(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2025138182
(43)【公開日】2025-09-25
(54)【発明の名称】横葺屋根構造
(51)【国際特許分類】
E04D 3/362 20060101AFI20250917BHJP
【FI】
E04D3/362 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037112
(22)【出願日】2024-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000165505
【氏名又は名称】元旦ビューティ工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000253400
【氏名又は名称】舩木商事有限会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095337
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100174425
【弁理士】
【氏名又は名称】水崎 慎
(74)【代理人】
【識別番号】100203932
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 克宗
(72)【発明者】
【氏名】舩木 元旦
【テーマコード(参考)】
2E108
【Fターム(参考)】
2E108AA02
2E108AS04
2E108BB01
2E108BN02
2E108CC01
2E108CC02
2E108DD03
2E108GG01
(57)【要約】
【課題】下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工することができる横葺屋根構造を提供する。
【解決手段】本発明の横葺屋根構造は、断熱材2の表面側に横葺屋根材1が配設されてなり、断熱材2は、水上側に表面側へ隆起する土手21が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路22が設けられ、横葺屋根材は、少なくとも断熱材2を被覆する面板部11と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部12と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分131、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片132を有する水下側成形部13と、が備えられ、左右方向に隣り合う横葺屋根材1,1のジョイント部分14の水下側成形部13(係合部133)が、下段に配置された断熱材2の土手21に当接状に配置されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の表面側に横葺屋根材が配設されてなる横葺屋根構造であって、
前記断熱材は、水上側に表面側へ隆起する土手が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路が設けられ、
前記横葺屋根材は、少なくとも前記断熱材を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、が備えられ、
左右方向に隣り合う前記横葺屋根材のジョイント部分の水下側成形部が、下段に配置された前記断熱材の前記土手に当接状に配置されていることを特徴とする横葺屋根構造。
【請求項2】
前記断熱材の土手は、一定ピッチにて複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載の横葺屋根構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工することもできる横葺屋根構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横葺屋根は、軒先(水下)側から棟(水上)側へ向かって屋根材を葺き上げる施工法が一般的であった。この施工法は、大掛かりな足場設置が必要となるため、本出願人は、棟(水上)側から軒先(水下)側へ向かって屋根材を葺き下ろす施工法を特許文献1として提案し、足場設置を大幅に省力化でき、工期短縮が図れることをも見出した。
しかも、前記水下側から水上側へ向かって屋根材を葺き上げる施工法では、施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落葉が屋根材裏面に侵入して腐食を招いたり、作業者が施工済みの屋根材を踏み付けてしまう恐れがあったが、前記特許文献1の水上側から水下側へ向かって屋根材を葺き下ろす施工法では、このような恐れも解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1の施工法は、特殊な保持部材、即ち「長手方向に沿って係合溝を備えた長尺な吊子部材」を必要とし、任意の下地に対して取り付けられるものではなかった。また、その保持部材の取付工程をも必要としていた。
【0005】
そこで、本発明は、下地構造を限定する(特殊な保持部材を用いる)ことなく、水上側から水下側へ横葺屋根材を施工することができる横葺屋根構造を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記に鑑み提案されたもので、断熱材の表面側に横葺屋根材が配設されてなる横葺屋根構造であって、前記断熱材は、水上側に表面側へ隆起する土手が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路が設けられ、前記横葺屋根材は、少なくとも前記断熱材を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、が備えられ、左右方向に隣り合う前記横葺屋根材のジョイント部分の水下側成形部が、下段に配置された前記断熱材の前記土手に当接状に配置されていることを特徴とする横葺屋根構造に関するものである。
なお、下段の断熱材の土手に当接状に配置される水下側成形部とは、流れ方向に接続される横葺屋根材同士の接続部分における水下側成形部を指し、後述する図示実施例ではヘアピン状の係合部に相当している。
【0007】
さらに、本発明は、前記施工法において、前記断熱材は、水上側が厚肉に、水下側が薄肉に形成される段差部を備え、前記第2の工程にてこの段差部に、前記横葺屋根材の前記水下側成形部が係合されることを特徴とする横葺屋根の施工法をも提案する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の横葺屋根構造は、左右方向に隣り合う横葺屋根材のジョイント部分の水下側成形部が、下段に配置された、表面上に雨水が流れる排水経路が設けられる断熱材に形成された、水上側に表面側へ隆起する土手に当接状に配置されているので、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水下側から水上側へも、水上側から水下側へも、横葺屋根材を施工することができる。
そのため、 従来の水下側から水上側へ横葺屋根材を葺き上げる工法のように施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が横葺屋根材裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの横葺屋根材を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
【0009】
さらに、断熱材の土手は、一定ピッチにて複数形成されている場合、隣り合う土手同士の間隔についても、雨水が流れる排水経路として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)本発明の実施例1の横葺屋根構造における二段の断熱材の上段右側へ横葺屋根材を敷設する状態を示す斜視図、(b)上段の断熱材上へ横葺屋根材を敷設した状態を示す斜視図である。
【
図2】(a)本発明の実施例1の横葺屋根構造における上段の断熱材へ下段の断熱材を差し込むように取り付ける状態を示す斜視図、(b)二段の断熱材の並列状の取付状態を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施例1の横葺屋根構造における並列状に取り付けられた二段の断熱材に形成される排水経路を示す斜視図である。
【
図4】(a)本発明の実施例1の横葺屋根構造における三段の断熱材の中段へ横葺屋根材を敷設する状態を示す斜視図、(b)中段の断熱材上へ横葺屋根材を敷設した状態を示す斜視図である。
【
図5】(a)本発明の実施例1の横葺屋根構造における横葺屋根材の裏面側の排水機構を示す目的で、上段のジョイント部分を拡げた状態を示す斜視図、(b)上段右側、及び中段の横葺屋根材を除くと共に雨水の流れを太矢印にて示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施例1の横葺屋根構造が、スレート屋根下地へ適用された例を示す側面図である。
【
図7】本発明の実施例1の横葺屋根構造が、軒先端に軒樋が配設された構造に適用された例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の横葺屋根構造は、断熱材の表面側に横葺屋根材が配設されてなり、断熱材は、水上側に表面側へ隆起する土手が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路が設けられ、横葺屋根材は、少なくとも断熱材を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、が備えられ、左右方向に隣り合う前記横葺屋根材のジョイント部分の水下側成形部が、下段に配置された前記断熱材の前記土手に当接状に配置されていることを特徴とする。
【0012】
前述のように本発明の横葺屋根構造に用いられる断熱材は、水上側に表面側へ隆起する土手が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路が設けられている。
この断熱材は、非透水素材が望ましいが、必ずしも限定するものではなく、後述する図示実施例の断熱材のように低反発性の非透水性の弾性素材で形成され、その形状特性を任意に変更可能な素材が望ましい。
【0013】
また、この断熱材の土手は、後述する図示実施例のように一定ピッチにて複数形成されていることが望ましい。なお、その形状についても、角マクラ状に限定されず、特にその具体的な構成を限定しない。
さらに、この断熱材には、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路が設けられるが、後述する図示実施例のように各種形状の隆起島(島状の凸部)を複数設け、各隆起島の間隔が雨水が流れる排水経路となる構成でもよい。
前述のように、断熱材の土手については、一定ピッチにて複数形成されていることが望ましいが、これらの隣り合う土手同士の間隔についても、排水経路として用いることができる。この場合、隆起島の一部が、土手として用いられるケースに相当する。
なお、土手が連続する場合には、土手の下方に孔を設け、該孔を排水経路として用いるようにしてもよい。
【0014】
なお、この断熱材には、後述する図示実施例のように水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部を有する構成を採用してもよい。
この構成では、水上側の断熱材の重合部に、水下側の断熱材の重合受部が重合されることで、相じゃくり状に接続され、断熱材の表面を流れる雨水を上段側から下段側へ流下させることができる。
【0015】
また、本発明の横葺屋根構造に用いられる横葺屋根材は、少なくとも前記断熱材を被覆する面板部と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部と、が備えられている。
この横葺屋根材は、隣り合う横葺屋根材が相互に係合される様式のどのような横葺屋根材をも用いることができ、ガルバリウム鋼板(登録商標)でもその他の各種金属板でも適用でき、裏面側の断熱材とは一部空間を隔てて配設される構成でも、後述する図示実施例のように横葺屋根材の裏面側に密着状に断熱材が配される構成でもよい。
【0016】
これらの面板部、水上側成形部、水下側成形部については、後述する図示実施例では略平坦状の面板部の水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部と、その水下端に裏面側へ折り返した係合部分、及びその先端を更に折り返して水下側へ延在させた延在片を有する水下側成形部としたが、特にそれらに限定しない。また、後述する図示実施例では、係合部分を略コ字状に成形し、その裏面に形成される延在片の水上端を、前記水上側成形部と係合するヘアピン状の係合部とすると共に、延在片の水下端を裏面側へ折曲した形状としたが、特にそれらに限定しない。
【0017】
本発明の横葺屋根構造では、前述のように左右方向に隣り合う前記横葺屋根板のジョイント部分の水下側成形部が、下段に配置された前記断熱材の前記土手に当接状に配置されている。
横葺屋根板のジョイント部分とは、左右方向に隣り合う横葺屋根板の側端縁同士の接続部分を指し、突き合わせ状でもカバー材を配する構造でもよい。
なお、後述する図示実施例では、上段側の断熱材の土手から下段側の土手までの長さを、横葺屋根板の水上側成形部からヘアピン状の係合部までの長さと略同一としたので、横葺屋根板の水下側成形部(係合部)が、下段の断熱材の土手に当接状に配置されると、水上側成形部の水上端が、上段の断熱材の土手に当接状に配置される状態となる。
【0018】
このような構成を備える本発明の横葺屋根構造は、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水下側から水上側へも、水上側から水下側へも、横葺屋根材を施工することができる。
そのため、従来の水下側から水上側へ横葺屋根材を葺き上げる工法のように施工済みの屋根材と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が横葺屋根材裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの横葺屋根材を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
【実施例0019】
図1(a)には、実施例1の横葺屋根構造において、上段側の断熱材2の重合部26が、図中の左側に示す水下側の断熱材2の重合受部25に重合されている状態が示されている。
この上段側の断熱材2の左側には、既に横葺屋根材1が密着状に設置され、その右側にはその上方に臨ませた横葺屋根材1が配設される。この横葺屋根材1の水下側成形部13(係合部133)は、下段に配置された断熱材2の土手21に当接状に配置されている
図1(b)には、上段側の断熱材2を覆うように左右の横葺屋根材1,1が突き合わせ状に配設されている状態が示されている。
【0020】
この実施例1に用いられた断熱材2は、
図2(a)に示すように水上側に表面側へ隆起する島状(凸状)の土手21が形成されていると共に、表面上に水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路22が設けられている。この断熱材2は、低反発性の非透水性の弾性素材(発泡ポリスチレン)で形成されている。
この断熱材2の土手21は、一定ピッチにて角マクラ状に形成され、長さ方向に複数形成されている。この角マクラ状の土手21の七個が、一定ピッチにて並列状に形成され、更にその両外側にはその半幅の土手21'が配設されている。
また、七つの土手21それぞれの水下側には、平面視が六角形状の広隆起部23と、平面視が互角形状の狭隆起部24とが形成されている。また、二つの土手21'それぞれの水下側には、平面視が平行四辺形状の広隆起部23'と、平面視が台形状の狭隆起部24'とが形成されている。
【0021】
また、この断熱材2には、水上端に裏面側が水上側へ延在する重合受部25を有すると共に、水下端に表面側が水下側へ延在する重合部26を有する構成を採用している。
そのため、
図2(b)に示すように水上側の断熱材2の重合部26に、水下側の断熱材2の重合受部25が重合されることで、相じゃくり状に接続され、断熱材2の表面を流れる雨水を上段側から下段側へ流下させることができる。なお、前述のようにこの断熱材2は、低反発性の非透水性の弾性素材であり、前記重合受部25には浸入水を水下側へ流すための図示しない凹状部が形成されている。
なお、これらの断熱材2,2は、傾斜勾配を有する下地(図示せず)状に併設状に配設されているので、水上側に配設された上段側の断熱材2から、水下側に配設された水下側の断熱材2へ、雨水が流れに沿って流される。
そして、
図3に示すようにこれらの土手21,21'やその他の凸状部分23,23',24,24'の隙間には、水上側から水下側へ雨水が流れる、複数の浅溝状から形成される排水経路22が形成される。
【0022】
また、前記横葺屋根材1は、
図1(a),(b)に示すように前記断熱材2を被覆する面板部11と、その水上端に表面側へ折り曲げた水上側成形部12と、その水下端に裏面側へ折り返した略コ字状の係合部分131、その裏面に形成される水下側へ向かう延在片132、その水上端を前記水上側成形部12と係合するヘアピン状の係合部133とした構成が示されている。
なお、左右方向に隣り合う横葺屋根材1,1の側端縁同士の接続部分を符号14で示したジョイント部分としたが、このジョイント部分14には水下側から吹き上げ風が作用し、該吹き上げ風と共に浸入した雨水が、土手21に当たることで左右方向の排水経路22に導かれ、該排水経路22を形成する複数の浅溝状を流下して下段の断熱材2へ排水される。
【0023】
図4(a),(b)に示される横葺屋根構造は、流れ方向に沿って上段、中段、下段の三つの断熱材2が並列状に配設された状態に、水上側から水下側へ向かって横葺屋根材1が順次配設されている状態が示されている。
即ち同図(a)では上方に臨んでいる中段用の横葺屋根材1は、同図(b)ではその水下側成形部13(係合部133)が、下段に配置された断熱材2の土手21に当接状に配置されている。
【0024】
図5(a),(b)に示される横葺屋根構造は、同図(a)では、横葺屋根材1の裏面側の排水機構が解り難いために、同図(b)では、上段の右側、及び中段の横葺屋根材1を除いて示している。
同図(b)に太矢印にて示されるように、ジョイント部分14から吹き上げ風と共に吹き込んだ雨水が、土手21に当たることで左右方向の排水経路22に導かれ、該排水経路22を形成する複数の浅溝状を流下して下段の断熱材2へ排水される。
なお、これらの
図4,5には図示していないが、各横葺屋根材1の延在片132には固定具(1b)を打ち込んで固定している。
【0025】
このように本発明の実施例1の横葺屋根構造は、左右方向に隣り合う横葺屋根材1,1のジョイント部分14の水下側成形部13(係合部133)が、下段に配置された、表面上に雨水が流れる排水経路22が設けられる断熱材2に形成された、水上側に表面側へ隆起する土手21に当接状に配置されているので、下地構造の構造を限定することなく、且つ特殊な保持部材を用いることなく、水下側から水上側へも、水上側から水下側へも、横葺屋根材1を施工することができる。
そのため、 施工済みの横葺屋根材1と未施工の境目から雨水や土埃、落ち葉が横葺屋根材裏面に侵入することがなく、作業者が施工済みの横葺屋根材1を踏み付けてしまう恐れもなく、断熱材2の裏面側は、例えばスレート等の既存屋根でも野地板でもよく、改修又は新設の両方に適応することができる。
【0026】
さらに、この実施例1では、断熱材2の土手21は、一定ピッチにて複数形成されているので、隣り合う土手21,21同士の間隔についても、雨水が流れる排水経路22として用いることができる。
【0027】
図6は、前記実施例1の横葺屋根構造が、スレート屋根下地へ適用された例を示し、傾斜状に配設された躯体4の上面側に所定厚みの野地材5が配設され、その表面にストレート屋根6(符号6bは防水シート)が敷設されている。
このように本発明の横葺屋根構造は、特殊な保持部材を用いることなく、図示されるようなスレート屋根6にも適用でき、改修又は新設の両方に適応することができ、前述のように水下側から水上側へも、水上側から水下側へも、横葺屋根材1(符号1bは固定具)を容易に施工することができる。
【0028】
図7は、前記実施例1の横葺屋根構造が、軒先端に軒樋7及びカバー材8が配設された構造に適用された例を示し、傾斜状に配設された躯体4'の上面側に所定厚みの野地材5'が配設され、その表面に段葺き屋根6'が敷設されている。
【0029】
これらの軒樋7及びカバー材8について、以下に簡単に説明する。
この軒樋7は、略垂直面状の建築物側の側面と底面と軒先側の側面とからなる排水部71を備え、その建築物側の側面は、傾斜状の鼻隠し壁面4Cに取り付けられた軒先取付材9C及び軒先支持材9Bによって支持されている。
上記軒先取付材9Cには、鼻隠し壁面4Cへの固定部と下方へ向く係止凸部とが設けられ、上記軒先支持材9Bには、前記係止凸部が係合される複数段の係合歯が設けられている。また、これらの部材9B,9Cが回動可能に組み付けられ、係合歯に係止凸部が係合されている部位には、筒状の嵌合材9Dが取り付けられている。
また、その開放上部を覆うカバー材8は、裏面側の軒樋7へ雨水が導かれる排水凹部82が、面板部81に複数形成されている。
なお、この
図7における符号9Aは最軒端の横葺屋根材1(符号1bは固定具)の裏面側に配設された軒先唐草、4Aは野地材5'上に配設された傾斜状に配設された躯体、4Bはその裏面側の躯体、4Dは天井材である。
この
図7の横葺屋根構造でも、特殊な保持部材を用いることなく、水上側から水下側へ横葺屋根材1を施工することができる。