(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025137988
(43)【公開日】2025-09-25
(54)【発明の名称】ベーパセパレータ、ベーパセパレータの製造方法及び船外機
(51)【国際特許分類】
F02M 37/20 20060101AFI20250917BHJP
F02M 37/06 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
F02M37/20 C
F02M37/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036551
(22)【出願日】2024-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000177612
【氏名又は名称】株式会社ミクニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】及川 匠
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制しながら燃料ポンプの組付けを容易に行うことができるベーパセパレータ及びベーパセパレータの製造方法を提供する。
【解決手段】燃料供給系統に設けられるベーパセパレータ1(1A,1B)は、液体燃料を貯留するためのタンク2と、タンク2内に設けられる燃料ポンプ10と、を備える。タンク2は、燃料ポンプ10の上部が組み付けられる上側部材2Aと、上側部材2Aの下方に位置して上側部材2Aに連結されるとともに、燃料ポンプ10の下部を保持するための保持部40を有する下側部材2Bと、を含む。タンク2の下側部材2Bは、平面視において下側部材2Bの側壁7と保持部40との間に位置し、燃料ポンプ10の上部が組付けられた上側部材2Aの下側部材2Bへの組付け時に、燃料ポンプ10の下部を保持部40に向けて案内するためのガイド部60(60A,60B)を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンへ燃料を供給する燃料供給系統に設けられるベーパセパレータであって、
液体燃料を貯留するためのタンクと、
前記タンク内に設けられる燃料ポンプと、
を備え、
前記タンクは、
前記燃料ポンプの上部が組み付けられる上側部材と、
前記上側部材の下方に位置して前記上側部材に連結されるとともに、前記燃料ポンプの下部を保持するための保持部を有する下側部材と、
を含み、
前記タンクの前記下側部材は、平面視において前記下側部材の側壁と前記保持部との間に位置し、前記燃料ポンプの前記上部が組付けられた前記上側部材の前記下側部材への組付け時に、前記燃料ポンプの前記下部を前記保持部に向けて案内するためのガイド部を含む
ベーパセパレータ。
【請求項2】
前記ガイド部は、少なくとも部分的に、前記下側部材の側壁と前記保持部との間、かつ、前記保持部よりも高所に位置するように前記下側部材に設けられる
請求項1に記載のベーパセパレータ。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記タンクの前記下側部材の前記側壁の内壁から突出するように、前記保持部の周りに放射状、かつ、鉛直方向に沿って設けられる複数の鉛直リブを含み、
各々の前記鉛直リブは、前記タンクの前記下側部材の側壁の内面からの突出量が下方に向かって増加する
請求項1又は2に記載のベーパセパレータ。
【請求項4】
前記ガイド部は、前記保持部から上方かつ径方向外側に向かって延在する円錐台ガイドである
請求項1又は2に記載のベーパセパレータ。
【請求項5】
前記燃料ポンプは、
ポンプ本体と、
前記ポンプ本体の下部を覆う弾性カバーと、
を含み、
前記保持部は、
前記燃料ポンプの前記下部を取り囲むように前記下側部材の底面から突出して設けられる環状凸部と、
前記環状凸部の内周側において、前記弾性カバーと篏合する篏合部と、
を含む
請求項1又は2に記載のベーパセパレータ。
【請求項6】
前記燃料ポンプの前記上部と前記上側部材との間に設けられる弾性ブッシュを備える
請求項1又は2に記載のベーパセパレータ。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のベーパセパレータを製造するための方法であって、
前記燃料ポンプの前記上部を前記タンクの前記上側部材に組み付けるステップと、
前記ガイド部により前記燃料ポンプの前記下部を前記保持部に向けて案内しながら、前記上側部材及び前記燃料ポンプを前記下側部材に向けて降下させるステップと、
前記燃料ポンプの前記下部が前記保持部によって保持された状態で、前記タンクの前記上側部材および前記下側部材を締結するステップと、
を備えるベーパセパレータの製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のベーパセパレータと、
前記ベーパセパレータを経由して供給される燃料を燃焼させて動力を生成するためのエンジンと、
前記エンジンからの前記動力によって駆動されるプロペラと、
を備える船外機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンの燃料供給系統に設けられるベーパセパレータ及びその製造方法、並びに、ベーパセパレータを備える船外機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、船外機のエンジンへの燃料供給系統に設けられて、エンジンへ燃料を供給するベーパセパレータが知られている。一般に、ベーパセパレータは、液体燃料を貯留するためのタンクと、タンク内に設けられる燃料ポンプとを含む。
例えば、特許文献1には、液体燃料を貯留するためのケース(タンク)をアッパケース(上側部材)及びロアケース(下側部材)により構成し、ケース(タンク)内に高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)を収容したベーパセパレータが記載されている。特許文献1記載のベーパセパレータでは、高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)の上部がゴム製のブッシュを介してケース(タンク)のアッパケース(上側部材)に支持される一方、高圧燃料ポンプ(燃料ポンプ)の下部がクッションゴムを介してロアケース(下側部材)によって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば特許文献1記載のベーパセパレータを組み立てる際、燃料ポンプ(高圧燃料ポンプ)をタンクの上側部材(アッパケース)に組付けた状態で、上側部材及び燃料ポンプをタンクの下側部材(ロアケース)に組み付ける方法が考えられる。
しかし、燃料ポンプはそれ自体が重量物であることから、燃料ポンプは、アッパケース(上側部材)から吊り下げられた状態でブッシュを支点として揺動し得る。このため、タンクの上側部材及び燃料ポンプのタンクの下側部材への組付けの際、燃料ポンプの位置が安定せず、組付け作業を円滑に行うことが難しい。
【0005】
組付け作業中の燃料ポンプの位置を安定化させるために、ブッシュに加えて、タンクの上側部材に対して燃料ポンプを不動に固定するためのブラケット(ポンプ固定部品)を設けることも考えられるが、この場合には、部品点数の増加に伴うコスト上昇の問題がある。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも幾つかの実施形態は、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制しながら燃料ポンプの組付けを容易に行うことができるベーパセパレータ、ベーパセパレータの製造方法及び船外機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るベーパセパレータは、
エンジンへ燃料を供給する燃料供給系統に設けられるベーパセパレータであって、
液体燃料を貯留するためのタンクと、
タンク内に設けられる燃料ポンプと、
を備え、
タンクは、
燃料ポンプの上部が組み付けられる上側部材と、
上側部材の下方に位置して上側部材に連結されるとともに、燃料ポンプの下部を保持するための保持部を有する下側部材と、
を含み、
タンクの下側部材は、平面視において下側部材の側壁と保持部との間に位置し、燃料ポンプの上部が組付けられた上側部材の下側部材への組付け時に、燃料ポンプの下部を保持部に向けて案内するためのガイド部を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態によれば、燃料ポンプの上部が組付けられた上側部材の下側部材への組付け時に、燃料ポンプの下部を保持部に向けて案内するためのガイド部を設けたので、燃料ポンプの組付けを容易に行うことができる。
また、タンクの上側部材に対して燃料ポンプを不動に固定するためのブラケット(ポンプ固定部品)が不要であるから、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るベーパセパレータの概略図である。
【
図2】
図1に示すベーパセパレータの組立ての様子を示す概略図である。
【
図3】一実施形態に係るベーパセパレータの断面図である。
【
図4】一実施形態に係るベーパセパレータの燃料ポンプの下部を下方から視た図である。
【
図5】一実施形態に係るベーパセパレータの燃料ポンプ及びフィルタ要素を示す斜視図である。
【
図6】一実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の平面図である。
【
図7】一実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の部分断面斜視図である。
【
図8】一実施形態に係るベーパセパレータの組立ての様子を示す部分断面斜視図である。
【
図9】他の実施形態に係るベーパセパレータの断面図である。
【
図10】他の実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の部分断面斜視図である。
【
図11】一実施形態に係る船外機の構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
図1は、一実施形態に係るベーパセパレータの概略図である。
図2は、
図1に示すベーパセパレータの組立ての様子を示す概略図である。
【0012】
図1に示すように、幾つかの実施形態では、ベーパセパレータ1は、液体燃料を貯留するためのタンク2と、タンク2内に設けられる燃料ポンプ10とを含む。
【0013】
ベーパセパレータ1は、例えば船外機に用いられるエンジンへの燃料供給系統に設けられ、燃料タンクからエンジンへ燃料を供給する燃料供給管の途中に用いられる。
図1に示す例では、ベーパセパレータ1は、タンク2の内圧上昇を防止するためにタンク2内の燃料蒸気を大気開放するベント通路(不図示)を有する開放式ベーパセパレータである。
他の実施形態では、ベーパセパレータ1は、タンク2の内部空間に連通するベント通路を有しない密閉式ベーパセパレータである。密閉式ベーパセパレータでは、燃料ポンプの吸入口には液体燃料だけでなく燃料蒸気も導かれ、燃料蒸気は燃料ポンプによって液化され、液体燃料とともにエンジンに送られる。
【0014】
タンク2は、燃料が流入する燃料入口3と、燃料ポンプ10で昇圧された燃料が流出する燃料出口4とを含む。タンク2は、液体燃料を貯留し、かつ、燃料ポンプ10が収容される内部空間を画定する。タンク2の内部空間は、液体燃料が存在する液相部100と、液体燃料の気化により生じた燃料蒸気が存在する気相部200とを含む。液相部100と気相部200との界面は、タンク2内における液面Lである。ベーパセパレータ1の使用時、燃料ポンプ10は、タンク2内において、少なくとも部分的に液面Lよりも下方に位置して液体燃料(液相部100)に浸漬された状態となる。
タンク2は、上側部材2Aと、上側部材2Aの下方に位置して上側部材2Aに締結される下側部材2Bとを含む。上側部材2Aは、有底形状の下側部材2Bの上部開口を塞ぐ蓋部材である。
図1に示す実施形態では、燃料入口3及び燃料出口4がともに上側部材2Aに設けられる。他の実施形態では、燃料入口3又は燃料出口4の少なくとも一方が下側部材2Bに設けられる。なお、上側部材2Aと下側部材2Bとの接合面2Cには不図示のシール部材が設けられており、タンク2内からの接合面2Cを介した燃料漏れが阻止される。
なお、タンク2の上側部材2A及び下側部材2Bは、燃料ポンプ10を支持するための支持部として、それぞれ、後述の環状凸部50及び保持部40を有する。
【0015】
上記構成のタンク2に収容される燃料ポンプ10は、ポンプ本体20と、ポンプ本体20の下部を覆う弾性カバー30とを含む。
弾性カバー30は、弾性を有する任意の材料により形成され、例えば、弾性を有する高分子材料(エラストマ)により形成されてもよい。
【0016】
ポンプ本体20は、燃料を昇圧するためのポンピング要素21と、ポンピング要素21に燃料を導くための吸入部22と、ポンピング要素21で昇圧された燃料を吐出するための吐出部24とを含む。
ポンプ本体20のポンピング要素21は、ダイアフラムポンプやベーンポンプ等の容積式ポンプ、または、渦巻ポンプ、軸流ポンプ、斜流ポンプ等の非容積式ポンプを用いることができる。
吸入部22は、ポンプ本体20内のポンピング要素21に連通する吸入管であってもよい。
図1に示す例示的な実施形態では、吸入部22は、水平方向に沿った上流側管部と鉛直方向に沿った下流側管部とを含むエルボにより構成される吸入管であり、吸入部(吸入管)22の上流側管部の上流端23は後述のフィルタ要素6の出口管5と接続される。
吐出部24は、ポンプ本体20内のポンピング要素21に連通する吐出管であってもよい。
【0017】
図1に示す実施形態では、ポンプ本体20は、吸入部22がポンプ本体20の下部に設けられ、吐出部24がポンプ本体20の上部に設けられる。この場合、吸入部22が、後述の弾性カバー30によって少なくとも部分的に覆われる。
他の実施形態では、ポンプ本体20の吸入部22は、ポンプ本体20の上部に設けられ、延長管を介して液相部100から液体燃料を吸入する。これに対し、ポンプ本体20の吐出部24は、ポンプ本体20の下部に設けられ、延長管を介して燃料出口4に向けて燃料を吐出する。この場合、吐出部24が、後述の弾性カバー30によって少なくとも部分的に覆われる。
【0018】
幾つかの実施形態では、燃料ポンプ10の上部がタンク2の上側部材2Aに組付けられる一方、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)はタンク2の下側部材2Bに設けられる保持部40によって保持される。
図1に示す実施形態では、上側部材2Aは、燃料ポンプ10の上部(吐出部24)を組み付けるための環状凸部50を有する。上側部材2Aの環状凸部50には、弾性ブッシュ52を介して、燃料ポンプ10の上部(吐出部24)が組付けられる。弾性ブッシュ52は、燃料ポンプ10の上部(吐出部24)と上側部材2A(環状凸部50)との間に設けられる。弾性ブッシュ52は、燃料ポンプ10の吐出部24と上側部材2Aとの隙間を密封するシール部材としての機能を有していてもよい。なお、弾性ブッシュ52は、弾性を有する任意の材料により形成され、例えば、弾性を有する高分子材料(エラストマ)により形成されてもよい。
下側部材2Bの保持部40は、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)と篏合する篏合部42を含む。保持部40は、燃料ポンプ10の下部を下側部材2Bに対して位置決めする機能を有する。
図1に示す例示的な実施形態では、保持部40の篏合部42は、燃料ポンプ10の下部に設けられる凸部が篏合する凹部である。他の実施形態では、保持部40の篏合部42は、燃料ポンプ10の下部に設けられる凹部に篏合する凸部である。
【0019】
ここで、上記構成のベーパセパレータ1の組立てに際し、
図2に示すように、燃料ポンプ10をタンク2の上側部材2Aに組付けた状態で、上側部材2A及び燃料ポンプ10をタンク2の下側部材2Bに組み付ける方法が考えられる。
しかし、燃料ポンプ10はそれ自体が重量物であることから、燃料ポンプ10は、上側部材2Aから吊り下げられた状態で弾性ブッシュ52を支点として揺動し得る(
図2の矢印X参照)。このため、タンク2の上側部材2A及び燃料ポンプ10のタンク2の下側部材2Bへの組付けの際、燃料ポンプ10の位置を安定化する必要がある。
【0020】
そこで、幾つかの実施形態では、タンク2の下側部材2Bは、
図1及び
図2に示すように、燃料ポンプ10の上部が組付けられた上側部材2Aの下側部材2Bへの組付け時に、燃料ポンプ10の下部を保持部40に向けて案内するためのガイド部60を含む。
下側部材2Bにガイド部60を設けることで、上側部材2Aから吊り下げられた状態で弾性ブッシュ52を支点として揺動しようとする燃料ポンプ10の位置を安定化し、燃料ポンプ10の下部の保持部40への組付け作業を円滑に行うことができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、ガイド部60は、鉛直方向上方から視たとき(即ち、平面視において)、下側部材2Bの側壁7と保持部40との間に位置する。
図1及び
図2に示す実施形態では、ガイド部60の一部は、下側部材2Bの側壁7と保持部40との間、かつ、保持部40よりも高所に位置する。具体的には、ガイド部60は、下方に向かうにつれて保持部40に近づくガイド面61を有し、ガイド部60のうちガイド面61を含む部分が、下側部材2Bの側壁7と保持部40との間、かつ、保持部40よりも高所に位置する。
【0022】
ガイド部60は、上側部材2Aに吊り下げられた燃料ポンプ10を下側部材2Bの保持部40に向けて降下させる際、燃料ポンプ10の下部をタンク2の下側部材2Bの保持部40に向けて案内可能であればよく、ガイド部60の具体的構成は特に限定されない。
一実施形態では、ガイド部60は、鉛直方向に沿って延在する鉛直リブを含む。鉛直リブの延在方向は、鉛直方向と平行であってもよいし、鉛直方向に対して鉛直リブの延在方向がなす角度が0度よりも大きく30度以下であってもよい。他の実施形態では、ガイド部60は、保持部40から上方に向かって延在する円錐台ガイドである。
【0023】
以下、
図3~
図8を参照して、ガイド部60が鉛直リブ60Aを含むベーパセパレータ1Aの具体的構成について説明するとともに、
図9~
図10を参照して、ガイド部60が円錐台ガイド60Bであるベーパセパレータ1Bの具体的構成について説明する。
図3は、一実施形態に係るベーパセパレータの断面図である。
図4は、一実施形態に係るベーパセパレータの燃料ポンプの下部を下方から視た図である。
図5は、一実施形態に係るベーパセパレータの燃料ポンプ及びフィルタ要素を示す斜視図である。
図6は、一実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の平面図である。
図7は、一実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の部分断面斜視図である。
図8は、一実施形態に係るベーパセパレータの組立ての様子を示す部分断面斜視図である。
図9は、他の実施形態に係るベーパセパレータの断面図である。
図10は、他の実施形態に係るベーパセパレータのタンクの下側部材の部分断面斜視図である。
なお、
図3~
図10に示す各要素のうち、
図1及び
図2を参照して上述した要素と共通のものは同一の符号を付し、重ねての説明を省略する。
【0024】
幾つかの実施形態では、
図3及び
図9に示すように、ベーパセパレータ1(1A,1B)は、燃料ポンプ10のポンプ本体20の下部を覆う弾性カバー30を含み、保持部40は弾性カバー30と篏合可能な篏合部42を有する。
【0025】
図3及び
図9に示す例示的な実施形態では、燃料ポンプ10の吐出部24は、燃料ポンプ10で昇圧された燃料を燃料出口4に導くための吐出管により構成される。燃料ポンプ10の吐出部24は、外周面に複数の環状凸部53を有する弾性ブッシュ52を介して、タンク2の上側部材2Aの環状凸部50の内周側に組付けられる。燃料ポンプ10の吐出部24の分岐管部25には、燃料出口4に向かう燃料の圧力を調整し、余剰燃料をタンク2内に戻すための圧力レギュレータ8が接続される。
なお、
図3に示すベーパセパレータ1Aと、
図9に示すベーパセパレータ1Bとは、ガイド部60が鉛直リブ60A又は円錐台ガイド60Bである点で相違する。しかし、ベーパセパレータ1A及びベーパセパレータ1Bは、以下で述べる、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)の構成、および、タンク2の下側部材2Bの保持部40の構成が互いに共通している。
【0026】
図4及び
図5に示す例示的な実施形態では、弾性カバー30は、弾性カバー30の下面31から下方に向かって突出し、保持部40の篏合部42に篏合可能である凸部32を有する。凸部32は、環状部34と、環状部34から放射状に延びる一対の直線部36と、環状部34と一体的に設けられる円筒部38と、を含む。
環状部34は、一対の端部35の間において周方向に沿って部分的に環状に延在する。環状部34の各々の端部35は、円筒部38に接続される。円筒部38は、弾性カバー30のうちポンプ本体20の吸入部22を覆うように下面31から下方に突出する。
一対の直線部36は、ポンプ本体20の吸入部22の弾性カバー30からの突出方向に対して直交する方向に沿って設けられる。
図5に示す例示的な実施形態では、弾性カバー30の下面31を基準とした凸部32の各部における突出量は、一対の直線部36、環状部34、円筒部38の順に大きくなる。
【0027】
幾つかの実施形態では、
図6、
図7及び
図10に示すように、保持部40は、タンク2の下側部材2Bの底面から突出する環状凸部41と、環状凸部41の内周側に設けられる篏合部42とを含む。環状凸部41は、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)を取り囲むように設けられる。篏合部42は、環状凸部41の内周側において弾性カバー30の凸部32と篏合する。
なお、環状凸部41は、周方向に関して一部の領域にのみ設けられており、環状凸部41が設けられていない周方向範囲において、燃料ポンプ10の吸入部22が弾性カバー30から径方向外側に突出するようになっている。
【0028】
図6、
図7及び
図10に示す例示的な実施形態では、篏合部42は、第1凹部44と、第1凹部44から放射状に延びる一対の第2凹部46と、第1凹部44に連なる第3凹部48とを含む。
第1凹部44は、タンク2の下側部材2Bの底面から突出する環状壁部45の内周面と、下側部材2Bの底面とによって画定され、第1凹部44には、保持部40の篏合部42の環状部34が篏合する。各々の第2凹部46は、下側部材2Bの底面から突出する一対の直線状壁部47の側壁面と、下側部材2Bの底面とによって画定され、第2凹部46には、保持部40の篏合部42の直線部36が篏合する。一対の直線状壁部47を画定する合計4つの直線状壁部47(47A,47B)のうち、第1のペアの直線状壁部47Aはそれぞれ環状壁部45の端部に接続され、第2のペアの直線状壁部47Bは第3凹部48を挟んで互いに対向する。第3凹部48は、第2のペアの直線状壁部47Bの側壁面と、下側部材2Bの底面から隆起した隆起部49の上面とによって画定され、保持部40の篏合部42の円筒部38が篏合する。隆起部49は、篏合部42を形成する他の凸部(環状壁部45及び直線状壁部47)に比べてタンク2の下側部材2Bの底面からの突出量が小さい。なお、隆起部49は、平面視において、円筒部38に対応する円形の輪郭を有する。
【0029】
幾つかの実施形態では、
図6~
図8に示すように、ガイド部60は、タンク2の下側部材2Bの側壁7の内壁から突出する複数の鉛直リブ60Aを含む。複数の鉛直リブ60Aは、保持部40の周りに放射状、かつ、鉛直方向に沿って設けられる。
各々の鉛直リブ60Aは、タンク2の下側部材2Bの側壁7の内面からの突出量dが下方に向かって増加する。このため、鉛直リブ60Aの上面は、下方に向かうにつれて保持部40に近づくような鉛直方向に対して斜めのガイド面61Aとして機能する。
図6~
図8に示す例示的な実施形態では、各々の鉛直リブ60Aは、面外方向から視たとき、ガイド面61Aに対応する一つの辺と、保持部40の環状凸部41の外周面、下側部材2Bの底面、および、下側部材2Bの側壁7にそれぞれ接続される3つの辺とにより規定される台形形状を有する。
燃料ポンプ10の上部(吐出部24)が組付けられた上側部材2Aの下側部材2Bへの組付け時、
図8に示すように、複数の鉛直リブ60Aは、ガイド面61Aによって、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)を保持部40に向けて案内する。
【0030】
他の幾つかの実施形態では、
図9及び
図10に示すように、ガイド部60は、保持部40から上方かつ径方向外側に向かって延在する円錐台ガイド60Bである。
図9及び
図10に示す例示的な実施形態では、円錐台ガイド60Bは、保持部40の環状凸部41の上面に接続され、円錐台ガイド60Bの内径は上方に向かって徐々に拡径する。円錐台ガイド60Bの上面は、下方に向かうにつれて保持部40に近づくような鉛直方向に対して斜めのガイド面61Bとして機能する。
円錐台ガイド60Bは、環状凸部41が占める周方向範囲の全体に亘って設けられてもよいし、
図10に示すように、環状凸部41が占める周方向範囲の一部にのみ設けられてもよい。また、円錐台ガイド60Bは、環状凸部41が占める周方向範囲に含まれる複数の領域に離散的に設けられてもよい。
【0031】
上記構成のベーパセパレータ1(1A,1B)の組立ては、以下の手順で行うことができる。
最初に、燃料ポンプ10の上部(吐出部24)をタンク2の上側部材2Aに組み付ける。この際、弾性ブッシュ52を介して上側部材2Aの環状凸部50に燃料ポンプ10の上部(吐出部24)を組み付けてもよい。
次に、ガイド部60(60A,60B)により燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)を保持部40に向けて案内しながら、タンク2の上側部材2A及び燃料ポンプ10を下側部材2Bに向けて降下させる(
図2及び
図8参照)。このとき、上側部材2A及び燃料ポンプ10の降下は、燃料ポンプ10の下部と保持部40の篏合部42とが篏合するまで継続する。こうして、燃料ポンプ10の上部(吐出部24)がタンク2の上側部材2Aに組付けられ、かつ、燃料ポンプ10の下部(弾性カバー30)が下側部材2Bの保持部40によって保持される。
その後、タンク2の上側部材2Aと下側部材2Bとを締結することで、ベーパセパレータ1(1A,1B)が得られる。
【0032】
次に、
図11を参照して、上記構成のベーパセパレータ1(1A,1B)を含む船外機について説明する。
図11は、一実施形態に係る船外機の構成を示す概略図である。同図に示すように、船外機400は、船体404のトランサム402に取り付けられる。船外機400は、ベーパセパレータ1と、ベーパセパレータ1を経由して供給される燃料を燃焼させて動力を生成するためのエンジン410と、エンジン410からの動力によって駆動されるプロペラ420とを含む。
エンジン410は、シリンダブロック412及びシリンダヘッド414を含む。ベーパセパレータ1を通過した燃料は、デリバリパイプ416を介して燃料インジェクタ418に到達する。燃料インジェクタ418は、エンジン410の各気筒に対して燃料を噴射する。
エンジン410で生成された動力は、動力伝達部材430を介してプロペラ420のプロペラシャフト422に伝達される。動力伝達部材430は、エンジン410のクランクシャフト(不図示)に連結されるドライブシャフト432と、プロペラシャフト422とドライブシャフト432との間に設けられるベベルギア434とを含む。
【0033】
上述の幾つかの実施形態に係るベーパセパレータ及びベーパセパレータの製造方法の特徴的な点を整理すれば、以下のとおりである。
【0034】
[1]本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係るベーパセパレータ(1;1A,1B)は、
エンジンへ燃料を供給する燃料供給系統に設けられるベーパセパレータ(1;1A,1B)であって、
液体燃料を貯留するためのタンク(2)と、
タンク(2)内に設けられる燃料ポンプ(10)と、
を備え、
タンク(2)は、
燃料ポンプ(10)の上部が組み付けられる上側部材(2A)と、
上側部材(2A)の下方に位置して上側部材(2A)に連結されるとともに、燃料ポンプ(10)の下部を保持するための保持部(40)を有する下側部材(2B)と、
を含み、
タンク(2)の下側部材(2B)は、平面視において下側部材(2B)の側壁(7)と保持部(40)との間に位置し、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられた上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付け時に、燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内するためのガイド部(60;60A,60B)を含む。
【0035】
上記[1]の構成によれば、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられたタンク(2)の上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付け時に、燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内するためのガイド部(60;60A,60B)を設けたので、燃料ポンプ(10)の組付けを容易に行うことができる。
また、タンク(2)の上側部材(2A)に対して燃料ポンプ(10)を不動に固定するためのブラケット(ポンプ固定部品)が不要であるから、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制可能である。
【0036】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
ガイド部(60;60A,60B)は、少なくとも部分的に、下側部材(2B)の側壁(7)と保持部(40)との間、かつ、保持部(40)よりも高所に位置するように下側部材(2B)に設けられる。
【0037】
上記[2]の構成によれば、ガイド部(60;60A,60B)が少なくとも部分的に保持部(40)よりも高所に位置するため、燃料ポンプ(10)をタンク(2)の上側部材(2A)から吊り下げた状態で燃料ポンプ(10)を下側部材(2B)に対して降下させるとき、保持部(40)よりも先にガイド部(60;60A,60B)が燃料ポンプ(10)に接触しやすくなる。これにより、燃料ポンプ(10)のためのガイド部(60;60A,60B)の案内機能を効果的に発現させることができる。
【0038】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
ガイド部(60)は、タンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)の内壁から突出するように、保持部(40)の周りに放射状、かつ、鉛直方向に沿って設けられる複数の鉛直リブ(60A)を含み、
各々の鉛直リブ(60A)は、タンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)の内面からの突出量が下方に向かって増加する。
【0039】
上記[3]の構成によれば、タンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)の内壁から突出する鉛直リブ(60A)を用いることで、部品点数の増加を抑制しながらガイド部(60)の機能を安価に実現することができる。
また、タンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)の内壁から突出する複数の鉛直リブ(60A)を保持部(40)の周りに放射状に設けることで、複数の方向から燃料ポンプ(10)を保持部(40)に向けて案内することができる。さらに、タンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)の内面からの鉛直リブ(60A)の突出量(d)は下方に向かって増加するため、鉛直方向に対して斜めである鉛直リブ(60A)の上面(61A)に沿って燃料ポンプ(10)を保持部(40)に向けて効果的に案内することができる。
【0040】
[4]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
ガイド部(60)は、保持部(40)から上方かつ径方向外側に向かって延在する円錐台ガイド(60B)である。
【0041】
上記[4]の構成によれば、円錐台ガイド(60B)が設置される周方向範囲内において、鉛直方向に対して斜めである円錐台ガイド(60B)の上面(61B)に沿って燃料ポンプ(10)を保持部(40)に向けて効果的に案内することができる。
【0042】
[5]幾つかの実施形態では、上記[1]~[4]の何れかの構成において、
燃料ポンプ(10)は、
ポンプ本体(20)と、
ポンプ本体(20)の下部を覆う弾性カバー(30)と、
を含み、
保持部(40)は、
燃料ポンプ(10)の下部を取り囲むように下側部材(2B)の底面から突出して設けられる環状凸部(41)と、
環状凸部(41)の内周側において、弾性カバー(30)と篏合する篏合部(42)と、
を含む。
【0043】
上記[5]の構成では、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられたタンク(2)の上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付けを行う場合、燃料ポンプ(10)のポンプ本体(20)の下部を覆う弾性カバー(30)と、保持部(40)の環状凸部(41)の内周側に位置する篏合部(42)とを篏合させる必要がある。
この点、上記[1]で述べたように、平面視においてタンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)と保持部(40)との間に位置するガイド部(60;60A,60B)が燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内することで、保持部(40)の篏合部(42)に対する燃料ポンプ(10)の弾性カバー(30)の篏合を容易に行うことができる。
【0044】
[6]幾つかの実施形態では、上記[1]~[5]の何れかの構成において、
ベーパセパレータ(1;1A,1B)は、燃料ポンプ(10)の上部と上側部材(2A)との間に設けられる弾性ブッシュ(52)を備える。
【0045】
上記[6]のように、弾性ブッシュ(52)を介して燃料ポンプ(10)の上部をタンク(2)の上側部材(2A)に組み付ける場合、燃料ポンプ(10)は、弾性ブッシュ(52)を支点として揺動しやすくなる。このため、タンク(2)の上側部材(2A)及び燃料ポンプ(10)のタンク(2)の下側部材(2B)への組付けの際、燃料ポンプ(10)の位置を安定化する必要がある。
この点、上記[1]で述べたとおり、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられたタンク(2)の上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付け時に、ガイド部(60;60A,60B)によって、燃料ポンプ(10)の下部は保持部(40)に向けて案内される。よって、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制しながら、燃料ポンプ(10)の組付けを容易に行うことができる。
【0046】
[7]幾つかの実施形態に係るベーパセパレータの製造方法は、
上記[1]~[6]の何れかの構成のベーパセパレータ(1;1A,1B)を製造するための方法であって、
燃料ポンプ(10)の上部をタンク(2)の上側部材(2A)に組み付けるステップと、
ガイド部(60;60A,60B)により燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内しながら、上側部材(2A)及び燃料ポンプ(10)を下側部材(2B)に向けて降下させるステップと、
燃料ポンプ(10)の下部が保持部(40)によって保持された状態で、タンク(2)の上側部材(2A)および下側部材(2B)を締結するステップと、
を備える。
【0047】
上記[7]の方法によれば、上記[1]で述べたように、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられたタンク(2)の上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付け時に、平面視においてタンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)と保持部(40)との間に位置するガイド部(60)によって燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内することで、燃料ポンプ(10)の組付けを容易に行うことができる。
また、タンク(2)の上側部材(2A)に対して燃料ポンプ(10)を不動に固定するためのブラケット(ポンプ固定部品)が不要であるから、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制可能である。
【0048】
[8]幾つかの実施形態に係る船外機(400)は、
上記[1]~[6]の何れかの構成のベーパセパレータ(1;1A,1B)と、
ベーパセパレータ(1;1A,1B)を経由して供給される燃料を燃焼させて動力を生成するためのエンジン(410)と、
エンジン(410)からの動力によって駆動されるプロペラ(420)と、
を備える。
【0049】
上記[8]の構成によれば、上記[1]で述べたように、燃料ポンプ(10)の上部が組付けられたタンク(2)の上側部材(2A)の下側部材(2B)への組付け時に、平面視においてタンク(2)の下側部材(2B)の側壁(7)と保持部(40)との間に位置するガイド部(60)によって燃料ポンプ(10)の下部を保持部(40)に向けて案内することで、燃料ポンプ(10)の組付けを容易に行うことができる。
また、タンク(2)の上側部材(2A)に対して燃料ポンプ(10)を不動に固定するためのブラケット(ポンプ固定部品)が不要であるから、部品点数の増加に伴うコスト上昇を抑制可能である。
【符号の説明】
【0050】
1(1A,1B) :ベーパセパレータ
2 :タンク
2A :上側部材
2B :下側部材
7 :側壁
10 :燃料ポンプ
20 :ポンプ本体
30 :弾性カバー
32 :凸部
40 :保持部
41 :環状凸部
42 :篏合部
50 :環状凸部
52 :弾性ブッシュ
53 :環状凸部
60 :ガイド部
60A :鉛直リブ
60B :円錐台ガイド
400 :船外機
410 :エンジン
420 :プロペラ