(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025013817
(43)【公開日】2025-01-28
(54)【発明の名称】接触器のヘルスの状態を監視するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20250121BHJP
【FI】
G01R31/00
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024173950
(22)【出願日】2024-10-03
(62)【分割の表示】P 2022552476の分割
【原出願日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】102020106856.5
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591018763
【氏名又は名称】ベバスト エスエー
【氏名又は名称原語表記】Webasto SE
【住所又は居所原語表記】Kraillinger Strasse 5,82131 Stockdorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100153822
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 重之
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】パトリック アッシュマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ツァイルベック
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ハイツァー
(72)【発明者】
【氏名】マルク ハルテメイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ピルミン シュトゥッツ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】バッテリ・パック内の少なくとも一つの接触器のヘルスの状態を監視する。
【解決手段】少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器(1)が、第1のインターフェース線(5)内のインターフェース(7)と少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器(2)が、第2のインターフェース線(6)内のインターフェース(7)と少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、開いた第1の接触器(1)の両端間の第1の差動電圧の測定、及び/又は開いた第2の接触器(2)の両端間の第2の差動電圧の測定のためのステップと、測定した第1の差動電圧に基づく第1の接触器(1)のヘルスの状態の監視、及び/又は測定した第2の差動電圧に基づく第2の接触器(2)のヘルスの状態の決定のためのステップとを含む方法に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ・パック(3)内の少なくとも一つの接触器(1、2)のヘルスの状態を監視するための方法であって、
前記バッテリ・パック(3)が、電気的エネルギーの電気化学的蓄積のための少なくとも一つのバッテリ・セル(4)、並びにインターフェース(7)への電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線(5)及び第2のインターフェース線(6)を備え、
少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器(1)が、前記第1のインターフェース線(5)内の前記インターフェース(7)と前記少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器(2)が、前記第2のインターフェース線(6)内の前記インターフェース(7)と前記少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、
開いた第1の接触器(1)の両端間の第1の差動電圧(Udif,1)の測定、及び/又は開いた第2の接触器(2)の両端間の第2の差動電圧(Udif,2)の測定、
測定した第1の差動電圧(Udif,1)に基づいて前記第1の接触器(1)のヘルスの状態を監視すること、及び/又は測定した第2の差動電圧(Udif,2)に基づく前記第2の接触器(2)のヘルスの状態の決定、
の各ステップを含む方法。
【請求項2】
前記測定した第1の差動電圧(Udif,1)と第1の電圧しきい値(Ukrit,1)との比較に基づいて前記第1の接触器(1)のヘルスの状態を監視すること、及び/又は
前記測定した第2の差動電圧(Udif,2)と第2の電圧しきい値(Ukrit,2)との比較に基づいて前記第2の接触器(2)のヘルスの状態を求める
ことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つの差動電圧(Udif,1、2)が、少なくとも一つの基準電位(9、11)を考慮して測定され、少なくとも一つの交差電圧(Ukreuz,1、2)が、それぞれの前記開いた接触器(1、2)を介して、前記基準電位(9、11)に対して測定されることが好ましい
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の接触器(1)が、前記インターフェース(7)に面する第1のインターフェース節点(8)と、前記バッテリ・セル(4)に面する第1のバッテリ・セル節点(10)との間に配置され、及び/又は前記第2の接触器(2)が、前記インターフェース(7)に面する第2のインターフェース節点(9)と、前記バッテリ・セル(4)に面する第2のバッテリ・セル節点(11)との間に配置され、
前記第1の差動電圧(Udif,1)が、前記第1の接触器(1)の前記第1のインターフェース節点(8)と、前記第2の接触器(2)の前記第2のバッテリ・セル節点(11)との間に存在する第1の交差電圧(Ukreuz,1)であり、及び/又は前記第2の差動電圧(Udif,2)が、前記第2の接触器(2)の前記第2のインターフェース節点(9)と、前記第1の接触器(1)の前記第1のバッテリ・セル節点(10)との間に存在する第2の交差電圧(Ukreuz,2)である
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の交差電圧(Ukreuz,1)若しくは第1の差動電圧(Udif,1)が第1の電圧しきい値(Ukrit,1)を超過する場合に前記第1の接触器(1)の切換えを抑制すること、及び/又は
前記第2の交差電圧(Ukreuz,2)若しくは第2の差動電圧(Udif,2)が
第2の電圧しきい値(Ukrit,2)を超過する場合に前記第2の接触器(2)の切換えを抑制すること
を特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の交差電圧(Ukreuz,1)若しくは前記第1の差動電圧(Udiff,1)が第1の警報電圧しきい値を超過する場合に警報信号を生成すること、及び/又は前記第2の交差電圧(Ukreuz,2)若しくは前記第2の差動電圧(Udiff,2)が第2の警報電圧しきい値を超過する場合に警報信号を生成すること
を特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の接触器(1)の第1のバッテリ・セル節点(10)と、前記第2の接触器(2)の第2のバッテリ・セル節点(11)との間の第1の基準電圧(Uref,1)を求めること、及び/又は
前記第1の接触器(1)の第1のインターフェース節点(8)と、前記第2の接触器(2)の第2のインターフェース節点(9)との間の第2の基準電圧(Uref,2)を求めることであって、前記第1の電圧しきい値(Ukrit,1)が、前記第1の基準電圧(Uref,1)に従って求められることが好ましく、前記第2の電圧しきい値(Ukrit,2)が、前記第2の基準電圧(Uref,2)に従って求められることが好ましい、求めること
を特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
それぞれの前記接触器(1、2)の投入のためのどんな切換えプロセスの前にも、前記第1の接触器(1)及び/又は前記第2の接触器(2)のヘルスの状態を監視すること
を特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の差動電圧(Udif,1)及び/又は前記第2の差動電圧(Udif,2)の連続的測定
を特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
バッテリ・パック内での利用のためのバッテリ制御システムであって、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合され、配置されることを特徴とするバッテリ制御システム。
【請求項11】
電気駆動ユニットのための電気的エネルギーの送達のためのバッテリ・パック(3)であって、
少なくとも一つのバッテリ・セル(4)と、
インターフェース(7)への電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線(6)及び第2のインターフェース線(7)と、
前記第1のインターフェース線(6)内のインターフェース節点(8)とバッテリ・セル節点(10)との間に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器(1)と、
前記第2のインターフェース線内のインターフェース節点(9)とバッテリ・セル節点(11)との間に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器(2)と
を有し、
請求項10に記載のバッテリ制御システム
を特徴とするバッテリ・パック(3)。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法の実行のためのマシン実行可能命令が記憶される不揮発性コンピュータ可読記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ・パック内の少なくとも一つの接触器のヘルスの状態を監視するための方法に関する。本発明は更に、バッテリ・パック内での利用、及びバッテリ・パックに対する利用のためのバッテリ制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電動機によって駆動される車両において、駆動システムにエネルギーを送達するバッテリ・システムが利用される。こうしたバッテリ・システムはしばしば複数のバッテリ・パックからなり、バッテリ・パックは複数のバッテリ・モジュールからなり、バッテリ・モジュールのそれぞれは複数のバッテリ・セルを収容する。
【0003】
バッテリ・パックの動作上の安全を保証するために、バッテリ・パックは本質的に安全な設計であるべきであり、したがって、一体化された接触器によって外部に対する遮断状態に切り換えることができることが意図される。したがって、バッテリ・パック内に組み込まれた接触器は主要な機能を負い、したがって接触器の機能を監視することが必要である。
【0004】
摩耗関連の接触器エージングの診断のための方法が、DE102012215190A1から知られている。絶縁抵抗、すなわち開いた接触器の電気抵抗は、接触器の耐用年数にわたって低下する。したがって、電圧及び電流に関する接触器の絶縁抵抗の測定により、接触器のヘルスの状態に関する結論を引き出すことが可能となる。絶縁抵抗が限界値未満に低下すると直ちに、DE102012215190A1の開示に従って処置が実施される。
【0005】
DE102012209138A1は、ヒューズのヘルスの状態を判定するための方法を開示している。この方法によれば、ヒューズのヘルスの状態の連続的判定を可能にするために、ヒューズ内に流れる電流が測定され、記録される。
【0006】
DE102014200265A1は、高電圧バッテリ及び保護回路を有するバッテリ・システムを開示しており、バッテリ・システムの機能状態が監視される。具体的には、この目的で回路上流の保護回路が接触器に割り当てられる。この回路は、二つの並列接続された回路分岐を含み、そのそれぞれにヒューズ及び電流センサが配置される。保護回路内に流れるそれぞれの電流値の評価により、保護回路の機能状態の診断が可能となる。
【0007】
DE102015006206A1は、切換え接触器を有する高電圧システムを開示している。具体的には、接触器の固着、すなわち切換え可能接触器がもはや切換え可能でなくなるような切換え可能接触器の固着の危険が識別される。接触器の固着の問題のある効果の防止のための解決策に対する手法として、切換え接触器を別の切換え素子と直列に接続することが提案される。このようにして、高電圧システムの冗長性が達成され、それによって単一の切換え接触器への依存が低減される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
周知の従来技術に基づいて、本発明の一目的は、バッテリ・パック内の少なくとも一つの接触器のヘルスの状態を、バッテリ制御システム及びバッテリ・パックと共に監視するための改良型の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、請求項10の特徴を有するバッテリ制御システム、及び請求項11の特徴を有するバッテリ・パックによって達成される。有利な別の開発が、従属請求項、説明、及び図から進められる。
【0010】
したがって、バッテリ・パック内の少なくとも一つの接触器の状態を監視するための方法が提案される。
【0011】
接触器は、たとえば継電器などの電気回路内の電気機械的絶縁素子であり得る。
【0012】
ヘルスの状態は、接触器の特性の証拠となる接触器の条件を指すことがある。具体的には、これは、対応する接触器の絶縁能力、すなわち電気的絶縁、たとえばバッテリ・パックの、バッテリ・システムの残りの部分からの電気的絶縁についての接触器の能力と理解することができる。絶縁能力を示す一つのパラメータは接触器の絶縁抵抗である。絶縁抵抗は、開いた接触器の両端間で構成される抵抗と理解することができる。
【0013】
絶縁抵抗の対応する値は、接触器の遮断器室内の接触器接点間のエア・ギャップに本質的に依存し得る。損なわれていない未使用の接触器は、数ギガオーム程度の絶縁抵抗を呈し得る。
【0014】
しかしながら、その耐用年数にわたって、絶縁抵抗は低下し得、それは接触器のエージングと表現され得る。この接触器の絶縁抵抗の低下は、たとえば接触器接点に関する汚染、摩耗、及び/又はアーク侵食(それに対応して絶縁抵抗の低下が生じ得る)によって引き起こされ得る。接触器の絶縁抵抗の低下を生じさせ得る別の要素には、接触器ハウジング内に存在する汚染物質、塵、及び粒子が含まれ、それらは、接触器接点間のブリッジ又は伝導経路の形成に対して導電性がある。更に、たとえば接触器接点の互いに対する移動性の制限などの、純粋に機械的な要素(その結果として、ブリッジ又は伝導経路の形成に対して同様に導電性があるように、開いた状態の接触器接点が互いに十分に離間されない)によっても絶縁抵抗の低下が生じ得る。
【0015】
少なくとも前述の要素が、接触器の絶縁抵抗の考慮において役割を果たし、第1の例では、バッテリ・システム内の接触器の動作について、接触器が負荷からのバッテリ・セルの規定絶縁を実行することができるかどうかであることが唯一の重要な要素であるという理由で、ここでは全体と見なされる。
【0016】
この絶縁抵抗の低下は、接触器のエージングとも表現されることがあり、前述のように、エージングは機械的、化学的、及び電気的な理由に起因し得る。電流の遮断のための切換え動作の頻度と、切り換えられるそれぞれの電流の大きさ及び方向とに応じて、接触器エージングはより急速に、又はよりゆっくりと進むことになる。
【0017】
特定の絶縁抵抗未満、たとえば300キロオーム未満では、すべての負荷条件下で、特に高電流の場合に、たとえば切換え接点間のアークの発生により、遮断することが意図される電流束の意図しない更なる伝導が生じるという理由で、バッテリ・パックの、バッテリ・システムの残りの部分からの安全な絶縁、及び不可欠な安全停止をもはや確実に達成することができない。
【0018】
バッテリ・パックは、電気的エネルギーの電気化学的蓄積のための少なくとも一つのバッテリ・セル、並びにインターフェースへの電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線及び第2のインターフェース線を備える。
【0019】
バッテリ・パックが単一のプラグイン接続によってバッテリ・システムに電気的に接続され得るように、インターフェースは、たとえば高電圧ソケット・アウトレットの形で構成され得る。車両内で、バッテリ・システムに対するバッテリ・パックの接続は、たとえば「車両インターフェース・ボックス」(VIB)を介して実行され得、VIB内で、たとえば電動機によって駆動される車両の動作のための高電圧システムの形成のために、別のバッテリ・パックが相互接続され、論理的に構築された車両バッテリが形成される。
【0020】
バッテリ・パックは複数のバッテリ・モジュールを備え得る。それぞれのバッテリ・モジュールは個々の電気化学的バッテリ・セルを収容し得、電気化学的バッテリ・セルは電気的エネルギーの実際の蓄積を請け負う。
【0021】
第1のインターフェース線では、少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器がインターフェースと少なくとも一つのバッテリ・セルとの間に配置され、第2のインターフェース線では、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器がインターフェースと少なくとも一つのバッテリ・セルとの間に配置される。インターフェースとバッテリ・セルとの間の第1の接触器及び第2の接触器のこの配置により、インターフェースからのバッテリ・セルの安全な絶縁が可能となり、それによって安全基準及び可制御性が向上する。
【0022】
本発明による方法は以下のステップを含む。開いた第1の接触器の両端間の第1の差動電圧の測定。第1の差動電圧は、バッテリ・パック内に存在する電圧であり得、バッテリ・パック内に存在する電圧は、とりわけ、開いた第1の接触器の両端間で少なくとも測定される。
【0023】
代替又は追加として、第2の差動電圧が、開いた第2の接触器の両端間で測定される。第1の差動電圧と同様に、第2の差動電圧もバッテリ・パック内に存在する電圧であり得、バッテリ・パック内に存在する電圧は、とりわけ、開いた第2の接触器の両端間で少なくとも測定される。
【0024】
本発明による方法は、測定した第1の差動電圧に基づいて第1の接触器のヘルスの状態を監視するためのステップを更に含む。第1の差動電圧が、開いた第1の接触器の両端間で少なくとも部分的に測定されるので、それにより、接触器のエージングに応答して、したがって更に、接触器のエージングに関連する絶縁抵抗の変動に応答して第1の差動電圧が変化するとき、第1の接触器のヘルスの状態を監視することが可能となる。
【0025】
しかしながら、提案される方法では、接触器の内部抵抗が明示的に求められないことに留意されたい。具体的には、電圧測定に加えて電流測定は実行されず、したがって電流測定がないと、差動電圧から内部抵抗を計算することができない。この方法はもっぱら差動電圧の測定に依存する。
【0026】
「監視する」ためのプロセス・ステップにより、入力変数としての「第1の差動電圧」に基づいて、出力変数が生成され、出力変数は、別の制御装置、ディスプレイ・ユニット、ユーザなどの別のシステム構成要素に、第1の接触器のヘルスの状態に関する情報を伝える。その最も単純な形態では、これはもっぱら、測定した差動電圧が指定の値を超過するか、それとも指定の値未満のままであるかに関する情報であり得る。
【0027】
代替又は追加として、第2の接触器のヘルスの状態が、測定した第2の差動電圧に基づいて監視される。第1の接触器と同様に、第2の差動電圧が、開いた第2の接触器を介して少なくとも部分的に測定されるので、これにより、第2の接触器のヘルスの状態の監視が可能となる。したがって、一つの接触器に対する方法の効果は、同様に他の接触器に適用可能である。言い換えれば、したがってこの方法により、もっぱら少なくとも一つの差動電圧の測定に基づいて、少なくとも一つの接触器内のエージング・プロセスの監視が可能となる。
【0028】
したがって、提案される方法によれば、開いた接触器の両端間の電圧降下が測定される。このようにして、接触器の電気的機能と機械的機能がどちらも監視される。
【0029】
提案される方法により、単純な電圧測定を考慮して、第1の接触器及び/又は第2の接触器のヘルスの状態に関する結論を引き出すことが可能となる。
【0030】
逆に言えば、それに対応して、「開いた接触器」と「閉じた接触器」という二つの動作状態の間で大幅に変動する電流束の決定を必要とする抵抗測定が無視され、その結果として、追加の電流測定なしに方法が実行され得る。
【0031】
一方では、接触器のヘルスの状態、したがって安全な動作状態の存在が確実に監視され得るので、提案される方法の精度によって高度な動作上の安全が可能となり、他方では、接触器をEOL(寿命末期)まで利用することができ、事前定義された切換えサイクル数の完了時に廃止する必要がないので、この方法によって保守サイクルの正確な調節が可能となる。
【0032】
有利には、この方法は、以下の別のステップのうちの少なくとも一つを含み得る。測定した第1の差動電圧と第1の電圧しきい値との比較に基づく、第1の接触器のヘルスの状態の監視、及び/又は測定した第2の差動電圧と第2の電圧しきい値との比較に基づく、第2の接触器のヘルスの状態の判定。
【0033】
第1の電圧しきい値及び第2の電圧しきい値は事前設定され得、又は回路の耐用年数にわたって動的に調節され得る。第1の電圧しきい値と第2の電圧しきい値は、相互に同一の値又は異なる値を呈し得る。電圧しきい値との対応する比較により、この方法は、高度な計算労力なしに堅固な形で実行され得る。
【0034】
この方法によれば、有利には、少なくとも一つの基準電位を考慮して少なくとも一つの差動電圧が測定され得、それぞれの開いた接触器を介して少なくとも一つの交差電圧が測定されることが好ましい。基準電位は、バッテリ・パック内に存在する、差動電圧とは異なる電圧である。基準電位は、バッテリ・パック又はバッテリ・セルの充電の状態及びヘルスの状態に従って変動し得る。
【0035】
交差電圧はたとえば、接触器、たとえば開いた接触器、及び回路内の別の構成要素の両端間の電圧降下であり得る。
【0036】
交差電圧は更に、バッテリ制御システムによる任意の事象で記録される、測定される変数であり得る。したがって、測定される交差電圧を、第1に接触器エージングに関して、第2にバッテリ・パック内の他の特性変数の監視のために考慮することが可能である。これにより、バッテリ・パック内で実行されるプロセスの効率、及びバッテリ・パックの応答性が改善される。
【0037】
この方法によれば、有利には、第1の接触器及び第2の接触器に関する差動電圧が、インターフェースに面するインターフェース節点に対して、及びバッテリ・セルに面するバッテリ・セル節点に対してそれぞれ測定され得、第1の差動電圧は、第1の接触器のインターフェース節点と、第2の接触器のバッテリ・セル節点との間に存在する第1の交差電圧であり、及び/又は第2の差動電圧は、第2の接触器のインターフェース節点と、第1の接触器のバッテリ・セル節点との間に存在する第2の交差電圧である。したがって、それぞれの交差電圧は、バッテリ・パック回路内の相互に電気的に別々の地点上に存在し得る。
【0038】
第1及び第2の接触器はそれぞれの電線を遮断し得る。インターフェース節点は、インターフェースとそれぞれの接触器との間に配置された回路内の節点と理解することができる。それに対応して、バッテリ・セル節点は、それぞれの接触器と少なくとも一つのバッテリ・セルとの間に配置された回路内の節点と理解することができる。それぞれの節点は、接触器の閉じた接点又は接続端子に対応し得る。代替として、節点は、接触器と、インターフェース又は少なくとも一つのバッテリ・セルとの間の任意の地点に設けられ得る。
【0039】
有利には、この方法は、以下のステップのうちの少なくとも一つを含み得る。第1の交差電圧が警報電圧しきい値を達成又は超過する場合に警報信号を生成するステップ、及び/又は第2の交差電圧が第2の警報電圧しきい値を達成又は超過する場合に警報信号を生成するステップ。警報信号は、第1又は第2の接触器のヘルスの状態が限界であることを示すために、バッテリ制御装置によって別の制御装置、ディスプレイ・ユニット、又はユーザに送信され得る。それぞれの接触器の何らかの切換えが抑制される前に警報信号が生成されるので、バッテリ・パックの強制停止なしに接触器の交換が可能となる。したがって、最大限の動作上の安全と最適な利用が組み合わされる。
【0040】
有利には、この方法は、以下のステップのうちの少なくとも一つを含み得る。第1の交差電圧が第1の電圧しきい値を超過する場合に第1の接触器の切換えを抑制するステップ、及び/又は第2の交差電圧が第2の電圧しきい値を超過する場合に第2の接触器の切換えを抑制するステップ、及び/又は第1の交差電圧が第1の電圧しきい値を超過し、又は第2の交差電圧が第2の電圧しきい値を超過する場合に第1の接触器及び第2の接触器の切換えを抑制するステップ。
【0041】
警報電圧しきい値と電圧しきい値はどちらもボルト単位で確立され得、自由に選択可能である。一方では接触器エージングに関する製造業者データ、他方では不可欠な安全マージンが考慮され得る。接触器の切換えが抑制されるとすぐに、少なくとも一つのバッテリ・セル及びインターフェースからの切断を保証するために、対応するコマンドにもかかわらず、接触器はもはや閉じられない。第1の接触器及び第2の接触器について同一の構成要素が使用される場合、第1の電圧しきい値及び第2の電圧しきい値について同一の値を指定することが有利である。
【0042】
警報電圧しきい値は電圧しきい値の割合を構成し得る。たとえば、それぞれ考慮される交差電圧が電圧しきい値の80%である場合、警報がトリガされ得る。したがって、警報電圧しきい値は電圧しきい値の80%である。警報電圧しきい値と電圧しきい値との間のマージンは、定期的なユーザの挙動を考慮に入れることができ、たとえば車両での応用の場合、車両ユーザが車両ユーザのサービス工場との予約を予定し、それまでは通常の使用中の安全停止なしに車両が引き続き定期的に動作することを可能にする。言い換えれば、定期的な運転中の全体にわたって車両が安全に動作し得、サービス間隔も観測され得るように、警報電圧値が設定される。
【0043】
有利には、この方法は、第1の接触器のバッテリ・セル節点と、第2の接触器のバッテリ・セル節との間の第1の基準電位を求めるステップ、及び/又は第1の接触器のインターフェース節点と、第2の接触器のインターフェース節点との間の第2の基準電位を求めるステップのうちの少なくとも一つを含み得、第1の電圧しきい値は、第1の基準電位に従って求められることが好ましく、第2の電圧しきい値は、第2の基準電位に従って求められることが好ましい。それぞれの基準電位は、バッテリ・パックの条件、たとえばバッテリ・パックの充電の状態の考慮すべき点に対して適切なものである。基準電位と電圧しきい値との間の関係の確立により、電圧しきい値の動的調節が可能となる。これにより、この方法の柔軟性及び適応性が向上する。
【0044】
有利には、この方法は、以下のステップを含み得る。それぞれの接触器の投入のための何らかの切換えプロセスの前に、第1の接触器及び/又は第2の接触器のヘルスの状態を判定するステップ。それぞれの接触器の各切換え動作の前に、ヘルスの状態の監視のために差動電圧を測定することに基づいて、労力を増やすことなく、ヘルスの状態に関する、対応する判定が可能となる。これにより、いつでもヘルスの状態を確実に監視することが可能となり、更に安全が向上する。
【0045】
有利には、この方法はまた、第1の差動電圧及び/又は第2の差動電圧の連続的測定のためのステップを実行し得る。連続的測定により、制御装置内の各プロセッサ時間間隔で、対応する差動電圧が測定されることを理解されたい。したがって、それぞれの接触器のヘルスの状態の突然の変動を含む変動が直接的に検出される。このことは、監視のダイナミクスに対して肯定的な影響を及ぼす。
【0046】
バッテリ・パックでの利用のための提案されるバッテリ制御システムは、本発明による方法の実行に対して適切である。
【0047】
この目的で、対応する信号線が提供され、対応する機能が構造的に実装される。バッテリ制御システムは電子モジュールであり得、電子モジュールは、様々な入力信号が出力信号に変換されるプロセッサを備える。潜在的な入力信号は、接触器のヘルスの状態に関するステートメントであり、それぞれの差動電圧が潜在的な出力信号を含む。
【0048】
電子駆動ユニットへの電気的エネルギーの供給のための提案されるバッテリ・パックは、以下の構成要素を備える。少なくとも一つのバッテリ・セルと、インターフェースへの電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線及び第2のインターフェース線と、第1のインターフェース線内に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器と、第2のインターフェース線内に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器。バッテリ・パックは前述のバッテリ制御システムを更に備える。バッテリ・パックの対応する構成要素は、前述の方法と共に既に述べた。この方法を参照して開示された、対応する特徴もバッテリ・パックに適用可能である。
【0049】
前述の目的はまた、前述の方法の実行のためのマシン実行可能命令が保存される不揮発性コンピュータ可読記憶媒体によって達成される。
【0050】
本発明の好ましい別の実施形態が、以下の図の説明を参照しながらより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】第1の接触器及び第2の接触器を有する回路の概略図である。
【
図2】第1の交差電圧及び第2の交差電圧の表現のための簡略化した概略図である。
【
図3】第1の接触器及び第2の接触器を有する回路の別の概略図である。
【
図4】第1の接触器及び第2の接触器を有する回路の等価回路図である。
【
図5】第1の接触器の絶縁抵抗に対してプロットされた、シミュレートされた交差電圧の第1の図である。
【
図6】第2の接触器の絶縁抵抗に対してプロットされた、シミュレートされた交差電圧の第2の図である。
【
図7】絶縁抵抗に対してプロットされた、シミュレートされた交差電圧のセットの第3の図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
好ましい例示的実施形態が、図を参照しながら以下で説明される。様々な図中の同一の要素、類似の要素、又は同様に機能する要素が、同一の参照符号で識別され、冗長性を避けるために、所々で、こうした要素のどんな繰返しの説明も省略される。
【0053】
図1は、電気的エネルギーの電気化学的蓄積のための少なくとも一つの概略的に示されたバッテリ・セル4を備える、バッテリ・パック3の概略表現を示す。このタイプのバッテリ・パック3はたとえば、駆動エネルギーの送達のために、車両内に設けられ得る。
【0054】
バッテリ・パック3内に設けられた複数のバッテリ・セル4が、バッテリ・モジュールの形態で構築され得、複数のバッテリ・モジュールもバッテリ・パック内に設けられ得る。複数のバッテリ・パック3がバッテリ・システム内で相互接続され得、バッテリ・システムは、最終的には駆動エネルギーの送達のために設けられ得る。バッテリ・システムは、たとえば、定格電圧400V又は800Vで動作する「高電圧システム」であり得る。
【0055】
バッテリ・パック3は、第1のインターフェース線5及び第2のインターフェース線6を備える。第1のインターフェース線5及び第2のインターフェース線6は、インターフェース7に電気的エネルギーを送達する。インターフェース7は、たとえば、バッテリ・システムへの単純な電気的プラグイン接続を可能にする高電圧ソケット・アウトレットの形態で設けられ得る。言い換えれば、バッテリ・パック3は、バッテリ・システムの残りの部分に対してインターフェース7で接続され得、バッテリ・パック3の内部構造の如何にかかわらず、具体的には一つ又は複数のバッテリ・モジュールがバッテリ・パック3内に配置されるかどうか、又はバッテリ・パック3内のバッテリ・セル4が異なる方式で構築されるかどうかの如何にかかわらず、電気的エネルギーは、もっぱらバッテリ・パック3からバッテリ・システムの残りの部分へ単一のプラグイン接続を介して移送される。それに対応して、原理上は、バッテリ・システムはバッテリ・パック3を単一のバッテリと見なす。
【0056】
バッテリ・パック3の接続のためのインターフェース7はまた、車両インターフェース・ボックス(VIB)上に構成され得、したがって、このようにして、たとえば(提示されていない)高電圧システムの構成のために、たとえば車両の駆動ユニットの推進のために、バッテリ・パック3が利用され得る。
【0057】
図1によるバッテリ・パック3内に、第1の接触器1及び第2の接触器2を有する回路が表現されている。第1の接触器1は第1のインターフェース線5内に配置され、第2の接触器2は第2のインターフェース線6内に配置される。第1の接触器1及び第2の接触器2の機能は、インターフェース7からのバッテリ・セル4の絶縁であり、したがって接触器1、2が開いた状態では、インターフェース7はバッテリ・セル4に接続されず、したがって電圧が無い。それに対応して、接触器1、2の機能はバッテリ・パック3の接続及び切断である。接触器1、2により、バッテリ・パック3又はバッテリ・システム全体が不安定な状態又は限界状態を呈する場合に、バッテリ・パック3の安全停止も実行され得る。
【0058】
表現される例示的実施形態では、第1の接触器1が、インターフェース7に面するインターフェース節点8と、バッテリ・セル4に面するバッテリ・セル節点10との間に配置される。したがって第1の接触器1は、インターフェース節点8とバッテリ・セル節点10との間の電気的接続を遮断又は確立し得る。
【0059】
同様に、第2の接触器2が、インターフェース7に面するインターフェース節点9と、バッテリ・セル4に面するバッテリ・セル節点11との間に配置される。したがって第2の接触器2は、インターフェース節点9とバッテリ・セル節点10との間の電気的接続を遮断又は確立し得る。
【0060】
図1は、開いた位置の第1の接触器1及び第2の接触器2を共に表す。この位置では、それぞれの接触器1、2がそれぞれの絶縁抵抗を送達する。
【0061】
図1による表現は、この例示的実施形態による方法の動作を示すためのものであることに留意されたい。したがって、接触器の数も、バッテリ・セルの数も、インターフェース線の数も制限的な性質のものではない。
【0062】
通例では、接触器1、2の絶縁抵抗は300メガオームを超える。しかしながら、様々な切換えサイクルの間に、切換え中に、残留電流が流れ、それに応じてアークが生成している場合に、たとえば接点での接点摩耗、アーク侵食、又は融合の結果として接触器が摩耗する。この摩耗の結果として、接触器の絶縁抵抗が低下し得、したがって事前定義された絶縁抵抗の達成時に、インターフェース7からのバッテリ・セル4の絶縁をもはや保証することができないという理由で、接触器をもはや利用することができない。この絶縁抵抗は、たとえば300キロオームであり得る。この絶縁抵抗を達成すると、それぞれの接触器はその寿命末期に達し、交換する必要があることになる。
【0063】
理想的な動作では、接触器が遮断状態のみに切り替わり、したがって接触器エージングは本質的に、もっぱら機械的摩耗によって引き起こされる。このエージングは、切換えサイクルの計測によって監視され得る。しかしながら、不測の動作状態又は制御の非最適構成の場合に、電流が流れている場合であっても切換えが実行される可能性がある。電流の遮断についての切換え動作の頻度と、切り換えられるそれぞれの電流の方向とに応じて、接触器エージングはより急速に、又はよりゆっくりと進むことになる。
【0064】
したがって、もはや安全ではない接触器をバッテリ・パック3内で引き続き使用することを防止するために、接触器エージングをより正確に監視することが必要である。逆に、リソースの保持のために、接触器の早すぎる交換を防止することが意図される。
【0065】
ここで表される例示的実施形態によれば、開いた第1の接触器1の両端間の第1の差動電圧Udif,1、及び/又は開いた第2の接触器2の両端間の第2の差動電圧Udif,2が、それに応じて測定される。第1の測定された差動電圧Udif,1又は測定された第2の差動電圧Udif,2を参照することにより、第1の接触器1若しくは第2の接触器2のヘルスの状態を判定し、又は少なくともそれぞれの接触器がまだ安全に動作することができるかどうかを確立することが可能である。
【0066】
第1の例では、差動電圧を二つの地点間に存在する測定電圧として理解することができる。
【0067】
図2は特定の差動電圧を示す。したがって、第1の差動電圧Udif,1として、第1の交差電圧Ukreuz,1が測定される。第2の差動電圧Udif,2として、第2の交差電圧Ukreuz,2が測定される。第1の交差電圧Ukreuz,1は、第1の接触器1のインターフェース節点8と、第2の接触器2のバッテリ・セル節点11との間に存在する。第2の交差電圧Ukreuz,2は、第1の接触器1のバッテリ・セル節点10と、第2の接触器2のインターフェース節点9との間に存在する。したがって、交差電圧Ukreuz,1、2により、固定基準値に関連して第1の接触器1又は第2の接触器2上の電圧降下に関して、それぞれのケースで固定基準値に対して、すなわち第2の接触器2のそれぞれバッテリ節点11及びインターフェース節点9を参照して、結論を引き出すことが可能となる。通例では、第2のインターフェース線6は大地電位であり、したがってこのケースでは、それぞれの基準電位はグランドである。
【0068】
交差電圧Ukreuz,1、2に加えて、
図2による回路では、第1の基準電圧Uref,1及び第2の基準電圧Uref,2も測定される。第1の基準電圧Uref,1は、第1の接触器1のバッテリ・セル節点10と、第2の接触器2のバッテリ・セル節点11との間に存在し、したがってバッテリ・セル4の電圧に対応する。
【0069】
第2の基準電圧Uref,2は、第1の接触器1のインターフェース節点8と、第2の接触器2のインターフェース節点9との間に存在し、したがってインターフェース7に印加される電圧に対応する。第1の基準電圧Uref,1を参照することにより、第1の交差電圧Ukreuz,1の規格化が可能である。第2の基準電圧Uref,2を参照することにより、第2の交差電圧Ukreuz,2の規格化が可能である。
【0070】
図3は、バッテリ・パック3の回路の別の表現を示す。このバッテリ・パックは、たとえば高電圧システムへの接続を可能にする、インターフェース7をも備える。
【0071】
第1の接触器1及び第2の接触器2に加えて、補助接触器12が回路内に設けられる。補助抵抗器13が補助接触器12の回路上流に接続される。補助接触器12及び補助抵抗器13は、第1の接触器1のインターフェース節点8と、第1の接触器1のバッテリ・パック節点10とに接続される。バッテリ・システムへのバッテリ・パック3の接続時の、補助接触器12及び補助抵抗器13の機能は、補助抵抗器13を介してバッテリ・システム内に存在するキャパシタンスの事前充電を可能にすることであり、したがってバッテリ・システムへのバッテリ・パック3の接続時にバッテリ・セル4の高い負荷となり得、接触器1、2の投入時に接触器の高い負荷及び摩耗となり得る、過剰に高い電流の突然の流れがない。このタイプのそのような保護回路は原理的には周知である。
【0072】
第1の接触器1又は第2の接触器2のヘルスの状態の電圧ベースの監視の基本動作モードは、補助接触器12及び補助抵抗器13によって依然として影響を受けない。
【0073】
図3の様々な矢印は様々な測定電圧を表す。第1の交差電圧Ukreuz,1、第2の交差電圧Ukreuz,2、第1の基準電圧Uref,1、及び第2の基準電圧Uref,2は
図2から知られる。
【0074】
更に、
図3による回路では、様々な補助電圧が測定される。第1の補助電圧Uhilf,1が、第2の接触器2のインターフェース節点9と、接地点との間に存在する。第2の補助電圧Uhilf,2が、バッテリ抵抗器15の回路上流の地点と、第2の接触器2のバッテリ・セル節点11との間に印加される。第3の補助電圧Uhilf,3が、バッテリ抵抗器15の回路上流の地点と、別の接地点との間に印加される。第4の補助電圧Uhilf,4が、第2の接触器2のバッテリ・セル節点11と、別の接地点との間に印加される。
【0075】
図3による回路内の電圧条件の詳細なイメージと共にバッテリ制御システムを提供するために、様々な補助電圧が使用される。バッテリ抵抗器15は、バッテリ・パック3内の抵抗の表現のために概略的に示されるだけのものである。単に例示のために、
図3はDC電流源14をバッテリ・セルとして示す。
【0076】
図4は別の回路を表す。
図4による回路は、測定アセンブリを含む、バッテリ・パック3の等価回路図を表す。
【0077】
第1の接触器1の内部抵抗は、第2の補助接触器12の内部抵抗及び保護抵抗器13と共に、第1の共通内部抵抗16に割当て可能である。第2の接触器2は第2の内部抵抗17に割当て可能である。DC電流源14又は少なくとも一つのバッテリ・セル4は交換バッテリ18に割当て可能である。様々な抵抗器19が回路内に示され、その機能はここでは詳細には述べないが、様々な抵抗器19は単にバッテリ・セル内の条件を表すためのものである。
【0078】
第1の交差電圧Ukreuz,1による電圧降下を求めるために測定分路20が使用される。第2の交差電圧Ukreuz,2による電圧降下を求めるために測定分路21が使用される。第1の基準電圧Uref,1による電圧降下を求めるために別の測定分路22が使用される。第2の基準電圧Uref,2による電圧降下を求めるために別の測定分路23が使用される。したがって、測定分路20、21上の電圧降下を参照することにより、それぞれの交差電圧を求めることが可能である。これにより、それぞれの接触器1、2内のエージング・プロセス、又は接触器1、2に割り当てられる内部抵抗16、17の効率的な監視又は判定が可能となる。
【0079】
図5は、絶縁抵抗に対して、すなわちそれぞれの開いた接触器の電気抵抗に対してプロットされた、交差電圧の例示的なシミュレートされた電圧特性を表す。
図5に関して、上側の特性は第1の交差電圧Ukreuz,1の電圧特性に対応し、下側の特性は第2の交差電圧Ukreuz,2の電圧特性に対応する。これは例示的なものに過ぎず、逆の割当てが等しく十分に適用され得る。
【0080】
図5による例では、第1の接触器1がかなりのエージングを受け、その内部抵抗が低下する。シミュレーションでは、第2の接触器2がその(高い)内部抵抗を維持し、したがって目に見えるエージングを受けていないことが同時に仮定される。これは、第1の交差電圧Ukreuz,1、すなわち上側の特性から推論され得る。したがって、第1の接触器1の絶縁抵抗が低下するにつれて交差電圧Ukreuz,1は増加する。言い換えれば、第1の接触器1はもはや、バッテリ・セル4によって生成される電圧から第1のインターフェース5を完全に絶縁することができず、したがってこのケースでは、開いた接触器1の両端間で電圧移送が生じる。これは、第1の交差電圧Ukreuz,1の測定によって検出される。
【0081】
第1の接触器1のこのエージング・プロセスを監視するために、第1の電圧しきい値Ukrit,1が定義される。この第1の電圧しきい値Ukrit,1は、たとえば
図5で表される回路のシミュレーションから推論され得、次いで第1の電圧しきい値Ukrit,1が、限界と仮定される接触器1の(シミュレートされた)内部抵抗から推論される。一例では、第1の電圧しきい値Ukrit,1が、たとえば(シミュレートされた)内部抵抗1.4メガオームで確立され得る。そのとき回路内で測定された交差電圧Ukreuz,1が電圧しきい値Ukrit,1を超える場合、接触器1の内部抵抗が限界値未満に低下したこと、したがってバッテリ・パック3をもはや切り換えることができないことが仮定される。
【0082】
絶対値として規定されず、バッテリ・セルのそれぞれの充電状態に適応する電圧しきい値を定義するために、たとえば第1の基準電圧(このケースでは400V)の電圧しきい値90%も定義され得る。測定又は検出された第1の交差電圧Ukreuz,1が第1の電圧しきい値Ukrit,1を達成又は超過するとすぐに、第1の接触器1のヘルスの限界状態に達する。したがって、そのようなケースでは、それぞれの接触器の投入が防止され得、対応するメッセージがバッテリ制御装置に送られ得る。
【0083】
電圧しきい値を超過したために警報なしでここでバッテリ・パックが突然に機能を停止することを防止するために、警報メッセージが中央バッテリ・コントローラに出力される警報電圧しきい値が更に定義され得る。警報電圧しきい値は、電圧しきい値に達するまでバッテリ・パックがまだしばらく動作し得、バッテリ・パックの更なる使用が抑制されるような寸法にされることが好ましい。警報電圧しきい値は、たとえば車両でのバッテリ・パックの使用のケースで、車両ドライバが車両の定期的な動作中に工場にサービス予約を手配するための十分な時間を有し、それまでは車両が引き続き定期的に動作するように設定されることが好ましい。それに応じて警報電圧しきい値が、たとえば、警報値である、基準電圧の80%に、又はシミュレーションから導出されたそれぞれの接触器の計算された内部抵抗に設定され得る。
図6は、絶縁抵抗に対してプロットされた交差電圧の別のシミュレーションを示す。
図6では、第1の交差電圧Ukreuz,1及び第2の交差電圧Ukreuz,2の特性が一致し、したがってただ一つの曲線が認識され得る。ここでは両方の接触器1、2が同一のエージング・プロセスを受けると仮定される。したがって、絶縁抵抗が低下するにつれて、交差電圧Ukreuz,1、2は上昇する。したがって、
図2に示される例では、第2の電圧しきい値Ucrit,2に達するとき、それぞれの接触器1、2の投入も抑制される。
図7では、交差電圧の様々なシミュレーションが絶縁抵抗に対してプロットされる別の図が表される。ここでは、個々のエリアが強調表示される。「I」と識別されるエリア、すなわち比較的高い抵抗及び比較的低い電圧を有するエリアでは、接触器がまだその機能を確実に実行することができる。絶縁抵抗が更に低下し、電圧が更に上昇する場合、すなわちエリアIIでは、深刻なエージングに既に達している。このエリアでは、警報がそれぞれのバッテリ・コントローラに送られる。それぞれの接触器が引き続きエージングする場合、すなわち抵抗並びに電圧が引き続き上昇する場合、エリアIIIを参照して、それぞれの接触器が開いたとき、インターフェースからのそれぞれのインターフェース線の切断がもはや保証されず、そのためにこうしたエリア内では投入が防止される。このエリアは障害エリアとも呼ばれ、障害エリアでは、安全のために接触器の投入を防止しなければならない。これは、提案される方法によって効率的に達成され、交差電圧の測定が、接触器のヘルスの状態に関して信頼できる結論を引き出すことを可能にするのに十分である。
【0084】
前述の方法は、バッテリ制御システムで実装され得、好ましい構成では、個々の実行のステップが、バッテリ制御システムのプロセッサによって実行され得るマシン実行可能命令の形で定められる。マシン実行可能命令は、たとえばROM、EPROM、又はハード・ディスク・メモリの形態の、不揮発性コンピュータ可読記憶媒体上に保存され得ることが好ましい。
【0085】
適用可能な範囲で、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態で示される個々の特徴のいずれかが組み合わされ、及び/又は交換され得る。
【符号の説明】
【0086】
1 第1の接触器
2 第2の接触器
3 バッテリ・パック
4 バッテリ・セル
5 第1のインターフェース線
6 第2のインターフェース線
7 インターフェース
8 第1の接触器のインターフェース節点
9 第2の接触器のインターフェース節点
10 第1の接触器のバッテリ・セル節点
11 第2の接触器のバッテリ・セル節点
12 補助接触器
13 保護抵抗器
14 DC電流源
15 バッテリ抵抗器
16 内部抵抗
17 内部抵抗
18 交換バッテリ
19 抵抗器
20 測定分路
21 測定分路
22 測定分路
23 測定分路
Udif,1 第1の差動電圧
Udif,2 第2の差動電圧
Ukreuz,1 第1の交差電圧
Ukreuz,2 第2の交差電圧
Uref,1 第1の基準電圧
Uref,2 第2の基準電圧
Ukrit,1 第1の電圧しきい値
Ukrit,2 第2の電圧しきい値
Uhilf,1 第1の補助電圧
Uhilf,2 第2の補助電圧
Uhilf,3 第3の補助電圧
Uhilf,4 第4の補助電圧
【手続補正書】
【提出日】2024-11-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリ・パック(3)内の少なくとも一つの接触器(1、2)のヘルスの状態を監視するための方法であって、
前記バッテリ・パック(3)は、電気的エネルギーの電気化学的蓄積のための少なくとも一つのバッテリ・セル(4)、並びにインターフェース(7)への電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線(5)及び第2のインターフェース線(6)を備え、
少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器(1)が、前記第1のインターフェース線(5)内の前記インターフェース(7)と前記少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器(2)が、前記第2のインターフェース線(6)内の前記インターフェース(7)と前記少なくとも一つのバッテリ・セル(4)との間に配置され、
前記第1の接触器(1)は、前記インターフェース(7)に面する第1のインターフェース節点(8)と前記バッテリ・セル(4)に面する第1のバッテリ・セル節点(10)との間に配置され、前記第2の接触器(2)は、前記インターフェース(7)に面する第2のインターフェース節点(9)と前記バッテリ・セル(4)に面する第2のバッテリ・セル節点(11)との間に配置され、
以下の各ステップ:
開いた前記第1の接触器(1)の両端間の第1の差動電圧(Udif,1)を、
(i)前記第1の接触器(1)の前記第1のインターフェース節点(8)と、前記第2の接触器(2)の前記第2のバッテリ・セル節点(11)と、の間に存在する第1の交差電圧(Ukreuz,1)を測定し、
(ii)前記第1の接触器(1)の前記第1のバッテリ・セル節点(10)と、前記第2の接触器(2)の前記第2のバッテリ・セル節点(11)と、の間の第1の基準電圧(Uref,1)を求め、
(iii)前記第1の交差電圧(Ukreuz,1)と前記第1の基準電圧(Uref,1)との差を求める、
ことにより測定すること;及び
測定した第1の差動電圧(Udif,1)に基づいて前記第1の接触器(1)のヘルスの状態を判定すること、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記測定した第1の差動電圧(Udif,1)と第1の電圧しきい値(Ukrit,1)との比較に基づいて前記第1の接触器(1)のヘルスの状態を監視することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の差動電圧(Udif,1)が第1の電圧しきい値(Ukrit,1)を超過する場合に前記第1の接触器(1)の切換えを抑制することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の差動電圧(Udif,1)が第1の警報電圧しきい値を超過する場合に警報信号を生成することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記接触器(1、2)を閉じる切換えプロセスの前に、前記第1の接触器(1)のヘルスの状態を監視することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の差動電圧(Udif,1)の連続的測定を特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
バッテリ・パック内での利用のためのバッテリ制御システムであって、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法を実行するように適合され、配置されることを特徴とするバッテリ制御システム。
【請求項8】
電気駆動ユニットのための電気的エネルギーの送達のためのバッテリ・パック(3)であって、
少なくとも一つのバッテリ・セル(4)と、
インターフェース(7)への電気的エネルギーの送達のための第1のインターフェース線(5)及び第2のインターフェース線(6)と、
前記第1のインターフェース線(5)内の第1のインターフェース節点(8)と第1のバッテリ・セル節点(10)との間に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第1の接触器(1)と、
前記第2のインターフェース線(6)内の第2のインターフェース節点(9)と第2のバッテリ・セル節点(11)との間に配置される、少なくとも一つの切換え可能な第2の接触器(2)と、を有し、
請求項7に記載のバッテリ制御システムを有することを特徴とするバッテリ・パック(3)。
【請求項9】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法の実行のためのマシン実行可能命令が記憶される不揮発性コンピュータ可読記憶媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この目的は、請求項1の特徴を有する方法、請求項7の特徴を有するバッテリ制御システム、及び請求項8の特徴を有するバッテリ・パックによって達成される。有利な別の開発が、従属請求項、説明、及び図から進められる。
【外国語明細書】