(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025138029
(43)【公開日】2025-09-25
(54)【発明の名称】外装材兼用型枠パネルの建て込み構造
(51)【国際特許分類】
E04G 17/065 20060101AFI20250917BHJP
E04G 17/06 20060101ALI20250917BHJP
【FI】
E04G17/065 D
E04G17/06 B
E04G17/065 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036704
(22)【出願日】2024-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000253400
【氏名又は名称】舩木商事有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【テーマコード(参考)】
2E150
【Fターム(参考)】
2E150AA03
2E150EA11
2E150FA25
2E150FA32
2E150FA34
2E150FA48
(57)【要約】
【課題】鉄筋コンクリート(RC)における壁面(耐力壁、構造壁)にて建築物を支える壁式構造(WRC)において、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用でき、容易に且つ高強度の建築物を構築できる外装材兼用型枠パネルの建て込み構造を提供する。
【解決手段】本発明は、外装材兼用型枠パネル1と内側型枠6との対向間隔に、前記対向方向に複数の間隔保持部材2が配設されている外装材兼用型枠パネル1の建て込み構造であって、間隔保持部材2は、外装材兼用型枠パネル1に組み付け可能な第一部材2A、内側型枠6に組み付け可能な第二部材2B、を含み、第一部材2Aと第二部材2Bが直結される直状材2Iと、第一部材2Aが連結材3を介して第二部材及び/又は鉄筋に連結される折状材2IIと、が用いられて構築されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装材兼用型枠パネルと内側型枠との対向間隔に、前記対向方向に複数の間隔保持部材が配設されている外装材兼用型枠パネルの建て込み構造であって、
前記間隔保持部材は、前記外装材兼用型枠パネルに組み付け可能な第一部材、前記内側型枠に組み付け可能な第二部材、を含み、
前記第一部材と前記第二部材が直結される直状材と、
前記第一部材が直交状の連結材を介して前記第二部材及び/又は鉄筋に連結される折状材と、
が用いられて構築されていることを特徴とする外装材兼用型枠パネルの建て込み構造。
【請求項2】
前記連結材は、前記第一部材に係止又は締着によって一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の外装材兼用型枠パネルの建て込み構造。
【請求項3】
前記連結材は、前記第一部材に回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の外装材兼用型枠パネルの建て込み構造。
【請求項4】
前記連結材は、複数の前記間隔保持部材間に架設されていることを特徴とする請求項1に記載の外装材兼用型枠パネルの建て込み構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート(RC)における壁面(耐力壁、構造壁)にて建築物を支える壁式構造(WRC)において、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用でき、容易に且つ高強度の建築物を構築できる外装材兼用型枠パネルの建て込み構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート(RC)における建築物は、鉄筋や鉄骨等の柱や梁で建築物を支えるラーメン構造が、大規模構造物や建造物に適用され、建築物を高層にできるという利点を有しているが、型枠を構築、脱型するための作業スペース(足場を含む)や外壁工事をするための作業スペースを必要とし、土地の有効活用や近隣の生活環境が損なわれる等の観点からも好ましくないものであった。また、この建築物では、室内面に柱や梁が出っ張る構造であって、外周へ足場を設置する必要もあるため、市街地等の狭小地には適していないという問題点もあった。
【0003】
それに対し、壁面(耐力壁、構造壁)にて建築物を支える壁式構造(WRC)は、建築物の周囲に足場を必要としないため、室内空間を広く利用でき、敷地いっぱいに建築が可能(=狭小地に好適)である。
なお、この壁式構造には、プレキャスト製の壁体を現場に持ちこんで施工する工法も知られているが、多くは現場にて側面視が直線状の棒状材である間隔保持部材を用いてコンクリートを打設して壁体を施工する工法が実施されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この壁式構造では、様々な条件(制限)によって高層の建築物への採用は困難であった。
そのため、本出願人は、外側の型枠を脱型しない外装材兼用型枠を用いることで、狭小地における敷地面積の有効活用が図れる構造を検討した。特に高層化に必要となるラーメン構造への組み込みを重要視した。
【0005】
そこで、本発明は、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用でき、容易に且つ高強度の建築物を構築できる外装材兼用型枠パネルの建て込み構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、外装材兼用型枠パネル(以下、外側パネルという)と内側型枠との対向間隔に、前記対向方向に複数の間隔保持部材が配設されている外側パネルの建て込み構造であって、前記間隔保持部材は、前記外側パネルに組み付け可能な第一部材、前記内側型枠に組み付け可能な第二部材、を含み、前記第一部材と前記第二部材が直結される直状材と、前記第一部材が直交状の連結材を介して前記第二部材及び/又は鉄筋に連結される折状材と、が用いられて構築されていることを特徴とする外側パネルの建て込み構造に関するものである。
【0007】
また、本発明は、前記建て込み構造において、前記連結材は、前記第一部材に係止又は締着によって一体化されていることを特徴とする外装材兼用型枠パネルの建て込み構造をも提案する。
【0008】
また、本発明は、前記建て込み構造において、前記連結材は、前記第一部材に回動可能に連結されていることを特徴とする外装材兼用型枠パネルの建て込み構造をも提案する。
【0009】
また、本発明は、前記建て込み構造において、前記連結材は、複数の前記間隔保持部材間に架設されていることを特徴とする外側パネルの建て込み構造をも提案する。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、外装材の裏面側に内層材(断熱材)を積層してなる外側パネルで外側の壁体を構築するものであり、間隔保持部材が、従来の直線状材である直状材と、直交状の連結材が介在された折状材と、が用いられて構築されており、構築する建築物やその壁構造によって、二種の態様から適宜に選択して種々の建築物やその壁構造に適用することができる。
そのため、例えば内部に鉄筋が配設される壁構造や建築物において、鉄筋が干渉して直状材を配設できない部位には、折状材を選択して配設すればよいため、高層となることでコンクリートの打設圧力が大きくなることに対抗できる強度を増強でき、狭小地における敷地面積の有効活用を図ることができる。言い換えれば、ラーメン構造よりも強度が劣る壁式構造でも、適宜に鉄筋及び本発明を適用することにより、従来より建築物の高さ制限を伸長(拡高)させることができ、高層化できる。
また、本発明の建て込み構造は、原則的に建築物の周囲に足場を必要としないため、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用できる。しかも施工後には、外側パネルをそのまま外装材や内層材として用いることができる。
【0011】
また、前記建て込み構造において、前記連結材が、前記第一部材に係止又は締着によって一体化されている場合には、折状材における第一部材を配設以前に連結材と一体化させることができる。そのため、施工中の連結材の取付作業が不要となり、現場での作業性が向上される。
【0012】
また、前記建て込み構造において、前記連結材が、前記第一部材に回動可能に連結されている場合には、折状材における第二部材の連結作業や鉄筋との連結作業が容易となる。
【0013】
また、前記建て込み構造において、前記連結材が、複数の前記間隔保持部材間に架設されている場合には、例えば長尺な連結材を用いる態様に相当し、複数の第一部材に対して連結材を架設状に取り付けてもよく、連結材に対して複数の第二部材を架設状に取り付けてもよい。そのため、当該連結材の配設や第二部材との連結等の作業が容易である。さらに、この場合には、外側パネルと内側型枠との対向間隔もより強固に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】(a)実施例1の外側パネルの建て込み構造を示す斜視図、(b)外側パネルから突出する間隔保持部材の第一部材の端部にピース状連結材が固定された状態を示す側断面図、(c)ピース状連結材を示す斜視図である。
【
図2】(a)実施例1に用いたピース状連結材への第一部材及び第二部材の取付態様を示す側断面図、(b)異なる取付態様を示す側断面図、(c)コ字状連結材への第一部材及び第二部材の取付態様を示す側断面図、(d)その平面図、及び斜視図である。
【
図3】(a)外側パネルを外側から見た状態を示す斜視図、(b)外側パネルを形成する外装材の側面図、(c)外側パネルを形成する内層材の側面図、(d)一般的な間隔保持部材を示す側面図である。
【
図4】(a)基礎の隅部に複数の鉄筋束からなるラーメン構造の鉄筋製柱(柱状鉄筋)を施工する一例を示し、複数の縦筋を囲状に配設した状態を示す斜視図、(b)鉄筋束を二面の外側パネルにてL字状に囲った状態を示す斜視図、(c)それぞれの外側パネルに間隔保持部材の第一部材を取り付けた状態を示す斜視図、(d)それぞれの縦筋を上方へ高く延在させた状態を示す斜視図、(e)複数の縦筋を複数の帯筋材にて四角柱状の鉄筋束に束ねた状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)実施例2の外側パネルの建て込み構造を示す斜視図、(b)外側パネルから突出する間隔保持部材の第一部材の端部に長尺連結材が固定された状態を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の外側パネルの建て込み構造は、外側パネルと内側型枠との対向間隔に、前記対向方向に複数の間隔保持部材が配設されている構造であって、前記間隔保持部材は、前記外装材兼用型枠パネルに組み付け可能な第一部材、先端が前記内側型枠から突出する第二部材、を含み、前記第一部材と前記第二部材が直結されている直状材と、前記第一部材が直交状の連結材を介して前記第二部材と連結されている折状材と、が用いられて構築されていることを特徴とする。
【0016】
本発明に用いられる外側パネルは、最外側(表面側)に外装材が用いられ、その裏面側に内層材が積層される構造である。
外装材は、外側パネルと内側型枠を連結する間隔保持部材の端部が取り付けられる定着部を有するものであれば、その材質等を限定するものではない。
内層材は、主として各種の断熱材が想定されるが、コンクリート打設に耐えうる強度が得られれば、その材質、厚みを限定するものではないい。
なお、このような外側パネルとしては、例えば従来、本願出願人が検討してきた型枠兼用化粧パネルと同様に、一方(一側端)には定着部を備え、他方(他側端)には備えない2種の化粧材を交互に接続し、前記定着部に間隔保持部材(セパレータ)の端部を取り付けることができる構成の外装材(押出成形材)でも適用でき、概ね幅が150mm程度が汎用的(実用的)であり、通常600mm近い幅に成形される内層材(断熱材)の片面に、複数枚の外装材を添設して外側パネルとして利用することがてきる。
【0017】
前記外装材に形成される定着部は、コンクリート打設空間を確保するための間隔保持部材の端部を固定する部位である。
また、この外装材の素材や成形法についても、特に限定するものではなく、各種素材の面材を適用することができ、金属面材でも硬質樹脂板でもよく、或いはアルミ等の押出型材を用いてもよい。また、複数種類の外装材を連結して用いてもよく、後述する図示実施例のように定着部を有する外装材と、定着部を備えない外装材とを組み合わせて用いてもよい。その厚みについても限定するものではないが、大凡厚みは1.2~1.6mm以上であって、コンクリート打設圧等の多少の応力が作用しても面が歪んだり変形することがない強度を有するものがより望ましい。
【0018】
前記内層材(断熱材)は、前述のようにコンクリートの打設圧で破裂しないものであればどのような素材のものも適用でき、単層からなるものでも異なる特性を有する二種以上の断熱材を積層したものでもよいし、別途補強材等を用いたものでもよい。例えば所定の肉厚を必要とする各種の合成樹脂発泡体でもよいし、石膏ボード、或いはPCパネルやALCパネル、それ以外の防火材や耐火材等の無機材料でもよいし、前記外装材の一面(片面)に予め一体化された構成でもよいし、或いは別体で準備されるものでもよい。
【0019】
前記外装材の裏面側に設ける定着部について、更に詳細に説明すると、間隔保持部材の端部を連結できるものであればよく、例えば間隔保持部材の端部を雄ネジ部とした場合には、各種の角ナットや複数の雌ネジ部を螺設した板状材を一体化して定着部としてもよいし、被重合片を厚肉にしてタップ加工(雌ネジ加工)を施してもよい。
特に面板部の裏面側に、側方又は裏面側が開放する空間部を設け、該空間部内に螺子部を有する角ナット等を取り付けて締着部を形成してもよい。汎用のナットを用いた場合には、角ナットの頭部は角形であるため、間隔保持部材の取付に際して共回り(自転)が防止されるものとなる。なお、この空間部には、角ナット等と外装材との接触を防止する緩衝材を介在させることが望ましい。この緩衝材としては、前記内層材(断熱材)と同材であってもよいし、ゴム等の弾性材であってもよい。
【0020】
前記間隔保持部材(セパレータ)は、前述のように前記外装材に形成される定着部に端部が取り付けられる部材であり、従来、用いられている間隔保持部材は、側面視が直線状の棒状材であり、外装材と内層材を組み付け可能な第一部材と、先端が内側型枠から突出する第二部材とからなり、これらの第一、第二部材が締付により連結/分離が自在であって、外側パネルと内側型枠との対向間隔(対向空間)を、コンクリートが打設される空間としている。
従来、用いられている間隔保持部材として、第一部材と第二部材とが締付により直結/分離が自在である側面視が直線状材については、前述のようには知られていたが、本発明の間隔保持部材には、前記直線状材に相当する直状材と、第一部材と第二部材との間に連結材が接続される折状材と、が用いられている。
【0021】
前記連結材は、前記折状材における第一部材と第二部材との間に接続(連結)され、短板状、帯板状、L字状、Z字状、コ字状等の部材であり、設置箇所に必要とされる強度を有する鋼材や高強度樹脂材等から適宜選択すればよい。
また、第一部材、連結材、第二部材は、主に雄ネジ部、雌ネジ部による直接的な締着、あるいは同雄ネジ・雌ネジによって挟持状に締着するものでもよく、雌ネジ部はナット等を固着したものでもタップ加工によって形成したものでもよい。
この連結材の形状や長さは限定されないが、後述する実施例1のピース状連結材のように回動(直交状態を維持して回転、旋回)させることで、周囲に配設されている鉄筋を回避(干渉しない箇所へ回動)してもよい。
また、実施例2の長尺連結材のように長さ方向に沿って複数の孔が形成されていてもよい。この孔は、第一部材の固定、又は第二部材の固定に用いられるので、円孔でも長円孔でもよい。例えば後述する実施例2の長尺連結材のように多数の孔が形成される場合には、複数の第一部材が架設状に取り付けられても、或いは複数の第二部材が架設状に取り付けられてもよい。
【0022】
複数の間隔保持部材にて形成される前記対向空間(コンクリートの打設空間)に配設される鉄筋は、それぞれ単独状に配設される鉄筋でもよいし、複数の鉄筋束からなるラーメン構造の鉄筋製柱(柱状鉄筋)を指す。即ちこの鉄筋としては、壁式構造(WRC)の壁体を形成される鉄筋もラーメン構造の柱状鉄筋も含まれる。
また、この鉄筋への前記連結材の連結方法(構造)は、例えば強度を有する帯状材等で連結(必要に応じて曲げ加工や締着部を備えてもよい)するものでも、スポット溶接によるものでよい。
【0023】
また、外側パネルは、外装材の裏面側に内層材(断熱材)を積層してなるので、例えば後述する図示実施例のように複数の外装材で外装面部を形成すると共に一つの内層材で断熱層を形成することもでき、断熱層側をコンクリートの打設空間として用いることができ、施工後にはその表面に外装材が配設されたコンクリート製の建築物を構築することができる。
【0024】
このように本発明は、外側パネルと内側型枠との対向間隔を形成する間隔保持部材として、連結材が用いられない直状材と、連結材が用いられる折状材と、が用いられるので、直状材が配設できない箇所にも折状材を配設でき、鉄筋の位置、数量に影響させることなく外側の型枠兼用外装材、内側型枠を連結でき安定した型枠(外側パネル)の建て込みが行える。特にラーメン構造の鉄筋量の多い箇所においても使用可能なため、外側パネルを用いることで敷地面積の最大限に使用でき(型枠設置のスペースが不要)、建築部の高層化と相まって土地の有効活用を図ることができる。
また、外装材の裏面側に内層材(断熱材)を積層してなる外側パネルで外側の壁体を構築しているので、原則的に周囲に足場を必要としないため、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用できる。しかも施工後には、外側パネルをそのまま外装材や内層材として用いることができる。
【実施例0025】
図1(a),(b)に示す実施例1の外装材兼用型枠パネル(外側パネル)1の建て込み構造は、外側パネル1と図示しない内側型枠との対向間隔に、前記対向方向に複数の間隔保持部材2が配設されている構造であって、該間隔保持部材2としては、外側パネル1に組み付け可能な第一部材2Aと、先端が内側型枠から突出する第二部材2Bとが直結される直状材2Iと、第一部材2Aと第二部材2Bとが、直交状の連結材3(ピース状連結材3A)を介して連結される折状材2IIと、が選択的に用いられている。即ちこの実施例1は、前記対向間隔に複数の鉄筋4が配されているので、直状材2Iのみでは鉄筋4が干渉して配設できない箇所には、折状材2IIが配設されている。
この実施例1では、外側パネル1や直状材2Iについては
図3を用いて、鉄筋4としての鉄筋製柱(柱状鉄筋)4Aについては
図4を用いて、以降に説明する。
【0026】
この実施例1に用いられているピース状連結材3Aは、
図1(c)に示すように二つの円孔30,30が並設状に形成される板状であって、一方の円孔30〔
図1(b)に示される折状材2IIでは上側〕には取付ボルト9Aの端部が挿通状に締着され、他方の円孔30にはナット9Bが固着されている。
そのため、このピース状連結材3Aは、取付ボルト9Aの締着にて第一部材2Aに取付けることができ、固着したナット9Bへの締着にて第二部材2Bを取付けることができる。なお、直状材2Iにおける第一部材2Aと第二部材2Bとの間には、前記ピース状連結材3Aと同一厚みの板材3aを介在させている。
また、図示実施例では、配設された鉄筋4を回避(干渉しない箇所へ回動)して)第二部材2Bを連結している。この回動は、縦方向への鉄筋4、或いは図示しない横方向への鉄筋か回避する方向(干渉しない箇所)を指し、回避は第一部材2Aの端部を中心に三六〇度回転可能である。
【0027】
図2(a),(b)には、ピース状連結材3Aに対する第二部材2Bの異なる連結態様について示した。
図2(a)のピース状連結材3Aの下方の円孔30にはナット9Bが固着され、該ナット9Bへ締着にて第二部材2Bを取付けることができる点では、前記
図1(b)と同様であるが、上方の円孔30には、第一部材2Aが回動(旋回、摺動)可能に挿通される。
また、同様に
図2(b)のピース状連結材3A'の上方の円孔30には、第一部材2Aが回動(旋回、摺動)可能に挿通されるが、下方の円孔には雌ねじ加工が施されているので符号30"を付記し、該雌ねじ加工が施された孔30"へ締着にて第二部材2Bを取付けることができる。
【0028】
図2(c),(d)には、コ字状連結材3Cの効用について示した。
図示するコ字状連結材3Cは、対向する矩形状の板材34,34'とそれを連結する棒材35とからなり、一方の板材34には、前記ピース状連結材3A'と同様に第一部材2Aが回動(旋回、摺動)可能な円孔30と、雌ねじ加工が施されている円孔30"とが形成され、他方の板材34'には、雌ねじ加工が施されている円孔30",30"が並設状に形成されている。
このコ字状連結材3Cを用いることで、第一部材2A及び第二部材2Bを分断状の直線に配置できるため、間隔保持部材3の芯部分が直状材2Iと同様とすることができ、間隔保持部材としての位置決めが安定し、施工性が優れたものとなる。
なお、このコ字状連結材3Cは、図示しない鉄筋4を側方から包持状に配設することもできる。
【0029】
図3(a)に示すように外側パネル1は、二種の外装材1A,1Bが交互に連結された外装面部と、その裏面側に配される
図3(c)に示す内層材(断熱材)5で形成される断熱層とからなる。
前記外装面部は、
図3(b)に示すように仕上げ面となる面板部11の裏面側に空間部14を備える外装材1Aと空間部14を備えない外装材1Bとからなり、それぞれの面板部11の略中央に略T字状に表面側へ突出する突条111が設けられている。これらのうち、空間部14を備える外装材1Aは、端縁に係合部12a,12cが設けられ、空間部14を備えない外装材1Bは、端縁に係合受部12b,12dが設けられるアルミの押出型材である。
なお、前記係合部12a,12cの表面側には、前記突条111と同形状の突条が設けられている。
【0030】
前記外側パネル1は、前述のように前記外装材1A,1B及び前記断熱材5からなり、一つの断熱材5の表面側に、二種の外装材1A,1Bを交互にそれぞれ二枚ずつ積層させて形成しているため、幅方向に連結されて外側パネル1が形成されている。
なお、断熱材5の図中に破線50で示される孔は、間隔保持部材2(第一部材2A)の配設位置を示す。
そして、前記外装材1Aの係合部12aと外装材1Bの係合受部12dとが係合状に組み付けられ、略コ字状の空間部14を備える成形部が形成され、外装材1Aの係合受部12bと外装材1Bの係合部12cとが係合状に組み付けられる。なお、前記空間部14には、ナット等の定着材や緩衝材が収容されて定着部となる。
【0031】
前記断熱材5は、
図3(c)に示すように左右の端縁が、一方が表面側から、他方が裏面側から切り欠かれて相じゃくり状に重合可能であって、重合状に臨む端縁を重合部52a、該重合部52aと重合する他端側を被重合部52bとしている。なお、略中央には、前記外装材1Aの空間部14が嵌入する凹部51が形成されている。
【0032】
前記間隔保持部材2(直状材2I)は、鉄筋が干渉しない一般部には、
図3(d)に示すように側面視が直線状の棒状材である直状材2Iが用いられ、図示される間隔保持部材(直状材2I)は、外装材1A,1Bと内層材(断熱材)5を組み付け可能な第一部材2Aと、先端が内側型枠6から突出する第二部材2Bとが直線状に連結(直結)され、外側パネル1と内側型枠6との対向間隔(対向空間)をコンクリートが打設される空間としている。
なお、第一部材2Aの先端は、外装材1Aの空間部14に至る端部(定着部分)であり、他端にも定着部分が設けられている。また、第二部材2Bの先端は、前記第一部材2Aの他端(雌ネジ部分)に螺合する雄ネジ部であり、他端には内側型枠6の更に外側から締め付け手段にて締め付けられて内側型枠6に圧接する当接部が設けられている。
【0033】
図4は、基礎7の隅部に複数の鉄筋束からなる鉄筋製柱(柱状鉄筋)4Aを施工する一例を示す。
この鉄筋製柱4Aは、前記
図1(a)に用いられたそれぞれ単独状に配設される鉄筋4とは異なり、室内空間の隅部に配置されるものであって、一般的なラーメン構造の施工とは異なり、長尺な縦筋を用いるのではなく、所定長さの縦筋を周囲に足場を設けることなく高さ方向に連結させて縦筋として用いている。
【0034】
図4(a)では、基礎7の隅部に、複数の縦筋4aが平面視が矩形状に配設、固定されている。なお、図中に示される符号4bは、複数の縦筋4aを囲う帯状筋である。
図4(b)では、前記複数の縦筋4a及び帯状鉄筋4bを二面の外側パネル1,1にてL字状に囲っている。 なお、この状態の外側パネル1には、間隔保持部材2が配設されていないので、前記
図2(a)の状態である。
図4(c)では、それぞれの外側パネル1,1に内側から間隔保持部材2の第一部材2Aを取り付けた状態を示している。なお、第一部材2Aの先端には、雄ネジ部分が設けられ外装材1Aの空間部14に至っているので、該空間部に設けた雌ネジ部分に螺合し、雌ネジ部分が設けられた他端が突出する状態となっている。
図4(d)では、それぞれの縦筋4aに所定高さの縦筋4cを連結することで、上方へ高く延在させた状態が示されている。
図4(e)では、複数の縦筋4cの高さ方向の複数箇所をそれぞれ帯状鉄筋4bにて囲って、四角柱状の鉄筋束(柱状鉄筋4A)に形成した状態を示している。
また、この
図4(e)には、前記
図4(b)~(d)に示されるL状補強材7Bは記載されていないが、前記
図1(a)に用いられたピース状連結材3A,3Aが示されている。
【0035】
なお、隅部を形成する二面の外側パネル1,1の内側には、
図4(b)~(d)に示すように面状補強材8A、L状補強材8Bが配設されている。これらの面状補強材8A、L状補強材8Bは、それぞれ高強度の面状材、L状材が平面視がL字状に成形されることで更に高強度の補強材として用いられている。
さらに、
図4(e)に示される最終的に施工される四角柱状の柱状鉄筋4Aの内側は、図面では空間が形成されているが、該空間に軽量の充填材を配設してもよいし、各種柱状材を配設するようにしてもよい。
【0036】
このような構成を有する実施例1の外側パネル1の建て込み構造は、外装材1A,1Bの裏面側に内層材(断熱材)5を積層してなる外側パネル1で外側の壁体を構築するものであり、間隔保持部材2が、直状材2Iと折状材2IIとを含んでおり、鉄筋4が干渉して直状材2Iを配設できない部位には折状材2IIを選択して配設すればよいため、鉄筋の位置、数量に影響させることなく外側パネル1、内側型枠を連結でき安定した型枠(外側パネル1)の建て込みが行える。特にラーメン構造の鉄筋量の多い箇所においても使用可能なため、外側パネル1を用いることで敷地面積の最大限に使用でき(型枠設置のスペースが不要)、建築部の高層化と相まって土地の有効活用を図ることができる。
また、この建て込み構造は、原則的に建築物の周囲に足場を必要としないため、土地の有効活用が図れ、近隣の生活環境を損なうことなく、狭小地にも適用できる。
しかも施工後には、外側パネル1をそのまま外装材1A,1Bや内層材5として用いることができる。
【0037】
この建て込み構造の施工手順を簡単に説明すると、外側には前記外側パネル1を配設すると共に、その内部空間には、縦方向に鉄筋4が延在されている。その後、内面側から前記外側パネル1に向かって前記間隔保持部材2の第一部材2Aを取り付けると共に、折状材2IIとしての第一部材2Aの端部には、ピース状連結材3Aが締着(固定)される。
このピース状連結材3Aへの取付については、前述の
図1(b)や
図2(a)に示すとおりであり、ピース状連結材3Aの下方の円孔30にはナット9Bが固着され、該ナット9Bへ締着にて第二部材2Bを取付けることができる。
また、ピース状連結材3A'の上方の円孔30には、第一部材2Aが回動(旋回、摺動)可能に挿通されているが、下方の雌ねじ加工が施されている円孔30"には、第二部材2Bを締着にて取付けることができる。
なお、第一部材2Aの外側パネル1への取付は、空間部14に形成した雌ネジ部に第一部材2Aの先端に設けた雄ねじ部を螺合(裸着)させて取り付ける。
この第二部材2Bは、二重筒状であって、後端には内側型枠6の外側まで延在しているフォームタイ(登録商標)や横端太材等の締め付け部材(図示せず)が連結され、内側型枠6の外側からの操作(締付作業)にて第二部材2Bの連結作業を行うことができる。
形成された外側パネル1と内側型枠6の対向間隔には、コンクリートが打設され、その養生(硬化)の後に、内側型枠6や締め付け部材の取外しが行われ、これらは再利用されるが、第二部材2Bを形成する外側筒体はコンクリートに埋設される。
この実施例2に用いられている連結材3(長尺連結材3B)は、長さ方向に複数の長円孔33が形成され、長尺材であるため、多数の第一部材2Aに架設でき、また多数の第二部材2Bを架設できる。なお、図中の符号31は縦面部、32は横面部であって、縦面部31には多数の長円孔33が形成されている。
そのため、この長尺連結材3Bは、複数の第一部材2A,2A間に架設されるので、外側パネル1と内側型枠6との対向間隔を、強固に保持することができる。
この建て込み構造の施工手順も、前記実施例1と同様であるが、長尺連結材3Bの横面部32が各第一部材2Aの上方に、その縦面部31が各第一部材2Aの端面に、配置されるように取り付けられる。この状態では、長尺連結材3Bは固定されていないので、一部の長円孔33へ固定ボルト3bを取り付けることで長尺連結材3Bが固定される。
長尺連結材3Bの縦面部31には多数の長円孔33が設けられているので、この長円孔33を貫通するように第二部材2Bを臨ませ、第一部材2Aの端縁に螺合(裸着)させて取り付ける。この作業は、第二部材2Bの配設と共に内側型枠6の配設も同時に行われ、所定位置に内側型枠6が配設される。
このような構成を有する実施例2の外側パネル1の建て込み構造でも、外装材1A,1Bの裏面側に内層材(断熱材)5を積層してなる外側パネル1で外側の壁体を構築するものであり、複数の間隔保持部材2,2(第一部材2A,2A)間に長尺連結材3Bが架設されているので、鉄筋の位置、数量に影響させることなく外側パネル1、内側型枠を連結でき安定した型枠(外側パネル1)の建て込みが行える。特にラーメン構造の鉄筋量の多い箇所においても使用可能なため、外側パネル1を用いることで敷地面積の最大限に使用でき(型枠設置のスペースが不要)、建築部の高層化と相まって土地の有効活用を図ることができる。
また、この実施例2では、前記長尺連結材3Bが長さ方向に沿って複数の長円孔33を備えているので、多数の間隔保持部材2に架設させることができるため、直状材2Iも折状材2IIも横方向に架設された構造となり、直状材2Iのみでは鉄筋4が干渉して配設できない箇所にも折状材2IIが配設できるため、外側パネル1と内側型枠6との対向間隔もより強固に保持することができる。