくは、オーディオトランスデューサA100およびスピーカの外部にある他の異物との間の磁気的な相互作用を実質的に阻止するための強磁性のメッシュシールディングA308を含む。
【0356】
ここで、オーディオトランスデューサA100および関連のスピーカシステムのさまざまな好適なおよび代替的な特徴が、さらに詳細に説明されることになる。
【0357】
トランスデューサ基部構造体
図1A図1Fに戻って参照すると、トランスデューサ基部構造体A102は、主本体A110と、変換機構の導電性コイルA106とを含む。導電性コイルA106は、好ましくは、本体の一方の端部において、主本体A110に剛性に連結されている。トランスデューサ基部構造体A102は、デカップリングマウンティングシステムの1対のデカップリングピンA111a、A111bと、1対の振動板サスペンションブロックA109a、A109bとをさらに含み、1対の振動板サスペンションブロックA109a、A109bは、それぞれ、振動板サスペンションシステムのフレキシブルマウントA107a、A107bおよびピンA108a、A108bと協働するように構成されている。主本体A110は、冷却フィンA110aを有しており、導電性コイルA106を冷却することおよびパワーハンドリングを増加させることを助ける。また、主本体A110は、内部リブA110bを有しており、内部リブA110bは、剛性性を提供する。
【0358】
基部構造体A102は、比較的にスクワットになっており、比較的に高い比弾性率の材料(例えば、約30GPaを超える)から形成されており、したがって、振動数が高い(好ましくは、リスナーの聞こえる範囲および/またはトランスデューサの意図する動作の振動数範囲の外側にある)内部共振モードを有している。
【0359】
主本体A110は、デカップリングマウンティングシステムのドライバデカップリングピンA111を受け入れて固定して収容するために、それぞれの側にアパーチャA110cを有している。デカップリングピンA111は、接着剤または他の適切な機構を介して、主本体に固定され得る。主本体A110の両側にあるアパーチャA110cは、好ましくは、トランスデューサのノード軸A105(以降では、トランスデューサノード軸A105と称される)と実質的に同軸になっている。これは、例えば、実施形態Aに関してWO2017/046716に説明されているように、ハウジングA301/A302に対するオーディオトランスデューサA100の効果的なデカップリングを提供することを助ける。
【0360】
導電性コイルA106は、トランスデューサ基部構造体本体に剛性に連結されており、エナメルコーティングされた銅ワイヤーを使用して、約長方形の形状に(例えば、図1Dを見て、時計回り方向に)巻かれ得る。
【0361】
コイルA106は、振動板サスペンションシステムのマウンティングブロックA109a、A109bをそれぞれ固定して収容するために、対向する短辺の内周部の上に凹部A106a、A106bを含む。
【0362】
この実施形態のトランスデューサ基部構造体は、代替的に、本明細書で説明されている他の実施形態のうちの任意の1つのトランスデューサ基部構造体によって交換され得る。
【0363】
振動板構造体
図2A図2Fを参照すると、この実施形態では、振動板A101は、主振動板本体A207と、変換機構の磁石A205とを含む構造体を含み、磁石A205は、振動板A101の基部領域A101aにおいて、本体A207の一方の端部に接続されている。振動板サスペンションの1対の振動板マウンティングピンA108aおよびA108bは、磁石A205の両側から横方向に延在している。振動板A101は、剛性の振動板構築物であり、磁石A205と、ピンA108と、複数の本体パーツA208a~A208kと、それぞれの隣接する対の本体パーツA208a~A208kの間の内側補強部材A209a~A209jと、振動板本体A207のそれぞれの主面A212a、A212bの上にまたはそれぞれの主面A212a、A212bに隣接して延在する外側補強材A206a、A206bとから構成されている。振動板本体パーツA208a~k、内側補強部材A209a~209j、および外側補強部材A206a、A206bは、実質的に剛性になっており、例えば、WO2017/046716に説明されている剛性の振動板構築物原理に従って形成されている。
【0364】
振動板本体A207は、3次元で変化する相互接続された構造体を含むことが可能である。本体A207は、実質的に低密度のマトリックスを含むことが可能であり、例えば、発泡ポリスチレンフォーム本体パーツA208a~A208kから形成され得る。
【0365】
内側補強部材A209a~A209jは、実質的に薄くなっており、アルミニウムフォイルから形成されており、本体パーツA208a~A208k同士の間に積層され得る。外側補強部材A206a、A206bは、炭素繊維または他の適切に剛性の材料(最も好ましくは、約900Gpaよりも大きいヤング率のもの)から作製された複数のストラットを含むことが可能である。外側補強材は、振動板本体A207の2つの外側の主放射面A212a、A212bの上に挟まれ得る。
【0366】
振動板本体A207は、振動板本体A207の長さの12%よりも大きい、または、より好ましくは、15%よりも大きい最大厚さを含む。振動板本体A207は、いくつかの実施形態では、振動板本体の長さの20%よりも大きい最大厚さを含むことが可能である。振動板本体A207は、代替的にまたは追加的に、振動板本体A207の最大寸法(例えば、対角線の長さなど)の9%よりも大きいかまたは11%よりも大きい最大厚さを含むことが可能である。振動板本体は、いくつかの実施形態では、振動板本体A207の最大寸法(例えば、対角線の長さなど)の14%よりも大きい最大厚さを含むことが可能である。
【0367】
振動板A101は、回転軸から対向する終端端部へ所定の長さを含むことが可能であり、この長さは、振動板または振動板構造体の幅の約6倍よりも小さくなっているか、その幅の4倍よりも小さくなっているか、または、軸方向への幅の3倍よりも小さくなっている。
【0368】
振動板A101は、振動板A101の長さに沿って、変化する質量を含む。振動板A101は、振動板A101の質量中心A104から遠位にある振動板の領域において、質量中心A104の近位にある領域に対して、単位面積当たりに相対的に低い質量を含む。この実施形態では、振動板A101は、また、回転軸A103の近位にある領域に対して、振動板の回転軸A103から遠位にある振動板の領域において、単位面積当たりにより低い質量を含む。また、振動板は、対向する端部の近位の領域に対して、振動板の一方の端部の近位の領域において、単位面積当たりに相対的に低い質量を含む。
【0369】
この実施形態では、振動板本体A207は、振動板の長さに沿って変化する厚さのプロファイルから構成されている。図2Cに示されているように、振動板本体A207は、基部領域から遠位にある第2の領域A114bにおける厚さに対して、基部領域におけるまたは基部領域の近くの第1の領域A114aにおいて、相対的に大きい厚さから構成されている。第2の領域における厚さは、好ましくは、実質的にテーパを付けられており、厚さが、基部領域から離れるように低減するようになっている。第1の領域A114aにおける厚さは、実質的に一定になっているか、または、第2の領域A114bの勾配もしくはテーパよりも実質的に低い勾配によってテーパ付きになっている。全体的な主面プロファイルは、線形になっていることが可能であり、および/または、実質的に湾曲していることが可能である。この実施形態では、プロファイルは、実質的に湾曲している。主面プロファイルは、一般的に、面の長さに沿って凸形になっている。換言すれば、主面プロファイルは、一般的に、振動板本体A207の矢状断面に沿って凸形になっている。
【0370】
この実施形態では、垂直応力補強材A206a、A206bは、質量中心A104の近位にある領域に対して、振動板A101の質量中心A104から遠位にある振動板の領域において、単位面積当たりに相対的に低い質量を含む。いくつかの実施形態では、相対的により低い垂直応力補強質量の領域は、凹部を含むことが可能であり、または、垂直応力補強材を欠いていることが可能である。この実施形態では、相対的により低い垂直応力補強質量の領域は、低減されたもしくは低減する厚さ、または、低減されたもしくは低減する幅、または、その両方の垂直応力補強材を含む。
【0371】
相対的により高い垂直応力補強質量および/またはより高い振動板質量の領域は、主面の表面積の約30~70%を構成し、相対的により低い下側垂直応力補強質量および/またはより低い振動板質量の領域は、主面の表面積の約70~30%を構成する。
【0372】
いくつかの実施形態では、相対的により低い垂直応力補強質量および/またはより低い振動板質量の領域は、回転式振動板の場合には、質量中心から遠位にあるかまたは回転軸から遠位にある振動板の端部から、振動板の長さの約20%以内に位置し得る。
【0373】
この実施形態では、振動板A101は、振動板の矢状面に対して実質的に対称的になっている。振動板本体A207と変換機構の磁石A205とを含む振動板構造体は、振動板A101の矢状面に対して実質的に対称的になっている。
【0374】
いくつかの実施形態では、振動板A101は、共振問題を悪化させるかまたはそうでなければ動作に悪影響を与える可能性のある位置センサまたは他の不必要な重み付きの要素を含まないことが好適である。
【0375】
このトランスデューサ実施形態の振動板A101は、代替的に、本明細書で説明されている他の実施形態のうちの任意の1つの振動板によって交換され得る。同様に、振動板A101は、本明細書で説明されているオーディオトランスデューサの実施形態のうちの任意の1つにおいて使用され得る。
【0376】
変換機構
この実施形態における変換機構は、コイルを含む電磁機構を含み、コイルは、磁石に動作可能に連結されている。変換機構は実質的に整流されていないことが好適である。
【0377】
本明細書で説明されている実施形態のそれぞれのものにおいて、変換機構は、一般的に、振動板側変換構成要素を含む。この場合には、それは、磁石A205である。本明細書において、「振動板側変換構成要素」という語句は、振動板または振動板構造体に連結されている変換機構の一部を意味することが意図されており、振動板または振動板構造体は、電気エネルギーと機械エネルギーとの間で(または、その逆もまた同様)コンバートすることを担当している。例えば、これは、電磁機構のコイルもしくは磁石であることが可能であり、または、それは、圧電機構のパーツ、セクション、または構成要素であることが可能である。
【0378】
また、変換機構は、一般的に、基部構造体側変換構成要素を含む。この場合には、それは、コイルA106である。本明細書において、「基部構造体側変換構成要素」という語句は、トランスデューサ基部構造体に連結されている変換機構の一部を意味することが意図されており、トランスデューサ基部構造体は、動作の間に振動板に対して実質的に静止したままになるように構成されている。例えば、これは、電磁機構の静止したコイルまたは磁石であることが可能であり、または、それは、圧電機構の静止したパーツ、セクション、または構成要素であることが可能である。
【0379】
この実施形態では、振動板側変換構成要素A205は、振動板A101に直接的に連結されており、好ましくは、振動板A101に剛性に連結されている。磁石A205は、振動板A101の中へ一体化されており、それが1つの構造体であるようになっている。磁石A205は、振動板本体A207の対応する表面に連結するように構成された外部表面を含む。外部表面および対応する表面は、相補的になっている。この実施形態では、外部表面は、実質的に平面的になっており、対応する振動板表面は、実質的に平面的になっている。しかし、他のプロファイルも可能である。
【0380】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、1つまたは複数の中間構成要素を介して、振動板または振動板構造体に間接的に連結され得る。1つまたは複数の中間構成要素は、好ましくは、実質的に剛性になっており、例えば、少なくとも約8GPa、または、少なくとも約20GPaのヤング率を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、振動板または振動板構造体は、1つまたは複数の実質的に平面的なパーツまたは構成要素を介して、変換機構に剛性に連結され得る。振動板が1つまたは複数の中間構成要素を介して振動板側変換構成要素に連結されている場合には、いくつかの実施形態では、構成要素は、十分に真っ直ぐになっており、および/または、十分に支持されており、および/または十分に厚くなっていることが可能であり、1つまたは複数の剛性の構成要素の曲げ変形が最小になるようになっている。
【0381】
図2A図2C、および図2Dを参照すると、磁石A205は、振動板A101の冠状面A211に対して垂直の方向に磁化されている。磁石の両磁極は、回転軸A103の両側に位置しており、これを実現する。いくつかの実施形態では、磁極は、一次内部磁界が回転軸A103に対して角度付けされるようにおよび/または冠状面A211に対して角度付けされるように配置され得る。磁石は、実質的に交互にならない磁界を含む。磁石は、好ましくは、N52グレードのネオジム(NdFeB)磁石などのような永久磁石、または、別の強力な永久磁石タイプである。代替的に、磁石は、電磁石であることが可能である。電磁石は、好ましくは、直流電流電磁石である。磁石は、電機子でないことが好適である。磁石A205は、高い磁気強度、十分な物理的強度、および靭性を示すことが可能であり、トランスデューサの寿命にわたって起こり得る衝撃シナリオ、および/または、磁石に関する比較的に低い密度を乗り切るようになっている。上昇した温度に対して改善された抵抗を提供する他のグレードの磁石も、パワーハンドリングおよび他の動作要件に応じて使用され得る。
【0382】
磁石A205は、振動板A101の回転軸A103にまたはその近位に位置している。磁石A205は、振動板A101の矢状面A201に関して、振動板の回転軸A103の両側にまたはその近位に位置している。磁石A205は、回転軸A103または質量中心軸A104に対して実質的に平行の軸に沿って連結している。磁石A205は、回転軸A103に沿って延在しており、この実施形態では、回転軸A103は、磁石A205を通って延在している。いくつかの変形例において、磁石A205は、回転軸の近位に位置し得るが、回転軸A103の実質的に排他的に近位にあり、振動板側の変換機構の他のパーツまたは構成要素が軸の近位にないようになっている。例えば、磁石A205は、回転軸A103から、振動板A101の長さの50%以内の距離に位置し得、または、磁石A205は、回転軸から、振動板の長さの40%以内の距離に位置し得、または、最も好ましくは、磁石A205は、回転軸から、振動板の長さの30%以内の距離に位置し得る。いくつかの実施形態では、磁石A205は、回転軸から、振動板の最大長さ寸法(例えば、対角線の長さ寸法など)の20%以内の距離に位置し得、または、磁石A205は、回転軸から、最大長さ寸法の15%以内の距離に位置し得、または、最も好ましくは、磁石A205は、距離回転軸から、最大長さ寸法の10%以内の距離に位置し得る。
【0383】
磁石A205は、振動板A101または振動板本体A207の最大幅を超えて延在していない。いくつかの実施形態では、磁石A205は、幅を超えて延在することが可能であるが、好ましくは、回転軸A103に沿って、幅寸法の約20%を超えて、または、約15%を超えて、または、最も好ましくは、約10%を超えて延在することが可能である。この場合における最大幅寸法は、回転軸A103に対して実質的に平行であることが可能である。
【0384】
この実施形態では、磁石A205は、振動板A101の端部に連結されており、振動板の両側の間で端部に沿って長手方向に延在している。磁石A205は、高い比弾性率および合理的に剛性の幾何学形状を有しているので、磁石A205は、適切に低い共振の基礎を提供しており、比較的に軽量の振動板本体A207が基礎の上に支持されており、比較的に高い振動数において起こるブレークアップモードを有する比較的に大きい振動板A101を結果として生じさせる。回転慣性は、磁石の質量が回転軸A103の近くに集中されているという事実に起因して管理可能である。磁石A205は、振動板本体A207に直接的に隣接する側部A205bにおける質量に対して、振動板本体A207から遠位にある側部A205aにおいてわずかに高い質量を有するように形状決めされている。これは、遠位側部における磁石A205の外周部の凸形の成形を介して実現されている。磁石A205のこの質量プロファイルは、(好ましくは、振動板の終端端部A101aのより近くの)所望の場所に質量中心軸A104を位置するように事前に決定されている。磁石は、回転軸に対して実質的に垂直になっているかまたは振動板の長手方向軸に対して実質的に垂直になっている平面に対して対称的になっている。
【0385】
磁石A205は、トランスデューサ基部構造体A102に剛性に連結されているコイルA106と協働するように構成されており、振動板A101に実質的に純粋な機械的なトルクを働かせるか、または、振動板A101から実質的に純粋な機械的なトルクを伝達する。コイルA106は、磁石A205の周辺部の周りに延在する単一の巻線を含むことが可能である。この実施形態では、コイルA106は、任意の強磁性のコアまたは他の強磁性の構成要素と密接な接触をしていない。
【0386】
使用時に、(増幅器からの)オーディオ信号が、導電性コイルに適用され得、それは、結果的に、プラスのおよびマイナスのトルクを磁石に印加し、回転軸A103の周りに振動板を回転させる。好ましくは、導電性コイルA106は、回転軸A103に対して実質的に平行に、および、回転軸A103の両側に沿って延在している。好ましくは、導電性コイルA106は、振動板A101の長手方向軸A211aに対して実質的に横断方向の平面の中に延在している。
【0387】
この実施形態では、振動板A101からコイルA106を分離することは、効率に悪影響を与えることなくコイルA106の質量が増加され得ることを意味している。多くの場合に、質量の増加は、デバイスのパワーハンドリングを改善し、所与の直流電流(DC)コイル抵抗に関するワイヤーターンの増加を促進させることによって効率を改善することが可能である。しかし、ターンの増加は、コイルインダクタンスに関連付けられる異なる効率制限を生成させる可能性があり、それは、高い振動数において電流を遮断する可能性がある。この影響を最小化するために、導電性コイルA106の中で使用されるワイヤーは、好ましくは、所与の体積に対して実質的に大きい直径を有しており、コイルA106の中のターンの数を低減させ、それによって、コイルインダクタンスを低減させ、増加する振動数に伴って比較的に少ないドロップオフを有するトランスデューサA100の音圧応答を結果として生じさせる。このように、コイルA106のDC抵抗は、標準(約3~7オームの範囲)を下回って低減され得る。コイルA106のDC抵抗は、約2.5オーム未満であるか、約2オーム未満であるか、約1.5オーム未満であるか、または、約1オーム未満であることが可能である。この実施形態では、コイルA106のDC抵抗は、例えば、約0.6オームであることが可能である。
【0388】
磁石A205およびコイルA106は、空気流体ギャップによって分離されている。この実施形態では、流体ギャップは、エアギャップである。代替的に、強磁性の流体または材料が、コイルと磁石との間に位置し得る。磁石は、流体ギャップに隣接して、実質的に湾曲した表面を含むことが可能である。また、コイルA106は、空気流体ギャップおよび磁石A205に隣接して、相補的な湾曲した表面を含むことが可能である。コイルおよび磁石の湾曲した表面は、相補的になっていることが可能である。磁石表面は、回転軸の周りに湾曲していることが可能である。また、コイル表面も、回転軸の周りに湾曲していることが可能である。
【0389】
導電性コイルA106は、インサイチュで磁石A205の周りに延在している。好ましくは、磁石A205と導電性コイルA106との間の最短の距離は、約1.5mmよりも低いか、約1mmよりも低いか、または、約0.5mmよりも低くなっている。好ましくは、導電性コイルA106は、磁石A205の両側で対称になっている。
【0390】
この実施形態の変換機構は、代替的に、本明細書で説明されている他の実施形態または変形例のうちの任意の1つの変換機構と交換され得る。
【0391】
磁石は、他の強磁性の構成要素から十分に離れている
本発明の実施形態において、オーディオトランスデューサは、変換機構以外の、または、磁気組立体の一部として磁石に剛性に連結され得るもの(すなわち、磁極)以外の、または、振動板もしくはトランスデューサ基部構造体に磁気組立体を連結するために、磁石もしくは磁気組立体に剛性に連結され得るもの以外の、強磁性の構成要素を含むことが可能である。そのような他の強磁性の構成要素は、実質的に強力な強磁性の特性を有する可能性がある。この文脈における実質的に強力な強磁性の特性は、約300mμよりも大きいか、約500mμよりも大きいか、または、約1000mμよりも大きい、インサイチュでの(振動板がレスト状態での)最大比透磁率を有することを意味することが可能である。
【0392】
オーディオトランスデューサの中にそのような構成要素を含むことは、そのような構成要素が磁石または磁石組立体から実質的に遠位に位置していない場合には、そのような構成要素によって働かされる磁石に対する引力が存在していることを意味している。磁石が実質的にコンプライアントの振動板サスペンションに連結されているこの実施形態の場合において、これは、サスペンションに時間の経過とともにその完全性を喪失させる可能性がある。他の実施形態において、プラスチックハウジングおよびマウントは、磁気的な引力に起因する長期的荷重を受けるときに、クリープ変形の影響を受けやすい可能性もある。
【0393】
この理由のために、本発明のこの実施形態および他の実施形態は、好ましくは、そのような他の強磁性の構成要素が磁石または磁気構造体から実質的に遠位に位置するように構成されており、比較的に小さい引っ張り力のみが磁石に対して存在するようになっており、または、複数の構成要素が複数の方向において磁石に作用する場合には、無視できるかもしくはゼロに近い正味の力が磁石に対して存在するようになっている。
【0394】
例えば、いくつかの実施形態では、他の強磁性の構成要素は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に面する1つまたは複数の比較的に大きいまたは表面を含むことが可能である。そのような表面が磁石の近位に位置している場合には、そのような表面は、典型的に、著しい力を磁石に働かせることになる。そのような面は、磁石の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面から実質的に遠位にあり、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に対して、他の強磁性の構成要素からの引っ張り力を軽減するかまたは大幅に最小化もしくは軽減することが好適である。
【0395】
以下は、「この文脈における実質的に遠位」の例である。
【0396】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石組立体または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.4倍の最小距離または平均距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の距離と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0397】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に対して実質的に垂直の軸に沿って、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に対して実質的に垂直の軸に沿って、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に対して実質的に垂直の軸に沿って、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の距離と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0398】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0399】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さと約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0400】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さと約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0401】
磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法の約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法と実質的に同様の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。
【0402】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、磁石組立体に作用する重力に起因する力の70倍よりも大きい、より好ましくは、50倍よりも大きい、最も好ましくは、40倍よりも大きい力を、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に対して働かせる他の強磁性の構成要素を含まない。
【0403】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、異なる方向または反対方向に磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体を引き付ける磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に面する他の強磁性の構成要素を含む。そのような実施形態では、他の強磁性の構成要素に起因して磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体にかかる正味の力は、無視できるかまたは約ゼロである。
【0404】
振動板サスペンションシステム
振動板サスペンションは、回転軸の周りでの振動板の回転を可能にし、軸の両側での約10度の、軸の両側での約15度の、または、軸の両側での約20度の角度運動の範囲を可能にする。この実施形態では、振動板サスペンションは、複数のヒンジマウントA107a、A107bを含む。いくつかの実施形態では、単一のヒンジマウントが使用され得る。
【0405】
ヒンジマウントA107a、A107bは、振動板側変換構成要素の外側に位置している。いくつかの実施形態では、1対のヒンジマウントは、回転軸A103に対して実質的に垂直になっている振動板A101の中央矢状面の両側に位置し得、それぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、中央矢状面から、振動板A101の最大幅の少なくとも0.2倍の距離に位置している。それぞれのヒンジマウントは、中央矢状面から、振動板A101の最大幅の約少なくとも0.47倍、0.45倍、0.42倍よりも小さい距離に位置し得、それは、剛性のヒンジ設計アプローチを用いる実施形態において、とりわけ重要である可能性がある。その理由は、そのような位置決めは、振動板基部曲げモードに関するノード場所の近くにヒンジを位置することが可能であり、対応する共振振動数における改善を結果として生じさせるからである。
【0406】
振動板A101および基部構造体A102の両方は、比較的に剛性であり、2つの振動板サスペンションブッシュA107a、A107bを含む比較的にコンプライアントの振動板サスペンションシステムを介して、互いに接続されているので、振動板サスペンションシステムのコンプライアンスから主に結果として生じる、トランスデューサの6つの基本的な比較的に低振動数の振動モードが存在することが可能である。これらは、(場合によっては、3つの実質的に直交する軸に沿った)有意な並進成分を有する3つのモード、および、(場合によっては、3つの実質的に直交する軸の周りの)有意な回転成分を有する3つのモードを含むことが可能である。振動板A101の矢状面A201に対して実質的に直交している横断方向軸A202a/A103の周りでの回転モードの振動数は、トランスデューサA100の一次励起モードである(以降では、一次モードと称される)。一次モードにおける振動板の運動は、従来のリニアコーンドライバのピストンモードと同等であるとして考えられ得る。磁石A205の一次フラックスの方向が、コイルA106によって発生されるフラックスの方向に対して実質的に垂直になっているので、磁石A205の上に発生される主トルクは、一次モードと同じ方向になっている。オーディオトランスデューサ100は、単一自由度の様式で実質的に動作し、それによって、一次モードは、(電気音響構成において)実質的に唯一の可聴音の供給源であることが好適である。
【0407】
また、他の5つのモードが、動作の間に励起され得る。しかし、トランスデューサA100の設計は、これらのモードのほとんどが、空気の大幅な正味の移動を結果として生じさせず、再生されるオーディオの品質に実質的にわずかな可聴劣化を引き起こすようになっている。例えば、この実施形態では、長手方向軸A211aまたは横断方向軸A202aに沿って並進する振動板A101を伴う2つの約並進モード、および、振動板A101の冠状面A211に対して実質的に直交している矢状軸A201aの周りでの約回転モードは、それらが励起されている場合にも、音圧に対して大幅な変化を引き起こすほど十分に空気を押さない。そのうえ、この実施形態の場合には、対称性によって、これらのモードは、強力に励起されない場合がある。長手方向軸A211a(振動板A101の横断方向の平面A211に対して直交している)の周りでの約回転モードは、空気変位を生成させることが可能であるが、しかし、これは、矢状面A201の両側にある振動板の側部において発生されるプラスの空気圧力とマイナスの空気圧力との間の相殺によって実質的に軽減される。この実施形態では、対称性によって、このモードは、強力に励起されない場合がある。いくつかの実施形態では、振動板の少なくとも一部における、振動板A101の矢状軸に対して実質的に平行の方向への有意な並進成分を有するモード(以降では、モードAと称される)の励起は、振動板ノード軸A104におけるまたはその近くでの振動板サスペンションマウントA107a、A107bの場所によって最小化されるかまたは実質的に軽減され得る。いくつかの実施形態では、モードAの励起は、振動板の主回転軸A103を平面A213の中に位置することによって最小化され得、平面A213は、振動板A101の冠状面A211に対して実質的に垂直になっており、また、振動板A101のノード軸A104を含有している/それと交差している。いくつかの実施形態では、主回転軸A103および振動板ノード軸A104は、実質的に同軸になっていることが可能である。
【0408】
動作の間に、トランスデューサが一次モードおよび他の5つのモードの共振振動数を著しく下回る振動数で動作している第1の動作モードにおいて、基部構造体A102に対する振動板A101の回転軸A103の場所は、振動板サスペンションによって、および、変換機構によって振動板A101にいんかされる力によって、著しく影響を受ける可能性がある。第1の動作モードは、振動板サスペンションコンプライアンスによって主に促進されるすべての6つの振動板共振モードに関して、トランスデューサの剛性が制御された領域に似ている。トランスデューサが一次モードおよび他の5つのサスペンションコンプライアンスモードの共振振動数を著しく上回る振動数で動作している第2の動作モードにおいて、トランスデューサ基部構造体A102に対する振動板A101の回転軸の場所は、振動板ノード軸A104の場所によって主に定義され得、振動板サスペンションによってはあまり重要に定義されない。振動板ノード軸A104は、主に、変換機構によって振動板A101に印加される力によって、および、振動板A101(磁石A205を含む)の質量分布/プロファイルによって定義される。第2の動作モードにおいて、振動板ノード軸A104は、振動板サスペンションによって比較的に影響を受けない可能性がある。第2の動作モードは、振動板サスペンションコンプライアンスによって主に促進されるすべての6つの振動板共振モードに関して、トランスデューサの動作の質量が制御された領域に似ている。
【0409】
変換機構は、動作の間に振動板A101に印加される力が実質的に純粋なトルクとなるように構成され得る。これは、振動板ノード軸A104を質量中心A204と実質的に同軸にする。この実施形態では、振動板サスペンションのフレキシブルマウントA107a、A107bは、振動板の質量中心A204と実質的に同軸になっている。いくつかの実施形態では、振動板A101に対する振動板サスペンションの全体的な効果は、トランスデューサ基部構造体A102に対する振動板A101の回転軸A103が、第1の動作モードにおいて、振動板の質量中心A204と実質的に同軸になるか、または、少なくとも振動板の質量中心A204の近位に位置するようになっている。
【0410】
いくつかの構成において、動作の間に変換機構によって振動板A101に印加される力は、実質的に純粋なトルクでない可能性がある。そのような構成では、振動板ノード軸A104は、振動板質量中心A204と一致していない可能性があり、振動板サスペンションシステムのフレキシブルマウントA107a、A107bは、振動板ノード軸A104と実質的に同軸に位置し得る。いくつかの実施形態では、振動板A101に対する振動板サスペンションの全体的な効果は、トランスデューサ基部構造体A102に対する振動板A101の回転軸A103が、第1の動作モードにおいて、振動板ノード軸A104と実質的に同軸になっているか、または、少なくとも振動板ノード軸A104の近位に位置するようになっている。
【0411】
振動板ノード軸A104が、第1の動作モードにおいて、回転軸A103と同軸にまたは回転軸A103の近くに位置していない場合には、トランスデューサA100の音圧振動数応答は、モードAの振動数においてまたはその周りにステップを有する可能性がある。その理由は、回転軸が、第1の場所A103(振動板サスペンションシステムによって定義される)から第2の場所(振動板ノード軸A104によって定義される)へ並進するからである。また、関連の共振ピークおよび/またはディップも存在する可能性がある。第1の動作モードの回転軸A103と実質的に同軸になるように振動板ノード軸A104が位置するように、振動板A101および変換機構を構成することによって、性能利点が実現され得る。これは、モードAの共振の振動数においておよびその周りにおいて、より平坦な振動数応答および改善された音質を結果として生じさせる。振動板A101に対して実質的に純粋な回転トルクを提供するように変換機構を構成することは、ノード軸A104を振動板質量中心A204の場所へシフトすることになる。次いで、振動板質量中心A204が振動板サスペンションマウントA107a、A107bを連結するための所望の位置にあるように、振動板A101は形成され得る。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションマウントは、振動板本体A207の一方の端部A101aの近くに連結されており、トランスデューサの性能を向上させる。振動板A101の質量の大部分は磁石A205の中にあるので、端部A101aの近くにある質量中心を実現するための方法は、振動板の遠位先端部A101bに最も近い側部が、終端端部A101aにある側部に対して切り取られるように、磁石を成形することによるものである。N極およびS極が存在している場所の磁石の表面は、好ましくは、(少なくとも第1の動作モードの)回転軸A103の周りに同心円状に凸形に湾曲している。その理由は、これがコイルに対する必要とされる空気クリアランスを最小化するからである。
【0412】
振動板A204の質量中心が第1の動作モードの回転軸A103と実質的に同軸になるように、振動板A204の質量中心を位置する別の性能利点は、振動板サスペンションコンプライアンスに関連付けられる他の有害な振動モードの最小化であり、より平坦な振動数応答および改善された音質を結果として生じさせる。
【0413】
図4A図4Cに示されている1対の振動板サスペンションマウントA107a、A107bは、対応するピンA108a、A108bをその中に固定して収容するための中央アパーチャを備えた実質的に中実の本体をそれぞれ含むことが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれのマウントA107a、A107bは、1つまたは複数の空洞を含むことが可能であり、1つまたは複数の空洞は、流体(例えば、空気など)を含有しているか、または、その中に位置している相対的により低い密度のもしくは相対的により低い剛性の材料を含有している。材料は、例えば、複数の空気ポケットを含むフォームであることが可能である。いくつかの実施形態では、それぞれのマウントA107a、A107bは、ウレタンフォームから形成され得る。そのような構成では、並進剛性性の過度の低減なしに、最大可動域が増加され得、および/または、基本的な振動板共振振動数が低減され得る。それぞれのヒンジマウントA107a、A107bの幾何学形状は、比較的により太くおよび/またはより短く作製されることができる可能性がある。これは、非常に小さい繊細なスピーカドライバにおいて利用され得、例えば、そこでは、ヒンジ構成要素が非常に小さく、および/または、それほど繊細でないヒンジ特徴は、内部共振モードになりにくい可能性がある。
【0414】
図17Aおよび図17Bを参照すると、いくつかの実施形態では、それぞれのヒンジマウントA107a、A107bは、ヒンジマウントA700と交換され得る。ヒンジマウントA700は、異方性フォームなどのような異方性材料から形成されている。フレキシブルヒンジマウント異方性は、マウントが、回転変形に対する抵抗に対して、並進変形に対する相対的に大きい抵抗を含むようになっていることが可能である。換言すれば、フレキシブルヒンジマウントA700は、並進コンプライアンスに対して、(とりわけ、マウントの長手方向軸A703または振動板の回転軸A103の周りでの)より大きい回転コンプライアンスを含む。これは、比較的に低い基本的な共振振動数および並進剛性性を可能にし、時間の経過に伴う材料のクリープを緩和または軽減することを助けることが可能である。
【0415】
いくつかの実施形態では、フレキシブルヒンジマウントは、発泡材料から形成され得る。フォームは、マウント本体A702を通って長手方向に延在する複数の空洞A701を含むことが可能である。いくつかの実施形態では、マウントA700の異方性材料は、振動板A101の冠状面に対して垂直の方向に、および/または、マウントA700の長手方向軸A703に対して実質的に垂直の方向に、相対的に高いヤング率を有することが可能であり、それは、長手方向軸A703の周りでの回転コンプライアンスに対して、より高い並進変位に対する抵抗を提供することが可能である。不正確な製造(例えば、正しくない振動板質量など)は、他の非一次の振動板共振モードと比較して、振動板の冠状面に対して垂直の方向への並進を結果として生じさせる可能性がより高くなる。また、この方向への振動板のより良好な拘束は、改善された効率のために、磁石とコイル巻線との間のより小さいギャップを可能にすることが可能である。
【0416】
空洞A701は、この実施形態では、実質的に環状になっており、マウントの長手方向軸A703に対して実質的に垂直になっている第1の軸A704に沿った並進の観点からのマウントのコンプライアンスが、長手方向軸A703に対して実質的に垂直になっている第2の軸A705に沿った並進の観点からのマウントのコンプライアンスと実質的に同様になるようになっている。図18Aおよび図18Bを参照すると、いくつかの実施形態では、空洞A701は、代替的に、断面が実質的に楕円形になっていることが可能であり、第1の軸A704に沿ったコンプライアンスが、第2の軸A705に沿ったコンプライアンスとは異なっているようになっている。この場合には、軸A704に沿ったコンプライアンスは、軸A705に沿ったコンプライアンスよりも高い。空洞の配向および形状は、それぞれの軸A704、A705に沿った特定のコンプライアンスプロファイルを実現するために変更され得る。空洞A701は、本体A702の実質的な部分または長さ全体に沿って延在することが可能である。
【0417】
さらに別の例において、マウントA107aおよびA107bは、図19A図19CのマウントA800によって交換され得る。示されているように、マウントは、対向する環状の接続ヘッドA802、A803の間に延在する単一の長手方向の本体A801を含む。長手方向の本体A801は、本体A801の長さに沿って延在するA801a、A801bに沿って、1つまたは複数の外部凹形表面を含むことが可能である。表面は、本体A801の横断方向の断面において、凹形になっていることが可能である。表面A801aおよびA801bは、この例では、互いに対して約180度に配向され得る。他の配向も想定され、いくつかの実施形態では、任意の数の1つまたは複数の凹形表面が存在していることも可能である。凹形表面は、マウントの中央領域または軸に向けて、内向きに角度付けされているかまたは湾曲しており、中央領域が、両側の隣接する領域よりも相対的に薄くなっていることが可能であるようになっている。ヘッドA802およびA803は、トランスデューサ基部構造体A102および振動板A101を剛性にそれぞれ連結するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つのそのようなマウントは、振動板基部構造体のそれぞれの端部において取り付けられ得、それぞれの軸が軸と実質的に同軸になった状態になっており、変形が主に使用時の捩じれを介するものとなるようになっている。また、複数の他の配向も可能である。
【0418】
さらに別の例において、マウントA107aおよびA107bは、図19A図19CのマウントA800によって交換され得る。示されているように、マウントは、対向する環状の接続ヘッドA802、A803の間に延在する単一の長手方向の本体A801を含む。長手方向の本体A801は、本体A801の長さに沿って延在するA801a、A801bに沿って、1つまたは複数の外部凹形表面を含むことが可能である。表面は、本体A801の横断方向の断面において、凹形になっていることが可能である。表面A801aおよびA801bは、この例では、互いに対して約180度に配向され得る。他の配向も想定され、いくつかの実施形態では、任意の数の1つまたは複数の凹形表面が存在していることも可能である。
【0419】
マウントA107a、A107bは、例えば、図5A図5Cおよび図6A図6Dに示されているような代替的なマウントと交換され得る。図5A図5Cは、複数の内側スポークA501を有するスポークマウントA500代替例を示しており、複数の内側スポークA501は、すべての3つの直交軸に沿った並進コンプライアンスに対して、ピンアパーチャA505の周りでの回転の方向への追加的なコンプライアンスを提供するために、内壁A503と外壁A504との間で半径方向に延在している。2つのそのようなサスペンションマウントは、主回転軸に沿って互いに対して遠位に位置し得、それらが、互いに連動して、他の2つの直交する回転軸の周りでの回転コンプライアンスに対して、ピンアパーチャA505の周りでの回転の方向により高いコンプライアンスを提供するようになっている。例えば、マウントA107a、A107bは、振動板A101の両側部にまたはその近くに位置し得る。他のすべてが等しい場合、この例では、マウントA107a、A107bに対して、より硬いグレード材料を使用することも可能であり得る。例えば、約60のショアA硬度を有するエラストマーが利用され得る。半径方向のスポークA501同士の間、および、内壁A503と外壁A504との間に形成されている長手方向の空洞A502は、空気を含有することが可能であり、または、代替的に、スポークA502および壁部A403、A504に対して相対的により低い密度のまたは相対的により低い剛性の材料を含有することが可能である。
【0420】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサA100は、図6A図6Dに示されているような振動板サスペンションマウントを含むことが可能である。それぞれのマウントは、4つのスポークまたはフレクシャA601a~dを有するクロスフレクシャヒンジマウントA600であることが可能であり、4つのスポークまたはフレクシャA601a~dは、中心軸A603から放射状に広がっており、また、3つの直交軸に沿った並進コンプライアンスに対して、中心軸の周りでのコンプライアンスの追加を提供する。好ましくは、マウントのペアが、主回転軸A103に沿って互いに実質的に遠位に位置しており、中心軸に対して実質的に直交している軸の周りでの回転コンプライアンスの追加も実現され得るようになっている。また、これは、マウントA107a、A107bに対して、相対的により硬いグレードの材料が使用されることを可能にすることができる。例えば、60のショアA硬度を有するウレタンエラストマーが利用され得る。クロスフレクシャ本体A601は、パッドA602から延在するコネクタA602aを介して、一方の側においてマウンティングパッドA602に連結されている。
【0421】
ヒンジマウントA500およびA600は、両方とも、少なくとも1つの凹形表面を含むことが可能であり、少なくとも1つの凹形表面は、これらの表面におけるまたはその周りでのヒンジの屈曲を推進する。フォームタイプ材料において、複数の内部空洞は、また、この可撓性の挙動を推進する凹形表面を含む。少なくとも1つの表面は、振動板A101の回転軸に対して実質的に平行の軸の周りで凹形になっており、回転軸の周りでの屈曲を推進することが好ましい。いくつかの実施形態では、他の直交軸に対して、回転軸の周りで凹形になっている相対的に高い数の表面が存在していることが可能であり、回転軸の周りでのより高い回転コンプライアンスを推進し、また、他の直交軸に沿った並進において、および/または、他の直交軸の周りでの回転において、相対的により低いコンプライアンスを推進する。
【0422】
いくつかの実施形態では、ヒンジマウントA107aおよびA107bは、他の実施形態に関係して本明細書で説明されている任意の他の振動板サスペンションによって交換され得る。そのうえ、トランスデューサA100に関係して説明されているヒンジマウントのうちの任意のものは、本明細書で説明されている任意の他のオーディオトランスデューサの実施形態に関係して使用され得る。
【0423】
振動板サスペンションシステムのコンプライアンスは、特定のドライバ用途の要件にカスタマイズされ得る。例えば、2ウェイホームオーディオスピーカの中の高音域ドライバは、低い一次モード振動数を必要としない可能性があり、したがって、比較的に低いコンプライアントの振動板サスペンションシステムが使用され得、それは、例えば、振動板構造体が、振動板サスペンションシステム材料のクリープに起因して、基部に対する振動板の変位に対してより剛性になるという利点を提供する可能性があり、それによって、そのような用途におけるトランスデューサロバストネスを改善する。
【0424】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションのそれぞれのヒンジマウントは、十分に低いヤング率を有しており、基本的な振動板共振振動数が、約100Hz未満の振動数において起こるようになっている。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションのそれぞれのヒンジマウントは、十分に低いヤング率を有しており、基本的な振動板共振振動数が、約70Hz未満の振動数において起こるようになっている。いくつかの実施形態では、振動板サスペンションのそれぞれのヒンジマウントは、十分に低いヤング率を有しており、基本的な振動板共振振動数が、約50Hz未満の振動数において起こるようになっている。そのようなデバイスは、さらに詳細に下記に説明されているように、バスドライバとして、または、パーソナルオーディオ用途において有用である可能性がある。
【0425】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、約200Hzを超えるか、約300Hzを超えるか、または、約400Hzを超える並進共振振動数を含むことが可能である。これは、デバイスを、ミッドレンジの/高振動数ドライバとして、または、パーソナルオーディオデバイスとしても適切にすることが可能である。
【0426】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の振動板サスペンション構成要素(例えば、それぞれのヒンジマウントなど)は、並進コンプライアンスに関連付けられる振動板共振振動数が、約200Hzよりも大きい、より好ましくは、約300Hzよりも大きい、最も好ましくは、約400Hzよりも大きい振動数において起こるように、十分に剛性になっている。並進コンプライアンスに関連付けられる振動板共振振動数は、冠状面に対して垂直の方向への振動板の有意な変位を伴う可能性がある。
【0427】
振動板サスペンションの材料および/または構築物は、とりわけ、張力/圧縮において、実質的に高いダンピングを提供することが可能であり、並進共振モードおよび他の望まれない共振モードを管理することを助けるようになっている。
【0428】
いくつかの実施形態では、振動板サスペンションは、例えば、WO2017/046716のセクション3.2において説明されているように、実質的に剛性のヒンジ構築物から構成され得るが、ヒンジの回転軸が所定の平面の中に位置した状態になっており、所定の平面は、振動板の冠状面に対して実質的に垂直になっており、振動板のノード軸A104を含有している。より好ましくは、回転軸は、ノード軸A104と実質的に同軸になっており、最も好ましくは、回転軸は、質量中心と実質的に同軸になっている。そのようなサスペンションは、少なくとも1つのヒンジマウントを含むことが可能であり、少なくとも1つのヒンジマウントは、動作の間に互いに対して移動するように構成されている1対の実質的に剛性の対向する接触表面を有している。一方の接触表面は、振動板A101の一部に剛性に連結され得るか、または、振動板A101の一部を形成することが可能であり、一方では、他方の接触表面は、トランスデューサ基部構造体の一部に剛性に連結され得るか、または、トランスデューサ基部構造体の一部を形成することが可能である。付勢機構が、接触表面を互いに向けて付勢することが可能である。
【0429】
ノード軸を識別し、トランスデューサを組み立てるための方法
振動板ノード軸A104は、好ましくは、事前に決定されており、振動板サスペンションシステムは、それに従って振動板A101にマウントされる。図22Aを参照すると、オーディオトランスデューサA100を構築するための方法200は、
a)振動板のノード軸を決定するステップ(ステップ201)と;
b)変換機構を振動板およびトランスデューサ基部構造体に連結するステップ(ステップ202)と;
c)トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸が所定の平面の中に位置するように、振動板サスペンションを介して振動板をトランスデューサ基部構造体に回転可能にマウントするステップであって、所定の平面は、振動板A101の冠状面A211に実質的に対して垂直になっており、振動板A101のノード軸A104を含有している、ステップ(ステップ203)と
からなることが可能である。
【0430】
ステップa)およびb)は、順序を入れ替えることが可能である。
【0431】
代替的に、振動板サスペンションおよび/または振動板A101は、トランスデューサの所望の動作/特質が実現されるまで調節される。
【0432】
この実施形態では、振動板ノード軸A104は、所定のコンピュータモデリングおよびシミュレーションを介して事前に決定される。例えば、ノード軸A104を決定することは、以下のステップからなることが可能である。
・オーディオトランスデューサのコンピュータモデルを発生させるステップと;
・モデルの変換機構がモデルの振動板を効果的に実質的に支持されていない状態で回転させる動作状態をシミュレートするステップと;
・シミュレーションから、モデル振動板の回転軸を決定するステップと;
・モデル振動板の回転軸からオーディオトランスデューサのノード軸を決定するステップ。
【0433】
代替的に、ノード軸A104を事前に決定する方法は、オーディオトランスデューサA100と同様のまたは同等の物理的なモデルを使用して軸を決定するステップを含むことが可能である。そのような方法の段階は、
・オーディオトランスデューサの物理的なモデルを発生させるステップと;
・モデル振動板を効果的に実質的に支持されていない状態で回転させるように、モデルの変換機構を動作させるステップと;
・トランスデューサ基部構造体に対するモデル振動板の回転軸を決定するステップと;
・モデル振動板の回転軸からオーディオトランスデューサのノード軸を決定するステップと
からなることが可能である。
【0434】
本明細書において、「効果的に実質的に支持されていない」振動板への言及は、関連の振動板サスペンションシステムによって提供される支持のレベルに対して、著しく支持されていない振動板を意味することが意図されている。これは、コンプライアンスにおいて比較的により高い支持のレベルであることが可能であり、および/または、それは、振動板サスペンションコンプライアンスによって主に促進される6つの振動板共振モードに対して、振動板が質量制御領域の中にあるように、トランスデューサを動作させることの結果である可能性があり、そこでは、それがトランスデューサ基部構造体に対して効果的に実質的に支持されていない状態になる。効果的に実質的に支持されていない振動板状態が動作を通して実現される場合には、励起の動作期間は、好ましくは十分に短く、振動数は、十分に高く、ノード軸場所に対する振動板サスペンションの影響が実質的に無視できる。このように、振動板は、振動板ノード軸場所を決定する目的のために、効果的に支持されていない。加えて、または代替的に、比較的に高いコンプライアンスの振動板サスペンションが組み込まれ、振動板支持の程度を低減させること、および、振動板の効果的に実質的に支持されていない状態を実現することが可能である。
【0435】
テスト励起の動作期間(そこでは、振動板が効果的に実質的に支持されていない)は、好ましくは十分に長く、および/または、動作の振動数は、十分に低く、振動板およびトランスデューサ基部構造体の両方が、実質的に剛性のままになっており、または、少なくとも、いずれかの任意の変形が、決定されるノード軸場所に対して実質的に無視できる影響を有するようになっている。
【0436】
好ましくは、モデルの回転軸を決定するステップは、1つもしくは複数のセンサまたは測定デバイス(例えば、加速度計、レーザドップラー振動計(LDV)、もしくは近接センサなど)を使用して、軸を測定するステップを含む。
【0437】
述べられているように、代替的な実施形態では、オーディオトランスデューサA100は、所望の動作特質を実現するためにトランスデューサの特性を調節する技法を使用して組み立てられる。図22Bを参照すると、方法210は、
a)i.変換機構を振動板A101およびトランスデューサ基部構造体A102に連結することによって、および、
ii.振動板サスペンションシステムを介して振動板A101をトランスデューサ基部構造体A102に回転可能にマウントすることによって、
オーディオトランスデューサを部分的に組み立てるステップ(ステップ211)と;
b)部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの振動板A101を回転させるように、変換機構を動作させるステップ(テップ212)と;
c)部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の動作特質を解析するステップ(ステップ213)と;
d)1つまたは複数の動作特質を最適化するために、部分的に組み立てられたオーディオトランスデューサの1つまたは複数の物理的な特質を調節するステップ(ステップ214)と;
e)1つまたは複数の動作特質の1つまたは複数の所望の基準が実現されるまで、必要な場合には、ステップb)~d)を繰り返すステップ(ステップ215)と
を含むことが可能である。
【0438】
所望のクライテリアは、好ましくは事前に決定される。ステップb)は、主に振動板サスペンションコンプライアンスによって促進される6つの振動板共振モードに対して、トランスデューサの質量制御領域の中で振動板を回転させるように、変換機構を動作させるステップを含むことが可能である。
【0439】
好ましくは、1つまたは複数の動作特質は、少なくとも意図した動作の振動数範囲の中のトランスデューサの振動数応答のうちの任意の1つまたは複数を含む。好ましくは、クライテリアは、ゼロ共振振動数応答を含む。
【0440】
いくつかの実施形態では、ステップc)は、トランスデューサの振動数応答を解析し、振動数応答の1つまたは複数のステップ状の変化を示すパラメータの値が所定の閾値よりも大きいかどうかを決定するステップを含む。好ましくは、ステップe)のクライテリアは、パラメータの1つまたは複数の所望の値を含む。例えば、パラメータは、ステップの高さおよび/または勾配であることが可能であり、クライテリアは、所望の最大高さおよび/または勾配値を含むことが可能である。
【0441】
いくつかの実施形態では、ステップc)は、トランスデューサの振動数応答を解析し、振動数応答のピーク値が所定の閾値よりも大きいかどうかを決定するステップを含む。好ましくは、ステップe)のクライテリアは、振動数応答のピークの所望の最大値を含む。
【0442】
振動数応答に関係する上述のパラメータ値は、測定されるかまたは推定され得る。
【0443】
好ましくは、1つまたは複数の物理的な特質は、振動板に対する振動板サスペンションシステムの場所;トランスデューサ基部構造体に対する振動板の回転軸の場所;トランスデューサ基部構造体の質量プロファイル;振動板の質量プロファイル;振動板の1つまたは複数の寸法;振動板の形状プロファイル;基部構造体の形状プロファイル;振動板サスペンションシステムの形状プロファイル;振動板サスペンションシステムの剛性プロファイル;変換機構の力発生プロファイルのうちの1つまたは複数の任意の組合せを含む。
【0444】
図22Cを参照すると、さらに別の方法において、オーディオトランスデューサA100は、振動板の質量中心軸A204に基づいて構築され得る。例えば、方法220は、
a)振動板A101の質量中心軸A204を決定するステップ(ステップ221)と;
b)変換機構を振動板A101およびトランスデューサ基部構造体A102に連結するステップ(ステップ222)と;
c)トランスデューサ基部構造体A102に対する振動板A101の回転軸A103が所定の平面の中に位置するように、振動板サスペンションシステムを介して振動板A101をトランスデューサ基部構造体A102に回転可能にマウントするステップであって、所定の平面は、振動板A101の冠状面A211に対して実質的に垂直になっており、振動板A101の質量中心軸A204を含有している、ステップ(ステップ223)と
を含むことが可能である。
【0445】
回転軸A103は、好ましくは、質量中心軸A204と実質的に同軸になっている。
【0446】
デカップリングマウンティングシステム
図1F図1Iおよび図3Gを参照すると、いくつかの構成において、オーディオトランスデューサA100は、スピーカエンクロージャまたはハウジングA301の中に収容され得る。スピーカハウジングA301/A301とトランスデューサA100との間の望まれない振動の伝送を最小化するために、トランスデューサA100は、好ましくは、可撓性のデカップリングマウンティングシステムを介してハウジングに連結されている。いくつかの実施形態では、このシステムは、例えば、実施形態Aに関連してWO2017/046716のセクション4に説明されているデカップリングマウンティングシステムと同様であることが可能である。この実施形態のデカップリングマウンティングシステムは、1対のフレキシブルトランスデューサノード軸マウントA305a、A305bを含み、1対のフレキシブルトランスデューサノード軸マウントA305a、A305bは、トランスデューサノード軸A105と実質的に同軸に、トランスデューサ基部構造体A102の両側部から横方向に延在している。WO2017/046716の詳細な説明のセクション4.2.1に説明されているように(例えば、WO2017/046716は、参照により本明細書に組み込まれている)、トランスデューサノード軸A105(トランスデューサノード軸A105は、上記に説明されている振動板のノード軸A104とは異なっている)は、所定の場所であり、トランスデューサ基部構造体が、動作の間に効果的に実質的に支持されていない状態(本明細書では、支持されていないアクティブ状態と称される)で、その場所の周りに回転する。要約として、トランスデューサノード軸A105は、振動板揺動の間に示される反力および/または共振力に起因してトランスデューサ基部構造体がその周りに回転する軸である。トランスデューサ組立体が、仮想的な支持されていない状態で動作されているときに、および、望まれない振動板(屈曲タイプ)およびトランスデューサ基部構造体(屈曲タイプ)の共振が起こる振動数よりも実質的に低い振動数で動作されているときに、場所が決定される。この場所を識別する方法は、WO2017/046716に説明されており、WO2017/046716は、参照により本明細書に組み込まれている。
【0447】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ組立体が、仮想的な支持されていない状態で動作されているときに、および、望まれない振動板(屈曲タイプ)およびトランスデューサ基部構造体(屈曲タイプ)の共振が起こる振動数よりも実質的に低い振動数で動作されているときに、および、振動板サスペンションコンプライアンスにおいて関連付けられる共振モード(上記に説明されている6つのモードである)の振動数よりも実質的に高い振動数で動作されているときに、トランスデューサノード軸A105は決定され得る。
【0448】
いくつかの実施形態では、トランスデューサ組立体が、仮想的な支持されていない状態で動作されているときに、および、望まれない振動板(屈曲タイプ)およびトランスデューサ基部構造体(屈曲タイプ)の共振が起こる振動数よりも実質的に低い振動数で動作されているときに、および、一次振動板共振モードの振動数よりも高い振動数で動作されているときに、トランスデューサノード軸A105は決定され得る。
【0449】
デカップリングマウンティングシステムは、ノード軸マウントA305a、A305bを含み、ノード軸マウントA305a、A305bは、トランスデューサノード軸A105と実質的に同軸に、トランスデューサ基部構造体A102の両側部から横方向に延在している。ノード軸マウントは、ノード軸ピンA111a、A111bの周りに連結されており、ノード軸ピンA111a、A111bは、また、ノード軸A105と実質的に同軸に、トランスデューサ基部構造体A102の両側部から横方向に延在している。マウントA305a、A305bは、エンクロージャパーツA301の内部に、対応する凹部または空洞の中に固定して収容されている。マウントは、振動板マウントA107a、A107b、または、例えば、図5A図5Cおよび図6A図6Dに示されている振動板マウントのプロファイルと同様のプロファイルを有することが可能である。
【0450】
デカップリングマウンティングシステムは、1つまたは複数のデカップリングパッドA306a、A306bをさらに含み、1つまたは複数のデカップリングパッドA306a、A306bは、トランスデューサ基部構造体A102の一方のまたは好ましくは両方の主面の上に位置している。パッドA306a、A306bは、関連の基部構造体面とエンクロージャの対応する内部壁部/面との間のインターフェースを提供し、構成要素をデカップリングすることを助ける。この例では、1つのパッドA306aが、基部構造体のそれぞれの主面(上側面および下側面)に位置している。デカップリングパッドは、好ましくは、トランスデューサノード軸A105から遠位にあるトランスデューサ基部構造体の領域に位置している。例えば、デカップリングパッドは、振動板A101に隣接する基部構造体の縁部にまたはそれに隣接して位置している。それぞれのパッドA306a、A306bは、好ましくは、形状が長手方向になっており、基部構造体A102の横断方向の縁部に沿って長手方向に延在している。図3Gに示されているように、それぞれのパッドA306a、A306bは、ピラミッド形状の本体を含み、ピラミッド形状の本体は、本体の深さに沿ってテーパ付きの幅を有している。好ましくは、ピラミッドの頂点は、ハウジングに連結されているが、この配向は、代替的な実施形態では、逆にされ得る。代替的な実施形態では、デカップリングマウンティングシステムは、複数のパッドを含むことが可能であり、複数のパッドは、トランスデューサ基部構造体A102の主面のうちの1つまたは複数の周りに、および/または、デカップリングピンがそこから延在している基部構造体の側面に分配されており、本発明は、当業者に明らかになるように、この例の構成に限定されることは意図されていないことが理解される。そのようなマウントは、本明細書で「遠位マウント」と称される。
【0451】
ノード軸マウントA305a、A305bおよび遠位マウントA306a、A306bは、それらがそれぞれ取り付けられている2つの構成要素の間の相対移動の観点から十分にコンプライアントになっている。例えば、ノード軸マウントおよび遠位マウントは、それらが取り付けられている2つの構成要素の間の相対移動を可能にするように十分に可撓性になっていることが可能である。それらは、コンプライアンスを実現するための可撓性のまたは弾性の部材または材料を含むことが可能である。マウントは、好ましくは、それらが取り付けられている少なくとも1つの構成要素、しかし、好ましくは両方の構成要素に対して(例えば、オーディオデバイスのトランスデューサ基部構造体およびハウジングに対して)、低いヤング率を含む。また、マウントは、好ましくは、十分にダンピングされる。例えば、ノード軸マウントA305a、A305bは、エラストマーまたは軟質プラスチック材料(例えば、シリコーンゴムなど)から作製され得、また、パッドA306a、A306bは、実質的に可撓性の材料(例えば、シリコーンゴムなど)から作製され得る。
【0452】
ノード軸および遠位マウントは、約0.2MPa~20MPaのヤング率値、好ましくは、例えば、1GPa未満のヤング率値を有する材料から作製され得る。これらの値は、単に例示的なものであり、限定することを意図していない。コンプライアンスは、例えば、材料の幾何学形状、ドライバの動作の振動数範囲、および振動板構造体の質量にも依存することが理解されるので、他のヤング率値を有する材料も使用され得る。
【0453】
ノード軸マウントA305a、A305bにおけるデカップリングシステムは、遠位マウントA306a、A306bにおけるデカップリングシステムに対して、より低いコンプライアンスを有している(すなわち、より硬くなっているか、または、関連のパーツ同士の間でより硬い接続を形成している)。これは、異なる材料の使用を通して実現され得、および/または、この実施形態の場合には、これは、遠位マウントA306a、A306bに対してノード軸マウントA305a、A305bの幾何学形状(例えば、形状、形態、および/またはプロファイルなど)を変更することによって実現される。この幾何学形状の相違は、ノード軸マウントA305a、A305bが、遠位マウントA306a、A306bに対して、基部構造体およびハウジングとのより大きい接触表面積を含み、それによって、これらのパーツの間の接続のコンプライアンスを低減させるということを意味している。
【0454】
実際には、高品質のデカップリングマウンティングシステムの中にマウントされたトランスデューサは、動作の間に移動するトランスデューサノード軸場所を有することが可能である。(FROに対して)相対的に低い振動数範囲において、トランスデューサ基部構造体(および、存在する場合には、ノード軸場所)の移動は、主に、トランスデューサデカップリングマウンティングシステムの機械的な制約によって、振動板によってトランスデューサ基部構造体に働かされる力の場所および方向によって、ならびに、トランスデューサ基部構造体組立体の質量分布(本明細書で「第1の動作状態」と称される)によって定義される。一般的に、トランスデューサ基部構造体の移動は、異なっていることになり、ノード軸が存在する場合には、トランスデューサの仮想的な支持されていないアクティブ状態における移動と比較して、それはシフトされることになり、また、振動数とともにシフトすることが可能である。このより低い範囲を上回る振動数において、トランスデューサ基部構造体の移動(および、存在する場合には、ノード軸場所)は、トランスデューサ基部構造体に印加される力(例えば、振動板揺動からの反力、共振力、および、変換機構に印加される力など)の場所および方向によって、ならびに、基部構造体組立体の質量分布(本明細書で「第2の動作状態」と称される)によって主に定義されることになる(それは、典型的に、特定の動作振動数において、仮想的な支持されていないアクティブ状態におけるノード軸場所と同じである)。上記に説明されているように、本発明のいくつかの実施形態は、コンプライアントヒンジシステムを含み、コンプライアントヒンジシステムは、効果的な振動板ヒンジング軸が動作帯域幅にわたってシフトすることを可能にし、したがって、トランスデューサ基部構造体に印加される力の方向(および、暗示的には、トランスデューサノード軸も)が、動作帯域幅にわたって(定常状態)振動数とともにシフトすることが可能である。好ましくは、トランスデューサ組立体が、(ハウジング、エンクロージャ、または他のサポートに対して)仮想的な支持されていない状態で動作されているときに、ならびに、望まれない振動板屈曲タイプおよびトランスデューサ基部構造体屈曲タイプの共振が起こる振動数よりも実質的に低い振動数で動作されているときに、ならびに、振動板サスペンションコンプライアンスにおいて関連付けられる共振モード(上記に説明されている6つのモードである)の振動数よりも実質的に高い振動数で動作されているときに、トランスデューサノード軸が決定される。本明細書で説明されているデカップリングマウンティングシステムは、トランスデューサノード軸場所のシフトの態様を含む、移動のそのような変化に抵抗するか、または少なくとも大幅に低減させる。動作の振動数範囲の中に、前記デカップリングマウンティングシステムによって引き起こされるトランスデューサノード軸の非常に最小限の移動が存在するかまたは移動が全く存在せず、より低いコンプライアントのデカップリング場所における並進移動を最小化するかまたは防止するように、デカップリングマウンティングシステムは設計されている。
【0455】
図1G図1Iは、ノード軸マウントA305a、A305bをそれに従って位置するために、トランスデューサノード軸A105の場所および事前決定を促進させるための、(トランスデューサがインサイチュでその上に連結され得るハウジング、エンクロージャ、または他のサポートに対して)効果的に実質的に支持されていないアクティブ状態における、オーディオトランスデューサA100のシミュレートされたモデルの有限要素解析結果を示している。トランスデューサの横断方向軸A202aに対して実質的に平行の軸の周りでの一次モード回転が、これらの図に示されている。この場合には、振動板サスペンションが、振動板A101の所定の(振動板)ノード軸A104と比較して、振動板の回転軸のシフトを回避するように設計されており、したがって、これは、振動板の一次共振モードが、振動板回転の所定の(振動板)ノード軸A104と同じ振動板軸場所を有しているという特別の場合にあることが留意される。したがって、この解析において、トランスデューサノード軸の場所は、トランスデューサ組立体が(トランスデューサがインサイチュでその上に連結され得るハウジング、エンクロージャ、または他のサポートに対して)仮想的な支持されていない状態で動作されているとき、ならびに、望まれない振動板屈曲タイプおよびトランスデューサ基部構造体屈曲タイプの共振が起こる振動数よりも低い振動数で動作されているとき、ならびに、振動板サスペンションコンプライアンスにおいて関連付けられる共振モード(上記に説明されている6つのモードである)の振動数よりも実質的に高い振動数で動作されているときと同じである。
【0456】
2つのノード軸が明らかである(振動板ノード軸A104およびトランスデューサノード軸A105)。有限要素解析プロットの中のそれぞれの矢印のサイズおよび方向は、トランスデューサの上のそれぞれの領域の変位の相対的な大きさおよび方向を示している。図1Fの振動板A101は、基部組立体(それは、トランスデューサノード軸A105の周りを反時計回り方向に回転している)に対して、振動板ノード軸A104の周りを反対側(時計回り)方向に回転しているように見られ得る。
【0457】
トランスデューサノード軸A105と振動板ノード軸A104との間の距離は、好ましくは、比較的に小さい。これは、有利である。その理由は、それが、より剛性のノード軸マウントA305a、A305bが、基部構造体A102に対して、振動板の相対的に近くにおよび振動板の回転軸A103の相対的に近くにあり、したがって、衝撃シナリオの中で起こり得る、ハウジングに対するトランスデューサ基部構造体A102の変位(特に、回転変位)が、ハウジングに対する振動板のより小さい変位を結果として生じさせることを意味しているからである。そして、これは、振動板に対する損傷の可能性の低減を結果として生じさせ、他のすべては等しくなっている。
【0458】
ラウドスピーカの実施形態
図3A図3Hは、例えば、ミッドレンジの/高音域のスピーカなどのような、ホームオーディオ用途のために使用され得るスピーカデバイスA300の中にマウントされたトランスデューサA100を示している。スピーカA300は、エンクロージャA301と、エンクロージャ蓋部A302と、トランスデューサA100と、振動板A101の外側周囲部にある保護サラウンドA303と、外側シールディングメッシュA308と、内側シールディングメッシュA309と、2つのデカップリングブッシュA305a、A305bおよび2つのデカップリングピラミッドA306a、A306bからなるドライバデカップリングシステムとを含む。
【0459】
トランスデューサA100は、例えば、代替的な実施形態では、フルレンジヘッドホンドライバとして、多くの異なる用途に関して構成され得る。トランスデューサA100は、ミッドレンジのドライバ、バスミッドドライバ、フルレンジドライバ、もしくはサブウーファーとしての使用のためにより大きくされ得、または、ヘッドホン、モバイルフォン、耳の穴に差し込むタイプのイヤホン、もしくは補聴器などのような、パーソナルオーディオ用途における使用のためにより小さくされ得る。また、トランスデューサA100は、機械的な振動トランスデューサとして使用され得、または、サウンドトランスデューサおよび機械的な振動トランスデューサの両方として二重の目的を有することが可能である。また、トランスデューサA100は、マイクロホンとしても使用され得る。
【0460】
保護サラウンド
この実施形態では、スピーカA300は、保護サラウンドA303をさらに含み、保護サラウンドA303は、空気が振動板周辺部を通過することを防止するのを助けながら、トランスデューサA100のための衝撃保護を提供するように構成されている。保護サラウンドA303は、コンプライアント材料から(例えば、エラストマーまたはプラスチック材料(例えば、シリコーンゴムまたはSorbothane(商標)など))からエンクロージャA301/A302にインモールドされ得るか、または、別個の構成要素として連結され得る。振動板A101のより壊れやすいエリアに接触することができる保護サラウンドA303のパーツは、好ましくは、その中へ成形された小さくて薄いフラップA303aおよびA303bを有している。例えば、スピーカA300が落下される潜在的な使用状況において、サラウンドA303は、薄いフラップA303を介して保護を提供するように構成されており、薄いフラップA303は、振動板A101を越えて曲がってスライドする。振動板損傷を防止することを追加的に助けるために、低摩擦コーティング(例えば、PTFEまたはテフロン)が、好ましくは、落下時に振動板A101に接触する可能性のある保護サラウンドA303のエリアに塗布されているか、インモールドされているか、または、そうでなければ取り付けられている。保護サラウンドA303は、例えば、図3Hに示されているように振動板のすべての3つの側部の周りに延在するフラップA303の層というよりもむしろ、その中へ成形されるか、カットされるか、または製作された他の可撓性の幾何学形状を有することが可能である。複数の小さいフラップまたは小さい毛が存在していることが可能である。振動板A101の平面の中に配向されている多くの小さいフラップを有するという特徴は、動作の間に振動板A101の一方の側部において発生されるプラスの音圧のエリアから、他方において発生されるマイナスの音圧のエリアへのフローまたは空気を制限することを助ける。保護サラウンドA303は、代替的に、ベルベットまたはベロアまたはシリコーンなどのような、コンプライアントのファブリックまたは材料から作製され得る。また、保護サラウンドA303は、例えば、帯電防止のスプレーを使用することによって、帯電防止の保護をしており、ダストがエアギャップA304の中へ引き付けられることを防止することを助けることが可能である。
【0461】
磁気シールディング
この実施形態では、スピーカA300は、スチールメッシュなどのような強磁性の材料から作製された磁気シールディングパーツA308、A309をさらに含む。磁気シールディングパーツA308、A309は、電磁機構のフラックスフィールドがスピーカA300の外部表面を越えて延在することを防止することを助けるために使用されており、また、スピーカA300の外部にある異物との磁気的な相互作用を低減させるために使用されている。シールディングがなければ、振動板A101は、異物(例えば、他の磁石または強磁性の材料など)との磁気的な相互作用に起因して変位する可能性があり、潜在的に、損傷をもたらす。このように、スピーカA300は、外側シールドメッシュA308を含み、外側シールドメッシュA308は、磁石A205に対して内側シールドメッシュA309と約等しい距離にあるパネルA308aを含む。それぞれのシールドA308、A309の厚さおよび密度は、他のものと同様になっており、振動板A101の両側において、等しい反対側の磁気的な引力を維持する。いくつかの実施形態では、シールディングの異なるパーツの厚さは変化することが可能であり、また、トランスデューサからの距離も変化することが可能であるが、全体的な効果は、振動板に(および、好ましくは、トランスデューサにも)かかる正味の力が全体としてゼロになっているかまたは少なくともゼロに近いことである。いくつかの実施形態では、追加的なシールディングおよび/または永久磁石および/または他のデバイスが組み込まれ、振動板にかかる力のバランスをとる役割を果たすことが可能である。磁石にかかるこれらの力は、約等しく反対側になっているので、磁石にかかる正味の力は、約ゼロになっていることが可能である。同様に、磁気シールディングパネルA308bおよびA308cは、また、約反対側の方向から磁石を引き付け、したがって、磁石A205および振動板A101に対して、関連の方向に約ゼロ正味の力を提供する。約ゼロの正味の力が磁石A205にかかる状態で、振動板サスペンションマウントA107a、A107bを通して伝送される力は、最小になることが可能であり、それは、軟質マウントA107a、A107bが過度の応力の下で時間の経過とともに変位に関してクリープを起こす傾向を低減させることが可能である。この実施形態では、エンクロージャの側部にシールディングが存在していないが、しかし、これは、磁石A205とスピーカA300のこれらの外側の表面との間の大きい距離に起因して、必要でない可能性がある。
【0462】
磁気的な異物がスピーカA300の外側の表面に触れるシナリオにおいて、好ましくは、シールディングA308/A309は、磁石A205からの磁束がスピーカA300の中に含有されるように十分になっており、異物から磁石A205への引力が無視できるかまたは少なくとも大幅に低減される。
【0463】
追加的にまたは代替的に、磁気シールディングは、基部構造体組立体A102に剛性に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、強磁性の材料は、振動板磁石またはコイルの近くになり過ぎないように位置しており、および/または、大きくなり過ぎないようになっており、および/または、それらがあまりに多くの磁束を担持しないように位置していることが好ましく、そうでなければ、振動板は、不安定な平衡の状態で存在する可能性があり、それは、振動板サスペンション材料がクリープおよび/もしくは上昇した温度に起因して歪んだとした場合に、ならびに/または、製造公差が不十分である場合に、混乱する可能性がある。
【0464】
いくつかの実施形態では、例えば、ツィータの場合などでは、磁気シールディングは、ポールピースとして二次的な利益を提供することが可能であり、磁石A205の磁束または導電性コイルA106によって誘導される磁束のいずれかを、トランスデューサA100の全体的な効率を改善する方向に方向付けることを支援する。
【0465】
シールディングは、コイルに密接な接触をしていないか、または、コイルに剛性に接続されていないことが好適である。また、磁石A205から遠位の側にあるコイルA106の面または側部は、それに密接な接触をしているか、または、それに剛性に接続されている、任意の強力に強磁性の構成要素を有していなくてもよいことが好適である。コイルと強力に強磁性の構成要素との間に好ましくは、少なくとも1mmのギャップ、より好ましくは、少なくとも2mmのギャップ、最も好ましくは、少なくとも4mmのギャップが存在している。
【0466】
デバイスに対するすべての磁気シールディングA308/A309の正味の引力(および、磁石A205に作用する任意の他の磁石(例えば、他のトランスデューサA100の中にある)の正味の引力または反発力を含む)は、約ゼロになっていることが好ましく、振動板サスペンションシステムに過度に応力を加えないようになっている(過度に応力を加えることは、振動板A101を変位させ、トランスデューサ性能を制限する可能性がある)。非動作状態においてトランスデューサ全体にかかる正味の力は、約ゼロになっていることが可能であり、または、代替的に、重力に匹敵するかまたは重力よりも小さくなっており、ドライバサスペンションの長期の負荷、および、コンプライアント構成要素(例えば、マウントA107a、A107bなど)のクリープの可能性を回避するようになっている。
【0467】
有孔のメッシュが、デバイスA300のための磁気シールディングとして使用されている。これは、振動板のフロント面からの空気がシールディングパネルA308aの一部を通過しなければならず、また、内側シールディングパネルA309の一部も通過しなければならないからである。代替的に、空気が通過することを必要としないシールディングの部分(例えば、動作の間に振動板によって発生される音圧の領域に隣接していない部分)が中実にされ得、次いで、それらは、磁束のより効果的なシールディングを提供することになる。
【0468】
自由周辺部
振動板A101は、保護サラウンドA303などのような周囲の構造体との物理的な接続のない外周部を含む。この文脈において使用されているような「物理的な接続がない」という語句は、振動板周辺部の関連の自由領域と周囲の構造体との間に直接的なまたは間接的な物理的な接続が存在していないことを意味することが意図されている。例えば、自由領域または非接続領域は、好ましくは、直接的にも、または、中間固体構成要素(例えば、固体サラウンド、固体サスペンション、または固体シーリング要素など)を介してでも、周囲の構造体に接続されておらず、また、それらがギャップによって懸架されるかまたは通常は懸架されることになる構造体から分離されている。ギャップは、好ましくは、流体ギャップ、例えば、ガスギャップまたは液体ギャップなどである。
【0469】
そのうえ、この文脈における周囲の構造体という用語は、また、振動板構造体の少なくとも実質的な部分をそれらの間にまたはその中に収容する任意の周囲の構造体をカバーすることが意図されている。例えば、振動板構造体の一部分もしくは全体を取り囲むことができるバッフルは、または、電気音響トランスデューサの別のパーツから延在しており、振動板の少なくとも一部分を取り囲む壁部でさえも、この文脈における周囲の構造体を構成することが可能である。したがって、物理的な接続がないという語句は、いくつかの場合には、別の周囲の中実のパーツとの物理的な関連付けがないものとして解釈され得る。トランスデューサ基部構造体は、そのような中実の周囲のパーツと考えられ得る。例えば、本発明の回転作用実施形態において、振動板構造体の基部領域のパーツは、関連のヒンジ組立体によってトランスデューサ基部構造体に対して物理的に接続されて懸架されていると考えられ得る。しかし、振動板周辺部の残りの部分は、接続がないことが可能であり、したがって、振動板は、少なくとも部分的に自由周辺部を含む。
【0470】
本明細書において外周部に関連して使用されている「物理的な接続が少なくとも部分的にない」という語句(または、「少なくとも部分的に自由な周辺部」などのような他の同様の語句、または、「自由周辺部」と略されるときもある)は、以下のいずれかの外周部を意味することが意図されている。
・約周辺部全体は、物理的な接続がないか、または、
・そうでなければ、周辺部が周囲の構造体/ハウジングに物理的に接続されている場合には、少なくとも1つのまたは複数の周辺領域は、物理的な接続がなく、これらの領域が、周辺部と周囲の構造体との間の周囲部の周りでの接続における不連続性を構成するようになっている。
【0471】
本明細書で説明されている任意の電気音響トランスデューサ実施形態に関して、振動板周辺部は、少なくとも部分的におよびかなり、物理的な接続がなくてもよい。例えば、かなり自由な周辺部は、1つまたは複数の自由周辺領域を含むことが可能であり、1つまたは複数の自由周辺領域は、外周部の長さまたは2次元の周長の約少なくとも20パーセント、または、より好ましくは、外周部の長さまたは2次元の周長の約少なくとも30パーセントを構成する。振動板は、より好ましくは、物理的な接続が実質的になく、例えば、外周部の長さまたは2次元の周長の少なくとも50パーセントが物理的な接続のない状態になっており、または、より好ましくは、外周部の長さまたは2次元の周長の少なくとも80パーセントが物理的な接続のない状態になっている。最も好ましくは、振動板は、約完全に、物理的な接続がない。
【0472】
好ましくは、それぞれのトランスデューサの振動板本体の外周部とハウジング/周囲の構造体との間の距離によって画定されるエアギャップの幅は、振動板本体長さの1/10未満であり、より好ましくは、1/20未満であり、より好ましくは、1/40未満である。例えば、振動板本体の外周部とサラウンドとの間の距離によって画定されるそれぞれのエアギャップの幅は、1mm未満であるか、または、より好ましくは、0.8mm未満であるか、または、さらにより好ましくは、0.5mm未満である。これらの値は、例示的なものであり、この範囲の外側の他の値も、適切である可能性がある。周囲の構造体は、動作の間の振動板の運動の範囲の実質的に全体を通して、振動板の周辺部の周りに実質的にぴったりとフィットしており(しかし、物理的に分離されているままである)、周囲の構造体が効果的にシールされるようになっている。ぴったりとフィットしているサラウンドと、トランスデューサを効果的に取り囲むためのハウジングおよび/またはバッフルの使用との組合せは、特定の回転の方向を所与として、プラスの空気圧力を作り出す振動板の主放射面に隣接する空気を、振動板の反対側の主放射面に隣接する空気から分離する。
【0473】
実質的に自由な周辺部を有するトランスデューサは、振動板がデバイスの厚さのほぼ全体を占めることが可能であることを意味しており、それは、主面の表面積を増加させ、性能を最適化する。回転作用トランスデューサにおいて、上記に説明されているような実質的に自由な振動板周辺部設計は、また、基本的な振動板共振を低減させながら、および、高音域振動数における望まれない振動板ブレークアップ共振を軽減しながら、振動板可動域の増加を可能にし、デバイスの性能をさらに改善する。
【0474】
2. 第2のオーディオトランスデューサの実施形態
図7A図7Iを参照すると、可撓性、および好ましくは弾性材料から作成された2つの振動板サスペンションフレクシャマウントB107a、B107bから成るコンプライアント振動板サスペンションを介して、剛性の基部構造組立体B102にマウントされた剛性の振動板B101を備える第2の好ましいオーディオトランスデューサの実施形態B100が示されている。マウントは、実質的に柔軟な材料、例えば可撓性のウレタンエラストマーなどからも作成される。
【0475】
オーディオトランスデューサB100は、トランスデューサA100と同様である。簡潔にするために、よく似た、または同様の特徴および構成要素は詳細には説明しない。とりわけ、振動板B101は、内側補強材B209a-gおよび外側補強材B206によってそれぞれ強化される実質的に剛性の本体B207から成る点において振動板A101と同様である。この実施形態における外側補強材B206の形式は、振動板A101のものと異なっているが、その目的および機能は同様である。同様に、トランスデューサ基部構造体B102は、基部構造体A102に従って低い剛性の幾何学形状から成り立っている。
【0476】
振動板サスペンションは、振動板が回転軸B103の周りで回転可能に振動することができるように、振動板B101をトランスデューサ基部構造体B102に柔軟かつ回転可能に結合する。振動板サスペンションシステムは、回転軸B103が、振動板ノード軸B104と実質的に同軸であるように、および最も好ましくは、オーディオトランスデューサA100に関連して記載したように振動板の質量中心軸B204と同軸であるように構成されている。変換機構は、電磁気機構であり、導電コイルB106と、関連する磁石とを備える。この実施形態では、導電コイルB106は、振動板B101に剛性に結合し、磁石は、トランスデューサ基部構造体B102の一部を形成する。これは、振動板が非磁性であるため、振動板が異質な強磁性本体に引き寄せられることがなく、磁気遮蔽の必要性を軽減し、振動板B101に対する損傷のリスクを最小限にする点において有利である。
【0477】
動作中、変換機構は、振動板B101に力を及ぼす。そのような力のベクトルB114およびB115の例が図7Eに示されており、そこでは、ベクトルB114は、コイルの長辺B106aによって加えられ、ベクトルB115は、コイルの長辺B106bによって加えられる。このシナリオのベクトルの力の図が図10に示されており、結果として生じるベクトルB126を示しており、これはベクトルB114およびB115の合計である。結果として生じるベクトルB126は、2つを隔てている距離B117を有して、振動板ノード軸B104の位置に対して実質的に垂直である。このベクトルは、振動の望ましくないモード、例えば振動板B211の冠状面に対して直角を成す並進モードなどの励起に寄与する可能性がある。結果として生じるベクトルが最小限になるように、各コイルの長辺B106aおよびB106bの力のベクトルが有意に反対の方向に作用するように、振動板構造体内の構成要素の質量および幾何学形状を構成することが好ましい。
【0478】
振動板サスペンション
振動板サスペンションは、振動板B101の両側部から横方向に延びる一対の振動板サスペンションフレクシャマウントB107a、B107bを備える。各マウントB107a、B107bの中心開口B220a、B220bは、これもまた振動板の関連する側から横方向に延びるそれぞれのサスペンションピンB108a、B108bの周りに固定式に結合するように構成されている。サスペンションピンB108a、B108bは、振動板ノード軸B104および振動板の質量中心軸B204に実質的に同軸に延びている。各マウントB107a、B107bは、例えばエポキシ樹脂などの接着剤を介して、または締り嵌めを介するなど、任意の好適な機構を介してそれぞれのピンに接続されてよい。各振動板サスペンションフレクシャマウントB107a、B107bは、半径方向に離間され、中心ピン開口B220a、B220bから延びる複数の実質的に薄く平坦な要素または「スポーク」B215a-d、B217a-dから成る。スポークB215a-d、B217a-dは、中心開口/軸の周りに実質的に均一に離間されてよい。いくつかの実施形態において、各マウントは、単一のスポークを備えてよい。各スポークB215a-d、B217a-dの一端で、中心ピン開口B220a、B220bから遠位はフレクシャヘッドB216a-d、B218a-dである。各フレクシャヘッドB216a-d、B218a-dは、基部構造体B102の対応するマウンティングブロックB109a、B109bの内側凹部内で、対応する形成物B224a-dの上に結合するように構成されている。組立中、各マウントのスポークは、フレクシャマウントB107a、B107bをそれぞれのマウンティングブロックB109a、B109bの中に固定式に保持するために、それぞれのフレクシャヘッドB216a-d、B218a-dが形成物の上に結合することを可能にするために事前に延伸されてよい。動作中、4つのスポークB215a-d、B217a-dが、張力をかけて、かつ湾曲するように屈曲することで、動作の基本的な回転モードの十分に低い振動数を可能にする。
【0479】
この実施形態の振動板サスペンションは、本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンションで置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンション修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0480】
ストッパ
図7Gおよび図7Iを参照すると、オーディオトランスデューサB100はさらに、基部構造体B102に対する振動板B101の過度な移動を阻止するのを助けるためにストッパB223a、B223bを備える。各振動板サスペンションマウンティングブロックB109a、B109bは、それぞれのマウントB107a、B107bの並進運動および回転運動を制限するように構成された内側周辺部を有する。図7Iに示されるように、各マウンティングブロックB109a、B109bの最も外側の開口は、振動板B101がトランスデューサ基部構造体に対して並進する、またはそれ以外の方法で著しく移動した場合に、それに対向するように当接するために、それぞれのピンB108a、B108bのための当接表面を形成する内側周辺部を備える。加えて、図7Gに示されるように、各マウンティングブロックB109a、B109bの内側周辺部は、それに従ってフレクシャプレートの移動を制限するためにストッパ表面B225a、B225bを備える。これは、例えば落下した場合に、比較的壊れやすい振動板に損傷が生じるのを阻止するのを助けることができる。ストッパ表面B225a、B225bは、それぞれのフレクシャマウントB115a~d、B117a~dの面を徐々に接触させ、これにより、そうでなければ生じる可能性のある望ましくない騒音の発生を回避する、または少なくとも最小限にする輪郭を有してよい。
【0481】
振動板
図9Cを参照すると、振動板本体B207は、本体の長さに沿って変動する厚さを有するように成形される。振動板A101と同様に、振動板B101もまた、振動板の一端(基部B210の近く)で相対的に大きな厚さの第1の領域と、振動板の他端(基部B210から遠位)で相対的に小さい厚さの第2の領域とを有する。第2の領域で、振動板本体B207は、振動板の主面B212の間で、振動板の先端で、おおよそ15度であり得る角度B203でテーパ状になることで、厚さは、この領域において長さに沿ってテーパ状になる。第1の領域と第2の領域との間の交点で、すなわち振動板の先端と振動板の基部領域B210との間のおおよそ中間部において、この角度は変化し、主面は、厚さが、実質的に一定のままであるように実質的に平行になる。第1の領域において、振動板が基部端部に向かって厚さが縮小するように角度はテーパ状にされてよい。第1の領域のテーパ角度は、第2の領域のものより小さくてよい。
【0482】
第1の領域および第2の領域が交差する中心領域は、基部端部と振動板の末端との間の長手方向の長さのおおよそ15~50%のところに配置されてよい。中心領域は、振動板の基部端部と末端との間の長手方向の長さのおおよそ20%のところに配置されてもよい。
【0483】
この実施形態では、中心領域と基部端部との間で、振動板の冠状面に対する振動板の放射面の角度の絶対値は、中心領域と末端との間の放射面の角度の絶対値より小さい。
【0484】
第1の実施形態と同様に、この実施形態での振動板の各主面の輪郭は、振動板の長さに沿って、および/または振動板の矢状方向の断面に沿って実質的に凸状である。
【0485】
振動板B101は、振動板本体B207に剛性に結合された振動板基部構造体B213a、B213bを備える。基部構造体B213a、B213bは、振動板B101の主面B212a、B212bにある垂直応力補強材に剛性に結合された一対の実質的に平坦なプレートB213aおよびB213bを備えてよい。各プレートは、十分に直線である、および/または十分に支持されている、および/または曲げ変形が最小である厚さである。各プレートB213a、B213bは、少なくともおおよそ8GPa、または少なくともおおよそ20GPaのヤング率を有する剛性の材料から形成される。振動板基部構造体は、剛性シャフトとして構造上作用してもよい。
【0486】
いくつかの実施形態において、振動板基部構造体は、少なくとも適度に高いヤング率を有する、好ましくはおおよそ8GPaを超える、および最も好ましくはおおよそ20GPaを超えるヤング率を有する構成要素のみを介して、振動板本体B207に剛性に結合されてよい。接着剤を使用して、構成要素を一緒に結合してもよい。
【0487】
振動板基部構造体は、回転軸B103のところに、または回転軸B103に近接して配置されてよい。振動板基部構造体B213a、B213bは、振動板B101の質量の大半を構成してよい。この実施形態では、振動板基部構造体B213a、B213bは、振動板本体B207を備えてよい、または振動板本体B207を振動板サスペンションに剛性に接続してもよい。振動板B101は、振動板基部構造体B213a、B213bを介して振動板サスペンションに直接、剛性に接続される。
【0488】
振動板基部構造体は、変換機構の振動板側変換構成要素B106を備える。この実施形態では、振動板基部構造体B213a、B213bは、振動板本体B207を変換機構の振動板側変換構成要素B106に剛性に接続する。
【0489】
この実施形態の振動板は、本明細書に記載される任意の他の振動板と置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の振動板修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0490】
変換機構
この実施形態では、電磁気機構は、トランスデューサ基部構造体B102の一部である磁石構造と、振動板基部構造体B213a、B213bの周りに剛性に結合する導電コイルB106とを備える。磁石構造は、トランスデューサ基部構造体に剛性に結合される。図7Jに示されるように、磁石構造は、永久磁石B205、内側ポールピースB113および外側ポールピースB112a、B112bを備える。内側ポールピースB113は、永久磁石B205の間に結合され、外側ポールピースB112a、B112bは、永久磁石B205の外側に結合される。この方法では、少なくとも一対の対向する磁極が、磁石の長さに沿って実質的に連続して延びている。この実施形態では永久磁石の各側に2つの対の対向する磁極がある。いくつかの実施形態において、磁石は、単一の対の磁極のみで構成される場合もある。磁極は、回転軸B103のいずれかの側に配置される。内側ポールピースB113と各外側ポールピースB112a、B112bとの間に磁束が生成される。導電コイルB106は、振動板本体B207の縁部に当たって位置しており、元の場所で、内側ポールピースB113と第1の外側ポールピースB112aとの間の磁束の中に位置する第1の長辺B106aと、内側ポールピースB113と第2の外側ポールピースB112bとの間の磁束の中に位置する第2の長辺B106bとを有するように構成されている。コイル補強材B214が設けられてもよい。サスペンションピンB108a、bは、導電コイルB106のいずれかの短辺から横方向に延びている。
【0491】
この実施形態では、コイルB106は、振動板側変換構成要素であり、第1の実施形態と同様であり、この構成要素は好ましくは、回転軸B103に沿って、または実質的に回転軸B103に近接して延びてよい。例えばコイルB106は、回転軸に沿って振動板と重なってもよい。コイルB106はまた、回転軸B103に実質的に平行に延びる。コイルはまた、振動板構造体(コイルB106と、振動板B101を含めた)の質量中心B204に沿って振動板と重なる。
【0492】
オーディオトランスデューサB100は、第1の実施形態に関連して記載したものと同様のデカップリングマウンティングシステムを介して、スピーカA300のものと同様のスピーカエンクロージャの中に収容されてよい。さらに、トランスデューサB100の振動板サスペンションシステムは、トランスデューサA100において利用されてもよい、また逆もまた同様である。
【0493】
この実施形態の変換機構は、本明細書に記載される任意の他の変換機構と置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の変換機構の修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0494】
3. 第3のオーディオトランスデューサの実施形態
図12A図12Pを参照すると、コンプライアント振動板サスペンションを介して、実質的に剛性の基部構造体D102にマウントされた実質的に剛性の振動板構造体D200を備える第3のオーディオトランスデューサの実施形態D100が示されている。振動板サスペンションは、基部構造体D102に対して振動板構造体D200を回転可能にマウントすることで、振動板構造体D200が、動作中、回転軸D103の周りで回転可能に振動するように構成されている。
【0495】
この実施形態では、振動板サスペンションは、回転軸D103が振動板構造体D200のノード軸D104と実質的に同軸であるように構成されている。ノード軸は、予め決められてよい、または例えば、第1の実施形態に関連して記載した方法に従ってトランスデューサD100の組立中に決められてもよい。この例では、ノード軸および回転軸D103は、振動板構造体D200の質量中心軸と実質的に同軸である。いくつかの実施形態において、振動板サスペンションは、回転軸D103が構造体D200の少なくとも1つの振動板の冠状面に実質的に直交しており、例えば第1の実施形態に関連して記載したような振動板構造体D200のノード軸を含む面内にあり得るように構成されてもよい。この実施形態では、トランスデューサD100は、内側フォーマD111および外側フォーマD112aおよびD112bによって支持されるコイルD109を備えるコイル組立体と、内側磁石D110、外側磁石、およびポールピースD221~D224を含む磁石組立体とを備える電磁気変換機構を備える。コイル組立体は、振動板構造体D200の一部に剛性に結合され、それを形成し、磁石組立体は、トランスデューサ基部構造体D102の一部に結合され、それを形成する。いくつかの実施形態において、磁石組立体は、振動板構造体D200の一部に結合され、それを形成してもよく、コイル組立体は、トランスデューサ基部構造体D102の一部に結合され、それを形成してもよい。いくつかの実施形態において、変換機構は、圧電機構、静電気機構、または電気当分野で既知の他の好適な機構を有してよい。
【0496】
振動板構造体
図12L図12Pを参照すると、本実施形態のオーディオトランスデューサD100は、複数の振動板構築物を備える。振動板構造体D200は、共通の振動板基部構造体D203から延びる、第1の振動板D201と、第2の振動板D202とを備える。第1の振動板D201および第2の振動板D202は、共通の回転軸D103の周りに半径方向に延び、互いに対して角度付けされている。この実施形態では、第1の振動板D201および第2の振動板D202は、それらが、おおよそ180度離れるように、対向する方向に延びている。振動板D201およびD202は、回転軸D103の周りに均一に離間される。いくつかの実施形態において、振動板構造体D200は、回転軸D103の周りに均一に離間され得る、またはされない場合もある、変動する角度で半径方向に延びる単一の振動板または2つ以上の振動板を備えてもよい。
【0497】
各振動板は、例えば第1の実施形態または第2の実施形態に関連して本明細書に記載した振動板の実施形態または変形形態のいずれかに従って、特定の構築物を備えてよい。例示される例では、各振動板D201、D202は、ポリスチレン発泡材料など、実質的に剛性の材料から形成された振動板本体D207、D208を有する実質的に剛性の構築物を備える。振動板本体D207、D208は、例えば第1の実施形態に関連してこれより前に記載したように実質的に厚みがあり、変動する厚さを有する。この例では、各本体D207、D208は、振動板基部構造体D203に隣接する基部端部から、振動板基部D203から遠位の末端D211、D212に向かって縮小するテーパ状になる厚さを有する。テーパ角度は、各振動板本体D207、D208の長さに沿って実質的に均一である。いくつかの実施形態において、厚さプロファイルは、振動板D201、D202の長さに沿って実質的に均一であってよい、または代替として、各振動板D201、D202は、例えば第1の実施形態または第2の実施形態に関連して記載したもののいずれかと同様に、変動する厚さプロファイルを有してもよい。
【0498】
各振動板D201、D202はさらに、動作中、振動板本体D207、D208が受ける引っ張り圧縮力に抵抗するために、振動板D201、D202の各主放射面D201a/b、D202a/bに結合された垂直応力補強材D204、D205を備える。各振動板D201、D202のための垂直応力補強材D204、D205は、実質的に剛性の材料から形成されてよく、第1の実施形態および第2の実施形態に関連して記載したものと同様の変動する質量プロファイルを有してよい。この例では、各垂直応力補強材D204、D205は、複数のストラットを備える。ストラットは、振動板基部D203から遠位であり、末端D211、D212の近位である領域内の質量を減少させる。例えば、各ストラットの厚さおよび/または幅は、振動板基部D203から遠位の領域内の厚さを縮小させてよい。追加の強化プレートD205、D206が、基部端部D203で、各振動板D201、D202の主放射面D201a/b、D202a/bの上に設けられてもよい。
【0499】
いくつかの実施形態において、振動板構造体D200はさらに、各振動板本体D207、D208の中に埋め込まれた内側応力補強材を備えてもよい。内側応力補強材は、例えば第1の実施形態に関連して記載したものと同様であってよい。
【0500】
振動板構造体D200は、振動板D201とD202との間に配置され、回転軸D103の周りに、この軸に沿って延びる振動板基部構造体D203を備える。振動板側変換構成要素D109が、振動板基部構造体D203に剛性に結合される。この実施形態では、振動板側変換構成要素は、コイルD109である。いくつかの実施形態において、それは、磁石D110または磁石組立体であってもよい。コイルD109は、内側コイルフォーマD111に剛性に結合され、このフォーマの周りに延びている。内側コイルフォーマD111は、図12Eに示されるように、その中に変換機構の内側磁石D110を収容するために実質的に中空である。フォーマD111は、アルミニウムから形成されてよい、または弱強磁性の他の好適な材料から形成されてもよい。コイルD109およびフォーマD111は、動作中、変換機構から、または変換機構に実質的に純粋なトルクを提供する、または移すために、振動板構造体D200の回転軸D103の周りに位置している。
【0501】
この実施形態において、振動板基部構造体D203はさらに、第1の振動板D201および第2の振動板D202に結合された第1の外側フォーマ構成要素D112aと、第1の振動板D201および第2の振動板D202に結合された第2の外側フォーマ構成要素D112bとを備える。第1の外側フォーマ構成要素D112aは、中心のアーチ形プレートD113aと、アーチ形プレートD113aのいずれかの側から延びる一対の実質的に平坦なプレートD205aおよびD206aとを備える。アーチ形プレートD113aは、コイルD109の一方の長辺D109aの上に剛性に結合する。平坦なプレートD205aおよびD206aは、それぞれの外側補強材D203およびD204を介して、第1の振動板D201および第2の振動板D202の第1の主面D201a、D202aに剛性に結合する。この方法において、プレートD205aおよびD206aは、外側の垂直応力補強材の一部を形成し、各振動板D201、D202の基部を強化するために、基部端部D203からそれぞれの第1の主面に沿って部分的に延びてよい。第2の外側フォーマ構成要素D112bは、中心のアーチ形プレートD113bと、アーチ形プレートD113bのいずれかの側から延びる一対の実質的に平坦なプレートD205bおよびD206bとを備える。アーチ形プレートD113bは、反対側D109aの、コイルD109の一方の長辺D109bの上に剛性に結合する。平坦なプレートD205bおよびD206bは、それぞれの外側補強材D203およびD204を介して、第1の振動板D201および第2の振動板D202の第2の主面D201b、D202bに剛性に結合する。この方法において、プレートD205bおよびD206bは、各振動板D201、D202の基部を強化するために、外側の垂直応力補強材の一部を形成し、基部端部からそれぞれの第2の主面D201b、D202bに沿って部分的に延びてよい。外側フォーマD112aおよびD112bは、振動板D201およびD202を強化し、それらを剛性に接続するために、アルミニウムまたは他の金属材料などの実質的に剛性の材料から形成される。
【0502】
この実施形態では、第1の複数のアーチ形補強材D114aは、コイルD109の片側でコイルD109の長さに沿って分散され、第2の複数のアーチ形補強材D114bは、コイルD109の反対側でコイルD109の長さに沿って分散される。補強材は、フォーマD110の長さに沿って内側フォーマD111の周りに剛性に結合される。第1の複数の補強材D114aは、コイルD109の第1の長辺D109aとコイルD109の第2の長辺D109bとの間に剛性に結合する。第2の複数の補強材D114bが、コイルD109の第1の長辺D109aとコイルD109の第2の長辺D109bとの間に剛性に結合する。振動板201は、基部端部D203で、対応する凹表面D201cを介して補強材D114aの外側に剛性に結合し、振動板D202は、基部端部D203で、対応する凹表面D202cを介して補強材D114bの外側に剛性に結合する。補強材D114aおよびD114bは、振動板D201、D202とコイルD109との間の接続を硬くするように構成されており、好ましくは、炭素繊維などの実質的に剛性の材料から形成される。
【0503】
第1の実施形態に関連して記載したように、および図12Dに示されるように、各振動板D201、D202の末端D211、D212は、振動板D201、D202の端部D211、D212に直接隣接する周辺構造体D105の内部D105aとの物理的な接続を部分的に持たない、または完全に持たない場合もある。エアギャップなどの流体ギャップが、周辺構造体D105の内部と各振動板D201、D202の末端D211、D212を隔ててよい。
【0504】
本実施形態の振動板構造体は、本明細書に記載される任意の他の振動板構造体と置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の振動板構造体の修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0505】
トランスデューサ基部構造体
図12A図12Eおよび図12Kを参照すると、この実施形態では、トランスデューサ基部構造体D102は、動作中、比較的静止したままであり、その中に振動板構造体D200を収容するための周辺構造体D105を形成するように構成されている。トランスデューサ基部構造体D102は、振動板D201およびD202を収容し、動作中、周辺構造体D105内での振動板D201およびD202の回転運動を可能にするように成形された複数の内側空洞D108およびD109を備える。各空洞D108、D109は、動作中に振動板周辺部の包絡面を補完するように成形されサイズが決められており、それ故、それぞれの振動板D201、D202の末端211、212に対向する区域に沿って実質的にアーチ形の輪郭を有する。図12Iに示されるように、各空洞D108、D109は、主面D201a/bとD202a/bとの間に延びる各振動板D201、D202の周辺縁部(末端211、212を含めた)との、閉鎖しているが、物理的に隔てられた嵌合を維持するようにサイズが決められてよい。
【0506】
トランスデューサ基部構造体D102は、トランスデューサを組み立てるために一緒に剛性に結合され得る一対の周辺部D118およびD119を備える。組み合わせた状態で、部分D118およびD119は、一対の空洞D108およびD109を形成する、または振動板D201およびD202を収容する。各部分D118およびD119は、主本体D118a、D119aと、主本体D118a、D119aの周りに延びる環状フランジD118b、D119bとを備える。部分D118およびD119は、環状フランジD118b、D119bで結合されてよい。図12Aに示されるように、各主本体D118a、D119aは、動作中、それぞれの振動板D201、D202の放射状の主面D201a/b、D202a/bへの、またはこれらの主面D201a/b、D202a/bからの音圧の伝播を可能にするために、回転軸D103の向かい合う側に一対の開口部または音声ポートD118c/d、D119c/dを備える。
【0507】
トランスデューサ基部構造体D102は、フランジD118b、D119bを介してハウジングまたはバッフルに結合されてよい。基部構造体D102は、バッフルまたはハウジングに剛性に結合されてよい、あるいは、第1の実施形態およびその可能性のある変形形態に関連して記載したようなデカップリングマウンティングシステムなどのサスペンションシステムを介して結合されてもよい。
【0508】
内側磁石D110と、外側ポールピースD221~D224とを含む磁石組立体の構成要素は、以下にさらに詳細に記載されるように、トランスデューサ基部構造体部分D118、D119の内部に剛性に結合される。
【0509】
本実施形態のトランスデューサ基部構造体は、本明細書に記載される任意の他のトランスデューサ基部構造体と置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他のトランスデューサ基部構造体の修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0510】
振動板サスペンション
図12F図12Jおよび図12Pを参照すると、振動板構造体D200は、振動板サスペンションを介してトランスデューサ基部構造体D102に結合される。振動板サスペンションは、ポリウレタンエラストマーなどの実質的に柔軟な材料から形成された一対の可撓性マウントD230およびD240を備える。いくつかの実施形態において、サスペンションは、単一のまたは3つを超える可撓性マウントを備える場合もある。各可撓性マウントD230およびD240は、本明細書に記載されるマウントのいずれか1つの形態を採ってよい。この例では、各マウントD230およびD240は、図12Jに示されるように、中心基部部分D231、D241と、中心基部部分D231、D241から半径方向に延びる複数の離間されたスポークD232、D242とを有する本体を備える。環状の末端壁D233、D243が、中心基部の周りに延びており、スポーク232、242の末端を接続してよい。1つまたは複数の空洞234、244が、スポーク232、242の間に延びている。空洞は、空気などの流体で満たされてよい、またはそれらはマウントの主本体に対して実質的に低い密度の材料を含んでもよい。
【0511】
各マウントD230、D240の中心基部部分D231、D241は、振動板基部構造体D203から横方向に延びる対応するピンD116aおよびD116bを介して振動板構造体D200に剛性に結合するように構成されている。ピンD116aおよびD116bは、振動板構造体D200のいずれかの側から延びており、回転軸D103と実質的に同軸である。各ピンD116aおよびD116bは、コイルD109のそれぞれの短辺に結合され、そこから横方向に延びてよい。各マウントD230、D240の外側環状壁D233、D234は、マウンティングブロックD117a、D117bを介してトランスデューサ基部構造体D102の内側に剛性に結合される。各マウントD230、D240は、マウンティングブロックD117a、D117bを介してトランスデューサ基部構造体D102のそれぞれの部分D118、D119に結合してよい。各マウンティングブロックD117a、D117bは、図12Gに示されるように対応するヒンジマウントD230、D240をきっちりと収容するための凹部または開口D117cを備える。
【0512】
本実施形態の振動板サスペンションは、本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンションと置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンションの修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0513】
変換機構
図12Eおよび図12Fを参照すると、変換機構は、内側磁石D110と、ポールピースD223およびD224を介して結合された一対の外側磁石D221およびD222とを含む磁石組立体を備える電磁気機構である。内側磁石D110と、外側磁石D221およびD222は、永久磁石であってよい、または直流電磁石であってもよい。この例では、永久磁石が使用される。内側永久磁石D110は、内側フォーマD111の中空内部の中に配置され、回転軸D103の方向で振動板構造体D200と重なる。この実施形態では、内側磁石D110は、振動板側に凸状の外側表面を備える。磁石D110もまた、対向する凸状の外側表面を備える。
【0514】
内側磁石D110は、磁石D110の長さに沿って延びる対向する磁極D110aおよびD110bを備える。磁極D110aおよびD110bは、磁石D110を通る主要な磁場の方向D110cが、回転軸D103に実質的に直交する軸に沿うように配向される。磁石D110の主要な内部磁場D110cの方向はまた、各振動板D201、D202の少なくとも一方またはその各々の冠状面、あるいは振動板構造体D200の冠状面に対して実質的に直交してよい。あるいは、またはそれに加えて、方向D110cは、各振動板D201、D202の少なくとも一方またはその各々の矢状方向、または振動板構造体D200の矢状方向に実質的に平行であってもよい。内側磁石D110は、トランスデューサ基部構造体の内部に剛性に結合する。この例では、磁石110の対向する端部は、マウンティングブロックD117aおよびD117bを介してトランスデューサ基部構造体D102の内部に結合する。例えば支持ロッドまたはピンD115は、磁石のいずれかの端部から長手方向に延び、対応するマウンティングブロックD117a、D117bの対応する開口に剛性に結合し得る。
【0515】
外側磁石D221およびD222は、内側磁石D110のいずれかの端部でコイルD109の外側に配置される。磁石は、長い端部D109aとD109bとの間で、コイルD109の短い端部に隣接して位置する。外側磁石D221およびD222は、各磁石における主要な磁場の方向D221a、D222aが、内側磁石D110の方向に対向するように配向された磁極を有する。外側磁石D221およびD222は、対向するポールピースD223およびD224を介して互いに剛性に結合されてよい。ポールピースD223およびD224は、強磁性材料から形成され、内側磁石D110および回転軸D103に対して実質的に平行な方向に延びている。外側磁石D221およびD222ならびにポールピースD223およびD224は、周辺部D118およびD119の内側表面/形成物を介してトランスデューサ基部構造体D102の内部に剛性に結合する。
【0516】
図12Eに示されるように、エアギャップD225などの流体ギャップが、各外側ポールピースD223、D224と、コイル組立体の対応する外側フォーマD112a、D112bとの間に存在する。同様に、エアギャップなどの流体ギャップが、内側磁石D110と内側フォーマD111との間に存在する。この方法において、コイルD109は、動作中、磁石D110ならびにポールピースD223およびD224に対して回転することが許可される。図12Eおよび図12Fに示されるように、内側磁石D110は、矢印「S」から「N」の方向に磁性が与えられ、磁束は、この方向でコイルの長辺D109aを通って第1のポールピースD223へと進む。ポールピースD223は、磁束を、両横方向に、2つの外側磁石D221aおよびD222aの各々に向かって誘導する。各外側磁石は、内側磁石D110と反対方向に磁性が与えられ、そのため、磁束は、ポールピースD223から、図12Fでの矢印「S」から「N」の方向に側部磁石を通り、第2のポールピースD224へと進む。このポールピースは、磁束を両方向で内側に、2つの外側磁石D221aおよびD222aから離れ、その中心に向かうように誘導する。磁束が、第2のポールピースD224から、コイルの長辺D109bを通過し、内側磁石D110に入るとき、磁束回路が完成される。オーディオ信号は、交流電流としてコイル内に誘導される。コイルの2つの長辺D109aおよびD109bが磁束の中を通るとき、その回転軸D103の周りで振動板を往復するように回転させる対応するトルクが形成される。
【0517】
4. 第4の実施形態のトランスデューサ
図13A図13Pを参照すると、振動板サスペンションを介して実質的に剛性の基部構造体E102にマウントされた実質的に剛性の振動板構造体E200を備える第4のオーディオトランスデューサの実施形態E100が示されている。振動板サスペンションは、基部構造体E102に対して振動板構造体E200を回転可能にマウントすることで、振動板構造体E200は、動作中、回転軸E103の周りを回転可能に振動するように構成されている。
【0518】
この実施形態では、振動板サスペンションは、回転軸E103が振動板構造体E200のノード軸E104と実質的に同軸であるように構成されている。ノード軸は、予め決められてよい、または例えば第1の実施形態に関連して記載した方法に従って、トランスデューサE100の組立中に決められてもよい。この例では、ノード軸および回転軸E103は、振動板構造体E200の質量中心軸と実質的に同軸である。いくつかの実施形態において、振動板サスペンションは、回転軸E103が、構造体E200の少なくとも1つの振動板の冠状面に実質的に直交しており、かつ例えば第1の実施形態に関連して記載したような振動板構造体E200のノード軸を含む面内にあり得るように構成されてよい。
【0519】
この実施形態では、トランスデューサE100は、一対のコイルE109およびE110を備えるコイル構造体と、磁石E111とを備える電磁気変換機構を備える。コイル構造体は、トランスデューサ基部構造体E102の一部に結合され、それを形成し、磁石は、振動板構造体E200の一部に結合され、それを形成する。いくつかの実施形態において、磁石は、トランスデューサ基部構造体E102に結合されてもよく、コイル構造体が振動板構造体E200に結合されてもよい。いくつかの実施形態において、変換機構は、圧電機構、静電気機構、または電気当分野で既知の他の好適な機構を有してよい
【0520】
振動板構造体
図13L図13Pを参照すると、この実施形態のオーディオトランスデューサE100は、複数の振動板構築物を備える。振動板構造体E200は、共通の振動板基部構造体E203から延びる第1の振動板E201と、第2の振動板E202とを備える。第1の振動板E201および第2の振動板E202は、共通の回転軸E103の周りに半径方向に延び、互いに対して角度付けされている。この実施形態では、第1の振動板E201および第2の振動板E202は、それらが、おおよそ180度離れるように、対向する方向に延びている。振動板E201およびE202は、回転軸E103の周りにおおよそ均一に離間される。いくつかの実施形態において、振動板構造体E200は、回転軸E103の周りに均一に離間され得る、またはされない場合もある、変動する角度で半径方向に延びる単一の振動板または2つ以上の振動板を備えてもよい。
【0521】
各振動板は、例えば第1の実施形態または第2の実施形態に関連して本明細書に記載した振動板の実施形態または変形形態のいずれかに従って特定の構築物を備えてよい。例示される例では、各振動板E201、E202は、ポリスチレン発泡材料など、実質的に剛性の材料から形成された振動板本体E207、E208を有する実質的に剛性の構築物を備える。振動板本体E207、E208は、例えば第1の実施形態に関連してこれより前に記載したように実質的に厚みがあり、変動する厚さを有する。この例では、各本体E207、E208は、振動板基部構造体E203に隣接する基部端部から、振動板基部E203から遠位の末端E211、E212に向かって縮小するテーパ状になる厚さを有する。テーパ角度は、各振動板本体E207、E208の長さに沿って実質的に均一である。いくつかの実施形態において、厚さプロファイルは、振動板E201、E202の長さに沿って実質的に均一であってよい、または代替として、各振動板E201、E202は、例えば第1の実施形態または第2の実施形態に関連して記載したもののいずれかと同様に、変動する厚さプロファイルを有してもよい。
【0522】
各振動板E201、E202はさらに、動作中、振動板本体E207、E208が受ける引っ張り圧縮力に抵抗するために、振動板E201、E202の各主放射面E201a/b、E202a/bに結合された垂直応力補強材E204、E205を備える。各振動板E201、E202のための垂直応力補強材E204、E205は、実質的に剛性の材料から形成されてよく、第1の実施形態および第2の実施形態に関連して記載したものと同様の変動する質量プロファイルを有してよい。この例では、垂直応力補強材E204、E205は、各主面の長さおよび幅に沿って延びる複数のストラットを備える。ストラットは、振動板基部E203から遠位であり、末端E211、E212から近位である領域内の質量を減少させる。例えば、各ストラットの厚さおよび/または幅は、振動板基部E203から遠位の領域内の厚さを縮小させてよい。強化プレートE209a/bおよびE210a/bが、基部で追加の支持を提供するために、基部端部E203で各振動板E201、E202の主放射面E201a/b、E202a/bの上に設けられてもよい。強化プレートE209a/bおよびE210a/bはまた、それぞれの振動板E201、E202を磁石E111に剛性に結合する。
【0523】
いくつかの実施形態において、振動板構造体E200はさらに、各振動板本体E207、E208の中に埋め込まれた内側応力補強材を備える場合がある。内側応力補強材は、例えば第1の実施形態に関連して記載したものと同様であってよい。
【0524】
振動板構造体E200は、振動板E201とE202との間に配置され、回転軸E103の周りに、この軸に沿って延びる振動板基部構造体E203を備える。この実施形態では、振動板基部構造体E203は主として、振動板側変換構成要素E111を備える。この実施形態では、振動板側変換構成要素は、磁石E111である。いくつかの実施形態において、それはコイルE109、E110であってもよい。振動板E201およびE202は、磁石E111の長さに沿って磁石E111のいずれかの側に剛性に結合される。磁石の第1の長手方向の面E112が、振動板E201の相補的な端面E211aに直接結合する。第2の長手方向の面E113が振動板E202の相補的な端面E212aに結合する。第1の長手方向の面E112と第2の長手方向の面E113が、実質的に平坦であることで、振動板面E211aおよびE212aの平坦な面を補完する。磁石E111は、振動板E201上の外側強化プレートE209a/bと振動板E202上の外側強化プレートE210a/bを結合するために、磁石の異なる側に沿って長手方向に延びる複数のへこんだ縁部または出っ張りE114a~dを備えてよい。
【0525】
一対のピンE116a、E116bが、その上に振動板サスペンションをマウントするために磁石E111のいずれかの端部から延びている。この実施形態では、振動板サスペンションは、一対の軸受を備える。各軸受は、互いに対して可動である内側および外側軸受構成要素を有する。各軸受230、240の内側軸受構成要素E231、E241は、磁石E111のいずれかの端部でそれぞれのピンE116a、E116bに剛性に結合される。
【0526】
第1の実施形態に関連して記載したように、および図13Dに示されるように、各振動板E201、E202の末端E211b、E212bは、振動板E201、E202の端部E211、E212に直接隣接する周辺構造体E105の内部E105aとの物理的な接続を部分的に持たない、または完全に持たない場合がある。エアギャップなどの流体ギャップが、周辺構造体E105の内部と各振動板E201、E202の末端E211、E212を隔ててよい。
【0527】
第1の実施形態または第2の実施形態の振動板構築物に関連して記載した変形形態は、この実施形態の各振動板にも適用する。
【0528】
トランスデューサ基部構造体
図13A図13Eおよび図13Kを参照すると、この実施形態では、トランスデューサ基部構造体E102は、動作中、比較的静止したままであり、その中に振動板構造体E200を収容するための周辺構造体E105を形成するように構成されている。トランスデューサ基部構造体E102は、振動板E201およびE202を収容し、動作中、周辺構造体E105内での振動板E201およびE202の回転運動を可能にするように成形された複数の内側空洞E108およびE109を備える。各空洞E108、E109は、動作中に振動板周辺部の包絡面を補完するように成形されサイズが決められており、それ故、それぞれの振動板E201、E202の末端E211b、E212bに対向する区域に沿って実質的にアーチ形の輪郭を有する。図13Iに示されるように、各空洞E108、E109は、動作中の空気の漏れを最小限にするために、主面E201a/bとE202a/bとの間に延びる各振動板E201、E202の周辺縁部(末端E211b、E212bを含めた)との、閉鎖しているが、物理的に隔てられた嵌合を維持するようにサイズが決められてよい。
【0529】
トランスデューサ基部構造体E102は、トランスデューサを組み立てるために一緒に剛性に結合され得る一対の周辺部E118およびE119を備える。組み合わせた状態で、部分E118およびE119は、振動板E201およびE202を収容するために一対の空洞E108およびE109を形成する。各部分E118およびE119は、主本体E118a、E119aと、主本体E118a、E119aの周りに延びる環状フランジE118b、E119bとを備える。部分E118およびE119は、環状フランジE118b、E119bで結合されてよい。図13Aに示されるように、各主本体E118a、E119aは、動作中、それぞれの振動板E201、E202の放射状の主面E201a/b、E202a/bへの、またはこれらの主面からの音圧の伝播を可能にするために、回転軸E103の向かい合う側に一対の開口部または音声ポートE118c/d、E119c/dを備える。各部分E118およびE119は、硬いプラスチック材料または金属材料などの実質的に剛性の材料から形成されてよい。
【0530】
図13Bに示されるように、動作中、磁石E111と協働するために、少なくとも1つのコイルがトランスデューサ基部構造体E102の内部に結合される。この実施形態では、一対のコイルE109およびE110が、トランスデューサ基部構造体E102の内部に結合される。いくつかの実施形態において、単一または3つ以上のコイルが使用されてもよい。各コイルE109、E110は、磁石E111の周りに延びている。コイルE109、E110は、この実施形態では互いに直接隣接しているが、代替の実施形態では隔てられている場合もある。各コイルE109、E110は好ましくは実質的に剛性であり、基部構造体E102の内部に剛性に結合される。各コイルの相対的に長い辺は、磁石E111の回転軸E103および/または長手方向軸に実質的に平行な軸に沿って延びている。
【0531】
いくつかの実施形態において、トランスデューサ基部構造体E102あるいは他の周辺構造体E105またはハウジングは、各振動板の末端E211b、E212bに対向する強化された壁領域を備えてよい。強化された領域は、実質的により厚い壁、1つまたは複数の強化リブ、および/または基部または周辺構造体の他の領域に対してより強固な材料を有してよい。この実施形態では、例えば各振動板E201、E202の末端E211b、E212bに対向する周辺構造体E105の領域E106、E107は、それぞれの振動板E201、E202に対向する領域を強化するために、領域E106、E107から横方向に延びる強化リブE106a、E107aを備える。複数のリブがいくつかの実施形態では使用されてもよい。リブE106a、E107aは好ましくは、周辺構造体E105の外側に、対応する振動板E201およびE202から離れるように延びてよい。この特徴部は、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つの振動板を取り囲む構造体に組み込まれてよい。
【0532】
振動板サスペンション
図13F図13Jおよび図13Pを参照すると、振動板構造体E200は、振動板サスペンションを介してトランスデューサ基部構造体E102に結合される。振動板サスペンションは、各ヒンジ230、240が、動作中、振動板を回転させるために、互いに物理的に結合され、互いに対して可動である一対の接触表面を備える構築物を有する。この実施形態では、サスペンションは、振動板構造体E200のいずれかの側に配置された一対の軸受E230およびE240を備える。各軸受E230およびE240は、内側環状軸受部材E231、E241と、外側環状軸受部材E233、E243と、内側軸受部材と外側軸受部材との間に回転可能に保持される複数の玉E232、E242とを備える。いくつかの実施形態において、サスペンションは、単一の軸受を備える場合、または3つを超える軸受を備える場合もある。
【0533】
内側軸受部材または外側軸受部材の一方は、対応する軸受に沿って各玉の相対位置を制限するための1つまたは複数のストッパを備えてよい。この例では、各内側軸受部材E231、E241は、内側軸受に対する各玉の位置を制限し、動作中の正確な相対位置を維持するように各玉を促すために、各玉E232、E242のいずれかの側に配置された複数のストッパE234、E244を備える。ストッパE234、E244は、各対応する内側軸受E231、E241の長さに沿って隆起した先端として一体式に形成されてよい。ストッパE234、E244はあるいは、いくつかの実施形態では、玉の相対位置を制限するために各外側軸受の内側表面上に形成される場合もある。この実施形態では、各内側軸受部材E231、E241は、動作中、正確な相対位置を維持するように各玉E232、E242をさらに促すために、隣接する対のストッパE234、E244の間に凸状の外側表面E245を備えてもよい。いくつかの実施形態において、各外側軸受E233、E243の内側表面は、動作中、正確な相対位置を維持するように玉を促す形成物を備えてもよい。
【0534】
玉E232、E242は、エラストマー材料などの実質的に柔軟な材料から形成される。玉は、例えばおおよそ70のショアD硬度と、おおよそ250Mpaのヤング率を備えた鋳造ポリウレタンエラストマーから形成されてよい。内側軸受部材および外側軸受部材もまた、鋳造ポリウレタンエラストマーまたは同様の材料から形成されてよい。この実施形態では、各軸受E230、E240について4つの玉E232、E242が使用される。いくつかの実施形態において、振動板サスペンションは、少なくとも1つのヒンジ継手を備えてよく、各ヒンジ継手は、玉軸受を有し、この場合、玉軸受は、7つ未満の玉を備える。各ヒンジ継手は、玉軸受を備えてよく、この場合玉軸受は、6つ未満の玉を備える。各ヒンジ継手は、玉軸受を備えてよく、この場合玉軸受は、5つ未満の玉を備える。
【0535】
各軸受E230、E240の内側軸受部材E231、E241は、振動板基部構造体E203から横方向に延びる対応するピンE116aおよびE116bを介して振動板構造体E200に剛性に結合するように構成されている。ピンE116aおよびE116bは、振動板構造体E203のいずれかの側から延びており、回転軸E103と実質的に同軸である。各軸受E230、E240の外側軸受部材E233、E243は、トランスデューサ基部構造体E102の内側に剛性に結合される。
【0536】
いくつかの実施形態において、各振動板E201、E202を、トランスデューサ基部構造体に対する中立の回転位置に向けて付勢する振動板センタリング機構がトランスデューサに組み込まれてよい。センタリング機構は、例えば、ばねまたはエラストマーなどの弾性部材を含んでよい。これは、振動板の基本的な振動数を規定するように貢献し、低音応答を制御するのを助けることができる。これはまた、通常の動作中、玉がストッパに当たるのを防ぐのを助ける場合もある。
【0537】
本実施形態の振動板サスペンションは、本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンションと置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の振動板サスペンションの修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0538】
変換機構
図13C図13Eを参照すると、変換機構は、磁石E111と、一対のコイルE109およびE110とを備える電磁気機構である。磁石E111は、永久電磁石または直流電磁石であってよい。この例では、永久磁石が使用される。永久磁石E111は、各振動板E201、E202の基部端部に剛性に結合し、回転軸E103の方向に、振動板構造体E200と重なる。磁石E111は、磁石E111の長さに沿って延びる対向する磁極E111aおよびE111bを備える。磁極E111aおよびE111bは、磁石本体を通る主要な磁場の方向E111cが、回転軸E103に実質的に直交する軸に沿うように配向される。磁石E110の主要な磁場の方向E111cはまた、各振動板E201、E202の少なくとも一方またはその各々の冠状面、あるいは振動板構造体E200の冠状面に対して実質的に直交してもよい。あるいは、またはそれに加えて、方向E111cは、各振動板E201、E202の少なくとも一方またはその各々の矢状方向、または振動板構造体E200の矢状方向に実質的に平行であってもよい。磁石E111は好ましくは、中心の長手方向軸が、軸受によって規定される回転軸E103と実質的に同軸であるように配置され、そのため、動作中、実質的に純粋なトルクが振動板に付与される。
【0539】
一対のコイルE109およびE110は、トランスデューサ基部構造体の内部に結合し、磁石E111の周りに延びている。各コイルE109およびE110は、長手方向であり、一対の対向する長辺と、一対の対向する短辺とを含む。長辺は、それらが、回転軸E103と実質的に平行であるように、磁石の長さに沿って長手方向に延びる。コイルE109の長手方向軸はまた、変換機構の対応する磁石E111の主要な磁場に実質的に直角を成す。コイル軸は、磁石の中心領域で交わってよい。コイル軸は、磁石E111の長手方向軸の中心領域で交わってもよい。
【0540】
各磁極E111a、E111bは、実質的に凸状の外側表面を備えてよく、各コイルE109、E110の対応する対向する外側表面は、相補的な凹表面を備えてよい。
【0541】
磁石E111は、各振動板E201、E202の対応する表面に結合するように構成された1つまたは複数の表面を備える。1つまたは複数の表面は、十分に剛性の接続を達成するために十分な表面積を含む。この実施形態では、この表面は、各振動板E201、E202の主面と同じまたは同様の平面に隣接して、および/またはそのような平面内に延びるように構成された磁石E111の側にある。表面は、振動板の垂直応力補強材に直接結合されてよい。磁石はまた、振動板の最も近位の磁石の領域で直接各振動板に結合されてもよい。最も近位の領域は、変換機構の隣接するコイルおよび/またはポールピースより振動板に近くてよい。例えば磁石E111は、動作中、せん断変形力を主として呈するように構成された振動板本体の表面(振動板の対向する回転軸の端面)に直接結合されてよい。高温接着剤を使用して、振動板に磁石を接着してもよい。磁石接着表面は、メッキされ、硝酸などの酸で処理されたニッケルであってもよい。
【0542】
いくつかの実施形態において、磁石E111および各振動板は、磁石と振動板の一方またはその両方にある対応する開口またはスロットの中に延びるように構成された1つまたは複数の構成要素を介して結合されてよい。
【0543】
この実施形態の変換機構は、本明細書に記載される任意の他の変換機構と置き換えられてもよい、または本明細書に記載される任意の他の変換機構の修正形態または変形形態に従って修正されてもよい。
【0544】
トランスデューサを組み込むデバイス
図14A図14Dを参照すると、トランスデューサ基部構造体E102は、フランジE118b、E119bを介してハウジングE300またはバッフルに結合されてよい。基部構造体E102は、バッフルまたはハウジングに剛性に結合されてよい、あるいはデカップリングマウンティングシステムE400などのサスペンションを介して結合されてもよい。サスペンションE400は好ましくは、トランスデューサ基部構造体E102の外側周辺部の周りに延び、トランスデューサ基部構造体E102の外側周辺部をハウジングE300の内側周辺部と柔軟に結合する。サスペンションE400は好ましくは、例えば0.1MPaヤング率の柔軟な熱可塑性ポリウレタンフォームなどの実質的に可撓性で柔軟な材料で形成される。サスペンションE400は、トランスデューサ基部構造体の周辺部の全長に沿って連続してよい、あるいはそれは周辺部の一部分の周りに延びる場合もある、あるいは周辺部の周りに複数の個別の、但し隔てられたサスペンション部分が存在する場合もある。各サスペンション部材の一方の側または縁部は好ましくは、トランスデューサ基部構造体E102に剛性に結合され、対向する側または縁部は好ましくは、ハウジングまたは他の周辺構造体の内部に剛性に結合される。好ましくはエアシールが形成される。いくつかの実施形態において、トランスデューサ基部構造体E102は、ハウジングE300に剛性に結合されてよい。
【0545】
ハウジングE300は、空気チャネルE301を通って振動板E201、E202から音声ポートE302まで音圧を誘導するように構成されてよい。例えば、図14Cの矢印は、振動板構造体が時計回りに回転するとき、ハウジングを通り、音声ポートE302から出て行く空気流の方向を示す。音声ポートE302はグリルを備えてよい。
【0546】
いくつかの実施形態において、オーディオトランスデューサD100が、ハウジングE300に同様に結合されてもよい。
【0547】
5. 第5の実施形態のオーディオトランスデューサ
図16A図16Cを参照すると、振動板サスペンションを介して実質的に剛性の基部構造体F102にマウントされた実質的に剛性の振動板F200を備える第5のオーディオトランスデューサの実施形態F100が示されている。振動板サスペンションは、振動板構造体F200を基部構造体F102に対して回転可能にマウントすることで、振動板F200は、動作中、回転軸F103の周りで回転可能に振動するように構成されている。
【0548】
振動板F200は、第1の実施形態の振動板A101と同様であり、それ故、簡潔にするために、詳細には説明しない。いくつかの実施形態において、本明細書に記載される他の振動板構築物がトランスデューサF100に組み込まれる場合がある。
【0549】
変換機構は、第1の実施形態の磁石A205と同様に、振動板F200に剛性に結合される磁石F205を備えるが、この実施形態では、磁場の向きが変更されている。詳細には、この実施形態では、対向する磁極の間の磁石F205を通る主要な磁場F205aの方向は、回転軸F103に対して実質的に角度付けされ、かつ好ましくは実質的に回転軸に直交する方向にある。磁場F205aの方向はまた、好ましくは振動板F200の冠状面および/または長手方向軸に実質的に平行である。
【0550】
変換機構はさらに、トランスデューサ基部構造体F102に剛性に結合され、磁石F205の両側の上に長手方向に延びる一対のコイルF109およびF110を備える。この実施形態では、各コイルF109、F110は、磁石F205全体の周りに輪になったり巻き付いたりせず、むしろ磁石F205の対応する磁極の上に、直接隣接して延びている。各コイルF109、F110は、回転軸に実質的に平行である軸に沿って長手方向に延びる。コイルF109およびF110は、電気的に接続されない場合があるが、好ましくは、同じオーディオ信号が各コイルによって受信されるように音源に接続される。場合によっては、コイルは、並列または直列など電気的に接続されてもよい。コイルF109およびF110の相は、回転軸F103の周りで磁石F205に対して正味の回転トルクを形成するように調整されてよい。
【0551】
この実施形態では、振動板サスペンションは、振動板F200の基部端部に沿って結合される可撓性のヒンジマウントF150を備える。単一の可撓性マウントは、磁石の横断方向軸に沿って、すなわち基部端部F201に沿って延びる。いくつかの実施形態において、2つ以上の可撓性マウントが結合され、基部端部F201に沿って分離されてもよい。可撓性マウントF150は振動板本体から遠位である磁石の面に剛性に結合される。
【0552】
可撓性マウントF150は、本体F151の長さに沿って延びる1つまたは複数の溝または凹表面F152a~cを有する長手方向の本体F151を備える。ヒンジマウントは、回転軸F103に平行な方向でマウント本体に沿って延びる少なくとも1つの実質的に凹状の外側表面を備えてよい。各表面152a~cは、横断面(マウントの長手方向軸または回転軸に実質的に直交する)を横切るマウントの断面輪郭にわたって凹状である。単一の凹表面があってよい、またはこの実施形態でのように、互いに対して角度付けされた複数の凹表面があってもよい。各凹表面152a~cは、この実施形態でのように実質的に丸められる、または平滑であってよい、あるいはいくつかの実施形態では、1つまたは複数の凹表面は、互いに対して角度付けされた(すなわち相対的に急勾配の曲線)実質的に平坦な面を備えてもよい。可撓性マウントの片側F153は、磁石の面F252に沿って剛性に結合され、対向する側は、トランスデューサ基部構造体F102の表面または溝F106に剛性に結合される。
【0553】
この実施形態では、一対の対向する凹表面F152aおよびF152bが、振動板の両側に延びており、マウントF150の外側に面するように湾曲されることで、それらは、おおよそ180度離れた方向に向くように配向される。一方の表面は、示されるように、振動板の方に向いてよく、他方の面は、トランスデューサ基部構造体の方に向いてよい。第3の凹表面F152c。表面が回転軸F103に実質的に平行である軸の周りで湾曲するように、各凹表面は、マウントF150の長さに沿って延びる。回転軸F103は、すべての凹表面152a~dの間で中心に延びてよい。いくつかの実施形態において、そのような凹表面のいずれかの1つまたは複数は、マウント本体内に形成されてよく、これはマウントの内部に形成されてよい、または表面がマウントの外側に開放するように形成されてもよい。各表面は、いくつかの実施形態において、任意の方向に向いてもよい。
【0554】
マウントF150は、実施形態1、実施形態2、および実施形態3のヒンジマウントでのように、柔軟なプラスチック材料などの実質的に柔軟な材料から形成されてよい。
【0555】
この実施形態では、第1の実施形態に関連して記載したように、トランスデューサが、このトランスデューサF100の一次モードおよび他の5つのモードの共振振動数を有意に下回る振動数で動作する第1の動作モードでは、基部構造体F102に対する振動板F200の回転軸F103Bの位置は、振動板サスペンションF150によって、ならびに変換機構によって振動板F200に加えられる力によってかなり影響を受ける場合がある。動作の第1のモードは、主に振動板サスペンションコンプライアントによって促進される6つのすべての振動板共振モードに関して、トランスデューサの剛性が制御された領域に近い。このモードでの回転軸F103Bは、振動板サスペンションF150の長手方向軸に沿って中心に延びている。トランスデューサF100が、一次モードおよび他の5つのサスペンションコンプライアントモードの共振振動数を有意に上回る振動数で動作する第2の動作モードでは、トランスデューサ基部構造体F102に対する振動板F200の回転軸F103Aの位置は、振動板ノード軸F104の位置によって主に規定され、振動板サスペンションによってはそれほど大きく規定されない場合がある。振動板ノード軸F104は、変換機構によって振動板F200に加えられる力によって、および振動板F200(磁石F205を含めた)の質量分布/輪郭によって主に規定される。第2の動作モードでは、振動板ノード軸F104は、振動板サスペンションによって比較的に影響を受けない場合がある。この実施形態でのように実質的に純粋なトルク変換機構の場合、ノード軸F104は、振動板構造体(振動板F200および磁石F205を含めた)の質量中心F105と実質的に同軸である。第2の動作モードは、主に振動板サスペンションコンプライアントによって促進される6つのすべての振動板共振モードに関して、トランスデューサの動作の質量が制御された領域に近い。
【0556】
この実施形態は、ツィータなどの中音域、または高い振動数の拡声器として適する場合があり、この場合、それは中-高振動数範囲のみで動作するように構成されている。この方法では、回転軸F103Bは動作中、ノード軸F104および/または質量中心F105と実質的に同軸のままである。
【0557】
6. オーディオトランスデューサ用途
本明細書に記載されるオーディオトランスデューサの実施形態の各々は、所望される機能を実行するサイズに縮尺変更することができる。例えば、本発明のオーディオトランスデューサの実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく、以下のオーディオデバイス、
・ヘッドホン、イヤホン、補聴器、携帯電話、パーソナルデジタルアシスタントなどを含むパーソナルオーディオデバイス、
・パーソナルデスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットなどを含むコンピューティングデバイス、
・コンピュータモニタ、スピーカなどを含むコンピュータインターフェースデバイス、
・床置きスピーカ、テレビジョンスピーカなどを含む家庭用オーディオデバイス、
・カーオーディオシステム、
・マイクロホン
・受動ラジエータおよび
・他の専門のオーディオデバイスのいずれか1つに組み込まれてよい。
【0558】
さらに、オーディオトランスデューサの振動数範囲は、所望される結果を達成するために所与の設計に従って操作することができる。例えば上記の実施形態のいずれか1つのオーディオトランスデューサは、所望される用途に応じて低音域ドライバ、中音域-高音域ドライバ、ツィータまたはフルレンジドライバとして使用される場合がある。
【0559】
いくつかの実施形態において、オーディオデバイスは、振動板または振動板構造体、トランスデューサ基部構造体および変換機構を取り囲むハウジングを備えてよい。ハウジングは、プラスチック材料から作成されてよい。
【0560】
いくつかの実施形態において、オーディオトランスデューサは、200Hzから20kHzの振動数帯で音を変換するように構成された中音域の高音域トランスデューサであってよい。
【0561】
いくつかの実施形態において、オーディオトランスデューサは、おおよそ20Hzからおおよそ200Hzの振動数帯で音を変換するように構成された低音域トランスデューサであってよい。
【0562】
いくつかの実施形態において、オーディオトランスデューサは、100Hz未満、またはおおよそ70Hz未満、または最も好ましくは50Hz未満の基本的な共振振動数を有してよい。
【0563】
トランスデューサを組み込むパーソナルオーディオデバイス
例えばヘッドホン、イヤホン、電話、補聴器および携帯電話を含めたパーソナルオーディオデバイスは、音を直接ユーザの耳の中に変換するために、ユーザの頭に非常に近接して、またはユーザの頭に直接結びつけて通常配置されるようにサイズが決められ、構成されたオーディオトランスデューサを組み込む。そのようなデバイスは、携帯電話の場合などのように、使用中、ユーザの頭または耳のおおよそ10センチメートル以内に位置するように構成されてよい。パーソナルオーディオデバイスは典型的には、コンパクトで可搬式であり、よって、その中に組み込まれるオーディオトランスデューサもまた、例えば、家庭用オーディオシステム、テレビジョン、ならびにデスクトップおよびラップトップコンピュータなどの他の用途における場合よりも、実質的によりコンパクトである。そのようなサイズの要件は典型的には、組み込むことができるオーディオトランスデューサの数などを考慮する必要があるため、所望される音の品質を達成するための適応性を制限する。大半の場合、デバイスのすべて可聴範囲を提供するために単一のオーディオトランスデューサしか必要としない場合があり、例えばこれは、デバイスの品質を潜在的に制限する可能性がある。
【0564】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるオーディオトランスデューサの実施形態は、パーソナルオーディオトランスデューサに組み込まれてもよい。オーディオトランスデューサは、おおよそ20Hzからおおよそ20kHzの振動数帯で音を変換するように構成されている。
【0565】
パーソナルオーディオデバイスは、使用中、ユーザの耳に接触するように位置するようにサイズが決められ、構成された少なくとも1つのインターフェースデバイスを備えてよい。
【0566】
図20Aおよび図20Bを参照すると、各々が、使用中、ユーザの耳にマウントする、またはユーザの耳の周りにマウントするように構成された一対のインターフェースデバイス701、702を含むヘッドホンデバイス700を備える一例のパーソナルオーディオデバイスの実施形態が示されている。インターフェースデバイス701および702は各々、例えばトランスデューサD100など、本明細書に記載される実施形態のいずれか1つに従うオーディオトランスデューサを備える。各インターフェースデバイスにおけるトランスデューサは、独立したオーディオ信号を再生するように構成されている。
【0567】
各インターフェースデバイスは、使用中ユーザの耳の周りに装着される、この実施形態ではヘッドホンカップを備える。
【0568】
いくつかの実施形態において、各インターフェースデバイスは、使用中ユーザの外耳道に、または外耳道に隣接して、または外耳道の中に位置するように構成されたイヤホンのインターフェースプラグであってよい。各イヤホンインターフェースは、装着されたとき、対応する外耳道の周りを密閉しなくてもよい。各インターフェースデバイスは、外耳道の開口からデバイス内の通気孔まで延びる空気チャネルを備えてよい。
【0569】
いくつかの実施形態において、インターフェースデバイスは、携帯電話のサウンドインターフェースであってよい。
【0570】
いくつかの実施形態において、インターフェースデバイスは補聴器のインターフェースであってよい。
【0571】
トランスデューサを組み込む薄型電子デバイス
図15を参照すると、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるオーディオトランスデューサは、薄型電子デバイス600に組み込まれてよい。トランスデューサE100は、この実施形態では、例示的な例として提供されている。しかしながら本発明の他のトランスデューサが、いくつかの実施形態では薄型デバイス600に同様に組み込まれる場合もある。
【0572】
ハウジング601と、ハウジング601内に配置された電気音響トランスデューサE100とを備える本発明のデバイス600が示されている。ハウジング601は、中に複数の電子構成要素および回路を収容するように構成された主要な実質的に中空の基部601aを備える。基部601aは、電子回路を区分するために、複数の空洞で構成されてよい。ハウジング601はさらに、基部の上に剛性に結合して、基部601aの中空の内部を実質的に封鎖するように構成されたカバー601bを備える。電子ディスプレイスクリーン615または他の外部ユーザインターフェース構成要素、例えばキーボードまたは他のユーザ入力デバイスが、いくつかの実施形態ではハウジングのカバー601bにマウントされてよい。ハウジング601は、収容された電気音響トランスデューサE100を中に有する少なくとも1つの電気音響トランスデューサ空洞602を備える。空洞602は、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の電気音響トランスデューサを中に収容してもよい。この実施形態では、ハウジング601は、ハウジング601の一方の側に単一の電気音響トランスデューサ空洞602を備える。代替の実施形態では、用途に応じて任意の数の空洞があってもよい。各電気音響トランスデューサ空洞602は、ハウジング601の周辺部604に隣接して配置されることで、周辺環境への直接の音の伝達を可能にするのが好ましい。各空洞は、ハウジングのコーナー区域608に、またはコーナー区域608に隣接して配置されてもよい。各電気音響トランスデューサE100は好ましくは、先に記載したようなサスペンションE400など任意の好適なトランスデューササスペンションシステムによって、それぞれの空洞の中にマウントされる。いくつかの実施形態において、トランスデューサE100は、空洞602に直接かつ剛性に結合されてよい。
【0573】
オーディオデバイスハウジングの内側で、空洞602の外側の領域613は、当分野でよく知られるように、例えばコンピュータプロセッサ、電源、増幅器、回路基板、ソケット、冷却システム、ハードドライブ、メモリ構成要素などを含めた電子構成要素/回路を備えてよい。各空洞602は好ましくは、別々の空洞であるが、そうでなければ、いくつかの実施形態では、そのような構成要素の間のスペースまたは空間によって形成されてもよい。空洞は、内部領域613に対して分離され、内部領域から密閉されてよい、またはそれは前記領域への空気通路を有する場合もある。
【0574】
この実施形態では、オーディオデバイス600は、十分に薄い、または薄型構造を有する電子デバイスであり、ハウジング601の深さ寸法614は、少なくとも電気音響トランスデューサ空洞602の領域内で、ハウジングの幅612および/または長さ611寸法よりかなり小さい。オーディオデバイスは、例えば、携帯電話、フラットスクリーンテレビジョン、ラップトップコンピュータ、コンピュータモニタ、タブレットコンピュータ、またはデバイスの深さを実用可能である限りできるだけ小さく削減するための審美的および設計要件を有する他のよく知られた電子デバイスであってよい。ハウジングの深さ寸法614は、例えばハウジングの幅612および/または長さ611寸法のおおよそ0.2倍未満であってよい、または幅および/または長さ寸法のおおよそ0.15倍未満、または幅および/または長さ寸法のおおよそ0.1倍未満であってよい。これらの比は、電子デバイスのタイプに左右され、実際には、デバイス内に組み込むべき他の構成要素によって決定されることを理解されたい。したがって提供される比は、限定することは意図されていない。一般に、この実施形態は、上記で言及したように、深さを実用可能な限りできるだけ小さく削減するための重要な要件がある任意の電子デバイスに関連する。
【0575】
ハウジング601は、矩形の断面で示されているが、代替の実施形態では、デバイス600は、特定の用途のために任意の所望される形状のハウジング601で構成される場合もあることを理解されたい。例えばハウジング601は、円形または楕円形の形状であってもよい。この文脈において長さ611および/または幅612寸法についての言及は故に、1つの平面内のハウジングの寸法に関する。ハウジングは、一定のまたは変動する幅および/または長さ寸法を有してよい。深さ寸法614は好ましくは、実質的に一定であるが、ハウジングの1つまたは複数の寸法にわたって可変である場合もある。例えば深さは、ハウジングの縁部に隣接して減少し、中心領域では増大してもよい。ハウジング601は、1つまたは複数の側面610によって接続された一対の対向する主面609を備えてよい。主面609は好ましくは、側面より実質的に大きな表面積を有する。主面は好ましくは、ハウジングの深さ寸法614および各空洞の深さ寸法617に実質的に直交する。
【0576】
各空洞602の深さ617は、ハウジングの深さ寸法614と実質的に同一または同様であってよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の空洞の深さは、ハウジングの深さと異なってもよい。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の空洞の深さ寸法617は、ハウジングの深さ614のおおよそ0.5倍を超える、またはハウジングの深さのおおよそ0.6倍を超える、またはハウジングの深さのおおよそ0.7倍を超える。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の空洞の深さ寸法617は、マウントされたトランスデューサの位置で、ハウジングの深さのおおよそ0.5倍を超える、ハウジングの深さのおおよそ0.6倍を超える、またはハウジングの深さのおおよそ0.7倍を超える。
【0577】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の空洞602の深さ617は、ハウジングの幅寸法612および/または長さ寸法611よりかなり小さい。好ましくは1つまたは複数の空洞602の深さは、ハウジングの幅寸法および長さ寸法よりかなり小さい。例えば1つまたは複数の空洞の深さ寸法617は、ハウジングの幅寸法612および/または長さ寸法611のおおよそ0.2倍未満である、またはハウジングの幅寸法612および/または長さ寸法611のおおよそ0.15倍未満である、またはハウジングの幅寸法612および/または長さ寸法611のおおよそ0.1倍未満であってよい。
【0578】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の空洞602の深さ寸法617は、空洞の実質的に直交する幅寸法622および/または空洞の実質的に直交する長さ寸法621より小さい。例えば深さ寸法は、幅622寸法および/または長さ621寸法のおおよそ0.8倍未満、または幅622寸法および/または長さ621寸法のおおよそ0.6倍未満であってよい。好ましくは、1つまたは複数の空洞602の深さ寸法617は、空洞602の実質的に直交する幅寸法622および空洞の実質的に直交する長さ寸法621よりかなり小さい。
【0579】
ハウジング601は、さらに、デバイス600の外側の周辺環境に関連する電気音響トランスデューサE100からそこを通って音を伝播させるために各電気音響トランスデューサ空洞に隣接して1つまたは複数の開口を備える。好ましい実施形態では、ハウジング601は、グリル603、または各電気音響トランスデューサ空洞602に隣接する他のメッシュタイプの表面を備える。グリル603は、深さ寸法614に沿って延びるハウジングの側部に配置される。各空洞602のグリル603は好ましくは、空洞602に、または空洞602に隣接して深さ寸法617のかなりの部分に沿って延びる。この方法では、空洞は、ハウジングの小さい方の面605を通って実質的に開放している。これにより、音がハウジングの小さい方の面から/小さい方の面内に伝播することを可能にする。
【0580】
また図14Bおよび図14Dを参照すると、電気音響トランスデューサE100は、振動板構造体E200の回転軸E103が、空洞602の深さ寸法617に実質的に平行になるような配向で、それぞれの空洞602の中にマウントされている。換言すると、動作中の振動板702の運動方向は、空洞の深さ寸法617に実質的に直交する平面に沿っている。この配向は、所与の深さに関する振動板の往復運動/変位を最大にする。元の場所で、および動作中、各トランスデューサE100の各振動板E201、E202は、中心または中立振動板位置E250のいずれかの側で、2つの末端位置E251、E252の間で回転可能に振動する。中立位置と第1の末端位置E251との間の角変位E253は好ましくは、中立位置と第2の対向する末端位置E252との間の角変位E254と実質的に同じ、または同様である。これらはいくつかの実施形態では異なる場合もある。例えば両方の角変位は、おおよそ30度であってよい。これは、全体の角変位は、例えばおおよそ60度であり得ることを意味する。本発明は、このような一例の値に限定されることは意図していない。
【0581】
言及したように、それぞれの空洞602内のトランスデューサE100の配向は、所与の空洞の深さについての振動板の往復運動/変位を最大にする。いくつかの実施形態において、各トランスデューサE100について、深さ寸法617に実質的に直交する(および回転軸E103に実質的に直交する)平面に沿った各振動板の末端の全体の総体的な直線変位E255は、それが第1の末端位置E251から第2の末端位置E252まで移動するとき(またはその逆も同様である)、好ましくは関連する空洞602の深さ寸法617と実質的に同じ、またはそれより大きい。上記に挙げた平面は、例えば幅寸法622および長さ寸法621にそれぞれ実質的に平行であってよい。より好ましくは、上記に挙げた平面に沿った全体の直線変位E255は、少なくとも各振動板の位置で、空洞の深さ寸法617またはハウジングの深さ寸法614より大きい。例えばトランスデューサE100は、約30mmの各振動板の末端の全体の総体的な直線変位E255を有してよく、空洞は、約20mmの深さ寸法617を有してよく、ハウジングは約24mmの深さ寸法614を有してよい。しかしながら本発明は、これらの一例の値に限定されることは意図されていない。末端は、例えば振動板の縁部、面または頂点であってよい。
【0582】
いくつかの実施形態において、上記に挙げた平面内での深さ寸法617に実質的に直交する直線変位の少なくとも構成要素(例えば幅622に実質的に平行である構成要素)は、関連する空洞の深さ寸法617と同じ、またはそれより大きい。
【0583】
振動板構造体E200が、複数の振動板から成る一実施形態では、末端は、回転軸E103から最も遠位の振動板E210、E202の端部を意味する。複数の振動板が回転軸E103から最も遠位の端部を有する場合、このとき、振動板E201、E202の末端は、これらの振動板の端部のいずれか1つであってよい。
【0584】
いくつかの実施形態において、各トランスデューサE100の各振動板E201、E202は、おおよそ40度を超える、またはおおよそ60度を超える、第1の位置E251と第2の位置E252との間の全体の角変位を達成するように作用してよい。いくつかの実施形態において、運動の平面に沿った、および深さ寸法614に実質的に直交する軸に沿った末端の全体の直線変位E255は、ハウジングの深さ寸法614のおおよそ1.2倍を超える、またはおおよそ1.5倍を超えてよい。これらの値は、一例であり、限定することは意図されていないことを理解されたい。
【0585】
いくつかの実施形態において、元の場所での、回転軸E103に実質的に平行な軸に沿った最大振動板構造体寸法E261は、ハウジングの深さ寸法614のおおよそ0.5倍を超える、またはハウジングの深さ寸法614のおおよそ0.6倍を超える、またはハウジングの深さ寸法614のおおよそ0.7倍を超える。いくつかの実施形態において、元の場所での、回転軸に実質的に平行な軸に沿った最大振動板寸法E261は、トランスデューサの位置でのハウジングの深さ寸法のおおよそ0.5倍を超える、またはトランスデューサの位置でのハウジングの深さ寸法のおおよそ0.6倍を超える、またはトランスデューサの位置でのハウジングの深さ寸法のおおよそ0.7倍を超える。
【0586】
デバイスの削減された深さ614により、各トランスデューサE100の振動板構造体の幅もまた、この実施形態では削減される。各トランスデューサE100は代わりに、デバイスの増大した相対的な長さを利用して、各振動板E201、E202の長さを、幅に対して増大させ、体積可動能力を最適化する。例えば、この実施形態では、各トランスデューサE100の振動板構造体E200は、回転軸E103から、最も遠位の周辺縁部E211b、E212bまでの最大の長さまたは半径E262で構成されてよく、これは、振動板構造体E200の幅をおおよそ超える、振動板構造体E200の幅のおおよそ1.5倍を超える、または振動板構造体E200の幅のおおよそ1.75倍を超える。
【0587】
言及したように、各電気音響トランスデューサE100の配向により、それぞれの振動板として、所与のハウジング深さ614に関するより大きな振動板の往復運動が可能になる。加えて、回転動作トランスデューサもまた、所与のスペースについての直線動作トランスデューサに対してより大きな振動板の往復運動を可能にする。回転動作トランスデューサはまた、往復運動を増大させ、直線動作ドライバの場合であり得るように高音域応答を損なうことなく、基本的な共振振動数を低下させる。これは、より高レベルの往復運動と、改善された電気音響トランスデューサ性能を意味しており、ハウジング内の全体的なトランスデューサ空洞の空間要件を最小限にする。
【0588】
7. オーディオチューニング
図21Aおよび図21Bを参照すると、本明細書で説明されているオーディオトランスデューサの実施形態(A100、B100、D100、E100、F100)が、電気音響デバイスとして実装され得、オーディオデバイス101またはシステム100の中に組み込まれ得、オーディオデバイス101またはシステム100は、オーディオチューニングシステムとともに動作し、電気音響トランスデューサに関するオーディオ信号を最適化するように構成されている。電気音響トランスデューサ105は、デバイス101のハウジングの中に位置し得る。動作の間に、オーディオデバイス101は、音源102からオーディオ信号を受信し、サウンド発生のために電気音響トランスデューサ105にオーディオ信号を方向付けるように構成されている。オーディオシステム100は、オーディオチューニングシステム106をさらに含む。オーディオチューニングシステム106は、好ましくは、システム100および/またはデバイス101の特質に基づいて、電気音響トランスデューサ105からのサウンド出力を最適化するように構成されている。この実施形態では、オーディオチューニングシステム106は、オーディオデバイス101の中に実装されている。さらに詳細に説明されることになるように、オーディオチューニングシステム106は、そうでなければ、音源デバイス102の中に実装され得、または、代替的な実施形態では、リモートコンピューティングデバイス103などのようなリモートデバイスの中にさえ実装され得る。さらに別の代替例において、オーディオチューニングシステム106のさまざまな機能または回路は、例えば、パーソナルオーディオデバイス101、音源デバイス102、およびリモートコンピューティングデバイス103のうちの2つ以上の任意の組合せなど、複数の個別のデバイスの中に別個に実装され得る。オーディオチューニングシステム106は、ハードウェアの中にもしくはソフトウェアの中に(ソフトウェアは、電子メモリの中に記憶され、プロセッサによって実行され得る)、または、それらの任意の組合せで実装され得る。
【0589】
音源102は、メディアプレーヤーを備えたコンピューティングデバイス、例えば、モバイルフォン、パーソナルコンピュータ、またはタブレットなどであることが可能であるが、しかし、音源102は、オーディオ信号を出力することができる任意の他の形態のデバイス、例えば、ラジオ、コンパクトディスクプレーヤー、ビデオシステム、通信デバイス、ナビゲーションシステム、および、例えばマルチメディアシステムの一部を形成し得る任意の他のデバイスなどを含むことが可能である。
【0590】
オーディオデバイス101は、音源デバイス102を含む外部デバイス、および、随意的に1つまたは複数のリモートコンピューティングデバイス103へ/からの信号/データの送信および/または受信のための通信インターフェース107を含むことが可能である。通信インターフェース107は、例えば、データポートおよび/またはワイヤレストランシーバー、アナログ-デジタルコンバーター(ADC)および/またはデジタル-アナログコンバーター(DAC)を実装するためのソフトウェア/ハードウェア、ならびに、所望の通信プロトコルに従ってデータを受信/送信するためのソフトウェア/ハードウェアの任意の組合せを含むことが可能である。音源デバイス102は、パーソナルオーディオデバイス101を含む外部デバイス、および、随意的に1つまたは複数のリモートコンピューティングデバイス103へ/からの信号/データの送信および/または受信のための対応する通信インターフェース108を含む。パーソナルオーディオデバイス101と音源デバイス102との間の通信は、ケーブルを介して実現され得、または、代替的に、例えば、ワイヤレストランシーバーおよび適当なワイヤレス通信インターフェースを介して、ワイヤレスで実現され得る。ワイヤレス通信インターフェースは、当技術分野で知られている任意の適切なワイヤレスプロトコル/標準(例えば、Bluetooth(商標)、Wi-Fiおよび/または近距離無線通信(NFC)など)に従って動作することが可能である。パーソナルオーディオデバイス101および/または音源デバイス102は、インターネットなどのようなネットワーク104を介して互いに通信することが可能であり、随意的に、いずれか一方または両方は、そのようなネットワーク104を介して1つまたは複数のリモートデバイス103に通信することが可能である。
【0591】
オーディオチューニングシステム106は、1つまたは複数のチューニングモジュールを含み、1つまたは複数のチューニングモジュールは、電気音響トランスデューサ105を介した再生の前に、音源から受信されるオーディオ信号を最適化するように構成されている。モジュールは、1つまたは複数の機能またはタスクを実施するように構成されているソフトウェアもしくはハードウェアエンジンまたは回路、または、それらの任意の組合せであることが可能である。好適な実施形態では、オーディオチューニングシステム106は、イコライゼーションモジュール109(以降では、イコライザ109と称される)およびフィルタ110を含む。これらのモジュールは、分離していることが可能であり、または、そうでなければ、2つ以上が、さらに詳細に下記に説明されることになるように、互いに一体になっていることが可能である。そのうえ、代替的な実施形態では、オーディオチューニングシステム106は、イコライザ109またはフィルタ110のうちのいずれか一方または両方を含むことが可能である。オーディオチューニングシステム106は、オーディオデバイスの少なくとも1つの(しかし、好ましくはすべての)出力チャネルを最適化するように構成されている。音源102は、1つまたは複数のオーディオチャネルのためのオーディオ信号を発生させることが可能である。そうであるので、オーディオデバイス101は、単一のオーディオ出力チャネルまたは複数のオーディオ出力チャネル(2つのオーディオ出力チャネルである可能性が最も高い)を含むことが可能である。後者の場合には、オーディオチューニングシステム106は、それぞれのオーディオ出力チャネルの少なくとも1つの(しかし、好ましくはすべての)トランスデューサ105のためのオーディオ信号を最適化するように構成されている。電気音響トランスデューサごとに、もしくは、出力オーディオチャネルごとに、チューニングモジュール109、110のそれぞれの1つまたは複数が存在していることが可能であり、または、チャネルは、共通のモジュール109、110を共有することが可能である。
【0592】
チューニングシステム106のオーディオチューニングモジュール109、110は、音源102からのオーディオ信号を処理するためのロジックを実施することができる1つまたは複数の信号プロセッサの中に実装され得る。信号プロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、他のプログラマブルロジック構成要素、個別のハードウェア構成要素、または、本明細書で説明されているモジュール109、110の機能を果たすように設計されているそれらの任意の組合せであることが可能である。信号プロセッサは、信号処理構成要素、例えば、フィルタ、デジタル-アナログコンバーター(DAC)、アナログ-デジタルコンバーター(DAC)、信号増幅器、デコーダー、または、当技術分野で知られている他のオーディオ処理構成要素などを含むことが可能である。モジュール109、110の機能は、ハードウェアで直接的に、または、信号プロセッサによって実行可能なソフトウェアで、または、両方の組合せで実装され得る。ソフトウェアは、RAMメモリ、フラッシュメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、CD-ROM、または、当技術分野で知られている任意の他の形態の電子メモリの中に存在することが可能である。電子メモリは、信号プロセッサによってアクセス可能であり、プロセッサが、メモリから情報を読み取ることが可能であり、メモリに情報を書き込むことが可能であるようになっている。電子メモリは、信号プロセッサに対してローカルであるか、別個のデバイスの上にリモートになっているか、または、それらの任意の組合せであることが可能である。代替例において、電子メモリは、プロセッサに不可欠である可能性がある。そのうえ、オーディオチューニングモジュール109、110によって受信され、処理され、および/または発生される情報またはデータは、電子メモリの中に記憶され得る。そのようなデータは、当業者に明らかになるように、パラメータ値、ユーザ入力データ、所定の振動数応答データ、および/または、オーディオ信号の処理に関係付けられる任意の他の情報を含むことが可能である。いくつかのデータは、ファイルの中に記憶され得、ファイルは、音源デバイス102から、または、例えばネットワーク104を介してリモートコンピューティングデバイス103から、オーディオチューニングシステム106によってダウンロード可能である。
【0593】
同様に、音源デバイス102は、オーディオデバイス101の1つまたは複数の出力オーディオチャネルの電気音響トランスデューサ105を駆動するためのオーディオ信号を発生させるための1つまたは複数の信号プロセッサおよび関連の電子メモリ構成要素を含むことが可能である。オーディオ信号と関連付けられる情報またはデータは、電子メモリの中に記憶され得る。そのようなデータは、当業者に明らかとなるように、メディアファイル、ユーザ入力データ、および/または、オーディオ信号の処理に関係付けられる任意の他の情報を含むことが可能である。いくつかのデータは、例えば、ネットワーク104を介してリモートコンピューティングデバイス103からダウンロード可能なファイルの中に記憶され得る。
【0594】
オーディオデバイス101は、1つまたは複数のオーディオ増幅器115をさらに含むことが可能であり、1つまたは複数のオーディオ増幅器115は、オーディオチューニングシステム106の出力に、および、電気音響トランスデューサ105の入力に、動作可能に連結されている。チャネルごとに1つまたは複数の増幅器115が存在していることが可能である。増幅器は、増幅器の入力におけるフィードバックとして、オーディオトランスデューサから出力電流を受け取るように構成され得る。増幅器は、デジタルおよび/またはアナログであることが可能である。
【0595】
オーディオデバイス101は、当技術分野でよく知られているようなデバイスのさまざまな電子回路に給電するための、オンボード電源117(例えば、再充電可能であり得る1つまたは複数のバッテリーなど)を含むことが可能である。同様に、音源デバイス102は、当技術分野でよく知られているようなデバイスのさまざまな電子回路に給電するためのオンボード電源118(例えば、再充電可能であり得る1つまたは複数のバッテリーなど)を含むことが可能である。
【0596】
イコライゼーション
いくつかの実施形態では、本発明のオーディオチューニングシステム106は、イコライザ109を含み、イコライザ109は、関連のオーディオデバイス101のそれぞれの出力チャネルに関して受信されるオーディオ信号をイコライズするように構成されている。イコライザ109は、関係のオーディオトランスデューサの特質を補償するように構成されている。そのような特質は、オーディオトランスデューサの振動数応答;オーディオトランスデューサの位相応答;オーディオトランスデューサのインパルス応答;ならびに/または、質量-スプリング-ダンパ集中パラメータ特質(そこでは、基本的なモード、および、随意的に、1つもしくは複数の並進モードもモデル化されている)のうちの1つまたは複数の任意の組合せを含むことが可能である。
【0597】
オーディオトランスデューサ105の特質は、イコライザ109に関連付けられたメモリの中に事前に記憶され得る。例えば、オーディオデバイス101のそれぞれのトランスデューサ105に関連付けられる振動数応答が、決定され得、イコライザ109に関連付けられたメモリの中に記憶され得る。特質は、製造の間に決定および記憶され得るか、または、特質は、例えば、製造の後にオーディオデバイス101またはシステム100によって開始されるキャリブレーション局面の間に決定され得る。いくつかの場合には、特質は、デバイスまたはシステムの通常の動作の間に決定され得る。
【0598】
いくつかの実施形態では、イコライザは、オーディオ信号の振動数応答の中のステップを除去するように構成され得、また、イコライズされたオーディオ信号をオーディオトランスデューサ105の変換機構に送達するように構成され得る。
【0599】
イコライザは、オーディオ信号の位相応答の中の位相スパイクまたはブリップまたはステップを除去するように構成され得る。
【0600】
いくつかの実施形態では、イコライザは、オーディオ信号の振動数応答の中のスパイクまたはブリップを除去するように構成され得、また、イコライズされたオーディオ信号を関係のオーディオトランスデューサ105の変換機構に送達するように構成され得る。スパイクまたはブリップは、例えば、振動数応答の中に少なくとも1dBのスパイクを引き起こすことが可能である。
【0601】
いくつかの実施形態では、オーディオチューニングシステムは、基本的な振動板共振振動数に基づいて、変換機構への入力信号の振動数および/または位相応答および/または過渡応答をイコライズするように構成され得る。
【0602】
いくつかの実施形態では、オーディオチューニングシステムは、変換機構への入力信号の振動数応答および/または位相応答および/または過渡応答をイコライズし、振動板の集中パラメータ(例えば、質量-スプリング-ダンパ)特質に関連付けられる振幅および/または位相および/または過渡特質を補償するように構成され得る。集中パラメータ特質は、基本的な振動板共振モード、および、また、並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体並進の重要な成分を伴う1つまたは複数の共振モードの両方を含むことが可能である。
【0603】
いくつかの実施形態では、オーディオチューニングシステムは、変換機構の入力における振動数の増加に伴ってオーディオ信号の振動数応答を増加させ、高振動数ロールオフを補償するように構成され得る。高振動数ロールオフは、コイルインダクタンスに関連付けられ得る。
【0604】
いくつかの実施形態では、イコライザは、振動数応答曲線を付与するように構成され得、振動数応答曲線は、振動板サスペンションの並進コンプライアンスを介して振動板構造体の並進を含む運動を有する共振モードの効果に関する補償に対応する振動数においてまたはその近くにおいて起こるラウドネスの中のステップ変化を含む。好ましくは、付与された振動数応答曲線は、また、振動板サスペンションの並進コンプライアンスを介して振動板構造体の並進を含む運動を有する共振モードに関連付けられる応答ピークおよび/またはトラフに関する補正を含む。
【0605】
フィルタ
いくつかの実施形態では、オーディオチューニングシステム106は、入力オーディオ信号の比較的に低い振動数の成分をフィルタリングするためのハイパスフィルタ110を含む。また、フィルタは、動作の間に、フィルタリングされたオーディオ信号を、関連のトランスデューサ105の変換機構に提供するように構成されている。
【0606】
フィルタ110は、トランスデューサの振動数応答のより低いロールオフ振動数に基づいて、関連のオーディオトランスデューサ105の振動数成分をフィルタリングするように構成され得る。
【0607】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサ105の振動板サスペンションは、十分にコンプライアントであることが可能であり、並進コンプライアンスに関連付けられる振動板の共振振動数が、フィルタのカットオフ振動数を下回るようになっている。カットオフ振動数は、例えば、フィルタの-3DB振動数であることが可能である。
【0608】
並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振振動数は、冠状面に対して垂直の方向への振動板の有意な変位を伴うことが可能である。並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振振動数は、軸上で1m離れて測定されるときに、1dB以上の関連の振動数応答偏差を引き起こすことが可能である。並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体共振振動数は、軸上で1m離れて測定されるときに、0.5dB以上の関連の振動数応答ステップを引き起こすことが可能である。
【0609】
8. 利点
本明細書で説明されている実施形態の特徴組合せのいくつかに対する利益が、下記に提供される。
【0610】
単一の振動板と、第1の実施形態に関して説明されているような振動板のノード軸に基づいて位置している回転軸を含む振動板サスペンションとの組合せ(このセクションにおいて、「バランスのとれた振動板設計」と称される)は、特定の実用的な利点および性能利点を提示することが可能である。
【0611】
説明されているように、振動板サスペンションのコンプライアンスに関連付けられる振動板の5つの望まれない非一次の共振モードが存在している。これらは、バランスのとれた振動板設計に関して、最小にのみ励起され、軟質ヒンジ材料が使用されているときでも、比較的に平坦な振動数応答を結果として生じさせる。この実施形態において、複数の本体の代わりに、単一の振動板本体を使用することは、また、いくつかの用途において利益を有することが可能である。例えば、単一の振動板本体は、所与の不動産に関して、および、所与のバスエクステンションに関して、より大きい体積の可動域を可能にすることができる。また、振動板に関して説明されているように、周辺部が実質的に支持されていないときに、単一の振動板本体は、低減される空気漏出を結果として生じさせる可能性がある。最後に、単一の振動板本体は、デバイス設計の複雑さを低減させることが可能である。
【0612】
また、バランスのとれた振動板設計とこのトランスデューサA100にあるような実質的に軟質ヒンジマウントとの組合せは、いくつかの用途において有用であり得る特定の利点を提供する。この組合せは、有用である。その理由は、バランスのとれた振動板設計が、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる非一次の共振モードから結果として生じる歪みを軽減するからであり、一方では、軟質ヒンジ材料は、低振動数のエクステンションに関してより低い基本的な振動板共振振動数、低振動数におけるより大きいラウドネスのための振動板可動域の増加、および、ヒンジ疲労問題の低減を促進させることが可能である。また、軟質ヒンジは、より簡単で安価なヒンジ設計を可能にすることができる。
【0613】
1つまたは複数のヒンジマウントの中でのまたはその周りでのダンピングされた材料の使用は、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板の1つまたは複数の共振モードのダンピングを大幅に増加させることが可能である。例えば、ヒンジマウントは、振動板の冠状面に対して垂直の方向への振動板の並進モードを減衰させることが可能である。この並進モードを減衰させることは、ヒンジ場所における潜在的な製造の不正確さ(例えば、それは、そうでなければ、このモードの励起をもたらす可能性がある)を計算に入れるのに有益である可能性がある。これは、バランスのとれたヒンジ設計との組合せにおいて、とりわけ有用である可能性がある。その理由は、それが、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる非一次の共振モードから結果として生じる歪みを実質的に軽減する利益を提供し、例えば、トランスデューサ製造に関連付けられる実用性に起因して、これらのモードが完全には除去されるとは限らないという状況において、さらなる軽減を提供するからである。
【0614】
振動板にまたは振動板の近位に振動板側変換構成要素を位置することは、振動板構造体の構造的な完全性を改善することが可能であり、また、振動板と振動板側変換構成要素との間に延在する可能性のある構成要素の屈曲を低減させることが可能である。これは、振動板側変換構成要素が振動板の遠位に位置し得る特定の場合とは対照的である。バランスのとれた振動板設計との組合せにおいて、これは、振動板組立体の中の共振の励起の低減、ウォーターフォールプロット特質の改善、および、主観的によりクリアなサウンドをもたらすことが可能である。
【0615】
トランスデューサA100に関連して説明されているように、振動板にまたは振動板の近位に位置している振動板側変換構成要素は、以下のもののうちの1つまたは複数の任意の組合せを介して実装され得る。
・振動板側変換構成要素が回転軸に沿って振動板とオーバーラップするように、振動板側変換構成要素を位置すること;
・構成要素のすべてのパーツが、振動板の幅の少なくとも20%以内に、より好ましくは15%以内に、最も好ましくは10%以内に位置するように、振動板側変換構成要素を位置すること;
・振動板側変換構成要素を振動板と一体化すること;
・振動板の一方の側部に沿って振動板側変換構成要素を剛性に接続すること;
・振動板の両側間に、主回転軸に対して実質的に平行の軸に沿って振動板側変換構成要素を連結すること。
【0616】
バランスのとれた振動板設計と振動板の矢状面に対して実質的に対称的な振動板(振動板側変換構成要素を含む)との組合せは、前記矢状面に対して非対称的な移動を伴う複数のモードのバランシングと組み合わせられた、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振モードのバランシングに起因して、低共振ラウドスピーカを結果として生じさせる。例えば、対称性によって、矢状面および冠状面と交差する軸の周りでの振動板のツイスティングを伴う1つまたは複数の共振モードは、励起されない可能性がある。好ましくは、トランスデューサ基部構造体側変換構成要素は、また、振動板の矢状面A201に対して対称的になっており、励起力も対称的になるようになっている。同様に、好ましくは、ヒンジ構成要素は、同じ平面A201に対して対称的になっており、非対称的なヒンジ力を介して同じ共振モードの励起を最小化する。
【0617】
いくつかの実施形態では(図示せず)、振動板(振動板側変換構成要素および/またはトランスデューサ基部構造体変換構成要素および/またはヒンジマウントを含む)は、矢状面A201に対して非対称的になっていることが可能であるが、非対称性は、そのような共振モードが励起されないように、互いに対してバランシングされるように設計されている。好ましくは、矢状面および冠状面と交差する軸の周りでの振動板のツイスティングを伴う共振モードがバランシングされ、最小にのみ励起されるように、それらはバランシングされる。好ましくは、振動板は、そのうえ、振動板ノード軸にヒンジマウントを位置することによってバランシングされる。
【0618】
この実施形態のいくつかの変形例において、バランスのとれた振動板設計は、少なくとも2つのヒンジジョイントを含む振動板サスペンションと組み合わせられ、少なくとも2つのヒンジジョイントは、振動板をトランスデューサ基部構造体に回転可能に連結しており、少なくとも2つのヒンジジョイントは、主回転軸に対して実質的に垂直になっている振動板の中央矢状面の両側に位置しており、それぞれのヒンジジョイントは、中央矢状面から、振動板の最大幅の0.47倍、0.45倍、0.42倍よりも小さい距離に位置している。1)ヒンジコンプライアンスを介して振動板並進に関連付けられる共振モードのバランシング(そのようなモードが、最小にのみ励起されるようになっている)ことに起因して、および、2)軸方向において、振動板基部構造体の1つまたは複数の曲げモードの自然ノードポイントの近くに振動板構造体のヒンジサポートを提供することに起因して、この組合せは、低共振ラウドスピーカを結果として生じさせる。そのような自然のノードポイントは、中央矢状面から、振動板の最大幅の少なくとも0.47倍、0.45倍、0.42倍の距離の中に位置する傾向がある。図18Eに見ることができるように、ヒンジサポート場所(それは、この例では、ノード場所の近くに位置するように設計されている)は、さらに矢状面のより近くにある。
【0619】
また、フレキシブルヒンジマウントを有する振動板サスペンションとバランスのとれた振動板設計との組合せは、いくつかの用途において特定の利点を提供することが可能である。フレキシブルヒンジは、安価であるかもしれないが、1)主軸の周りでの自由回転、2)並進におけるヒンジコンプライアンスを伴う共振モードに対する高い剛性性、および、3)振動板可動域の高い角度を同時に実現するのにあまり適していない可能性がある。この組合せの利点は、並進におけるヒンジコンプライアンスを伴う共振モードのうちの少なくともいくつかが、振動板のバランシングを介して対処されることである。
【0620】
1)バランスのとれた振動板組立体と、2)振動板とトランスデューサ基部構造体との間に連結されており、本明細書で説明されているヒンジマウント設計のうちの1つまたは複数の特性または特徴を有する、少なくとも1つのフレキシブルマウントとの組合せは、また、いくつかの用途において有用である可能性がある。本明細書で説明されているヒンジマウント設計は、ヒンジを調整するために使用され、基本的な振動板共振振動数を低減させ、および/または、振動板可動域を強化し、および/または、冠状面に対して垂直の方向へのコンプライアンスを低減させ、振動板がドライバ基部構造体にぶつかることを防止することが可能である。また、上記の組合せ1)および2)は、b)ラウドスピーカタイプトランスデューサと組み合わせて有用である可能性がある。その理由は、これらが、例えば、マイクロホントランスデューサと比較して、高い体積の可動域(振動板可動域に関係付けられる)、および、場合によっては、低減された基本的な振動板共振振動数に関する要件の観点からから、より制約される傾向があるからである。また、1)および2)の組合せは、c)トランスデューサと併用していることが有用である可能性があり、ここでは、軸の周りでの1つの回転方向に面する大きい振動板面に露出されたエンクロージャ(図3Cの中のA301を参照)が存在しており、外気が、対向する大きい回転面に露出されており、i)外部音圧における低振動数の増加が、振動板の上に正味トルクを結果として生じさせるようになっており、および/または、ii)低振動数における振動板組立体の回転が、空気の正味変位を結果として生じさせるようになっている。利益は、このように振動板面を分離するためにエンクロージャを使用することが、トランスデューサを低振動数においてより有用にすることが可能であることであり、それは、1)および2)の組合せによって提供される製造のコストに対して、改善された帯域幅および低減された共振によってうまく機能する。
【0621】
また、1)バランスのとれた振動板設計と、2)振動板とトランスデューサ基部構造体との間に連結されている少なくとも1つのフレキシブルマウントとの組合せは、d)トランスデューサと併用して有用である可能性があり、ここでは、振動板側変換構成要素が、コイル(例えば、下記に説明されている実施形態2など)を含み、または、e)振動板側変換構成要素が、磁石を含む。1)および2)を組み合わせることからの共振利益と、リニア変換機構とは、生産するのにコスト効率が良い可能性のある比較的に高性能のトランスデューサを作り出すために組み合わさる。代替的に、1)および2)は、f)圧電性結晶ベースの力変換構成要素と組み合わせても有用である可能性がある。その理由は、これらもコスト効率が良いからである。
【0622】
1)バランスのとれた振動板組立体と、2)振動板とトランスデューサ基部構造体との間に連結されている少なくとも1つのフレキシブルマウントとの組合せは、そのうえ、g)厚い振動板(図2C、A101を参照)と併用して有用であり、特に、より大きい空気体積を移動させることができるより大きいトランスデューサにおいて、振動板の曲げに対する抵抗の増加を介して共振の低減を促進させるようになっている。これは、1)および2)の組合せとうまく組み合わさることが可能であり、それは、また、上記に説明されているように、共振の低減を促進させ、および、場合によっては、振動板可動域(体積可動域)の増加を促進させ、他のすべては等しくなっている。同様に、1)および2)の組合せは、h)特に、回転軸から最も遠い振動板の半分にわたって、先端部に向けて低減する厚さを有する振動板(図2C、A101を参照)と組み合わせて有用である可能性がある。これは、末端における低減する厚さが、前述の領域の必要とされるサポートを低減させ、それが、より薄くおよび/またはより軽くされ得るからである。これの正味の効果は、特定の重要な振動板先端部撓み共振モードの振動数を増加させ、それによって、帯域幅を改善することである。これは、1)および2)と組み合わせて有利である可能性がある。その理由は、この組合せが、安価なヒンジ機構の使用も促進させながら、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振のバランシングを介して帯域幅の増加を可能にすることもできるからである。同様に、1)および2)の組合せは、i)振動板設計と組み合わせて有利である可能性があり、ここで、単位面積当たりの質量は、先端部(図2C、A101を参照)領域に向けて低減している。同様の利益が、h)に関して以前に説明されているようなこの組合せによって得られ得る。1)および2)の組合せ(コスト効率良く共振に対処する)は、j)垂直応力補強材(図2C、A101を参照)を備えて軽量の本体を有する複合振動板設計とうまく組み合わさる。その理由は、そのような構築物が、また、共振に対処し、ならびに/または、振動板サイズおよび体積可動域を増加させることが可能であるからであり、他のすべては等しくなっている。
【0623】
本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、振動板バランシングをデカップリングマウンティングシステムと組み合わせ、デカップリングマウンティングシステムは、オーディオトランスデューサの隣接する構成要素(振動板以外)にトランスデューサ基部構造体をフレキシブルにマウントする。図3Gにおいて見られるように、コンプライアントデカップリングマウントA305a、A305bおよびA306a、A306bは、ドライバ基部構造体とそのハウジングとの間の振動エネルギーの伝達を低減させ、ハウジングの共振モードの励起を低減させる。そのようなドライバデカップリング(振動板バランシングと組み合わせて使用され、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振の励起を低減させる)は、コスト効率の良い低共振スピーカシステムを提供することが可能である。
【0624】
いくつかの実施形態は、振動板バランシングを振動板構築物と組み合わせ、振動板構築物は、軽量の振動板本体および垂直応力補強材を含み、垂直応力補強材は、回転軸の遠位にある振動板の領域において低減または軽減されている。同様に、いくつかの実施形態は、振動板バランシングを振動板構築物と組み合わせ、振動板構築物は、軽量の振動板本体および垂直応力補強材を含み、垂直応力補強材は、軸の近位にある振動板の領域に対して、主回転軸から遠位にある振動板の領域において、質量が低減している。図2Bおよび図2Fにおいて見られるように、垂直補強(この場合には、炭素繊維ストラットA206aおよびA206b)は、振動板面の小さい割合だけをカバーしている。これは、接着剤が、先端部領域全体にわたって必要とされず、質量を低減させること意味している。また、小さいエリアをカバーするストラットの中へ炭素繊維を集中させることは、製造方法を複雑にすることなく、この領域における垂直補強の低い全体的な質量を可能にする。ストラットの中へ繊維を集中させることは、構築するのにより実用的である可能性がある。ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振の励起を低減させるために、振動板バランシングと併用して使用されると、これは、拡張された低共振およびそれに対応してクリーンなウォーターフォールプロット測定、ならびに、主観的なサウンドを有するトランスデューサを結果として生じさせることが可能である。
【0625】
いくつかの実施形態は、振動板バランシングを磁石組立体と組み合わせ、磁石組立体は、振動板に剛性に連結されており、全体的に、軸の反対側に位置している対向する磁極の単一の主要なペアを有している。図2Dは、軸A103の両側に位置しているN極およびS極を示しており、これらの極は、図2Aに示されているように、振動板の側部の実質的に長さ全体に沿って延在している。この実施形態では、コイルは、磁石全体の周りを走っており、2つの主要なアクティブ巻線セクションがそれぞれの極に隣接して1つずつ位置した状態になっている。この磁石構成は、a)回転作用/ヒンジを介して、高い線形の振動板可動域を提供し、高い可動域を促進させ、b)この構成の中の2つの主要な磁極は、複数の整流されたドライブコイルを有することに関連付けられる複雑さおよび歪みなしに、その可動域のほとんどを線形にする(最大で+-20度以上まで)。高い線形の可動域は、トランスデューサがより小さくされ得、他のすべてが等しくなっていることを意味しており、それは、望まれない共振を低減させることが可能である。他の設計によって、磁石の高い質量は、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる望まれない共振モードを結果として生じさせることが可能である。しかし、この実施形態では、共振は、振動板バランシングを介して管理される。
【0626】
いくつかの実施形態は、振動板バランシングを特徴とするオーディオトランスデューサを組み合わせており、ハウジングは、トランスデューサのための空洞を有しており、空洞は、実質的に浅い深さ寸法を有しており、振動板は、動作の間に第1の終端位置と第2の終端位置との間で主回転軸の周りに回転可能に揺動するように構成されており、オーディオトランスデューサは、空洞の中に配向されており、主回転軸が空洞の深さ寸法に対して実質的に平行になるようになっており、深さ寸法に対して実質的に直交している平面に沿って主回転軸から最も遠位にある振動板の終端端部の合計の線形変位は、空洞の深さ寸法と実質的に同じになっているかまたはそれよりも大きくなっている。この幾何学的な構成は、モバイルフォン、タブレット、およびラップトップコンピュータなどにおいて必要とされ得るように、単一のトランスデューサからスリムなデバイスの中に高い体積の可動域を提供するのに有用である可能性がある。また、その構成は、トランスデューサによって占められるスペースに対して、高い体積の可動域を提供することが可能である。そのうえ、高いレベルの音質が、振動板が振動板エリアに対して高い距離を移動することができることに起因して実現され得、それは、振動板が用いられ得ることを意味しており、それは、それらの小さいサイズに起因して、比較的に共振がないことが可能である。これらの利益は、とりわけ、振動板バランシング併用してうまく機能することが可能であり、それは、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振モードの励起の低減を結果として生じさせることが可能である。また、この構成では、トランスデューサ基部構造体にかかる反力および/またはトルクは、デバイスの平面の中の(スリムな)デバイスの残りの部分の中へ伝送することが可能であり、潜在的に、比較的に高い剛性および効果的な音響放射のために適切な低減されたエリアに起因して、励起の他の方向と比較して有害でない共振を結果として生じさせる。
【0627】
いくつかの実施形態は、回転作用振動板を有するトランスデューサを含み、振動板は、振動板の長さに沿って変化する厚さを含み、振動板が、中央領域から終端端部に向けて厚さをテーパ付きにするようになっており、基部端部に向けてテーパの程度が低減する(または、逆にさえなる)ようになっている。これは、振動板主面の多くまたはすべてにわたって全体的な凸形曲線を結果として生じさせることが可能である。好ましくは、振動板側変換構成要素は、基部端部における軸に沿って位置している。好ましくは、振動板側力変換構成要素は、基部端部の実質的にすべてに沿って延在している。力変換構成要素(とりわけ、磁石およびコイル)は、高い回転慣性を有することが可能であり、それは、軸の周りのそれらの直径を制限するのに有用である可能性があり、回転慣性を管理し、それによって、ドライバ効率を最適化するようになっている。しかし、より小さい直径は、より高い可動域角度において、振動板の隣接するパーツが、基部側力変換構成要素またはデバイスの他の近くに位置しているパーツのいずれかと衝突する可能性があり、制限された振動板可動域を結果として生じさせることを意味することが可能である。いくつかの場合には、振動板可動域が重要な制限でない場合でも、最適化された振動板側変換構成要素の最大直径でさえ、均一なくさび型テーパを有する振動板に関する最適な基部厚さよりも小さくなっている場合がある。振動板の先端端部(または、少なくとも先端端部のほとんど)にテーパを付すことによって、しかし、軸端部におけるそのテーパを低減させるかまたはさらには反転させることによって、振動板にテーパを付すことの共振低減利益のほとんどを保存しながら、これらの問題のうちの一方または両方が軽減され得る。以前に上記に説明されているように、先端部末端における厚さを低減させることは、特定の重要な振動板先端部撓み共振モードの振動数を増加させる正味の効果を有しており、それによって、帯域幅を改善し、および/または、共振問題を減少させることが可能である。一方または両方の主面のほとんどにわたって凸形曲線を提供することは、共振感受性および/または振動板面積および/または感度の観点から過度の犠牲を払うことなく、振動板可動域の増加を提供することが可能である。図2cに見ることができるように、振動板主面212aおよび212bは、両方とも、凸形に湾曲しており、先端部領域において合理的に鋭いテーパを結果として生じさせ、磁石A205の近位にゼロテーパを結果として生じさせる。
【0628】
凸形振動板の利益は、振動板バランシングと組み合わせて有用であり、それは、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振に対処することが可能である。その理由は、全体的な結果が、改善された体積可動域能力および低減または排除された共振を結果として生じさせるからである。
【0629】
また、凸形に形状決めされた主要な振動板面によって提供される利益は、ヒンジを介してマウントされる回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと組み合わせて有用である可能性があり、ここで、ヒンジの中のまたはヒンジの近位の1つまたは複数の構成要素は、低いヤング率を有している。これは、コスト効率の良い実用的な解決策であることが可能であり、それは、より高い振動数における望まれない共振の観点から過度の妥協をすることなく、回転作用トランスデューサからの改善された低振動数エクステンションを潜在的に促進させながら、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板並進共振モードを管理することを助けることが可能である。軟質ヒンジ構成要素は、フレキシブルヒンジ設計における回転に対する抵抗を潜在的に低減させることが可能であり、ローリングタイプヒンジの中に必要とされる製造公差を低減させることが可能である。凸形振動板主面(それは、振動板可動域の増加などのような利益を提供することも可能である)と組み合わせられるとき、その結果は、コスト効率の良い比較的に高性能のトランスデューサである可能性がある。
【0630】
凸形に形状決めされた主要な振動板面によって提供される利益は、そのうえ、可動磁石組立体(例えば、磁石A205など)を含む(および、可動磁石組立体に剛性に接続されている)振動板組立体と組み合わせて有用である可能性がある。その理由は、磁石が特に重い構成要素であり、したがって、磁石半径が、かなり小さいとき、および、高い振動板可動域のためのスペースを残しながらも、振動板先端部領域における効果的な共振制御を提供するには、軸から先端部への一定のテーパに関して潜在的に小さ過ぎるときに、効率が最適化され得るからである。いくつかの実施形態では、振動板周辺部とそのハウジングとの間の空気シーリングの程度を改善するために、エアギャップを通る長さを増加させる役割を果たす、周辺部の周りでの振動板の厚くされたセクションが存在していることが可能であることが留意される。
【0631】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、振動板構造体を含み、振動板構造体は、複数の振動板と、トランスデューサ基部構造体と、振動板サスペンションと、変換機構とを含み、振動板サスペンションは、トランスデューサ基部構造体に対して振動板構造体を回転可能にマウントし、回転軸の周りでトランスデューサ基部構造体に対して振動板構造体を回転させるように構成されており、変換機構は、振動板構造体に動作可能に連結されており、オーディオ信号と音圧との間で変換する。好ましくは、複数の振動板は、回転軸からそれぞれ延在しており、半径方向に間隔を置いて配置されており、好ましくは、複数の振動板は、互いに実質的に剛性に接続されている。そのようなトランスデューサの利点は、所与の全体的な体積可動域能力に関して、振動板本体が、軸からより短い距離に延在することが可能であり、軸方向により狭くなっていることも可能であり、それによって、所与の体積可動域能力に対する振動板屈曲共振に対する感受性を潜在的に低減させることである。そのようなトランスデューサは、凸形振動板と組み合わせて有用である可能性がある。その理由は、両方の特徴が、振動板可動域のさらなる増加および共振に対する感受性の低減を一緒に提供することができるからである。
【0632】
いくつかの実施形態は、1)バランスのとれた振動板設計および2)振動板側変換構成要素を含み、振動板側変換構成要素は、振動板の両側間に、主回転軸に対して実質的に平行の軸に沿って連結している。利益は、以下に起因する低い共振を含む:1)ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振モードのバランシング、2)デュアル振動板ブレードが、軸からより短い距離に延在することが可能であり、それによって、所与の体積可動域に関して振動板屈曲共振に対する感受性を低減させること、および、3)重い振動板側変換構成要素が2つの振動板の間に極めて近接して位置していることが、変換構成要素に対する振動板の移動を伴う共振モードに対する感受性を低減させること。
【0633】
いくつかの実施形態では、例えば、玉軸受レースにおいて起こるものなどのような、互いに対して転がる要素に基づいてヒンジとは対照的に、屈曲作用を介して機能する少なくとも1つの一次ヒンジサポートと組み合わせて、複数の振動板を含む振動板構造体が、有益である可能性がある。フレキシブルヒンジは、安価であるかもしれないが、1)主軸の周りでの自由回転、2)並進におけるヒンジコンプライアンスを伴う共振モードに対する高い剛性性、および、3)振動板可動域の高い角度を同時に実現するにはあまり適していない可能性がある。この実施形態の利点は、複数の振動板を含む回転振動板組立体が、単一の振動板設計と比較して、より良好にバランシングされ、または、少なくともより少なくアンバランスになっている傾向があり、したがって、並進におけるヒンジコンプライアンスによって促進される1つまたは複数の共振モードの励起が低減され得ることである。好適な実施形態では、ヒンジの屈曲要素は、そのうえ、8GPa未満のヤング率を有しており、制約2)の緩和をさらに大きく利用する。そのようなより剛性の低い材料は、より自由な回転(上記の要件1)および振動板可動域の増加(要件3)を促進させることが可能であり、また、例えば、射出成形などのようなプロセスを介して製造するのに潜在的に安価であることが可能である。追加的に、複数の振動板は、より多くの空気がより小さい可動域の角度によって移動され得ることを意味しており、それは、要件3)が緩和され得ることを意味しており、他のすべては等しくなっている。これらの特徴は、共振に対する低い感受性を有する安価で効果的なトランスデューサを結果として生じさせる可能性を有している。
【0634】
いくつかの実施形態では、屈曲作用を介して、および、振動板側力変換構成要素が磁石組立体を含む状態で機能する、少なくとも1つの一次ヒンジサポートと組み合わせて、複数の振動板を含む振動板構造体が、有益である可能性がある。可動磁石組立体トランスデューサ設計は、典型的に、磁石質量が高いという不利益を有しており、それは、並進におけるヒンジコンプライアンスを伴う共振モードに対する高い剛性性に関して、上記のヒンジ要件2)につながり、実現することがとりわけ困難になる。その理由は、ヒンジが並進共振モードにたいしてさらに剛性でなければならないからである。複数の振動板組立体は、単一の振動板設計と比較して、より良好にバランシングされるか、または、より少なくアンバランスになっている傾向があるので、ヒンジ要件2)は緩和され得、比較的に簡単な屈曲タイプヒンジの使用を可能にし、そのうえ、可動磁石組立体振動板側力変換構成要素の使用を可能にする。フレキシブルヒンジおよび可動磁石モータ構造体の両方は、製造するのが簡単で安価であるが、複数の振動板構築物において比較的に高性能であることが可能である。
【0635】
いくつかの実施形態は、複数の振動板トランスデューサと、可動磁石組立体振動板側力変換構成要素と、振動板構造体以外のオーディオトランスデューサの隣接する構成要素にトランスデューサ基部構造体をフレキシブルにマウントするデカップリングマウンティングシステムとを含む。可動磁石組立体モータタイプを複数振動板型の振動板組立体と組み合わせる利点は、デカップリングシステムと組み合わせてうまく機能し、ハウジングなどのような周囲の構成要素への振動の伝達を低減させ、それは、そのような周囲の構成要素の励起を低減させることが可能であり、合理的な性能を有するコスト効率の良いデバイスを結果として生じさせる。
【0636】
いくつかの実施形態は、複数の振動板トランスデューサと、可動磁石組立体振動板側力変換構成要素と、ローリング要素レース(例えば、玉軸受レース)を有する少なくとも1つの振動板ヒンジジョイントとを含み、ローリング要素レースは、7つよりも少ないローリング要素を含む。ローリング要素の数を低減させることは、異なる公差を有する近接する要素が存在し、それが詰まったりガタガタし、トランスデューサ出力の中の歪みに潜在的につながるようになる可能性がより少なくなるという利点を提供する。また、より少ないローリング要素は、ローリング抵抗の低減、および、非線形の停止/開始摩擦効果の低減につながる可能性があり、繰り返しになるが、トランスデューサ出力歪みの低減につながる。並進剛性性は、潜在的に低減され得るが、しかし、複数の振動板の使用に関連付けられる改善されたバランシングがヒンジに関する並進剛性要件2)を低減させることによって、この不利益は軽減され得る。上記に説明されているように、ヒンジに関する並進剛性要件2)の低減は、重い可動磁石組立体が実行可能であり得ることも意味することが可能である。それによって、組合せは、共振タイプおよびローリング要素タイプ歪みに対する低い感受性を有する簡単でコスト効率の良いトランスデューサを提供することが可能である。
【0637】
いくつかの実施形態は、複数の振動板トランスデューサと、全体的に、軸の反対側に位置している対向する磁極の単一の主要なペアを有する可動磁石組立体振動板側力変換構成要素とを含む。この実施形態では、コイルは、磁石全体の周りを走っており、2つの主要なアクティブ巻線セクションが、それぞれの極に隣接して1つずつ位置している。この磁石構成は、a)回転作用/ヒンジを介して、高い線形の振動板可動域を提供し、高い可動域を促進させ、b)この構成の中の2つの主要な磁極は、複数の整流されたドライブコイルに関連付けられる複雑さおよび可能な歪みに関連付けられる複雑さおよび歪みなしに、その可動域のほとんどを線形にする(最大で+-20度以上まで)。高い線形の可動域は、トランスデューサが潜在的により小さくなっている可能性があり、他のすべては等しくなっていることを意味しており、そして、それは、手段低減される共振の低減を意味している。通常は、磁石の高い質量は、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる望まれない共振モードを結果として生じさせることが可能であるが、この不利益は、複数の振動板の使用するに関連付けられる改善されたバランシングによって軽減され得る。潜在的にコンパクトな振動板ブレード寸法、および、結果として生じる共振に対する感受性の低減にもかかわらず、複数の振動板本体、変換機構によって提供される高い線形の可動域角度、および、ヒンジの潜在的に高い可動域能力の組合せに起因して、線形の体積可動域能力は高くなることが可能である。その理由は、改善されたバランシングが、それが並進に対して高度に剛性になるための要件を緩和させることが可能であるからである。全体的な結果は、安価であるが潜在的に高性能のラウドスピーカを結果として生じさせる。
【0638】
いくつかの実施形態は、複数の振動板トランスデューサと、変換機構とを含み、変換機構は、磁石組立体振動板側変換構成要素を含み、磁石組立体振動板側変換構成要素は、動作の間に振動板構造体へまたは振動板構造体から力を伝達するために振動板構造体に連結されており、磁石組立体は、主回転軸に沿って1つまたは複数の振動板とオーバーラップしている。好ましくは、磁石組立体は、少なくとも1つの(または、より好ましくはすべての)振動板本体の一方の側部に沿って延在している。例えば、シャフトを介して接続されているというよりもむしろ、一方の側部の近位に、重い磁石組立体を物理的に振動板の近くに有することは、振動板組立体をよりコンパクトに維持することが可能であり、重い構成要素を極めて近接して維持することが可能であり、それは、振動板組立体屈曲共振問題を低減させることを助ける。少なくとも2つの振動板ブレードを含む振動板組立体と併用して(それは、より小さくされ得、したがって、共振になりにくく、他のすべては等しくなっている)、その結果は、低い共振歪みを提供するコスト効率の良いトランスデューサであることが可能である。好ましくは、磁石組立体は、振動板構造体に(最も好ましくは、複合振動板の表面の上の垂直補強材に)直接的に剛性に接続されており、磁石組立体における固有の剛性性が、望まれない共振モードに対して振動板をより効果的に支持することができるようになっている。好ましくは、接続は、少なくとも合理的に高いヤング率(好ましくは、>0.5GPa、より好ましくは、>2GPa、最も好ましくは、>4GPa)を有する構成要素を介して排他的に行われ、剛性の連結を保証し、共振を低減させるようになっている。好ましくは、接続構成要素は、鋭く湾曲しておらず、接続構成要素が張力および/または圧縮を介して力を伝送することができるように配向されている。そのような構築物は、例えば、振動板側変換構成要素に対する振動板移動を伴う共振を低減させることを助けることが可能である。好ましくは、特定の回転角度を所与として、プラスの空気圧力を作り出す振動板面に隣接する空気は、ぴったり合うサラウンドおよびバッフルまたはエンクロージャによって、対向する振動板面に隣接する空気から分離されており、より低い振動数が、低減された乱流ノイズ歪みによって再生され得るようになっている。その理由は、これが、上記に説明されている構造的な特徴の低共振利益、および、電磁変換機構の線形性利益を強化することができるからである。代替的な実施形態では、複数の振動板トランスデューサは、圧電要素と組み合わせられ、圧電要素は、主回転軸に沿って1つまたは複数の振動板とオーバーラップしており、好ましくは、また、一方の側部に沿って延在している。繰り返しになるが、振動板側変換構成要素が振動板に極めて近接していることは、システムにおける望まれない共振モードに対処することを助けることが可能である。
【0639】
いくつかの実施形態では、複数の振動板設計は、1つまたは複数のヒンジ機構の中のまたはその周囲のダンピングされた材料と組み合わせられる。この組合せは、改善された振動板バランシングが、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる非一次の共振モードから結果として生じる歪みを低減させるという利益を提供し、ダンピングされたヒンジ材料は、これらのモードから励起が起こるものからエネルギーを消散させることが可能である。また、複数の振動板本体を使用することによって可能にされる比較的により小さい振動板サイズに起因して、特定の振動板屈曲モードに関連付けられる共振は低減され、したがって、全体的なコスト効率の良い低共振トランスデューサが結果として生じることが可能である。
【0640】
いくつかの実施形態では、複数の振動板設計は、サラウンドと組み合わせて使用され、サラウンドは、振動板構造体の少なくとも1つの振動板を取り囲むように、および、好ましくは、振動板構造体も取り囲むように構成されており、サラウンドは、主回転軸の遠位にある振動板のうちの少なくとも1つの終端端部に対向する少なくとも1つの補強された領域を含み、それぞれの補強された領域は、サラウンドの隣接する領域に対してより大きい剛性を含む。好ましくは、補強は、増加した厚さのリブを含む。好ましくは、リブは、振動板から離れる方に面する側に突出している。好ましくは、いくらかの補強は、動作の間に終端端部の運動のフルレンジに沿っている。好ましくは、いくらかの補強は、終端端部の全幅にわたっており、より好ましくは、軸に対して実質的に平行の方向になっている。補強は、過度に共振する傾向なしに、比較的に安価に作製され得る材料(例えば、プラスチックまたは繊維強化プラスチックなど)から(例えば、射出成形を介して)コスト効率の良く、終端面が作製され得るという利点を提供する。これは、複数の振動板トランスデューサと組み合わせて有用であり、複数の振動板トランスデューサは、また、振動板がより小さいという可能性に起因して共振になりにくいことが可能であり、他のすべては等しくなっており、コスト効率が良いが高性能のトランスデューサ/ハウジング組合せを作り出す。別の利益は、補強が、均一に厚い壁部によって起こる可能性のあるワーピング(warping)のリスクの低減を伴うコスト効率の良い製造を可能にすることができることである。潜在的に幅の広い角度にわたって、振動板が3次元の曲線をスイープするので、サラウンド/ハウジングにフィットするように振動板周囲部をトリミングするなどのような製造方法は、必要とされるトリムプロファイルが角度可動域とともに変化し得るという観点から、有用でない可能性がある。したがって、より正確に製造されたサラウンド/ハウジングが、振動板がより緊密にフィットされてより良好にシールすることを可能にする観点から、有用であることが可能であり、空気漏出に関連付けられる歪みの低減を結果として生じさせる。
【0641】
いくつかの実施形態では、ヒンジは、振動板構造体ノード軸に位置しており、振動板サスペンションは、1つまたは複数のヒンジジョイントを含み、それぞれのヒンジジョイントは、1対の協働する実質的に剛性の接触表面と、付勢機構とを有しており、1対の協働する実質的に剛性の接触表面は、動作の間に互いに対して移動し、支持された振動板を回転させるように構成されており、付勢機構は、1対の協働する接触表面を互いに向けてコンプライアントに付勢し、通常の動作の間に接触表面同士の間の実質的に一貫した物理的な接触を維持するように構成されている。そのようなヒンジ機構は、高い振動板可動域および低減された基本的な共振振動数、および、疲労破壊に対する潜在的に低い感受性を提供することが可能であり、一方では、並進に対して振動板を拘束するための可能性を同時に提供する。ヒンジジョイントは、例えば、ブルートフォースによって振動板を拘束しようとする高度に剛性のローリングジョイントであることが可能であり、その場合には、高度に剛性のローリング表面が望まれる可能性があり、または、その他のいくらかの並進コンプライアンスが許容可能である可能性があり、その場合には、ローリング表面および/または他のヒンジ構成要素が、ある程度のコンプライアンスを有する材料(例えば、硬質ウレタンなど)を含むことが可能であり、例えば、ヒンジは、玉軸受レースを含むことが可能であり、そこでは、玉は、硬質ウレタンから作製されており、硬質ウレタンは、ローリング表面においてコンプライアント付勢を導入する。そのような性能特質は、振動板ノード軸におけるヒンジの場所によって増強され得、さらに改善されたトランスデューサ性能のために、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる共振モードのバランシングを結果として生じさせる。
【0642】
さらなる利点は、共振管理の観点から取得され得、上述の実施形態では、接触表面のうちの一方が、振動板の一部を形成しており、他方の接触表面は、トランスデューサ基部構造体の一部を形成している。その理由は、これが、簡単で高性能でコスト効率の良いシステムを実現することができるからである。
【0643】
軟質ヒンジの上に回転作用振動板ヒンジングを有するラウドスピーカは、生産するのに安価であることが可能である。しかし、並進におけるヒンジコンプライアンスは、振動板の共振モード、ならびに、そのような望まれない共振モードの振動数の周りの関連の振動数応答ピーク、ディップ、および/またはステップを結果として生じさせることが可能である。ある程度の並進コンプライアンスおよび回転コンプライアンスを可能にするヒンジを介して基部構造体に回転可能にマウントされた振動板を有するトランスデューサと、ソースオーディオに適用されるハイパスフィルタとの組合せは、そのような問題を解決することを助けることが可能である。ヒンジの並進コンプライアンスが十分であり、並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板共振振動数が、ハイパスフィルタがそれから3dBの減衰を提供する振動数の下方に存在しているときには、共振に関連付けられる歪みは、フィルタによって画定される動作帯域幅よりも下方にシフトされ得る。冠状面に対して垂直の方向への振動板の変位を結果として生じさせる共振モードは、ほとんどの空気を移動させることが可能であり、好ましくは、これらは、動作帯域幅よりも下方にシフトされる。この技法は、ハイパスフィルタとともに使用されることが意図されるミッドレンジのドライバまたは高音域帯域幅ドライバの場合において、特に効果的であることが可能である。
【0644】
また、この問題は、回転可能にマウントされた振動板を有するトランスデューサと、並進ヒンジコンプライアンスに関連付けられる1つまたは複数の振動数応答および/または他の歪みを補正するイコライゼーションデバイスとの組合せを通して対処され得る。イコライゼーションデバイスは、振動数応答、位相応答、およびインパルス応答における歪みを補償することが可能である。イコライゼーションデバイスは、フィルタ、例えば、有限インパルス応答フィルタなどのようなデジタルフィルタを含むことが可能である。イコライゼーションデバイスは、アナログフィルタを含むことが可能である。イコライゼーションデバイスは、代替的に、デジタルプロセッサを含むことが可能であり、デジタルプロセッサは、振動板挙動の数学的モデルによってプログラムされており、または、少なくとも振動板挙動と相関付けられており、それは、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる歪みを補正するフィードフォワードプロセスにおいて使用される。イコライゼーションデバイスは、スピーカの測定された応答に基づいてプログラムされたデジタルプロセッサを含むことが可能であり、例えば、それは、無響環境において測定されるようなスピーカの測定された応答の逆数に基づいて、入って来るオーディオ信号にインパルス応答を適用することが可能である。上記の方法のいずれかと同等のものが、実質的に回転作用振動板を有するマイクロホントランスデューサの出力オーディオ信号に適用され得る。
【0645】
また、軟質ヒンジを介してマウントされる回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、内壁の上に保護材料を含むサラウンドとの組合せは、いくつかの用途において有用である可能性がある。軟質ヒンジは、コスト効率が良く高性能である可能性があるが、製品がぶつかられるかまたは落下される場合には、並進の影響を受けやすい可能性があり、潜在的に、壊れやすい振動板周囲部に損傷を与える。保護材料は、過度に大きいエアギャップ、または、空気シールを維持するための従来のゴムタイプ振動板サラウンドを必要とすることなく、そのような損傷を回避することを助ける。
【0646】
軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、ユーザの耳の近位にデバイスを位置するための1つまたは複数の特徴との、および、コイルまたは磁石振動板側変換構成要素との組合せが、有益である可能性がある。軟質ヒンジを有する回転作用トランスデューサは、ユーザの耳に極めて近接してうまく機能することが可能である。その理由は、高い体積の可動域に関する要件の低減が存在しているので、性能が、帯域幅考慮事項によって比較的に多く制限されるからである。軟質ヒンジは、パーソナルオーディオデバイスの場合のように動作帯域幅が非常に広いときでも、より高い振動数における望まれない共振の観点から過度の妥協なしに、低振動数エクステンションを提供することができるコスト効率の良い解決策である。コイルまたは可動磁石変換機構を移動させることは、振動板可動域の広い角度にわたって高い線形性を提供することが可能であり、コスト効率が良く容易に小型化されるが潜在的に高性能のデバイスを結果として生じさせる。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0647】
いくつかの用途において、軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、ユーザの耳の近位にデバイスを位置するための1つまたは複数の特徴とを、および、振動板構造体の半径の少なくとも50%以内(より好ましくは、40%以内、最も好ましくは、30%以内)に位置している振動板側変換構成要素とを組み合わせることが、有用である可能性がある。上記に説明されているように、軟質ヒンジを有する回転作用ドライバは、厳しい帯域幅要件を満たすことが可能であり、低減された半径において振動板側変換構成要素を位置することは、振動板可動域の広い角度にわたって、改善された線形性を提供することが可能である。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0648】
いくつかの用途において、軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、ユーザの耳の近位にデバイスを位置するための1つまたは複数の特徴とを、および、実質的に厚い振動板本体を有する振動板とを組み合わせることが、有用である可能性がある。繰り返しになるが、軟質ヒンジを有する回転作用トランスデューサは、厳しい帯域幅要件を満たすことが可能である。改善された低振動数応答のために潜在的に振動板サイズも増加させながら、低減される共振を介して高振動数帯域幅を改善するために、実質的に厚い振動板と組み合わせられると、その結果は、コスト効率が良いが潜在的に高性能のデバイスであることが可能である。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0649】
いくつかの用途において、軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、ユーザの耳の両方の近位にデバイスを位置するための1つまたは複数の特徴とを組み合わせることが、有用である可能性がある。ユーザの耳の近位に軟質ヒンジ回転作用トランスデューサを位置することの上述の利点は、そのようなデバイスがそれぞれの耳の近位に正確に位置しており、両耳でのステレオ(少なくとも)再生のための正確で一貫した繰り返し可能なキャリブレーションを可能にするときに完全に現実化され得る。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0650】
また、軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、コイルまたはその他の磁石振動板側変換構成要素(その質量中心は、回転軸にまたはそれに隣接して位置している)とを組み合わせることが、有用である可能性がある。ヒンジにおけるヤング率を低減させることは、高い振動数性能における過度の妥協なしに、低振動数エクステンションを改善することが可能である。コイルまたは磁石ベースの力伝達構成要素の実質的な質量を軸にまたは軸の近くに位置することは、振動板をより良好にバランスさせ、軟質ヒンジが影響を受けやすい可能性のある並進共振モードの励起を低減させることが可能である。コイルまたは可動磁石励起を移動させることは、振動板可動域の広い範囲にわたって、高い線形性を提供することが可能である。好ましくは、振動板側力変換構成要素は、磁石を含む。これは、並進モードが管理されるという意味において、軟質ヒンジアプローチによってうまく機能することが可能であり、したがって、磁石の高い質量は、許容不可能な限界をもたらさない。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0651】
いくつかの用途において、軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、実質的に厚い本体を有する振動板、および、回転軸にまたはそれに隣接して位置している質量中心を有する振動板側変換構成要素とを組み合わせることが、有用である可能性がある。ヒンジにおけるヤング率を低減させることは、高い振動数性能における過度の妥協なしに、低振動数エクステンションを改善することが可能である。実質的に厚い振動板は、改善された低振動数応答のために潜在的に振動板サイズも増加させながら、低減される共振を介して高振動数帯域幅を改善する。力伝達構成要素の実質的な質量を軸にまたは軸の近くに位置することは、振動板をより良好にバランスさせ、軟質ヒンジが影響を受けやすい可能性のある並進共振モードの励起を低減させることが可能である。1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0652】
軟質ヒンジを介してマウントされた回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと、トランスデューサ基部構造体とそのハウジングとの間での振動伝達を低減させるデカップリングシステムとの組合せは、特定の用途において有用である可能性がある。ヒンジの中におよび/またはヒンジの近位に低いヤング率材料を使用することは、より高い振動数における望まれない共振の観点から過度の妥協なしに、改善された低振動数エクステンションを提供することが可能であり、一方では、デカップリングシステムは、ハウジングまたはエンクロージャの共振の励起をコスト効率良く低減させることが可能である。上記のように、1つもしくは複数のヒンジ構成要素、または、ヒンジの近位の構成要素は、十分にダンピングされ得、または、その代わりに軟質になっていることが可能である。
【0653】
いくつかの用途において、軸の周りでの回転コンプライアンスを増加させること;最大可動域能力を増加させること;疲労破壊に対する感受性を低減させること;および/または、回転軸に対して垂直の方向に並進コンプライアンスを低減させることのうちのいくつかの組合せを改善することができる特別な幾何学形状を有する軟質の屈曲タイプ振動板ヒンジを提供することが、有用である可能性がある。
【0654】
有用である可能性のある軟質の振動板ヒンジは、ピンを含むことが可能であり、ピンは、振動板組立体またはドライバ基部のいずれかに剛性に接続されており、実質的に軸に沿って延在しており、それは、軟質の可撓性の材料によって取り囲まれており、軟質の可撓性の材料に固定されている。可撓性の材料は、ピンの周りに延在している振動板組立体またはトランスデューサ基部構造体のうちの他方の一部に接続することが可能である。この設計は、可撓性の材料がピンの周りに拘束され得るという事実に起因して、機械的なロバストネスを提供し、並進コンプライアンスを低減させることが可能である。
【0655】
別の潜在的に有用な軟質ヒンジは、軸に位置しているトーション要素を含む。振動板組立体は、要素の一方の端部に接続され得、また、他方の端部においてトランスデューサ基部構造体に接続され得る。これらの接続の一方または両方の接続は、実質的に軸に位置し得る。トーション要素の中間部分は、接続における故障の可能性を低減させるために、より薄くなっていることが可能である。
【0656】
1つの潜在的に有用な軟質ヒンジは、細長い屈曲要素を含み、その一方の端部は、振動板組立体に接続しており、別の端部は、基部に接続している。振動板組立体からトランスデューサ基部構造体までの屈曲材料を通る最短の長さは、長さに対して垂直の方向への細長い要素を横切る最小厚さの1.5倍よりも大きくなっており、より好ましくは、2倍よりも大きくなっており、最も好ましくは、2.5倍よりも大きくなっていることが可能である。好ましくは、屈曲材料を通る長さは、実質的に真っ直ぐになっている。ヒンジは、大幅に異なる方向に配向されている別の細長い要素を含むことが可能であり、それは、複数における並進に対するサポートの増加を提供することが可能である。その理由は、それぞれの要素が、それ自身の長さに沿った方向に不釣り合いに低減されるコンプライアンスを提供する可能性があるからである。接続ポイントは、ジョイントにおいて上昇した応力のポイントを生成させることを回避するために、より厚いプロファイルを含むことが可能である。いくつかの場合には、それぞれの可撓性の要素は、実質的に平面的になっており、軸に対して実質的に平行に配向されているが、繰り返しになるが、また、互いに対して軸の周りに回転され、それら自身の平面の中における並進に対して不釣り合いに増加されたサポートを提供するようになっている。
【0657】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の凹形表面を有する軟質ヒンジが使用され得る。その理由は、これらが、並進コンプライアンスに対して回転コンプライアンスを増加させる傾向があり、それは、上記に概説されているように、振動板ヒンジに関して有用であるからである。
【0658】
いくつかの実施形態では、コンプライアンスおよび/またはダンピングは、軟質のおよび/またはダンピングされたバージョンによって剛性の構成要素を置換することを介して、通常は剛性でありダンピングされていないヒンジタイプに付与され得る。例えば、玉軸受レースは、硬質であるがダンピングされたウレタン玉および/またはレースと置換される玉および/またはレースを有することが可能である。また、コンプライアント構成要素を介して剛性のヒンジを取り付けることによって、同様の結果が実現され得る。例えば、玉軸受レースは、ゴムの細いチューブの中に位置し、いくらかの軟質性および/またはダンピングを付与することが可能である。そのような設計の利点は、可動域角度能力の増加、基本的な共振振動数の低減、疲労破壊に対する感受性の低減、製造公差の低減、ならびに、さまざまな共振モードを管理するために軟質性およびダンピングを調整するためのフレキシビリティーを含むことが可能である。
【0659】
好ましくは、以前に説明された軟質ヒンジ設計の可撓性の材料は、射出成形または押し出し加工によって形成され、寸法および表面仕上げの精度および一貫性、ならびに、材料の均一性を改善するようになっており、それによって、可動域の角度および疲労寿命を改善する。好ましくは、可撓性の材料は、1つまたは複数のサポート構造体の上にオーバーモールドされており、応力上昇部を生成させる可能性がある過剰なグルーを残す傾向があり得るグルーイングプロセスを排除するようになっており、それによって、振動板可動域および/または疲労寿命を低減させる。そのような製造方法は、例えば、ヘッドホンおよびイヤホンなどに関して、小型化されたドライバの文脈においてとりわけ有用であり、特に、低振動数で動作するそのようなドライバの文脈において有用である。その理由は、よりコンプライアントで高い可動域で一般的に高性能のヒンジが必要とされ得るからである。
【0660】
好ましくは、ヒンジは、そのうえ、並進変位をダンピングさせる手段を組み込み、ヒンジにおける並進コンプライアンスに関連付けられて生じる可能性のある共振問題をさらに軽減するようになっている。
【0661】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、磁石を含み、好ましくは、これは、使用中の振動板に剛性に固定されている。好ましくは、磁石は、ネオジム鉄ホウ素磁石などのような強力なタイプの永久磁石であるか、または、トランスデューサがラウドスピーカでる場合には、必要とされるパワーハンドリング能力に対して高い強度および十分な温度抵抗を提供する他の適切な磁石タイプの永久磁石である。
【0662】
好ましくは、基部側変換構成要素は、それに剛性に固定されているコイルを含む。トランスデューサ効率は、コイルの周りの力線を方向付ける強磁性ポールピースの使用を通して改善され得るが、しかし、これは、潜在的に磁石/振動板組立体を高い静的な力にさらすことを含む問題を引き起こす可能性もある。そのような力は、特定のヒンジ、トランスデューサパーツ、およびハウジング材料を含む、影響を受けやすい構成要素の中にクリープを引き起こす可能性があり、過度のクリープは、パーツの望まれない擦れ、摩耗、および破損をもたらす可能性がある。クリープの管理は、ロバストの構成要素を必要とする可能性があり、それは、コストを増加させ、ヒンジの性能を限定する可能性があり、例えば、ヒンジは、例えば、よりコスト効率の良い信頼性の高い屈曲ヒンジというよりもむしろ、剛性の玉軸受レースを含む必要がある可能性があり、ハウジングは、プラスチックから成形されるというよりもむしろ、金属から鋳造される必要がある可能性がある。
【0663】
いくつかの実施形態では、強磁性の材料(少なくともそれらは、振動板に剛性に固定されていない)は、磁石から十分に離れるように位置し得、クリープを管理するための過度の要件なしに、静的な力が管理可能であり得るようになっている。大きい強磁性の表面は、磁石に負荷をかける観点から、特に問題が多い可能性がある。また、より高い透磁率を有する強力に強磁性の材料、例えば、純鉄、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、またはフェライトは、より大きい負荷を結果として生じさせる可能性がある。
【0664】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、1つまたは複数の他の強力に強磁性の構成要素を含むことが可能であり、1つまたは複数の他の強力に強磁性の構成要素は、磁石に剛性に接続されており、磁石構造体または組立体からかなりの磁束を担持することが可能である。これらは、磁石に剛性に固定されており、それらの固有の質量に作用する重力以外に、ヒンジシステムおよび磁石のハウジングに負荷を働かせることにならない。
【0665】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、磁石構造体または組立体のもの以外の強力に強磁性の材料を含む他の構成要素を含まなくてもよい。これは、磁石を引き付ける他の強磁性の物体が近接して存在していないことを意味することが可能であり、それによって、ヒンジシステムおよび磁石のハウジングにかかる負荷を回避することが可能である。
【0666】
強力に強磁性の材料を有する構成要素は、約300mμよりも大きいか、約500mμよりも大きいか、または、約1000mμよりも大きい、インサイチュでの(振動板がレスト状態での)最大比透磁率を有する構成要素を意味することが可能である。
【0667】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、磁気構造体または磁気組立体の構成要素以外に、1つまたは複数の他の強力に強磁性の構成要素を含むことが可能であり、磁気組立体は、他の強磁性の構成要素から実質的に遠位にある。繰り返しになるが、磁石を引き付ける他の強磁性の物体が近接して存在していないことを意味することが可能であり、それによって、ヒンジシステム、磁石のハウジング、および、場合によっては、振動板構造体自身にかかる負荷を回避することが可能である。
【0668】
いくつかの実施形態では、他の強磁性の構成要素は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に面する1つまたは複数の比較的に大きい表面または主表面を含むことが可能である。他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面は、磁石のまたは磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面または主表面から実質的に遠位にあることが可能であり、他の強磁性の構成要素と磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体との反応を軽減するかまたは大幅に最小化する。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。繰り返しになるが、これは、磁石を引き付ける他の強磁性の物体が近接して存在していないことを意味することが可能であり、それによって、ヒンジシステムおよび磁石のハウジングにかかる負荷を回避することが可能である。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離は、磁石からの距離に影響を与える可能性がある(著しい引力がその距離にわたって起こる可能性がある)ことに留意されたい。その理由は、1)それが磁石のサイズの可能なインディケーションであり、2)より大きい分離を有する反対側の磁極同士がより多くの磁界をより大きい距離に「投げ出す」傾向があるからである。
【0669】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の距離と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0670】
ヒンジは、とりわけ、軸に対して垂直の方向に静的荷重の影響を受けやすい可能性がある。その理由は、1)面している磁石のより大きいエリアが存在することが可能であり、それが、そのような方向に引き付けられ得、2)ヒンジが、屈曲表面を有することが可能であり、屈曲表面は、軸方向から見たときに薄くなっていることが可能であり(その理由は、これが、低振動数応答を拡張する軸の周りでの復元力を低減させることが可能であり、この薄さが、ヒンジを軸に対して垂直の方向への変形またはさらには座屈の影響を受けやすいものにすることができるからである)、3)軸に対して垂直の方向に極めて近接して、コイルなどのような基部側変換構成要素または空気シーリング表面が存在していることが可能であり、それは、そのような方向に印加される静的負荷の下でヒンジがあまりにも遠くへ撓む場合には、擦れる可能性があるからである。管理可能な限界の中でそのような方向に負荷を維持するために、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い比較的に大きい表面または主表面は、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に対して実質的に垂直の軸に沿って、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の最大距離の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に対して実質的に垂直の軸に沿って、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の対向する磁極同士の間の距離と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0671】
上述のように、ヒンジは、とりわけ、軸に対して垂直の方向への静的荷重の影響を受けやすい可能性があるので、磁石がそのような方向(軸に対して垂直)により多くの磁界をより大きい距離に「投げ出す」ことができないことが重要である可能性がある。回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法と磁石が軸に対して垂直の方向に磁界を「投げ出す」ことができる距離との間の相関関係が存在していることが可能であり、したがって、そのような方向への磁石の寸法が大きくなればなるほど、他の強磁性の表面は、過度の引力を回避するためにより遠くに離れる必要がある可能性がある。いくつかの実施形態では、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、回転軸に実質的に対して垂直の軸に沿った磁石の最大寸法と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0672】
また、磁石が磁界を「投げ出す」ことができる距離と近接している強磁性の表面に対して実質的に平行の1つまたは複数の方向への磁石の最大寸法との間の相関関係が存在していることが可能であり、したがって、そのような方向への磁石の寸法が大きくなればなるほど、他の強磁性の表面は、過度の引力を回避するために、より遠くに離れる必要がある可能性がある。いくつかの実施形態では、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、前記表面に対して平行および軸に対して垂直の方向への磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、前記表面に対して平行および軸に対して垂直の方向への磁石の最大寸法の少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、前記表面に対して平行および軸に対して垂直の方向への磁石の最大寸法と約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0673】
最も近い以前の3つの実施形態において、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の比較的に大きい表面または主表面は、回転軸に対して実質的に垂直になっているいくらかの方向に上述の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。その理由は、そのような方向が、ヒンジおよびハウジングなどにかかる荷重にとって重要であるからである。
【0674】
磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さの少なくとも約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体の最も近い表面または比較的に大きい表面もしくは主表面は、磁石の最大長さと約同じ距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面または主表面から分離され得る。
【0675】
磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法の少なくとも約0.4倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法の約0.6倍の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。磁石組立体の最も近いまたは比較的に大きい表面は、軸に対して垂直のいくつかの方向において、前記表面の局所性において前記表面に対して平行の方向への磁石の最大寸法と実質的に同様の距離だけ、他の強磁性の構成要素の比較的に大きい表面から分離されている。
【0676】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、磁石組立体に作用する重力に起因する力の70倍よりも大きい、より好ましくは、50倍よりも大きい、最も好ましくは、40倍よりも大きい力を、磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に対して働かせる他の強磁性の構成要素を含まない。繰り返しになるが、これは、そのような引力を管理可能な状態に維持することを助けることが可能であり、ヒンジ要素、ハウジング、および振動板などにかかる静的負荷を低減させる。
【0677】
いくつかの実施形態では、トランスデューサは、反対方向に磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体を引き付ける磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体に面する他の強磁性の構成要素を含む。いくつかの実施形態では、他の強磁性の構成要素に起因して磁石または磁気構造体もしくは磁気組立体にかかる正味の力は、無視できるかまたは約ゼロである。
【0678】
いくつかの実施形態では、他の強磁性の構成要素によって振動板に働かされる正味の力は、重力の効果に起因する振動板に対する力の20倍未満、より好ましくは、10倍未満、最も好ましくは、5倍未満になっている。
【0679】
いくつかの実施形態では、他の強磁性の構成要素によって振動板に働かされる正味の力は、インサイチュで、重力の効果に起因する振動板への力を約相殺することが可能である。
【0680】
他の強磁性の構成要素が磁石から離して維持されているかまたは完全に排除されているかのいずれかであるというデバイスを含む上記の実施形態は、磁石が回転軸に沿って振動板とオーバーラップする磁石組立体構造体と組み合わせて有用である可能性がある。磁石のオーバーラップは、振動板組立体の中に極めて近接して、より高い質量構成要素を維持し、共振問題を低減させ、また、潜在的に、さらなる共振モードを防止する剛性の振動板基部構造体としての役割も磁石に兼務させる。他の強磁性の構成要素を磁石から離していくらかの距離に維持すること、または、それらを完全に排除することは、ヒンジおよびハウジングにかかる静的負荷を低減させることが可能であり、より一般的で安価な製造方法(例えば、ハウジングの射出成形など)およびより高性能であるが繊細なヒンジシステム(例えば、など)の使用を可能にし、例えば、より低いヤング率の材料をヒンジの中へ組み込み、共振問題にさらに対処する。全体的な結果は、安価であるが高性能の変換デバイスである。
【0681】
他の強磁性の構成要素が磁石から離して維持されているかまたは完全に排除されているかのいずれかであるというデバイスを含む上記の実施形態は、回転軸から振動板組立体の対向する終端端部への長さの約6倍未満であるか、4倍未満であるか、または3倍未満である、軸方向への最大幅を含む振動板組立体と組み合わせて有用である可能性がある。その理由は、そのようなよりコンパクトな割合が、振動板組立体の中に極めて近接して、より高い質量構成要素を維持し、共振問題を低減させるからである。繰り返しになるが、これは、他の強磁性の構成要素をいくらかの距離だけ離して維持するかまたはそれらを完全に排除することと組み合わせて有用である。その理由は、これが、ハウジングおよびヒンジシステムのためのより実用的で安価なおよび/または高性能の製造方法および材料を促進させることが可能であり、潜在的に、共振を低減させ、安価であるが高性能の変換デバイスを結果として生じさせるからである。
【0682】
好ましくは、磁石が金属パーツの中に収容されている場合には、これは、1立方センチメートル当たり約2.2グラム未満の密度を有している。好ましくは、磁石の付近にある金属パーツは、磁石の固体体積よりも低い固体体積、または、磁石の固体体積の約0.8倍未満の固体体積を有することが可能である。金属パーツは、磁石の平均半径よりも小さい平均半径に位置し得る。これは、過度の質量を回避することが可能であり、過度の質量は、そうでなければ、共振モードを悪化させることが可能であり、また、質量が存在する場合には、半径が振動板組立体の回転慣性に過度に寄与しないように、半径は大きくなり過ぎないようになっている。
【0683】
いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位にある側のコイルの面または側部は、それと密接な接触している任意の強力に強磁性の材料を有していなくてもよい。いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位にある側のコイルの面または側部は、それと剛性に接続されている任意の強力に強磁性の材料を有していなくてもよい。また、好ましくは、電磁機構の磁石の近位にポールピースは存在していない。このように、磁石/振動板に剛性に取り付けられている任意のもの以外の強磁性の表面は、磁石の極めて近接した場所から除去され得る。これは、1つまたは複数の磁界が効果的に方向付けられない可能性があるので、トランスデューサ効率の低減を結果として生じさせる可能性があるが、しかし、ヒンジおよびハウジングなどにかかる静的負荷の低減が存在することが可能であり、それは、より高性能のおよび/または安価な材料および製造方法を促進させることが可能であり、デバイス信頼性を改善することが可能である。また、好ましくは、フレキシブルヒンジが使用され、それは、簡単な製造および低い振動板の基本的な共振振動数などのような利点を提供するが、強磁性の要素がより近位にないかまたは存在していないので、静的負荷から結果として生じるクリープまたは破壊の影響をそれほど受けやすくないことが可能である。
【0684】
いくつかの実施形態では、電磁機構の磁石から遠位にある側のコイルの面または側部は、向こう側の任意の強力に強磁性の材料に対して、少なくとも1mmの、より好ましくは、少なくとも2mmの、最も好ましくは、少なくとも4mmのギャップを有することが可能である。
【0685】
いくつかの実施形態では、オーディオトランスデューサは、コイルの周りに任意のポールピースを含まなくてもよい。代替的な実施形態では、オーディオトランスデューサは、コイルの周りにポールピースを含むことが可能である。
【0686】
いくつかの実施形態は、回転可能な振動板を有するトランスデューサと;磁石である振動板側変換構成要素と;磁極同士の間の一次内部磁界の方向が、振動板の冠状面に対して実質的に角度付けされ得ることと;磁石は、回転軸とオーバーラップすることが可能であることと;コイルを含む基部側変換構成要素は、変換機構の磁石に隣接して位置しており、それに巻き付けられ得ること;軸の一方の側部におけるコイル巻線の一方の側部は、連続的な強磁性ポールピース回路を介して、磁石の他方の側部におけるコイル巻線の別の側部に連続的に接続されていないこととを組み合わせている。好ましくは、一次磁界の方向は、振動板の冠状面、または、振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に直交していることが可能である。好ましくは、コイルは、振動板の冠状面および矢状面と交差する軸の周りに巻き付けられ得る。この振動板およびコイル配向は、簡単さ、モータの高い線形の可動域能力、および合理的な効率の利点を提供する。その理由は、磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、回転慣性を最小化するからである。一方の側のコイル巻線が連続的な強磁性回路によって接続されていないという事実は、磁石に作用する引力を低減させることが可能であり、それは、潜在的に、アンバランスであるかまたはアンバランスになる可能性があり、ヒンジおよびハウジングなどにかかる静的負荷の可能性を低減させ、それは、より高性能のおよび/または安価な材料および製造方法を促進させることが可能であり、および、デバイス信頼性を改善することが可能である。その結果は、安価であるが高性能のトランスデューサであることが可能である。また、好ましくは、フレキシブルヒンジが使用され、それは、簡単な製造および低い振動板の基本的な共振振動数などのような利点を提供するが、連続的な強磁性回路が存在していないので、静的負荷から結果として生じるクリープまたは破壊の影響をそれほど受けやすくないことが可能である。
【0687】
いくつかの実施形態は、回転可能な振動板を有するトランスデューサと;磁石である振動板側変換構成要素と;磁極同士の間の一次内部磁界の方向が、振動板の冠状面に対して実質的に角度付けされ得ることと;磁石は、回転軸とオーバーラップすることが可能であることと;コイルを含む基部側変換構成要素は、変換機構の磁石に隣接して位置しており、それに巻き付けられ得ること;フレキシブルヒンジを含む振動板サスペンションとを組み合わせている。好ましくは、一次磁界の方向は、振動板の冠状面、または、振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に直交していることが可能である。好ましくは、コイルは、振動板の冠状面および矢状面と交差する軸の周りに巻き付けられ得る。この振動板およびコイル配向は、簡単さ、モータの高い線形の可動域能力、および合理的な効率の利点を提供する。その理由は、磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、回転慣性を最小化するからである。屈曲タイプヒンジは、より簡単な製造および低い振動板の基本的な共振振動数などのような利点を提供することが可能である。ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体並進の構成要素を伴う1つまたは複数の共振モードの励起の低減が存在していることが可能である。その理由は、重い磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、潜在的に、バランシングを改善するからである。
【0688】
いくつかの実施形態は、回転可能な振動板を有するトランスデューサと;磁石である振動板側変換構成要素と;磁極同士の間の一次内部磁界の方向が、振動板の冠状面に対して実質的に角度付けされ得ることと;磁石は、回転軸とオーバーラップすることが可能であることと;コイルを含む基部側変換構成要素は、変換機構の磁石に隣接して位置しており、それに巻き付けられ得ること;軟質ヒンジを含む振動板サスペンションとを組み合わせている。好ましくは、一次磁界の方向は、振動板の冠状面、または、振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に直交していることが可能である。好ましくは、コイルは、振動板の冠状面および矢状面と交差する軸の周りに巻き付けられ得る。この振動板およびコイル配向は、簡単さ、モータの高い線形の可動域能力、および合理的な効率の利点を提供する。その理由は、磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、回転慣性を最小化するからである。軟質タイプヒンジは、より簡単な製造および低い振動板の基本的な共振振動数などのような利点を提供することが可能である。ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体並進の構成要素を伴う1つまたは複数の共振モードの励起の低減が存在していることが可能である。その理由は、重い磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、潜在的に、バランシングを改善するからであり、それは、軟質ヒンジタイプと併用して有用である。その理由は、そのようなモードが、動作帯域幅の中で起こる可能性が高いからである。
【0689】
いくつかの実施形態は、回転可能な振動板を有するトランスデューサと;磁石である振動板側変換構成要素と;磁極同士の間の一次内部磁界の方向が、振動板の冠状面に対して実質的に角度付けされ得ることと;磁石は、回転軸とオーバーラップすることが可能であることと;コイルを含む基部側変換構成要素は、変換機構の磁石に隣接して位置しており、それに巻き付けられ得ること;磁石が回転軸に沿って振動板とオーバーラップしていることとを組み合わせている。好ましくは、一次磁界の方向は、振動板の冠状面、または、振動板構造体の振動板の冠状面に対して実質的に直交していることが可能である。好ましくは、コイルは、振動板の冠状面および矢状面と交差する軸の周りに巻き付けられ得る。この振動板およびコイル配向は、簡単さ、モータの高い線形の可動域能力、および合理的な効率の利点を提供する。その理由は、磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、回転慣性を最小化するからである。軟質タイプヒンジは、より簡単な製造および低い振動板の基本的な共振振動数などのような利点を提供することが可能である。ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体並進の構成要素を伴う1つまたは複数の共振モードの励起の低減が存在していることが可能である。その理由は、重い磁石が、軸とオーバーラップして位置しており、それによって、潜在的に、バランシングを改善するからである。磁石が振動板とオーバーラップすることは、振動板組立体の中に極めて近接して、より高い質量構成要素を維持することによって、また、潜在的に、さらなる共振モードを防止する剛性の振動板基部構造体としての役割も磁石に兼務させることによって、望まれない共振に対処する。
【0690】
いくつかの実施形態は、回転可能な振動板を有するトランスデューサと;磁石である振動板側変換構成要素と;対向する磁極同士の間の磁石の一次内部磁界が、振動板の冠状面に対して実質的に平行になっており、振動板の回転軸に対して(例えば、直交してなど)実質的に角度付けされ得ることと;基部側変換構成要素は、変換機構の磁石に隣接して位置しているコイルを含み、磁石の磁極に隣接する領域の周りに巻き付くことが可能であることとを組み合わせている。好ましくは、複数のコイルは、変換機構の磁石に隣接して位置し得、それぞれが、磁石の磁極のうちの1つに隣接する領域に巻き付いている。領域は、磁極に直接的に隣接していることが可能である。好ましくは、コイルは、直列にまたは並列に接続されている。この振動板およびコイル配向は、簡単さおよびモータの高い線形の可動域能力という利点を提供する。磁極の近位にあるコイルの場所は、磁石の近位の強磁性ポールピースに関する要件を低減させるかまたは排除することが可能であり、潜在的に、引力を低減させ、ヒンジおよびハウジングなどにかかる静的負荷の可能性を低減させ、それは、より高性能のおよび/または安価な材料および製造方法を促進させることが可能であり、製品信頼性を改善することが可能である。好ましくは、磁石は、軸とオーバーラップしており、潜在的にバランシング改善することによって、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる振動板組立体並進の構成要素を伴う1つまたは複数の共振モードの励起を低減させる。好ましくは、磁石は、軸方向に振動板とオーバーラップしており、さまざまな共振モードに対処する。好ましくは、磁石に対する引力を最小化することを助けるために、コイル巻線よりも磁石に近い強磁性の材料は存在していない。好ましくは、2つの異なるコイルを連続的に接続する強磁性の経路は存在していない。
【0691】
いくつかの実施形態では、軸とオーバーラップする磁石の代わりに、振動板先端部から軸の反対側に位置している磁石の少なくともいくらかのパーツが存在している。好ましくは、磁石質量の実質的なパーツは、振動板先端部から軸の反対側に位置している。好ましくは、振動板組立体は、単一の磁石を含む。
【0692】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、磁石である。振動板は、フレキシブルタイプヒンジの上に回転可能にマウントされており;フレキシブルヒンジは、以前に説明されているように以下の特徴のうちの1つまたは複数を含む。
・細長い屈曲セクション
・2つの角度付きの要素
・空気空洞/フォーム
・異方性
【0693】
可動磁石トランスデューサは、高性能でありながら、生産するのに簡単で安価であることが可能である。不利益は、高い質量に起因して、振動板並進を伴う共振モードを管理することの困難性と、ヒンジを含む支持構成要素の静的負荷および起こり得るクリープを管理することの困難性とを含む可能性がある。上述のヒンジ特徴は、並進コンプライアンスに対して増加した回転コンプライアンスを提供することが可能であり、それは、改善された低振動数帯域幅に関する基本的な振動板共振振動数を低減させ、振動板可動域を改善し、疲労寿命を改善し、磁石の引力およびより高い質量に起因するクリープに対する抵抗を改善することが可能である。
【0694】
いくつかの実施形態では、振動板側変換構成要素は、磁石であり、振動板は、フレキシブルタイプヒンジの上に回転可能にマウントされており、基部側力変換構成要素は、コイルを含み、磁石から所定の距離だけ離れた強磁性のシールディングが存在しており、それは、磁石またはコイルのいずれかのすぐ近位にはない。可動磁石設計およびフレキシブルヒンジ設計の両方は、簡単で効果的である可能性があるが、しかし、互いに組み合わせて、例えば、第2の外部磁石が振動板磁石の近くに持って行かれる場合には、比較的に繊細なヒンジ構成要素の中に、例えば座屈を介して、クリープまたは破壊のリスクが存在している。この潜在的な問題に対処するために、強磁性のシールディング(それは、例えば、有孔の強磁性のグリルを含むことが可能である)が、磁石をシールドすることが可能である。しかし、好ましくは、シールディングは、過度の静的荷重を引き起こすことを回避するために、近過ぎないようになっている。好ましくは、バランスしている引力を提供するために、1つまたは複数のさらなる強磁性の構成要素が、磁石の反対側に、集合的に/平均的に位置しており、その目標は、磁石にかかる正味の静的な力が低減されてできれば小さくなることである。
【0695】
代替的にまたは加えて、ヒンジは、軟質の材料を含むか、または、軟質の材料を極めて近接して有している。軟質の材料は、十分にダンピングされ得る。例えば、ヒンジは、玉軸受レースであることが可能であり、軟質の材料は、レースを取り囲むウレタンの薄いリングであることが可能である。軟質の材料は、ヒンジコンプライアンスに関連付けられる並進の振動板共振モードの管理を支援することが可能であり、例えば、そのようなモードの振動数は、意図された動作帯域幅の下方にシフトされ得、または、軟質の材料の固有のダンピングを介して管理され得る。強磁性のシールディングは、例えば、軟質の材料の中のクリープまたは破壊を結果として生じさせる可能性のある過度の磁力荷重から、軟質の材料を保護することが可能である。
【0696】
いくつかの実施形態では、ラウドスピーカトランスデューサは、振動板側変換構成要素が磁石であることと;振動板がドライバ基部に回転可能にマウントされていることと;コイルを含む基部側力変換構成要素と;2.5オーム未満の、より好ましくは、2オーム未満の、最も好ましくは、1オーム未満のDC抵抗を有するコイルとを含む。可動磁石トランスデューサは、低い共振を介した高性能と、良好なパワーハンドリング(その理由は、コイルが静止しており、伝導を介して冷却され得るからである)と、可動の振動板を接続するためにワイヤーが必要ないという事実に起因する製造の簡単化と、コストを低減させるための小さい磁石質量と、コイルが使用中に実質的に静止したままになっているという事実に起因してコイル質量を増加させるためのフレキシビリティーの改善とを含む、複数の利点を潜在的に提供することが可能である。しかし、コイル質量を増加させる能力は、限界に達する可能性があり、それによって、追加的なワイヤーターンは、トランスデューサの高振動数応答が下がるポイントまで、コイルインダクタンスを増加させることを結果として生じさせる。この実施形態は、代わりに、3.1~7オームの標準値の下方にDC抵抗を低減させ、潜在的に、特別に設計された増幅器を必要とする。利点は、ワイヤー直径を増加させることによって、コイルワイヤー質量がさらに増加され得ることである。利点は、潜在的に、ドライバ効率およびパワーハンドリングの改善を含むことが可能であり、後者は、ワイヤー質量の増加に起因しており、ワイヤー質量の増加は、ヒートシンクとして作用することができ、伝導冷却および/または対流冷却のための潜在的に増加した表面積を有することが可能である。
【0697】
いくつかの実施形態では、オーディオシステムは、ラウドスピーカトランスデューサと;磁石を含む振動板側変換構成要素と;フレキシブルタイプヒンジの上に回転可能にマウントされた振動板と;コイルを含む基部側力変換構成要素と;入って来るオーディオ信号を調節するイコライゼーションシステムとを含む。好ましくは、イコライゼーションシステムは、より高い振動数のレベルを増加させる。好ましくは、コイルインダクタンスは、ドライバのタイプに関する標準よりも高くなっている。好ましくは、ドライバの振動数応答は、動作帯域幅の上限に向けて低減している。この実施形態では、ドライバ効率は、回転慣性に影響を与えることなくワイヤー質量を増加させる可能性を再び利用することによって、少なくとも全体的に改善され得るが、しかし、この例では、ワイヤーターンが、潜在的に、関連のコイルインダクタンスがより高い振動数において応答ロールオフを生成させるポイントへ増加される。このロールオフは、イコライゼーションシステムによって補正され得、好ましくは動作帯域幅にわたって過度のロールオフを示さない全体的な応答を結果として生じさせる。ドライバ効率は、インダクタンスロールオフに起因して、より高い振動数において低減され得るが、しかし、全体的な効率は、ワイヤーターンの増加および振動板に印加されるトルクの関連の増加に起因して改善され得る。別の利点は、より標準的な増幅器設計を利用する能力であることが可能であり、それは、3~8オーム負荷への出力を快適に動作させることが可能である。
【0698】
いくつかの実施形態では、ラウドスピーカトランスデューサは、振動板と;振動板側変換構成要素が磁石であることと;振動板が、ドライバ基部に回転可能にマウントされていることと;ドライバ基部が、デカップリングシステムを介して、振動板以外の別の構成要素にマウントされていることとを含む。可動磁石振動板設計は、上記に概説されている理由のために、低共振でコスト効率の良いトランスデューサに関する基礎を形成することが可能である。また、デカップリングマウンティングシステムは、例えば、トランスデューサがマウントされ得るハウジングまたはバッフルまたはエンクロージャの共振モードの励起を低減させることによって、潜在的にコスト効率の良い方式で、共振問題を低減させることが可能である。その結果は、コスト効率が良いが高性能のデバイスであることが可能である。
【0699】
いくつかの実施形態は、回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと;ユーザの耳の近位にデバイスを位置するための1つまたは複数の特徴と;磁石を含む振動板側変換構成要素とを組み合わせる。可動磁石振動板側変換構成要素を備えた回転可能にマウントされた振動板に基づくオーディオトランスデューサは、そのようなドライバの特質とパーソナルオーディオドライバに特有の特別な要件との間のマッチに起因して、ユーザの耳に極めて近接して、予期せずにうまく機能することが可能である。具体的には、パーソナルオーディオドライバは、耳に近接していることに起因して、高い体積の可動域に関する要件を低減させており、したがって、性能が、帯域幅考慮事項によって比較的に多く制限される。説明されているような可動磁石回転作用ドライバは、良好な動作帯域幅を提供することが可能である。その理由は、より薄っぺらなシェル状のコイル構造体の中に起こり得る屈曲、ツイスティング、曲げ、および座屈に対する感受性なしに、磁石が、振動板の基部を支持する比較的に剛性の基礎を提供することが可能であり、それは、高振動数帯域幅が改善され得ることを意味しており、および;従来のヘッドホンドライバにおいて高振動数共振を生成させる可能性のある対応する「柔らかさ」なしに、ヒンジが回転においてより容易にコンプライアントにされ得るので、回転作用ドライバは、良好な低振動数エクステンションを提供するのに十分に適している傾向があるからである。そのようなドライバは、ワイヤーが可動振動板に接続する必要がないので小型化が容易であることに起因する簡単化された製造と;簡単なヒンジが射出成形され得、例えば、それは、高い振動数共振に対する感受性なしに、良好な低振動数エクステンションを提供することが可能であることと;振動板組立体が十分に小さく、必要とされる公差を低減させるバランシング/チューニングというよりもむしろ剛性性を介して共振が対処され得ることとを含む、さらなる利点を提供することが可能である。好ましくは、磁石は、回転軸に沿って振動板とオーバーラップし、それは、振動板組立体の中により近接して、より高い質量構成要素を維持することが可能であり、繰り返しになるが、共振問題を低減させる。好ましくは、少なくとも2つのそのようなデバイスは、耳ごとに1つマウントされ、ステレオサウンドまたは他のマルチチャネルサウンドフォーマットを再生するように構成されている。
【0700】
いくつかの実施形態は、回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと;磁石を含む振動板側変換構成要素と;主面のうちの1つまたは複数に連結されている軽量のコアおよび垂直補強材を含む振動板構築物とを組み合わせており、垂直応力補強は、軸の近位の振動板の領域に対して、主回転軸から遠位の振動板の領域において、単位面積当たりにより低い質量を含む。末端における質量を低減させることは、前述の領域によって必要とされるサポートを低減させ、次いで、前述の領域もより軽くされ得、軸のさらにより近くに必要とされるサポートを累積的に低減させるなどし、正味の効果は、特定の重要な振動板先端部撓み共振モードの振動数を増加させることである。この構築物は、可動磁石回転振動板設計によって連結されているときに、振動板共振に対して比較的にロバストであることが可能であり、そのうえ、製造するのに比較的に簡単であり、潜在的に、効果的であるが安価なデバイスを作り出すことが可能である。好ましくは、磁石は、回転軸に沿って振動板とオーバーラップし、それは、振動板組立体の中により近接して、より高い質量構成要素を維持することが可能であり、繰り返しになるが、共振問題を低減させる。
【0701】
いくつかの実施形態は、回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと;磁石を含む振動板側変換構成要素と;磁石が、振動板の取り付けを改善するための1つまたは複数の外部特徴を備えて形状決めされていることとを組み合わせる。可動磁石回転作用トランスデューサにおいて使用される典型的な磁石形態は、長方形ブロックまたは円筒などのような形態を含むことが可能である。これらの形状は、均一な磁界を提供するのに適切である可能性があるが、しかし、それらは、振動板を取り付ける観点から問題が多い可能性があり、以下を含む、潜在的な問題を伴う:振動板が最も幅広いポイントに取り付けられる場合には、これが振動板可動域の最大角度を制限する可能性があること、または;取り付けが内部領域に対するものである場合には、取り付けは、突き合わせ接手を介したものである可能性があり、例えば、それは、より弱くなり、応力の局所的な増加を起こしやすい可能性があること。この実施形態は、所定の場所における取り付けのための表面を備えた磁石を形成することを介して、そのような問題を解決することを助けることが可能であり、所定の場所は、振動板可動域がより制限的でなく、および/または、負荷が張力/圧縮というよりもむしろ剪断において大きくなるように配向されている。好ましくは、特徴は、ロバストの取り付けのために十分な表面積を提供する。好ましくは、前記特徴は、接着剤荷重が、張力/圧縮または突き合わせ接手とは対照的に、剪断においてより大きくなるように配向されている。好ましくは、取り付け特徴は、応力上昇部/集中幾何学形状を回避する。好ましくは、特徴は、振動板可動域を過度に制限することなく、接続を促進させる。好ましくは、振動板構築物は、主面のうちの1つまたは複数に連結されている軽量のコアおよび垂直補強を含み、垂直応力補強材は、前記特徴に取り付けられる。好ましくは、特徴は、振動板の冠状面に対して実質的に平行に配向された表面を組み込む。
【0702】
いくつかの実施形態は、回転作用振動板を有するオーディオトランスデューサと;磁石を含む振動板側変換構成要素と;1つまたは複数の比較的に厚い中間取り付け構成要素とを組み合わせ、1つまたは複数の比較的に厚い中間取り付け構成要素は、増加した表面積によって磁石に取り付けられることと;局所的な応力増加に抵抗するのに十分な厚さを含むことと;以前の実施形態における取り付け特徴のように設計されている1つまたは複数の表面を介して、1つまたは複数のより薄い振動板構成要素振動板に負荷を伝達することとが可能である。これらの構成要素は、基本的に、磁石に接着されており、以前の例の取り付け特徴の機能を複製している。
【0703】
いくつかの実施形態では、ラウドスピーカトランスデューサは、振動板と;振動板側変換構成要素が磁石であることと;振動板がドライバ基部に回転可能にマウントされていることと;ドライバ基部が冷却フィンを有しており、冷却フィンはコイルの中に発生される熱を除去することを助けるために組み込まれていることとを含む。好ましくは、ドライバ基部は、前記コイルから離れる熱の伝導を最大化するために、コイルに密接に接続されている。好ましくは、冷却フィンのうちのいくつかは、冷却を改善するために、外気に露出されている。好ましくは、他のフィンは、デバイスの内側の空気に露出されている。利点は、フィンが、環境に露出されている基部の面積を増加させ、それによって、冷却速度を増加させ、デバイスのパワーハンドリング能力を改善することである。
【0704】
本発明の先述の説明は、好適な実施形態のオーディオトランスデューサ、オーディオデバイス、ヒンジシステム、および電子デバイス実施形態を含む。また、説明は、上述の好適な実施形態に関係する他のシステム、組立体、構造体、デバイス、方法、および機構の設計および構築のさまざまな実施形態、例、および原理を含む。関連の技術分野における当業者に明らかであるように、添付の特許請求の範囲によって定義されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書で開示されている実施形態に対する修正、ならびに、本明細書で開示されている他の関連のシステム、組立体、構造体、デバイス、方法、および機構に対する修正が行われ得る。
図1A-1E】
図1F
図1G
図1H
図1I
図2A-2E】
図2F
図3A-3F】
図3G-3H】
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A-7E】
図7G-7I】
図7J
図8A
図8B
図8C
図9A-9D】
図10
図11
図12A-12E】
図12F-12J】
図12K
図12L-12O】
図12P
図13A-13E】
図13F-13J】
図13K
図13L-13O】
図13P
図14A-14D】
図15A-15C】
図16A-16C】
図17A-17B】
図18A-18B】
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図22C
【手続補正書】
【提出日】2024-10-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板と、
トランスデューサ基部構造体と、
前記振動板が前記トランスデューサ基部構造体に対して回転軸の周りに回転することができるように前記振動板を前記トランスデューサ基部構造体に対して回転可能にマウントするように構成された振動板サスペンションであって、少なくとも1つのヒンジを含み、前記振動板が前記回転軸から半径方向に延びる振動板サスペンションと、
前記振動板に動作可能に結合されてオーディオ信号と音圧との間を変換する変換機構と
を備え、
前記振動板が、前記振動板の単一半径方向に沿って実質的に凸状であるプロファイルを有する少なくとも1つの主面を備える、オーディオトランスデューサ。
【外国語明細書】